説明

免疫応答を刺激するための作製物および方法

本発明は、(i)支持体および(ii)該支持体に連結されたBCR結合性抗原を含む作製物を提供する。該作製物は、BCR媒介内在化が可能である。該作製物は、免疫応答の誘導および増強に有用であり、方法および該作製物の使用が提供される。本発明はまた、樹状細胞とB細胞の両者を含む細胞集団中でB細胞に対して樹状細胞に優先的に薬剤を送達する方法も提供し、該方法は、(i)該薬剤を支持体に連結させるステップおよび(ii)B細胞および樹状細胞を含む細胞集団を該支持体に連結した該薬剤と接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BCR媒介特異的免疫応答を誘導するための作製物および方法に関する。特に本発明は、BCR結合性抗原および免疫刺激剤を含む作製物、ならびに前記作製物に関係する方法および使用を提供する。本発明は、樹状細胞に薬剤を送達するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は侵入する抗原を特異的に認識し排除するように設計されているので、それらは、例えば感染または癌と闘うために、免疫系によって使用される有効な兵器である。抗体産生を誘発するために、B細胞は、B細胞受容体(BCR)を介した特異的抗原認識によって開始されるプロセスにおいて活性化されなければならない(1)。特異的抗原の関与は2つのBCR媒介プロセス、すなわち、第1に、細胞周期への突入を制御する細胞内シグナルの伝達(2,3)、および第2に、特異的T細胞とMHCの結合におけるそのプロセシングおよび提示前の抗原内在化を開始させる(4)。T細胞刺激B細胞は濾胞外形質細胞(PC)に分化するか、または胚中心B細胞になるいずれかの可能性がある。短寿命の濾胞外PCは、その一部がクラスの変更を経ている可能性がある最初の主として低アフィニティーの抗体の分泌を媒介する(5)。あるいは胚中心B細胞は体細胞超変異およびアフィニティー成熟を経て、長寿命の形質細胞または記憶B細胞のいずれかに分化する高アフィニティーB細胞クローンの選択をもたらす(6)。
【0003】
免疫応答の発生中、BCR媒介の抗原の取り込みは、その濃縮、および新たに合成されたMHCクラスII分子を含有する分化した後期エンドソームへの送達を可能にする(7)。
【0004】
長年、ペプチドはT細胞応答を開始させる唯一の抗原決定基であると仮定されていた。しかし、T細胞は、CD1分子によって提示される抗原脂質および糖脂質を認識しそれらに応答することもできることが現在明らかである(8)。ヒトCD1遺伝子ファミリーは、第1番染色体上の小クラスターに位置する5つの非多型遺伝子(CD1A、B、C、D、およびE)で構成される(9)。対照的に、マウスはCD1d分子のみを発現する。CD1遺伝子はMHCクラスI遺伝子に類似のイントロン-エクソン構造を有し、β2マイクログロブリン(β2)と非共有結合したMHCクラスI分子と類似したα1、α2、およびα3ドメインからなるタイプI内在性膜タンパク質をコードする。MHCクラスII分子と類似した様式で、CD1タンパク質は、細胞内区画内に充填またはプロセシングされた後に、APCの表面上の抗原脂質の提示を媒介する(10)。CD1dは、樹状細胞、胸腺細胞、B細胞、T細胞、および単球を含めた様々な造血細胞において発現される。
【0005】
抗原の免疫原性は免疫刺激剤の使用によって高めることができる。例えば、海綿由来の糖脂質であるα-ガラクトシルセラミド(αGalCer)は、ネズミとヒトの両方のiNKT細胞を強く刺激する立証済みの能力を有する、十分特徴付けられたiNKT(インバリアントナチュラルキラーT)細胞抗原である(14,15)。さらにαGalCerは、抗原と一緒に投与したとき(US2003/0,157,135)または抗原に直接結合させたとき(WO2007/051004)、免疫刺激剤として有用であることも示唆されている。
【0006】
TLR(Toll様受容体)アゴニストも免疫刺激剤として使用されている。TLRファミリーは現在13メンバーからなるが、ヒトではTLR1〜TLR10のみが同定されている。TLRはToll/IL-IR(TIR)ドメイン含有スーパーファミリーのメンバーであり、全ファミリーメンバーの細胞質ドメイン間には相当な相同性がある(Ulevitch、Nature reviews、July 2004、Vol4、512〜520)。TLRは、それらがその特定リガンドを認識する細胞中の部位に応じて、2つのカテゴリーに分けることができる。TLR1、2、4、5および6はそれらが細菌産物の認識を媒介する細胞の表面上で発現される。他方で、TLR3、7、8および9などのTLRのサブセットは、それらが核酸に応答することができる細胞内区画に局在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2003/0,157,135
【特許文献2】WO2007/051004
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ulevitch、Nature reviews、July 2004、Vol4、512〜520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、有効な特異的BCR媒介免疫応答を誘導するための組成物および方法に関する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特異的抗体の産生には、B細胞の高度に制御された活性化が必要とされる。このプロセスはB細胞受容体(BCR)による抗原の特異的認識によって開始され、初期の細胞内シグナル伝達をもたらし、次に特異的T細胞補助の動員をもたらす。本発明者らは、抗原に対するBCR媒介抗原特異的免疫応答を誘導するための新規な作製物および方法を考案しており、これらの作製物および方法は、そこに抗原、すなわち粒子状抗原が連結した支持体の使用を一般に使用する。免疫刺激剤を支持体に連結させることも可能であり、または粒子状抗原と共に可溶性形態で提供することが可能である。
【0011】
本発明は、BCRと粒子状抗原の特異的結合およびその後の内在化は、B細胞上のBCRによって見られるように、表面上に存在する抗原の全体的アビディティーに依存するという、本発明者らの知見に基づく。この観察は、粒子状抗原の内在化を誘発するのに必要な最小程度のBCRクラスタリングに関する要件として解釈される可能性が最も高い。
【0012】
支持体の使用は、抗原密度、したがってアビディティーの微調節を可能にする。粒子状抗原のBCR媒介内在化は、規定したアビディティー閾値を超えているという条件で、低アフィニティー抗原にさえ応答して起こる可能性がある。次いで、粒子状抗原は、BCR関与を介してB細胞によって有効に取り込まれ、抗原特異的な(1つまたは複数の)BCR媒介免疫応答をもたらす。支持体上の密度、したがってアビディティーを制御することができることは、抗原特異的免疫応答の微調節および調整を可能にする精巧なメカニズムを表す。支持体上の抗原密度を変えることによって、免疫応答に影響を与え制御することができる。粒子状抗原、すなわち抗原がそこに連結した支持体を、免疫刺激剤と組合せてB細胞に提示する。「組合せ」とは、免疫刺激剤を支持体にさらに連結させること、または免疫刺激剤を粒子状抗原と同時に投与することのいずれかであると理解される。
【0013】
