説明

光電変換素子及びこれに用いられる光電変換素子用組成物

【課題】特定の2種の金属錯体系色素を組み合わせた複合増感色素において、高い光電変換効率を実現し、その上でさらに耐久性をも高めることができる光電変換素子及び,これに用いられる光電変換素子用組成物を提供する。
【解決手段】2種以上の色素を組み合わせた複合増感色素21と半導体微粒子22とを有する感光体層2を具備した光電変換素子10であって、前記複合増感色素21として、特定の構造を有する色素と、特定の構造を有する色素とを用いることを特徴とする光電気化学電池100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びこれに用いられる光電変換素子用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーを利用したものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGraetzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特に我が国を始めとしたエネルギー資源に乏しい地域での対応、あるいは化石燃料から二酸化炭素の排出のないグリーンエネルギーへの代替の加速の観点から、太陽電池の研究開発については各方面で一層積極的に取り組まれてきている。現在の主流はシリコン(Si)系のものであるが、上述したスループット等の観点からこれに代替する次世代技術に大きな注目が集まっている。特に、有機系の太陽電池は軽量かつ低コストを実現し、かつ環境適合性に優れることが期待される。
【0005】
特許文献1は、2つの金属錯体系の色素を用いた色素増感型太陽電池を開示する。そこで開示されている色素は好適な波長領域で光吸収能を有し、良好な光電変換効率を実現するとされる。他方、特許文献3及び4には有機色素系の増感色素が開示されており、やはり高い光電変換効率を実現するとされている。特許文献5には、2つの色素を組み合わせた太陽電池が開示されており、それに光電変換効率が高まるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−291534号公報
【特許文献2】国際公開2007/091525号パンフレット
【特許文献3】国際公開2007/119525号パンフレット
【特許文献4】国際公開2007/134939号パンフレット
【特許文献5】特開2000−268892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで上述のように、色素増感型太陽電池の開発においては、主に、単一色素による増感色素についてその化学構造を修飾し光電変換効率を高める試みが行われてきた。その応用的な試みとして2つ以上の色素を組み合わせた例を開示したものもあるが(上記特許文献5)、いまだそうした取り組みにおける技術知見は殆ど得られていない。特に、色素増感型太陽電池において重要な特性となる耐久性については、単一色素によるものも含め、その向上のための手段は明らかにされていない。
そこで本発明は、特定の2種の金属錯体系色素を組み合わせた複合増感色素において、高い光電変換効率を実現し、その上でさらに耐久性をも高めることができる光電変換素子及びこれに用いられる光電変換素子用組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)2種以上の色素を組み合わせた複合増感色素と半導体微粒子とを有する感光体層を具備した光電変換素子であって、前記複合増感色素として、下記一般式(1)の構造を有する色素と、下記一般式(3)で表される構造を有する色素とを用いることを特徴とする光電変換素子。
【化1】

(一般式(1)で表される化合物は、分子内に、少なくとも酸性基を有している。式中、R〜R16は独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は隣り合う置換基と環を形成していてもよい。また、分子内に少なくとも1つ以上の一般式(2)で表される置換基を有している。XはN、O、Sを表す。nは0または1を表す。Aは芳香族基または複素環基を表す。Mは二個の水素原子、金属原子、または金属酸化物を表す。)

Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(3)
[一般式(3)において、Mzは金属原子を表し、LLは下記一般式(4)で表される2座又は3座の配位子であり、LLは下記一般式(5)で表される2座又は3座の配位子である。
Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する1座又は2座の配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミドまたはチオ尿素からなる1座または2座の配位子を表す。
m1は0〜3の整数を表し、m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。m2は0〜3の整数を表し、m2が2のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。ただし、m1とm2のうち少なくとも一方は1以上の整数である。
m3は0〜2の整数を表し、m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
CIは一般式(3)において、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化2】

[一般式(4)において、R101及びR102はそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を表す。R103及びR104はそれぞれ独立に置換基を表す。R105及びR106はそれぞれ独立にアリール基又はヘテロ環基を表す。d1、d2、及びd3はそれぞれ0以上の整数を表す。
及びLはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のエテニレン基及び/又はエチニレン基からなり、Lが結合しているジピリジン環と共役している。
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、a1が2以上のときR101は同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときR102は同じでも異なっていてもよい。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。b1が2以上のときR103は同じでも異なっていてもよく、R103は互いに連結して環を形成してもよく、b2が2以上のときR104は同じでも異なっていてもよく、R104は互いに連結して環を形成してもよい。b1及びb2が共に1以上のとき、R103とR104が連結して環を形成してもよい。]
【化3】

[一般式(5)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表し、それぞれ独立に酸性基を有していてもよい。cは0又は1を表す。]
[一般式(3)で表される化合物は分子内に少なくとも1つの酸性吸着基を有する。]
(2)前記MzがRuであることを特徴とする(1)記載の光電変換素子。
(3)前記一般式(1)の構造を有する色素が、分子内に少なくとも6つの前記一般式(2)で表される置換基を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の光電変換素子。
(4)前記一般式(1)の構造を有する色素が、下記一般式(10)又は(11)で表されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化4】

(R19〜R58は独立に水素原子または置換基を表す。一般式(10)においてR19、R22、R23、R26、R27、R30、R31、R34の内、6つ以上が少なくとも一般式(2)で表される。また、一般式(11)においてR35、R40、R41、R46、R47、R52、R53、R58の内6つ以上、またはR36、R39、R42、R45、R48、R51、R54、R57の内6つ以上が一般式(2)で表される。Mは前述と同様である。)
また、一般式(10)、(11)中のR19〜R58のうち一つまたは二つはCOOH基で表される。
(5)前記Mが2個の水素原子、その他の配位子を有してもよい2価、3価、4価の金属原子、または金属酸化物である(1)〜(4)に記載の光電変換素子。
(6)前記一般式(2)のAが複素環であることを特徴とする(1)〜(5)に記載の光電変換素子。
(7)前記一般式(2)のXがS、またはn=0であることを特徴とする(1)〜(6)に記載の光電変換素子。
(8)前記半導体微粒子が酸化チタン微粒子であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子。
(9)導電性支持体上に、前記感光体層、電荷移動体、および対極をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(10)前記複合増感色素が前記半導体微粒子に吸着したことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の光電変換素子。
(11)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。
(12)有機溶媒中に、一般式(1)の構造を有する色素と、一般式(3)で表される構造を有する色素の両方の色素を含有し溶解したことを特徴とする光電変換素子用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光電変換素子及びこれに用いられる光電変換素子用組成物は、高い光電変換効率を実現し、その上でさらに耐久性をも高めることができるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によって製造される光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光電変換素子は、そこで用いられる増感色素として機能する一般式(1)で表されるフタロシアニン系の金属錯体色素と、一般式(3)で表される複核配位子系の金属錯体色素とが共存することにより、両者が特有の相互作用を示し、高い光電変換効率と耐久性との両立を実現する。その詳細な原理は未解明の点を含むが、以下のように推定される。まず上記特定のフタロシアニン系金属錯体色素は通常長波長側に吸収をもち、複核配位子系金属錯体色素は短波長側に吸収を持つ。そのため、両者の存在により可視光領域における広範囲の吸収を実現する。また、耐久性については、両者が互いに増感色素として、かつ、共吸着剤として作用して協働し、これらが剥離する原因となる水や色素を分解する求核種などの攻撃を受けにくくなり、耐久性が高まることにつながったと推定される。以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上にその順序で配された、感光体層2、電荷移動体層3、及び対極4からなる。前記導電性支持体1と感光体2とにより受光電極5を構成している。その感光体2は導電性微粒子22と増感色素21とを有しており、色素21はその少なくとも一部において導電性微粒子22に吸着している(色素は吸着平衡状態になっており、一部電荷移動体層に存在していてもよい。)。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせるようにして、光電気化学電池100として作動させることができる。
【0013】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22の感光層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0014】
本実施形態の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の複合増感色素が吸着された多孔質半導体微粒子の層を有する感光体を有する。このとき色素において一部電解質中に解離したもの等があってもよいことは上述のとおりである。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。本実施形態の光電変換素子の感光体には、特定の複合増感色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができ、さらに高い耐久性を有する。
【0015】
[複合増感色素]
(一般式(1)で表される色素)
本発明の光電変換素子においては、下記一般式(1)で表される構造を有する色素が使用される。この色素は光電変換素子用として使用することができる。
【0016】
【化5】

【0017】
一般式(1)において、分子内に1つ又は2つの酸性基を有し、R〜R16は各々独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う置換基と環を形成していてもよい。置換基の例としては、アルキル基ないしアルケニル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、t−ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、n−ドデシル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などの後述する一般式(2)のAで説明するものと同様のものが挙げられる。)、複素環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、複素環基の具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、チエニル基、ピロニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、キノリル基などの後述する一般式(2)のAで説明するものと同様のものが挙げられる。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ等)、ヒドロキシ基および酸素陰イオン、ニトロ基、シアノ基、アミド基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、ウレイド基(例えば、3−フェニルウレイド等)、ウレタン基(例えばイソブトキシカルボニルアミノ、カルバモイルオキシ等)、エステル基(例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジフェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えばN−フェニルスルファモイル等)、アシル基(例えばアセチル、ベンゾイル等)、アミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ等)、スルホニル基(例えばメチルスルホニル等)、ホスホニル基及びそのエステル、ホスホニルオキシ基及びそのエステル、カルボキシル基(例えばカルボキシル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、カルボキシブチル等)、スルホ基等が挙げられる。置換基の炭素原子上にはさらに上記の置換基があってもよい。
〜R16は好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基、炭素数1〜12の複素環基であり、より好ましくは炭素数1〜12の複素環基である。
は2個の水素原子又は金属原子(2個のリチウム原子又は1個の金属原子)、金属酸化物を表す。好ましくは3〜14族の原子半径1.2Å以上の1個の金属原子、金属酸化物を表す。Mは、好ましくは、1.35Å以上の金属原子、金属酸化物さらに好ましくは1.40Å以上の金属原子、金属酸化物である。原子半径の大きな中心金属を有する色素を用いることで、色素を構成する環全体のひずみが大きくなり、非効率な会合状態を制御することができ、波長域を拡大することにより、変換効率を向上させることができる。Mの原子半径は通常1.65Å以下である。Mの原子半径が大きすぎると、色素が不安定化し耐久性低下の原因となる。Mの具体的として、Sc、Ti、Y、Zr、Nb、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Hf、Ta、W、Pt、Au、Ti、Pb好ましくは、Sc、Zr、Sn、In、Hf、Pbが挙げられる。Mは好ましくはSc、Zr、Sn、In、Hf、Pbであり、より好ましくはSn、In、Hfである。
[金属原子の原子半径]
Sc 1.48
Nb 1.47
Sn 1.4
In 1.42
Mo 1.38
Ti 1.36
Zr 1.54
Hf 1.52
Pb 1.44
VO 1.34(V)
Zn 1.18
Cu 1.12
出典:Chem.Eur.J.2009,15,186-197
【0018】
一般式(1)において、分子内に少なくとも1つ以上の下記一般式(2)で表される構造を有している。一般式(2)において、nは0又は1の整数を表す。Aは芳香族基、複素環基を表し、Aは置換されていても無置換でもよい。置換基を有する場合の例としてはR〜R16と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。XはN、O、又はSを表す。Xは好ましくはO、Sであり、より好ましくはSである。
【0019】
上記一般式(2)の構造を有する置換基は、非効率な会合状態を制御し、吸収波長域を拡大することにより、変換効率を向上させることができる。
【0020】
Aで表される芳香族基の芳香族としては、ベンゼン環、ビフェニル環、1,3−ジフェニルベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環、フェナントレン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環、ペリレン環等が挙げられる。本発明において、炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素数6〜20の単環又は二環の芳香族炭化水素環がより好ましく、炭素数6〜12の単環又は二環の芳香族炭化水素環がさらに好ましく、ベンゼン環及びナフタレン環が特に好ましい。前記芳香族炭化水素環は置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基である。
【0021】
Aで表される複素環基の複素環としては、ヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び/又はセレン原子を含む芳香族ヘテロ環が好ましい。芳香族ヘテロ環の具体例としては、アントラキノン環、カルバゾール環、キサンテン環、チアントレン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアゾール環、トリアジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、チアゾリン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ビチオフェン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンゾトリアゾール環、テトラザインデン環、などが挙げられる。なかでも、硫黄原子を有する複素環である、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ビチオフェン環が好ましい。本発明において、5又は6員環の芳香族ヘテロ環が好ましく、さらに別の環と縮環してもよい。前記芳香族ヘテロ環は置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基である。

