光電子増倍管及び放射線検出装置
【課題】 所定の電圧耐性が確保される光電子増倍管及び放射線検出装置を提供する。
【解決手段】 光電子増倍管1は側管2を有し、側管2の上側の開口端には受光面板3が固定され、この受光面板3の内側表面には、受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。側管2の下側の開口端にはステム5が配置され、このステム5には、複数のステムピン6が挿着されている。ステム5の側面にはリング状側管7が固定され、このリング状側管7は側管2と溶接されている。このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための複数のダイノード10と各ダイノード10により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極12とを含む複数の薄板型電極を積層して成る電極積層部50が収容されている。電極積層部50は、ステム5の上面に設けられた複数の支持用突起60上に載置されている。
【解決手段】 光電子増倍管1は側管2を有し、側管2の上側の開口端には受光面板3が固定され、この受光面板3の内側表面には、受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。側管2の下側の開口端にはステム5が配置され、このステム5には、複数のステムピン6が挿着されている。ステム5の側面にはリング状側管7が固定され、このリング状側管7は側管2と溶接されている。このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための複数のダイノード10と各ダイノード10により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極12とを含む複数の薄板型電極を積層して成る電極積層部50が収容されている。電極積層部50は、ステム5の上面に設けられた複数の支持用突起60上に載置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電効果を用いる光電子増倍管及びこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管として、筒状を成す側管の一側の端部に受光面板を、他側の端部にステムを各々備えて真空密封容器を構成し、受光面板の内側の面に光電面を設けると共に、この光電面に対向して複数段のダイノードを有する電子増倍部及び陽極を積層して配設し、これらの各段のダイノード及び陽極に各々接続した複数のステムピンを密封容器内から外部に導出するようにしてステムに挿着する構成を具備し、受光面板を通して入射した入射光を光電面で電子に変換し、この光電面から放出された電子を、各ステムピンを介して所定の電圧が印加された各ダイノードを有する電子増倍部で順次増倍し、この増倍されて陽極に達した電子を電気信号としてステムピンの一つであるアノードピンを介して取り出す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管が知られている。
【0003】
このような光電子増倍管にあっては、ステムをテーパー状ハーメチックガラスで構成すると共に、複数段のダイノード及び陽極を積層してなる電極積層部をステム上に直接載置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような光電子増倍管では、絶縁性を有するステムの表面に生じる沿面放電を抑制することにより、電圧耐性を十分高くし、信頼性を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、所定の電圧耐性が確保される光電子増倍管及びこれを備えた放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、密封容器内に設けられ、光電面から放出された電子を増倍するための複数のダイノード及び当該ダイノードにより増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極を含む複数の電極を積層して成る電極積層部と、密封容器の他側の端部を構成するステムと、ステムに挿着されて密封容器内から外部に導出すると共に各電極に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、ステムは絶縁性を有していると共に、ステムの内側の面におけるステムピンよりもステムの中心側の領域には、電極積層部を載置させる支持用突起が設けられていることを特徴とするものである。なお、ここでいう絶縁性を有するステムは、必ずしもステム全体が絶縁材料で形成されているとは限らない。
【0007】
このような光電子増倍管においては、電極積層部をステムの内側の面に設けられた支持用突起上に載置することにより、電極積層部を構成する複数の電極のうち最もステム側に位置する電極(導電部)、ステムの内側の面(絶縁部)、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションと導電性のステムピンとの間におけるステムの内側の面に沿う沿面距離は、支持用突起が無い場合に比して長くなる。特に、支持用突起が電極のエッジ部よりも内側(中心側)に位置している場合には、上記のトリプルジャンクションからステムピン迄の沿面距離が十分に長くなる上に、トリプルジャンクションが電極とステムとの隙間に隠蔽される状態となる。従って、沿面放電の発生が抑制されるため、所定の電圧耐性が確保される。
【0008】
好ましくは、ステムは、ステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材と、ベース材よりも高い融点を有し、ベース材の内側の面に接合されると共にステムピンを挿通させる絶縁性の押え材と、を少なくとも備える二層以上の構造とされ、支持用突起は、押え材におけるベース材に対する接合面とは反対側の面に設けられている。このような構成とすることにより、ベース材の溶融による融着によってベース材と押え材とを接合したときに、支持用突起を含むステムの内側の面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。これにより、支持用突起上に載置される電極積層部と光電面との間の位置精度が高められ、所望の特性が得られると共に、電極積層部の着座性が高められる。
【0009】
また、好ましくは、各電極間には絶縁スペーサが配置されており、支持用突起は、ステムの内側の面における各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けられている。光電子増倍管を製造する際には、ステムの支持用突起上に電極積層部を載置した後で両者を圧接することがある。この場合、支持用突起を各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けることにより、圧接時に加わる力に対する電極積層部の物理的強度が強くなる。
【0010】
さらに、好ましくは、複数の電極のうち最もステム側に位置する電極には、支持用突起と嵌合する支持用凹部が形成されている。これにより、電極積層部をステムに対して精度良く位置決めできると共に、支持用突起により電極積層部をバランス良く支持することができる。
【0011】
ここで、上記光電子増倍管の受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置すれば、上記作用を奏する好適な放射線検出装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステムの内側の面におけるステムピンよりもステムの中心側の領域に、電極積層部を載置させる支持用突起を設けたので、所定の電圧耐性を確保することができる。これにより、絶縁破壊に対する信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づく便宜的なものである。また、各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1及び図2は、本発明に係る光電子増倍管の第1実施形態を示す平面図及び底面図であり、図3は図1におけるIII‐III線に沿う断面図である。図1〜図3において、光電子増倍管1は、外部から入射した光によって電子を放出し、その電子を増倍させて信号として出力させるための装置として構成されている。
【0015】
光電子増倍管1は、略円筒形状をなす金属製の側管2を有している。側管2の上側(一側)の開口端にはガラス製の受光面板3が気密に固定され、この受光面板3の内側表面には、受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。また、側管2の下側(他側)の開口端には、円板状のステム5が配置されている。このステム5には、略円状の位置に周方向に互いに離間して配置された複数(15本)の導電性のステムピン6が気密に挿着されている。ステム5には、当該ステム5を側方から包囲するように金属製のリング状側管7が気密に固定されている。そして、上側の側管2の下端部に形成されたフランジ部2aと下側のリング状側管7の上端部に形成された同径のフランジ部7aとが溶接され、側管2とリング状側管7とが気密に固定されることで、内部が真空状態に保たれる密封容器8が形成されている。
【0016】
このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための電子増倍部9が収容されている。この電子増倍部9は、電子増倍孔(図示せず)を多数有する薄板型電極であるダイノード10が複数段(本実施形態では10段)に積層されてブロック状に形成されている。なお、これらのダイノード10のうち最も下側(ステム5側)に位置する最終段のダイノード10bには、電子増倍孔は形成されていない。各ダイノード10の所定の縁部には、外側に突出するダイノード接続片10cがそれぞれ形成され、各ダイノード接続片10cの下面側にはステム5に挿着された所定のステムピン6の先端部分が溶接固定されている。これにより、各ダイノード10と各ステムピン6との電気的な接続がなされている。
【0017】
さらに、密封容器8内において、電子増倍部9と光電面4との間には、光電面4から放出された電子を電子増倍部9に収束させて導くための薄板型電極である収束電極11が設置され、最終段のダイノード10bの一段上の段には、電子増倍部9により増倍され最終段のダイノード10bより放出された電子を出力信号として取り出すための薄板型電極であるアノード(陽極)12が積層されている。収束電極11の四隅には外側に突出する突出片11aがそれぞれ形成され、この各突出片11aに所定のステムピン6が溶接固定されることでステムピン6と収束電極11との電気的な接続がなされている。また、アノード12の所定の縁部にも外側に突出するアノード接続片12aが形成され、このアノード接続片12aにステムピン6の一つであるアノードピン13が溶接固定されることでアノードピン13とアノード12との電気的な接続がなされている。そして、図示しない電源回路に接続したステムピン6によって電子増倍部9及びアノード12に所定の電圧が印加されると、光電面4と収束電極11とは同電位に設定され、各ダイノード10は積層順に上段から下段に行くに従って高電位となるように設定される。また、アノード12は最終段のダイノード10bよりも高電位に設定される。
