説明

光走査装置

【課題】光の走査精度を向上すると共に、光の走査範囲を広域化することが可能な光走査装置を提供すること。
【解決手段】本光走査装置は、開口部を有する筐体と、前記筐体内に揺動可能な状態で収容され、光源から出射される光を反射して走査する可動ミラーと、前記筐体の開口部を封止するとともに、前記可動ミラーに走査された走査光を筐体の外部に透過させる光透過部と、を有し、前記光透過部の前記筐体側の面は凹状の曲面であり、前記光透過部の前記走査光が透過する領域は高屈折材料により構成され、前記可動ミラーの全可動範囲において、前記可動ミラーの両端部は前記凹状の曲面の一部の領域、又は、前記凹状の曲面の一部の領域と連続する前記筐体の内側面の一部の領域と対向し、前記凹状の曲面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記凹状の曲面との距離が一定値であり、前記筐体の内側面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記筐体の内側面との距離が前記一定値以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射される光を反射して走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可動するミラー部を有し、光源から出射された光をミラー部を可動させることにより走査する光走査装置が知られている。具体的には、例えば、ミラー部及びこのミラー部を振動させる駆動部を有する光学反射素子と、この光学反射素子を内包するとともに、ミラー部の上方に開口部を有するパッケージと、このパッケージの開口部上を覆い、上側が凸となる湾曲形状の光透過部とを備え、このパッケージは、開口部の周縁からパッケージの上方へ突出する突起部を有し、光透過部は、突起部の外側に載置され、光透過部と突起部との隙間には、シール材が挿入されている光走査装置が知られている。
【0003】
この光走査装置において、光透過部の表面及び裏面は、ミラー部の中心に中心点を有する球面の一部で構成されている。つまり、ミラー部の中心から光透過部の表面及び裏面の任意の点までは等距離である。又、光透過部にはレンズの機能はなく、光透過部に入射した光は光透過部ではほとんど屈折せずに直進する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された光走査装置では、ミラー部の中心から光透過部の裏面までの距離は規定されているが、ミラー部の両端部から光透過部の裏面までの距離は規定されていない。光走査装置内が大気圧である場合、ミラー部と光透過部の裏面までの距離が狭くなると、駆動時にミラー部が空気抵抗を受けるため光の走査精度が低下する虞がある。又、光透過部に入射した光を直進される構成では、光の走査範囲を広域化することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、光の走査精度を向上すると共に、光の走査範囲を広域化することが可能な光走査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本光走査装置は、開口部を有する筐体と、前記筐体内に揺動可能な状態で収容され、光源から出射される光を反射して走査する可動ミラーと、前記筐体の開口部を封止するとともに、前記可動ミラーに走査された走査光を筐体の外部に透過させる光透過部と、を有し、前記光透過部の前記筐体側の面は凹状の曲面であり、前記光透過部の前記走査光が透過する領域は高屈折材料により構成され、前記可動ミラーの全可動範囲において、前記可動ミラーの両端部は前記凹状の曲面の一部の領域、又は、前記凹状の曲面の一部の領域と連続する前記筐体の内側面の一部の領域と対向し、前記凹状の曲面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記凹状の曲面との距離が一定値であり、前記筐体の内側面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記筐体の内側面との距離が前記一定値以上であることを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光の走査精度を向上すると共に、光の走査範囲を広域化することが可能な光走査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図2】可動ミラーが揺動する様子を例示する模式図である。
【図3】光透過部を可動ミラー側から見た状態を例示する斜視図である。
