説明

光量調節装置

【課題】 従来の光量調節装置では、機械制御式絞り機構の他に液晶セルによる絞り機構を備える必要があるため、部品点数が増えて機械的な構成が複雑になるだけでなく、絞り駆動回路の構成も複雑になり、装置全体が大型化してしまう。
【解決手段】 回転部材と、当該回転部材を駆動する駆動部と、開口部を形成するように互いに重なり合うように配置されて前記回転部材に係合する複数の絞り羽根と、前記回転部材の回転により前記開口部が予め決められた開度になるように前記複数の絞り羽根を作動させるカム部材と、を有する光量調節装置において、前記回転部材と前記駆動部材との嵌合部は、少なくとも一方の嵌合面が傾斜面で構成されており、前記回転部材と前記駆動部との嵌合部における光軸に直行する方向の隙間が、前記複数の絞り羽根により形成される絞り開口径に応じて変化するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量調節装置を搭載したレンズ鏡筒の、光量調節装置の機械的構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光量調節装置として、特許文献1には、最小絞り側に、印加電圧の制御により光透過状態と非光透過状態となる液晶セルを備え、開放絞り側に、機械制御式絞り機構を備えたものが開示されている。このような構成により、開放側よりも機械的ガタ等による光透過開口の誤差の影響を受けやすい小絞り側の開口精度を向上させるために、液晶セルによる微細な光量調節を行えるようにしている。
【0003】
また、特許文献2で示されている光量調整装置では、出力軸に設けられた出力歯車と、風車に形成された歯車部と、これらの歯車間に設けられた中間歯車を備え、出力軸からの出力を中間歯車を介して風車に伝達している。そして、風車と連動する複数の絞り羽根を相対移動させて任意の絞り開口径を設定する光量調整装置において、中間歯車を所定の方向に付勢し、各歯車間における歯車の噛み合せによるメカ的なガタの無い構成としている。
【特許文献1】特開平01−177521号公報
【特許文献2】特開2003−121901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光量調節装置では、機械制御式絞り機構の他に液晶セルによる絞り機構を備える必要があるため、部品点数が増えて機械的な構成が複雑になるだけでなく、絞り駆動回路の構成も複雑になり、装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
また、従来の光量調節装置では、中間歯車と機械的ガタを無くすための付勢部材が必要となるので、部品点数が増えて機械的な構成が複雑になり、装置の大型化の一要因となっている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、部品点数を増やすことなく、少なくとも小絞り側の絞りの開口精度を向上できる光量調節装置の実現を例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の光量調節装置は、回転部材と、当該回転部材を駆動する駆動部と、開口部を形成するように互いに重なり合うように配置されて前記回転部材に係合する複数の絞り羽根と、前記回転部材の回転により前記開口部が予め決められた開度になるように前記複数の絞り羽根を作動させるカム部材と、を有する光量調節装置において、前記回転部材と前記駆動部材との嵌合部は、少なくとも一方の嵌合面が傾斜面で構成されており、前記回転部材と前記駆動部との嵌合部における光軸に直行する方向の隙間が、前記複数の絞り羽根により形成される絞り開口径に応じて変化するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を増やすことなく、小絞り側で発生する迫り上がりを抑えるとともに、少なくとも小絞り側の開口精度を向上させることが可能となる。そのため、迫り上がりの量を見込む必要がほとんどなく、光学設計の自由度を高くし、良好な光学性能を持った光学系が得られるとともに、絞りの開口精度向上のために特別な部品が必要ないため、装置を小型にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[カメラシステム]
先ず、本発明の光量調節装置を適用したレンズ装置が装着されたカメラシステムについて説明する。
【0012】
図9は、本発明の光量調節装置を適用したレンズ装置が装着されたカメラシステムを示すブロック図である。
【0013】
