説明

光電子部材における使用のための錯体

本発明は、有機電子素子における多核金属又は遷移金属錯体の使用に関するものである。前記錯体は、特に50cm−1〜2000cm−1における、最低三重項状態と、エネルギーがより高く、三重項からの熱的再占有により達成される一重項状態との間の△E間隔が小さい。本発明はまた、該多核金属錯体の、特にOSCにおける強い吸収作用の使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重項−三重項エネルギー分離が小さく、いわゆる三重項ハーベスト効果を示すことを特徴とする二核金属錯体及び多核金属錯体に関する。本発明は、更に、光電子部材におけるこれら錯体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】

エレクトロルミネセント化合物は有機発光ダイオード(OLED)の核心である。これら化合物は、通常、真空昇華又は湿式化学法により施される。湿式化学法では、化合物は通常ポリマー材料に埋め込まれるか、化学的に結合される。このポリマー材料は、通常、好適な電荷担体(電子又は正孔)がポリマー材料中に発生し輸送され、一方、逆帯電した電荷が衝突する際に励起子が形成される性質を有し、励起子はその過剰エネルギーを各エレクトロルミネセント化合物に移す。このエレクトロルミネセント化合物は、その際、特定の電子的励起状態に変換し得、そのとき光の放射により可能な限り完全に基底状態に変換し、無放射失活過程を実質的に回避する。
【0003】
いくつかの例外を除き好適な前駆体励起子からのエネルギー移動によっても形成され得る好適な電子的励起状態は、一重項状態又は三重項状態である。スピン統計のため、2つの状態は通常1:3の比率で占められ、一重項状態から発光時に発生する励起子の最大25%のみ(蛍光として知られている)が再び発光をもたらす。一方、三重項発光の場合にはすべての励起子(りん光として知られている)が利用され得、変換して光として放射される(三重項ハーベスト)。これは、同時に励起されてエネルギー的に三重項状態を超えている一重項状態が、三重項状態に完全に緩和し(項間交差)、無放射競争過程が重要でないままである場合には、量子収量が100%を達成し得ることを意味する。したがって、三重項エミッタは、通常、より効率的な電子発光団であり、有機発光ダイオードにおける高い光収率においてより好適である。
【0004】
しかしながら、OLEDにおいて今まで知られているりん光三重項エミッタは、マイクロ秒領域において発光寿命が比較的長いという不利な点を有している。これは不利益、すなわち、大部分の、又はすべてのエミッタ分子が占有による電流密度の増加を伴う飽和効果を示すことにつながる。したがって、更なる電荷担体電流はもはや励起状態及び発光状態の占有をもたらすことができない。その後、所望されない抵抗損のみが生じる。結果として、OLED素子の効率における大幅な低下(いわゆる「ロールオフ」作用)が、電流密度の増加と共に生じる。同様に不利な態様において、三重項−三重項消滅及び自己失活の結果が現れる(非特許文献1を参照)。エミッタ分子の発光寿命における有意な減少は、効率低下のこれらプロセスを弱めることができる。
【0005】
驚くべきことに、発光寿命の驚異的な短縮をもたらす効果を利用するが、それでも三重項ハーベストにより促進される高効率は充分に達成することが可能である。これは「一重項ハーベスト」プロセスであり、ここで初めて提案される。これを図1を用いて説明する。T状態はすでに公知の三重項ハーベストの効果(非特許文献2)により占有され、通常のT→Sりん光が生じるが、発光寿命が長く好ましくない。興味深いことに、本発明に係る使用を提案される錯体化合物は一重項Sと三重項T間のエネルギー分離△Eが非常に小さい。この場合において、初期に非常に効率的に占有されたT状態からS状態への非常に効率的な熱的再占有が室温で発生し得る。このプロセスは方程式(1)によるボルツマン分布により調整される。強度比は式(1)により規定される。
【0006】
Int(S1→S0)/Int(T1→S0)=k(S1)/k(T1)exp(-△E/kBT) (1)
式中、kはボルツマン定数を表し、Tは絶対温度を表す。k(S)/k(T)は、一重項Sから電子基底状態Sへの転移過程と三重項Tから電子基底状態Sへの転移過程の割合比率である。本発明による使用が提案される錯体においては、この比率が10以上のオーダーである。
【0007】
記載された熱的再占有プロセスは、寿命の短いS状態からの高速放射チャネルを開き、全寿命を有意に短縮する。この短縮が顕著になるほど、エネルギー差△Eは小さくなる。これは数値例を参照して説明することができる。典型的なエネルギー差である△E=500cm−1において、約40の強度比は、室温適用(T=300K)、k=200cm−1、割合比率0.5×10cm−1における方程式(1)により得られる。この典型例において、これは一重項発光は三重項発光より40倍以上強いことを意味する。このように一重項ハーベストは存在する。
【0008】
興味深いことに、本発明において使用される化合物はエネルギー差△Eが非常に小さい。一重項ハーベスト効果の結果として、発光寿命は非常に減少し、約またはちょうど100ns以下の値が達成される。上記の例において、達成される寿命(一重項発光が2nmと仮定)は約25nmだけである。
【0009】
本発明による錯体は、50cm−1〜3000cm−1、好ましくは50cm−1〜2000cm−1、より好ましくは50cm−1〜1000cm−1、特に好ましくは50cm−1〜500cm−1の△Eを示す。
【0010】
OLEDは先行技術による方法により製造される(非特許文献1を参照)。
他の重要な目的は、太陽エネルギーの電気エネルギーへの効率的な変換である。素子構造における関連要件の多くが、OLEDの構築における要件と同様である。したがって、OLEDにおける正孔(アノードに由来)及び電子(カソードに由来)、金属錯体における再結合及び発光に注意を払う必要がある。反対に、有機太陽電池(OSC)又は有機光電池(OPV)においては、太陽光により励起される金属錯体から出発し、光の再発光は生じないが、替わりに正孔及び電子が形成され、アノード又はカソードに移動することを確実にしなければならない。有機太陽電池における光電流の発生に至るプロセス(複数の「本質的」工程から構成される)において、入射光線の光子は吸収層における色素分子によりすばやく吸収される。このように色素分子は電子的に励起される。分子は基底状態よりも励起状態(励起子)において異なるレドックス特性を有するため、帯電分離は、吸収層のHOMO/LUMOレベルに対する好適に選択された正孔導体層及び電子導体層のHOMO及びLUMOレベルの場合における吸収層内又は境界層のひとつにおいて生じる。これに伴う電子及び正孔は電極の方向において各電子導体層及び正孔導体層を移動し、電極において電解が生ずる原因となる。この機能原則は素子において使用される物質の必要条件を生じさせる。すなわち、
i)可視スペクトル領域全体から近赤外領域までにおける色素の高吸収
ii)本目的において提供される層における比較的良好な正孔伝道率及び電子伝導率
iii)吸収層における良好な励起子輸送
iv)正孔−電子再結合を抑制するための吸収層又は境界層の一つにおける電荷担体の効果的且つ高速の励起子分離及び除去
効率的なOSC製品における先行技術に記載されている問題は本質的に以下の2つの理由から生じている。すなわち、
i)可視スペクトル領域から近赤外スペクトル領域までの高い光吸収を有する物質の欠如、及び
ii)光吸収層の内部から、例えば、励起子の分離が生じる界面への移動を確実にする長い励起子拡散距離を有する物質の欠如。
【0011】
所定の波長λにおける物質の光吸収強度はLambert-Beerの法則により規定される。
【数1】