【図4】第2の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図6】第4の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図7】第5の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図8】第6の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図9】第7の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【図10】第8の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図1を参照するに、光走査装置10は、筐体11と、可動ミラー12と、光透過部13とを有する。筐体11は、例えば、平面形状が矩形状の箱状部材であり、一方の側に開口部が設けられている。筐体11の内部には可動ミラー12が収容されている。筐体11は、例えば、セラミックや金属、樹脂等により形成することができる。本実施の形態では、筐体11の横方向をX方向、縦方向をY方向、高さ方向(厚さ方向)をZ方向とする。筐体11の外形寸法は、例えば、縦(Y方向)20mm×横(X方向)20mm×高さ(Z方向)10mm程度とすることができる。
【0012】
可動ミラー12は、筐体11の内底面11a対して揺動可能な鏡であり、走査光源(図示せず)から出射される光を反射して走査する機能を有する。本実施の形態では、一例として、可動ミラー12を平面視長方形の板状部材とする。又、可動ミラー12は、例えば、初期状態において筐体11の内底面11a対して水平に保持されており、長手方向がX方向、短手方向がY方向を向いている。
【0013】
可動ミラー12は、可動ミラー12を平面視において長手方向に2分し断面視において厚さ方向に2分するXZ平面に平行な第1軸に対して揺動可能に構成されている。図1において、可動ミラー12の中心部を通る破線(3本)が第1軸である。又、可動ミラー12は、可動ミラー12を平面視において短手方向に2分し断面視において厚さ方向に2分するYZ平面に平行な第2軸(図示せず)に対して揺動可能に構成されている。第1軸と第2軸とは直交しており、第1軸と第2軸の交点が可動ミラー12の回転中心となる。図1では、可動ミラー12が第2軸(図示せず)に対して実線の位置から破線の位置に揺動している様子を示している。
【0014】
図2は、可動ミラーが揺動する様子を例示する模式図である。可動ミラー12は、駆動部(図示せず)からの駆動信号に従って、例えば図2に示すように第1軸(図示せず)及び第2軸(図示せず)に対して揺動する。駆動部(図示せず)は、例えば、静電、電磁、圧電、熱等を利用した駆動方式により実現することができる。
【0015】
図3は、光透過部を可動ミラー側から見た状態を例示する斜視図である。つまり、図3において、光透過部13は図1とは上下が反転して描かれている。図1及び図3に示すように、光透過部13は、例えば、平面形状が矩形状の部材であり、一方の側に凹部が設けられている。光透過部13は、筐体11の開口部に接着剤等により固着され筐体11の開口部を封止するとともに、可動ミラー12に走査された走査光を筐体11の外部に透過させる。光透過部13において、第1の面13aは平面、第2の面13bは凹状の曲面であり、光透過部13はレンズとして機能する。本実施の形態では、第2の面13bは球面の一部とされている。つまり、第2の面13bの曲率半径は一定である。
【0016】
光透過部13は、光走査装置10の外部に設けられた走査光源(図示せず)から出射された光を筐体11の内部に透過させ、走査光源(図示せず)から出射された光が可動ミラー12で反射して走査された走査光を筐体11の外部に透過させる材料から構成されている。光透過部13の材料としては、例えば、屈折率n=1.43〜2.14程度のガラスやプラスティック等を用いることができるが、高屈折材料を用いると好適である。本願では、屈折率n≧2の材料を高屈折材料とする。高屈折材料の一例としては、屈折率n=2.0であるセラミックレンズ等を挙げることができる。
【0017】
図1において、Aは、可動ミラー12が全可動範囲内を揺動したときに、光透過部13の第2の面13bにおいて、可動ミラー12の両端部と対向する領域を示している(以降、領域Aとする)。Bは、可動ミラー12が全可動範囲内を揺動したときに、筐体11の内側面11bにおいて、可動ミラー12の両端部と対向する領域を示している(以降、領域Bとする)。領域Aと領域Bとは連続しており、領域A及び領域Bが可動ミラー12の全可動範囲となる。なお、光透過部13の第2の面13bの領域A以外の部分は、光走査装置10で走査された走査光を外部に透過させる走査領域となり得る。
【0018】
Cは、可動ミラー12の両端部と第2の面13b又は筐体11の内側面11bとの距離を示している(以降、クリアランスCとする)。ここで、可動ミラー12の両端部とは、可動ミラー12において第1軸上にあり最も回転中心から離れている点を指すものとする。光透過部13の第2の面13bの曲率中心は可動ミラー12の回転中心(第1軸と第2軸との交点)と同一であり、光透過部13の第2の面13bの曲率半径は可動ミラー12の回転半径と領域AにおけるクリアランスCとの和とされている。つまり、領域AにおけるクリアランスCは一定値である。領域AにおけるクリアランスCは、例えば、0.5mm程度とすることができる。領域BにおけるクリアランスCは、領域AにおけるクリアランスCよりも大きい。つまり、領域A及びBにおいて、クリアランスCは一定値以上(例えば、0.5mm以上)とされている。