【0022】
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは10〜30、特に好ましくは14〜30であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、
【0023】
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは8〜20、特に好ましくは10〜20であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは10〜20、特に好ましくは12〜20であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
【0024】
アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは10〜20、特に好ましくは12〜20であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、
【0025】
アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは8〜20、特に好ましくは12〜20であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは4〜20、特に好ましくは8〜20であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは4〜20であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは6〜40、特に好ましくは10〜40であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。
【0026】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
前記Aは好ましくは複素環である。これらがXを介し又は直接結合することで、ε向上効果および一電子酸化状態の安定化によって変換効率向上、耐久性向上の効果を得ることができる。nは0または1であり、nは1であることが好ましい。すなわち、一般式(2)の構造を有する置換基は、Xを介して、Aが結合していることが好ましい。また一般式(2)の構造を有する置換基は、R〜R16のいずれかであることが好ましい。
【0027】
一般式(1)において、分子内に前記一般式(2)で表される構造を6つ以上有することが好ましく、8個有することがより好ましい。また、一般式(2)は同一環上に2つつくことが好ましい。これにより、非効率会合抑制の効果を最大限発揮することができる。
【0028】
前記一般式(1)の構造を有する色素は、下記一般式(10)又は一般式(11)で表されることが好ましい。
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
上記一般式(10)において、R19〜R34は各々独立に水素原子又は置換基を表す。置換基の例としてはR〜R16と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。R19、R22、R26、R27、R30、R31、R34のうち、6つ以上が前記一般式(2)で表される。
【0031】
上記一般式(11)において、R35〜R58は各々独立に水素原子又は置換基を表す。置換基の例としてはR〜R16と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同じである。少なくとも、R35、R40、R41、R46、R47、R52、R53及びR58のうち6つ以上が一般式(2)の構造を有するか、R36、R39、R42、R45、R48、R51、R54及びR57のうち6つ以上が一般式(2)の構造を有する。したがって、一般式(2)の構造を有するのが、R35、R40、R41、R46、R47、R52、R53及びR58のうち6つ以上のみでも、R36、R39、R42、R45、R48、R51、R54及びR57のうち6つ以上のみでもよい。さらに、R35、R40、R41、R46、R47、R52、R53及びR58のうち6つ以上に一般式(2)の構造を有し、かつR36、R39、R42、R45、R48、R51、R54及びR57のうち6つ以上に一般式(2)の構造を有していてもよい。一般式(2)は、R36、R39、R42、R45、R48、R51、R54及びR57よりもR35、R40、R41、R46、R47、R52、R53及びR58につくことが好ましい。また、一般式(2)は同一環上に2つつくことが好ましい。
前記一般式(10)及び(11)においてMは前記一般式(1)と同義である。
【0032】
前記一般式(10)及び(11)において、R19〜R34のうち1つもしくは2つ、R35〜R58のうち1つ又は2つが酸性基を有することが好ましい。本発明において酸性基とは、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルアミノ基、リン酸基、スクアリン酸基、桂酸基、ホウ酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。これにより、酸性基を有する部分が選択的に半導体微粒子、好ましくは酸化チタン微粒子へ吸着することができ、光電変換効率を向上させることができる。
【0033】
前記一般式(1)、(10)又は(11)において、下記一般式(12)を含むことが好ましい。
【0034】
【化8】

【0035】
Yはアルキレン(例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン)、アルケニレン(例えばビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン)、アルキニレン(例えばエチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレン)、アリーレン(例えば、フェニレン、ナフチレン)を表し、mは1以上の整数を表す。Yは好ましくはアルケニレン、アルキニレン、アリーレン、さらに好ましくは、アリーレンである。一般式(5)のカルボン酸は、共役のカルボン酸であることが好ましい。これにより、電子注入効率向上の効果を得ることができ、光電変換効率が向上する。
mは好ましくは、1以上の整数、さらに好ましくは、1〜3の整数である。
一般式(1)が一般式(12)の構造を有する場合、一般式(12)の構造を有する置換基は、R〜R16のいずれか、R、R、R、R、R10、R11、R14、R15であることが好ましい。一般式(10)が一般式(12)の構造を有する場合、一般式(12)の構造を有する置換基は、R19〜R34のいずれかであることが好ましく、R20、R21、R24、R25、R28、R29、R32、R33のいずれかであることがより好ましい。一般式(11)が一般式(12)の構造を有する場合、一般式(12)の構造を有する置換基は、R35〜R58のいずれかであることが好ましく、R35、R40、R41、R46、R47、R52、R53、R58のいずれかであることがより好ましい。
【0036】
前記一般式(1)、(10)又は(11)において、下記式(13)を含むことが好ましい。電子吸引性の高いシアノ酢酸基を分子内に有する色素を用いることで、電子注入効率をさらに向上させることができる。
【化9】

式(13) *は置換位置を表す。
一般式(1)が一般式(13)の構造を有する場合、一般式(13)の構造を有する置換基は、R〜R16のいずれか、R、R、R、R、R10、R11、R14、R15であることが好ましい。一般式(10)が一般式(13)の構造を有する場合、一般式(13)の構造を有する置換基は、R19〜R34のいずれかであることが好ましく、R20、R21、R24、R25、R28、R29、R32、R33のいずれかであることがより好ましい。一般式(11)が一般式(13)の構造を有する場合、一般式(13)の構造を有する置換基は、R35〜R58のいずれかであることが好ましく、R35、R40、R41、R46、R47、R52、R53、R58のいずれかであることがより好ましい。
【0037】
以下に本発明の一般式(1)で表される色素化合物の好ましい具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。ただし、下記色素化1〜化13において、Mは2個の水素原子、2個のリチウム原子、又は3〜14族の原子半径1.35Å以上の1個の金属原子、金属酸化物を表す。
【0038】
化2のRは直接、またはS原子を介して結合する芳香族基、複素環基を表す。
なお、本明細書を通してMは前記Mと同義である。
【0039】
【化10】

【化10A】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
本発明において前記一般式(1)で表される色素の含有量は特に限定されないが、半導体微粒子1gに対して、0.001〜1ミリモルであることが好ましく、0.1〜0.5ミリモルであることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、半導体における増感効果を十分に得るができ、上記上限値以下とすることで色素の脱着による増感効果の低減を抑制するができる。
【0043】
一般式(1)で表される色素の量(S)は、後記一般式(3)で表される金属錯体色素の量(R)との関係で添加量を調節することが好ましい。具体的にモル比においてR/Sが0.01〜1であることが好ましく、0.05〜0.5であることがより好ましく、0.08〜0.12であることが特に好ましい。このような範囲で用いることにより両金属錯体系の増感色素の効果が十分に発揮され、かつ互いの共着剤としての機能も無駄なく発揮され極めて高い効果を奏する。
なお、本発明においては上記一般式(1)で表される色素を2種以上用いてもよい。また本発明において色素とは当該色素化合物そのもののほか、酸性基や塩基性基を有する場合にはその塩やイオン化したもの等を含む意味である。
【0044】
一般式(1)で表される色素の吸収最大波長は特に限定されないが、溶液における最大吸収波長が、好ましくは500〜1200nmの範囲であり、より好ましくは600〜1150nmの範囲であり、特に好ましくは700〜1100nmの範囲である。一般式(1)で表される色素の吸収最大波長(Sw)と一般式(3)で表される色素の吸収最大波長(Rw)との差(Rw−Sw)は150〜800nmであることが好ましく、300〜700nmであることがより好ましい。このような領域に吸収最大波長を有することにより、後記一般式(3)で表される色素との組合せにおいて、太陽電池として有用な可視光を中心とした光による一層高い効率の光電変化が可能となる。
【0045】
一般式(1)で表される色素の合成方法は後記実施例に記載の方法を参照することができ、それに基づき常法を適宜適用することにより合成することができる。
【0046】
(一般式(3)で表される色素)
【0047】
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、上記一般式(1)の構造を有する色素とともに下記一般式(3)で表される構造を有する色素を用いる。

Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(3)

一般式(3)の構造を有する色素は、金属原子Mzに、配位子LL及び/又は配位子LLと、場合により特定の官能基Xが配位しており、必要な場合はCIにより電気的に中性に保たれている。一般式(3)であらわされる化合物は分子内に少なくとも1つの酸性吸着基を有し、LL、LLの少なくとも1方が当該酸性吸着基を有することが好ましく、LLが当該酸性吸着基を有する方が電子供与性置換基の影響を受けないためより好ましい。
【0048】
・金属原子Mz
Mzは金属原子を表す。Mzは好ましくは4配位または6配位が可能な金属であり、より好ましくはRu、Fe、Os、Cu、W、Cr、Mo、Ni、Pd、Pt、Co、Ir、Rh、Re、Mn又はZnである。特に好ましくは、Ru、Os、Zn又はCuであり、最も好ましくはRuである。
【0049】
・配位子LL
配位子LLは、下記一般式(4)により表される2座または3座の配位子であり、好ましくは2座配位子である。配位子LLの数を表すm1は0〜3の整数であり、1〜3であるのが好ましく、1であるのがより好ましい。m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。ただし、m1と、後述の配位子LLの数を表すm2のうち少なくとも一方は1以上の整数である。したがって金属原子に、配位子LL及び/又は配位子LLが配位している。
【0050】
【化13】

【0051】
一般式(4)中のR101及びR102はそれぞれ独立に酸性基を表し、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロキサム酸基、例えば、―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)及びホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)が挙げられ、好ましくはカルボキシル基、ホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基が挙げられる。R21およびR22はピリジン環上のどの炭素原子に置換してもよい。
【0052】
式中、R103、R104はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基である。
【0053】
配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また配位子LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0054】
一般式(4)中、R105及びR106はそれぞれ独立に、アルキル基、1つ以上の置換もしくは無置換の芳香族基(好ましくは炭素原子数6〜30の芳香族基、例えば、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル等)及び/又は1つ以上の置換もしくは無置換のヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30のヘテロ環基、例えば、2−チエニル、2−ピロリル、2−イミダゾリル、1−イミダゾリル、4−ピリジル、3−インドリル)であり、好ましくは1〜3個の電子供与基を有するヘテロ環基であり、より好ましくはチエニルが挙げられる。該電子供与基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシル基であるのが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはヒドロキシル基であるのがより好ましく、アルキル基であるのが特に好ましい。R105とR106は同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0055】
105とR106は、直接ジピリジン環に結合していてもよい。R105とR106は、L及び/又はLを介してジピリジン環に結合していてもよい。
ここでL及びLはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のエテニレン基及び/又はエチニレン基からなる共役鎖を表す。L及びLはそれぞれが結合しているピリジン環と共役している。エテニレン基が置換基を有する場合、該置換基はアルキル基であるのが好ましく、メチルであるのがより好ましい。L及びLはそれぞれ独立に、炭素原子数2〜6個の共役鎖であるのが好ましく、エテニレン、ブタジエニレン、エチニレン、ブタジイニレン、メチルエテニレン又はジメチルエテニレンがより好ましく、エテニレン又はブタジエニレンが特に好ましく、エテニレンが最も好ましい。LとLは同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。なお、共役鎖が炭素―炭素二重結合を含む場合、各二重結合はトランス体であってもシス体であってもよく、これらの混合物であってもよい。d1およびd2はそれぞれ独立に0以上の整数を表し。0〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。d1が2以上のときは、Lは同一でも異なっていてもよい。d2が2以上のときは、Lは同一でも異なっていてもよい。
【0056】
d3は0以上の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。a1が2以上のときR101は同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときR102は同じでも異なっていてもよい。a1は0又は1であるのが好ましく、a2は0〜2の整数であるのが好ましい。特に、d3が0のときa2は1又は2であるのが好ましく、d3が1のときa2は0又は1であるのが好ましい。a1とa2の和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0057】
b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数であるのが好ましい。b1が2以上のとき、R103は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b2が2以上のとき、R104は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。またb1及びb2がともに1以上のとき、R103とR104が連結して環を形成していてもよい。形成する環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0058】
a1とa2の和が1以上であって、配位子LLが酸性基を少なくとも1個有するときは、一般式(3)中のm1は2または3であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
【0059】
一般式(3)における配位子LLは、下記一般式(16−1)、(16−2)又は(16−3)で表されるものが好ましい。
【0060】
【化14】

