免疫応答のプライミング
本発明は、インバリアント鎖と連結した抗原を使用して免疫応答をプライミングする技術及び方法に関し、これらは任意の好適なワクチンを使用するその後の追加免疫をプライミングするために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバリアント鎖と連結した抗原を使用して免疫応答をプライミング(priming:初回刺激)する技術及び方法に関し、これらは任意の好適なワクチンを使用するその後の追加免疫をプライミングするために使用される。
【0002】
本出願において引用される全ての特許文献及び非特許文献のその全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ワクチン投与は、疾患又は病態に対する免疫をもたらすための被験体への抗原物質(ワクチン)の投与である。免疫応答を刺激するために使用される場合、該抗原は免疫原として知られ、該プロセスは免疫化として知られる。ワクチン投与は、複数の形態で投与することができる1つ又は複数の免疫原の投与を含む。
【0004】
ワクチン投与は、確かな免疫応答の確立を必要とする。感染又はワクチン投与により活性化される免疫応答は、複数の細胞型、例えばT細胞、B細胞及び抗原提示細胞、並びに複数の種々の分子、主に抗原、MHC分子、T細胞受容体及びB細胞受容体、並びにその他多くのものの相互作用に依存する。
【0005】
伝統的なワクチン、すなわち第1世代のワクチンは、死滅させた又は弱毒化した病原性菌株に基づいている。これらは感染性が低いという問題を抱えることが多く、免疫原性が不十分であり、ワクチン投与によりもたらされる保護が不十分であることが多い。
【0006】
病原性生物由来の個々の抗原タンパク質に基づく第2世代のワクチン、すなわちサブユニットワクチンの開発により、純粋なペプチド又は炭水化物が弱い免疫原である傾向を有することが明らかとなった。
【0007】
DNAワクチン、すなわち第3世代のワクチンは、より広範囲のタイプの免疫応答を誘導する能力を有するが、ヒトにおける免疫原性が低いという潜在的な欠点を依然として有する。
【0008】
全てのタイプのワクチンに関して、ワクチン投与のプログラムは、ワクチンの効力を増大させ、上述した制限を克服し、ワクチン投与時における免疫系の刺激の費用対効果がより高い手段を提供するという満足されていない必要性に直面している。
【0009】
本発明は、ワクチンの効力を増大させるための解決方法を提供することにより、ワクチンの低免疫原性と関連する問題を解決することを目的とする。
【0010】
本発明は、免疫応答のプライミングのための解決方法を提供することにより、ワクチンの低免疫原性と関連する問題を解決することを目的とする。
【0011】
したがって本発明は、前記ワクチンの効力を増大させるための、MHCクラスIIと会合したインバリアント鎖/CD74(本明細書においてインバリアント鎖又はIiと称する)又はその変異体を含み、少なくとも1つの抗原タンパク質又は前記抗原タンパク質の断片をコードする核酸構築物による免疫系のプライミング、その後引き続く追加ワクチン投与を対象とする。
【0012】
本発明によるワクチンは、病原性抗原又は癌抗原を対象とすることができる。
【0013】
本明細書において提示されるデータにより、インバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物を使用するプライム−ブースト法を開発することが容易ではないことが示される。
【0014】
驚くべきことに、本発明は、前記免疫プライミングの効果を低減させることなく、インバリアント鎖由来のIi−KEY(LRMKアミノ酸残基を含む)及び/又はIi−CLIPドメインの一部を変化させることができることを開示する。
【0015】
この問題に適切に対処していない従来技術の文献について以下で論じる。
【0016】
特許文献1(Holst et al.)は、応答を拡大かつ改善するのと同時に応答の速度を増大させるように免疫応答を刺激する、改善されたDNAワクチンを開発することを対象とする。Holst et al.は、抗原のインバリアント鎖との融合により、CD4+ T細胞非依存性メカニズムを通じてその後の抗ウイルス性CD4+及びCD8+ T細胞応答が劇的に増強されることを見出した。
【0017】
Holmes et al.(非特許文献1)は、Ii−keyハイブリッドペプチドワクチン(Ii−keyは、インバリアント鎖タンパク質の中心部分であるLRMKという4個のアミノ酸配列を含む)の最初のヒト第I相試験を記載している。
【0018】
Kallinteris et al.(非特許文献2)による知見も同様に、ワクチンの効力を増強するためにLRMKアミノ酸を含むIi−key部分を利用することを対象とする。
【0019】
特許文献2(Humphreys et al.)は、最初に前記Ii−keyペプチドのLRMK残基を含むIi−Keyハイブリッドペプチド構築物で被験体の免疫系をプライミングすること、及びその後病原体に対するワクチンを投与して、プライミング工程において生じた免疫応答をブースト(boost:追加刺激)することにより、病原体に対するワクチンの効力を増大させる方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2007/062656号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0095798号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J Clin Oncol. 2008, Jul 10;26(20):3426-33
【非特許文献2】Expert Opin. Biol. Ther. 2006, 6(12):1311,1321
【発明の概要】
【0022】
本発明は、少なくとも1つのMHCクラスIIと会合したインバリアント鎖/CD74(本明細書においてインバリアント鎖又はIiと称する)又はその変異体を含み、少なくとも1つの抗原タンパク質又は前記抗原タンパク質の断片をコードする核酸構築物による免疫系のプライミング、その後引き続く追加ワクチン投与が、前記ワクチンの効力を増大させることを示す。
【0023】
本発明によるワクチンは、病原性抗原又は癌抗原を対象とし得る。
【0024】
驚くべきことに、本発明は、前記プライミングの効果を低減させることなく、インバリアント鎖からIi−KEYドメイン(LRMKアミノ酸残基を含む)及び/又はIi−CLIPドメインの一部を部分的に置換するか又は取り除くことができることを開示する。
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明は、応答を拡大かつ改善するのと同時に応答の速度を増大させるように、2工程のプライム−ブースト法(これにより、免疫系を最初にインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物によりプライミングし、その後引き続いて任意のタイプの好適なワクチンを使用する追加ワクチン投与を行う)を利用することにより、ワクチン投与により生じた免疫応答を十分に刺激するという問題を解決した。特に、対象とする特異的かつ迅速な免疫系の刺激のための新規な系が、これにより、全ての動物、例えばヒトのワクチン投与法を改善するために利用可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この問題は、特許請求の範囲において特徴付けられる本発明の実施の形態により解決される。本発明により、Ii鎖ベースの核酸構築物によるプライミングが、その後ワクチンでブーストすることによる抗原特異的CD8+ T細胞、CD4+ T細胞及び/又はB細胞の生成を顕著に増強することが見出された。
【0027】
したがって、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、免疫系をプライミングして被験体における二次ワクチン(subsequent vaccine)の投与の際の免疫化を増強することが可能である、核酸構築物を提供することは、本発明の一態様である。
【0028】
本発明は、1つの実施の形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、被験体における二次ワクチンの投与による免疫化をプライミングすることが可能である、核酸構築物を提供する。
【0029】
1つの実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖を、Iiの効果を低減させることなく、その野生型配列から変化させることができる。
【0030】
したがって、1つの実施の形態では、LRMKアミノ酸残基を含むIi−KEYドメインが、欠失又は置換、例えば突然変異により変化している。
【0031】
別の実施の形態では、Ii−CLIPドメインの一部が、欠失又は置換、例えば突然変異により変化している。Ii−CLIPドメインを、具体的には91位及び99位のメチオニンをアラニンに置換することにより変化させることができる。これは、MHC IIによる抗原提示を驚くほど増大させる。
【0032】
別の実施の形態では、Iiを、具体的にはIiの最初の17個のアミノ酸を欠失させることにより変化させることができる。これにより、記憶応答が驚くほど増大する。
【0033】
つまり、これらの変化の各々が別々に又は組み合わせて起こり得るということになる。
【0034】
1つの実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖は、ウイルス、微生物、例えば細菌又は寄生生物を対象とするワクチンの免疫応答をプライミングするために使用する場合、その野生型配列から変化している。
【0035】
別の実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖は、癌ワクチン、又は異常な生理学的応答を対象とするワクチンの免疫応答をプライミングするために使用する場合、その野生型配列から変化していてもよく、又は変化していなくてもよい。
【0036】
別の実施の形態では、免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、免疫応答をブーストするために使用される二次ワクチンとが同一である。プライマー(primer:初回刺激剤)及びブースター(booster:追加刺激剤)の前記少なくとも1つの同一の部分は、Ii若しくはその変異体、抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの一部、又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープであり得る。
【0037】
本明細書において詳述されるような核酸構築物を含む送達ビヒクルであって、RNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、又はウイルス由来のDNAビヒクル若しくはRNAビヒクルである、送達ビヒクルを提供することは、同様に本発明の目的である。
【0038】
好ましい1つの実施の形態では、前記送達ビヒクルは、リポソームの形成、生分解性ポリマーマイクロスフェアの形成、コロイド性金粒子上への核酸構築物のコーティング、又はウイルス由来のDNAベクター若しくはRNAベクター中への組み込みを含む。
【0039】
さらに好ましい1つの実施の形態では、前記核酸構築物又は前記送達ビヒクルを、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波又は流体力学的送達を用いて投与する。
【0040】
したがって、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物により免疫応答を刺激する手段を提供することは、本発明の一態様である。
【0041】
さらなる目的は、核酸構築物、又はこれらのいずれか若しくはこれらのいずれかの任意の部分内にコードされるタンパク質の細胞間拡散を刺激する手段を提供する。
【0042】
本明細書において記載される核酸構築物によりコードされるようなキメラタンパク質を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0043】
本明細書において記載される核酸構築物によりコードされるキメラタンパク質を認識する抗体を提供することは、本発明のさらなる一態様である。
【0044】
ワクチンの効力を改善する方法であって、本明細書において詳述されるような核酸構築物を投与することを含む、方法を提供することは、本発明の一態様である。
【0045】
免疫応答のプライミングに好適である、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物は、特に本発明と関連する。
【0046】
部品キット(kit in parts)であって、前記核酸構築物及び/又は好適なワクチンを投与する医療用機器又は他の手段、並びにさらに該部品キットの使用方法に関する取扱説明書と共に本明細書において記載されるような核酸構築物を含む、部品キットを提供することは、本発明のさらなる一態様である。
【0047】
つまり、本発明は、本明細書において以下で詳述されるような核酸構築物を動物に投与することにより、動物における免疫応答を増強する手段を提供することになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるDNAプライミングを示す図である。
【図2】Ii配列におけるドメイン及び試験した突然変異の位置を示す図である。
【図3】IiがSIINFEKL/H−2kb OVA由来のエピトープの細胞表面提示を劇的に増大させることを示す図である。
【図4】Iiがシスにおいてのみ機能することを示す図である。
【図5】N末端の欠失及び置換がIiの刺激能に影響を与えないことを示す図である。
【図6】C末端の欠失及び置換がIiの刺激能に影響を与えないことを示す図である。
【図7】N末端及びC末端の欠失のみがIiの刺激能を低減させることを示す図である。
【図8】Ad−IiGPワクチン及びAd−GPワクチンの用量応答を示す図である。
【図9】MHCクラスIIによる抗原提示に関するAd−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPの比較を示す図である。
【図10】in vivo経時研究におけるAd−GP、Ad−IiGP、Ad−GPLamp−1及びAd−IiΔ17GPの比較を示す図である。
【図11】Ad−GP、Ad−IiGP、Ad−IiΔ17GP、Ad−IiKEYGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−Ii1−117GP及びAd−Ii1−199GPのin vivo応答の比較を示す図である。
【図12】Ad−GPがその後のAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能であることを示す図である。
【図13】Ad−IiGPがその後のAd−GP又はAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能ではないことを示す図である。
【図14】Ad−GPワクチン及びAdIi−Gpワクチンの用量応答を示す図である。
【図15】残基50〜215を含むインバリアント鎖の変異体(Ii50〜215)と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合したマンノース受容体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
定義
アデノウイルス:ウイルスを含有する二本鎖DNAの群。アデノウイルスを遺伝子的に改変して、複製不能又は条件的に複製不能にすることができる。この形態で、アデノウイルス構築物又はアデノベクターとして、これらをワクチン投与又は遺伝子療法のための遺伝子送達ビヒクルとして使用することができる。
アデノウイルス線維タンパク質:アデノウイルスの任意の血清型由来の線維タンパク質。アデノウイルス線維ノブ、又は異種ノブが挿入されたアデノウイルス線維ノブとしても知られる。
アジュバント:投与された免疫原決定基/抗原/核酸構築物との混合により前記決定基に対する免疫応答を増大させる又はそうでなくとも変化させる任意の物質。
アミノ酸:in vivoで合成されるタンパク質及び酵素を含むペプチド及びポリペプチドにおいて生じる任意のアミノ酸を含み、したがってアミノ酸の修飾形態を含む、任意の合成又は天然のアミノカルボン酸。「アミノ酸」という用語は本明細書において、少なくとも1つの他の種、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ以上の他の種と反応した上述のアミノ酸を包含することを意味する「アミノ酸残基」という用語と同義のものとして使用される。「アミノ酸」という総称は、天然及び非天然のアミノ酸の両方(それらのいずれもが「D」異性体又は「L」異性体であり得る)を含む。アミノ酸を「aa」と略記することがある。
抗体:免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の活性部分。抗体は、例えば無傷の免疫グロブリン分子、又は免疫学的活性を保持しているその断片である。
抗原:クローン的に分布した(clonally distributed)免疫受容体(T細胞受容体又はB細胞受容体)と結合することができる任意の物質。通常ペプチド、ポリペプチド又は多量体ポリペプチド。抗原は、好ましくは免疫応答を誘発することが可能である。
ブーストする:ブースター注射又はブースター投与によりブーストすることは、同じ(同種)又は別の(異種)免疫化剤の過去の投与により誘発された免疫応答を持続させる又は増強するために、免疫系をプライミングするために使用された物質を最初に投与した後に与えられる1つ又は複数のさらなる用量の免疫化剤、例えばワクチンを与えることである。
担体:免疫応答の誘導において助けとなるように、抗原が結合する実体(Entity)又は化合物。
キメラタンパク質:2つ以上の完全な若しくは部分的な遺伝子、又は一連の(非)ランダム核酸を共にスプライシングすることにより作製されたヌクレオチド配列によりコードされる、遺伝子操作した(genetically engineered)タンパク質。
補体:その作用が抗体の働きを「補完する」、複雑な一連の血中タンパク質。補体は、細菌を破壊し、炎症を引き起こし、免疫反応を調節する。
サイトカイン:成長又は分化の調節因子(本明細書において非限定的に使用されるものであり、本発明及び特許請求の範囲の解釈を限定するものではない)。サイトカインに加えて、接着分子若しくはアクセサリー分子、又はその任意の組合せを、単独で又はサイトカインと組み合わせて利用することができる。
CTL:細胞傷害性Tリンパ球。T細胞受容体と共にCD8を発現し、したがってクラスI分子により提示される抗原に応答することが可能であるT細胞の下位の群。
送達ビヒクル:それによりヌクレオチド配列若しくはポリペプチド又はその両方を少なくとも1つの媒体から別の媒体へ輸送することができる実体。
断片:この用語は、核酸又はポリペプチドの非全長部分を示すために使用される。したがって、断片はそれ自体もそれぞれ核酸又はポリペプチドである。
異種ブースト又は異種プライム−ブースト:免疫系をブーストするために使用される物質が、免疫応答をプライミングするために過去に使用された物質と異なる。
同種ブースト又は同種プライム−ブースト:免疫系をブーストするために使用される物質が、免疫応答をプライミングするために過去に使用された物質と同じである。
個体:鳥類、哺乳類、魚類、両生類又は爬虫類の任意の種又は亜種、例えばヒト。
インバリアント鎖:小胞体(endoplasmatic reticulum)及びその後の細胞コンパートメントにおいてMHC II分子と会合し、これを安定化する内在性膜タンパク質である糖タンパク質。ここで「インバリアント鎖」という用語は、ヒトのインバリアント鎖と或る特定の類似性を有する全ての天然の又は人工的に生成された全長又は断片の相同遺伝子及び相同タンパク質を包含する。インバリアント鎖は本明細書においてIiと略記する。
単離(Isolated):(本明細書において開示される核酸、ポリペプチド及び抗体に関連して使用される)「単離」は、同定され、その自然環境、典型的には細胞環境の構成成分から分離及び/又は回収された核酸、ポリペプチド及び抗体を表す。本発明の核酸、ポリペプチド及び抗体は好ましくは単離されており、本発明のワクチン及び他の組成物は好ましくは単離した核酸、ポリペプチド、又は単離した抗体を含む。
MHC:主要組織適合複合体(MHCの2つの主要なサブクラス、クラスI及びクラスIIが存在する)。
ネイキッドDNA:ヒストンと会合していないDNA。低メチル化及びCpGリッチなDNAであることが多い。ネイキッドDNAは、環状又は直鎖状のもの、例えば環状プラスミドであり得る。
核酸:遺伝情報を運ぶヌクレオチドの鎖又は配列。本発明に関しては、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、又はリボ核酸(RNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、挿入(Intercalating)核酸(INA)、ねじれ挿入(Twistedintercalating)核酸(TINA)、ヘキシトール核酸(HNA)、アラビノ核酸(ANA)、シクロヘキサン核酸(CNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオシル(threosyl)核酸(TNA)、ギャップマー(Gap-mers)、ミックスマー(Mix-mers)及びモルホリノからなる群のいずれかであり得る。
核酸構築物:遺伝子操作した核酸。典型的には、複数の要素、例えば遺伝子若しくはその断片、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA尾部、リンカー、ポリリンカー、作動性リンカー、多重クローニング部位(MCS)、マーカー、停止コドン、他の調節要素、内部リボソーム侵入部位(IRES)又はその他を含む。
作動性リンカー:核酸又はポリペプチドの生物学的プロセシングを確実にするように、核酸構築物又は(キメラ)ポリペプチドの2つの部分を結合するヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列。
病原体:疾患の特定の原因となる作用因子、特にその宿主に対して疾患を引き起こし得る生物学的作用因子、例えばウイルス、細菌、プリオン又は寄生生物(感染因子とも称される)。
ペプチド:配列を規定し、アミド結合により連結した複数の共有結合したアミノ酸残基。この用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドと類似のものとして使用される。天然及び/又は非天然のアミノ酸が、ペプチド結合により、又は非ペプチド結合により連結され得る。「ペプチド」という用語は、当該技術分野において既知であるように、化学反応又は酵素触媒反応により導入される翻訳後修飾形態も包含する。この用語は、ポリペプチドの変異体又は断片を表し得る。
薬学的担体:この用語(賦形剤又は安定化剤とも称される)は、利用される投与量及び濃度で、これに曝される細胞又は個体に対して非毒性である。生理学的に許容可能な担体は、pHを緩衝化した水溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、緩衝液、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び他の有機酸緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジン;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール若しくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウムイオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)を含む。
複数:少なくとも2つ。
プライミングする:免疫応答を所要の免疫原に集中させるための、例えばDNAによる免疫系の最初のプライミング。
プライム−ブースト:免疫応答を所要の免疫原に集中させるための、例えばDNAによる免疫系の最初のプライミング、及びワクチンにより誘導される免疫応答の増大をもたらす、前記ワクチンによる免疫応答のその後のブースト。
プロモーター:RNAポリメラーゼが結合して1つ又は複数の近傍の構造遺伝子によるメッセンジャーRNAの転写を開始させる、DNA鎖における結合部位。
シグナルペプチド:細胞内におけるタンパク質の最終的な位置を決定する、アミノ酸の短い配列(選別ペプチド(sorting peptide)とも称される)。
好適なワクチン:免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、免疫応答をブーストするために使用される二次ワクチンとが同一であることを特徴とする、最初のプライミングにより刺激された免疫応答をブーストすることが可能である、本発明による使用のための任意のワクチン。プライマー及びブースターの前記少なくとも1つの同一の部分は、Ii若しくはその変異体、抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの一部、又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープであり得る。
界面活性剤(Surfactant):それが溶解する液体の表面張力を低減させることが可能である界面活性剤(surface active agent)。界面活性剤は、親水性である極性基、及び疎水性であり脂肪鎖(fatty chain)から構成されることが多い非極性基を含有する化合物である。
ワクチン:動物における免疫応答を誘導することが可能である物質又は組成物。本文書において免疫原組成物とも称される。生物における記憶を誘導する免疫応答(液性/抗体及び/又は細胞性)であり、一次応答よりも二次応答によって生じる感染因子をもたらし、したがって宿主生物に対するその影響を低減させる、免疫応答。本発明のワクチンを、予防的及び/又は治療的な薬物として与えることができる。組成物は、以下の1つ又は複数を含み得る:抗原(複数可)、Iiと作動可能に連結した1つ又は複数の抗原を含む核酸構築物、担体、アジュバント及び薬学的担体。
変異体:或る基準核酸又は基準ポリペプチドの「変異体」は、前記基準核酸又は前記基準ポリペプチドに対して或る程度の配列相同性/配列同一性を示すが、前記基準核酸又は前記基準ポリペプチドと同一ではない核酸又はポリペプチドを表す。
【0050】
ドメイン、領域及びモチーフは、本明細書において交換可能な用語として使用することがある。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドと作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物に関する。該核酸構築物は、その後の追加ワクチン投与の効果を増強するための、免疫応答のプライミングのために使用される。
【0052】
免疫応答
ワクチンを、予防的に(ワクチンを実際の感染が起こる前に与える)、又は治療的に(ワクチンが、身体内に既に存在する病原体に対する免疫応答を誘発又は加速する)使用することができる。両方のワクチン投与方法が、確かな免疫応答の確立を必要とする。感染又はワクチン投与により活性化される免疫応答は、複数の細胞型、例えばT細胞、B細胞及び抗原提示細胞、並びに複数の種々の分子、主に抗原、MHC分子、T細胞受容体及びB細胞受容体、並びにその他多くのものの相互作用に依存する。
【0053】
抗原は、MHC分子により抗原提示細胞の表面上に提示されるペプチド断片である。抗原は、外来のもの、すなわち病原体起源のもの、又は生物それ自体に由来するもの、いわゆる自己(self or auto)抗原であり得る。MHC分子は、「主要組織適合複合体(majorhistocompatibility complex)」(故にMHC)として知られる、特定の染色体領域によりコードされる多型の遺伝子ファミリーの代表である。2つのクラスのMHC分子(MHCクラスI(MHC−I)及びMHCクラスII(MHC−II))が存在する。
【0054】
Tヘルパー細胞は、抗原提示細胞の表面上に存在するMHCクラスII(MHC−II)分子により提示される抗原により刺激される。MHC−II分子は、小胞体において合成される。合成時に、MHC−II分子は、MHC−II分子が自己抗原(self- or auto-antigens)を積み込むのを防止する形で、インバリアント鎖(Ii)と結合する。MHC−II分子は、インバリアント鎖におけるシグナル配列により、特定の細胞コンパートメントにおいて細胞表面に輸送される。コンパートメントがその内容物のプロセシングにより成熟するにつれて、MHCクラスII分子は、リソソームから、後期エンドソームまで(エンドサイトーシス小胞との融合後)、MHCクラスIIコンパートメント(MIIC)まで進む。エンドサイトーシス小胞は、外来抗原、すなわちタンパク質分解により切断された細菌のペプチド断片を含有する。これらの断片は、その分解により、MHC−II分子上に積み込まれるように調製される。MHC−II分子は、インバリアント鎖が第1にタンパク質分解により分解されてMHC−II結合ドメインにCLIPと称されるペプチドのみを残し、第2にHLA−DM分子によりCLIPが除去される二段階プロセスで、インバリアント鎖により放出される。MHC−II分子はその後自由に外来抗原と結合することができ、MIIC小胞の細胞膜との融合後に細胞表面上にこれらを提示する。これにより、提示された抗原が複数の手段によりB細胞(最終的に抗体分泌細胞へと分化する)を活性化するTヘルパー細胞の活性化を刺激するので、液性免疫応答が開始する。
【0055】
T細胞傷害性細胞のT細胞受容体が抗原提示細胞上のMHCクラスI分子と結合した抗原を認識すると、細胞性免疫応答が開始する。MHC−I分子は、MHC−IIと会合するインバリアント鎖のような機能性を有する分子と会合していない。MHC−Iの抗原提示分子へのプロセシングはさらに、MHC−I分子が小胞体において既に抗原を積み込んでいるという点で、MHC−II分子のプロセシングと異なる。MHC−I分子により提示される抗原は典型的には、プロテアソームにより切断された、抗原提示細胞自体により合成されたタンパク質のペプチド断片である。これらのタンパク質は、細胞自身のDNAにおいてコードされる異常タンパク質、又は細胞に感染し、そのタンパク質合成機構に寄生するウイルス若しくは他の病原体由来のタンパク質であり得る。MHCクラスI関連タンパク質分解系は、実質的に全ての細胞に存在する。
【0056】
その名前により示唆されるように、2つのタイプのT細胞の機能は顕著に異なる。細胞傷害性T細胞は、細胞の直接的溶解により、及びサイトカイン、例えばγ−インターフェロンを分泌することにより細胞内の病原体及び腫瘍を根絶する。主要な細胞傷害性T細胞はCD8+ T細胞であり、これも抗原特異的である。ヘルパーT細胞も細胞を溶解することができるが、これらの主要な機能はB細胞(抗体産生細胞)及び他のT細胞の活動を促進するサイトカインを分泌することであり、したがってこれらは外来抗原に対する免疫応答(抗体媒介性及び細胞傷害性T細胞媒介性の応答メカニズムを含む)を広く増強する。CD4+ T細胞は、免疫応答における主要なヘルパーT細胞表現型である。
【0057】
核酸構築物
本発明の一態様は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片(要するに抗原)と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物、例えばネイキッドDNA構築物に関する。
【0058】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がKEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がCLIP領域の変異体を含む、核酸構築物に関する。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体が最初の17個のアミノ酸を含まない、核酸構築物に関する。
【0061】
さらに別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記核酸構築物が癌ワクチンのプライミングのために使用される、核酸構築物に関する。
【0062】
核酸構築物は、遺伝子操作した核酸であると理解される。核酸構築物は、非複製的な直鎖の核酸、環状の発現ベクター、又は自己複製するプラスミドであり得る。核酸構築物は、複数の要素、例えばこれらに限定されないが、遺伝子若しくはその断片、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA尾部、リンカー、ポリリンカー、作動性リンカー、多重クローニング部位(MCS)、マーカー、停止コドン、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及び組み込みのための宿主相同配列、又は他の規定の要素を含み得る。本発明による核酸構築物が、上述の要素の任意の組合せの全て又はサブセットを含み得ることを理解すべきである。
【0063】
核酸構築物を操作する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., eds., ColdSpring Harbor Laboratory, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照されたい)。さらに、本発明による核酸構築物を、鋳型を用いずに合成することができ、様々な商業的供給業者(例えばGenscript Corporation)から入手することができる。
【0064】
一実施形態では、核酸構築物を含む核酸残基を修飾することができる。前記修飾を、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化、硫化及びその他からなる群から選択することができる。
【0065】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNAから構成されていてもよい。別の実施形態では、核酸構築物は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、挿入核酸(INA)、ねじれ挿入核酸(TINA)、ヘキシトール核酸(HNA)、アラビノ核酸(ANA)、シクロヘキサン核酸(CNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオシル核酸(TNA)、ギャップマー、ミックスマー、モルホリノ、又はそれらの組合せからなる群から選択される核酸から構成されていてもよい。
【0066】
上で論じたように、MHC II分子はプロセシング時に、会合したインバリアント鎖が分解されて外来抗原ペプチドをMHC II分子上に積み込むことが可能となるまで、インバリアント鎖と会合している。インバリアント鎖−リンカー−エピトープ(インバリアント鎖はKEY領域(LRMKアミノ酸残基を含む)を含む)を含む「外部からの(external)」タンパク質構築物を適用すると、前記タンパク質構築物は、前記MHC II分子が細胞の細胞外表面上に位置した時点でMHC II分子(抗原を含有する)と相互作用する。したがって、その効果は、外部からのものであり、タンパク質構築物のインバリアント鎖のKEY残基(LRMKアミノ酸残基を含む)の、MHC II分子上への積み込みに関して競合する能力に依存する。換言すれば、細胞内プロセシング時にMHC II分子上に既に積み込まれている抗原が、細胞表面上のMHC II分子から「チップオフ(tipped off)」すなわち除去され、インバリアント鎖−リンカー−エピトープを含むタンパク質構築物により置換されなければならない。これは、増幅することができない「1:1」効果をもたらし、インバリアント鎖由来のLRMKアミノ酸残基の存在に常に依存する。
【0067】
本発明による核酸構築物は、インバリアント鎖又はその変異体をコードし、抗原ペプチド又はエピトープもコードする「内部からの(internal)」核酸構築物を適用することに関し、すなわち核酸構築物を、被験体における細胞の細胞内空間中にトランスフェクトする。前記核酸構築物は、細胞の翻訳機構を使用して、前記MHC分子が細胞の内側に、例えばエンドソーム又はMIIC内に位置した時点でMHC II分子又はMHC I分子(抗原を含有しない)と相互作用するインバリアント鎖−リンカー−エピトープ生成物又はインバリアント鎖−エピトープ生成物をもたらす。したがって、効果は内部からのものであり、タンパク質構築物のインバリアント鎖のKEYドメイン(LRMKアミノ酸残基を含む)の、MHC分子上への積み込みに関して競合する能力に依存しない。実際に、効果は、Ii−KEY領域及びそのLRMK残基の存在に依存しない。さらに、これは、1つの核酸構築物が2つ以上の生成物をもたらし得るという点で、増幅することができる効果をもたらす。
【0068】
核酸構築物の「内部から」の使用は、上で詳述したように、タンパク質構築物の「外部から」の使用に対して複数の利点を有する。1)増幅;小量の核酸構築物の導入により、全てがMHC分子と結合することができる多くの生成物がもたらされ、これは、MHCと結合した前記生成物が内部移行によりさらに再利用されて最終的にその提示を増大させることができるという点で二次的に増幅することもできる。2)細胞自身の抗原プロセシング系の使用により、MHC分子に対するエピトープの適切かつ堅固な結合が確実になる。3)Ii−KEY領域のLRMK残基、及び未変化の(native)Ii−CLIPドメインが必要でない。
【0069】
コドン最適化及び縮重核酸配列
異種宿主における機能的タンパク質の発現は、現代のバイオテクノロジーの礎石である。残念なことに、多くのタンパク質は、その本来の文脈の外で(outside their original contexts)発現するのが困難である。これらは、非標準ヌクレオチドコードを使用する生物由来の、又は所望の宿主における使用頻度が低いコドンを豊富に含む遺伝子由来の、発現制限調節要素を含有することがある。遺伝子合成の速度及び効率の改善により、タンパク質発現を最大化するための実行可能な完全な遺伝子再設計がもたらされた。例えば、タンパク質発現は、研究対象の遺伝子のコドン頻度が宿主発現系のコドン頻度と適合すると、劇的に改善され得る。例えば、再設計戦略は、最適コドンバイアスの使用だけでなく、mRNA構造要素の変化、並びに翻訳及び開始領域の改変も含み得る。コドン最適化のための技法は、当業者に既知であり、商業的供給業者、例えばGenScript Corporationにより行うことができる。
【0070】
本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、いずれかの方法で、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による配列番号2に開示されるアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖(ヒトIi)又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすようにコドン最適化され得ることが理解される。
【0071】
同様に、本発明によるインバリアント鎖を含む核酸構築物は、いずれかの方法で、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による、該核酸構築物を使用して免疫応答をプライミングすることができる任意の動物(任意の脊椎動物、哺乳動物、魚又は鳥を含む)のアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすようにコドン最適化され得る。
【0072】
コドンバイアス:コドンバイアスを、原核生物の遺伝子発現における単一の最も重要な因子として特定した。遺伝コード中に或るコドンが出現する程度は、生物間で、高レベル及び低レベルで発現されるタンパク質間で、さらに同じオペロンの異なる部分の間で、顕著に変化する。この理由はほぼ確実に、好ましいコドンが細胞内で利用可能な同族tRNAの存在量と相関するためである。この関係は、翻訳系を最適化するのに、またコドン濃度とイソアクセプターtRNA濃度とのバランスをとるのに、役に立つ。
【0073】
使用頻度の低いコドンの置き換え:一般的に、遺伝子が含有するコドンの出現頻度が低ければ低いほど、異種タンパク質が特定の宿主系内に合理的なレベルで発現される可能性が低くなる。これらのレベルは、出現頻度の低いコドンがクラスターに又はタンパク質のN末端部分に出現する場合、さらに低くなる。アミノ酸配列を改変することなく、出現頻度の低いコドンを、宿主系のコドンバイアスをより密接に反映する他のコドンで置き換えることにより、機能的タンパク質発現のレベルが増大し得る。
【0074】
問題のあるコドンの排除:或る生物が5%〜10%未満の確率で(of the time)しか使用しない任意のコドンは、その由来に関わらず、問題を引き起こすことがある。さらに、近接した又は隣接したコドンは、コドンが離れているものである場合に比べて、タンパク質発現に対してより強い影響(affect)を有し得る。出現頻度の低いコドン、及び終結シグナルとして読まれる可能性が考えられるコドンを排除することにより、発現が低い又は起こらない事態を防止することができる。
【0075】
哺乳動物宿主におけるウイルスタンパク質の発現:ウイルス遺伝子であっても、遺伝子を適切に調製した場合には、哺乳動物細胞株において首尾良く発現することができる。ウイルス遺伝子の高密度の情報負荷は、重複リーディングフレームをもたらすことが多い。多くのウイルス遺伝子は、コード配列内にシス作用性の負の調節配列もコードする。ウイルス遺伝子を、所望のタンパク質のみを発現するようにというだけでなく、調節要素を破壊することによりタンパク質産生を増強するように再合成することができる。ウイルスコドン最適化は、それにより標的の免疫原性が増大するため、DNAワクチン研究において特に有用である。
【0076】
他の制約:コドンバイアスは遺伝子発現において大きな役割を果たすが、発現ベクター及び転写プロモーターの選択も重要である。タンパク質のN末端領域を取り囲むヌクレオチド配列は、出現頻度の低いコドンの存在、及び開始AUGに直接隣接したコドンの同一性の両方に対して特に感受性が高い。翻訳とmRNAの安定性との間に幾つかの相互関係も存在する。
【0077】
遺伝コードの縮重
上記よりつまり遺伝コードは重複性を有するが多義性を有しないということになる。例えば、コドンGAA及びGAGは両方ともグルタミン酸を特定する(重複性)が、それらのうちのいずれも任意の他のアミノ酸を特定しない(多義性を有しない)(完全な相互関係に関して、以下のコドン表を参照されたい)。1つのアミノ酸をコードするコドンは、その3つの位置のいずれかにおいて異なり得る。遺伝コードの縮重は、サイレント突然変異の存在を説明するものである。縮重は、4つの塩基のトリプレットコードが20個のアミノ酸及び停止コドンを指定するために生じる。
【0078】
【表1】
【0079】
同義置換
サイレント突然変異又はサイレント置換は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらさないDNAの突然変異である。これらは、非コード領域において(遺伝子の外側で、又はイントロン内で)起こることがあり、又はこれらは、最終的なアミノ酸配列を変化させないようにエキソン内で起こることがある。「サイレント突然変異又はサイレント置換」という語句は、「同義突然変異又は同義置換」という語句と交換可能なものとして使用されることが多い。しかしながら同義突然変異又は同義置換は、サイレント突然変異又はサイレント置換の下位のカテゴリーであり、エキソン内のみで起こる。
【0080】
本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による配列番号2に開示されるアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖(ヒトIi)又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように同義置換を含み得ることが理解される。
【0081】
同様に、本発明によるインバリアント鎖を含む核酸構築物は、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による、該核酸構築物を使用して免疫応答をプライミングすることができる任意の動物(任意の脊椎動物、哺乳動物、魚又は鳥を含む)のアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように同義置換を含み得る。
【0082】
同義アミノ酸への非同義置換
非同義置換は、アミノ酸の変化をもたらす。しかしながら、アミノ酸は前記アミノ酸の特性に従ってグループ分けされ、該置換が同義アミノ酸をもたらす場合、或るアミノ酸の別のアミノ酸での置換が、前記アミノ酸を含むタンパク質の機能又は特性に対する影響を有しないことがある。このような置換を、保存的置換又は保存的突然変異(或るアミノ酸の生化学的に類似のアミノ酸での置き換えをもたらすDNA配列又はRNA配列の変化)と示すことができる。
【0083】
したがって、本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物が、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、インバリアント鎖の変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように非同義置換を含むことがあり、前記非同義置換は、同義である1つ又は複数のアミノ酸の置換をもたらすことが理解される。
【0084】
同義置換は、或る疎水性アミノ酸の、別の疎水性アミノ酸での置換;或る親水性アミノ酸の、別の親水性アミノ酸での置換;或る極性アミノ酸の、別の極性アミノ酸での置換;或る非極性アミノ酸の、別の非極性アミノ酸での置換;或る正に荷電したアミノ酸の、別の正に荷電したアミノ酸での置換;或る負に荷電したアミノ酸の、別の負に荷電したアミノ酸での置換;或る中性アミノ酸の、別の中性アミノ酸での置換;或る多義性アミノ酸の、その対応する多義性荷電アミノ酸での置換、例えばイソロイシン及びロイシン、アスパラギン及びアスパラギン酸、並びにグルタミン及びグルタミン酸の置換;或る芳香族アミノ酸の、別の芳香族アミノ酸での置換;或る脂肪族アミノ酸の、別の脂肪族アミノ酸での置換;又は任意のアミノ酸の、アラニンでの置換を含み得る。これらの置換を、等価置換と示すことがある。
【0085】
スプライス変異体
オルタナティブスプライシングは、一次遺伝子転写産物であるプレmRNAのエキソンが、選択的なリボヌクレオチドの配置をもたらすように分離され再接続される、RNAのスプライシング変異メカニズムである。その後これらの線状結合物は、アミノ酸の特異的かつ独特の配列が特定されアイソフォームタンパク質又はスプライス変異体がもたらされる翻訳プロセスを受ける。このようにして、オルタナティブスプライシングは、遺伝子発現を使用して非常に様々なタンパク質の合成を促す。真核生物では、オルタナティブスプライシングは、情報をはるかに経済的に蓄えることができるため、より高い効率に向かう重要な工程である。原核生物のコード方法では2つのタンパク質に対してしか十分でないと考えられる長さを有するDNA配列中に、多数のタンパク質をコードすることができる。
【0086】
一実施形態では、本発明の核酸構築物を、複数の抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの断片、及び/又は複数のインバリアント鎖若しくはその変異体をもたらすように、設計することができる。
【0087】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、少なくとも1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば9個、例えば10個、例えば11個、例えば12個、例えば13個、例えば14個、例えば15個、例えば16個、例えば17個、例えば18個、例えば19個、例えば20個の、抗原ペプチド又は前記抗原ペプチドの断片のスプライス変異体を含む。
【0088】
2個以上の抗原ペプチドのスプライス変異体は、同一又は非同一の抗原ペプチドを包含し得る。
【0089】
別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、少なくとも1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば9個、例えば10個、例えば11個、例えば12個、例えば13個、例えば14個、例えば15個、例えば16個、例えば17個、例えば18個、例えば19個、例えば20個の、インバリアント鎖又はその変異体のスプライス変異体を含む。
【0090】
2個以上のインバリアント鎖のスプライス変異体は、同一又は非同一のインバリアント鎖又はその変異体を包含し得る。
【0091】
一実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、未変化の全長インバリアント鎖を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、インバリアント鎖の変異体を含む。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、前記IiがIi−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まないインバリアント鎖の変異体を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、前記IiがCLIPドメインのM91残基及びM99残基を含まないインバリアント鎖の変異体を含む。
