説明

光駆動型アクチュエータ,及び動力伝達システム

【課題】光エネルギーを機械ネルギーに直接可能であって,尺取虫のように移動可能な光駆動型アクチュエータを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,第1の活性光線,及び第2の活性光線を照射して架橋液晶高分子成形体の屈曲運動方向を反転させて,尺取虫のように移動するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光駆動型アクチュエータ,及びこの光駆動型アクチュエータを備える動力伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,光機能性材料に関する応用技術が精力的に研究され,広範囲な分野で目覚しい進展を遂げている。機械的運動を引き起こすための駆動源であるアクチュエータに関しても,光エネルギーを運動エネルギーに変換可能な光機能性材料が提案されている(特許文献1〜3)。光駆動型とすることにより,エネルギー伝達のための配線が不要となり,遠方からの遠隔操作や素子のさらなる高集積化の実現が期待できる。
【0003】
図13に,従来技術に係る光駆動型アクチュエータの斜視図を示す(特許文献1)。この光駆動型アクチュエータ100は,同図に示すように可動膜103,光誘起相転移物質たるポリジアセチレン膜102,基板104,オリフィス105を備えている。可動膜103の図中左右両端部は,基板104に固設され,非固設領域である中央部表面にはポリジアセチレン膜102が固定されている。この光駆動型アクチュエータ100に,2種類の活性光線を照射して可動膜103の中央部を可逆的に図中上下動せしめることにより,オリフィス105を通る流体の流量を制御できる技術が開示されている。活性光線による可動膜103の具体的可動量(図中の上下動の変位量)については,当該文献に記載がないため明らかではないが,両端部が固定されている可動膜103の上下動によりオリフィス105を開閉して流体の流量制御をしていることから鑑みて,その変位量は極僅かであると思われる。
【0004】
他の従来技術に係る光駆動型アクチュエータとして,新規アゾベンゼン系化合物等,若しくはスピロピラン化合物を用いた熱可塑性樹脂組成物において,一定荷重(5mN)下,光照射により約0.02〜0.08%のフィルムの光変形を可逆的に行うことができる例が報告されている(特許文献2)。
【0005】
本発明者のグループは,先般,フォトクロミック分子を組み込んだ架橋液晶高分子からなる成形体において,第1の活性光線の照射により架橋液晶高分子成形体を屈曲してそれを維持できること,第2の活性光線の照射により架橋液晶高分子成形体を元の形態に復元できることを報告した(特許文献3)。この架橋液晶高分子成形体によれば,平らな状態のフィルムを2つに折りたたまれるように屈曲せしめることが可能である。このような大きな機械的仕事を取り出すことに成功したのは,配向性と流動性を兼ね備えた液晶構造と,配向変化を伝搬しやすい架橋構造を兼ね備えた材料内に,光照射に応じて可逆的に異性化するフォトクロミック分子を導入したことによる。
【0006】
なお,後述する発明を解決する手段で記載する尺取虫型のアクチュエータの別のタイプのものとして,一方向に移動する機構を一対の端部に設けた高分子フィルムを,溶液に浸漬して電気エネルギーを付与することにより実現できることが報告されている(非特許文献1)。特許文献4については後述する。
【特許文献1】特開2001−232600号公報 (段落番号0013〜0015,第1〜4図)
【特許文献2】特開2006−282990号公報 (段落番号0070〜0099)
【特許文献3】特開2005−255805号公報 (段落番号0007,0025)
【特許文献4】特開2002−256031号公報 (段落番号0028〜0031)
【非特許文献1】ネイチャー(Nature), 1992年1月16日, 第355巻, p.242-244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光駆動型アクチュエータへの応用展開に当っては,光屈曲−復元応答の運動モードに加えて,様々なニーズに応えられるように運動モードのバリエーションを高めていくことが重要である。
また,実際に光駆動型アクチュエータをマイクロマシン等に搭載するに際しては,様々なニーズにフレキシブルに対応できるように形態のバリエーションを高めることが極めて重要となる。
【0008】
本発明は,上記背景に鑑みてなされたものであり,その第1の目的とするところは,上記光屈曲−復元応答の運動モードを拡張して別の動きをする光駆動型アクチュエータ,及びこれを備えた動力伝達システムを提供することである。
また,第2の目的とするところは,形態のバリエーションを高めることが可能な光駆動型アクチュエータ,及びこれを備えた動力伝達システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様の光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,第1の活性光線,及び第2の活性光線を照射して架橋液晶高分子成形体の屈曲運動方向を反転させて,尺取虫のように移動するものである。ここで,「屈曲運動方向を反転させる」とは,架橋液晶高分子成形体主面が折りたたまれる方向の運動と,平面に戻ろうとする方向の運動を順に切り替えることを意味する。また,本明細書において「尺取虫のように」とは,屈曲運動方向を反転させながら所定の方向に移動するものを言うものとする。なお,ここで言う「所定の方向に移動」とは,直進するものに限定されず,カーブ等をしながら移動するものも含むものとする。
【0010】
本発明に係る第1の態様の光駆動型アクチュエータにおいては,配向性と流動性を兼ね備えた液晶構造と,配向変化を伝搬しやすい架橋構造を兼ね備えた材料内のフォトクロミック分子の異性化によって,メソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬することができる。その結果,架橋液晶高分子成形体の屈曲運動方向を反転させて尺取虫のように移動させることができる。
【0011】
本発明に係る第2の態様の光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備えるシート状の光駆動型アクチュエータであって,メソゲン部位を配向制御して重合,又は架橋することにより得た前記架橋液晶高分子成形体を,可撓性を有する支持体上に積層することにより,前記第1の活性光線及び第2の活性光線の照射前の主面の形状を調整したものである。ここで「シート状」とは,主要部の形態が板状の構造であることを意味する。その厚みがシートとして定義されるものに限定されるものではない。また,平面形状の他,曲面形状,折りたたみ形状等のものを含むものとする。また,ここで言う「主面の形状」とは,活性光線照射によって可動する可動部の主面の形状を指すものとする。
【0012】
本発明に係る第2の態様の光駆動型アクチュエータにおいては,架橋液晶高分子成形体及び支持体の材料,液晶の配向性を適宜選定し,架橋液晶高分子成形体と支持体を積層構造とすることにより,光照射前の主面の形状(以下,「初期形態」とも言う)のバリエーションを高めることが可能となる。架橋液晶高分子成形体は,配向制御しながら重合若しくは架橋反応を行う必要があるため,初期形態のバリエーションを高めることは必ずしも容易ではない。架橋液晶高分子成形体を支持体上に積層することにより,両者の張力差,熱膨張係数差を利用して初期形態のバリエーションを高めることができる。また,本発明者らが鋭意検討を重ねたところ,架橋液晶高分子のメソゲンの配向性(例えば,ホメオトロピック配向,ホモジニアス配向等)を変えることにより,同一材料の組み合わせにおいても光照射前の初期形態を変えられることがわかった。蒸着技術,高分子等の成形加工技術,マイクロ造形技術等を用いて所望の曲率や折り目を有する構造等を有する支持体を予め作製し,これに架橋液晶高分子成形体を積層することもできる。さらに,一般に支持体の方が架橋液晶高分子成形体に比して,他の部材との係合部や勘合部を一体成形することや接合することが容易である。支持体の材料は,架橋液晶高分子成形体に比して格段に選択肢が多いため,ニーズに応じた材料選定が可能となる。光駆動型アクチュエータの初期形態のバリエーションを高めることにより,光照射前のみならず光運動を誘起する際の動的な動き,光照射後の形態のバリエーションも高めることができる。
【0013】
本発明に係る第3の態様の光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,前記架橋液晶高分子成形体は可撓性を有する支持体上に固定され,前記架橋液晶高分子成形体に対する前記第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射条件に応じて,バネのように伸縮するものである。
【0014】
本発明に係る第3の態様の光駆動型アクチュエータにおいては,架橋液晶高分子成形体を可撓性を有する支持体上に固定する構造を採用しているので,伸縮運動モードが可能な形態を容易に提供することができる。また,フォトクロミック分子の異性化に伴うメソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬することができる架橋液晶高分子成形体を用いることにより,付勢力に応じて伸縮するバネのように,光照射条件に応じて伸縮する光駆動型アクチュエータを提供することができる。伸長方向及び収縮方向の両方に大きな出力及びストロークを発生することも可能である。
【0015】