本明細書で使用する「同時」投与は、1つの組成物中で同時、または異なる組成物中で同時または連続的のいずれかでの、本明細書で記載する可溶性免疫刺激剤と粒子状抗原の投与を指す。連続投与に関しては、免疫刺激剤と粒子状抗原を、免疫刺激剤が抗原特異的免疫応答を増大するのを一層可能にする時間間隔だけ離して投与する。
【0014】
粒子状抗原が特異的B細胞によって内在化された後、免疫刺激剤は特異的免疫応答を増大させる。増大メカニズムは、例えば、iNKT細胞などのT細胞へのB細胞による抗原および/または免疫刺激剤の提示、サイトカインまたはケモカインの分泌、樹状細胞の関与、または免疫系に関与する細胞のカスケードを含み得る。いずれの場合も、このメカニズムはB細胞への刺激フィードバックをもたらし、抗原特異的免疫応答の増大が生じることになる。
【0015】
粒子状BCR結合性抗原と可溶性免疫刺激剤の組合せは、可溶性抗原と比較して増大した特異的免疫応答をもたらす。(以下でさらに詳細に論じるように)α-GalCerなどの可溶性免疫刺激剤の使用は免疫刺激剤の非特異的取り込みをもたらす可能性があるが、可溶性免疫刺激剤と共に粒子形態の抗原を使用すると、抗原の免疫原性を増大させ、増大した抗原特異的免疫応答をもたらす。
【0016】
抗原と免疫刺激剤を同じ支持体に連結させることによって、より一層増大した免疫応答が得られる。したがって、抗原と免疫刺激剤は、BCR依存的に標的B細胞によって一緒に内在化される。粒子状抗原のBCR媒介内在化によって、B細胞は、抗原、また免疫刺激剤に応じてさらに免疫刺激剤(免疫刺激性脂質抗原など)を、1つまたは複数の型のT細胞に提示することができる。活性化されたT細胞は次いで(直接的または間接的に、すなわち他の細胞を介して)B細胞を刺激して分化し得る。別の免疫刺激剤(エンドソームTLRリガンドなど)は、例えば他の免疫細胞応答を増強し得る細胞活性化またはサイトカインの分泌をもたらす細胞内カスケードを誘導することができる。さらに、免疫刺激剤はDCの成熟を高め(例えば、iNKTの発生的補助の動員によって)、結果として、MHC分子と組合せて特異的CD4+Tヘルパー細胞に対するDC表面上の抗原の提示を活性化することができると考えられる。刺激後、次いで、これらの特異的CD4+Tヘルパー細胞は、抗原特異的B細胞の発生に必要な補助を与えることができる。したがって、これらのメカニズムのそれぞれまたはこれらのメカニズムの組合せによって、抗原特異的免疫応答は、表面上での抗原と免疫刺激剤の結合によって増大する。
【0017】
WO2007/051004は抗原と免疫刺激剤を直接結合させてコンジュゲートを形成することを示唆しているが、本発明の作製物および方法は示唆していない。
【0018】
多量の粒子状抗原が特異的BCRを介してB細胞により取り込まれ、それによって免疫応答の特異性が決定されるが、樹状細胞(DC)およびマクロファージは、マイクロピノサイトーシスおよびファゴサイトーシスによって粒子状抗原を取り込むことができ、これは全体の観察される免疫応答に貢献し得る。
【0019】
前述のように、可溶性免疫刺激剤は一般的にαGalCerなどの、免疫刺激性脂質の場合のLDL受容体などの受容体によっておそらく媒介される比較的非特異的な様式で細胞によって取り込まれる。しかし、粒子形態への免疫刺激剤の結合は、B細胞に進入するために可溶性免疫刺激剤が用いるメカニズムを阻害する。本発明者らは、免疫刺激剤は、粒子形態で存在するとき、可溶性免疫刺激剤が用いる同一の非特異的なメカニズムによってB細胞に進入することができないことを実証している。
【0020】
したがって、粒子状免疫刺激剤は非特異的な形式でB細胞に進入することができないので、非特異的な免疫応答を誘導しない。標的細胞への進入を得るためには、粒子状免疫刺激剤は特異的取り込みを必要とする。これは抗原との結合によって実施され、BCR媒介内在化を可能にする。内在化のこのメカニズムは可溶性免疫刺激剤と比較してより有効であり、したがって、増大および特異的免疫応答をもたらす。
【0021】
本発明者らは、粒子状免疫刺激剤は、BCR媒介の内在化メカニズムを介した表面上の抗原の封入によって、特異的細胞に進入できることを実証している。本発明者らは、粒子状抗原のこの内在化メカニズムは、抗原特異的免疫応答の増大により実証されたように、可溶性免疫刺激剤に関して観察したメカニズムと比較してより有効な内在化メカニズムを表すことをさらに実証している。
【0022】
したがって、同じ支持体上で抗原と免疫刺激剤を提示すると、(i)BCR発現細胞への粒子状抗原の特異的送達および特異的免疫応答のBCR媒介内在化(ii)増大をもたらす。
【0023】
本発明者らは、(支持体上のBCR抗原の不在下で)薬剤(免疫刺激剤など)を支持体に連結させると、薬剤はB細胞によって取り込まれないが、依然として樹状細胞によって内在化されることをさらに示している。したがって、本明細書に記載する方法および作製物は、樹状細胞への免疫刺激剤などの薬剤の指向性送達、すなわち、B細胞と比べて樹状細胞への優先的な送達に使用することができる。
【0024】
免疫刺激性脂質に関して、本発明者らは、CD1d提示免疫刺激性粒子状脂質の特異的なBCR媒介取り込みは、in vivoでのインバリアントNKT(iNKT)依存性B細胞応答を増大する有効な手段となることを発見した。このメカニズムは広範囲の抗原アフィニティーで有効であるが、粒子状脂質免疫刺激剤のBCR媒介内在化および後のCD1d依存性提示に必要な強く制御されたアビディティー閾値の超過に依存する。その後、iNKT細胞は、B細胞の増殖および分化を刺激するのに必要な補助を与える。興味深いことに、iNKT刺激B細胞は濾胞外フォーカス内で発生し、高力価の特異的IgMおよび初期クラス変更型抗体の産生を媒介する。したがって、本発明者らは、粒子状免疫刺激性脂質に応答して、iNKT細胞はB細胞活性化の支援を動員し、抗原特異的抗体応答の増大をもたらすことを実証している。
【0025】
さらに、本発明者らは、抗原およびTLRアゴニストが連結された支持体で刺激したB細胞は、in vitroとin vivoの両方で増殖および分化をもたらし、抗原特異的抗体の増大した産生をもたらすことを発見した。同様の様式で、観察された増大した抗原特異的免疫応答は、BCR媒介内在化に必要とされるアビディティー閾値の超過に依存する。
【0026】
したがって、本発明者らは、粒子状抗原の有効かつ選択的内在化、および粒子状抗原と連結した免疫刺激剤の選択的送達および内在化を達成する手段としてBCRを使用して、増大した特異的免疫応答をもたらしている。
【0027】
したがって第1の態様では、
(i)支持体、および
(ii)支持体に連結されたBCR結合性抗原
を含む、BCR媒介内在化が可能な作製物を提供する。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物および好適な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、ワクチンとして使用するための、本明細書に記載する作製物または組成物を提供する。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、有効量の本明細書に記載する作製物または組成物を被験体に投与することにより特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップを含む、被験体において抗原特異的免疫応答を誘導する方法を提供する。この方法は予防的または治療的ワクチン接種に使用することができる。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原の免疫原性を増強する方法であって、支持体および支持体に連結された前記抗原を含む作製物を被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が支持体に連結されているかまたは前記作製物と共に投与されるかのいずれかである方法を提供する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物の製造方法であって、以下のステップ:
(a)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、および任意により
(b)支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
を含み、任意によりステップ(a)および(b)を逆順で実施する方法を提供する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を増強する方法であって、以下のステップ:
(a)抗原を支持体に連結させるステップ、および
(b)支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
任意によりステップ(a)および(b)を逆順で実施する、
ならびに
(c)支持体を被験体に投与することにより、特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップを含む方法を提供する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物または組成物の調製での使用のための支持体であって、免疫刺激剤が連結されている支持体を提供する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物または組成物を被験体に投与するステップを含む、被験体におけるBCR媒介免疫応答を強化する方法を提供する。
【0036】
さらなる態様では、本発明は、細胞による免疫刺激剤の特異的取り込みを誘導する方法であって、以下のステップ:
(i)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)前記支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
および
(iii)細胞を前記支持体と接触させることにより特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、抗原特異的免疫応答を誘導するために細胞にBCR結合性抗原および免疫刺激剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)第1の密度で、BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)免疫刺激剤を前記支持体に連結させるステップ、
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
(iii)支持体を細胞に接触させるステップ、
(iv)抗原媒介活性化について細胞を試験するステップ、
任意により異なる抗原濃度でステップ(ii)〜(iv)を繰り返すステップ
を含む方法を提供する。
【0038】
さらなる態様では、本発明は、抗原に対する抗血清の製造方法であって、本明細書に記載する作製物または組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および前記哺乳動物から免疫血清を回収するステップを含む方法を提供する。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する方法により取得可能な免疫血清を提供する。さらなる態様では、本発明は、前記血清から取得可能な抗体を提供する。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する方法により取得可能な特異的抗体産生B細胞を提供する。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する方法により取得可能な不死化B細胞産生特異的抗体(ハイブリドーマ)を提供する。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、疾患に対する受動免疫化の方法であって、本明細書に記載する抗体を含有する免疫血清を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書に記載する作製物または組成物を提供する。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、癌、感染性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患の治療方法での使用のための、本明細書に記載する作製物または組成物を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、癌、および感染性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載する作製物または組成物の使用を提供する。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、不死化細胞の作製方法であって、以下のステップ:
(i)B細胞を本明細書に記載する作製物または組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0047】
B細胞の不死化は、例えば、適切なウイルスでの形質転換、別の不死化細胞との融合、またはCD40との結合などの、様々な手段により実施することができる(ただし、これらだけには限られない)。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、(i)本明細書に記載する作製物または組成物の存在下においてex vivoでBリンパ球を不死化するステップを含む、不死化Bリンパ球の作製方法を提供する。
【0049】
B細胞の不死化は、例えば、適切なウイルスでの形質転換、別の不死化細胞との融合、またはCD40との結合などの、様々な手段により実施することができる(ただし、これらだけには限られない)。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、モノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)Bリンパ球をex vivoで本明細書に記載する作製物または組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0051】
B細胞の不死化は、例えば、適切なウイルスでの形質転換、別の不死化細胞との融合、またはCD40との結合などの、様々な手段により実施することができる(ただし、これらだけには限られない)。この方法は、(iii)形質転換されたB細胞を抗原特異性についてスクリーニングするステップをさらに含むことができる。この方法は、不死化B細胞を単離するステップをさらに含むことができる。
【0052】