【0012】
式中、Iは透過光線の強度を表し、Iは入射光線の強度を表し、cは吸収物質の濃度を表し、dは物質における光の路程を表し、ε(λ)はモル吸収係数を表す。
【0013】
入射光の99%が吸収されると仮定し(すなわち、I/I=0.01又は−log(I/I)=2)、反射を無視すると、c=5mol/l(本発明に係る金属錯体の典型的な濃度)、d=100nm(OSCにおける光吸収層の厚さ)における必要なモル吸収係数は少なくとも10lmol−1cm−1〜10lmol−1cm−1と見積もられる。
【0014】
しかしながら、OSC材料として今日まで使用されている遷移金属錯体のε(λ)値は、典型的には10lmol−1cm−1〜10lmol−1cm−1(可視領域における最大吸収バンドにおける測定値)だけである。
【0015】
OSC及びOPV素子は先行技術(例えば、非特許文献3)に準拠した方法により製造される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】H.Yersin, Editor“Highly Efficient OLEDs with Phosphorescent Materials”Wiley-VCH, Weinheim 2008
【非特許文献2】H. Yersin, Top. Curr. Chem. 2004, 241, 1
【非特許文献3】K. Walzer, B. Maennig, M. Pfeiffer, K. Leo, Chem. Rev. 2007, 107, 1233
【非特許文献4】D. R. Striplin, G. A. Crosby, J. Phys. Chem. 1995, 7977
【非特許文献5】V. M. Miskowski et al. J. Am Chem. Soc. 1978, 100, 485
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一重項ハーベスト効果を示す図。
【発明の概要】
【0018】
発明の詳細な説明
したがって、本発明は、物質、特にOLEDに用いられる発光物質又はOSCに用いられる吸収色素であって、先行技術における問題点を解決することができ、または、特に発光寿命が短いエミッタを有するOLED及び高吸収のOSCを製造することができる物質を提供することを目的とする。
【0019】
この目的は、三重項からの熱的再占有により占められている、最低三重項状態と最高一重項状態の間の△E分離が小さい単核金属錯体又は多核金属錯体、特に遷移金属錯体を含有する有機電子素子の提供により達成される。ここで小さな△E分離は、50cm−1〜3000cm−1、好ましくは50cm−1〜2000cm−1、より好ましくは50cm−1〜1000cm−1、特に好ましくは50cm−1〜500cm−1の間の分離を意味する。
【0020】
本発明は、更に、三重項からの熱的再占有により占められている、最低三重項状態と最高一重項状態の間の△E分離が小さい単核金属錯体又は多核金属錯体、特に遷移金属錯体の有機電子素子における使用に関する。ここで小さな△E分離は、50cm−1〜3000cm−1、好ましくは50cm−1〜2000cm−1、より好ましくは50cm−1〜1000cm−1、特に好ましくは50cm−1〜500cm−1の間の分離を意味する。
【0021】
所定の錯体において、エネルギー分離△Eは、上掲の方程式(1)を用いて簡単に決定することができる。再整理したものが下式により表される。
【0022】
In{Int(S1→S0)/Int(T1→S0)}=In{k(S1)/k(T1)}-(△E/kB) (1/T) (1a)
商業的に入手可能ないずれの分光光度計も測定に使用することができる。種々の温度において測定された絶対温度Tの逆数に対する強度比In{Int(S1→S0)/Int(T1→S0)}(の対数)のグラフ点は通常直線となる。測定は、室温から−78℃の温度範囲において実施され、温度は低温保持装置により設定される。強度は(修正)スペクトルから決定され、Int(S1→S0)及びInt(T1→S0)は、各々、積分された蛍光またはりん光帯強度を表し、分光光度計に付属しているソフトウエアを用いて決定される。三重項帯は一重項帯よりもエネルギーが低く、温度が低下するにつれ強度が増加するため、強度は容易に同定することができる。測定は、対応する分子の無酸素希釈液(約10−5moll−1)中、又は薄膜(厚さ約50nm)上において行われる。使用されるサンプルが溶液の場合には、例えば、2−メチル−THF、THF又は脂肪族炭化水素等の低温においてガラスを形成する溶剤又は溶剤混合物を使用することができる。使用されるサンプルが膜の場合には、例えばPMMAのように、有意に大きな三重項エネルギーを有するマトリクスが適している。この膜は溶液から適用され得る。直線の傾きは、-△E/kBである。k=1.380 10−23JK−1=0.695cm−1−1においてエネルギー分離が直接決定され得る。
【0023】
ここで有機電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネセント素子、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEEC)、OLEDセンサー(特に、ガス及び蒸気センサーであり、密閉されていて外から見分けられない)、有機太陽電池(OSC)、有機光電池(OPV)、有機電界効果トランジスタ又は有機レーザーからなる群から選択される。
【0024】
本発明において使用される化合物は、単核又は多核金属錯体である。多核錯体の使用が選択される。多核(好ましくは複核又は、例えば三核)金属錯体は、M−M又はM−M’又はM−M−M又はM−M’ −M”( M、M’、 M”は金属イオン中心である)相互作用を有する。これは、上述した所望される特性を有する電子状態をもたらす。すなわち、これら錯体はエネルギー差△Eが小さいために一重項ハーベストを促進し、強い吸収を示す。さらに興味深いことに、金属間の電子的相互作用は比較的高いHOMO(最高被占分子軌道(特許文献1))と比較的低いLUMO(最低空分子軌道(特許文献1))を生じさせる。これはOLED適用のエミッタにおいて直接励起子を形成するのに特に有利であり(特許文献2)、また、OSCにおける吸収材として好ましい特性である。
