説明

光電変換デバイス及びその製造方法、並びに太陽電池

【課題】 光電変換特性の改善を図ることができる光電変換デバイス及びその製造方法、並びに太陽電池を提供する。
【解決手段】 本発明は、光電変換デバイス(光電変換素子100)又は太陽電池等に関し、n型半導体及びp型半導体を含む光電変換層3を備えるようにすると共に、この光電変換層3が、層内に光電場を形成すると共に入射光の波長よりも小さい部分を含む電場形成領域4を有するようにし、光電変換層3における光電変換特定の改善を図るようにしたことに特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換デバイス及びその製造方法、並びに太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換デバイスとしては、例えば、太陽電池が知られている。近年、石油エネルギー等の代替エネルギーとして太陽光エネルギーの有効利用を促進するため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池の開発が広く行われている。
【0003】
ここで、太陽電池としては、例えば、主に単結晶または多結晶シリコンを用いたものが開発され実用化されている。しかしながら、シリコン系の太陽電池は、その製造に高純度シリコンが必要とされ、製造工程は高温プロセスからなり、製造に要するエネルギーを考慮すると、太陽電池として必ずしも省エネルギー技術に十分貢献しているとは言えないという問題がある。また、原料のシリコンの供給が安定しない、またはプロセスコストが下がらない等の問題もあり、太陽光発電の十分な普及には至っていない。
【0004】
近年、上記の点を改良するため、製造に省エネルギーが期待でき、製造コストも安価な、有機材料を用いた太陽電池が開発されている。具体的には、有機材料を用いた湿式太陽電池として、色素増感型太陽電池が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、有機材料を用いた別の太陽電池としては、全固体型の有機薄膜太陽電池が挙げられる。このような全固体型の有機薄膜太陽電池は、電子供与体からなる層と電子受容体からなる層とを積層して、ヘテロ接合界面における光誘起によって生じる電荷移動を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の色素増感型湿式太陽電池は、電解質溶液を用いた系であるために、液漏れや液中のヨウ素抜けが生じる等の問題があることから、未だ実用化には至っていない。一方、全固体型の有機薄膜太陽電池は、シリコン系太陽電池と比較して、変換効率が非常に低く、光電変換素子としての基本性能の改善が問題となっている。
【0008】
なお、上述した諸問題は、特に太陽電池のような光電変換デバイスにおいて顕著であるが、その他、高効率の光電変換デバイスを実現する際においても同様に発生するおそれがある。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み、光電変換特性の改善を図ることができる光電変換デバイス及びその製造方法、並びに太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る光電変換デバイスは、n型半導体及びp型半導体を含む光電変換層を備え、前記光電変換層は、当該光電変換層内に光電場を形成すると共に入射光の波長よりも小さい部分を含む電場形成領域を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る光電変換デバイスは、n型半導体及びp型半導体を含むバルクへテロ結合層を有する光電変換層を備え、前記光電変換層は、前記バルクへテロ結合層に光電場を形成すると共に入射光の波長よりも小さい部分を含む電場形成領域を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、上記目的を達成するための本発明に係る太陽電池は、上述した光電変換デバイスを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明に係る光電変換デバイスの製造方法は、入射光で電荷を生成する光電変換デバイスを製造するに際し、n型半導体及びp型半導体を含むと共に層内に光電場を形成し且つ入射光の波長よりも小さい部分からなる電場形成領域を有する光電変換層を形成するステップを有することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明に係る太陽電池の製造方法は、正極又は負極となる導電体層上に、n型半導体及びp型半導体を含むと共に層内に光電場を形成し且つ入射光の波長よりも小さい部分からなる電場形成領域を有する光電変換層を形成するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、光電変換特性の改善を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る光電変換デバイスの一例を示す概略断面図。
【図2】本発明の実施形態2に係る光電変換デバイスの一例を示す概略断面図。
【図3】本発明の実施形態3に係る光電変換デバイスの一例を示す概略断面図。
【図4】本発明の実施形態4に係る光電変換デバイスの一例を示す概略断面図。
【図5】本発明の実施形態5に係る光電変換デバイスの一例を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つものである。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって認定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
(実施形態1)
【0018】