さらなる態様では、本発明は、モノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)本明細書に記載する作製物または組成物の存在下で、Bリンパ球を含むかまたはBリンパ球からなる細胞集団を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0053】
B細胞の不死化は、例えば、適切なウイルスでの形質転換、別の不死化細胞との融合、またはCD40との結合などの、様々な手段により実施することができる(ただし、これらだけには限られない)。
【0054】
この方法は、(ii)形質転換されたリンパ球を抗原特異性についてスクリーニングするステップをさらに含むことができる。この方法は、(iii)不死化B細胞を単離するステップを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、B細胞はヒトB細胞である。いくつかの実施形態では、Bリンパ球は記憶Bリンパ球、好ましくはヒトBリンパ球である。
【0056】
前に記載した方法は、前記不死化B細胞からモノクローナル抗体を単離するステップをさらに含むことができる。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する方法により取得可能な抗体を提供する。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物または組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および前記哺乳動物から抗体を回収するステップを含む、抗原特異的抗体の製造を促進する方法を提供する。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、B細胞による免疫刺激剤の非特異的取り込みを阻害する方法であって、前記B細胞との接触前に前記免疫刺激剤を支持体に連結させるステップを含む方法を提供する。
【0060】
さらなる態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導または増強する方法であって、支持体および支持体に連結した前記抗原を含む作製物を被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が支持体に連結されているかまたは前記作製物と共に投与され、被験体に投与した場合に可溶性形態の抗原がTH細胞応答を誘導することができない方法を提供する。抗原は炭水化物もしくはペプチドを含むことができる、または炭水化物もしくはペプチドであってよい。さらに抗原は、グリコシル化ペプチドのリン酸化ペプチドなどの修飾ペプチドを含むことができる、またはこれらであってよい。
【0061】
さらなる態様では、本発明は、B細胞に対して樹状細胞に優先的に免疫刺激剤などの薬剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)薬剤を支持体に連結させるステップ、
(ii)B細胞および樹状細胞を含む細胞集団と支持体に連結させた薬剤を接触させるステップ
を含む
方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、薬剤は本明細書に記載する免疫刺激剤である。いくつかの実施形態では、支持体は本明細書に記載するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】B細胞が、BCRによって粒子状コンジュゲートを内在化し、αGalCerをNKT細胞に対して提示することを示す図である。(A)上図、シリカビーズをDOPC/PE-ビオチン/αGalCerリポソーム(αGalCer)、DOPC/PE-ビオチン/αGalCerリポソームおよびビオチン化HEL(αGalCer+HEL)またはDOPC/PE-ビオチンリポソームおよびビオチン化HEL(HEL)でコーティングした。リポソームコーティングビーズと抗原の結合は、抗HEL抗体を用いたウエスタンブロットによって検出した。下図、Alexa-488標識リポソームコーティングビーズは、非標識リポソームコーティングビーズ(グレーの中実プロファイル)と比較したFACS分析によって検出した(黒線)。(B〜H)B細胞による粒子状αGalCerの提示。(B)MD4 B細胞は可溶性αGalCer(15ng/ml)または0.1μlのαGalCer含有粒子とインキュベートした。細胞を洗浄しDN32.D3細胞とインキュベートした。iNKT細胞に対するαGalCerの提示は、IL2産生としてELISAによって測定した。(C)MD4 B細胞は(B)中と同様にαGalCer含有粒子(白丸)、HEL(黒三角)またはHEL-αGalCer(黒四角)でパルスした。野生型B細胞(白三角)はHEL-αGalCer粒子でパルスし、対照として使用した。(D)MD4 B細胞はHEL-αGalCer粒子で刺激し、NKT細胞との同時培養の前に、抗CD1d遮断抗体(αCD1d)またはアイソタイプ対照(対照Ig)と2時間インキュベートした。(E)αGalCer含有粒子および異なる密度のHELを、抗HEL抗体を用いた染色後にFACSによって分析した。平均蛍光強度値(mfi)を示す。(F)同時培養の実験は、αGalCer含有粒子、および異なる密度のHEL、HELRDGNまたはHELRKDでパルスしたMD4 B細胞で実施した(グレースケール)。(G)D1.3 IgM HEL特異的BCR(黒四角)またはD1.3 IgM/H2キメラ(白丸)を発現するB細胞によるHEL-αGalCerコンジュゲートの提示。(H)HEL-αGalCer(黒四角)、αGalCer(黒三角)、HEL-Gal(α1→2)GalCer(白丸)またはGal(α1→2)GalCer(白三角)を含有する粒子でパルスしたMD4 B細胞で実施した同時培養の実験。(I)HEL-IMM47を含有する粒子(黒四角)およびIMM47のみを含有する粒子(白菱形)でパルスしたMD4 B細胞で実施した同時培養の実験。
【図2】iNKT細胞が、in vivoでの抗原依存性B細胞増殖を補助することを示す図である。CFSE標識MD4 B細胞を、αGalCerおよび/またはHEL含有粒子でチャレンジした野生型マウスに移植した。細胞ではなくHEL-αGalCer粒子を与えたマウスを対照(擬処理)として使用した。第5日に、レシピエントマウス由来の脾臓をFACS分析用に採取した。(A)ドナーHEL結合細胞の増殖はCFSE希釈として検出した(BおよびD)。移植実験は、レシピエントとしてJα18-/-マウスを使用してさらに実施した。レシピエントJα18-/-(グレー)または野生型(黒)脾臓から回収したHEL+(B)およびCD138+HEL+細胞(D)の割合を示す。(E)野生型レシピエントマウスの脾臓中のHEL特異的IgM分泌細胞の数をELISPOTによって測定した。(F)特異的抗HEL IgMaを、野生型およびJα18-/-レシピエントマウスの血清において第5日に測定した。特異的抗体は、HEL-αGalCer粒子でチャレンジした野生型レシピエントマウスにおいてのみ検出された(黒四角)。(C)MD4移植後、レシピエントマウス由来の脾臓を、免疫蛍光顕微鏡観察用に第5日に採取した。濾胞(Fo)中のB細胞はB220(赤色)で染色し、HEL結合細胞は細胞内HELに関して染色し(緑色)、胚中心(GC)はPNA(青色)で染色した。形質細胞のHEL結合濾胞外フォーカス(EF)は、HEL-αGalCer粒子でチャレンジしたマウスにおいてのみ検出した。