本発明に係る第4の態様の光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,前記架橋液晶高分子成形体は可撓性を有する支持体上に固定され,前記架橋液晶高分子成形体に対する前記第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射条件に応じて屈曲自在に変形するものである。
【0016】
本発明に係る第4の態様の光駆動型アクチュエータにおいては,架橋液晶高分子成形体を可撓性のある支持体上に固定する構造を採用しているので,光駆動型アクチュエータの自重による重力と光照射による屈曲力のバランスを調整可能な形態を容易に提供できる。そして,フォトクロミック分子の異性化に伴うメソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬することができる架橋液晶高分子成形体を用いることにより,屈曲自在に変形可能な光駆動型アクチュエータを提供することができる。
【0017】
本発明に係る動力伝達システムは,上記第1又は第2の光駆動型アクチュエータと,当該光駆動型アクチュエータに前記第1の活性光線及び第2の活性光線を照射する光源を備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,上記光屈曲−復元応答の運動モードを拡張して別の動きをする光駆動型アクチュエータ,及びこれを備えた動力伝達システムを提供することができるという優れた効果を有する。また,形態のバリエーションを高めることが可能な光駆動型アクチュエータ,及びこれを備えた動力伝達システムを提供することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお,本発明の趣旨に合致する限り,他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0020】
[実施形態1]
本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,メソゲン部位を配向制御して重合,又は架橋することにより得た架橋液晶高分子成形体を,可撓性を有する支持体上に積層することにより,第1の活性光線及び第2の活性光線の照射前の主面の形状を調整したものである。架橋液晶高分子成形体の最適な形態としては,フィルムやシート等を挙げることができる。
【0021】
図1(a)は,本実施形態1に係る光照射前の光駆動型アクチュエータの一例を示す模式的斜視図である。この光駆動型アクチュエータ1は,架橋液晶高分子成形体たる架橋液晶高分子フィルム2,可撓性を有する支持体たる支持体フィルム3を備えている。支持体フィルム3は,載置部たる載置面4上に一対の端部を当接部とするアーチ型形状となっており,支持体フィルム3主面の湾曲部位である中央領域に架橋液晶高分子フィルム2が積層されている。この光駆動型アクチュエータ1に第1の活性光線及び第2の活性光線を適宜照射すると,架橋液晶高分子成形体の屈曲運動が誘起され,これに連動して支持体フィルム3も変形する。この支持体フィルム3の変形は,架橋液晶高分子フィルムの積層領域3aのみならず,非積層領域3bにおいても誘起される。
【0022】
図1(b)は,図1(a)のIb−Ib切断部断面図である。同図に示すように,架橋液晶高分子フィルム2は,支持体フィルム3上に接着層5を介して積層されている。そして,架橋液晶高分子フィルム2上には保護層6が積層されている。以下,各構成要素について説明する。
【0023】
本実施形態1に係る架橋液晶高分子は,主鎖型高分子液晶,側鎖型高分子液晶のどちらでもよいが,液晶の配向に直接関与するハードコア部であるメソゲンの配向可能領域たるドメイン領域が存在し,かつ高分子骨格が三次元網構造を形成している必要がある。これにより,配向したメソゲンが高分子マトリックス内に緩やかに拘束され,高分子骨格の動きがメソゲンの配向と強く相関した構造となる。架橋構造は,長距離に亘って配向秩序が保たれた構造をとっていることがより好ましい。
【0024】
架橋液晶高分子は,単官能重合性モノマーと,これと共重合する架橋重合性モノマーとから得られる共重合体により得ることができる。共重合体を得る方法としては,公知の方法を利用することができるが,単官能重合性モノマーと架橋重合性モノマーを含む混合物を,メソゲンが配向する条件下において共重合させる方法を利用することが簡便かつ有利である。具体例としては、反応容器として、内表面に配向性表面が形成されたものを用いて、モノマー混合物をインサイチュー(in-situ)重合法等を利用して,光重合あるいは熱重合させる方法により共重合反応させる方法が挙げられる。この方法によれば、共重合体分子は、配向性表面の作用により特定の方向に配向された状態で生成される。配向性処理としては、反応容器の内表面にポリイミドの層を形成してこれを特定の方向にラビング処理する方法、電場・磁場をかけるなどの方法を挙げることができる。メソゲンの配向性としては,ホモジニアス 、ツイスト、ホメオトロピック 、ハイブリッド、ベンド又はスプレー配向等を挙げることができる。共重合させる別の方法としては,線状,又は弱く架橋した液晶高分子を作製し,応力によってメソゲンを配向させながら架橋反応を行う方法等を挙げることができる。
【0025】
単官能重合性モノマーと架橋重合性モノマーの重合比率は,所望のドメインサイズ,架橋密度を考慮して決定する。ドメインサイズは,0.5μmより大きいことが好ましい。ドメインサイズが小さいと高分子骨格は,非液晶フィルムにおけるクロモフォアと高分子セグメントの関係とよく似た構造となり,各ドメインにおいてメソゲンの配向が変化し,高分子骨格が変形してもフィルム全体に与える影響が小さくなるためである。このような場合,配向変化が機械的応答に結びつかず,架橋液晶高分子成形体の運動が誘起しにくくなる。なお,架橋液晶高分子成形体は,架橋液晶高分子そのものから構成されているものに限定されず,目的とする架橋液晶高分子成形体の特性を損なわない範囲において適宜添加剤等が含まれていてもよい。
【0026】
重合性基としては,(メタ)アクリロイルオキシ基,(メタ)アクリルアミド基,ビニルオキシ基,ビニル基,又はエポキシ基等が挙げられるが,容易に重合できることから,(メタ)アクリロイルオキシ基や(メタ)アクリルアミド基が好ましい。架橋重合性モノマーは,2官能性モノマー,あるいは3官能性モノマー等に代表される多官能性モノマーを用いることができる。重合開始剤としては,公知のものを用いることができる。
【0027】
架橋液晶高分子成形体を得る方法として,注型重合法を利用して金型を兼ねた反応容器を用いて共重合反応を行い、生成される共重合体を同時に成形する方法を利用することが好ましい。このような注型重合法によれば、上述の好適な配向処理法を適用することが極めて容易である。
【0028】
フォトクロミック分子の導入箇所は,高分子主鎖,高分子側鎖のどちらでもよいが,メソゲン部位に導入することがより好ましい。メソゲン部位に導入することにより,フォトクロミック分子の異性化に伴う分子構造変化を,ドメイン領域にあるメソゲンの配向変化に効果的に変換することができるためである。そして,架橋構造を採用することにより,メソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬して,架橋液晶高分子成形体の異方的かつ機械的な応答を誘起することが可能となる。
【0029】
フォトクロミック分子は,特に限定されず公知のものを用いることができる。例として,トランス−シス異性化するアゾベンゼン,スチルベン構造等や,開環―閉環光異性化し得るスピロピラン,ジアリール構造等を挙げることができる。中でも,下記式(1)に示すアゾベンゼンは,第1の活性光線と第2の活性光線の波長が離れていて,かつ異性化の際に分子間距離が大きく変化することから特に好ましい例として挙げることができる。
【化1】

アゾベンゼンは,アゾベンゼン骨格に結合している置換基にもよるが,第1の活性光線は300〜400nm程度(以下,単に「紫外光」という)であり,第2の活性光線は500〜650nm程度(以下,単に「可視光」という)である。上記式(1)に示すようにアゾベンゼンに紫外光を照射すると,棒状のトランス体から屈曲したシス体に異性化する。そして,この異性化したシス体に可視光を照射すると元のトランス体に戻る。
【0030】
架橋液晶高分子にアゾベンゼンを導入すると,アゾベンゼンは配向制御成分として働く。アゾベンゼンのトランス体は液晶相を安定化,若しくはそれ自体がメソゲンとして機能する。一方,屈曲構造を持つシス体は液晶相を不安定化する。従って,等温でもトランス体からシス体への異性化を誘起することにより,相転移を誘起することができる。
【0031】
フォトクロミック分子の異性化によるメソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬するファクターとしては,架橋構造,フォトクロミック分子の種類,フォトクロミック分子の導入率の他に,液晶の種類,照射条件等を挙げることができる。液晶の種類は,特に限定されない。メソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬する観点からは,メソゲンの配向能やパッキング性の高いものを用いることが好ましい。このような液晶として,スメクチック液晶や,強誘電性液晶等を挙げることができる。
【0032】
支持体は,架橋液晶高分子成形体を主面に固定でき,かつ架橋液晶高分子成形体と一体的に可動可能なものを選定する。支持体として可撓性のあるものを用いているので,架橋液晶高分子成形体が積層されていない非積層領域も架橋液晶高分子成形体の形状変化に連動させて変形させることができる。無論,支持体の全体が架橋液晶高分子成形体と共に可動可能である必要はなく,架橋液晶高分子成形体の非積層領域の一部を非可動部としてもよいし,架橋液晶高分子成形体の積層領域のみを可動部としてもよい。また,架橋液晶高分子成形体の積層領域の一部を非可動部としてもよい。
【0033】