図1は、本発明の実施形態1に係る光電変換デバイスの一例である光電変換素子を示す概略断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の光電変換素子100は、一対の電極1,2と、これら一対の電極1,2の間に設けられる光電変換層3とを有する。光電変換層3は、入射光で電荷を生成する層であり、単層構造でも多層構造でもよい。
【0020】
例えば、本実施形態の光電変換層3は、多層構造からなり、具体的には、n型半導体を含むn型半導体層31と、n型半導体及びp型半導体が混在したバルクへテロ結合層32と、p型半導体を含むp型半導体層33とを有する。
【0021】
また、本実施形態の光電変換素子100は、詳細は後述するが、上述した光電変換層3に対して電荷の生成を促すよう作用する電場形成領域4(電場形成物質4a)を有する。これにより、光電変換の効率改善を図ることができる。
【0022】
ここで、バルクへテロ結合層32は、1層中にp型半導体を含む有機層とn型半導体を含む有機層とが混在した構造を有し、光吸収による励起子生成とpnヘテロ接合面の内部電場による電荷分離機能及び電荷輸送機能を有している。特に、pnヘテロ接合界面が増大することで、光励起されたエキシトンが界面に到達する可能性が高くなり、エキシトンから電子と正孔に効率よく分離することを可能とする。
【0023】
界面で分離した電荷は、電子がバルクヘテロ接合層32に接するn型半導体層31が輸送路となり電極1へ、正孔がヘテロ接合層に接するp型半導体層33が輸送路となり電極2へ、効率的に輸送される。更に、バルクへテロ接合層32と電極1,2のそれぞれの間に、n型半導体層31とp型半導体層33とを設けているので、一対の電極1,2からの逆反応を防ぐ構造になっている。
【0024】
ここで、p型半導体は、ドナー性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物(電子供与性有機材料)をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0025】
例えば、チオフェン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フェニレン−ビニレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、チエニレン−ビニレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、カルバゾール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ビニルカルバゾール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ピロール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、アセチレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フタロシアニン、金属フタロシアニン類およびそれらの誘導体、ペンタセンなどのアセン類およびその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体などが挙げられ、特にポリチオフェン系誘導体が好ましく使用される。
【0026】
ポリチオフェン系誘導体とはポリ−p−チオフェン構造の骨格を持つ重合体に側鎖が付いた構造を有するものである。具体的にはポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−デシルチオフェンなどのポリ−3−アルキルチオフェンが挙げられるが、この限りではない。
【0027】
一方、n型有機半導体分子は、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物(電子受容性有機材料)をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0028】
例えば、フラーレン及びその誘導体(PCBMなど)、カーボンナノチューブ及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体(PTCDA、PTCDIなど)、ナフタレン誘導体(NTCDA、NTCDIなど)、ピリジン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フッ素化無金属フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニン類及びその誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などが挙げられ、特にフラーレン系誘導体(PCBMなど)が好ましく使用されるが、この限りではない。
【0029】
そして、本実施形態では、光電変換素子100は、上述した光電変換層3に対して電荷の生成を促すよう作用する電場形成領域4(電場形成物質4a)を有している。ここで、電場形成領域4とは、例えば、バルクへテロ結合層3等における電荷の生成を促すよう作用する領域のことであり、バルクへテロ結合層3等に光電場を形成すると共に入射光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等の外光[屋内、屋外を問わない])の波長よりも小さい部分を含む領域である。ここでいう入射光の波長より小さいとは、例えば、光の波長に数値範囲(レンジ)がある場合は当該数値範囲内を意味する。なお、電場形成領域4においては、入射光の波長よりも大きい部分(入射光の波長に数値範囲がある場合は当該数値範囲外の部分)だけの領域を含む場合、電荷の生成を促す作用(効果)が十分に得られないため好ましくない。
【0030】
