説明

光走査型顕微鏡

【課題】短時間で設計可能であり、かつバグの発生確率が低い光源の制御回路を備えた光走査型顕微鏡を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の光源を含む第1の光源群と複数の光源を含む第2の光源群とからなる光源部と、前記光源部から照射された光を標本に照射する照明光学系と、前記標本からの観察光を受光する受光光学系と、 前記光源部の動作を制御する制御部とを備えた顕微鏡であって、前記制御部は、第1の受信情報に従って生成した、前記第1の光源群のいずれかの光源を制御する制御信号を、第2の受信情報に従って前記第2光源群の光源を制御する制御信号として出力する機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物試料に光を照射し、この生物試料で発生する現象を観察する顕微鏡として光走査型顕微鏡が知られている。このような光走査型顕微鏡においては、水平及び垂直スキャナを制御して光源からの光を試料における所望の領域(この領域を「ROI(Region Of Interest)」と呼ぶ)に照射して観察を行うように構成されている。ここで、試料を照射する光は、単一の光源だけでなく、複数の光源からの光を照射して観察可能に構成された光走査型顕微鏡も開発されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−35400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
光源の制御回路の設計が当初の設計仕様に沿ってある程度進んだ段階、もしくは完全に終了した段階で、新たに光源を追加する必要が生じた場合、既に設計完了している制御回路に追加修正を行うことになり、回路の詳細まで修正することになると、再設計時間もかかり、バグが発生する確率も高くなるという課題があった。
【0003】
そこで、本発明は、光源の制御回路を工夫することにより、短時間で設計可能であり、かつバグの発生確率が低い光源の制御回路を備えた光走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の光走査顕微鏡は、複数の光源を含む第1の光源群と複数の光源を含む第2の光源群とからなる光源部と、 前記光源部から照射された光を標本に照射する照明光学系と、前記標本からの観察光を受光する受光光学系と、 前記光源部の動作を制御する制御部とを備えた顕微鏡であって、前記制御部は、第1の受信情報に従って生成した、前記第1の光源群のいずれかの光源を制御する制御信号を、第2の受信情報に従って前記第2光源群の光源を制御する制御信号として出力する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、既存設計済みの回路を全く修正することなく、少量の修正で追加光源分の制御信号を出力可能である。修正箇所が少量なため、設計時間が短縮され、さらにバグの発生確率も低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0007】
まず、光走査型顕微鏡の一例として、レーザ光による蛍光観察が可能なレーザ走査型顕微鏡の構成について図1を用いて説明する。
【0008】
このレーザ走査型顕微鏡1は、光ビームを発する複数の光源(本実施例においては、5台の光源を有する場合について説明する)2a〜2eと、それぞれの光源2a〜2eから放射されたレーザ光LBa〜LBeを同一の光路上に重ね合わせてレーザ光LBとするミラー群3と、ステージ4に載置された試料5上でレーザ光LBを2次元的に走査させる水平スキャナ(例えば、レゾナントスキャナ)6及び垂直スキャナ7と、CPU8の画像取得開始指令S8に基づいて水平スキャナ6及び垂直スキャナ7の駆動を制御するスキャナ制御回路9と、試料5から放射された蛍光を、この試料5に照射されたレーザ光LBa〜LBeに対応付けて分離するミラー群10と、ミラー群10で分離された各々の蛍光を検出し、入力した蛍光の光強度を表す信号S11a〜S11cに変換する蛍光検出器11a〜11cと、これらの蛍光検出器11a〜11cの信号S11a〜S11c及びスキャナ制御回路9から得られる走査位置情報S9(水平同期信号HD、垂直同期信号VD、ピクセルクロックPC等)に基づき試料5の画像化を図る画像処理回路12と、スキャナ制御回路9から得られる走査位置情報S9に基づいて光源2a〜2eから放射されるレーザ光の照射タイミングを制御するレーザ制御回路13と、レーザ光LBを試料5側に反射するとともに、試料5からの光に含まれる蛍光を透過することにより、レーザ光と蛍光とを分離するダイクロイックミラー14と、このダイクロイックミラー14を透過した光に含まれるレーザ光をカットするバリアフィルタ15とから構成される。
【0009】
このような構成のレーザ走査型顕微鏡1において、光源2a〜2eの各々から放射されたレーザ光LBa〜LBeは、ミラー群3により同一の光路上に重ね合わされたレーザ光LBとなり、ダイクロイックミラー14で反射され、水平スキャナ6及び垂直スキャナ7に導かれ、スキャナ制御回路9によって水平スキャナ6及び垂直スキャナ7により試料5上で2次元走査される。
【0010】
レーザ光LBの照射によって励起され試料5から発せられた蛍光は、レーザ光LBの光路を逆行し、垂直スキャナ7及び水平スキャナ6でデスキャニングされ、ダイクロイックミラー14を透過し、レーザ光と分離される。そして、ダイクロイックミラー14を透過した蛍光はバリアフィルタ15で完全に蛍光だけとなり、ミラー群10によりレーザ光LBa〜LBeの各々に対応する蛍光に分離されて蛍光検出器11a〜11cに入射し検出される。
【0011】
本実施形態のレーザ制御回路13の構成、機能について図2を用いて説明する。
【0012】
PC20は、ユーザが選択したレーザ情報(選択されたレーザ、各レーザのパワー、Passの設定など)をCPU8に送信する。