【0092】
つまりスプライス変異体は、同一若しくは非同一の抗原ペプチド、及び/又は同一若しくは非同一のインバリアント鎖若しくはその変異体の任意の組合せを含み得るということになる。
【0093】
このように、オルタナティブスプライシングにより、インバリアント鎖の変異体を得るように、インバリアント鎖の種々のドメイン又は領域を含む配列(エキソン)を「シャッフル」することが可能である。このように、オルタナティブスプライシングにより、前記抗原ペプチド(複数可)の変異体を得るように、抗原ペプチド(複数可)の種々のドメイン又は領域を含む配列(エキソン)を「シャッフル」することも可能である。
【0094】
インバリアント鎖
インバリアント鎖(Ii)、又はMHCクラスIIと会合したインバリアント鎖、又はCD74、又はp31は、非多型II型内在性膜タンパク質である(ヒト及びマウスのIiのアミノ酸配列に関してはそれぞれ配列番号2及び配列番号4を、同様にヒト及びマウスのIiの核酸配列に関してはそれぞれ配列番号1及び配列番号3を、参照されたい)。インバリアント鎖は、リンパ球成熟において、及び適応免疫応答、特にIi CLIP配列がMHCクラスII分子を占有し得る(エンドソームコンパートメントと融合するまで)リソソームコンパートメントへの標的化において、複数の機能を有する(Pieters J. 1997, Curr. Opin. Immunol., 9:8996)。加えて、Iiは、MHCクラスIシャペロンとして機能すること(Morris et al, 2004, Immunol. Res. 30:171-179)、及びそのエンドソーム標的化配列により、CD4+ T細胞の増殖を促すが共有結合した抗原に指向性を有するCD8+ T細胞の増殖を促さないこと(Diebold et al., 2001, Gene Ther. 8:487-493)が示されている。
【0095】
インバリアント鎖タンパク質は、複数のドメインを含む:シグナルペプチド又は選別ペプチド(リソソーム標的化配列としても知られる)を含む細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、並びにそれ自体がCLIP領域、KEY領域(LRMK残基を含む)、コアドメイン及び三量体形成ドメインを含む内腔ドメイン。これらのドメインの両方の側方に柔軟性の高い領域が存在する(Strumptner-Cuvelette & Benaroch, 2002, Biochem. Biophys. Acta.,1542:1-13)。インバリアント鎖は、脊椎動物(例えばニワトリ)、哺乳動物(例えばウシ、イヌ、マウス及びラット)及びヒトを含む複数の生物において特徴付けがなされている。
【0096】
本発明は、配列を含む核酸構築物であって、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体が生物特異的な(organism specific)ものであるか、又は特定の生物に関連するものであり得る、核酸構築物に関する。好ましくは、少なくとも1つのインバリアント鎖が、脊椎動物起源のもの、より好ましくは哺乳動物起源のもの、最も好ましくはヒト起源のものである。これと関連して、配列番号1により規定される配列は、ヒト由来のインバリアント鎖の核酸配列である。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖がトリ起源のものであり、ニワトリ(Gallus gallus domesticus(chicken))由来のものが最も好ましい。さらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖は、魚由来のものであり、養魚場で飼育することができる魚(例えばサケ又はマス)由来のものが最も好ましい。さらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖は、フェレット由来のものである。
【0097】
利用されるインバリアント鎖は、好ましくは核酸構築物の投与を受ける生物のインバリアント鎖である。インバリアント鎖と、宿主生物又は治療を受けるものとが同じ種のものであることは、本発明の目的(object)である。
【0098】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、核酸構築物が少なくとも1つのインバリアント鎖の変異体を含む場合、前記インバリアント鎖がIi−KEY配列のLRMKアミノ酸残基を含まないという条件付きのものである。
【0099】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、核酸構築物が少なくとも1つのインバリアント鎖の変異体を含む場合、前記インバリアント鎖がIi−CLIPドメインの変異体を含むという条件付きのものである。一実施形態では、前記変異体は、91位及び99位のメチオニンの、別のアミノ酸での置換体である。別の実施形態では、前記変異体は、M91A及びM99A(91位及び99位のアミノ酸メチオニンの、アラニンへの置換)の二重点突然変異体である。
【0100】
別の実施形態では、Ii変異体は、Iiの最初の17個のアミノ酸の欠失体(Δ17Ii)である。
【0101】
第3の実施形態では、Ii変異体は、Iiの91位及び99位のメチオニンの置換、並びに最初の17個のアミノ酸の欠失の両方を含む。
【0102】
本発明者らは、驚くべきことに、Ii−KEYドメインのLRMK残基が本発明による免疫応答のプライミングに必須ではないことを見出した。
【0103】
また、本発明者らは、驚くべきことに、Iiの91位及び99位のメチオニンの置換が、MHC IIによる抗原提示を増大させることを見出した。
【0104】
さらに、本発明者らは、Iiの最初の17個のアミノ酸を欠失させることにより、記憶応答が驚くほど増大することを見出した。
【0105】
本発明者らは、残基番号50〜118を含むインバリアント鎖の中心部分がIiの完全な効果を得るのに必須であることをさらに見出した。Iiのこの変異体は、三量体形成ドメインを欠いている。したがって、一実施形態では、核酸構築物は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含み、前記インバリアント鎖は、別のタンパク質由来の三量体形成ドメインと結合したアミノ酸残基番号50〜118を含む。前記他のタンパク質は、例えば細菌タンパク質又はアデノウイルス線維タンパク質であり得る。
【0106】
本発明は、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が、配列番号2において特定される少なくとも40個のアミノ酸の配列の断片である、及び配列番号2の同じ断片と少なくとも85%の同一性を有する断片である、核酸構築物にも関する。
【0107】
断片は、配列番号2に示されるようなインバリアント鎖の任意の部分由来の少なくとも40個のアミノ酸の断片である。これは、残基1〜40、残基10〜50、残基20〜60、残基25〜65、残基30〜70、残基35〜75、残基40〜80、残基45〜85、残基50〜90、残基55〜95、残基60〜100、残基65〜105、残基70〜110、残基75〜115、残基80〜120、残基85〜125、残基90〜130、残基95〜135、残基100〜140、残基105〜145、残基110〜150、残基115〜155、残基120〜160、残基125〜165、残基130〜170、残基135〜175、残基140〜180、残基145〜185、残基150〜190、残基155〜195、残基160〜200、残基165〜205、残基170〜210及び残基175〜216を含む断片を含む。これは、このいずれかの側に最大5残基伸長した上に列挙した断片のいずれかのような断片も含む。これは、少なくとも50残基の、少なくとも60残基の、少なくとも70残基の、少なくとも80残基の、少なくとも90残基の、少なくとも100残基の、少なくとも110残基の、少なくとも120残基の、少なくとも130残基の、少なくとも140残基の、少なくとも150残基の、少なくとも160残基の、少なくとも170残基の、少なくとも180残基の、少なくとも190残基の、少なくとも200残基の、及び少なくとも210残基の断片をさらに含む。
【0108】
配列番号2と少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば99%の配列同一性を有する上で記載される断片のいずれかは、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
アミノ酸配列間の同一性/相同性を、既知のスコア化マトリクス、例えばBLOSUM30、BLOSUM40、BLOSUM45、BLOSUM50、BLOSUM55、BLOSUM60、BLOSUM62、BLOSUM65、BLOSUM70、BLOSUM75、BLOSUM80、BLOSUM85及びBLOSUM90のいずれか1つを使用して算出することができる。
【0110】
一実施形態では、本発明は、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が少なくとも186個のアミノ酸を有する配列番号2の断片である、核酸構築物である。これは、上で規定される、及びしたがって配列番号2のインバリアント鎖の配列との同一性を有する断片のいずれかを含む。
【0111】
本発明はさらに、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が配列番号2と少なくとも85%の同一性を有する、核酸構築物に関する。
【0112】
これは、配列番号2と少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば99%の配列相同性を有する、配列番号2に提示されるようなインバリアント鎖由来の任意の配列が本発明の範囲に含まれることを包含する。これは、配列番号2に記載される配列より長い又は短い配列を含む。
【0113】
上で記載される配列のいずれかは、起源、配列同一性又は長さに関わらず、本明細書で称するところの(hereon termed)インバリアント鎖の変異体由来のものである。
【0114】
つまり、任意の生物由来のインバリアント鎖の変異体が上記による変異体であり得ること、すなわち該変異体がIi−KEY領域において変化し得る、及び/又はIi−CLIP−領域において変化し得る、及び/又は或る生物のインバリアント鎖の断片であり得る、及び/又はインバリアント鎖の配列全てにわたり、若しくはこれの断片内において前記インバリアント鎖と少なくとも85%の同一性を有し得ることは、本発明の範囲内であるということになる。インバリアント鎖はまた、生物の近縁の種由来のもの、又は遠縁の種由来のものであり得る。
【0115】
本発明の別の態様は、核酸構築物によりコードされるような少なくとも1つのインバリアント鎖の領域、ペプチド又はドメインの付加、除去又は置換に関する。これらの領域、ペプチド又はドメインを1つ又は複数除去することは、得られるインバリアント鎖を切断する。領域、ペプチド又はドメインの付加又は置き換えは、既知の供給源、例えば天然のタンパク質若しくはポリペプチドから、又は人工的に合成されたポリペプチド若しくはこれをコードする核酸残基から、これらの配列を選択するという選択肢を含む。領域、ドメイン又はペプチドの付加は、各々のタイプ又は異なるタイプの領域、ドメイン、ペプチドのうち1つ、2つ又はそれ以上、並びにこれらの領域、ドメイン及びペプチドをコードする核酸のうち1つ、2つ、3つ又はそれ以上を付加するという選択肢を含む。これらは、配列に基づいて、同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。領域、ペプチド及びドメインは、基礎となる(scaffold)インバリアント鎖と同じ生物由来のものである必要はない。
【0116】
領域、ドメイン又はペプチドの除去は、各々のタイプ又は異なるタイプの領域、ドメイン、ペプチドのうち1つ、2つ、3つ又はそれ以上を除去するという選択肢、並びにこれらの領域、ドメイン及びペプチドをコードするアミノ酸残基のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又はそれ以上を除去するという選択肢を含む。個々の得られるポリペプチド、並びに得られるポリペプチドをコードするヌクレオチドのストレッチの付加、欠失及び置換を行うことは、当該技術分野において既知である。
【0117】
異なる生物由来の相同遺伝子又は相同タンパク質の核酸配列及び特にタンパク質配列を整列させることは、置換、欠失、再配置又は他の変化のうちのどれが構築物に対して有益であると考えられるかを決定する際に、大きな助けとなり得る。以下に示されるようなヒト及びマウスのインバリアント鎖の配列を整列させることは、どのアミノ酸残基がこれらの生物におけるインバリアント鎖の構造及び機能に対して重要であり得るか(これらは2つの配列の間で保存される残基である)についての指標を与える。同様に、重要性が低いと考えられる残基は、そこで配列が異なる残基である。本発明に関しては、変異体の残基/領域の置換及び/又は欠失を行うことに関心がもたれる。その免疫応答刺激能を改善するために例えばヒトのインバリアント鎖の配列を突然変異若しくは欠失、又は他の形で変化させようと試みる場合、保存される残基を検証すること、及び例えば相同的置換(すなわち、アミノ酸が例えば同じ構造上の質、極性、疎水性、又はその他を有すると考えられる置換)を行うことも有意義であり得る。
【0118】
ヒト及びマウス由来のインバリアント鎖タンパク質の以下のアライメントにおいて、KEY領域のLRMKアミノ酸残基に下線を付す。
【0119】
【表2】
【0120】
Key領域
本発明の好ましい一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域の除去、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、KEY領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のKEY領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖由来のKEY領域、又は同じ若しくは他の生物由来のKEY領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したKEY領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したKEY領域の突然変異型であり得る。好ましい一実施形態は、KEY領域のN末端又はC末端に隣接した配列を単独で含むが、KEY領域それ自体を含まない。「隣接(adjacent)」とは、KEY領域の10残基内の、KEY領域の20残基内の、30残基内の、40残基内の、50残基内の、75残基内の、又は100残基内の任意のアミノ酸を意味する。
【0121】
最も好ましい一実施形態は、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち1つ、2つ、3つ又は4つのアミノ酸残基の置換又は欠失をもたらす、KEY領域の、1つ又は複数の置換又は欠失を含む。一実施形態では、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが欠失している。別の実施形態では、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが、他のアミノ酸により置換されている。前記アミノ酸は、G(グリシン)、P(プロリン)、A(アラニン)、V(バリン)、L(ロイシン)、I(イソロイシン)、M(メチオニン)、C(システイン)、F(フェニルアラニン)、Y(チロシン)、W(トリプトファン)、H(ヒスチジン)、K(リジン)、R(アルギニン)、Q(グルタミン)、N(アスパラギン)、E(グルタミン酸)、D(アスパラギン酸)、S(セリン)及びT(スレオニン)からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。
【0122】
特定の一実施形態では、LRMKアミノ酸残基は、各々アラニン(A)アミノ酸残基で置換され、したがって配列はAAAAと記載される。別の実施形態では、LRMKアミノ酸残基はアミノ酸で置換され、これには同義置換又は等価置換が含まれる。例えば、アミノ酸残基LはI、V、M又はFで置換され得る。RはK、H、E又はDで置換され得る。MはL、I、F又はVで置換され得る。KはH又はRで置換され得る。
【0123】
本発明の一実施形態では、KEY領域はLRMK残基に加えさらなる残基を含んでいてもよく、又はLRMK残基は5つ以上のアミノ酸残基を有する配列で置き換えられていてもよい。
【0124】
本発明の一実施形態は、上で記載されたようにKEY領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0125】
本発明の一実施形態では、本明細書において記載されるような核酸構築物によりコードされる少なくとも1つのインバリアント鎖は、Ii−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない。
【0126】
したがって一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がIi−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0127】
CLIP領域
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の除去、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、CLIP領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のCLIP領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖由来のCLIP領域、又は同じ若しくは他の生物由来のCLIP領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したCLIP領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したCLIP領域の突然変異型であり得る。好ましい一実施形態は、CLIP領域を単独で、又はN末端に隣接した配列若しくはC末端に隣接した配列と共にCLIP領域を含み、インバリアント鎖の任意の他の領域又はドメインを含まない。他の好ましい実施形態は、CLIP領域のN末端又はC末端に隣接した配列を単独で含むが、CLIP領域それ自体を含まない。「隣接」とは、CLIP領域の10残基内の、CLIP領域の20残基内の、30残基内の、40残基内の、50残基内の、75残基内の、又は100残基内の任意のアミノ酸を意味する。
【0128】
好ましい一実施形態は、CLIP領域のアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の置換又は欠失をもたらす、CLIP領域の、1つ又は複数の置換又は欠失を含む。一実施形態では、CLIP領域に含まれるアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが欠失している。別の実施形態では、CLIP領域に含まれるアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ又はそれ以上が、他のアミノ酸により置換されている。前記アミノ酸は、G(グリシン)、P(プロリン)、A(アラニン)、V(バリン)、L(ロイシン)、I(イソロイシン)、M(メチオニン)、C(システイン)、F(フェニルアラニン)、Y(チロシン)、W(トリプトファン)、H(ヒスチジン)、K(リジン)、R(アルギニン)、Q(グルタミン)、N(アスパラギン)、E(グルタミン酸)、D(アスパラギン酸)、S(セリン)及びT(スレオニン)からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。
【0129】
本発明の一実施形態は、上で記載されたようにCLIP領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0130】
特定の一実施形態では、91位及び99位のMアミノ酸残基は、各々アラニン(A)アミノ酸残基で置換され、したがって配列はM91A、M99Aと記載される。別の実施形態では、91位及び99位のMアミノ酸残基は、同義置換又は等価置換を含むアミノ酸で置換される。
【0131】
本発明の一実施形態では、本明細書において記載されるような核酸構築物によりコードされる少なくとも1つのインバリアント鎖は、Ii−CLIP配列の91位及び99位のMアミノ酸残基を含まない。
【0132】
したがって一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がIi−CLIP領域の91位及び99位のMアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0133】
N末端又はC末端の変化:
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のN末端領域又はC末端領域の除去(欠失)、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、N末端領域又はC末端領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のN末端領域又はC末端領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖若しくは他のタンパク質由来のN末端領域若しくはC末端領域、又は同じ若しくは他の生物由来のN末端領域若しくはC末端領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したN末端領域又はC末端領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したN末端領域又はC末端領域の突然変異型であり得る。
【0134】
一実施形態は、Iiの最初(N末端)又は最後(C末端)のアミノ酸、例えばIiの最初又は最後の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、101個、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、110個、111個、112個、113個、114個、115個、116個、117個、118個、119個、120個、125個、130個、135個、140個、145個又は150個のアミノ酸の欠失を含む。
【0135】
本発明の特定の一実施形態では、Ii変異体は、Iiの最初の17個のアミノ酸の欠失(Δ17Ii)を含む。
【0136】
本発明の一実施形態は、上で記載されたように完全なN末端領域又はC末端領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0137】
本発明の一実施形態では、Iiの膜貫通セグメントの全部又は一部を、任意の他のタンパク質、例えばケモカイン受容体CCR6 TM6由来の対応するセグメントで置き換えることができる。
【0138】
本発明の別の実施形態では、Iiの膜貫通セグメントの全部又は一部を、ケモカイン受容体CCR6 TM6由来の対応するセグメントで置き換えることができる。
【0139】
シグナルペプチド
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖であって、シグナルペプチドが除去され、置き換えられ、又は該インバリアント鎖をコードする配列上に付加される、少なくとも1つのインバリアント鎖に関する。シグナルペプチドは、細胞内におけるタンパク質の最終的な位置を決定するアミノ酸の短い配列(選別ペプチドとも称される)である。細胞内コンパートメント、例えば小胞体、ゴルジ装置及びゴルジ装置を含む様々なコンパートメント、核、細胞膜、ミトコンドリア、並びに本明細書中における様々な空間及び膜、ペルオキシソーム、リソソーム、エンドソーム、並びに分泌小胞等に対するタンパク質の位置を決定するシグナルペプチドは、全て本発明の範囲に含まれる。好ましい一実施形態は、インバリアント鎖のリソソーム標的化配列を単独で含む。
【0140】
抗原
上記のインバリアント鎖の変異体のいずれかは、前記変異体の少なくとも1つが、少なくとも1つの抗原、例えば抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した形態で本発明に包含される。
【0141】
本発明の一目的は、病原性生物、癌特異的ポリペプチド及び抗原、並びに異常な生理学的応答と関連するタンパク質又はペプチドに由来する抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片を含めるがこれらに限定しないことである。
【0142】
より好ましくは、本発明の一目的は、以下のタイプの病原体:ウイルス、微生物及び寄生生物のいずれかを起源とする抗原を含めることである。これは、任意の既知の動物の病原体を含む。哺乳動物の病原体、すなわち哺乳動物、例えばフェレットを特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。ヒト病原体由来の抗原を有することが好ましい。一般的に、ヒトの病原体又は疾患と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0143】
別の実施形態では、トリの病原体、すなわち鳥又は家禽を特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。ニワトリ(chicken(gallus gallus domesticus))由来の抗原を有することがより好ましい。一般的に、トリの病原体と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0144】
さらに別の実施形態では、魚の病原体、すなわち魚を特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。養魚場で飼育することができる魚由来の抗原を有することがより好ましい。一般的に、魚の病原体と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0145】
ウイルス抗原
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原は、以下のいずれかのウイルス科起源のものであるが、これらに限定されない:アデノウイルス、アレナウイルス科、アストロウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科及びトガウイルス科。
【0146】
より具体的には、少なくとも1つの抗原又は抗原配列は、以下のいずれかのウイルスに由来し得る:H1N1、H1N2、H3N2及びH5N1(鳥インフルエンザ)等のインフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群の任意のウイルス、腸管アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘ウイルス、モノネガウイルス、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、ドーベンハーゲ(Duvenhage)ウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1型及び2型並びにオーストラリアコウモリウイルス等のリッサウイルス、エフェメロウイルス、ベシクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、単純ヘルペスウイルス1型及び2型等のヘルペスウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型及び8型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、乳頭腫ウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マクポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)等のアレナウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス等のブニヤウイルス科、エボラ出血熱ウイルス及びマールブルグ出血熱ウイルスを含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌール森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスを含むフラビウイルス科、並びにヘンドラウイルス及びニパウイルス等のパラミクソウイルス科、大痘瘡及び小痘瘡(天然痘)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス等のアルファウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS−CoV)、ウエストナイルウイルス、任意の脳炎ウイルス。
【0147】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、HIV、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ラッサ熱ウイルス、エボラウイルス、天然痘ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、フィロウイルス、マールブルグウイルス及び乳頭腫ウイルスの群から選択されるウイルス由来のものである。
【0148】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、以下の群から選択され得るか、及び/又は以下のいずれかの少なくとも1つの抗原断片であり得る:水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−GP);インフルエンザA型NS−1(非構造タンパク質1)、M1(基質タンパク質1)、NP(核タンパク質)、NEP、M2、M2e、HA、NA、PA、PB1、PB2、PB1−F2;LCMV NP、LCMV GP;エボラウイルスGP、エボラウイルスNP;HIV抗原tat、vif、rev、vpr、gag、pol、nef、env、vpu;SIV抗原tat、vif、rev、vpr、gag、pol、nef、env;マウスガンマヘルペスウイルスM2、M3及びORF73(MHV−68 M2、M3及びORF73等);ニワトリオボアルブミン(OVA);又はヘルパーT細胞エピトープ。本明細書において言及される抗原をいずれか2つ以上組み合わせることは本発明の範囲に含まれる。
【0149】
微生物抗原
本発明の一実施形態は、微生物に由来する少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片を含む。より具体的には、少なくとも1つの抗原は以下の限定的なリストのいずれか1つに由来し得る:炭疽菌(炭疽菌(Bacillus anthracis)、ヒト型結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)、サルモネラ菌(トリチフス菌(Salmonella gallinarum)、ひな白痢菌(S. pullorum)、チフス菌(S. typhi)、腸炎菌(S. enteridtidis)、パラチフス菌(S. paratyphi)、サルモネラ・ダブリン(S. dublin)、ネズミチフス菌(S. typhimurium))、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridiumperfringens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacterjejuni)等のカンピロバクター菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Crytococcusneoformans)、ペスト菌(Yersinia pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersiniapseudotuberculosis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、レプトスピラ種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borreliaburgdorferi)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)等のストレプトコッカス種、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、インフルエンザ菌(Haemophilusinfluenzae)、O1コレラ菌(Vibrio cholerae O1)、非O1コレラ菌(V. cholerae non-O1)、腸炎ビブリオ(V.parahaemolyticus)、腸炎ビブリオ、ビブリオ・アルギノリチカス(V. alginolyticus)、ビブリオ・ファーニシィ(V. furnissii)、ビブリオ・カルチャリア(V. carchariae)、ビブリオ・ホリセ(V. hollisae)、ビブリオ・シンシナティエンシス(V.cincinnatiensis)、ビブリオ・メチニコフィイ(V. metschnikovii)、ビブリオ・ダムセラ(V. damsela)、ビブリオ・ミミカス(V. mimicus)、ビブリオ・フルビアリス(V. fluvialis)、ビブリオ・バルニフィカス(V. vulnificus)等のビブリオ種、セレウス菌(Bacillus cereus)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonashydrophila)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、アエロモナス・ソブリア(Aeromonas sobria)及びアエロモナス・ベロニイ(Aeromonasveronii)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、ソネ赤痢菌(Shigella sonnei)、シゲラ・ボイディ(S. boydii)、シゲラ・フレックスネリ(S. flexneri)及びシゲラ・ディゼンテリエ(S. dysenteriae)等のシゲラ種、腸毒性(Enterovirulent)大腸菌(Escherichia coli)EEC(毒素原性大腸菌(ETEC)、腸病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌O157:H7(EHEC)、腸管組織侵入性大腸菌(EIEC))、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、特にバンコマイシン中間耐性種(VISA/VRSA)又は多剤耐性種(MRSA)等のスタフィロコッカス種、シゲラ・フレックスネリ、ソネ赤痢菌、シゲラ・ディゼンテリエ等のシゲラ種、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、ブルセラ・アボルタス(B.abortus)、ブルセラ・メリテンシス(B. melitensis)、ブルセラ・オビス(B. ovis)、ブルセラ・スイス(B. suis)及びブルセラ・カニス(B. canis)等のブルセラ種、鼻疽菌(Burkholderia mallei)及び類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、クラミジア・シッタシ(Chlamydiapsittaci)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、発疹チフスリケッチア(Rickettsiaprowazekii)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)。
【0150】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、ヒト型結核菌、炭疽菌、ブドウ球菌種及びビブリオ種の群から選択される微生物由来のものである。
【0151】
寄生生物抗原
本発明の一実施形態は、コードされる少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドが寄生生物由来のものである核酸構築物に関する。
【0152】
本発明の別の実施形態は、上述の病原体のいずれかに由来する少なくとも2つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドの組み合わせを含む核酸構築物に関する。
【0153】
好ましくは、抗原は以下の群から選択される寄生生物に由来するが、これらに限定されない:四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodiumovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)等のプラスモディウム種、矮小アメーバ(Endolimaxnana)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidumparvum)、ブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasmagondii)、シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、ネズミクリプトスポリジウム(Cryptosporidium muris)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystiscarinii)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、ブラジルリーシュマニア(Leishmaniabraziliensis)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、カステラーニアメーバ(Acanthamoeba castellanii)及びカルバートソンアメーバ(A. culbertsoni)等のアカントアメーバ種、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosomacruzi)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、戦争イソスポラ(Isosporabelli)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、回虫(回虫(Ascaris lumbricoides))、鉤虫(アメリカ鉤虫(NecatorAmericanus)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenal))、蟯虫(ヒト蟯虫(Enterobius vermicularis))、回虫(犬回虫(Toxocaracanis)、猫回虫(Toxocara cati))、犬糸状虫(犬糸状虫(Dirofilaria immitis))、ストロンギロイデス属(糞線虫(Stronglyoidesstercoralis))、旋毛虫(旋毛虫(Trichinella spiralis))、フィラリア(バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、ロア糸状虫(Loa loa)、マンソネラ・ストレプトセルカ(Mansonella streptocerca)、常在糸状虫(Mansonellaperstans)、マンソネラ糸状虫(Mansonella ozzardi))、並びにアニサキス(Anisakine)幼虫(アニサキス・ジンプレクス(Anisakis simplex)(ニシン虫(herring worm))、シュードテラノーバ(Pseudoterranova)(フォカネマ(Phocanema)、テラノーバ(Terranova))デキピエンス(decipiens)(タラ虫又はアザラシ(seal)虫)、コントラシーカム種、並びにヒステロティラキウム属(Thynnascaris species)、ヒト鞭虫(Trichuristrichiura)、無鉤条虫(無鉤条虫(Taenia saginata))、有鉤条虫(有鉤条虫(Taenia solium))、広節裂頭条虫(広節裂頭条虫(Diphyllobothriumlatum))、並びに瓜実条虫(瓜実条虫(Dipylidium caninum))、腸吸虫(肥大吸虫(Fasciolopsis buski))、住血吸虫(日本住血吸虫(Schistosomajaponicum)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium))、肝吸虫(肝吸虫(Clonorchissinensis))、東洋肺吸虫(ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani))、並びにヒツジ肝蛭(肝蛭(Fasciola hepatica))、サケ住血吸虫(Nanophyetussalmincola)、並びにナノフィエタス・チコバロウィ(N. schikhobalowi)。
【0154】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、プラスモディウム種、リーシュマニア種及びトリパノソーマ種の群から選択される寄生生物由来のものである。
【0155】
本発明の少なくとも1つの抗原は、熱帯熱マラリア原虫に由来するVar2Csaであり得る。本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片はVar2Csaである。
【0156】
家畜抗原
本発明の一態様は、家畜、特にブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、イヌ、ネコ、フェレット等の商業に関連する動物、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ等の家禽、マス、サケ、タラ等の魚、及び他の飼育種に感染する疾患又は病原体(agents)に由来する抗原及び/又は抗原配列に関する。ここで、少なくとも1つの抗原又は抗原配列が由来し得る疾患又は病原体の例としては、炭疽病、オーエスキー病、ブルータング病、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)若しくはブタ流産菌(Brucella suis)等のブルセラ症、クリミア・コンゴ出血熱、エキノコックス症/包虫症、ピコルナウイルス科のウイルス、特に免疫学的に異なった7種の血清型(A、O、C、SAT1、SAT2、SAT3、Asia1)のいずれかの口蹄疫を引き起こすアフタウイルス属、若しくは心水病、日本脳炎、レプトスピラ症、新世界ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)、旧世界ラセンウジバエ(トウヨウラセンウジバエ(Chrysomya bezziana))、副結核、Q熱、狂犬病、リフトバレー熱、牛疫、施毛虫症、野兎病、水疱性口内炎若しくは西ナイル熱等の多重種(Multiple species)の疾患;牛アナプラズマ病、牛バベシア症、牛カンピロバクター症(Bovine genital campylobacteriosis)、牛海綿状脳症、牛結核、牛ウイルス性下痢症、牛肺疫、地方病性牛白血病、出血性敗血症、牛伝染性鼻気管炎/伝染性膿疱性外膣炎、ランピースキン病、悪性カタル熱、タイレリア症、トリコモナス症若しくはトリパノゾーマ病(ツェツェバエ媒介性)等のウシの疾患;山羊関節炎/脳炎、伝染性アガラクシア、山羊伝染性胸膜肺炎、ヒツジの流行性流産(羊伝染性流産)、マエディ・ビスナ、ナイロビヒツジ病、羊精巣上体炎(ブルセラ・オビス(Brucella ovis))、小反芻獣疫、サルモネラ症(ヒツジ流産菌(S.abortusovis))、スクレイピー、羊痘及び山羊痘等のヒツジ及びヤギの疾患;アフリカ馬疫、馬伝染性子宮炎、媾疫、ウマ脳脊髄炎(東部)、ウマ脳脊髄炎(西部)、馬伝染性貧血、馬インフルエンザ、馬ピロプラズマ病、馬鼻肺炎、馬ウイルス性動脈炎、鼻疽、スーラ病(トリパノソーマ・エバンシ(Trypanosoma evansi))若しくはベネズエラウマ脳脊髄炎等のウマの疾患;アフリカ豚コレラ、豚コレラ、ニパウイルス脳炎、豚嚢虫症、豚繁殖・呼吸障害症候群、豚水疱症若しくは伝染性胃腸炎等のブタ疾患;鳥クラミジア症、鶏伝染性気管支炎、鶏伝染性喉頭気管炎、鶏マイコプラズマ病(マイコプラズマ・ガリセプチカム(M. gallisepticum))、鶏マイコプラズマ病(マイコプラズマ・シノヴィエ(M.synoviae))、アヒルウイルス性肝炎、家禽コレラ、家禽チフス、高病原性鳥インフルエンザ(任意のインフルエンザウイルス(A型若しくはB型、特にH5N1型)である)、伝染性ファブリーキウス嚢病(ガンボロ病)、マレック病、ニューカッスル病、ひな白痢若しくは七面鳥鼻気管炎等の鳥の疾患;ウイルス性腸炎、粘液腫症若しくはウサギ出血病等のウサギ目及び齧歯動物の疾患;流行性造血器壊死症、伝染性造血器壊死症、コイ春ウイルス病、ウイルス性出血性敗血症、伝染性膵臓壊死症、伝染性サケ貧血、流行性潰瘍症候群、細菌性腎臓病(細菌性腎臓病菌(Renibacterium salmoninarum))、ギロダクチルス症(ギロダクチルス・サラリス(Gyrodactylus salaris))、マダイイリドウイルス病等の魚の疾患;又はラクダ痘若しくはリーシュマニア症等の他の疾患。
【0157】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、オーエスキー病、口蹄疫、水疱性口内炎ウイルス、鳥インフルエンザ又はニューカッスル病由来のものである。
【0158】
本発明のさらに好ましい一実施形態は、上記の抗原のいずれかと少なくとも85%の同一性を有する抗原ペプチド又は抗原タンパク質である、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片に関する。アミノ酸間の相同性又は同一性は、先述したBLOSUMスコアリングマトリックスのいずれかによって計算することができる。
【0159】
癌抗原
多くのタンパク質/糖タンパク質が同定されており、或る特定のタイプの癌と関連付けられている。これらは癌特異的ポリペプチド、腫瘍関連抗原又は癌抗原と称されている。一般に、癌腫瘍と関連することが見出されている任意の抗原が使用され得る。癌特異的抗原を発見することのできる一方法は、DNAマイクロアレイ解析といった様々なマイクロアレイ解析等のサブトラクション解析によるものである。本明細書において、(前記遺伝子によってコードされるRNA又はタンパク質のレベルに見られるような)遺伝子発現パターンを、健常患者と癌患者との間、癌患者の群間、又は同じ患者における健常組織と癌組織との間で比較した。ほぼ等しい発現レベルを有する遺伝子を互いに「差し引く(subtracted)」ことによって、健常組織と癌組織との間で異なる遺伝子/遺伝子産物が残る。このアプローチは当該技術分野で既知であり、新規の癌抗原を同定する方法として、又は所定の患者若しくは患者の群に特異的な遺伝子発現プロファイルを作成するために使用することができる。このようにして同定された抗原(単一の抗原及び抗原が発見された可能性のある組み合わせの両方)が本発明の範囲に含まれる。
【0160】
好ましくは、本発明の少なくとも1つの抗原は、以下の群から選択される癌特異的ポリペプチドに由来するが、これらに限定されない:MAGE−3、MAGE−1、gp100、gp75、TRP−2、チロシナーゼ、MART−1、CEA、Ras、p53、β−カテニン、gp43、GAGE−1、BAGE−1、PSA、MUC−1、MUC−2、MUC−3、並びにHSP−70、TRP−1、gp100/pmel17、β−HCG、Ras突然変異体、p53突然変異体、HMWメラノーマ抗原、MUC−18、HOJ−1、サイクリン依存性キナーゼ4(Cdk4)、カスパーゼ8、HER−2/neu、Bcr−Ablチロシンキナーゼ、癌胎児性抗原(CEA)、テロメラーゼ、SV40 Large T、ヒト乳頭腫ウイルスHPV 6型、11型、16型、18型、31型及び33型;HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1及びRho−C。
【0161】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片は、HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1並びにRho−Cの群から選択される癌特異的ポリペプチド由来のものである。
【0162】
異常な生理学的応答と関連する抗原
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片が、異常な生理学的応答と関連するポリペプチド由来のものである核酸構築物に関する。かかる異常な生理学的応答としては、自己免疫疾患、アレルギー反応、癌及び先天性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。この例の限定的なリストとしては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬及びクローン病等の疾患が挙げられる。
【0163】
作動性リンカー
