光走査装置とそれに用いる光学反射素子
【課題】リサージュ描画を行う投影型表示装置において、走査線ができるだけ緻密な軌跡を描くように駆動周波数を設定し、高い解像度が得られる光走査装置を提供する。光源からの光束をリサージュ描画する際、駆動周波数によって軌跡が粗になったり、軌跡が経時変化したりするため動画を表示する際に解像度が低下する。
【解決手段】光束を射出する光源と、前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、前記走査手段は、前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを所定の数式を用いて演算し、前記演算された第一の周波数fH及び第二の周波数fLで前記光束を走査する。
【解決手段】光束を射出する光源と、前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、前記走査手段は、前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを所定の数式を用いて演算し、前記演算された第一の周波数fH及び第二の周波数fLで前記光束を走査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置や表示装置などに用いる光走査装置と、それに用いる光学反射素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザやLEDなどの光源から射出した光束を、互いに直交する二軸方向に走査する車載用レーダや投影型の表示装置が実用化されている。これらの光走査装置は、光源と、例えば図10に示すアクチュエータ及びその駆動制御装置とから構成されている。
【0003】
アクチュエータは、反射部を、互いに直交する二つの動作軸回りに回動させる反射素子と、反射部の駆動周波数を決定する駆動部とから構成されている。
【0004】
特に、リサージュ走査によって光束を走査させて軌跡を描く場合、その軌跡や、軌跡が再び元の軌跡に戻るまでの周期(以下、「リサージュ周期」という。)は各軸の駆動周波数によって決まる。レーダや投影型の表示装置では、フレームレートなどで規定される時間内に、解像度などで規定されるすべての画素の上を光束が通過するようにしなければならない。そのためには、リサージュ周期を適切な値に設定し、軌跡ができるだけ緻密になるように駆動周波数を設定する必要がある。
【0005】
図10に示す従来技術に係るアクチュエータ駆動制御装置では、光束を投影面に走査した軌跡が描くメッシュ数を予め所定の範囲に設定しておき、発振器51のクロック数、共振周波数設定手段52により求めたスキャナ53の二つの動作軸(第1可動部54、第2可動部55によって駆動される動作軸)の実際の共振周波数を駆動周波数設定手段56に入力し、最も動作効率の高い駆動周波数を演算している。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−302104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術に係るアクチュエータ駆動制御装置では、実際の共振周波数のズレを考慮しながら所望の解像度が得られる駆動周波数を求めるものであるが、リサージュ走査の場合、解像度はフレームレートにより大きく変動する。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、リサージュ描画によって光束を走査させる光走査装置において、フレームレートを考慮しながら、光束ができるだけ緻密な軌跡を描くように駆動周波数を設定し、高い解像度が得られる光走査装置と、それに用いる光学反射素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第一の発明に係る光走査装置は、
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数1〜数4、もしくは数5〜数8から決定された関係としたことを特徴とする光走査装置;
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
前記数1〜数4において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
前記数5〜数8において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする。
【0010】
前記光走査装置において、前記走査手段は、正弦波を用いて前記光束を走査することを特徴とする。
【0011】
また、前記光走査装置において、前記走査手段は、
前記光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記光走査装置において、前記走査手段は、
第一の反射部と、前記第一の反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部とを含む第一の光学反射素子と、
第二の反射部と、前記第二の反射部を第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部とを含む第二の光学反射素子と、
前記第一及び第二の光学反射素子を制御するための制御部とを備え、
前記第一の反射部及び前記第二の反射部に、前記光束を順に反射させるとともに、前記第一の軸及び前記第二の軸を互いに略直交するように配置したことを特徴とする。
【0013】
第二の発明に係る光学反射素子は、
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記制御部は、前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数9〜数12を用いて、もしくは数13〜数16を用いて演算してそれぞれ駆動周波数として前記第一及び第二の駆動系に設定し、
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
前記数9〜数12において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
前記数13〜16において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、所望のフレームレート内に、光束ができるだけ緻密な軌跡を描くように駆動条件を簡単に算出することができるので、高解像度の投影型表示装置を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光走査装置が描く軌跡の一例を示す図である。
【図3】図1の光走査装置に用いる光学反射素子の一例を示す斜視図である。
【図4A】図1の光走査装置が描く軌跡の第1の例を示す描画図である。
【図4B】図1の光走査装置が描く軌跡の第2の例を示す描画図である。
【図5A】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図5B】本発明の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図6A】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図6B】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図7】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図8】図1の光走査装置の駆動条件を算出した結果を説明する特性図である。
【図9A】図1の光走査装置で駆動する二軸光学反射素子の振れ角の周波数特性を説明する特性図である。
【図9B】図1の光走査装置で駆動する二軸光学反射素子の振れ角の周波数特性を説明する特性図である。
【図10】従来技術に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0017】
全体構成の説明.
図1は、本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る光走査装置は、大きくは、光源2と、走査装置3とを備えて構成される。光源2は、用途に応じて適宜選択されたR(赤)、G(緑)、B(青)などの波長の光束を射出するLD(Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)などからなる発光素子で構成されている。この発光素子の光源2には、映像信号を生成する映像信号処理回路9と、光源2のビームの強度を変調するための駆動信号生成回路10とを含む映像信号処理部1が接続されている。
【0018】
一方、走査装置3は、前述の光源2を直線や曲線、又は平面上に走査するための走査素子11と、この走査素子11の駆動を制御するための制御部12とを少なくとも備えている。走査素子11は、例えばアクチュエータなどを用いることで、上述の光源2を直接走査させてもよいし、ミラーデバイスなどの光学反射素子を用いて固定位置から射出された光束を反射させて走査してもよい。これらの走査素子11は、駆動させる軸の数に応じた駆動部13−1,13−2と、当該駆動部13−1,13−2の動作状態を検出するためのモニタ14−1,14−2を備えている。
【0019】
制御部12は、走査素子11の駆動条件を演算し、実際の駆動信号を生成するものであり、演算部15と、駆動信号生成回路16−1,16−2とを備えて構成される。演算部15は、走査素子11における駆動部13−1,13−2の共振周波数や予め取得しておいた走査素子11の特性などから走査素子11の駆動条件(周波数、振幅、位相)を演算して、その結果を駆動信号生成回路16−1,16−2に出力する。当該演算部15において、本発明のポイントである高速側周波数fHと低速側周波数fLを算出する数式(上記数1〜数16)を用いることで、できるだけ緻密な軌跡を描くように適切な駆動周波数を決定することができる。駆動信号生成回路16−1,16−2では、演算部15の結果から実際に走査素子11を駆動するための電圧や位相、周波数などの信号を生成し、駆動部13−2,13−2を動作させる。適宜、モニタ14−1,14−2からの検出された駆動信号を演算部15にフィードバックさせ、駆動条件を適宜演算することで、温度や振動などの環境変化や、共振周波数のズレによる走査素子11の駆動効率の低下を一定の範囲に抑制している。適切な駆動周波数を維持することで、緻密な軌跡を保つことができる。当該モニタ14−1,14−2からの信号は、光源2を制御する駆動信号生成回路10にも出力されており、走査素子11の実際の動作に合わせて、光源2のビームの強度も制御されている。なお、上記はモニタ14−1,14−2を走査素子11に直接設けた一例であるが、外部装置から走査素子11の動作を検出することが可能であれば、外部装置に設けてもよい。例えば、光束を直接検出するPD(Photo Diode)などの光素子やCCD(Charge Coupled Device)などの電荷結合素子を用いてもよい。
【0020】
上記のように互いに略直交する二つの軸まわりに光束を正弦波で走査することにより、本発明の実施形態に係る光走査装置の光束は、図2に示すリサージュ模様を描く。リサージュ模様は、正弦波の周波数に大きく依存し、フレームレートの時間内に描かれる光束の軌跡や粗密はさまざまに変化する。本発明の実施形態に係る光走査装置を投影型の表示装置に適用した場合、駆動条件により、所望の解像度が得られなかったり、ちらつきが大きくなったりする。本発明の実施形態は、フレームレートを考慮して、光束の軌跡ができるだけ緻密になる高解像度の光走査装置を提供することにある。
【0021】
光学反射素子の説明.