図9において、200はカメラ本体、300はカメラ本体200に着脱自在な交換レンズ本体であり、カメラ本体200に交換レンズ本体300が装着されて、レンズレンズ交換式オートフォーカス(AF)一眼レフカメラを構成している。
【0014】
201はマイクロコンピュータで構成されるカメラ制御部で、後述するカメラ本体200に搭載された各種装置の動作を制御する。更に、カメラ制御部201は、レンズ本体300が装着された状態で、レンズ接点302とカメラ接点202が接続されて、レンズ制御部301との間で通信を行う。
【0015】
203はユーザが操作可能な電源スイッチであり、カメラ制御部201を起動してカメラ本体200の各アクチュエータやセンサ等への電源供給を行い、動作可能な状態とするためのスイッチである。
【0016】
204はユーザが操作可能な2段ストローク式のレリーズスイッチで、その信号はカメラ制御部201に入力される。カメラ制御部201は、レリーズスイッチ204から入力された信号に従い、以下の撮影動作を行う。
【0017】
即ち、第1ストロークスイッチがONされSW1信号が出力されると、測光装置205による露光量演算や測距装置208による被写体の測距演算や測距結果に基づいた合焦装置306によるフォーカスレンズの合焦動作や合焦判定等の撮影準備状態に移行する。
【0018】
また、第2ストロークスイッチがONされSW2信号が出力されると、レンズ本体300のレンズ制御部301に対して後述する絞り装置307の駆動命令を出力する。尚、レンズ制御部301は、後述するレンズ本体300の各種装置の動作を制御すると共に、カメラ本体200に装着された状態で、レンズ接点302とカメラ接点202が接続されて、カメラ制御部201との間で通信を行う。
【0019】
レンズ制御部301は絞り装置307を駆動し、カメラ制御部201は露光装置206に露光開始指令を出力して実際に露光動作を実行させ、露光装置206から露光終了信号を受信すると記憶装置207に記録開始指令を出力して撮影画像の記憶を行う。
【0020】
209は表示装置であり、カメラ制御部201からの表示制御指令に基づいて、絞り値やシャッタスピード等の各種撮影条件や、撮影枚数、電池残量、各種モードの表示を行う。
【0021】
306は合焦装置であり、フォーカスレンズ及びその保持部材と、フォーカスレンズを目標位置まで駆動するためのレンズ駆動手段と、レンズ駆動手段の駆動力をフォーカスレンズに伝達する伝達機構と、を有する。更に、合焦装置306は、カメラ制御部201から出力されたフォーカスレンズの移動量の情報に従い、レンズ制御部301によって制御され、レンズ駆動手段に駆動指令を出力するレンズ駆動回路を有する。
【0022】
307は絞り装置であり、絞り開口面積(開度)を設定する絞り機構と、絞り機構を駆動するための絞り駆動部と、カメラ制御部201からの絞り動作指令に従ってレンズ制御部301により制御される。そして、絞り装置307は、絞り駆動部に駆動指令を出力する絞り駆動回路とを有する。
【0023】
尚、本発明の光量調節装置は、上記絞り装置の絞り機構及び絞り駆動部を含む概念である。
【0024】
[光量調節装置の構成]
図1は、本発明の光量調節装置を適用した実施形態の絞り装置の分解図である。図2は、図1の絞り羽根の斜視図である。図3は、図1の絞り羽根の正面図である。図4は、図1のカムプレートの斜視図である。図5は、図1の絞り羽根とカムプレートとの位置関係を示す正面図である。
【0025】
図1において、1は合成樹脂等の弾性材料で形成されたカバー部材であり、後述する絞り駆動部としてのローターユニットをカバーする。カバー部材1は、後述の回転軸4を軸支する軸受1a、後述のボビン5の端子を挿通させる穴部1b−1〜1b−4を有する。また、カバー部材1は、後述の位置検出素子12の抜けを抑える張り出し片1c、張り出し片1cに形成されて位置検出素子12の端子部12aを挿通させる穴部1c−1〜1c−3、位置検出素子12の端面部に接触する突起部1j(図10)を有する。更に、カバー部材1は、後述のケース部材13に締結される座部1d、座部1dに形成された挿通穴1d−1とスナップフィット結合するように先端部に係止爪部が形成された弾性片部1k(図10)を有する。更に、カバー部材1は、座部1dと後述の駆動部材を収納する収納部とを橋渡しする薄肉片部1f(図10)、ケース部材13と嵌合することにより位置決めするための嵌合片部1e−1,1e−2(図10)を有する。また、カバー部材1は、後述するヨーク部材9を嵌合させて位置決めするための嵌合部1g−1,1g−2,1h−1〜1h−4(図10)を有する。
【0026】