【0061】
上記一般式(16−1)〜(16−3)中、R101〜R104、a1、a2、b1、b2及びd3は一般式(4)におけるものと同義である。
【0062】
一般式(16−2)中、R107は酸性基を表し、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基およびホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基またはホスホリル基であり、特に好ましくはカルボキシル基である。
【0063】
一般式(16−2)中、R108は置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はアシルアミノ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0064】
一般式(16−1)及び(16−2)中、R121〜R124はそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。R121〜R124の好ましい例は、一般式(4)における上記R103及びR104の好ましい例と同様である。R121〜R124はさらに好ましくは、アルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基である。R121〜R124がアルキル基である場合はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としてはアルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基またはカルボンアミド基が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。R121とR122並びにR123とR124はそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。形成する環としてはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、又はモルホリン環等が好ましい。
【0065】
一般式(16−1)〜(16−2)中、R125及びR126はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基又はヒドロキシル基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基である。
一般式(16−3)中、R127及びR128は、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基又はヒドロキシル基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基である。
【0066】
一般式(16−2)中、a3は0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。nが0のときa3は1又は2であるのが好ましく、nが1のときa3は0または1であるのが好ましい。a3が2以上のときR107は同じでも異なっていてもよい。
【0067】
一般式(16−1)及び(16−2)中、d1及びd2はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。d1が1以上のときR125は、R121及び/又はR122と連結して環を形成していてもよい。形成される環はピペリジン環又はピロリジン環であるのが好ましい。d1が2以上のときR125は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。d2が1以上のときR126は、R123及び/又はR124と連結して環を形成していてもよい
形成される環はピペリジン環又はピロリジン環であるのが好ましい。d2が2以上のときR126は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0068】
・配位子LL
一般式(3)中、LLは2座又は3座の配位子を表す。配位子LLの数を表すm2は0〜2の整数であり、0又は1であるのが好ましい。m2が2のときLLは同じでも異なっていてもよい。ただし、m2と、前述の配位子LLの数を表すm1のうち少なくとも一方は1以上の整数である。
配位子LLは、下記一般式(5)で表される2座又は3座の配位子である。
【0069】
【化15】


一般式(5)中、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5員環又は6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Za、Zb及びZcは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環又はピリジン環がより好ましい。
一般式(5)中、cは0または1を表す。cは0であるのが好ましく、LLは2座配位子であるのが好ましい。
【0070】
配位子LLは、下記一般式(17−1)〜(17−8)のいずれかにより表されるのが好ましく、一般式(17−1)、(17−2)、(17−4)又は(17−6)により表されるのがより好ましく、一般式(17−1)又は(17−2)により表されるのが特に好ましく、一般式(17−1)により表されるのが最も好ましい。
【0071】
【化16】

なお、一般式(17−1)〜(17−8)中のR151〜R166は図示の都合上1つの環上に置換したように記載しているが、その環上にあっても、あるいは図示されたものとは異なる環上に置換してもよい。
【0072】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R151〜R158はそれぞれ独立に酸性基を表す。R151〜R158は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロキサム酸基、例えば―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)又はホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)を表す。R151〜R158は、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基又はホスホニル基等、さらに好ましくはカルボキシル基又はホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基である。
【0073】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R159〜R166はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基またはアシルアミノ基である。
【0074】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R167〜R171はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合するヘテロ環基を表し。好ましくは、脂肪族基、芳香族基であり。より好ましくはカルボキシル基を有する脂肪族基である。配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0075】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R151〜R166は環上のどの位置に結合していてもよい。またe1〜e6はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。より好ましくは1または2である。e7及びe8はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0〜3の整数を表す。より好ましくは1〜3の整数である。e9〜e12及びe15はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、e13、e14及びe16はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。e9〜e16はそれぞれ独立に0〜3の整数であるのが好ましい。
【0076】
e1〜e8が2以上のとき、R151〜R158はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、e9〜e16が2以上のとき、R159〜R166はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0077】
・配位子X
配位子Xは1座又は2座の配位子を表す。配位子Xの数を表すm3は0〜2の整数を表し、m3は好ましくは1又は2である。Xが1座配位子のとき、m3は2であるのが好ましく、Xが2座配位子のとき、m3は1であるのが好ましい。m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
【0078】
配位子Xは、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、サリチル酸、グリシルオキシ、N,N−ジメチルグリシルオキシ、オキザリレン(―OC(O)C(O)O―)等)、アシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルチオ基、例えば、アセチルチオ、ベンゾイルチオ等)、チオアシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオアシルオキシ基、例えば、チオアセチルオキシ基(CHC(S)O―)等))、チオアシルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオアシルチオ基、例えば、チオアセチルチオ(CHC(S)S―)、チオベンゾイルチオ(PhC(S)S―)等))、アシルアミノオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノオキシ基、例えば、N−メチルベンゾイルアミノオキシ(PhC(O)N(CH)O―)、アセチルアミノオキシ(CHC(O)NHO―)等))、チオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルバメート基、例えば、N,N−ジエチルチオカルバメート等)、ジチオカルバメート基(好ましくは炭素原子数1〜20のジチオカルバメート基、例えば、N−フェニルジチオカルバメート、N,N−ジメチルジチオカルバメート、N,N−ジエチルジチオカルバメート、N,N−ジベンジルジチオカルバメート等)、チオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルボネート基、例えば、エチルチオカルボネート等)、ジチオカルボネート(好ましくは炭素原子数1〜20のジチオカルボネート、例えば、エチルジチオカルボネート(COC(S)S―)等)、トリチオカルボネート基(好ましくは炭素原子数1〜20のトリチオカルボネート基、例えば、エチルトリチオカルボネート(CSC(S)S−)等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、ベンゾイル等)、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えばメタンチオ、エチレンジチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20のアリールチオ基、例えば、ベンゼンチオ、1,2−フェニレンジチオ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えばメトキシ等)及びアリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、例えばフェノキシ、キノリン−8−ヒドロキシル等)からなる群から選ばれた基で配位された1座又は2座の配位子、若しくはハロゲン原子(好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボニル(…CO)、ジアルキルケトン(好ましくは炭素原子数3〜20のジアルキルケトン、例えばアセトン((CHCO…)等)、1,3−ジケトン(好ましくは炭素原子数3〜20の1,3−ジケトン、例えば、アセチルアセトン(CHC(O…)CH=C(O―)CH)、トリフルオロアセチルアセトン(CFC(O…)CH=C(O―)CH)、ジピバロイルメタン(tCC(O…)CH=C(O―)t−C)、ジベンゾイルメタン(PhC(O…)CH=C(O―)Ph)、3−クロロアセチルアセトン(CHC(O…)CCl=C(O―)CH)等)、カルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20のカルボンアミド、例えば、CHN=C(CH)O―、―OC(=NH)―C(=NH)O―等)、チオカルボンアミド(好ましくは炭素原子数1〜20のチオカルボンアミド、例えば、CHN=C(CH)S―等)、またはチオ尿素(好ましくは炭素原子数1〜20のチオ尿素、例えば、NH(…)=C(S―)NH、CHN(…)=C(S―)NHCH、(CHN―C(S…)N(CH等)からなる配位子を表す。なお、「…」は配位結合を示す。
【0079】
配位子Xは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、より好ましくはアシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子であり、特に好ましくはジチオカルバメート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子であり、最も好ましくは、ジチオカルバメート基、チオシアネート基およびイソチオシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトンからなる配位子である。なお配位子Xがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。
【0080】
Xが2座配位子のとき、Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。Xが1座配位子のとき、Xはチオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0081】
・対イオンCI
一般式(3)中のCIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン又は陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。
置換基が解離性基を有することなどにより、一般式(3)の色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、一般式(3)の色素全体の電荷はCIにより電気的に中性とされる。
【0082】
対イオンCIが正の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機又は有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、アルカリ金属イオン又はプロトンである。
対イオンCIが負の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0083】
吸着基(結合基)
一般式(3)で表される構造を有する色素は、半導体微粒子の表面に対する適当な酸性基(結合基、interlocking group)を1つ以上有する。この基を色素中に1〜6個有するのがより好ましく、1〜4個有するのが特に好ましい。カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(例えば―CONHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)、ホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)等の酸性基(解離性のプロトンを有する置換基)を色素中に有することが好ましい。なかでも、カルボキシル基(COOH基)を配位子上に有することが好ましい。本明細書において酸性基とはプロトンを放出する置換基を指す。また、「酸性基を有する」など、「特定の機能性の置換基を有する」というとき、本発明の効果を損ねない範囲で、当該機能性の置換基が母核に直接結合されていることのほか、所定の連結基を介して結合(連結)されたものを含む意味である。
【0084】
本発明における置換基とは例えば下記に示すものを表すことができる。
・ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・芳香族基(例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環)
・ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
・シアノ基、・ヒドロキシル基、・ニトロ基、・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
・アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
また、置換基は更に置換されていても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基を挙げることができる。
【0085】
本発明で用いる一般式(3)で表される構造を有する色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例における色素がプロトン解離性基を有する配位子を含む場合、該配位子は必要に応じて解離しプロトンを放出してもよい。
【化17】

