説明

光起動力源を備えた分析装置

分析装置が、センサ、分析回路、及び動力源を含む。動力源は、光源と、光源からの光に応答して起電力を生成するための光起電力セルとで形成された光結合器を含む。光結合器は、起電力を分析回路に供給するように構成される。動力源は、電源と、分析回路に供給される、結果として得られる起電力とを分離するように構成することができる。本発明の様々な態様は、電気化学的検出器の1又はそれ以上の構成要素のための電源を提供することに関する。分析機器に電力を供給する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に動力源を含む分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の分析システムは、一般に電流及び電圧によって作動する。システムの従属部品には、1次システム電力を給電することができるが、この電力は、構成部品ごとに所望の電圧又は電流に変換しなければならない。構成部品によっては、狭い変動範囲内の及び/又はノイズの少ない超低レベルに調整した電流又は電圧を必要とするものもあり、これを1次システム電力に基づいて生成することは困難となり得る。
【0003】
生化学及び分析化学の分野では、実験室の研究者が、電気化学反応のわずかな相違に基づいて試料を分析することがある。このため、一般に電気化学的検出器は、一定の低電力入力を必要とし、電流又は電圧のわずかな変動及び変化に対して高い感度を示す。電気化学的検出器は、バイアス電位を印加することによって動作する基準電極の組み合わせを使用することができる。この2つの電極間にバイアス電圧が印加され、電極の一方が、電気化学的検出器の出力信号を伝える。さらに、この検出器は、検出器の活性表面で発生した事象を恒久的に記録する記録装置に接続される。
【0004】
生物医学及び生化学の研究における重要な課題は、(ピコグラムレベル又はフェムトグラムレベルなどの)微量の生物活性化合物をモニタする能力である。このことは、目標化合物に対する十分な感度、生理学的に適切な濃度範囲にわたる線形性、及び他のシステム構成部品との互換性がある分析システムの必要性につながる。一般に、システムは、一定の正確な電源を必要とする。所望の電圧からわずかに変動しただけでも、大幅な性能誤差が生じることがある。
【0005】
高感度の電気機器における別の重要な懸案事項は、電源に起因するノイズの低減又は除去である。検出器電極の例では、ノイズが特に問題となり得る。検出器電極は、比較的高いインピーダンスを示し、この結果、十分なノイズ特性を維持するためにバイアス電源を特に高度に絶縁することが必要となる。対照的に、その他の研究部品は一般に高電圧で作動し、ノイズ及び電圧の変動に対する感度が比較的低い。高出力動力源によってより感度の高い構成部品にノイズが発生した場合に問題が生じる。電源からのわずかな変動、誤差、及びノイズにより、装置及びシステムの精度に大きな誤差が生じ得る。電源出力の変動が大きいと、給電を受ける装置の感度が結果的に制限される。
【0006】
電気化学的検出器に給電する1つの方法に、従来のAC電源を使用する方法がある。通常、AC電源は、システム電力を検出器用の固定バイアス電圧に変換する変圧器と組み合わせて使用される。しかしながら、AC電源は、本質的にノイズを生じ、従って高感度電気部品には適していない。
【0007】
電気化学的検出器に給電する別の方法に、従来のDC/DC電源を使用する方法がある。AC電源と同様に、通常、従来のDC/DC電源は、センサ回路内にかなりのレベルのスイッチング信号ノイズを注入する。DC/DC電源を使用して、浮遊電極に接続されたフロントエンド増幅段に給電する場合にも同様の問題が見られる。効果的な動作には、良好な絶縁及び電力とノイズの分離が必要である。従来のDC/DC電源は、電気化学的検出器などの高感度機器に給電する際に、一般にバイアス電圧に受け入れ難い誤差を与え、及び/又はシステムに過度のノイズを注入することが分かっている。
【0008】
また、特に流体環境では、従来の電源には、クロストークを伴わずに装置をいかにして接地させるかという問題がある。可燃性化合物を使用して作業を行う場合などのいくつかの例では、従来の動力源の配線及び開放接点には安全上の問題さえもある。
【0009】
システム構成部品に給電するための別の方法には、標準バッテリーなどの独立した内蔵動力源を使用する方法もある。標準的な電気化学バッテリーでは、システムにノイズが導入されるリスクが低くなる。しかしながら、バッテリーはいくつかの欠点がある。1つには、ユーザが、システムに1つの動力源しか使用しないことを好む点である。システムは、電気コンセントなどのいつでも利用可能な動力源に接続されることが好ましい。バッテリーには、放電が遅いこと及び手動交換の必要性があることなどの独自の問題点もある。通常、システムは、バッテリーが老化するにつれて生じる電気的ドリフトに対処するように設計する必要がある。また、バッテリーは場所も取り、用途によってはこれが問題になることがある。さらに、バッテリーはオン及びオフにすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第12/703,668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の内容を踏まえて、既知の電源の上記の及びその他の短所を克服する方法及び装置を有することが有益であると思われる。