【0025】
複核及び多核遷移金属錯体
多くの複核及び多核遷移金属錯体が、小さな金属(M)−金属(M)分離及び有意なM−M相互作用により本発明の要件に対応する。これら相互作用により、一重項ハーベスト効果及び高い発光量子収量に基づく強い光電子放出と短い発光寿命をもたらし得る電子状態が生じる。
【0026】
そのような錯体に特に好適なものは、d電子配置 [Rh(I), Ir(I), Pd(II), Pt(II) 及びAu(III)] 及びd10電子配置 [Au(I)]を有する金属である。d金属中心は平面四角形配位の傾向にあるが、Au(I)原子は殆どが線型配位である。d系において、結合軸は、第1遷移金属のd被占軌道と第2遷移金属のd被占軌道の重複から、同様にM−M結合軸に沿ってp空軌道の重複により生じる。多核遷移金属錯体におけるこの種の金属−金属結合は通常安定であり、もしくは特定の配位子系によってのみ製造可能である。複核錯体において、架橋が短い二座配位子系が本質的に使用される。今日まで使用されている従来のエミッタ錯体とは対照的に、ここでは低位電子状態を有する配位子は必ずしも必要ではない。多くの場合(特に青色発光の発生)において、配位子の電子状態が非常に高く、そのために金属―金属相互作用から生じる低位状態と相互作用しないことが有利な場合さえある。架橋配位子は中性、あるいは1価又は2価の負電荷のいずれでもよい。
【0027】
A.配位子L1〜L9
これに関連して、配位子Lは、架橋作用を有さず、そのために二量化に直接的な影響を及ぼすものではない配位子を意味する。配位子は構造形成ではないが、金属における電子密度を増加させることにより、又は減少させることにより、M−M分離に対する主要な影響を有し得る。配位子は、金属の配位圏の飽和、又は電荷補償、又はその双方において重要である。したがって、これら配位子Lは、中性又は陰イオン性である。更に、配位子Lは、単座又は二座であり得る。配位子Lは、以下においてL1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8及びL9により示される。これらの配位子Lは、多座配位子、架橋配位子のように、低位状態を有する必要はなく、また青色発光の発生の場合には、低位状態を有してはいけない。
【0028】
好適な中性の単座配位子Lが、一酸化炭素、一酸化窒素、ニトリル(RCN)、イソニトリル(RNC)(例えば、tert−ブチルイソニトリル、シクロヘキシルイソニトリル、アダマンチルイソニトリル、フェニルイソニトリル、メシチルイソニトリル、2,6−ジメチルフェニルイソニトリル、2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイソニトリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイソニトリル等)、エーテル(ROR')(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等)、硫化物(RSR’)、セレン化物(RSeR’)、アミン(NR)(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン等)、イミン(RN=CR’)、ホスフィン(例えば、トリフルオロホスフィン、トリメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン等)、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル等)、アルシン(例えば、トリフルオロアルシン、トリメチルアルシン、トリシクロヘキシルアルシン、トリ−tert−ブチルアルシン、トリフェニルアルシニン(triphenylarsinine)、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルシン等)、スチビン(例えば、トリフルオロスチビン)、トリメチルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、トリ−tert−ブチルスチビン、トリフェニルスチビン、トリス(ペンタフルオロフェニル)スチビン等)、及び窒素含有複素環(例えば、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン等)から選択される。ここで、R及びR’は、各々独立に、水素原子、又は、ハロゲン、又は、酸素を介して結合する置換基(−OR”)、窒素を介して結合する置換基(−NR”)、又は珪素を介して結合する置換基(−SiR”)(ここで、R”はRと同義である)、及び、アルキル、アリール、ヘテロアリール及びアルケニル基、又はハロゲン、低級アルキル基等の置換基を有する置換アルキル、アリール、ヘテロアリール及びアルケニル基、及び更に一般的に知られたドナー及びアクセプター基であり得る。R、R’及びR”は、縮合環類を形成していてもよい。
【0029】
好適な1価アニオンの単座配位子Lは、水素化物、重水素化物、F、Cl、Br及びIのハロゲン化物、アジド、アルキルアセチリド(例えば、メチル−C≡C、tert−ブチル−C≡C等)、アリール又はヘテロアリールアセチリド(例えば、フェニル−C≡C等)、アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル等)、アリール(例えば、フェニル、ナフチル等)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル等)、水酸化物、シアン化物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、脂肪族又は芳香族アルコラート(例えば、メタノラート、エタノラート、プロパノラート、イソプロパノラート、tert−ブチラート、フェノラート等)、脂肪族又は芳香族チオアルコラート(例えば、メタンチオラート、エタンチオラート、プロパンチオラート、イソプロパンチオラート、tert−ブチルチオラート、チオフェノラート等)、アミド(例えば、ジメチルアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、モルホリド(morpholide)等)、カルボキシレート(例えば、アセテート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、ベンゾエート等)、アニオン性の窒素含有複素環(例えば、ピロライド、イミダゾライド、ピラゾライド等)、脂肪族又は芳香族リン化物PR、または、脂肪族又は芳香族セレン化物SeRから選択される。これらの基におけるアルキル基は、好ましくはC〜C20アルキル基であり、より好ましくはC〜C10アルキル基であり、更に好ましくはC〜Cアルキル基である。アリール基にはヘテロアリール基も含まれる。これらの基は上記の通りである。