【化18】

【0086】
一般式(3)で表される色素の合成方法は後記実施例に記載の方法を参照することができ、それに基づき常法を適宜適用することにより合成することができる。また、J.Am.Chem.Soc.,121,4047(1999)、Can.J.Chem.,75,318(1997)、Inorg.Chem.,27,4007(1988)等の文献および文献中に引用された方法を参考にして合成でき、ここに記載された色素及び方法を本明細書に引用する。また、特開2001−291534号公報、国際公開2007/091525号パンフレットに記載の情報を参照することもでき、ここに記載された色素及び方法を本明細書に引用する。
【0087】
一般式(3)の構造を有する色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
【0088】
本発明において前記一般式(3)で表される色素の含有量は特に限定されないが、半導体微粒子1gに対して、0.001〜1ミリモルであることが好ましく、0.1〜0.5ミリモルであることがより好ましい。上記下限値以上とすることで、半導体における増感効果を十分に得ることができ、上記上限値以下とすることで色素の脱着による増感効果の低減を抑制することができる。なお、本発明においては上記一般式(3)で表される色素を2種以上用いてもよい。
【0089】
[電荷移動体層]
本実施形態の光電変換素子に用いられる電荷移動体層には、電解質組成物からなる層が適用できる。その酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。
ヨウ素塩のカチオンは5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンであるのが好ましい。特に、一般式(2)により表される化合物がヨウ素塩でない場合は、WO95/18456号、特開平8−259543号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩を併用するのが好ましい。
光電変換素子に使用される電解質組成物中には、ヘテロ環4級塩化合物と共にヨウ素を含有するのが好ましい。ヨウ素の含有量は電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0090】
電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、あるいはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン等)、水、特開2002−110262記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
また、電解質溶媒として、室温において液体状態であり、及び/又は室温よりも低い融点を有する電気化学的に不活性な塩を用いても良い。例えば、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート等にイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などの含窒素ヘテロ環四級塩化合物、又はテトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0092】
電解質組成物には、ポリマーやオイルゲル化剤を添加したり、多官能モノマー類の重合やポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)してもよい。
【0093】
ポリマーを添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合、Polymer Electrolyte Reviews−1及び2(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物等を添加することができる。この場合、ポリアクリロニトリル又はポリフッ化ビニリデンを用いるのが好ましい。
【0094】
オイルゲル化剤を添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合は、オイルゲル化剤としてJ. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Soc., 46779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 390 (1993)、Angew. Chem. Int.Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 885, (1996)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 545, (1997)等に記載された化合物を使用することができ、アミド構造を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0095】
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化する場合は、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質及び溶媒から溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により色素を担持した電極上にゾル状の電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。多官能モノマー類はエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。
【0096】
ゲル電解質は上記多官能モノマー類の他に単官能モノマーを含む混合物の重合によって形成してもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸又はα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)或いはそれらのエステル又はアミド(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、セチルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボニルメチルメタクリレート、アクリルアミド、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸又はフマル酸或いはそれらから誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等が使用可能である。
【0097】
多官能モノマーの配合量は、モノマー全体に対して0.5〜70質量%とすることが好ましく、1.0〜50質量%であるのがより好ましい。上述のモノマーは、大津隆行・木下雅悦共著「高分子合成の実験法」(化学同人)や大津隆行「講座重合反応論1ラジカル重合(I)」(化学同人)に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル電解質用モノマーは加熱、光又は電子線によって、或いは電気化学的にラジカル重合させることができるが、特に加熱によってラジカル重合させるのが好ましい。この場合、好ましく使用できる重合開始剤は2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量はモノマー総量に対し0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。
ゲル電解質に占めるモノマーの重量組成範囲は0.5〜70質量%であるのが好ましい
。より好ましくは1.0〜50質量%である。ポリマーの架橋反応により電解質組成物をゲル化させる場合は、組成物に架橋可能な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を添加するのが好ましい。好ましい反応性基はピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環であり、好ましい架橋剤は窒素原子が求核攻撃できる官能基を2つ以上有する化合物(求電子剤)であり、例えば2官能以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等である。
【0098】
電解質組成物には、金属ヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等)、金属臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr 2等)、4級アンモニウム臭素塩(テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等)、金属錯体(フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等)、イオウ化合物(ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等)、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を添加してよい。これらは混合して用いてもよい。
【0099】
また、本発明ではJ. Am. Ceram. Soc., 80, (12), 3157−3171 (1997)に記載のt−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。
また、電解質としては、正孔導体物質を含む電荷輸送層を用いても良い。正孔導体物質として、9,9’−スピロビフルオレン誘導体などを用いることができる。
【0100】
電気化学素子の構成として、導電性支持体(電極層)、光電変換層(感光体層及び電荷移動体層)、ホール輸送層、伝導層、対極層を順次に積層することができる。p型半導体として機能するホール輸送材料をホール輸送層としてもちいることができる。好ましいホール輸送層としては、例えば無機系又は有機系のホール輸送材料を用いることができる。無機系ホール輸送材料としては、CuI、CuO,NiO等が挙げられる。また、有機系ホール輸送材料としては、高分子系と低分子系のものが挙げられ、高分子系のものとしては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリアミン、有機ポリシラン等が挙げられる。また、低分子系のものとしては、例えばトリフェニルアミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、フェナミン誘導体等が挙げられる。この中でも有機ポリシランは、従来の炭素系高分子と異なり、主鎖のSiに沿って非局化されたσ電子が光伝導に寄与し、高いホール移動度を有するため、好ましい(Phys. Rev. B, 35, 2818(1987))。
【0101】
伝導層は、導電性のよいものであれば特に限定されないが、例えば無機導電性材料、有機導電性材料、導電性ポリマー、分子間電荷移動錯体等が挙げられる。中でもドナー材料とアクセプター材料とから形成された分子間電荷移動錯体が好ましい。この中でも、有機ドナーと有機アクセプターとから形成されたものを好ましく用いることができる。ドナー材料は、分子構造内で電子がリッチなものが好ましい。例えば、有機ドナー材料としては、分子のπ電子系に、置換若しくは無置換アミン基、水酸基、エーテル基、セレン又は硫黄原子を有するものが挙げられ、具体的には、フェニルアミン系、トリフェニルメタン系、カルバゾール系、フェノール系、テトラチアフルバレン系材料が挙げられる。アクセプター材料としては、分子構造内で電子不足なものが好ましい。例えば、有機アクセプター材料としては、フラーレン、分子のπ電子系にニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はハロゲン基等の置換基を有するものが挙げられ、具体的にはPCBM、ベンゾキノン系、ナフトキノン系等のキノン系、フロオレノン系、クロラニル系、ブロマニル系、テトラシアノキノジメタン系、テトラシアノンエチレン系等が挙げられる。
伝導層の厚みは、特に限定されないが、多孔質を完全に埋めることができる程度が好ましい。
【0102】
[導電性支持体]
導電性支持体としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものを使用することができる。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
この他にも、金属支持体も好ましく使用することができる。その一例としては、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、銅を挙げることができる。これらの金属は合金であってもよい。さらに好ましくは、チタン、アルミニウム、銅が好ましく、特に好ましくは、チタンやアルミニウムである。
【0103】
導電性支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法や紫外線吸収剤を用いる方法も挙げられる。
導電性支持体上には、さらに特開平11−250944号公報等に記載の機能を付与してもよい。
【0104】
好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm程度である。
【0105】
導電膜の抵抗値はセル面積が大きくなると大きくなる為、集電電極を配置してもよい。支持体と透明導電膜の間にガスバリア膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置しても良い。ガスバリア層としては、樹脂膜や無機膜を使用することができる。
また、透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けてもよい。透明導電層は積層構造でも良く、好ましい方法としてたとえば、ITO上にFTOを積層することができる。
【0106】
[半導体微粒子]
半導体微粒子としては、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子が用いられる。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0107】
半導体には伝導に関わるキャリアーが電子であるn型とキャリアーが正孔であるp型が存在するが、n型を用いることが変換効率の点で好ましい。n型半導体には、不純物準位をもたず伝導帯電子と価電子帯正孔によるキャリアーの濃度が等しい固有半導体(あるいは真性半導体)の他に、不純物に由来する構造欠陥により電子キャリアー濃度の高いn型半導体が存在する。本発明で好ましく用いられるn型の無機半導体は、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbS、InP、GaAs、CuInS、CuInSeなどである。これらのうち最も好ましいn型半導体はTiO、ZnO、SnO、WO、ならびにNbである。また、これらの半導体の複数を複合させた半導体材料も好ましく用いられる。
【0108】
半導体微粒子の粒径は、半導体微粒子分散液の粘度を高く保つ目的で、一次粒子の平均粒径が2nm以上50nm以下であることが好ましく、また一次粒子の平均粒径が2nm以上30nm以下の超微粒子であることがより好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、上記の超微粒子に対して平均粒径が50nmを越える大きな粒子を、低含率で添加、又は別層塗布することもできる。この場合、大粒子の含率は、平均粒径が50nm以下の粒子の質量の50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。上記の目的で添加混合する大粒子の平均粒径は、100nm以上が好ましく、250nm以上がより好ましい。
【0109】
光散乱用の大粒子を用いることで、ヘイズ率60%以上となることが好ましい。ヘイズ率とは(拡散透過率)÷(全光透過率)で表される。
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル・ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)等に記載のゲル・ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル・ゲル法、ゲル・ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル・ゲル法として、バルべ等のジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0110】
この他に、半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法、四塩化チタンの燃焼法、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解、オルトチタン酸の加水分解、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法、過酸化物水溶液の水熱合成、またはゾル・ゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子の製造方法が挙げられる。
【0111】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合してもよい。
【0112】
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていても良い。チタニアへの添加剤としてドーパント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止の為に表面へ添加剤を用いても良い。好ましい添加剤の例としては、ITO、SnO粒子、ウイスカー、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ、酸化亜鉛ネッキング結合子、セルロース等の繊維状物質、金属、有機シリコン、ドデシルベンゼンスルホン酸、シラン化合物等の電荷移動結合分子、及び電位傾斜型デンドリマーなどが挙げられる。
【0113】
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理しても良い。エッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理してもよい。
【0114】
[半導体微粒子分散液の調製と半導体微粒子層の作製]
本発明においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子塗布層を得ることができる。
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、前述のゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、あるいはミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水および/または各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下とすることができる。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下とすることができる。実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができないことがある。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0115】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。またアプリケーション系の方法とメータリング系の方法を同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機を使用してスピン法やスプレー法で塗布するのも好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。また半導体微粒子分散液は粘度が高く、粘稠性を有するため、凝集力が強いことがあり、塗布時に支持体とうまく馴染まない場合がある。このような場合に、UVオゾン処理で表面のクリーニングと親水化を行うことにより、塗布した半導体微粒子分散液と導電性支持体表面の結着力が増し、半導体微粒子分散液の塗布が行い易くなる。
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0116】
塗布した半導体微粒子の層に対し、半導体微粒子同士の電子的接触の強化と、支持体との密着性の向上のため、また塗布した半導体微粒子分散液を乾燥させるために、加熱処理が施される。この加熱処理により多孔質半導体微粒子層を形成することができる。その他、部材の特性や用途に応じて適宜公知の方法により半導体微粒子層を形成してもよい。例えば、特開2001−291534号公報に開示された記載の材料や調製方法、作製方法を参照することができ、本明細書に引用する。
また、加熱処理に加えて光のエネルギーを用いることもできる。例えば、半導体微粒子として酸化チタンを用いた場合に、紫外光のような半導体微粒子が吸収する光を与えることで表面を活性化してもよいし、レーザー光などで半導体微粒子表面のみを活性化することができる。半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射することで、粒子表面に吸着した不純物が粒子表面の活性化によって分解され、上記の目的のために好ましい状態とすることができる。加熱処理と紫外光を組み合わせる場合は、半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射しながら、加熱が100℃以上250℃以下あるいは好ましくは100℃以上150℃以下で行われることが好ましい。このように、半導体微粒子を光励起することによって、微粒子層内に混入した不純物を光分解により洗浄するとともに、微粒子の間の物理的接合を強めることができる。
【0117】
また、半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、加熱や光を照射する以外に他の処理を行ってもよい。好ましい方法として例えば、通電、化学的処理などが挙げられる。
塗布後に圧力をかけても良く、圧力をかける方法としては、特表2003−500857号公報等が挙げられる。光照射の例としては、特開2001−357896号公報等が挙げられる。プラズマ・マイクロ波・通電の例としては、特開2002−353453号公報等が挙げられる。化学的処理としては、例えば特開2001−357896号公報が挙げられる。
【0118】
上述の半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法は、上述の半導体微粒子分散液を導電性支持体上に塗布する方法のほか、特許第2664194号公報に記載の半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して半導体微粒子膜を得る方法などの方法を使用することができる。
前駆体として例えば、(NHTiF、過酸化チタン、金属アルコキシド・金属錯体・金属有機酸塩等が挙げられる。
また、金属有機酸化物(アルコキシドなど)を共存させたスラリーを塗布し加熱処理、光処理などで半導体膜を形成する方法、無機系前駆体を共存させたスラリー、スラリーのpHと分散させたチタニア粒子の性状を特定した方法が挙げられる。これらスラリーには、少量であればバインダーを添加しても良く、バインダーとしては、セルロース、フッ素ポリマー、架橋ゴム、ポリブチルチタネート、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
半導体微粒子又はその前駆体層の形成に関する技術としては、コロナ放電、プラズマ、UVなどの物理的な方法で親水化する方法、アルカリやポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸などによる化学処理、ポリアニリンなどの接合用中間膜の形成などが挙げられる。
【0119】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、上述の(1)湿式法とともに、(2)乾式法、(3)その他の方法を併用しても良い。(2)乾式法として好ましくは、特開2000−231943号公報等が挙げられる。(3)その他の方法として、好ましくは、特開2002−134435号公報等が挙げられる。
【0120】
乾式法としては、蒸着やスパッタリング、エアロゾルデポジション法などが挙げられる。また、電気泳動法・電析法を用いても良い。
また、耐熱基板上でいったん塗膜を作製した後、プラスチック等のフィルムに転写する方法を用いても良い。好ましくは、特開2002−184475号公報記載のEVAを介して転写する方法、特開2003−98977号公報記載の紫外線、水系溶媒で除去可能な無機塩を含む犠牲基盤上に半導体層・導電層を形成後、有機基板に転写後、犠牲基板を除去する方法などが挙げられる。
【0121】
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。好ましい半導体微粒子の構造としては、特開2001−93591号公報等が挙げられる。
【0122】
一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間加熱してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜600℃が好ましい。
支持体として高分子材料を用いる場合、250℃以下で製膜後加熱することが好ましい。その場合の製膜方法としては、(1)湿式法、(2)乾式法、(3)電気泳動法(電析法を含む)の何れでも良く、好ましくは、(1)湿式法、又は(2)乾式であり、更に好ましくは、(1)湿式法である。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0123】
半導体微粒子に色素を吸着させるには、溶液と色素よりなる色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬するのが好ましい。色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、色素が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t−ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n−ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
溶液と色素よりなる色素吸着用色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。色素を混合する場合は、すべての色素が溶解するようにして、色素吸着用色素溶液とすることが好ましい。
【0124】
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。
【0125】
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0126】
[対極]
対極(対向電極)は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金、カーボン、導電性ポリマーが挙げられる。
【0127】
対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報などが挙げられる。
受光電極は酸化チタンと酸化スズ(TiO/SnO)などの複合電極を用いても良く、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913号公報等が挙げられる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243号公報、特開2003−282164号公報等が挙げられる。
【0128】
素子の構成としては、第1電極層、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極層を順次積層した構造を有していてもよい。この場合、第1光電変換層と第2光電変換層に用いる色素は同一または異なっていてもよく、異なっている場合には、吸収スペクトルが異なっていることが好ましいい。その他、適宜この種の電気化学素子に適用される構造や部材を適用することができる。
【0129】
受光電極は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしても良い。好ましいタンデム型の構成例としては、特開2000−90989、特開2002−90989号公報等に記載の例が挙げられる。
受光電極層内部で光散乱、反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けてもよい。好ましくは、特開2002−93476号公報に記載のものが挙げられる。
【0130】
導電性支持体と多孔質半導体微粒子層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999号公報等が挙げられる。
受光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941号公報が挙げられる。
【0131】
セル、モジュールの封止法としては、ポリイソブチレン系熱硬化樹脂、ノボラック樹脂、光硬化性(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット、アルミナにアルミニウムアルコキシドを用いる方法、低融点ガラスペーストをレーザー溶融する方法などが好ましい。ガラスフリットを用いる場合、粉末ガラスをバインダーとなるアクリル樹脂に混合したものでもよい。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
[XA(Sn)の調製]
以下にXA(Sn)の調製例を示すが、各色素に対応する置換基を有するフタロニトリルを用いて、XA(Sn)同様の反応を行うことで他の色素を調製することが可能である。
【0134】
中間体A、Bの合成
下記スキームに従って中間体Aを合成した。
【0135】
【化19】

【0136】
中間体A(3.7g)、中間体B(1.5g)をキノリンに溶解させ。SnCl(3.6g)を加えて150℃で10時間撹拌した。冷却後、水を加えろ過を行った後にカラムクロマトグラフィーで精製し、XA(1.0g)を得た。
他の色素についても同様の方法で調整した。
【化20】

