説明

光重合開始剤、重合性組成物、および重合物の製造方法。

【課題】少ない添加量かつ少ない光照射エネルギーで硬化し、硬化後の着色や光重合開始剤の滲み出しや揮発を抑制可能な新規光重合開始剤の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される光重合開始剤。一般式(1)


(式中、R1〜R8は、置換基を表す。但し、R1〜R8のうち一つは、特定のアシルオキシ基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤として好適に使用することが出来るチオキサントン誘導体、並びにそれを含む重合性組成物、および該重合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明の光重合開始剤を使用することで重合性組成物を短時間且つ確実に重合させて良好な物性を有する重合物を得ることが可能な材料と方法に関し、さらには、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インキ、インクジェットインキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチングレジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイス等の分野において良好な物性を持った重合物を得るための新規な光重合開始剤、重合性組成物、および該重合性組成物を使用した重合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV光の照射によって、アクリレート等を含む重合性組成物を硬化させるために光重合開始剤が使用されており、更に短時間に、かつ高硬度な皮膜を得るために増感剤が使用されている。これら光重合開始剤、増感剤は広い分野で用いられており、市販の光重合開始剤、増感剤については、フォトポリマー懇話会編、「感光材料リストブック」、55〜72頁、1996年(ぶんしん出版)、「最新UV硬化実用便覧」、1〜50頁、2005年(技術情報協会)等にまとめられている。
【0003】
従来技術の光重合開始剤としてチオキサントン誘導体が広く知られている。また、チオキサントン誘導体は他の光重合開始剤と併用することで硬化性において相乗効果が見られるため、増感剤と呼ばれることもある。チオキサントン誘導体の中でも、特に2−クロロチオキサントン、2−(または4−)イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を使用することで高い硬化性を示す重合性組成物が得られるため、これらのチオキサントン誘導体は様々な分野における重合性組成物中に用いられている。これらのチオキサントン誘導体に対して更なる硬化性を向上させるため、新規なチオキサントン誘導体が提案された(特許文献1〜3)。
【0004】
更に重合性組成物との相溶性を改善するため、光重合開始剤自身にモノマーとしての機能を付与したモノマー型のチオキサントン誘導体も提案された(特許文献4)。しかしながら、特許文献4記載のチオキサントン誘導体は、その構造中に有するウレタン結合のためか光重合開始剤としての能力は低く、重合性組成物中に含有される割合が非常に高くなっている。
【0005】
また、従来技術の光重合開始剤を用いた重合性組成物においては、硬化後の重合性組成物から光重合開始剤、その他組成物の滲み出し(ブリード)や揮発が起こってしまうために近年大きな問題とされている。光照射後に硬化した重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発の問題は、塗工物だけでなく、塗工現場の環境をも損ねてしまい、さらには塗工物の性能劣化までもきたしてしまうため、改善が必要とされている。そこで、重合性組成物硬化後の光重合開始剤の滲み出しや揮発の改善を図った光重合開始剤も提案された(特許文献5〜9)。
【0006】
これらの光重合開始剤を使用した重合性組成物においては、硬化後の重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発が従来公知の光重合開始剤に比べると抑制出来るが、光重合開始剤の滲み出しや揮発の面以外においても様々な問題が起こっている。その中でも特に、重合性組成物の硬化性不足の問題や重合性組成物硬化後の光重合開始剤由来による黄変などの着色の問題が挙げられる。重合性組成物の硬化性不足の問題は、重合性組成物を短時間に、かつ高硬度な皮膜を得ることが困難となってしまうし、光重合開始剤の添加量を増加することである程度の改善は可能であるが、重合性組成物の所望の物性が得られにくくなってしまうことも多いため、更なる硬化性の向上が望まれている。また、重合性組成物硬化後の光重合開始剤由来による着色の問題は、重合性組成物の色調を損なってしまうために好ましくなく、さらには、その使用され得る用途を限定してしまうこともあるため、出来得る限り着色の抑制が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−32602号公報
【特許文献2】特開昭59−208541号公報
【特許文献3】特開昭61−34057号公報
【特許文献4】特開平4−26687号公報
【特許文献5】特開平8−151404号公報
【特許文献6】国際公開第97/49664パンフレット
【特許文献7】特開2004−224993号公報
【特許文献8】特表2005−512973号公報
【特許文献9】特開2006−28514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これら従来公知の光重合開始剤を含む重合性組成物は、各種用途において使用され得る。しかし、コストダウンや生産性向上の観点から、少ない添加量かつ少ない光照射エネルギーで硬化し得る材料、すなわち高感度な材料が求められている。一方、これらの重合性組成物は、硬化後に重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発の発生が、塗工物や塗工現場の環境を損ねたり、塗工物の性能劣化を起こしたりしてしまうため、改善が求められている。また、重合性組成物硬化後の黄変などの着色が問題となるため可能な限り着色を抑える必要がある。上記重合性組成物では硬化性や、重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発、重合性組成物硬化後に起こる着色に関して、全ての要求を満足することは困難である。従って、本発明の目的は、これらの要求を全て満足させるための新規な光重合開始剤および当該光重合開始剤を使用した重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の諸問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される光重合開始剤。
【0010】
一般式(1)
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、または置換もしくは未置換のアシル基、下記一般式(2)、下記一般式(3)、または下記一般式(4)を表す。但し、R1〜R8のうち一つは、下記一般式(2)、下記一般式(3)、および下記一般式(4)から選ばれる置換基である。)
【0012】
一般式(2)
【化2】