【0030】
好適な2価又は3価アニオン性配位子Lは、O−2、S−2、ナイトレンであり、R−N=M構造の配位をもたらす。ここで、Rは通常置換基、又はN3−を表す。
【0031】
好適な中性、あるいは1価又は2価アニオンの二座配位子は、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、N,N,N’, N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、)N,N,N’, N’−テトラメチルプロピレンジアミン、シス又はトランス−ジアミノシクロヘキサン、シス又はトランス−N,N,N’, N’−テトラメチルジアミノシクロヘキサン等)、イミン(例えば、2−[1−(フェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2,6−ジイソ−プロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(メチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(エチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(イソ−プロピルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(tert−ブチルイミノ)エチル]ピリジン等)、ジイミン(例えば、1,2−ビス(メチルイミノ)エタン、1,2−ビス(エチルイミノ)エタン、1,2−ビス(イソ−プロピルイミノ)エタン、1,2−ビス(tert−ブチルイミノ)エタン、2,3−ビス(メチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(エチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(イソ−プロピルイミノ)ブタン、2,3−ビス(tert−ブチルイミノ)ブタン、1,2−ビス(フェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2−メチルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エタン、2,3−ビス(フェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2−メチルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジ−イソ−プロピルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)ブタン等)、2個の窒素原子を含有する複素環(例えば、2,2’−ビピリジン、o−フェナントロリン等)、ジホスフィン(例えば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ビス(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、ビス(ジエチルホスフィノ)メタン、ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)メタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ブタン等)、1,3−ジケトンから誘導された1,3−ジケトナート(例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタン等)、3−ケトエステルから誘導された3−ケトナート(例えば、アセト酢酸エチル等)、アミノカルボン酸から誘導されたカルボキシレート(例えば、ピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸、グリシン、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、N,N−ジメチルアミノアラニン、サリチルイミンから誘導されたサリチルイミナート(例えば、メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、フェニルサリチルイミン等)、2価アルコールから誘導された2価アルコラート(例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール等)、及び、ジチオールから誘導されたジチオラート(例えば、1,2−エチレンジチオール、1,3−プロピレンジチオール等)から選択される。
【0032】
更に、1価アニオンの二座配位子であって、金属と共に、少なくとも1つの金属−炭素結合を有するシクロメタル化された5又は6員環、特にシクロメタル化された5員環に関する選択がなされる。特にこれらは、有機エレクトロルミネセント素子におけるりん光金属錯体の分野において通常使用される配位子であり、すなわち、フェニルピリジン、ナフチルピリジン、フェニルキノリン、フェニルイソキノリン等の種類の配位子であり、各々は置換されていてもよいし置換されていなくてもよい。
【0033】
そのような配位子として非常に多くの配位子がりん光エレクトロルミネセント素子の分野における当業者に知られており、当業者であれば、二核又は多核金属錯体における配位子Lとしてこの種の更なる配位子を容易に選択することができる。下式により表される2つの基の組み合わせは、本発明の目的において通常は特に好適である。その場合の配位子Lは、場合ごとに、♯により示される位置において互いに結合することにより、これらの基から形成することができる。これらの基が金属と配位結合する位置は、*により示される。
【化1】

