説明

光重合性組成物の製造方法

【課題】 気泡の混入のないプレ重合された充填剤含有光重合性組成物を、重合缶や撹拌軸への付着物の付着を抑制しつつ、短時間で製造しうる方法を提供する
【解決手段】 モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に40℃以上の温度で光照射してプレ重合を行うことにより充填剤を含む光重合性組成物を得ることを特徴とする。前記充填剤は中空体であるのが好ましい。前記モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物が実質的に溶剤を含んでおらず、且つ前記モノマー成分がアクリル系モ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を含有するプレ重合された光重合性組成物の製造方法に関し、より詳細には、せん断接着力が高く加工性に優れた感圧性接着テープ又はシートの粘着剤層(感圧性接着剤層)を形成するための粘着剤組成物等として有用な、充填剤を含有するプレ重合された光重合性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填剤を含有するプレ重合(予備重合)された光重合性組成物(シロップ)は、感圧性接着テープ又はシートの粘着剤層(感圧性接着剤層)を形成するための粘着剤組成物などとして用いられる。この光重合性組成物の製造法としては、まずモノマー成分と光重合開始剤とを含む組成物に光を照射してプレ重合し、シロップ状組成物とした後、これに充填剤を添加、混合する方法が一般的である(特許文献1参照)。しかし、この方法で問題となるのは、シロップ状組成物に充填剤を添加して混合する際、粘度が高いため泡を噛み込んでしまい、その後の脱泡が困難なことである。脱泡を行わないと、その後のシート化の際にその泡により外観不良が発生したり、その後気体を混合して機械発泡を行う場合には、混合気体量にバラツキが生じてしまうという問題が生じる。シロップ状組成物の脱泡方法としては、混合後、静置して自然脱泡する方法、脱泡機(例えば、減圧脱泡装置)により脱泡する方法が知られている。このうち自然脱泡法では高粘度であればあるほど時間がかかり、さらに完全には脱泡しきらないという問題があり、脱泡機を用いる方法では、新たに装置を導入することによるコストの増大、設置場所の問題や工数の増加という問題がある。
【0003】
一方、充填剤を含有するプレ重合された光重合性組成物(シロップ)の他の製造法として、予め充填剤をモノマー成分と光重合開始剤に混合した状態でプレ重合を行う方法が知られている(特許文献2、3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−48549号公報
【特許文献2】特開平8−120230号公報
【特許文献3】特開2003−41232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の充填剤をモノマー成分と光重合開始剤に混合した状態でプレ重合を行う方法によれば、気泡の混入のない充填剤含有光重合性組成物を得ることができる。しかし、この方法では、反応時間が長時間化したり、重合缶や撹拌翼へ付着物が強固に付着するという問題が生じることが分かった。この付着物は掃除による除去が非常に困難であり、掃除に費やす時間ロスは実用上大きな問題となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、気泡の混入のないプレ重合された充填剤含有光重合性組成物を、重合缶や撹拌軸への付着物の付着を抑制しつつ、短時間で簡易に製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に対して特定の温度以上で光照射すると、重合缶や撹拌軸への付着物を低減しつつ、短時間で効率よく、気泡の混入しない光重合性化合物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に40℃以上の温度で光照射してプレ重合を行うことにより充填剤を含む光重合性組成物を得ることを特徴とする光重合性組成物の製造方法を提供する。
【0009】
前記充填剤は中空体であるのが好ましい。前記モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物が実質的に溶剤を含んでおらず、且つ前記モノマー成分がアクリル系モノマーであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モノマーに充填剤を混合した状態で且つ特定の温度以上で光照射を行うので、気泡の混入の無い又は極めて少ないプレ重合された充填剤含有光重合性組成物を、重合缶や撹拌翼への付着物の強固な付着を抑制しつつ、短時間で簡易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
充填剤を含むプレ重合された光重合性組成物はモノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に対し40℃以上の温度で光照射してプレ重合を行うことにより得られる。
【0012】
充填剤はせん断接着力を高めたり、加工性を向上するために添加されるものであり、無機充填剤、有機充填剤の何れであってもよい。充填剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーンなどが挙げられる。有機充填剤としては、例えば、ポリエステルビーズ、ナイロンビーズ、シリコンビーズ、ウレタンビーズ、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーンなどが挙げられる。充填剤としては、中実体、中空体の何れであってもよいが、光の透過性、反射性に優れ、重合速度が速い点から、中空体(バルーン)(無機中空体又は有機中空体)の方が好ましい。充填剤の形状は特に制限されないが、球状体である場合が多い。