【0137】
<例示色素の調製>
(例示化合物D−1−1aの調製)
下記のスキームの方法に従って例示色素D−1−1aを調製した。
【0138】
(i)化合物d−1−2の調製
d−1−1 25g、Pd(dba)33.8g、トリフェニルホスフィン8.6g、ヨウ化銅2.5g、1−へプチン25.2gをトリエチルアミン70ml、テトラヒドロフラン50mlに室温で攪拌し、80℃で4.5時間攪拌した。濃縮後カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物d−1−2 26.4gを得た。
(ii)d−1−4の調製
d−1−3 6.7gを窒素雰囲気下、−15℃でTHF(テラヒドロフラン)200mlに溶解し、別途調整したLDA(リチウムジイソプロピルアミド)をd−1−3の2.5等量を滴下し、75分攪拌した。その後d−1−2 15gをTHF30mlに溶解した溶液を滴下し0℃で1時間攪拌し、室温で終夜攪拌した。濃縮後、水150mlを加え、塩化メチレン150mlで分液・抽出し、塩水で有機層を洗浄し、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノールで再結晶後、d−1−4 18.9gを得た。
【0139】
(iii)化合物d−1−5の調製
d−1−4 13.2g、PPTS(ピリジニウムパラトルエンスルホン酸)1.7gを、トルエン1000mlに加え、窒素雰囲気下で5時間加熱還流を行った。濃縮後、飽和重曹水及び塩化メチレンで分液を行い、有機層を濃縮した。得られた結晶はメタノール及び塩化メチレンで再結晶後、d−1−5 11.7gを得た。
(iv)例示色素D−1−1aの調製
化合物d−1−5 4.0g、d−1−6 2.2g、をDMF60mlに加え70℃で4時間攪拌した。その後d−1−7 2.1gを加え160℃で3.5時間加熱攪拌した。その後チオシアン酸アンモニウム 19.0gを加え130℃で5時間攪拌した。濃縮後、水1.3ml加えろかし、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadexLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1−1b 600mgを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1―1aを570mg得た。
得られた化合物D−1―1aの構造はNMR測定により確認した。
1H−NMR(DMSO−d6、400MHz):δ(ppm)in aromatic regions:9.37(1H,d),9.11(1H,d),9.04(1H,s)、8.89(2H),8.74(1H,s),8.26(1H,d),8.10−7.98(2H),7.85−7.73(2H),7.60(1H,d),7.45−7.33(2H),7.33−7.12(5H,m),6.92(1H,d)
得られた例示色素D−1−1aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は568nmであった。
【0140】
【化21】

【0141】
(例示色素D−1−21aの調製)
下記のスキームの方法に従ってd−2−4を調製し、以下例示色素D−1−1aと同様にして例示色素D−1−21aを調製した。得られた例示色素D−1−21aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は570nmであった。
【化22】

【0142】
(例示色素D−1−16aの調製)
下記のスキームの方法に従ってd−3−2を調製し、以下例示色素D−1−1aと同様に、例示色素D−1−16aを調製した。得られた例示色素D−1−16aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は574nmであった。
【化23】

【0143】
(例示色素D−1−17aの調製)
下記のスキームの方法に従ってd−4−2を調製し、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−1−17aを調製した。得られた例示色素D−1−17aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は588nmであった。
【化24】

【0144】
(例示色素D−1−22aの調製)
下記のスキームの方法に従ってd−5−6を調製し、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−1−22aを調製した。得られた例示色素D−1−22aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は570nmであった。
【化25】

【0145】
(例示色素D−1−23aの調製)
下記のスキームの方法に従ってd−6−3を調製し、以下例示色素D−1−1aと同様にして例示色素D−1−23aを調製した。得られた例示色素D−1−23aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は571nmであった。
【化26】

【0146】
(例示色素D−1−24aの調製)
前記例示色素D−1−21aの調製において、d−2−2の代わりに下記のd−7−1を用いて、D−1−24aを調製した。得られた例示色素D−1−24aについて、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は574nmであった。
【化27】

【0147】
(例示色素D−8−1の調製)
下記のスキームの方法に従って、以下例示色素D−1−1aと同様にして、例示色素D−8−1を調製した。得られた例示色素D−8−1について、エタノール溶媒で色素の濃度が8.5μmol/lとなるように調製し、分光吸収測定を行ったところ、吸収極大波長は580nmであった。
【化28】

【0148】
前記の方法で調製した金属錯体色素は以下の通りである。
【0149】
【化29】

【0150】
【化30】

【0151】
【化31】

【0152】
(実験1)
(光電変換素子の作製)
図1に示す光電変換素子を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。
次に、水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100mlにアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製のP−25(商品名))を32g配合し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使用して均一に分散、混合し、半導体微粒子分散液を得た。この分散液を透明導電膜に塗布し、500℃で加熱して受光電極を作製した。
その後、同様にシリカ粒子とルチル型酸化チタンとを40:60(質量比)で含有する分散液を作製し、この分散液を前記の受光電極に塗布し、500℃で加熱して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成した。
次に、下記表1に記載された増感色素のエタノール溶液(3×10−4モル/l)に、上記の絶縁性多孔体が形成されたガラス基板を48時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/mであった。電解液は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/l)、ヨウ素(0.1モル/l)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0153】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表1に示した。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3%以上6%未満のものを△、3%未満のものを×として評価した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0154】
【表1】

上記で使用された化2の化合物は、式中のRの置換基がなく、その位置に水素原子のある化合物を意味する(したがって比較例の化合物となる。)。
【0155】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0156】
【化32】

【0157】
(実験2)
ガラス基板上にITO膜を作製し、その上にFTO膜を積層することにより、透明導電膜を作製した。その後透明導電膜上に酸化物半導体多孔質膜を形成することにより、透明電極板を得た。そしてその透明電極板を使用して光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。その方法は以下の(1)〜(5)の通りである。
【0158】
(1)ITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜用原料化合物溶液の調製
塩化インジウム(III)四水和物5.58gと塩化スズ(II)二水和物0.23gとをエタノール100mlに溶解して、ITO膜用原料化合物溶液とした。
【0159】
(2)FTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液の調製
塩化スズ(IV)五水和物0.701gをエタノール10mlに溶解し、これにフッ化アンモニウム0.592gの飽和水溶液を加え、この混合物を超音波洗浄機に約20分間かけ、完全に溶解して、FTO膜用原料化合物溶液とした。
【0160】
(3)ITO/FTO透明導電膜の作製
厚さ2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が450℃になったところで、(1)で得られたITO膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧した。
このITO膜用原料化合物溶液の噴霧後、2分間(この間ガラス基板表面にエタノールを噴霧し続け、基板表面温度の上昇を抑えるようにした。)経過し、ヒータの加熱温度が530℃になった時に、(2)で得られたFTO膜用原料化合物溶液を同様の条件で2分30秒間噴霧した。これにより、耐熱ガラス板上に厚さ530nmのITO膜、厚さ170nmのFTO膜が順次形成された透明電極板が得られた。
比較のために、厚さ2mmの耐熱ガラス板上に同様に、厚さ530nmのITO膜のみを成膜した透明電極板と、同じく厚さ180nmのFTO膜のみを成膜した透明電極板とをそれぞれ作製した。
これら3種の透明電極板を加熱炉にて、450℃で2時間加熱した。
【0161】
(4)光電気化学電池の作製
次に、上記3種の透明電極板を用いて、特許第4260494号中の図2に示した構造の光電気化学電池を作製した。酸化物半導体多孔質膜15の形成は、平均粒径約230nmの酸化チタン微粒子をアセトニトリル100mlに分散してペーストとし、これを透明電極11上にバーコート法により厚さ15μmに塗布し、乾燥後450℃で1時間焼成して行い、この酸化物半導体多孔質膜15に表2記載の色素を担持した。色素溶液への浸漬条件は実施例1と同じとした。
さらに、対極16には、ガラス板上にITO膜とFTO膜とを積層した導電性基板を使用し、電解質層17には、ヨウ素/ヨウ化物の非水溶液からなる電解液を用いた。光電気化学電池の平面寸法は25mm×25mmとした。
【0162】
(5)光電気化学電池の評価
この光電気化学電池について、人工太陽光(AM1.5)を照射し、その発電効率を求めた。その結果を表2に示す。変換効率が8.5%以上のものを◎、6.5%以上8.5%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3.0%未満のものを×として評価した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0163】
【表2】

【0164】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0165】
(実験3)
FTO膜上に集電電極を配し、光電気化学電池を作製し、変換効率を評価した。評価は以下の通り、試験セル(i)と試験セル(iv)の2種類とした。
【0166】
(試験セル(i))
100mm×100mm×2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した後、実施例2で使用したFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧し、FTO膜付きガラス基板を用意した。その表面に、エッチング法により深さ5μmの溝を格子回路パターン状に形成した。フォトリソグラフでパターン形成した後に、フッ酸を用いてエッチングを行った。これに、めっき形成を可能とするためにスパッタ法により金属導電層(シード層)を形成し、更にアディティブめっきにより金属配線層3を形成した。金属配線層3は、透明基板2表面から凸レンズ状に3μm高さまで形成した。回路幅は60μmとした。この上から、遮蔽層5としてFTO膜を400nmの厚さでSPD法により形成して、電極基板(i)とした。なお、電極基板(i)の断面形状は、特開2004−146425中の図2に示すものとなっていた。
電極基板(i)上に、平均粒径25nmの酸化チタンをアセトニトリル 100mlに分散して得た分散液を塗布・乾燥し、450℃で1時間加熱・焼結した。これを表3に示す色素のエタノール溶液へ浸漬して色素を吸着させた。また本発明に用いられる色素の各種有機溶剤への溶解性について予備検討した。その結果トルエンに溶解できることが明らかになったため、表3に記載の通り、トルエン溶液中に40分間浸透させ担持させたものも用意した。
50μm厚の熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートを介して白金スパッタFTO基板と対向して配置し、樹脂シート部を熱溶融させて両極板を固定した。
なおあらかじめ白金スパッタ極側に開けておいた電解液の注液口から、0.5Mのヨウ化塩と0.05Mのヨウ素とを主成分に含むメトキシアセトニトリル溶液を注液し、電極間に満たした。さらに周辺部及び電解液注液口をエポキシ系封止樹脂を用いて本封止し、集電端子部に銀ペーストを塗布して試験セル(i)とした。AM1.5の疑似太陽光により、試験セル(i)の光電変換特性を評価した。その結果を表3に示した。
【0167】
(試験セル(iv))
試験セル(i)と同様の方法で100×100mmのFTO膜付きガラス基板を用意した。そのFTOガラス基板上に、アディティブめっき法により金属配線層3(金回路)を形成した。金属配線層3(金回路)は基板表面に格子状に形成し、回路幅50μm、回路厚5μmとした。この表面に厚さ300nmのFTO膜を遮蔽層5としてSPD法により形成して試験セル(iv)とした。電極基板(iv)の断面をSEM−EDXを用いて確認したところ、配線底部でめっきレジストの裾引きに起因すると思われる潜り込みがあり、影部分にはFTOが被覆されていなかった。
電極基板(iv)を用い、試験セル(i)と同様に、試験セル(iv)を作製した。AM1.5の疑似太陽光により試験セル(iv)の光電変換特性を評価し、結果を表3に示した。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3.0%未満のものを×として評価した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0168】
【表3】

