説明

光量調整装置

【課題】遮光羽根部材における光軸に平行な端面での不要反射を低減しフレアやゴースト等の画質低下をきたすことを抑制でき、簡便な加工によって製造できる遮光羽根部材を提供する。
【解決手段】複数の板状の遮光羽根部材を回転させることにより開口量を変えて光量を調整する光量調整装置において、遮光羽根部材の光を通す開口の内周に対応する部分に、光軸に平行となるよう形成された遮光羽根端面1gと、遮光羽根端面1gから光軸に対して傾斜して延設するように形成された斜面部1fと、を設ける。これらの遮光羽根端面1gと斜面部1fとは、ブラスト処理によって加工して製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に用いられる光量調整装置に関し、特に回転駆動により開口量を変えて光量を調整するために、複数の板状の遮光羽根部材を備えた光量調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラ等の撮像装置には、光量調整装置として、遮光羽根部材を装着した絞り装置を利用したものがある。この遮光羽根部材は、撮像レンズ内の他の部材同様、不要な内部反射を起こすと、フレアやゴースト等を生じて画質の低下を招くことが知られている。そのため、遮光羽根部材では、表面に光吸収用の塗料を塗布し、画質の低下を防止することが行われている。
【0003】
また、遮光羽根部材を装着した絞り装置では、開口を形成する光軸に平行な遮光羽根部材の端面での反射が原因となってゴーストなどの画質低下が発生することが知られている。そのため、前述のような光吸収用の塗料を遮光羽根端面にも塗布し又は端面の形状を複雑形状とするなどの方法で、画質の低下を防止することが行われている。
【0004】
例えば、射出成型によって、遮光羽根部材の開口を形成する端部を十分に薄肉化し、端部での内面反射を防止する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、遮光羽根部材の開口を形成する端部を、複数の段差からなる階段状又は連続的な湾曲状に形成し、遮光羽根部材の端面を極力薄くする。これにより、遮光羽根部材の開口を形成する光軸に平行な端面における、有害な後方反射を引き起こす領域を縮小し、フレアやゴーストなどの画質低下を低減する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−84658号公報
【特許文献2】特開2002−229095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、遮光羽根部材を射出成型により成形する場合には、遮光羽根部材端部の薄肉化して遮光羽根部材端面を小さく成形する必要がある。このためには、射出成型用金型に設ける樹脂の流入経路を極めて狭小に形成することになるので、樹脂が未充填となることを防止し、さらに樹脂が過充填となってバリが発生することを防止しなければならない。このため、遮光羽根部材端部を薄肉化するよう射出成型する場合には、射出成形条件の決定に困難を伴うという問題がある。
【0008】
さらに、遮光羽根部材を射出成型により成形する場合には、遮光羽根部材端部に、複数の段差からなる階段状もしくは連続的な湾曲状の微細な形状を射出成形で形成することになる。このため、射出成型用金型に設ける樹脂の流入経路を極めて狭小に形成することになるので、樹脂が未充填となることを防止し、さらに樹脂が過充填となってバリが発生することを防止しなければならない。よって、遮光羽根部材端部に複数の段差からなる階段状もしくは連続的な湾曲状の微細な形状を射出成形場合にも、射出成形条件の決定に困難を伴うという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、遮光羽根部材における光軸に平行な端面での不要反射を低減しフレアやゴースト等の画質低下をきたすことを抑制可能なように、簡便な加工によって製造できる遮光羽根部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の光量調整装置は、複数の遮光羽根部材を回転させることにより開口径を変えて光量を調整する光量調整装置において、前記遮光羽根部材の前記開口径を形成する部分の端面にブラスト処理を行うことで、前