【0018】
ここで、上記の電子増倍部9、収束電極11及びアノード12によって、電極積層部50が構成されている。電子増倍部9を形成する各ダイノード10間には、セラミック等からなる絶縁スペーサ51が複数(ここでは4つ)ずつ介在されている。また、ダイノード10と収束電極11との間、ダイノード10とアノード12との間にも、同様の絶縁スペーサ51が複数ずつ介在されている。これらの絶縁スペーサ51は、薄板型電極10〜12のエッジよりも内側(中心側)において、薄板型電極10〜12を介して重なり合うように設けられている。つまり、電極積層部50は、複数のダイノード10、収束電極11及びアノード12が絶縁スペーサ51を介して積層されて成るものである。
【0019】
絶縁スペーサ51の具体的構造を図4に示す。図4(a)は絶縁スペーサ51の側面図であり、図4(b)は絶縁スペーサ51の平面図である。絶縁スペーサ51は、円板状のスペーサ本体部52と、このスペーサ本体部52の両面に設けられ、環状のテーパ面53aを有する下段突起部53と、各下段突起部53上に設けられ、環状のテーパ面54aを有する上段突起部54とを有している。スペーサ本体部52の両面に対するテーパ面54aの傾斜角は、スペーサ本体部52の両面に対するテーパ面53aの傾斜角よりも大きくなっている。
【0020】
ところで、図5に示すような球型の絶縁スペーサ100を使用した場合には、電極55(薄板型電極10〜12に相当)に形成されたスペーサ配置用貫通穴56の穴径によっては、以下のような不具合が生じることがある。即ち、スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法である場合には、図5(a)に示すように、絶縁スペーサ100はスペーサ配置用貫通穴56にうまく収まるため特に問題は無い。しかし、スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも大きくなると、図5(b)に示すように、絶縁スペーサ100はスペーサ配置用貫通穴56に収まろうとして、電極55の位置ズレが起こることがある。この場合には、各電極55の位置精度が悪化するだけでなく、電極55のガタツキが生じ、何らかの衝撃によって出力信号が変化してしまう可能性がある。
【0021】
一方、図4に示すような円盤型の絶縁スペーサ51を使用すると、上記の不具合を解決することができる。即ち、各電極55に形成されたスペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法である場合には、図6(b)に示すように、絶縁スペーサ51は、下段突起部53のテーパ面53aと上段突起部54のテーパ面54aとの境界に接するように配置される。スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも大きい場合には、図6(a)に示すように、絶縁スペーサ51は、下段突起部53のテーパ面53aに接するように配置される。スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも小さい場合には、図6(c)に示すように、絶縁スペーサ51は、上段突起部54のテーパ面54aに接するように配置される。このようにスペーサ配置用貫通穴56の穴径によって各電極55の位置ズレが起きることは無いため、各電極55の位置精度が高くなり、各電極55間の距離が等しくなる。また、電極55のガタツキが生じないため、衝撃によって出力信号が変化することが防止される。
【0022】
図1〜図3に戻り、以上のように構成された光電子増倍管1では、受光面板3側から光電面4に光(hν)が入射すると、この光電面4において光が光電変換されて密封容器8内に電子(e−)が放出される。放出された電子は、収束電極11によって電子増倍部9の一段目のダイノード10aに収束される。そして、電子は電子増倍部9内で順次増倍されていき、最終段のダイノード10bから2次電子群が放出される。この2次電子群はアノード12に導かれ、このアノード12と接続されたアノードピン13を介して外部に出力される。
【0023】
続いて、上述したステム5の構成について更に詳細に説明する。ここで、ステム5において、光電子増倍管1の密封容器8の形成時に真空となる側を内側(上側)とする。ステム5は、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされている。そして、ステム5の側面には、上述したリング状側管7が固定されている。本実施形態においては、ステム5を構成するベース材14の側面とリング状側管7の内壁面とを接合することにより、リング状側管7に対してステム5を固定している。ここで、下側押え材16の下側(外側)の面は、リング状側管7の下端よりも下側に突出しているが、リング状側管7に対するステム5の固定位置は上記形態に限られるものではない。
【0024】
ベース材14は、例えばコバールを主成分とし、例えば融点が約780度とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、下面側からの光が密封容器8内に透過しない程度の黒色とされている。また、ベース材14には、図7に示すように、ステムピン6の外径とほぼ同径の開口14aがベース材14の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。
【0025】
上側押え材15は、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、密封容器8内の発光を効果的に吸収すべく黒色とされている。また、上側押え材15には、図8に示すように、ベース材14と同様に複数(15個)の開口15aが形成されている。各開口15aは、ベース材14に形成された開口14aよりも大径とされている。さらに、これらの開口15aのうちの少なくとも二箇所以上は、ベース材14に対する位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、他の開口15aよりも更に大径の大径開口15bとされている。ここでは、大径開口15bは、アノードピン13が通る開口15aを除く3箇所に90度の位相角をもって配置されている。
【0026】
また、上側押え材15の上面(ベース材14に対する接合面とは反対側の面)において、開口15aよりも内側(中心側)の領域には、上記の電極積層部50を載置させる複数の支持用突起60が設けられている。ここでは、支持用突起60は、図8に示すように、上記の電極積層部50を構成する各薄板型電極間に配置された絶縁スペーサ51と同じ数(4つ)だけ設けられている。電極積層部50は、図3に示すように、各絶縁スペーサ51の配置部位を支持用突起60に一致させた状態で各支持用突起60上に支持されている。言い換えれば、電極積層部50の各薄板型電極間に支持用突起60と同じ数だけ設けられた絶縁スペーサ51は、各々が側管2の管軸方向において支持用突起60と同軸となるように配置されている。このような支持用突起60はステムピン6を挿通させていないので、ステムピン6を介して印加される電位や、ステムピン6の位置及び数等に依存することなく、電極積層部50を支持することができる。
【0027】
下側押え材16は、上側押え材15と同様に、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、添加するアルミナ系粉末の組成の違いにより白色を呈すると共に、ベース材14及び上側押え材15よりも高い物理的強度を有している。また、下側押え材16にも、図9に示すように、上側押え材15と同様に複数(15個)の開口16aが形成されている。これらの開口16aのうちの少なくとも二箇所以上は、位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく大径開口16bとされている。ここでは、大径開口16bは、アノードピン13が通る開口16aを含む4箇所に90度の位相角をもって配置されている。さらに、下側押え材16の中央部分には、ベース材14が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出開口16cが形成されている。
【0028】
上記のベース材14、上側押え材15及び下側押え材16は、図3に示すように、各開口14a,15b,16a及び各大径開口15b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口14a,15a,16aにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材14の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材14の両面に上側押え材15及び下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6が上側押え材15の各開口15a及び下側押え材16の各開口16aを挿通して、ステム5の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材14を底面とする凹部5aが形成され、各ステムピン6はこの凹部5aの底面においてベース材14に密着して接合されている。
【0029】
続いて、上述のように構成されたステム5の製造例について、図10を参照しながら説明する。まず図10(a)に示すように、ベース材14、上側押え材15及び下側押え材16を、各開口14a,15a,16aの軸心位置を合わせた状態で重ね合わせ、ベース材14にリング状側管7を嵌め込むと共に、各開口14a,15a,16aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの位置決め用治具(図示せず)の突起部を大径開口15b,16bに進入させる。なお、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材14との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておくのが望ましい。
【0030】