【0169】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0170】
【化33】

【0171】
(実験4)
ペルオキソチタン酸及び酸化チタン微粒子を生成する方法、並びにそれを用いて酸化物半導体膜を作製する方法について試験を行い、光電気化学電池を作製し、評価した。
【0172】
(光電池セル(A))
(1)酸化物半導体膜形成用塗布液(A)の調製
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、5質量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(A)を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(A)を10質量%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO換算し、TiO質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
【0173】
(2)酸化物半導体膜(A)の作製
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って酸化物半導体膜(A)をガラス基板に形成した。
【0174】
(3)酸化物半導体膜(A)への色素の吸着
次に、分光増感色素として本発明の色素の濃度3×10−4モル/リットルのエタノール溶液を調製した。この色素溶液を100rpmスピナーで、金属酸化物半導体膜(A)上へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行った。
【0175】
(4)電解質溶液の調製
アセトニトリルと炭酸エチレンとの体積比が1:5の混合溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.46モル/リットル、ヨウ素を0.07モル/リットルの濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
【0176】
(5)光電気セル(A)の作製
(2)で作製した、色素を吸着させた酸化物半導体膜(A)が形成されたガラス基板を一方の電極とし、他方の電極として、フッ素ドープした酸化スズを電極として形成しその上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に(4)の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(A)を作製した。
【0177】
(6)光電気セル(A)の評価
光電気セル(A)は、ソーラーシュミレーターで100W/mの強度の光を照射して、η(変換効率)を測定し、その結果を表4に示した。
【0178】
(光電池セル(B))
紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた後、Arガスのイオン照射(日新電気製:イオン注入装置、200eVで10時間照射)を行った以外は酸化物半導体膜(A)と同様にして酸化物半導体膜(B)を形成した。
酸化物半導体膜(A)と同様に、酸化物半導体膜(B)に色素の吸着を行った。
その後光電池セルAと同様の方法で光電気セル(B)を作成し、ηを測定した。その結果を表4に示した。
【0179】
(光電池セル(C))
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈して、TiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。この水溶液を撹拌しながら、15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO換算で、10.2質量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと5質量%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液全量から90体積%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(C)を調製した。
次に、上記で得られたペルオキソチタン酸溶液とチタニアコロイド粒子(C)を使用して酸化物半導体膜(A)と同様にして酸化物半導体膜(C)を形成し、金属酸化物半導体膜(A)と同様にして、分光増感色素として本発明の色素の吸着を行った。
その後光電気セル(A)と同様の方法で光電気セル(C)を作製し、ηを測定した。その結果を表4に示した。
【0180】
(光電池セル(D))
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄した後、純水に懸濁してTiOとして0.6質量%の水和酸化チタンゲルのスラリーとし、これに塩酸を加えてpH2とした後、オートクレーブに入れ、180℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(D)を調製した。
次に、チタニアコロイド粒子(D)を10質量%まで濃縮し、これに、TiOに換算して、30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して、半導体膜形成用塗布液を調製した。次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射し、膜を硬化させた。さらに、300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行い、酸化物半導体膜(D)を形成した。
次に、酸化物半導体膜(A)と同様にして分光増感色素として、本発明の色素の吸着を行った。
その後、光電気セル(A)と同様の方法で光電気セル(D)を作成し、ηを測定した。結果を表4に示した。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0181】
【表4】

【0182】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0183】
(実験5)
方法を変えて酸化チタンの調製又は合成を行い、得られた酸化チタンから酸化物半導体膜を作製し、光電気化学電池とし、その評価を行った。
【0184】
(1)熱処理法による酸化チタンの調製
市販のアナターゼ型酸化チタン(石原産業(株)製、商品名ST−01)を用い、これを約900℃に加熱してブルーカイト型の酸化チタンに変換し、さらに約1,200℃に加熱してルチル型の酸化チタンとした。それぞれ順に、比較酸化チタン1(アナターゼ型)、酸化チタン1(ブルーカイト型)、比較酸化チタン2(ルチル型)とする。
【0185】
(2)湿式法による酸化チタンの合成
(酸化チタン2(ブルーカイト型))
蒸留水954mlを還流冷却器付きの反応槽に装入し、95℃に加温する。撹拌速度を約200rpmに保ちながら、この蒸留水に四塩化チタン(Ti含有量:16.3質量%、比重1.59、純度99.9%)水溶液46mlを約5.0ml/minの速度で反応槽に滴下した。このとき、反応液の温度が下がらないように注意した。その結果、四塩化チタン濃度が0.25mol/リットル(酸化チタン換算2質量%)であった。反応槽中では反応液が滴下直後から、白濁し始めたがそのままの温度で保持を続け、滴下終了後さらに昇温し沸点付近(104℃)まで加熱し、この状態で60分間保持して完全に反応を終了した。
反応により、得られたゾルを濾過し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.38、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.05であった。これらから求めると酸化チタンは、ブルーカイト型が約70.0質量%、ルチル型が約1.2質量%、アナターゼ型が約28.8質量%の結晶性であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.015μmであった。
【0186】
(酸化チタン3(ブルーカイト型))
三塩化チタン水溶液(Ti含有量:28質量%、比重1.5、純度99.9%)を蒸留水で希釈し、チタン濃度換算で0.25モル/Lの溶液とした。このとき、液温が上昇しないよう氷冷して、50℃以下に保った。次に、この溶液を還流冷却器付きの反応槽に500ml投入し、85℃に加温しながらオゾンガス発生装置から純度80%のオゾンガスを1L/minでバブリングし、酸化反応を行なった。この状態で2時間保持し、完全に反応を終了した。得られたゾルをろ過、真空乾燥し、粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.85、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0であった。これらから求めると二酸化チタンは、ブルーカイト型が約98質量%、ルチル型が0質量%、アナターゼ型が0質量%であり、約2%は無定形であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.05μmであった。
【0187】
(色素増感型光電変換素子の作製および評価)
上記の酸化チタン1〜3で調製した酸化チタンを半導体として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を次のように作製した。
ガラス基板上にフッ素ドープの酸化スズをコートし、導電性透明電極とした。電極面上にそれぞれの酸化チタン粒子を原料としたペーストを作成し、バーコート法で厚さ50μmに塗布した後、500℃で焼成して膜厚約20μmの薄層を形成した。次に色素の3×10−4モル濃度のエタノール溶液を調製し、これに上記の酸化チタンの薄層を形成したガラス基板を浸漬し、12時間室温で保持した。
【0188】
電解液としてテトラプロピルアンモニウムのヨウ素塩とヨウ化リチウムのアセトニトリル溶液を用い、白金を対極として特開2000−340269の図1に示す構成を有する光電変換素子を作製した。光電変換は160wの高圧水銀ランプの光(フィルターで赤外線部をカット)を上記の素子に照射し、その際の変換効率を測定した。結果を表5に示す。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0189】
【表5】

ここで使用した化3に係る化合物のXはSである。
【0190】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0191】
(実験6)
粒径の異なる酸化チタンを用いて半導体電極として、光電気化学電池を作製し、その特性を評価した。
[ペーストの調製]
まず光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層を形成するためのペーストを以下の手順で調製した。
【0192】
(ペースト1)
球形のTiO粒子(アナターゼ型、平均粒径;25nm、以下、球形TiO粒子1という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
【0193】
(ペースト2)
球形TiO粒子1と、球形のTiO粒子(アナターゼ型、平均粒径;200nm、以下、球形TiO粒子2という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子1の質量:TiO粒子2の質量=30:70)を調製した。
【0194】
(ペースト3)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ型、直径;100nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子1という)を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=10:90のペーストを調製した。
【0195】
(ペースト4)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0196】
(ペースト5)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=50:50のペーストを調製した。
【0197】
(ペースト6)
ペースト1に、板状のマイカ粒子(直径;100nm、アスペクト比;6、以下、板状マイカ粒子1という)を混合し、板状マイカ粒子1の質量:ペースト1の質量=20:80のペーストを調製した。
【0198】
(ペースト7)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;30nm、アスペクト比;6.3、以下、棒状TiO粒子2という)を混合し、棒状TiO2粒子2の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0199】
(ペースト8)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;50nm、アスペクト比;6.1、以下、棒状TiO粒子3という)を混合し、棒状TiO粒子3の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0200】
(ペースト9)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;75nm、アスペクト比;5.8、以下、棒状TiO粒子4という)を混合し、棒状TiO粒子4の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0201】
(ペースト10)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;130nm、アスペクト比;5.2、以下、棒状TiO粒子5という)を混合し、棒状TiO粒子5の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0202】
(ペースト11)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;180nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子6という)を混合し、棒状TiO粒子6の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0203】
(ペースト12)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;240nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子7という)を混合し、棒状TiO粒子7の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0204】
(ペースト13)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;110nm、アスペクト比;4.1、以下、棒状TiO粒子8という)を混合し、棒状TiO粒子8の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0205】
(ペースト14)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;105nm、アスペクト比;3.4、以下、棒状TiO粒子9という)を混合し、棒状TiO粒子9の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0206】
(光電気化学電池1)
以下に示す手順により、特開2002−289274記載の図5に示した光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、当該光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの光電気化学電池1を作製した。
【0207】
ガラス基板上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)を形成した透明電極を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上記のペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト4を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図5に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6μm、光散乱層の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
【0208】
次に、半導体電極に色素を以下のようにして吸着させた。まずマグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに本発明の色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素を約1.5ミリモル/m吸着し、光電極10を完成させた。
【0209】
次に、対極として上記の光電極と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、ヨウ素及びヨウ化リチウムを含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274記載の図3に示すように、光電極10と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して光電気化学電池1を完成させた。
【0210】
(光電気化学電池2)
半導体電極の製造を以下のようにして行ったこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により特開2002−289274記載の図1に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池2を作製した。
【0211】
ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用した。そして、SnO導電膜上に、ペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成し、半導体層を形成した。
【0212】
ペースト3を光散乱層の最内部の層形成用ペーストとして使用した。また、ペースト5を光散乱層の最外部の層形成用ペーストとして使用した。そして、色素増感太陽電池1と同様にして半導体層上に光散乱層を形成した。
【0213】
そして、SnO導電膜上に、特開2002−289274記載の図1に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;3μm、最内部の層の層厚;4μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;10質量%、最外部の層の層厚;3μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;50質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。光電気化学電池1と同様に、光電極と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して光電気化学電池2を完成させた。
【0214】
(光電気化学電池3)
半導体電極の製造に際して、ペースト1を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト4を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した光電気化学電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池3を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;5μm、光散乱層の層厚;5μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%であった。
【0215】
(光電気化学電池4)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト6を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した光電気化学電池20と同様の構成を有する光電極及び光電気化学電池4を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6.5μm、光散乱層の層厚;3.5μm、光散乱層に含有される板状マイカ粒子1の含有率;20質量%であった。
【0216】
(光電気化学電池5)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト8を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池5を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子3の含有率;30質量%であった。
【0217】
(光電気化学電池6)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト9を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池6を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子4の含有率;30質量%であった。
【0218】
(光電気化学電池7)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト10を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池7を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子5の含有率;30質量%であった。
【0219】
(光電気化学電池8)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト11を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池8を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子6の含有率;30質量%であった。
【0220】
(光電気化学電池9)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト13を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池9を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子8の含有率;30質量%であった。
【0221】
(光電気化学電池10)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト14を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順により光電極及び光電気化学電池10を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子9の含有率;30質量%であった。
【0222】
[電池特性試験]
電池特性試験を行ない、光電気化学電池1〜10、比較光電気化学電池1〜2について変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/m2の疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、エネルギー変換効率(η/%)を求めた。その結果を表6に示す。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0223】
【表6】