記遮光羽根部材の外形をほぼ維持して表面を粗化される開口端面を形成するとともに、前記開口端面に対して傾斜した斜面部とを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮光羽根部材における光軸に平行な端面で不要反射することを低減しフレアやゴースト等の画質低下をきたすことを抑制可能なように、簡便な加工によって製造された遮光羽根部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置の主な構成部材を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の正面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の端部をブラスト処理する方法を、遮光羽根部材を図2のA−A線で切断して示す説明図である。
【図4】(a)は、本発明の第1実施の形態に係る遮光羽根部材の端部の、後加工であるブラスト処理する前の状態を図2のA−A線で切断して示す拡大断面図、(b)は、そのブラスト処理後の状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置の主な構成部材を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の正面図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の端部をブラスト処理する方法を、遮光羽根部材を図6のA−A線で切断して示す説明図である。
【図8】(a)は、本発明の第2実施の形態に係る遮光羽根部材の端部の、後加工であるブラスト処理する前の状態を図6のA−A線で切断して示す拡大断面図、(b)は、そのブラスト処理後の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施の形態)
以下、本発明の第1実施の形態について、図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置の主な構成部材を示す分解斜視図である。
【0015】
図2は、本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の正面図である。
【0016】
図3は、本発明の第1実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の端部をブラスト処理する方法を、遮光羽根部材を図2のA−A線で切断して示す説明図である。
【0017】
図4(a)は、本発明の第1実施の形態に係る遮光羽根部材の端部の、後加工であるブラスト処理する前の状態を図2のA−A線で切断して示す拡大断面図である。図4(b)は、そのブラスト処理後の状態を示す拡大断面図である。
【0018】
図1において、1,2,3,4,5,6は、光量調節装置に複数個備えられる、それぞれ基本的に同等に構成された遮光羽根部材である。これら遮光羽根部材1〜6は、遮光性を有し開口量を制限する薄板状の羽根基部1a〜6aを備える。さらに、これら遮光羽根部材1〜6は、羽根基部の一方の面に設けられる第1軸部1b〜6bと、この羽根基部の他方の面に設けられる第2軸部1c〜6c(一部不図示)とを備える。
【0019】
また、図1において、7は、中央に開口部7aが形成されたリング状の回転部材である。この回転部材7には、軸穴部7b,7c,7d,7e,7f,7gと、6つに分割された回転嵌合突起部7hと、ギア部7iとが設けられている。
【0020】
この図1において、8は、中央に開口部8aが形成されたリング状のカム部材である。このカム部材8には、カム溝部8b,8c,8d,8e,8f,8gが設けられている。
【0021】
この図1において、9は、中央に開口部9aが形成されたリング状の押え部材である。この押え部材9には、穴部9bと、モータ取り付け部9cが設けられている。
【0022】
この図1において、10は、回転部材7を駆動するステッピングモータである。このステッピングモータ10の軸先端には、ピニオンギア11が固定されている。このステッピングモータ10は、押え部材9のモータ取り付け部9cに取り付けられている。また、ピニオンギア11は、押え部材9の穴部9bを貫通して延出され、回転部材7のギア部7iに噛み合わされる。