本発明の一態様は、インバリアント鎖と、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片との間の作動性の連結が直接的連結、又はスペーサー領域が介在する連結である核酸構築物に関する。「作動性リンカー」という用語は、核酸構築物又はキメラポリペプチドの2つの部分を、核酸又はポリペプチドの生物学的処理を確実にする形で結合するヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列であると理解される。作動性リンカーが直接的連結である場合、各々がオープンリーディングフレーム又はオープンリーディングフレームの断片のいずれかをコードする2つの核酸は、互いに直接隣接して位置し、したがってインフレーム(in frame)でもある。作動性リンカーがスペーサー領域が介在するものである場合、一連のヌクレオチドは、少なくとも1つのインバリアント鎖及び少なくとも1つの抗原ペプチドをそれぞれコードするヌクレオチド間に挿入される。単に少なくとも2つの本発明の要素を、オープンリーディングフレームを保持する形で連結する一連のヌクレオチドであるか、又は本明細書において下記に規定される1つ又は複数のシグナル若しくは別個の要素をコードし得るスペーサー領域を有することは本発明の範囲に含まれる。
【0164】
特定の一実施形態では、本発明は、スペーサー領域である作動性リンカーを含む。
【0165】
一実施形態では、本発明は、クラスII MHC分子に対する少なくとも1つのヘルパーエピトープをコードするスペーサー領域を含む。ヘルパーエピトープの一例は、ジフテリア毒素等の免疫原決定基である。特にジフテリア毒素BフラグメントのCOOH末端領域は、マウスにおいて免疫原性であることが示されている。さらに、HSP70(一部又は全部)、並びにHLAクラスI及びクラスII分子に対するアンカーモチーフ(anchoring motif)を有するインフルエンザウイルス又は免疫原性配列又はペプチド等の他の免疫原性ペプチドも、核酸構築物のスペーサー領域にコードされ得る。
【0166】
別の実施形態では、核酸構築物のスペーサー領域は少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位をコードする。カテプシン等のリソソームプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ及び亜鉛プロテアーゼ、並びに他の細胞内プロテアーゼの切断部位は本発明の範囲に含まれる。
【0167】
さらなる実施形態では、核酸構築物の作動性リンカーは、少なくとも1つのsiRNA又はmiRNAをコードする配列を含み得る。siRNA(低分子干渉RNA)及びmiRNA(ミクロRNA)は、内在性RNAを配列特異的に分解の標的とする。本発明の核酸構築物内にコードされるsiRNA又はmiRNAは、したがって望ましくない遺伝子産物を標的とするために選択され得る。
【0168】
別の実施形態では、作動性リンカーは少なくとも1つのポリリンカー又は多重クローニング部位(MCS)を含む。ポリリンカー及びMCSは、DNAの他の断片/配列の核酸構築物へのサブクローニングを容易にする、制限酵素認識配列、すなわち制限酵素がDNAを平滑に又は互い違いに(staggered manner)切断する部位を含む一連のヌクレオチドである。ポリリンカー/MCSの認識配列は典型的には特異である。つまり核酸構築物上の他の部分には見られない。作動性リンカーは、リボソームからの新生ポリペプチドの放出を指示する(signal)1つ又は複数の停止コドン又は終結コドンをさらに含み得る。作動性リンカーはまた、少なくとも1つのIRES(内部リボソーム侵入部位)及び/又は少なくとも1つのプロモーターを含み得る。IRESは、より大きなタンパク質合成過程の一部としてメッセンジャーRNA(mRNA)配列の中央で翻訳を開始させるヌクレオチド配列である。プロモーターは、遺伝子の転写を可能にするDNA配列である。プロモーターは、その後に転写を開始するRNAポリメラーゼによって認識される(下記を参照されたい)。プロモーターは一方向性であっても、又は双方向性であってもよい。
【0169】
一実施形態では、インバリアント鎖と少なくとも1つの抗原との間の領域にわたる作動性リンカーは、少なくとも1つのポリリンカー及び少なくとも1つのプロモーター、任意でさらに少なくとも1つのIRESを含む作動性リンカーである。これらの要素はいかなる順序で位置していてもよい。さらに好ましい一実施形態では、インバリアント鎖の停止コドンは欠失しており、ポリリンカーは、ポリリンカー中に挿入される少なくとも1つの抗原のインフレームでの読み取りを可能にするオープンリーディングフレームを保存する形でベクター中にクローニングされている。このことは、1つの工程又は複数のクローニング工程における同じ構築物中への複数の抗原のサブクローニングを容易にし、インバリアント鎖と同じフレーム内での複数の抗原の同時発現を可能にするという利点を有する。翻訳終結のために停止コドンをポリリンカーの後に挿入してもよい。この実施形態は、上記のヘルパーエピトープ、miRNA/siRNAのいずれか、又は本明細書に記載される他の要素のいずれかと組み合わせることができる。
【0170】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と関連する作動性リンカーの配置に関する(少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列はインバリアント鎖配列内、インバリアント鎖配列の前端(front end)、インバリアント鎖配列の末端部に位置する)。これは、抗原ペプチドが少なくとも1つの作動性リンカーの後方に存在するか、これによって取り囲まれるか又は終えられるように、構築物のオープンリーディングフレームの可読性を確保する形で行われる。
【0171】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と関連する作動性リンカーの配置にさらに関する(少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列は、好ましくはインバリアント鎖の末端部に位置し、作動性リンカーはその間に挿入され、末端部はインバリアント鎖又はその断片の最初又は最後の残基である)。
【0172】
別の実施形態では、核酸構築物は作動性リンカーを含まず、少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列がインバリアント鎖に直接連結される(tethered)。少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列は、インバリアント鎖配列内、インバリアント鎖配列の前端、インバリアント鎖配列の末端部に位置し得る。これは、構築物のオープンリーディングフレームの可読性を確保する形で行われる。
【0173】
作動性リンカーを含むこと又は除くことのどちらの可能性にも利点がある。リンカーを除くことは、一実施形態では、抗原ペプチドに対する免疫応答をプライミングするのではなく、前記リンカーに対する免疫応答をプライミングする可能性を低くする。
【0174】
組み合わせ
核酸構築物が複数の要素をコードすることは本発明の範囲に含まれる。要素は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片である(being)。したがって、複数のインバリアント鎖又はその変異体(各々が互いに、かつ複数の抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片と作動可能に連結する)を有する(これらも同様に作動可能に連結する)ことは本発明の範囲に含まれる。核酸構築物の要素はしたがって、互いに作動可能に連結していなくてはならない。各々が1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と作動可能に連結した複数のインバリアント鎖又はその変異体(これらは各々、互いに作動可能に連結する)が本発明に包含される。
【0175】
本発明の利点及び非常に重要な態様は、任意のタイプの免疫応答、例えばT細胞媒介性及び抗体媒介性の応答を、弱い抗原として知られるエピトープ、未知の抗原特性のポリペプチドを用いても、複数のエピトープ/抗原を同時に用いても開始することができるという事実に関する。
【0176】
したがって、好ましい一実施形態が、複数の抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチド(例えば2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、12個又はそれ以上の抗原タンパク質又は抗原ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチドの断片)と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする核酸構築物であることも本発明の範囲に含まれる。
【0177】
核酸構築物はさらなる要素を含み得る。これらとしては、内部リボソーム侵入部位(IRES);LAMP、カルレチクリン、Hsp33、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp100、sHSP(小型熱ショックタンパク質)、及び77残基DNAJ相同Hsp73結合ドメイン等の熱ショック結合タンパク質等といった抗原提示に関連するタンパク質をコードする遺伝子;VP22、HIV Tat、Cx43又は他のコネキシン及び細胞間ギャップ結合成分等の細胞内拡散に関連するタンパク質をコードする遺伝子;H60及びサイトカイン、ニワトリオボアルブミン又は任意のT−ヘルパー細胞エピトープ等のナチュラルキラー細胞(NK細胞)活性化分子をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
本発明の好ましい一実施形態では、核酸構築物はLAMP、LIMP、カルレチクリン、Hsp33、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp100、sHSP(小型熱ショックタンパク質)又は77残基DNAJ相同Hsp73結合ドメイン等の抗原提示に関連するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。
【0179】
本発明のさらに好ましい一実施形態では、核酸構築物はVP22、Cx43、HIV Tat、他のコネキシン又は細胞間ギャップ結合成分等の細胞内拡散に関連するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。
【0180】
プロモーター
「プロモーター」という用語は、ここではRNAポリメラーゼIIの開始部位の周囲に集まった転写制御モジュールの群を指すために使用される。プロモーターがどのように構成されるかの考えの大半は、HSVチミジンキナーゼ(tk)及びSV40初期転写単位に対するものを含む複数のウイルスプロモーターの解析による。より最近の研究によって拡張されたこれらの研究から、プロモーターが、各々がおよそ7bp〜20bpのDNAからなり、転写活性化タンパク質の1つ又は複数の認識部位を含有する個別の機能モジュールからなることが示された。各々のプロモーターにおける少なくとも1つのモジュールは、RNA合成の開始部位を位置付けるように機能する。このモジュールの最もよく知られた例はTATAボックスであるが、哺乳動物の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーター及びSV40後期(late)遺伝子に対するプロモーター等といった一部のプロモーターではTATAボックスを欠いており、開始部位自体に重なる別個の要素が開始位置を定めるのに役立つ。
【0181】
さらなるプロモーター要素が転写開始の頻度を調節する。これらは典型的には開始部位の30bp〜110bp上流の領域に位置するが、近年では多数のプロモーターが開始部位の下流にも機能要素を含有することが示されている。要素環の間隔は変動可能であり、要素が互いに反転又は移動し合った場合にプロモーター機能が保存される。tkプロモーターでは、要素間の間隔は、活性が低下し始めるまでに50bp離れる程度まで増大させることができる。個々の要素は、プロモーターに応じて協調的に又は独立して転写を活性化するよう機能することができると考えられる。核酸構築物によってコードされる配列の転写開始を指示することのできる任意のプロモーターが、本発明において使用され得る。
【0182】
本発明の一態様は、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖及び抗原タンパク質又は抗原ペプチドをコードする配列が、該構築物の発現を可能とするプロモーターの後方に存在する核酸構築物を含む。
【0183】
さらなる態様では、プロモーターが構成的プロモーター、誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター及び炎症特異的プロモーターの群から選択される。
【0184】
プロモーターの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シミアンウイルス40(SV40)早期プロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトアクチンプロモーター、ヒトミオシンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及びヒト筋クレアチンプロモーター等の構成的プロモーター、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーター(tet−on又はtet−off)等の誘導性プロモーター、HER−2プロモーター及びPSA関連プロモーター等の組織特異的プロモーター、並びにプロモーターからいずれの方向にも転写を開始させることが可能な双方向性プロモーター。
【0185】
誘導性プロモーターを用いることの利点としては、自由に活性化することのできる「休止状態の」核酸構築物が提供されるという選択肢が挙げられる。このことは、免疫応答のプライミングを体内で全身的ではなく(vs.)局所的に誘導するのが好ましい場合(例えば癌に関する場合)、又は投与時に免疫応答のプライミングがレシピエントの健康にとって有害である場合に有用であり得る。
【0186】
好ましい一実施形態では、核酸構築物はCMVプロモーター、SV40プロモーター及びRSVプロモーターの群から選択されるプロモーターを含む。
【0187】
送達ビヒクル
本発明の一態様は、送達ビヒクル内に含まれた、上記のいずれかに記載されるような核酸構築物を含む。送達ビヒクルとは、ヌクレオチド配列又はポリペプチド又はその両方を少なくとも1つの媒体から別の媒体へと輸送することを可能にするものである。送達ビヒクルは概して、核酸構築物内にコードされる配列の発現及び/又は構築物若しくはそこでコードされるポリペプチドの細胞内送達のために使用される。
【0188】
核酸構築物はin vivo又はex vivoで細胞内に移入させることができる。ex vivoでの場合は、患者から標的組織(すなわち肝細胞又は白血球)を取り出し、構築物をin vitroで移入させた後、形質導入された細胞を患者に再移植することによって行われる。
【0189】
非ウイルス送達方法としては、物理的アプローチ(無担体送達)及び化学的アプローチ(合成ベクターに基づく送達)が挙げられる。
【0190】
針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達を含む物理的アプローチでは、細胞膜を通過し、細胞内遺伝子導入を促進する物理的力を利用する。前記物理的力は電気力又は機械力であり得る。
【0191】
化学的アプローチでは、導入遺伝子を細胞に送達するために合成又は天然の化合物を担体として使用する。最もよく研究されている非ウイルス遺伝子送達の戦略は、カチオン性脂質又はカチオン性ポリマーを用いることによる凝縮粒子へのDNAの配合である。このDNA含有粒子はその後、エンドサイトーシス、マクロピノサイトーシス又は食作用を介して細胞内小胞の形態で細胞に取り込まれ、そこからDNAの小片が細胞質に放出され、核内へ移動し、そこで導入遺伝子の発現が起こる。
【0192】
送達ビヒクルがRNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、及びウイルス由来のDNAビヒクル又はRNAビヒクルの群から選択されるビヒクルであることは本発明の範囲に含まれる。
【0193】
本発明の好ましい一実施形態は、機械的又は電気的技法による核酸構築物の送達に関する。
【0194】
● 物理的アプローチ
○ 注射:好ましい一実施形態は、溶液中の核酸構築物の単純な注射に関する。注射は通常、骨格筋において筋肉内で(IM)、皮内で(ID)又は肝臓に対して行われ、核酸構築物は細胞外空間に送達される。注射による送達は、エレクトロポレーションによって;高張食塩水又は高張スクロース液を用いることによって;ブピバカイン等の筋毒素(myotoxins)を用いて筋繊維を一時的に損傷することによって;又はトランスフェリン、非水混和性(water.immiscible)溶媒、非イオン性ポリマー、界面活性剤又はヌクレアーゼ阻害剤等の、標的細胞によるDNA内部移行の効率を増強することが可能な物質を添加することによって補助することができる。
○ 遺伝子銃:遺伝子銃又は微粒子銃(Biolistic)粒子送達システムは、細胞に遺伝子情報を注入する装置である。ペイロード(payload)は例えばプラスミドDNAをコーティングした金、銀又はタングステン等の重金属の素粒子である。この技法は単に微粒子銃と称されることが多い。噴射剤(propellant)として圧縮ヘリウムを使用することができる。特にコロイド性金粒子等の金粒子への核酸構築物のコーティングが、好ましい一実施形態である。
○ 空気圧(Pneumatic)(ジェット)注射:粒子を必要としない、水溶液。
○ エレクトロポレーション又は電気透過化処理(electropermeabilization):外部から印加した電場によって細胞原形質膜の電気伝導度及び透過性を大幅に増大させることである。
○ 超音波による(-Facilitated)遺伝子導入:超音波によって膜孔を作り出し、膜孔を介したDNAの受動拡散による細胞内遺伝子導入を促す。効率は造影剤又は膜をより流体的(fluidic)にする条件の使用によって増強することができる。
○ 流体力学的遺伝子送達:流体力学的遺伝子送達は、高度に灌流した内臓(例えば肝臓)においてネイキッドプラスミドDNAを細胞に導入する単純な方法である。齧歯動物においては、大量のDNA溶液の急速尾静脈注射によって、下大静脈での心拍出量を超える注射溶液の一時的なオーバーフローを引き起こす。結果として、注射によって肝臓へのDNA溶液の逆流、肝内圧の急速な上昇、肝臓膨張及び肝臓の有窓構造(fenestrae)の可逆的破壊が誘導される。
【0195】
● 化学的アプローチ
○ カチオン性脂質媒介遺伝子送達:一部のカチオン性脂質は単独で良好なトランスフェクション活性を示すが、リポソームを形成するためにヘルパー脂質である非荷電性(noncharged)リン脂質又はコレステロールと配合されることが多い。プラスミドDNAはカチオン性リポソームと混合すると、リポプレックスと呼ばれる不安定な(quasi-stable)小粒子へと凝縮する。リポプレックス中のDNAは、ヌクレアーゼ分解から十分に保護されている。リポプレックスは細胞取り込みを誘発し、破壊的なリソソームコンパートメントに到達する前に細胞内小胞からのDNAの放出を促進することが可能である。
○ カチオン性ポリマー媒介遺伝子導入:大半のカチオン性ポリマーは、細胞表面上のアニオン性部位との電荷間相互作用によってDNAを小粒子へと凝縮し、エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを容易にする共通した機能を有する。カチオン性ポリマーDNA担体としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン及びポリプロピルアミンデンドリマー、ポリアリルアミン、カチオン性デキストラン、キトサン、カチオン性タンパク質(ポリリジン、プロタミン及びヒストン)、並びにカチオン性ペプチドが挙げられる。
○ 脂質−ポリマーハイブリッドシステム:ポリカチオンと共に予め凝縮した後、ヘルパー脂質を添加して又は添加せずにカチオン性リポソーム、アニオン性リポソーム又は両親媒性ポリマーのいずれかをコーティングしたDNA。
【0196】
化学的送達ビヒクルの例としては、生分解性ポリマーマイクロスフェア、リポソーム担体等の脂質ベースの製剤、リポソーム等のカチオン荷電分子、カルシウム塩又はデンドリマー、リポ多糖、ポリペプチド及び多糖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
代替的な物理的送達法としては、鼻粘膜及び肺粘膜等の粘膜面へのネイキッド核酸構築物のエアロゾル注入(instillation);眼及び粘膜組織への核酸構築物の局所投与;及び食塩水を眼の角膜実質に強制的に送り込む間質ハイドレーション(stromal hydration)等のハイドレーション。
【0198】
本発明の別の実施形態は、送達ビヒクルとして本明細書においてウイルスベクター(すなわちウイルスではない)と表したベクターを含む。本発明によるウイルスベクターは、改変したウイルスゲノム、すなわちウイルスゲノムを形成する実際のDNA又はRNAから作製され、ネイキッド形態で導入される。したがって、ウイルスタンパク質又は非ウイルスタンパク質からなるウイルスゲノムを取り囲むいかなる被覆構造も、本発明によるウイルスベクターの一部ではない。
【0199】
ウイルスベクターの由来となるウイルスはアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、泡沫状ウイルス、サイトメガロウイルス、セムリキ森林ウイルス、ポックスウイルス、RNAウイルスベクター及びDNAウイルスベクターという限定的な群から選択される。かかるウイルスベクターは当該技術分野で既知である。
【0200】
組換え細胞
本発明の一態様は、上記のいずれかにおいて規定される核酸構築物を含む細胞に関する。かかる組換え細胞は、in vitro研究用のツールとして、核酸構築物の送達ビヒクルとして、又は遺伝子治療計画(regime)の一部として使用することができる。発明による核酸構築物は、当該技術分野で既知であり、細胞の核へのDNAのマイクロインジェクション、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション/リポソーム融合及び粒子衝撃を含む技法によって細胞に導入することができる。好適な細胞としては自己細胞及び非自己細胞が挙げられ、異種細胞を挙げることができる。
【0201】
好ましい一実施形態では、本発明の核酸構築物は抗原提示細胞(APC)内に含まれる。その表面上にMHC分子に結び付けて抗原を提示する任意の細胞は、抗原提示細胞と見なされる。かかる細胞としては、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、ハイブリッドAPC及びフォスター(foster)APCが挙げられるが、これらに限定されない。ハイブリッドAPCを作製する方法は当該技術分野で既知である。
【0202】
より好ましい一実施形態では、APCはプロフェッショナル抗原提示細胞であり、最も好ましくは、APCはMHC−I及び/又はMHC−IIを発現する細胞である。
【0203】
上記のいずれかによるAPCは、患者から得られる幹細胞であってもよい。本発明の核酸構築物を導入した後、幹細胞を医学的状態の患者を治療する目的で患者に再導入することができる。好ましくは、患者から単離される細胞は、抗原提示細胞へと分化することが可能な幹細胞である。
【0204】
本発明の核酸構築物を含む抗原提示細胞がいかなる共刺激シグナルも発現せず、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が自己抗原であることが本発明の範囲にさらに含まれる。
【0205】
キメラタンパク質及び抗体
本発明の一目的は、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片を含む、本明細書において上記に記載されるような核酸構築物によってコードされるキメラタンパク質である。キメラタンパク質とは、2つ以上の完全若しくは部分的な遺伝子、又は一連の(非)ランダム核酸を共にスプライシングすることによって作製されたヌクレオチド配列によってコードされる遺伝子操作されたタンパク質であると理解される。
【0206】
本発明の一態様は、本明細書において上記に規定されるキメラタンパク質を認識することができる抗体に関する。「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の活性部分であると理解される。抗体は例えば、無傷免疫グロブリン分子又は免疫学的活性を保持するその断片である。かかる抗体は、動物の受動免疫化に、又は抗体が結合するタンパク質を検出するアッセイに使用することができる。
【0207】
核酸構築物組成物
本発明の一態様は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片と作動可能に連結した、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする核酸配列を含む組成物に関する。組成物はしたがって、上記のいずれかにおいて規定される核酸構築物を含み得る。組成物はさらに、薬物として使用することができる。
【0208】
本発明による核酸構築物組成物は、賦形剤又は安定化剤としても知られる1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を活性薬剤と混合する等といった既知の方法によって配合することができる。これらの賦形剤は、利用される投与量及び濃度でそれに曝露される細胞又は個体に対して非毒性であるため、任意の個体/動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくはヒトへの投与に許容可能であり得る。生理学的に許容可能な担体は多くの場合、pH緩衝水溶液である。かかる賦形剤、担体及び配合方法の例は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(MaackPublishing Co,Easton,PA)に見ることができる。生理学的に許容可能な担体の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び他の有機酸緩衝液等の緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)等の非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
有効な投与に好適な薬学的に許容可能な組成物を配合するには、かかる組成物は本発明によると、本明細書において記載されるような核酸構築物、送達ビヒクル内に含まれる核酸構築物又は核酸構築物内でコードされるキメラタンパク質を有効量含有する。多くの場合、本発明の核酸構築物によってコードされるようなタンパク質又はポリペプチドを用いて免疫応答をプライミングする場合、担体はタンパク質又はペプチドをそれに結合させることによって骨格(scaffold)として使用され、それにより免疫応答の誘導を補助する。担体タンパク質は、免疫原決定基を提示するのに好適な任意のタンパク質を含む従来の任意の担体であり得る。好適な担体は典型的にはタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質集合体(aggregates)(油滴又はリポソーム等)、及び不活性ウイルス粒子といった大きく、ゆっくりと代謝される高分子である。かかる担体は当業者に既知である。さらに、これらの担体は免疫促進剤(「アジュバント」)として機能し得る。動物の免疫化はアジュバント及び/又は医薬担体を用いて行うことができる。従来の担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(トランスフェリン、ウシ血清アルブミン若しくはヒト血清アルブミン等)、オボアルブミン、免疫グロブリン、又はホルモン(インスリン等)が挙げられるが、これらに限定されない。担体はアジュバントと共に、又はそれとは独立して与えることができる。
【0210】
以下において、核酸構築物組成物又は組成物は、患者における免疫応答の刺激を含む予防的使用及び治療的使用に有用な組成物を包含することを意図する。本発明の組成物が、いかなる全身性若しくは局所性の毒性反応又は任意の他の副作用をも誘導しないことがさらに予想される。
【0211】
好ましい一実施形態では、「組成物」という表現は、本明細書において使用される場合、免疫応答をプライミングするための組成物を指す。
【0212】
好ましい一実施形態では、核酸構築物はパッケージングされる。核酸構築物のパッケージング手段としては、RNAベース又はDNAベースのベクター、脂質ベースの担体、ウイルス発現ベクター、ウイルス送達ベクター、コロイド性金粒子のコーティング及び生分解性ポリマーマイクロスフェアの群から選択されるが、これらに限定されない手段が挙げられる。したがって、先述した送達手段のいずれも、組成物に使用するパッキング(packing)目的のために使用することができる。
【0213】
一実施形態では、核酸構築物のパッケージング手段は、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及びDNAウイルスベクターの群から選択されるが、これらに限定されないウイルス発現ベクターである。ウイルスベクターは、複製欠損性又は条件付きで複製欠損性のウイルスベクターであり得る。
【0214】
本発明の一態様は、少なくとも2つのベクターを含む組成物に関する。これには、記載されるような任意の1つ又は2つの異なる核酸構築物を、少なくとも2つのベクターに入れることができる(これらのベクターは上記のいずれかに記載されるようなタイプである)ことが包含される。本発明は、3つ、4つ、5つ又は6つのベクターを含む組成物にさらに関する。この場合も同様に、これらのベクターは互いに異なっていても又は異なっていなくてもよく、本明細書において上記に記載されるような同一又は異なる核酸構築物を保有し得る。本発明のさらなる態様は、本明細書において記載される核酸構築物のいずれかによってコードされるような少なくとも1つのキメラタンパク質を含む組成物に関する。免疫原としてキメラタンパク質又はポリペプチドを使用する場合、組換え細胞において上記に記載される核酸構築物のいずれか1つ又は複数を発現させることによって生成してもよく、又は当該技術分野で既知の方法による化学的合成によって作製してもよい。上記に記載されるように、かかるキメラタンパク質及び/又はペプチドを担体と結合して、タンパク質/ペプチドに対する免疫学的応答を増大させてもよく、アジュバント及び/又は賦形剤を添加して又は添加せずに投与してもよい。
【0215】
一実施形態では、本発明は、組成物の製造のための本明細書において記載されるような核酸構築物の使用に関する。
【0216】
免疫応答の増強:伝統的なアジュバント
特異的な免疫応答を増強するためにアジュバントが組成物に含まれていてもよい。したがって、抗原(複数可)/核酸構築物及び/又は送達ビヒクル(いずれも免疫原決定基とも称される場合がある)と組み合わせた場合に、強い特異的免疫応答を誘導することが可能な組成物をもたらすアジュバントを同定することが特に(particular)重要である。免疫原決定基は、免疫化の前に2つ以上の異なるアジュバントと混合してもよい。組成物は本文書において免疫原組成物とも称される。
【0217】
多数のアジュバントが記載されており、マウス、ラット及びウサギ等の実験動物における抗体の生成のために使用される。このような場合、主な目的は強い抗体応答を得ることであるため、副作用に対する寛容性はやや高くなる。医薬品への使用及び使用の承認のため、特にヒトにおける使用のためには、組成物の構成成分(アジュバントを含む)が十分に特徴づけられている必要がある。組成物に肉芽腫、腫瘍又は発熱等といった任意の有害反応のリスクがほとんどないことがさらに必要とされる。
【0218】
本発明の一実施形態は、アジュバントを含む組成物に関する。好ましい一実施形態では、組成物はヒト等の哺乳動物への投与に好適である。したがって、好ましいアジュバントは哺乳動物への投与に好適であり、最も好ましくはヒトへの投与に好適である。
【0219】
別の好ましい実施形態では、組成物は鳥又は魚、最も好ましくはニワトリ(Gallus gallus domesticus)への投与に好適である。したがって、好ましいアジュバントは鳥又は魚への投与に好適である。
【0220】
アジュバントの選択肢は、所望のタイプの免疫応答、B細胞又は/及びT細胞の活性化を刺激するその能力によってさらに選択することができ、組成物を関連リンパ組織への分布及び提示を最適化するよう配合することができる。
【0221】
本発明に関するアジュバントは、その起源(それが鉱物の、細菌の、植物の、合成された又は宿主の産物であるか)によってグループ分けすることができる。この分類による第1のグループは、アルミニウム化合物等の鉱物アジュバントである。アルミニウム塩によって沈降する抗原、又は予め形成したアルミニウム化合物に混合若しくは吸着する抗原が、動物及びヒトにおいて免疫応答を増強するために広く使用されている。アルミニウム粒子は免疫化の7日後にウサギの局所リンパ節にあることが実証されており、別の重要な機能は、抗原をリンパ節自体のT細胞含有領域に対して指向することであると考えられる。アジュバントの効力は、流入領域リンパ節の示唆(intimation)と相関することが示されている。多くの研究によって、抗原をアルミニウム塩と投与することで液性免疫が増大することが確認されているが、遅延型過敏反応によって測定されるように、細胞媒介性免疫はわずかにしか増大しないと考えられる。水酸化アルミニウムも補体経路を活性化するとして記載されている。このメカニズムは、局所性炎症応答並びに免疫グロブリン産生及びB細胞記憶において役割を果たし得る。さらに、水酸化アルミニウムは抗原を急速な異化から保護することができる。主にその安全に関しての素晴らしい記録のために、アルミニウム化合物はヒトにおいて現在使用されている唯一のアジュバントである。
【0222】
別の大きな群のアジュバントは細菌起源のものである。細菌起源のアジュバントは、精製及び合成することができ(例えばムラミルジペプチド、リピドA)、宿主のメディエータ(インターロイキン1及びインターロイキン2)はクローニングされている。過去10年間で、細菌起源の活性成分の幾つかのアジュバント(百日咳菌、ヒト型結核菌、リポ多糖、フロイント完全アジュバント(FCA)及びフロイント不完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Mich.)及びMerck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc.,Rahway,N.J.))の化学的精製はかなりの進歩を遂げている。本発明によるさらに好適なアジュバントは、例えばTitermax Classicalアジュバント(SIGMA-ALDRICH)、ISCOM、Quil A、ALUN(米国特許第58767号及び同第5,554,372号を参照されたい)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックス、GMDP等、並びに免疫刺激剤との組み合わせ(米国特許第5,876,735号)である。百日咳菌は、Tリンパ球集団に対して作用することによって細胞媒介性免疫を調節するその能力のために、本発明との関連において興味深いアジュバントである。リポ多糖及びフロイント完全アジュバントについては、アジュバント活性部分が同定及び合成されているため、構造−機能相関の研究が可能となっている。これらを本発明による免疫原組成物に加えることも検討されている。
【0223】
リポ多糖(LPS)及びその様々な誘導体(リピドAを含む)は、リポソーム又は他の脂質エマルションとの組み合わせで強力なアジュバントであることが見出されている。ヒトにおいて広く使用される、毒性が十分に低い誘導体を生成することができるか否かは未だ不明である。フロイント完全アジュバントは大抵の実験的研究において標準的である。
【0224】
抗原を急速異化から保護するために鉱油を免疫原組成物に添加してもよい。
【0225】
多くの他のタイプの材料を、本発明による免疫原組成物においてアジュバントとして使用することができる。これらとしては、サポニン等の植物産物、キチン等の動物産物及び多数の合成化学物質が挙げられる。
【0226】
本発明によるアジュバントは、提唱されているそれらの作用メカニズムによっても分類することができる。大抵のアジュバントは2つ以上のメカニズムによって機能すると考えられるため、このタイプの分類は必然的に幾らか恣意的である。
【0227】
アジュバントは、抗原の局在化及び送達によって、又はマクロファージ及びリンパ球等の免疫系を構成する細胞に対して直接影響を与えることによって作用し得る。本発明によるアジュバントが免疫応答を増強する別のメカニズムは、抗原デポー(depot)が作られることによる。これは、アルミニウム化合物、油エマルション、リポソーム及び合成ポリマーのアジュバント活性に寄与すると考えられる。リポ多糖及びムラミルジペプチドのアジュバント活性は主にマクロファージの活性化によって媒介されると考えられるのに対し、百日咳菌はマクロファージ及びリンパ球の両方に作用する。本発明による免疫原性組成物に組み込む場合に有用であり得るアジュバントのさらなる例は、米国特許第5,554,372号に記載されている。
【0228】
したがって、本発明による組成物において有用なアジュバントは、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム又はリン酸カルシウムのゲル、油エマルション及び界面活性剤ベースの製剤、例えばMF59(マイクロ流動化界面活性剤によって安定化した(microfluidized detergent stabilized)水中油型エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02(SBAS2、水中油型エマルション+モノホスホリルリピドA(MPL)+QS21)、Montanide ISA 51及びISA−720(安定化した油中水型エマルション)、Adjuvant 65(ラッカセイ油、モノオレイン酸マンニド及びモノステアリン酸アルミニウムを含有する)、RIBI ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,Utah)、微粒子アジュバント、例えばビロゾーム(インフルエンザの血球凝集素を組み入れた単層リポソームベシクル)、AS04(Al塩とMPL)、ISCOM(サポニンと脂質(コレステロール等)の構造化複合体)、ポリ乳酸コグリコリド(PLG)、微生物誘導体(天然及び合成)、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、Detox(MPL+チモテ菌(M. Phlei)細胞壁骨格)、AGP(RC−529(合成アシル化単糖))、DC_chol(リポソームへと自己組織化することが可能なリポイド(lipoidal)免疫賦活物質)、OM−174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫賦活性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、非毒性アジュバント効果を有する改変した細菌毒素LT及びCT、内因性ヒト免疫調節物質、例えばhGM−CSF又はhIL−12又はImmudaptin(C3dタンデムアレイ)、金粒子等の不活性ビヒクルであり得る。
【0229】
アジュバントのさらなる例としては、免疫賦活性油エマルション(例えば油中水型、水中油型、水中油中水型、例えばMontanide(登録商標)、Specol等のフロイント不完全アジュバント、無機塩、例えばAl(OH)3、AlPO4、微生物産物、Qual A等のサポニン、合成産物、並びにアジュバント製剤、並びに免疫刺激複合体(ISCOM)、並びにサイトカイン、加熱不活性化細菌/構成成分、ナノビーズ、LPS、LTAが挙げられる。他の一般に使用されているアジュバントのリストは、国際公開第2003/089471号の6頁〜8頁に開示されている(このリストは参照により本明細書中に援用される)。
【0230】
本発明による免疫原組成物は、緩衝液等の希釈剤、アスコルビン酸等の酸化防止剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース又はデキストリンを含む炭水化物、EDTA等のキレート化剤、グルタチオン、並びに他の安定化剤及び賦形剤を含有していてもよい。非特異的な血清アルブミンと混合した中性緩衝食塩水又は食塩水が適切な希釈剤の一例である。
【0231】
アジュバントは一般に、免疫原組成物中に製造業者の取扱説明書に従う量で含まれる。
【0232】
免疫応答の増強:非伝統的なアジュバント
サイトカイン調節
ワクチンを有効にするには、所定の病原体に対する適切な免疫応答を誘導しなければならない。これは、発現された抗原の形態(すなわち分泌抗原に対する細胞内抗原)、送達の方法及び経路、並びに送達するDNAの用量の変更によって達成することができる。しかしながら、これは免疫調節分子、例えばサイトカイン、リンホカイン又は共刺激分子をコードするプラスミドDNA(pDNA)の同時投与によっても達成することができる。これらの「遺伝子アジュバント」は、「伝統的なアジュバント」又は本明細書において概説されるような「他の免疫賦活性アジュバント」のいずれかと共に、多数の形:
一方が免疫原をコードし、他方がサイトカインをコードする2つの別個のプラスミドの混合物として;
スペーサー領域によって隔てられた単一のバイシストロニックベクター又はポリシストロニックベクターとして;又は
プラスミドにコードされたキメラタンパク質若しくは融合タンパク質として;又は
その天然形態、すなわちタンパク質若しくはヌクレオチドとして投与することができる。
【0233】
一般に、炎症促進性物質(各種インターロイキン、腫瘍壊死因子及びGM−CSF等)及びTH2誘導サイトカインの同時投与は抗体応答を増大させるが、炎症促進性物質及びTH1誘導サイトカインは液性応答を減少させ、細胞傷害性応答を増大させる(これは例えばウイルス保護においてより重要である)。B7−1、B7−2及びCD40Lのような共刺激分子も同様に使用される場合がある。
【0234】
このコンセプトは、IL−10をコードするpDNAの局所投与に首尾よく適用されている。B7−1(APC上のリガンド)をコードするプラスミドは、抗腫瘍モデルにおいて免疫応答を首尾よく増強し、GM−CSF及びプラスモディウム・ヨエリ(P. yoelii)のスポロゾイト周囲タンパク質(PyCSP)をコードするプラスミドの混合は、その後の抗原投与に対する保護を増強した(一方、プラスミドにコードされたPyCSPは単独では増強しなかった)。GM−CSFはより効率的に樹状細胞に抗原を提示させ、IL−2産生及びTH細胞活性化を増強し、それにより免疫応答をさらに増大させる。これは、最初にpPyCSPとpGM−CSFとの混合物でプライミングし、後にPyCSPを発現する組換えポックスウイルスでブーストすることによりさらに増強することができる。しかしながら、GM−CSF(又はIFN−γ、又はIL−2)と、プラスモディウム・シャバウディ(P. chabaudi)メロゾイト表面タンパク質1(C末端)−B型肝炎ウイルス表面タンパク質の融合タンパク質(PcMSP1−HB)との同時注入は、実際にはpPcMSP1−HB単独の送達によって獲得された保護と比較して、抗原投与に対する保護を無効にした。
【0235】
他の免疫賦活性アジュバント
一実施形態では、本発明による核酸構築物又は組成物に対する免疫賦活性アジュバントとして以下のいずれかを使用することができる:
LPS(リポ多糖)、ポリ−IC(ポリ−イノシトールシトシン)又は二本鎖RNA、LL37、RIG−1ヘリカーゼ、IL−12、IL−18、CCL−1、CCL−5、CCL−19、CCL−21、GM−CSF、CX3CL、CD86、PD−1、分泌型PD−1、IL10−R、分泌型IL10−R、IL21、ICOSL、41BBL、CD40L及び免疫応答を刺激する任意の他のタンパク質若しくは核酸配列に類似した任意の他のアジュバント。
【0236】
一実施形態では、免疫賦活性アジュバントをアデノウイルス線維タンパク質に融合させる。例えば、CX3CLをアデノウイルス線維タンパク質に融合させることができる。
【0237】
免疫賦活性CpGモチーフ
プラスミドDNAはそれ自体が免疫系に対してアジュバント効果を有すると考えられる。細菌に由来するプラスミドDNAは、先天性免疫防御機構、樹状細胞の活性化、及びTH1サイトカインの産生を誘発することが見出されている。これは免疫賦活性である或る特定のCpGジヌクレオチド配列の認識によるものである。CpG刺激性(CpG−S)配列は、細菌に由来するDNAにおいて真核生物よりも20倍多く生じる。これは、真核生物が「CpG抑制」を示す、すなわちCpGジヌクレオチド対が生じる頻度が予想よりかなり少ないためである。さらに、CpG−S配列は低メチル化状態にある。これは細菌DNAにおいては頻繁に起こるが、真核生物において生じるCpGモチーフは全てシトシンヌクレオチドでメチル化されている。対照的に、免疫応答の活性化を阻害するヌクレオチド配列(CpG中和又はCpG−Nと称される)は、真核生物ゲノムにおいて過剰発現されている(over represented)。最適な免疫賦活性配列は、2つの5’プリン及び2つの3’ピリミジンが隣接した非メチル化CpGジヌクレオチドであることが見出されている。さらに、この免疫賦活性六量体の外側の隣接領域は、標的細胞への結合及び取り込みを確実にするために任意でグアニンリッチである。
【0238】
先天性免疫系は適応免疫系と相乗作用して、DNAにコードされるタンパク質に対する応答を増大させる。CpG−S配列は、ポリクローナルB細胞の活性化並びにサイトカイン発現及び分泌の上方調節を誘導する。刺激されたマクロファージはIL−12、IL−18、TNF−α、IFN−α、IFN−β及びIFN−γを分泌するが、刺激されたB細胞はIL−6及び一部のIL−12を分泌する。DNAワクチンのプラスミド骨格におけるCpG−S配列及びCpG−N配列を操作することによって、コードされた抗原の免疫応答の成功を確実にし、免疫応答をTH1表現型に指向する(drive)ことができる。これは病原体に対して保護するためにTH応答が必要とされる場合に有用である。CpG−S配列は、DNA及び組換えタンパク質のワクチン投与の両方に対して外部アジュバントとして変動する成功率で使用されてきた。低メチル化CpGモチーフを有する他の生物は、ポリクローナルB細胞の増加を刺激することが実証されている。しかし、その背後のメカニズムは単純なメチル化よりも複雑である可能性があり、低メチル化マウスDNAでは免疫応答の増大は見出されていない。
【0239】
DNAの配合
DNA免疫化の効率は、DNAを分解に対して安定化し、抗原提示細胞へのDNAの送達の効率を増大させることによって改善することができる。これは、生分解性のカチオン性微粒子(臭化セチルトリメチルアンモニウムと配合されたポリ(ラクチド−co−グリコリド)等)にDNAをコーティングすることによって達成することができる。かかるDNAコーティング微粒子は、CTLを組換えワクシニアウイルスとして生じさせる際に、特にミョウバンと混合した場合に有効であり得る。直径300nmの粒子が抗原提示細胞による取り込みに最も効率的であると考えられる。
【0240】
投与
本発明による核酸構築物及び組成物は、治療的有効量で個体に投与することができる。有効量は個体の状態、体重、性別及び年齢等の様々な要因によって変化し得る。他の要因としては、投与方法が挙げられる。
【0241】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNA、RNA、LNA、PNA、INA、TINA、HNA、ANA、CNA、CeNA、GNA、TNA、ギャップマー、ミックスマー、モルホリノ又はそれらの任意の組み合わせの形態で被験体に送達することができる。
【0242】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNAの形態で被験体に送達することができる。
【0243】
別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、RNAの形態で被験体に送達することができる。したがって、核酸構築物は投与前にRNAへと転写され得る。
【0244】
さらに別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、タンパク質の形態で被験体に送達することができる。したがって、核酸構築物は投与前にタンパク質へと翻訳され得る。
【0245】
本発明による核酸構築物がタンパク質の形態で被験体に送達される実施形態では、タンパク質を安定性(stabilization)を増大させるため、及び/又は細胞への送達を最適化するために改変してもよい。タンパク質は、ジスルフィド結合の存在(例えば、米国特許第5,102,985号では、タンパク質の溶液を過酸化水素で処理することで、分子内ジスルフィド架橋を有するタンパク質を90%〜96%の収率で生成している)、極性残基の増加、表面電荷最適化、表面塩架橋、封入(例えばメソポーラスシリケートによる)によって安定性を増大させることができ、又はタンパク質を熱ショックタンパク質(Hsp−60、Hsp−70、Hsp−90、Hsp−20、Hsp−27、Hsp−84等)、HIV tat転座ドメイン、アデノウイルス線維タンパク質、又は任意の他のタンパク質若しくはドメインと連結してもよい。
【0246】