上記図1の例においては,架橋液晶高分子成形体を支持体の一主面の中央領域に積層した例について述べたが,これに代えて主面全面に架橋液晶高分子成形体を積層してもよい。支持体の両主面の任意の箇所あるいは全面に架橋液晶高分子成形体を積層することもできる。また,異なる波長で形状変化するフォトクロミック分子が導入された複数種類の架橋液晶高分子成形体を,異なる領域に配置したり,同一領域に積層することも可能である。活性光線の波長の異なるフォトクロミック分子を導入した複数の架橋液晶高分子成形体等を支持体上に積層することにより,複数の運動モードを備えることができる。
【0034】
支持体は,他の部材と係合又は勘合せしめるための係合部や勘合部等を支持体の一部分に備えるように構成することができる。支持体の端部を載置面に当接させて自立させる構造(図1(a)参照)に代えて,車輪等に固設したり,載置部,筐体,基板等に固設してもよい。載置部として,載置面に代えて前記車輪に係合するレール等を採用することもできる。
【0035】
支持体の材質としては,例えば,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート等の汎用性高分子,エラストマー,あるいはシリコンゴム,金属薄膜,紙等の公知の材料を用いることができる。架橋液晶高分子成形体と一体的に可動させる観点からは,エラストマー等の高弾性体や使用温度において十分な柔軟性を有する高分子成形体を用いることが好ましい。高分子成形体のガラス転移温度が使用温度以下のものを用いることにより,柔軟性の優れたものを得ることができる。このような高分子材料としては,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブタジエン,ポリ塩化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。無論,可塑剤を添加することにより高分子成形体のガラス転移温度を使用温度以下となるようにしてもよい。なお,ここで「使用温度」とは,光駆動型アクチュエータを実際に駆動する際の温度を言う。高分子材料に融点(Tm)が存在する場合には,光駆動型アクチュエータを安定して利用する観点から使用温度が融点を超えない範囲で使用することが好ましい。高分子成形体を用いることにより,前述の係合部や勘合部等の一体成形や,接合等も容易となる。
【0036】
支持体の可動部の厚みは,用いる材料の柔軟性の度合い,強度,用いる用途,所望の形態等に応じて決める。厚みは特に限定されるものではないが,例えば5μm〜100μm程度とすることができる。支持体は,単一の材料から構成してもよいし,複数の材料から構成してもよい。
【0037】
支持体上に架橋液晶高分子成形体を積層して固定する方法は,特に限定されず公知の方法を用いることができる。積層する際には,支持体と架橋液晶高分子成形体とが十分に接着していることが重要である。光駆動させる際に剥離やクラックが発生するのを防止するためである。接着方法としては,公知の方法を利用できる。例えば,接着機能を有する支持体を用いて架橋液晶高分子成形体とラミネートする方法,支持体と架橋液晶高分子成形体との間に,バーコーター塗工などの種々のコーティング方法を用いて接着層(図1(b)参照)を設ける方法,両面テープにより支持体と架橋液晶高分子成形体を貼り合せる方法等を挙げることができる。接着層や両面テープ等の中間層を設ける場合,架橋液晶高分子成形体と一体的に可動させる観点から柔軟性に優れたものを選定することが好ましい。接着層の厚みは,例えば0.5μm〜20μmとすることができるが,無論これに限定されるものではない。架橋液晶高分子成形体上には,必要に応じて保護層(図1(b)参照)を積層してもよい。これにより,架橋液晶高分子成形体を機械的刺激等から保護することができる。保護層としては,架橋液晶高分子成形体と一体的に可動可能であり,かつ,架橋液晶高分子成形体の活性光線による駆動を妨げない材料であれば特に限定されない。なお,本実施形態に係る光駆動型アクチュエータは,上述した要素部材以外の要素を含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0038】
光駆動型アクチュエータの光照射前の主面の形状(初期形態)は,架橋液晶高分子成形体及び支持体の材料,液晶の配向性を適宜選択することにより調整することができる。架橋液晶高分子成形体を支持体に積層することにより,両者の張力差,熱膨張係数差を利用して初期形態のバリエーションを高めることができる。必要に応じて,架橋液晶高分子成形体を支持体に積層後に,熱や圧力を加えることができる。本発明者らが鋭意検討を重ねたところ,同一材料の組み合わせにおいても,架橋液晶高分子のメソゲンの配向性(例えば,ホメオトロピック配向,ホモジニアス配向等)を変えることにより,光照射前の初期形態を大きく変え得ることを突き止めた。蒸着技術,高分子等の成形加工技術,マイクロ造形技術等を用いて所望の曲率や折りたたみ構造等を有する支持体を予め作製し,これに架橋液晶高分子成形体を積層することもできる。さらに,一般に支持体の方が架橋液晶高分子成形体に比して,他の部材との係合部や勘合部を一体成形することや接合することが容易なので,ニーズに応じた形態の光駆動型アクチュエータを提供しやすい。
【0039】
次に,本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータの駆動方法について説明する。本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータは,第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子が導入された架橋液晶高分子成形体に,フォトクロミック分子の異性化を起こすように前記活性光線を照射して,架橋液晶高分子成形体の形状変化を誘起することにより屈曲運動を誘起させるものである。ここで「屈曲運動」とは,シート状の可動部分を折る方向に変形させるもの,平坦な状態に戻す方向に変形させるもの,既に折られている状態を別の角度に変形させるもののいずれも含むものとする。
【0040】
光駆動型アクチュエータに第1の活性光線を照射すると,フォトクロミック分子の異性化が誘起され屈曲運動が誘起される。次いで,第2の活性光線に照射光源を切り替えると,フォトクロミック分子の異性化に伴って,前記屈曲運動とは異なるモードの屈曲運動が誘起される。
【0041】
屈曲運動を連続的に行いたい場合には,フォトクロミック分子の異性化を連続的に誘起する。フォトクロミック分子の異性化を連続的に誘起するためには,第1の活性光線及び第2の活性光線の両方を同時あるいは逐次的に照射すればよい。異性化が連続的に起こっていれば,光照射は断続的であっても構わない。なお,ここで言う「連続的」とは,特定のフォトクロミック分子を継続的に異性化せしめることを意味するのではなく,架橋液晶高分子成形体内のいずれかのフォトクロミック分子の異性化が起こっている状態であることを意味する。
【0042】
第1の活性光線,及び第2の活性光線の架橋液晶高分子成形体に対する照射位置は,同一としても異なるようにしてもよい。但し,異なる位置とする場合には,第1の活性光線,及び第2の活性光線のそれぞれの照射により,フォトクロミック分子の異性化を誘起できる位置とする。各光線の照射によって異性化を誘起して,メソゲンの配向変化を高分子骨格に伝搬する必要があるためである。第1の活性光線の照射によって異性化された箇所に,第2の活性光線の照射領域の少なくとも一部が含まれるようにすることが簡便である。
【0043】
前述した液晶の配向性の他,活性光線の照射位置や照射光強度,照射時間に応じて,シート状部の変形量(折れ曲がり角度)を適宜変更することができる。照射光強度は,導入したフォトクロミック分子の種類,フォトクロミック分子の導入率,架橋液晶高分子成形体の厚み,及び所望とする屈曲挙動等に応じて最適となるように選定するが,通常1〜1000mJ/cm程度である。所望の運動挙動やフォトクロミック分子に応じて非偏光,偏光のどちらを用いてもよい。照射光源としては,高圧水銀灯,レーザー光等の各種公知の光源を用いることができる。
【0044】
架橋液晶高分子成形体に対する第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射部位は,ガラス転移温度以上となっていることが好ましい。高分子主鎖の運動に影響を与えるミクロブラウン運動は,高温で活発化する一方でガラス転移温度以下では凍結されるためである。なお,架橋液晶高分子成形体に光を照射すると,その一部は熱エネルギーに変換され得るが,この熱により照射領域が局部的にガラス転移温度以上となっているものも含まれる。ただし,架橋液晶高分子成形体に融点(Tm)が存在する場合には,照射部位の温度が融点より低い温度となる範囲で使用する。
【0045】
次に,本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータが運動するメカニズムについて図2,図3を用いつつ説明する。以下,アゾベンゼンを側鎖型高分子のメソゲンに導入した架橋液晶高分子からなるフィルムを例にとり説明する。なお,図中の各部分のサイズや形状は,説明の便宜上のものであり,各部分の比率,形状等は実際とは異なる。
【0046】
図2(a)は,上記式(1)に示すアゾベンゼン分子の異性化の形状変化を模式的に図示した説明図である。図中,符号10は棒状のトランス体の形状を,符号20は屈曲したシス体の形状を模式的に示したものである。同図に示すように,アゾベンゼン分子に第1の活性光線として紫外光を照射すると棒状のトランス体10から屈曲したシス体20に異性化し,第2の活性光線として可視光を照射することによって元のトランス体10に戻る。すなわち,棒状のトランス体10と屈曲したシス体20を可逆的に光により変化せしめることができる。
【0047】