また、光電変換デバイスとしては、例えば、光電変換層3等の有機層を形成する材料の選択や組み合わせ等により、光電変換する吸収波長をある程度設定することができる。したがって、本発明の光電変換デバイスにおいては、材料に起因して設定される光電変換可能な吸収波長に応じて、電場形成領域を形成することが好ましい。また、本発明の光電変換デバイスにおいては、例えば、入射光の波長よりも小さく(入射光の波長に数値範囲がある場合はその数値範囲内で)且つ材料に起因して設定される有機層の光電変換可能な吸収波長よりも大きい部分(有機層の吸収波長に数値範囲がある場合はその数値範囲外の部分)を含むように電場形成領域を形成すれば、材料的には光電変換に直接寄与しない又は寄与し難い波長の入射光について有効に活用して、電荷の生成を促すよう作用させることができる。すなわち、電場形成領域の少なくとも一部を有機層の吸収波長よりも大きい部分を含むように形成することで、本来、材料的に有機層が反応し難い波長の光(入射光)を実質的に有効活用することができて、結果的に、光電変換効率の改善をより効率的に図ることができる。
【0031】
例えば、本実施形態では、電場形成領域4がバルクへテロ結合層32中に分散する電場形成物質4aにより形成されている。具体的には、電場形成領域4は、各電場形成物質4aからなり、バルクへテロ結合層32の全体に亘って分布するように形成されている。
【0032】
また、電場形成領域4を構成する各電場形成物質4aは、入射光に反応し、バルクへテロ結合層32内に配置されているので、バルクへテロ結合層32内に優先的に光電場を形成してエキシトンを発生させる。その際、各電場形成物質4aは、バルクへテロ結合層32の上下のn型半導体層31及びp型半導体層33に対しても光電場を形成する。
【0033】
これにより、本実施形態では、バルクへテロ結合層32から集中的に電荷生成を促すよう作用し、その結果、光電変換層3全体での電荷生成を促すこととなり、光電変換特性の改善を図ることができる。例えば、本実施形態では、電場形成物質4aは、入射光により表面プラズモン共鳴を示す物質である。
【0034】
ここで、入射光により電場形成物質4aの表面に表面プラズモンが励起されると、電場形成物質4a近傍の比較的狭い領域に、空間的に局在し入射光の電場よりも数十から数百倍に増強された電場が生じる。このような表面プラズモンには、伝播型と局在型の2つの種類がある。伝播型の表面プラズモンは、金属表面に周期構造を設けることなどによって励起される。局在型の表面プラズモンは、閉じた表面を持つ金属ナノ粒子等で励起される。
【0035】
なお、本発明の光電変換素子において、表面プラズモンを励起し、その増強電場を利用するには、素子を構成する一金属表面に凹凸構造を形成し伝播型の表面プラズモンを形成する構成か、もしくは素子内に金属微粒子等を配置し局在型の表面プラズモンを形成することが好ましい。
【0036】
例えば、本実施形態の光電変換素子100では、バルクへテロ結合層32の全体に亘って電場形成物質4aを分布(分散)させている。特に、電場形成物質4aをバルクへテロ結合層32の全体に亘って略均一に分布させることにより、光電変換層3における面方向及び厚さ方向に略均等に光電場が形成され、その結果、光電変換素子100(光電変換層3)の光電変換効率のばらつきを抑えることができて有効である。
【0037】
これにより、表面プラズモンが励起された電場形成物質4a近傍に光電変換層(半導体受光層)3、特にバルクヘテロ結合層32を設けているので、増強電場による光電変換層3の励起により大量にエキシトンを発生させることができ、かつ大量に発生したエキシトンが効率良く電荷分離することが可能となる。したがって、本実施形態の光電変換素子100によれば、その光電変換効率の改善を図ることができる。
【0038】
ここで、電場形成物質4aの材料としては、表面プラズモン共鳴を示す金属物質、特に金属ナノ粒子であることが好ましい。例えば、Au,Ag,Cu,Pt,Al,Pdから選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にこれらの材料を複数組み合わせた合金等であることが好ましいが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。また、電場形成物質4aの形状としては、球状、ロッド等の棒状(円柱状、回転楕円状など含む)などが一例として挙げられるが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。
【0039】
また、電場形成物質4aの粒径は、その効果を発現できれば、いかなる粒径でもよい。例えば、表面プラズモン共鳴を示し得る粒径としては、入射光の波長より小さくすることが好ましく、具体的には入射光の波長の1/10程度ないしそれ以下とするのがさらに好ましく、特に10〜100nm程度とするのが好ましい。これは、光電変換層3における電荷の生成を効果的に高める方向に作用、すなわち、エキシトン発生に寄与する光電場増幅効果(表面プラズモン共鳴)を効率的に増幅させるためである。
【0040】
なお、電場形成物質4aは、所望の性能を出すために、粒径を揃えても、粒子ごとに粒径を変えてもよい。また、電場形成物質4aは、光電変換層3の面方向に適度に分布していることが好ましく、面方向に均一に分布していることが光電変換層3による光電変換効率のばらつきを低減することができて有効である。また、粒子の形状が棒状などの場合、その短軸と長軸の長さの比は、目的の効果が得られるように調整しても何ら問題はない。
【0041】
ここで、一対の電極1,2を形成する材料としては、特に限定されないが、隣接または近接する層(本実施形態ではn型半導体層31、p型半導体層33等の光電変換層3)の構成材料の種類、光が照射される方向により適宜選択するのが好ましい。光が電極平面に対し垂直に照射される場合、光が照射される側の電極は透明材料で形成される。
【0042】