【0012】
高感度機器にとって十分な範囲内の小電圧を供給できる電源を提供することが有益であると思われる。生物医学及び生化学の試験及び分析機器とともに使用できるように改善された電源を提供することが有益であると思われる。
【0013】
一定の正確な電流又は電圧を供給する電源を提供することが有益であると思われる。ノイズを最低限に抑えた電源を提供することが有益であると思われる。安定した絶縁電圧又は電流を供給するための方法及び装置を提供することが有益であると思われる。
【0014】
既存のシステムに融合し、別個の電力接続を必要としない電源を提供することが有益であると思われる。接地の問題を軽減又は排除する電源を提供することが有益であると思われる。接地していない、電気システムの異なる部分に配置できる電源を提供することが有益であると思われる。オン及びオフにすることができる電源を提供することが有益であると思われる。
【0015】
分析検出器と融合した動力源を提供することが有益であると思われる。
【0016】
本発明の装置及び方法は、これらの及びその他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
要約すれば、本発明の1つの態様は、センサと、分析回路と、動力源とを含む分析装置に関する。動力源は、電力によって作動する光源と、この光源からの光に応答して起電力を生成するための光起電力セルとを有する光結合器を含む。この光結合器は、分析回路に起電力を供給するように構成される。
【0018】
様々な実施形態では、起電力が電流である。様々な実施形態では、起電力が電圧である。様々な実施形態では、起電力が絶縁電圧である。
【0019】
様々な実施形態では、電圧が3V未満である。様々な実施形態では、電圧が約1.25V〜約2Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.5V〜約1.7Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.6Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.601V〜約1.608Vである。
【0020】
様々な実施形態では、電圧が、狭い変動範囲内で実質的に一定である。様々な実施形態では、電圧が、約±3mVの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電圧が、約±16マイクロボルトの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電圧が、約±0.7マイクロボルトの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電圧が、所望の電圧の約±0.05%の範囲内で変動する。様々な実施形態では、電圧が、所望の電圧の約±0.01%の範囲内で変動する。
【0021】
様々な実施形態では、ノイズレベルが125dB未満である。様々な実施形態では、出力電圧のノイズレベルが、約50dB未満である。様々な実施形態では、出力電圧のノイズレベルが、約100dB未満である。
【0022】
様々な実施形態では、電圧が実質的に不変であり、約±0.5マイクロクーロン/秒又はそれ以下の供給率変動を示す電流を生じる。様々な実施形態では、電圧が実質的に不変であり、約±20ピコクーロン/秒の供給率変動を示す電流を生じる。様々な実施形態では、電圧が実質的に不変であり、約±6ピコクーロン/秒の供給率変動を示す電流を生じる。
【0023】
様々な実施形態では、出力電流が約1mA未満である。様々な実施形態では、出力電流が約30マイクロアンペア未満である。様々な実施形態では、出力電流が約1.5マイクロアンペア未満である。様々な実施形態では、出力電流が、狭い変動範囲内で実質的に一定である。様々な実施形態では、電流が、約±0.5マイクロアンペアの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電流が、約±20ピコアンペアの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電流が、約±6ピコアンペアの範囲内で変動する。
【0024】
様々な実施形態では、光結合器が、光源と光起電力セルの間の絶縁境界を含む。様々な実施形態では、この絶縁境界が、光源と光起電力セルを電気的に分断するのに十分な分離距離である。この絶縁境界により、電源の出力部を、光源に電力を供給する他の機器から絶縁することができる。様々な実施形態では、絶縁境界を横切る絶縁抵抗が約10Mオームである。様々な実施形態では、絶縁境界を横切る絶縁抵抗が約10Tオームである。様々な実施形態では、絶縁境界を横切る静電容量が約10pF未満である。様々な実施形態では、絶縁境界を横切る静電容量が約1pF未満である。