次に本発明に用いる走査素子、特に光学反射素子の一実施形態について説明する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態における光学反射素子の斜視図である。図3に示す光学反射素子は、いわゆるメアンダ(meander)形状の光学反射素子であり、中央部に光源からの光束を反射させるための反射部17と、この反射部17を第一の軸S1まわりに回動させる第一の駆動部18を含む第一の駆動系とを有し、さらに、この第一の駆動系を含む第一の枠体19を、前記第一の軸S1と略直交する第二の軸S2まわりに回動させる第二の駆動部20を含む第二の駆動系を有する。
【0023】
これら第一の駆動部18及び第二の駆動部20は、一定の長さ毎にシリコンなどからなる梁を複数回折り返した、いわゆるメアンダ形状をしている。この梁上には、上下を電極で挟んだ圧電体が形成されている。これらの電極間に一定の周波数で電圧を印加することにより、第一の駆動系は第一の軸S1まわりに回動し、第二の駆動系は第二の軸S2まわりに回動する。また、各梁上に圧電体を複数独立して設けておくことで、第一及び第二の駆動部18,20を動作させた際に生じる電荷を検出して、動作状態を検出するモニタ14−1,14−2(図1)として用いることが可能である。
【0024】
ここで梁をメアンダ形状とするのは、圧電体の変位を重畳させることで変位量(本実施例の場合は回動角度)を大きくするものであり、実質的に梁を長くする効果を得るためである。上記の第一及び第二の駆動部18,20は、走査素子11(図1)の駆動部に相当する。
【0025】
上記の光学反射素子の駆動効率を高めるためには、各駆動系の共振周波数が重要となる。すなわち、駆動周波数と第一及び第二の駆動系の共振周波数を合わせることで最大の駆動効率が得られる。
【0026】
なお、図3は一つの素子で二軸駆動可能な光学反射素子の一例であるが、一軸駆動の二つの光学反射素子を、互いの軸が直交するように配置して光束を複数回反射させても同様の効果を得ることができる。
【0027】
次に上記光学反射素子の製造方法について簡単に説明する。
【0028】
基板として、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。今回は、基部が475μm、埋め込み酸化膜が1μm、活性層が100μmの厚さの物を使用した。まず、基板上に、絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する。そしてこのシリコン酸化膜上にスパッタリング法などによって下部電極を形成する。次に、駆動源として、例えばPZTなどの圧電薄膜を下部電極上にスパッタリング法などで形成する。さらに圧電薄膜上に上部電極となるチタン/金などの金属膜を形成する。なお、本実施形態では、一例として、下部電極となる白金は厚さ0.2μm、圧電体は3.5μm、上部電極はチタンを0.01μm、金を0.3μmで積層して形成した。
【0029】
次に、下部電極、圧電体、上部電極を、フォトリソ技術によるパターンニングと、ウェットエッチやドライエッチなどによる加工を繰り返すことで所望の電極パターンや圧電体の形状を形成する。
【0030】
次に、第一及び第二の駆動部となるメアンダ形振動子を、SOI基板の活性層をフォトリソ技術によるパターニングとエッチング技術で加工することで形成する。このとき、エッチング法としてボッシュプロセスなどを用いることで、アスペクト比の高い垂直加工が可能となり、素子の小型化が実現できる。
【0031】
次に、素子表面をレジストなど後で容易に除去が可能な保護膜で保護した後、基板の裏面側から、同様にフォトリソ技術によるパターニング、エッチングによる加工をし、最後に保護膜を除去することで、本発明に用いる光学反射素子を作製することができる。
【0032】
駆動方法の説明.
次に本発明のポイントである、走査装置3における各軸の駆動周波数を決定する方法について説明する。
【0033】
本実施形態に係る光走査装置とスクリーンを用いて投影型表示装置を構成する場合を説明する。スクリーン上の光束の径が十分小さい場合、投影画像の解像度は光束の軌跡(走査線)で決定する。上述したように、光学反射素子を走査素子として用いると、走査素子の反射部は、回動軸まわりに正弦波状に振動し、リサージュ模様を描く。互いに実質的に直交する二軸を仮にx軸、y軸とすると、それぞれの軸の光束の軌跡は、x座標、y座標を時間tの関数として次式で表すことができる。
【0034】
【数17】
【0035】
ここで、fLはx軸まわりの駆動周波数(図3の光学反射素子における第二の駆動系の駆動周波数に相当)を表し、fHはy軸まわりの駆動周波数(図3の光学反射素子における第一の駆動系の駆動周波数に相当する。)を表し、A、Bは振幅を表し、φ、ψは各軸の位相ずれを表す。上記で表される軌跡がスクリーン上を描画可能な領域が解像度の限界であり、1秒間に表示する画像枚数をフレームレートFrとすると、1/Fr秒に描画可能な領域が実質的な解像度となる。
【0036】
一例を挙げると、y軸まわりの駆動周波数fHを31530Hzとし、x軸まわりの駆動周波数fLを1000Hzとしたとき、図4Aに示すような軌跡となる。これはフレームレートを30fpsとした場合の1/30秒間に、800×480画素を有する描画エリアの82%程度しか描画することができない。y軸まわりの駆動周波数fHはそのままで、x軸まわりの駆動周波数fLを1020Hzとすると図4Bに示すような軌跡となり、同じ1/30秒間に、800×480の描画エリアの98%を描画することができる。
【0037】
このように、光束の軌跡は駆動周波数fL、fHと密接な関係があり、高解像度の画像を表示するためには、これら駆動周波数fL、fHを最適な値に設定する必要がある。特に走査素子の共振周波数近傍で駆動させる場合、製造等のバラつきで共振周波数にもバラつきが生じるため、それぞれの素子で適切な駆動周波数を設定する必要がある。なお、上記の例はx軸まわりに低い周波数で、y軸まわりにx軸よりも高い周波数で駆動させているが、x軸、y軸が入れ替わったとしても本質は変わらない。
【0038】
数1〜数4の導出方法.
次に数1から数4の導出方法に関して説明する。
【0039】
数17において、初期の位相差φ、ψをともに0とすると、画像の中で、光束の軌跡が、x=0、すなわちy軸上を通る時間は、x(t)=0であるから、次式で表される。
【0040】
【数18】
【0041】
ここで、n=0,1,2,…である。nの上限はフレームレートFrで決まり、ガウス記号[ ]を用いて、次式で表される。ここで、ガウス記号[X]とは、Xを超えない最大の整数を表す関数である。
【0042】
【数19】
【0043】
すなわち、軌跡がY軸を横切る時間tnは、次式で表すことができる。
【0044】
【数20】
【0045】
ここで、n=0,1,2,…,[2fL/Fr]である、この時間におけるy軸との交点の位相θnを考えると、次式で表すことができる。
【0046】
【数21】
【0047】
このとき、θnは2πで割ったときの「余り(剰余)」だけで表す。すなわち、θn=3πの場合は、θnはπと表す。ここで、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)とすると、θnは次式で表される。
【0048】
【数22】
【0049】
上記の式(6)は、Nが偶数のときは次式で表される。
【0050】
【数23】
【0051】
Nが奇数のときは次の両式で表される。
【0052】
【数24】
【0053】
【数25】
【0054】
ここで、高い解像度を実現する、すなわちスクリーン全体を偏りなく走査させるには、この位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布することが望ましい。そのためには、位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させる必要があり、その条件を以下のケースに分けて考える。
【0055】
ケース1.
まず、Nが奇数であり、符号が+である場合を考える。このとき、式(8)及び式(9)にあるように、θ2qもθ2q+1も、qが1つ大きくなったときの増加分は、2πf/fLとなる。
【0056】
ここで、位相θnの分布のさせ方として、「2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ1周し、ある自然数Pに対してθ2P=πとなるようにする」ことを考える。位相θnはπf/fLの間隔で均等に分布させる。このときの位相θnの分布の様子を図5Aに示す。θ2P=πであるから、次に示す両関係式が成り立つ。
【0057】
【数26】
【0058】
【数27】
【0059】
「2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ1周する」ためには、nmaxは4P−1,4P,4P+1,4P+2のいずれかである。いずれの場合においても、式(3)より次式が求められる。
【0060】
【数28】
【0061】
式(10)と式(8)、及びθ2P=πから、位相θ2Pは次式となる。
【0062】
【数29】
【0063】
したがって、f=fL/2Pとなる。符号がマイナスの場合も同様であり、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)であるから、高速側周波数fHは次式で表される。
【0064】
【数30】
【0065】
また、Nが偶数の場合は式(7)よりnが1つ大きくなったときの増加分はπf/fLである。式(12)と位相θ2P=πが満たされるようにすれば、Nが偶数の場合でも、同様に、位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させることができる。この場合の分布の様子は図5Bのようになる。
【0066】
ケース2.