医薬組成物又は動物用組成物は、皮下(sc又はs.c.)、局所、経口及び筋肉内(im又はi.m.)等といった様々な経路によって個体に与えることができる。医薬組成物の投与は、経口的又は非経口的に行うことができる。非経口的送達の方法としては、局所投与、動脈内投与(組織に直接)、筋肉内投与、脳内(ic又はi.c.)投与、皮下投与、髄内投与、くも膜下投与、脳室内投与、静脈内(iv又はi.v.)投与、腹腔内投与又は鼻腔内投与が挙げられる。本発明はまた、組成物を用いて免疫応答をプライミングする方法に使用する好適な局所、経口、全身性及び非経口医薬製剤を提供するという目的を有する。
【0247】
例えば、組成物は錠剤、カプセル剤(各々、持続放出型(timed release)及び徐放性(sustained release)の製剤を含む)、丸薬、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及び乳剤のような経口剤形で、又は注射によって投与することができる。同様に、静脈内形態(急速静注及び点滴の両方)、腹腔内形態、皮下形態、閉塞を伴う若しくは伴わない局所形態、又は筋肉内形態でも投与することができ、用いられる形態は全て、薬学の技術分野の通常の技術を有する者(当業者)に既知である。本明細書において記載される化合物のいずれかを含む組成物を、有効であるが毒性のない量で利用することができる。必要に応じて従来の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、防腐剤、アジュバント、緩衝成分等を含有する凍結乾燥形態及び溶液、懸濁剤又はエマルション形態等といった当該技術分野で注射用免疫原性ペプチド組成物の配合に適切であることが知られる従来の剤形のいずれか及び全ても包含される。
【0248】
一実施形態では、プライミング及び/又はその後のブースターワクチンのための組成物を持続放出型(slow release)又は徐放性製剤として与える。
【0249】
本発明による核酸構築物又は組成物の好ましい投与方法としては、全身投与、例えば静脈内投与又は皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経口投与、直腸投与、膣内投与、肺内投与、及び一般に任意の形態の粘膜投与が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書において言及される投与形態のいずれかのための手段が本発明に含まれることは本発明の範囲に含まれる。
【0250】
本発明による核酸構築物又は組成物は、1回、又は任意の回数、例えば2回、3回、4回又は5回投与することができる。
【0251】
好ましい一実施形態では、核酸構築物又は組成物を1回投与し、続いて好適なワクチンの投与を行う。
【0252】
別の好ましい実施形態では、核酸構築物又は組成物を、ワクチンを投与する前に連続投与として投与する。かかる連続投与は、核酸構築物又は組成物を1日1回、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週1回、週2回又は2週おきで計1回、2回、3回、4回又は5回投与することを含み得る。
【0253】
一実施形態では、免疫系をプライミングするための最初の核酸構築物又は組成物と、次のブーストするためのワクチンとを投与する間の期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、例えば3日、少なくとも4日、例えば5日、少なくとも6日、例えば7日、少なくとも8日、例えば9日、少なくとも10日、例えば15日、少なくとも20日、例えば25日等である。
【0254】
したがって、核酸構築物又は組成物によるプライミングは、ワクチンを投与することによってさらにブーストされることが意図される。この投与は先の投与とは異なる形態、若しくは身体部分であっても、又は先の投与と同様であってもよい。
【0255】
ブースター注射は同種又は異種ブースター注射のいずれかである。同種ブースター注射では、最初の投与及びその後の投与が同じ構築物、より具体的には同じ送達ビヒクルを含む。異種ブースター注射では、同一の構築物が異なるベクターに含まれる。
【0256】
本発明による組成物の好ましい投与形態は、所定の感染しやすい場所(receptacle)の可能性が最も高い体内又は体外の身体領域に組成物を投与することである。感染しやすい場所とは感染を受ける身体領域であり、例えばインフルエンザに関しては、感染しやすい場所は肺である。
【0257】
本発明の核酸構築物又は組成物は、それが有益であり得る任意の生物、特に脊椎動物等の任意の動物に対して投与することができる。組成物の投与手段及び投与方法をレシピエントに適合させることは本発明の範囲に含まれる。
【0258】
組成物の好ましいレシピエントは哺乳動物であり、哺乳動物は本発明のより好ましい一実施形態では、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、フェレット及びヒトの群から選択される。最も好ましい一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0259】
組成物の別の好ましいレシピエントは、ニワトリ等の鳥綱(鳥類)からの任意の脊椎動物である。
【0260】
本発明の一実施形態には、第2の活性成分をさらに含む組成物が含まれる。第2の活性成分は、アジュバント、抗生物質、化学療法剤、抗アレルギー剤、サイトカイン、補体因子及び免疫系の共刺激分子の群から選択されるが、これらに限定されない。
【0261】
本発明の別の実施形態には、上記のいずれかによる少なくとも1つの核酸構築物又は組成物、前記核酸構築物又は組成物を投与する手段、及びその方法に関する取扱説明書を含む部品キットが含まれる。複数の投与量の同じ組成物又は複数の異なる組成物を含むことは本発明の範囲に含まれる。好ましい一実施形態では、部品キットは第2の活性成分をさらに含む。より好ましい一実施形態では、前記第2の活性成分は好適なワクチン、すなわち前記免疫応答の先のプライミングによって生じた免疫応答をブーストすることが可能なワクチンである。
【0262】
本発明は、上記のいずれかによる核酸構築物又は組成物を動物に投与すること、続いて好適なワクチンを投与して、それにより被験体の免疫系をプライミング及びブーストする、投与することを含む、動物における免疫応答を増強する方法をさらに含む。
【0263】
免疫応答、以下のタイプの応答のいずれであってもよいが、これらに限定されない:MHC−I依存性応答、MHC−I及び/又はMHC−II依存性応答、T細胞依存性応答、CD4+ T細胞依存性応答、CD4+ T細胞非依存性応答、CD8+ T細胞依存性応答及びB細胞依存性免疫応答。好適なワクチンは、本発明による核酸構築物又は組成物による免疫系のプライミングに続いて、免疫系をブーストすることが可能なものである。
【0264】
さらなる実施形態では、本発明は、治療を必要とする個体を治療する方法であって、本明細書において上記に記載されるような組成物を投与して、前記個体における臨床状態を治療する、投与することを含む、方法に関する。
【0265】
ワクチンの効力の増大
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片をコードする核酸構築物であって、該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片がウイルス、細菌又は寄生生物由来のものである、核酸構築物に関する。
【0266】
本明細書において提示されるデータにより、インバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物を使用するプライム−ブースト法を開発することが容易ではないことが示される。したがって、図1に提示されるように、インバリアント鎖及び抗原を含むネイキッドDNA構築物(DNA−IiGP)は、免疫応答をプライミングすることが可能であるが、抗原を含むがインバリアント鎖を含まないネイキッドDNA構築物(DNA−GP)は、免疫応答をプライミングすることが可能ではない。さらに、図12に提示されるデータから、抗原を含むアデノウイルスベクター(AdGP)は、或る特定の(Ad−IiGP)免疫応答をプライミングすることが可能であるが、全ての(Ad−GP)免疫応答をプライミングすることは可能ではないことが示され、一方で図13に提示されるデータから、インバリアント鎖と共に抗原を含むアデノウイルスベクター(Ad−IiGP)は、通常の投与量及び治療計画でいかなる(Ad−IiGP及びAd−GP)免疫応答もプライミングすることが可能ではないことが示される。しかしながら、より低い用量のAd−IiGPをプライミングに用いることによって、Ad−IiGPブーストのAd−IiGPプライミングを最適化することが可能である(図14に示される)。
【0267】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及びウイルス、細菌若しくは寄生生物の抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0268】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0269】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0270】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化を含む、方法を開示する。
【0271】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるCLIP領域の変化を含む、方法を開示する。
【0272】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、最初の17個のアミノ酸を含まない、方法を開示する。
【0273】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングするための核酸構築物の使用を対象とする。
【0274】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0275】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化を含む、方法を開示する。
【0276】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるCLIP領域の変化を含む、方法を開示する。
【0277】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、最初の17個のアミノ酸を含まない、方法を開示する。
【0278】
癌ワクチンの効力の増大
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片をコードする核酸構築物であって、該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片が癌特異的ポリペプチド又は癌抗原由来のものである、核酸構築物に関する。
【0279】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び癌抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのその天然形態、野生型形態であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。
【0280】
本発明の一目的はまた、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び癌抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又は最初の17個のアミノ酸が欠失しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0281】
つまり、免疫応答をブーストするために使用されるその後に投与されるワクチンが癌ワクチンである場合、本発明による核酸構築物によってコードされるインバリアント鎖が、その天然形態、野生型形態であっても、又はインバリアント鎖の変異体であってもよいということになる。
【0282】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0283】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0284】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0285】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0286】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングするための核酸構築物の使用を対象とする。
【0287】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0288】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0289】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0290】
異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力の増大
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖及び異常な生理学的応答と関連するポリペプチド又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのその天然形態、野生型形態であり、前記プライミングに続いて、前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。
【0291】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び異常な生理学的応答と関連するポリペプチド又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はIiの最初の17個のアミノ酸が欠失しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0292】
つまり、免疫応答をブーストするために使用されるその後投与されるワクチンが、前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンである場合、本発明による核酸構築物によってコードされるインバリアント鎖は、その天然形態、野生型形態のいずれかであっても、又はインバリアント鎖の変異体であってもよいということになる。
【0293】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0294】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答のプライミングのための核酸構築物の使用を対象とする。
【0295】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0296】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0297】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0298】
ワクチンタイプ
本発明の一態様は、Ii連結抗原を含む核酸構築物を投与すること、続いて同じ被験体に好適なワクチンを投与することによって達成されるその後のブースター投与を行うことによる、被験体における免疫応答のプライミングに関する。
【0299】
本発明による好適なワクチンは、免疫応答のプライミングのために使用される核酸構築物と共通した、少なくとも1つの同一の特徴を有する。前記同一の特徴は、インバリアント鎖の一部若しくは全部、抗原ペプチドの一部若しくは全部、骨格構造の一部若しくは全部、例えばプロモーター領域の一部若しくは全部、エンハンサーの一部若しくは全部、ターミネーターの一部若しくは全部、ポリA尾部の一部若しくは全部、リンカーの一部若しくは全部、ポリリンカーの一部若しくは全部、作動性リンカーの一部若しくは全部、多重クローニング部位(MCS)の一部若しくは全部、マーカーの一部若しくは全部、停止コドンの一部若しくは全部、内部リボソーム侵入部位(IRES)の一部若しくは全部、及び組み込みのための宿主相同配列の一部若しくは全部、又は他の規定の要素に含まれ得る。
【0300】
好ましい一実施形態では、同一の特徴は、抗原ペプチド又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープの一部又は全部である。最も好ましい一実施形態では、同一の特徴は抗原ペプチドの一部又は全部である。
【0301】
別の好ましい実施形態では、同一の特徴はインバリアント鎖の一部又は全部である。
【0302】
ワクチンは伝統的なものと見なしても、又は画期的なものと見なしてもよい。本明細書において引用されるタイプのワクチンのいずれかを、本発明によるその後のブースター工程に使用することができる。
【0303】
伝統的なワクチン、すなわち第1世代のワクチンは、生物そのもの(whole organisms)(死滅させた病原性菌株又は病原性を弱毒化した株のいずれか)に基づいている。
【0304】
分子生物学的技法を使用して、新たなワクチン、すなわち第2世代のワクチンが病原性生物に由来する個々の抗原タンパク質に基づいて開発されてきた。概念的には、生物そのものではなく抗原ペプチドを使用することは、病原性を回避する一方で、最も免疫原性の高い抗原を含有するワクチンを提供し得る。これらのワクチンとしては、不活化した毒性化合物に基づくトキソイドベースのワクチン(良く知られている)、及び不活化又は弱毒化した病原性菌株の断片に基づくサブユニットワクチンが挙げられる。
【0305】
共役ワクチン:或る特定の細菌は、免疫原性の乏しい多糖外皮を有する。これらの外皮をタンパク質(例えば毒素)に連結することによって、それがタンパク質抗原であるかのように免疫系に多糖を認識させることができる。
【0306】
組換えベクターワクチン:一方の微生物の生理と他方のDNAとを組み合わせることによって、複雑な感染過程を有する疾患に対して免疫を引き起こすことができる。
【0307】
合成ワクチンは主に又は完全に合成ペプチド、炭水化物又は抗原からなる。
【0308】
DNA(又は遺伝子)ワクチン、すなわち第3世代のワクチンは、予防的ワクチン及び治療的ワクチンの両方の開発にとって新たな有望な候補である。DNAワクチンは、微生物に由来する1つ又は複数の抗原を産生するよう遺伝子操作された、DNAの小さな円形の断片(プラスミド)から構成される。ワクチンDNAを身体の細胞に注射すると、そこで宿主細胞の「内部機構」がDNAを「読み取り」、それを病原性タンパク質に変換する。これらのタンパク質は異物として認識されるため、宿主細胞によって処理され、免疫系に警告を出すためにそれらの表面上に提示され(displayed)、それにより次いで様々な免疫応答が誘発される。続く免疫応答の強さは、ベクター(すなわちネイキッドDNA、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス等)の効力、抗原の発現レベル、及び組換え抗原自体(すなわち、高親和性又は低親和性MHC結合剤、T細胞又はB細胞レパートリーを程度の差はあれど限定するために選択される構造決定因子等)の組み合わせによって求められる。一般に、免疫記憶の効率的な誘導には、CD4+(ヘルパー細胞)T細胞及びCD8+(細胞障害性)T細胞と、免疫記憶の効果の多くを媒介するB細胞との相互作用が必要とされるか、又は有効であることが言える。
【0309】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第1世代、すなわち伝統的なワクチンの投与を行う。
【0310】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第2世代のワクチンの投与を行う。
【0311】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第3世代、すなわちDNAワクチンの投与を行う。
【0312】
免疫原性を増大させるためのDNAワクチン構築物におけるインバリアント鎖の使用は、当該技術分野で既知である。本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後のインバリアント鎖又はその変異体を含むDNAワクチンの投与を行う。
【0313】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後のアデノウイルスワクチンの投与を行う。
【0314】
ワクチンはさらに、一価(monovalent)(単価(univalent)とも呼ばれる)又は多価(multivalent)(ポリバレント(polyvalent)とも呼ばれる)であってもよい。一価ワクチンは、単一の抗原又は単一の微生物に対して免疫を与えるように設計されている。多価又はポリバレントワクチンは、同じ微生物の2種以上の株、又は2種以上の微生物に対して免疫を与えるように設計されている。
【0315】
図面の詳細な説明
図1:Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるDNAプライミングは、その後の非常に効率的なウイルスベクターによるブーストの際にウイルス特異的CD8+ T細胞の生成を有意に増強する。マウスを3週間に2回、DNA−IiGP、DNA−GPで別々に遺伝子銃により免疫化するか、又は未処理のままにした。最後の免疫化の3週間後、全てのマウスの右後足蹠に、2×107IFUのAd5−IiGPを注射し、4週間後、動物を屠殺し、図1に記載されるように脾細胞を解析した。エピトープ特異的IFN−γ+CD8+ T細胞の数を平均±SEとして示す(n=5マウス/群)。*はAd5−IiGPのみでのワクチン投与を受けたマウスに対する統計的有意性を表す(マン・ホイットニーの順位和検定)。2つの同様の実験の一方の結果を示す。
【0316】
図2:Ii配列におけるドメイン及び試験した突然変異の位置。WT Iiにおけるドメインをバーの上部に示す。ESS;エンドソーム輸送選別シグナル、TM;膜貫通ドメイン、KEY;ペプチド提示増強領域、CLIP;クラスII関連インバリアント鎖ペプチド、TRIM;三量体形成ドメイン。Iiにおける欠失突然変異及び置換の範囲はバーの下部に示す。a;Ad−Δ17IiGP、b;Ad−IiLTMGP、c;Ad−IiUTMGP、d;Ad−Δ50IiGP、e;Ad−Ii1−201GP、f;Ad−Ii1−118GP、g;Ad−Ii1−105GP、h;Ad−IiCLIPGP、i;Ad−IiKEYGP、j;Ad−Ii51−118GP。
【0317】
図3:IiはSIINFEKL/H−2kb OVA由来のエピトープの細胞表面提示を劇的に増大させる。骨髄由来の樹状細胞にAd−OVA、Ad−IiOVA又はAd−IiGP(陰性対照)をトランスフェクトし、MHCクラスIIについて(成熟樹状細胞の染色)及びSIINFEKL/H−2kb特異的抗体で(OVAエピトープ)表面染色した。
【0318】
図4:Iiはシスにおいてのみ機能する。A)Ad−IiGPベクター及びAd−Ii+GPベクターからのIiの発現;Ii発現は、50moiのAd−IiGP及びAd−Ii+GPに感染させたCOS7細胞におけるGAPDHに対して正規化した。B)TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP又はAd−Ii+GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0319】
図5:N末端の欠失及び置換はIi刺激能に影響を与えない。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−Δ17IiGP、Ad−IiLTMGP、Ad−IiUTMGP、Ad−Δ50IiGPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0320】
図6:C末端の欠失及び置換はIi刺激能に影響を与えない。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−Ii1−205GP、Ad−Ii1−118GP及びAd−Ii1−105GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞培養系)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0321】
図7:N末端及びC末端の欠失のみがIi刺激能を低減させる。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−IiKEYGP及びAd−Ii51−118GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞培養系)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0322】
図8:Ad−IiGP及びAd−GPワクチンの用量応答。マウスの群に指示菌株中の指示ワクチンをワクチン投与した。ワクチン投与の14日後、マウスを屠殺し、脾細胞を指示エピトープにより刺激した。特異的CD8+脾細胞の総数を細胞内染色及びFACS解析によって求めた。データから、Ad−IiGPが非常に低い投与量で応答を誘導し、したがって低い用量のAd−IiGP(又は任意の抗原)によるプライミング、及びより高い用量のAd−IiGP(又は任意の抗原)によるその後のブーストを同種プライム−ブースト法に適用可能であり得ることが示される。
【0323】
図9:MHCクラスIIによる抗原提示(CD4+ T細胞の刺激)に関するAd−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPの比較。SMARTA GP61−80は、Ad−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPを形質導入したBMDCに応じてT細胞増殖を抑制し、Ad−IiCLIPGPのMHC II抗原提示の増大が示される。
【0324】
図10:in vivo経時研究におけるAd−GP、Ad−IiGP、Ad−GPLamp−1及びAd−IiΔ17GPの比較。
【0325】
図11:Ad−GP、Ad−IiGP、Ad−IiΔ17GP、Ad−IiKEYGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−Ii1−117GP及びAd−Ii1−199GPのin vivo応答の比較。
【0326】
図12:Ad−GPはその後のAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能である。C57BL/6マウスの3つの群にAd−GPをワクチン投与した。60日後、これらのマウスをそのままにしておくか、Ad−GPをワクチン投与するか、又はAd−IiGPをワクチン投与した。マウスの第4の群は、Ad−GPでのワクチン投与を受けたマウスを含んでいた。最初のワクチン投与の120日後、マウスを屠殺し、指示エピトープを認識する抗原特異的細胞を、前記ペプチドでのex vivo再刺激及びインターフェロン−γ産生についての細胞内染色によって定量化した。
【0327】
図13:Ad−IiGPはその後のAd−GP又はAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能ではない。C57BL/6マウスの3つの群にAd−IiGPをワクチン投与した。60日後、これらのマウスをそのままにしておくか、Ad−GPをワクチン投与するか、又はAd−IiGPをワクチン投与した。マウスの第4の群は、Ad−IiGPでのワクチン投与を受けたマウスを含んでいた。最初のワクチン投与の120日後、マウスを屠殺し、指示エピトープを認識する抗原特異的細胞を、前記ペプチドでのex vivo再刺激及びインターフェロン−γ産生についての細胞内染色によって定量化した。このことから、Ad−IiGPプライミングはAd−IiGPによりブーストすることができないが、DNA−IiGPプライミングはAd−IiGPによりブーストすることができることが示される(図1を参照されたい)。
【0328】
図14:Ad−GPワクチン及びAdIi−Gpワクチンの用量応答。マウスの群に指示菌株中の指示ワクチンをワクチン投与した。ワクチン投与の14日後、マウスを屠殺し、脾細胞を指示エピトープにより刺激した。CD8+脾細胞の総数を細胞内染色及びFACS解析によって求めた。
【0329】
図15:残基50〜215を含むインバリアント鎖の変異体(Ii50〜215)と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合したマンノース受容体。アデノウイルス線維タンパク質(Ad線維)はいずれの血清型のアデノウイルスからも生じ得る。マンノース受容体は、マンノース受容体に由来する1つ又は複数のドメインであってもよい。IiはIiの変異体であっても、又は完全長Iiであってもよい。Ag=抗原。
【実施例】
【0330】
本発明をここで以下の実施例を参照してさらに説明する。以下が単に例示を目的とし、本発明の範囲に含まれるように詳細な変更を行うことができることが理解されよう。
【0331】
実施例1:Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるプライミングは、最適化したウイルスベクターによるその後のブーストの際にウイルス特異的CD8+ T細胞の生成を有意に増強する。
ネイキッドDNAワクチン(すなわち、核酸構築物)によるプライミングは、Ad5(アデノウイルス血清型5)ベクターによるその後の免疫化によって生じる免疫応答を増強することが示される。DNA−IiGP(インバリアント鎖(Ii)に融合したLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)糖タンパク質(GP)を発現するDNA構築物)によるプライミングは、アデノウイルス血清型5ベクター(Ad5−IiGP)中で送達された同じ遺伝子構築物によって誘導されるCD8+ T細胞応答を有意に増強することが本明細書において実証されており、Ii鎖ベースのDNA構築物を将来の異種免疫化(「プライム−ブースト」)プロトコルに組み入れることの強力な論拠をもたらす。
【0332】
本発明者らの研究から、Ii鎖連結の免疫増強効果がAd5ベクターに限定されず、同様にDNAプラットフォームに関連することが示される。さらに、Ii鎖が2つ以上のエピトープの提示を増強するという事実を踏まえると、これによりIi鎖ベースのDNAワクチンが様々な異種プライム−ブースト法に対する非常に有望な候補として位置付けられる。
【0333】
結果及び考察
誘導されたT細胞記憶を改善する一方法は、異種プライム−ブースト法、例えばネイキッドDNAプライミングに続いてベクターのブーストを行うことによるものである。このようにして実験室において適切なベクター、p31 Ii鎖と融合したLCMV GP(Ad5−IiGP)を発現する複製欠損性アデノウイルスを得て、この可能性を実験的に試験した。最初に、標準的なDNAワクチン投与である遺伝子銃によるワクチン投与を、DNA−IiGP又はDNA−GPで別々に3週間に2回行った。2回目のDNAワクチン投与の3週間後、両方の群のマウス及び適合対照を、2×107IFUのAd5−IiGPを右後足蹠に接種することによって免疫化し、4週間後に脾臓中のウイルス特異的CD8+ T細胞の数を、IFN−γについてのICCS及びフローサイトメトリーを用いて計数した。融合DNA構築物でプライミングしたマウスは、プライミングしていないマウスよりも有意に多いGP33−41及びGP276−286特異的IFN−γ+CD8+ T細胞を含有しており、GP92−101特異的細胞についても同様の傾向が確認されたが、この場合にはその差は統計的に有意ではなかった。対照的に、Iiの非存在下でGPをコードするネイキッドDNAでのプライミングは、Ad5−IiGPでのその後の免疫化によって誘導されたGP特異的記憶CD8+ T細胞のレベルに対しわずかな影響しか与えなかった(図1)。Iiのみを含み、GPを含まないベクターでのDNAプライミングは、その後アデノウイルスベクターを接種したマウスにおいてGP特異的CD8+ T細胞のレベルに対する影響を有しなかったため(データは示さない)、Iiを含むことの観察された影響は、ワクチン投与したマウスの免疫反応性の非特異的な増強を反映していないことに留意されたい。
【0334】
本発明者らは、改善したDNAベクターを異種プライム−ブースト法の一部として使用することで、既に最適化されたウイルスベクターによって誘導される応答が有意に増強されることを示した(Holst et al., 2008)。このことから、非常に免疫原性の高いベクターベースの免疫化であっても、Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンでの宿主の初回プライミングによってさらに改善することができることが強く示唆される。要するに、抗原へのIi鎖融合は広いCD8+ T細胞応答に対するプライミングをもたらすため、Ii鎖ベースのDNAワクチンは、異種プライム−ブースト法の一部としての急速に突然変異するウイルスに対する予防戦略に関する明らかな利点を示すはずである。
【0335】
材料及び方法
マウス。C57BL/6(B6)野生型マウスは、Taconic M&B(Ry,Denmark)から入手した。パーフォリン欠損B6マウスは、元々The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から入手した種畜ペア(breeder pairs)からその場で繁殖させた。全ての実験において7週齢〜10週齢のマウスを使用し、外部から入手した動物は常に、使用前に少なくとも1週間その場の環境に順応させた。全ての動物は、センチネルリンパ節(sentinels)のスクリーニングによって確認されるように、特定病原体を含まない条件下で収容した。全ての動物実験は国のガイドラインに従って行った。
【0336】
DNAワクチン構築及び免疫化の手順。DNAワクチンは、マウスインバリアント鎖に続いてLCMVのGP、又はLCMV GP単独のいずれかを含有する真核生物発現ベクターpACCMV.pLpAを用いて作製した。構築物は最近記載されたように(Holst et al., 2008)生成した。大腸菌株XL1−blue(Stratagene,USA)を、構築物を用い、エレクトロポレーションによって形質転換した。サイクルシークエンス法、Big Dye Terminator及びABI310遺伝子解析装置(ABIprism,USA)を用いたDNAシークエンシングによって、陽性クローンを同定した。プライマーはTAG(Copenhagen,Denmark)から入手した。大規模のDNA調製物はQiagen Maxi Prep(Qiagen,USA)を用いて作製した。
【0337】
遺伝子銃による免疫化。DNAを1.6nmの金粒子に、金1mg当たりDNA2μgという濃度でコーティングし、DNA/金複合体を、1回の注射につき0.5mgの金(1回の注射につき1μgのDNA)がマウスに送達されるようにプラスチックチューブにコーティングした。これらの手順は製造業者(Biorad,CA,USA)の取扱説明書に従って行った(Bartholdy et al., 2003)。粒子駆動力として圧縮ヘリウム(400psi)を利用する手持ち式遺伝子銃装置を用いて、マウスを腹部皮膚で免疫化した。他に言及のない限り、マウスは3週間〜4週間の間隔で2回免疫化した後、さらなる抗原投与/検査の前に3週間保養した。
【0338】
ウイルス。Armstrong株クローン13のLCMVを大半の実験において使用した。他に指定のない限り、感染させるマウスには0.3mlのi.v.注射で105pfu、又は0.03mlの右後足蹠(f.p.)への注射で20pfuの用量のクローン13を与えた。i.c.注射については、マウスに20pfuの神経向性Armstrongクローン53bを0.03mlの容量で与えた。インバリアント鎖に連結したGPをコードする複製欠損性アデノウイルス(Ad5−IiGP)を作製し、最近記載されたように(Holst et al., 2008)滴定した。
【0339】
ウイルス滴定。器官のウイルス力価は、以前に記載されたような(Battegay et al., 1991)免疫フォーカスアッセイによって測定した。
【0340】
CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞のin vivo枯渇。抗CD4 mAb(クローンGK1.5)及び抗CD8 mAb(クローン53.6.72)を使用した。細胞を枯渇させるマウスには、感染に対して−1日目及び0日目に、200□gの用量をPBS0.3mlの容量で腹腔内に与えた。偽処置については、精製したラットIgG(Jackson ImmunoResearch)を代わりに使用した。細胞枯渇の効率はフローサイトメトリーによって確認した。
【0341】
生存研究。急性LCMV誘導性髄膜炎の臨床的重症度を評価するために死亡率を用いた。マウスを14日間、又は100%の死亡率に到達するまで1日に2回確認した。
【0342】
LCMV特異的足蹠腫脹反応。上記のようにマウスの右後足蹠に局所的に感染させ、局所性腫脹反応を感染後(p.i)14日目まで追跡した。足蹠の厚さをダイヤルカリパス(ミツトヨ7309、株式会社ミツトヨ、東京、日本)を用いて測定し、ウイルス特異的腫脹を感染させた右足と未感染の左足との厚さの差として求めた(Christensen et al., 1994)。
【0343】
細胞調製物。マウスの脾臓を無菌的に取り出し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に移した。臓器を細目の滅菌スチールメッシュに押し通すことによって単一細胞懸濁液を得た。細胞をHBSSで2回洗浄し、細胞濃度を2−メルカプトエタノール、L−グルタミン及びペニシリン−ストレプトマイシン溶液を添加した10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するRPMI 1640中で調整した。
【0344】
フローサイトメトリー用のmAb。以下のmAbは全てPharMingen(San Diego,CA)からラット抗マウス抗体として購入した:FITC結合抗CD44、Cy−Chrome結合抗CD8a、Cy−Chrome結合抗CD4及びフィコエリトリン(PE)結合抗IFN−γ。
【0345】
フローサイトメトリー解析。LCMV特異的(インターフェロン−γ産生)CD8+/CD4+ T細胞の可視化のために、1〜2×106個の脾細胞を、10単位のマウス組換えIL−2(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,UK)、3μMモネンシン(Sigma Chemicals co.,St Louis,MO)及び1μg/mlの関連ペプチドを添加した0.2mlの完全RPMI培地中に再懸濁し、37℃で5時間インキュベートした。以下のペプチドを使用した:CD8+ T細胞についてはGP33−41、GP276−86、GP92−101、GP118−125、及び対照にNP396−404;CD4+ T細胞についてはGP61−80。インキュベーション後、以前に記載されたように(Andreasen et al., 2000;Christensen et al.,2003)、細胞を表面染色し、洗浄し、透過化処理して、IFN−γ特異的mAbで染色した。アイソタイプ適合抗体を非特異的染色についての対照とした。細胞をFACS Calibur(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて解析し、少なくとも104個の生細胞を、死細胞及び残屑を除外するために低角度散乱光及び側方散乱光(low angle and side scatter)を併用してゲーティングした(gated)。データ解析はCell−Questソフトウェアを用いて行った。
【0346】
実施例2:Ii連結抗原のCD8+ T細胞活性化の増強は天然Iiには依存しない
Ii配列は、細胞質の選別ドメイン及び三量体形成ドメイン、細胞質及び膜近位(proximal membrane)のシグナル伝達ドメイン、細胞質、膜内及び細胞周辺の三量体形成ドメイン、外因性ペプチドの結合を容易にするMHC分子の開放(unlocking)に関与する「key」モチーフ、CLIP領域におけるMHCクラスI及びIIの結合モチーフ、細胞周辺のグリコシル化部位、並びにCD44及びマクロファージ遊走阻止因子(MIF)との相互作用の構造的に未確認の領域を含む、抗原処理において機能する複数の領域を含有する(図2)。
【0347】
Ii連結によって、MHCクラスI及びクラスIIでの両方の抗原提示が増大する。骨髄由来樹状細胞(BMDC)のAd−IiOVA(OVAはオボアルブミンである)又はAd−OVA形質導入を用いることによって、本発明者らは、H−2Kb上に提示されるSIINFEKL OVAエピトープに指向性を有する抗体での直接染色によって測定されるように、Ii連結が実際にMHCクラスI拘束性の抗原提示の劇的な増大を誘導することを見出した(図3)。Ii連結配列からのMHCクラスI拘束性の抗原発現の増大は、MHCクラスII、CD4+ T細胞及び任意の他の細胞型とは独立してAPCに直接的に作用し、樹状細胞培養物において直接測定することができる。
【0348】
シスでのIi
Iiがシスのみで作用するか、又はトランスでも作用するか否かを確認するために、アデノウイルスベクターへのさらなるリーディングフレームを、β−グロビンポリアデニル化シグナルを有するホスホグリセリン酸キナーゼ(pGK)プロモーターを合成し、これをアデノウイルス骨格のE3領域にクローニングすることによって確立した。このベクターはその後、Ad−GPベクター(ヒトCMVプロモーター及びSV40ポリAの支配下でE1リーディングフレームからLCMV GPを発現する)を作製するために使用されるシャトルベクターとの組換えに使用することができた。この新たなベクターは、アデノウイルスのE1領域からLCMV GPを、及びE3領域からIiを発現する(Ad−Ii+GP)。このプロモーターを、COS7細胞へのトランスフェクションによって緑色蛍光細胞の誘導について検証したが、Ad−IiGP及びAd−Ii+GPを感染させたCOS7細胞におけるIi mRNA発現の測定によって、IiがpGKプロモーターから少なくともCMVプロモーターからの発現と同じくらい効率的に発現されることが確認される(図4A)。Ad−GP、Ad−IiGP及びAd−Ii+GPを感染させたBMDCで刺激したTCR318細胞を比較することによって、Iiが何らかの効果を有するには抗原と連結する必要があることが明確に示される(図4B)。刺激に使用されるBMDC培養物は既にIiを発現するため、トランスでのIi発現が効力を示したのであれば、驚くべきことであった。
【0349】
N末端の変化:
N末端から開始して、1)ロイシンベースのエンドソーム輸送選別シグナルを除去する、最初の17個のアミノ酸の欠失体(Ad−Δ17IiGP)、2)ケモカイン受容体CCR6 TM6に由来する対応するセグメントでの、膜貫通セグメントの前半部の置き換え体(Ad−IiLTMGP)、3)対応するCCR6 TM6セグメントでの、膜貫通セグメントの後半部の置き換え体(Ad−IiUTMGP)、及び最後に4)最初の50個のアミノ酸の完全な欠失体(Ad−Δ50IiGP)を作製した。後者の欠失によって、細胞質ゾル、TM及び膜近位の領域全体が除去された。これらの突然変異のいずれも、残りのIi配列のCD8+ T細胞の刺激を増強する能力に対するいかなる影響も有していなかった(図5)。
【0350】
C末端の変化:
C末端から始めて、最後の14個のaaの欠失(Ad−Ii1−201GP、これによってC末端グリコシル化シグナルが除去される)、最後の97個のaaの欠失(Ad−Ii1−118GP)、及び最後の110個のaaの欠失(Ad−Ii1−105GP)を作製した。1−201によっては、残りのIi配列のCD8+ T細胞の刺激を増強する能力に対するいかなる影響も観察されなかったが、1−105突然変異及び1−118突然変異に、一貫性がないわずかな低下傾向を見ることができた(図6)。
【0351】
突然変異:
報告されたCLIP領域のMHCクラスI結合部位(Ad−IiCLIPGP:MからAへの二重点突然変異−M91A M99A−MHCクラスI分子とのIi相互作用を無効にするように設計された)、及びKEYモチーフ(Ad−IiKEYGP:Ii−Keyセグメントを破壊するLRMKからAAAAへの四重点突然変異)において点突然変異を作製することも試みた。これらの突然変異のいずれも、Ii媒介性のCD8+ T細胞刺激の増強に重要でなかった。N末端及びC末端の切断を組み合わせた場合に唯一興味深いデータが得られた。したがって、51−118変異体(Ad−Ii51−118GP)を試験した場合にCD8+ T細胞刺激能の顕著な低下が観察されたが、この突然変異体は依然としてAd−GPを上回っていた(図7)。
【0352】
実施例3
本発明の一実施形態では、Iiと結合したグリコシル結合タンパク質と組み合わせた非ヒトグリコシルトランスフェラーゼが提供される。Iiは完全長であっても、又は変異体であってもよく、この変異体は残基番号50〜215を含むIiの切断型であり得る。この変異体は、膜貫通ドメインの欠損にもかかわらず完全な活性を有する。任意で、アジュバント又は1つ又は複数の転座ドメインがさらに提供され得る。図15には、マンノース受容体(カルシウム依存性レクチンがワクチンにおいて標的とされることが多い)を、残基50〜215を含むインバリアント鎖(Ii50−215)の変異体と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合した実施形態の概略図を示す。アデノウイルス線維タンパク質(Ad線維)は、アデノウイルスのいかなる血清型から由来していてもよい。マンノース受容体は、マンノース受容体に由来する1つ又は複数のドメインであってもよい。
【0353】
具体的な一例では、1つのリーディングフレームにおいてEgghead(ショウジョウバエに由来するタンパク質)を発現し、別のリーディングフレームにおいて、Ii50−215変異体等の膜貫通領域を含まない完全な活性を有するIiの変異体と結合し、さらにアデノウイルス線維タンパク質と結合したマンノース受容体(又はマンノース受容体に由来するドメイン)を発現するアデノウイルスを提供する。
【0354】
Egghead等のグリコシルトランスフェラーゼ及びマンノース受容体等のグリコシル結合タンパク質は、同じアデノウイルスベクターにおいて異なるリーディングフレームから発現させてもよく、又はEgghead等のグリコシルトランスフェラーゼ及びマンノース受容体等のグリコシル結合タンパク質は、同時に投与される異なるアデノウイルスベクターから発現させてもよい。
【0355】
Eggheadは、全てのグリコシル化ER(小胞体)タンパク質上のマンノースと結合する。したがって、分泌タンパク質のマンノシル化は、(図15に示されるように)マンノシル化タンパク質とマンノース受容体−Ii−Ad線維複合体との結合を引き起こす。複合体のアデノウイルス線維は、前記複合体と連結した分泌タンパク質を他の細胞に取り込ませ、これらを活性化して免疫刺激性とし、複合体の細胞質ゾル(そこでIiはその効果を発揮し得る)への接近をもたらす。
【0356】
この技術は、例えば癌に対して直接投与することができるワクチンを構築するために使用することができる。
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【0357】
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HolmesJP, Benavides LC, Gates JD, Carmichael MG, Hueman MT, Mittendorf EA, Murray JL,Amin A, Craig D, von Hofe E, Ponniah S, Peoples GE. (2008). Results of thefirst phase I clinical trial of the novel II-key hybrid preventive HER-2/neupeptide (AE37) vaccine. J Clin Oncol. Jul 10;26(20):3426-33.
Holst,P. J., Sorensen, M. R., Mandrup Jensen, C. M., Orskov, C., Thomsen, A. R. &Christensen, J. P. (2008). MHC Class II-Associated Invariant Chain Linkage ofAntigen Dramatically Improves Cell-Mediated Immunity Induced by AdenovirusVaccines. J Immunol 180, 3339-3346.
KallinterisNL, Lu X, Blackwell CE, von Hofe E, Humphreys RE, Xu M. (2006). Ii-Key/MHC class II epitopehybrids: a strategy that enhances MHC class II epitope loading to create morepotent peptide vaccines. Expert Opin. Biol. Ther. 6(12):1311-1321.
Morris,C. R., A. J. Reber, J. L. Petersen, S. E. Vargas, and J. C. Solheim. (2004).Association of intracellular proteins with folded major histocompatibilitycomplex class I molecules. Immunol.Res. 30:171-179.