【0025】
様々な実施形態では、動力源が、電力を供給するための電源と、この電源を制御するためのコントローラとをさらに含む。
【0026】
様々な実施形態では、光源と光起電力セルが、間隙、レンズ、ミラー、光ファイバ部材、及びこれらの組み合わせのうちの1つによって光学的に結合される。
【0027】
様々な実施形態では、分析回路が、光起電力セルからの起電力を調整するための調整器を含む。分析回路は、PVセルと調整器の間に予備調整器を含むことができる。様々な実施形態では、分析回路が増幅器を含む。
【0028】
様々な実施形態では、センサが、試料の電気化学分析を行うように構成される。このセンサに結合器を直接接続することができる。様々な実施形態では、センサが基準電極を含む。様々な実施形態では、センサが電気化学的検出器である。
【0029】
本発明の様々な態様は、上記の分析装置及び動力源を備えた分析機器に関する。本発明の様々な態様は、上記の分析機器を含むクロマトグラフィーシステムに関する。
【0030】
本発明の様々な態様は、試料を分析する方法に関し、この方法は、動力源から電力を供給するステップと、この電力を光信号に変換するステップと、この光信号を起電力に変換するステップと、この起電力を分析装置の電極に給電して、装置内で試料の分析検出を行うステップとを含む。様々な実施形態では、この方法が、電極と接触している試料からの電気化学応答を測定するステップを含む。
【0031】
本発明の装置及び方法は、その他の特徴及び利点も有し、これらの特徴及び利点は、本明細書に組み込まれてその一部を成す添付図面、及び以下の発明の詳細な説明から明らかになり、或いはこれらの中により詳細に開示されており、これらの図面及び説明は、ともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による、検出セルのための動力源を有する分析装置を含む例示的なクロマトグラフィーシステムのブロック図である。
【図2】図1のシステムの例示的な検出セルを拡大した概略図である。
【図3】動力源、及び基準電極に接続された分析回路を示す、図1の例示的な分析装置の一部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に例を示す本発明の様々な実施形態を詳細に参照する。様々な実施形態に関連して本発明を説明するが、これらの実施形態は、本発明をこれらの実施形態に限定するためのものではないと理解するであろう。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の思想及び範囲に含めることができる代替物、修正物、及び同等物も対象とすることを意図している。
【0034】
様々な図を通じて同じ構成部品を同じ参照番号で示す図面に注目されたい。
【0035】
図1に、生化学分析のための例示的なシステムを示す。大まかに25で示す例示的なシステムは、イオンクロマトグラフィーシステムである。このシステムの様々な態様は、米国カリフォルニア州サニーベールのDionex社によって市販されているUltiMate(登録商標)3000HPLC及びRSLCシステム、ICS−3000、及びICS−5000DCの態様と同様のものである。
【0036】
このシステムは、いくつかの構成要素の中でも特に、大まかに27で示す分析装置を含む。この例示的なシステムは、分析装置27と、注入器28と、カラム30と、ポンプ32とを含むイオンクロマトグラフィーシステムである。
【0037】
電源34は、対象の機器に1次入力電力を供給する。分析装置27は、大まかに35で示すセンサと、動力源37と、大まかに39で示す分析回路とを含む(図1)。様々な実施形態では、センサ35が検出器である。分析回路とセンサは統合ユニットであってもよく、又は分離した別個の構成要素であってもよい。
【0038】
例示的なセンサは、多電極検出セルである。検出器セルは、基準電極Er、作用電極Ew、対向電極Ec、及び補助電極Eaを含む。これらの分析装置及びセンサの様々な態様は、2010年2月10日に出願された「液体クロマトグラフィーシステムのための電気化学検出セル(ELECTROCHEMICAL DETECTION CELL FOR LIQUID CHROMATOGRAPHY SYSTEM)」という名称の米国特許出願第12/703,668号に記載されている装置と同様のものであり、この出願は全ての目的で引用により本明細書に組み入れられる。これらの装置及びセンサの部品の多くは、米国カリフォルニア州サニーベールのDionex社が商標登録しているPED検出器、ED50検出器、及びED検出器で見られる部品と同様のものである。
【0039】