一般式(3)
【0013】
【化3】

一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、A1は、2価の連結基を表す。
2は、3価の連結基を表す。
3は、4価の連結基を表す。
9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。
また、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が隣り合う置換基同士で環を形成してもよい。)
【0016】
更に本発明は、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が、それぞれ独立に、水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である上記光重合開始剤に関する。
【0017】
更に本発明は、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が、水素原子である上記光重合開始剤に関する。
【0018】
更に本発明は、上記光重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含有してなる重合性組成物に関する。
【0019】
更に本発明は、上記重合性組成物を光照射することにより重合させる、重合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光重合開始剤は、チオキサントンに対してラジカル重合性官能基を有するカルボニルオキシ基を一つ導入した特異的な構造を有することにより、従来公知のチオキサントン誘導体と比較すると、光重合開始剤により発生したラジカルによる重合反応、架橋反応などをより短時間に確実に重合性組成物を硬化させることが可能となり、硬化後の重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発、重合性組成物硬化後に起こる着色を抑制することが可能となり、結果としてこれらの反応を応用した各種用途の大幅な高感度化や特性の向上を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、詳細にわたって本発明の実施形態を説明する。
【0022】
まず、本発明の光重合開始剤(A)について説明する。本発明の光重合開始剤は一般式(1)で表記される構造を有しており、この構造を有することにより、本発明の化合物は光照射に対して高感度な材料として機能する。
【0023】
一般式(1)
【化5】




(式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、または置換もしくは未置換のアシル基、下記一般式(2)、下記一般式(3)、または下記一般式(4)を表す。但し、R1〜R8のうち一つは、下記一般式(2)、下記一般式(3)、および下記一般式(4)から選ばれる置換基である。)
【0024】
一般式(2)
【化6】

【0025】
一般式(3)
【化7】

【0026】
一般式(4)
【化8】

【0027】
(式中、A1は、2価の連結基を表す。
2は、3価の連結基を表す。
3は、4価の連結基を表す。
9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。
また、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が隣り合う置換基同士で環を形成してもよい。)
【0028】
本発明の光重合開始剤(A)は、その特性を阻害しない範囲において、一般式(1)に示したように、各種の置換基を導入することが可能である。置換基の導入により、本発明の光重合開始剤(A)は吸収極大波長や透過率等のエネルギー線の吸収特性、併用する樹脂や溶剤に対する溶解度を適当に調整して用いることができる。
【0029】
一般式(1)におけるR1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアシル基、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)であるが、R1〜R8のうち一つは、下記一般式(2)、下記一般式(3)、および下記一般式(4)から選ばれる置換基である。
【0030】
ここで、R1〜R8における置換もしくは未置換のアルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基、または炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられる。炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数2〜18であり場合により−O−の1個以上により中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基の具体例としては、−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1〜8の整数である)、−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1〜5の整数である)、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−CH2−CH−(OCH32等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
炭素数2〜18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化9】

【0033】
1〜R8における置換もしくは未置換のアルコキシル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基、または炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられる。炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基の具体例としては、−O−CH2−O−CH3、−O−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1〜8の整数である)、−O−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1〜5の整数である)、−O−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−O−CH2−CH−(OCH32等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
炭素数2から18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化10】

【0036】
1〜R8における置換もしくは未置換のアリール基としては、炭素数6〜24の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、9−アンスリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フルオレニル基、9−フルオレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基、p−クメニル基、p−ドデシルフェニル基、p−シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−カルボキシフェニル基、o−メルカプトフェニル基、p−シアノフェニル基、m−ニトロフェニル基、m−アジドフェニル基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
1〜R8における置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基と酸素原子が上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR1〜R8で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0038】
1〜R8における置換もしくは未置換の複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素原子数4〜24の芳香族あるいは脂肪族の複素環基が挙げられ、2−チエニル基、2−ベンゾチエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、3−チアントレニル基、2−チアンスレニル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、2−アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、3−フェニキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−クマリニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
1〜R8における置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環状の複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、複素環基と酸素原子が上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR1〜R8で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0040】
1〜R8における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
1〜R8における置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられ、具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、トリフルオロメチルオキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等が挙げられる。また、アリール基と−OCO−結合は上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR1〜R8で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0042】
1〜R8における置換もしくは未置換のアシル基としては、水素原子または炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニル基、炭素数6〜18の単環状あるいは縮合多環状アリール基が結合したカルボニル基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環状の複素環基が結合したカルボニル基が挙げられ、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、シンナモイル基ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、9−アンスリルカルボニル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基とカルボニル基、複素環基とカルボニル基は、それぞれ上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR1〜R8で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0043】
一般式(2)におけるA1は、2価の連結基を表す。
【0044】
1における2価の連結基としては、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のアルケニレン基であるか、あるいはこれら置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換の2価の複素環基、もしくは未置換のアルケニレン基と、−O−、−S−、−CO−とを組み合わせてなる2価の連結基を表す。
【0045】
1における置換もしくは未置換のアルキレン基としては、一般式(1)のR1で説明した置換もしくは未置換のアルキル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
1における置換もしくは未置換のアリーレン基としては、一般式(1)のR1で説明した置換もしくは未置換のアリール基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
1における置換もしくは未置換のアルケニレン基としては、一般式(1)のR1で説明した置換もしくは未置換のアルケニル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
一般式(2)におけるR9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。
【0049】
1における2価の連結基のうち、複数の基の組み合わせからなる場合の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
一般式(3)におけるA2は、3価の連結基を表す。
【0054】
2における3価の連結基としては、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、あるいはこれら置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基と、−O−、−S−、−CO−の組み合わせからなる3価の連結基を表す。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、単環状、縮合多環状でもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0055】
一般式(3)におけるR9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。
【0056】
3価の連結基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化14】