【0013】
充填剤は、必要に応じて表面がシランカップリング剤、フッ素コーティング剤、シリカ微粒子等で処理されていてもよい。
【0014】
充填剤の平均粒子径としては、光重合性組成物の用途等によっても異なるが、通常1〜500μm、好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm程度である。充填剤の平均粒子径が小さすぎると、せん断接着力や加工性を向上させることが困難になりやすい。また、逆に大きすぎると、照射した光が散乱したり、撹拌が困難になりやすい。充填剤の比重としては、混合時の操作性、分散性、コスト等を考慮して適宜選択できるが、例えば中空体の場合には、通常0.1〜0.8、好ましくは0.12〜0.5程度である。充填剤の使用量としては、用途等に応じて適宜選択でき、例えば、光重合性組成物から形成される層(粘着剤層等)の全体積に対して1〜50容積%、好ましくは5〜40容量%程度である。充填剤の使用量が少なすぎると、充填剤の添加効果が得られにくく、逆に多すぎると、光重合性組成物(シロップ)の流動性が低下し、ダマやブツができやすくなる。
【0015】
モノマー成分としては、光照射によって重合しうる化合物であればよく、アクリル系ポリマーを形成する単量体、ポリエステル系樹脂を形成する単量体、エポキシ樹脂を形成する単量体などの何れであってもよい。これらの中でもアクリル系ポリマーを形成する単量体(アクリル系モノマー)が好ましい。モノマー成分は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、前記アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂は、それぞれ、例えば、アクリル系感圧性接着剤(アクリル系粘着剤)のベースポリマー、ポリエステル系感圧性接着剤のベースポリマー、エポキシ系感圧性接着剤のベースポリマー等として機能する。
【0016】
アクリル系ポリマーを形成する単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(共重合性単量体)などが挙げられる。アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例として、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、例えば60重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0017】
前記共重合性単量体として、例えば、極性基含有単量体、多官能性単量体、その他の単量体が挙げられる。共重合性単量体は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等のアミノ基含有単量体、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピリジン等の含窒素複素環含有単量体等の窒素原子含有単量体などが挙げられる。これらの極性基含有単量体の中でも、カルボキシル基含有単量体又はその無水物、窒素原子含有単量体が好ましい。
【0018】
極性基含有単量体の使用量は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、例えば30重量%以下(例えば、1〜30重量%)、好ましくは3〜20重量%程度である。極性基含有単量体の使用量が30重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。また、極性基含有単量体の使用量が少なすぎるとアクリル系感圧接着剤の凝集力が低下し、高いせん断力が得られなくなる。
【0019】
前記多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジブチル(メタ)アクリレート、ヘキシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
多官能性単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、例えば2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性単量体の使用量がアクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えばアクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。また、多官能性単量体の使用量が少なすぎると、例えば、アクリル系感圧接着剤の凝集力が低下する。
【0021】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0023】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0024】
光重合開始剤の使用量としては、多くなりすぎると低分子量の共重合体が生成しやすくなり、少なすぎると重合反応が進行しにくくなるため、例えば、感圧性接着剤組成物中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0025】
光照射に付される組成物中には、前記モノマー成分、光重合開始剤及び充填剤のほか、必要に応じて、他の成分が添加されていてもよい。該他の成分としては、例えば、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体、あるいは液状のもの)、可塑剤、老化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などが挙げられる。光照射に付される組成物は、テープ化した時に溶剤が残存すると、特性の低下や臭気の問題が生じやすくなるため、実質的に溶剤を含んでいないのが好ましい。