【0224】
本発明の複合増感色素を用いて作製された電気化学電池は、上表に示されているように、高い変換効率と高い耐久性とを同時に達成した。
【0225】
(実験7)
金属酸化物微粒子に金属アルコキシドを加えスラリー状としたものを導電性基板に塗布し、その後、UVオゾン照射、UV照射又は乾燥を行い、電極を作製した。その後、光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。
【0226】
(金属酸化物微粒子)
金属酸化物微粒子としては、酸化チタンを用いた。酸化チタンは、質量比で、30%ルチル型及び70%アナターゼ型、平均粒径25nmのP25粉末(Degussa社製、商品名)を用いた。
【0227】
(金属酸化物微粒子粉末の前処理)
金属酸化物微粒子をあらかじめ熱処理することで表面の有機物と水分を除去した。酸化チタン微粒子の場合は450℃のオーブンで大気下、30分間加熱した。
【0228】
(金属酸化物微粒子に含まれる水分量の測定)
温度26℃、湿度72%の環境に保存しておいた酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)に含まれる水分量を、熱重量測定における重量減少、及び300℃に加熱したときに脱着した水分量のカールフィッシャー滴定により定量した。
【0229】
酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)を300℃で加熱したときに脱着する水分量をカールフィッシャー滴定によって定量したところ、0.1033gの酸化チタン微粉末中に0.253mgの水が含まれていた。すなわち、酸化チタン微粉末は約2.5wt%の水分を含んでいたため、金属酸化物微粒子粉末は金属アルコキシドとの混合前に450℃のオーブンで30分間熱処理し、冷却後デシケーター中に保存して用いた。
【0230】
(金属アルコキシドペーストの調製)
金属酸化物微粒子を結合する役割をする金属アルコキシドとしては、チタン原料としてはチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)、ジルコニウム原料としてはジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド、ニオブ原料としてはニオブ(V)ペンタエトキシド(全てAldrich社製)をそれぞれ用いた。
【0231】
金属酸化物微粒子と金属アルコキシドのモル濃度比は、金属アルコキシドの加水分解によって生じるアモルファス層が過度に厚くならず、かつ粒子同士の結合が十分行えるように、金属酸化物微粒子径に応じて適宜調節した。なお、金属アルコキシドはすべて、0.1Mのエタノール溶液とした。酸化チタン微粒子とチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)とを混合する場合には、酸化チタン微粒子1gに対し、3.55gの0.1M TTIP溶液を混合した。このとき、得られたペースト中の酸化チタン濃度は約22質量%となり、塗布に適当な粘度となった。また、このときの酸化チタンとTTIPとエタノールは、質量比で1:0.127:3.42、モル比で1:0.036:5.92であった。
同様に、酸化チタン微粒子とTTIP以外のアルコキシドの混合ペーストについても微粒子濃度が22質量%となるように調製した。酸化亜鉛及び酸化スズ微粒子を用いたペーストでは16質量%とした。酸化亜鉛及び酸化スズの場合は、金属酸化物微粒子1gに対して、金属アルコキシド溶液5.25gの比で混合した。
【0232】
金属酸化物微粒子と金属アルコキシド溶液は、密閉容器中においてマグネチックスターラーによって2時間攪拌して均一なペーストを得た。
導電性基板へのペーストの塗布方法は、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などを用いることが可能であり、適当なペースト粘度は塗布方法によって適宜選択した。ここでは簡便にガラス棒で塗布する方法(ドクターブレード法に類似)を用いた。この場合、適当なペースト粘度を与える金属酸化物微粒子の濃度は概ね5〜30質量%の範囲となった。
【0233】
金属アルコキシドの分解によって生成するアモルファス金属酸化物のレイヤー厚さは本実施例では0.1〜0.6nm程度の範囲にある。概ね0.05〜1.3nm程度が本手法による室温製膜に適切な範囲となっていた。
【0234】
(導電性基板上へのペーストの塗布と風乾処理)
スズドープ酸化インジウム(ITO)導電膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板(20Ω/cm)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電膜付きガラス基板(10Ω/cm)に、スペーサーとして粘着テープ2枚を一定間隔で平行に貼り付け、上記の方法に従って調製した各ペーストを、ガラス棒を用いて均一に塗布した。
【0235】
ペーストを塗布後、色素吸着前に、UVオゾン処理、UV照射処理、又は乾燥処理の有無について条件を変えて多孔質膜を作製した。
(乾燥処理)
導電性基板へ塗布した後の膜を大気中室温で2分程度で風乾した。この過程でペースト中の金属アルコキシドが大気中の水分によって加水分解を受け、Tiアルコキシド、Zrアルコキシド、Nbアルコキシドからそれぞれアモルファスの酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブが形成された。
生成したアモルファス金属酸化物が、金属酸化物微粒子同士及び膜と導電性基板を接着する役割を果たすため、風乾するのみで機械的強度と付着性に優れた多孔質膜が得られた。
【0236】
(UVオゾン処理)
UVオゾン処理には日本レーザー電子社製のNL−UV253 UVオゾンクリーナーを用いた。UV光源には185nmと254nmに輝線を持つ4.5W水銀ランプ3個を備えており、試料を光源から約6.5センチの距離に水平に配置した。チャンバー中に酸素気流を導入することでオゾンが発生する。本実施例においてはこのUVオゾン処理を2時間行なった。なお、このUVオゾン処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下は全く見られなかった。
【0237】
(UV処理)
チャンバー中を窒素置換して処理を行う以外は同様に、前記UVオゾン処理と同様に、2時間処理を行った。このUV処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下はまったく見られなかった。
【0238】
(色素吸着)
増感色素には本発明の色素を用い、0.5mMのエタノール溶液を調製した。本実施例では上記のプロセスで作製した多孔質膜を100℃のオーブンで1時間乾燥した後に増感色素の溶液に浸漬し、そのまま室温で50分間放置して酸化チタン表面に増感色素を吸着した。増感色素吸着後の試料はエタノールで洗浄し、風乾した。
【0239】
(光電気化学電池の作製と電池特性評価)
色素吸着後の多孔質膜が形成された導電性基板を光電極とし、これと白金微粒子をスパッタリングにより修飾したITO/PETフィルム又はFTO/ガラス対極を対向させて、光電気化学電池を試作した。上記光電極の実効面積は約0.2cmとした。電解質溶液には0.5MのLiI,0.05MのI,0.5Mのt−ブチルピリジンを含む3−メトキシプロピオニトリルを用い、毛管現象によって両電極間のギャップに導入した。
【0240】
電池性能の評価は、一定フォトン数(1016cm−2)照射下での光電流作用スペクトル測定及びAM1.5擬似太陽光(100mW/cm)照射下でのI−V測定により行なった。これらの測定には分光計器社製のCEP−2000型分光感度測定装置を用いた。
得られた出力特性値を表7にまとめた。結果は、変換効率が8%以上のものを◎、6%以上8%未満のものを○、3.0%以上6%未満のものを△、3%未満のものを×として表示した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
【0241】
【表7】

【0242】
表7において、「UVオゾン」、「UV」、「乾燥」の欄はそれぞれ、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無を表す。処理したものが「○」であり、処理なしのものが「×」である。
表7の「TiOの前処理の欄は、酸化チタン微粒子の前処理(450℃のオーブンで30分間熱処理)の有無を示す。試料6、14、22は、高TTIP濃度(酸化チタン:TTIPのモル比が1:0.356)のペーストを用いた試料を表す。他の試料(試料1〜5,7〜13,23,24)は全て酸化チタン:TTIP=1:0.0356のペーストを用いている。
【0243】
表7に示す結果から、本発明の複合増感色素を使用した場合には、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無にかかわらず、光電気化学電池の変換効率が高いことがわかった。さらに500時間経過後の変換効率が初期値の60%以上と優れた耐久性を示した。
これに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率、耐久性に問題があることが分かった。置換基による光吸収効率向上効果と一電子酸化状態の安定性が低いことが考えられる。
【0244】
(実験8)
溶媒としてアセトニトリルを用い、ヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.62mol/lを溶解した電解質溶液を調製した。ここに下記に示すNo.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物をそれぞれ濃度0.5mol/lになるように別々に添加し、溶解した。
【0245】
【化34】

【0246】
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより、導電膜を形成した。この導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子を含有する分散液(
水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100mlにアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製のP−25(商品名))を32g配合し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使用して均一に分散、混合して得た、半導体微粒子分散液)を塗布し、その後500℃で焼結して厚さ15μmの感光層を形成した。この感光層に、No.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物電解液を、滴下した。
ここにポリエチレンフィルム製のフレーム型スペーサー(厚さ25μm)をのせ、白金対電極でこれを覆い、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子に、Xeランプを光源として強度100mW/cmの光を照射した。表8に得られた開放電圧と光電変換効率を示した。開放電圧は、7.3V以上のものを◎、7.0V以上7.3V未満のものを○、6.7V以上7.0V未満のものを△、6.7V未満のものを×として表示した。変換効率は、4.5%以上のものを◎、3.5%以上4.5%未満のものを○、3.0%以上3.5%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。また、変換効率の初期値に対し500時間後の変換効率が90%以上のものを◎、60%以上90%未満のものを○、40%以上60%未満のものを△、40%未満のものを×として評価した。
なお、表8には、ベンズイミダゾール系化合物を加えていない電解液を用いた光電変換素子の結果も示した。
【0247】
【表8】

【0248】
表8の結果から、本発明の色素混合物は変換効率が高いことがわかる。さらに500時間経過後の変換効率が初期値の60%以上と優れた耐久性を有した。
これに対して、比較色素を用いた場合には、開放電圧と変換効率の初期値は高いが、耐久性に問題があることがわかった。置換基による一電子酸化状態の安定化に差があると考えられる。
【0249】
(実験9)
(光電気化学電池1)
以下に示す手順により、特開2004−152613記載の図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極(ただし、半導体電極2を2層構造とした。)を作製し、更に、この光電極を用いた以外は特開2004−152613記載の図1に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電気化学電池(半導体電極2の受光面F2の面積:1cm)を作製した。なお、2層構造を有する半導体電極2の各層について、透明電極1に近い側に配置される層を「第1の層」、多孔体層PSに近い側に配置される層を「第2の層」という。
【0250】
まず、平均粒子径25nmのP25粉末(Degussa社製、商品名)と、これと粒子径の異なる酸化チタン粒子、P200粉末(平均粒子径:200nm、Degussa社製、商品名)とを用い、P25とP200の合計の含有量が15質量%で、P25とP200との質量比が、P25:P200=30:70となるように、これらにアセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(東京化成社製、商品名;「Triton−X」)を加え、混練して第2の層形成用のスラリー(以下、「スラリー1」とする)を調製した。
【0251】
次に、P200を使用せず、P25のみを使用したこと以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により第1の層形成用のスラリー(P1の含有量;15質量%、以下、「スラリー2」とする)を調製した。
【0252】
一方、ガラス基板(透明導電性ガラス)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚:700nm)を形成した透明電極(厚さ:1.1mm)を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のスラリー2をバーコーダで塗布し、次いで乾燥させた。その後、大気中、450℃で30分間焼成した。このようにして、透明電極上に、半導体電極2の第1の層を形成した。
【0253】
更に、スラリー1を用いて、上述と同様の塗布と焼成とを繰り返すことにより、第1の層上に、第2の層を形成した。このようにして、SnO導電膜上に半導体電極2(受光面の面積;1.0cm、第1層と第2層の合計厚さ:10μm(第1の層の厚さ:3μm、第2の層の厚さ:7μm))を形成し、増感色素を含有していない状態の光電極10を作製した。
【0254】
次に、増感色素として本発明の色素のエタノール溶液(増感色素の濃度;3×10−4mol/L)を調製した。この溶液に前記光電極10を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置し、増感色素を吸着させた。その後、開放電圧Vocを向上させるために、色素吸着後の半導体電極を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液に15分浸漬した後、25℃に保持した窒素気流中において乾燥させ、上記光電極10を完成させた。
【0255】
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極CEを作製した。先ず、透明導電性ガラス上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に450℃で30分焼成処理することにより、白金焼結対極CEを得た。なお、この対極CEには予め電解質Eの注入用の孔(直径1mm)を設けておいた。
【0256】
次に、溶媒となるメトキシアセトニトリルに、ヨウ化亜鉛と、ヨウ化−1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムと、ヨウ素と、4−tert−ブチルピリジンとを溶解させて液状電解質(ヨウ化亜鉛の濃度:10mmol/L、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度:0.6mol/L、ヨウ素の濃度:0.05mol/L、4−tert−ブチルピリジン濃度:1mol/L)を調製した。
【0257】
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」,エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム)を準備し、特開2004−152613記載の図1に示すように、光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、それぞれを熱溶着により張り合わせて電池の筐体(電解質未充填)を得た。
【0258】
次に、液状電解質を対極の孔から筐体内に注入した後、孔をスペーサと同素材の部材で塞ぎ、更に対極の孔にこの部材を熱溶着させて孔を封止し、光電気化学電池1を完成させた。
【0259】
(光電気化学電池2)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の濃度を50mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で光電気化学電池2を作製した。
【0260】
(光電気化学電池3)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を20mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で比較光電気化学電池1を作製した。
【0261】
(電気化学電池4)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を100mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で比較光電気化学電池2を作製した。
【0262】
(電池特性評価試験)
以下の手順により、光電気化学電池1、2及び比較電気化学電池1、2について、光電変換効率(η(%))を測定した。
【0263】
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cmとする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。
【0264】
各光電気化学電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、これらから光電変換効率η[%]を求めた。得られた結果を表9(1Sunの照射条件)の「fresh」として示す。また、60℃、1Sun照射で、10Ω負荷での作動条件で色素増感型太陽電池1〜2及び比較色素増感型太陽電池1〜2の光電変換効率η[%]の80℃で300時間経時後に調べた耐久性評価試験の結果も表9に示した。Freshの変換効率は、5%以上のものを◎、3.5%以上5%未満のものを○、3.0%以上3.5%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。また、300時間経過後の変換効率がフレッシュに対し80%以上維持しているものを合格、80%未満を不合格とした。
【0265】
【表9】