【0058】
【化15】

【0059】
一般式(4)におけるA3は、4価の連結基を表す。
【0060】
3における4価の連結基としては、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、あるいはこれら置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基と、−O−、−S−、−CO−の組み合わせからなる3価の連結基を表す。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、単環状、縮合多環状でもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0061】
一般式(4)におけるR9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である。
【0062】
4価の連結基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
ここで、R1〜R8のうちR2が、一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)である時、最も高い硬化性を示し、かつ、着色を抑えることが可能な光重合開始剤を得ることが出来る。
【0066】
また、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基は、隣り合う置換基同士で環を形成してもよい。
【0067】
1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が、隣り合う置換基同士で環を形成する場合、形成される部位としては、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは未置換のオキサアルキレン基、置換もしくは未置換のチアアルキレン基、または置換もしくは未置換のアザアルキレン基が挙げられる。
【0068】
ここで、置換もしくは未置換のアルキレン基が炭素原子数2〜6のアルキレン基である場合に形成される環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等を形成することを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
置換もしくは未置換のオキサアルキレン基が炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、置換もしくは未置換のチアアルキレン基が炭素原子数2〜6のチアアルキレン基、または置換もしくは未置換のアザアルキレン基が炭素原子数2〜6のアザアルキレン基である場合に形成される環としては、モルホリン環、チオモルホリン環、チアゾリジン環、ピペラジン環、ホモピペラジン環、プロピレンイミン環、ピロリジン環、ピペリジン環、またはピペコリン環等を形成することを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
上述したR1〜R8は、さらに他の置換基で置換されていてもよく、そのような他の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、スルホニルクロライド基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、アルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0071】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0072】
アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基、または炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられる。炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、炭素数2〜18であり場合により−O−の1個以上により中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基の具体例としては、−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1〜8の整数である)、−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1〜5の整数である)、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−CH2−CH−(OCH32等が挙げられる。
【0073】
炭素数2〜18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、以下のようなものを挙げられる。
【0074】
【化18】

【0075】
アリール基としては、炭素数6〜18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、9−フルオレニル基等が挙げられる。
【0076】
複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環複素環基が挙げられ、具体例としては、2−フラニル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基等が挙げられる。
【0077】
アシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニル基、あるいは、炭素数6から18の単環状あるいは縮合多環状アリール基が結合したカルボニル基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状あるいは縮合多環状複素環基が結合したカルボニル基が挙げられ、それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基等が挙げられる。
【0078】
アルコキシル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基、または炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられる。炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数2〜18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基の具体例としては、−O−CH2−O−CH3、−O−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1〜8の整数である)、−O−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1〜5の整数である)、−O−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−O−CH2−CH−(OCH32等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
炭素数2から18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、以下のようなものを挙げられる。
【0080】
【化19】

【0081】
アリールオキシ基としては、炭素数6〜18の単環状または縮合多環状アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
【0082】
複素環オキシ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられる。
【0083】
アシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、炭素数6から18の単環状または縮合多環状アリール基が結合したカルボニルオキシ基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環基が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基等が挙げられる。
【0084】
アルキルチオ基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
【0085】
アリールチオ基としては、炭素数6〜18の単環状または縮合多環状アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基等が挙げられる。
【0086】
複素環チオ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環チオ基が挙げられ、具体例としては、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等が挙げられる。
【0087】
アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、sec−ペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1−アダマンタミノ基、2−アダマンタミノ基等が挙げられる。
【0088】
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。
【0089】
アリールアミノ基としては、アニリノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、2−ビフェニルアミノ基、3−ビフェニルアミノ基、4−ビフェニルアミノ基、1−フルオレンアミノ基、2−フルオレンアミノ基、2−チアゾールアミノ基、p−ターフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0090】
ジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基、N−フェニル−2−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0091】
アルキルアリールアミノ基としては、N−メチルアニリノ基、N−メチル−2−ピリジノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基、N−イソプロピル、N−ペンチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−メチル−1−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0092】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、エチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリオクチルシリル基等が挙げられる。
【0093】
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチリシリル基、メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等が挙げられる。
【0094】
以上述べた光重合開始剤として、特に好ましい具体例を以下に示すが、本発明の光重合開始剤の構造はそれらに限定されるものではない。
【0095】
【化20】