【0023】
この光量調節装置では、押え部材9が回転部材7と遮光羽根部材1〜6とを間に挟んでカム部材8に固定される。これにより、押え部材9は、回転部材7と遮光羽根部材1〜6との光軸方向への抜けを防止する。
【0024】
この光量調節装置では、回転部材7の回転嵌合突起部7hが、押え部材9の開口部9aと嵌合して回動可能に支持される。また、遮光羽根部材1〜6の第1軸部1b〜6bは、回転部材7の軸穴部7b〜7gにそれぞれ回動可能に支受される。さらに、第2軸部1c〜6cは、カム部材8のカム溝部8b〜8gにそれぞれ摺動可能に支受される。
【0025】
この光量調節装置では、遮光羽根部材1〜6が、光軸を中心に円周方向に均等配置されている。この遮光羽根部材1〜6は、遮光性を有する羽根基部1a〜6aが重ね合わされた状態を変化させることにより絞り開口量を制御可能に構成されており、重ね合わせが大きくなる程絞り開口量が小さくなる。
【0026】
この光量調節装置では、ステッピングモータ10を駆動制御することにより、絞り開口の径を変化させ、光量を調整する。
【0027】
このため、光量調節装置では、図示しない制御部が、ステッピングモータ10を駆動させると、ピニオンギア11が回転する。このピニオンギア11の回転に応じて回転部材7が回転し、遮光羽根部材1〜6の第1軸部1b〜6bが光軸周りに回転駆動される。
【0028】
この動作に伴って、第2軸部1c〜6cは、カム部材8のカム溝部8b〜8gに沿って移動される。この動作で、第2軸部1c〜6cは、回転部材7の軸穴部7b〜7gを中心として相対的に回転させることにより、開口部8への進入量が変化する。
【0029】
これら6枚の遮光羽根部材1〜6は、同時に回転部材7に連動して、絞り開口の径を変化させる動作を行う。この絞り開口を変化させる動作では、遮光羽根部材1〜6がカム部材8の開口部8aから退避している退避状態から、遮光羽根部材1〜6がカム部材8の開口部8aに挿入されている挿入状態まで連続的に変化する。上述のようにして、この光量調節装置では、ステッピングモータ10を駆動制御することで、絞り開口の径を変化させ、光量を調整する。
【0030】
次に、本発明の第1実施の形態に係わる遮光羽根部材について説明する。
【0031】
遮光羽根部材1〜6は、樹脂材料に遮光性を持たせるためのカーボンブラックなどの添加剤を適宜混合した材料を射出成型して形成する。この射出成型では、図1中に示した第1軸部1b、第2軸部1cを、羽根基部1aと一体に成形する。このように射出成型された遮光羽根部材1〜6には、その開口径を形成する部分となる遮光羽根部材端部1dに対して、後加工であるブラスト処理を施す。
【0032】
なお、ここで行うブラスト処理は、被削材である遮光羽根部材端部1dに対して、非金属粒や金属粒を高速で衝突させることによって表面粗化又は軽切削を行う処理である。また、特に本実施の形態では、ウェットブラスト法を用いてこのブラスト加工処理を行っている。このウェットブラスト法とは、水などの液体に圧縮空気などの圧力を与えて形成した噴霧液滴により非金属粒や金属粒を投射して表面粗化又は軽切削を行う加工法である。
【0033】
この遮光羽根部材1〜6の遮光羽根部材端部1dに対して、後加工であるブラスト処理を行う場合には、まず、図3に示すように、被削材である遮光羽根部材1を、固定冶具12の平面上に、遮光羽根部材1の光束入射面が上になるように固定する。このとき、固定冶具12の遮光羽根部材1が固定される平面は、遮光羽根部材1の遮光羽根部材端部1dよりも外側で露出している。これによって、図3の領域Aに示す遮光羽根端面1eと固定冶具12の平面によって形成される隅角部ができる。そして、遮光羽根部材端部1dに対して、図3に矢印Bで示す斜め上方向から、非金属粒又は金属粒を含む噴霧液滴を高圧で吹き付けて表面粗化又は軽切削を行うブラスト処理の加工を行って製作する。ここで、矢印Bの方向とは、固定冶具12の平面に対して直交する方向から固定冶具12の平面が露出している方向に所定の角度だけ傾けた方向である。
【0034】