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WO2007/062656
US2008/0095798
WO2003/089471
US5,554,372
US5,876,735
5,102,985
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバリアント鎖と連結した抗原を使用して免疫応答をプライミング(priming:初回刺激)する技術及び方法に関し、これらは任意の好適なワクチンを使用するその後の追加免疫をプライミングするために使用される。
【0002】
本出願において引用される全ての特許文献及び非特許文献のその全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ワクチン投与は、疾患又は病態に対する免疫をもたらすための被験体への抗原物質(ワクチン)の投与である。免疫応答を刺激するために使用される場合、該抗原は免疫原として知られ、該プロセスは免疫化として知られる。ワクチン投与は、複数の形態で投与することができる1つ又は複数の免疫原の投与を含む。
【0004】
ワクチン投与は、確かな免疫応答の確立を必要とする。感染又はワクチン投与により活性化される免疫応答は、複数の細胞型、例えばT細胞、B細胞及び抗原提示細胞、並びに複数の種々の分子、主に抗原、MHC分子、T細胞受容体及びB細胞受容体、並びにその他多くのものの相互作用に依存する。
【0005】
伝統的なワクチン、すなわち第1世代のワクチンは、死滅させた又は弱毒化した病原性菌株に基づいている。これらは感染性が低いという問題を抱えることが多く、免疫原性が不十分であり、ワクチン投与によりもたらされる保護が不十分であることが多い。
【0006】
病原性生物由来の個々の抗原タンパク質に基づく第2世代のワクチン、すなわちサブユニットワクチンの開発により、純粋なペプチド又は炭水化物が弱い免疫原である傾向を有することが明らかとなった。
【0007】
DNAワクチン、すなわち第3世代のワクチンは、より広範囲のタイプの免疫応答を誘導する能力を有するが、ヒトにおける免疫原性が低いという潜在的な欠点を依然として有する。
【0008】
全てのタイプのワクチンに関して、ワクチン投与のプログラムは、ワクチンの効力を増大させ、上述した制限を克服し、ワクチン投与時における免疫系の刺激の費用対効果がより高い手段を提供するという満足されていない必要性に直面している。
【0009】
本発明は、ワクチンの効力を増大させるための解決方法を提供することにより、ワクチンの低免疫原性と関連する問題を解決することを目的とする。
【0010】
本発明は、免疫応答のプライミングのための解決方法を提供することにより、ワクチンの低免疫原性と関連する問題を解決することを目的とする。
【0011】
したがって本発明は、前記ワクチンの効力を増大させるための、MHCクラスIIと会合したインバリアント鎖/CD74(本明細書においてインバリアント鎖又はIiと称する)又はその変異体を含み、少なくとも1つの抗原タンパク質又は前記抗原タンパク質の断片をコードする核酸構築物による免疫系のプライミング、その後引き続く追加ワクチン投与を対象とする。
【0012】
本発明によるワクチンは、病原性抗原又は癌抗原を対象とすることができる。
【0013】
本明細書において提示されるデータにより、インバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物を使用するプライム−ブースト法を開発することが容易ではないことが示される。
【0014】
驚くべきことに、本発明は、前記免疫プライミングの効果を低減させることなく、インバリアント鎖由来のIi−KEY(LRMKアミノ酸残基を含む)及び/又はIi−CLIPドメインの一部を変化させることができることを開示する。
【0015】
この問題に適切に対処していない従来技術の文献について以下で論じる。
【0016】
特許文献1(Holst et al.)は、応答を拡大かつ改善するのと同時に応答の速度を増大させるように免疫応答を刺激する、改善されたDNAワクチンを開発することを対象とする。Holst et al.は、抗原のインバリアント鎖との融合により、CD4+ T細胞非依存性メカニズムを通じてその後の抗ウイルス性CD4+及びCD8+ T細胞応答が劇的に増強されることを見出した。
【0017】
Holmes et al.(非特許文献1)は、Ii−keyハイブリッドペプチドワクチン(Ii−keyは、インバリアント鎖タンパク質の中心部分であるLRMKという4個のアミノ酸配列を含む)の最初のヒト第I相試験を記載している。
【0018】
Kallinteris et al.(非特許文献2)による知見も同様に、ワクチンの効力を増強するためにLRMKアミノ酸を含むIi−key部分を利用することを対象とする。
【0019】
特許文献2(Humphreys et al.)は、最初に前記Ii−keyペプチドのLRMK残基を含むIi−Keyハイブリッドペプチド構築物で被験体の免疫系をプライミングすること、及びその後病原体に対するワクチンを投与して、プライミング工程において生じた免疫応答をブースト(boost:追加刺激)することにより、病原体に対するワクチンの効力を増大させる方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2007/062656号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0095798号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J Clin Oncol. 2008, Jul 10;26(20):3426-33
【非特許文献2】Expert Opin. Biol. Ther. 2006, 6(12):1311,1321
【発明の概要】
【0022】
本発明は、少なくとも1つのMHCクラスIIと会合したインバリアント鎖/CD74(本明細書においてインバリアント鎖又はIiと称する)又はその変異体を含み、少なくとも1つの抗原タンパク質又は前記抗原タンパク質の断片をコードする核酸構築物による免疫系のプライミング、その後引き続く追加ワクチン投与が、前記ワクチンの効力を増大させることを示す。
【0023】
本発明によるワクチンは、病原性抗原又は癌抗原を対象とし得る。
【0024】
驚くべきことに、本発明は、前記プライミングの効果を低減させることなく、インバリアント鎖からIi−KEYドメイン(LRMKアミノ酸残基を含む)及び/又はIi−CLIPドメインの一部を部分的に置換するか又は取り除くことができることを開示する。
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明は、応答を拡大かつ改善するのと同時に応答の速度を増大させるように、2工程のプライム−ブースト法(これにより、免疫系を最初にインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物によりプライミングし、その後引き続いて任意のタイプの好適なワクチンを使用する追加ワクチン投与を行う)を利用することにより、ワクチン投与により生じた免疫応答を十分に刺激するという問題を解決した。特に、対象とする特異的かつ迅速な免疫系の刺激のための新規な系が、これにより、全ての動物、例えばヒトのワクチン投与法を改善するために利用可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この問題は、特許請求の範囲において特徴付けられる本発明の実施の形態により解決される。本発明により、Ii鎖ベースの核酸構築物によるプライミングが、その後ワクチンでブーストすることによる抗原特異的CD8+ T細胞、CD4+ T細胞及び/又はB細胞の生成を顕著に増強することが見出された。
【0027】
したがって、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、免疫系をプライミングして被験体における二次ワクチン(subsequent vaccine)の投与の際の免疫化を増強することが可能である、核酸構築物を提供することは、本発明の一態様である。
【0028】
本発明は、1つの実施の形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、被験体における二次ワクチンの投与による免疫化をプライミングすることが可能である、核酸構築物を提供する。
【0029】
1つの実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖を、Iiの効果を低減させることなく、その野生型配列から変化させることができる。
【0030】
したがって、1つの実施の形態では、LRMKアミノ酸残基を含むIi−KEYドメインが、欠失又は置換、例えば突然変異により変化している。
【0031】
別の実施の形態では、Ii−CLIPドメインの一部が、欠失又は置換、例えば突然変異により変化している。Ii−CLIPドメインを、具体的には91位及び99位のメチオニンをアラニンに置換することにより変化させることができる。これは、MHC IIによる抗原提示を驚くほど増大させる。
【0032】
別の実施の形態では、Iiを、具体的にはIiの最初の17個のアミノ酸を欠失させることにより変化させることができる。これにより、記憶応答が驚くほど増大する。
【0033】
つまり、これらの変化の各々が別々に又は組み合わせて起こり得るということになる。
【0034】
1つの実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖は、ウイルス、微生物、例えば細菌又は寄生生物を対象とするワクチンの免疫応答をプライミングするために使用する場合、その野生型配列から変化している。
【0035】
別の実施の形態では、本発明の核酸構築物に含まれるインバリアント鎖は、癌ワクチン、又は異常な生理学的応答を対象とするワクチンの免疫応答をプライミングするために使用する場合、その野生型配列から変化していてもよく、又は変化していなくてもよい。
【0036】
別の実施の形態では、免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、免疫応答をブーストするために使用される二次ワクチンとが同一である。プライマー(primer:初回刺激剤)及びブースター(booster:追加刺激剤)の前記少なくとも1つの同一の部分は、Ii若しくはその変異体、抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの一部、又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープであり得る。
【0037】
本明細書において詳述されるような核酸構築物を含む送達ビヒクルであって、RNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、又はウイルス由来のDNAビヒクル若しくはRNAビヒクルである、送達ビヒクルを提供することは、同様に本発明の目的である。
【0038】
好ましい1つの実施の形態では、前記送達ビヒクルは、リポソームの形成、生分解性ポリマーマイクロスフェアの形成、コロイド性金粒子上への核酸構築物のコーティング、又はウイルス由来のDNAベクター若しくはRNAベクター中への組み込みを含む。
【0039】
さらに好ましい1つの実施の形態では、前記核酸構築物又は前記送達ビヒクルを、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波又は流体力学的送達を用いて投与する。
【0040】
したがって、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物により免疫応答を刺激する手段を提供することは、本発明の一態様である。
【0041】
さらなる目的は、核酸構築物、又はこれらのいずれか若しくはこれらのいずれかの任意の部分内にコードされるタンパク質の細胞間拡散を刺激する手段を提供する。
【0042】
本明細書において記載される核酸構築物によりコードされるようなキメラタンパク質を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0043】
本明細書において記載される核酸構築物によりコードされるキメラタンパク質を認識する抗体を提供することは、本発明のさらなる一態様である。
【0044】
ワクチンの効力を改善する方法であって、本明細書において詳述されるような核酸構築物を投与することを含む、方法を提供することは、本発明の一態様である。
【0045】
免疫応答のプライミングに好適である、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物は、特に本発明と関連する。
【0046】
部品キット(kit in parts)であって、前記核酸構築物及び/又は好適なワクチンを投与する医療用機器又は他の手段、並びにさらに該部品キットの使用方法に関する取扱説明書と共に本明細書において記載されるような核酸構築物を含む、部品キットを提供することは、本発明のさらなる一態様である。
【0047】
つまり、本発明は、本明細書において以下で詳述されるような核酸構築物を動物に投与することにより、動物における免疫応答を増強する手段を提供することになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるDNAプライミングを示す図である。
【図2】Ii配列におけるドメイン及び試験した突然変異の位置を示す図である。
【図3】IiがSIINFEKL/H−2kb OVA由来のエピトープの細胞表面提示を劇的に増大させることを示す図である。
【図4】Iiがシスにおいてのみ機能することを示す図である。
【図5】N末端の欠失及び置換がIiの刺激能に影響を与えないことを示す図である。
【図6】C末端の欠失及び置換がIiの刺激能に影響を与えないことを示す図である。
【図7】N末端及びC末端の欠失のみがIiの刺激能を低減させることを示す図である。
【図8】Ad−IiGPワクチン及びAd−GPワクチンの用量応答を示す図である。
【図9】MHCクラスIIによる抗原提示に関するAd−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPの比較を示す図である。
【図10】in vivo経時研究におけるAd−GP、Ad−IiGP、Ad−GPLamp−1及びAd−IiΔ17GPの比較を示す図である。
【図11】Ad−GP、Ad−IiGP、Ad−IiΔ17GP、Ad−IiKEYGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−Ii1−117GP及びAd−Ii1−199GPのin vivo応答の比較を示す図である。
【図12】Ad−GPがその後のAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能であることを示す図である。
【図13】Ad−IiGPがその後のAd−GP又はAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能ではないことを示す図である。
【図14】Ad−GPワクチン及びAdIi−Gpワクチンの用量応答を示す図である。
【図15】残基50〜215を含むインバリアント鎖の変異体(Ii50〜215)と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合したマンノース受容体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
定義
アデノウイルス:ウイルスを含有する二本鎖DNAの群。アデノウイルスを遺伝子的に改変して、複製不能又は条件的に複製不能にすることができる。この形態で、アデノウイルス構築物又はアデノベクターとして、これらをワクチン投与又は遺伝子療法のための遺伝子送達ビヒクルとして使用することができる。
アデノウイルス線維タンパク質:アデノウイルスの任意の血清型由来の線維タンパク質。アデノウイルス線維ノブ、又は異種ノブが挿入されたアデノウイルス線維ノブとしても知られる。
アジュバント:投与された免疫原決定基/抗原/核酸構築物との混合により前記決定基に対する免疫応答を増大させる又はそうでなくとも変化させる任意の物質。
アミノ酸:in vivoで合成されるタンパク質及び酵素を含むペプチド及びポリペプチドにおいて生じる任意のアミノ酸を含み、したがってアミノ酸の修飾形態を含む、任意の合成又は天然のアミノカルボン酸。「アミノ酸」という用語は本明細書において、少なくとも1つの他の種、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ以上の他の種と反応した上述のアミノ酸を包含することを意味する「アミノ酸残基」という用語と同義のものとして使用される。「アミノ酸」という総称は、天然及び非天然のアミノ酸の両方(それらのいずれもが「D」異性体又は「L」異性体であり得る)を含む。アミノ酸を「aa」と略記することがある。
抗体:免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の活性部分。抗体は、例えば無傷の免疫グロブリン分子、又は免疫学的活性を保持しているその断片である。
抗原:クローン的に分布した(clonally distributed)免疫受容体(T細胞受容体又はB細胞受容体)と結合することができる任意の物質。通常ペプチド、ポリペプチド又は多量体ポリペプチド。抗原は、好ましくは免疫応答を誘発することが可能である。
ブーストする:ブースター注射又はブースター投与によりブーストすることは、同じ(同種)又は別の(異種)免疫化剤の過去の投与により誘発された免疫応答を持続させる又は増強するために、免疫系をプライミングするために使用された物質を最初に投与した後に与えられる1つ又は複数のさらなる用量の免疫化剤、例えばワクチンを与えることである。
担体:免疫応答の誘導において助けとなるように、抗原が結合する実体(Entity)又は化合物。
キメラタンパク質:2つ以上の完全な若しくは部分的な遺伝子、又は一連の(非)ランダム核酸を共にスプライシングすることにより作製されたヌクレオチド配列によりコードされる、遺伝子操作した(genetically engineered)タンパク質。
補体:その作用が抗体の働きを「補完する」、複雑な一連の血中タンパク質。補体は、細菌を破壊し、炎症を引き起こし、免疫反応を調節する。
サイトカイン:成長又は分化の調節因子(本明細書において非限定的に使用されるものであり、本発明及び特許請求の範囲の解釈を限定するものではない)。サイトカインに加えて、接着分子若しくはアクセサリー分子、又はその任意の組合せを、単独で又はサイトカインと組み合わせて利用することができる。
CTL:細胞傷害性Tリンパ球。T細胞受容体と共にCD8を発現し、したがってクラスI分子により提示される抗原に応答することが可能であるT細胞の下位の群。
送達ビヒクル:それによりヌクレオチド配列若しくはポリペプチド又はその両方を少なくとも1つの媒体から別の媒体へ輸送することができる実体。
断片:この用語は、核酸又はポリペプチドの非全長部分を示すために使用される。したがって、断片はそれ自体もそれぞれ核酸又はポリペプチドである。
異種ブースト又は異種プライム−ブースト:免疫系をブーストするために使用される物質が、免疫応答をプライミングするために過去に使用された物質と異なる。
同種ブースト又は同種プライム−ブースト:免疫系をブーストするために使用される物質が、免疫応答をプライミングするために過去に使用された物質と同じである。
個体:鳥類、哺乳類、魚類、両生類又は爬虫類の任意の種又は亜種、例えばヒト。
インバリアント鎖:小胞体(endoplasmatic reticulum)及びその後の細胞コンパートメントにおいてMHC II分子と会合し、これを安定化する内在性膜タンパク質である糖タンパク質。ここで「インバリアント鎖」という用語は、ヒトのインバリアント鎖と或る特定の類似性を有する全ての天然の又は人工的に生成された全長又は断片の相同遺伝子及び相同タンパク質を包含する。インバリアント鎖は本明細書においてIiと略記する。
単離(Isolated):(本明細書において開示される核酸、ポリペプチド及び抗体に関連して使用される)「単離」は、同定され、その自然環境、典型的には細胞環境の構成成分から分離及び/又は回収された核酸、ポリペプチド及び抗体を表す。本発明の核酸、ポリペプチド及び抗体は好ましくは単離されており、本発明のワクチン及び他の組成物は好ましくは単離した核酸、ポリペプチド、又は単離した抗体を含む。
MHC:主要組織適合複合体(MHCの2つの主要なサブクラス、クラスI及びクラスIIが存在する)。
ネイキッドDNA:ヒストンと会合していないDNA。低メチル化及びCpGリッチなDNAであることが多い。ネイキッドDNAは、環状又は直鎖状のもの、例えば環状プラスミドであり得る。
核酸:遺伝情報を運ぶヌクレオチドの鎖又は配列。本発明に関しては、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、又はリボ核酸(RNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、挿入(Intercalating)核酸(INA)、ねじれ挿入(Twistedintercalating)核酸(TINA)、ヘキシトール核酸(HNA)、アラビノ核酸(ANA)、シクロヘキサン核酸(CNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオシル(threosyl)核酸(TNA)、ギャップマー(Gap-mers)、ミックスマー(Mix-mers)及びモルホリノからなる群のいずれかであり得る。
核酸構築物:遺伝子操作した核酸。典型的には、複数の要素、例えば遺伝子若しくはその断片、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA尾部、リンカー、ポリリンカー、作動性リンカー、多重クローニング部位(MCS)、マーカー、停止コドン、他の調節要素、内部リボソーム侵入部位(IRES)又はその他を含む。
作動性リンカー:核酸又はポリペプチドの生物学的プロセシングを確実にするように、核酸構築物又は(キメラ)ポリペプチドの2つの部分を結合するヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列。
病原体:疾患の特定の原因となる作用因子、特にその宿主に対して疾患を引き起こし得る生物学的作用因子、例えばウイルス、細菌、プリオン又は寄生生物(感染因子とも称される)。
ペプチド:配列を規定し、アミド結合により連結した複数の共有結合したアミノ酸残基。この用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドと類似のものとして使用される。天然及び/又は非天然のアミノ酸が、ペプチド結合により、又は非ペプチド結合により連結され得る。「ペプチド」という用語は、当該技術分野において既知であるように、化学反応又は酵素触媒反応により導入される翻訳後修飾形態も包含する。この用語は、ポリペプチドの変異体又は断片を表し得る。
薬学的担体:この用語(賦形剤又は安定化剤とも称される)は、利用される投与量及び濃度で、これに曝される細胞又は個体に対して非毒性である。生理学的に許容可能な担体は、pHを緩衝化した水溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、緩衝液、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び他の有機酸緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジン;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール若しくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウムイオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)を含む。
複数:少なくとも2つ。
プライミングする:免疫応答を所要の免疫原に集中させるための、例えばDNAによる免疫系の最初のプライミング。
プライム−ブースト:免疫応答を所要の免疫原に集中させるための、例えばDNAによる免疫系の最初のプライミング、及びワクチンにより誘導される免疫応答の増大をもたらす、前記ワクチンによる免疫応答のその後のブースト。
プロモーター:RNAポリメラーゼが結合して1つ又は複数の近傍の構造遺伝子によるメッセンジャーRNAの転写を開始させる、DNA鎖における結合部位。
シグナルペプチド:細胞内におけるタンパク質の最終的な位置を決定する、アミノ酸の短い配列(選別ペプチド(sorting peptide)とも称される)。
好適なワクチン:免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、免疫応答をブーストするために使用される二次ワクチンとが同一であることを特徴とする、最初のプライミングにより刺激された免疫応答をブーストすることが可能である、本発明による使用のための任意のワクチン。プライマー及びブースターの前記少なくとも1つの同一の部分は、Ii若しくはその変異体、抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの一部、又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープであり得る。
界面活性剤(Surfactant):それが溶解する液体の表面張力を低減させることが可能である界面活性剤(surface active agent)。界面活性剤は、親水性である極性基、及び疎水性であり脂肪鎖(fatty chain)から構成されることが多い非極性基を含有する化合物である。
ワクチン:動物における免疫応答を誘導することが可能である物質又は組成物。本文書において免疫原組成物とも称される。生物における記憶を誘導する免疫応答(液性/抗体及び/又は細胞性)であり、一次応答よりも二次応答によって生じる感染因子をもたらし、したがって宿主生物に対するその影響を低減させる、免疫応答。本発明のワクチンを、予防的及び/又は治療的な薬物として与えることができる。組成物は、以下の1つ又は複数を含み得る:抗原(複数可)、Iiと作動可能に連結した1つ又は複数の抗原を含む核酸構築物、担体、アジュバント及び薬学的担体。
変異体:或る基準核酸又は基準ポリペプチドの「変異体」は、前記基準核酸又は前記基準ポリペプチドに対して或る程度の配列相同性/配列同一性を示すが、前記基準核酸又は前記基準ポリペプチドと同一ではない核酸又はポリペプチドを表す。
【0050】
ドメイン、領域及びモチーフは、本明細書において交換可能な用語として使用することがある。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドと作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物に関する。該核酸構築物は、その後の追加ワクチン投与の効果を増強するための、免疫応答のプライミングのために使用される。
【0052】
免疫応答
ワクチンを、予防的に(ワクチンを実際の感染が起こる前に与える)、又は治療的に(ワクチンが、身体内に既に存在する病原体に対する免疫応答を誘発又は加速する)使用することができる。両方のワクチン投与方法が、確かな免疫応答の確立を必要とする。感染又はワクチン投与により活性化される免疫応答は、複数の細胞型、例えばT細胞、B細胞及び抗原提示細胞、並びに複数の種々の分子、主に抗原、MHC分子、T細胞受容体及びB細胞受容体、並びにその他多くのものの相互作用に依存する。
【0053】
抗原は、MHC分子により抗原提示細胞の表面上に提示されるペプチド断片である。抗原は、外来のもの、すなわち病原体起源のもの、又は生物それ自体に由来するもの、いわゆる自己(self or auto)抗原であり得る。MHC分子は、「主要組織適合複合体(majorhistocompatibility complex)」(故にMHC)として知られる、特定の染色体領域によりコードされる多型の遺伝子ファミリーの代表である。2つのクラスのMHC分子(MHCクラスI(MHC−I)及びMHCクラスII(MHC−II))が存在する。
【0054】
Tヘルパー細胞は、抗原提示細胞の表面上に存在するMHCクラスII(MHC−II)分子により提示される抗原により刺激される。MHC−II分子は、小胞体において合成される。合成時に、MHC−II分子は、MHC−II分子が自己抗原(self- or auto-antigens)を積み込むのを防止する形で、インバリアント鎖(Ii)と結合する。MHC−II分子は、インバリアント鎖におけるシグナル配列により、特定の細胞コンパートメントにおいて細胞表面に輸送される。コンパートメントがその内容物のプロセシングにより成熟するにつれて、MHCクラスII分子は、リソソームから、後期エンドソームまで(エンドサイトーシス小胞との融合後)、MHCクラスIIコンパートメント(MIIC)まで進む。エンドサイトーシス小胞は、外来抗原、すなわちタンパク質分解により切断された細菌のペプチド断片を含有する。これらの断片は、その分解により、MHC−II分子上に積み込まれるように調製される。MHC−II分子は、インバリアント鎖が第1にタンパク質分解により分解されてMHC−II結合ドメインにCLIPと称されるペプチドのみを残し、第2にHLA−DM分子によりCLIPが除去される二段階プロセスで、インバリアント鎖により放出される。MHC−II分子はその後自由に外来抗原と結合することができ、MIIC小胞の細胞膜との融合後に細胞表面上にこれらを提示する。これにより、提示された抗原が複数の手段によりB細胞(最終的に抗体分泌細胞へと分化する)を活性化するTヘルパー細胞の活性化を刺激するので、液性免疫応答が開始する。
【0055】
T細胞傷害性細胞のT細胞受容体が抗原提示細胞上のMHCクラスI分子と結合した抗原を認識すると、細胞性免疫応答が開始する。MHC−I分子は、MHC−IIと会合するインバリアント鎖のような機能性を有する分子と会合していない。MHC−Iの抗原提示分子へのプロセシングはさらに、MHC−I分子が小胞体において既に抗原を積み込んでいるという点で、MHC−II分子のプロセシングと異なる。MHC−I分子により提示される抗原は典型的には、プロテアソームにより切断された、抗原提示細胞自体により合成されたタンパク質のペプチド断片である。これらのタンパク質は、細胞自身のDNAにおいてコードされる異常タンパク質、又は細胞に感染し、そのタンパク質合成機構に寄生するウイルス若しくは他の病原体由来のタンパク質であり得る。MHCクラスI関連タンパク質分解系は、実質的に全ての細胞に存在する。
【0056】
その名前により示唆されるように、2つのタイプのT細胞の機能は顕著に異なる。細胞傷害性T細胞は、細胞の直接的溶解により、及びサイトカイン、例えばγ−インターフェロンを分泌することにより細胞内の病原体及び腫瘍を根絶する。主要な細胞傷害性T細胞はCD8+ T細胞であり、これも抗原特異的である。ヘルパーT細胞も細胞を溶解することができるが、これらの主要な機能はB細胞(抗体産生細胞)及び他のT細胞の活動を促進するサイトカインを分泌することであり、したがってこれらは外来抗原に対する免疫応答(抗体媒介性及び細胞傷害性T細胞媒介性の応答メカニズムを含む)を広く増強する。CD4+ T細胞は、免疫応答における主要なヘルパーT細胞表現型である。
【0057】
核酸構築物
本発明の一態様は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片(要するに抗原)と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物、例えばネイキッドDNA構築物に関する。
【0058】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がKEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がCLIP領域の変異体を含む、核酸構築物に関する。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体が最初の17個のアミノ酸を含まない、核酸構築物に関する。
【0061】
さらに別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする配列を含む核酸構築物であって、前記核酸構築物が癌ワクチンのプライミングのために使用される、核酸構築物に関する。
【0062】
核酸構築物は、遺伝子操作した核酸であると理解される。核酸構築物は、非複製的な直鎖の核酸、環状の発現ベクター、又は自己複製するプラスミドであり得る。核酸構築物は、複数の要素、例えばこれらに限定されないが、遺伝子若しくはその断片、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA尾部、リンカー、ポリリンカー、作動性リンカー、多重クローニング部位(MCS)、マーカー、停止コドン、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及び組み込みのための宿主相同配列、又は他の規定の要素を含み得る。本発明による核酸構築物が、上述の要素の任意の組合せの全て又はサブセットを含み得ることを理解すべきである。
【0063】
核酸構築物を操作する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., eds., ColdSpring Harbor Laboratory, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照されたい)。さらに、本発明による核酸構築物を、鋳型を用いずに合成することができ、様々な商業的供給業者(例えばGenscript Corporation)から入手することができる。
【0064】
一実施形態では、核酸構築物を含む核酸残基を修飾することができる。前記修飾を、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化、リボシル化、硫化及びその他からなる群から選択することができる。
【0065】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNAから構成されていてもよい。別の実施形態では、核酸構築物は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、挿入核酸(INA)、ねじれ挿入核酸(TINA)、ヘキシトール核酸(HNA)、アラビノ核酸(ANA)、シクロヘキサン核酸(CNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオシル核酸(TNA)、ギャップマー、ミックスマー、モルホリノ、又はそれらの組合せからなる群から選択される核酸から構成されていてもよい。
【0066】
上で論じたように、MHC II分子はプロセシング時に、会合したインバリアント鎖が分解されて外来抗原ペプチドをMHC II分子上に積み込むことが可能となるまで、インバリアント鎖と会合している。インバリアント鎖−リンカー−エピトープ(インバリアント鎖はKEY領域(LRMKアミノ酸残基を含む)を含む)を含む「外部からの(external)」タンパク質構築物を適用すると、前記タンパク質構築物は、前記MHC II分子が細胞の細胞外表面上に位置した時点でMHC II分子(抗原を含有する)と相互作用する。したがって、その効果は、外部からのものであり、タンパク質構築物のインバリアント鎖のKEY残基(LRMKアミノ酸残基を含む)の、MHC II分子上への積み込みに関して競合する能力に依存する。換言すれば、細胞内プロセシング時にMHC II分子上に既に積み込まれている抗原が、細胞表面上のMHC II分子から「チップオフ(tipped off)」すなわち除去され、インバリアント鎖−リンカー−エピトープを含むタンパク質構築物により置換されなければならない。これは、増幅することができない「1:1」効果をもたらし、インバリアント鎖由来のLRMKアミノ酸残基の存在に常に依存する。
【0067】
本発明による核酸構築物は、インバリアント鎖又はその変異体をコードし、抗原ペプチド又はエピトープもコードする「内部からの(internal)」核酸構築物を適用することに関し、すなわち核酸構築物を、被験体における細胞の細胞内空間中にトランスフェクトする。前記核酸構築物は、細胞の翻訳機構を使用して、前記MHC分子が細胞の内側に、例えばエンドソーム又はMIIC内に位置した時点でMHC II分子又はMHC I分子(抗原を含有しない)と相互作用するインバリアント鎖−リンカー−エピトープ生成物又はインバリアント鎖−エピトープ生成物をもたらす。したがって、効果は内部からのものであり、タンパク質構築物のインバリアント鎖のKEYドメイン(LRMKアミノ酸残基を含む)の、MHC分子上への積み込みに関して競合する能力に依存しない。実際に、効果は、Ii−KEY領域及びそのLRMK残基の存在に依存しない。さらに、これは、1つの核酸構築物が2つ以上の生成物をもたらし得るという点で、増幅することができる効果をもたらす。
【0068】
核酸構築物の「内部から」の使用は、上で詳述したように、タンパク質構築物の「外部から」の使用に対して複数の利点を有する。1)増幅;小量の核酸構築物の導入により、全てがMHC分子と結合することができる多くの生成物がもたらされ、これは、MHCと結合した前記生成物が内部移行によりさらに再利用されて最終的にその提示を増大させることができるという点で二次的に増幅することもできる。2)細胞自身の抗原プロセシング系の使用により、MHC分子に対するエピトープの適切かつ堅固な結合が確実になる。3)Ii−KEY領域のLRMK残基、及び未変化の(native)Ii−CLIPドメインが必要でない。
【0069】
コドン最適化及び縮重核酸配列
異種宿主における機能的タンパク質の発現は、現代のバイオテクノロジーの礎石である。残念なことに、多くのタンパク質は、その本来の文脈の外で(outside their original contexts)発現するのが困難である。これらは、非標準ヌクレオチドコードを使用する生物由来の、又は所望の宿主における使用頻度が低いコドンを豊富に含む遺伝子由来の、発現制限調節要素を含有することがある。遺伝子合成の速度及び効率の改善により、タンパク質発現を最大化するための実行可能な完全な遺伝子再設計がもたらされた。例えば、タンパク質発現は、研究対象の遺伝子のコドン頻度が宿主発現系のコドン頻度と適合すると、劇的に改善され得る。例えば、再設計戦略は、最適コドンバイアスの使用だけでなく、mRNA構造要素の変化、並びに翻訳及び開始領域の改変も含み得る。コドン最適化のための技法は、当業者に既知であり、商業的供給業者、例えばGenScript Corporationにより行うことができる。
【0070】
本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、いずれかの方法で、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による配列番号2に開示されるアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖(ヒトIi)又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすようにコドン最適化され得ることが理解される。
【0071】
同様に、本発明によるインバリアント鎖を含む核酸構築物は、いずれかの方法で、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による、該核酸構築物を使用して免疫応答をプライミングすることができる任意の動物(任意の脊椎動物、哺乳動物、魚又は鳥を含む)のアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすようにコドン最適化され得る。
【0072】
コドンバイアス:コドンバイアスを、原核生物の遺伝子発現における単一の最も重要な因子として特定した。遺伝コード中に或るコドンが出現する程度は、生物間で、高レベル及び低レベルで発現されるタンパク質間で、さらに同じオペロンの異なる部分の間で、顕著に変化する。この理由はほぼ確実に、好ましいコドンが細胞内で利用可能な同族tRNAの存在量と相関するためである。この関係は、翻訳系を最適化するのに、またコドン濃度とイソアクセプターtRNA濃度とのバランスをとるのに、役に立つ。
【0073】
使用頻度の低いコドンの置き換え:一般的に、遺伝子が含有するコドンの出現頻度が低ければ低いほど、異種タンパク質が特定の宿主系内に合理的なレベルで発現される可能性が低くなる。これらのレベルは、出現頻度の低いコドンがクラスターに又はタンパク質のN末端部分に出現する場合、さらに低くなる。アミノ酸配列を改変することなく、出現頻度の低いコドンを、宿主系のコドンバイアスをより密接に反映する他のコドンで置き換えることにより、機能的タンパク質発現のレベルが増大し得る。
【0074】
問題のあるコドンの排除:或る生物が5%〜10%未満の確率で(of the time)しか使用しない任意のコドンは、その由来に関わらず、問題を引き起こすことがある。さらに、近接した又は隣接したコドンは、コドンが離れているものである場合に比べて、タンパク質発現に対してより強い影響(affect)を有し得る。出現頻度の低いコドン、及び終結シグナルとして読まれる可能性が考えられるコドンを排除することにより、発現が低い又は起こらない事態を防止することができる。
【0075】
哺乳動物宿主におけるウイルスタンパク質の発現:ウイルス遺伝子であっても、遺伝子を適切に調製した場合には、哺乳動物細胞株において首尾良く発現することができる。ウイルス遺伝子の高密度の情報負荷は、重複リーディングフレームをもたらすことが多い。多くのウイルス遺伝子は、コード配列内にシス作用性の負の調節配列もコードする。ウイルス遺伝子を、所望のタンパク質のみを発現するようにというだけでなく、調節要素を破壊することによりタンパク質産生を増強するように再合成することができる。ウイルスコドン最適化は、それにより標的の免疫原性が増大するため、DNAワクチン研究において特に有用である。
【0076】
他の制約:コドンバイアスは遺伝子発現において大きな役割を果たすが、発現ベクター及び転写プロモーターの選択も重要である。タンパク質のN末端領域を取り囲むヌクレオチド配列は、出現頻度の低いコドンの存在、及び開始AUGに直接隣接したコドンの同一性の両方に対して特に感受性が高い。翻訳とmRNAの安定性との間に幾つかの相互関係も存在する。
【0077】
遺伝コードの縮重
上記よりつまり遺伝コードは重複性を有するが多義性を有しないということになる。例えば、コドンGAA及びGAGは両方ともグルタミン酸を特定する(重複性)が、それらのうちのいずれも任意の他のアミノ酸を特定しない(多義性を有しない)(完全な相互関係に関して、以下のコドン表を参照されたい)。1つのアミノ酸をコードするコドンは、その3つの位置のいずれかにおいて異なり得る。遺伝コードの縮重は、サイレント突然変異の存在を説明するものである。縮重は、4つの塩基のトリプレットコードが20個のアミノ酸及び停止コドンを指定するために生じる。
【0078】
【表1】
【0079】
同義置換
サイレント突然変異又はサイレント置換は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらさないDNAの突然変異である。これらは、非コード領域において(遺伝子の外側で、又はイントロン内で)起こることがあり、又はこれらは、最終的なアミノ酸配列を変化させないようにエキソン内で起こることがある。「サイレント突然変異又はサイレント置換」という語句は、「同義突然変異又は同義置換」という語句と交換可能なものとして使用されることが多い。しかしながら同義突然変異又は同義置換は、サイレント突然変異又はサイレント置換の下位のカテゴリーであり、エキソン内のみで起こる。
【0080】
本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による配列番号2に開示されるアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖(ヒトIi)又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように同義置換を含み得ることが理解される。
【0081】
同様に、本発明によるインバリアント鎖を含む核酸構築物は、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、本発明による、該核酸構築物を使用して免疫応答をプライミングすることができる任意の動物(任意の脊椎動物、哺乳動物、魚又は鳥を含む)のアミノ酸配列に対応するインバリアント鎖又はその変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように同義置換を含み得る。
【0082】
同義アミノ酸への非同義置換
非同義置換は、アミノ酸の変化をもたらす。しかしながら、アミノ酸は前記アミノ酸の特性に従ってグループ分けされ、該置換が同義アミノ酸をもたらす場合、或るアミノ酸の別のアミノ酸での置換が、前記アミノ酸を含むタンパク質の機能又は特性に対する影響を有しないことがある。このような置換を、保存的置換又は保存的突然変異(或るアミノ酸の生化学的に類似のアミノ酸での置き換えをもたらすDNA配列又はRNA配列の変化)と示すことができる。
【0083】
したがって、本発明によるインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物が、タンパク質すなわちアミノ酸への翻訳により、インバリアント鎖の変異体を含むアミノ酸配列をもたらすように非同義置換を含むことがあり、前記非同義置換は、同義である1つ又は複数のアミノ酸の置換をもたらすことが理解される。
【0084】
同義置換は、或る疎水性アミノ酸の、別の疎水性アミノ酸での置換;或る親水性アミノ酸の、別の親水性アミノ酸での置換;或る極性アミノ酸の、別の極性アミノ酸での置換;或る非極性アミノ酸の、別の非極性アミノ酸での置換;或る正に荷電したアミノ酸の、別の正に荷電したアミノ酸での置換;或る負に荷電したアミノ酸の、別の負に荷電したアミノ酸での置換;或る中性アミノ酸の、別の中性アミノ酸での置換;或る多義性アミノ酸の、その対応する多義性荷電アミノ酸での置換、例えばイソロイシン及びロイシン、アスパラギン及びアスパラギン酸、並びにグルタミン及びグルタミン酸の置換;或る芳香族アミノ酸の、別の芳香族アミノ酸での置換;或る脂肪族アミノ酸の、別の脂肪族アミノ酸での置換;又は任意のアミノ酸の、アラニンでの置換を含み得る。これらの置換を、等価置換と示すことがある。
【0085】
スプライス変異体
オルタナティブスプライシングは、一次遺伝子転写産物であるプレmRNAのエキソンが、選択的なリボヌクレオチドの配置をもたらすように分離され再接続される、RNAのスプライシング変異メカニズムである。その後これらの線状結合物は、アミノ酸の特異的かつ独特の配列が特定されアイソフォームタンパク質又はスプライス変異体がもたらされる翻訳プロセスを受ける。このようにして、オルタナティブスプライシングは、遺伝子発現を使用して非常に様々なタンパク質の合成を促す。真核生物では、オルタナティブスプライシングは、情報をはるかに経済的に蓄えることができるため、より高い効率に向かう重要な工程である。原核生物のコード方法では2つのタンパク質に対してしか十分でないと考えられる長さを有するDNA配列中に、多数のタンパク質をコードすることができる。
【0086】
一実施形態では、本発明の核酸構築物を、複数の抗原ペプチド若しくは抗原ペプチドの断片、及び/又は複数のインバリアント鎖若しくはその変異体をもたらすように、設計することができる。
【0087】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、少なくとも1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば9個、例えば10個、例えば11個、例えば12個、例えば13個、例えば14個、例えば15個、例えば16個、例えば17個、例えば18個、例えば19個、例えば20個の、抗原ペプチド又は前記抗原ペプチドの断片のスプライス変異体を含む。
【0088】
2個以上の抗原ペプチドのスプライス変異体は、同一又は非同一の抗原ペプチドを包含し得る。
【0089】
別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、少なくとも1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個、例えば5個、例えば6個、例えば7個、例えば8個、例えば9個、例えば10個、例えば11個、例えば12個、例えば13個、例えば14個、例えば15個、例えば16個、例えば17個、例えば18個、例えば19個、例えば20個の、インバリアント鎖又はその変異体のスプライス変異体を含む。
【0090】
2個以上のインバリアント鎖のスプライス変異体は、同一又は非同一のインバリアント鎖又はその変異体を包含し得る。
【0091】
一実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、未変化の全長インバリアント鎖を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、インバリアント鎖の変異体を含む。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、前記IiがIi−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まないインバリアント鎖の変異体を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖のスプライス変異体は、前記IiがCLIPドメインのM91残基及びM99残基を含まないインバリアント鎖の変異体を含む。
【0092】
つまりスプライス変異体は、同一若しくは非同一の抗原ペプチド、及び/又は同一若しくは非同一のインバリアント鎖若しくはその変異体の任意の組合せを含み得るということになる。
【0093】
このように、オルタナティブスプライシングにより、インバリアント鎖の変異体を得るように、インバリアント鎖の種々のドメイン又は領域を含む配列(エキソン)を「シャッフル」することが可能である。このように、オルタナティブスプライシングにより、前記抗原ペプチド(複数可)の変異体を得るように、抗原ペプチド(複数可)の種々のドメイン又は領域を含む配列(エキソン)を「シャッフル」することも可能である。
【0094】
インバリアント鎖
インバリアント鎖(Ii)、又はMHCクラスIIと会合したインバリアント鎖、又はCD74、又はp31は、非多型II型内在性膜タンパク質である(ヒト及びマウスのIiのアミノ酸配列に関してはそれぞれ配列番号2及び配列番号4を、同様にヒト及びマウスのIiの核酸配列に関してはそれぞれ配列番号1及び配列番号3を、参照されたい)。インバリアント鎖は、リンパ球成熟において、及び適応免疫応答、特にIi CLIP配列がMHCクラスII分子を占有し得る(エンドソームコンパートメントと融合するまで)リソソームコンパートメントへの標的化において、複数の機能を有する(Pieters J. 1997, Curr. Opin. Immunol., 9:8996)。加えて、Iiは、MHCクラスIシャペロンとして機能すること(Morris et al, 2004, Immunol. Res. 30:171-179)、及びそのエンドソーム標的化配列により、CD4+ T細胞の増殖を促すが共有結合した抗原に指向性を有するCD8+ T細胞の増殖を促さないこと(Diebold et al., 2001, Gene Ther. 8:487-493)が示されている。
【0095】
インバリアント鎖タンパク質は、複数のドメインを含む:シグナルペプチド又は選別ペプチド(リソソーム標的化配列としても知られる)を含む細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、並びにそれ自体がCLIP領域、KEY領域(LRMK残基を含む)、コアドメイン及び三量体形成ドメインを含む内腔ドメイン。これらのドメインの両方の側方に柔軟性の高い領域が存在する(Strumptner-Cuvelette & Benaroch, 2002, Biochem. Biophys. Acta.,1542:1-13)。インバリアント鎖は、脊椎動物(例えばニワトリ)、哺乳動物(例えばウシ、イヌ、マウス及びラット)及びヒトを含む複数の生物において特徴付けがなされている。
【0096】
本発明は、配列を含む核酸構築物であって、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体が生物特異的な(organism specific)ものであるか、又は特定の生物に関連するものであり得る、核酸構築物に関する。好ましくは、少なくとも1つのインバリアント鎖が、脊椎動物起源のもの、より好ましくは哺乳動物起源のもの、最も好ましくはヒト起源のものである。これと関連して、配列番号1により規定される配列は、ヒト由来のインバリアント鎖の核酸配列である。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖がトリ起源のものであり、ニワトリ(Gallus gallus domesticus(chicken))由来のものが最も好ましい。さらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖は、魚由来のものであり、養魚場で飼育することができる魚(例えばサケ又はマス)由来のものが最も好ましい。さらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖は、フェレット由来のものである。
【0097】
利用されるインバリアント鎖は、好ましくは核酸構築物の投与を受ける生物のインバリアント鎖である。インバリアント鎖と、宿主生物又は治療を受けるものとが同じ種のものであることは、本発明の目的(object)である。
【0098】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、核酸構築物が少なくとも1つのインバリアント鎖の変異体を含む場合、前記インバリアント鎖がIi−KEY配列のLRMKアミノ酸残基を含まないという条件付きのものである。
【0099】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物は、核酸構築物が少なくとも1つのインバリアント鎖の変異体を含む場合、前記インバリアント鎖がIi−CLIPドメインの変異体を含むという条件付きのものである。一実施形態では、前記変異体は、91位及び99位のメチオニンの、別のアミノ酸での置換体である。別の実施形態では、前記変異体は、M91A及びM99A(91位及び99位のアミノ酸メチオニンの、アラニンへの置換)の二重点突然変異体である。
【0100】
別の実施形態では、Ii変異体は、Iiの最初の17個のアミノ酸の欠失体(Δ17Ii)である。
【0101】
第3の実施形態では、Ii変異体は、Iiの91位及び99位のメチオニンの置換、並びに最初の17個のアミノ酸の欠失の両方を含む。
【0102】
本発明者らは、驚くべきことに、Ii−KEYドメインのLRMK残基が本発明による免疫応答のプライミングに必須ではないことを見出した。
【0103】
また、本発明者らは、驚くべきことに、Iiの91位及び99位のメチオニンの置換が、MHC IIによる抗原提示を増大させることを見出した。
【0104】
さらに、本発明者らは、Iiの最初の17個のアミノ酸を欠失させることにより、記憶応答が驚くほど増大することを見出した。
【0105】
本発明者らは、残基番号50〜118を含むインバリアント鎖の中心部分がIiの完全な効果を得るのに必須であることをさらに見出した。Iiのこの変異体は、三量体形成ドメインを欠いている。したがって、一実施形態では、核酸構築物は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含み、前記インバリアント鎖は、別のタンパク質由来の三量体形成ドメインと結合したアミノ酸残基番号50〜118を含む。前記他のタンパク質は、例えば細菌タンパク質又はアデノウイルス線維タンパク質であり得る。
【0106】
本発明は、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が、配列番号2において特定される少なくとも40個のアミノ酸の配列の断片である、及び配列番号2の同じ断片と少なくとも85%の同一性を有する断片である、核酸構築物にも関する。
【0107】
断片は、配列番号2に示されるようなインバリアント鎖の任意の部分由来の少なくとも40個のアミノ酸の断片である。これは、残基1〜40、残基10〜50、残基20〜60、残基25〜65、残基30〜70、残基35〜75、残基40〜80、残基45〜85、残基50〜90、残基55〜95、残基60〜100、残基65〜105、残基70〜110、残基75〜115、残基80〜120、残基85〜125、残基90〜130、残基95〜135、残基100〜140、残基105〜145、残基110〜150、残基115〜155、残基120〜160、残基125〜165、残基130〜170、残基135〜175、残基140〜180、残基145〜185、残基150〜190、残基155〜195、残基160〜200、残基165〜205、残基170〜210及び残基175〜216を含む断片を含む。これは、このいずれかの側に最大5残基伸長した上に列挙した断片のいずれかのような断片も含む。これは、少なくとも50残基の、少なくとも60残基の、少なくとも70残基の、少なくとも80残基の、少なくとも90残基の、少なくとも100残基の、少なくとも110残基の、少なくとも120残基の、少なくとも130残基の、少なくとも140残基の、少なくとも150残基の、少なくとも160残基の、少なくとも170残基の、少なくとも180残基の、少なくとも190残基の、少なくとも200残基の、及び少なくとも210残基の断片をさらに含む。