2は永久磁石で形成されたロータ、3はロータ2を接着等で固定するための円盤形状のコア、4はコア3を圧入等で固定するための回転軸である。5a,5bは合成樹脂等で形成されたボビンで、給電のための端子部を有しており、コイル6a,6bが取り付けられると共に、端子部にコイルの引き出し線が連結され、半田によるメッキ処理が施されている。
【0027】
7は潤滑性の高い材料で形成され、コア3の端面部と後述の軸受10の端面部の摺動摩擦を低減させるためのワッシャである。8は絶縁性のあるシート材により形成され、コイル6a,6bと後述のヨーク9の間に配置されて両者が導通しないようにするためのシート部材であり、後述の軸受10の逃げ穴部8aと後述のヨーク9の逃げ穴部8b−1,8b−2が形成されている。
【0028】
9は軟磁性材料で形成されたヨークであり、ロータ2と対向するように曲げられたステータ部9b−1,9b−2、後述の軸受10を圧入等により固定するための穴部9a、カバー部材1と嵌合するための嵌合面部9c−1〜9c−6を有している。軸受10は磁性材料で形成され、回転軸4が係合する軸受穴10aとフランジ部10bとを有している。
【0029】
11はピニオンで、回転軸4の先端に圧入等により固定されるための穴部11aと、駆動部の回転力を後述のロータリープレート14に伝達するためのギヤ部11bとを有している。12は後述のロータリープレート14の回転位置を検出するためのフォトインタラプタ等の位置検出素子であり、端子部12aを有する。
【0030】
13は合成樹脂等で形成されたケース部材であり、光軸方向に突出した突出部13aを有する。突出部13aには、カバー部材1の座部1dの裏面に当接する受け面部13a−3が形成されている。また、突出部13aには、嵌合片部1e−1,1e−2の嵌合端面部1e−1−a、1e−2−a(図10)に嵌合する嵌合突起部13a−2が形成されている。また、突出部13aには、締結部材17を締め込む穴部13a−1が形成されている。
【0031】
また、ケース部材13には、ピニオン11を挿通させる穴部13b、軸受10のフランジ部10bを嵌合させる穴部13c、ヨーク9の端面部に当接する座面部13dが形成されている。また、ケース部材には、位置検出素子12を収納する収納部13e、後述のロータリープレート14の遮蔽板部14aの逃げ穴13gが形成されている。また、ケース部材13には、弾性片部1k(図10)の挿通穴13f、後述のカムプレート16の係止爪部16b−1〜16b−3が係合する係止溝13h−1〜13h−3が形成されている。また、ケース部材13には、位置決め軸16a−1,16a−2に係合する穴部及び溝部13i−1,13i−2が形成されている。また、また、ケース部材13には、後述のロータリープレート14のリブ部14b−1〜14b−6が係合する穴部13jが形成されている。
【0032】
14は合成樹脂等で形成された回転部材としてのロータリープレートであり、位置検出素子12の投射光を遮蔽する遮蔽板部14a、穴部13jに係合してロータリープレート14を光軸中心に回転させるリブ部14b−1〜14b−6を有する。ここで、穴部13jとリブ部14b−1〜14b−6の係合状態について図12を用いて説明する。穴部13jには全周に傾斜面13j−1が設けられていて、ロータリープレート側に向かって穴部の径が広がるような傾斜になっている。また、ロータリープレート14のリブ部14b−1〜14b−6の外周面にも傾斜面(14b−2〜3、14b−5〜6は不図示であるが、14b−1、14b−4と同様の形状である)が施されている。そして、リブ部14b−1〜14b−6の外周面の傾斜面は、ケース部材側にリブ外径が小さくなるような傾斜になっている。また、図12は開放状態を示しており、この状態では、ロータリープレート14が図中Y(光軸)方向に移動可能なクリアランスが確保されている。つまり、傾斜面13j−1と4b−1〜14b−6は光軸方向(図中Y方向)と光軸に直交する方向の若干のクリアランス(隙間)がある状態となっている。特にロータリープレート14の光軸方向(図中Y方向)のクリアランスは図中C、ロータリープレート14とカムプレート16の光軸方向のクリアランスは図中Dとなっている。
【0033】
ロータリープレート14は、ピニオン11のギヤ部11bに噛み合い、ロータリープレート14に回転力を伝達するギヤ部14cを有する。また、ロータリープレート14には、後述の絞り羽根15の軸部15a−1,15b−1,15c−1,15d−1,15e−1,15f−1を係合させるための穴部14d−1〜14d−6が形成されている。また、ロータリープレート14には、ケース部材13の端面部に光軸方向に当接してプレート14を光軸方向に位置決めするための突起部14e−1〜14e−3(14e−3は不図示、3箇所の突起部は略光軸まわりに等分に配置される)が形成されている。14fは開口径である。
