光電子増倍管及び放射線検出装置
【課題】 側管の大径化を抑制することができる光電子増倍管及びこれを備えた放射線検出装置を提供する。
【解決手段】 光電子増倍管1では、径方向に対して側管2とステム5との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管1の径方向の大径化を抑制することができ、この光電子増倍管1を実装する際の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。
【解決手段】 光電子増倍管1では、径方向に対して側管2とステム5との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管1の径方向の大径化を抑制することができ、この光電子増倍管1を実装する際の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電効果を用いる光電子増倍管及びこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管として、筒状を成す側管の一側の端部に受光面板を、他側の端部にステムを各々備えて真空密封容器を構成し、受光面板の内側の面に光電面を設けると共に、この光電面に対向して複数段のダイノードを有する電子増倍部及び陽極を積層して配設し、これらの各段のダイノード及び陽極に各々接続した複数のステムピンを密封容器内から外部に導出するようにしてステムに挿着する構成を具備し、受光面板を通して入射した入射光を光電面で電子に変換し、この光電面から放出された電子を、各ステムピンを介して所定の電圧が印加された各ダイノードを有する電子増倍部で順次増倍し、この増倍されて陽極に達した電子を電気信号としてステムピンの一つであるアノードピンを介して取り出す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管が知られている。
【0003】
このような光電子増倍管にあっては、側管を2つの部材、すなわち、受光面板が固定される側管本体とステムの側面に固定されるリング状の側管とによって構成し、側管本体をリング状の側管に被せて気密に溶接固定した光電子増倍管が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の光電子増倍管では、側管本体をリング状の側管に被せているため、側管の外径がリング状の側管の厚さ分だけ大径化してしまうという問題があった。また、このように側管の外径が大径化する結果として、実装時の高密度化・高集積化が妨げられるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、側管の大径化を抑制することができる光電子増倍管及びこれを備えた放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光電子増倍管は、真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、密封容器内に設けられ、光電面から放出された電子を増倍する電子増倍部及び当該電子増倍部により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極と、密封容器の他側の端部を構成するステムと、ステムに挿着されて密封容器内から外部に導出すると共に陽極及び電子増倍部に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、密封容器を構成すると共に、陽極及び電子増倍部を側方から包囲する導電性の第1の側管と、第1の側管よりもステム側に配置されて密封容器を構成すると共に、第1の側管の一端部及びステムの側面に接合された導電性の第2の側管と、を備え、ステムは、第2の側管から第1の側管側に突出するように第2の側管と接合され、第1の側管は、ステムにおける第2の側管から突出した部分を直接被せた状態で第2の側管と接合されていることを特徴としている。
【0007】
このような光電子増倍管によれば、側管の径方向に対して第1の側管とステムとの間に第2の側管が介在せず、第1の側管は、ステムにおける第2の側管の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で第2の側管と接合されているので、第1の側管と第2の側管との重なり合いによる側管の大径化を回避することができる。また、第1の側管と第2の側管とを接合させるときは、第2の側管の開放端面から突出したステムに第1の側管を当接させることで、第1の側管を第2の側管に対して容易に位置決めすることができる。
【0008】
また、ステムは、陽極に電気的に接続されたアノードピンを含むステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材を有し、ベース材におけるアノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされていることが好ましい。この場合、導電性の側管に包囲されるステムが絶縁性のベース材とされて、当該ベース材のアノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされているため、導電性のアノードピン、アノードピンを接合した絶縁性のベース材、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションと導電性の側管との間のベース材(絶縁体)に沿う沿面距離が、面取り形状が無い場合に比して十分長くされる。その結果、アノードピンから取り出される電気信号に対するノイズ混入が十分に防止されるようになる。
【0009】
ここで、上記作用を同様に奏しつつステムを二層構造とする場合には、具体的には、ステムは、ベース材と、ベース材の内側の面又は外側の面の何れか一方の面に接合されると共に、ベース材に接合されたステムピンを通す押え材と、を備える二層構造とされ、押え材がベース材の内側の面に接合される場合には、当該押え材が絶縁性を有すると共に、面取り形状が、当該押え材におけるアノードピン近傍の内側の縁部に設けられる構成が挙げられる。
【0010】
また、上記作用を同様に奏しつつステムを三層以上の構造とする場合には、具体的には、ステムは、ベース材と、ベース材の内側の面及び外側の面の両面に各々接合されると共に、ベース材に接合されたステムピンを通す押え材と、を少なくとも備える三層以上の構造とされ、ベース材より内側の部材でアノードピンを通す部材は、絶縁性を有すると共に、面取り形状が、当該ベース材より内側の部材でアノードピンを通す部材のアノードピン近傍の内側の縁部に設けられる構成が挙げられる。
【0011】
ここで、上記光電子増倍管の受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置すれば、上記作用を奏する好適な放射線検出装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
このような光電子増倍管及び放射線検出装置によれば、側管の大径化を抑制することができる。これにより、実装時の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づく便宜的なものである。また、各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1及び図2は、本発明に係る光電子増倍管の一実施形態を示す平面図及び底面図であり、図3は図1におけるIII-III線に沿う断面図である。図1〜図3において、光電子増倍管1は、外部から入射した光によって電子を放出し、その電子を増倍させて信号として出力させるための装置として構成されている。
【0015】
図1〜図3に示すように、光電子増倍管1は略円筒形状をなす金属製の側管(第1の側管)2を有している。図3に示すように、この側管2の上側(一側)の開口端にはガラス製の受光面板3が気密に固定され、受光面板3の内側表面には受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。また、側管2の下側(他側)の開口端には、図2及び図3に示すように、円板状のステム5が配置されている。このステム5には略円状の位置に周方向に互いに離間して配置された複数(15本)の導電性のステムピン6が気密に挿着されていると共に、このステム5を側方から包囲するように金属製のリング状側管(第2の側管)7が気密に固定されている。そして、図3に示すように、上側の側管2の下端部に形成されたフランジ部2aと下側のリング状側管7の上端部に形成された同径のフランジ部7aとが溶接され、側管2とリング状側管7とが気密に固定されることで、内部が真空状態に保たれた密封容器8が形成されている。
【0016】
このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための電子増倍部9が収容されている。この電子増倍部9は、電子増倍孔を多数有する薄板状のダイノード10が複数段(本実施形態では10段)に積層されてブロック状に形成され、ステム5の上面に設置されている。各ダイノード10の所定の縁部には、図1及び図3に示すように、外側に突出するダイノード接続片10cがそれぞれ形成され、各ダイノード接続片10cの下面側にはステム5に挿着された所定のステムピン6の先端部分が溶接固定されている。これにより、各ダイノード10と各ステムピン6との電気的な接続がなされている。
【0017】
さらに、図3に示すように、密封容器8内において、電子増倍部9と光電面4との間には、光電面4から放出された電子を電子増倍部9に収束させて導くための平板状の収束電極11が設置され、最終段のダイノード10bの一段上の段には、電子増倍部9により増倍され最終段のダイノード10bより放出された電子を出力信号として取り出すための平板状アノード(陽極)12が積層されている。図1に示すように、収束電極11の四隅には外側に突出する突出片11aがそれぞれ形成され、この各突出片11aに所定のステムピン6が溶接固定されることでステムピン6と収束電極11との電気的な接続がなされている。また、アノード12の所定の縁部にも外側に突出するアノード接続片12aが形成され、このアノード接続片12aにステムピン6の一つであるアノードピン13が溶接固定されることでアノードピン13とアノード12との電気的な接続がなされている。そして、図示しない電源回路に接続したステムピン6によって電子増倍部9及びアノード12に所定の電圧が印加されると、光電面4と収束電極11とは同電位に設定され、各ダイノード10は積層順に上段から下段に行くに従って高電位となるように設定される。また、アノード12は最終段のダイノード10bよりも高電位に設定される。本実施形態においては、ステム5の上面に対して、最終段のダイノード10bを直接載置し、固定する構成としているが、例えばステム5の上面に設置した支持部材によって最終段のダイノード10bを支持し、最終段のダイノード10bとステム5の上面との間に空間が介在している構成としても良い。
【0018】
以上のように構成された光電子増倍管1では、受光面板3側から光電面4に光(hν)が入射すると、この光電面4において光が光電変換されて密封容器8内に電子(e−)が放出される。放出された電子は、収束電極11によって電子増倍部9の一段目のダイノード10aに収束される。そして、電子は電子増倍部9内で順次増倍されていき、最終段のダイノード10bから2次電子群が放出される。この2次電子群はアノード12に導かれ、このアノード12と接続されたアノードピン13を介して外部に出力される。
【0019】
続いて、上述したステム5の構成について更に詳細に説明する。ここで、ステム5において、光電子増倍管1の密封容器8形成時に真空となる側を内側(上側)とする。
【0020】
図3に示すように、ステム5は、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされ、その側面には上述したリング状側管7が固定されている。本実施形態においては、ステム5を構成するベース材14の側面とリング状側管7の内壁面とを接合することにより、リング状側管7に対してステム5を固定している。ここで、下側押え材16の下側(外側)の面は、リング状側管7の下端よりも下側に突出しているが、リング状側管7に対するステム5の固定位置は上記形態に限られるものではない。
【0021】
ベース材14は、例えばコバールを主成分とし、融点が約780度とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、下面側からの光が密封容器8内に透過しない程度の黒色とされている。また、図4に示すように、ベース材14にはステムピン6の外径とほぼ同径の開口14aがベース材14の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。
【0022】
上側押え材15は、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、密封容器8内の発光を効果的に吸収すべく黒色とされている。また、図5に示すように、上側押え材15にはベース材14と同様に配置された複数(15個)の開口15aが形成されている。各開口15aはベース材14に形成された開口14aよりも大径とされ、さらに、開口15aのうちの少なくとも二箇所以上の所定箇所はベース材14に対する位置決め用治具(後述)18の進入を可能とすべく、他の開口15aよりも更に大径の大径開口15bとされている。上側押え材15においては、大径開口15bはアノードピン13が挿通する開口15aを除く3箇所に90度の位相角をもって配置されている。また、上側押え材15は、アノードピン13が挿通する開口15a近傍の縁部が面取り形状15cとされている。
【0023】
下側押え材16は、上側押え材15と同様に、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、添加するアルミナ系粉末の組成の違いにより白色を呈すると共に、ベース材14及び上側押え材15よりも高い物理的強度を有している。また、図6に示すように、下側押え材16にも上側押え材15と同様の開口16aが形成され、この開口16aのうちの少なくとも二箇所以上の所定箇所は位置決め用治具18の進入を可能とすべく大径開口16bとされている。下側押え材16においては、大径開口16bはアノードピン13が挿通する開口16aを含む4箇所に90度の位相角をもって配置され、アノードピン13が挿通する大径開口16b以外の三箇所の大径開口16bは上側押え材15の大径開口15bと同軸に配置されている。さらに、下側押え材16の中央部分には円形状のベース材浸出開口16cが形成されている。
【0024】
そして、図3に示すように、これらのベース材14、上側押え材15、及び下側押え材16は、各開口14a,15a,16a及び各大径開口15b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口14a,15a,16a,15b,16bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材14の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材14の両面に上側押え材15及び下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6が上側押え材15及び下側押え材16の各開口15a,16a,15b,16bを挿通してステム5の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材14を底面とする凹部5aが形成され、各ステムピン6はこの凹部5aの底面においてベース材14に密着して接合されている。
【0025】
また、ステム5は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム5におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分に直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0026】
続いて、上述のように構成されたステム5の製造例について図7及び図8を参照しながら説明する。
【0027】
ステム5の製造にあたっては、図7(a)及び図7(b)に示すように、ベース材14、上側押え材15、下側押え材16、及び各ステムピン6を位置決めした状態で挟み込んで保持する一対の位置決め用治具18を用いる。
【0028】
この位置決め用治具18は、例えば1100度以上の融点を有する耐熱性の高いカーボンからなるブロック状の部材であり、その一面側にはステムピン6を挿入させて支持する挿入孔18aが各ステムピン6の配置に対応させて形成されている。また、各挿入孔18aのうち、上側押え材15の大径開口15b及び下側押え材16の大径開口16bに対応する挿入孔18aの開口縁部には、大径開口15b,16b内に進入してベース材14に対して上側押え材15及び下側押え材16を位置決めし、ベース材14を通る各ステムピン6と各開口15a,16aとの同軸度を確保するための略円筒状の突起部18bが形成されている。
【0029】