【0266】
表9に示した結果から明らかなように、本発明の色素混合物を用いた光電気化学電池は、変換効率の初期値が高く、300時間経過語の変換効率も高い値を維持していることがわかった。
これに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率の職値は低く、更に耐久性にも問題があることが分かった。これは置換基による光吸収率向上と非効率会合抑制、また一電子酸化状態安定化の寄与があると考えられる。
【0267】
(実験10)
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をフッ素樹脂コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triron X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにより測定した。
【0268】
2.色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)の作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製,TCOガラス−U,表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表10に示す色素のエタノール溶液(濃度:3×10−4mol/L)に3時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させた。このようにして得られた色素増感酸化チタン微粒子層の厚さは10μmであり、酸化チタン微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
【0269】
3.光電気化学電池の作製
溶媒としては、アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を用いた。この溶媒に、ヨウ素と電解質塩として、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩を加えて、0.5mol/Lの電解質塩および0.05mol/Lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に、(溶媒+窒素含有高分子化合物+塩)100質量部に対し、窒素含有高分子化合物(α)を10質量部加えた。さらに窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子剤(β)を0.1モル混合し、均一な反応溶液とした。
【0270】
一方、導電性ガラス板上に形成された色素増感酸化チタン微粒子層の上にスペーサーを介して白金を蒸着したガラス板からなる対極の白金薄膜側を載置し、導電性ガラス板と白金蒸着ガラス板とを固定した。得られた組立体の開放端を上記電解質溶液に浸漬し、毛細管現象により色素増感酸化チタン微粒子層中に反応溶液を浸透させた。
次いで80℃で30分間加熱して、架橋反応を行った。このようにして、特開2000−323190号記載の図2に示す通り、導電性ガラス板10の導電層12上に、色素増感酸化チタン微粒子層20、電解質層30、および白金薄膜42およびガラス板41からなる対極40が順に積層された本発明の光電気化学電池1−1(サンプルNo.1)を得た。
また色素と電解質組成物の組成の組み合わせを表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、異なる感光層20および/または電荷移動層30を有する光電気化学電池1−2、1−3を得た。
【0271】
4.光電気化学電池A、Bの作製
(1)光電気化学電池A
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)を同じ大きさの白金蒸着ガラス板にスペーサーを介して重ねあわせた。次に両ガラス板の隙間に毛細管現象を利用して電解液(アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を溶媒としたヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.5mol/Lの溶液)を浸透させて、光電気化学電池A−1を作製した。また色素を表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、光電気化学電池A−2、A−3を得た。
【0272】
(2)光電気化学電池B(特開平9−27352号に記載の電解質)
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)上に、電解液を塗布し、含浸させた。なお電解液は、ヘキサエチレングリコールメタクリル酸エステル(日本油脂化学(株)製,ブレンマーPE−350)1gと、エチレングリコール1gと、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロバン−1−オン(日本チバガイギー(株)製,ダロキュア1173)20mgを含有した混合液に、ヨウ化リチウム500mgを溶解し10分間真空脱気することにより得た。次に前記混合溶液を含浸させた多孔性酸化チタン層を減圧下に置くことにより、多孔性酸化チタン層中の気泡を除き、モノマーの浸透を促した後、紫外光照射により重合して高分子化合物の均一なゲルを多孔性酸化チタン層の微細空孔内に充填した。このようにして得られたものをヨウ素雰囲気に30分間曝して、高分子化合物中にヨウ素を拡散させた後、白金蒸着ガラス板を重ね合わせ、光電気化学電池B−1を得た。また色素を表10に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、光電気化学電池B−2、B−3を得た。
【0273】
5.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電機(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(Kenko L−42)を通すことにより、紫外線を含まない模擬太陽光とした。光強度は89mW/cmとした。
【0274】
前述の光電気化学電池の導電性ガラス板10と白金蒸着ガラス板40にそれぞれワニ口クリップを接続し、各ワニ口クリップを電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。これに導電性ガラス板10側から模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置により測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率(η)の初期値(fresh)と、300時間連続照射時の変換効率の低下率をまとめて表10に示す。Freshの変換効率は、4.5%以上のものを◎、3.5%以上4.5%未満のものを○、3.0%以上3.5%未満のものを△、3.0%未満のものを×として表示した。
【0275】
【表10】

【0276】
(備考)
(1)色素の記号は本文中に記載の通りである。
(2)窒素含有高分子αは以下の化合物を示す。
【0277】
【化35】

【0278】
(3)電解質塩
MHIm:1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩
MBIm:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムのヨウ素塩
(4)溶媒
AN:アセトニトリル。
PC:プロピレンカーボネート。
NMO:3−メチル−2−オキサゾリジノン。
(5)求電子剤β
【化36】

【0279】
表10に示した結果から明らかなように、本発明の色素混合物はこの場合でも変換効率が高く、耐久性も高く優れたものであることがわかった。
これに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率の初期値は低く、耐久性に問題があることがわかった。
【0280】
(実験11)
ゾル−ゲル法によって調整した懸濁液を用いてスクリーン印刷によりTiO2の多孔質層をFTOガラス上に塗布し450℃で焼成した。これを本発明の色素混合物エタノール溶液中に浸漬することで、色素を吸着させた。
100mgの2,2’,7,7’ーテトラキス(ジフェニルアミノ)−9,9’ースピロビフルオレンを5mlのクロロホルムに溶解した。溶液を染料表面にそれを軽く塗ることによって、この溶液を層の細孔内にしみこませた。次に溶液の一滴を直接表面に置いて室温で乾燥した。ついで被覆支持体を蒸着装置に装着して約10−5ミリバールの真空下の熱蒸着によってさらに厚さ100nmの2,2’,7,7’ーテトラキス(ジフェニルアミノ)−9,9’ースピロビフルオレンの層を適用した。さらに蒸着装置内でこの被覆支持体に対極として厚さ200nmの金の層を被覆した。
このように調製した試料を高圧ランプ、光学フィルター、レンズおよびマウンティングを含む光学装置に取り付けた。フィルターの使用およびレンズの移動によって強度を変えることができた。金の層とSnO層とに接点を付け、試料を照射している間電流測定装置に示した装置に取り付けた。測定のために、適当な光学フィルターを用い波長が430nm未満の光を遮断した。さらに放射線の強度を約1000W/m)にほぼ一致するように装置を調整した。
金の層およびSnO層に接点を付け、また試料を照射している間は両接点をポテンシオスタットに接続した。外部電圧をかけずに増感色素単独を用いた試料では約90nAの電流を生じたが、本発明の色素混合物を用いた試料では約190nAの電流を生じた。どちらの試料の場合も照射しないと電流は消失した。
【0281】
(実験12)
特開2000−90989の実施例1と同様に作成したタンデムセルにおいても、増感色素単独にくらべ本発明の色素混合物では変換効率が高いことが確認できた。

(実験13)
高分子電解質を用いた色素増感型太陽電池の作製した例について説明する。
【0282】
酸化チタン膜を作製する塗液は、市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社社製、商品名AMT−600、アナターゼ型結晶、平均粒径30nm、比表面積50m2/g)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlとをガラスビーズを使用し、ペイントシェイカーで7時間分散させ、酸化チタン懸濁液を調製した。この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、11μm程度の膜厚、10mm×10mm程度の面積で、SnOを透明導電膜としてガラス基板1上に作製された基板上に、透明導電膜側に塗布し、100℃で30分間予備乾燥した後、460℃で40分間酸素下で焼成し、その結果、膜厚が8μm程度の酸化チタン膜Aを作製した。
【0283】
次に本発明の色素混合物及び比較の色素単独を無水エタノールに濃度3×10−4モル/リットルで溶解させ吸着用色素溶液を作製した。この吸着用色素溶液を上述で得られた酸化チタン膜と透明導電膜を具備した透明基板を容器にそれぞれ入れ、約4時間浸透させることにより色素を吸着させた。その後、無水エタノールで数回洗浄し約60℃で約20分間乾燥させた。
次に、一般式(105)で表されるモノマー単位のうち、Rをメチル基、Aを8個のポリエチレンオキサイド基と2個のポリプロピレンオキサイド基と中心核としてブタンテトライル基により構成されるモノマー単位を使用した。
【化37】

(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Aはエステル基と炭素原子で結合している残基であり、nは2〜4である。)
このモノマー単位をプロピレンカーボネート(以下、PCと記載する)に20wt%の濃度で溶解させ、また、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー単位に対して1wt%の濃度で溶解させモノマー溶液を作製する。このモノマー溶液を上述の酸化チタン膜に含浸させる手順について以下に示す。
真空容器内にビーカー等の容器を設置し、その中に透明導電膜を具備した透明基板上の酸化チタン膜Aを入れ、ロータリーポンプで約10分間真空引きする。
真空容器内を真空状態に保ちながらモノマー溶液をビーカー内に注入し、約15分間含浸させ酸化チタン中にモノマー溶液を十分に染み込ます。ポリエチレン製セパレーター、PETフィルムと押さえ板を設置し冶具にて固定する。その後、約85℃で30分間加熱することにより、熱重合させ高分子化合物を作製する。
【0284】
次に、高分子化合物に含浸させる酸化還元性電解液を作製する。酸化還元性電解液は、PCを溶媒として濃度0.5モル/リットルのヨウ化リチウムと濃度0.05モル/リットルのヨウ素を溶解させて作製した。この溶液中に上述の酸化チタン膜Aに作製した高分子化合物を約2時間浸すことにより、高分子化合物中に酸化還元性電解液を染み込ませて高分子電解質を作製した。
【0285】
その後、白金膜を具備した導電性基板を設置し、エポキシ系の封止剤にて周囲を封止し素子Aを作成した。
また、酸化チタン膜Aを色素吸着後、モノマー処理を行わずに、PCを溶媒として濃度0.5モル/リットルのヨウ化リチウムと濃度0.05モル/リットルのヨウ素を溶解させて作製した酸化還元電解液をそのまま対極との間に注入して封止して素子Bを作成した。素子A、Bを用いて、ソーラーシミュレーターで1000W/mの強度の光を照射した。結果を表14に示した。変換効率は、3.5%以上のものを◎、2.5%以上3.5%未満のものを○、2.0%以上2.5%未満のものを△、2.0%未満のものを×として表示した。
【0286】
【表11】

【0287】
本発明の色素は光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0288】
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の色素を組み合わせた複合増感色素と半導体微粒子とを有する感光体層を具備した光電変換素子であって、前記複合増感色素として、下記一般式(1)の構造を有する色素と、下記一般式(3)で表される構造を有する色素とを用いることを特徴とする光電変換素子。
【化1】

(一般式(1)で表される化合物は、分子内に、少なくとも酸性基を有している。式中、R〜R16は独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は隣り合う置換基と環を形成していてもよい。また、分子内に少なくとも1つ以上の一般式(2)で表される置換基を有している。XはN、O、Sを表す。nは0または1を表す。Aは芳香族基または複素環基を表す。Mは二個の水素原子、金属原子、または金属酸化物を表す。)

Mz(LLm1(LLm2(X)m3・CI 一般式(3)
[一般式(3)において、Mzは金属原子を表し、LLは下記一般式(4)で表される2座又は3座の配位子であり、LLは下記一般式(5)で表される2座又は3座の配位子である。
Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する1座又は2座の配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミドまたはチオ尿素からなる1座または2座の配位子を表す。
m1は0〜3の整数を表し、m1が2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。m2は0〜3の整数を表し、m2が2のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。ただし、m1とm2のうち少なくとも一方は1以上の整数である。
m3は0〜2の整数を表し、m3が2のとき、Xは同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
CIは一般式(3)において、電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化2】

[一般式(4)において、R101及びR102はそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基、ホスホリル基またはホスホニル基を表す。R103及びR104はそれぞれ独立に置換基を表す。R105及びR106はそれぞれ独立にアリール基又はヘテロ環基を表す。d1、d2、及びd3はそれぞれ0以上の整数を表す。
及びLはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のエテニレン基及び/又はエチニレン基からなり、L及びLはそれぞれが結合しているジピリジン環と共役している。
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、a1が2以上のときR101は同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときR102は同じでも異なっていてもよい。b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。b1が2以上のときR103は同じでも異なっていてもよく、R103は互いに連結して環を形成してもよく、b2が2以上のときR104は同じでも異なっていてもよく、R104は互いに連結して環を形成してもよい。b1及びb2が共に1以上のとき、R103とR104が連結して環を形成してもよい。
nは0又は1を表す。]
【化3】

[一般式(5)において、Za、Zb及びZcはそれぞれ独立に、5又は6員環を形成しうる非金属原子群を表し、それぞれ独立に酸性基を有していてもよい。cは0又は1を表す。]
[一般式(3)で表される化合物は分子内に少なくとも1つの酸性吸着基を有する。]
【請求項2】
前記MzがRuであることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記一般式(1)の構造を有する色素が、分子内に少なくとも6つの前記一般式(2)で表される置換基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記一般式(1)の構造を有する色素が、下記一般式(10)又は(11)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化4】

(R19〜R58は独立に水素原子または置換基を表す。一般式(10)においてR19、R22、R23、R26、R27、R30、R31、R34の内、6つ以上が少なくとも一般式(2)で表される。また、一般式(11)においてR35、R40、R41、R46、R47、R52、R53、R58の内6つ以上、またはR36、R39、R42、R45、R48、R51、R54、R57の内6つ以上が一般式(2)で表される。Mは前述と同様である。)
また、一般式(10)、(11)中のR19〜R58のうち一つまたは二つはCOOH基で表される。
【請求項5】
前記Mが2個の水素原子、その他の配位子を有してもよい2価、3価、4価の金属原子、または金属酸化物である請求項1〜4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記一般式(2)のAが複素環であることを特徴とする請求項1〜5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記一般式(2)のXがS、またはn=0であることを特徴とする請求項1〜6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記半導体微粒子が酸化チタン微粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
導電性支持体上に、前記感光体層、電荷移動体、および対極をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記複合増感色素が前記半導体微粒子に吸着したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。
【請求項12】
有機溶媒中に、一般式(1)の構造を有する色素と、一般式(3)で表される構造を有する色素の両方の色素を含有し溶解したことを特徴とする光電変換素子用組成物。

【図1】
image rotate