説明

光記録媒体

【課題】膜厚及び面内均一性に優れた光透過層を具備する光記録媒体を低コストで提供する。
【解決手段】円板状の透明基板1と、透明基板の外縁部を除いて積層形成された情報記録層2と、前記外縁部及び情報記録層2を含む領域上に積層形成された中間層3と、この中間層3上に回転塗布法により形成された光透過層4とを具備している光記録媒体10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板上に少なくとも情報記録層と光透過層とを有し、光透過層を介して情報記録層に光を照射して信号の記録・再生を行う光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来汎用されている貼り合わせ型光記録媒体(多層DVD)よりも更に高密度記録化を実現させる技術として、青紫色レーザ光源(波長400nm前後)を記録・再生用のレーザ光として適用する技術の提案がなされている。
具体的には、光記録媒体の光透過層の膜厚を0.1mm以下程度とし、開口数NAが0.85程度のレンズを適用して超微細レーザスポットを形成し、信号の記録再生を行う技術である。
【0003】
上記のような高密度記録型の光記録媒体のレーザ光照射面に形成される光透過層の構成としては、下記のようなものが挙げられる。
(A)厚さ1.1mmの透明基板の信号形成面側に、光透過層として、厚さ0.1mmより若干薄い透明な薄板を、透明接着剤を用いて貼り付ける。
(B)厚さ1.1mmの透明基板の信号形成面側に、光透過層として、厚さ0.1mm程度の透明樹脂層でコートする。
上記(A)の薄板(光透過層)としては、例えばキャスティング等により作製されたポリカーボネートシートが適用できる。シートを用いると、厚さのばらつきが±1μm程度に抑えられるという点で有利である。また、シートを支持基板と貼り合わせる接着剤の層は極めて薄膜であるため均一にすることは容易であり、最終的に得られる記録再生面側の光透過層は膜厚の均一性に優れたものとなる。
また、上記(B)においては、上記(A)ほど厳密に均一膜を形成することは困難であるが、コスト面において有利である。
【0004】
上記(B)のように、透明樹脂をコートすることによって光透過層を形成する技術としては、液状紫外線硬化樹脂を円盤状基体に塗布し、回転処理により最外周での液溜まりの形成を防止するという製造工程についての技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、記録層上に光透過層形成用材料を回転塗布(スピンコート)する装置に関する提案もなされている(例えば、特許文献2参照。)。これは、特に小径の光ディスクであっても、均一な膜厚の光透過層を形成する技術である。
【0005】
今後一層、高密度化が進む光ディスクにおいては、光透過層の膜厚均一性、すなわち面内均一性の重要性が高まるものと考えられ、かかる膜厚の内外差を解消するために、例えばセンターキャップ法、センターシール法、センター後抜き法等の、ディスク半径0mmの位置から樹脂膜を形成する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−42389号公報
【特許文献2】特開2005−63492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、基板の外周端においても、光透過層に、規格外の盛り上がり(バンプ)が生じてしまうことがあり、このバンプが、記録再生領域に悪影響を及ぼすという問題があった。
しかしながら、外周端バンプの発生を防止する有効な対策は、従来知られていなかった。
そこで本発明においては、外周端のバンプの発生を防止し、膜厚均一性に優れた光透過層を具備する光記録媒体を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明においては、円板状の基板と、この基板の外縁部を除いた領域上に形成された情報記録層と、前記基板の前記外縁部を含み、前記情報記録層の上に形成された中間層と、前記中間層上に、回転塗布法により形成された光透過層とを具備している光記録媒体を提供する。
【0009】
請求項2の発明においては、円板状の基板と、この基板の外縁部を含み、前記基板上に形成された情報記録層と、この情報記録層上に回転塗布法により形成された光透過層とを具備していることを特徴とする光記録媒体を提供する。
【0010】