まず、Nが奇数であり、符号がプラスである場合を考える。このとき、式(8)及び式(9)にあるように、位相θ2qも位相θ2q+1も、qが1つ大きくなったときの増加分は、2πf/fLである。
【0067】
位相θnの分布は、「2qや2q+1がnmaxになるまでの間に、θ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ3周し、ある自然数Pに対してθ2Pがθ2P=π+2fπ/3fLを満たすようにする」ことを考える。位相θnはπf/3fLの間隔で均等に分布させる。この分布の仕方を図で表すと図6Aのようになる。
【0068】
ここで、θ2P=π+2fπ/3fLであるから、θ6P−2は次式で表すことができる。
【0069】
【数31】
【0070】
同様に考えると、位相θnの分布は以下の関係式を満たす。
【0071】
【数32】
【0072】
【数33】
【0073】
2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ3周するためには、nmaxは12P−5,12P−4,…,12P+6のいずれかである。いずれの場合においても、式(3)より以下のように表すことができる。
【0074】
【数34】
【0075】
式(14)と式(8)、及び位相の関係式θ2P=π+2fπ/3fLより、以下のように求めることができる。
【0076】
【数35】
【0077】
したがって、周波数fは次式で求められる。
【0078】
【数36】
【0079】
符号がマイナスである場合も同様であるので、式(16)と、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求めることができる。
【0080】
【数37】
【0081】
また、Nが偶数の場合は式(7)よりnが1つ大きくなったときの変動分はfπ/fLである。式(14)と、θ2P=π+2fπ/3fLが満たされるようにすれば、Nが偶数の場合であっても、同様にθnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させることができる。この場合の分布の様子は図6Bのようになる。
【0082】
上記を一般化すると以下のように拡張できる。
【0083】
【数38】
【0084】
式(18)が、ある正の整数Pに対して満たされるように設定できたとする。この場合、y軸との交点の位相は以下の式で表すことができる。
【0085】
【数39】
【0086】
【数40】
【0087】
【数41】
【0088】
これは、2a+1回転すると位相θnがほぼ元に戻ることを意味する。式(19)〜式(21)より、Pは以下のように求めることができる。
【0089】
【数42】
【0090】
式(6)と式(18)より、周波数fは以下のように求めることができる。
【0091】
【数43】
【0092】
式(22)と式(23)、及び高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)から高速側周波数fHは次式で求めることができる。
【0093】
【数44】
【0094】
ここで、a=1,2,3,…,amax、b=±1,±2,…,±aであり、aの最大値は、式(22)のPが正の整数であるという条件のもとで、式(22)においてb=aを代入することにより求めることができ、次式で表される。
【0095】
【数45】
【0096】
ここで、特別な場合として、a=b=0であってもかまわない。
【0097】
この式(25)において、a=b=0としたものが上述した「ケース1」の場合であり、a=1、b=1としたものが「ケース2」の場合になる。
【0098】
このとき、(2a+1)/((2a+1)P−b)は既約分数であることが望ましい。これは(2a+1)/((2a+1)P−b)が既約分数ではない場合には位相θnに重複が発生し、高い解像度が得られないからである。
【0099】
また、フレームレートFrの間に軌跡がy軸と交わる回数は、nmax+1である。このときのy軸との交点と、式(24)から求められる高速側周波数fH及び低速側周波数fLの組合せによる軌跡がy軸と交わる交点とが互いに異なる場合の個数は、4(2a+1)P−4bである。この4(2a+1)P−4bとnmax+1との比は0.6以上となるのが望ましい。これは、0.6より小さくなるとθnの重複が大きくなるためである。
【0100】
本発明に係る数5〜数8の導出方法.
次に、本発明に係る数5〜数8の導出方法について説明する。
【0101】
ケース3.
式(6)において、Nが偶数であり、符号がプラスの場合を考える。この場合、nが1つ大きくなったときの増加分はfπ/fLである。θnの分布のさせ方として、「nがnmaxになるまでの間にθnが区間[0,2π]をほぼ2周し、ある自然数Pに対して位相θ2Pがθ2P=π(1+f/2fL)を満たすようにする」ことを考える。位相θnはfπ/2fLの間隔で均等に分布させる。この分布の仕方を図で表すと図7のようになる。
【0102】
このとき、例えばθ2Pとθ6P−1は同じ点で交わるが、y軸との交わり方、すなわち傾きが異なるため、軌跡が十分スクリーン全体を網羅することができる。そのときの位相θnの場合の、交点での傾きは、(−1)ncosθnであるから、θ2Pの場合、次式で求めることができる。
【0103】
【数46】
【0104】
また、θ6P−1の場合、次式で求めることができる。
【0105】
【数47】
【0106】
式(26)及び式(27)より、両者は符号が反転しており、傾きが異なることが分かる。交点はすべて2以上の重複が発生するが、軌跡とy軸との交わり方が異なるため、軌跡は十分スクリーン全体を網羅し、描画することができる。Nが奇数の場合には、この傾きが同じになるため、望ましくない。
【0107】
nがnmaxになるまでの間にθnが区間[0,2π]をほぼ2周するためには、nmaxは4P−3,4P−2,4P−1,4Pのいずれかである。いずれの場合においても、式(3)から、Pは次式で求められる。
【0108】
【数48】
【0109】
ここで、式(7)と位相の関係式θ2P=π(1+f/2fL)から、周波数fは次式で求められる。
【0110】
【数49】
【0111】
また、高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求められる。
【0112】
【数50】
【0113】
上記を一般化すると、以下のように拡張できる。
【0114】
正の整数aを選び、bを−a、−a+1、…、a−1のいずれかとする。y軸との交点の位相は次式となる。
【0115】
【数51】
【0116】
上記の式(31)が、ある正の整数Pに対して満たされるように設定できたとすると、y軸との交点の位相は次式のようになる。
【0117】
【数52】
【0118】
【数53】
【0119】
【数54】
【0120】
これは、2a回転するとθnがほぼ元に戻ることを意味する。これら式(32)〜式(34)より、nmaxは4(2a)P−(4b+3),4(2a)P−(4b+2),…のいずれかであり、Pは次式となる。
【0121】
【数55】
【0122】
式(31)と式(6)より、周波数fは次式で求めることができる。
【数56】
【0123】
式(35)と式(36)、及び高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求められる。
【0124】
【数57】
【0125】
ここで、a=1,2,3,…,amax、b=−a,−a+1,…,a−1であり、aの最大値amaxは、式(35)のPが正の整数であるという条件のもとで、式(35)においてb=a−1を代入することにより求めることができ、次式で表される。
【0126】
【数58】
【0127】
上述した「ケース3」はa=1、b=0とした場合となる。このとき、式(37)の右項、すなわち、2a/(4aP−(2b+1))は既約分数であることが望ましい。これは、既約分数ではない場合には、位相θnに重複が発生し、高解像度の走査が実現できないためである。
【0128】
また、フレームレートFrの間に軌跡がY軸と交わる回数は、nmax+1である。このときのY軸との交点と、式(37)から求められる高速側周波数fH及び低速側周波数fLの組み合わせによる軌跡がY軸と交わる交点とが互いに異なる場合の個数は、8aP−4b−2である。この8aP−4b−2とnmax+1との比は0.6以上となるのが望ましい。これは、0.6より小さくなると、位相θnの重複が大きくなるためである。また、この数5〜数8を用いて高速側周波数fH及び低速側周波数fLを求める場合は、Nは偶数を選択する。Nが奇数の場合は、軌跡とy軸との交点に対して傾きに偏りが生じることから、周辺部の解像度を劣化させるためである。
【0129】
また、ここまでは走査線が描く軌跡のみを問題にしてきたが、表示装置などで映像を表示する場合には、時間的な偏り(フレームレート毎の軌跡の遷移)もできるだけ少ないほうが望ましい。時間的な偏りは、以下のように表現できる。
【0130】
y軸との交点の位相は式(6)などで表されるが、sin(π−θ)=sinθであるから、これらは同じ交点となる。これらを同じとみなすと次の関係式となる。
【0131】
【数59】
【0132】
ただし、−1≦θn*≦1である。
【0133】
また、傾きは(−1)ncosθnで表すことができる。20個の交点の位相θ1,θ2,…,θ20に対応する位相θ1*,θ2*,…,θ20*を、以下の2つに分ける。
【0134】
(1)傾きが正である位相セット{θu(1)*,θu(2)*,…,θu(i)*};及び
(2)傾きが負である位相セット{θd(1)*,θd(2)*,…,θd(j)*}。ここで、i+j=20である。
【0135】
いま、位相セット{θu(1)*,θu(2)*,…,θu(i)*}、{θd(1)*,θd(2)*,…,θd(j)*}を昇順に並べ替え、それぞれ、位相セット{θU(1)*,θU(2)*,…,θU(i)*}(θU(1)*<θU(2)*<…<θU(i)*)、及び位相セット{θD(1)*,θD(2)*,…,θD(j)*}(θD(1)*<θD(2)*<…<θD(j)*)とする。
【0136】
それぞれの傾きの交点のうち、位相的な意味での最大間隔は次のように表すことができる。なお、max{ }は中括弧内の各値の最大値を表す関数である。
【0137】
max{θU(1)*+1,θU(2)*−θU(1)*,θU(3)*−θU(2)*,…,θU(i)*−θU(i−1)*,1−θU(i)*}
及び
max{θD(1)*+1,θD(2)*−θD(1)*,θD(3)*−θD(2)*,…,θD(j)*−θD(j−1)*,1−θD(j)*}
【0138】
これらの値がそれぞれ0.4以下になるような周波数の組み合わせを選択すると、時間的な偏りが少なく、より望ましい。
【実施例1】
【0139】
以下に光学反射素子を、上述した式を用いて設計した例を説明する。第一の駆動部の駆動周波数を30kHz以上、第二の駆動部の駆動周波数を1kHz以上になるように設計した。
【0140】
まず、フレームレートFr=30とし、仮に低速側周波数fL=1100Hzと決める。数5〜数8を用いることを考えると、式(38)よりamaxは、次式となる。
【0141】
【数60】
【0142】
ここでは、a=17、b=15と決定する。式(35)よりPは次式となる。
【0143】
【数61】
【0144】
Pが1となるのは、低速側周波数fLが1095Hzから3135Hzの間の場合である。この範囲であれば、式(37)より、高速側周波数fHは以下の式で求めることができる。
【0145】
【数62】
【0146】
例えば、N=28とし、符号をマイナスとすれば、低速側周波数fL=1147Hzのときに、高速側周波数fH=31062Hzとなる。このように、本願発明で導出した数式を用いることで、低速側周波数fL及び高速側周波数fHの設計が非常に簡単に可能となる。