機能層を構成する光電変換層(本実施形態では有機層)3が電子受容性材料からなり、この有機材料とオーミックな接触を形成させ、照射光を透過し易くするためには、仕事関数の小さな材料で電極を形成するのが好ましい。なお、このような電極材料としては、例えば、金(Au)、白金などが挙げられ、透明な材料としては、スズドープされた酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、フッ素がドープされた酸化スズなどが挙げられる。
【0043】
ここで、このように光が照射される側、すなわち、入射光側の電極は、光電変換効率を向上するため最適な材料で形成することが好ましい。特に、光電変換層3が電荷生成において反応する入射光の透過性を有するだけでなく、電場形成領域4(電場形成物質4a)が光電場の形成において反応する入射光の透過性を有する材料で、入射光側の電極を形成することが好ましい。一方、電場形成領域4は、光電場を良好に形成するために入射光側の電極を透過する入射光の波長より小さい部分を含むようにすることが好ましい。
【0044】
すなわち、本実施形態では、電場形成領域4による光電場形成に最適な電極材料に基づいて入射光側の電極を形成する一方、当該入射光側の電極から透過する入射光に対応して所定の電場形成領域4を光電変換層3内に設けることにより、入射光をより効果的に活用して光電変換を行うことができるため、結果的に、光電変換デバイスの光電変換効率を有効に改善することができる。
【0045】
また、入射光側の電極は、光電変換層3のうち有機層部分が電荷生成において直接反応する入射光の波長(有機層部分が本来、光電変換可能な吸収波長)以外の波長を有する他の光についても透過し易い材料で形成してもよい。この場合には、当該他の光に反応する部分を含むよう電場形成領域4を形成すれば、光電変換層3の有機層部分における電荷の生成を、電場形成領域4から生じる光電場によりさらに促すことができる。
【0046】
このような入射光側の電極材料としては、上述した材料の他、例えば、炭素系の透明電極材料であることが好ましく、さらに好ましくは、複数の炭素原子が平面状に連なって形成される格子形状の薄膜を形成する材料を用いるのがよい。
【0047】
具体的には、炭素原子が六角形で平面的に広がった材料であるグラフェンを入射光側の電極材料に用いることが好ましい。グラフェンは、例えば、電子を流しやすく、高強度な材料としての性質があるため、光電変換デバイスとしての入射光側の電極材料に用いれば、大電流に耐えつつ光電変換効率の改善において非常に有利である。
【0048】
また、グラフェン薄膜は、酸化インジウム錫(ITO)と比べて赤外線を透過し易いため、赤外線に対して感度が低い光電変換デバイスであっても、赤外線の波長と同等若しくはそれより小さい部分を含む電場形成領域4を光電変換層3内に形成すれば、電場形成領域4が赤外線に反応して電荷の生成を促すよう作用し、結果的に光電変換デバイスの光電変換効率をより効果的に改善することができる。
【0049】
例えば、赤外線に感度がある光電変換デバイスにITO電極を用いれば、光電変換層3において有効利用できるはずの赤外線がITO電極により吸収されて光電変換層3に有効に届かず、その結果、光電変換デバイスとしての光電変換効率は下がってしまう。本発明は、特に、ITO電極の変わりに赤外線を透過し易い電極(例えば、グラフェン電極)を用いることにより、その赤外線を電場形成領域4において有効利用でき、光電変換効率を改善することができる。
【0050】
なお、電極をグラフェン薄膜とする場合には、その下側にある光電変換層3は赤外線に感度のある材料で形成することが好ましいが、その光電変換層3の層構造は特に限定されるものではない。例えば、グラフェン電極と組み合わせる光電変換層3は、有機材料等からなる単層構造でもよいし、n型半導体及びp型半導体を含むバルクへテロ結合層を含めてもよいし、あるいはn型半導体層とp型半導体層との層順番を逆転させる等して適宜組み合わせて多層構造としてもよい。また、n型半導体層とp型半導体層とを組み合わせる際には、グラフェン電極のn型が比較的強い場合(電子輸送性が強い場合)、グラフェン電極側にn型半導体層を設けることが好ましいが、グラフェン電極のp型が比較的強い場合には、層の順番を逆転させてグラフェン電極側にp型半導体層を設けることが好ましい。何れにしても、n型半導体層とp型半導体層との位置関係(層の順番)は、グラフェン電極の仕事関数の関係や電子・正孔移動度の関係などによって適宜選択することが好ましい。
【0051】
また、機能層を構成する光電変換層(本実施形態では有機層)3が電子供与性材料からなり、この有機材料とオーミックな接触を形成させるためには、仕事関数の大きな材料で電極を形成するのが好ましい。このような電極材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、インジウム(In)などが挙げられる。
【0052】
以下、本実施形態の光電変換素子100の製造方法の一例について説明する。まず、電極2上にp型半導体層33を形成する。
【0053】
次に、このp型半導体層33上にバルクへテロ結合層32を形成する。ここで、バルクへテロ結合層32は、その内部に電場形成物質4aが面方向に分布するように形成される。
【0054】
すなわち、電場形成物質4aを有するバルクへテロ結合層32は、バルクへテロ結合層32を形成する材料(p型半導体とn型半導体との混合材料)に予め電場形成物質4aを混練しておき、当該混合材料の前駆体膜を形成後、これを加熱処理することで形成することができる。なお、ここでの加熱処理は、前駆体膜中においてp型半導体とn型半導体とが適度に混在し合ってバルクへテロ結合を形成できる程度の温度又は温度範囲内で処理する。
【0055】
続いて、このようにして形成されたバルクへテロ結合層32上にn型半導体層31を形成した後、n型半導体層31上に電極1を形成する。これにより、本実施形態の光電変換素子100を形成することができる。