【0026】
本発明の重要な特徴は、このようなモノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に光を照射してプレ重合を行う際の温度を40℃以上とする点にある。光照射時の温度が40℃未満の場合には、反応時間が長時間化し、重合缶や撹拌軸に強固な付着物が付くという問題が生じる。反応時間の長時間化は充填剤によって光が遮断されるためと考えられる。また、付着物は、重合で増粘する過程において重合缶の壁や撹拌軸の周辺で流れが滞留し、その部分で重合が進行して強固な付着物が生じるものと考えられる。この増粘時の滞留は充填剤が存在しない場合にはあまり起こらないが、充填剤が存在すると全体の粘度が上昇して滞留も起こりやすくなる。さらに充填剤の遮蔽によって光照射が長時間化するため、付着物の成長が起こりやすくなるという悪循環となる。本発明によれば、光照射時の温度を40℃以上とするため、重合反応が加速され、反応時間を短縮できると共に、系の粘度が低下するため、滞留が抑制され、付着物の生成を防止できる。
【0027】
光照射時の温度は40℃以上であるが、好ましくは45℃以上である。該温度の上限は特に限定されないが、あまりに高温すぎるとモノマーの揮発、蒸発が激しくなるため、光照射時の温度は150℃以下、特に120℃以下に設定することが実用上好ましいといえる。
【0028】
光照射に用いるランプとしては特に限定されず、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプや、ブラックライト、補虫用蛍光ランプなどの低圧放電ランプが用いられる。光照射に付す組成物の液面での照度は、特に限定されないが、通常0.1〜300mW/cm2、好ましくは1〜50mW/cm2程度である。
【0029】
プレ重合の程度は、得られる光重合性組成物(シロップ)の用途や取扱性等を考慮して適宜設定できる。例えば、該光重合性組成物の粘度としては、5〜50Pa・s、特に10〜30Pa・s程度が好ましく、重合率としては、1〜50%、特に5〜40%程度が好ましい。
【0030】
本発明の方法で得られる光重合性組成物は、例えば、感圧性接着テープ又はシートを構成する感圧性接着剤層を形成する材料として有用である。このような感圧性接着テープ又はシートは、せん断接着力が高く、加工性に優れるという特徴を有する。
【0031】
感圧性接着テープ又はシートは、例えば、基材の少なくとも一方の面に、前記光重合性組成物を塗布した後、光を照射し該光重合性組成物を硬化させて感圧性接着剤層を形成することにより製造できる。また、剥離紙上に同様にして感圧性接着剤層を形成することにより、基材レスの両面接着テープ又はシートを製造することができる。なお、感圧性接着テープ又はシートの凹凸面に対する追従性を向上させるため、光重合性組成物を塗布する際、該光重合性組成物に窒素等の気体を導入して機械発泡させておいてもよい。
【0032】
前記基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不職布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体やこれらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
なお、基材としては、光(活性エネルギー光線)の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0034】
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0035】
基材の表面は、感圧性接着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0036】
光重合性組成物を硬化させて感圧性接着剤層を形成する際の光照射に用いるランプとしては特に限定されず、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプなどの高圧放電ランプや、ブラックライト、補虫用蛍光ランプなどの低圧放電ランプが用いられる。
【0037】
感圧性接着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば10〜4000μm、好ましくは40〜2000μm程度である。感圧接着剤層の表面には、接着面の保護のためセパレータ(剥離ライナー)が積層されていてもよい。
【0038】
感圧性接着テープ又はシートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、重合率は、得られた充填剤入りシロップを130℃で3時間乾燥し、乾燥前後の重量測定から、下記式により算出した。
重合率(%)=(乾燥後重量−充填剤重量)/(乾燥前重量−充填剤重量)×100
但し、充填剤重量=乾燥前重量×(充填剤配合部数/全配合部数)
【0040】
実施例1