【0147】
実際に、低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzになるように設計、作製した二軸光学反射素子(n=20)について、それぞれの共振周波数を図示したものが図8である。共振周波数は試作時のバラつきによって第一の駆動系(高速側)は±0.5%、第二の駆動系(低速側)は±1%程度のバラつきが発生する。また、この場合のバラつきは第一の駆動系、第二の駆動系ともにランダムでバラつくわけではなく、両者に一定の相関があらわれる。ここで、設計のターゲットである低速側周波数fL=1147Hz、高速側周波数fH=31062Hzの点、及び、設計時に用いた条件式(39)を直線で図8に示す。
【0148】
低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzでの駆動を行うためには、多くの素子で共振周波数から離れた周波数で駆動する必要があり、十分な素子特性(振れ角)が得られない可能性が高い。一方、式(39)をターゲットにすれば、n=20すべての素子が第二の駆動系の共振周波数から±4Hz程度の範囲で、第一の駆動系は共振周波数での使用が可能となる。このように素子の共振周波数に近いところで使用することが可能となり、十分な素子特性(振れ角)と高い効率で動作させることが可能となる。
【0149】
また、低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzになるように設計、作製した二軸光学反射素子(n=20)について、第一の駆動系(高速側)及び第二の駆動系(低速側)の素子特性(振れ角)の周波数依存性を図示したものが図9A及び図9Bである。
【0150】
二軸光学反射素子を走査しスクリーンに画像を投影する際に、駆動系の振れ角によってスクリーンへ投影される画像の大きさが異なる。駆動系の振れ角が大きい方が光学反射素子からスクリーンまでの距離が短くても大きな画像を投影することができ、理想的には光学反射素子の走査には9度以上の振れ角が必要であるが、振れ角が5度以上あれば使用するには十分である。
【0151】
図9A及び図9Bより、低速側周波数fL及び高速側周波数fHはどちらも周波数の変化に対する振れ角の減少が急峻であることがわかる。
【0152】
このため、第二の駆動系(低速側)を走査する場合、低速側周波数fL=1147Hzを基準として±0.3%以内の周波数であれば5度以上の振れ角を得ることができ、低速側周波数fL=1147Hzを基準として±0.15%以内の周波数であれば9度以上の振れ角を得ることができる。一方、第一の駆動系(高速側)を走査する場合、高速側周波数fH=31062Hzを基準として+0.09%以内の周波数、又は、−0.03%以内の周波数であれば5度以上の振れ角を得ることができ、+0.03%以内の周波数、又は、−0.02%以内の周波数であれば9度以上の振れ角を得ることが出来る。
【実施例2】
【0153】
また、上記では、第一の周波数及び第二の周波数ともに共振駆動で用いたが、低速側の第二の周波数は非共振駆動を用いる場合の例を示す。これは、低速軸は非共振駆動、高速軸は共振駆動を行う2軸素子を用いることもできるし、低速軸を1軸の非共振駆動素子、高速軸を1軸の共振駆動素子を組み合わせて用いることもできる。非共振素子を正弦波で駆動すると、のこぎり歯状の波形などに含まれる高調波が含まれないため、不要な共振モードを励起せずに安定した駆動ができる。
【0154】
この場合、高速軸は共振駆動を利用するため、素子の共振周波数で駆動することで、最も効率よく駆動することが望ましい。例えば、共振周波数が30.235kHzであったとする。数1においてN=500、a=b=0、Fr=30とし、符号はプラスとすると、Pが1となる範囲(低速側周波数fLが45Hzから105Hzの範囲)においては次式を得る。
【0155】
【数63】
【0156】
式(40)から、高速側周波数fHを30.235kHzとすれば、低速側周波数fL=60.41Hzが得られる。また、温度などの環境変化によって高速軸の共振周波数が変動した場合でも、高速軸の共振周波数に合わせて、低速軸の共振周波数を設定することで、緻密な走査線を維持することができる。
【0157】
上記のように本願発明の数式を用いることにより、高い解像度を得るための周波数の組み合わせを決定するのに非常に効果的であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の光走査装置は、高精度な光束の走査を実現できる効果を有し、レーダ装置や投影型表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0159】
1…映像信号処理部、
2…光源、
3…走査装置、
9…映像信号処理回路、
10…駆動信号生成回路、
11…走査素子、
12…制御部、
13−1,13−2…駆動部、
14−1,14−2…モニタ、
15…演算部、
16−1,16−2…駆動信号生成回路。
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置や表示装置などに用いる光走査装置と、それに用いる光学反射素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザやLEDなどの光源から射出した光束を、互いに直交する二軸方向に走査する車載用レーダや投影型の表示装置が実用化されている。これらの光走査装置は、光源と、例えば図10に示すアクチュエータ及びその駆動制御装置とから構成されている。
【0003】
アクチュエータは、反射部を、互いに直交する二つの動作軸回りに回動させる反射素子と、反射部の駆動周波数を決定する駆動部とから構成されている。
【0004】
特に、リサージュ走査によって光束を走査させて軌跡を描く場合、その軌跡や、軌跡が再び元の軌跡に戻るまでの周期(以下、「リサージュ周期」という。)は各軸の駆動周波数によって決まる。レーダや投影型の表示装置では、フレームレートなどで規定される時間内に、解像度などで規定されるすべての画素の上を光束が通過するようにしなければならない。そのためには、リサージュ周期を適切な値に設定し、軌跡ができるだけ緻密になるように駆動周波数を設定する必要がある。
【0005】
図10に示す従来技術に係るアクチュエータ駆動制御装置では、光束を投影面に走査した軌跡が描くメッシュ数を予め所定の範囲に設定しておき、発振器51のクロック数、共振周波数設定手段52により求めたスキャナ53の二つの動作軸(第1可動部54、第2可動部55によって駆動される動作軸)の実際の共振周波数を駆動周波数設定手段56に入力し、最も動作効率の高い駆動周波数を演算している。なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−302104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術に係るアクチュエータ駆動制御装置では、実際の共振周波数のズレを考慮しながら所望の解像度が得られる駆動周波数を求めるものであるが、リサージュ走査の場合、解像度はフレームレートにより大きく変動する。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、リサージュ描画によって光束を走査させる光走査装置において、フレームレートを考慮しながら、光束ができるだけ緻密な軌跡を描くように駆動周波数を設定し、高い解像度が得られる光走査装置と、それに用いる光学反射素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第一の発明に係る光走査装置は、
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数1〜数4、もしくは数5〜数8から決定された関係としたことを特徴とする光走査装置;
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
前記数1〜数4において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
前記数5〜数8において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする。
【0010】
前記光走査装置において、前記走査手段は、正弦波を用いて前記光束を走査することを特徴とする。
【0011】
また、前記光走査装置において、前記走査手段は、
前記光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記光走査装置において、前記走査手段は、
第一の反射部と、前記第一の反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部とを含む第一の光学反射素子と、
第二の反射部と、前記第二の反射部を第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部とを含む第二の光学反射素子と、
前記第一及び第二の光学反射素子を制御するための制御部とを備え、
前記第一の反射部及び前記第二の反射部に、前記光束を順に反射させるとともに、前記第一の軸及び前記第二の軸を互いに略直交するように配置したことを特徴とする。
【0013】
第二の発明に係る光学反射素子は、
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記制御部は、前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数9〜数12を用いて、もしくは数13〜数16を用いて演算してそれぞれ駆動周波数として前記第一及び第二の駆動系に設定し、
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
前記数9〜数12において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
前記数13〜16において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、所望のフレームレート内に、光束ができるだけ緻密な軌跡を描くように駆動条件を簡単に算出することができるので、高解像度の投影型表示装置を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光走査装置が描く軌跡の一例を示す図である。
【図3】図1の光走査装置に用いる光学反射素子の一例を示す斜視図である。
【図4A】図1の光走査装置が描く軌跡の第1の例を示す描画図である。
【図4B】図1の光走査装置が描く軌跡の第2の例を示す描画図である。
【図5A】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図5B】本発明の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図6A】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図6B】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図7】図1の光走査装置の駆動条件を算出する計算式の導出過程を説明するための特性図である。
【図8】図1の光走査装置の駆動条件を算出した結果を説明する特性図である。
【図9A】図1の光走査装置で駆動する二軸光学反射素子の振れ角の周波数特性を説明する特性図である。
【図9B】図1の光走査装置で駆動する二軸光学反射素子の振れ角の周波数特性を説明する特性図である。
【図10】従来技術に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0017】
全体構成の説明.