【化2】

【0034】
式中、Rは上記と同様の意味を有し、Xは出現するたびに同一でも異なっていてもよく、CR又はNを表す。但し、各基において、最大で3つの符号XがNを表す。好ましくは、各基において最大で2つの符号XがNを表し、より好ましくは、各基において最大で1つの符号XがNを表し、特に好ましくは、すべての符号XがCRを表す。
【0035】
B.複核金属錯体
B.1 架橋配位子
以下において、架橋配位子はD∩Dにより示される。ここで、「∩」は架橋を表す。Dは、金属原子に結合する原子又は原子団である。二つのドナー基Dは同一でも異なっていてもよい。これはまた、D∩D’型の非対称配位子を生じさせてもよい。負電荷は種々の態様により導入され得る。すなわち、結合原子又は結合原子団が帯電し、あるいは架橋「∩」が帯電する。しかしながら、D∩Dは中性であってもよい。架橋はドナー基Dを有する原子又は原子団である。例えば、架橋を可能とするような態様、すなわち、2つのD基が同じ方向を示すように配向され、あるいは配向され得るような態様においてD基で官能化されたアルキル基又はアリール基は、本発明の目的に好適である。換言すれば、架橋は、ドナー基Dの自由電子対の高い平行配向を可能としなければならない。
【化3】

【0036】
中性の架橋配位子:
ここで、ドナー基Dは、RN−、RP−、RAs−、RN−、CN−、NC−、RO−、RS−、RSe−、RN=(「−」又は「=」は、D基が架橋に結合する場合の結合態様を示す。)であり得る。
【0037】
以下の配位子系が検討され、短い架橋「∩」を有することが好ましい。すなわち、RE−CR−ER;RE−CR−CR−ER;RE−NR−ER:RE−O−ERである。ここで、Eは出現ごとに同一でも異なっていてもよく、N、P又はAsを表す。ジニトリル及びジイソニトリルNC∩CN及びCN∩NC、2価アルコールHO∩OH、ジエーテルRO∩OR、ジチオールHS∩SH、ジチオエーテルRS∩SR、ジセレナイドHSe∩SeH及びRSe∩SeR、もしくはドナー基の組み合わせ(D∩D')を同様に使用し得る。
【0038】
架橋は、例えば、ドナー基Dで官能化されている∩=(CR(n=1〜6)又は芳香族系である。ここで、好ましい架橋長さは、配位原子がP又はAsである場合はn=1であり、他の配位原子の場合はn=2又は3である。
【0039】
D∩Dの例:
【化4】