【0019】
光走査装置10において、光走査装置10の外部に設けられた走査光源から出射された光は、光透過部13を透過して可動ミラー12に入射する。可動ミラー12は、駆動部(図示せず)からの駆動信号に従って所定方向に揺動し、走査光源から入射した光を反射して走査する。可動ミラー12で走査された走査光は、再び光透過部13を透過して光走査装置10の外部に達する。
【0020】
この際、領域A及びBにおいて、クリアランスCを一定値以上(例えば、0.5mm以上)とすることにより、可動ミラー12が揺動した場合の空気抵抗の影響を低減することが可能となり、可動ミラー12の走査精度を安定化できる。
【0021】
又、光透過部13に高屈折材料を用いているため、可動ミラー12で反射された光は、光透過部13の第2の面13bを透過する際に外側に屈折するため、光走査範囲を広げることができる。或いは、光走査範囲を従来通りとする場合には、可動ミラー12の可動範囲を狭くすることが可能となり、可動ミラー12の駆動速度を遅くできる。そのため、駆動時に可動ミラー12が受ける応力が低減され、可動ミラー12の駆動信頼性を向上できる。なお、図1のH及びIは、可動ミラー12で走査された走査光が光透過部13を透過する際に外側に屈折し、光走査範囲が広がることを模式的に示している。
【0022】
又、光透過部13の可動ミラー12側に凹部を設けることにより(光透過部13の第2の面13bを凹状の曲面とすることにより)、光走査装置10の小型化が可能となる。
【0023】
〈第2の実施の形態〉
第1の実施の形態では、光透過部の第2の面は球面の一部とされていた。つまり、光透過部の第2の面の曲率半径は一定であった。第2の実施の形態では、光透過部の第2の面の曲率半径を一定とはせず、部分的に異なるようにする例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0024】
図4は、第2の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図4を参照するに、光走査装置20は、光透過部13が光透過部23に置換された点が光走査装置10(図1参照)と相違する。光透過部23において、第1の面23aは平面、第2の面23bは凹状の曲面であり、光透過部23はレンズとして機能する。但し、光透過部13の第2の面13bとは異なり、光透過部23の第2の面23bの曲率半径は一定ではない。具体的には、光透過部23の第2の面23bの領域Aの曲率半径は光透過部13の第2の面13bの曲率半径と同じであるが、光透過部23の第2の面23bの領域A以外の領域の曲率半径は領域Aの曲率半径よりも大きくされている。
【0025】
なお、光走査装置10の場合と同様に、光透過部23の第2の面23bの領域Aの曲率中心は可動ミラー12の回転中心と同一であり、光透過部23の第2の面23bの領域Aの曲率半径は可動ミラー12の回転半径と領域AにおけるクリアランスCとの和とされている。つまり、領域AにおけるクリアランスCは一定値である。領域AにおけるクリアランスCは、例えば、0.5mm程度とすることができる。領域BにおけるクリアランスCは、領域AにおけるクリアランスCよりも大きい。つまり、領域A及びBにおいて、クリアランスCは一定値以上(例えば、0.5mm以上)とされている。光透過部23の材料や屈折率は、光透過部13の材料や屈折率と同様とすることができる。
【0026】
光透過部23の第2の面23bの領域A以外の領域の曲率半径及び光透過部23の屈折率を調整することにより、可動ミラー12の光走査速度を一定にすることができる。なお、屈折率は、光透過部23の材料を適宜選択することにより調整できる。
【0027】
このように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、光透過部23の第2の面23bの領域A以外の領域の曲率半径及び光透過部23の屈折率を調整することにより、可動ミラー12の光走査速度を一定にすることができる。
【0028】
又、光走査装置20を、第1の実施の形態に係る光走査装置10よりも更に小型化(薄型化)できる。
【0029】
〈第3の実施の形態〉
第2の実施の形態では、光透過部の第2の面の曲率半径を一定とはせず、部分的に異なるようにする例を示した。第3の実施の形態では、第2の実施の形態では平面であった光透過部の第1の面を曲面にする例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0030】