【図3】抗原の密度/アフィニティーが、iNKT依存性B細胞増殖および抗体産生を調節する図である。MD4移植実験は図2中と同様に実施した。野生型レシピエントマウスは、αGalCerおよび2つの異なる密度のHELまたはHELRKDを含有する粒子で攻撃した。(A)MD4の増殖はHEL結合集団におけるCFSE希釈として検出した。(B)レシピエントの脾臓から回収したHEL+細胞の割合(高密度:高、低密度:低)。(C)抗HEL特異的IgMaを、αGalCerおよび:黒四角、HEL高密度;白四角、HEL低密度;黒丸、HELRKD高密度;白丸、HELRKD低密度を含有するビーズでチャレンジしたレシピエントマウスの血清において第5日に検出した。(D〜F)MD4細胞およびHEL-αGalCer含有粒子またはHEL粒子および可溶性αGalCerを投与した野生型マウス。ドナー細胞の増殖はCFSE希釈として検出した(D)。可溶性αGalCer(グレーの点線)と比較してHEL-αGalCerコンジュゲート(黒線)に応じて、HEL+ドナー細胞においてより広範囲の増殖を検出した。ビーズではなくMD4細胞を投与したマウスは対照として使用した(グレーの中実プロファイル)。(E)可溶性(グレー)または粒子状(黒四角)αGalCer-HELを与えたマウス中のHEL+ドナー細胞の割合。(F)HEL-αGalCerを含有するビーズ(黒四角)またはHELビーズおよび可溶性αGalCer(白丸)を投与したレシピエントマウス中で検出した抗HEL特異的IgMa。
【図4】粒子状抗原/αGalCerを用いた免疫化が、IgMおよび初期クラス変更型特異的抗体を誘導することを示す図である。(AおよびC)C57BL/6マウス(4マウス/群)を、10μlのαGalCer含有粒子(白)、抗原(グレー)または抗原/αGalCer(黒)で免疫化した。CGG(A)またはHEL(C)を抗原として使用した。特異的抗体は、免疫化7日および14日後にマウス血清中で検出した。(B)野生型(黒)およびJα18-/-(グレー)マウス(3マウス/群)をCGGまたはCGG/αGalCerを含有する粒子で免疫化し、第7日に血液採取した。
【図5】抗原とαGalCerの架橋が、特異的抗体応答を高めることを示す図である。(A)C57BL/6マウス(4マウス/群)を、1μlのCGG-αGalCerコーティング粒子および1μlのOVAコーティング粒子(グレー)または1μlのOVA-αGalCerコーティング粒子および1μlのCGGコーティング粒子(黒)で免疫化した。抗CGGおよび抗OVA特異的抗体を第7日に測定した。(B)特異的抗CGG抗体を、1μlのCGG/αGalCer含有粒子(黒)または1μlのCGG粒子および150ngの可溶性αGalCer(グレー)で免疫化したC57BL/6マウス(3マウス/群)中で検出した。マウスは第7日に血液採取し、特異的抗CGG抗体はELISAによって検出した。
【図6】辺縁帯(MZ)および濾胞(Fo)B細胞による粒子状αGalCer-HELの提示を示す図である。MD4 MZ B細胞とFo B細胞はFACSによって選別し、DN32.D3細胞とのインキュベーション前に粒子状αGalCer-HELでパルスした。αGalCerの提示はIL-2産生として測定した。
【図7】抗原のアフィニティーおよび密度が、in vitroでの粒子状抗原-CpGコンジュゲートを用いた刺激によるB細胞の応答を調節することを示す図である。(A)CFSE標識MD4 B細胞をHEL、CpGまたはHELおよびCpGでコーティングしたミクロスフェアと共にインキュベートした。左上図、増殖はCFSE希釈として検出した。左下図、形質細胞の分化はCD138(Syndecan-1)アップレギュレーションとして検出した。中央および右図、IL-6分泌およびHEL特異的IgMa産生は、ELISAにより培養物の上清において測定した。(B)MD4細胞を、CpGの有無の下でHELアフィニティー突然変異体HELRD、HELKD、HELRKDを含有するミクロスフェアで刺激した。IL-6およびHEL特異的IgMa分泌はELISAにより検出した。(C)CFSE標識MD4 B細胞を、CpG含有粒子、および異なる密度のHELRD、HELKD、HELRKDで刺激した。上図、IL-6およびIgMaは上記と同様に測定した。黒いバーは高密度を表し、グレーのバーは中間密度を表し、空白のバーは低密度を表す。下図、増殖はCFSE希釈として検出した。
【図8】粒子状HEL-CpGコンジュゲートが、in vivoでの広範囲の増殖および形質細胞の分化をもたらすことを示す図である。(A)CFSE標識MD4 B細胞を、HELおよび/またはCpG含有粒子でチャレンジした野生型マウスに移植した。第4日に、レシピエントマウス由来の脾臓をFACS分析用に採取した。左上図、増殖はCFSE希釈として検出した。左下図、MD4形質細胞は、高い細胞内HEL結合および表面マーカーCD138のアップレギュレーションによって同定した。MD4集団のCD138陽性細胞の割合は中央図中に表す。右図、ELISAによる血清中のHEL特異的IgMaの検出。
【図9】抗原のアフィニティーおよび密度が、in vivoでの粒子状抗原-CpGコンジュゲートを用いた刺激によるB細胞の応答を調節することを示す図である。(A〜B)CFSE標識MD4 B細胞を、高密度でのCpGの有無の下で、HELRD、HELKD、HELRKDを含有する粒子でチャレンジした野生型マウスに移植した。(A)上図、増殖はCFSEの希釈によって評価した。下図、MD4形質細胞は、高い細胞内HEL結合およびCD138のアップレギュレーションによって明らかにした。(B〜D)MD4 B細胞を、高密度(B)、中間密度(C)、または低密度(D)でのCpGの有無の下で、HELRD、HELKD、HELRKDを含有するミクロスフェアと同時に移植した。上図はMD4集団中の形質細胞の割合を表し、下図はELISAにより測定した血清中のIgMaのレベルを示す。
【図10】粒子状抗原とCpGの架橋が、in vivoでの特異的抗体応答を高めることを示す図である。(A)C57BL/6マウス(3マウス/群)に、CGGまたはCpGまたは両方のいずれかをコーティングした10μlの粒子を腹腔内免疫化した。CGG特異的IgG、IgG1、IgG2bおよびIgG2cは第14日に評価した。(B)C57BL/6マウス(3マウス/群)に、左図、1μlのCGGでコーティングした粒子および1μlのOVA-CpGでコーティングした粒子、または1μlのCGG-CpGでコーティングした粒子および1μlのOVAでコーティングした粒子を腹腔内免疫化した。右図、10μlのOVAでコーティングした粒子および10μlのCGG-CpGでコーティングした粒子、または10μlのOVA-CpGでコーティングした粒子および10μlのCGGでコーティングした粒子を野生型マウスに投与した。CGGおよびOVA特異的IgGは第14日にELISAによって評価した。
【図11】HELおよび/またはCpG含有粒子の特徴付けを示す図である。(A)左図、ストレプトアビジンビーズを、ビオチン化HELのみ(黒線)またはビオチン化CpG(グレーの中実プロファイル)と組合せてコーティングした。右図、ビーズと抗原の結合は、ポリクローナル抗HEL抗体を用いたウエスタンブロットによって検出した。(B)ストレプトアビジンビーズを、ビオチン化モノクローナル抗HEL F10抗体およびCpGでコーティングした(濃グレーの実線)。中間密度(アッシュグレーの実線)および低密度(薄グレーの実線)のF10はビオチン化CGGとF10の競合によって得た。