【0040】
式中、Eは上述した意味を有し、R、R’及びR”は所望される置換基を表し、好ましくはアルキル、アリール又はヘテロアリール基を表す。
【0041】
アニオン性の架橋配位子:
ここで、1つ又は2つのドナー基Dは負に帯電し、あるいは架橋「∩」が電荷を有する。頻繁に使用されるアニオン性ドナー基は、O−、S−、Se−、NR−、CH−、CH=、C≡C−である。2つのドナー基は、同一でもよいし(D∩D)、異なっていてもよい(D∩D’)。
【0042】
例:
pop=[P2−
【化5】

【0043】
B2.金属錯体
金属錯体は、一般的な形態I−VIIIを有する。
【化6】

【0044】
M及びM’は、Rh(I)、Ir(I) 、Pd(II) 、Pt(II)又はAu(III)であり得る。2つの金属は同一でもよいし(M=M’)、異なっていてもよい(M≠M’)。好ましくは、2つの金属は同一である。架橋配位子D∩Dは、同一でもよいし、2以上の異なる架橋配位子が錯体中に存在していてもよい。配位子L1〜L6は、同様に、互いに同一でもよいし異なっていてもよい。金属中心及び配位子の選択により、錯体は中性であったり、あるいは正又は負に帯電し得る(n=−4、−3、−2、−1、0、1、2、3、4、5、6)。電荷n=0の錯体が好ましく選択される。
【0045】
本発明の好ましい態様において、M=M’=Au(I)の錯体が除かれる。本発明の特に好ましい態様において、M及びM’はAuではない。
【0046】
本発明において、下記M−M結合が可能である。
【化7】

【0047】
対応する有利な光物理的性質を有する文献に記載のいくつかの複核錯体は、本発明を説明することが意図される(上掲の非特許文献4、5)。
【0048】
[Au(I)Ir(I)Cl(CO)(μ−dppm)2]PF6 (dppm=Ph2PCH2PPh2)
[Au(I)Rh(I)(t-BuNC)2(μ−dppm)2]PF6
[Pt(II)(CN)2Rh(I)(t−BuNC)2(μ−dppm)2]PF6
[Au(I)Pt(II)(CN)2(μ−dppm)2]PF6
Pt(II)2(CN)4(μ−dppm)2
K4[Pt(II)2pop4] (pop=[P2O5H2]2-)
[Ir(I)Cl(CO)(μ−dppm)]2
[Rh(I)2(t−BuNC)4(μ−dppm)2][PF6]2
[Rh(I)2(bridge)2][BPh4]2 (bridge=1,3−ジイソシアノプロパン)
上記錯体は、本発明の様々な態様に係る本質となり得、光電子部材において前記錯体が使用される場合には特にそうである。
【0049】
C.三核金属錯体
C.1 配位子
金属中心に接続するために狭く配列された三座配位子がここで使用される。
配位子D∩D∩Dは、3つのドナー基Dを有する。ここでDは、B.1に記載したのと同様に、金属原子に結合する原子又は原子団であって、2つの架橋「∩」により接続された原子又は原子団を表す。また、結合原子又は結合原子団が帯電し、あるいは1つ又は2つの架橋「∩」が帯電する。配位子は中性であってもよい。架橋はB.1に記載したのと同様に規定される。配位子D∩D∩Dにおいて、架橋「∩」は同一でも異なっていてもよく、ドナー基Dは、同様に、同一でも異なっていてもよい(組み合わせ:D∩D∩D’、 D∩D’∩D、D∩D’∩D”、)。
【0050】
例:
【化8】