【0034】
15a〜15fは、合成樹脂又は金属薄板等で形成された絞り羽根であり、穴部14d−1〜14d−6に係合する軸部15a−1,15b−1,15c−1,15d−1,15e−1,15f−1を有する。また、絞り羽根15には、後述のカムプレート16のカム穴16c〜16hに係合する軸部15a−2,15b−2,15c−2,15d−2,15e−2,15f−2(15b−2,15c−2,15d−2は不図示)が形成されている。
【0035】
図2及び図3は図1の絞り羽根の拡大図である。絞り羽根15aの片面には、突起部15a−3が形成されている。この突起部15a−3は、射出成型により絞り羽根15aに一体的に形成されている。この突起部15a−3は他の絞り羽根15b〜15fにも同様に形成されている(図5の15a−3〜15f−3)。
【0036】
16はカム部材としてのカムプレートであり、カム穴16c〜16hを有する。また、カムプレート16は、ケース部材13との位置決めのための軸部16a−1,16a−2、ケース部材13にカムプレート16をスナップフィット結合させるための係止爪部16b−1〜16b−3、開口穴部16kを有する。16p〜16uは、カム穴16c〜16hと開口穴部16kの外周との間に設けられる、傾斜面部であり、前述の絞り羽根15a〜15fの突起部15a−3〜15f−3に当接する。これら傾斜面部16p〜16uは、絞り羽根15a〜15fが小絞り側へ移動するほど徐々に高さが高くなるような傾斜面を有する。図5は絞り羽根15a〜15fが小絞り側にある状態を示しており、小絞り側では突起部15a−3〜15f−3は傾斜面部16p〜16uの高さが高い位置にある。
【0037】
次に、各部品の相互関係について組立手順に従って説明する。
【0038】
先ず、ヨーク9に軸受10が取り付けられる。ヨーク9の穴部9aに軸受10の外形が圧入等によって固定される、その際、軸受10のフランジ部10bがヨーク9の端面部に当接し、軸受10のヨーク9に対する位置が決まる。
【0039】
次に、ヨーク9にシート部材8を敷設する。その際、ヨーク9のステータ部9b−1,9b−2に穴部8b−1,8b−2を挿通させる。
【0040】
次に、コイル6a,6bが取り付けられたボビン5a、5bの中空穴部(不図示)をヨーク9のステータ部9b−1,9b−2挿通させる。
【0041】
次に、ロータ2と回転軸4が一体となったローターユニットの回転軸4にワッシャ7を挿通し、回転軸4の端部を軸受10の穴部10aに係合させる。
【0042】
次に、ヨーク9をカバー部材1に取り付ける。その際、ヨーク9の嵌合面部9c−1〜9c−6が嵌合部1h−1〜1h−4,1g−1,1g−2にそれぞれ嵌合する。また、この時に嵌合部の一部、例えば9c−5,9c−6と1g−1,1g−2を圧入すると、ヨーク9がカバー部材1に固定され、組立の際に不用意に分解してしまうことがなくなる。上述した組立後の状態を図5に示す。
【0043】
次に、ピニオン11を回転軸4の先端部に圧入等により固定する。
【0044】
次に、カバー部材1をケース部材13に取り付ける。
【0045】
図11に示すように、ピニオン11まで取り付けた状態のカバー部材1を、光軸方向にケース部材13に移動させていく。その際、位置検出素子12をケース部材13の収納部13eに収める。更にカバー部材1をケース部材13に接近させていき、嵌合面部1e−1−a、1e−2−a(図10)を突起部13a−2(図1)にそれぞれ嵌合させる。また、軸受10のフランジ部10bをケース部材13の穴部13cに嵌合させる。これらの嵌合により、カバー部材1がケース部材13に位置決めされる。これらの嵌合と同時に、穴部1c−1〜1c−3に端子部12aを挿通させる。そして、更にカバー部材1をケース部材13に接近させていくと、座部1dの端面部が受け面部13a−3に当接する。そして、締結部材17により締め込まれ、カバー部材がケース部材に固定される。
【0046】
一方、カバー部材1をケース部材13に取り付けた状態では、カバー部材1の係止爪部1kがスナップフィット結合により、ケース部材に固定される。
【0047】
[迫り上がり現象及びその対策]