続いて、そのようにセットしたステム5を電気炉(図示せず)に投入し、約850度〜900度の温度(ベース材14の融点より高く、上側押え材15及び下側押え材16の融点よりも低い温度)において位置決め治具(図示せず)によりステム5を挟むように加圧しながら焼結させる。この焼結処理により、図10(b)に示すように、融点が約780度であるベース材14のみが溶融し、ベース材14と各押え材15,16、各ステムピン6及びリング状側管7とが融着される。このとき、ベース材14は各部品との密着性を高めるため、ボリュームが多めに調整されているが、位置決め用治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口15b,16b内でのベース材14の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材14の余分なボリュームは下側押え材16のベース材浸出開口16c内に逃がされる。このため、上側押え材15の開口15a及び下側押え材16の開口16aを通じてベース材14がステム5の表面にはみ出すことは殆ど無い。このようにステム5を、ベース材14の溶融によってベース材14と押え材15,16とを接合する3層構造としたので、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されるようになる。その後、ステム5を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具を取り外すことで、ステム5の製造が完了する。
【0031】
そして、このように得られたステム5の上面に設けられた各支持用突起60上に、電子増倍部9、収束電極11及びアノード12からなる電極積層部50を載置し、ダイノード接続片10c、アノード接続片12a、集束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することによって、電極積層部50をステム5に対して圧接して固定する。このとき、上述したように、各絶縁スペーサ51の配置部位が各支持用突起60の位置と一致するように電極積層部50を各支持用突起60上に載せることにより、圧接時に生じる力に対する電極積層部50の物理的強度が強くなるため、電極積層部50の歪みや変形等を防止することができる。その後、受光面板3が固定された側管2をリング状側管7に溶接固定して組み立てることで、図1〜図3に示す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管1が得られる。
【0032】
このとき、上述したようにステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されているので、支持用突起60を含むステム5の上面に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や、電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好になる。また、光電子増倍管1全長の寸法精度や、光電子増倍管1を表面実装する際の取付性が高められる。
【0033】
ここで、比較例として、ステム5に上記の支持用突起60が設けられていない場合の要部拡大断面図を図11に示す。同図において、ステム5におけるステムピン6の貫通部の全周囲は、ベース材14を底面とする凹部5aとされている。このため、導電性の最終段ダイノード10bと絶縁性の上側押え材15と真空とが交わるポイントであるトリプルジャンクションX1から、導電性のステムピン6と絶縁性のベース材14と真空とが交わるポイントであるトリプルジャンクションX2までのステム5(絶縁体)に沿う沿面距離Yは、凹部5aが無い場合と比べて、凹部5aの高さ分だけ長くなる。また、この凹部5aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、電圧耐性が良くなる。
【0034】
これに対し本実施形態では、上側押え材15の上面に設けられた支持用突起60上に電極積層部50が支持されているので、図12に示すように、最終段ダイノード10bと上側押え材15と真空とが交わる上記のトリプルジャンクションX1は、支持用突起60の上面と最終段ダイノード10bとの接触縁部に位置することになる。つまり、トリプルジャンクションX1は、電界の弱い領域である最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となるため、図11に示す比較例に比べて、沿面放電の発生が更に抑制される。また、トリプルジャンクションX1から上記トリプルジャンクションX2までのステム5の面に沿う沿面距離Yは、図11に示す比較例に比べて、支持用突起60の高さ分だけ長くなる。このため、沿面放電の発生がより一層抑制される。
【0035】
このように本実施形態によれば、ステム5におけるステムピン6の貫通部に凹部5aを形成したことに加え、上側押え材15の上面に、電極積層部50を載置させる複数の支持用突起60を設けたので、沿面放電の発生を十分に抑制することができる。これにより、光電子増倍管1の電圧耐性が十分に高められるので、光電子増倍管1の絶縁破壊を確実に防止することができる。
【0036】
上記の光電子増倍管1の変形例を図13に示す。なお、同図では、構造を分かりやすく示す便宜上、図3とは異なり、2つの支持用突起60を通るような側断面図としている。図13に示す光電子増倍管70は、電極積層部50を構成する複数の薄板型電極10〜12のうち最もステム5側に位置する最終段ダイノード10bに、上側押え材15の上面に形成された各支持用突起60と嵌合する複数の支持用凹部71を形成したものである。これらの支持用凹部71は、最終段ダイノード10bにおける各絶縁スペーサ51に対応する位置に形成されている。その他の構成は、光電子増倍管1と同等である。このような支持用凹部71を最終段ダイノード10bに設けることにより、電極積層部50を各支持用突起60上に載置する際に、例えば電極積層部50をステム5の所望位置に対して精度良く位置決めすることができる。また、電極積層部50を各支持用突起60上に安定して支持させることもできる。
【0037】
上記の光電子増倍管1の別の変形例を図14に示す。同図に示す光電子増倍管20は、ステム5の中央部分に金属製の排気管19を設けたものである。この排気管19は、光電子増倍管20の組み立て終了後に密封容器8の内部を真空ポンプ(図示しない)等によって排気して真空状態にするために利用することができる。その他の構成は、光電子増倍管1と同等である。
【0038】
上記の光電子増倍管1の別の変形例を図15に示す。同図に示す光電子増倍管26は、ステム5に固定したリング状側管7に、上記の側管2よりも長尺の側管27を嵌め合わせて、リング状側管7の下端部に形成されたフランジ部7aと側管27の下端部に形成されたフランジ部27aとを溶接固定したものである。その他の構成は、図14に示す光電子増倍管20と同等である。
【0039】
図16は、上述した光電子増倍管1を備えた放射線検出装置を示す構成図である。同図において、放射線検出装置21は、光電子増倍管1の受光面板3の上側(外側)に設置され、放射線を光に変換して放出するシンチレータ22を備えている。このような放射線検出装置21は光電子増倍管1を有しているので、上述したように沿面放電の発生を十分に抑制し、十分な電圧耐性を確保することができる。
【0040】
なお、上記の実施形態では、ステム5を構成するベース材14、上側押え材15及び下側押え材16をいずれも絶縁材料で形成したが、沿面放電の発生を抑制して電圧耐性を上げるためには、少なくともステム5における電極積層部50と対峙する面が絶縁されていれば良いため、ベース材14の外側(下側)に接合される下側押え材16は導電性であっても良い。また、上記の実施形態では、ステム5をベース材14、上側押え材15及び下側押え材16からなる3層構造としたが、4層以上の構造であっても良い。この場合、ベース材を含む全ての層を絶縁材料で形成しても良いし、或いは例えばベース材の内側(上側)に導電層を形成し、その導電層の上側に、支持用突起を有する押え材を形成しても良い。
【0041】
[第2実施形態]
図17は、本発明に係る光電子増倍管の第2実施形態を示す側断面図である。本実施形態の光電子増倍管28は、第1実施形態におけるステム5に代えて、ステム29を有している。ステム29は、上記のベース材14と同質の円板状のベース材30と、ベース材30の上側(内側)に接合された上側押え材15とからなる2層構造とされている。つまり、光電子増倍管28のステム29には、上記の下側押え材16が設けられていない。
【0042】
図18はベース材30の平面図であり、図19はベース材30の底面図である。ベース材30には、上側がステムピン6の外径とほぼ同径であり、下側がステムピン6の外径よりも大径とされた開口30aがベース材30の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材30の開口30aのうち、アノードピン13が通る開口30aを含む所定の4箇所は、位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、下側の外径が他の開口30aの下側の外径よりも大径とされた大径開口30bとされている。さらに、ベース材30の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出凹部30c(図20参照)が形成されている。
【0043】
これらのベース材30及び上側押え材15は、図17に示すように、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口30a,15aにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材30の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材30の上面に上側押え材15が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材30の各開口30aの下側部分及び上側押え材15の各開口15aを挿通して、ステム29の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材30を底面とする凹部29aが形成され、各ステムピン6はこの凹部29aの底面においてベース材30に密着して接合されている。
【0044】
このようなステム29の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず図20(a)に示すように、ベース材30及び上側押え材15を、各開口30a,15aの軸心位置を合わせた状態で重ね合わせ、ベース材30にリング状側管7を嵌め込むと共に、各開口30a,15aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの位置決め用治具(図示せず)の突起部を大径開口30b,15bに進入させる。
【0045】
続いて、そのようにセットしたステム29を電気炉に投入し、第1実施形態と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図20(b)に示すように、ベース材30と上側押え材15、各ステムピン6及びリング状側管7とがベース材30の溶融によって融着される。このとき、位置決め用治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口30b,15b内でのベース材30の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材30の余分なボリュームはベース材浸出凹部30c内に逃がされる。このため、上側押え材15の開口15a及びベース材30の開口30aの下側部分を通じてベース材30がステム29の表面にはみ出すことは殆ど無い。これにより、図17に示すようなステム29が得られる。このようにステム29を、ベース材30の溶融によってベース材30と押え材15とを接合する2層構造としたので、ステム29上面の位置精度、平坦度、水平度が確保される。従って、ステム29の上面に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や、電子増倍部9の着座性が高められる。