【0013】
CPU8は、送信されたレーザ情報の各レーザが、既存レーザか新規レーザかを判断し、新規レーザの場合は、未使用の既存レーザのいずれかに置き換えを行い、これらのレーザ情報をレーザ制御回路13に送信する。
【0014】
ここで、既存レーザとは、レーザ制御回路13の既存制御回路16設計開始時から搭載が予定されていたレーザをいい、新規レーザとは、既存制御回路16の設計完了後又は設途中で追加搭載が決まったレーザをいう。
【0015】
レーザ制御回路13は、FPGA(Feild Programmable Gate Array)で構成され、FPGAは、既存レジスタ17、追加レジスタ19、既存制御回路16、追加セレクタ18から構成されている。
【0016】
既存レジスタ17は、CPU8からの既存レーザの情報(置き換え後のレーザ情報も含む)が書き込み設定され、これらの情報を既存制御回路16に送信する。追加レジスタ19は、CPU8からの所定の既存レーザを所定の新規レーザに読み替えることを示す信号が書き込み設定され、これらの情報を追加セレクタ18に送信する。
【0017】
ここで、既存制御回路16は、各レーザ2a〜2cに対応する既存制御信号(S16a〜S16c)をそれぞれ出力し、追加セレクタ18に送信する。追加セレクタ18は、(1)既存制御信号(S16a〜S16cの少なくとも1つ)を既存制御信(S13a〜S13cのうちの対応する信号)として出力し、追加制御信号(S13d,S13e)としては出力しない、
(2)既存制御信号(S16a〜S16cの少なくとも1つ)を既存制御信号(S13a〜S13c)としては出力せず、追加制御信号(S13d,S13eのうちの対応する信号)として出力する
(3)既存制御信号(S16a〜S16cの少なくとも1つ)を既存制御信号(S13a〜S13cのうち対応する信号)と、追加制御信号(S13d,S13eのうちの対応する信号)として出力する、という3つの機能があり、これらの機能は追加レジスタ19への書き込み設定によって動作が可能である。
【0018】
以下、ユーザがPC20の画面に表示されたGUIから観察用又は刺激用に用いるレーザとしてレーザ2b、レーザ2dが選択されたとして、説明する。
【0019】
ここで、レーザ2a〜2cは既存レーザ、レーザ2d、2eは新規レーザである。PC20は選択されたレーザ情報(レーザ2b、2d、各レーザのパワー、Passの設定など)S20をCPU8に送信する。
【0020】
CPU8は、送信されたレーザ情報S20について、レーザ2bを既存レーザと判断し、レーザ2dを新規レーザと判断し、未使用の既存レーザ2aにレーザ2dの情報を置き換える。
【0021】
次に、CPU8からレーザ制御回路13内に設けられた既存レジスタ17にレーザ2a、2bの情報S8aを送信するとともに、追加レジスタ19にレーザ2aの信号は、レーザ2dの信号と読み替えることを表す信号S8bを送信する。
【0022】
既存制御回路16は、既存レジスタ17の指示S17に基づいて、レーザ制御信号S16a、S16bを出力し、追加セレクタ18に送信する。
【0023】
追加セレクタ18は追加レジスタ19の指示(レーザ2aの信号は、レーザ2dの信号と読み替える)S19に基づいて、入力されたレーザ制御信号S16a、S16bを、レーザ2b、2dに対して制御信号を送るレーザ制御信号S13b,S13dに切り替えて出力する。
【0024】
なお、Pass設定とは、1取得画像毎のレーザ設定のことで、例えば、Pass1ではレーザ2a、Pass2ではレーザ2b、Pass3ではレーザ2cを使用するとレーザ制御回路13に設定されると、CPU8からの画像取得開始命令により1取得画像毎にレーザ2a→レーザ2b→レーザ2c・・・とハードウェアシーケンシャルに切替えてレーザを出力する。
【0025】
上記例では新規レーザ2dを既存レーザ2aに置き換え、既存制御回路16からの出力信号としてS16aを使用したが、既存レーザ2cに置き換えて、既存制御回路16からの出力をS16cとし、追加セレクタ18でS13dを選択されるようにしてもよい。新規レーザ2eについて同様である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】レーザ走査型顕微鏡の構成を示すブロック図である。
【図2】レーザ制御回路の構成及び機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 レーザ走査型顕微鏡(光走査型顕微鏡)
2a〜2e 光源(光源部) 5 試料
6 水平スキャナ 7 垂直スキャナ
8 CPU 9 スキャナ制御回路
11a〜11c 蛍光検出器
12 画像処理回路 13 レーザ制御回路(制御部)
16 既存制御回路 17 既存レジスタ
18 追加セレクタ 19 追加レジスタ
20 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を含む第1の光源群と複数の光源を含む第2の光源群とからなる光源部と、
前記光源部から照射された光を試料に照射する照明光学系と、
前記標本からの観察光を受光する受光光学系と、
前記光源部の動作を制御する制御部と
を備えた顕微鏡であって、
前記制御部は、第1の受信情報に従って生成した、前記第1の光源群のいずれかの光源を制御する制御信号を、第2の受信情報に従って前記第2光源群の光源を制御する制御信号として出力する機能を有することを特徴とする光走査型顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−122545(P2010−122545A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297453(P2008−297453)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】