【0051】
C.2 錯体
金属錯体は、一般式(IX)から(XV)により表される。
【化9】

【化10】

【0052】
M、M’及びM”は、Rh(I)、Ir(I) 、Pd(II) 、Pt(II)又はAu(III)であり得る。金属は同一でもよいし(M=M’=M”)、異なっていてもよい(M≠M’≠M”; M=M’ ≠M” )。配位子L1〜L9は、A.に記載したのと同様に規定され、互いに同一でも異なっていてもよい。錯体は中性でもよいし、あるいはカチオン性又はアニオン性でもよい(n=−3、−2、−1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9)。電荷n=0の錯体が好ましく選択される。
【0053】
金属錯体は、好ましくは、有機エレクトロルミネセント素子の発光層において使用され、該層における錯体濃度は、好ましくは0.1〜50体積%であり、より好ましくは1〜30体積%であり、特に好ましくは2〜20体積%である。
【0054】
また、金属錯体は、好ましくは、有機太陽電池における吸収層において使用され、該層における錯体の割合は、好ましくは30〜100体積%である。「エネルギー的に高エネルギー状態」という用語は、特に、最低三重項状態が25000cm−1を超える配位子に関するものである。三重項状態のエネルギーは、りん光スペクトルの放出端(最も高いエネルギー)から実験的に生ずる。
【0055】
本発明を、図1を参照してより詳細に説明する。図1は一重項ハーベスト効果を示す。エレクトロルミネセンスプロセスにおいて、一重項状態Sは一重項経路を介して占められ(25%)、三重項状態Tは三重項経路を介して占められている(75%)。項間交差(ISC)の急速なプロセスの後、一重項励起も三重項状態Tに急速に緩和、すなわち、すべての励起エネルギーが三重項状態Tに集められる(三重項ハーベスト)(非特許文献1)。本発明に用いられる金属錯体の場合、状態Tと状態Sとの間のエネルギー差が小さく、状態SがkT(熱平衡)に従い極めて効率的に再び熱的に占められる。結果として、発光の極めて短い減衰期間がもたらされる。
【0056】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。当業者であれば、開示された全範囲にわたり本発明を容易に実施することができ、故に本発明に係る更なる有機エレクトロルミネセント素子を製造することができる。
【実施例】
【0057】
一重項ハーベストが生じる小さな一重項−三重項分離を有する複核金属錯体の例を以下に示す。
例1:[Rh2(bridge)4] (BPh4)2 (式中、bridge=1,3−ジイソシアノプロパン)
V.M.Miskowski, G.L.Nobinger, D.S.Kliger, G.S.Hammond, N.S.Lewis, K.R.Mann, H.B.Gray, J.Am.Chem.Soc. 1978, 100, 485を参照。
【0058】
例2:[Rh(CO)(Cl)(dam)]2 (式中、dam=ビス(ジフェニルアルシノ)メタン)
M.I.S.Kenney, J.W.Kenney III, G.A.Crosby, Orgaometalics 1986, 5, 230を参照。
【0059】
例3:[Rh2(CO)(Cl)(dam)2](BPh4) (式中、dam=ビス(ジフェニルアルシノ)メタン)
M.I.S.Kenney, J.W.Kenney III, G.A.Crosby, Inorg.Chem. 1986, 25, 1506を参照。
【0060】
例4:[Rh2(dimen)4](PF6)2 (式中、dimen=1,8−ジイソシアノメタン)
V.M.Miskowski, S.F.Rice, H.B.Gray, R.F.Dallinger, S.J.Milder, M.G.Hill, C.L.Exstrom, K.R.Mann, Inorg.Chem. 1994, 33, 2799を参照。
【0061】
例5:有機エレクトロルミネセント素子の製造及び特徴づけ
以下に概説する一般的方法によりLEDを製造する。これは勿論、個々の場合における個別の条件(例えば、最適な効率及びカラーを達成するための層厚さの多様性)に適合されなければならない。
【0062】
OLEDの一般的な製造方法:
該素子の製造は、ポリマー発光ダイオード(PLED)の製造に基づき、既に文献において何度も記載されている(例えば、WO04/037887)。本実施例では、本発明の化合物が、示されたマトリクス材料又はマトリクス材料の組み合わせと共にトルエン又はクロロベンゼンに溶解されている。そのような溶液の典型的な固形分含有率は、10〜25g/lであり、素子において典型的な80nmの層厚みが、スピンコーティングにより達成され得る。
【0063】
使用したエミッタ材料及びマトリクス材料は以下の化合物である。
【化11】

【化12】

【0064】
下記構造を有するOLEDが上述した一般的な方法と同様の方法で製造される。
PEDOT: 20nm(水からスピンコーティング、BAYER AG
から購入したPEDOT;ポリ[3,4−エチレンジオキシ−
2,5−チオフェン]
マトリクス+エミッタ:
80nm、エミッタ濃度 5質量%
(トルエン又はクロロベンゼンからスピンコーティング)
Ba/Ag: カソードとして、10nmのBa/150nmのAg
構造化されたITO基材と、いわゆる緩衝層用の材料(PEDOT、実際にはPEDOT:PSS)は商業的に入手することができる(Technoprint及びその他からITO、H.C.Starckから水分散液Clevios Baytron PとしてPEDOT:PASS)。不活性ガス雰囲気(本実施例ではアルゴン)中でスピンコーティングにより発光層を施し、120℃において10分加熱して乾燥する。最後に、真空蒸着によりバリウムと銀を含有するカソードを施した。溶液から製造された素子が標準方法により特徴づけられる。記載されたOLEDの例はまだ最適化されていない。
【0065】
表1に500cd/cmにおける効率および電圧とカラーを示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50cm−1〜3000cm−1における最低三重項状態と、該三重項状態より高い一重項状態との間の△E分離を有する金属錯体を含有する有機電子素子。
【請求項2】
△E分離が50cm−1〜2000cm−1、好ましくは50cm−1〜1000cm−1、特に好ましくは50cm−1〜500cm−1の間であることを特徴とする請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項3】
有機エレクトロルミネセント素子(OLED)、発光電気化学セル(LEEC)、OLEDセンサー(特に、ガス及び蒸気センサーであり、密閉されていて外から見分けられない)、有機太陽電池(OSC)、有機電界効果トランジスタ又は有機レーザーからなる群から選択される請求項1又は2に記載の有機電子素子。
【請求項4】
金属錯体が単核又は多核金属錯体であり、好ましくは多核錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機電子素子。
【請求項5】
金属錯体において、d電子配置を有する金属、特にRh(I)、Ir(I)、Pd(II)、Pt(II) 及びAu(III)と、d10電子配置を有する金属、特にAu(I)が使用されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電子素子。
【請求項6】
金属錯体が一般的な形態I〜XVを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機電子素子。
【化1】