図1に示すように、1次電力は、機器の外部にあるいずれかの従来の電源からもたらすことができる。様々な実施形態では、1次電力が、別の構成要素又はシステムの電源34からもたらされる。充電済みバッテリーによって1次電力を供給することもできる。この1次供給電力は、本発明の一部を成すものではない。
【0040】
電源34からの1次電力は、電流源42に供給される。さらに、この電流源は、大まかに44で示す光結合器に給電する。光結合器は、光源46及び光起電力(PV)セル48を含む。様々な実施形態では、図3に示すように、光源と光起電力セルの間に絶縁境界49が設けられる。光結合器は、図1に示すように分析回路39に接続される。
【0041】
再び図1を参照して分かるように、光結合器44は、例示的な検出セル電極に起電力を供給するように構成される。光源46は、電流源42からの電力により作動して光信号を供給する。この光信号は、PVセル48に伝送される。PVセルは、光源からの光信号に応答して起電力を生じるように構成される。
【0042】
様々な実施形態では、電流源に適当な一定のDC電圧レベルで給電して、光源46を光結合器44の一部として駆動させる。分析装置27は、電流源42を制御するためのコントローラを任意に含む。このコントローラは、必要に応じて、分析装置27を有効又は無効にする信号、又は電源の(図3に示す)絶縁部分及び検出セル35の電極に送られる電力量を変更する信号を生成することができる。
【0043】
光結合器44の様々な態様は、いずれも日本国東京の東芝社が市販しているTLP591B光結合器(GaAlAs赤外線及び光ダイオードアレイ)及びTLP190B光結合器(GaAlAs赤外線及び光ダイオードアレイ)の態様と同様のものである。光結合器の様々な態様は、米国カリフォルニア州ミルピタスのClare社が市販している4V出力太陽電池、品番CPC1824と同様のものである。いくつかの点で、光結合器を共通部品から作成することができる。起電力(emf)の供給源である(1又は複数の)半導体光起電力セルを照明するLED光源で光結合器を形成することができる。様々な実施形態では、このPVセルが標準的な光ダイオードである。光源の光信号を起電力に変換するためのあらゆる数の装置及び構成でPVセルを形成できると理解するであろう。
【0044】
様々な実施形態では、光源及びPVセルが、光結合器を通る固定された光学的かつ機械的経路が存在するように直接接触する単一の異なる部品である。光源とPVセルは、同質の金属接触を通じて結合することができる。光源とPVを良好に結合させることにより、温度変化及びその他の要因を考慮する必要性を軽減することができる。光源46とPVセル48は、結合装置50によって光学的に結合される。一般に、結合装置50は、光源からの光をPVセル上に転写し、及び/又は視準を合わせるように構成される。結合装置は、物理的間隙、レンズ、ミラー、光ファイバ装置、及び/又はその他の好適な手段とすることができる。
【0045】
光結合器44は、光を伝達し合うように互いに近くに配置された、又は光学系を通じて接続された離散光源及びPVセルを構成することができる。光源と(単複の)PVセルがいずれも共通ハウジング内に位置する様々な光結合器部品が市販されている。これらの構成部品は、制御回路を異なる基準電位に維持したままでMOSFETトランジスタとIGBTトランジスタを切り替えるための電力用電子機器でよく使用される。
【0046】
光結合器は、電流源42からの電流を光信号に変換するので、結合器内の電気ノイズが伝送される内在的リスクが大幅に抑えられる。一般に、光源46とPVセル48の間の結合は光信号に限定され、光源とPVセルは互いに電気的に絶縁される。従って、光結合器は、本質的に、複雑な遮蔽などを伴わずに良好な電気絶縁を実現する。
【0047】
光源46とPVセル48は、実際の絶縁境界49によって任意に分離される。この絶縁境界は、物理的な物体又は装置間の干渉を分断又は低減するのに十分な分離距離とすることができる。例示的な分離距離は、約1mmである。所望の誘電体強度及びその他のパラメータに応じてその他の距離を使用できると理解するであろう。光源とPVセルは機能的に絶縁されるので、機械的又は物理的な分離距離を不要とし、又は最小化できると理解するであろう。
【0048】
光結合器44は、電流源42から入力された電流に応答して起電力を出力する。光結合器からの起電力は、PVセル48を介して、給電すべき機器に接続される。様々な実施形態では、この起電力が、電気化学的検出器に印加されるバイアス電圧である。
【0049】
例示的な実施形態では、光結合器が、調整器51を介して装置の電極対に直接接続される。この調整器回路は、給電すべき機器の一部として形成してもよく、又は装置の稼動要素から分離してもよい。
【0050】
様々な実施形態では、装置27が、試料の電気化学分析を行うための機器である。様々な実施形態では、センサが基準電極を含む。様々な実施形態では、センサが電気化学的検出器である。この電気化学的検出器は、高インピーダンス検出器とすることができる。
【0051】