【0108】
配列番号2と少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば99%の配列同一性を有する上で記載される断片のいずれかは、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
アミノ酸配列間の同一性/相同性を、既知のスコア化マトリクス、例えばBLOSUM30、BLOSUM40、BLOSUM45、BLOSUM50、BLOSUM55、BLOSUM60、BLOSUM62、BLOSUM65、BLOSUM70、BLOSUM75、BLOSUM80、BLOSUM85及びBLOSUM90のいずれか1つを使用して算出することができる。
【0110】
一実施形態では、本発明は、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が少なくとも186個のアミノ酸を有する配列番号2の断片である、核酸構築物である。これは、上で規定される、及びしたがって配列番号2のインバリアント鎖の配列との同一性を有する断片のいずれかを含む。
【0111】
本発明はさらに、コードされる少なくとも1つのインバリアント鎖が配列番号2と少なくとも85%の同一性を有する、核酸構築物に関する。
【0112】
これは、配列番号2と少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば99%の配列相同性を有する、配列番号2に提示されるようなインバリアント鎖由来の任意の配列が本発明の範囲に含まれることを包含する。これは、配列番号2に記載される配列より長い又は短い配列を含む。
【0113】
上で記載される配列のいずれかは、起源、配列同一性又は長さに関わらず、本明細書で称するところの(hereon termed)インバリアント鎖の変異体由来のものである。
【0114】
つまり、任意の生物由来のインバリアント鎖の変異体が上記による変異体であり得ること、すなわち該変異体がIi−KEY領域において変化し得る、及び/又はIi−CLIP−領域において変化し得る、及び/又は或る生物のインバリアント鎖の断片であり得る、及び/又はインバリアント鎖の配列全てにわたり、若しくはこれの断片内において前記インバリアント鎖と少なくとも85%の同一性を有し得ることは、本発明の範囲内であるということになる。インバリアント鎖はまた、生物の近縁の種由来のもの、又は遠縁の種由来のものであり得る。
【0115】
本発明の別の態様は、核酸構築物によりコードされるような少なくとも1つのインバリアント鎖の領域、ペプチド又はドメインの付加、除去又は置換に関する。これらの領域、ペプチド又はドメインを1つ又は複数除去することは、得られるインバリアント鎖を切断する。領域、ペプチド又はドメインの付加又は置き換えは、既知の供給源、例えば天然のタンパク質若しくはポリペプチドから、又は人工的に合成されたポリペプチド若しくはこれをコードする核酸残基から、これらの配列を選択するという選択肢を含む。領域、ドメイン又はペプチドの付加は、各々のタイプ又は異なるタイプの領域、ドメイン、ペプチドのうち1つ、2つ又はそれ以上、並びにこれらの領域、ドメイン及びペプチドをコードする核酸のうち1つ、2つ、3つ又はそれ以上を付加するという選択肢を含む。これらは、配列に基づいて、同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。領域、ペプチド及びドメインは、基礎となる(scaffold)インバリアント鎖と同じ生物由来のものである必要はない。
【0116】
領域、ドメイン又はペプチドの除去は、各々のタイプ又は異なるタイプの領域、ドメイン、ペプチドのうち1つ、2つ、3つ又はそれ以上を除去するという選択肢、並びにこれらの領域、ドメイン及びペプチドをコードするアミノ酸残基のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又はそれ以上を除去するという選択肢を含む。個々の得られるポリペプチド、並びに得られるポリペプチドをコードするヌクレオチドのストレッチの付加、欠失及び置換を行うことは、当該技術分野において既知である。
【0117】
異なる生物由来の相同遺伝子又は相同タンパク質の核酸配列及び特にタンパク質配列を整列させることは、置換、欠失、再配置又は他の変化のうちのどれが構築物に対して有益であると考えられるかを決定する際に、大きな助けとなり得る。以下に示されるようなヒト及びマウスのインバリアント鎖の配列を整列させることは、どのアミノ酸残基がこれらの生物におけるインバリアント鎖の構造及び機能に対して重要であり得るか(これらは2つの配列の間で保存される残基である)についての指標を与える。同様に、重要性が低いと考えられる残基は、そこで配列が異なる残基である。本発明に関しては、変異体の残基/領域の置換及び/又は欠失を行うことに関心がもたれる。その免疫応答刺激能を改善するために例えばヒトのインバリアント鎖の配列を突然変異若しくは欠失、又は他の形で変化させようと試みる場合、保存される残基を検証すること、及び例えば相同的置換(すなわち、アミノ酸が例えば同じ構造上の質、極性、疎水性、又はその他を有すると考えられる置換)を行うことも有意義であり得る。
【0118】
ヒト及びマウス由来のインバリアント鎖タンパク質の以下のアライメントにおいて、KEY領域のLRMKアミノ酸残基に下線を付す。
【0119】
【表2】
【0120】
Key領域
本発明の好ましい一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域の除去、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、KEY領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のKEY領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖由来のKEY領域、又は同じ若しくは他の生物由来のKEY領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したKEY領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したKEY領域の突然変異型であり得る。好ましい一実施形態は、KEY領域のN末端又はC末端に隣接した配列を単独で含むが、KEY領域それ自体を含まない。「隣接(adjacent)」とは、KEY領域の10残基内の、KEY領域の20残基内の、30残基内の、40残基内の、50残基内の、75残基内の、又は100残基内の任意のアミノ酸を意味する。
【0121】
最も好ましい一実施形態は、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち1つ、2つ、3つ又は4つのアミノ酸残基の置換又は欠失をもたらす、KEY領域の、1つ又は複数の置換又は欠失を含む。一実施形態では、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが欠失している。別の実施形態では、KEY領域に含まれるLRMKアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが、他のアミノ酸により置換されている。前記アミノ酸は、G(グリシン)、P(プロリン)、A(アラニン)、V(バリン)、L(ロイシン)、I(イソロイシン)、M(メチオニン)、C(システイン)、F(フェニルアラニン)、Y(チロシン)、W(トリプトファン)、H(ヒスチジン)、K(リジン)、R(アルギニン)、Q(グルタミン)、N(アスパラギン)、E(グルタミン酸)、D(アスパラギン酸)、S(セリン)及びT(スレオニン)からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。
【0122】
特定の一実施形態では、LRMKアミノ酸残基は、各々アラニン(A)アミノ酸残基で置換され、したがって配列はAAAAと記載される。別の実施形態では、LRMKアミノ酸残基はアミノ酸で置換され、これには同義置換又は等価置換が含まれる。例えば、アミノ酸残基LはI、V、M又はFで置換され得る。RはK、H、E又はDで置換され得る。MはL、I、F又はVで置換され得る。KはH又はRで置換され得る。
【0123】
本発明の一実施形態では、KEY領域はLRMK残基に加えさらなる残基を含んでいてもよく、又はLRMK残基は5つ以上のアミノ酸残基を有する配列で置き換えられていてもよい。
【0124】
本発明の一実施形態は、上で記載されたようにKEY領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0125】
本発明の一実施形態では、本明細書において記載されるような核酸構築物によりコードされる少なくとも1つのインバリアント鎖は、Ii−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない。
【0126】
したがって一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がIi−KEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0127】
CLIP領域
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の除去、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、CLIP領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のCLIP領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖由来のCLIP領域、又は同じ若しくは他の生物由来のCLIP領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したCLIP領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したCLIP領域の突然変異型であり得る。好ましい一実施形態は、CLIP領域を単独で、又はN末端に隣接した配列若しくはC末端に隣接した配列と共にCLIP領域を含み、インバリアント鎖の任意の他の領域又はドメインを含まない。他の好ましい実施形態は、CLIP領域のN末端又はC末端に隣接した配列を単独で含むが、CLIP領域それ自体を含まない。「隣接」とは、CLIP領域の10残基内の、CLIP領域の20残基内の、30残基内の、40残基内の、50残基内の、75残基内の、又は100残基内の任意のアミノ酸を意味する。
【0128】
好ましい一実施形態は、CLIP領域のアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の置換又は欠失をもたらす、CLIP領域の、1つ又は複数の置換又は欠失を含む。一実施形態では、CLIP領域に含まれるアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つが欠失している。別の実施形態では、CLIP領域に含まれるアミノ酸のうち少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つ又はそれ以上が、他のアミノ酸により置換されている。前記アミノ酸は、G(グリシン)、P(プロリン)、A(アラニン)、V(バリン)、L(ロイシン)、I(イソロイシン)、M(メチオニン)、C(システイン)、F(フェニルアラニン)、Y(チロシン)、W(トリプトファン)、H(ヒスチジン)、K(リジン)、R(アルギニン)、Q(グルタミン)、N(アスパラギン)、E(グルタミン酸)、D(アスパラギン酸)、S(セリン)及びT(スレオニン)からなる群から選択される任意のアミノ酸であり得る。
【0129】
本発明の一実施形態は、上で記載されたようにCLIP領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0130】
特定の一実施形態では、91位及び99位のMアミノ酸残基は、各々アラニン(A)アミノ酸残基で置換され、したがって配列はM91A、M99Aと記載される。別の実施形態では、91位及び99位のMアミノ酸残基は、同義置換又は等価置換を含むアミノ酸で置換される。
【0131】
本発明の一実施形態では、本明細書において記載されるような核酸構築物によりコードされる少なくとも1つのインバリアント鎖は、Ii−CLIP配列の91位及び99位のMアミノ酸残基を含まない。
【0132】
したがって一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物であって、前記インバリアント鎖又はその変異体がIi−CLIP領域の91位及び99位のMアミノ酸残基を含まない、核酸構築物に関する。
【0133】
N末端又はC末端の変化:
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖のN末端領域又はC末端領域の除去(欠失)、置換又は置き換えに関する。上で記載されたように、N末端領域又はC末端領域の付加又は置き換えは、選択したインバリアント鎖(単数又は複数)の変異体における既存のN末端領域又はC末端領域に、同じ若しくは他の生物のインバリアント鎖若しくは他のタンパク質由来のN末端領域若しくはC末端領域、又は同じ若しくは他の生物由来のN末端領域若しくはC末端領域の変異体を付加するか又は置き換えるという選択肢を含む。変異したN末端領域又はC末端領域は、上記より以下のように、単数又は複数の核酸の置換、欠失又は付加により生成される、特異的に生成したN末端領域又はC末端領域の突然変異型であり得る。
【0134】
一実施形態は、Iiの最初(N末端)又は最後(C末端)のアミノ酸、例えばIiの最初又は最後の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、101個、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、110個、111個、112個、113個、114個、115個、116個、117個、118個、119個、120個、125個、130個、135個、140個、145個又は150個のアミノ酸の欠失を含む。
【0135】
本発明の特定の一実施形態では、Ii変異体は、Iiの最初の17個のアミノ酸の欠失(Δ17Ii)を含む。
【0136】
本発明の一実施形態は、上で記載されたように完全なN末端領域又はC末端領域を含まないインバリアント鎖の断片に関する。これらの断片は、少なくとも5アミノ酸残基の長さ、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、又は少なくとも35残基の長さであり得る。別の実施形態は、シグナルペプチドが除去され、インバリアント鎖の断片が少なくとも10アミノ酸残基の長さ、少なくとも15残基、少なくとも20残基、少なくとも25残基、少なくとも30残基、少なくとも35残基、少なくとも50残基、少なくとも60残基、少なくとも70残基、少なくとも80残基、少なくとも90残基、少なくとも100残基、少なくとも110残基、少なくとも120残基、少なくとも130残基、少なくとも140残基、少なくとも150残基、少なくとも160残基、少なくとも170残基、又は少なくとも180残基の長さである、インバリアント鎖の断片に関する。
【0137】
本発明の一実施形態では、Iiの膜貫通セグメントの全部又は一部を、任意の他のタンパク質、例えばケモカイン受容体CCR6 TM6由来の対応するセグメントで置き換えることができる。
【0138】
本発明の別の実施形態では、Iiの膜貫通セグメントの全部又は一部を、ケモカイン受容体CCR6 TM6由来の対応するセグメントで置き換えることができる。
【0139】
シグナルペプチド
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖であって、シグナルペプチドが除去され、置き換えられ、又は該インバリアント鎖をコードする配列上に付加される、少なくとも1つのインバリアント鎖に関する。シグナルペプチドは、細胞内におけるタンパク質の最終的な位置を決定するアミノ酸の短い配列(選別ペプチドとも称される)である。細胞内コンパートメント、例えば小胞体、ゴルジ装置及びゴルジ装置を含む様々なコンパートメント、核、細胞膜、ミトコンドリア、並びに本明細書中における様々な空間及び膜、ペルオキシソーム、リソソーム、エンドソーム、並びに分泌小胞等に対するタンパク質の位置を決定するシグナルペプチドは、全て本発明の範囲に含まれる。好ましい一実施形態は、インバリアント鎖のリソソーム標的化配列を単独で含む。
【0140】
抗原
上記のインバリアント鎖の変異体のいずれかは、前記変異体の少なくとも1つが、少なくとも1つの抗原、例えば抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した形態で本発明に包含される。
【0141】
本発明の一目的は、病原性生物、癌特異的ポリペプチド及び抗原、並びに異常な生理学的応答と関連するタンパク質又はペプチドに由来する抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片を含めるがこれらに限定しないことである。
【0142】
より好ましくは、本発明の一目的は、以下のタイプの病原体:ウイルス、微生物及び寄生生物のいずれかを起源とする抗原を含めることである。これは、任意の既知の動物の病原体を含む。哺乳動物の病原体、すなわち哺乳動物、例えばフェレットを特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。ヒト病原体由来の抗原を有することが好ましい。一般的に、ヒトの病原体又は疾患と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0143】
別の実施形態では、トリの病原体、すなわち鳥又は家禽を特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。ニワトリ(chicken(gallus gallus domesticus))由来の抗原を有することがより好ましい。一般的に、トリの病原体と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0144】
さらに別の実施形態では、魚の病原体、すなわち魚を特異的に標的とする病原体由来の抗原を有することが好ましい。養魚場で飼育することができる魚由来の抗原を有することがより好ましい。一般的に、魚の病原体と関連することが見出されている任意の抗原を使用することができる。
【0145】
ウイルス抗原
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原は、以下のいずれかのウイルス科起源のものであるが、これらに限定されない:アデノウイルス、アレナウイルス科、アストロウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科及びトガウイルス科。
【0146】
より具体的には、少なくとも1つの抗原又は抗原配列は、以下のいずれかのウイルスに由来し得る:H1N1、H1N2、H3N2及びH5N1(鳥インフルエンザ)等のインフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群の任意のウイルス、腸管アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘ウイルス、モノネガウイルス、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、ドーベンハーゲ(Duvenhage)ウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1型及び2型並びにオーストラリアコウモリウイルス等のリッサウイルス、エフェメロウイルス、ベシクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、単純ヘルペスウイルス1型及び2型等のヘルペスウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型及び8型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、乳頭腫ウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マクポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)等のアレナウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス等のブニヤウイルス科、エボラ出血熱ウイルス及びマールブルグ出血熱ウイルスを含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌール森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスを含むフラビウイルス科、並びにヘンドラウイルス及びニパウイルス等のパラミクソウイルス科、大痘瘡及び小痘瘡(天然痘)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス等のアルファウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS−CoV)、ウエストナイルウイルス、任意の脳炎ウイルス。
【0147】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、HIV、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ラッサ熱ウイルス、エボラウイルス、天然痘ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、フィロウイルス、マールブルグウイルス及び乳頭腫ウイルスの群から選択されるウイルス由来のものである。
【0148】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、以下の群から選択され得るか、及び/又は以下のいずれかの少なくとも1つの抗原断片であり得る:水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−GP);インフルエンザA型NS−1(非構造タンパク質1)、M1(基質タンパク質1)、NP(核タンパク質)、NEP、M2、M2e、HA、NA、PA、PB1、PB2、PB1−F2;LCMV NP、LCMV GP;エボラウイルスGP、エボラウイルスNP;HIV抗原tat、vif、rev、vpr、gag、pol、nef、env、vpu;SIV抗原tat、vif、rev、vpr、gag、pol、nef、env;マウスガンマヘルペスウイルスM2、M3及びORF73(MHV−68 M2、M3及びORF73等);ニワトリオボアルブミン(OVA);又はヘルパーT細胞エピトープ。本明細書において言及される抗原をいずれか2つ以上組み合わせることは本発明の範囲に含まれる。
【0149】
微生物抗原
本発明の一実施形態は、微生物に由来する少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片を含む。より具体的には、少なくとも1つの抗原は以下の限定的なリストのいずれか1つに由来し得る:炭疽菌(炭疽菌(Bacillus anthracis)、ヒト型結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)、サルモネラ菌(トリチフス菌(Salmonella gallinarum)、ひな白痢菌(S. pullorum)、チフス菌(S. typhi)、腸炎菌(S. enteridtidis)、パラチフス菌(S. paratyphi)、サルモネラ・ダブリン(S. dublin)、ネズミチフス菌(S. typhimurium))、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridiumperfringens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacterjejuni)等のカンピロバクター菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Crytococcusneoformans)、ペスト菌(Yersinia pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersiniapseudotuberculosis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、レプトスピラ種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borreliaburgdorferi)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)等のストレプトコッカス種、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、インフルエンザ菌(Haemophilusinfluenzae)、O1コレラ菌(Vibrio cholerae O1)、非O1コレラ菌(V. cholerae non-O1)、腸炎ビブリオ(V.parahaemolyticus)、腸炎ビブリオ、ビブリオ・アルギノリチカス(V. alginolyticus)、ビブリオ・ファーニシィ(V. furnissii)、ビブリオ・カルチャリア(V. carchariae)、ビブリオ・ホリセ(V. hollisae)、ビブリオ・シンシナティエンシス(V.cincinnatiensis)、ビブリオ・メチニコフィイ(V. metschnikovii)、ビブリオ・ダムセラ(V. damsela)、ビブリオ・ミミカス(V. mimicus)、ビブリオ・フルビアリス(V. fluvialis)、ビブリオ・バルニフィカス(V. vulnificus)等のビブリオ種、セレウス菌(Bacillus cereus)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonashydrophila)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、アエロモナス・ソブリア(Aeromonas sobria)及びアエロモナス・ベロニイ(Aeromonasveronii)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、ソネ赤痢菌(Shigella sonnei)、シゲラ・ボイディ(S. boydii)、シゲラ・フレックスネリ(S. flexneri)及びシゲラ・ディゼンテリエ(S. dysenteriae)等のシゲラ種、腸毒性(Enterovirulent)大腸菌(Escherichia coli)EEC(毒素原性大腸菌(ETEC)、腸病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌O157:H7(EHEC)、腸管組織侵入性大腸菌(EIEC))、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、特にバンコマイシン中間耐性種(VISA/VRSA)又は多剤耐性種(MRSA)等のスタフィロコッカス種、シゲラ・フレックスネリ、ソネ赤痢菌、シゲラ・ディゼンテリエ等のシゲラ種、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、ブルセラ・アボルタス(B.abortus)、ブルセラ・メリテンシス(B. melitensis)、ブルセラ・オビス(B. ovis)、ブルセラ・スイス(B. suis)及びブルセラ・カニス(B. canis)等のブルセラ種、鼻疽菌(Burkholderia mallei)及び類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、クラミジア・シッタシ(Chlamydiapsittaci)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、発疹チフスリケッチア(Rickettsiaprowazekii)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)。
【0150】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、ヒト型結核菌、炭疽菌、ブドウ球菌種及びビブリオ種の群から選択される微生物由来のものである。
【0151】
寄生生物抗原
本発明の一実施形態は、コードされる少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドが寄生生物由来のものである核酸構築物に関する。
【0152】
本発明の別の実施形態は、上述の病原体のいずれかに由来する少なくとも2つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドの組み合わせを含む核酸構築物に関する。
【0153】
好ましくは、抗原は以下の群から選択される寄生生物に由来するが、これらに限定されない:四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodiumovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)等のプラスモディウム種、矮小アメーバ(Endolimaxnana)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidumparvum)、ブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasmagondii)、シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、ネズミクリプトスポリジウム(Cryptosporidium muris)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystiscarinii)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、ブラジルリーシュマニア(Leishmaniabraziliensis)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、カステラーニアメーバ(Acanthamoeba castellanii)及びカルバートソンアメーバ(A. culbertsoni)等のアカントアメーバ種、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosomacruzi)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、戦争イソスポラ(Isosporabelli)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、回虫(回虫(Ascaris lumbricoides))、鉤虫(アメリカ鉤虫(NecatorAmericanus)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenal))、蟯虫(ヒト蟯虫(Enterobius vermicularis))、回虫(犬回虫(Toxocaracanis)、猫回虫(Toxocara cati))、犬糸状虫(犬糸状虫(Dirofilaria immitis))、ストロンギロイデス属(糞線虫(Stronglyoidesstercoralis))、旋毛虫(旋毛虫(Trichinella spiralis))、フィラリア(バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、ロア糸状虫(Loa loa)、マンソネラ・ストレプトセルカ(Mansonella streptocerca)、常在糸状虫(Mansonellaperstans)、マンソネラ糸状虫(Mansonella ozzardi))、並びにアニサキス(Anisakine)幼虫(アニサキス・ジンプレクス(Anisakis simplex)(ニシン虫(herring worm))、シュードテラノーバ(Pseudoterranova)(フォカネマ(Phocanema)、テラノーバ(Terranova))デキピエンス(decipiens)(タラ虫又はアザラシ(seal)虫)、コントラシーカム種、並びにヒステロティラキウム属(Thynnascaris species)、ヒト鞭虫(Trichuristrichiura)、無鉤条虫(無鉤条虫(Taenia saginata))、有鉤条虫(有鉤条虫(Taenia solium))、広節裂頭条虫(広節裂頭条虫(Diphyllobothriumlatum))、並びに瓜実条虫(瓜実条虫(Dipylidium caninum))、腸吸虫(肥大吸虫(Fasciolopsis buski))、住血吸虫(日本住血吸虫(Schistosomajaponicum)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium))、肝吸虫(肝吸虫(Clonorchissinensis))、東洋肺吸虫(ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani))、並びにヒツジ肝蛭(肝蛭(Fasciola hepatica))、サケ住血吸虫(Nanophyetussalmincola)、並びにナノフィエタス・チコバロウィ(N. schikhobalowi)。
【0154】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、プラスモディウム種、リーシュマニア種及びトリパノソーマ種の群から選択される寄生生物由来のものである。
【0155】
本発明の少なくとも1つの抗原は、熱帯熱マラリア原虫に由来するVar2Csaであり得る。本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片はVar2Csaである。
【0156】
家畜抗原
本発明の一態様は、家畜、特にブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、イヌ、ネコ、フェレット等の商業に関連する動物、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ等の家禽、マス、サケ、タラ等の魚、及び他の飼育種に感染する疾患又は病原体(agents)に由来する抗原及び/又は抗原配列に関する。ここで、少なくとも1つの抗原又は抗原配列が由来し得る疾患又は病原体の例としては、炭疽病、オーエスキー病、ブルータング病、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)若しくはブタ流産菌(Brucella suis)等のブルセラ症、クリミア・コンゴ出血熱、エキノコックス症/包虫症、ピコルナウイルス科のウイルス、特に免疫学的に異なった7種の血清型(A、O、C、SAT1、SAT2、SAT3、Asia1)のいずれかの口蹄疫を引き起こすアフタウイルス属、若しくは心水病、日本脳炎、レプトスピラ症、新世界ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)、旧世界ラセンウジバエ(トウヨウラセンウジバエ(Chrysomya bezziana))、副結核、Q熱、狂犬病、リフトバレー熱、牛疫、施毛虫症、野兎病、水疱性口内炎若しくは西ナイル熱等の多重種(Multiple species)の疾患;牛アナプラズマ病、牛バベシア症、牛カンピロバクター症(Bovine genital campylobacteriosis)、牛海綿状脳症、牛結核、牛ウイルス性下痢症、牛肺疫、地方病性牛白血病、出血性敗血症、牛伝染性鼻気管炎/伝染性膿疱性外膣炎、ランピースキン病、悪性カタル熱、タイレリア症、トリコモナス症若しくはトリパノゾーマ病(ツェツェバエ媒介性)等のウシの疾患;山羊関節炎/脳炎、伝染性アガラクシア、山羊伝染性胸膜肺炎、ヒツジの流行性流産(羊伝染性流産)、マエディ・ビスナ、ナイロビヒツジ病、羊精巣上体炎(ブルセラ・オビス(Brucella ovis))、小反芻獣疫、サルモネラ症(ヒツジ流産菌(S.abortusovis))、スクレイピー、羊痘及び山羊痘等のヒツジ及びヤギの疾患;アフリカ馬疫、馬伝染性子宮炎、媾疫、ウマ脳脊髄炎(東部)、ウマ脳脊髄炎(西部)、馬伝染性貧血、馬インフルエンザ、馬ピロプラズマ病、馬鼻肺炎、馬ウイルス性動脈炎、鼻疽、スーラ病(トリパノソーマ・エバンシ(Trypanosoma evansi))若しくはベネズエラウマ脳脊髄炎等のウマの疾患;アフリカ豚コレラ、豚コレラ、ニパウイルス脳炎、豚嚢虫症、豚繁殖・呼吸障害症候群、豚水疱症若しくは伝染性胃腸炎等のブタ疾患;鳥クラミジア症、鶏伝染性気管支炎、鶏伝染性喉頭気管炎、鶏マイコプラズマ病(マイコプラズマ・ガリセプチカム(M. gallisepticum))、鶏マイコプラズマ病(マイコプラズマ・シノヴィエ(M.synoviae))、アヒルウイルス性肝炎、家禽コレラ、家禽チフス、高病原性鳥インフルエンザ(任意のインフルエンザウイルス(A型若しくはB型、特にH5N1型)である)、伝染性ファブリーキウス嚢病(ガンボロ病)、マレック病、ニューカッスル病、ひな白痢若しくは七面鳥鼻気管炎等の鳥の疾患;ウイルス性腸炎、粘液腫症若しくはウサギ出血病等のウサギ目及び齧歯動物の疾患;流行性造血器壊死症、伝染性造血器壊死症、コイ春ウイルス病、ウイルス性出血性敗血症、伝染性膵臓壊死症、伝染性サケ貧血、流行性潰瘍症候群、細菌性腎臓病(細菌性腎臓病菌(Renibacterium salmoninarum))、ギロダクチルス症(ギロダクチルス・サラリス(Gyrodactylus salaris))、マダイイリドウイルス病等の魚の疾患;又はラクダ痘若しくはリーシュマニア症等の他の疾患。
【0157】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドは、オーエスキー病、口蹄疫、水疱性口内炎ウイルス、鳥インフルエンザ又はニューカッスル病由来のものである。
【0158】
本発明のさらに好ましい一実施形態は、上記の抗原のいずれかと少なくとも85%の同一性を有する抗原ペプチド又は抗原タンパク質である、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片に関する。アミノ酸間の相同性又は同一性は、先述したBLOSUMスコアリングマトリックスのいずれかによって計算することができる。
【0159】
癌抗原
多くのタンパク質/糖タンパク質が同定されており、或る特定のタイプの癌と関連付けられている。これらは癌特異的ポリペプチド、腫瘍関連抗原又は癌抗原と称されている。一般に、癌腫瘍と関連することが見出されている任意の抗原が使用され得る。癌特異的抗原を発見することのできる一方法は、DNAマイクロアレイ解析といった様々なマイクロアレイ解析等のサブトラクション解析によるものである。本明細書において、(前記遺伝子によってコードされるRNA又はタンパク質のレベルに見られるような)遺伝子発現パターンを、健常患者と癌患者との間、癌患者の群間、又は同じ患者における健常組織と癌組織との間で比較した。ほぼ等しい発現レベルを有する遺伝子を互いに「差し引く(subtracted)」ことによって、健常組織と癌組織との間で異なる遺伝子/遺伝子産物が残る。このアプローチは当該技術分野で既知であり、新規の癌抗原を同定する方法として、又は所定の患者若しくは患者の群に特異的な遺伝子発現プロファイルを作成するために使用することができる。このようにして同定された抗原(単一の抗原及び抗原が発見された可能性のある組み合わせの両方)が本発明の範囲に含まれる。
【0160】
好ましくは、本発明の少なくとも1つの抗原は、以下の群から選択される癌特異的ポリペプチドに由来するが、これらに限定されない:MAGE−3、MAGE−1、gp100、gp75、TRP−2、チロシナーゼ、MART−1、CEA、Ras、p53、β−カテニン、gp43、GAGE−1、BAGE−1、PSA、MUC−1、MUC−2、MUC−3、並びにHSP−70、TRP−1、gp100/pmel17、β−HCG、Ras突然変異体、p53突然変異体、HMWメラノーマ抗原、MUC−18、HOJ−1、サイクリン依存性キナーゼ4(Cdk4)、カスパーゼ8、HER−2/neu、Bcr−Ablチロシンキナーゼ、癌胎児性抗原(CEA)、テロメラーゼ、SV40 Large T、ヒト乳頭腫ウイルスHPV 6型、11型、16型、18型、31型及び33型;HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1及びRho−C。
【0161】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片は、HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1並びにRho−Cの群から選択される癌特異的ポリペプチド由来のものである。
【0162】
異常な生理学的応答と関連する抗原
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片が、異常な生理学的応答と関連するポリペプチド由来のものである核酸構築物に関する。かかる異常な生理学的応答としては、自己免疫疾患、アレルギー反応、癌及び先天性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。この例の限定的なリストとしては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬及びクローン病等の疾患が挙げられる。
【0163】
作動性リンカー
本発明の一態様は、インバリアント鎖と、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片との間の作動性の連結が直接的連結、又はスペーサー領域が介在する連結である核酸構築物に関する。「作動性リンカー」という用語は、核酸構築物又はキメラポリペプチドの2つの部分を、核酸又はポリペプチドの生物学的処理を確実にする形で結合するヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列であると理解される。作動性リンカーが直接的連結である場合、各々がオープンリーディングフレーム又はオープンリーディングフレームの断片のいずれかをコードする2つの核酸は、互いに直接隣接して位置し、したがってインフレーム(in frame)でもある。作動性リンカーがスペーサー領域が介在するものである場合、一連のヌクレオチドは、少なくとも1つのインバリアント鎖及び少なくとも1つの抗原ペプチドをそれぞれコードするヌクレオチド間に挿入される。単に少なくとも2つの本発明の要素を、オープンリーディングフレームを保持する形で連結する一連のヌクレオチドであるか、又は本明細書において下記に規定される1つ又は複数のシグナル若しくは別個の要素をコードし得るスペーサー領域を有することは本発明の範囲に含まれる。
【0164】
特定の一実施形態では、本発明は、スペーサー領域である作動性リンカーを含む。
【0165】
一実施形態では、本発明は、クラスII MHC分子に対する少なくとも1つのヘルパーエピトープをコードするスペーサー領域を含む。ヘルパーエピトープの一例は、ジフテリア毒素等の免疫原決定基である。特にジフテリア毒素BフラグメントのCOOH末端領域は、マウスにおいて免疫原性であることが示されている。さらに、HSP70(一部又は全部)、並びにHLAクラスI及びクラスII分子に対するアンカーモチーフ(anchoring motif)を有するインフルエンザウイルス又は免疫原性配列又はペプチド等の他の免疫原性ペプチドも、核酸構築物のスペーサー領域にコードされ得る。
【0166】
別の実施形態では、核酸構築物のスペーサー領域は少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位をコードする。カテプシン等のリソソームプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ及び亜鉛プロテアーゼ、並びに他の細胞内プロテアーゼの切断部位は本発明の範囲に含まれる。
【0167】
さらなる実施形態では、核酸構築物の作動性リンカーは、少なくとも1つのsiRNA又はmiRNAをコードする配列を含み得る。siRNA(低分子干渉RNA)及びmiRNA(ミクロRNA)は、内在性RNAを配列特異的に分解の標的とする。本発明の核酸構築物内にコードされるsiRNA又はmiRNAは、したがって望ましくない遺伝子産物を標的とするために選択され得る。
【0168】
別の実施形態では、作動性リンカーは少なくとも1つのポリリンカー又は多重クローニング部位(MCS)を含む。ポリリンカー及びMCSは、DNAの他の断片/配列の核酸構築物へのサブクローニングを容易にする、制限酵素認識配列、すなわち制限酵素がDNAを平滑に又は互い違いに(staggered manner)切断する部位を含む一連のヌクレオチドである。ポリリンカー/MCSの認識配列は典型的には特異である。つまり核酸構築物上の他の部分には見られない。作動性リンカーは、リボソームからの新生ポリペプチドの放出を指示する(signal)1つ又は複数の停止コドン又は終結コドンをさらに含み得る。作動性リンカーはまた、少なくとも1つのIRES(内部リボソーム侵入部位)及び/又は少なくとも1つのプロモーターを含み得る。IRESは、より大きなタンパク質合成過程の一部としてメッセンジャーRNA(mRNA)配列の中央で翻訳を開始させるヌクレオチド配列である。プロモーターは、遺伝子の転写を可能にするDNA配列である。プロモーターは、その後に転写を開始するRNAポリメラーゼによって認識される(下記を参照されたい)。プロモーターは一方向性であっても、又は双方向性であってもよい。
【0169】
一実施形態では、インバリアント鎖と少なくとも1つの抗原との間の領域にわたる作動性リンカーは、少なくとも1つのポリリンカー及び少なくとも1つのプロモーター、任意でさらに少なくとも1つのIRESを含む作動性リンカーである。これらの要素はいかなる順序で位置していてもよい。さらに好ましい一実施形態では、インバリアント鎖の停止コドンは欠失しており、ポリリンカーは、ポリリンカー中に挿入される少なくとも1つの抗原のインフレームでの読み取りを可能にするオープンリーディングフレームを保存する形でベクター中にクローニングされている。このことは、1つの工程又は複数のクローニング工程における同じ構築物中への複数の抗原のサブクローニングを容易にし、インバリアント鎖と同じフレーム内での複数の抗原の同時発現を可能にするという利点を有する。翻訳終結のために停止コドンをポリリンカーの後に挿入してもよい。この実施形態は、上記のヘルパーエピトープ、miRNA/siRNAのいずれか、又は本明細書に記載される他の要素のいずれかと組み合わせることができる。
【0170】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と関連する作動性リンカーの配置に関する(少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列はインバリアント鎖配列内、インバリアント鎖配列の前端(front end)、インバリアント鎖配列の末端部に位置する)。これは、抗原ペプチドが少なくとも1つの作動性リンカーの後方に存在するか、これによって取り囲まれるか又は終えられるように、構築物のオープンリーディングフレームの可読性を確保する形で行われる。
【0171】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と関連する作動性リンカーの配置にさらに関する(少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列は、好ましくはインバリアント鎖の末端部に位置し、作動性リンカーはその間に挿入され、末端部はインバリアント鎖又はその断片の最初又は最後の残基である)。
【0172】
別の実施形態では、核酸構築物は作動性リンカーを含まず、少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列がインバリアント鎖に直接連結される(tethered)。少なくとも1つの抗原ペプチドをコードする配列は、インバリアント鎖配列内、インバリアント鎖配列の前端、インバリアント鎖配列の末端部に位置し得る。これは、構築物のオープンリーディングフレームの可読性を確保する形で行われる。
【0173】
作動性リンカーを含むこと又は除くことのどちらの可能性にも利点がある。リンカーを除くことは、一実施形態では、抗原ペプチドに対する免疫応答をプライミングするのではなく、前記リンカーに対する免疫応答をプライミングする可能性を低くする。
【0174】
組み合わせ
核酸構築物が複数の要素をコードすることは本発明の範囲に含まれる。要素は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片である(being)。したがって、複数のインバリアント鎖又はその変異体(各々が互いに、かつ複数の抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片と作動可能に連結する)を有する(これらも同様に作動可能に連結する)ことは本発明の範囲に含まれる。核酸構築物の要素はしたがって、互いに作動可能に連結していなくてはならない。各々が1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの断片と作動可能に連結した複数のインバリアント鎖又はその変異体(これらは各々、互いに作動可能に連結する)が本発明に包含される。
【0175】
本発明の利点及び非常に重要な態様は、任意のタイプの免疫応答、例えばT細胞媒介性及び抗体媒介性の応答を、弱い抗原として知られるエピトープ、未知の抗原特性のポリペプチドを用いても、複数のエピトープ/抗原を同時に用いても開始することができるという事実に関する。
【0176】
したがって、好ましい一実施形態が、複数の抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチド(例えば2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、12個又はそれ以上の抗原タンパク質又は抗原ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチドの断片)と作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする核酸構築物であることも本発明の範囲に含まれる。
【0177】
核酸構築物はさらなる要素を含み得る。これらとしては、内部リボソーム侵入部位(IRES);LAMP、カルレチクリン、Hsp33、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp100、sHSP(小型熱ショックタンパク質)、及び77残基DNAJ相同Hsp73結合ドメイン等の熱ショック結合タンパク質等といった抗原提示に関連するタンパク質をコードする遺伝子;VP22、HIV Tat、Cx43又は他のコネキシン及び細胞間ギャップ結合成分等の細胞内拡散に関連するタンパク質をコードする遺伝子;H60及びサイトカイン、ニワトリオボアルブミン又は任意のT−ヘルパー細胞エピトープ等のナチュラルキラー細胞(NK細胞)活性化分子をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
本発明の好ましい一実施形態では、核酸構築物はLAMP、LIMP、カルレチクリン、Hsp33、Hsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp100、sHSP(小型熱ショックタンパク質)又は77残基DNAJ相同Hsp73結合ドメイン等の抗原提示に関連するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。
【0179】
本発明のさらに好ましい一実施形態では、核酸構築物はVP22、Cx43、HIV Tat、他のコネキシン又は細胞間ギャップ結合成分等の細胞内拡散に関連するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。
【0180】
プロモーター
「プロモーター」という用語は、ここではRNAポリメラーゼIIの開始部位の周囲に集まった転写制御モジュールの群を指すために使用される。プロモーターがどのように構成されるかの考えの大半は、HSVチミジンキナーゼ(tk)及びSV40初期転写単位に対するものを含む複数のウイルスプロモーターの解析による。より最近の研究によって拡張されたこれらの研究から、プロモーターが、各々がおよそ7bp〜20bpのDNAからなり、転写活性化タンパク質の1つ又は複数の認識部位を含有する個別の機能モジュールからなることが示された。各々のプロモーターにおける少なくとも1つのモジュールは、RNA合成の開始部位を位置付けるように機能する。このモジュールの最もよく知られた例はTATAボックスであるが、哺乳動物の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーター及びSV40後期(late)遺伝子に対するプロモーター等といった一部のプロモーターではTATAボックスを欠いており、開始部位自体に重なる別個の要素が開始位置を定めるのに役立つ。
【0181】
さらなるプロモーター要素が転写開始の頻度を調節する。これらは典型的には開始部位の30bp〜110bp上流の領域に位置するが、近年では多数のプロモーターが開始部位の下流にも機能要素を含有することが示されている。要素環の間隔は変動可能であり、要素が互いに反転又は移動し合った場合にプロモーター機能が保存される。tkプロモーターでは、要素間の間隔は、活性が低下し始めるまでに50bp離れる程度まで増大させることができる。個々の要素は、プロモーターに応じて協調的に又は独立して転写を活性化するよう機能することができると考えられる。核酸構築物によってコードされる配列の転写開始を指示することのできる任意のプロモーターが、本発明において使用され得る。
【0182】
本発明の一態様は、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖及び抗原タンパク質又は抗原ペプチドをコードする配列が、該構築物の発現を可能とするプロモーターの後方に存在する核酸構築物を含む。
【0183】
さらなる態様では、プロモーターが構成的プロモーター、誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター及び炎症特異的プロモーターの群から選択される。
【0184】
プロモーターの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シミアンウイルス40(SV40)早期プロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ヒト免疫不全ウイルス末端反復配列プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトアクチンプロモーター、ヒトミオシンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及びヒト筋クレアチンプロモーター等の構成的プロモーター、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーター(tet−on又はtet−off)等の誘導性プロモーター、HER−2プロモーター及びPSA関連プロモーター等の組織特異的プロモーター、並びにプロモーターからいずれの方向にも転写を開始させることが可能な双方向性プロモーター。
【0185】
誘導性プロモーターを用いることの利点としては、自由に活性化することのできる「休止状態の」核酸構築物が提供されるという選択肢が挙げられる。このことは、免疫応答のプライミングを体内で全身的ではなく(vs.)局所的に誘導するのが好ましい場合(例えば癌に関する場合)、又は投与時に免疫応答のプライミングがレシピエントの健康にとって有害である場合に有用であり得る。
【0186】
好ましい一実施形態では、核酸構築物はCMVプロモーター、SV40プロモーター及びRSVプロモーターの群から選択されるプロモーターを含む。
【0187】
送達ビヒクル
本発明の一態様は、送達ビヒクル内に含まれた、上記のいずれかに記載されるような核酸構築物を含む。送達ビヒクルとは、ヌクレオチド配列又はポリペプチド又はその両方を少なくとも1つの媒体から別の媒体へと輸送することを可能にするものである。送達ビヒクルは概して、核酸構築物内にコードされる配列の発現及び/又は構築物若しくはそこでコードされるポリペプチドの細胞内送達のために使用される。
【0188】