このようにしてウェットブラスト法によるブラスト加工処理を行って製作した遮光羽根部材1〜6の遮光羽根部材端部1dは、図4(b)に示すように、表面が粗化され、かつ光軸に対して傾斜した斜面部1fが加工形成されている。すなわち、遮光羽根部材端部1dには、光を通す開口の内周に対応する部分に、光軸に平行となるよう形成された開口端面である遮光羽根端面1gが製作される。これと共に、遮光羽根部材端部1dには、光を通す開口の内周に対応する部分に、遮光羽根端面1gから光軸に対して傾斜して延設するように形成された斜面部1fが製作される。
【0035】
このように遮光羽根部材端部1dを表面が粗化され、かつ光軸に対して傾斜した斜面部1fに加工形成して製作した場合には、不要光を反射してゴーストやフレア等を発生させることを抑制できる。
【0036】
また、図3に示す領域Aは、ウェットブラスト法によるブラスト加工処理の際に、ブラスト処理が行われない領域となる。すなわち、このブラスト処理が行われない領域は、遮光羽根端面1eと固定冶具12の平面によって形成される隅角部である。この領域では、非金属粒や金属粒などの砥粒を投射する噴霧液滴の流速が低くなり、遮光羽根端面1eに対する加工力が低下するためブラスト処理が行われなくなる。
【0037】
図3に示すブラスト処理を経ることにより、遮光羽根部材端部1dは、図4(b)に示すように、ブラスト処理によって削り取られた形状となる。すなわち、この遮光羽根部材端部1dにおける光を通す開口の内周に対応する部分には、ブラスト処理前の羽根基部1a平面と遮光羽根端面1eの間にあたる範囲に新たな斜面部1fが形成される。これと共に、この遮光羽根部材端部1dにおける光を通す開口の内周に対応する部分には、遮光羽根端面1eの一部である新たな遮光羽根端面1gが形成される。
【0038】
この遮光羽根端面1gは、図3に示した噴霧液滴の流速が低下する領域Aに起因する低い加工力によって形成された形状である。この新たな遮光羽根端面1gは、羽根基部1aの外形寸法をほぼ維持したままである。つまり、図3に示すようにしてブラスト処理を行う場合には、遮光羽根端面1eの寸法精度を損なうことなしに図4(b)に示す所望の形状が得られる。
【0039】
また、ブラスト処理は、表面を粗化する効果がある。このため、光を通す開口の内周に対応する部分に形成された斜面部1fと、遮光羽根端面1gとは、共に、ブラスト処理前に平滑面であった遮光羽根端面1eの性状とは異なり、表面が粗化されている。尚、ブラスト処理前の遮光羽根部材端面1eは、そのまま光量調整装置に組み込まれた際に、光軸と平行な面となり、不要光の反射面となるためにゴーストやフレアなどの発生原因となる平面でもある。
【0040】
また、遮光羽根部材2〜6は、上述の遮光羽根部材1と同様に形成され、本発明の第1実施の形態に係わる光量調節装置に組み込まれる。
【0041】
これらブラスト処理を施された遮光羽根部材1〜6によって形成された開口においては、光軸に平行な平滑面である遮光羽根端面1eよりも小さい面積で且つ粗化されている新たな遮光羽根端面1gとなる。
【0042】
このため、ブラスト処理が施された遮光羽根部材1〜6で形成された開口では、フレアやゴーストなどの画質低下の原因となる遮光羽根部材端面での不要反射を低減することが可能となる。また、この遮光羽根部材1〜6の構成によれば、これを射出成型する際に、複雑な形状の型を用意する必要がなく、離型性を良くすることが可能である。
【0043】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0044】
図5は、本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0045】
図6は、本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の正面図である。
【0046】
図7は、本発明の第2実施の形態に係る光量調節装置に用いられる遮光羽根部材の端部をブラスト処理する方法を、遮光羽根部材を図6のA−A線で切断して示す説明図である。
【0047】
図8の(a)は、本発明の第2実施の形態に係る遮光羽根部材の端部の、後加工であるブラスト処理する前の状態を図6のA−A線で切断して示す拡大断面図、図8の(b)は、そのブラスト処理後の状態を示す拡大断面図である。
【0048】