様々な実施形態では、分析回路が、PVセル48からの起電力がセンサ35に印加される前にこれを調整するための調整器51を含む。結果として得られる光結合器からの電圧を、任意の調整器51内でさらに調節し、調整し、及び/又はフィルタ処理することができる。この調整器は、光結合器から起電力を受け取り、これを所望の電流又は電圧特性に変換する。
【0052】
一般に、PVセル及び調整器は、2次電力供給システム又は回路を構成する。調整器からの出力電流又は出力電圧は、電源34、電流源42、及び光源46を構成する1次供給システムから十分に絶縁される。従って、センサ出力信号に大きく影響を与えることなく、この2次回路をセンサ35の高インピーダンス出力に直接接続することができる。
【0053】
センサ35は、データ取得(測定)ユニット55に接続される。この測定ユニット55を、高入力インピーダンス増幅器、信号調整器、アナログ−デジタルコンバータで構成して、センサからの測定信号を定量化することができる。
【0054】
図3は、本発明による、動力源を含むセンサ機器27の概略図である。例示的な動力源は、センサに特定の電圧を供給するための電圧調整器として構成される。本明細書の説明から、動力源を電流調整器として構成することもできると理解するであろう。適用要件に応じて、構成要素を変更及び調整することもできると理解するであろう。
【0055】
この例示的な検出機器は、検出器の基準電極Erに接続された動力源37を含む。この例示的な動力源は、絶縁境界49によって分離された2つの一般的部分に分割される。2次部分では、光結合器の光起電力セルによって1次(エミッタ)回路からの電力が受け取られる。この第2の回路では、光結合器からの出力が調整器51に供給され、これがさらに、例示的なセンサ電極に給電する。様々な実施形態では、調整器51が2つの段を含み、第1の段を要素56として大まかに示し、第2の段を要素53及び58並びにC5、R5、及びR6として示している。様々な実施形態では、調整器が単一の段しか含まない。調整器が3又はそれ以上の段を含むこともでき、又は調整器を省略することもできると理解するであろう。これらの1又はそれ以上の段をまとめて、一般に「電圧調整器」とみなすことができる。
【0056】
抵抗器R2は、光結合器44の光源46に入力される電流源42を表す。例示的な光結合器は、光源として発光ダイオード(LED)を利用する。トランジスタQ1は、電流源を制御する(例えば有効又は無効にする)ことにより回路を制御するように構成される。
【0057】
光結合器は、供給電力と分析検出回路の間に絶縁境界を設けて、機器への電圧を調整する。様々な実施形態では、光結合器が、2又はそれ以上の光源を含む。様々な実施形態では、光結合器が、2又はそれ以上のPVセルを含む。様々な実施形態では、光源とPVセルが1つの単一部品として形成され、又は単一のハウジング内に収容される。光源及びPVセルの数及び構成は、用途に応じて異なってもよい。
【0058】
様々な実施形態では、光源の光強度を制御することにより、電流源によって供給される電力が制御又は調整される。この結果、光源の強度により、結果として得られるPVセルからの電圧が制御される。従って、この光結合器は、ノイズ障害及び電圧変動などの、従来のシステムに伴う典型的な問題を生じずに供給電流の調整を可能にする。
【0059】
本明細書の説明から明らかなように、光結合器を、給電すべき機器に直接接続することもできる。或いは、光結合器により生成された起電力を修正又は調整することができる。直接接続は、中間装置及び/又は配線を使用しない直接接触を意味する。様々な実施形態では、動力源と分析回路が単一の支持体上に収容される。光結合器を回路基板上に装着し、又は集積回路に接続することができる。
【0060】
例示的な分析装置では、PVセル48により生成される2次光電圧が、任意の三点式予備調整器56内で予備調整される。予備調整器56の使用は用途に依存すると理解するであろう。この予備調整器は、最終的な低ノイズ調整器段に及ぶ電圧変動の影響を制限する。また、この予備調整器は、最大無負荷光結合器電圧に耐えることができない最後の調整器51を保護する。
【0061】
上述したように、光結合器44は、電気的に絶縁された出力電圧又は電流を供給する。しかしながら、この光結合器は、システム内に少量のノイズを導入する可能性がある。これを受けて、装置27を、下流の電気ノイズを除去する手段を有するように構成することができる。この例示的な装置は、任意の精密な低静止電流電圧基準58及び任意の装置53を含む。演算増幅器の利得は、出力において所望のバイアス電圧を供給するためのフィードバック抵抗器R5とR6の組み合わせによって定められる。様々な実施形態では、これらの基準及び増幅器が、基準電極に電圧又は電流が印加される前にノイズをフィルタ処理する機能を果たす。任意の調整器51を、光結合器からノイズを除去するように構成することもできる。当業者であれば、本明細書の説明から、装置の特定の用途に適合させるように基準及び増幅器を調整する方法を理解するであろう。
【0062】