【図12】粒子状ホスホペプチド-αGalCerを用いた免疫化が、IgMおよびIgGペプチド特異的抗体を誘導することを示す図である。C57BL/6マウス(3マウス/群)を、10μlのホスホペプチド(グレー)またはホスホペプチド-αGalCer(黒)含有粒子で免疫化した。特異的ペプチド抗体は、免疫化0日および7日後にマウス血清中で検出した(血清希釈1:1000)。
【図13】C57BL/6マウス(3マウス/群)を、1μlのOVA-CpCコーティング粒子および1μlのCγGコーティング粒子または1μlのCγG-CpG粒子および1μlのOVAコーティング粒子のいずれかで一回免疫化した。免疫化14日および3ヵ月後に、ELISPOTを使用して骨髄CγG特異的IgG分泌ASCの数を定量化した。
【図14】Ag-CpGコンジュゲートのBCR媒介性の取り込みが、in vitroにおいてAg-BCR相互作用のアビディティーによって調節されていることを示す図である。MD4 B細胞を、CpGの不在下(上図)または存在下(下図)において、非コーティング状態にしたか(充填グレー)またはHEL、HELKまたはHELRKDでコーティングした1μlの蛍光粒子で刺激した。フローサイトメトリーを使用して粒子の結合を評価した。示したゲートは、(左ゲート)中間レベルおよび(右ゲート)高レベルの粒子と結合した生存細胞の割合を示す。
【図15】Ag含有粒子上に存在するCpGの量は、in vitroでB細胞増殖およびPCを形成する分化の程度を調節することを示す図である。(A,B)CFSE標識B細胞を、様々な密度のCpGと結合した1μlの粒子状HELで刺激した。CpGの密度は、左から右に移動して最高から最低までを表す。MD4 B細胞の増殖および分化は刺激後72時間で測定した。(A)フローサイトメトリーを使用して、刺激(黒線)および非刺激(充填グレー)MD4細胞におけるCFSE希釈を測定した。(B)(左図)IL-6および(右図)IgMaの分泌をELISAによって評価した。
【図16】粒子状Ag-CpGが、in vivoでB細胞増殖および短寿命EF PCを形成する分化を促進することを示す図である。(A〜D)CFSE標識MD4 B細胞をC57BL/6マウスに養子移植し、HELRDのみ、CpGのみまたはHELRD-CpGのいずれかを含有する10μlの粒子でチャレンジした。(A)移植4日後に、フローサイトメトリーを使用して、レシピエントマウスの脾臓中のHEL結合細胞における(左上図)CFSE希釈および(左下図)CD138アップレギュレーション、(右上図)全脾細胞の比率として示す存在した(HEL細胞内、CD138+)MD4 PCの割合、(右下図)ELISAにより測定した血清HEL特異的IgMaを測定した。(B)フローサイトメトリーを使用して、チャレンジ後の示した時間で、レシピエントマウスの脾臓中のHEL結合細胞中、刺激(黒線)および非刺激(充填グレー)MD4細胞中のCFSE希釈を測定した。(C)(左図)ELISPOTを使用して脾臓HEL特異的ASCを検出し、かつ(右図)ELISAを使用して血清HEL特異的IgMaを測定した。(D)5日後、免疫蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 510メーター)を使用して、HEL結合細胞(細胞内HEL、緑色Alexa488)および脾臓濾胞B細胞(抗B220、赤色Alexa543)を検出した。倍率10倍、NA0.3。
【図17】Ag-BCR相互作用のアビディティーおよびTLR9シグナル伝達強度によって、in vivoでのPC形成の程度が調節されることを示す図である。CFSE標識MD4 B細胞をC57BL/6マウスに養子移植し、HELおよび様々な密度のCpGを含有する10μlの粒子でチャレンジした。CpGの密度は、左から右に移動して最高から最低までを表す。フローサイトメトリーを使用して、(上図)増殖を経た生存HEL結合B細胞の割合、および(下図)全脾細胞の比率としてMD4 PC(HEL細胞内、CD138+)の割合を定量化した。
【図18】(E)HyHEL10 B細胞をC57BL/6マウスに養子移植し、HELのみ、CpGのみまたはHEL-CpGをコーティングした10μlの粒子でチャレンジした。7日後、ELISAを使用して、レシピエントマウスの血清中のHEL特異的Igのレベルを測定した。(左図)IgM(白色バー)およびIgG(黒色バー)ならびに(右図)IgG亜型IgG1(薄グレーのバー)、IgG2b(中間グレーのバー)およびIgG2c(濃グレーのバー)。(F)HyHEL10 B細胞を、7日間1μlの粒子状HEL単独、粒子状CpG単独または粒子状HEL-CpGで刺激した。ELISAを使用して、(E)中に記載したのと同様に培養培地中に分泌されたHEL特異的Igのレベルを測定した。
【図19】HEL-CpG粒子による刺激は持続的なp38のリン酸化をもたらし、in vitroでは機能性TLR9に依存することを示す図である。(A)ビオチン化Ag(左図)OVAおよび(右図)CγGをストレプトアビジンコーティング粒子に固定化し、CpGの存在下(充填グレー)または不在下(黒線)において、抗OVA次に抗マウスIgG-AlexaFluor-488または抗CγG FITCの結合後、フローサイトメトリーによって可視化した。(B)CpGの存在下(充填グレー)または不在下(黒線)において、ビオチン化HELとストレプトアビジンコーティングミクロスフェアの結合は、(上図)ポリクローナル抗HELを使用したウエスタンブロッティングおよび(下図)抗HEL F10 AlexaFluor-488の結合によるフローサイトメトリーによって検出した。(C)MD4 B細胞(上図)および骨髄由来DC(下図)は刺激しなかったか(充填グレー)、またはHELのみ、CpGのみまたはHEL-CpGでコーティングした0.2μlの粒子で刺激した(実線)。フローサイトメトリーを使用して粒子の結合を評価した。ゲートは粒子と結合した生存細胞の割合を示す。
【図20】MD4 B細胞を、1μlの粒子状HEL単独(白色バー)、粒子状CpG単独(グレーのバー)または粒子状HEL-CpG(黒色バー)で刺激した。サンプルは刺激後の示した時間に採取し、等量の全細胞溶解物をSDS-PAGEに供した。(上図)その後ウエスタンブロッティングを、検出用のリン酸化p38(pp38)、全p38およびアクチン(ロード量対照)に対する特異的抗体を使用して実施した。(下図)バンドの密度は密度測定によって定量化し、バックグラウンド補正し、同じサンプルでのアクチンバンドの密度に対して標準化し、次いで各条件に関する無刺激のゼロの時点と比較した。
【図21】Ag-CpG粒子によるB細胞増殖および分化の刺激が、in vitroではAgアビディティーに依存することを示す図である。MD4 B細胞を、72時間、(上図および黒色バー)高密度または(下図および白色バー)低密度で、(左図)HELまたは(右図)HELKのいずれかと一緒にコーティングした1μlの粒子状CpGで刺激した。(A)刺激(黒線)および非刺激細胞(充填グレー)のCFSE希釈。B細胞はフローサイトメトリーにより評価した。(B)(左図)IL-6および(右図)IgMa分泌はELISAにより評価した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