核酸構築物はin vivo又はex vivoで細胞内に移入させることができる。ex vivoでの場合は、患者から標的組織(すなわち肝細胞又は白血球)を取り出し、構築物をin vitroで移入させた後、形質導入された細胞を患者に再移植することによって行われる。
【0189】
非ウイルス送達方法としては、物理的アプローチ(無担体送達)及び化学的アプローチ(合成ベクターに基づく送達)が挙げられる。
【0190】
針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達を含む物理的アプローチでは、細胞膜を通過し、細胞内遺伝子導入を促進する物理的力を利用する。前記物理的力は電気力又は機械力であり得る。
【0191】
化学的アプローチでは、導入遺伝子を細胞に送達するために合成又は天然の化合物を担体として使用する。最もよく研究されている非ウイルス遺伝子送達の戦略は、カチオン性脂質又はカチオン性ポリマーを用いることによる凝縮粒子へのDNAの配合である。このDNA含有粒子はその後、エンドサイトーシス、マクロピノサイトーシス又は食作用を介して細胞内小胞の形態で細胞に取り込まれ、そこからDNAの小片が細胞質に放出され、核内へ移動し、そこで導入遺伝子の発現が起こる。
【0192】
送達ビヒクルがRNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、及びウイルス由来のDNAビヒクル又はRNAビヒクルの群から選択されるビヒクルであることは本発明の範囲に含まれる。
【0193】
本発明の好ましい一実施形態は、機械的又は電気的技法による核酸構築物の送達に関する。
【0194】
● 物理的アプローチ
○ 注射:好ましい一実施形態は、溶液中の核酸構築物の単純な注射に関する。注射は通常、骨格筋において筋肉内で(IM)、皮内で(ID)又は肝臓に対して行われ、核酸構築物は細胞外空間に送達される。注射による送達は、エレクトロポレーションによって;高張食塩水又は高張スクロース液を用いることによって;ブピバカイン等の筋毒素(myotoxins)を用いて筋繊維を一時的に損傷することによって;又はトランスフェリン、非水混和性(water.immiscible)溶媒、非イオン性ポリマー、界面活性剤又はヌクレアーゼ阻害剤等の、標的細胞によるDNA内部移行の効率を増強することが可能な物質を添加することによって補助することができる。
○ 遺伝子銃:遺伝子銃又は微粒子銃(Biolistic)粒子送達システムは、細胞に遺伝子情報を注入する装置である。ペイロード(payload)は例えばプラスミドDNAをコーティングした金、銀又はタングステン等の重金属の素粒子である。この技法は単に微粒子銃と称されることが多い。噴射剤(propellant)として圧縮ヘリウムを使用することができる。特にコロイド性金粒子等の金粒子への核酸構築物のコーティングが、好ましい一実施形態である。
○ 空気圧(Pneumatic)(ジェット)注射:粒子を必要としない、水溶液。
○ エレクトロポレーション又は電気透過化処理(electropermeabilization):外部から印加した電場によって細胞原形質膜の電気伝導度及び透過性を大幅に増大させることである。
○ 超音波による(-Facilitated)遺伝子導入:超音波によって膜孔を作り出し、膜孔を介したDNAの受動拡散による細胞内遺伝子導入を促す。効率は造影剤又は膜をより流体的(fluidic)にする条件の使用によって増強することができる。
○ 流体力学的遺伝子送達:流体力学的遺伝子送達は、高度に灌流した内臓(例えば肝臓)においてネイキッドプラスミドDNAを細胞に導入する単純な方法である。齧歯動物においては、大量のDNA溶液の急速尾静脈注射によって、下大静脈での心拍出量を超える注射溶液の一時的なオーバーフローを引き起こす。結果として、注射によって肝臓へのDNA溶液の逆流、肝内圧の急速な上昇、肝臓膨張及び肝臓の有窓構造(fenestrae)の可逆的破壊が誘導される。
【0195】
● 化学的アプローチ
○ カチオン性脂質媒介遺伝子送達:一部のカチオン性脂質は単独で良好なトランスフェクション活性を示すが、リポソームを形成するためにヘルパー脂質である非荷電性(noncharged)リン脂質又はコレステロールと配合されることが多い。プラスミドDNAはカチオン性リポソームと混合すると、リポプレックスと呼ばれる不安定な(quasi-stable)小粒子へと凝縮する。リポプレックス中のDNAは、ヌクレアーゼ分解から十分に保護されている。リポプレックスは細胞取り込みを誘発し、破壊的なリソソームコンパートメントに到達する前に細胞内小胞からのDNAの放出を促進することが可能である。
○ カチオン性ポリマー媒介遺伝子導入:大半のカチオン性ポリマーは、細胞表面上のアニオン性部位との電荷間相互作用によってDNAを小粒子へと凝縮し、エンドサイトーシスを介した細胞取り込みを容易にする共通した機能を有する。カチオン性ポリマーDNA担体としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン及びポリプロピルアミンデンドリマー、ポリアリルアミン、カチオン性デキストラン、キトサン、カチオン性タンパク質(ポリリジン、プロタミン及びヒストン)、並びにカチオン性ペプチドが挙げられる。
○ 脂質−ポリマーハイブリッドシステム:ポリカチオンと共に予め凝縮した後、ヘルパー脂質を添加して又は添加せずにカチオン性リポソーム、アニオン性リポソーム又は両親媒性ポリマーのいずれかをコーティングしたDNA。
【0196】
化学的送達ビヒクルの例としては、生分解性ポリマーマイクロスフェア、リポソーム担体等の脂質ベースの製剤、リポソーム等のカチオン荷電分子、カルシウム塩又はデンドリマー、リポ多糖、ポリペプチド及び多糖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
代替的な物理的送達法としては、鼻粘膜及び肺粘膜等の粘膜面へのネイキッド核酸構築物のエアロゾル注入(instillation);眼及び粘膜組織への核酸構築物の局所投与;及び食塩水を眼の角膜実質に強制的に送り込む間質ハイドレーション(stromal hydration)等のハイドレーション。
【0198】
本発明の別の実施形態は、送達ビヒクルとして本明細書においてウイルスベクター(すなわちウイルスではない)と表したベクターを含む。本発明によるウイルスベクターは、改変したウイルスゲノム、すなわちウイルスゲノムを形成する実際のDNA又はRNAから作製され、ネイキッド形態で導入される。したがって、ウイルスタンパク質又は非ウイルスタンパク質からなるウイルスゲノムを取り囲むいかなる被覆構造も、本発明によるウイルスベクターの一部ではない。
【0199】
ウイルスベクターの由来となるウイルスはアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、泡沫状ウイルス、サイトメガロウイルス、セムリキ森林ウイルス、ポックスウイルス、RNAウイルスベクター及びDNAウイルスベクターという限定的な群から選択される。かかるウイルスベクターは当該技術分野で既知である。
【0200】
組換え細胞
本発明の一態様は、上記のいずれかにおいて規定される核酸構築物を含む細胞に関する。かかる組換え細胞は、in vitro研究用のツールとして、核酸構築物の送達ビヒクルとして、又は遺伝子治療計画(regime)の一部として使用することができる。発明による核酸構築物は、当該技術分野で既知であり、細胞の核へのDNAのマイクロインジェクション、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション/リポソーム融合及び粒子衝撃を含む技法によって細胞に導入することができる。好適な細胞としては自己細胞及び非自己細胞が挙げられ、異種細胞を挙げることができる。
【0201】
好ましい一実施形態では、本発明の核酸構築物は抗原提示細胞(APC)内に含まれる。その表面上にMHC分子に結び付けて抗原を提示する任意の細胞は、抗原提示細胞と見なされる。かかる細胞としては、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、ハイブリッドAPC及びフォスター(foster)APCが挙げられるが、これらに限定されない。ハイブリッドAPCを作製する方法は当該技術分野で既知である。
【0202】
より好ましい一実施形態では、APCはプロフェッショナル抗原提示細胞であり、最も好ましくは、APCはMHC−I及び/又はMHC−IIを発現する細胞である。
【0203】
上記のいずれかによるAPCは、患者から得られる幹細胞であってもよい。本発明の核酸構築物を導入した後、幹細胞を医学的状態の患者を治療する目的で患者に再導入することができる。好ましくは、患者から単離される細胞は、抗原提示細胞へと分化することが可能な幹細胞である。
【0204】
本発明の核酸構築物を含む抗原提示細胞がいかなる共刺激シグナルも発現せず、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が自己抗原であることが本発明の範囲にさらに含まれる。
【0205】
キメラタンパク質及び抗体
本発明の一目的は、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片を含む、本明細書において上記に記載されるような核酸構築物によってコードされるキメラタンパク質である。キメラタンパク質とは、2つ以上の完全若しくは部分的な遺伝子、又は一連の(非)ランダム核酸を共にスプライシングすることによって作製されたヌクレオチド配列によってコードされる遺伝子操作されたタンパク質であると理解される。
【0206】
本発明の一態様は、本明細書において上記に規定されるキメラタンパク質を認識することができる抗体に関する。「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の活性部分であると理解される。抗体は例えば、無傷免疫グロブリン分子又は免疫学的活性を保持するその断片である。かかる抗体は、動物の受動免疫化に、又は抗体が結合するタンパク質を検出するアッセイに使用することができる。
【0207】
核酸構築物組成物
本発明の一態様は、少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記抗原タンパク質若しくは前記抗原ペプチドの断片と作動可能に連結した、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体をコードする核酸配列を含む組成物に関する。組成物はしたがって、上記のいずれかにおいて規定される核酸構築物を含み得る。組成物はさらに、薬物として使用することができる。
【0208】
本発明による核酸構築物組成物は、賦形剤又は安定化剤としても知られる1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を活性薬剤と混合する等といった既知の方法によって配合することができる。これらの賦形剤は、利用される投与量及び濃度でそれに曝露される細胞又は個体に対して非毒性であるため、任意の個体/動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくはヒトへの投与に許容可能であり得る。生理学的に許容可能な担体は多くの場合、pH緩衝水溶液である。かかる賦形剤、担体及び配合方法の例は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(MaackPublishing Co,Easton,PA)に見ることができる。生理学的に許容可能な担体の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及び他の有機酸緩衝液等の緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)等の非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
有効な投与に好適な薬学的に許容可能な組成物を配合するには、かかる組成物は本発明によると、本明細書において記載されるような核酸構築物、送達ビヒクル内に含まれる核酸構築物又は核酸構築物内でコードされるキメラタンパク質を有効量含有する。多くの場合、本発明の核酸構築物によってコードされるようなタンパク質又はポリペプチドを用いて免疫応答をプライミングする場合、担体はタンパク質又はペプチドをそれに結合させることによって骨格(scaffold)として使用され、それにより免疫応答の誘導を補助する。担体タンパク質は、免疫原決定基を提示するのに好適な任意のタンパク質を含む従来の任意の担体であり得る。好適な担体は典型的にはタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質集合体(aggregates)(油滴又はリポソーム等)、及び不活性ウイルス粒子といった大きく、ゆっくりと代謝される高分子である。かかる担体は当業者に既知である。さらに、これらの担体は免疫促進剤(「アジュバント」)として機能し得る。動物の免疫化はアジュバント及び/又は医薬担体を用いて行うことができる。従来の担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(トランスフェリン、ウシ血清アルブミン若しくはヒト血清アルブミン等)、オボアルブミン、免疫グロブリン、又はホルモン(インスリン等)が挙げられるが、これらに限定されない。担体はアジュバントと共に、又はそれとは独立して与えることができる。
【0210】
以下において、核酸構築物組成物又は組成物は、患者における免疫応答の刺激を含む予防的使用及び治療的使用に有用な組成物を包含することを意図する。本発明の組成物が、いかなる全身性若しくは局所性の毒性反応又は任意の他の副作用をも誘導しないことがさらに予想される。
【0211】
好ましい一実施形態では、「組成物」という表現は、本明細書において使用される場合、免疫応答をプライミングするための組成物を指す。
【0212】
好ましい一実施形態では、核酸構築物はパッケージングされる。核酸構築物のパッケージング手段としては、RNAベース又はDNAベースのベクター、脂質ベースの担体、ウイルス発現ベクター、ウイルス送達ベクター、コロイド性金粒子のコーティング及び生分解性ポリマーマイクロスフェアの群から選択されるが、これらに限定されない手段が挙げられる。したがって、先述した送達手段のいずれも、組成物に使用するパッキング(packing)目的のために使用することができる。
【0213】
一実施形態では、核酸構築物のパッケージング手段は、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及びDNAウイルスベクターの群から選択されるが、これらに限定されないウイルス発現ベクターである。ウイルスベクターは、複製欠損性又は条件付きで複製欠損性のウイルスベクターであり得る。
【0214】
本発明の一態様は、少なくとも2つのベクターを含む組成物に関する。これには、記載されるような任意の1つ又は2つの異なる核酸構築物を、少なくとも2つのベクターに入れることができる(これらのベクターは上記のいずれかに記載されるようなタイプである)ことが包含される。本発明は、3つ、4つ、5つ又は6つのベクターを含む組成物にさらに関する。この場合も同様に、これらのベクターは互いに異なっていても又は異なっていなくてもよく、本明細書において上記に記載されるような同一又は異なる核酸構築物を保有し得る。本発明のさらなる態様は、本明細書において記載される核酸構築物のいずれかによってコードされるような少なくとも1つのキメラタンパク質を含む組成物に関する。免疫原としてキメラタンパク質又はポリペプチドを使用する場合、組換え細胞において上記に記載される核酸構築物のいずれか1つ又は複数を発現させることによって生成してもよく、又は当該技術分野で既知の方法による化学的合成によって作製してもよい。上記に記載されるように、かかるキメラタンパク質及び/又はペプチドを担体と結合して、タンパク質/ペプチドに対する免疫学的応答を増大させてもよく、アジュバント及び/又は賦形剤を添加して又は添加せずに投与してもよい。
【0215】
一実施形態では、本発明は、組成物の製造のための本明細書において記載されるような核酸構築物の使用に関する。
【0216】
免疫応答の増強:伝統的なアジュバント
特異的な免疫応答を増強するためにアジュバントが組成物に含まれていてもよい。したがって、抗原(複数可)/核酸構築物及び/又は送達ビヒクル(いずれも免疫原決定基とも称される場合がある)と組み合わせた場合に、強い特異的免疫応答を誘導することが可能な組成物をもたらすアジュバントを同定することが特に(particular)重要である。免疫原決定基は、免疫化の前に2つ以上の異なるアジュバントと混合してもよい。組成物は本文書において免疫原組成物とも称される。
【0217】
多数のアジュバントが記載されており、マウス、ラット及びウサギ等の実験動物における抗体の生成のために使用される。このような場合、主な目的は強い抗体応答を得ることであるため、副作用に対する寛容性はやや高くなる。医薬品への使用及び使用の承認のため、特にヒトにおける使用のためには、組成物の構成成分(アジュバントを含む)が十分に特徴づけられている必要がある。組成物に肉芽腫、腫瘍又は発熱等といった任意の有害反応のリスクがほとんどないことがさらに必要とされる。
【0218】
本発明の一実施形態は、アジュバントを含む組成物に関する。好ましい一実施形態では、組成物はヒト等の哺乳動物への投与に好適である。したがって、好ましいアジュバントは哺乳動物への投与に好適であり、最も好ましくはヒトへの投与に好適である。
【0219】
別の好ましい実施形態では、組成物は鳥又は魚、最も好ましくはニワトリ(Gallus gallus domesticus)への投与に好適である。したがって、好ましいアジュバントは鳥又は魚への投与に好適である。
【0220】
アジュバントの選択肢は、所望のタイプの免疫応答、B細胞又は/及びT細胞の活性化を刺激するその能力によってさらに選択することができ、組成物を関連リンパ組織への分布及び提示を最適化するよう配合することができる。
【0221】
本発明に関するアジュバントは、その起源(それが鉱物の、細菌の、植物の、合成された又は宿主の産物であるか)によってグループ分けすることができる。この分類による第1のグループは、アルミニウム化合物等の鉱物アジュバントである。アルミニウム塩によって沈降する抗原、又は予め形成したアルミニウム化合物に混合若しくは吸着する抗原が、動物及びヒトにおいて免疫応答を増強するために広く使用されている。アルミニウム粒子は免疫化の7日後にウサギの局所リンパ節にあることが実証されており、別の重要な機能は、抗原をリンパ節自体のT細胞含有領域に対して指向することであると考えられる。アジュバントの効力は、流入領域リンパ節の示唆(intimation)と相関することが示されている。多くの研究によって、抗原をアルミニウム塩と投与することで液性免疫が増大することが確認されているが、遅延型過敏反応によって測定されるように、細胞媒介性免疫はわずかにしか増大しないと考えられる。水酸化アルミニウムも補体経路を活性化するとして記載されている。このメカニズムは、局所性炎症応答並びに免疫グロブリン産生及びB細胞記憶において役割を果たし得る。さらに、水酸化アルミニウムは抗原を急速な異化から保護することができる。主にその安全に関しての素晴らしい記録のために、アルミニウム化合物はヒトにおいて現在使用されている唯一のアジュバントである。
【0222】
別の大きな群のアジュバントは細菌起源のものである。細菌起源のアジュバントは、精製及び合成することができ(例えばムラミルジペプチド、リピドA)、宿主のメディエータ(インターロイキン1及びインターロイキン2)はクローニングされている。過去10年間で、細菌起源の活性成分の幾つかのアジュバント(百日咳菌、ヒト型結核菌、リポ多糖、フロイント完全アジュバント(FCA)及びフロイント不完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Mich.)及びMerck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc.,Rahway,N.J.))の化学的精製はかなりの進歩を遂げている。本発明によるさらに好適なアジュバントは、例えばTitermax Classicalアジュバント(SIGMA-ALDRICH)、ISCOM、Quil A、ALUN(米国特許第58767号及び同第5,554,372号を参照されたい)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックス、GMDP等、並びに免疫刺激剤との組み合わせ(米国特許第5,876,735号)である。百日咳菌は、Tリンパ球集団に対して作用することによって細胞媒介性免疫を調節するその能力のために、本発明との関連において興味深いアジュバントである。リポ多糖及びフロイント完全アジュバントについては、アジュバント活性部分が同定及び合成されているため、構造−機能相関の研究が可能となっている。これらを本発明による免疫原組成物に加えることも検討されている。
【0223】
リポ多糖(LPS)及びその様々な誘導体(リピドAを含む)は、リポソーム又は他の脂質エマルションとの組み合わせで強力なアジュバントであることが見出されている。ヒトにおいて広く使用される、毒性が十分に低い誘導体を生成することができるか否かは未だ不明である。フロイント完全アジュバントは大抵の実験的研究において標準的である。
【0224】
抗原を急速異化から保護するために鉱油を免疫原組成物に添加してもよい。
【0225】
多くの他のタイプの材料を、本発明による免疫原組成物においてアジュバントとして使用することができる。これらとしては、サポニン等の植物産物、キチン等の動物産物及び多数の合成化学物質が挙げられる。
【0226】
本発明によるアジュバントは、提唱されているそれらの作用メカニズムによっても分類することができる。大抵のアジュバントは2つ以上のメカニズムによって機能すると考えられるため、このタイプの分類は必然的に幾らか恣意的である。
【0227】
アジュバントは、抗原の局在化及び送達によって、又はマクロファージ及びリンパ球等の免疫系を構成する細胞に対して直接影響を与えることによって作用し得る。本発明によるアジュバントが免疫応答を増強する別のメカニズムは、抗原デポー(depot)が作られることによる。これは、アルミニウム化合物、油エマルション、リポソーム及び合成ポリマーのアジュバント活性に寄与すると考えられる。リポ多糖及びムラミルジペプチドのアジュバント活性は主にマクロファージの活性化によって媒介されると考えられるのに対し、百日咳菌はマクロファージ及びリンパ球の両方に作用する。本発明による免疫原性組成物に組み込む場合に有用であり得るアジュバントのさらなる例は、米国特許第5,554,372号に記載されている。
【0228】
したがって、本発明による組成物において有用なアジュバントは、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム又はリン酸カルシウムのゲル、油エマルション及び界面活性剤ベースの製剤、例えばMF59(マイクロ流動化界面活性剤によって安定化した(microfluidized detergent stabilized)水中油型エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02(SBAS2、水中油型エマルション+モノホスホリルリピドA(MPL)+QS21)、Montanide ISA 51及びISA−720(安定化した油中水型エマルション)、Adjuvant 65(ラッカセイ油、モノオレイン酸マンニド及びモノステアリン酸アルミニウムを含有する)、RIBI ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,Utah)、微粒子アジュバント、例えばビロゾーム(インフルエンザの血球凝集素を組み入れた単層リポソームベシクル)、AS04(Al塩とMPL)、ISCOM(サポニンと脂質(コレステロール等)の構造化複合体)、ポリ乳酸コグリコリド(PLG)、微生物誘導体(天然及び合成)、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、Detox(MPL+チモテ菌(M. Phlei)細胞壁骨格)、AGP(RC−529(合成アシル化単糖))、DC_chol(リポソームへと自己組織化することが可能なリポイド(lipoidal)免疫賦活物質)、OM−174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫賦活性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、非毒性アジュバント効果を有する改変した細菌毒素LT及びCT、内因性ヒト免疫調節物質、例えばhGM−CSF又はhIL−12又はImmudaptin(C3dタンデムアレイ)、金粒子等の不活性ビヒクルであり得る。
【0229】
アジュバントのさらなる例としては、免疫賦活性油エマルション(例えば油中水型、水中油型、水中油中水型、例えばMontanide(登録商標)、Specol等のフロイント不完全アジュバント、無機塩、例えばAl(OH)3、AlPO4、微生物産物、Qual A等のサポニン、合成産物、並びにアジュバント製剤、並びに免疫刺激複合体(ISCOM)、並びにサイトカイン、加熱不活性化細菌/構成成分、ナノビーズ、LPS、LTAが挙げられる。他の一般に使用されているアジュバントのリストは、国際公開第2003/089471号の6頁〜8頁に開示されている(このリストは参照により本明細書中に援用される)。
【0230】
本発明による免疫原組成物は、緩衝液等の希釈剤、アスコルビン酸等の酸化防止剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース又はデキストリンを含む炭水化物、EDTA等のキレート化剤、グルタチオン、並びに他の安定化剤及び賦形剤を含有していてもよい。非特異的な血清アルブミンと混合した中性緩衝食塩水又は食塩水が適切な希釈剤の一例である。
【0231】
アジュバントは一般に、免疫原組成物中に製造業者の取扱説明書に従う量で含まれる。
【0232】
免疫応答の増強:非伝統的なアジュバント
サイトカイン調節
ワクチンを有効にするには、所定の病原体に対する適切な免疫応答を誘導しなければならない。これは、発現された抗原の形態(すなわち分泌抗原に対する細胞内抗原)、送達の方法及び経路、並びに送達するDNAの用量の変更によって達成することができる。しかしながら、これは免疫調節分子、例えばサイトカイン、リンホカイン又は共刺激分子をコードするプラスミドDNA(pDNA)の同時投与によっても達成することができる。これらの「遺伝子アジュバント」は、「伝統的なアジュバント」又は本明細書において概説されるような「他の免疫賦活性アジュバント」のいずれかと共に、多数の形:
一方が免疫原をコードし、他方がサイトカインをコードする2つの別個のプラスミドの混合物として;
スペーサー領域によって隔てられた単一のバイシストロニックベクター又はポリシストロニックベクターとして;又は
プラスミドにコードされたキメラタンパク質若しくは融合タンパク質として;又は
その天然形態、すなわちタンパク質若しくはヌクレオチドとして投与することができる。
【0233】
一般に、炎症促進性物質(各種インターロイキン、腫瘍壊死因子及びGM−CSF等)及びTH2誘導サイトカインの同時投与は抗体応答を増大させるが、炎症促進性物質及びTH1誘導サイトカインは液性応答を減少させ、細胞傷害性応答を増大させる(これは例えばウイルス保護においてより重要である)。B7−1、B7−2及びCD40Lのような共刺激分子も同様に使用される場合がある。
【0234】
このコンセプトは、IL−10をコードするpDNAの局所投与に首尾よく適用されている。B7−1(APC上のリガンド)をコードするプラスミドは、抗腫瘍モデルにおいて免疫応答を首尾よく増強し、GM−CSF及びプラスモディウム・ヨエリ(P. yoelii)のスポロゾイト周囲タンパク質(PyCSP)をコードするプラスミドの混合は、その後の抗原投与に対する保護を増強した(一方、プラスミドにコードされたPyCSPは単独では増強しなかった)。GM−CSFはより効率的に樹状細胞に抗原を提示させ、IL−2産生及びTH細胞活性化を増強し、それにより免疫応答をさらに増大させる。これは、最初にpPyCSPとpGM−CSFとの混合物でプライミングし、後にPyCSPを発現する組換えポックスウイルスでブーストすることによりさらに増強することができる。しかしながら、GM−CSF(又はIFN−γ、又はIL−2)と、プラスモディウム・シャバウディ(P. chabaudi)メロゾイト表面タンパク質1(C末端)−B型肝炎ウイルス表面タンパク質の融合タンパク質(PcMSP1−HB)との同時注入は、実際にはpPcMSP1−HB単独の送達によって獲得された保護と比較して、抗原投与に対する保護を無効にした。
【0235】
他の免疫賦活性アジュバント
一実施形態では、本発明による核酸構築物又は組成物に対する免疫賦活性アジュバントとして以下のいずれかを使用することができる:
LPS(リポ多糖)、ポリ−IC(ポリ−イノシトールシトシン)又は二本鎖RNA、LL37、RIG−1ヘリカーゼ、IL−12、IL−18、CCL−1、CCL−5、CCL−19、CCL−21、GM−CSF、CX3CL、CD86、PD−1、分泌型PD−1、IL10−R、分泌型IL10−R、IL21、ICOSL、41BBL、CD40L及び免疫応答を刺激する任意の他のタンパク質若しくは核酸配列に類似した任意の他のアジュバント。
【0236】
一実施形態では、免疫賦活性アジュバントをアデノウイルス線維タンパク質に融合させる。例えば、CX3CLをアデノウイルス線維タンパク質に融合させることができる。
【0237】
免疫賦活性CpGモチーフ
プラスミドDNAはそれ自体が免疫系に対してアジュバント効果を有すると考えられる。細菌に由来するプラスミドDNAは、先天性免疫防御機構、樹状細胞の活性化、及びTH1サイトカインの産生を誘発することが見出されている。これは免疫賦活性である或る特定のCpGジヌクレオチド配列の認識によるものである。CpG刺激性(CpG−S)配列は、細菌に由来するDNAにおいて真核生物よりも20倍多く生じる。これは、真核生物が「CpG抑制」を示す、すなわちCpGジヌクレオチド対が生じる頻度が予想よりかなり少ないためである。さらに、CpG−S配列は低メチル化状態にある。これは細菌DNAにおいては頻繁に起こるが、真核生物において生じるCpGモチーフは全てシトシンヌクレオチドでメチル化されている。対照的に、免疫応答の活性化を阻害するヌクレオチド配列(CpG中和又はCpG−Nと称される)は、真核生物ゲノムにおいて過剰発現されている(over represented)。最適な免疫賦活性配列は、2つの5’プリン及び2つの3’ピリミジンが隣接した非メチル化CpGジヌクレオチドであることが見出されている。さらに、この免疫賦活性六量体の外側の隣接領域は、標的細胞への結合及び取り込みを確実にするために任意でグアニンリッチである。
【0238】
先天性免疫系は適応免疫系と相乗作用して、DNAにコードされるタンパク質に対する応答を増大させる。CpG−S配列は、ポリクローナルB細胞の活性化並びにサイトカイン発現及び分泌の上方調節を誘導する。刺激されたマクロファージはIL−12、IL−18、TNF−α、IFN−α、IFN−β及びIFN−γを分泌するが、刺激されたB細胞はIL−6及び一部のIL−12を分泌する。DNAワクチンのプラスミド骨格におけるCpG−S配列及びCpG−N配列を操作することによって、コードされた抗原の免疫応答の成功を確実にし、免疫応答をTH1表現型に指向する(drive)ことができる。これは病原体に対して保護するためにTH応答が必要とされる場合に有用である。CpG−S配列は、DNA及び組換えタンパク質のワクチン投与の両方に対して外部アジュバントとして変動する成功率で使用されてきた。低メチル化CpGモチーフを有する他の生物は、ポリクローナルB細胞の増加を刺激することが実証されている。しかし、その背後のメカニズムは単純なメチル化よりも複雑である可能性があり、低メチル化マウスDNAでは免疫応答の増大は見出されていない。
【0239】
DNAの配合
DNA免疫化の効率は、DNAを分解に対して安定化し、抗原提示細胞へのDNAの送達の効率を増大させることによって改善することができる。これは、生分解性のカチオン性微粒子(臭化セチルトリメチルアンモニウムと配合されたポリ(ラクチド−co−グリコリド)等)にDNAをコーティングすることによって達成することができる。かかるDNAコーティング微粒子は、CTLを組換えワクシニアウイルスとして生じさせる際に、特にミョウバンと混合した場合に有効であり得る。直径300nmの粒子が抗原提示細胞による取り込みに最も効率的であると考えられる。
【0240】
投与
本発明による核酸構築物及び組成物は、治療的有効量で個体に投与することができる。有効量は個体の状態、体重、性別及び年齢等の様々な要因によって変化し得る。他の要因としては、投与方法が挙げられる。
【0241】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNA、RNA、LNA、PNA、INA、TINA、HNA、ANA、CNA、CeNA、GNA、TNA、ギャップマー、ミックスマー、モルホリノ又はそれらの任意の組み合わせの形態で被験体に送達することができる。
【0242】
一実施形態では、本発明による核酸構築物は、DNAの形態で被験体に送達することができる。
【0243】
別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、RNAの形態で被験体に送達することができる。したがって、核酸構築物は投与前にRNAへと転写され得る。
【0244】
さらに別の実施形態では、本発明による核酸構築物は、タンパク質の形態で被験体に送達することができる。したがって、核酸構築物は投与前にタンパク質へと翻訳され得る。
【0245】
本発明による核酸構築物がタンパク質の形態で被験体に送達される実施形態では、タンパク質を安定性(stabilization)を増大させるため、及び/又は細胞への送達を最適化するために改変してもよい。タンパク質は、ジスルフィド結合の存在(例えば、米国特許第5,102,985号では、タンパク質の溶液を過酸化水素で処理することで、分子内ジスルフィド架橋を有するタンパク質を90%〜96%の収率で生成している)、極性残基の増加、表面電荷最適化、表面塩架橋、封入(例えばメソポーラスシリケートによる)によって安定性を増大させることができ、又はタンパク質を熱ショックタンパク質(Hsp−60、Hsp−70、Hsp−90、Hsp−20、Hsp−27、Hsp−84等)、HIV tat転座ドメイン、アデノウイルス線維タンパク質、又は任意の他のタンパク質若しくはドメインと連結してもよい。
【0246】
医薬組成物又は動物用組成物は、皮下(sc又はs.c.)、局所、経口及び筋肉内(im又はi.m.)等といった様々な経路によって個体に与えることができる。医薬組成物の投与は、経口的又は非経口的に行うことができる。非経口的送達の方法としては、局所投与、動脈内投与(組織に直接)、筋肉内投与、脳内(ic又はi.c.)投与、皮下投与、髄内投与、くも膜下投与、脳室内投与、静脈内(iv又はi.v.)投与、腹腔内投与又は鼻腔内投与が挙げられる。本発明はまた、組成物を用いて免疫応答をプライミングする方法に使用する好適な局所、経口、全身性及び非経口医薬製剤を提供するという目的を有する。
【0247】
例えば、組成物は錠剤、カプセル剤(各々、持続放出型(timed release)及び徐放性(sustained release)の製剤を含む)、丸薬、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及び乳剤のような経口剤形で、又は注射によって投与することができる。同様に、静脈内形態(急速静注及び点滴の両方)、腹腔内形態、皮下形態、閉塞を伴う若しくは伴わない局所形態、又は筋肉内形態でも投与することができ、用いられる形態は全て、薬学の技術分野の通常の技術を有する者(当業者)に既知である。本明細書において記載される化合物のいずれかを含む組成物を、有効であるが毒性のない量で利用することができる。必要に応じて従来の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、防腐剤、アジュバント、緩衝成分等を含有する凍結乾燥形態及び溶液、懸濁剤又はエマルション形態等といった当該技術分野で注射用免疫原性ペプチド組成物の配合に適切であることが知られる従来の剤形のいずれか及び全ても包含される。
【0248】
一実施形態では、プライミング及び/又はその後のブースターワクチンのための組成物を持続放出型(slow release)又は徐放性製剤として与える。
【0249】
本発明による核酸構築物又は組成物の好ましい投与方法としては、全身投与、例えば静脈内投与又は皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経口投与、直腸投与、膣内投与、肺内投与、及び一般に任意の形態の粘膜投与が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書において言及される投与形態のいずれかのための手段が本発明に含まれることは本発明の範囲に含まれる。
【0250】
本発明による核酸構築物又は組成物は、1回、又は任意の回数、例えば2回、3回、4回又は5回投与することができる。
【0251】
好ましい一実施形態では、核酸構築物又は組成物を1回投与し、続いて好適なワクチンの投与を行う。
【0252】
別の好ましい実施形態では、核酸構築物又は組成物を、ワクチンを投与する前に連続投与として投与する。かかる連続投与は、核酸構築物又は組成物を1日1回、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週1回、週2回又は2週おきで計1回、2回、3回、4回又は5回投与することを含み得る。
【0253】
一実施形態では、免疫系をプライミングするための最初の核酸構築物又は組成物と、次のブーストするためのワクチンとを投与する間の期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、例えば3日、少なくとも4日、例えば5日、少なくとも6日、例えば7日、少なくとも8日、例えば9日、少なくとも10日、例えば15日、少なくとも20日、例えば25日等である。
【0254】
したがって、核酸構築物又は組成物によるプライミングは、ワクチンを投与することによってさらにブーストされることが意図される。この投与は先の投与とは異なる形態、若しくは身体部分であっても、又は先の投与と同様であってもよい。
【0255】
ブースター注射は同種又は異種ブースター注射のいずれかである。同種ブースター注射では、最初の投与及びその後の投与が同じ構築物、より具体的には同じ送達ビヒクルを含む。異種ブースター注射では、同一の構築物が異なるベクターに含まれる。
【0256】
本発明による組成物の好ましい投与形態は、所定の感染しやすい場所(receptacle)の可能性が最も高い体内又は体外の身体領域に組成物を投与することである。感染しやすい場所とは感染を受ける身体領域であり、例えばインフルエンザに関しては、感染しやすい場所は肺である。
【0257】
本発明の核酸構築物又は組成物は、それが有益であり得る任意の生物、特に脊椎動物等の任意の動物に対して投与することができる。組成物の投与手段及び投与方法をレシピエントに適合させることは本発明の範囲に含まれる。
【0258】
組成物の好ましいレシピエントは哺乳動物であり、哺乳動物は本発明のより好ましい一実施形態では、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、フェレット及びヒトの群から選択される。最も好ましい一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0259】
組成物の別の好ましいレシピエントは、ニワトリ等の鳥綱(鳥類)からの任意の脊椎動物である。
【0260】
本発明の一実施形態には、第2の活性成分をさらに含む組成物が含まれる。第2の活性成分は、アジュバント、抗生物質、化学療法剤、抗アレルギー剤、サイトカイン、補体因子及び免疫系の共刺激分子の群から選択されるが、これらに限定されない。
【0261】
本発明の別の実施形態には、上記のいずれかによる少なくとも1つの核酸構築物又は組成物、前記核酸構築物又は組成物を投与する手段、及びその方法に関する取扱説明書を含む部品キットが含まれる。複数の投与量の同じ組成物又は複数の異なる組成物を含むことは本発明の範囲に含まれる。好ましい一実施形態では、部品キットは第2の活性成分をさらに含む。より好ましい一実施形態では、前記第2の活性成分は好適なワクチン、すなわち前記免疫応答の先のプライミングによって生じた免疫応答をブーストすることが可能なワクチンである。
【0262】
本発明は、上記のいずれかによる核酸構築物又は組成物を動物に投与すること、続いて好適なワクチンを投与して、それにより被験体の免疫系をプライミング及びブーストする、投与することを含む、動物における免疫応答を増強する方法をさらに含む。
【0263】
免疫応答、以下のタイプの応答のいずれであってもよいが、これらに限定されない:MHC−I依存性応答、MHC−I及び/又はMHC−II依存性応答、T細胞依存性応答、CD4+ T細胞依存性応答、CD4+ T細胞非依存性応答、CD8+ T細胞依存性応答及びB細胞依存性免疫応答。好適なワクチンは、本発明による核酸構築物又は組成物による免疫系のプライミングに続いて、免疫系をブーストすることが可能なものである。
【0264】
さらなる実施形態では、本発明は、治療を必要とする個体を治療する方法であって、本明細書において上記に記載されるような組成物を投与して、前記個体における臨床状態を治療する、投与することを含む、方法に関する。
【0265】
ワクチンの効力の増大
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片をコードする核酸構築物であって、該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片がウイルス、細菌又は寄生生物由来のものである、核酸構築物に関する。
【0266】
本明細書において提示されるデータにより、インバリアント鎖又はその変異体を含む核酸構築物を使用するプライム−ブースト法を開発することが容易ではないことが示される。したがって、図1に提示されるように、インバリアント鎖及び抗原を含むネイキッドDNA構築物(DNA−IiGP)は、免疫応答をプライミングすることが可能であるが、抗原を含むがインバリアント鎖を含まないネイキッドDNA構築物(DNA−GP)は、免疫応答をプライミングすることが可能ではない。さらに、図12に提示されるデータから、抗原を含むアデノウイルスベクター(AdGP)は、或る特定の(Ad−IiGP)免疫応答をプライミングすることが可能であるが、全ての(Ad−GP)免疫応答をプライミングすることは可能ではないことが示され、一方で図13に提示されるデータから、インバリアント鎖と共に抗原を含むアデノウイルスベクター(Ad−IiGP)は、通常の投与量及び治療計画でいかなる(Ad−IiGP及びAd−GP)免疫応答もプライミングすることが可能ではないことが示される。しかしながら、より低い用量のAd−IiGPをプライミングに用いることによって、Ad−IiGPブーストのAd−IiGPプライミングを最適化することが可能である(図14に示される)。
【0267】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及びウイルス、細菌若しくは寄生生物の抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0268】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0269】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0270】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化を含む、方法を開示する。
【0271】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるCLIP領域の変化を含む、方法を開示する。
【0272】
一実施形態では、本発明は、ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、最初の17個のアミノ酸を含まない、方法を開示する。
【0273】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングするための核酸構築物の使用を対象とする。
【0274】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0275】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化を含む、方法を開示する。
【0276】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失又は置換によるCLIP領域の変化を含む、方法を開示する。
【0277】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、最初の17個のアミノ酸を含まない、方法を開示する。
【0278】
癌ワクチンの効力の増大
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片をコードする核酸構築物であって、該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は抗原タンパク質若しくは抗原ペプチドの断片が癌特異的ポリペプチド又は癌抗原由来のものである、核酸構築物に関する。
【0279】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び癌抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのその天然形態、野生型形態であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。
【0280】
本発明の一目的はまた、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び癌抗原又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて癌ワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又は最初の17個のアミノ酸が欠失しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0281】
つまり、免疫応答をブーストするために使用されるその後に投与されるワクチンが癌ワクチンである場合、本発明による核酸構築物によってコードされるインバリアント鎖が、その天然形態、野生型形態であっても、又はインバリアント鎖の変異体であってもよいということになる。
【0282】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0283】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0284】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0285】
一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0286】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングするための核酸構築物の使用を対象とする。
【0287】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0288】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0289】
一実施形態では、本発明は、免疫応答をプライミングする方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び癌特異的抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.好適な癌ワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0290】
異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力の増大
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖及び異常な生理学的応答と関連するポリペプチド又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのその天然形態、野生型形態であり、前記プライミングに続いて、前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。
【0291】
本発明の一目的は、少なくとも1つのインバリアント鎖、及び異常な生理学的応答と関連するポリペプチド又はその断片をコードする核酸構築物であって、前記インバリアント鎖が免疫応答のプライミングのためのインバリアント鎖の変異体であり、前記プライミングに続いて前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンによるその後の追加ワクチン投与を行う、核酸構築物を提供することである。前記インバリアント鎖の変異体は、Ii−KEY LRMKアミノ酸残基が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はCLIP領域の一部が例えば欠失若しくは置換によって変化しているか、又はIiの最初の17個のアミノ酸が欠失しているインバリアント鎖を含む、本明細書において別項に明記した任意の変異体であり得る。
【0292】
つまり、免疫応答をブーストするために使用されるその後投与されるワクチンが、前記異常な生理学的応答を対象とするワクチンである場合、本発明による核酸構築物によってコードされるインバリアント鎖は、その天然形態、野生型形態のいずれかであっても、又はインバリアント鎖の変異体であってもよいということになる。
【0293】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させるための核酸構築物の使用を対象とする。
【0294】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答のプライミングのための核酸構築物の使用を対象とする。
【0295】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖又はその変異体及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含む、方法を開示する。
【0296】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖がその天然形態、野生型形態である、方法を開示する。
【0297】
一実施形態では、本発明は、異常な生理学的応答を対象とするワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.インバリアント鎖の変異体及び異常な生理学的応答と関連する抗原ペプチド又はその断片を含む核酸構築物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、並びに
c.異常な生理学的応答を対象とする好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程を含み、前記インバリアント鎖の変異体が、例えば欠失若しくは置換によるIi−KEY LRMKアミノ酸残基の変化、及び/又は例えば欠失若しくは置換によるCLIP領域の一部の変化、及び/又はIiの最初の17個のアミノ酸の欠失を含む、方法を開示する。
【0298】
ワクチンタイプ
本発明の一態様は、Ii連結抗原を含む核酸構築物を投与すること、続いて同じ被験体に好適なワクチンを投与することによって達成されるその後のブースター投与を行うことによる、被験体における免疫応答のプライミングに関する。
【0299】
本発明による好適なワクチンは、免疫応答のプライミングのために使用される核酸構築物と共通した、少なくとも1つの同一の特徴を有する。前記同一の特徴は、インバリアント鎖の一部若しくは全部、抗原ペプチドの一部若しくは全部、骨格構造の一部若しくは全部、例えばプロモーター領域の一部若しくは全部、エンハンサーの一部若しくは全部、ターミネーターの一部若しくは全部、ポリA尾部の一部若しくは全部、リンカーの一部若しくは全部、ポリリンカーの一部若しくは全部、作動性リンカーの一部若しくは全部、多重クローニング部位(MCS)の一部若しくは全部、マーカーの一部若しくは全部、停止コドンの一部若しくは全部、内部リボソーム侵入部位(IRES)の一部若しくは全部、及び組み込みのための宿主相同配列の一部若しくは全部、又は他の規定の要素に含まれ得る。
【0300】
好ましい一実施形態では、同一の特徴は、抗原ペプチド又は遍在性ヘルパーT細胞エピトープの一部又は全部である。最も好ましい一実施形態では、同一の特徴は抗原ペプチドの一部又は全部である。
【0301】
別の好ましい実施形態では、同一の特徴はインバリアント鎖の一部又は全部である。
【0302】
ワクチンは伝統的なものと見なしても、又は画期的なものと見なしてもよい。本明細書において引用されるタイプのワクチンのいずれかを、本発明によるその後のブースター工程に使用することができる。
【0303】
伝統的なワクチン、すなわち第1世代のワクチンは、生物そのもの(whole organisms)(死滅させた病原性菌株又は病原性を弱毒化した株のいずれか)に基づいている。
【0304】
分子生物学的技法を使用して、新たなワクチン、すなわち第2世代のワクチンが病原性生物に由来する個々の抗原タンパク質に基づいて開発されてきた。概念的には、生物そのものではなく抗原ペプチドを使用することは、病原性を回避する一方で、最も免疫原性の高い抗原を含有するワクチンを提供し得る。これらのワクチンとしては、不活化した毒性化合物に基づくトキソイドベースのワクチン(良く知られている)、及び不活化又は弱毒化した病原性菌株の断片に基づくサブユニットワクチンが挙げられる。
【0305】
共役ワクチン:或る特定の細菌は、免疫原性の乏しい多糖外皮を有する。これらの外皮をタンパク質(例えば毒素)に連結することによって、それがタンパク質抗原であるかのように免疫系に多糖を認識させることができる。
【0306】
組換えベクターワクチン:一方の微生物の生理と他方のDNAとを組み合わせることによって、複雑な感染過程を有する疾患に対して免疫を引き起こすことができる。
【0307】
合成ワクチンは主に又は完全に合成ペプチド、炭水化物又は抗原からなる。
【0308】
DNA(又は遺伝子)ワクチン、すなわち第3世代のワクチンは、予防的ワクチン及び治療的ワクチンの両方の開発にとって新たな有望な候補である。DNAワクチンは、微生物に由来する1つ又は複数の抗原を産生するよう遺伝子操作された、DNAの小さな円形の断片(プラスミド)から構成される。ワクチンDNAを身体の細胞に注射すると、そこで宿主細胞の「内部機構」がDNAを「読み取り」、それを病原性タンパク質に変換する。これらのタンパク質は異物として認識されるため、宿主細胞によって処理され、免疫系に警告を出すためにそれらの表面上に提示され(displayed)、それにより次いで様々な免疫応答が誘発される。続く免疫応答の強さは、ベクター(すなわちネイキッドDNA、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス等)の効力、抗原の発現レベル、及び組換え抗原自体(すなわち、高親和性又は低親和性MHC結合剤、T細胞又はB細胞レパートリーを程度の差はあれど限定するために選択される構造決定因子等)の組み合わせによって求められる。一般に、免疫記憶の効率的な誘導には、CD4+(ヘルパー細胞)T細胞及びCD8+(細胞障害性)T細胞と、免疫記憶の効果の多くを媒介するB細胞との相互作用が必要とされるか、又は有効であることが言える。
【0309】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第1世代、すなわち伝統的なワクチンの投与を行う。
【0310】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第2世代のワクチンの投与を行う。
【0311】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後の第3世代、すなわちDNAワクチンの投与を行う。
【0312】
免疫原性を増大させるためのDNAワクチン構築物におけるインバリアント鎖の使用は、当該技術分野で既知である。本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後のインバリアント鎖又はその変異体を含むDNAワクチンの投与を行う。
【0313】
本発明の一実施形態では、本発明による核酸構築物による免疫応答のプライミングに続いて、前記免疫応答をブーストするためにその後のアデノウイルスワクチンの投与を行う。
【0314】
ワクチンはさらに、一価(monovalent)(単価(univalent)とも呼ばれる)又は多価(multivalent)(ポリバレント(polyvalent)とも呼ばれる)であってもよい。一価ワクチンは、単一の抗原又は単一の微生物に対して免疫を与えるように設計されている。多価又はポリバレントワクチンは、同じ微生物の2種以上の株、又は2種以上の微生物に対して免疫を与えるように設計されている。