図1は、本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る光走査装置は、大きくは、光源2と、走査装置3とを備えて構成される。光源2は、用途に応じて適宜選択されたR(赤)、G(緑)、B(青)などの波長の光束を射出するLD(Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)などからなる発光素子で構成されている。この発光素子の光源2には、映像信号を生成する映像信号処理回路9と、光源2のビームの強度を変調するための駆動信号生成回路10とを含む映像信号処理部1が接続されている。
【0018】
一方、走査装置3は、前述の光源2を直線や曲線、又は平面上に走査するための走査素子11と、この走査素子11の駆動を制御するための制御部12とを少なくとも備えている。走査素子11は、例えばアクチュエータなどを用いることで、上述の光源2を直接走査させてもよいし、ミラーデバイスなどの光学反射素子を用いて固定位置から射出された光束を反射させて走査してもよい。これらの走査素子11は、駆動させる軸の数に応じた駆動部13−1,13−2と、当該駆動部13−1,13−2の動作状態を検出するためのモニタ14−1,14−2を備えている。
【0019】
制御部12は、走査素子11の駆動条件を演算し、実際の駆動信号を生成するものであり、演算部15と、駆動信号生成回路16−1,16−2とを備えて構成される。演算部15は、走査素子11における駆動部13−1,13−2の共振周波数や予め取得しておいた走査素子11の特性などから走査素子11の駆動条件(周波数、振幅、位相)を演算して、その結果を駆動信号生成回路16−1,16−2に出力する。当該演算部15において、本発明のポイントである高速側周波数fHと低速側周波数fLを算出する数式(上記数1〜数16)を用いることで、できるだけ緻密な軌跡を描くように適切な駆動周波数を決定することができる。駆動信号生成回路16−1,16−2では、演算部15の結果から実際に走査素子11を駆動するための電圧や位相、周波数などの信号を生成し、駆動部13−2,13−2を動作させる。適宜、モニタ14−1,14−2からの検出された駆動信号を演算部15にフィードバックさせ、駆動条件を適宜演算することで、温度や振動などの環境変化や、共振周波数のズレによる走査素子11の駆動効率の低下を一定の範囲に抑制している。適切な駆動周波数を維持することで、緻密な軌跡を保つことができる。当該モニタ14−1,14−2からの信号は、光源2を制御する駆動信号生成回路10にも出力されており、走査素子11の実際の動作に合わせて、光源2のビームの強度も制御されている。なお、上記はモニタ14−1,14−2を走査素子11に直接設けた一例であるが、外部装置から走査素子11の動作を検出することが可能であれば、外部装置に設けてもよい。例えば、光束を直接検出するPD(Photo Diode)などの光素子やCCD(Charge Coupled Device)などの電荷結合素子を用いてもよい。
【0020】
上記のように互いに略直交する二つの軸まわりに光束を正弦波で走査することにより、本発明の実施形態に係る光走査装置の光束は、図2に示すリサージュ模様を描く。リサージュ模様は、正弦波の周波数に大きく依存し、フレームレートの時間内に描かれる光束の軌跡や粗密はさまざまに変化する。本発明の実施形態に係る光走査装置を投影型の表示装置に適用した場合、駆動条件により、所望の解像度が得られなかったり、ちらつきが大きくなったりする。本発明の実施形態は、フレームレートを考慮して、光束の軌跡ができるだけ緻密になる高解像度の光走査装置を提供することにある。
【0021】
光学反射素子の説明.
次に本発明に用いる走査素子、特に光学反射素子の一実施形態について説明する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態における光学反射素子の斜視図である。図3に示す光学反射素子は、いわゆるメアンダ(meander)形状の光学反射素子であり、中央部に光源からの光束を反射させるための反射部17と、この反射部17を第一の軸S1まわりに回動させる第一の駆動部18を含む第一の駆動系とを有し、さらに、この第一の駆動系を含む第一の枠体19を、前記第一の軸S1と略直交する第二の軸S2まわりに回動させる第二の駆動部20を含む第二の駆動系を有する。
【0023】
これら第一の駆動部18及び第二の駆動部20は、一定の長さ毎にシリコンなどからなる梁を複数回折り返した、いわゆるメアンダ形状をしている。この梁上には、上下を電極で挟んだ圧電体が形成されている。これらの電極間に一定の周波数で電圧を印加することにより、第一の駆動系は第一の軸S1まわりに回動し、第二の駆動系は第二の軸S2まわりに回動する。また、各梁上に圧電体を複数独立して設けておくことで、第一及び第二の駆動部18,20を動作させた際に生じる電荷を検出して、動作状態を検出するモニタ14−1,14−2(図1)として用いることが可能である。
【0024】
ここで梁をメアンダ形状とするのは、圧電体の変位を重畳させることで変位量(本実施例の場合は回動角度)を大きくするものであり、実質的に梁を長くする効果を得るためである。上記の第一及び第二の駆動部18,20は、走査素子11(図1)の駆動部に相当する。
【0025】
上記の光学反射素子の駆動効率を高めるためには、各駆動系の共振周波数が重要となる。すなわち、駆動周波数と第一及び第二の駆動系の共振周波数を合わせることで最大の駆動効率が得られる。
【0026】
なお、図3は一つの素子で二軸駆動可能な光学反射素子の一例であるが、一軸駆動の二つの光学反射素子を、互いの軸が直交するように配置して光束を複数回反射させても同様の効果を得ることができる。
【0027】
次に上記光学反射素子の製造方法について簡単に説明する。
【0028】
基板として、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。今回は、基部が475μm、埋め込み酸化膜が1μm、活性層が100μmの厚さの物を使用した。まず、基板上に、絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する。そしてこのシリコン酸化膜上にスパッタリング法などによって下部電極を形成する。次に、駆動源として、例えばPZTなどの圧電薄膜を下部電極上にスパッタリング法などで形成する。さらに圧電薄膜上に上部電極となるチタン/金などの金属膜を形成する。なお、本実施形態では、一例として、下部電極となる白金は厚さ0.2μm、圧電体は3.5μm、上部電極はチタンを0.01μm、金を0.3μmで積層して形成した。
【0029】
次に、下部電極、圧電体、上部電極を、フォトリソ技術によるパターンニングと、ウェットエッチやドライエッチなどによる加工を繰り返すことで所望の電極パターンや圧電体の形状を形成する。
【0030】
次に、第一及び第二の駆動部となるメアンダ形振動子を、SOI基板の活性層をフォトリソ技術によるパターニングとエッチング技術で加工することで形成する。このとき、エッチング法としてボッシュプロセスなどを用いることで、アスペクト比の高い垂直加工が可能となり、素子の小型化が実現できる。
【0031】
次に、素子表面をレジストなど後で容易に除去が可能な保護膜で保護した後、基板の裏面側から、同様にフォトリソ技術によるパターニング、エッチングによる加工をし、最後に保護膜を除去することで、本発明に用いる光学反射素子を作製することができる。
【0032】
駆動方法の説明.