図2(b)は,アゾベンゼンをメソゲン部位に導入した架橋液晶高分子フィルム(以下,単に「フィルム」ともいう)30の紫外光照射前後の様子を模式的に図示した部分拡大説明図である。図中,符号31は高分子主鎖を,符号11はアゾベンゼンがトランス体であるトランス型アゾベンゼン側鎖を,符号12はメソゲンにアゾベンゼンを含まない非アゾベンゼン側鎖を,符号21はアゾベンゼンがシス体であるシス型アゾベンゼン側鎖を示している。トランス型アゾベンゼン側鎖11に紫外光を照射するとアゾベンゼン部位が屈曲したシス型アゾベンゼン側鎖21に構造変化し,これにより非アゾベンゼン側鎖12の配向変化も誘起される。そして,この変化が高分子骨格に伝搬して架橋液晶高分子フィルム30の収縮が起こる。
【0048】
ところで,アゾベンゼン分子は,トランス体からシス体への異性化を誘起する波長(360nm近傍)に高いモル吸光係数を持つ。このため,フィルム中のアゾベンゼン濃度が高くなると異性化を誘起する光はフィルム30を透過できなくなり,照射面側に存在するアゾベンゼン分子を選択的に光異性化することになる。その結果,フィルム30の厚み方向において収縮率に異方性が生じる。
【0049】
図3は,フィルムの厚み方向に対して,フィルム30の収縮率に異方性が生じる様子を模式的に図示した部分拡大説明図である。フィルム30(図3(a)参照)に紫外光を照射すると,照射領域においてトランス体からシス体に構造変化して,ドメインの配向変化が誘起される。そして,図3(b)に示すように厚み方向に収縮率の異方性が発生する。その結果,図3(c)に示すようにフィルム30が機械的な応答を示す。これに,可視光8を照射すると,照射領域においてシス体からトランス体に構造変化し,ドメインの新たな配向変化が誘起されて新たな収縮率の異方性が発生する。
【0050】
光駆動型アクチュエータの厚みは特に限定されないが,変形を誘起できる厚みとする必要があり,用いる架橋液晶高分子や支持体の特性により適宜選定する。必ずしも厚み方向に収縮率の異方性を誘起する必要はなく,面方向における収縮率の異方的変形を誘起せしめて運動するように構成してもよい。
【0051】
上述したようにアゾベンゼンのトランス体は,液晶相を安定化,若しくはそれ自体がメソゲンとして機能する。一方,アゾベンゼンのシス体は,屈曲構造により液晶相を不安定化する。従って,アゾベンゼンを用いた場合,紫外光照射によって等温的に液晶相から等方相への相転移を誘起し得る。このため,ドメインの配向変化をドラスチックに変更可能であり,配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬し,架橋液晶高分子成形体の異方的かつ機械的な応答を誘起しやすい。無論,架橋液晶高分子成形体の異方的かつ機械的な応答を誘起できればよく,液晶相から等方相への等温的相転移が必須ではないことは言うまでもない。なお,熱により異性化が可能なフォトクロミック分子においては,活性光線に代えて熱を用いることもできる。アゾベンゼンの場合には,可視光(上記例においては第2の活性光線)に代えて熱によりシス体からトランス体の異性化を誘起するようにしてもよい。
【0052】
本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータによれば,架橋液晶高分子成形体,支持体の材料,液晶の配向性を適宜選定することにより光照射前の架橋液晶高分子成形体の主面の形状(初期形態)のバリエーションを高めることが可能となる。支持体の材料は,架橋液晶高分子成形体に比して格段に選択肢が多いため,ニーズに応じた材料選定が可能となり設計自由度を上げることができる。光駆動型アクチュエータの初期形態のバリエーションを高めることにより,光照射前のみならず光運動を誘起している際の動的な動き,光照射後の形態のバリエーションも高めることができる。また,架橋液晶高分子成形体を支持体上に固定することにより,機械的強度,耐久性を高めることができる。また,光運動領域を架橋液晶高分子成形体の形成されていない非積層領域に拡張することができるので低コスト化を実現できる。本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータにおいては,極めて簡易な構造であるので,それ自身の小型軽量化を達成できる。また,液晶構造と架橋構造を兼ね備えた架橋液晶高分子成形体を採用することにより,大きな機械的仕事を取り出すことが可能である。
【0053】
また,架橋液晶高分子成形体,支持体の種類や初期形態を選定することにより,温度や圧力等の条件を一定に保った状態において光照射を行うだけで複雑な動きを実現し得る。また,繰り返し使用できるという利点も有する。従って,マイクロマシンの可動部(例えば,ロボットの関節部)や,マイクロカテーテル等の医療用デバイス等として応用可能である。光駆動型アクチュエータを装置内部に搭載する場合においても,筐体等を活性光線が透過可能な材質により形成すれば,装置内部に光源を具備する必要はない。このため,装置の小型軽量化を実現できる。
【0054】
[実施形態2]
バネのように伸縮可能な光駆動型アクチュエータの例について説明する。図4は,本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータの一例を説明するための概略断面図である。なお,以降の説明において,前記実施形態と同一の要素部材は,同一符号を付し,適宜その説明を省略する。また,上記実施形態1と同様の点については適宜説明を省略し,異なる点について詳述する。
【0055】
本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータ1aは,以下の点を除く基本的な構成は図1において説明した光駆動型アクチュエータ1と同じである。すなわち,本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータ1aは,支持体フィルム3の形状,架橋液晶高分子フィルム2の積層個数,支持体フィルム3の端部の構造において,図1の例に係る光駆動型アクチュエータ1と相違する。より具体的には,支持体フィルム3は,波形のような湾曲部が複数あり,第1端部41が筐体の天板43に固設され,鉛直方向にぶらさがる構造となっている。そして,第1端部41と対向する第2端部42には弁体44が取り付けられている。架橋液晶高分子フィルム2は,支持体の湾曲部の山なり部にそれぞれ積層されている。
【0056】
本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータ1aは,例えば次のようにして製造することができる。まず,可撓性のある支持体フィルムの一主面に接着層を積層し,次いで所望の間隔に架橋液晶高分子フィルムを積層する。その後,もう一方の主面に同じく接着層を積層し,先の架橋液晶高分子フィルムの非積層領域の略中央領域に架橋液晶高分子フィルムを積層する。そして,熱圧着することにより図4に示すような波形形状の支持体フィルム3を得る。その後,第1端部41を天板43に固設し,第2端部42に弁体44を取り付けることにより光駆動型アクチュエータ1aを得ることができる。可撓性のある支持体フィルム3の表裏両主面上に架橋液晶高分子フィルム2を所定の間隔で積層することにより,波形型の光駆動型アクチュエータを容易に製造できる。
【0057】
本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータ1aに第1の活性光線を照射すると,湾曲部が伸長する。次いで,架橋液晶高分子フィルム2に第2の活性光線を照射すると,元に戻ろうと収縮する。付勢力に応じて伸縮するバネのように,第1の活性光線及び第2の活性光線の照射に応じて伸縮運動を誘起することができる。所望とする伸長,収縮の程度に応じて光照射条件を設定すればよい。光照射は,複数の架橋液晶高分子フィルムに一括照射してもよいし,特定の架橋液晶高分子に照射してもよい。この伸縮運動により弁体44を図中上下動させ,弁体44の下部にある基板45を貫通するオリフィス46の開閉を可逆的に行うことができる。例えば,流体の流量を制御するマイクロリアクター等のマイクロ化学分析システムに用いることができる。
【0058】
本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータによれば,活性光線を照射することにより伸縮可能な光駆動型アクチュエータを得ることができる。架橋液晶高分子成形体を可撓性を有する支持体上に固定する構造を採用しているので,図4に示すような湾曲形状を容易に製造することができる。また,フォトクロミック分子の異性化に伴うメソゲンの配向変化を高効率で高分子骨格に伝搬することができるので,伸長方向及び収縮方向の両方に大きな出力及びストロークを発生することも可能である。なお,第2端部42に弁体44を取り付けた例について説明したが,これに代えて針やセンサ等を取り付けてもよい。退避可能なプローブ装置等に応用することも可能である。
【0059】
[実施形態3]
屈曲自在に変形可能な光駆動型アクチュエータの例について説明する。図5(a)に本実施形態3に係る光駆動型アクチュエータ1bの模式的正面図,図5(b)にその側面図を示す。なお,図中の各部材の大きさや位置は説明の便宜上のものであり,各部分の比率,形状等は実際とは異なる。
本実施形態3に係る光駆動型アクチュエータ1bは,アーム形状の支持体フィルム3上に,複数の架橋液晶高分子フィルム2が積層されている。架橋液晶高分子フィルム2の積層位置は,アームの関節対応部分である。具体的には,ひじ部,手首部,指部にそれぞれ架橋液晶高分子フィルム2b,2b,2bが積層されている。
【0060】
光駆動型アクチュエータ1bのアーム形状のひじ部に積層した架橋液晶高分子フィルム2bに第1の活性光線をこの光駆動型アクチュー得た1bの図中左側から照射すると,当該部分が光照射条件に応じて光照射方向(図中左方向)に湾曲する。変形された状態は,架橋液晶高分子成形体の組織状態がさらに構造的な変化を生ずる力を受けない間は安定にその形状を保持することができる。さらに,アーム形状の手首部,及び指部に積層した架橋液晶高分子フィルム2b,2bに同様の方法にて第1の活性光線を照射すると,例えば,図5(c)に示すように,これらの箇所を湾曲させることができる。