この位置決め用治具18を用いてステム5のセットを行う場合、まず、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定する。次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口16aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口16bを進入させて、位置決め用治具18の上に下側押え材16を載置する。さらに、下側押え材16の各開口16a及び大径開口16bに対して各開口14a,15a及び各大径開口15bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口14a,15a及び大径開口15bにステムピン6を通して下側押え材16の上にベース材14及び上側押え材15をこの順に重ね合わせた後、ベース材14にリング状側管7を嵌め込む。このとき、上側押え材15の略上半分がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしておく。最後に、上側押え材15から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、上側押え材15の大径開口15bに突起部18bを進入させて、上側押え材15の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム5のセットが完了する。なお、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材14との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0030】
続いて、セットしたステム5を位置決め用治具18ごと電気炉(図示しない)に投入し、約850度〜900度の温度(ベース材14の融点より高く、上側押え材15及び下側押え材16の融点よりも低い温度)で位置決め用治具18でステム5を挟むように加圧しながら焼結させる。この焼結処理により、図8(a)及び図8(b)に示すように、融点が約780度であるベース材14のみが溶融し、ベース材14と各押え材15,16、ベース材14と各ステムピン6、及びベース材14とリング状側管7とが融着される。このとき、ベース材14は各部品との密着性を高めるため、ボリュームが多めに調整されているが、図8(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口15b〜16b内でのベース材14の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材14の余分なボリュームは下側押え材16のベース材浸出開口16c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム5を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム5の製造が完了する。
【0031】
このようなステム5の製造方法によれば、位置決め用治具18の突起部18bを上側押え材15の大径開口15b及び下側押え材16の大径開口16bに進入させることで、ベース材14に対して上側押え材15及び下側押え材16を容易に位置決めできるため、製造工程が簡素化されて製造コストの低減が図られる。また、位置決め用治具18により、各ステムピン6と各開口15a,16aとの同軸度も確保される。
【0032】
次に、このように得られたステム組のステム5の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム5におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム5の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図1〜図3に示すヘッドオン型の光電子増倍管1が得られる。
【0033】
この光電子増倍管1では、径方向に対して側管2とステム5との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管1の径方向の大径化が抑制され、この光電子増倍管1を実装する際の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム5の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管1の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0034】
また、光電子増倍管1では、ステム5においてベース材14よりも上側(内側)の部材である上側押え材15が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の縁部が面取り形状15c(図5参照)とされている。係る構成の作用について図9及び図10を用いて詳細に説明する。
【0035】
図9は本実施形態におけるアノードピン13近傍を示す要部拡大断面図であり、図10は比較例におけるアノードピン13近傍を示す要部拡大断面図である。比較例では、ステム5におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部に凹部5aが形成されておらず、また、アノードピン13近傍に面取り形状15cが形成されていない上側押え材17が用いられている。説明の都合上各部材は破線で示している。
【0036】
図9に示すように、本実施形態では、アノードピン13近傍に関し、導電性のアノードピン13、アノードピン13を含むステムピン6を接合した絶縁性のベース材14、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションX1からリング状側管7までの絶縁体に沿う沿面距離Y1が、図10に示す比較例のようにアノードピン13近傍に面取り形状15cが形成されていない上側押え材17を用いた場合と比べて、上側押え材15の面取り形状15cに沿う距離分だけ長尺化される。このように沿面距離Y1が長尺化されることで、アノードピン13近傍での沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。
【0037】
また、本実施形態では、ステム5の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材14を底面とする凹部5aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離Y1は、図10に示す比較例におけるトリプルジャンクションX2から側管2までの絶縁体に沿う沿面距離Y2と比べて凹部5aの高さ分だけさらに長尺化されている。したがって、アノードピン13近傍での沿面放電の発生が一層抑制され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に凹部5aの高さ分だけ沿面距離が長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、光電子増倍管1の電圧耐性が高められる。なお、この凹部5aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、光電子増倍管1の電圧耐性は一層高いものとなる。
【0038】
さらに、本実施形態では、上述した凹部5aが形成されることにより、トリプルジャンクションX1は凹部5aの底面とアノードピン13を含むステムピン6との接合縁部に位置し、この凹部5a内に隠蔽されるが如き状態とされている。このようにトリプルジャンクションX1を凹部5a内に隠蔽することで、図10に示す比較例におけるトリプルジャンクションX2のように上側押え材17の上面に剥き出し状態とされている場合と比べて沿面放電の発生が一層抑制され、光電子増倍管1の電圧耐性がより高められている。
【0039】
なお、位置決め用治具18により各ステムピン6と上側押え材15の各開口15a及び下側押え材16の各開口16aとの同軸度が確保されるため、ステムピン6が開口15a,16aの内壁面に近接することが防止できるため、トリプルジャンクションX1を凹部5a内に確実に隠蔽することができ、光電子増倍管1の電圧耐性が一層確保される。
【0040】
また、光電子増倍管1では、ステム5が、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされているため、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管1では、ステム5の上面(内側の面)に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好に得られると共に、光電子増倍管1全長の寸法精度、光電子増倍管1を表面実装する際の取付性が高められる。
【0041】
また、下側押え材16にはベース材浸出開口16c(図6参照)が形成されているため、溶融したベース材14の余分なボリュームをベース材浸出開口16c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材14の溶融の際に、上側押え材15の開口15a及び下側押え材16の開口16aを通じてベース材14がステム5の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0042】
さらに、光電子増倍管1では、上述したようにステム5の両面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材14を底面とする凹部5aとされている。これにより、ステムピン6に対するベース材14の接合縁部は、ステム5に形成された凹部5aの底面となり、ベース材14はステムピン6を緩やかな角度(ほぼ直角)で接合すると共に、ステムピン6に曲げが作用しても凹部5aの開放側の周縁部にステムピン6が当接してそれ以上のステムピン6の曲げが阻止されるため、ベース材14とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上側押え材15に形成する面取り形状は、アノードピン13近傍を含め、上側押え材15の縁部の全周にわたって形成されていても良い。また、上側押え材15を、その上面側の縁部の全周にわたって面取り形状を有する段付円板形状としても良く、種々の変形を適用することができる。すなわち、図5に示した面取り形状15cのように上側押え材15の端面(上下面)に対して直角面となる面取り形状を形成する場合には、図11に示すように、平面視略V字状の面取り形状15dとしても良く、図12に示すように、直線状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍をさらに半円形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15eとしても良い。また、図13に示すように、アノードピン13近傍のみを半円形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15fとしても良い。さらには、図14に示すように、直線状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍をさらに矩形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15gとしても良く、図15に示すように、アノードピン13近傍のみを矩形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15hとしても良い。また、図16に示すように、V字状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍を直線状とした面取り形状15iとしても良い。
【0044】
また、面取り形状は必ずしも上側押え材15の端面に対して直角面とする必要はなく、図17に示すように、上側押え材15の端面に対して傾斜面とする面取り形状15jとしても良く、図18に示すように、上部のみを傾斜面とする面取り形状15kとしても良く、図19に示すように、下側が大きい階段状の面取り形状15lとしても良い。また、図20に示すように、下部のみを傾斜面とする面取り形状15mとしても良く、図21に示すように、中間部分のみを傾斜面とする面取り形状15nとしても良い。さらに、この面取り形状15m,15nの変形例として、図22及び図23に示すように、上側押え材15の下面側がリング状側管7に接触するように構成した面取り形状15o及び面取り形状15pとしても良い。図11〜図23に示したいずれの変形例によっても、アノードピン13近傍の沿面距離を長尺化することができ、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。
【0045】
また、例えば上側押え材15の上面に更に別の層を設けてステム5全体を4層以上とし、この別の層の上面に電子増倍部9を設置するようにしても良く、この別の層にベース材14に接合されたステムピン6を挿通させる開口を備える場合には、この別の層を絶縁体とすると共に、少なくともこの別の層のアノードピン13近傍に上述したような面取り形状を形成する。また、このように別の層にステムピン6を挿通させる開口を備える場合には、その開口のうちの少なくとも二箇所が、ベース材14に対する位置決め用治具18の進入を可能とすべく他の開口より大径とされる構成を採用するのが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、下側押え材16にのみベース材浸出開口16cを設けているが、このようなベース材浸出開口は押え材の少なくとも一方に設けていれば良く、例えば上側押え材15にのみ設けていても良いし、上側押え材15及び下側押え材16の双方に設けていても良い。
【0047】
さらに、本実施形態の変形例として、図24に示すように、ステム5の中央部分に金属製の排気管19を設けた光電子増倍管20を採用しても良い。この排気管19は、光電子増倍管20の組み立て終了後に密封容器8の内部を真空ポンプ(図示しない)等によって排気して真空状態にするために利用することができる。
【0048】
次に、図1〜図3に示した光電子増倍管1を備えた放射線検出装置の例について説明する。図25及び図26に示す例に係る放射線検出装置21では、光電子増倍管1の受光面板3の外側に放射線を光に変換して放出するシンチレータ22が設置され、光電子増倍管1が、処理回路23を下面側に備えた回路基板24上に実装されて構成されている。また、図27及び図28に示す他の例に係る放射線検出装置25では、回路基板24上に処理回路23が設置され、この処理回路23をステムピン6で取り囲むようにして光電子増倍管1が回路基板24上に実装されている。以上のような構成より、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置21,25を得ることができる。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る光電子増倍管28は、図29に示すように、ステム29が、ベース材14と同質の円板状のベース材30と、ベース材30の上側(内側)に接合された上側押え材15とによる2層構造とされている点で、ステム5がベース材14、上側押え材15及び下側押え材16による3層構造とされている第1実施形態に係る光電子増倍管1と異なる。
【0050】
すなわち、光電子増倍管28のステム29には下側押え材16が設けられておらず、ベース材30には、図30に示すように、上半分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ、図31に示すように、下半分がステムピン6の外径よりも大径とされた開口30aがベース材30の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材30の開口30aのうち、アノードピン13が通る開口30aを含む所定の4箇所は、位置決め用治具18の進入を可能とすべく下半分の外径が他の開口30aの下半分の外径よりも大径とされた大径開口30bとされている。さらに、ベース材30の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するベース材浸出部としての円形状のベース材浸出凹部30c(図32参照)が形成されている。
【0051】
そして、図29に示すように、これらのベース材30及び上側押え材15は、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材30の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材30の上面に上側押え材15が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材30の各開口30aの下半分及び上側押え材15の各開口15aを挿通してステム29の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材30を底面とする凹部29aが形成され、各ステムピン6はこの凹部29aの底面においてベース材30に密着して接合されている。
【0052】
また、ステム29は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム29におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0053】
このようなステム29の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図32に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口30aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口30bを進入させて、位置決め用治具18の上にベース材30を載置し、さらに、ベース材30の各開口30a及び大径開口30bに対して各開口15a及び各大径開口15bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口15a及び各大径開口15bにステムピン6を通してベース材30の上に上側押え材15を重ね合わせた後、上側押え材15の略上半分がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材30にリング状側管7を嵌め込み、最後に、上側押え材15から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、上側押え材15の大径開口15bに突起部18bを進入させて、上側押え材15の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム29のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材30との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0054】