【0096】
【化21】

【0097】
【化22】

【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
【化27】

【0103】
【化28】

【0104】
【化29】

【0105】
【化30】

【0106】
本発明の光重合開始剤を得るための合成方法は特に限定されず、従来公知の化学反応、後処理方法、精製方法および分析方法を適宜、組み合わせることにより、容易に合成して構造確認することが可能である。チオキサントン誘導体の合成方法は、特開昭56−125383号公報、特開昭58−79991号公報、特開平7−10829号公報、欧州特許第81280号明細書、または西ドイツ国特許第2504642号明細書等に記載の方法等が挙げられ、これらに記載の合成に使用されている原料を適宜、置き換えることにより、本発明の光重合開始剤を合成することが可能である。
【0107】
本発明の光重合開始剤は、チオキサントンに対してラジカル重合性官能基を有するカルボニルオキシ基を一つ導入した特異的な構造を有することにより、従来公知のチオキサントン誘導体と比較すると、光重合開始剤により発生したラジカルによる重合反応、架橋反応等をより短時間に確実に重合性組成物を硬化させることが可能となり、硬化後の重合性組成物から起こる光重合開始剤の滲み出しや揮発、重合性組成物硬化後に起こる着色を抑制することが可能となり、結果としてこれらの反応を応用した各種用途の大幅な高感度化や特性の向上を実現することが可能となる。以下に本発明の光重合開始剤の利用方法について記述する。
【0108】
本発明の光重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含む組成物はエネルギー線、特に250nmから450nmの波長領域の光の照射により、迅速かつ確実に硬化し、良好な特性を有する硬化物を得ることが可能な重合性組成物として使用することができる。
【0109】
本発明の重合性組成物に用いるラジカル重合性化合物(B)について説明する。本発明におけるラジカル重合性化合物(B)とは、分子中にラジカル重合可能な骨格を少なくとも一つ以上を有する化合物を意味する。また、これらは、いずれも常温、常圧で液体ないし固体のモノマー、オリゴマーないしポリマーの化学形態を持つものである。
【0110】
このようなラジカル重合性化合物(B)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩、エステル、酸アミドや酸無水物が挙げられ、さらには、ウレタンアクリレート、アクリロニトリル、スチレン誘導体、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等があげられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に、本発明におけるラジカル重合性化合物(B)の具体例を挙げる。
【0111】
アクリレート類の例:
単官能アルキルアクリレート類の例:
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート。
【0112】
単官能含ヒドロキシアクリレート類の例:
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート。
【0113】
単官能含ハロゲンアクリレート類の例:
2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,6−ジブロモ−4−ブチルフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノール3EO付加アクリレート。
【0114】
単官能含エーテル基アクリレート類の例:
2−メトキシエチルアクリレート、1,3−ブチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、クレジルポリエチレングリコールアクリレート、p−ノニルフェノキシエチルアクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート。
【0115】
単官能含カルボキシルアクリレート類の例:
β−カルボキシエチルアクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート。
【0116】
その他の単官能アクリレート類の例:
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、モルホリノエチルアクリレート、トリメチルシロキシエチルアクリレート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性−2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート。
【0117】
二官能アクリレート類の例:
1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート、ポリエチレングリコール#300ジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールビス(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノベンゾエート、ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、水素化ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、PO変性ビスフェノールFジアクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート。
【0118】
三官能アクリレート類の例:
グリセリンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリアクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレートトリプロピオネート。
【0119】
四官能以上のアクリレート類の例:
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルテトラアクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)ホスフェート。
【0120】
メタクリレート類の例:
単官能アルキルメタクリレート類の例:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート。
【0121】
単官能含ヒドロキシメタクリレート類の例:
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート。
【0122】
単官能含ハロゲンメタクリレート類の例:
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、2,6−ジブロモ−4−ブチルフェニルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェノール3EO付加メタクリレート。
【0123】
単官能含エーテル基メタクリレート類の例:
2−メトキシエチルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、クレジルポリエチレングリコールメタクリレート、p−ノニルフェノキシエチルメタクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート。
【0124】
単官能含カルボキシルメタクリレート類の例:
β−カルボキシエチルメタクリレート、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート。
【0125】
その他の単官能メタクリレート類の例:
ジメチルアミノメチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、トリメチルシロキシエチルメタクリレート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性−2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等。
【0126】
二官能メタクリレート類の例:
1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール#200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#300ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノベンゾエート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、PO変性ビスフェノールAジメタクリレート、水素化ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジメタクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、EO変性ビスフェノールFジメタクリレート、PO変性ビスフェノールFジメタクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジメタクリレート。
【0127】
三官能メタクリレート類の例:
グリセリンPO変性トリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリメタクリレート、1,3,5−トリメタクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレートトリプロピオネート。
【0128】
四官能以上のメタクリレート類の例:
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、オリゴエステルテトラメタクリレート、トリス(メタクリロイルオキシ)ホスフェート。
【0129】
アリレート類の例:
アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート。
【0130】
酸アミド類の例:
アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン。
【0131】
スチレン類の例:
スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルスチレン、p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン。
【0132】
他のビニル化合物の例:
酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等。
【0133】
上記のラジカル重合性化合物(B)は、以下に示すメーカーの市販品として、容易に入手することができる。例えば、共栄社油脂化学工業(株)社製の「ライトアクリレート」、「ライトエステル」、「エポキシエステル」、「ウレタンアクリレート」および「高機能性オリゴマー」シリーズ、新中村化学(株)社製の「NKエステル」および「NKオリゴ」シリーズ、日立化成工業(株)社製の「ファンクリル」シリーズ、東亞合成化学(株)社製の「アロニックスM」シリーズ、大八化学工業(株)社製の「機能性モノマー」シリーズ、大阪有機化学工業(株)社製の「特殊アクリルモノマー」シリーズ、三菱レイヨン(株)社製の「アクリエステル」および「ダイヤビームオリゴマー」シリーズ、日本化薬(株)社製の「カヤラッド」および「カヤマー」シリーズ、(株)日本触媒社製の「アクリル酸/メタクリル酸エステルモノマー」シリーズ、日本合成化学工業(株)社製の「NICHIGO−UV紫光ウレタンアクリレートオリゴマー」シリーズ、信越酢酸ビニル(株)社製の「カルボン酸ビニルエステルモノマー」シリーズ、(株)興人社製の「機能性モノマー」シリーズ等が挙げられる。
【0134】
また以下に示す環状化合物もラジカル重合性化合物(B)として挙げられる。
【0135】
三員環化合物の例:
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第17巻、3169頁(1979年)記載のビニルシクロプロパン類、マクロモレキュラー・ケミー・ラピッド・コミュニケーション(Makromol.Chem.Rapid Commun.)、第5巻、63頁(1984年)記載の1−フェニル−2−ビニルシクロプロパン類、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第23巻、1931頁(1985年)およびジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第21巻、4331頁(1983年)記載の2−フェニル−3−ビニルオキシラン類、日本化学会第50春期年会講演予稿集、1564頁(1985年)記載の2,3−ジビニルオキシラン類。
【0136】
環状ケテンアセタール類の例:
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第20巻、3021頁(1982年)およびジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第21巻、373頁(1983年)記載の2−メチレン−1,3−ジオキセパン、ポリマー・プレプレプリント(Polym.Preprints)、第34巻、152頁(1985年)記載のジオキソラン類、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第20巻、361頁(1982年)、マクロモレキュラー・ケミー(Makromol.Chem.)、第183巻、1913頁(1982年)およびマクロモレキュラー・ケミー(Makromol.Chem.)、第186巻、1543頁(1985年)記載の2−メチレン−4−フェニル−1,3−ジオキセパン、マクロモレキュルズ(Macromolecules)、第15巻、1711頁(1982年)記載の4,7−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキセパン、ポリマー・プレプレプリント(Polym.Preprints)、第34巻、154頁(1985年)記載の5,6−ベンゾ−2−メチレン−1,3−ジオセパン。
【0137】
さらに、ラジカル重合性化合物(B)は、以下に示す文献に記載のものも挙げることができる。例えば、山下晋三ら編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社)や加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」、(1985年、高分子刊行会)、ラドテック研究会編、赤松清編、「新・感光性樹脂の実際技術」、(1987年、シーエムシー)、遠藤剛編、「熱硬化性高分子の精密化」、(1986年、シーエムシー)、滝山榮一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)、ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、(2002年、シーエムシー)が挙げられる。
【0138】
本発明のラジカル重合性化合物(B)は、ただ一種のみ用いても、所望とする特性を向上するために任意の比率で二種以上混合したものを用いても構わない。
【0139】
さらに本発明の重合性組成物は、いわゆるアルカリ現像型のフォトレジスト材料として画像形成用に用いる等の目的のために、下記に示すカルボキシル基含有ポリマー(C)を添加して用いても良い。カルボキシル基含有ポリマー(C)はアルカリ水溶液に対する溶解性を有するため、本発明の光重合性組成物を用いて作成した膜を部分的に硬化すれば、アルカリ水溶液に対する溶解度の違いから、いわゆるネガ型レジストのパターンを形成することが可能である。ここでカルボキシル基含有ポリマー(C)とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとアクリル酸との共重合体、メタアクリル酸エステルとメタアクリル酸とこれらと共重合し得るビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの共重合体は単独であるいは2種以上混合しても差し支えない。
【0140】
ここで、メタアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。
【0141】
メタアクリル酸エステルとメタアクリル酸とこれらと共重合し得るビニルモノマーとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラヒドリフルフリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
【0142】
本発明の光重合開始剤(A)は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して0.005〜50重量部の範囲で用いるのが好ましく、さらに0.01〜20重量部の範囲で用いるのが好ましい。またカルボキシル基含有ポリマー(C)は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して20〜500重量部の範囲で用いるのが好ましく、さらに50〜150重量部の範囲で用いるのがより好ましい。
【0143】
本発明の重合性組成物は、成膜性を高めるため有機高分子重合体等のバインダーと混合し、ガラス板やアルミニウム板、その他の金属板、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等のポリマーフィルムに塗布して使用することが可能である。
【0144】
本発明の重合性組成物と混合して使用可能なバインダーとしては、ポリアクリレート類、ポリ−α−アルキルアクリレート類、ポリアミド類、ポリビニルアセタール類、ポリホルムアルデヒド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリビニルエステル類等の重合体、共重合体が挙げられ、さらに具体的には、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂その他、赤松清監修、「新・感光性樹脂の実際技術」、(シーエムシー、1987年)や「10188の化学商品」、657〜767頁(化学工業日報社、1988年)記載の業界公知の有機高分子重合体が挙げられる。
【0145】
本発明の重合性組成物は、粘度調整をはじめとする塗工適正の向上等を目的として、必要に応じて溶媒を添加して使用することも可能である。本発明の重合性組成物に添加して使用することのできる溶媒は特に限定されず、本発明の重合性組成物と均一に混合することのできる溶媒であればいかなるものも使用可能である。例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、芳香族系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系などの公知の溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
また、本発明の重合性組成物は他の増感剤を用いなくとも十分な感度を有しているが、さらに感度向上や硬化後の膜特性を向上させる目的で、増感剤や他の光重合開始剤と併用することが可能である。
【0147】