【0061】
第1の活性光線の照射条件をコントロールすることにより,所望の屈曲形状に変形させることができる。また,第2の活性光線を照射することにより屈曲運動方向を反転させたり,光照射前の元の状態に戻したりすることができる。それぞれの架橋液晶高分子フィルム2を個別に照射する光源システムを採用することにより,複雑な動きを実現できる。例えば,光駆動型アクチュエータ1bの手のひら部で物を掴み,それを所望の位置に移動させて離すといういわゆるロボットアーム動作も可能である。手のひらで物を掴む構造に代えてアーム先端部にフックなどを取り付ける構造としてもよい。
【0062】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ,光駆動型アクチュエータの自重による重力と光照射による屈曲力の大きさのバランスを調整することにより,屈曲自在に変形し得ることがわかった。光駆動型アクチュエータ自身の重力よりも光照射による屈曲力を大きくすることにより,光照射により屈曲形状からフラットに近い形状にし,さらに反対方向に続けて屈曲せしめることも可能である。光駆動型アクチュエータの自重による重力と屈曲力の大きさのバランス調整は,支持体を用いることで容易となる。
【0063】
支持体フィルム3の長軸方向に屈曲する例を述べたが,幅方向あるいは斜め方向に屈曲するように架橋液晶高分子フィルムを固定することもできる。斜め方向に屈曲するようにすることにより,ねじる動きを誘起することも可能である。また,支持体フィルムの両面の同一領域に架橋液晶高分子フィルムを固定して,所望の方向から光照射を行うようにしてもよい。なお,図5の例における活性光線と架橋液晶高分子成形体の屈曲運動方向は一例であり,この例に限定されないことは言うまでもない。また,所望の屈曲形状が第1の活性光線,若しくは第2の活性光線のいずれかにより達成できる場合には,両活性光線の照射による可逆的な異性化は必須ではない。この所望の屈曲形状は,架橋液晶高分子成形体の組織状態がさらに構造的な変化を生ずる力を受けない間は安定にその形状を保持することができる。
【0064】
本実施形態3に係る光駆動型アクチュエータによれば,支持体も連動して動かすことができるので,全体として大きく,かつなめらかに動かすことができる。支持体上に架橋液晶高分子成形体を固定する構造を採用することにより,機械的強度を高めることができる。また,所望の箇所に所望の動きをする架橋液晶高分子成形体を選定して固定するという極めてシンプルな方法なので複雑な動きと小型軽量化を同時に実現できる。屈曲自在に変形することが可能なので,複雑な動きをするマイクロマシン,医療用カテーテル,作業用リフト等に応用することが期待できる。
【0065】
[実施形態4]
尺取虫型の運動を行う光駆動型アクチュエータの例について説明する。本実施形態4に係る光駆動型アクチュエータは,屈曲運動方向を反転させて尺取虫のように移動する。
【0066】
図6(a)は,本実施形態4に係る光駆動型アクチュエータ1cの一例を示す模式的斜視図である。光駆動型アクチュエータ1cは,図1と同様に一対の端部が載置面4と当接するアーチ型形状となっており,支持体フィルム3の主面の湾曲部位である中央領域に架橋液晶高分子フィルム2が積層された構造となっている。ただし,この一対の当接部の形状が異なる。図中左側の方の第1当接部7をフラット形状とし,図中右側の方の第2当接部8を略山形形状の頂部としている。
【0067】
図6(b)は,光照射前の光駆動型アクチュエータ1c(図6(a)参照)に第1の活性光線13を照射した際の形状変化を説明するための模式的斜視図である。第1の活性光線を照射すると,架橋液晶高分子フィルム2が伸長すると共に,支持体フィルム3もこれに連動して伸長する。フラット形状の第1当接部7は,第1の活性光線13を照射する前は載置面4の第1当接部初期ライン52の位置と当接しているが,第1の活性光線13を照射すると第1当接部移動ライン53にまで当接位置が移動する。一方,略山形形状の頂部を当接部とする第2当接部8は,第1の活性光線13の照射前後を通じて第2当接部初期ライン51上に位置する。すなわち,第1の活性光線13の照射による伸長運動により第1当接部7のみが前進する。これは,第2当接部8の方がフラット形状の第1当接部7に比して載置面4に対する圧力が高く,両当接部の移動度に差が出ることによるものと考えている。
【0068】
図6(c)は,伸長した光駆動型アクチュエータ1c(図6(b)参照)に第2の活性光線14を照射した際の形状変化を説明するための模式的斜視図である。第2の活性光線の照射により,架橋液晶高分子フィルム2が屈曲すると共に,支持体フィルム3もこれに連動して屈曲する。フラット形状の第1当接部7は,第2の活性光線照射後も当接位置が変わらない。すなわち,第1当接部移動ライン53に静止したままである。一方,略山形形状の頂部が当接部である第2当接部8は,第2の活性光線14の照射により第2当接部初期ライン51から第2当接部移動ライン54に当接位置が移動する。すなわち,第2の活性光線照射による屈曲運動により第2当接部8側が前進する。これは,第2当接部8の方が第1当接部7に比して載置面を蹴る力が大きく,両当接部の移動度に差が出ることによものと考えている。
【0069】
第1の活性光線,及び第2の活性光線を交互に照射して屈曲運動方向を反転させることにより,尺取虫型の移動を行うことができる。すなわち,屈曲運動方向を反転させながら,第1当接部を前輪,第2当接部を後輪であるかのように機能させながら順に前進させることができる。
【0070】
本実施形態4においては,第1当接部としてフラット形状,第2当接部として略山形形状の頂部とした例を説明したが,これに限定されるものではなく,第1当接部の載置部に対する圧力を第2当接部のそれに比して小さく設計すればよい。このように構成することにより第1当接部を移動方向前部,第2当接部を移動方向後部とする尺取虫型のアクチュエータを得ることができる。第1当接部と第2当接部の形状を非対称形状とすることで,極めて簡便な構成で尺取虫のように移動する光駆動型のアクチュエータを得ることができる。移動をスムーズに行う観点から,第1当接部7及び第2当接部それぞれと,載置部との成す角度は鋭角とすることが好ましい。
【0071】
光駆動型アクチュエータの屈曲運動方向に応じて第1当接部7あるいは第2当接部8がそれぞれ静止点となる例について述べたが,これに限定されるものではなく,屈曲運動方向が伸長する方向に動く際,あるいは屈曲量が大きくなる方向に動く際の少なくともいずれか一方に,第1当接部7と第2当接部8の移動度差があればよい。当接部として端部を二つ設けた例を説明したが,端部以外の箇所に当接部を設けてもよい。アーチ型形状を二つ有する光駆動型アクチュエータとすることもできる。略山形形状の例として,頂点が三角形の例を挙げたがこれに限定されるものではなく,頂部がフラット部を有する山形形状も含むものとする。
【0072】
また,第1活性光線と第2活性光線を交互に照射する例について述べたが,これに限定されるものではなく,一方を常時ONにしておき,もう一方の活性光線のON,OFFを切り替えてもよい。また,架橋液晶高分子成形体を支持体上に積層する例について述べたがこれに限定されるものではなく,例えば,スペーサ等の間隙保持部材を介して架橋液晶高分子成形体と支持体を対向配置するようにしてもよい。
【0073】
上記図6においては,支持体フィルム3に第1当接部7及び第2当接部8を設けた例を述べたが,これに限定されるものではなく他の要素部材に設けてもよい。例えば,支持体の端部に車輪を固設し,車輪の外輪部を当接部としてもよい。機械的強度を高める観点,設計自由度を高める観点,コスト低減の観点,自立性を確保する観点等から支持体を用いることが好ましいが,自立性を確保できれば架橋液晶高分子成形体のみから構成してもよい。また,可撓性のある支持体に代えて,幅方向に棒状の柱を複数設けることにより機械的強度を補強したり,可撓性のある枠体に架橋液晶高分子成形体を嵌めこむ構成とすることもできる。また,支持体に凹部や溝部を設け,当該部分に架橋液晶高分子成形体を埋め込む構造としてもよい。
【0074】
本発明によれば,光エネルギーを機械エネルギーに変換可能な光駆動型アクチュエータ,及びこの光駆動型アクチュエータと光源を備える動力伝達システムを提供することができる。光を制御媒体としているので誘導雑音が発生せず,多重伝送などの大量高速度伝送が可能,非接触接続が容易となる等の利点を有する。また,構造体そのものを駆動素子とし,極めて簡便な構成で光エネルギーを機械エネルギーに直接変換することができるため,装置の小型軽量化,低コスト化の実現が容易となる。さらに,わずかな刺激によって大きな運動を誘起できるため,プラスチックモーターなどの駆動装置,マイクロマシンの可動部を初めとした多岐に亘る応用が期待できる。また,本発明に係る光駆動型アクチュエータによれば,エネルギー伝達のための配線が不要となり,遠方よりレーザー光等を照射するだけで運動をON,OFFすることができる。このため,光源の距離を任意に設定可能な動力伝達システムを提供することができる。
【0075】
[実施例]
次に,実施例によりさらに本発明を具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。なお,以下に記載する試薬等は,特に断らない限りは一般に市販されているものである。核磁気共鳴吸収スペクトル測定(HNMR)は,Lamda-300(300MHz)を用い,テトラメチルシラン(TMS)を内部標準とした。化合物の液晶性は,示差走査熱量計(DSC;SeikoI&E,SSC-5200,DSC220C),ホットステージ(Mettler,FP-90,FP-82HT),偏光顕微鏡(POM;OLYMPUS,BH-2)を用いて評価した。示差走査熱量計は,ポリマーの評価は昇温速度10℃/min,モノマーの評価は昇温,降温速度2℃/minとして,いずれも窒素雰囲気下で測定した。