【0046】
このように構成された光電子増倍管28においても、第1実施形態と同様に、最終段ダイノード10bと上側押え材15と真空とが交わるトリプルジャンクションX1からステムピン6とベース材14と真空とが交わるトリプルジャンクションX2までの沿面距離が長くなると共に、トリプルジャンクションX1は最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となる。これにより、沿面放電の発生を十分に抑制し、光電子増倍管28の電圧耐性を向上させることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ステム29をベース材30と上側押え材15とからなる2層構造としたが、ベース材と下側押え材とからなる2層構造のステムとしても良い。この場合には、ベース材の上面に複数の支持用突起60を設ければ良い。また、本実施形態において、図13〜図16に示した構成を採用しても良い。
【0048】
[第3実施形態]
図21は、本発明に係る光電子増倍管の第3実施形態を示す側断面図である。本実施形態の光電子増倍管34は、第1実施形態におけるステム5に代えて、ステム35を有している。ステム35は、ベース材14と同質の円板状のベース材36による単層構造とされている。つまり、光電子増倍管34のステム35には、上側押え材15及び下側押え材16が設けられていない。
【0049】
図22はベース材36の平面図であり、図23はベース材36の底面図である。ベース材36には、中間部分がステムピン6の外径とほぼ同径であり、上部及び下部がステムピン6の外径よりも大径とされた開口36aがベース材36の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、これらの開口36aのうちアノードピン13が通る開口36aを除く所定の3箇所の上部及び下部と、アノードピン13が通る開口36aの下部とは、押え用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、上部及び下部の外径が他の開口36aの上部及び下部の外径よりも大径とされた大径開口36bとされている。さらに、ベース材36の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出凹部36c(図24参照)が形成されている。
【0050】
また、ベース材36の上面には、複数の支持用突起60が設けられている。この支持用突起60の数や配置部位は、第1実施形態と同様である。
【0051】
ベース材36は、図21に示すように、各開口36aにそれぞれステムピン6を通した状態で、ベース材36の溶融によってステムピン6と融着接合されている。より具体的には、各ステムピン6がベース材36の各開口36aの上部及び下部を挿通して、ステム35の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材36を底面とする凹部35aが形成され、各ステムピン6はこの凹部35aの底面においてベース材36に密着して接合されている。
【0052】
このようなステム35を製造する場合にも、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず図24(a)に示すように、ベース材36にリング状側管7を嵌め込むと共に、ベース材36の各開口36aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの押え用治具(図示せず)の突起部を大径開口36bに進入させる。
【0053】
続いて、セットしたステム35を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図24(b)に示すように、ベース材36と各ステムピン6及びリング状側管7とがベース材36の溶融によって融着される。このとき、押え治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口36b内でのベース材36の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材36の余分なボリュームはベース材浸出凹部36c内に逃がされる。これにより、図21に示すようなステム35が得られる。
【0054】
このように構成された光電子増倍管34においても、第1実施形態と同様に、最終段ダイノード10bとベース材36と真空とが交わるトリプルジャンクションX1からステムピン6とベース材36と真空とが交わるトリプルジャンクションX2までの沿面距離が長くなると共に、トリプルジャンクションX1は最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となる。これにより、沿面放電の発生を十分に抑制し、光電子増倍管28の電圧耐性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態においても、図13〜図16に示した構成を採用しても良いことは言うまでもない。
【0056】
以上、本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態には限定されるものではない。例えばステムの上面に設ける支持用突起60の形状については、特に上記実施形態のように点状には限られず、例えば直線状や環状を含む曲線状であっても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、ステムを2層以上で構成する場合、例えばベース材の内側(上側)に上側押え材15を接合したが、この上側押え材15の上側の面に、更に絶縁性の材料を積層し、この積層した絶縁性の材料によって支持用突起60を形成しても良い。また、支持用突起60はステムと一体に形成しても良いし、突起なる部材をステムとは別体で形成してステム上面に接合することによって形成しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、電極積層部50の最もステム側に位置する薄板型電極を最終段ダイノード10bとし、その最終段ダイノード10bの1段上の薄板型電極を陽極12としたが、電極積層部50の最もステム側に位置する薄板型電極が陽極12であり、その陽極12の1段上の薄板型電極が最終段ダイノード10bであっても良い。このとき、図13に示すような構成を採用する場合には、最もステム側に位置する陽極12に支持用凹部71を設けることになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る光電子増倍管の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した光電子増倍管の底面図である。
【図3】図1に示した光電子増倍管のIII-III線断面図である。
【図4】図3に示した絶縁スペーサの具体的構造を示す側面図及び平面図である。
【図5】比較例として球型の絶縁スペーサを各薄板型電極間に配置した状態を示す断面図である。
【図6】図3に示した絶縁スペーサを各薄板型電極間に配置した状態を示す断面図である。
【図7】図3に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図8】図3に示したステムを構成する上側押え材の平面図である。
【図9】図3に示したステムを構成する下側押え材の平面図である。
【図10】図3に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【図11】比較例として、支持用突起が設けられていないステムを有する光電子増倍管の要部拡大断面図である。
【図12】図3に示した光電子増倍管の要部拡大断面図である。
【図13】図3に示した光電子増倍管の変形例を示す側断面図である。
【図14】図3に示した光電子増倍管の別の変形例を示す側断面図である。
【図15】図3に示した光電子増倍管の更に別の変形例を示す側断面図である。
【図16】図3に示した光電子増倍管を備えた放射線検出装置を示す側断面図である。
【図17】本発明に係る光電子増倍管の第2実施形態を示す側断面図である。
【図18】図17に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図19】図18に示したベース材の底面図である。
【図20】図17に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【図21】本発明に係る光電子増倍管の第3実施形態を示す側断面図である。
【図22】図21に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図23】図22に示したベース材の底面図である。
【図24】図21に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1,20,26,28,34,70…光電子増倍管、2,27…側管、3…受光面板、4…光電面、5,29,32,35…ステム、6…ステムピン、7…リング状側管(側管)、8…密封容器、9…電子増倍部、10…ダイノード(電極)、11…収束電極、12…アノード(陽極、電極)、14,30,33,36…ベース材、15…上側押え材(押え材)、16…下側押え材(押え材)、21…放射線検出装置、22…シンチレータ、50…電極積層部、51…絶縁スペーサ、60…支持用突起、71…支持用凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電効果を用いる光電子増倍管及びこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管として、筒状を成す側管の一側の端部に受光面板を、他側の端部にステムを各々備えて真空密封容器を構成し、受光面板の内側の面に光電面を設けると共に、この光電面に対向して複数段のダイノードを有する電子増倍部及び陽極を積層して配設し、これらの各段のダイノード及び陽極に各々接続した複数のステムピンを密封容器内から外部に導出するようにしてステムに挿着する構成を具備し、受光面板を通して入射した入射光を光電面で電子に変換し、この光電面から放出された電子を、各ステムピンを介して所定の電圧が印加された各ダイノードを有する電子増倍部で順次増倍し、この増倍されて陽極に達した電子を電気信号としてステムピンの一つであるアノードピンを介して取り出す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管が知られている。
【0003】
