説明

光量調節装置

【課題】本発明は、カメラの光量調節装置に関して、簡単な構成で絞り穴の位置を高精度に設定することを目的とする。
【解決手段】光量を調節する絞り羽根3と、絞り羽根3を駆動する駆動ピン6とにより、光量を変化させて絞り値を調節する光量調節装置であって、絞り羽根3は、当該周縁部に位置合わせ用の切り欠部30を有し、当該切り欠部30は、所定の位置に形成された突起13と係合し保持されることを特徴とする。絞り羽根3の移動方向以外での、支軸5や駆動ピン6のガタの影響を、極力防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの絞り装置として搭載される光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのコンパクト化、軽量化は、年々要求が厳しくなっており、それと同時に構造の簡素化、軽量化が要求されてきている。しかし、他方でカメラの絞り装置などのカメラの機能を決定付ける部分には、依然として高い機能が要求されており、上述の構造の簡素化、軽量化の要求を実現すると同時に、絞り装置の精度には、簡単な構成で、かつ、高い精度を要求されるという、相反する要求に同時に応える必要が生じている。
【0003】
絞り羽根の位置決めとして、基板に一体に形成されたピンに当接させるものが従来より知られている。また、コイル枠からなる駆動手段を有する光量調節装置のコイル枠に、光量調節部材を移動可能に支持する支持部材を一体成型により形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−274794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絞り羽根をピンに当接させて所定位置に保持するタイプのものは、絞り羽根の進行方向に対しては正確に位置決めできるが、それ以外の方向に対しては、ロータから絞り羽根に至るまでの部品のガタの影響が出てしまっていた。また、上述の特許文献1のように絞り羽根に案内溝を設け、案内溝にピンを摺動させて絞り羽根を駆動するタイプのものも、案内溝方向に対しては、ガタの影響が出てしまっていた。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑み、簡単な構成で絞り穴の位置を高精度に設定するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願における光量調節装置の第一の解決手段として代表的な発明は、光量を調節する絞り羽根と、絞り羽根を駆動する駆動部とにより光量を変化させて絞り値を調節する光量調節装置であって、絞り羽根の周縁部には、所定の位置に形成された突起と係合する位置合わせ用の切り欠部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記絞り羽根を上記光量調節装置の基板の上に配置し、突起を基板と一体的に形成してもよい。
【0008】
前記絞り羽根には、軽量化のための肉抜き孔が設けられていてもよい。
【0009】
前記突起を多角形状に形成し、切り欠部に突起の多角形状に対応して複数の当接面を形成してもよい。
【0010】
上記光量調節装置をシャッタモジュールに搭載してもよい。
【発明の効果】
【0011】
簡単な構成で高い絞り羽根の位置精度が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、実施例1に使用される光量調節装置の平面図である。本実施例の光量調節装置1は、基板2、絞り羽根3、シャッタ羽根4、絞り羽根3の支軸5、駆動ピン6、絞り穴7、開口規制板8、シャッタ羽根4の支軸9、駆動ピン10、孔11、孔12および突起13から構成される。
【0013】
光量調節装置1は、図2で示す開口部20の開口を全開にしたり絞り羽根3を進出させて小径の穴とすることで、光の透過量を調節する。本実施例では、光の透過量を調節したのちに、シャッタ羽根4が開口部20を閉じ、被写体を撮像する機能が備えられている。年々、要求されているカメラのコンパクト化、軽量化に伴い、光量調節装置1の構造の簡素化、軽量化が求められている。
【0014】
基板2は、以下に説明する種々の部材を搭載するための基板で開口21を有している。特に制限されないが、本実施例では、樹脂製の基板を採用している。
【0015】
絞り羽根3は、開口部20よりも小径の絞り穴7を有する薄い金属羽根で、特に制限されないが、本実施例では光の反射を防ぐため黒色に着色されている。
【0016】
シャッタ羽根4は、シャッタボタンを押すと、所望の露出時間後,開口部20を覆い撮影を終了する。
【0017】
支軸5は、絞り羽根3が回転する基軸となる支軸で、駆動ピン6は、絞り羽根3が支軸5を中心に回転するための駆動部である。