【0056】
なお、バルクへテロ結合層32を形成する方法としては、例えば、バルクへテロ結合層32を形成する材料からなる加熱処理前の前駆体膜に電場形成物質4aを導入(注入)してもよいし、加熱処理後のバルクへテロ結合層32に電場形成物質4aを後から導入(注入)してもよい。
【0057】
これらの場合、バルクへテロ結合層32内に電場形成物質4aが存在するように電場形成物質4aを導入するようにしてもよいし、バルクへテロ結合層32(前駆体膜)の下地であるp型半導体層33に電場形成物質4aが導入されてもよい。何れの場合でも、光電変換層3での電荷の生成を促す作用を生じさせることができる。
【0058】
また、ここではp型半導体層33から順次積層形成した場合について説明したが、n型半導体層31側から順次積層形成するようにしてもよい。
【0059】
また、n型半導体層31、バルクへテロ結合層32、p型半導体層33の成膜方法としては、その構成材料によって適宜選択されることが望ましい。
【0060】
例えば、溶液からの成膜方法として、スピンコート法、キャスティング法、グラビアコート法、ディップコート法、スプレーコート法、シャワーコート法、カーテンコート法、電着塗装法、静電塗布法、ダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェットプリント法、電解重合法等の種々の成膜方法を用いることができる。
【0061】
また、気体からの成膜方法である蒸着法やスパッタリング法、プラズマCVD法などを用いてもよい。なお、電場形成領域4を形成する電場形成物質4aの粒子径が小さいほど、例えば、スプレーやインクジェット等の噴射方式などの大面積化・低コスト化に有利なプロセスを用いる際であっても、ノズルのつまり等がなく好適に適用することができる点で効果がある。
(実施形態2)
【0062】
図2は、本発明の実施形態2に係る光電変換デバイスの一例である光電変換素子の概略断面図である。
【0063】
図2に示すように、本実施形態の光電変換素子200は、バルクへテロ結合層32Aに層状の電場形成領域4Aを形成した以外は上述した実施形態1と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1(図1)と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0064】
具体的には、本実施形態の電場形成領域4Aは、光電変換層3Aの面方向に亘って連続的に形成され、入射光が透過する程度の厚さを有する電場形成層となっている。そして、このような電場形成領域4Aは、バルクへテロ結合層32Aとの境界、n型半導体層33側の層32aとp型半導体層33側の層32bとの境界が入射光の波長よりも小さい面粗さで形成されている。より詳細には、電場形成領域4Aと接する層との界面近傍が、入射光の波長よりも小さい寸法の面粗さ(表面粗さ)で形成されている。すなわち、電場形成領域4Aを構成する層の表面は、入射光の波長よりも小さい面粗さの微細凹凸面となっている。なお、このような微細凹凸面は、バルクへテロ結合層32に光電場を適度に満遍なく形成するためには電場形成領域を構成する層の両面に形成することが好ましいが、入射光側の片面側だけに形成するようにしてもよい。
【0065】
これにより、電場形成領域4Aを構成する層の表面に表面プラズモンが励起され、その結果、電場形成領域4Aによってバルクへテロ結合層32A及びその上下にあるn型半導体層31とp型半導体層33とに増強された光電場を広範囲に形成することができ、その結果、光電変換効率の改善を図ることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態の光電変換素子200によれば、表面プラズモンが励起された電場形成領域4A近傍に光電変換層(半導体受光層)3A、特にバルクヘテロ結合層32Aを設けるようにしたので、バルクへテロ結合層32A内から優先的に光電場を形成し、その結果、増強電場による光電変換層3Aの励起により大量にエキシトンを発生させることができ、かつ大量に発生したエキシトンが効率良く電荷分離することが可能となる。したがって、本実施形態の光電変換素子200によれば、その光電変換効率の改善を図ることができる。
【0067】
以下、本実施形態の光電変換素子200の製造方法の一例を説明する。まず、電極2上にp型半導体層33を形成する。次に、このp型半導体層33上にバルクへテロ結合層32Aを形成する。ここでのバルクへテロ結合層32Aにおいては、その内部に電場形成領域4Aとなる電場形成層が面方向に亘って連続的に形成される。
【0068】
すなわち、バルクへテロ結合層32Aは、バルクへテロ結合層32Aを形成する材料(p型半導体とn型半導体との混合材料)をp型半導体層33に塗布して第1層32bを形成し、この第1層32b上に電場形成層を形成し、その後、再びバルクへテロ結合層32Aを形成する材料(上記混合材料)を塗布して第2層32aを形成することで得られる。
【0069】
ここで、バルクへテロ結合層32Aを構成する第1層32b及び第2層32aは、それぞれ、上記混合材料を塗布して前駆体膜を形成後、これを加熱処理することで形成することができる。続いて、このようにして形成されたバルクへテロ結合層32上にn型半導体層31を形成した後、n型半導体層31上に電極1を形成する。これにより、本実施形態の光電変換素子200を形成することができる。
【0070】
なお、バルクへテロ結合層32に電場形成領域(層)4Aを形成する方法としては、例えば、電場形成領域4Aを、Au等の金属薄膜として蒸着、スパッタ、メッキ等で形成することもでき、あるいは、第1層32bを形成した後に当該第1層32bの表面を入射光の波長よりも小さい寸法の面粗さに表面処理することもできる。
【0071】