このような光電子増倍管にあっては、ステムをテーパー状ハーメチックガラスで構成すると共に、複数段のダイノード及び陽極を積層してなる電極積層部をステム上に直接載置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような光電子増倍管では、絶縁性を有するステムの表面に生じる沿面放電を抑制することにより、電圧耐性を十分高くし、信頼性を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、所定の電圧耐性が確保される光電子増倍管及びこれを備えた放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、密封容器内に設けられ、光電面から放出された電子を増倍するための複数のダイノード及び当該ダイノードにより増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極を含む複数の電極を積層して成る電極積層部と、密封容器の他側の端部を構成するステムと、ステムに挿着されて密封容器内から外部に導出すると共に各電極に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、ステムは絶縁性を有していると共に、ステムの内側の面におけるステムピンよりもステムの中心側の領域には、電極積層部を載置させる支持用突起が設けられていることを特徴とするものである。なお、ここでいう絶縁性を有するステムは、必ずしもステム全体が絶縁材料で形成されているとは限らない。
【0007】
このような光電子増倍管においては、電極積層部をステムの内側の面に設けられた支持用突起上に載置することにより、電極積層部を構成する複数の電極のうち最もステム側に位置する電極(導電部)、ステムの内側の面(絶縁部)、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションと導電性のステムピンとの間におけるステムの内側の面に沿う沿面距離は、支持用突起が無い場合に比して長くなる。特に、支持用突起が電極のエッジ部よりも内側(中心側)に位置している場合には、上記のトリプルジャンクションからステムピン迄の沿面距離が十分に長くなる上に、トリプルジャンクションが電極とステムとの隙間に隠蔽される状態となる。従って、沿面放電の発生が抑制されるため、所定の電圧耐性が確保される。
【0008】
好ましくは、ステムは、ステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材と、ベース材よりも高い融点を有し、ベース材の内側の面に接合されると共にステムピンを挿通させる絶縁性の押え材と、を少なくとも備える二層以上の構造とされ、支持用突起は、押え材におけるベース材に対する接合面とは反対側の面に設けられている。このような構成とすることにより、ベース材の溶融による融着によってベース材と押え材とを接合したときに、支持用突起を含むステムの内側の面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。これにより、支持用突起上に載置される電極積層部と光電面との間の位置精度が高められ、所望の特性が得られると共に、電極積層部の着座性が高められる。
【0009】
また、好ましくは、各電極間には絶縁スペーサが配置されており、支持用突起は、ステムの内側の面における各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けられている。光電子増倍管を製造する際には、ステムの支持用突起上に電極積層部を載置した後で両者を圧接することがある。この場合、支持用突起を各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けることにより、圧接時に加わる力に対する電極積層部の物理的強度が強くなる。
【0010】
さらに、好ましくは、複数の電極のうち最もステム側に位置する電極には、支持用突起と嵌合する支持用凹部が形成されている。これにより、電極積層部をステムに対して精度良く位置決めできると共に、支持用突起により電極積層部をバランス良く支持することができる。
【0011】
ここで、上記光電子増倍管の受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置すれば、上記作用を奏する好適な放射線検出装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステムの内側の面におけるステムピンよりもステムの中心側の領域に、電極積層部を載置させる支持用突起を設けたので、所定の電圧耐性を確保することができる。これにより、絶縁破壊に対する信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づく便宜的なものである。また、各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1及び図2は、本発明に係る光電子増倍管の第1実施形態を示す平面図及び底面図であり、図3は図1におけるIII‐III線に沿う断面図である。図1〜図3において、光電子増倍管1は、外部から入射した光によって電子を放出し、その電子を増倍させて信号として出力させるための装置として構成されている。
【0015】
光電子増倍管1は、略円筒形状をなす金属製の側管2を有している。側管2の上側(一側)の開口端にはガラス製の受光面板3が気密に固定され、この受光面板3の内側表面には、受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。また、側管2の下側(他側)の開口端には、円板状のステム5が配置されている。このステム5には、略円状の位置に周方向に互いに離間して配置された複数(15本)の導電性のステムピン6が気密に挿着されている。ステム5には、当該ステム5を側方から包囲するように金属製のリング状側管7が気密に固定されている。そして、上側の側管2の下端部に形成されたフランジ部2aと下側のリング状側管7の上端部に形成された同径のフランジ部7aとが溶接され、側管2とリング状側管7とが気密に固定されることで、内部が真空状態に保たれる密封容器8が形成されている。
【0016】
このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための電子増倍部9が収容されている。この電子増倍部9は、電子増倍孔(図示せず)を多数有する薄板型電極であるダイノード10が複数段(本実施形態では10段)に積層されてブロック状に形成されている。なお、これらのダイノード10のうち最も下側(ステム5側)に位置する最終段のダイノード10bには、電子増倍孔は形成されていない。各ダイノード10の所定の縁部には、外側に突出するダイノード接続片10cがそれぞれ形成され、各ダイノード接続片10cの下面側にはステム5に挿着された所定のステムピン6の先端部分が溶接固定されている。これにより、各ダイノード10と各ステムピン6との電気的な接続がなされている。
【0017】
さらに、密封容器8内において、電子増倍部9と光電面4との間には、光電面4から放出された電子を電子増倍部9に収束させて導くための薄板型電極である収束電極11が設置され、最終段のダイノード10bの一段上の段には、電子増倍部9により増倍され最終段のダイノード10bより放出された電子を出力信号として取り出すための薄板型電極であるアノード(陽極)12が積層されている。収束電極11の四隅には外側に突出する突出片11aがそれぞれ形成され、この各突出片11aに所定のステムピン6が溶接固定されることでステムピン6と収束電極11との電気的な接続がなされている。また、アノード12の所定の縁部にも外側に突出するアノード接続片12aが形成され、このアノード接続片12aにステムピン6の一つであるアノードピン13が溶接固定されることでアノードピン13とアノード12との電気的な接続がなされている。そして、図示しない電源回路に接続したステムピン6によって電子増倍部9及びアノード12に所定の電圧が印加されると、光電面4と収束電極11とは同電位に設定され、各ダイノード10は積層順に上段から下段に行くに従って高電位となるように設定される。また、アノード12は最終段のダイノード10bよりも高電位に設定される。
【0018】
ここで、上記の電子増倍部9、収束電極11及びアノード12によって、電極積層部50が構成されている。電子増倍部9を形成する各ダイノード10間には、セラミック等からなる絶縁スペーサ51が複数(ここでは4つ)ずつ介在されている。また、ダイノード10と収束電極11との間、ダイノード10とアノード12との間にも、同様の絶縁スペーサ51が複数ずつ介在されている。これらの絶縁スペーサ51は、薄板型電極10〜12のエッジよりも内側(中心側)において、薄板型電極10〜12を介して重なり合うように設けられている。つまり、電極積層部50は、複数のダイノード10、収束電極11及びアノード12が絶縁スペーサ51を介して積層されて成るものである。
【0019】
絶縁スペーサ51の具体的構造を図4に示す。図4(a)は絶縁スペーサ51の側面図であり、図4(b)は絶縁スペーサ51の平面図である。絶縁スペーサ51は、円板状のスペーサ本体部52と、このスペーサ本体部52の両面に設けられ、環状のテーパ面53aを有する下段突起部53と、各下段突起部53上に設けられ、環状のテーパ面54aを有する上段突起部54とを有している。スペーサ本体部52の両面に対するテーパ面54aの傾斜角は、スペーサ本体部52の両面に対するテーパ面53aの傾斜角よりも大きくなっている。
【0020】
ところで、図5に示すような球型の絶縁スペーサ100を使用した場合には、電極55(薄板型電極10〜12に相当)に形成されたスペーサ配置用貫通穴56の穴径によっては、以下のような不具合が生じることがある。即ち、スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法である場合には、図5(a)に示すように、絶縁スペーサ100はスペーサ配置用貫通穴56にうまく収まるため特に問題は無い。しかし、スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも大きくなると、図5(b)に示すように、絶縁スペーサ100はスペーサ配置用貫通穴56に収まろうとして、電極55の位置ズレが起こることがある。この場合には、各電極55の位置精度が悪化するだけでなく、電極55のガタツキが生じ、何らかの衝撃によって出力信号が変化してしまう可能性がある。
【0021】
一方、図4に示すような円盤型の絶縁スペーサ51を使用すると、上記の不具合を解決することができる。即ち、各電極55に形成されたスペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法である場合には、図6(b)に示すように、絶縁スペーサ51は、下段突起部53のテーパ面53aと上段突起部54のテーパ面54aとの境界に接するように配置される。スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも大きい場合には、図6(a)に示すように、絶縁スペーサ51は、下段突起部53のテーパ面53aに接するように配置される。スペーサ配置用貫通穴56の穴径が基準寸法よりも小さい場合には、図6(c)に示すように、絶縁スペーサ51は、上段突起部54のテーパ面54aに接するように配置される。このようにスペーサ配置用貫通穴56の穴径によって各電極55の位置ズレが起きることは無いため、各電極55の位置精度が高くなり、各電極55間の距離が等しくなる。また、電極55のガタツキが生じないため、衝撃によって出力信号が変化することが防止される。