図5は、第3の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図5を参照するに、光走査装置30は、光透過部23が光透過部33に置換された点が光走査装置20(図4参照)と相違する。光透過部33において、第1の面33aは凸状の曲面、第2の面33bは凹状の曲面であり、光透過部33はレンズとして機能する。光透過部33において、第1の面33aの曲率半径は第2の面33bの曲率半径よりも小さくされている。光透過部33の材料や屈折率は、光透過部13の材料や屈折率と同様とすることができる。
【0031】
このように、第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、光透過部33の第1の面33aを凸状の曲面とすることにより、可動ミラー12で走査された走査光は光透過部33を透過する際に第1の面33a及び第2の面33bで外側に屈折するため、光走査範囲を第2の実施の形態よりも更に広げることができる。或いは、光走査範囲を従来通りとする場合には、可動ミラー12の可動範囲を第2の実施の形態よりも更に狭くすることが可能となり、可動ミラー12の駆動速度を第2の実施の形態よりも更に遅くできる。そのため、駆動時に可動ミラー12が受ける応力が低減され、可動ミラー12の駆動信頼性を第2の実施の形態よりも更に向上できる。
【0032】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第2の実施の形態の光透過部の第1の面側に第2の光透過部を設ける例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0033】
図6は、第4の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図6を参照するに、光走査装置40は、光透過部23の第1の面23a側に第2の光透過部43を設けた点が光走査装置20(図4参照)と相違する。第2の光透過部43において、第1の面43a及び第2の面43bは何れも凸状の曲面であり、第2の光透過部43はレンズとして機能する。第2の光透過部43において、第1の面43aの曲率半径及び第2の面43bの曲率半径は、光透過部23の第2の面23bの曲率半径よりも小さくされている。第2の光透過部43の材料や屈折率は、光透過部23の材料や屈折率と同様とすることができるが、異なるように設定しても構わない。
【0034】
このように、第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、光透過部23の第1の面23a側に第2の光透過部43を設けることにより、光透過部23を透過した光は第2の光透過部43を透過する際に第1の面43a及び第2の面43bで更に外側に屈折するため、光走査範囲を第2の実施の形態よりも更に広げることができる。或いは、光走査範囲を従来通りとする場合には、可動ミラー12の可動範囲を第2の実施の形態よりも更に狭くすることが可能となり、可動ミラー12の駆動速度を第2の実施の形態よりも更に遅くできる。そのため、駆動時に可動ミラー12が受ける応力が低減され、可動ミラー12の駆動信頼性を第2の実施の形態よりも更に向上できる。
【0035】
〈第5の実施の形態〉
第3の実施の形態では、光透過部の第1の面を曲面にする例を示した。第5の実施の形態では、第3の実施の形態の光透過部の第1の面側に第2の光透過部を設ける例を示す。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0036】
図7は、第5の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図7を参照するに、光走査装置50は、光透過部33の第1の面33a側に第2の光透過部43を設けた点が光走査装置30(図5参照)と相違する。第2の光透過部43については、第4の実施の形態で説明した通りである。
【0037】
このように、第5の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、光透過部33の第1の面33a側に第2の光透過部43を設けることにより、光透過部33を透過した光は第2の光透過部43を透過する際に第1の面43a及び第2の面43bで更に外側に屈折するため、光走査範囲を第3の実施の形態よりも更に広げることができる。或いは、光走査範囲を従来通りとする場合には、可動ミラー12の可動範囲を第3の実施の形態よりも更に狭くすることが可能となり、可動ミラー12の駆動速度を第3の実施の形態よりも更に遅くできる。そのため、駆動時に可動ミラー12が受ける応力が低減され、可動ミラー12の駆動信頼性を第3の実施の形態よりも更に向上できる。
【0038】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態では、第2の実施の形態に係る光走査装置の筐体の内部に走査光源を設ける例を示す。なお、第6の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0039】