ステンレス製10L容器に2−エチルヘキシルアクリレート4950g、アクリル酸550g、光開始剤[商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製]5.5g、及び充填剤[ガラスバルーン、商品名「セルスターZ−27」、東海工業製、比重0.27]550gを入れ、混合しながら約1時間窒素置換を行った。ウォーターバスで液温を50℃にし、その後、紫外線照射を行った[紫外線照射装置:商品名「SPOT CURE SP−7」、ウシオ電機製、液面照度3mW/cm2]。30分後に照射を停止し、約30℃まで冷却後、充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップの比重を測定すると0.74であり、気泡の混入は認められなかった。このシロップの粘度は18Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は12%であり、所望の値であった。シロップ抜き取り後の10L容器と撹拌羽根に残った付着物は9gであった。得られたシロップをロールコータにて0.8mm厚に塗工した(2つの支持体間にシロップ層を設けた)。上下の支持体は非粘着性処理を施した50μm厚PET(ポリエチレンテレフタレート)を使用した。塗工されたシロップは最大照度約4mW/cm2のブラックライトにより4分間UV(紫外線)照射して硬化させて、シートを作製した。
【0041】
実施例2
液温を100℃にしたこと以外は実施例1と同様にして紫外線照射を行った。紫外線照射開始から15分後に照射を停止し、約30℃まで冷却後、充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップの比重を測定すると0.74であり、気泡の混入は認められなかった。このシロップの粘度は15Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は35%であり、所望の値であった。シロップ抜き取り後の10L容器と撹拌羽根に残った付着物は3gであった。得られたシロップを用い実施例1と同様にしてシートを作製した。
【0042】
比較例1
液温を25℃にしたこと以外は実施例1と同様にして紫外線照射を行った。紫外線照射開始から90分後に照射を停止し、得られた充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップの比重を測定すると0.74であり、気泡の混入は認められなかった。このシロップの粘度は20Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は5%であり、所望の値であった。シロップ抜き取り後の10L容器と撹拌羽根に残った付着物は45gであり、掃除に多大な労力を要した。得られたシロップを用い実施例1と同様にしてシートを作製した。
【0043】
比較例2
紫外線照射に付す組成物にガラスバルーンを添加しなかったこと以外は比較例1と同様にして紫外線照射を行った。紫外線照射開始から10分後に照射を停止し、得られた充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップにガラスバルーンを550g投入し、ディスパーで15分混合した。得られたシロップの比重を測定すると0.58であり、気泡の混入が認められた。このシロップの粘度は20Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は7%であり、所望の値であった。得られたシロップを用い実施例1と同様にしてシートを作製した。
【0044】
比較例3
紫外線照射に付す組成物にガラスバルーンを添加しなかったこと以外は比較例1と同様にして紫外線照射を行った。紫外線照射開始から10分後に照射を停止し、得られた充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップにガラスバルーンを550g投入し、ディスパーで15分混合した。これを15時間放置し静置脱泡した。得られたシロップの比重を測定すると0.70であり、僅かに気泡の混入が認められた。このシロップの粘度は20Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は7%であり、所望の値であった。得られたシロップを用い実施例1と同様にしてシートを作製した。
【0045】
比較例4
紫外線照射に付す組成物にガラスバルーンを添加しなかったこと以外は比較例1と同様にして紫外線照射を行った。紫外線照射開始から10分後に照射を停止し、得られた充填剤入りシロップを抜き取った。得られたシロップにガラスバルーンを550g投入し、ディスパーで15分混合した。これを真空ポンプを用いて約10分間真空脱泡した。得られたシロップの比重を測定すると0.74であり、気泡の混入は認められなかった。このシロップの粘度は20Pa・s(B型粘度計、30℃)、重合率は7%であり、所望の値であった。得られたシロップを用い実施例1と同様にしてシートを作製した。
【0046】
評価試験
(1)比重の測定
得られたシロップを100mLカップにとり、その重量を測定する。この値を、100mLカップにとった水の重量で割って比重を算出した。
(2)シート外観
得られたシートの外観を目視判断し、下記の基準で評価した。
○:気泡による欠陥(穴)は見られず良好である。
△:気泡による欠陥(穴)が僅かに存在している。
×:気泡による欠陥(穴)が多く存在している。
以上の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物に40℃以上の温度で光照射してプレ重合を行うことにより充填剤を含む光重合性組成物を得ることを特徴とする光重合性組成物の製造方法。
【請求項2】
充填剤が中空体である請求項1記載の光重合性組成物の製造方法。
【請求項3】
モノマー成分と光重合開始剤と充填剤とを含む組成物が実質的に溶剤を含んでおらず、且つ前記モノマー成分がアクリル系モノマーである請求項1記載の光重合性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−348129(P2006−348129A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174763(P2005−174763)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】