【0022】
図1〜図3に戻り、以上のように構成された光電子増倍管1では、受光面板3側から光電面4に光(hν)が入射すると、この光電面4において光が光電変換されて密封容器8内に電子(e−)が放出される。放出された電子は、収束電極11によって電子増倍部9の一段目のダイノード10aに収束される。そして、電子は電子増倍部9内で順次増倍されていき、最終段のダイノード10bから2次電子群が放出される。この2次電子群はアノード12に導かれ、このアノード12と接続されたアノードピン13を介して外部に出力される。
【0023】
続いて、上述したステム5の構成について更に詳細に説明する。ここで、ステム5において、光電子増倍管1の密封容器8の形成時に真空となる側を内側(上側)とする。ステム5は、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされている。そして、ステム5の側面には、上述したリング状側管7が固定されている。本実施形態においては、ステム5を構成するベース材14の側面とリング状側管7の内壁面とを接合することにより、リング状側管7に対してステム5を固定している。ここで、下側押え材16の下側(外側)の面は、リング状側管7の下端よりも下側に突出しているが、リング状側管7に対するステム5の固定位置は上記形態に限られるものではない。
【0024】
ベース材14は、例えばコバールを主成分とし、例えば融点が約780度とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、下面側からの光が密封容器8内に透過しない程度の黒色とされている。また、ベース材14には、図7に示すように、ステムピン6の外径とほぼ同径の開口14aがベース材14の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。
【0025】
上側押え材15は、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、密封容器8内の発光を効果的に吸収すべく黒色とされている。また、上側押え材15には、図8に示すように、ベース材14と同様に複数(15個)の開口15aが形成されている。各開口15aは、ベース材14に形成された開口14aよりも大径とされている。さらに、これらの開口15aのうちの少なくとも二箇所以上は、ベース材14に対する位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、他の開口15aよりも更に大径の大径開口15bとされている。ここでは、大径開口15bは、アノードピン13が通る開口15aを除く3箇所に90度の位相角をもって配置されている。
【0026】
また、上側押え材15の上面(ベース材14に対する接合面とは反対側の面)において、開口15aよりも内側(中心側)の領域には、上記の電極積層部50を載置させる複数の支持用突起60が設けられている。ここでは、支持用突起60は、図8に示すように、上記の電極積層部50を構成する各薄板型電極間に配置された絶縁スペーサ51と同じ数(4つ)だけ設けられている。電極積層部50は、図3に示すように、各絶縁スペーサ51の配置部位を支持用突起60に一致させた状態で各支持用突起60上に支持されている。言い換えれば、電極積層部50の各薄板型電極間に支持用突起60と同じ数だけ設けられた絶縁スペーサ51は、各々が側管2の管軸方向において支持用突起60と同軸となるように配置されている。このような支持用突起60はステムピン6を挿通させていないので、ステムピン6を介して印加される電位や、ステムピン6の位置及び数等に依存することなく、電極積層部50を支持することができる。
【0027】
下側押え材16は、上側押え材15と同様に、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、添加するアルミナ系粉末の組成の違いにより白色を呈すると共に、ベース材14及び上側押え材15よりも高い物理的強度を有している。また、下側押え材16にも、図9に示すように、上側押え材15と同様に複数(15個)の開口16aが形成されている。これらの開口16aのうちの少なくとも二箇所以上は、位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく大径開口16bとされている。ここでは、大径開口16bは、アノードピン13が通る開口16aを含む4箇所に90度の位相角をもって配置されている。さらに、下側押え材16の中央部分には、ベース材14が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出開口16cが形成されている。
【0028】
上記のベース材14、上側押え材15及び下側押え材16は、図3に示すように、各開口14a,15b,16a及び各大径開口15b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口14a,15a,16aにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材14の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材14の両面に上側押え材15及び下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6が上側押え材15の各開口15a及び下側押え材16の各開口16aを挿通して、ステム5の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材14を底面とする凹部5aが形成され、各ステムピン6はこの凹部5aの底面においてベース材14に密着して接合されている。
【0029】
続いて、上述のように構成されたステム5の製造例について、図10を参照しながら説明する。まず図10(a)に示すように、ベース材14、上側押え材15及び下側押え材16を、各開口14a,15a,16aの軸心位置を合わせた状態で重ね合わせ、ベース材14にリング状側管7を嵌め込むと共に、各開口14a,15a,16aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの位置決め用治具(図示せず)の突起部を大径開口15b,16bに進入させる。なお、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材14との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておくのが望ましい。
【0030】
続いて、そのようにセットしたステム5を電気炉(図示せず)に投入し、約850度〜900度の温度(ベース材14の融点より高く、上側押え材15及び下側押え材16の融点よりも低い温度)において位置決め治具(図示せず)によりステム5を挟むように加圧しながら焼結させる。この焼結処理により、図10(b)に示すように、融点が約780度であるベース材14のみが溶融し、ベース材14と各押え材15,16、各ステムピン6及びリング状側管7とが融着される。このとき、ベース材14は各部品との密着性を高めるため、ボリュームが多めに調整されているが、位置決め用治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口15b,16b内でのベース材14の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材14の余分なボリュームは下側押え材16のベース材浸出開口16c内に逃がされる。このため、上側押え材15の開口15a及び下側押え材16の開口16aを通じてベース材14がステム5の表面にはみ出すことは殆ど無い。このようにステム5を、ベース材14の溶融によってベース材14と押え材15,16とを接合する3層構造としたので、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されるようになる。その後、ステム5を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具を取り外すことで、ステム5の製造が完了する。
【0031】
そして、このように得られたステム5の上面に設けられた各支持用突起60上に、電子増倍部9、収束電極11及びアノード12からなる電極積層部50を載置し、ダイノード接続片10c、アノード接続片12a、集束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することによって、電極積層部50をステム5に対して圧接して固定する。このとき、上述したように、各絶縁スペーサ51の配置部位が各支持用突起60の位置と一致するように電極積層部50を各支持用突起60上に載せることにより、圧接時に生じる力に対する電極積層部50の物理的強度が強くなるため、電極積層部50の歪みや変形等を防止することができる。その後、受光面板3が固定された側管2をリング状側管7に溶接固定して組み立てることで、図1〜図3に示す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管1が得られる。
【0032】
このとき、上述したようにステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されているので、支持用突起60を含むステム5の上面に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や、電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好になる。また、光電子増倍管1全長の寸法精度や、光電子増倍管1を表面実装する際の取付性が高められる。
【0033】
ここで、比較例として、ステム5に上記の支持用突起60が設けられていない場合の要部拡大断面図を図11に示す。同図において、ステム5におけるステムピン6の貫通部の全周囲は、ベース材14を底面とする凹部5aとされている。このため、導電性の最終段ダイノード10bと絶縁性の上側押え材15と真空とが交わるポイントであるトリプルジャンクションX1から、導電性のステムピン6と絶縁性のベース材14と真空とが交わるポイントであるトリプルジャンクションX2までのステム5(絶縁体)に沿う沿面距離Yは、凹部5aが無い場合と比べて、凹部5aの高さ分だけ長くなる。また、この凹部5aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、電圧耐性が良くなる。
【0034】