【0018】
絞り穴7は、開口部20よりも小径の穴で開口部20を覆い絞り羽根7から不図示の撮像素子へ外光を入射させることによって光量が調節される。
【0019】
開口規制板8は、図2で示す開口部20を有している。この開口規制板8に撮影のための開口部20を設けることにより、図示しないレンズとの距離を、近づけることができる。すなわち、樹脂製の基板2は厚いため、基板2で撮影のための開口を作ると、基板2の厚み分レンズと開口部20を近づけることができなくなる。基板2には不図示のレンズ鏡筒が侵入できる逃げ穴となる開口21を設けて薄い開口規制板8で撮影のための開口部20を形成することにより、レンズと開口部20とを近づけることができ、光学的特性を良くすることができる。
【0020】
支軸9は、シャッタ羽根4が回転する基軸となる支軸で、駆動ピン10は、シャッタ羽根4が支軸9を中心に回転するための駆動部である。
【0021】
孔11は、絞り羽根3を軽量化するために設けられた肉抜き孔である。絞り羽根3は、高速で移動する必要があることから、軽量の材質を選択する他に、このような孔を複数空けて軽量化を実現している。
【0022】
孔12は、シャッタ羽根4を軽量化するために設けられた肉抜き孔である。シャッタ羽根4は、高速で移動する必要があることから、軽量の材質を選択する他に、このような孔を複数空けて軽量化を実現している。
【0023】
突起13は、絞り羽根3と係合し、絞り羽根3を保持する。絞り羽根3は、その周縁部に位置合わせ用の切り欠部を有しており、この切り欠部が突起13と係合する。絞り羽根3は、開口部20よりも小径の絞り穴7を有するが、絞り穴7を設計通りに開口部20の中心に保持することは困難で、絞り羽根3の移動方向で、支軸5や駆動ピン6のガタの影響を受けやすい。このようなガタが、絞り羽根3の絞り穴7の位置精度を低下させ、カメラの精度を落とす原因となる。
【0024】
なお、この突起13は、光量調節装置1の地板の上に配置されている。具体的には、突起213が基板2と一体的に形成されている。本実施例では、このように突起13と絞り羽根3とを係合することで、ガタ等による絞り羽根3の進行方向以外の絞り羽根3の位置ずれを防ぎ、絞り穴7の位置を高精度に設定することができるものである。
【0025】
図2は、実施例1に使用される光量調節装置の平面図である。本図では、絞り羽根3が移動しない全閉状態になっているため、図1で図示されなかった開口部20が、表示されている。
【0026】
基板2に設けられている開口21(破線部)は、レンズ鏡筒が差し込まれる箇所である。樹脂製の基板2は厚いため、基板2で撮影のための開口を作ると、レンズと開口部20を、近づけることができなくなる。そのため、本実施例では、薄い開口規制板8を配置して開口部20を形成することにより、レンズ鏡筒と、開口部20との距離を、近づけることができる。
【0027】
さらに、基板に一体的に突起13を形成することにより、絞り穴7の位置を高精度に設定することができる。すなわち、きわめて簡易な構造で、カメラの高精度化を実現することができる。
【0028】
図3は、実施例1に使用される絞り羽根の拡大図である。切り欠部30は、絞り羽根3の周縁部に設けられた、突起13との係合部である。切り欠部30は、突起13と係合し、絞り羽根3を保持する。突起13が絞り羽根3を保持することで、絞り穴7の位置を高精度に設定することができるものである。
【0029】
また、本実施例では、絞り羽根3が突起13と係合する衝撃で変形しないよう幅広部31を設け、この幅広部31に切り欠部30を設けている。
【0030】
図4は、実施例2に使用される絞り羽根の拡大図である。切り欠部40は、絞り羽根3の周縁部に設けられた、突起41との係合部である。切り欠部40は、突起41と係合し、絞り羽根3を保持する。
【0031】
本実施例では、絞り羽根3の周縁部に設けられた位置合わせ用の切り欠部40は、複数の当接面を有し、突起41と複数の当接面によって係合し保持されている。切り欠部と係合する突起41は、多角形状、具体的には、六角形状に形成されている。
【0032】
突起41を六角形状に形成することにより、絞り羽根3の保持特性を向上させ、絞り穴7の位置を高精度に設定することができる。
【0033】
なお、切り欠部の拡大図42に、絞り羽根3の周縁部に設けられた、位置合わせ用の切り欠部40の拡大図を示す。本実施例では、六角形状の突起41の形状に合わせて、切り欠部40も拡大図42に示すように、多角形状に形成している。このような構成を採用することにより、簡単な構成で高い絞り精度が可能となる。
【0034】
図5は、実施例3に使用される絞り羽根の拡大図である。切り欠部50は、絞り羽根3の周縁部に設けられた、突起51との係合部である。切り欠部50は、突起51と係合し、絞り羽根3を保持する。