例示的な装置は、分析検出器の基準電極Erに給電する。増幅器の下流には、単一のPt−Pd電極が接続される。本発明による動力源は、作用電極に電圧又は電流を印加することもできる。本明細書の説明から、本発明によるシステムに様々な修正を加えることができると理解するであろう。単一の動力源によって2又はそれ以上の電極に給電することもできる。装置は、各々が別個の非接地動力源によって給電を受ける複数の電極を様々な構成で含むことができる。
【0063】
上述した光結合器及び動力源は、システム内の様々な機器に電圧を供給するように構成することができる。様々な実施形態では、検出セル内のバイアス電極を駆動させる代わりに、動力源が、前置増幅器又はセンサ回路全体に電力を供給するための非接地動力源として構成される。センサ回路は、その出力信号をガルバニック絶縁させ、この出力信号をファイバリンク又はRF送信器などの光学絶縁を通じて供給することもできる。
【0064】
図3の下向き矢印は、基準接地への接続を表す。様々な実施形態では、光結合器が、共通のシステム接地の代わりに機器(センサ)の信号を基準とする。共通の接地よりもむしろ、動力源及び光結合器は非接地状態にあり、システム全体のどこに位置するかに関わらず同じ電位に維持される相対電圧を供給する。このように、動力源は「非接地状態」であり、基準電圧又は電流が必要な様々な場所で使用することができる。
【0065】
動作及び使用時には、従来の電力供給回路からの電流が、光結合器44の光源46に入力される。光結合器の光源46内で電気を光に変換することにより、供給源と機器の間の電力の転送が行われる。
【0066】
その後、この光は、起電力(emf)に変換される。このemfは、光源のための電力を供給する1次電力供給回路から機能的に(電気的に)絶縁される。このようにして、1次回路と2次回路の間の絶縁体(AC及びDC結合)を削減し、又は事実上排除することができる。従って、出力電圧又は電流を使用して電極バイアスを発生させ、又は電気化学検出セルなどの高インピーダンス源において生じた測定信号に直接接続された回路を駆動することができる。一般に、この変換原理は、変圧器を使用する既存の実施構成においてよく見られる交流(AC)の使用に依拠しない。
【0067】
光結合器からの出力を、光源に印加される電流源によって制御し、これにより光強度を制御することができる。しかしながら、光結合器によって出力される起電力は、光強度とは別のいくつかの要因に基づくこともできると理解するであろう。光結合器から出力される電流又は電圧は、以下に限定されるわけではないが、温度、導電率、追加の検出器セル端子における電圧、及びその他の要因を含むその他の特性の関数として求めることもできる。
【0068】
光結合器からの起電力を使用して、例示的なセンサ35に給電する。様々な実施形態では、この起電力が、試料内の標的検体の検出及び/又は分析にとって十分な条件下で検出器に印加される電圧である。本明細書の説明から、本発明による装置が、正確な絶縁された電圧又は電流を供給すると理解するであろう。「絶縁される」ことにより、回路に影響を与えることなく出力回路電位を入力電力(例えば光結合器の光源へのシステム供給電力)に対して変更できることが意味される。さらに、例示的な検出器電極に供給される電力は、いずれの共通の接地にも縛られない。様々な実施形態では、入力回路と出力(非接地)回路の間の電位差を最大約10Vとすることができる。様々な実施形態では、入力回路と出力(非接地)回路の間の電位差を最大約100Vとすることができる。
【0069】
電源の出力部は、光源に電力を供給する他の機器から絶縁境界49によって絶縁される。様々な実施形態では、絶縁境界49を横切る絶縁抵抗が約10Mオームである。様々な実施形態では、絶縁境界49を横切る絶縁抵抗が約10Tオームである。様々な実施形態では、絶縁境界49を横切る静電容量が約10pF未満である。様々な実施形態では、絶縁境界49を横切る静電容量が約1pF未満である。
【0070】
様々な実施形態では、電圧が3V未満である。様々な実施形態では、電圧が約1.25V〜約2Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.5V〜約1.7Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.6Vである。様々な実施形態では、電圧が約1.601V〜約1.608Vである。様々な実施形態では、電圧が、狭い変動範囲内で実質的に一定である。様々な実施形態では、電圧が、約±16mVの範囲内で変動し、好ましくは約±3マイクロボルトの範囲内で変動し、より好ましくは約±0.7マイクロボルトの範囲内で変動する。様々な実施形態では、電圧が、所望の電圧の約±0.05%の範囲内で変動し、好ましくは所望の電圧の約±0.01%の範囲内で変動する。
【0071】
様々な実施形態では、出力電圧のノイズレベルが、約50dB未満であり、好ましくは約100dB未満であり、より好ましくは約125dB未満である。
【0072】