これに対し本実施形態では、上側押え材15の上面に設けられた支持用突起60上に電極積層部50が支持されているので、図12に示すように、最終段ダイノード10bと上側押え材15と真空とが交わる上記のトリプルジャンクションX1は、支持用突起60の上面と最終段ダイノード10bとの接触縁部に位置することになる。つまり、トリプルジャンクションX1は、電界の弱い領域である最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となるため、図11に示す比較例に比べて、沿面放電の発生が更に抑制される。また、トリプルジャンクションX1から上記トリプルジャンクションX2までのステム5の面に沿う沿面距離Yは、図11に示す比較例に比べて、支持用突起60の高さ分だけ長くなる。このため、沿面放電の発生がより一層抑制される。
【0035】
このように本実施形態によれば、ステム5におけるステムピン6の貫通部に凹部5aを形成したことに加え、上側押え材15の上面に、電極積層部50を載置させる複数の支持用突起60を設けたので、沿面放電の発生を十分に抑制することができる。これにより、光電子増倍管1の電圧耐性が十分に高められるので、光電子増倍管1の絶縁破壊を確実に防止することができる。
【0036】
上記の光電子増倍管1の変形例を図13に示す。なお、同図では、構造を分かりやすく示す便宜上、図3とは異なり、2つの支持用突起60を通るような側断面図としている。図13に示す光電子増倍管70は、電極積層部50を構成する複数の薄板型電極10〜12のうち最もステム5側に位置する最終段ダイノード10bに、上側押え材15の上面に形成された各支持用突起60と嵌合する複数の支持用凹部71を形成したものである。これらの支持用凹部71は、最終段ダイノード10bにおける各絶縁スペーサ51に対応する位置に形成されている。その他の構成は、光電子増倍管1と同等である。このような支持用凹部71を最終段ダイノード10bに設けることにより、電極積層部50を各支持用突起60上に載置する際に、例えば電極積層部50をステム5の所望位置に対して精度良く位置決めすることができる。また、電極積層部50を各支持用突起60上に安定して支持させることもできる。
【0037】
上記の光電子増倍管1の別の変形例を図14に示す。同図に示す光電子増倍管20は、ステム5の中央部分に金属製の排気管19を設けたものである。この排気管19は、光電子増倍管20の組み立て終了後に密封容器8の内部を真空ポンプ(図示しない)等によって排気して真空状態にするために利用することができる。その他の構成は、光電子増倍管1と同等である。
【0038】
上記の光電子増倍管1の別の変形例を図15に示す。同図に示す光電子増倍管26は、ステム5に固定したリング状側管7に、上記の側管2よりも長尺の側管27を嵌め合わせて、リング状側管7の下端部に形成されたフランジ部7aと側管27の下端部に形成されたフランジ部27aとを溶接固定したものである。その他の構成は、図14に示す光電子増倍管20と同等である。
【0039】
図16は、上述した光電子増倍管1を備えた放射線検出装置を示す構成図である。同図において、放射線検出装置21は、光電子増倍管1の受光面板3の上側(外側)に設置され、放射線を光に変換して放出するシンチレータ22を備えている。このような放射線検出装置21は光電子増倍管1を有しているので、上述したように沿面放電の発生を十分に抑制し、十分な電圧耐性を確保することができる。
【0040】
なお、上記の実施形態では、ステム5を構成するベース材14、上側押え材15及び下側押え材16をいずれも絶縁材料で形成したが、沿面放電の発生を抑制して電圧耐性を上げるためには、少なくともステム5における電極積層部50と対峙する面が絶縁されていれば良いため、ベース材14の外側(下側)に接合される下側押え材16は導電性であっても良い。また、上記の実施形態では、ステム5をベース材14、上側押え材15及び下側押え材16からなる3層構造としたが、4層以上の構造であっても良い。この場合、ベース材を含む全ての層を絶縁材料で形成しても良いし、或いは例えばベース材の内側(上側)に導電層を形成し、その導電層の上側に、支持用突起を有する押え材を形成しても良い。
【0041】
[第2実施形態]
図17は、本発明に係る光電子増倍管の第2実施形態を示す側断面図である。本実施形態の光電子増倍管28は、第1実施形態におけるステム5に代えて、ステム29を有している。ステム29は、上記のベース材14と同質の円板状のベース材30と、ベース材30の上側(内側)に接合された上側押え材15とからなる2層構造とされている。つまり、光電子増倍管28のステム29には、上記の下側押え材16が設けられていない。
【0042】
図18はベース材30の平面図であり、図19はベース材30の底面図である。ベース材30には、上側がステムピン6の外径とほぼ同径であり、下側がステムピン6の外径よりも大径とされた開口30aがベース材30の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材30の開口30aのうち、アノードピン13が通る開口30aを含む所定の4箇所は、位置決め用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、下側の外径が他の開口30aの下側の外径よりも大径とされた大径開口30bとされている。さらに、ベース材30の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出凹部30c(図20参照)が形成されている。
【0043】
これらのベース材30及び上側押え材15は、図17に示すように、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口30a,15aにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材30の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材30の上面に上側押え材15が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材30の各開口30aの下側部分及び上側押え材15の各開口15aを挿通して、ステム29の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材30を底面とする凹部29aが形成され、各ステムピン6はこの凹部29aの底面においてベース材30に密着して接合されている。
【0044】
このようなステム29の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず図20(a)に示すように、ベース材30及び上側押え材15を、各開口30a,15aの軸心位置を合わせた状態で重ね合わせ、ベース材30にリング状側管7を嵌め込むと共に、各開口30a,15aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの位置決め用治具(図示せず)の突起部を大径開口30b,15bに進入させる。
【0045】
続いて、そのようにセットしたステム29を電気炉に投入し、第1実施形態と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図20(b)に示すように、ベース材30と上側押え材15、各ステムピン6及びリング状側管7とがベース材30の溶融によって融着される。このとき、位置決め用治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口30b,15b内でのベース材30の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材30の余分なボリュームはベース材浸出凹部30c内に逃がされる。このため、上側押え材15の開口15a及びベース材30の開口30aの下側部分を通じてベース材30がステム29の表面にはみ出すことは殆ど無い。これにより、図17に示すようなステム29が得られる。このようにステム29を、ベース材30の溶融によってベース材30と押え材15とを接合する2層構造としたので、ステム29上面の位置精度、平坦度、水平度が確保される。従って、ステム29の上面に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や、電子増倍部9の着座性が高められる。
【0046】
このように構成された光電子増倍管28においても、第1実施形態と同様に、最終段ダイノード10bと上側押え材15と真空とが交わるトリプルジャンクションX1からステムピン6とベース材14と真空とが交わるトリプルジャンクションX2までの沿面距離が長くなると共に、トリプルジャンクションX1は最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となる。これにより、沿面放電の発生を十分に抑制し、光電子増倍管28の電圧耐性を向上させることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ステム29をベース材30と上側押え材15とからなる2層構造としたが、ベース材と下側押え材とからなる2層構造のステムとしても良い。この場合には、ベース材の上面に複数の支持用突起60を設ければ良い。また、本実施形態において、図13〜図16に示した構成を採用しても良い。
【0048】
[第3実施形態]
図21は、本発明に係る光電子増倍管の第3実施形態を示す側断面図である。本実施形態の光電子増倍管34は、第1実施形態におけるステム5に代えて、ステム35を有している。ステム35は、ベース材14と同質の円板状のベース材36による単層構造とされている。つまり、光電子増倍管34のステム35には、上側押え材15及び下側押え材16が設けられていない。
【0049】
図22はベース材36の平面図であり、図23はベース材36の底面図である。ベース材36には、中間部分がステムピン6の外径とほぼ同径であり、上部及び下部がステムピン6の外径よりも大径とされた開口36aがベース材36の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、これらの開口36aのうちアノードピン13が通る開口36aを除く所定の3箇所の上部及び下部と、アノードピン13が通る開口36aの下部とは、押え用治具(図示せず)の進入を可能とすべく、上部及び下部の外径が他の開口36aの上部及び下部の外径よりも大径とされた大径開口36bとされている。さらに、ベース材36の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するための円形状のベース材浸出凹部36c(図24参照)が形成されている。
【0050】
また、ベース材36の上面には、複数の支持用突起60が設けられている。この支持用突起60の数や配置部位は、第1実施形態と同様である。
【0051】
ベース材36は、図21に示すように、各開口36aにそれぞれステムピン6を通した状態で、ベース材36の溶融によってステムピン6と融着接合されている。より具体的には、各ステムピン6がベース材36の各開口36aの上部及び下部を挿通して、ステム35の上面及び下面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材36を底面とする凹部35aが形成され、各ステムピン6はこの凹部35aの底面においてベース材36に密着して接合されている。