【0035】
本実施例では、絞り羽根3の周縁部に設けられた位置合わせ用の切り欠部50は、複数の当接面を有し、突起51と複数の当接面によって係合し保持されている。切り欠部50と係合する突起51は、多角形状、具体的には、八角形状に形成されている。
【0036】
突起51を八角形状に形成することにより、絞り羽根3の保持特性を向上させ、絞り穴7の位置を高精度に設定することができる。
【0037】
なお、切り欠部の拡大図52に、絞り羽根3の周縁部に設けられた、位置合わせ用の切り欠部50の拡大図を示す。本実施例では、八角形状の突起51の形状に合わせて、切り欠部50も拡大図52に示すように多角形状に形成している。このような構成を採用することにより、簡単な構成で高い絞り精度が可能となる。
【0038】
図6は、本実施の形態に使用されるシャッタモジュールの概観図である。シャッタモジュール60は、上述の実施例1、実施例2あるいは実施例3の光量調節装置1のいずれも搭載することができる。
【0039】
多層フレキシブルプリント基板61は、電気配線を介して、基板2と接続されている。多層フレキシブルプリント基板61は、多層のケーブルが基板と一体化しており、全層とも基材が主としてポリイミドで形成され、温度およびスルーホールの信頼性を持っている。図示しない接続部は、シャッタモジュール60が搭載されるデバイス側のコントロール部と接続される。
【0040】
また、シャッタモジュール60は、本発明の光量調節装置1に、シャッタ機構の他に、さらにオートフォーカス機構、ズーム機構およびマクロ機構などを、付加したものであってもよい。
【0041】
なお、本実施例では、光量調節装置1に、シャッタ機構を搭載しているが、本発明の趣旨から、これに限定されることはなく、絞り機能単独の構成にしてもよい。また、本発明は、固体撮像素子を搭載するデバイスであれば、デジタルカメラ、携帯電話、携帯用パーソナルコンピュータ、車載あるいはセキュリティなどの多用途で用いられる、さまざまなデバイスに用いることができる。また、フィルムを使用するカメラに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に使用される光量調節装置の平面図である。
【図2】実施例1に使用される光量調節装置の平面図である。
【図3】実施例1に使用される絞り羽根の拡大図である。
【図4】実施例2に使用される絞り羽根の拡大図である。
【図5】実施例3に使用される絞り羽根の拡大図である。
【図6】本実施の形態に使用されるシャッタモジュールの概観図である。
【符号の説明】
【0043】
1 光量調節装置
2 基板
3 絞り羽根
4 シャッタ羽根
5 支軸
6 駆動ピン
7 絞り穴
8 開口規制板
9 支軸
10 駆動ピン
11 孔
12 孔
13 突起
20 開口部
21 レンズ鏡筒が差し込まれる開口
30 切り欠部
31 幅広部
40 切り欠部
41 突起
42 切り欠部の拡大図
50 切り欠部
51 突起
52 切り欠部の拡大図
60 シャッタモジュール
62 多層フレキシブルプリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量を調節する絞り羽根と前記絞り羽根を駆動する駆動部とにより光量を変化させて絞り値を調節する光量調節装置であって、
前記絞り羽根の周縁部には、所定の位置に形成された突起と係合する位置合わせ用の切り欠部が形成されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記絞り羽根を前記光量調節装置の基板の上に配置し、前記突起を前記基板と一体的に形成したことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記絞り羽根には、軽量化のための肉抜き孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記突起を多角形状に形成し、上記切り欠部に前記突起の多角形状に対応して複数の当接面を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記光量調節装置をシャッタモジュールに搭載したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光量調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−284770(P2006−284770A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102809(P2005−102809)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】