図8は、第6の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図8を参照するに、光走査装置60は、光走査装置60の内部に走査光源61を設けた点が光走査装置20(図4参照)と相違する。走査光源61としては、レーザや発光ダイオード等を用いることができる。なお、図8において、Jは走査光源61から可動ミラー12の方向に出射される光を示している。
【0040】
このように、第5の実施の形態によれば、光走査装置60の内部に走査光源61を設けても、第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0041】
〈第7の実施の形態〉
第2の実施の形態では、領域AにおけるクリアランスCが一定値であり、領域BにおけるクリアランスCが領域AにおけるクリアランスCよりも大きい例を示した。第7の実施の形態では、可動ミラーの全可動範囲においてクリアランスCを一定値とする例を示す。なお、第7の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0042】
図9は、第7の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図9を参照するに、光走査装置70は、筐体11の内側面11bの内底面11a側に部材71を設けた点が光走査装置20(図4参照)と相違する。部材71は、例えば、接着剤等により筐体11内に固着されている。部材71において、面71aは凹状の曲面である。本実施の形態では、面71aは球面の一部とされている。つまり、面71aの曲率半径は一定である。部材71は光が透過する部分ではないため、部材71は樹脂等の任意の材料から形成して構わない。又、部材71は筐体11と一体的に成形されていても構わない。
【0043】
図9において、Dは、可動ミラー12が全可動範囲内を揺動したときに、部材71の面71aにおいて、可動ミラー12の両端部と対向する領域を示している(以降、領域Dとする)。領域Aと領域Dとは連続しており、領域A及び領域Dが可動ミラー12の全可動範囲となる。
【0044】
クリアランスCは、可動ミラー12の両端部と第2の面23b又は部材71の面71aとの距離を示している。領域AにおけるクリアランスCと、領域DにおけるクリアランスCは同一とされている。光透過部23の第2の面23bの曲率中心は可動ミラー12の回転中心と同一であり、光透過部23の第2の面23bの曲率半径は可動ミラー12の回転半径と領域AにおけるクリアランスCとの和とされている。又、部材71の面71aの曲率中心は可動ミラー12の回転中心と同一であり、部材71の面71aの曲率半径は可動ミラー12の回転半径と領域DにおけるクリアランスC(=領域AにおけるクリアランスC)との和とされている。このように、光透過部23の第2の面23bと部材71の面71aとは曲率中心及び曲率半径が同一であり、領域AにおけるクリアランスCと領域DにおけるクリアランスCとは同一である。つまり、領域Aと領域Dとは同一の球面の一部であり、可動ミラー12の全可動範囲においてクリアランスCは一定値である。クリアランスCは、例えば、0.5mm程度とすることができる。
【0045】
このように、第7の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、可動ミラー12の全可動範囲においてクリアランスCを一定にすることにより、領域A及びDにおいて、可動ミラー12が揺動した場合の空気抵抗の変動を第2の実施の形態よりも更に低減することが可能となり、可動ミラー12の走査精度を第2の実施の形態よりも更に安定化できる。
【0046】
〈第8の実施の形態〉
第2の実施の形態では、光透過部を単一材料から形成した。第8の実施の形態では、光透過部を複数材料の組み合わせにより形成する例を示す。なお、第8の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0047】
図10は、第8の実施の形態に係る光走査装置を例示する断面図である。図10を参照するに、光走査装置80は、光透過部23が第1の光透過部83及び第2の光透過部84に置換された点が光走査装置20(図4参照)と相違する。光走査装置80の光透過部は、第1の光透過部83及び第2の光透過部84から構成されており、第1の光透過部83及び第2の光透過部84はレンズとして機能する。第1の光透過部83の第1の面83aと第2の光透過部84の第1の面84aは連続する1つの平面を形成している。
【0048】
又、第1の光透過部83の第2の面83bと第2の光透過部84の第2の面84bは連続する1つの凹状の曲面を形成している。第2の光透過部84の第2の面84b(=領域A)の曲率半径は、第2の実施の形態の光透過部23の第2の面23bの領域Aの曲率半径と同じである。又、第1の光透過部83の第2の面83bの曲率半径は、第2の実施の形態の光透過部23の第2の面23bの領域A以外の領域の曲率半径と同じである。
【0049】