【0052】
このようなステム35を製造する場合にも、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず図24(a)に示すように、ベース材36にリング状側管7を嵌め込むと共に、ベース材36の各開口36aにステムピン6を挿通させ、各ステムピン6の両端部をそれぞれ保持した上下2つの押え用治具(図示せず)の突起部を大径開口36bに進入させる。
【0053】
続いて、セットしたステム35を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図24(b)に示すように、ベース材36と各ステムピン6及びリング状側管7とがベース材36の溶融によって融着される。このとき、押え治具(図示せず)の突起部の端面によって大径開口36b内でのベース材36の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材36の余分なボリュームはベース材浸出凹部36c内に逃がされる。これにより、図21に示すようなステム35が得られる。
【0054】
このように構成された光電子増倍管34においても、第1実施形態と同様に、最終段ダイノード10bとベース材36と真空とが交わるトリプルジャンクションX1からステムピン6とベース材36と真空とが交わるトリプルジャンクションX2までの沿面距離が長くなると共に、トリプルジャンクションX1は最終段ダイノード10bの裏面に隠蔽される状態となる。これにより、沿面放電の発生を十分に抑制し、光電子増倍管28の電圧耐性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態においても、図13〜図16に示した構成を採用しても良いことは言うまでもない。
【0056】
以上、本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態には限定されるものではない。例えばステムの上面に設ける支持用突起60の形状については、特に上記実施形態のように点状には限られず、例えば直線状や環状を含む曲線状であっても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、ステムを2層以上で構成する場合、例えばベース材の内側(上側)に上側押え材15を接合したが、この上側押え材15の上側の面に、更に絶縁性の材料を積層し、この積層した絶縁性の材料によって支持用突起60を形成しても良い。また、支持用突起60はステムと一体に形成しても良いし、突起なる部材をステムとは別体で形成してステム上面に接合することによって形成しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、電極積層部50の最もステム側に位置する薄板型電極を最終段ダイノード10bとし、その最終段ダイノード10bの1段上の薄板型電極を陽極12としたが、電極積層部50の最もステム側に位置する薄板型電極が陽極12であり、その陽極12の1段上の薄板型電極が最終段ダイノード10bであっても良い。このとき、図13に示すような構成を採用する場合には、最もステム側に位置する陽極12に支持用凹部71を設けることになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る光電子増倍管の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した光電子増倍管の底面図である。
【図3】図1に示した光電子増倍管のIII-III線断面図である。
【図4】図3に示した絶縁スペーサの具体的構造を示す側面図及び平面図である。
【図5】比較例として球型の絶縁スペーサを各薄板型電極間に配置した状態を示す断面図である。
【図6】図3に示した絶縁スペーサを各薄板型電極間に配置した状態を示す断面図である。
【図7】図3に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図8】図3に示したステムを構成する上側押え材の平面図である。
【図9】図3に示したステムを構成する下側押え材の平面図である。
【図10】図3に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【図11】比較例として、支持用突起が設けられていないステムを有する光電子増倍管の要部拡大断面図である。
【図12】図3に示した光電子増倍管の要部拡大断面図である。
【図13】図3に示した光電子増倍管の変形例を示す側断面図である。
【図14】図3に示した光電子増倍管の別の変形例を示す側断面図である。
【図15】図3に示した光電子増倍管の更に別の変形例を示す側断面図である。
【図16】図3に示した光電子増倍管を備えた放射線検出装置を示す側断面図である。
【図17】本発明に係る光電子増倍管の第2実施形態を示す側断面図である。
【図18】図17に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図19】図18に示したベース材の底面図である。
【図20】図17に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【図21】本発明に係る光電子増倍管の第3実施形態を示す側断面図である。
【図22】図21に示したステムを構成するベース材の平面図である。
【図23】図22に示したベース材の底面図である。
【図24】図21に示したステムの製造例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1,20,26,28,34,70…光電子増倍管、2,27…側管、3…受光面板、4…光電面、5,29,32,35…ステム、6…ステムピン、7…リング状側管(側管)、8…密封容器、9…電子増倍部、10…ダイノード(電極)、11…収束電極、12…アノード(陽極、電極)、14,30,33,36…ベース材、15…上側押え材(押え材)、16…下側押え材(押え材)、21…放射線検出装置、22…シンチレータ、50…電極積層部、51…絶縁スペーサ、60…支持用突起、71…支持用凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記密封容器内に設けられ、前記光電面から放出された電子を増倍するための複数のダイノード及び当該ダイノードにより増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極を含む複数の電極を積層して成る電極積層部と、前記密封容器の他側の端部を構成するステムと、前記ステムに挿着されて前記密封容器内から外部に導出すると共に前記各電極に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、
前記ステムは絶縁性を有していると共に、前記ステムの内側の面における前記ステムピンよりも前記ステムの中心側の領域には、前記電極積層部を載置させる支持用突起が設けられていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記ステムは、前記ステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材と、前記ベース材よりも高い融点を有し、前記ベース材の内側の面に接合されると共に前記ステムピンを挿通させる絶縁性の押え材と、を少なくとも備える二層以上の構造とされ、
前記支持用突起は、前記押え材における前記ベース材に対する接合面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記各電極間には絶縁スペーサが配置されており、
前記支持用突起は、前記ステムの内側の面における前記各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光電子増倍管。
【請求項4】
前記複数の電極のうち最も前記ステム側に位置する電極には、前記支持用突起と嵌合する支持用凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光電子増倍管。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置して成ることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項1】
真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記密封容器内に設けられ、前記光電面から放出された電子を増倍するための複数のダイノード及び当該ダイノードにより増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極を含む複数の電極を積層して成る電極積層部と、前記密封容器の他側の端部を構成するステムと、前記ステムに挿着されて前記密封容器内から外部に導出すると共に前記各電極に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、
前記ステムは絶縁性を有していると共に、前記ステムの内側の面における前記ステムピンよりも前記ステムの中心側の領域には、前記電極積層部を載置させる支持用突起が設けられていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記ステムは、前記ステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材と、前記ベース材よりも高い融点を有し、前記ベース材の内側の面に接合されると共に前記ステムピンを挿通させる絶縁性の押え材と、を少なくとも備える二層以上の構造とされ、
前記支持用突起は、前記押え材における前記ベース材に対する接合面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記各電極間には絶縁スペーサが配置されており、
前記支持用突起は、前記ステムの内側の面における前記各絶縁スペーサの配置部位に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光電子増倍管。
【請求項4】
前記複数の電極のうち最も前記ステム側に位置する電極には、前記支持用突起と嵌合する支持用凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光電子増倍管。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置して成ることを特徴とする放射線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−127970(P2006−127970A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316236(P2004−316236)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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