次に、セットしたステム29を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図33(a)及び図33(b)に示すように、ベース材30と上側押え材15、ベース材30と各ステムピン6、及びベース材30とリング状側管7とがベース材30の溶融によって融着される。このとき、図33(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口30b,15b内でのベース材30の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材30の余分なボリュームはベース材浸出凹部30c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム29を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム29の製造が完了する。
【0055】
次に、このように得られたステム組のステム29の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム29におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム29の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図29に示すヘッドオン型の光電子増倍管28が得られる。
【0056】
この光電子増倍管28においても、径方向に対して側管2とステム29との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム29におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管28の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム29におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム29の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管28の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0057】
また、光電子増倍管28においても、第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様に、ステム29においてベース材30よりも上側(内側)の部材である上側押え材15が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の縁部が面取り形状15c(図5参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状15cに関し、本実施形態においても、上側押え材15の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、段付円板形状としても良く、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0058】
また、ステム29の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材30を底面とする凹部29aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に沿面距離が長尺化されるため、光電子増倍管28の電圧耐性が高められる。なお、凹部29aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化され、さらには、トリプルジャンクションが凹部29a内に隠蔽されるため、光電子増倍管28の電圧耐性がより高められている。
【0059】
なお、第1実施形態と同様に、位置決め用治具18により各ステムピン6と上側押え材15の各開口15aとの同軸度が確保されるため、トリプルジャンクションを凹部29a内に確実に隠蔽でき、光電子増倍管28の電圧耐性が一層確保される。
【0060】
また、光電子増倍管28では、ステム29が、ベース材29と、ベース材29の上側(内側)に接合された上側押え材15とによる2層構造とされているため、ステム29上面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管28では、ステム29の上面(内側の面)に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好に得られる。
【0061】
さらに、ベース材30にはベース材浸出凹部30c(図32参照)が形成されているため、溶融したベース材30の余分なボリュームをベース材浸出凹部30c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材30の溶融の際に、上側押え材15の開口15a及びベース材30の開口30aの下半分を通じてベース材30がステム29の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム29両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0062】
また、光電子増倍管28においても、上述したようにステム29の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材30を底面とする凹部29aとされているため、ベース材30とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0063】
なお、本実施形態の変形例として、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム29の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0064】
また、本実施形態では、ベース材30の下部にベース材浸出部としてのベース材浸出凹部30cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材30又は上側押え材15の少なくとも一方に設けていれば良く、例えば上側押え材15にのみ第1実施形態で説明したのと同様なベース材浸出開口を設けていても良いし、上側押え材15にベース材浸出開口を設け、かつベース材30にベース材浸出凹部30cを設けていても良い。
【0065】
また、図29に示した光電子増倍管28を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0066】
本実施形態のさらに別の変形例として、押え材をベース材の下面(外側の面)に接合して2層構造のステムを構成しても良い。この別の変形例に係る光電子増倍管31では、図34に示すように、ステム32が、ベース材14と同質の円板状のベース材33と、ベース材33の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる2層構造とされている。
【0067】
すなわち、光電子増倍管31のステム32には上側押え材15が設けられておらず、ベース材33には、図36に示すように、下半分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ、図35に示すように、上半分がステムピン6の外径よりも大径とされた開口33aがベース材33の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材33の開口33aのうち、アノードピン13が通る開口33aを除く所定の3箇所は、位置決め用治具18の進入を可能とすべく上半分の外径が他の開口33aの上半分の外径よりも大径とされた大径開口33bとされている。さらに、ベース材33は、アノードピン13が通る開口33a近傍の上面側の縁部が面取り形状33cとされている。
【0068】
そして、図34に示すように、これらのベース材33、及び下側押え材16は、各開口33a,16a及び各大径開口33b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口33a,16a及び大径開口33b,16bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材33の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材33の下面に下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材33の各開口33aの上半分及び下側押え材16の各開口16aを挿通してステム32の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材33を底面とする凹部32aが形成され、各ステムピン6はこの凹部32aの底面においてベース材33に密着して接合されている。
【0069】
また、ステム32は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム32におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0070】
このようなステム32の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図37に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口16aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口16bを進入させて、位置決め用治具18の上に下側押え材16を載置し、さらに、下側押え材16の各開口16a及び大径開口16bに対して各開口33a及び各大径開口33bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口33a及び各大径開口33bにステムピン6を通して下側押え材16の上にベース材33を重ね合わせた後、ベース材33の上部がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材33にリング状側管7を嵌め込み、最後に、ベース材33から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、ベース材33の大径開口33bに突起部18bを進入させて、ベース材33の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム32のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材33との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0071】
次に、セットしたステム29を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図38(a)及び図38(b)に示すように、ベース材33と下側押え材16、ベース材33と各ステムピン6、及びベース材33とリング状側管7とがベース材33の溶融によって融着される。このとき、図38(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口33b,16b内でのベース材33の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材33の余分なボリュームはベース材浸出開口16c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム32を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム32の製造が完了する。
【0072】
次に、このように得られたステム組のステム32の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム32におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム32の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図34に示すヘッドオン型の光電子増倍管31が得られる。
【0073】
この光電子増倍管31においても、径方向に対して側管2とステム32との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム32におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管32の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム32におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム32の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管31の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0074】
また、光電子増倍管31においても、ステム32においてベース材33自体が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の上面側の縁部が第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様の面取り形状33c(図35参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状33cに関し、ベース材33の上面側の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0075】
また、ステム32の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材33を底面とする凹部32aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に凹部32aの高さ分だけ沿面距離が長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、光電子増倍管31の電圧耐性が高められる。なお、この凹部32aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、光電子増倍管31の電圧耐性は一層高いものとなる。
【0076】
なお、第1実施形態と同様に、位置決め用治具18により各ステムピン6と下側押え材16の各開口16aとの同軸度が確保されるため、トリプルジャンクションを凹部32a内に確実に隠蔽でき、光電子増倍管31の電圧耐性が一層確保される。
【0077】
また、光電子増倍管31では、ステム32が、ベース材33と、ベース材33の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる2層構造とされているため、ステム32下面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管31では、光電子増倍管31全長の寸法精度、光電子増倍管31を表面実装する際の取付性を高めることができる。
【0078】
さらに、下側押え材16にはベース材浸出開口16c(図6参照)が形成されているため、第1実施形態の場合と同様に、ベース材33の溶融の際に、下側押え材16の開口16a及びベース材33の開口33aの上半分を通じてベース材33がステム32の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム32両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0079】
また、光電子増倍管31においても、上述したようにステム32の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材33を底面とする凹部32aとされているため、ベース材33とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0080】
なお、光電子増倍管31についても、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム32の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0081】
また、この実施形態では、下側押え材16にのみベース材浸出部としてのベース材浸出開口16cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材33及び下側押え材16の少なくとも一方に設けていれば良く、例えばベース材33にのみ前述したのと同様のベース材浸出凹部を設けていても良いし、下側押え材16にベース材浸出開口16cを設け、かつベース材33にベース材浸出凹部を設けていても良い。
【0082】
また、この光電子増倍管31を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0083】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る光電子増倍管34は、図39に示すように、ステム35が、ベース材14と同質の円板状のベース材36による単層構造とされている点で、ステム5がベース材14、上側押え材15及び下側押え材16による3層構造とされている第1実施形態に係る光電子増倍管1と異なる。