ここでの表面処理の方法としては、ナノインプリント、サンドブラストやプラズマ等の物理的な表面処理でもよいし、薬品等によるエッチング等での化学的な表面処理でもよい。あるいは、電場形成領域(層)4Aを形成する材料として、入射光の波長より小さいナノ粒子、特に金属ナノ粒子を含む被膜形成溶液(コロイド塗布液等)を用意し、当該被膜形成溶液を塗布等して前駆体膜を形成後、熱処理等することで形成してもよい。または、それ以外の方法として、上記被膜形成溶液を塩析沈殿や界面活性剤で析出させて成膜するようにしてもよい。
【0072】
電場形成層を形成するための被膜形成方法としては、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スリットコート法、又は、電着塗布(塗装)法、あるいは静電塗布(塗装)法、もしくは印刷技術を用いた転写法等が挙げられる。勿論、実施形態1で説明した成膜方法を用いてもよい。何れの場合でも、光電変換層3での電荷の生成を促す作用を生じさせる電場形成層を比較的容易に形成することができ、また、大面積化にも対応することができる。特に、電気的な成膜方法(電着塗布や静電塗布等)は、電極2等を有効活用することができて、有機材料等の材料選択性に優れ、電場形成物質等を導入し易く、また大面積化にも対応できることから、光電変換効率を改善した有機薄膜型太陽電池等の光電変換デバイスを低コストで製作できる点で非常に有利である。
【0073】
ここで、本発明の目的は、光電変換層に作用する電場形成領域を設けて光電変換効率を改善するというものであるが、勿論これに限定されず、光電変換デバイスの大面積化という課題(目的)を解決する手段として本発明を適用してもよい。この場合には、上述した被膜形成方法を用いて太陽電池等の光電変換デバイス(特に単層又は多層の光電変換層)を形成することで、光電変換デバイスの大面積化に非常に有利となる。
【0074】
なお、本実施形態では、層状の電場形成領域4Aを例示して説明しているが、上述した方法は勿論、実施形態1に係る光電変換デバイスの製造方法にも好適に用いることができる他、単層又は多層の光電変換層の形成だけでなく、それ以外の各種p型又はn型半導体層の形成にも適用することができる。
【0075】
したがって、光電変換デバイスの製造プロセスが単一の方法で実現することができる(例えば、ロール・ツウ・ロール方式のような連続一貫生産方式も採用できる)ため、製造コストを大幅に低減することができる。また、ここではp型半導体層33から順次積層形成した場合について説明したが、n型半導体層31側から順次積層形成するようにしてもよい。
(実施形態3)
【0076】
図3は、本発明の実施形態3に係る光電変換デバイスの一例である光電変換素子を示す概略断面図である。
【0077】
図3に示すように、本実施形態の光電変換素子300は、基板10上に電極2を設け、光電変換層3の両面にバッファ層5を設けた以外は上述した実施形態2と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1及び2(図1及び図2)と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0078】
ここで、バッファ層5は、直接的ないし間接的に光電変換デバイスとしての種々の特性を向上させる役割を担うもので、例えば電極平坦化、電荷整流作用、各電極1,2とn型半導体物質及びp型半導体物質との反応防止、電極間短絡防止などがその効果の一つとして挙げられる。
【0079】
バッファ層5を形成する材料としては、特に限定されるものではないが、目的の効果が得られるよう適宜選択される。具体的には、負極側のバッファ層5を形成する材料としては、例えば、フッ化リチウムや酸化チタンのような、電子輸送性を備える物質を用いることが好ましい。一方、正極側のバッファ層5には、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やポリスチレンスルホン酸(PSS)あるいはこれら高分子材料の混合物のような、電子輸送性を備える物質を用いることが好ましい。
【0080】
また、基板10は、隣接または近接する層の構成材料の種類、光が照射される方向により適宜選択するのが好ましい。具体的には、光が基板側から照射される場合、基板は透明材料で形成される。
【0081】
そのような基板10を形成する材料としては、ガラス、石英、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル系樹脂、ポリカーボネイト、ポリイミド樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドなどの透明樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記透明樹脂のような可撓性のある基板を用いる場合、基板上に積層する有機物層などの材料や膜厚を適宜選択することで、フレキシブルな光電変換デバイスを作製することも可能となる。
【0082】
このように、本実施形態の光電変換素子300は、光電変換層3と一対の電極1,2の間にバッファ層5を設けるようにしたことで、光電変換効率の改善を図ることができると共に、例えば、電極平坦化、電荷整流作用、各電極1,2とn型半導体物質及びp型半導体物質との反応防止、電極間短絡防止などの効果を得ることができる。
【0083】
なお、本実施形態の光電変換素子300の製造方法は、バッファ層5以外は上述した実施形態1及び2と同様にすることができる。バッファ層5の形成については、特に限定されないが、負極側のバッファ層5と、正極側のバッファ層5とで異なる材料で形成する場合には、材料や各バッファ層5の役割に応じて形成方法を適宜選択すればよい。
【0084】