この図5において、21,22,23,24,25,26は、光量調節装置に複数個備えられる、それぞれ基本的に同等に構成された遮光羽根部材である。これらの遮光羽根部材21〜26は、遮光性を有する平板材料を打ち抜き加工することにより開口量を規制する薄板状に形成された羽根基部21a〜26aを有する。さらに、この遮光羽根部材21〜26は、羽根基部の一方の面に設けられる第1軸部21b〜26bと、羽根基部の他方の面に設けられる第2軸部21c、26c(一部不図示)とを備える。これらの第1軸部21b〜26b及び第2軸部21c、26c(一部不図示)は、羽根基部21aと別の工程において(例えばアウトサート成形等により)形成される。
【0049】
また、図5において、27は、中央に開口部7aが形成されたリング状の回転部材である。回転部材27には、軸穴部27b,27c,27d,27e,27f,27gと、6つに分割された回転嵌合突起部27hと、ギア部27iと、が設けられている。
【0050】
この図5において、28は、中央に開口部28aが形成されたリング状のカム部材である。カム部材28には、カム溝部28b,28c,28d,28e,28f,28gが設けられている。
【0051】
この図5において、29は、中央に開口部29aが形成されたリング状の押え部材である。押え部材29には、穴部29bと、モータ取り付け部29cが設けられている。
【0052】
この図5において、210は、回転部材27を駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ210の軸先端には、ピニオンギア211が固定されており、押え部材29のモータ取り付け部29cに取り付けられる。
【0053】
また、ピニオンギア211は、押え部材29の穴部29bを貫通して延出され、回転部材7のギア部7iに噛み合わされる。
【0054】
この光量調節装置では、押え部材29が回転部材27と遮光羽根部材21〜26を間に挟んでカム部材28に固定される。これにより、押え部材29は、回転部材27と遮光羽根部材21〜26との光軸方向への抜けを防止する。
【0055】
この光量調節装置では、回転部材27の回転嵌合突起部27hが、押え部材29の開口部29aと嵌合して回動可能に支持される。また、遮光羽根部材21〜26の第1軸部21b〜26bは、回転部材27の軸穴部27b〜27gにそれぞれ回動可能に支受される。さらに、第2軸部21c〜26cは、カム部材28のカム溝部28b〜28gにそれぞれ摺動可能に支受される。
【0056】
この光量調節装置では、遮光羽根部材21〜26が、光軸を中心に円周方向に均等配置されている。この遮光羽根部材21〜26は、遮光性を有する羽根基部21a〜26aが重ね合わされた状態を変化させることにより絞り開口量を制御可能に構成されており、重ね合わせが大きくなる程絞り開口量が小さくなる。
【0057】
この光量調節装置では、ステッピングモータ210を駆動することにより、絞り開口の径を変化させ、光量を調整する。
【0058】
このため、光量調節装置では、図示しない制御部が、ステッピングモータ210を駆動させると、ピニオンギア211が回転する。このピニオンギア211の回転に応じて回転部材27が回転し、遮光羽根部材21〜26の第1軸部21b〜26bが光軸周りに回転駆動される。
【0059】
この動作に伴って、第2軸部21c〜26cは、カム部材28のカム溝部28b〜28gに沿って移動される。この動作で、第2軸部21c〜26cは、回転部材27の軸穴部27b〜27gを中心として相対的に回転駆動されることになり、開口部8への進入量が変化する。
【0060】
これら6枚の遮光羽根部材21〜26は、同時に回転部材27に連動して、絞り開口の径を変化させる動作を行う。この絞り開口を変化させる動作では、遮光羽根部材21〜26がカム部材28の開口部28aから退避している退避状態から、遮光羽根部材21〜26がカム部材28の開口部28aに挿入されている挿入状態まで連続的に変化する。上述のようにして、この光量調節装置では、ステッピングモータ210を駆動制御することで、絞り開口の径を変化させ、光量を調整する。
【0061】
次に、本発明の第2実施の形態に係わる遮光羽根部材について説明する。
【0062】
遮光羽根部材21〜26の羽根基部21a〜26aは、それぞれポリエチレンテレフタラートなどの樹脂材料を基材とし、遮光性を持たせるためカーボンブラック等の添加剤を適宜混合した薄肉平板材料を打ち抜き加工して形成される。
【0063】