【0084】
すなわち、光電子増倍管34のステム35には上側押え材15及び下側押え材16が設けられておらず、ベース材36には、図39〜図41に示すように、中間部分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ上部及び下部がステムピン6の外径よりも大径とされた開口36aがベース材36の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、この開口36aのうちアノードピン13が通る開口36aを除く所定の3箇所の上部及び下部と、アノードピン13が通る開口36aの下部とは、位置決め用治具と同様の構成の押え治具18の進入を可能とすべく上部及び下部の外径が他の開口36aの上部及び下部の外径よりも大径とされた大径開口36bとされている。さらに、ベース材36の下部中央部分には、ベース材36が溶融により浸出するベース材浸出部としての円形状のベース材浸出凹部36c(図42参照)が形成されていると共に、アノードピン13が通る開口36a近傍の上面側の縁部が面取り形状36dとされている。
【0085】
そして、図39に示すように、このベース材36は、各開口36aにそれぞれステムピン6を通した状態で、ベース材36の溶融によってステムピン6と融着接合されている。より具体的には、各ステムピン6がベース材36の各開口36aの上部及び下部を挿通してステム35の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材36を底面とする凹部35aが形成され、各ステムピン6はこの凹部35aの底面においてベース材36に密着して接合されている。
【0086】
また、ステム35は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム35におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0087】
このようなステム35を製造する場合、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図42に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で上記位置決め用治具と同様の構成の押え治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、押え治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、押え治具18に固定された各ステムピン6を開口36aに通しつつ、押え治具18の突起部18bにベース材36の下面側の大径開口36bを進入させて、押え治具18の上にベース材36を載置した後、ベース材36の上部がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材36にリング状側管7を嵌め込み、最後に、ベース材36から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、ベース材36の上面側の大径開口36bに突起部18bを進入させて、ベース材36の上にもう一方(図示上側)の押え治具18を載置する。これによりステム35のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材36との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0088】
次に、セットしたステム35を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図43(a)及び図43(b)に示すように、ベース材36と各ステムピン6、及びベース材36とリング状側管7とがベース材36の溶融によって融着される。このとき、図43(b)に示すように、押え治具18の突起部18bの端面によって大径開口36b内でのベース材36の高さ方向の位置決めがなされ、その他の余分なボリュームはベース材浸出凹部36c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム35を電気炉から取り出し、上下の押え治具18を取り外すとステム35の製造が完了する。
【0089】
次に、このように得られたステム組のステム35の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム35におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム35の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図39に示すヘッドオン型の光電子増倍管34が得られる。
【0090】
この光電子増倍管34においても、径方向に対して側管2とステム35との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム35におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管34の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム35におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム35の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管34の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0091】
また、光電子増倍管34においても、ステム35においてベース材36自体が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の上面側の縁部が第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様の面取り形状36d(図40参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状36dに関し、ベース材36の上面側の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0092】
また、ステム35の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材36を底面とする凹部35aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に沿面距離が長尺化されるため、光電子増倍管34の電圧耐性が高められる。なお、凹部35aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化され、さらには、トリプルジャンクションが凹部35a内に隠蔽されるため、光電子増倍管34の電圧耐性がより高められている。
【0093】
さらに、ベース材36にはベース材浸出凹部36c(図42参照)が形成されているため、溶融したベース材36の余分なボリュームをベース材浸出凹部36c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材36の溶融の際に、開口36aの上部及び下部を通してベース材36がステム35の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム35両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0094】
また、光電子増倍管34においても、上述したようにステム35の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材36を底面とする凹部35aとされているため、ベース材36とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0095】
なお、光電子増倍管34についても、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム35の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0096】
また、本実施形態では、ベース材36の下部にベース材浸出部としてのベース材浸出凹部36cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材36の上部に設けていても良い。
【0097】
また、この光電子増倍管34を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0098】
なお、上述した各実施形態では、側管2がステムにおけるリング状側管7から突出した部分と面取り形状を除いた全周にわたって接触した状態でリング状側管7と接合されているが、側管2とステムとの間には若干の間隙を設けていても良い。すなわち、図44に示すように、周面に例えば3箇所の張出部を設けて各張出部の頂部が側管2の内壁と接触するように設計した上側押え材15Aをステム5に採用しても良く、また、図45に示すように、側管2の内径よりもリング状側管7のフランジ部7aの幅程度小径とした上側押え材15Bをステム5に採用しても良い。この場合、アノードピン13を含むステムピン6と側管2との間の沿面距離を確保することができる。同様の変形はステムの層数に関わらずに適用することもでき、ベース材に対して上述した変形を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電子増倍管を示す平面図である。
【図2】図1に示した光電子増倍管の底面図である。
【図3】図1に示した光電子増倍管のIII-III線断面図である。
【図4】第1実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図5】第1実施形態に係るステムを構成する上側押え材の平面図である。
【図6】第1実施形態に係るステムを構成する下側押え材の平面図である。
【図7】第1実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図8】第1実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図9】図3に示した光電子増倍管におけるトリプルジャンクション及び沿面距離を示したアノードピン近傍の要部拡大図である。
【図10】比較例におけるトリプルジャンクション及び沿面距離を示したアノードピン近傍の要部拡大図である。
【図11】面取り形状の変形例を示した図である。
【図12】面取り形状の別の変形例を示した図である。
【図13】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図14】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図15】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図16】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図17】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図18】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図19】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図20】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図21】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図22】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図23】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図24】変形例に係る光電子増倍管を示した側断面図である。
【図25】放射線検出装置の一例を示す側面図である。
【図26】図25に示した放射線検出装置の要部断面図である。
【図27】放射線検出装置の他の例を示す側面図である。
【図28】図27に示した放射線検出装置の要部断面図である。
【図29】本発明の第2実施形態に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図30】第2実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図31】第2実施形態に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図32】第2実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図33】第2実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図34】第2実施形態の変形例に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図35】第2実施形態の変形例に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図36】第2実施形態の変形例に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図37】第2実施形態の変形例に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図38】第2実施形態の変形例に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図39】第3実施形態に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図40】第3実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図41】第3実施形態に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図42】第3実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図43】第3実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図44】さらに別の変形例に係るステム及びリング状側管を示した図である。
【図45】さらに別の変形例に係るステム及びリング状側管を示した図である。
【符号の説明】
【0100】
1,20,26,28,31,34…光電子増倍管、2…側管(第1の側管)、3…受光面板、4…光電面、5,29,32,35…ステム、6…ステムピン、7…リング状側管(第2の側管)、8…密封容器、9…電子増倍部、12…アノード(陽極)、13…アノードピン(ステムピン)、14,30,33,36…ベース材、15,15A,15B…上側押え材(押え材)、15c〜15p,33c,36d…面取り形状、16…下側押え材(押え材)、21,25…放射線検出装置、22…シンチレータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電効果を用いる光電子増倍管及びこれを用いた放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管として、筒状を成す側管の一側の端部に受光面板を、他側の端部にステムを各々備えて真空密封容器を構成し、受光面板の内側の面に光電面を設けると共に、この光電面に対向して複数段のダイノードを有する電子増倍部及び陽極を積層して配設し、これらの各段のダイノード及び陽極に各々接続した複数のステムピンを密封容器内から外部に導出するようにしてステムに挿着する構成を具備し、受光面板を通して入射した入射光を光電面で電子に変換し、この光電面から放出された電子を、各ステムピンを介して所定の電圧が印加された各ダイノードを有する電子増倍部で順次増倍し、この増倍されて陽極に達した電子を電気信号としてステムピンの一つであるアノードピンを介して取り出す所謂ヘッドオン型の光電子増倍管が知られている。
【0003】
このような光電子増倍管にあっては、側管を2つの部材、すなわち、受光面板が固定される側管本体とステムの側面に固定されるリング状の側管とによって構成し、側管本体をリング状の側管に被せて気密に溶接固定した光電子増倍管が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−290793号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の光電子増倍管では、側管本体をリング状の側管に被せているため、側管の外径がリング状の側管の厚さ分だけ大径化してしまうという問題があった。また、このように側管の外径が大径化する結果として、実装時の高密度化・高集積化が妨げられるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、側管の大径化を抑制することができる光電子増倍管及びこれを備えた放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光電子増倍管は、真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、密封容器内に設けられ、光電面から放出された電子を増倍する電子増倍部及び当該電子増倍部により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極と、密封容器の他側の端部を構成するステムと、ステムに挿着されて密封容器内から外部に導出すると共に陽極及び電子増倍部に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、密封容器を構成すると共に、陽極及び電子増倍部を側方から包囲する導電性の第1の側管と、第1の側管よりもステム側に配置されて密封容器を構成すると共に、第1の側管の一端部及びステムの側面に接合された導電性の第2の側管と、を備え、ステムは、第2の側管から第1の側管側に突出するように第2の側管と接合され、第1の側管は、ステムにおける第2の側管から突出した部分を直接被せた状態で第2の側管と接合されていることを特徴としている。