次に本発明のポイントである、走査装置3における各軸の駆動周波数を決定する方法について説明する。
【0033】
本実施形態に係る光走査装置とスクリーンを用いて投影型表示装置を構成する場合を説明する。スクリーン上の光束の径が十分小さい場合、投影画像の解像度は光束の軌跡(走査線)で決定する。上述したように、光学反射素子を走査素子として用いると、走査素子の反射部は、回動軸まわりに正弦波状に振動し、リサージュ模様を描く。互いに実質的に直交する二軸を仮にx軸、y軸とすると、それぞれの軸の光束の軌跡は、x座標、y座標を時間tの関数として次式で表すことができる。
【0034】
【数17】
【0035】
ここで、fLはx軸まわりの駆動周波数(図3の光学反射素子における第二の駆動系の駆動周波数に相当)を表し、fHはy軸まわりの駆動周波数(図3の光学反射素子における第一の駆動系の駆動周波数に相当する。)を表し、A、Bは振幅を表し、φ、ψは各軸の位相ずれを表す。上記で表される軌跡がスクリーン上を描画可能な領域が解像度の限界であり、1秒間に表示する画像枚数をフレームレートFrとすると、1/Fr秒に描画可能な領域が実質的な解像度となる。
【0036】
一例を挙げると、y軸まわりの駆動周波数fHを31530Hzとし、x軸まわりの駆動周波数fLを1000Hzとしたとき、図4Aに示すような軌跡となる。これはフレームレートを30fpsとした場合の1/30秒間に、800×480画素を有する描画エリアの82%程度しか描画することができない。y軸まわりの駆動周波数fHはそのままで、x軸まわりの駆動周波数fLを1020Hzとすると図4Bに示すような軌跡となり、同じ1/30秒間に、800×480の描画エリアの98%を描画することができる。
【0037】
このように、光束の軌跡は駆動周波数fL、fHと密接な関係があり、高解像度の画像を表示するためには、これら駆動周波数fL、fHを最適な値に設定する必要がある。特に走査素子の共振周波数近傍で駆動させる場合、製造等のバラつきで共振周波数にもバラつきが生じるため、それぞれの素子で適切な駆動周波数を設定する必要がある。なお、上記の例はx軸まわりに低い周波数で、y軸まわりにx軸よりも高い周波数で駆動させているが、x軸、y軸が入れ替わったとしても本質は変わらない。
【0038】
数1〜数4の導出方法.
次に数1から数4の導出方法に関して説明する。
【0039】
数17において、初期の位相差φ、ψをともに0とすると、画像の中で、光束の軌跡が、x=0、すなわちy軸上を通る時間は、x(t)=0であるから、次式で表される。
【0040】
【数18】
【0041】
ここで、n=0,1,2,…である。nの上限はフレームレートFrで決まり、ガウス記号[ ]を用いて、次式で表される。ここで、ガウス記号[X]とは、Xを超えない最大の整数を表す関数である。
【0042】
【数19】
【0043】
すなわち、軌跡がY軸を横切る時間tnは、次式で表すことができる。
【0044】
【数20】
【0045】
ここで、n=0,1,2,…,[2fL/Fr]である、この時間におけるy軸との交点の位相θnを考えると、次式で表すことができる。
【0046】
【数21】
【0047】
このとき、θnは2πで割ったときの「余り(剰余)」だけで表す。すなわち、θn=3πの場合は、θnはπと表す。ここで、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)とすると、θnは次式で表される。
【0048】
【数22】
【0049】
上記の式(6)は、Nが偶数のときは次式で表される。
【0050】
【数23】
【0051】
Nが奇数のときは次の両式で表される。
【0052】
【数24】
【0053】
【数25】
【0054】
ここで、高い解像度を実現する、すなわちスクリーン全体を偏りなく走査させるには、この位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布することが望ましい。そのためには、位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させる必要があり、その条件を以下のケースに分けて考える。
【0055】
ケース1.
まず、Nが奇数であり、符号が+である場合を考える。このとき、式(8)及び式(9)にあるように、θ2qもθ2q+1も、qが1つ大きくなったときの増加分は、2πf/fLとなる。
【0056】
ここで、位相θnの分布のさせ方として、「2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ1周し、ある自然数Pに対してθ2P=πとなるようにする」ことを考える。位相θnはπf/fLの間隔で均等に分布させる。このときの位相θnの分布の様子を図5Aに示す。θ2P=πであるから、次に示す両関係式が成り立つ。
【0057】
【数26】
【0058】
【数27】
【0059】
「2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ1周する」ためには、nmaxは4P−1,4P,4P+1,4P+2のいずれかである。いずれの場合においても、式(3)より次式が求められる。
【0060】
【数28】
【0061】
式(10)と式(8)、及びθ2P=πから、位相θ2Pは次式となる。
【0062】
【数29】
【0063】
したがって、f=fL/2Pとなる。符号がマイナスの場合も同様であり、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)であるから、高速側周波数fHは次式で表される。
【0064】
【数30】
【0065】
また、Nが偶数の場合は式(7)よりnが1つ大きくなったときの増加分はπf/fLである。式(12)と位相θ2P=πが満たされるようにすれば、Nが偶数の場合でも、同様に、位相θnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させることができる。この場合の分布の様子は図5Bのようになる。
【0066】
ケース2.
まず、Nが奇数であり、符号がプラスである場合を考える。このとき、式(8)及び式(9)にあるように、位相θ2qも位相θ2q+1も、qが1つ大きくなったときの増加分は、2πf/fLである。
【0067】
位相θnの分布は、「2qや2q+1がnmaxになるまでの間に、θ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ3周し、ある自然数Pに対してθ2Pがθ2P=π+2fπ/3fLを満たすようにする」ことを考える。位相θnはπf/3fLの間隔で均等に分布させる。この分布の仕方を図で表すと図6Aのようになる。
【0068】
ここで、θ2P=π+2fπ/3fLであるから、θ6P−2は次式で表すことができる。
【0069】
【数31】
【0070】
同様に考えると、位相θnの分布は以下の関係式を満たす。
【0071】
【数32】
【0072】
【数33】
【0073】
2qや2q+1がnmaxになるまでの間にθ2qやθ2q+1が区間[0,2π]をほぼ3周するためには、nmaxは12P−5,12P−4,…,12P+6のいずれかである。いずれの場合においても、式(3)より以下のように表すことができる。
【0074】
【数34】
【0075】
式(14)と式(8)、及び位相の関係式θ2P=π+2fπ/3fLより、以下のように求めることができる。
【0076】
【数35】
【0077】
したがって、周波数fは次式で求められる。
【0078】
【数36】
【0079】
符号がマイナスである場合も同様であるので、式(16)と、fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求めることができる。
【0080】
【数37】
【0081】
また、Nが偶数の場合は式(7)よりnが1つ大きくなったときの変動分はfπ/fLである。式(14)と、θ2P=π+2fπ/3fLが満たされるようにすれば、Nが偶数の場合であっても、同様にθnが区間[0,2π]を均等に、かつ重複がないように分布させることができる。この場合の分布の様子は図6Bのようになる。
【0082】
上記を一般化すると以下のように拡張できる。
【0083】
【数38】
【0084】
式(18)が、ある正の整数Pに対して満たされるように設定できたとする。この場合、y軸との交点の位相は以下の式で表すことができる。
【0085】
【数39】
【0086】
【数40】
【0087】
【数41】
【0088】
これは、2a+1回転すると位相θnがほぼ元に戻ることを意味する。式(19)〜式(21)より、Pは以下のように求めることができる。
【0089】
【数42】
【0090】
式(6)と式(18)より、周波数fは以下のように求めることができる。
【0091】
【数43】
【0092】
式(22)と式(23)、及び高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)から高速側周波数fHは次式で求めることができる。
【0093】
【数44】
【0094】
ここで、a=1,2,3,…,amax、b=±1,±2,…,±aであり、aの最大値は、式(22)のPが正の整数であるという条件のもとで、式(22)においてb=aを代入することにより求めることができ、次式で表される。
【0095】
【数45】
【0096】
ここで、特別な場合として、a=b=0であってもかまわない。
【0097】
この式(25)において、a=b=0としたものが上述した「ケース1」の場合であり、a=1、b=1としたものが「ケース2」の場合になる。
【0098】
このとき、(2a+1)/((2a+1)P−b)は既約分数であることが望ましい。これは(2a+1)/((2a+1)P−b)が既約分数ではない場合には位相θnに重複が発生し、高い解像度が得られないからである。
【0099】
また、フレームレートFrの間に軌跡がy軸と交わる回数は、nmax+1である。このときのy軸との交点と、式(24)から求められる高速側周波数fH及び低速側周波数fLの組合せによる軌跡がy軸と交わる交点とが互いに異なる場合の個数は、4(2a+1)P−4bである。この4(2a+1)P−4bとnmax+1との比は0.6以上となるのが望ましい。これは、0.6より小さくなるとθnの重複が大きくなるためである。
【0100】
本発明に係る数5〜数8の導出方法.
次に、本発明に係る数5〜数8の導出方法について説明する。
【0101】
ケース3.