上述した光量調節装置では、複数の絞り羽根15a〜15fが互いに摺接するように重ねて配置されている。つまり、絞り羽根15a上に絞り羽根15bを重ね、絞り羽根15b上に絞り羽根15cを重ねていくことで順次組み付けられる。最後の絞り羽根15fは絞り羽根15aの下に配置される。このように組み付けられた絞り羽根15a〜15fを小絞り側へ作動させると、下に配置された絞り羽根がその上に配置された絞り羽根を押し上げるため、全ての絞り羽根で形成される開口部付近が迫り上がる現象が発生する。この迫り上がり現象を図6及び図7を参照して説明する。
【0048】
図6は開放位置での開口部付近の3枚の絞り羽根15a〜15cの状態を示している。Xは光軸方向を示している。また、図中上方がカムプレート側、下方がロータリープレート側である。絞り羽根15bは絞り羽根15aの下に配置され、絞り羽根15cの上に配置されているので、絞り羽根15bは図6のように斜めに傾いた状態となる。この状態で、絞り羽根15bの根元付近(図中左端)は撓みが生じているため、絞り羽根15aとの接触部αには絞り羽根15aを押し上げる力f1(光軸方向の分力はf1’)が作用する。その分力f1’に相当する力が他の絞り羽根にも同様に作用するので、絞り羽根の開口部付近が、図中上方へ盛り上がることになる。ここで、図6は開放状態であるため分力f1’が小さく、盛り上がりの量は小絞り状態に比べて小さい。
【0049】
これに対して、図7の小絞り状態では、開放状態よりも絞り羽根15bの根元付近(図中左端)は大きく撓みが生じているため、絞り羽根15aとの接触部βには絞り羽根15aを押し上げる力f2(光軸方向の分力はf2’)が作用する。ここで、f2’>f1’となるため、盛り上がる量は開放状態よりも大きくなる。従って、図6の開放状態から小絞り状態へ作動するほど、盛り上がる量が大きくなり、迫り上がり現象が発生する。
【0050】
ここで、本実施形態では、上記迫り上がり現象を抑えるために、絞り羽根に設けた突起部が、カムプレートに設けた傾斜面部に当接する構成となっている。この構成について、図8を参照して説明する。
【0051】
図8は1枚の絞り羽根15aが小絞り側に作動した状態を示している。絞り羽根15aの軸部15a−1がロータリープレート14の穴部14d−6に係合している。絞り羽根15aに設けられた突起部15a−3が傾斜面部16pの高さが高い位置で当接しているため、穴部14d−6と軸部15a−1の間のガタ(隙間)と絞り羽根15aの若干の撓みにより、絞り羽根15aは図中上方へ傾いた状態となる。ここで、絞り羽根の開口部付近の傾き方向は、前述の迫り上がり現象が発生する方向とは反対方向のロータリープレート14側である。このように、絞り羽根15aの突起部15a−3が傾斜面部16pに当接し、絞り羽根15aを、迫り上がり現象が発生する方向とは反対方向に傾けることで、絞り羽根の開口部付近の光軸方向への盛り上がりを小さくすることができる。
【0052】
[絞り開口精度向上の構成]
さて、本発明の装置では、絞り羽根を迫り上がり現象が発生する方向とは反対方向に傾ける構成とすることで、絞り羽根の開口部付近の光軸方向への盛り上がりを小さくしている。つまり、絞り羽根の迫り上がり方向とは逆の力で絞り羽根を押えて、迫り上がりを小さく抑えている。
【0053】
図13は、絞り羽根の迫り上がる力と、カムプレートの斜面部が絞り羽根の突起部を押圧する力と、ロータリープレートの端面より各絞り羽根が受ける力の関係を示す図である。図13は絞り羽根による開口径が小絞り付近の状態を示している。この時絞り羽根には迫り上がる力f15が発生する。
【0054】
しかし、絞り羽根の迫り上がりを抑えるためにカムプレート16の傾斜面部16p〜16uが絞り羽根15の突起部15a−3〜15f−3を押圧する力f15a−3〜f15f−3が発生する。なお、f15b−3、f15c−3、f15e−3、f15f−3は不図示であるが図13と同様の力が発生する。
【0055】
このような力が発生することによって絞り羽根の迫り上がりは抑えられるが、ロータリープレート14とカムプレート16の光軸方向のクリアランス(絞り羽根の収納スペース)が小さいと、絞り羽根が図13に示すように絞り羽根の面に撓みが残ることになる。その撓みを解放しようとする力によって、ロータリープレート14がケース部材13の方向へ移動し、傾斜面14b−1〜14b−6が傾斜面13j−1に当接して、付勢力f13j−1が発生した状態でロータリープレート14の移動が停止する。また、この状態では、絞り羽根の撓みがまだ残った状態であり、絞り羽根が接触するロータリープレート14の端面より各絞り羽根が力f15a−4〜f15f−4を受ける。そして、絞り羽根が迫り上がろうとする力f15と、突起部15a−3〜15f−3を押圧する力f15a−3〜f15f−3と、ロータリープレート14の端面より各絞り羽根が受ける力f15a−4〜f15f−4が釣り合った状態となっている。また、付勢力f13j−1と各絞り羽根が受ける力f15a−4〜f15f−4が釣り合った状態となっている。またこの状態では、ロータリープレート14の光軸方向のクリアランスは図中E(C>E)、ロータリープレート14とカムプレート16の光軸方向のクリアランスは図中F(D<F)となっている。