【0007】
このような光電子増倍管によれば、側管の径方向に対して第1の側管とステムとの間に第2の側管が介在せず、第1の側管は、ステムにおける第2の側管の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で第2の側管と接合されているので、第1の側管と第2の側管との重なり合いによる側管の大径化を回避することができる。また、第1の側管と第2の側管とを接合させるときは、第2の側管の開放端面から突出したステムに第1の側管を当接させることで、第1の側管を第2の側管に対して容易に位置決めすることができる。
【0008】
また、ステムは、陽極に電気的に接続されたアノードピンを含むステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材を有し、ベース材におけるアノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされていることが好ましい。この場合、導電性の側管に包囲されるステムが絶縁性のベース材とされて、当該ベース材のアノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされているため、導電性のアノードピン、アノードピンを接合した絶縁性のベース材、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションと導電性の側管との間のベース材(絶縁体)に沿う沿面距離が、面取り形状が無い場合に比して十分長くされる。その結果、アノードピンから取り出される電気信号に対するノイズ混入が十分に防止されるようになる。
【0009】
ここで、上記作用を同様に奏しつつステムを二層構造とする場合には、具体的には、ステムは、ベース材と、ベース材の内側の面又は外側の面の何れか一方の面に接合されると共に、ベース材に接合されたステムピンを通す押え材と、を備える二層構造とされ、押え材がベース材の内側の面に接合される場合には、当該押え材が絶縁性を有すると共に、面取り形状が、当該押え材におけるアノードピン近傍の内側の縁部に設けられる構成が挙げられる。
【0010】
また、上記作用を同様に奏しつつステムを三層以上の構造とする場合には、具体的には、ステムは、ベース材と、ベース材の内側の面及び外側の面の両面に各々接合されると共に、ベース材に接合されたステムピンを通す押え材と、を少なくとも備える三層以上の構造とされ、ベース材より内側の部材でアノードピンを通す部材は、絶縁性を有すると共に、面取り形状が、当該ベース材より内側の部材でアノードピンを通す部材のアノードピン近傍の内側の縁部に設けられる構成が挙げられる。
【0011】
ここで、上記光電子増倍管の受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置すれば、上記作用を奏する好適な放射線検出装置が得られる。
【発明の効果】
【0012】
このような光電子増倍管及び放射線検出装置によれば、側管の大径化を抑制することができる。これにより、実装時の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明に係る光電子増倍管及び放射線検出装置の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づく便宜的なものである。また、各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1及び図2は、本発明に係る光電子増倍管の一実施形態を示す平面図及び底面図であり、図3は図1におけるIII-III線に沿う断面図である。図1〜図3において、光電子増倍管1は、外部から入射した光によって電子を放出し、その電子を増倍させて信号として出力させるための装置として構成されている。
【0015】
図1〜図3に示すように、光電子増倍管1は略円筒形状をなす金属製の側管(第1の側管)2を有している。図3に示すように、この側管2の上側(一側)の開口端にはガラス製の受光面板3が気密に固定され、受光面板3の内側表面には受光面板3を通して入射した光を電子に変換するための光電面4が形成されている。また、側管2の下側(他側)の開口端には、図2及び図3に示すように、円板状のステム5が配置されている。このステム5には略円状の位置に周方向に互いに離間して配置された複数(15本)の導電性のステムピン6が気密に挿着されていると共に、このステム5を側方から包囲するように金属製のリング状側管(第2の側管)7が気密に固定されている。そして、図3に示すように、上側の側管2の下端部に形成されたフランジ部2aと下側のリング状側管7の上端部に形成された同径のフランジ部7aとが溶接され、側管2とリング状側管7とが気密に固定されることで、内部が真空状態に保たれた密封容器8が形成されている。
【0016】
このように形成された密封容器8内には、光電面4から放出された電子を増倍するための電子増倍部9が収容されている。この電子増倍部9は、電子増倍孔を多数有する薄板状のダイノード10が複数段(本実施形態では10段)に積層されてブロック状に形成され、ステム5の上面に設置されている。各ダイノード10の所定の縁部には、図1及び図3に示すように、外側に突出するダイノード接続片10cがそれぞれ形成され、各ダイノード接続片10cの下面側にはステム5に挿着された所定のステムピン6の先端部分が溶接固定されている。これにより、各ダイノード10と各ステムピン6との電気的な接続がなされている。
【0017】
さらに、図3に示すように、密封容器8内において、電子増倍部9と光電面4との間には、光電面4から放出された電子を電子増倍部9に収束させて導くための平板状の収束電極11が設置され、最終段のダイノード10bの一段上の段には、電子増倍部9により増倍され最終段のダイノード10bより放出された電子を出力信号として取り出すための平板状アノード(陽極)12が積層されている。図1に示すように、収束電極11の四隅には外側に突出する突出片11aがそれぞれ形成され、この各突出片11aに所定のステムピン6が溶接固定されることでステムピン6と収束電極11との電気的な接続がなされている。また、アノード12の所定の縁部にも外側に突出するアノード接続片12aが形成され、このアノード接続片12aにステムピン6の一つであるアノードピン13が溶接固定されることでアノードピン13とアノード12との電気的な接続がなされている。そして、図示しない電源回路に接続したステムピン6によって電子増倍部9及びアノード12に所定の電圧が印加されると、光電面4と収束電極11とは同電位に設定され、各ダイノード10は積層順に上段から下段に行くに従って高電位となるように設定される。また、アノード12は最終段のダイノード10bよりも高電位に設定される。本実施形態においては、ステム5の上面に対して、最終段のダイノード10bを直接載置し、固定する構成としているが、例えばステム5の上面に設置した支持部材によって最終段のダイノード10bを支持し、最終段のダイノード10bとステム5の上面との間に空間が介在している構成としても良い。
【0018】
以上のように構成された光電子増倍管1では、受光面板3側から光電面4に光(hν)が入射すると、この光電面4において光が光電変換されて密封容器8内に電子(e−)が放出される。放出された電子は、収束電極11によって電子増倍部9の一段目のダイノード10aに収束される。そして、電子は電子増倍部9内で順次増倍されていき、最終段のダイノード10bから2次電子群が放出される。この2次電子群はアノード12に導かれ、このアノード12と接続されたアノードピン13を介して外部に出力される。
【0019】
続いて、上述したステム5の構成について更に詳細に説明する。ここで、ステム5において、光電子増倍管1の密封容器8形成時に真空となる側を内側(上側)とする。
【0020】
図3に示すように、ステム5は、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされ、その側面には上述したリング状側管7が固定されている。本実施形態においては、ステム5を構成するベース材14の側面とリング状側管7の内壁面とを接合することにより、リング状側管7に対してステム5を固定している。ここで、下側押え材16の下側(外側)の面は、リング状側管7の下端よりも下側に突出しているが、リング状側管7に対するステム5の固定位置は上記形態に限られるものではない。
【0021】
ベース材14は、例えばコバールを主成分とし、融点が約780度とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、下面側からの光が密封容器8内に透過しない程度の黒色とされている。また、図4に示すように、ベース材14にはステムピン6の外径とほぼ同径の開口14aがベース材14の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。
【0022】
上側押え材15は、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、例えば融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、密封容器8内の発光を効果的に吸収すべく黒色とされている。また、図5に示すように、上側押え材15にはベース材14と同様に配置された複数(15個)の開口15aが形成されている。各開口15aはベース材14に形成された開口14aよりも大径とされ、さらに、開口15aのうちの少なくとも二箇所以上の所定箇所はベース材14に対する位置決め用治具(後述)18の進入を可能とすべく、他の開口15aよりも更に大径の大径開口15bとされている。上側押え材15においては、大径開口15bはアノードピン13が挿通する開口15aを除く3箇所に90度の位相角をもって配置されている。また、上側押え材15は、アノードピン13が挿通する開口15a近傍の縁部が面取り形状15cとされている。
【0023】
下側押え材16は、上側押え材15と同様に、コバールに例えばアルミナ系粉末を添加することにより、融点が約1100度とベース材14より高融点とされた絶縁性ガラスから構成された円板状の部材であり、添加するアルミナ系粉末の組成の違いにより白色を呈すると共に、ベース材14及び上側押え材15よりも高い物理的強度を有している。また、図6に示すように、下側押え材16にも上側押え材15と同様の開口16aが形成され、この開口16aのうちの少なくとも二箇所以上の所定箇所は位置決め用治具18の進入を可能とすべく大径開口16bとされている。下側押え材16においては、大径開口16bはアノードピン13が挿通する開口16aを含む4箇所に90度の位相角をもって配置され、アノードピン13が挿通する大径開口16b以外の三箇所の大径開口16bは上側押え材15の大径開口15bと同軸に配置されている。さらに、下側押え材16の中央部分には円形状のベース材浸出開口16cが形成されている。
【0024】
そして、図3に示すように、これらのベース材14、上側押え材15、及び下側押え材16は、各開口14a,15a,16a及び各大径開口15b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口14a,15a,16a,15b,16bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材14の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材14の両面に上側押え材15及び下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6が上側押え材15及び下側押え材16の各開口15a,16a,15b,16bを挿通してステム5の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材14を底面とする凹部5aが形成され、各ステムピン6はこの凹部5aの底面においてベース材14に密着して接合されている。
【0025】
また、ステム5は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム5におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分に直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0026】
続いて、上述のように構成されたステム5の製造例について図7及び図8を参照しながら説明する。
【0027】
ステム5の製造にあたっては、図7(a)及び図7(b)に示すように、ベース材14、上側押え材15、下側押え材16、及び各ステムピン6を位置決めした状態で挟み込んで保持する一対の位置決め用治具18を用いる。
【0028】
この位置決め用治具18は、例えば1100度以上の融点を有する耐熱性の高いカーボンからなるブロック状の部材であり、その一面側にはステムピン6を挿入させて支持する挿入孔18aが各ステムピン6の配置に対応させて形成されている。また、各挿入孔18aのうち、上側押え材15の大径開口15b及び下側押え材16の大径開口16bに対応する挿入孔18aの開口縁部には、大径開口15b,16b内に進入してベース材14に対して上側押え材15及び下側押え材16を位置決めし、ベース材14を通る各ステムピン6と各開口15a,16aとの同軸度を確保するための略円筒状の突起部18bが形成されている。
【0029】
この位置決め用治具18を用いてステム5のセットを行う場合、まず、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定する。次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口16aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口16bを進入させて、位置決め用治具18の上に下側押え材16を載置する。さらに、下側押え材16の各開口16a及び大径開口16bに対して各開口14a,15a及び各大径開口15bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口14a,15a及び大径開口15bにステムピン6を通して下側押え材16の上にベース材14及び上側押え材15をこの順に重ね合わせた後、ベース材14にリング状側管7を嵌め込む。このとき、上側押え材15の略上半分がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしておく。最後に、上側押え材15から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、上側押え材15の大径開口15bに突起部18bを進入させて、上側押え材15の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム5のセットが完了する。なお、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材14との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0030】
続いて、セットしたステム5を位置決め用治具18ごと電気炉(図示しない)に投入し、約850度〜900度の温度(ベース材14の融点より高く、上側押え材15及び下側押え材16の融点よりも低い温度)で位置決め用治具18でステム5を挟むように加圧しながら焼結させる。この焼結処理により、図8(a)及び図8(b)に示すように、融点が約780度であるベース材14のみが溶融し、ベース材14と各押え材15,16、ベース材14と各ステムピン6、及びベース材14とリング状側管7とが融着される。このとき、ベース材14は各部品との密着性を高めるため、ボリュームが多めに調整されているが、図8(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口15b〜16b内でのベース材14の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材14の余分なボリュームは下側押え材16のベース材浸出開口16c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム5を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム5の製造が完了する。
【0031】
このようなステム5の製造方法によれば、位置決め用治具18の突起部18bを上側押え材15の大径開口15b及び下側押え材16の大径開口16bに進入させることで、ベース材14に対して上側押え材15及び下側押え材16を容易に位置決めできるため、製造工程が簡素化されて製造コストの低減が図られる。また、位置決め用治具18により、各ステムピン6と各開口15a,16aとの同軸度も確保される。
【0032】
次に、このように得られたステム組のステム5の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム5におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム5の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図1〜図3に示すヘッドオン型の光電子増倍管1が得られる。