この打ち抜き加工された羽根基部21a〜26a用の薄肉平板材料には、開口径を形成する部分となる羽根基部の端部21dに対して後加工であるブラスト処理が施される。
【0064】
なお、ここで行うブラスト処理は、被削材である遮光羽根部材端部21dに対して、非金属粒や金属粒を高速で衝突させることによって表面粗化又は軽切削を行う処理である。また、特に本実施の形態では、ウェットブラスト法を用いてこのブラスト加工処理を行っている。このウェットブラスト法とは、水などの液体に圧縮空気などの圧力を与えて形成した噴霧液滴により非金属粒や金属粒を投射して表面粗化又は軽切削を行う加工法である。
【0065】
この遮光羽根部材21〜26の遮光羽根部材端部21dに対して、後加工であるブラスト処理を行う場合には、まず、図7に示すように、被削材である羽根基部21aを、固定冶具212の平面上に、遮光羽根部材21の光束入射面が上になるように固定する。このとき、固定冶具212の遮光羽根部材1が固定される平面は、遮光羽根部材21の遮光羽根部材端部21dよりも外側で露出している。これによって、図7の領域Aに示す遮光羽根端面1eと固定冶具12の平面によって形成される隅角部ができる。そして、羽根基部の端部21dに対して図7に矢印Bで示す斜め上方向から、非金属粒又は金属粒を含む噴霧液滴を高圧で吹き付けて表面粗化又は軽切削を行うブラスト処理の加工を行う。ここで、矢印Bの方向とは、固定冶具212の平面に対して直交する方向から固定冶具212の平面が露出している方向に所定の角度だけ傾けた方向である。
【0066】
ここで、この羽根基部21aは、打ち抜き加工により形成されているので、その遮光羽根部材端部21dにおける光を通す開口の内周に対応する部分には、せん断力により打ち抜き端面の一方にバリ21hがある。このため固定冶具212に羽根基部21aを固定する際には、遮光羽根部材端部21dにおける光を通す開口の内周に対応する部分のバリ21hが削り取られる向きに固定する。
【0067】
この状態でウェットブラスト法によるブラスト加工処理を行うことにより、遮光羽根部材21〜26の遮光羽根部材端部21dは、図8(b)に示すように、表面が粗化され、かつ光軸に対して傾斜した斜面部1fが加工形成される。また、バリ21hは、削り取られている。このため、羽根基部21a〜26aにブラスト処理により斜面部21fと遮光羽根端面21gとを加工する場合には、打ち抜き加工により形成される際に発生するバリ21h〜26hを同時に除去することができる。
【0068】
このように遮光羽根部材端部1dの光を通す開口の内周に対応する部分を表面が粗化され、かつ光軸に対して傾斜した斜面部21fに加工形成した場合には、不要光を反射してゴーストやフレア等を発生させることを抑制できる。
【0069】
また、図7に示す領域Aは、ウェットブラスト法によるブラスト加工処理の際に、ブラスト処理が行われない領域となる。これは、羽根基部の端面21eと固定冶具212の平面によって形成される隅角部では、非金属粒や金属粒などの砥粒を投射する噴霧液滴の流速が低くなり、羽根基部の端面21eに対する加工力が低下するためである。
【0070】
このブラスト処理が行われない領域は、遮光羽根端面21eと固定冶具212の平面によって形成される隅角部である。この領域では、非金属粒や金属粒などの砥粒を投射する噴霧液滴の流速が低くなり、遮光羽根端面21eに対する加工力が低下するためブラスト処理が行われなくなる。
【0071】
図7に示すブラスト処理を経ることにより、遮光羽根部材端部21dは、図8(b)に示すように、ブラスト処理によって削り取られた形状となる。すなわち、この遮光羽根部材端部21dには、ブラスト処理前の羽根基部21a平面と遮光羽根端面21eの間にあたる範囲に新たな斜面部21fが形成される。これと共に、この遮光羽根部材端部21dには、遮光羽根端面21eの一部である新たな遮光羽根端面21gが形成される。
【0072】
この遮光羽根端面21gは、図7に示した噴霧液滴の流速が低下する領域Aに起因する低い加工力によって形成された形状である。この新たな遮光羽根端面21gは、羽根基部21aの外形寸法をほぼ維持したままである。つまり、図7に示すようにしてブラスト処理を行う場合には、遮光羽根端面21eの寸法精度を損なうことなしに図8(b)に示す所望の形状が得られる。
【0073】