BCRと抗原の結合は、抗原内在化およびT細胞に対する提示、体液性免疫応答の開始における重要なステップをもたらす。粒子状抗原を内在化およびプロセシングするB細胞の能力は、いくつかのグループによって記載されている(22〜24)。in vivo抗原は不溶形で見られるか、または細胞表面と結合することが多いので、これは非常に関係がある(23)。
【0065】
複合体(PL)を形成するためのタンパク質(P、BCRなど)とそのリガンド(L、抗原など)の相互作用は、いくつかの異なるパラメーターによって記載することができる。生化学の分野と同様に、平衡解離定数を使用して、タンパク質とリガンド間の相互作用のアフィニティーの測定値を与えることができる:
koff
PL<--------->P+L
kon
koff[PL]=kon[P][L]
であるように正反応と逆反応の速度が等しいとき、平衡解離定数(KD)を定義し、
したがって、
KD=koff/kon=[P][L]/[PL]
として平衡解離定数を定義する。
【0066】
解離定数は、特定のタンパク質上の結合部位が半分占有されているリガンド[L]の濃度、すなわち、リガンドと結合したタンパク質[PL]の濃度がリガンドと結合していないタンパク質[P]の濃度と等しいリガンドの濃度に相当する、モル単位(M)を有する。解離定数が小さいほど、リガンドはより強く結合し、またはリガンドとタンパク質間のアフィニティーは高くなる。例えば、ナノモル(nM)の解離定数を有するリガンドは、マイクロモル(μM)の解離定数を有するリガンドより特定のタンパク質により強く結合する。あるいは、KDの逆数によって与える会合定数(KA、M-1で与える)によって、アフィニティーを一般的に記載する。
【0067】
さらに、PL複合体の寿命は、複合体の半減期の観点で以下のように記載する:
t1/2=ln2/koff
【0068】
より長いt1/2はより安定した相互作用を表し、より緩慢な速度定数koffに起因する。複合体の個々の寿命は、リガンドがアゴニストである場合、問題のタンパク質の刺激/活性化を決定し得る。これは生化学では重要な量である。反応はそれ故相互作用の「アフィニティー」(KAまたはKD)に単純に依存せず、そうではなくてタンパク質によって見られるリガンドのアビディティーに依存するからである。
【0069】
用語、アフィニティーは単結合の強度を記載する一方で、アビディティーは、多数の結合相互作用の組合せ強度を記載するために使用する用語である。
【0070】
リガンドは表面上に異なる密度で存在し得るので、これは短い半減期のPL複合体の崩壊後の再結合の可能性に影響を与え得る。したがって、高密度で、迅速なkoffを有するリガンドは、高アフィニティーを有するリガンドと類似した応答を誘導することができる可能性がある。
【0071】
したがって、標的細胞、典型的にはB細胞と粒子状抗原の全体的なアビディティーは、特異的抗原のアフィニティーと、支持体の表面上の抗原の密度の両方に依存する。
【0072】
本発明者らは、粒子状抗原とBCRの特異的結合およびその後の内在化は、全体的な抗原のアビディティーに依存することを発見している。ビーズなどの支持体の使用は、抗原密度(およびそれ故、アビディティー)の微調節を可能にする。したがって、これは、KAの観点で低「アフィニティー」の抗原でさえ、それらが十分な密度で表面上に提示される場合、特異的免疫応答を刺激することができることも確実にする。支持体とも連結する免疫刺激剤は、抗原と共に細胞によって内在化され、特異的免疫応答の増大をもたらす。観察される増大は、細胞内の活性化の刺激、または活性化の刺激をもたらす可能性がある他の細胞因子の動員に起因し得る。
【0073】
上記で論じたように、支持体上の抗原の密度もアビディティーに影響を与える。
【0074】
US2007/0,104,776(Ishiiら)は、オボアルブミンがリポソーム中にカプセル化された、オボアルブミンおよびa-ガラクトシルセラミドを含有するリポソームの使用を記載する。リポソームは抗体産生に対する阻害効果を示す。
【0075】
したがって、一態様では、本発明は、
(i)支持体、および
(ii)支持体に連結されたBCR結合性抗原
を含む、BCR媒介内在化が可能な作製物を提供する。
【0076】
言い換えると、作製物は、BCRの関与を介して、標的細胞、典型的にはB細胞によって内在化されるのに適している。作製物は、支持体と連結した免疫刺激剤をさらに含むことができる。BCR媒介内在化によって、作製物は抗原特異的免疫応答を誘導する。
【0077】
任意の適切な支持体を使用することができる。支持体は抗原および/または免疫刺激剤との結合に適していなければならず、BCR発現細胞による内在化およびプロセシングに適した大きさでなければならない。いくつかの実施形態では、支持体は粒子、例えばビーズであってよい。支持体はミクロスフェアであってよい。用語「ミクロスフェア」は、通常ミクロンまたはナノメーター範囲の非常に小さな直径を有する、任意の物質でできた球殻を指す。
【0078】
支持体は任意の適切な物質であってよく、例えば、ポリマーまたはシリカビーズまたはミクロスフェアなどのポリマーまたはシリカ支持体を使用することができる。適切なビーズは当技術分野で知られている。
【0079】
粒子はリポソームであってよい。リポソームは、水性コアに囲まれた1つまたは複数の脂質二重層でできた小胞構造であると一般に理解される。それぞれの脂質二重層は2つの脂質単層で構成され、そのそれぞれが疎水性「尾部」領域および親水性「頭部」領域を有する。二重層中では、脂質単層の疎水性「尾部」は二重層の内側に向いており、一方で親水性「頭部」は二重層の外側に向いている。リポソーム調製物の作製法はBangham(Banghamら、1965、J Mol Biol、13:238)によって記載され、リポソーム縣濁液の安定化のための組成物および方法はWO2006/002642中に記載され、両方の参照文献は参照として本明細書に組み込まれる。
【0080】
本発明に従って、リポソームでコーティングされたビーズを使用することができる。
【0081】
支持体/粒子は、1nm〜10μm、好ましくは10nm〜10μmの範囲、好ましくは10nm〜1μmの範囲、好ましくは50nm〜1μmの範囲、好ましくは100nm〜1μmの範囲、より好ましくは100nm〜500nmの範囲の大きさであってよい。より好ましくは、支持体の大きさは100nm〜150nmの範囲、より好ましくは100nm〜130nmの範囲である。しかし、支持体/粒子はより小さい、またはより大きくてよい。
【0082】
粒子は100nmまたは130nmの大きさであってよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、粒子の大きさは、病原体などの天然抗原担体の大きさと類似することが好ましい可能性がある。
【0084】
免疫刺激剤および抗原が望ましい増大したかつ特異的な免疫応答を依然として誘導することができる限り、支持体に免疫刺激剤および/または抗原を連結させる任意の方法を使用することができる。例えば、ビオチン-ストレプトアビジンリンカーシステムを使用することができる。さらに、リポソームを使用して、粒子状免疫刺激剤脂質でシリカミクロスフェアをコーティングすることができる。
【0085】
本発明の作製物および方法は、支持体上の抗原量および抗原密度の微調節を可能にする。使用する個々の抗原に応じて、多少の抗原を支持体表面に結合させることが可能であり、それによって抗原密度(およびそれ故、アビディティー)を増大または低減することが可能である。異なる抗原は、BCR媒介内在化に必要とされるアビディティー閾値を超えるために、それらの異なるKAおよびkoffに応じて異なる密度を必要とする可能性がある。例えば、低アフィニティー抗原は、高アフィニティー抗原と比較して、支持体表面上の高い密度を必要とする可能性がある。