【0315】
図面の詳細な説明
図1:Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるDNAプライミングは、その後の非常に効率的なウイルスベクターによるブーストの際にウイルス特異的CD8+ T細胞の生成を有意に増強する。マウスを3週間に2回、DNA−IiGP、DNA−GPで別々に遺伝子銃により免疫化するか、又は未処理のままにした。最後の免疫化の3週間後、全てのマウスの右後足蹠に、2×107IFUのAd5−IiGPを注射し、4週間後、動物を屠殺し、図1に記載されるように脾細胞を解析した。エピトープ特異的IFN−γ+CD8+ T細胞の数を平均±SEとして示す(n=5マウス/群)。*はAd5−IiGPのみでのワクチン投与を受けたマウスに対する統計的有意性を表す(マン・ホイットニーの順位和検定)。2つの同様の実験の一方の結果を示す。
【0316】
図2:Ii配列におけるドメイン及び試験した突然変異の位置。WT Iiにおけるドメインをバーの上部に示す。ESS;エンドソーム輸送選別シグナル、TM;膜貫通ドメイン、KEY;ペプチド提示増強領域、CLIP;クラスII関連インバリアント鎖ペプチド、TRIM;三量体形成ドメイン。Iiにおける欠失突然変異及び置換の範囲はバーの下部に示す。a;Ad−Δ17IiGP、b;Ad−IiLTMGP、c;Ad−IiUTMGP、d;Ad−Δ50IiGP、e;Ad−Ii1−201GP、f;Ad−Ii1−118GP、g;Ad−Ii1−105GP、h;Ad−IiCLIPGP、i;Ad−IiKEYGP、j;Ad−Ii51−118GP。
【0317】
図3:IiはSIINFEKL/H−2kb OVA由来のエピトープの細胞表面提示を劇的に増大させる。骨髄由来の樹状細胞にAd−OVA、Ad−IiOVA又はAd−IiGP(陰性対照)をトランスフェクトし、MHCクラスIIについて(成熟樹状細胞の染色)及びSIINFEKL/H−2kb特異的抗体で(OVAエピトープ)表面染色した。
【0318】
図4:Iiはシスにおいてのみ機能する。A)Ad−IiGPベクター及びAd−Ii+GPベクターからのIiの発現;Ii発現は、50moiのAd−IiGP及びAd−Ii+GPに感染させたCOS7細胞におけるGAPDHに対して正規化した。B)TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP又はAd−Ii+GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0319】
図5:N末端の欠失及び置換はIi刺激能に影響を与えない。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−Δ17IiGP、Ad−IiLTMGP、Ad−IiUTMGP、Ad−Δ50IiGPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0320】
図6:C末端の欠失及び置換はIi刺激能に影響を与えない。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−Ii1−205GP、Ad−Ii1−118GP及びAd−Ii1−105GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞培養系)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0321】
図7:N末端及びC末端の欠失のみがIi刺激能を低減させる。TCR318 GP33はAd−GP、Ad−IiGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−IiKEYGP及びAd−Ii51−118GPを形質導入したBMDC(骨髄由来樹状細胞培養系)に応じてT細胞増殖を抑制した。
【0322】
図8:Ad−IiGP及びAd−GPワクチンの用量応答。マウスの群に指示菌株中の指示ワクチンをワクチン投与した。ワクチン投与の14日後、マウスを屠殺し、脾細胞を指示エピトープにより刺激した。特異的CD8+脾細胞の総数を細胞内染色及びFACS解析によって求めた。データから、Ad−IiGPが非常に低い投与量で応答を誘導し、したがって低い用量のAd−IiGP(又は任意の抗原)によるプライミング、及びより高い用量のAd−IiGP(又は任意の抗原)によるその後のブーストを同種プライム−ブースト法に適用可能であり得ることが示される。
【0323】
図9:MHCクラスIIによる抗原提示(CD4+ T細胞の刺激)に関するAd−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPの比較。SMARTA GP61−80は、Ad−GP、Ad−IiGP及びAd−IiCLIPGPを形質導入したBMDCに応じてT細胞増殖を抑制し、Ad−IiCLIPGPのMHC II抗原提示の増大が示される。
【0324】
図10:in vivo経時研究におけるAd−GP、Ad−IiGP、Ad−GPLamp−1及びAd−IiΔ17GPの比較。
【0325】
図11:Ad−GP、Ad−IiGP、Ad−IiΔ17GP、Ad−IiKEYGP、Ad−IiCLIPGP、Ad−Ii1−117GP及びAd−Ii1−199GPのin vivo応答の比較。
【0326】
図12:Ad−GPはその後のAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能である。C57BL/6マウスの3つの群にAd−GPをワクチン投与した。60日後、これらのマウスをそのままにしておくか、Ad−GPをワクチン投与するか、又はAd−IiGPをワクチン投与した。マウスの第4の群は、Ad−GPでのワクチン投与を受けたマウスを含んでいた。最初のワクチン投与の120日後、マウスを屠殺し、指示エピトープを認識する抗原特異的細胞を、前記ペプチドでのex vivo再刺激及びインターフェロン−γ産生についての細胞内染色によって定量化した。
【0327】
図13:Ad−IiGPはその後のAd−GP又はAd−IiGPブーストをプライミングすることが可能ではない。C57BL/6マウスの3つの群にAd−IiGPをワクチン投与した。60日後、これらのマウスをそのままにしておくか、Ad−GPをワクチン投与するか、又はAd−IiGPをワクチン投与した。マウスの第4の群は、Ad−IiGPでのワクチン投与を受けたマウスを含んでいた。最初のワクチン投与の120日後、マウスを屠殺し、指示エピトープを認識する抗原特異的細胞を、前記ペプチドでのex vivo再刺激及びインターフェロン−γ産生についての細胞内染色によって定量化した。このことから、Ad−IiGPプライミングはAd−IiGPによりブーストすることができないが、DNA−IiGPプライミングはAd−IiGPによりブーストすることができることが示される(図1を参照されたい)。
【0328】
図14:Ad−GPワクチン及びAdIi−Gpワクチンの用量応答。マウスの群に指示菌株中の指示ワクチンをワクチン投与した。ワクチン投与の14日後、マウスを屠殺し、脾細胞を指示エピトープにより刺激した。CD8+脾細胞の総数を細胞内染色及びFACS解析によって求めた。
【0329】
図15:残基50〜215を含むインバリアント鎖の変異体(Ii50〜215)と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合したマンノース受容体。アデノウイルス線維タンパク質(Ad線維)はいずれの血清型のアデノウイルスからも生じ得る。マンノース受容体は、マンノース受容体に由来する1つ又は複数のドメインであってもよい。IiはIiの変異体であっても、又は完全長Iiであってもよい。Ag=抗原。
【実施例】
【0330】
本発明をここで以下の実施例を参照してさらに説明する。以下が単に例示を目的とし、本発明の範囲に含まれるように詳細な変更を行うことができることが理解されよう。
【0331】
実施例1:Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンによるプライミングは、最適化したウイルスベクターによるその後のブーストの際にウイルス特異的CD8+ T細胞の生成を有意に増強する。
ネイキッドDNAワクチン(すなわち、核酸構築物)によるプライミングは、Ad5(アデノウイルス血清型5)ベクターによるその後の免疫化によって生じる免疫応答を増強することが示される。DNA−IiGP(インバリアント鎖(Ii)に融合したLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)糖タンパク質(GP)を発現するDNA構築物)によるプライミングは、アデノウイルス血清型5ベクター(Ad5−IiGP)中で送達された同じ遺伝子構築物によって誘導されるCD8+ T細胞応答を有意に増強することが本明細書において実証されており、Ii鎖ベースのDNA構築物を将来の異種免疫化(「プライム−ブースト」)プロトコルに組み入れることの強力な論拠をもたらす。
【0332】
本発明者らの研究から、Ii鎖連結の免疫増強効果がAd5ベクターに限定されず、同様にDNAプラットフォームに関連することが示される。さらに、Ii鎖が2つ以上のエピトープの提示を増強するという事実を踏まえると、これによりIi鎖ベースのDNAワクチンが様々な異種プライム−ブースト法に対する非常に有望な候補として位置付けられる。
【0333】
結果及び考察
誘導されたT細胞記憶を改善する一方法は、異種プライム−ブースト法、例えばネイキッドDNAプライミングに続いてベクターのブーストを行うことによるものである。このようにして実験室において適切なベクター、p31 Ii鎖と融合したLCMV GP(Ad5−IiGP)を発現する複製欠損性アデノウイルスを得て、この可能性を実験的に試験した。最初に、標準的なDNAワクチン投与である遺伝子銃によるワクチン投与を、DNA−IiGP又はDNA−GPで別々に3週間に2回行った。2回目のDNAワクチン投与の3週間後、両方の群のマウス及び適合対照を、2×107IFUのAd5−IiGPを右後足蹠に接種することによって免疫化し、4週間後に脾臓中のウイルス特異的CD8+ T細胞の数を、IFN−γについてのICCS及びフローサイトメトリーを用いて計数した。融合DNA構築物でプライミングしたマウスは、プライミングしていないマウスよりも有意に多いGP33−41及びGP276−286特異的IFN−γ+CD8+ T細胞を含有しており、GP92−101特異的細胞についても同様の傾向が確認されたが、この場合にはその差は統計的に有意ではなかった。対照的に、Iiの非存在下でGPをコードするネイキッドDNAでのプライミングは、Ad5−IiGPでのその後の免疫化によって誘導されたGP特異的記憶CD8+ T細胞のレベルに対しわずかな影響しか与えなかった(図1)。Iiのみを含み、GPを含まないベクターでのDNAプライミングは、その後アデノウイルスベクターを接種したマウスにおいてGP特異的CD8+ T細胞のレベルに対する影響を有しなかったため(データは示さない)、Iiを含むことの観察された影響は、ワクチン投与したマウスの免疫反応性の非特異的な増強を反映していないことに留意されたい。
【0334】
本発明者らは、改善したDNAベクターを異種プライム−ブースト法の一部として使用することで、既に最適化されたウイルスベクターによって誘導される応答が有意に増強されることを示した(Holst et al., 2008)。このことから、非常に免疫原性の高いベクターベースの免疫化であっても、Ii鎖ベースのネイキッドDNAワクチンでの宿主の初回プライミングによってさらに改善することができることが強く示唆される。要するに、抗原へのIi鎖融合は広いCD8+ T細胞応答に対するプライミングをもたらすため、Ii鎖ベースのDNAワクチンは、異種プライム−ブースト法の一部としての急速に突然変異するウイルスに対する予防戦略に関する明らかな利点を示すはずである。
【0335】
材料及び方法
マウス。C57BL/6(B6)野生型マウスは、Taconic M&B(Ry,Denmark)から入手した。パーフォリン欠損B6マウスは、元々The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から入手した種畜ペア(breeder pairs)からその場で繁殖させた。全ての実験において7週齢〜10週齢のマウスを使用し、外部から入手した動物は常に、使用前に少なくとも1週間その場の環境に順応させた。全ての動物は、センチネルリンパ節(sentinels)のスクリーニングによって確認されるように、特定病原体を含まない条件下で収容した。全ての動物実験は国のガイドラインに従って行った。
【0336】
DNAワクチン構築及び免疫化の手順。DNAワクチンは、マウスインバリアント鎖に続いてLCMVのGP、又はLCMV GP単独のいずれかを含有する真核生物発現ベクターpACCMV.pLpAを用いて作製した。構築物は最近記載されたように(Holst et al., 2008)生成した。大腸菌株XL1−blue(Stratagene,USA)を、構築物を用い、エレクトロポレーションによって形質転換した。サイクルシークエンス法、Big Dye Terminator及びABI310遺伝子解析装置(ABIprism,USA)を用いたDNAシークエンシングによって、陽性クローンを同定した。プライマーはTAG(Copenhagen,Denmark)から入手した。大規模のDNA調製物はQiagen Maxi Prep(Qiagen,USA)を用いて作製した。
【0337】
遺伝子銃による免疫化。DNAを1.6nmの金粒子に、金1mg当たりDNA2μgという濃度でコーティングし、DNA/金複合体を、1回の注射につき0.5mgの金(1回の注射につき1μgのDNA)がマウスに送達されるようにプラスチックチューブにコーティングした。これらの手順は製造業者(Biorad,CA,USA)の取扱説明書に従って行った(Bartholdy et al., 2003)。粒子駆動力として圧縮ヘリウム(400psi)を利用する手持ち式遺伝子銃装置を用いて、マウスを腹部皮膚で免疫化した。他に言及のない限り、マウスは3週間〜4週間の間隔で2回免疫化した後、さらなる抗原投与/検査の前に3週間保養した。
【0338】
ウイルス。Armstrong株クローン13のLCMVを大半の実験において使用した。他に指定のない限り、感染させるマウスには0.3mlのi.v.注射で105pfu、又は0.03mlの右後足蹠(f.p.)への注射で20pfuの用量のクローン13を与えた。i.c.注射については、マウスに20pfuの神経向性Armstrongクローン53bを0.03mlの容量で与えた。インバリアント鎖に連結したGPをコードする複製欠損性アデノウイルス(Ad5−IiGP)を作製し、最近記載されたように(Holst et al., 2008)滴定した。
【0339】
ウイルス滴定。器官のウイルス力価は、以前に記載されたような(Battegay et al., 1991)免疫フォーカスアッセイによって測定した。
【0340】
CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞のin vivo枯渇。抗CD4 mAb(クローンGK1.5)及び抗CD8 mAb(クローン53.6.72)を使用した。細胞を枯渇させるマウスには、感染に対して−1日目及び0日目に、200□gの用量をPBS0.3mlの容量で腹腔内に与えた。偽処置については、精製したラットIgG(Jackson ImmunoResearch)を代わりに使用した。細胞枯渇の効率はフローサイトメトリーによって確認した。
【0341】
生存研究。急性LCMV誘導性髄膜炎の臨床的重症度を評価するために死亡率を用いた。マウスを14日間、又は100%の死亡率に到達するまで1日に2回確認した。
【0342】
LCMV特異的足蹠腫脹反応。上記のようにマウスの右後足蹠に局所的に感染させ、局所性腫脹反応を感染後(p.i)14日目まで追跡した。足蹠の厚さをダイヤルカリパス(ミツトヨ7309、株式会社ミツトヨ、東京、日本)を用いて測定し、ウイルス特異的腫脹を感染させた右足と未感染の左足との厚さの差として求めた(Christensen et al., 1994)。
【0343】
細胞調製物。マウスの脾臓を無菌的に取り出し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に移した。臓器を細目の滅菌スチールメッシュに押し通すことによって単一細胞懸濁液を得た。細胞をHBSSで2回洗浄し、細胞濃度を2−メルカプトエタノール、L−グルタミン及びペニシリン−ストレプトマイシン溶液を添加した10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するRPMI 1640中で調整した。
【0344】
フローサイトメトリー用のmAb。以下のmAbは全てPharMingen(San Diego,CA)からラット抗マウス抗体として購入した:FITC結合抗CD44、Cy−Chrome結合抗CD8a、Cy−Chrome結合抗CD4及びフィコエリトリン(PE)結合抗IFN−γ。
【0345】
フローサイトメトリー解析。LCMV特異的(インターフェロン−γ産生)CD8+/CD4+ T細胞の可視化のために、1〜2×106個の脾細胞を、10単位のマウス組換えIL−2(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,UK)、3μMモネンシン(Sigma Chemicals co.,St Louis,MO)及び1μg/mlの関連ペプチドを添加した0.2mlの完全RPMI培地中に再懸濁し、37℃で5時間インキュベートした。以下のペプチドを使用した:CD8+ T細胞についてはGP33−41、GP276−86、GP92−101、GP118−125、及び対照にNP396−404;CD4+ T細胞についてはGP61−80。インキュベーション後、以前に記載されたように(Andreasen et al., 2000;Christensen et al.,2003)、細胞を表面染色し、洗浄し、透過化処理して、IFN−γ特異的mAbで染色した。アイソタイプ適合抗体を非特異的染色についての対照とした。細胞をFACS Calibur(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて解析し、少なくとも104個の生細胞を、死細胞及び残屑を除外するために低角度散乱光及び側方散乱光(low angle and side scatter)を併用してゲーティングした(gated)。データ解析はCell−Questソフトウェアを用いて行った。
【0346】
実施例2:Ii連結抗原のCD8+ T細胞活性化の増強は天然Iiには依存しない
Ii配列は、細胞質の選別ドメイン及び三量体形成ドメイン、細胞質及び膜近位(proximal membrane)のシグナル伝達ドメイン、細胞質、膜内及び細胞周辺の三量体形成ドメイン、外因性ペプチドの結合を容易にするMHC分子の開放(unlocking)に関与する「key」モチーフ、CLIP領域におけるMHCクラスI及びIIの結合モチーフ、細胞周辺のグリコシル化部位、並びにCD44及びマクロファージ遊走阻止因子(MIF)との相互作用の構造的に未確認の領域を含む、抗原処理において機能する複数の領域を含有する(図2)。
【0347】
Ii連結によって、MHCクラスI及びクラスIIでの両方の抗原提示が増大する。骨髄由来樹状細胞(BMDC)のAd−IiOVA(OVAはオボアルブミンである)又はAd−OVA形質導入を用いることによって、本発明者らは、H−2Kb上に提示されるSIINFEKL OVAエピトープに指向性を有する抗体での直接染色によって測定されるように、Ii連結が実際にMHCクラスI拘束性の抗原提示の劇的な増大を誘導することを見出した(図3)。Ii連結配列からのMHCクラスI拘束性の抗原発現の増大は、MHCクラスII、CD4+ T細胞及び任意の他の細胞型とは独立してAPCに直接的に作用し、樹状細胞培養物において直接測定することができる。
【0348】
シスでのIi
Iiがシスのみで作用するか、又はトランスでも作用するか否かを確認するために、アデノウイルスベクターへのさらなるリーディングフレームを、β−グロビンポリアデニル化シグナルを有するホスホグリセリン酸キナーゼ(pGK)プロモーターを合成し、これをアデノウイルス骨格のE3領域にクローニングすることによって確立した。このベクターはその後、Ad−GPベクター(ヒトCMVプロモーター及びSV40ポリAの支配下でE1リーディングフレームからLCMV GPを発現する)を作製するために使用されるシャトルベクターとの組換えに使用することができた。この新たなベクターは、アデノウイルスのE1領域からLCMV GPを、及びE3領域からIiを発現する(Ad−Ii+GP)。このプロモーターを、COS7細胞へのトランスフェクションによって緑色蛍光細胞の誘導について検証したが、Ad−IiGP及びAd−Ii+GPを感染させたCOS7細胞におけるIi mRNA発現の測定によって、IiがpGKプロモーターから少なくともCMVプロモーターからの発現と同じくらい効率的に発現されることが確認される(図4A)。Ad−GP、Ad−IiGP及びAd−Ii+GPを感染させたBMDCで刺激したTCR318細胞を比較することによって、Iiが何らかの効果を有するには抗原と連結する必要があることが明確に示される(図4B)。刺激に使用されるBMDC培養物は既にIiを発現するため、トランスでのIi発現が効力を示したのであれば、驚くべきことであった。
【0349】
N末端の変化:
N末端から開始して、1)ロイシンベースのエンドソーム輸送選別シグナルを除去する、最初の17個のアミノ酸の欠失体(Ad−Δ17IiGP)、2)ケモカイン受容体CCR6 TM6に由来する対応するセグメントでの、膜貫通セグメントの前半部の置き換え体(Ad−IiLTMGP)、3)対応するCCR6 TM6セグメントでの、膜貫通セグメントの後半部の置き換え体(Ad−IiUTMGP)、及び最後に4)最初の50個のアミノ酸の完全な欠失体(Ad−Δ50IiGP)を作製した。後者の欠失によって、細胞質ゾル、TM及び膜近位の領域全体が除去された。これらの突然変異のいずれも、残りのIi配列のCD8+ T細胞の刺激を増強する能力に対するいかなる影響も有していなかった(図5)。
【0350】
C末端の変化:
C末端から始めて、最後の14個のaaの欠失(Ad−Ii1−201GP、これによってC末端グリコシル化シグナルが除去される)、最後の97個のaaの欠失(Ad−Ii1−118GP)、及び最後の110個のaaの欠失(Ad−Ii1−105GP)を作製した。1−201によっては、残りのIi配列のCD8+ T細胞の刺激を増強する能力に対するいかなる影響も観察されなかったが、1−105突然変異及び1−118突然変異に、一貫性がないわずかな低下傾向を見ることができた(図6)。
【0351】
突然変異:
報告されたCLIP領域のMHCクラスI結合部位(Ad−IiCLIPGP:MからAへの二重点突然変異−M91A M99A−MHCクラスI分子とのIi相互作用を無効にするように設計された)、及びKEYモチーフ(Ad−IiKEYGP:Ii−Keyセグメントを破壊するLRMKからAAAAへの四重点突然変異)において点突然変異を作製することも試みた。これらの突然変異のいずれも、Ii媒介性のCD8+ T細胞刺激の増強に重要でなかった。N末端及びC末端の切断を組み合わせた場合に唯一興味深いデータが得られた。したがって、51−118変異体(Ad−Ii51−118GP)を試験した場合にCD8+ T細胞刺激能の顕著な低下が観察されたが、この突然変異体は依然としてAd−GPを上回っていた(図7)。
【0352】
実施例3
本発明の一実施形態では、Iiと結合したグリコシル結合タンパク質と組み合わせた非ヒトグリコシルトランスフェラーゼが提供される。Iiは完全長であっても、又は変異体であってもよく、この変異体は残基番号50〜215を含むIiの切断型であり得る。この変異体は、膜貫通ドメインの欠損にもかかわらず完全な活性を有する。任意で、アジュバント又は1つ又は複数の転座ドメインがさらに提供され得る。図15には、マンノース受容体(カルシウム依存性レクチンがワクチンにおいて標的とされることが多い)を、残基50〜215を含むインバリアント鎖(Ii50−215)の変異体と結合し、アデノウイルス線維タンパク質とさらに結合した実施形態の概略図を示す。アデノウイルス線維タンパク質(Ad線維)は、アデノウイルスのいかなる血清型から由来していてもよい。マンノース受容体は、マンノース受容体に由来する1つ又は複数のドメインであってもよい。
【0353】
具体的な一例では、1つのリーディングフレームにおいてEgghead(ショウジョウバエに由来するタンパク質)を発現し、別のリーディングフレームにおいて、Ii50−215変異体等の膜貫通領域を含まない完全な活性を有するIiの変異体と結合し、さらにアデノウイルス線維タンパク質と結合したマンノース受容体(又はマンノース受容体に由来するドメイン)を発現するアデノウイルスを提供する。
【0354】
Egghead等のグリコシルトランスフェラーゼ及びマンノース受容体等のグリコシル結合タンパク質は、同じアデノウイルスベクターにおいて異なるリーディングフレームから発現させてもよく、又はEgghead等のグリコシルトランスフェラーゼ及びマンノース受容体等のグリコシル結合タンパク質は、同時に投与される異なるアデノウイルスベクターから発現させてもよい。
【0355】
Eggheadは、全てのグリコシル化ER(小胞体)タンパク質上のマンノースと結合する。したがって、分泌タンパク質のマンノシル化は、(図15に示されるように)マンノシル化タンパク質とマンノース受容体−Ii−Ad線維複合体との結合を引き起こす。複合体のアデノウイルス線維は、前記複合体と連結した分泌タンパク質を他の細胞に取り込ませ、これらを活性化して免疫刺激性とし、複合体の細胞質ゾル(そこでIiはその効果を発揮し得る)への接近をもたらす。
【0356】
この技術は、例えば癌に対して直接投与することができるワクチンを構築するために使用することができる。
参考文献一覧
【0357】
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WO2007/062656
US2008/0095798
WO2003/089471
US5,554,372
US5,876,735
5,102,985
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片
をコードする配列を含む核酸構築物であって、
前記核酸構築物が癌ワクチンのプライミングのために使用され、及び/又は前記インバリアント鎖若しくはその変異体が最初の17個のアミノ酸を含まず、及び/又は前記インバリアント鎖若しくはその変異体がKEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まず、及び/又は前記インバリアント鎖がCLIP領域の変異体を含む、核酸構築物。
【請求項2】
免疫応答を刺激して、それによりその後投与されるワクチンの効力を増大させるためのプライマーとして使用するための、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体が生物特異的なものである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体がヒト起源のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
少なくとも1つのインバリアント鎖の少なくとも1つの領域、ペプチド又はドメインが、該少なくとも1つのインバリアント鎖の領域、ペプチド又はドメインに付加されるか、これらから除去されるか、又はこれらを置換する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つが他のアミノ酸残基で置換される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つがアラニンで置換される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つが欠失する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項9】
少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の91位及び99位のメチオニンアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項10】
少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の91位及び99位のメチオニンアミノ酸残基がアラニンで置換される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項11】
少なくとも1つのインバリアント鎖の最初の17個のアミノ酸が欠失する(Δ17Ii)、請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
インバリアント鎖が、別のタンパク質由来の三量体形成ドメインと結合したアミノ酸残基番号50〜118を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項13】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその断片が、CD4+ T細胞依存的に及び/又は非依存的に、MHC−I及び/又はMHC−II依存性免疫応答を誘発する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、病原性生物、癌特異的ポリペプチド、及び異常な生理学的応答と関連するタンパク質又はペプチドの群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項15】
病原性生物由来の該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、ウイルス、微生物及び寄生生物を含む病原体の群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、哺乳類の生物、好ましくはヒトの病原体由来のものである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、癌特異的ポリペプチド由来のものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1及びRho−Cの群から選択される癌特異的ポリペプチド由来のものである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、請求項14〜18に記載の抗原のいずれかと少なくとも85%の同一性を有する抗原ペプチド又は抗原タンパク質である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項20】
インバリアント鎖又はその変異体と、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片との間の作動性リンカーが、直接的連結、又はスペーサー領域が介在する連結の群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
作動性リンカーがスペーサー領域である、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
スペーサー領域が、クラスII MHC分子に対する少なくとも1つのヘルパーエピトープをコードする、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項23】
スペーサー領域が、少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位をコードする、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項24】
少なくとも1つのインバリアント鎖が、少なくとも2つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した、請求項1〜23のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項25】
少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片をコードする配列が、構築物の発現を可能とするプロモーターの後方に存在する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項26】
プロモーターが、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター、組織特異的プロモーター及び細胞型特異的プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター並びにRSVプロモーターの群から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項27】
抗原提示及び/又は細胞間拡散に関連する遺伝子を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項28】
アジュバントをコードする遺伝子を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む送達ビヒクル。
【請求項30】
ビヒクルが、RNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、及びウイルス由来のDNAビヒクル又はRNAビヒクルの群から選択される、請求項29に記載の送達ビヒクル。
【請求項31】
前記送達ビヒクルが、ペグ化したベクター又はビヒクルである、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項32】
前記脂質ベースのビヒクルがリポソームである、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項33】
前記ポリマーベースのビヒクルが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン及びポリプロピルアミンデンドリマー、ポリアリルアミン、カチオン性デキストラン、キトサン、カチオン性タンパク質(ポリリジン、プロタミン及びヒストン)、カチオン性ペプチド、ポリペプチド、リポ多糖並びに多糖からなる群から選択されるカチオン性ポリマーDNA担体から形成される、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項34】
前記送達ビヒクルが生分解性ポリマーマイクロスフェアである、請求項33に記載の送達ビヒクル。
【請求項35】
前記送達ビヒクルが、コロイド性金粒子上への核酸構築物のコーティングを含む、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項36】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の送達ビヒクルを投与する方法であって、前記投与が、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達からなる群から選択される、方法。
【請求項37】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の核酸構築物を投与する方法であって、前記投与が、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達からなる群から選択される、方法。
【請求項38】
請求項1〜28のいずれか一項に規定される核酸構築物を含む細胞。
【請求項39】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物のいずれかにより規定される、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドをコードする配列を含む、キメラタンパク質。
【請求項40】
請求項39に規定されるキメラタンパク質を認識することができる抗体。
【請求項41】
抗体が結合するタンパク質を検出するアッセイにおける、請求項40に記載の抗体の使用。
【請求項42】
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片
をコードする核酸配列を含む組成物。
【請求項43】
薬物として使用するための、
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つのポリペプチド
をコードする核酸配列を含む組成物。
【請求項44】
請求項1〜28のいずれか一項に規定される核酸構築物を含む、請求項42又は43に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が少なくとも2つのベクターを含む、請求項42〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物のいずれかにより規定される少なくとも1つの請求項39に記載のキメラタンパク質を含む組成物。
【請求項47】
組成物がアジュバントを含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
a.請求項1〜28のいずれか一項に記載のヌクレオチド構築物を含む組成物
b.該組成物を投与する医療用機器又は他の手段
c.該部品キットの使用方法に関する取扱説明書
を含む部品キット。
【請求項49】
前記キットが第2の活性成分を含む、請求項48に記載の部品キット。
【請求項50】
前記第2の活性成分が好適なワクチンである、請求項49に記載の部品キット。
【請求項51】
ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物、又は請求項42〜47のいずれか一項に記載の組成物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物又は組成物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、及び
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程
を含む、方法。
【請求項52】
免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、前記免疫応答をブーストするために使用されるワクチンとが同一である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
同一の部分が、抗原ペプチド又は抗原タンパク質の一部である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
同一の部分が、遍在性のヘルパーT細胞エピトープである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫応答がMHC−I依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記免疫応答がMHC−II依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫応答が、MHC−I依存性及びMHC−II依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫応答がT細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫応答がCD4+ T細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫応答がCD4+ T細胞非依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記免疫応答がCD8+ T細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
a.少なくとも1つの請求項42〜47のいずれか一項に記載の組成物を用意する工程、
b.動物の治療又は予防のために前記少なくとも1つの組成物を被験体に少なくとも1回投与する工程
を含む、請求項51〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
組成物を、或る感染しやすい場所の可能性が最も高い領域に投与する、請求項51〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
被験体がヒトである、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
被験体が哺乳動物である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
被験体がフェレットである、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
被験体が魚である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
被験体が鳥である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片
をコードする配列を含む核酸構築物であって、
前記核酸構築物が癌ワクチンのプライミングのために使用され、及び/又は前記インバリアント鎖若しくはその変異体が最初の17個のアミノ酸を含まず、及び/又は前記インバリアント鎖若しくはその変異体がKEY領域のLRMKアミノ酸残基を含まず、及び/又は前記インバリアント鎖がCLIP領域の変異体を含む、核酸構築物。
【請求項2】
免疫応答を刺激して、それによりその後投与されるワクチンの効力を増大させるためのプライマーとして使用するための、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体が生物特異的なものである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体がヒト起源のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
少なくとも1つのインバリアント鎖の少なくとも1つの領域、ペプチド又はドメインが、該少なくとも1つのインバリアント鎖の領域、ペプチド又はドメインに付加されるか、これらから除去されるか、又はこれらを置換する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つが他のアミノ酸残基で置換される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つがアラニンで置換される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
少なくとも1つのインバリアント鎖のKEY領域のLRMKアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ又は4つが欠失する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項9】
少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の91位及び99位のメチオニンアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項10】
少なくとも1つのインバリアント鎖のCLIP領域の91位及び99位のメチオニンアミノ酸残基がアラニンで置換される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項11】
少なくとも1つのインバリアント鎖の最初の17個のアミノ酸が欠失する(Δ17Ii)、請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
インバリアント鎖が、別のタンパク質由来の三量体形成ドメインと結合したアミノ酸残基番号50〜118を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項13】
少なくとも1つのインバリアント鎖又はその断片が、CD4+ T細胞依存的に及び/又は非依存的に、MHC−I及び/又はMHC−II依存性免疫応答を誘発する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、病原性生物、癌特異的ポリペプチド、及び異常な生理学的応答と関連するタンパク質又はペプチドの群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項15】
病原性生物由来の該少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、ウイルス、微生物及び寄生生物を含む病原体の群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、哺乳類の生物、好ましくはヒトの病原体由来のものである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、癌特異的ポリペプチド由来のものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、HPV由来のウイルス癌遺伝子E5、E6、E7及びL1;サバイビン、Bcl−XL、MCL−1及びRho−Cの群から選択される癌特異的ポリペプチド由来のものである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片が、請求項14〜18に記載の抗原のいずれかと少なくとも85%の同一性を有する抗原ペプチド又は抗原タンパク質である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項20】
インバリアント鎖又はその変異体と、抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片との間の作動性リンカーが、直接的連結、又はスペーサー領域が介在する連結の群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
作動性リンカーがスペーサー領域である、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
スペーサー領域が、クラスII MHC分子に対する少なくとも1つのヘルパーエピトープをコードする、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項23】
スペーサー領域が、少なくとも1つのプロテアーゼ切断部位をコードする、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項24】
少なくとも1つのインバリアント鎖が、少なくとも2つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片と作動可能に連結した、請求項1〜23のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項25】
少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片をコードする配列が、構築物の発現を可能とするプロモーターの後方に存在する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項26】
プロモーターが、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター、組織特異的プロモーター及び細胞型特異的プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター並びにRSVプロモーターの群から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項27】
抗原提示及び/又は細胞間拡散に関連する遺伝子を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項28】
アジュバントをコードする遺伝子を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む送達ビヒクル。
【請求項30】
ビヒクルが、RNAベースのビヒクル、DNAベースのビヒクル/ベクター、脂質ベースのビヒクル、ポリマーベースのビヒクル、及びウイルス由来のDNAビヒクル又はRNAビヒクルの群から選択される、請求項29に記載の送達ビヒクル。
【請求項31】
前記送達ビヒクルが、ペグ化したベクター又はビヒクルである、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項32】
前記脂質ベースのビヒクルがリポソームである、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項33】
前記ポリマーベースのビヒクルが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン及びポリプロピルアミンデンドリマー、ポリアリルアミン、カチオン性デキストラン、キトサン、カチオン性タンパク質(ポリリジン、プロタミン及びヒストン)、カチオン性ペプチド、ポリペプチド、リポ多糖並びに多糖からなる群から選択されるカチオン性ポリマーDNA担体から形成される、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項34】
前記送達ビヒクルが生分解性ポリマーマイクロスフェアである、請求項33に記載の送達ビヒクル。
【請求項35】
前記送達ビヒクルが、コロイド性金粒子上への核酸構築物のコーティングを含む、請求項30に記載の送達ビヒクル。
【請求項36】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の送達ビヒクルを投与する方法であって、前記投与が、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達からなる群から選択される、方法。
【請求項37】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の核酸構築物を投与する方法であって、前記投与が、針注射、遺伝子銃、ジェット注射、エレクトロポレーション、超音波及び流体力学的送達からなる群から選択される、方法。
【請求項38】
請求項1〜28のいずれか一項に規定される核酸構築物を含む細胞。
【請求項39】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物のいずれかにより規定される、少なくとも1つの作動可能に連結したインバリアント鎖又はその変異体、及び少なくとも1つの抗原タンパク質又は抗原ペプチドをコードする配列を含む、キメラタンパク質。
【請求項40】
請求項39に規定されるキメラタンパク質を認識することができる抗体。
【請求項41】
抗体が結合するタンパク質を検出するアッセイにおける、請求項40に記載の抗体の使用。
【請求項42】
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つの抗原タンパク質若しくは抗原ペプチド、又は前記タンパク質若しくは前記ペプチドの抗原断片
をコードする核酸配列を含む組成物。
【請求項43】
薬物として使用するための、
a.bと作動可能に連結した少なくとも1つのインバリアント鎖又はその変異体
b.少なくとも1つのポリペプチド
をコードする核酸配列を含む組成物。
【請求項44】
請求項1〜28のいずれか一項に規定される核酸構築物を含む、請求項42又は43に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が少なくとも2つのベクターを含む、請求項42〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物のいずれかにより規定される少なくとも1つの請求項39に記載のキメラタンパク質を含む組成物。
【請求項47】
組成物がアジュバントを含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
a.請求項1〜28のいずれか一項に記載のヌクレオチド構築物を含む組成物
b.該組成物を投与する医療用機器又は他の手段
c.該部品キットの使用方法に関する取扱説明書
を含む部品キット。
【請求項49】
前記キットが第2の活性成分を含む、請求項48に記載の部品キット。
【請求項50】
前記第2の活性成分が好適なワクチンである、請求項49に記載の部品キット。
【請求項51】
ワクチンの効力を増大させる方法であって、
a.請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸構築物、又は請求項42〜47のいずれか一項に記載の組成物を用意する工程、
b.工程a)の核酸構築物又は組成物を投与することにより被験体の免疫系をプライミングする工程であって、それにより前記被験体における免疫応答を刺激する、プライミングする工程、及び
c.好適なワクチンを投与することにより工程b)の免疫応答をブーストする工程
を含む、方法。
【請求項52】
免疫応答をプライミングするために使用される核酸構築物の少なくとも一部と、前記免疫応答をブーストするために使用されるワクチンとが同一である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
同一の部分が、抗原ペプチド又は抗原タンパク質の一部である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
同一の部分が、遍在性のヘルパーT細胞エピトープである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫応答がMHC−I依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記免疫応答がMHC−II依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫応答が、MHC−I依存性及びMHC−II依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫応答がT細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫応答がCD4+ T細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫応答がCD4+ T細胞非依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記免疫応答がCD8+ T細胞依存性である、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
a.少なくとも1つの請求項42〜47のいずれか一項に記載の組成物を用意する工程、
b.動物の治療又は予防のために前記少なくとも1つの組成物を被験体に少なくとも1回投与する工程
を含む、請求項51〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
組成物を、或る感染しやすい場所の可能性が最も高い領域に投与する、請求項51〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
被験体がヒトである、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
被験体が哺乳動物である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
被験体がフェレットである、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
被験体が魚である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
被験体が鳥である、請求項51〜63のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−509071(P2012−509071A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536741(P2011−536741)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050310
【国際公開番号】WO2010/057501
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511123991)ケベンハウン ユニバーシテッド(ユニバーシティー オフ コペンハーゲン) (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050310
【国際公開番号】WO2010/057501
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511123991)ケベンハウン ユニバーシテッド(ユニバーシティー オフ コペンハーゲン) (1)
【Fターム(参考)】
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