式(6)において、Nが偶数であり、符号がプラスの場合を考える。この場合、nが1つ大きくなったときの増加分はfπ/fLである。θnの分布のさせ方として、「nがnmaxになるまでの間にθnが区間[0,2π]をほぼ2周し、ある自然数Pに対して位相θ2Pがθ2P=π(1+f/2fL)を満たすようにする」ことを考える。位相θnはfπ/2fLの間隔で均等に分布させる。この分布の仕方を図で表すと図7のようになる。
【0102】
このとき、例えばθ2Pとθ6P−1は同じ点で交わるが、y軸との交わり方、すなわち傾きが異なるため、軌跡が十分スクリーン全体を網羅することができる。そのときの位相θnの場合の、交点での傾きは、(−1)ncosθnであるから、θ2Pの場合、次式で求めることができる。
【0103】
【数46】
【0104】
また、θ6P−1の場合、次式で求めることができる。
【0105】
【数47】
【0106】
式(26)及び式(27)より、両者は符号が反転しており、傾きが異なることが分かる。交点はすべて2以上の重複が発生するが、軌跡とy軸との交わり方が異なるため、軌跡は十分スクリーン全体を網羅し、描画することができる。Nが奇数の場合には、この傾きが同じになるため、望ましくない。
【0107】
nがnmaxになるまでの間にθnが区間[0,2π]をほぼ2周するためには、nmaxは4P−3,4P−2,4P−1,4Pのいずれかである。いずれの場合においても、式(3)から、Pは次式で求められる。
【0108】
【数48】
【0109】
ここで、式(7)と位相の関係式θ2P=π(1+f/2fL)から、周波数fは次式で求められる。
【0110】
【数49】
【0111】
また、高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求められる。
【0112】
【数50】
【0113】
上記を一般化すると、以下のように拡張できる。
【0114】
正の整数aを選び、bを−a、−a+1、…、a−1のいずれかとする。y軸との交点の位相は次式となる。
【0115】
【数51】
【0116】
上記の式(31)が、ある正の整数Pに対して満たされるように設定できたとすると、y軸との交点の位相は次式のようになる。
【0117】
【数52】
【0118】
【数53】
【0119】
【数54】
【0120】
これは、2a回転するとθnがほぼ元に戻ることを意味する。これら式(32)〜式(34)より、nmaxは4(2a)P−(4b+3),4(2a)P−(4b+2),…のいずれかであり、Pは次式となる。
【0121】
【数55】
【0122】
式(31)と式(6)より、周波数fは次式で求めることができる。
【数56】
【0123】
式(35)と式(36)、及び高速側周波数fH=NfL±f(Nは整数、0≦f<fL)より、高速側周波数fHは次式で求められる。
【0124】
【数57】
【0125】
ここで、a=1,2,3,…,amax、b=−a,−a+1,…,a−1であり、aの最大値amaxは、式(35)のPが正の整数であるという条件のもとで、式(35)においてb=a−1を代入することにより求めることができ、次式で表される。
【0126】
【数58】
【0127】
上述した「ケース3」はa=1、b=0とした場合となる。このとき、式(37)の右項、すなわち、2a/(4aP−(2b+1))は既約分数であることが望ましい。これは、既約分数ではない場合には、位相θnに重複が発生し、高解像度の走査が実現できないためである。
【0128】
また、フレームレートFrの間に軌跡がY軸と交わる回数は、nmax+1である。このときのY軸との交点と、式(37)から求められる高速側周波数fH及び低速側周波数fLの組み合わせによる軌跡がY軸と交わる交点とが互いに異なる場合の個数は、8aP−4b−2である。この8aP−4b−2とnmax+1との比は0.6以上となるのが望ましい。これは、0.6より小さくなると、位相θnの重複が大きくなるためである。また、この数5〜数8を用いて高速側周波数fH及び低速側周波数fLを求める場合は、Nは偶数を選択する。Nが奇数の場合は、軌跡とy軸との交点に対して傾きに偏りが生じることから、周辺部の解像度を劣化させるためである。
【0129】
また、ここまでは走査線が描く軌跡のみを問題にしてきたが、表示装置などで映像を表示する場合には、時間的な偏り(フレームレート毎の軌跡の遷移)もできるだけ少ないほうが望ましい。時間的な偏りは、以下のように表現できる。
【0130】
y軸との交点の位相は式(6)などで表されるが、sin(π−θ)=sinθであるから、これらは同じ交点となる。これらを同じとみなすと次の関係式となる。
【0131】
【数59】
【0132】
ただし、−1≦θn*≦1である。
【0133】
また、傾きは(−1)ncosθnで表すことができる。20個の交点の位相θ1,θ2,…,θ20に対応する位相θ1*,θ2*,…,θ20*を、以下の2つに分ける。
【0134】
(1)傾きが正である位相セット{θu(1)*,θu(2)*,…,θu(i)*};及び
(2)傾きが負である位相セット{θd(1)*,θd(2)*,…,θd(j)*}。ここで、i+j=20である。
【0135】
いま、位相セット{θu(1)*,θu(2)*,…,θu(i)*}、{θd(1)*,θd(2)*,…,θd(j)*}を昇順に並べ替え、それぞれ、位相セット{θU(1)*,θU(2)*,…,θU(i)*}(θU(1)*<θU(2)*<…<θU(i)*)、及び位相セット{θD(1)*,θD(2)*,…,θD(j)*}(θD(1)*<θD(2)*<…<θD(j)*)とする。
【0136】
それぞれの傾きの交点のうち、位相的な意味での最大間隔は次のように表すことができる。なお、max{ }は中括弧内の各値の最大値を表す関数である。
【0137】
max{θU(1)*+1,θU(2)*−θU(1)*,θU(3)*−θU(2)*,…,θU(i)*−θU(i−1)*,1−θU(i)*}
及び
max{θD(1)*+1,θD(2)*−θD(1)*,θD(3)*−θD(2)*,…,θD(j)*−θD(j−1)*,1−θD(j)*}
【0138】
これらの値がそれぞれ0.4以下になるような周波数の組み合わせを選択すると、時間的な偏りが少なく、より望ましい。
【実施例1】
【0139】
以下に光学反射素子を、上述した式を用いて設計した例を説明する。第一の駆動部の駆動周波数を30kHz以上、第二の駆動部の駆動周波数を1kHz以上になるように設計した。
【0140】
まず、フレームレートFr=30とし、仮に低速側周波数fL=1100Hzと決める。数5〜数8を用いることを考えると、式(38)よりamaxは、次式となる。
【0141】
【数60】
【0142】
ここでは、a=17、b=15と決定する。式(35)よりPは次式となる。
【0143】
【数61】
【0144】
Pが1となるのは、低速側周波数fLが1095Hzから3135Hzの間の場合である。この範囲であれば、式(37)より、高速側周波数fHは以下の式で求めることができる。
【0145】
【数62】
【0146】
例えば、N=28とし、符号をマイナスとすれば、低速側周波数fL=1147Hzのときに、高速側周波数fH=31062Hzとなる。このように、本願発明で導出した数式を用いることで、低速側周波数fL及び高速側周波数fHの設計が非常に簡単に可能となる。
【0147】
実際に、低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzになるように設計、作製した二軸光学反射素子(n=20)について、それぞれの共振周波数を図示したものが図8である。共振周波数は試作時のバラつきによって第一の駆動系(高速側)は±0.5%、第二の駆動系(低速側)は±1%程度のバラつきが発生する。また、この場合のバラつきは第一の駆動系、第二の駆動系ともにランダムでバラつくわけではなく、両者に一定の相関があらわれる。ここで、設計のターゲットである低速側周波数fL=1147Hz、高速側周波数fH=31062Hzの点、及び、設計時に用いた条件式(39)を直線で図8に示す。
【0148】
低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzでの駆動を行うためには、多くの素子で共振周波数から離れた周波数で駆動する必要があり、十分な素子特性(振れ角)が得られない可能性が高い。一方、式(39)をターゲットにすれば、n=20すべての素子が第二の駆動系の共振周波数から±4Hz程度の範囲で、第一の駆動系は共振周波数での使用が可能となる。このように素子の共振周波数に近いところで使用することが可能となり、十分な素子特性(振れ角)と高い効率で動作させることが可能となる。
【0149】
また、低速側周波数fL=1147Hz及び高速側周波数fH=31062Hzになるように設計、作製した二軸光学反射素子(n=20)について、第一の駆動系(高速側)及び第二の駆動系(低速側)の素子特性(振れ角)の周波数依存性を図示したものが図9A及び図9Bである。
【0150】
二軸光学反射素子を走査しスクリーンに画像を投影する際に、駆動系の振れ角によってスクリーンへ投影される画像の大きさが異なる。駆動系の振れ角が大きい方が光学反射素子からスクリーンまでの距離が短くても大きな画像を投影することができ、理想的には光学反射素子の走査には9度以上の振れ角が必要であるが、振れ角が5度以上あれば使用するには十分である。
【0151】
図9A及び図9Bより、低速側周波数fL及び高速側周波数fHはどちらも周波数の変化に対する振れ角の減少が急峻であることがわかる。
【0152】
このため、第二の駆動系(低速側)を走査する場合、低速側周波数fL=1147Hzを基準として±0.3%以内の周波数であれば5度以上の振れ角を得ることができ、低速側周波数fL=1147Hzを基準として±0.15%以内の周波数であれば9度以上の振れ角を得ることができる。一方、第一の駆動系(高速側)を走査する場合、高速側周波数fH=31062Hzを基準として+0.09%以内の周波数、又は、−0.03%以内の周波数であれば5度以上の振れ角を得ることができ、+0.03%以内の周波数、又は、−0.02%以内の周波数であれば9度以上の振れ角を得ることが出来る。
【実施例2】
【0153】
また、上記では、第一の周波数及び第二の周波数ともに共振駆動で用いたが、低速側の第二の周波数は非共振駆動を用いる場合の例を示す。これは、低速軸は非共振駆動、高速軸は共振駆動を行う2軸素子を用いることもできるし、低速軸を1軸の非共振駆動素子、高速軸を1軸の共振駆動素子を組み合わせて用いることもできる。非共振素子を正弦波で駆動すると、のこぎり歯状の波形などに含まれる高調波が含まれないため、不要な共振モードを励起せずに安定した駆動ができる。
【0154】
この場合、高速軸は共振駆動を利用するため、素子の共振周波数で駆動することで、最も効率よく駆動することが望ましい。例えば、共振周波数が30.235kHzであったとする。数1においてN=500、a=b=0、Fr=30とし、符号はプラスとすると、Pが1となる範囲(低速側周波数fLが45Hzから105Hzの範囲)においては次式を得る。
【0155】
【数63】
【0156】
式(40)から、高速側周波数fHを30.235kHzとすれば、低速側周波数fL=60.41Hzが得られる。また、温度などの環境変化によって高速軸の共振周波数が変動した場合でも、高速軸の共振周波数に合わせて、低速軸の共振周波数を設定することで、緻密な走査線を維持することができる。
【0157】
上記のように本願発明の数式を用いることにより、高い解像度を得るための周波数の組み合わせを決定するのに非常に効果的であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の光走査装置は、高精度な光束の走査を実現できる効果を有し、レーダ装置や投影型表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0159】
1…映像信号処理部、
2…光源、
3…走査装置、
9…映像信号処理回路、
10…駆動信号生成回路、
11…走査素子、
12…制御部、
13−1,13−2…駆動部、
14−1,14−2…モニタ、
15…演算部、
16−1,16−2…駆動信号生成回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数1〜数4、もしくは数5〜数8から決定された関係としたことを特徴とする光走査装置;
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
前記数1〜数4において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