【0056】
ところで、一般的な光量調節装置では、絞り羽根の動きに対する光量変化の割合が、開放側よりも小絞り側の方が大きい。つまり、開放側よりも小絞り側の方が部品精度やガタによる絞り開口径の誤差の影響を受けやすい。この誤差の影響を抑えるために、部品精度を厳しく管理したり、ガタを無くすために部品点数を増やしたりしていた。しかし、部品精度を厳しく管理することは生産性を低下させ、部品点数の増加は装置の大型化を招くことになる。しかし、本発明においては、絞り開口径に応じて、回転部材と駆動部との嵌合部における光軸に直交する方向の隙間が変化する構成とした。具体的には、上述のように小絞り側で付勢力f13j−1が発生している状態では、傾斜面14b−1〜14b−6が傾斜面13j−1に当接しているため、光軸方向にも、光軸に直交する方向にもガタがない状態となる。また、ケース部材とロータリープレートに設けられた傾斜面(どちらか一方に設けられていればよい)によってロータリープレートの開口径14fの中心が光軸に一致するように構成される。したがって、ロータリープレート14に係合した絞り羽根15a〜15fが精度よく位置決めされる。つまり、小絞り側での絞り開口径の精度が向上し、撮影者の意図した絞り値通りの撮影が行える。
【0057】
上記構成は小絞り側の開口精度の向上に有効であるが、開放側より付勢力f13j−1が得られるようにすれば、開放側〜小絞り側まで絞り口径の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の光量調節装置を適用した実施形態の絞り装置の分解図である。
【図2】図1の絞り羽根の斜視図である。
【図3】図1の絞り羽根の正面図である。
【図4】図1のカムプレートの斜視図である。
【図5】図1の絞り羽根とカムプレートとの位置関係を示す正面図である。
【図6】光量調節装置の迫り上がり現象を説明する図である。
【図7】光量調節装置の迫り上がり現象を説明する図である。
【図8】本実施形態の光量調節装置による迫り上がり現象の防止策を説明する図である。
【図9】本発明の光量調節装置を適用したレンズ装置が装着されたカメラシステムを示すブロック図である。
【図10】本発明の光量調節装置の駆動部の斜視図である。
【図11】本発明の光量調節装置の駆動部の取り付けを説明する図である。
【図12】本発明の光量調節装置の構成の一部を説明する図である。
【図13】絞り羽根の迫り上がる力と、カムプレートの斜面部が絞り羽根の突起部を押圧する力と、ロータリープレートの端面より各絞り羽根が受ける力の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 カバー部材
2 マグネット
3 コア
4 回転軸
5 ボビン
6 コイル
7 ワッシャ
8 シート部材
9 ヨーク
10 軸受
11 ピニオン
12 位置検出素子
13 ケース部材
14 ロータリープレート
15 絞り羽根
16 カムプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、当該回転部材を駆動する駆動部と、開口部を形成するように互いに重なり合うように配置されて前記回転部材に係合する複数の絞り羽根と、前記回転部材の回転により前記開口部があらかじめ決められた開度になるように前記複数の絞り羽根を作動させるカム部材と、を有する光量調節装置において、
前記回転部材と前記駆動部との嵌合部は、少なくとも一方の嵌合面が傾斜面で構成されており、該回転部材と該駆動部との嵌合部における光軸に直交する方向の隙間が、前記複数の絞り羽根により形成される絞り開口径に応じて変化するように構成されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記絞り開口径が小さくなるにしたがって、前記光軸に直交する方向の隙間が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−20438(P2009−20438A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184602(P2007−184602)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】