【0076】
光運動挙動は,CCDカメラ(オムロン製 VC-HRM20Z)を用いて観察した。紫外光については,UV−LED光源(キーエンス製 UV-400)を用いて365nmの単色光を取り出した。出力光の強度は,240mW/cmとした。また,可視光については,ハロゲンランプ光源(島津理化製 FLH-50)の白色光を用いた。出力光の強度は,545nmにおいて120mW/cmとした。また,測定サンプルと光源の照射距離は,15〜5mm程度とし,架橋液晶高分子成形体のほぼ真上方向から照射した。照射光は非偏光とした。特に記載のない場合には,室温下にて実験を行った。
【0077】
本実施例においては,架橋液晶高分子成形体の形態としてフィルム状のものを用いた。架橋液晶高分子は,フォトクロミック分子としてアゾベンゼン構造を導入した下記式(2)及び下記式(3)で示されるアミノ基を有するアクリル酸エステル系ポリマー(以下,それぞれ「CALP−Alk[1]」,「CALP−Alk[2]」と略記する)を用いた。
【化2】

【化3】

【0078】
上記式(2)で示されるCALP−Alk[1]は,単官能重合性モノマーである下記式(4)で示される9―〔4−(4―ノナニルオキシフェニルアゾ)フェノキシ〕ノナニルアクリレート(以下,「A9AB9」と略記する)と,架橋重合性モノマーである下記式(5)で示される4,4′−ビス〔9−(アクリロイルオキシ)ノナニルオキシ〕アゾベンゼン(以下,「DA9AB」と略記する)を混合し,液晶相を発現する条件下において共重合させることにより得た。
【化4】

【化5】

【0079】
上記式(3)で示されるCALP−Alk[2]は,単官能重合性モノマーである下記式(6)で示される6−〔4−(4−ヘキシルオキシフェニルアゾ)フェノキシ〕ヘキシルアクリレート(以下,「A6AB6」と略記する)と,下記式(7)に示した架橋重合性モノマー4,4′−ビス〔6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ〕アゾベンゼン(以下,「DA6AB」と略記する)を混合し,液晶相を発現する条件下において共重合させることにより得た。
【化6】

【化7】

【0080】
<架橋重合性モノマーの合成>
4−ニトロフェノール3.5g(25mmol),炭酸カリウム3.5mg(25mmol),9−ブロモノナノール7.0g(30mmol)をDMF5mlに分散し,その懸濁液を130℃で3時間加熱還流した。TLCで反応終了を確認し,溶液に酢酸エチル50mlと水30mlを加えた後,有機層を希塩酸,及び蒸留水を用いて洗浄し,溶液を減圧留去して乾燥した。乾燥固体をTHF50mlに溶解し,氷冷下撹拌した。これに5%Pd−C1.5gを加えた後,水素化ホウ素ナトリウム2.0g(50mmol)を3回に分けて加え,室温で2時間撹拌した。その後氷冷撹拌下で溶液に1N塩酸100mlを滴下した。固体炭酸カリウムをpH10になるまで加え,溶液を減圧濾過した。沈殿物と溶液から反応物を酢酸エチルで抽出し,溶液を減圧留去して乾燥を行い,赤褐色固体の4−(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アニリン4.0g(16mmol)を得た。
【0081】
500mlのナスフラスコに,上記4−(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アニリン4.0g(16mmol)と1Nの塩酸100mlを加え,氷冷下撹拌を行った。これに亜硝酸ナトリウム1.2g(17mmol)を溶解させた水溶液30mlをゆっくり滴下した。次にこの水溶液を0℃に保持したまま,水酸化ナトリウム2.0g(50mmol)とフェノール1.6g(17mmol)を水50mlに溶解させた水溶液を滴下し,さらに粉末炭酸カリウムをpHが9程度になるまで加え,4時間氷冷下撹拌した。その後,1Nの塩酸を加えてpH4とし,減圧濾過を行った。残渣を酢酸エチルに加熱溶解させた後に水で洗浄し,無水硫酸マグネシウムで乾燥した後,乾燥剤を濾過した。さらに酢酸エチルを減圧留去した。残渣を混合溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で再結晶したところ,褐色固体の4−ヒドロキシ−4'−(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アゾベンゼン3.6g(10mmol)を得た。
【0082】
上記4−ヒドロキシ−4'−(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アゾベンゼン3.6g(10mmol)をDMF10mlに溶解し,溶液に炭酸カリウム3.5g(30mmol),9−ブロモノナノール3.5g(16mmol)を加え,130℃で3時間加熱還流した。TLCで反応終了を確認し,溶液に酢酸エチル50mlと水30mlを加えた後,有機層を希塩酸,蒸留水を用いて洗浄し,溶液を減圧留去・乾燥した。乾燥固体を酢酸エチルとヘキサンを用いて再結晶し,山吹色固体の4,4'−ビス(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アゾベンゼン4.6g(9.3mmol)を得た。
【0083】
上記4,4'−ビス(9−ヒドロキシノナニルオキシ)アゾベンゼン4.6g(9.3mmol)をTHFに150ml溶解し,硫酸マグネシウムによって予備乾燥した後,トリエチルアミン5.2ml(37mmol)を加えた。次いでヒドロキノンを少量加え,氷冷下撹拌した。THF30mlで希釈したアクリル酸クロリド3ml(37mmol)をゆっくりと滴下した。さらに2時間氷冷下撹拌した後,室温で12時間撹拌した。その後,炭酸カリウム水溶液をpH10になるまで加え,THFを減圧留去し,反応液を減圧濾過した。残留物をクロロホルムに溶解し,有機層を希塩酸と食塩水を用いて洗浄した後,溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)によって精製し,混合溶媒(酢酸エチル:メタノール=1:1)で再結晶を行い目的物である4,4'−ビス[9−(アクリロイルオキシ)ノナニルオキシ]アゾベンゼン(DA9AB)1.0g(1.6mmol)を得た。下記にDA9ABの収率,及びHNMR測定の結果を示す。
・収率17%
HNMR(δ,CDCl3):1.2-1.4(m,20H),1.6(m,8H),4.0(t,4H),4.1(t,4H),5.7(dd,2H),6.0(dd,2H),6.3(dd,2H),6.9(m,4H),7.8(m,4H)
上記式(7)に示したDA6ABについては,上記特許文献4に記載の方法にて合成した。
【0084】
<単官能性モノマーの合成>
上記式(4)に示したA9AB9については,上記架橋重合性モノマーDA9ABと同様の手順で合成し,NMR測定により目的の化合物が得られていることを確認した。下記にA9AB9のHNMR測定の結果を示す。
HNMR
(δ,CDCl3);0.86(t,4H),1.2-1.4(m,20H),4.0(t,4H),4.1(t,2H),5.8(dd,1H),6.1(dd,1H),6.4(dd,1H),6.9(m,4H),7.8(m,4H)
また,上記式(6)に示したAB6ABについては,上記特許文献4に記載の方法にて合成した。
【0085】
得られたA9AB9,A6AB6,DA9AB,DA6ABの相転移温度を表1に示す。
【表1】

【0086】
<架橋液晶高分子フィルムの作製>
中性洗剤及びイソプロピルアルコール中で超音波洗浄したガラス基板上に,ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の薄膜をスピンコート法により作製した。そして,加熱処理することによりポリイミド配向膜を有するガラス基板を得た。次いで,ラビング装置(E.H.C.RM-50)を用いてポリイミド面をラビングした後,シリカスペーサーを介してラビング方向がアンチパラレルになるように基板を貼り合せてホモジニアスセルとした。ホメオトロピックセルは,基板の両面にホメオトロピック配向処理を施すことにより得た。
【0087】
上記式(2)のCALP−Alk[1]からなる架橋液晶高分子フィルムを以下のようにして得た。すなわち,上記化学式(4)のA9AB9(単官能重合性モノマー)を20mol%,上記化学式(5)のDA9AB(架橋重合性モノマー)を80mol%の割合で混合し,光重合開始剤として上記化学式(8)のIrgacure784を2mol%添加した試料を等方相温度(97℃以上)まで昇温した。そして,毛細管現象を利用して上記液晶セルに封入した。この液晶セルを0.1℃/minでスメクチック相を示す89℃まで降温し,メソゲンを一軸配向させた後,高圧水銀灯の波長540nm以上,光強度3mW/cmの可視光を2.5時間照射して重合を行った。
【化8】

【0088】
上記式(3)のCALP−Alk[2]からなる架橋液晶高分子フィルムを以下のようにして得た。すなわち,上記化学式(6)のA6AB6(単官能重合性モノマー)を80mol%,上記化学式(7)のDA6AB(架橋重合性モノマー)を20mol%の割合で混合し,光重合開始剤として下記化学式(8)のIrgacure784を2mol%添加した試料を等方相温度(95℃)まで昇温した。そして,毛細管現象を利用して上記液晶セルに封入した。この液晶セルを0.5℃/minでネマチック相を示す88℃まで降温してメソゲンを一軸配向させた後,高圧水銀灯の波長545nm以上,光強度3mW/cmの可視光を2時間照射して重合を行った。その後,セルを剥離することにより架橋液晶高分子フィルムを得た。CALP−Alk[1],及びCALP−Alk[2]についてDSC測定を行ったところ,前者は30℃付近に,後者は60℃付近にガラス転移温度が観測された。