本発明の重合性組成物と混合して併用可能な増感剤としては、ベンゾフェノン類、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノンなどに代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体などが挙げられ、その他さらに具体例には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられ、これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。上記、増感剤の中でチオキサントン誘導体としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができ、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102等を挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
本発明の重合性組成物と混合して併用可能な他の重合開始剤としては、イルガキュアー651、イルガキュアー127、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー500、イルガキュアー1000、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー1700、イルガキュアー149、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー819、イルガキュアー754、イルガキュアー784、イルガキュアー261、イルガキュアーOXE−01(CGI124)、CGI242(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)、アデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717(旭電化社)、EsacureKIPシリーズ、EsacureONE、Esacure1001M(Lamberti社)、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報ならびに特開昭60−60104号公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報ならびに特開昭61−243807号公報記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭47−1604号公報ならびにUSP第3567453号明細書記載のジアゾニウム化合物公報、USP第2848328号明細書、USP第2852379号明細書ならびにUSP第2940853号明細書記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報ならびに特公昭45−9610号公報記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−140203号公報ならびに「マクロモレキュルス(MACROMOLECULES)」、第10巻、第1307頁(1977年)記載のヨードニウム化合物をはじめとする各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109851号明細書、ヨーロッパ特許第126712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.IMAG.SCI.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特開昭61−151197号公報記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(COORDINATION CHEMISTRY REVIEW)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号公報記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報記載のアルミナート錯体、特開平2−157760号公報記載のホウ酸塩化合物、特開昭55−127550号公報ならびに特開昭60−202437号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物、特開平5−213861号公報、特開平5−255347号公報、特開平5−255421号公報、特開平6−157623号公報、特開2000−344812号公報、特開2002−265512号公報、特願2004−053009号公報、ならびに特願2004−263413号公報記載のスルホニウム錯体またはオキソスルホニウム錯体、特開2001−264530号公報、特開2001−261761号公報、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、USP3558309号明細書(1971年)、USP4202697号明細書(1980年)、特開昭61−24558号公報、特表2004−534797号公報、ならびに特開2004−359639号公報記載のオキシムエステル化合物、特表2002−530372号公報記載の2官能性光開始剤等が挙げられ、これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物100重量部に対して0.01から40重量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0149】
また、本発明の重合性組成物は保存時の重合を防止する目的で重合防止剤を添加することが可能である。
【0150】
本発明の重合性組成物に添加可能な重合防止剤の具体例としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、これらの重合防止剤は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して0.001から5重量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0151】
また、本発明の重合性組成物はさらに重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィドなどに代表される重合促進剤や連鎖移動触媒を添加することが可能である。
【0152】
本発明の重合性組成物に添加可能な重合促進剤や連鎖移動触媒の具体例としては、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノアセトフェノン、N−フェニルグリシン、N,N−ジエチルアニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、オクチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、シクロへキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、フェニルジエタノールアミン、アクリル酸 2−(ジメチルアミノ)エチル等のアミン類、USP第4414312号明細書や特開昭64−13144号公報記載のチオール類、特開平2−291561号公報記載のジスルフィド類、USP第3558322号明細書や特開昭64−17048号公報記載のチオン類、特開平2−291560号公報記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられる。
【0153】
本発明の重合性組成物はさらに目的に応じて、染料、有機および無機顔料、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、色素前駆体、紫外線吸収剤、発砲剤、防カビ剤、帯電防止剤、磁性体やその他種々の特性を付与する添加剤、希釈溶剤等と混合して使用しても良い。
【0154】
本発明の重合性組成物は重合反応に際して、紫外線や可視光線、近赤外線等、電子線等によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能であるが、エネルギーの付与をする光源として、250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましい。250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源の例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、Nd−YAG3倍波レーザー、He−Cdレーザー、窒素レーザー、Xe−Clエキシマレーザー、Xe−Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザーなどの各種光源が挙げられる。なお本明細書でいう、紫外線や可視光、近赤外線等の定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
【0155】
故に、バインダーその他とともに基板上に塗布して各種インキ、インクジェットインキ、オーバーコートニス、各種刷版材料、フォトレジスト、電子写真、ダイレクト刷版材料、光ファイバー、ホログラム材料等の感光材料やマイクロカプセル等の各種記録媒体、さらには接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤、封止剤および各種塗料に応用することが可能である。
【実施例】
【0156】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに、なんら限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、例中、部とは重量部を示す。まず、実施例および比較例に用いた化合物(光重合開始剤(A))を表1に示し、本発明の光重合開始剤である化合物(1)〜(19)について合成例を示す。
【0157】
表1
【表1】