【0033】
この光電子増倍管1では、径方向に対して側管2とステム5との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管1の径方向の大径化が抑制され、この光電子増倍管1を実装する際の高密度化・高集積化等を実現することが可能となる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、ステム5におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム5の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管1の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0034】
また、光電子増倍管1では、ステム5においてベース材14よりも上側(内側)の部材である上側押え材15が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の縁部が面取り形状15c(図5参照)とされている。係る構成の作用について図9及び図10を用いて詳細に説明する。
【0035】
図9は本実施形態におけるアノードピン13近傍を示す要部拡大断面図であり、図10は比較例におけるアノードピン13近傍を示す要部拡大断面図である。比較例では、ステム5におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部に凹部5aが形成されておらず、また、アノードピン13近傍に面取り形状15cが形成されていない上側押え材17が用いられている。説明の都合上各部材は破線で示している。
【0036】
図9に示すように、本実施形態では、アノードピン13近傍に関し、導電性のアノードピン13、アノードピン13を含むステムピン6を接合した絶縁性のベース材14、真空が交わるポイントであるトリプルジャンクションX1からリング状側管7までの絶縁体に沿う沿面距離Y1が、図10に示す比較例のようにアノードピン13近傍に面取り形状15cが形成されていない上側押え材17を用いた場合と比べて、上側押え材15の面取り形状15cに沿う距離分だけ長尺化される。このように沿面距離Y1が長尺化されることで、アノードピン13近傍での沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。
【0037】
また、本実施形態では、ステム5の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材14を底面とする凹部5aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離Y1は、図10に示す比較例におけるトリプルジャンクションX2から側管2までの絶縁体に沿う沿面距離Y2と比べて凹部5aの高さ分だけさらに長尺化されている。したがって、アノードピン13近傍での沿面放電の発生が一層抑制され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に凹部5aの高さ分だけ沿面距離が長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、光電子増倍管1の電圧耐性が高められる。なお、この凹部5aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、光電子増倍管1の電圧耐性は一層高いものとなる。
【0038】
さらに、本実施形態では、上述した凹部5aが形成されることにより、トリプルジャンクションX1は凹部5aの底面とアノードピン13を含むステムピン6との接合縁部に位置し、この凹部5a内に隠蔽されるが如き状態とされている。このようにトリプルジャンクションX1を凹部5a内に隠蔽することで、図10に示す比較例におけるトリプルジャンクションX2のように上側押え材17の上面に剥き出し状態とされている場合と比べて沿面放電の発生が一層抑制され、光電子増倍管1の電圧耐性がより高められている。
【0039】
なお、位置決め用治具18により各ステムピン6と上側押え材15の各開口15a及び下側押え材16の各開口16aとの同軸度が確保されるため、ステムピン6が開口15a,16aの内壁面に近接することが防止できるため、トリプルジャンクションX1を凹部5a内に確実に隠蔽することができ、光電子増倍管1の電圧耐性が一層確保される。
【0040】
また、光電子増倍管1では、ステム5が、ベース材14と、ベース材14の上側(内側)に接合された上側押え材15と、ベース材14の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる3層構造とされているため、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管1では、ステム5の上面(内側の面)に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好に得られると共に、光電子増倍管1全長の寸法精度、光電子増倍管1を表面実装する際の取付性が高められる。
【0041】
また、下側押え材16にはベース材浸出開口16c(図6参照)が形成されているため、溶融したベース材14の余分なボリュームをベース材浸出開口16c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材14の溶融の際に、上側押え材15の開口15a及び下側押え材16の開口16aを通じてベース材14がステム5の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム5両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0042】
さらに、光電子増倍管1では、上述したようにステム5の両面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材14を底面とする凹部5aとされている。これにより、ステムピン6に対するベース材14の接合縁部は、ステム5に形成された凹部5aの底面となり、ベース材14はステムピン6を緩やかな角度(ほぼ直角)で接合すると共に、ステムピン6に曲げが作用しても凹部5aの開放側の周縁部にステムピン6が当接してそれ以上のステムピン6の曲げが阻止されるため、ベース材14とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上側押え材15に形成する面取り形状は、アノードピン13近傍を含め、上側押え材15の縁部の全周にわたって形成されていても良い。また、上側押え材15を、その上面側の縁部の全周にわたって面取り形状を有する段付円板形状としても良く、種々の変形を適用することができる。すなわち、図5に示した面取り形状15cのように上側押え材15の端面(上下面)に対して直角面となる面取り形状を形成する場合には、図11に示すように、平面視略V字状の面取り形状15dとしても良く、図12に示すように、直線状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍をさらに半円形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15eとしても良い。また、図13に示すように、アノードピン13近傍のみを半円形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15fとしても良い。さらには、図14に示すように、直線状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍をさらに矩形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15gとしても良く、図15に示すように、アノードピン13近傍のみを矩形状に上下方向に刳り貫いた面取り形状15hとしても良い。また、図16に示すように、V字状の面取り形状に加えてアノードピン13近傍を直線状とした面取り形状15iとしても良い。
【0044】
また、面取り形状は必ずしも上側押え材15の端面に対して直角面とする必要はなく、図17に示すように、上側押え材15の端面に対して傾斜面とする面取り形状15jとしても良く、図18に示すように、上部のみを傾斜面とする面取り形状15kとしても良く、図19に示すように、下側が大きい階段状の面取り形状15lとしても良い。また、図20に示すように、下部のみを傾斜面とする面取り形状15mとしても良く、図21に示すように、中間部分のみを傾斜面とする面取り形状15nとしても良い。さらに、この面取り形状15m,15nの変形例として、図22及び図23に示すように、上側押え材15の下面側がリング状側管7に接触するように構成した面取り形状15o及び面取り形状15pとしても良い。図11〜図23に示したいずれの変形例によっても、アノードピン13近傍の沿面距離を長尺化することができ、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。
【0045】
また、例えば上側押え材15の上面に更に別の層を設けてステム5全体を4層以上とし、この別の層の上面に電子増倍部9を設置するようにしても良く、この別の層にベース材14に接合されたステムピン6を挿通させる開口を備える場合には、この別の層を絶縁体とすると共に、少なくともこの別の層のアノードピン13近傍に上述したような面取り形状を形成する。また、このように別の層にステムピン6を挿通させる開口を備える場合には、その開口のうちの少なくとも二箇所が、ベース材14に対する位置決め用治具18の進入を可能とすべく他の開口より大径とされる構成を採用するのが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、下側押え材16にのみベース材浸出開口16cを設けているが、このようなベース材浸出開口は押え材の少なくとも一方に設けていれば良く、例えば上側押え材15にのみ設けていても良いし、上側押え材15及び下側押え材16の双方に設けていても良い。
【0047】
さらに、本実施形態の変形例として、図24に示すように、ステム5の中央部分に金属製の排気管19を設けた光電子増倍管20を採用しても良い。この排気管19は、光電子増倍管20の組み立て終了後に密封容器8の内部を真空ポンプ(図示しない)等によって排気して真空状態にするために利用することができる。
【0048】
次に、図1〜図3に示した光電子増倍管1を備えた放射線検出装置の例について説明する。図25及び図26に示す例に係る放射線検出装置21では、光電子増倍管1の受光面板3の外側に放射線を光に変換して放出するシンチレータ22が設置され、光電子増倍管1が、処理回路23を下面側に備えた回路基板24上に実装されて構成されている。また、図27及び図28に示す他の例に係る放射線検出装置25では、回路基板24上に処理回路23が設置され、この処理回路23をステムピン6で取り囲むようにして光電子増倍管1が回路基板24上に実装されている。以上のような構成より、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置21,25を得ることができる。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る光電子増倍管28は、図29に示すように、ステム29が、ベース材14と同質の円板状のベース材30と、ベース材30の上側(内側)に接合された上側押え材15とによる2層構造とされている点で、ステム5がベース材14、上側押え材15及び下側押え材16による3層構造とされている第1実施形態に係る光電子増倍管1と異なる。
【0050】
すなわち、光電子増倍管28のステム29には下側押え材16が設けられておらず、ベース材30には、図30に示すように、上半分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ、図31に示すように、下半分がステムピン6の外径よりも大径とされた開口30aがベース材30の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材30の開口30aのうち、アノードピン13が通る開口30aを含む所定の4箇所は、位置決め用治具18の進入を可能とすべく下半分の外径が他の開口30aの下半分の外径よりも大径とされた大径開口30bとされている。さらに、ベース材30の下部中央部分には、ベース材30が溶融により浸出するベース材浸出部としての円形状のベース材浸出凹部30c(図32参照)が形成されている。
【0051】
そして、図29に示すように、これらのベース材30及び上側押え材15は、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口30a,15a及び各大径開口30b,15bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材30の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材30の上面に上側押え材15が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材30の各開口30aの下半分及び上側押え材15の各開口15aを挿通してステム29の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材30を底面とする凹部29aが形成され、各ステムピン6はこの凹部29aの底面においてベース材30に密着して接合されている。
【0052】
また、ステム29は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム29におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0053】
このようなステム29の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図32に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口30aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口30bを進入させて、位置決め用治具18の上にベース材30を載置し、さらに、ベース材30の各開口30a及び大径開口30bに対して各開口15a及び各大径開口15bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口15a及び各大径開口15bにステムピン6を通してベース材30の上に上側押え材15を重ね合わせた後、上側押え材15の略上半分がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材30にリング状側管7を嵌め込み、最後に、上側押え材15から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、上側押え材15の大径開口15bに突起部18bを進入させて、上側押え材15の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム29のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材30との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0054】
次に、セットしたステム29を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図33(a)及び図33(b)に示すように、ベース材30と上側押え材15、ベース材30と各ステムピン6、及びベース材30とリング状側管7とがベース材30の溶融によって融着される。このとき、図33(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口30b,15b内でのベース材30の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材30の余分なボリュームはベース材浸出凹部30c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム29を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム29の製造が完了する。
【0055】
次に、このように得られたステム組のステム29の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム29におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム29の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図29に示すヘッドオン型の光電子増倍管28が得られる。
【0056】
この光電子増倍管28においても、径方向に対して側管2とステム29との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム29におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管28の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム29におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム29の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管28の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0057】