【0089】
<光駆動型アクチュエータの作製> 支持体としてポリエチレンフィルム(未延伸フィルム,50μm,東セロ製)を用い,架橋液晶高分子フィルムと支持体からなる光駆動型アクチュエータを以下の方法により作製した。まず,自動塗工装置I型(テスター産業製 PI-1210)及びバーコーターを用いて,ポリエチレンフィルム主面の一端部に溶液状の接着剤を供給し,ポリエチレンフィルムの主面全体に均一に広がるように接着剤を引き伸ばし,110℃に加熱乾燥して接着層をコートしたフィルムを得た。接着剤としては,アローベースSB-1200(ユニチカ製,酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体),アデカボンタイターHUX380(ADEKA製、ポリウレタン樹脂水性分散体)との混合物を用いた。次いで,このフィルムと架橋液晶高分子フィルムを110℃の条件下で熱圧着によりラミネートした。
【0090】
(実験例1) 光駆動型アクチュエータ1dとして,6mm×5mmサイズ,厚み20μmのホモジニアス配向のCALP−Alk[1]から構成される架橋液晶高分子フィルム2を,16mm×8mmサイズの支持体フィルム3の中央部領域に上述の方法により積層したものを用いた。接着層の厚みは10μmとした。図7(a)に,本実験例1に係る光駆動型アクチュエータ1dの光照射前の形状写真を示す。図7(b)は,この光駆動型アクチュエータ1dに第1の活性光線である紫外光を7s照射した際の形状を示す写真である。同図に示すように,架橋液晶高分子フィルム2と支持体フィルム3全体が連動してフラットな形状に変形した。第2の活性光線である可視光を照射すると,およそ15sで図7(a)の形状に戻った。紫外光と可視光を交互に照射することにより,繰り返し上述の運動を誘起できることを確認した。
【0091】
(実験例2) 次に,架橋液晶高分子成形体の種類を代えて上記実験例1と同様の実験を行った。すなわち,光駆動型アクチュエータ1eとして,5.5mm×4.5mm,厚み16μmのホモジニアス配向のCALP−Alk[2]から構成される架橋液晶高分子フィルム2を,14mm×5mmサイズの支持体フィルム3の中央部領域に上述の方法により積層したものを用いた。接着層の厚みは4μmとした。そして,60℃に設定したホットプレート(アズワン製,シャーマルホットプレート)上に光駆動型アクチュエータを載置して光運動挙動を検討した。
【0092】
図8(a)に,本実験例2に係る光駆動型アクチュエータの光照射前の形状写真を示す。図8(b)は,この光駆動型アクチュエータ1eに紫外光を6s照射した際の形状写真である。同図に示すように,架橋液晶高分子フィルム2と支持体フィルム3全体が連動してフラットな形状に変形した。図8(c)は,その後可視光を16s照射した際の形状写真である。同図に示すように,光照射前の元の形状に戻った。紫外光,可視光を交互に照射することにより,繰り返し上述の運動が誘起できることを確認した。
【0093】
(実験例3) 架橋液晶高分子成形体の液晶の配向性を代えて実験を行った。以下の点以外は,上記実験例2と同様とした。すなわち,本実験例3においては架橋液晶高分子成形体の配向として,ホモジニアス配向に代えてホメオトロピック配向のものを用いた。光駆動型アクチュエータ1fとして,9mm×5mm,厚み20μmのホメオトロピック配向のCALP−Alk[2]から構成される架橋液晶高分子フィルム2を,20mm×6mmサイズの支持体フィルム3の中央部領域に上述の方法により積層したものを用いた。接着層の厚みは4μmとした。
【0094】
本実験例3に係る光駆動型アクチュエータ1fの光照射前の形状写真を図9(a)に示す。図9(b)は,この光駆動型アクチュエータ1fに紫外光を21s照射した際の形状写真である。同図に示すように,緩やかに屈曲したフラットに近い架橋液晶高分子フィルム2と支持体フィルム3全体が,連動してより屈曲したアーチ型の形状に変形した。図9(c)は,その後可視光を150s照射した際の形状写真である。同図に示すように,光照射前の元の形状に戻ることを確認した。紫外光,可視光を交互に照射することにより,繰り返し上述の運動を誘起できた。
【0095】
(実験例4) 尺取虫型の光駆動型アクチュエータの一例について説明する。以下の点以外は,上記実験例1と同様とした。すなわち,本実験例4においては,光駆動型アクチュエータの載置面と当接する一の端部形状を略山形形状とした。支持体のサイズは11mm×5mm,架橋液晶高分子フィルムのサイズは6mm×4mmとした。照射プログラムは,以下の通りとした。すなわち,0s-3s紫外光,3s−8s可視光,8s−15s紫外光,15s−20s可視光,20s−25s紫外光,25s−31s可視光,31s−37s紫外光,37s−44s可視光,44s−50s紫外光,50s−55s可視光,55s−57s紫外光,57s−65s可視光とした。
【0096】
本実験例4に係る光駆動型アクチュエータ1gの光照射前の形状写真を図10(a)に示す。図10中の右上に記載の時間は,照射実験開始後の時間を示している。この光駆動型アクチュエータ1gに紫外光を照射すると,屈曲したアーチ型形状から緩やかに屈曲したフラットに近い形状に変形した。これに,可視光を照射すると,緩やかに屈曲したフラットに近い形状から屈曲したアーチ型形状に変形する。図10(b)の写真は,照射実験を開始してから5秒経過した段階(紫外光を照射した後,可視光を照射している段階)の形状を示したものである。図10(c)は同様に15s後,図10(d)は30s後,図10(e)は50s後,図10(f)は65s後の写真を示している。紫外光を照射した際には,第2当接部8の当接位置が照射前後を通じて変わらないのに対し,第1当接部7は前進した。一方,可視光を照射した際には,第1当接部7の当接位置が照射前後を通じて変わらないのに対し,第2当接部8は第1当接部7側に前進した。紫外光と可視光を交互に照射することにより,屈曲運動方向を反転させながら尺取虫のように移動することを確認した。第1当接部7を移動方向前部,第2当接部8を移動方向後部として65sで約10mm移動した。紫外光,可視光を交互に照射することにより,繰り返し上述の運動が誘起できることを確認した。
【0097】
(実験例5) 架橋液晶高分子成形体の種類を代えて上記実験例4と同様の実験を行った。すなわち,光駆動型アクチュエータ1hとして,6mm×7mm,厚み20μmのホモジニアス配向のCALP−Alk[2]から構成される架橋液晶高分子フィルム2を,17mm×7mmサイズの支持体フィルム3の中央部領域に上述の方法により積層したものを用いた。接着層は5μm,保護層として接着層と同様のものを2μm積層した。そして,上記実験例2と同様に,60℃のホットプレート上で光運動挙動を検討した。その他の条件は,上記実験例1と同様とした。照射プログラムは,以下の通りとした。すなわち,0−9s紫外光,9−16s可視光,6−28s紫外光,28−37s可視光,37−46s紫外光,46−54s可視光,54−61s紫外光,61−70s可視光,71−80s紫外光,80−90s可視光とした。
【0098】
本実験例5に係る光駆動型アクチュエータ1hの光照射前の形状写真を図11(a)に示す。この光駆動型アクチュエータ1hに紫外光を照射すると,屈曲したアーチ型形状からより緩やかに屈曲したフラットに近い形状に変形した。一方,この状態の光駆動型アクチュエータに可視光を照射すると,緩やかに屈曲したフラットに近い形状から屈曲したアーチ型形状に変形した。図11(b)は照射開始9s後,以降同様にして図11(c)は15s後,図11(d)は28s後,図11(e)は50s後,図11(f)は80s後,図11(g)は90s後の写真を示している。紫外光と可視光を切り替え照射することにより,屈曲運動方向を反転させながら尺取虫のように移動することを確認した。第1当接部7を移動方向前部,第2当接部8を移動方向後部として120sで約17mm移動した。紫外光,可視光を交互に照射することにより,上述の運動を繰り返し誘起できた。
【0099】
(実験例6) 屈曲自在に変形可能な光駆動型アクチュエータについて検討を行った。以下の点以外は,上記実験例1と同様にして実験を行った。すなわち,光駆動型アクチュエータ1iとして,全長34mm,幅4mmの支持体フィルム3上に,5mm×3mm,厚み20μmのホモジニアス配向のCALP−Alk[1]から構成される第1の架橋液晶高分子フィルム2i,及び8mm×3mm,厚み20μmのホモジニアス配向のCALP−Alk[1]から構成される架橋液晶高分子フィルム2iを積層したものを用いた。第1の架橋液晶高分子フィルム2i全長34mmの支持体フィルム3の一端部から13mm〜18mmの位置に,第2の架橋液晶高分子フィルム2iは支持体フィルム3の先と同じ一端部から23mm〜31mmの位置に固定した。接着層の厚みは2μmとした。光照射は,架橋液晶高分子フィルム主面の略垂直方向から,当該部位のほぼ全面が照射されるように行った。照射プログラムは,以下の通りとした。括弧内に照射領域を示す。すなわち,0s-4s紫外光(第1の架橋液晶高分子フィルム2i),4s−8s可視光(第1の架橋液晶高分子フィルム2i),8s−12s紫外光(第2の架橋液晶高分子フィルム2i),12s−18s紫外光(第1の架橋液晶高分子フィルム2i),18s−25s可視光(第1の架橋液晶高分子フィルム2i),25s−28s紫外光(第2の架橋液晶高分子フィルム2i),28s−30s可視光(第2の架橋液晶高分子フィルム2i)とした。光駆動型アクチュエータの作製方法は,上記実験例1と同様とした。
【0100】