【0158】
【表1】

【0159】
【表1】

【0160】
【表1】


【0161】
合成例(1)
光重合開始剤:化合物(1)の合成
1−ヒドロキシチオキサントン34.0g、3−カルボキシプロピルアクリレート23.9g、ジクロロメタン800mlを加え、室温にて撹拌した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド34.2g、4−ジメチルアミノピリジン4.3gを加えて4時間撹拌を続けた。その後、塩酸水で洗浄し、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=2/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(1)を44.8g得た。
【0162】
合成例(2)
光重合開始剤:化合物(2)の合成
1−ヒドロキシ−3−エチルチオキサントン38.5g、2−カルボキシエチルメタアクリレート23.9g、ジクロロメタン800mlを加え、室温にて撹拌した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド34.2g、4−ジメチルアミノピリジン4.3gを加えて4時間撹拌を続けた。その後、塩酸水で洗浄し、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=1/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(2)を48.3g得た。
【0163】
合成例(3)
光重合開始剤:化合物(3)の合成
2−ヒドロキシチオキサントン34.0g、4−カルボキシブチルアクリレート25.9g、ジクロロメタン800mlを加え、室温にて撹拌した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド34.2g、4−ジメチルアミノピリジン4.3gを加えて4時間撹拌を続けた。その後、塩酸水で洗浄し、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=1/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(3)を45.1g得た。
【0164】
合成例(4)
光重合開始剤:化合物(4)の合成
1,3−ジメチル−2−ヒドロキシチオキサントン51.3g、4−カルボキシブチルアクリレート34.4g、ジクロロメタン750mlを加え、室温にて撹拌した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド45.4g、4−ジメチルアミノピリジン5.2gを加えて4時間撹拌を続けた。その後、塩酸水で洗浄し、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=1/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(4)を75.1g得た。
【0165】
合成例(5)
光重合開始剤:化合物(5)の合成
2−ヒドロキシチオキサントン22.9g、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)21.7g、ジクロロメタン750mlを加え、室温にて撹拌した。その後、ジシクロヘキシルカルボジイミド23.2g、4−ジメチルアミノピリジン2.8gを加えて4時間撹拌を続けた。その後、塩酸水で洗浄し、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=2/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(5)を36.8g得た。
【0166】
合成例(6)
光重合開始剤:化合物(6)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−ヒドロキシ−6−メチルチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを2−エチルアクリレートに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(6)を得た。
【0167】
合成例(7)
1−o−トリル−6−ヒドロキシチオキサントンの合成
1−ブロモ−6−ヒドロキシチオキサントン30.9g、o−トリルボロン酸13.7g、テトラヒドロフラン800mlを加え、室温にて撹拌した。その後、炭酸水素ナトリウム123.2g、蒸留水400ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.7gを加えて80℃にて12時間撹拌を続けた。その後、水で洗浄し、酢酸エチルにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、残留物を酢酸エチル/ヘキサン=2/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−o−トリル−6−ヒドロキシチオキサントンを36.8g得た。
【0168】
合成例(8)
光重合開始剤:化合物(7)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを1−o−トリル−6−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを3−プロピルメタアクリレートに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(7)を得た。
【0169】
合成例(9)
コハク酸モノ(p−アクリロイルオキシフェニル)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンをp−アクリロイルオキシフェノールに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法によりコハク酸モノ(p−メタアクリロイルオキシフェニル)を得た。
【0170】
合成例(10)
光重合開始剤:化合物(8)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−メチル−6−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸モノ(p−メタアクリロイルオキシフェニル)に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(8)を得た。
【0171】
合成例(11)
光重合開始剤:化合物(9)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを3−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを2,2−ジメチル3−アクリロイルオキシプロピオニック酸に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(9)を得た。
【0172】
合成例(12)
光重合開始剤:化合物(10)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを1−ヒドロキシ−3,4−メチルチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを3−カルボキシプロピルメタアクリレートに置き換えた以外は合成例(2)と同様の方法により化合物(10)を得た。
【0173】
合成例(13)
1−ペンテニル−4−ヒドロキシチオキサントンの合成
合成例(7)における1−ブロモ−6−ヒドロキシチオキサントンを1−ブロモ−4−ヒドロキシチオキサントンに、o−トリルボロン酸を1−ペンテン−1−イルボロン酸に置き換えた以外は合成例(7)と同様の方法により1−ペンテニル−4−ヒドロキシチオキサントンを得た。
【0174】
合成例(14)
光重合開始剤:化合物(11)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを1−ペンテニル−4−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを2−カルボキシエチルメタアクリレートに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(11)を得た。
【0175】
合成例(15)
3−フリル−6−ヒドロキシチオキサントンの合成
合成例(7)における1−ブロモ−6−ヒドロキシチオキサントンを3−ブロモ−6−ヒドロキシチオキサントンに、o−トリルボロン酸を2−フリルボロン酸に置き換えた以外は合成例(7)と同様の方法により3−フリル−6−ヒドロキシチオキサントンを得た。
【0176】
合成例(16)
光重合開始剤:化合物(12)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを3−フリル−6−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを2,2−ジメチル3−アクリロイルオキシプロピオニック酸に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(12)を得た。
【0177】
合成例(17)
光重合開始剤:化合物(13)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−ヒドロキシ−6−アセチルチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸モノアクリロイルオキシブチルに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(13)を得た。
【0178】
合成例(18)
光重合開始剤:化合物(14)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを3−ヒドロキシ−6−フェノキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを4−カルボキシブチルアクリレートに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(14)を得た。
【0179】
合成例(19)
光重合開始剤:化合物(15)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを3−ヒドロキシ−6−フリルオキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートを6−カルボキシヘキシルアクリレートに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(15)を得た。
【0180】
合成例(20)
光重合開始剤:化合物(16)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−ヒドロキシ−6−チオキサントンカルボン酸プロピルエステルに、3−カルボキシプロピルアクリレートを1−カルボキシ−3−(1−アクリロイルオキシプロポキシ)プロパンに置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(16)を得た。
【0181】
合成例(21)
光重合開始剤:化合物(17)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸モノビス(メタアクリロイルオキシメチル)に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(17)を得た。
【0182】
合成例(22)
光重合開始剤:化合物(18)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを3−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸モノトリス(アクリロイルオキシメチル)に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(18)を得た。
【0183】
合成例(23)
光重合開始剤:化合物(19)の合成
合成例(1)における1−ヒドロキシチオキサントンを2−ヒドロキシチオキサントンに、3−カルボキシプロピルアクリレートをコハク酸モノトリス(アクリロイルオキシメチル)に置き換えた以外は合成例(1)と同様の方法により化合物(19)を得た。