第1の光透過部84は、光走査装置80で走査された走査光を外部に透過させる走査領域ではないため、特別な材料を用いる必要はない。第1の光透過部83の材料としては、例えば、屈折率n=1.43〜2.14程度のガラスやプラスティック等を用いることができるが、屈折率n≧2の高屈折材料を用いると好適である。つまり、第1の光透過部83の材料として屈折率n≧2の高屈折材料を用い、走査領域の外側の領域である第2の光透過部84の材料として前記高屈折材料よりも屈折率の低い材料を用いてよい。このように、曲率半径の異なる2つの部材(第1の光透過部83及び第2の光透過部84)を組み合わせて、1つの光透過部を形成することができる。
【0050】
このように、第8の実施の形態によれば、曲率半径の異なる2つの部材(第1の光透過部83及び第2の光透過部84)を組み合わせても、第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0052】
例えば、第3〜第8の実施の形態において、第2の実施の形態を変形する例を示したが、第1の実施の形態を変形してもよい。
【0053】
又、第1、第3〜第7の実施の形態に、第8の実施の形態のような変形を加えてもよい。
【0054】
又、第1、第3〜第6、及び第8の実施の形態に、第7の実施の形態のような変形を加えてもよい。
【0055】
又、第1、第3〜第5、第7、及び第8の実施の形態に、第6の実施の形態のような変形を加えてもよい。
【0056】
又、可動ミラーが1つの軸に対してのみ揺動可能に構成されている場合には、光透過部の凹部は略半球面状ではなく、略半円筒状とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10、20、30、40、50、60、70 光走査装置
11 筐体
11a 筐体の内底面
11b 筐体の内側面
12 可動ミラー
13、23、33 光透過部
13a、23a、33a 光透過部の第1の面
13b、23b、33b 光透過部の第2の面
43、84 第2の光透過部
43a、84a 第2の光透過部の第1の面
43b、84b 第2の光透過部の第2の面
61 走査光源
71 部材
71a 凹状の曲面
83 第1の光透過部
83a 第1の光透過部の第1の面
83b 第1の光透過部の第2の面
A、B、D 領域
C クリアランス
H、I 走査光
J 走査光源から出射される光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
前記筐体内に揺動可能な状態で収容され、光源から出射される光を反射して走査する可動ミラーと、
前記筐体の開口部を封止するとともに、前記可動ミラーに走査された走査光を筐体の外部に透過させる光透過部と、を有し、
前記光透過部の前記筐体側の面は凹状の曲面であり、前記光透過部の前記走査光が透過する領域は高屈折材料により構成され、
前記可動ミラーの全可動範囲において、前記可動ミラーの両端部は前記凹状の曲面の一部の領域、又は、前記凹状の曲面の一部の領域と連続する前記筐体の内側面の一部の領域と対向し、
前記凹状の曲面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記凹状の曲面との距離が一定値であり、前記筐体の内側面の一部の領域において、前記可動ミラーの両端部と前記筐体の内側面との距離が前記一定値以上である光走査装置。
【請求項2】
前記凹状の曲面において、前記一部の領域を除く領域の曲率半径は、前記一部の領域の曲率半径よりも大きい請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記筐体の内側面の一部の領域は凹状の曲面であり、前記可動ミラーの両端部と前記筐体の内側面の一部の領域の前記凹状の曲面との距離が前記一定値である請求項1又は2記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光透過部の前記走査光が透過する領域の外側の領域は前記高屈折材料よりも屈折率の低い材料により構成されている請求項1乃至3の何れか一項記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光透過部の前記筐体の外側の面は凸状の曲面である請求項1乃至4の何れか一項記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光透過部の前記筐体の外側の面側に、前記走査光が通過する両面が何れも凸状の曲面である第2の光透過部を設けた請求項1乃至5の何れか一項記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光源は、前記筐体の内部に設けられている請求項1乃至6の何れか一項記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−118392(P2012−118392A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269457(P2010−269457)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】