前記数5〜数8において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項2】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数9〜数12、もしくは数13〜数16から決定され、
かつ、前記第一の周波数fHが、決定された周波数から+0.09%以内、又は、−0.03%以内の関係、
かつ、前記第二の周波数fLが、決定された周波数から±0.3%以内の関係であることを特徴とする光走査装置;
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
前記数9〜数12において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
前記数13〜数16において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項3】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記走査手段は、前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数17〜数20を用いて、もしくは数21〜数24を用いて演算し、前記演算された第一の周波数fH及び第二の周波数fLで前記光束を走査し、
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
前記数17〜数20において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
前記数21〜数24において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
前記走査手段は、正弦波を用いて前記光束を走査することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記走査手段は、
前記光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記走査手段は、
第一の反射部と、前記第一の反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部とを含む第一の光学反射素子と、
第二の反射部と、前記第二の反射部を第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部とを含む第二の光学反射素子と、
前記第一及び第二の光学反射素子を制御するための制御部とを備え、
前記第一の反射部及び前記第二の反射部に、前記光束を順に反射させるとともに、前記第一の軸及び前記第二の軸を互いに略直交するように配置したことを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項7】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数25〜数28、もしくは数29〜数32から決定された関係としたことを特徴とする光学反射素子;
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
前記数25〜数28において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
前記数29〜32において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項8】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数33〜数36、もしくは数37〜数40から決定され、かつ、前記第一の周波数fHが、決定された周波数から+0.09%以内、又は、−0.03%以内の関係、
かつ、前記第二の周波数fLが、決定された周波数から±0.3%以内の関係であることを特徴とする光学反射素子;
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
前記数33〜数36において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数37】
【数38】
【数39】
【数40】
前記数37〜40において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項9】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記制御部は、前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数41〜数44を用いて、もしくは数45〜数48を用いて演算してそれぞれ駆動周波数として前記第一及び第二の駆動系に設定し、
【数41】
【数42】
【数43】
【数44】
前記数41〜数44において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数45】
【数46】
【数47】
【数48】
前記数45〜数48において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする光学反射素子。
【請求項1】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数1〜数4、もしくは数5〜数8から決定された関係としたことを特徴とする光走査装置;
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
前記数1〜数4において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
前記数5〜数8において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項2】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数9〜数12、もしくは数13〜数16から決定され、
かつ、前記第一の周波数fHが、決定された周波数から+0.09%以内、又は、−0.03%以内の関係、
かつ、前記第二の周波数fLが、決定された周波数から±0.3%以内の関係であることを特徴とする光走査装置;
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
前記数9〜数12において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
前記数13〜数16において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項3】
光束を射出する光源と、
前記光束を第一の周波数fH及び第二の周波数fLで略直交する二軸方向に走査する走査手段とを備えた光走査装置であって、
前記走査手段は、前記第一の周波数fH及び前記第二の周波数fLを次式の数17〜数20を用いて、もしくは数21〜数24を用いて演算し、前記演算された第一の周波数fH及び第二の周波数fLで前記光束を走査し、
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
前記数17〜数20において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合として、a=b=0を含み、
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
前記数21〜数24において、aはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数であり、Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
前記走査手段は、正弦波を用いて前記光束を走査することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記走査手段は、
前記光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記走査手段は、
第一の反射部と、前記第一の反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部とを含む第一の光学反射素子と、
第二の反射部と、前記第二の反射部を第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部とを含む第二の光学反射素子と、
前記第一及び第二の光学反射素子を制御するための制御部とを備え、
前記第一の反射部及び前記第二の反射部に、前記光束を順に反射させるとともに、前記第一の軸及び前記第二の軸を互いに略直交するように配置したことを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項7】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数25〜数28、もしくは数29〜数32から決定された関係としたことを特徴とする光学反射素子;
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
前記数25〜数28において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
前記数29〜32において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項8】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数33〜数36、もしくは数37〜数40から決定され、かつ、前記第一の周波数fHが、決定された周波数から+0.09%以内、又は、−0.03%以内の関係、
かつ、前記第二の周波数fLが、決定された周波数から±0.3%以内の関係であることを特徴とする光学反射素子;
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
前記数33〜数36において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数37】
【数38】
【数39】
【数40】
前記数37〜40において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表す。
【請求項9】
光束を反射させる反射部と、前記反射部を互いに略直交する二つの軸まわりに回動させる駆動部とを含む光学反射素子と、
前記光学反射素子を制御するための制御部とを備えた光走査装置のための光学反射素子であって、
前記反射部を第一の軸まわりに回動させる第一の駆動部を含む第一の駆動系と、
前記第一の駆動系を前記第一の軸と直交する第二の軸まわりに回動させる第二の駆動部を含む第二の駆動系とを備え、
前記制御部は、前記第一の駆動系の共振周波数をfH、第二の駆動系の共振周波数をfLとしたとき、前記共振周波数fH及びfLを次式の数41〜数44を用いて、もしくは数45〜数48を用いて演算してそれぞれ駆動周波数として前記第一及び第二の駆動系に設定し、
【数41】
【数42】
【数43】
【数44】
前記数41〜数44において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、Nは正の整数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表し、特別な場合としてa=b=0を含み、
【数45】
【数46】
【数47】
【数48】
前記数45〜数48において、式中のaはamaxを最大値とする任意の整数であり、bは−a〜a−1の範囲の整数Nは正の偶数であり、Frはフレームレートであり、[ ]はガウス記号を表すことを特徴とする光学反射素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2012−256037(P2012−256037A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111737(P2012−111737)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(597065329)学校法人 龍谷大学 (120)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(597065329)学校法人 龍谷大学 (120)
【Fターム(参考)】
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