また、光電子増倍管28においても、第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様に、ステム29においてベース材30よりも上側(内側)の部材である上側押え材15が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の縁部が面取り形状15c(図5参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状15cに関し、本実施形態においても、上側押え材15の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、段付円板形状としても良く、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0058】
また、ステム29の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材30を底面とする凹部29aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に沿面距離が長尺化されるため、光電子増倍管28の電圧耐性が高められる。なお、凹部29aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化され、さらには、トリプルジャンクションが凹部29a内に隠蔽されるため、光電子増倍管28の電圧耐性がより高められている。
【0059】
なお、第1実施形態と同様に、位置決め用治具18により各ステムピン6と上側押え材15の各開口15aとの同軸度が確保されるため、トリプルジャンクションを凹部29a内に確実に隠蔽でき、光電子増倍管28の電圧耐性が一層確保される。
【0060】
また、光電子増倍管28では、ステム29が、ベース材29と、ベース材29の上側(内側)に接合された上側押え材15とによる2層構造とされているため、ステム29上面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管28では、ステム29の上面(内側の面)に対して設置される電子増倍部9と光電面4との間の位置精度や電子増倍部9の着座性が高められるため、光電変換効率といった特性が良好に得られる。
【0061】
さらに、ベース材30にはベース材浸出凹部30c(図32参照)が形成されているため、溶融したベース材30の余分なボリュームをベース材浸出凹部30c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材30の溶融の際に、上側押え材15の開口15a及びベース材30の開口30aの下半分を通じてベース材30がステム29の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム29両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0062】
また、光電子増倍管28においても、上述したようにステム29の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材30を底面とする凹部29aとされているため、ベース材30とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0063】
なお、本実施形態の変形例として、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム29の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0064】
また、本実施形態では、ベース材30の下部にベース材浸出部としてのベース材浸出凹部30cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材30又は上側押え材15の少なくとも一方に設けていれば良く、例えば上側押え材15にのみ第1実施形態で説明したのと同様なベース材浸出開口を設けていても良いし、上側押え材15にベース材浸出開口を設け、かつベース材30にベース材浸出凹部30cを設けていても良い。
【0065】
また、図29に示した光電子増倍管28を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0066】
本実施形態のさらに別の変形例として、押え材をベース材の下面(外側の面)に接合して2層構造のステムを構成しても良い。この別の変形例に係る光電子増倍管31では、図34に示すように、ステム32が、ベース材14と同質の円板状のベース材33と、ベース材33の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる2層構造とされている。
【0067】
すなわち、光電子増倍管31のステム32には上側押え材15が設けられておらず、ベース材33には、図36に示すように、下半分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ、図35に示すように、上半分がステムピン6の外径よりも大径とされた開口33aがベース材33の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、ベース材33の開口33aのうち、アノードピン13が通る開口33aを除く所定の3箇所は、位置決め用治具18の進入を可能とすべく上半分の外径が他の開口33aの上半分の外径よりも大径とされた大径開口33bとされている。さらに、ベース材33は、アノードピン13が通る開口33a近傍の上面側の縁部が面取り形状33cとされている。
【0068】
そして、図34に示すように、これらのベース材33、及び下側押え材16は、各開口33a,16a及び各大径開口33b,16bの軸心位置を合わせた状態で重ね合わされ、各開口33a,16a及び大径開口33b,16bにそれぞれステムピン6を挿通させた状態で、ベース材33の溶融によって融着接合されている。より具体的には、ベース材33の下面に下側押え材16が密着して接合されていると共に、各ステムピン6がベース材33の各開口33aの上半分及び下側押え材16の各開口16aを挿通してステム32の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材33を底面とする凹部32aが形成され、各ステムピン6はこの凹部32aの底面においてベース材33に密着して接合されている。
【0069】
また、ステム32は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム32におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0070】
このようなステム32の製造においても、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図37に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で位置決め用治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、位置決め用治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、位置決め用治具18に固定された各ステムピン6を開口16aに通しつつ、位置決め用治具18の突起部18bに大径開口16bを進入させて、位置決め用治具18の上に下側押え材16を載置し、さらに、下側押え材16の各開口16a及び大径開口16bに対して各開口33a及び各大径開口33bの軸心位置を大まかに合わせながら、各開口33a及び各大径開口33bにステムピン6を通して下側押え材16の上にベース材33を重ね合わせた後、ベース材33の上部がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材33にリング状側管7を嵌め込み、最後に、ベース材33から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、ベース材33の大径開口33bに突起部18bを進入させて、ベース材33の上にもう一方(図示上側)の位置決め用治具18を載置する。これによりステム32のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材33との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0071】
次に、セットしたステム29を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図38(a)及び図38(b)に示すように、ベース材33と下側押え材16、ベース材33と各ステムピン6、及びベース材33とリング状側管7とがベース材33の溶融によって融着される。このとき、図38(b)に示すように、位置決め用治具18の突起部18bの端面によって大径開口33b,16b内でのベース材33の高さ方向の位置決めがなされ、溶融したベース材33の余分なボリュームはベース材浸出開口16c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム32を電気炉から取り出し、上下の位置決め用治具18を取り外すとステム32の製造が完了する。
【0072】
次に、このように得られたステム組のステム32の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム32におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム32の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図34に示すヘッドオン型の光電子増倍管31が得られる。
【0073】
この光電子増倍管31においても、径方向に対して側管2とステム32との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム32におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管32の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム32におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム32の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管31の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0074】
また、光電子増倍管31においても、ステム32においてベース材33自体が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の上面側の縁部が第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様の面取り形状33c(図35参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状33cに関し、ベース材33の上面側の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0075】
また、ステム32の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材33を底面とする凹部32aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に凹部32aの高さ分だけ沿面距離が長尺化されるため、沿面放電の発生が抑制され、光電子増倍管31の電圧耐性が高められる。なお、この凹部32aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化されるため、光電子増倍管31の電圧耐性は一層高いものとなる。
【0076】
なお、第1実施形態と同様に、位置決め用治具18により各ステムピン6と下側押え材16の各開口16aとの同軸度が確保されるため、トリプルジャンクションを凹部32a内に確実に隠蔽でき、光電子増倍管31の電圧耐性が一層確保される。
【0077】
また、光電子増倍管31では、ステム32が、ベース材33と、ベース材33の下側(外側)に接合された下側押え材16とによる2層構造とされているため、ステム32下面の位置精度、平坦度、水平度が高められる。その結果、光電子増倍管31では、光電子増倍管31全長の寸法精度、光電子増倍管31を表面実装する際の取付性を高めることができる。
【0078】
さらに、下側押え材16にはベース材浸出開口16c(図6参照)が形成されているため、第1実施形態の場合と同様に、ベース材33の溶融の際に、下側押え材16の開口16a及びベース材33の開口33aの上半分を通じてベース材33がステム32の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム32両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0079】
また、光電子増倍管31においても、上述したようにステム32の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材33を底面とする凹部32aとされているため、ベース材33とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0080】
なお、光電子増倍管31についても、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム32の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0081】
また、この実施形態では、下側押え材16にのみベース材浸出部としてのベース材浸出開口16cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材33及び下側押え材16の少なくとも一方に設けていれば良く、例えばベース材33にのみ前述したのと同様のベース材浸出凹部を設けていても良いし、下側押え材16にベース材浸出開口16cを設け、かつベース材33にベース材浸出凹部を設けていても良い。
【0082】
また、この光電子増倍管31を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0083】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る光電子増倍管34は、図39に示すように、ステム35が、ベース材14と同質の円板状のベース材36による単層構造とされている点で、ステム5がベース材14、上側押え材15及び下側押え材16による3層構造とされている第1実施形態に係る光電子増倍管1と異なる。
【0084】
すなわち、光電子増倍管34のステム35には上側押え材15及び下側押え材16が設けられておらず、ベース材36には、図39〜図41に示すように、中間部分がステムピン6の外径とほぼ同径で、かつ上部及び下部がステムピン6の外径よりも大径とされた開口36aがベース材36の外周部に沿うように複数(15個)形成されている。また、この開口36aのうちアノードピン13が通る開口36aを除く所定の3箇所の上部及び下部と、アノードピン13が通る開口36aの下部とは、位置決め用治具と同様の構成の押え治具18の進入を可能とすべく上部及び下部の外径が他の開口36aの上部及び下部の外径よりも大径とされた大径開口36bとされている。さらに、ベース材36の下部中央部分には、ベース材36が溶融により浸出するベース材浸出部としての円形状のベース材浸出凹部36c(図42参照)が形成されていると共に、アノードピン13が通る開口36a近傍の上面側の縁部が面取り形状36dとされている。
【0085】
そして、図39に示すように、このベース材36は、各開口36aにそれぞれステムピン6を通した状態で、ベース材36の溶融によってステムピン6と融着接合されている。より具体的には、各ステムピン6がベース材36の各開口36aの上部及び下部を挿通してステム35の上側(内側)の面及び下側(外側)の面の両面における各ステムピン6の貫通部の全周囲にベース材36を底面とする凹部35aが形成され、各ステムピン6はこの凹部35aの底面においてベース材36に密着して接合されている。
【0086】
また、ステム35は、リング状側管7の上側の開放端面よりも側管2側に突出するようにしてリング状側管7と接合され、側管2は、このステム35におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分を直接被せた状態で、互いのフランジ部2a,7aの溶接固定によってリング状側管7と接合されている。
【0087】
このようなステム35を製造する場合、第1実施形態に係るステム5と同様の方法を用いることができる。具体的には、まず、図42に示すように、突起部18bを上面に向けた状態で上記位置決め用治具と同様の構成の押え治具18の一方(図示下側)を作業面(図示しない)に載置し、押え治具18の挿入孔18aにそれぞれステムピン6を差し込んで固定し、次に、押え治具18に固定された各ステムピン6を開口36aに通しつつ、押え治具18の突起部18bにベース材36の下面側の大径開口36bを進入させて、押え治具18の上にベース材36を載置した後、ベース材36の上部がリング状側管7の上側の開放端面から突出するようにしてベース材36にリング状側管7を嵌め込み、最後に、ベース材36から突出している各ステムピン6を挿入孔18aに差し込みながら、ベース材36の上面側の大径開口36bに突起部18bを進入させて、ベース材36の上にもう一方(図示上側)の押え治具18を載置する。これによりステム35のセットが完了する。なお、第1実施形態の場合と同様に、セットするリング状側管7と各ステムピン6とには、ベース材36との溶着性を高めるべく予め表面酸化処理を施しておく。