請求項3の発明においては、前記中間層が、樹脂膜あるいはスパッタ膜であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、中間層によって光透過層形成面全面に亘って濡れ性が均一化されているので、外周端バンプの発生を抑制でき、膜厚均一性に優れた光透過層を具備する光記録媒体が得られた。すなわち、本発明者は、外周端バンプの発生は、回転塗布法により塗布される光透過層の材料(例えば紫外線硬化樹脂)が、例えば樹脂材料からなる基板の表面とは比較的濡れ性が高く、例えば相変化型の無機材料からなる情報記録層の表面とは比較的濡れ性が低いことに起因することを解明した。そして、本発明は、外周端バンプの発生を防ぐべく、基板の外周部を含んで情報記録層の上に中間層を形成することで、光透過層形成面の全面に亘って、濡れ性を均一化した。
請求項2の発明によれば、信号形成領域面の濡れ性が情報記録層により均一化されているので、特に低コストで上記効果を奏する光記録媒体が得られた。
請求項3の発明によれば、簡易な工程により、信号形成領域面の濡れ性が均一化できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光記録媒体の具体的な実施形態を図面を参照して説明する。
なお、本発明の光記録媒体は、以下の例に限定されるものではなく、適宜従来公知の技術を援用できるものとする。
【0013】
光記録媒体の共通構成の概略断面図を、図1に示す。
光記録媒体は、中心孔11を有するディスク形状であり、透明基板1上に情報記録層2と光透過層4とが設けられた構成を有している。
【0014】
(第一の発明による光記録媒体)
図2に第一の発明による光記録媒体の要部の概略断面図を示す。
光記録媒体10は、透明基板1上に、所定の反射膜と記録膜とが積層された情報記録層2と、中間層3と、光透過層4とが、順次形成された構成を有している。
【0015】
透明基板1は、光ディスク用基板として従来公知の材料をいずれも適用でき、具体的にはポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明樹脂材料や、ガラス等が挙げられる。
また、後述する情報記録層2の形成領域には、予め所定のピットやグルーブが形成されていてもよい。
【0016】
情報記録層2は、透明基板1側から順に、所定の反射膜と記録膜とから構成されている。
反射膜を形成する材料としては、例えば、Al、Au、Ag、Cu等の金属、これら金属の合金が挙げられる。その他半金属元素、半導体元素、あるいはこれらの化合物を適用することもできる。
反射膜は、記録・再生用のレーザ光を反射し、レーザ光の利用効率を高めるとともに、記録時に発生した熱を放熱するシートシンク層の機能を有している。
記録膜は、レーザ光を照射することにより信号の書き込みを行う光記録層である。この記録膜は、結晶・非晶質間で相変化する相変化材料により構成されているものとする。相変化材料としてはビスマス化合物が適用できる。この記録膜すなわち相変化材料膜の上下に透明誘電体層を設けることにより光学特性を調節したり、湿気等の腐食因子との接触を防止したりすることができる。
反射膜及び記録膜は、スパッタリング法により形成する。このとき、図2に示すように、ディスクの外周端側から1〜2mm幅の領域をマスクで覆うことにより透明基板面が露出した状態にする。これにより、情報記録層2は、透明基板1上にその外縁部を除いた領域に形成される。
【0017】
中間層3は、樹脂膜、あるいはスパッタ膜のいずれでもよい。
例えば液状の紫外線硬化樹脂を形成面に回転塗布した後、紫外線硬化処理を施すことにより低コストで形成できる。中間層3は、上記マスクによって基板面がむき出しになっているディスクの外縁部を含んで全面的に形成する。これにより上層の光透過層4形成面の濡れ性を均一化できる。
中間層3は、記録再生用レーザ光を透過する材料により構成されているものとし、膜厚は10μm以下とし、好ましくは2〜5μmとする。これにより高い面内均一性が得られる。
【0018】
光透過層4は、液状の紫外線硬化樹脂を形成面に回転塗布した後、紫外線硬化処理を施すことにより形成できる。
光透過層4は、情報記録層2を外部の衝撃から保護し、湿気等の腐食因子との接触を防止する保護層として機能する。
光透過層4は、記録再生用レーザ光を透過する材料により構成されているものとし、膜厚は0.3mm以下とし、好ましくは10〜200μmとする。
【0019】