上述の合成例で合成した本発明の光重合開始剤である化合物(1)〜化合物(19)の元素分析の結果を表2として示した。
【0184】
【表2】

【0185】
【表2】


【0186】
(1)硬化性
実施例1〜14、比較例1〜5
光重合開始剤(A)を3重量部、併用光重合開始剤イルガキュア369(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を1.5重量部、増感剤として4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシルを0.5重量部、ラジカル重合性化合物(B)としてダップトートDT170(東都化成社製ジアリルフタレート樹脂)10重量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部を配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。この塗工物に、紫外線照射(高圧水銀灯160W/cm1灯)後、綿布で擦って皮膜に傷がつかないコンベアスピードで判定した。その結果を表3に示す。尚、紫外線照射装置のコンベアスピード(m/分)で数字が大きい程硬化性が良い。
【0187】
表3
【表3】

【0188】
本発明の光重合開始剤を用いた重合性組成物は、一般的に使用されている光重合開始剤を用いた重合性組成物と比較して高い硬化性を有していることが明らかとなった。
【0189】
また、本発明の光重合開始剤は、一般式(1)におけるR2において一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で表される基を有するとき最も硬化性が高いことが分かった。
【0190】
(2)黄変性
実施例15〜24、比較例6〜11
光重合開始剤(A)3重量部、併用光重合開始剤イルガキュア369(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を1.5重量部、増感剤として4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシルを0.5重量部、ラジカル重合性化合物(B)としてダップトートDT170(東都化成(株)製ジアリルフタレート樹脂)10重量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部を配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。この塗工物を紫外線照射装置(高圧水銀灯160W/cm1灯)を用いて完全に硬化させ、10人のパネラーが塗工物における硬化前後の黄変性を判定した。判定は1(不良)〜5(良好)の五段階で評価を行った。その結果を表4に示す。
【0191】
表4
【表4】

【0192】
本発明の光重合開始剤を用いた重合性組成物は、一般的に使用されている光重合開始剤を用いた重合性組成物と比較して黄変性に優れることが明らかとなった。
【0193】
また、本発明の光重合開始剤は、一般式(1)におけるR2において一般式(2)、一般式(3)、または一般式(4)で表される基を有するとき最も黄変性に優れることが分かった。
【0194】
(3)滲み出し量
実施例25〜34、比較例15〜19
光重合開始剤(A)3重量部、併用光重合開始剤イルガキュア369(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)を1.5重量部、増感剤として4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシルを0.5重量部、ラジカル重合性化合物(B)としてダップトートDT170(東都化成(株)製ジアリルフタレート樹脂)10重量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部を配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。この塗工物を紫外線照射装置(高圧水銀灯160W/cm1灯)を用いて完全に硬化させ、塗工物の上に塗工されていないペットフィルムを置き、温度60℃、圧力15g/cm2で1日放置し、塗工されていないペットフィルムに滲み出し(移行し)た光重合開始剤量を定量した。その結果を表5に示す。
【0195】
表5
【表5】


【0196】
滲み出し量の実施例および比較例から、光重合開始剤中に重合性組成物中のモノマー等と反応可能な重合性置換基を有する光重合開始剤は、滲み出し量が少ないことが分かるが、本発明の光重合開始剤が最も優れることが明らかとなった。この理由について、硬化性の実施例により本発明の光重合開始剤が最も硬化性に優れるため、本発明の光重合開始剤の有する重合性置換基が重合性組成物中のモノマー等と高い反応性を示し、光重合開始剤が重合性組成物中に取り込まれたため、滲み出しの量を最小限に抑えることが可能になったのではないかと推測している。
【0197】
本発明の光重合開始剤を用いた重合性組成物は、一般的に使用されている光重合開始剤を使用した重合性組成物と比較しても硬化性に優れることが明らかとなった。また、本発明の光重合開始剤を用いた重合性組成物は、一般的な重合性組成物と比べて重合性組成物硬化後の着色や光重合開始剤の滲み出しを抑えることが可能であり、従来の光重合開始剤を用いた重合性組成物では困難であったこれら全ての要求を満たすことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明はエネルギー線の照射、特に250から450nmの光照射に対して非常に高感度なラジカル発生剤として機能する光重合開始剤を提供するものである。従って本発明の光重合開始剤は、従来より用いられてきたエネルギー線の照射により発生するラジカルを触媒とした重合、架橋反応などを迅速かつ確実に進行させることができ、その結果として各種用途のエネルギー線に対する高感度化、あるいは反応が十分進行することによる各種用途の特性向上等が期待できる。本発明により、高感度化や特性向上が期待できる用途の例としては、重合あるいは架橋反応を利用した成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インキ、インクジェットインキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチングレジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイス等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される光重合開始剤。
一般式(1)
【化1】


(式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、または置換もしくは未置換のアシル基、下記一般式(2)、下記一般式(3)、または下記一般式(4)を表す。但し、R1〜R8のうち一つは、下記一般式(2)、下記一般式(3)、および下記一般式(4)から選ばれる置換基である。)
一般式(2)
【化2】


一般式(3)
【化3】


一般式(4)
【化4】


(式中、A1は、2価の連結基を表す。
2は、3価の連結基を表す。
3は、4価の連結基を表す。
9〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。
また、R1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が隣り合う置換基同士で環を形成してもよい。)
【請求項2】
1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が、それぞれ独立に、水素原子、または置換もしくは未置換のアルキル基である請求項1記載の光重合開始剤。
【請求項3】
1〜R8において一般式(2)、一般式(3)、および一般式(4)から選ばれる置換基以外の置換基が、水素原子である請求項1または2記載の光重合開始剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の光重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含有してなる重合性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の重合性組成物を光照射することにより重合させる、重合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−184989(P2009−184989A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28249(P2008−28249)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】