様々な実施形態では、電圧が実質的に不変であり、約±20マイクロクーロン/秒又はそれ以下の供給率変動を示す電流を生じ、好ましくは約±6ピコクーロン/秒の供給率変動を示す電流を生じ、より好ましくは約±0.5ピコクーロン/秒の供給率変動を示す電流を生じる。
【0073】
様々な実施形態では、出力電流が、約1mA未満であり、好ましくは約30マイクロアンペア未満であり、より好ましくは1.5マイクロアンペア未満である。様々な実施形態では、出力電流が、狭い変動範囲内で実質的に一定である。様々な実施形態では、電流が、約±20マイクロアンペアの範囲内で変動し、好ましくは約±6ピコアンペアの範囲内で変動し、より好ましくは約±0.5ピコアンペアの範囲内で変動する。
【0074】
例示的なセンサは、分析動作に基づいて電気化学信号を生成する。このセンサには、センサからの出力信号を測定して記録するための測定ユニット55が接続される。
【0075】
上記の方法では、動力源が、給電すべき機器に起電力を供給すると同時に、機器の性能に悪影響を与えるリスクを軽減する。非接地動力源を有するセンサの例示的な事例では、動力源が、十分な定電力をセンサに供給すると同時に、ノイズを、測定ユニットによって測定されるセンサ出力信号を著しく劣化又は変化させるレベルよりも低く維持する。
【0076】
様々な実施形態では、光源からの光がPVセルに直接供給されるように、光結合器の光源とPVセルが直接接触する。この場合、供給電流が光結合器に供給され、この光結合器によって直接変換される。この構成は、流体環境などの、環境との相互作用を低減することが望ましい環境において有益となり得る。結果として得られる光結合器からの電圧は、任意にセンサ機器に直接供給される。動力源は、給電すべき機器と一体に形成してもよく、又は分離して電気的に接続してもよい。
【0077】
本発明のシステム及び動力源は、従来の動力源をしのぐ多くの利点をもたらすことが分かっている。光結合器を、エミッタ(1次)回路とレシーバ(2次)回路を好ましく分離して設計し、これにより入力回路と出力回路を伝導的及び容量的に非常に良好に絶縁することができる。システム電源が、機器に供給される電圧から電気的に絶縁されるので、分析回路内のノイズが著しく減少する。光結合器は、DC動力源から動作することもできる。これにより、機器の被供給(2次)回路に注入されるノイズ(AC)がさらに低減又は排除される。システム内のノイズが減少すると、より安定した持続性の高い正確な電圧及び/又は電流の供給も可能になる。
【0078】
このシステムは、非常に良好な電磁干渉(EMI)耐性も示す。このシステム設計には、測定電極及び基準電極を十分に接地させるという問題もない。
【0079】
従来の方法及び装置と比較して、本発明のシステムは、一般に共通部品から低コストで製造することができる。このシステムは、小型かつ単純でもある。また、このシステムは、大型で扱いにくいEMI遮蔽を必要としない。さらに動力源は、プリント回路板(PCB)上にわずかなスペースしか必要としない。
【0080】
電気化学分析のための分析装置に関連して本発明を説明したが、上述の内容から、本発明の装置を使用して様々な電気部品に給電を行えると理解するであろう。
【実施例】
【0081】
以下の実施例により、本発明をさらに例示する。これらの例は、本発明の範囲を定義又は限定するためのものではない。
【0082】
実施例1
上述した動力源を、ICS−5000 DCシステムのEDモジュール内のPt−Pd電極のためのバイアス電源として実装しテストした。この電源は、約1.5V〜約2.2Vであり、一般に約2Vであった。システムは、摂氏25度で動作させた。
【0083】
線形電圧調整器を使用して、PVセルの出力を、約1.6Vの安定レベルを維持するように調整した。LED電流をオン及びオフに切り替えることにより、動力源を有効/無効にした。PVセルの2次(出力)回路及び調整器を非接地状態にし、高インピーダンスEDセル出力信号を基準とした。
【0084】
光結合器からの出力電圧は、優れたノイズ性能を有することが判明した。この優れたノイズ性能は、その大部分が、光結合器の動作のDC原理及び1次回路と2次回路の良好な分離に起因すると考えられる。従って、この動力源は、一定の持続性の高い電力を最低限のノイズでセンサに供給することが判明した。
【0085】
説明及び添付の特許請求の範囲における正確な定義の便宜上、本発明の特徴を、図に示すこのような特徴の位置を参照しながら説明するために、「外部」などの相対語を使用している。
【0086】
上述した本発明の特定の実施形態の説明は、例示及び説明目的で示したものである。これらの実施形態は、全てを網羅するため、又は開示する厳密な形に本発明を限定するためのものではなく、明らかに上記の教示に照らして多くの修正及び変更が可能である。これらの実施形態は、本発明の原理及びその実施可能な応用を最も適切に説明し、これにより当業者が本発明及び様々な実施形態を、想定される特定の使用に適した様々な修正を加えて最大に利用できるようにするために選択し説明したものである。本発明の範囲は、本明細書に添付する特許請求の範囲及びその同等物によって定められることが意図されている。