なお、正極側のバッファ層5を上述した高分子材料で形成する場合には、上述した実施形態1及び2で説明した電場形成領域を形成する方法を適用することができる。例えば、負極側のバッファ層5としてフッ化リチウム膜を形成する場合は、蒸着法を用いることができる。一方、正極側のバッファ層5として酸化チタン膜を形成する場合は、ゾル・ゲル法やコールドスプレー法、スパッタ法を用いることができる。
(実施形態4)
【0085】
図4は、本発明の実施形態4に係る光電変換デバイスの一例である光電変換素子を示す概略断面図である。
【0086】
図4に示すように、本実施形態の光電変換素子400は、実施形態2の電場形成領域4Aを有するバルクへテロ結合層32Aを実施形態3のバルクへテロ結合層32に適用した以外は、上述した実施形態3と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1及び2(図1及び図2)と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0087】
本実施形態では、図4に示すような構造とすることで、バッファ層5を設けたことによる効果(例えば、電極平坦化、電荷整流作用、各電極1,2とn型半導体物質及びp型半導体物質との反応防止、電極間短絡防止など)を実施形態2の構造で実現することができる。
(実施形態5)
【0088】
図5は、本発明の実施形態5に係る光電変換デバイスの一例である光電変換素子を示す概略断面図である。
【0089】
図5に示すように、本実施形態の光電変換素子500は、バルクへテロ結合層を設けず、電場形成領域4をn型半導体層31及びp型半導体層33の間に設けた光電変換層3Bを有するようにした以外は上述した実施形態1と同様である。なお、本実施形態では、上述した実施形態1と同一の構成部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0090】
ここで、電場形成領域4は、n型半導体層31とp型半導体層33との界面近傍(界面又はその近傍、あるいは界面及びその近傍)に不連続領域として設けられてもよいし、薄膜状に連続領域を含むように設けられてもよい。本実施形態では、電場形成領域4を不連続領域として形成している。このような電場形成領域4は、例えば、電気的な成膜方法(電着塗布や静電塗布等)を用いることにより、ナノ粒子等の電場形成物質4aをn型半導体層又はp型半導体層上に面方向に亘って満遍なく適度に分布するように形成することができる。なお、電場形成領域4は、電極1とn型半導体層31との間の界面近傍、電極2とp型半導体層31との間の界面近傍、あるいは一対の電極1,2と各半導体層31,33との間の界面近傍に設けるようにしてもよい。
【0091】
そして、このような構造を有する光電変換デバイスによれば、上述した各実施形態1〜4と同様に、電場形成領域4が、入射光に反応することで光電変換層3Bにおける電荷の生成を促すよう作用する。具体的には、電場形成領域4がその上下にあるn型半導体層31及びp型半導体層33に光電場を形成し、光電変換層3Bでの電荷の生成が促される。これにより、光電変換層3Bにおける光電変換効率を改善することができる。
【0092】
また、本実施形態の光電変換デバイスにおいては、n型半導体層31及びp型半導体層33の間に電場形成領域4を有する光電変換層3Bを一対の電極1,2間に設けた構造例を用いて説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、n型半導体層31及びp型半導体層33の層間に電場形成領域4を有する層を上述した実施形態1〜4の光電変換層の層構造に適用してもよい。 (他の実施形態)
【0093】
以上、本発明を実施形態1〜5に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した各実施形態1〜5に限定されるものではない。例えば、上述した各実施形態1〜5では、光電変換デバイスの一例として光電変換素子を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、光電変換機能、光整流機能などを利用した種々の光電変換デバイス、たとえば光電池(太陽電池(太陽光発電装置)など)、光起電力素子、電子素子(光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなど)、光記録材(光メモリなど)などへの応用が可能である。特に、太陽電池(有機薄膜太陽電池、有機無機薄膜太陽電池、あるいはシリコン系太陽電池等)、光起電力素子に有用である。また、その用途に応じて、単位層構造を積層化(タンデム化)しても、何ら問題はない。
【0094】
また、上述した各実施形態2及び4等では、電場形成領域を光電変換層の面方向に連続的な電場形成層として形成した場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、電場形成領域(電場形成層)が島形状、縞形状、格子形状等であってもよい。これらの電場形成領域の形状については、マスクパターン等を用いたパターニング技術、あるいは印刷技術により形成することができる。
【符号の説明】
【0095】
1,2 電極
3 光電変換層
4 電場形成領域
4a 電場形成物質
5 バッファ層
10 基板
31 n型半導体層
32 バルクへテロ結合層
33 p型半導体層
100 光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体及びp型半導体を含む光電変換層を備え、
前記光電変換層は、当該光電変換層内に光電場を形成すると共に入射光の波長よりも小さい部分を含む電場形成領域を有することを特徴とする光電変換デバイス。
【請求項2】
n型半導体及びp型半導体を含むバルクへテロ結合層を有する光電変換層を備え、
前記光電変換層は、前記バルクへテロ結合層に光電場を形成すると共に入射光の波長よりも小さい部分を含む電場形成領域を有することを特徴とする光電変換デバイス。