【化2】

【化3】

式中、
M、M’は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、Rh(I)、Ir(I)、Pd(II)、Pt(II)又はAu(III)であり、
D∩Dは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、ドナー原子を含む二座配位子であり、
D∩D∩は、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、ドナー原子を含む三座配位子であり、
〜Lは、出現する毎に同一でも異なっていてもよく、単座配位子であり、
nは、錯体の電荷であり、−4、−3、2、−1、0、1、2、3、4、5、6であり、好ましくは0である。
【請求項7】
構造I〜VIIIにおけるM−M’が下記から選択されることを特徴とする請求項6に記載の有機電子素子。
【化4】

【請求項8】
金属錯体の架橋しない配位子、特に配位子L〜Lが、一酸化炭素、一酸化窒素、ニトリル、イソニトリル、エーテル、硫化物、セレン化物、アミン、イミン、ホスフィン、亜リン酸塩、アルシン、スチビン、窒素含有複素環、水素化物、重水素化物、F、Cl、Br、I、アジド、アルキルアセチリド、アリール又はヘテロアリールアセチリド、アルキル、アリール、ヘテロアリール、水酸化物、シアン化物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、脂肪族又は芳香族アルコラート、脂肪族又は芳香族チオアルコラート、アミド、カルボキシレート、アニオン性の窒素含有複素環、脂肪族又は芳香族リン化物PR、脂肪族又は芳香族セレン化物SeR、O−2、S−2、ナイトレン、ジアミン、ジイミン、2個の窒素原子を含有する複素環、ジホスフィン、1,3−ジケトンから誘導された1,3−ジケトナート、3−ケトエステルから誘導された3−ケトナート、アミノカルボン酸から誘導されたカルボキシレート、サリチルイミンから誘導されたサリチルイミナート、2価アルコラート、ジチオールから誘導されたジチオラート、及び、金属と共に、少なくとも1つの金属−炭素結合を有するシクロメタル化された5又は6員環を形成する配位子からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機電子素子。
【請求項9】
ドナー基Dが、RN−、RP−、RAs−、RN−、CN−、NC−、RO−、RS−、RSe−、RN=、O−、S−、Se−、NR−、CH−、CH=、又は、C≡C−から選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機電子素子。ここで、「−」又は「=」は、D基から架橋への結合を示し、Rは置換基である。
【請求項10】
配位子D∩Dが、RE−CR−ER;RE−CR−CR−ER;RE−NR−ER:RE−O−ER(ここで、Eは出現ごとに同一でも異なっていてもよく、N、P又はAsを表す。)、ジニトリルNC∩CN、ジイソニトリルCN∩NC、2価アルコールHO∩OH、ジエーテルRO∩OR、ジチオールHS∩SH、ジチオエーテルRS∩SR、ジセレナイドHSe∩SeH、RSe∩SeR、もしくはドナー基の組み合わせからなる群から選択され、ここで架橋∩は、好ましくは、(CR(n=1〜6)又は芳香族系であり、Rが置換基を表すことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機電子素子。
【請求項11】
金属錯体が発光層において使用され、該金属錯体の発光層における含有率が好ましくは0.1〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセント素子。
【請求項12】
金属錯体が吸収層において使用され、該金属錯体の含有率が好ましくは30〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機太陽電池。
【請求項13】
50cm−1〜3000cm−1における最低三重項状態と、該三重項状態より高い一重項状態との間の△E分離を有する金属錯体の、有機電子素子における使用。
【請求項14】
請求項6に記載の式I〜XVのいずれかにより表される錯体を提供することを含む、所定の波長を有する光の発生方法。
【請求項15】
請求項6に記載の式I〜Vのいずれかにより表される金属錯体であって、その金属中心M及びM’は同一でも異なっていてもよく、Pt又はPdを表す金属錯体を使用する、青色発光の発生方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−528172(P2011−528172A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517769(P2011−517769)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004498
【国際公開番号】WO2010/006681
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】