【0088】
次に、セットしたステム35を電気炉に投入し、前述と同様の条件下で焼結処理を行う。この焼結処理により、図43(a)及び図43(b)に示すように、ベース材36と各ステムピン6、及びベース材36とリング状側管7とがベース材36の溶融によって融着される。このとき、図43(b)に示すように、押え治具18の突起部18bの端面によって大径開口36b内でのベース材36の高さ方向の位置決めがなされ、その他の余分なボリュームはベース材浸出凹部36c内に逃がされる。焼結処理が終了した後ステム35を電気炉から取り出し、上下の押え治具18を取り外すとステム35の製造が完了する。
【0089】
次に、このように得られたステム組のステム35の内側(上側)の面に対して積層されたダイノード10、収束電極11、及びアノード12を、ダイノード接続片10a、アノード接続片12a、収束電極11に具備された突出片11aの各々とこれらに対応するステムピン6とを溶接することで固定し、さらに、真空状態において、受光面板3が固定された側管2をステム35におけるリング状側管7の開放端面から突出した部分の側面に当接させつつ、このステム35の突出部分に側管2を被せ、側管2のフランジ部2aとリング状側管7のフランジ部7aとを溶接固定して組み立てることで、図39に示すヘッドオン型の光電子増倍管34が得られる。
【0090】
この光電子増倍管34においても、径方向に対して側管2とステム35との間にリング状側管7が介在せず、側管2は、ステム35におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分を直接被せた状態でリング状側管7と接合されている。これにより、側管2とリング状側管7との重なり合いによる光電子増倍管34の径方向の大径化が抑制され、実装の際の高密度化・高集積化等を実現できる。さらに、側管2とリング状側管7との接合にあたり、第1実施形態と同様に、ステム35におけるリング状側管7の上側の開放端面から突出した部分の側面に沿わせて側管2を当該ステム35の突出部分に被せるだけで側管2とリング状側管7とを容易に位置決めすることができる。この結果、光電子増倍管34の製造工程が簡素化され、製造コストの低減を図ることも可能となる。
【0091】
また、光電子増倍管34においても、ステム35においてベース材36自体が絶縁性を有していると共に、アノードピン13近傍の上面側の縁部が第1実施形態に係る光電子増倍管1と同様の面取り形状36d(図40参照)とされているため、アノードピン13近傍での沿面距離が長尺化されて沿面放電を原因とする絶縁破壊や漏電電流が十分に防止され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止が図られる。なお、面取り形状36dに関し、ベース材36の上面側の縁部の全周にわたって形成しても良く、また、図11〜図23に示した種々の変形を適用することもできる。
【0092】
また、ステム35の上側(内側)の面におけるアノードピン13を含むステムピン6の貫通部の全周囲がベース材36を底面とする凹部35aとされているため、アノードピン13近傍に関する沿面距離がさらに長尺化され、アノードピン13から取り出される電気信号に対するノイズの混入防止がより効果的に図られる。また、アノードピン13を除く他のステムピン6に関しても同様に沿面距離が長尺化されるため、光電子増倍管34の電圧耐性が高められる。なお、凹部35aの形成によりステムピン6,6間での絶縁体に沿う沿面距離も同時に長尺化され、さらには、トリプルジャンクションが凹部35a内に隠蔽されるため、光電子増倍管34の電圧耐性がより高められている。
【0093】
さらに、ベース材36にはベース材浸出凹部36c(図42参照)が形成されているため、溶融したベース材36の余分なボリュームをベース材浸出凹部36c内に良好に逃がすことができる。このため、ベース材36の溶融の際に、開口36aの上部及び下部を通してベース材36がステム35の表面にはみ出すことは殆ど無く、ステム35両面の位置精度、平坦度、水平度が確保されている。
【0094】
また、光電子増倍管34においても、上述したようにステム35の上側(内側)の面及び下側(外側)の面におけるステムピン6の貫通部の全周囲がベース材36を底面とする凹部35aとされているため、ベース材36とステムピン6との接合部分の両側でクラックが発生することが防止され、密封容器8の気密性及び良好な外観が確保される。
【0095】
なお、光電子増倍管34についても、図24に示した光電子増倍管20と同様に、ステム35の中央部分に金属製の排気管19を設けた構造を採用しても良い。
【0096】
また、本実施形態では、ベース材36の下部にベース材浸出部としてのベース材浸出凹部36cを設けているが、このようなベース材浸出部はベース材36の上部に設けていても良い。
【0097】
また、この光電子増倍管34を備えた放射線検出装置を構成する場合、図25〜図26及び図27〜図28に示した放射線検出装置21,25と同様の構成とすることで、上述した作用効果を奏し、特に表面実装する際に好適な放射線検出装置を得ることができる。
【0098】
なお、上述した各実施形態では、側管2がステムにおけるリング状側管7から突出した部分と面取り形状を除いた全周にわたって接触した状態でリング状側管7と接合されているが、側管2とステムとの間には若干の間隙を設けていても良い。すなわち、図44に示すように、周面に例えば3箇所の張出部を設けて各張出部の頂部が側管2の内壁と接触するように設計した上側押え材15Aをステム5に採用しても良く、また、図45に示すように、側管2の内径よりもリング状側管7のフランジ部7aの幅程度小径とした上側押え材15Bをステム5に採用しても良い。この場合、アノードピン13を含むステムピン6と側管2との間の沿面距離を確保することができる。同様の変形はステムの層数に関わらずに適用することもでき、ベース材に対して上述した変形を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電子増倍管を示す平面図である。
【図2】図1に示した光電子増倍管の底面図である。
【図3】図1に示した光電子増倍管のIII-III線断面図である。
【図4】第1実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図5】第1実施形態に係るステムを構成する上側押え材の平面図である。
【図6】第1実施形態に係るステムを構成する下側押え材の平面図である。
【図7】第1実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図8】第1実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図9】図3に示した光電子増倍管におけるトリプルジャンクション及び沿面距離を示したアノードピン近傍の要部拡大図である。
【図10】比較例におけるトリプルジャンクション及び沿面距離を示したアノードピン近傍の要部拡大図である。
【図11】面取り形状の変形例を示した図である。
【図12】面取り形状の別の変形例を示した図である。
【図13】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図14】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図15】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図16】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図17】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図18】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図19】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図20】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図21】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図22】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図23】面取り形状のさらに別の変形例を示した図である。
【図24】変形例に係る光電子増倍管を示した側断面図である。
【図25】放射線検出装置の一例を示す側面図である。
【図26】図25に示した放射線検出装置の要部断面図である。
【図27】放射線検出装置の他の例を示す側面図である。
【図28】図27に示した放射線検出装置の要部断面図である。
【図29】本発明の第2実施形態に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図30】第2実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図31】第2実施形態に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図32】第2実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図33】第2実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図34】第2実施形態の変形例に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図35】第2実施形態の変形例に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図36】第2実施形態の変形例に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図37】第2実施形態の変形例に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図38】第2実施形態の変形例に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図39】第3実施形態に係る光電子増倍管の側断面図である。
【図40】第3実施形態に係るステムを構成するベース部材の平面図である。
【図41】第3実施形態に係るステムを構成するベース部材の底面図である。
【図42】第3実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結前のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図43】第3実施形態に係るステムの製造例を示した図であり、(a)は焼結後のステムの状態を示す側断面図、(b)はその要部拡大図である。
【図44】さらに別の変形例に係るステム及びリング状側管を示した図である。
【図45】さらに別の変形例に係るステム及びリング状側管を示した図である。
【符号の説明】
【0100】
1,20,26,28,31,34…光電子増倍管、2…側管(第1の側管)、3…受光面板、4…光電面、5,29,32,35…ステム、6…ステムピン、7…リング状側管(第2の側管)、8…密封容器、9…電子増倍部、12…アノード(陽極)、13…アノードピン(ステムピン)、14,30,33,36…ベース材、15,15A,15B…上側押え材(押え材)、15c〜15p,33c,36d…面取り形状、16…下側押え材(押え材)、21,25…放射線検出装置、22…シンチレータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記密封容器内に設けられ、前記光電面から放出された電子を増倍する電子増倍部及び当該電子増倍部により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極と、前記密封容器の他側の端部を構成するステムと、前記ステムに挿着されて前記密封容器内から外部に導出すると共に前記陽極及び前記電子増倍部に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、
前記密封容器を構成すると共に、前記陽極及び前記電子増倍部を側方から包囲する導電性の第1の側管と、
前記第1の側管よりも前記ステム側に配置されて前記密封容器を構成すると共に、前記第1の側管の一端部及び前記ステムの側面に接合された導電性の第2の側管と、を備え、
前記ステムは、前記第2の側管から前記第1の側管側に突出するように前記第2の側管と接合され、
前記第1の側管は、前記ステムにおける前記第2の側管から突出した部分を直接被せた状態で前記第2の側管と接合されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記ステムは、前記陽極に電気的に接続されたアノードピンを含むステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材を有し、
前記ベース材における前記アノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされていることを特徴とする請求項1記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記ステムは、前記ベース材と、
前記ベース材の内側の面又は外側の面の何れか一方の面に接合されると共に、前記ベース材に接合された前記ステムピンを通す押え材と、を備える二層構造とされ、
前記押え材が前記ベース材の内側の面に接合される場合には、当該押え材が絶縁性を有すると共に、前記面取り形状が、当該押え材における前記アノードピン近傍の内側の縁部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光電子増倍管。
【請求項4】
前記ステムは、前記ベース材と、
前記ベース材の内側の面及び外側の面の両面に各々接合されると共に、前記ベース材に接合された前記ステムピンを通す押え材と、を少なくとも備える三層以上の構造とされ、
前記ベース材より内側の部材で前記アノードピンを通す部材は、絶縁性を有すると共に、前記面取り形状が、当該ベース材より内側の部材で前記アノードピンを通す部材の前記アノードピン近傍の内側の縁部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光電子増倍管。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置して成る放射線検出装置。
【請求項1】
真空状態とされた密封容器内に設けられ、当該密封容器の一側の端部を構成する受光面板を通して入射した入射光を電子に変換する光電面と、前記密封容器内に設けられ、前記光電面から放出された電子を増倍する電子増倍部及び当該電子増倍部により増倍された電子を出力信号として取り出すための陽極と、前記密封容器の他側の端部を構成するステムと、前記ステムに挿着されて前記密封容器内から外部に導出すると共に前記陽極及び前記電子増倍部に電気的に接続された複数のステムピンと、を具備した光電子増倍管において、
前記密封容器を構成すると共に、前記陽極及び前記電子増倍部を側方から包囲する導電性の第1の側管と、
前記第1の側管よりも前記ステム側に配置されて前記密封容器を構成すると共に、前記第1の側管の一端部及び前記ステムの側面に接合された導電性の第2の側管と、を備え、
前記ステムは、前記第2の側管から前記第1の側管側に突出するように前記第2の側管と接合され、
前記第1の側管は、前記ステムにおける前記第2の側管から突出した部分を直接被せた状態で前記第2の側管と接合されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項2】
前記ステムは、前記陽極に電気的に接続されたアノードピンを含むステムピンを貫通させて接合する絶縁性のベース材を有し、
前記ベース材における前記アノードピン近傍の内側の縁部が、面取り形状とされていることを特徴とする請求項1記載の光電子増倍管。
【請求項3】
前記ステムは、前記ベース材と、
前記ベース材の内側の面又は外側の面の何れか一方の面に接合されると共に、前記ベース材に接合された前記ステムピンを通す押え材と、を備える二層構造とされ、
前記押え材が前記ベース材の内側の面に接合される場合には、当該押え材が絶縁性を有すると共に、前記面取り形状が、当該押え材における前記アノードピン近傍の内側の縁部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光電子増倍管。
【請求項4】
前記ステムは、前記ベース材と、
前記ベース材の内側の面及び外側の面の両面に各々接合されると共に、前記ベース材に接合された前記ステムピンを通す押え材と、を少なくとも備える三層以上の構造とされ、
前記ベース材より内側の部材で前記アノードピンを通す部材は、絶縁性を有すると共に、前記面取り形状が、当該ベース材より内側の部材で前記アノードピンを通す部材の前記アノードピン近傍の内側の縁部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光電子増倍管。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光電子増倍管の前記受光面板の外側に、放射線を光に変換して放出するシンチレータを設置して成る放射線検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2006−127983(P2006−127983A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316502(P2004−316502)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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