また、ブラスト処理は、表面を粗化する効果がある。このため、斜面部21f、新たな遮光羽根端面21gは、共に、ブラスト処理前に平滑面であった遮光羽根端面21eの性状とは異なり、表面が粗化されている。尚、ブラスト処理前の遮光羽根部材端面21eは、そのまま光量調整装置に組み込まれた際に、光軸と平行な面となり、不要光の反射面となるためにゴーストやフレアなどの発生原因となる平面でもある。
【0074】
羽根基部21aは、その後第1軸部21bおよび第2軸部21を形成する工程を経て、遮光羽根部材21となる。
【0075】
また、遮光羽根部材22〜26は、上述の遮光羽根部材21と同様に形成され、本発明の第2実施の形態に係わる光量調節装置に組み込まれる。
【0076】
この光量調節装置では、ブラスト処理を施された遮光羽根部材21〜26によって形成された開口にある、光軸に平行な羽根基部の端面21gが、比較的小さい面積で且つ粗化されている。すなわち、羽根基部の端面21gは、加工前の平滑面である羽根基部の端面21eよりも小さい面積で且つ粗化されている。このため、この光量調節装置では、フレアやゴーストなどの画質低下の原因となる遮光羽根部材端面での不要反射を低減することができる。
【0077】
また、羽根基部21a〜26aが打ち抜き加工により形成される際に発生するバリ21h〜26hについても、ブラスト処理により同時に処理が可能である。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形及び変更がなされた構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
1〜6 遮光羽根部材
1f 斜面部
1g 遮光羽根端面
21a〜26a:羽根基部
21f 斜面部
21g 遮光羽根端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遮光羽根部材を回転させることにより開口径を変えて光量を調整する光量調整装置において、
前記遮光羽根部材の前記開口径を形成する部分の端面にブラスト処理を行うことで、前記遮光羽根部材の外形をほぼ維持して表面を粗化される開口端面を形成するとともに、前記開口端面に対して傾斜した斜面部とを形成することを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記遮光羽根部材は、遮光性を有する樹脂材料を射出成型することで形成され、前記ブラスト処理を行うことで、前記遮光羽根部材の外形をほぼ維持して表面を粗化される開口端面を形成するとともに、前記開口端面に対して傾斜した斜面部とを形成することを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記遮光羽根部材は、遮光性を有する平板材料を打ち抜き加工することで形成され、前記ブラスト処理を行うことで、前記遮光羽根部材の外形をほぼ維持して表面を粗化される開口端面を形成するとともに、前記開口端面に対して傾斜した斜面部とを形成することを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記遮光羽根部材を固定冶具に固定して、前記遮光羽根部材の前記開口径を形成する部分の端面に前記ブラスト処理を行うものであって、前記固定冶具の平面が前記遮光羽根部材の前記開口径を形成する部分より外側で露出するように、前記遮光羽根部材を前記固定冶具に固定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記ブラスト処理は、前記固定冶具の平面に対して直交する方向から前記固定冶具の平面が露出している方向に所定の角度だけ傾けた方向から被削材を衝突させることを特徴とする請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項6】
前記ブラスト処理は、ウェットブラスト法による加工処理であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−59237(P2011−59237A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206845(P2009−206845)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】