図2の光記録媒体10は、光透過層4側から所定の波長のレーザ光を照射することにより信号の記録・再生を行うが、光透過層4の膜厚が0.3mm以下とすることで、対物レンズの開口数NAを0.8にまで上げたとしてもディスクの傾きによって生じるコマ収差は小さく抑制される。従って光ディスクの傾きに対して大きな許容度が得られる。
【0020】
(第二の発明による光記録媒体)
図3に第二の発明による光記録媒体の要部の概略断面図を示す。
光記録媒体20は、透明基板1上に、所定の反射膜と記録膜とが積層された情報記録層2と、光透過層4とが、順次形成された構成を有している。
【0021】
透明基板1は、光ディスク用基板として従来公知の材料を適用でき、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明樹脂材料や、ガラス等が挙げられる。
また、後述する情報記録層2の形成領域には、予め所定のピットやグルーブが形成されていてもよい。
【0022】
情報記録層2は、所定の反射膜と記録膜とから構成されている。
反射膜を形成する材料としては、例えば、Al、Au、Ag、Cu等の金属、これら金属の合金が挙げられる。その他半金属元素、半導体元素、あるいはこれらの化合物を適用することもできる。反射膜は、記録・再生用のレーザ光を反射し、レーザ光の利用効率を高めるとともに、記録時に発生した熱を放熱するシートシンク層の機能を有している。
記録膜は、レーザ光を照射することにより信号の書き込みを行う光記録層である。この記録膜は、結晶・非晶質間で相変化する相変化材料により構成されているものとする。相変化材料としてはビスマス化合物が適用できる。この記録膜すなわち相変化材料膜の上下に透明誘電体層を設けることにより光学特性を調節したり、湿気等の腐食因子との接触を防止したりすることができる。
反射膜及び記録膜は、スパッタリング法により形成する。なお、図3に示すように、情報記録層2はディスクの外縁部まで全面に形成する。
【0023】
光透過層4は、液状の紫外線硬化樹脂を形成面に回転塗布した後、紫外線硬化処理を施すことにより形成できる。
上記情報記録層2によって光透過層形成面の全面に亘って濡れ性を均一化しているので、極めて膜厚均一性(面内均一性)に優れた光透過層4が形成できる。
光透過層4は、情報記録層2を外部の衝撃から保護し、湿気等の腐食因子との接触を防止する保護層として機能する。
光透過層4は、記録再生用レーザ光を透過する材料により構成されているものとし、膜厚は0.3mm以下とし、好ましくは10〜200μmとする。
【0024】
図3の光記録媒体20は、光透過層4側から所定の波長のレーザ光を照射することにより信号の記録・再生を行うが、光透過層4の膜厚が0.3mm以下とすることで、対物レンズの開口数NAを0.8にまで上げたとしてもディスクの傾きによって生じるコマ収差は小さく抑制される。従って光ディスクの傾きに対して大きな許容度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光記録媒体の概略断面図を示す。
【図2】第一の発明の光記録媒体の要部の概略断面図を示す。
【図3】第二の発明の光記録媒体の要部の概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 透明基板
2 情報記録層
3 中間層
4 光透過層
10,20 光記録媒体
11 中心孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基板と、当該基板の外縁部を除いた領域上に形成された情報記録層と、前記基板の前記外縁部を含み、前記情報記録層の上に形成された中間層と、当該中間層上に、回転塗布法により形成された光透過層とを具備していることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
円板状の基板と、当該基板の外縁部を含んだ領域上に形成された情報記録層と、当該情報記録層上に、回転塗布法により形成された光透過層とを具備していることを特徴とする光記録媒体。
【請求項3】
上記中間層が、樹脂膜、あるいはスパッタ膜であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−210468(P2008−210468A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47324(P2007−47324)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】