【請求項3】
前記光電変換層は、前記n型半導体及びp型半導体を含むバルクへテロ結合層がn型半導体層及びp型半導体層の間に設けられた層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光電変換デバイス。
【請求項4】
前記光電変換層は、前記電場形成領域がn型半導体層及びp型半導体層の間に設けられた層を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項5】
前記電場形成領域は、前記n型半導体層と前記p型半導体層との界面近傍に不連続領域として設けられていることを特徴とする請求項4記載の光電変換デバイス。
【請求項6】
前記電場形成領域は、前記光電変換層の面方向に亘って連続的に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項7】
前記電場形成領域は、前記入射光の波長よりも小さい面粗さで形成されていることを特徴とする請求項6記載の光電変換デバイス。
【請求項8】
前記電場形成領域は、前記n型半導体及びp型半導体を含むバルクへテロ結合層内に形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項9】
前記電場形成領域は、入射光の波長よりも小さい電場形成物質で形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項10】
前記電場形成領域は、プラズモン共鳴を示す電場形成物質で形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項11】
前記電場形成領域は、金属で形成されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項12】
前記電場形成領域は、ナノ粒子で形成されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項13】
前記電場形成領域は、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Pdからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項14】
前記電場形成領域は、前記光電変換層における電荷の生成を促すよう作用する領域であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項15】
前記p型半導体がポリチオフェン及びポリチオフェン系誘導体、前記n型半導体がフラーレン及びフラーレン系誘導体であることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項16】
前記光電変換層の少なくとも一方面側には電極が設けられ、
前記電場形成領域は、外光のうち前記電極を透過する入射光の波長より小さい部分を含むことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項17】
前記光電変換層の少なくとも一方面側には電極が設けられ、
前記電極は、炭素系材料により形成される透明電極からなることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項18】
前記光電変換層の少なくとも一方面側には電極が設けられ、
前記電極は、複数の炭素原子が平面状に連なって形成される格子形状の薄膜からなることを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項19】
前記光電変換層の少なくとも一方面側には電極が設けられ、
前記電極は、グラフェン薄膜からなることを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項20】
前記光電変換層は正極及び負極の間に設けられ、前記光電変換層と前記正極及び負極との間にバッファ層が設けられていることを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載の光電変換デバイス。
【請求項21】
前記バッファ層は、前記正極側が正孔輸送路となり得る物質からなり、前記負極側が電子輸送路となり得る物質からなることを特徴とする請求項20記載の光電変換デバイス。
【請求項22】
前記正極側のバッファ層は、酸化チタン又はフッ化リチウムの少なくとも何れか一方からなり、前記負極側のバッファ層は、導電性高分子からなることを特徴とする請求項20又は21に記載の光電変換デバイス。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか1項に記載の光電変換デバイスを備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項24】
入射光で電荷を生成する光電変換デバイスを製造するに際し、n型半導体及びp型半導体を含むと共に層内に光電場を形成し且つ入射光の波長よりも小さい部分からなる電場形成領域を有する光電変換層を形成するステップを有することを特徴とする光電変換デバイスの製造方法。
【請求項25】
正極又は負極となる導電体層上に、n型半導体及びp型半導体を含むと共に層内に光電場を形成し且つ入射光の波長よりも小さい部分からなる電場形成領域を有する光電変換層を形成するステップを有することを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−71146(P2011−71146A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216250(P2009−216250)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】