本実験例6に係る光駆動型アクチュエータ1iの光照射前の形状写真を図12(a)に示す。光照射前の初期形状は,同図に示すように,全体として楕円形状となっている。載置面4との固定部を下側とし,第1の架橋液晶高分子フィルム2iが図中右側の湾曲部を,第2の架橋液晶高分子フィルム2iが図中左側の湾曲部を構成している。第2の架橋液晶高分子フィルム2iの一端部が載置面4に固定された支持体フィルム3上に接触して重なっている。この楕円形状の光駆動型アクチュエータ1iに,上述の照射プログラムにて光照射した際の形状写真を図12(b)〜図12(l)に示す。より詳細には,図12(b)は照射開始2s後,以降同様にして図12(c)は4s後,図12(d)は7s後,図12(e)は10s後,図12(f)は12s後,図12(g)は14s後,図12(h)は16s後,図12(i)は20s後,図12(j)は24s後,図12(k)は27s後,図12(l)は30s後の写真を示している。
【0101】
第1の架橋液晶高分子フィルム2iに紫外光を照射すると,第1の架橋液晶高分子フィルム2iが湾曲形状からフラットな形状になる方向に屈曲運動し,載置面4に固定された支持体フィルム3と第1の架橋液晶高分子フィルム2iとの境界近傍を中心として,第1の架橋液晶高分子フィルム2iが図中時計方向に回転した(図12(b),(c)参照)。この際,載置面4に固定されていない支持体フィルム3及びこれに固定されている第2の架橋液晶高分子フィルム2iも光照射前の形態をほぼ保持しながら同様に回転した。紫外光照射により,第1の架橋液晶高分子フィルム2iと第2の架橋液晶高分子フィルム2iの間隙に位置する支持体フィルム3と載置面4との成す角度が図中およそ時計2時の位置まで動いた段階で可視光照射に切り替えた。その結果,図中反時計方向に回転した(図12(d)参照)。可視光照射により,第1の架橋液晶高分子フィルム2iと第2の架橋液晶高分子フィルム2iの間隙に位置する支持体フィルム3と,載置面4との成す角度がおよそ時計方向12時まで動いた段階で,第2の架橋液晶高分子フィルム2iに紫外光を照射するように切り替えた。すると,第2の架橋液晶高分子フィルム2iが,図中時計方向に回転して当該部位がフラットに近い形状となった(図12(e)参照)。さらに,紫外光を照射し続けると,第2の架橋液晶高分子フィルム2iが,光照射前の屈曲方向と反対側に屈曲した(図12(f)参照)。
【0102】
次いで,第1の架橋液晶高分子フィルム2iに紫外光を照射すると,第1の架橋液晶高分子フィルム2iと載置面4との成す角度がおよそ時計方向12時の位置から時計方向2時と3時の間ぐらいの位置まで回転した(図12(g),(h)参照)。可視光照射に切り替えると,図12(i),(j)に示すように図中反時計方向に回転した。次いで,第2の架橋液晶高分子フィルム2iに紫外光,可視光を照射すると,それぞれ図12(k),図12(l)に示すように形状変化した。光照射領域,光照射時間,光強度等を制御することにより,支持体フィルム3の可動可能領域全体を大きく,なめらかに動かすことができた。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る光駆動型アクチュエータ,及びこの光駆動型アクチュエータを備える動力伝達システムは,上記光運動特性を利用して,例えば,プラスチックモーター,スイッチング素子,玩具,ロボットのアーム,医療用カテーテル,マイクロ化学分析システム,マイクロマシン等の種々の用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本実施形態1に係る光駆動型アクチュエータの形状の一例を示す模式的斜視図。
【図2】(a)はアゾベンゼン分子の異性化を説明するための模式図,(b)は架橋液晶高分子の構造変化を説明するための模式図。
【図3】架橋液晶高分子成形体の異方的変形を説明するための部分拡大図。
【図4】本実施形態2に係る光駆動型アクチュエータの一例を説明するための模式的断面図。
【図5】(a)は本実施形態3に係る光駆動型アクチュエータの一例を説明するための模式的正面図,(b)及び(c)はその側面図。
【図6】本実施形態4に係る光駆動型アクチュエータの運動挙動の一例を説明するための模式図。
【図7】(a)は実験例1に係る光照射前の光駆動型アクチュエータの写真,(b)は紫外光照射後の光駆動型アクチュエータの写真。
【図8】(a)〜(c)は,実験例2に係る光駆動型アクチュエータの写真。
【図9】(a)〜(c)は,実験例3に係る光駆動型アクチュエータの写真。
【図10】(a)〜(f)は,実験例4に係る光駆動型アクチュエータの写真。
【図11】(a)〜(g)は,実験例5に係る光駆動型アクチュエータの写真。
【図12】(a)〜(l)は,実験例6に係る光駆動型アクチュエータの写真。
【図13】従来例に係る光駆動型アクチュエータの模式的斜視図。
【符号の説明】
【0105】
1 光駆動型アクチュエータ
2 架橋液晶高分子フィルム
3 支持体フィルム
4 載置面
5 接着層
6 保護層
7 第1当接部
8 第2当接部
10 トランス体
11 トランス型アゾベンゼン側鎖
12 非アゾベンゼン側鎖
13 紫外光
14 可視光
20 シス体
21 シス型側鎖
30 架橋液晶高分子フィルム
31 高分子主鎖
41 第1端部
42 第2端部
43 天板
44 弁体
45 基板
46 オリフィス
51 第2当接部初期ライン
52 第1当接部初期ライン
53 第2当接部移動ライン
54 第1当接部移動ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,
前記第1の活性光線,及び第2の活性光線を照射して前記架橋液晶高分子成形体の屈曲運動方向を反転させて,尺取虫のように移動する光駆動型アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
載置部との当接部として,前記尺取虫のように移動する移動方向前部に第1当接部を,前記移動方向後部に第2当接部を設け,
前記第1当接部の前記載置部に対する圧力を前記第2当接部のそれに比して小さくすることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記第1当接部と前記第2当接部の形状を非対称とすることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記第1当接部をフラット形状とし,前記第2当接部を略山形形状の頂部とすることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記架橋液晶高分子成形体を可撓性のある支持体上に固定し,前記第1の活性光線及び第2の活性光線の照射に応じて,前記支持体を前記架橋液晶高分子成形体と連動して変形させることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項6】
第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備えるシート状の光駆動型アクチュエータであって,
メソゲン部位を配向制御して重合,又は架橋することにより得た前記架橋液晶高分子成形体を,可撓性を有する支持体上に積層することにより,前記第1の活性光線及び第2の活性光線の照射前の主面の形状を調整した光駆動型アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記架橋液晶高分子成形体が,前記メソゲンをホモジニアス 、ツイスト、ホメオトロピック 、ハイブリッド、ベンド又はスプレー配向させて重合することにより得られたことを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記支持体には,前記架橋液晶高分子成形体が積層されていない非積層領域があり,
前記第1の活性光線と第2の活性光線の照射に応じて前記架橋液晶高分子成形体の形状変化を誘起し,これに連動させて前記支持体における非積層領域の少なくとも一部の形状変化を誘起する光駆動型アクチュエータ。
【請求項9】
第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,
前記架橋液晶高分子成形体は可撓性を有する支持体上に固定され,前記架橋液晶高分子成形体に対する前記第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射条件に応じて,バネのように伸縮する光駆動型アクチュエータ。
【請求項10】
第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射により可逆的に異性化し得るフォトクロミック分子を含有する架橋液晶高分子成形体を備える光駆動型アクチュエータであって,
前記架橋液晶高分子成形体は可撓性を有する支持体上に固定され,前記架橋液晶高分子成形体に対する前記第1の活性光線,及び第2の活性光線の照射条件に応じて,屈曲自在に変形する光駆動型アクチュエータ。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記支持体が高分子成形体であることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光駆動型アクチュエータにおいて,
前記フォトクロミック分子が,アゾベンゼンであることを特徴とする光駆動型アクチュエータ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光駆動型アクチュエータと,当該光駆動型アクチュエータに前記第1の活性光線,及び第2の活性光線を照射する光源を備える動力伝達システム。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−228368(P2008−228368A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58593(P2007−58593)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】