【0087】
25 イオンクロマトグラフィーシステム
27 分析装置
34 電源
35 前置増幅器を含む検出セル又は活性セル(センサ)
37 動力源
39 増幅器及びデータ取得(分析回路)
42 電流源
44 光結合器
46 光源
48 光起電力(PV)セル
50 結合装置
51 調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
分析回路と、
動力源と、
を備え、前記動力源が、
電力によって作動する光源と、
前記光源からの光に応答して起電力を生成するための光起電力セルと、
を有する光結合器を含み、
前記光結合器が、前記起電力を前記分析回路に供給するように構成される、
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記起電力が電圧である、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電圧が絶縁電圧である、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電圧が3V未満である、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記電圧が実質的に不変であり、約±3mVの範囲内で変動する、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電圧信号のノイズレベルが50dB未満である、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記電圧が実質的に不変であり、約±0.5マイクロクーロンの供給率変動を示す電流を生じる、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記起電力が電流である、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記光結合器が、前記光源と前記光起電力セルとの間の絶縁境界をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記絶縁境界が、前記光源と前記光起電力セルを電気的に分断するのに十分な分離距離である、
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記動力源が、
前記電力を供給するための電源と、
前記電源を制御するためのコントローラと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記光源と前記光起電力セルが、間隙、レンズ、ミラー、光ファイバ部材、及びこれらの組み合わせのうちの1つによって光学的に結合される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記分析回路が、前記光起電力セルからの前記起電力を調整するための調整器を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記センサが、試料の電気化学分析を行うように構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記結合器が、前記センサに直接接続される、
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記センサが基準電極を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記センサが電気化学的検出器である、
ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
請求項1に記載の分析装置を備える、
ことを特徴とする分析機器。
【請求項19】
請求項1に記載の分析装置を備える、
ことを特徴とするクロマトグラフィーシステム。
【請求項20】
試料を分析する方法であって、
動力源から電力を供給するステップと、
前記電力を光信号に変換するステップと、
前記光信号を起電力に変換するステップと、
前記起電力を分析装置の電極に給電して、前記装置内で試料の分析検出を行うステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記電極と接触している試料からの電気化学応答を測定するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521468(P2013−521468A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555177(P2012−555177)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026196
【国際公開番号】WO2011/106613
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)