【0086】
例えば、本発明者らは、抗原を用いた免疫化前に生理的範囲内に含有され得るアフィニティーを含めた、アフィニティーの範囲で抗原を使用している(KA、8×105M-1〜2.1×1010M-1の範囲)。試験した抗原に関して、in vivoにおいて移植抗原特異的B細胞からの特異的抗体産生を刺激するために、最低KA8×105M-1(および対応する2.5sec-1のkoff)が必要とされた。
【0087】
本明細書に記載する任意のアフィニティー値は単なる例示のためであり、決して本発明の範囲を制限しないことを強調する。BCR媒介内在化を誘導するのに適した任意の抗原を、本発明に従い使用することができる。本発明は、特定の低いまたは高いアフィニティーを有する抗原に限られない。
【0088】
支持体表面上の抗原の量を測定する、したがってその密度を調節する方法は、当技術分野で知られている。例えば、ビーズと結合した抗原の正確な量、したがってその密度は、定量的ウエスタンブロッティングを使用して、または抗原中への蛍光標識の取り込みにより定量化して、FACSによって提示された抗原の量を決定するすることができる。
【0089】
一態様では、本発明は、(i)支持体、(ii)支持体に連結された少なくとも1つのBCR結合性抗原、および任意により、(iii)支持体に連結された少なくとも1つの免疫刺激剤を含む作製物を提供する。
【0090】
本発明の作製物は、十分な密度(およびそれ故、アビディティー)で抗原が存在する支持体を含み、標的細胞、典型的にはB細胞によるBCR媒介内在化を可能にすることは理解されよう。したがって、それらはBCR媒介内在化に適している。
【0091】
BCR媒介内在化に十分な全体的アビディティーを得るのに必要とされる個々の抗原の必要密度は、例えば(i)異なる量の抗原が連結された支持体を作製すること、(ii)前記支持体をB細胞などの標的細胞と接触させること、(iii)標的細胞の活性化を試験することによって決定することができる。標的細胞の活性化は粒子状抗原の特異的取り込みを示し、これは、その個々の支持体上の抗原が、本発明による内在化を誘導するのに十分な密度およびアビディティーを有することを示す。
【0092】
支持体上で異なる密度レベルをもたらすために、例えば最初に、抗原で支持体を飽和することによって、可能な限り高い密度を有する支持体を作製することができる。次いで、得られた支持体がBCR媒介内在化を誘導することができるかどうか試験することができる。支持体の表面上に結合した抗原と競合する薬剤の異なる量と、抗原コーティング支持体を接触させることによって、次いで密度を低下させることが可能である。例えば、抗原がビオチン系連結機構によって支持体に連結する場合、競合薬剤は、ビオチン化薬剤、例えばビオチン化非免疫原性タンパク質であってよい。次いで作製した支持体をB細胞と接触させて、個々の抗原の得られた密度がBCR媒介B細胞活性化に適しているかどうか決定することが可能である。アビディティーが個々の抗原に必要とされる閾値未満の範囲にある場合、十分な細胞活性化、したがって十分な免疫応答は観察されない。支持体上の密度を段階的に低下させることによって、それぞれの抗原に必要とされる最小密度(およびそれ故、アビディティー)を決定することができる。
【0093】
多数の抗原が支持体上に存在する場合、それぞれの抗原の密度を最適化することができる。
【0094】
B細胞の活性化は、任意の適切な方法によって測定することができる。例えば、B細胞の活性化は、粒子状抗原の取り込みに応答した特異的抗体、サイトカインまたはケモカインの分泌を測定することによって試験することができる。iNKT細胞とのin vitroインキュベーション後の培養培地へのIL-2の分泌の測定によって、B細胞の表面上でのCD1d媒介脂質免疫刺激剤の提示の活性化を測定することもできる。
【0095】
特に、以下の試験を使用して、抗原が支持体上に抗原特異的免疫応答を誘導するのに十分なアビディティーで存在するかどうかを試験することができる。トランスジェニック抗原特異的マウスB細胞において以下のin vitroアッセイを使用することができる(これらの細胞は、それらが問題の抗原に特異的であるBCRを発現するB細胞に関して富化状態である点で「トランスジェニック」である)。
【0096】
例えば、抗原およびCpGを有する支持体を使用する場合、培養物の上清中のIL-6分泌を、粒子による刺激後24または48時間の早期にELISAによって測定することができる。IgMの産生はELISAによって72時間後に評価することができる。十分な刺激が発生した場合、IL-6とIgMの2つのみを検出することができる。
【0097】
さらに、刺激前にCFSEでB細胞を標識する場合、FACSによる刺激の72時間後にB細胞活性化の読み出し値として増殖(CFSEの希釈)を評価することができる。
【0098】
例えば、抗原およびaGalcerを有する支持体を使用する場合、iNKT細胞を活性化するこれらの細胞の能力を調べることによって、B細胞の表面上に提示されたaGalCer-CD1dの量をアッセイすることができる。本明細書の実施例の方法および材料において詳述するように、これらのアッセイ用のDN32.D3ハイブリドーマ由来のiNKT細胞を使用することができる。それらの表面上にaGalCer-CD1dを提示するために、支持体上の抗原は、BCR媒介内在化に関するアビディティー閾値を超えていなければならない。抗原特異的トランスジェニックB細胞を粒子と一晩インキュベートして、次いでPBS中で完全に洗浄する。B細胞はその後iNKT細胞とインキュベートして、20時間後、ELISAによって測定したiNKT細胞によるIL-2の分泌は、B細胞表面上のaGalCer-CD1d提示の測定値を示す。
【0099】
それぞれのB細胞によって多数の支持体が取り込まれる可能性がある。したがって、B細胞と接触する支持体の数は、生成する免疫応答に影響を与える可能性がある。使用する支持体の数を変えることにより、支持体の数を最適化して望ましい応答を得ることができる。
【0100】
免疫化戦略を使用して、in vivoでの特異的免疫応答の刺激に必要とされる抗原アビディティーの閾値を同定することもできる。例えば、特異的抗体の産生は、本明細書に記載する粒子状抗原で免疫化した個体の血清において、ELISAまたは他の適切な免疫学的アッセイを実施することにより測定することができる。
【0101】
支持体の使用によって、支持体上の抗原および/または免疫刺激剤の密度だけでなく、抗原と免疫刺激剤の間の比を調節することもできる。これは、特定抗原に対する特異的免疫応答を最適化するためのさらなる方法を表す。多くの抗菌ワクチンにおいて使用される抗原などの微弱な抗原は、それに伴うT細胞エピトープを欠いているので、このような抗原はより多量の免疫刺激剤を必要とする可能性がある。支持体は、より強力な抗原に必要とされるであろう量と比較して、結合免疫刺激剤の量を増大する機会を与える。実際、本発明者らは、増大した特異的な免疫応答は、例えばC57/BL6バックグラウンドでモデル抗原ニワトリ卵リゾチームを用いた免疫化を使用して、特異的T細胞の補助の不在下でさえ起こり得ることを実証している。同じ支持体上での抗原と免疫刺激剤の提示は、細胞による同時の取り込みを確実にし、抗原のみの取り込みまたは抗原および可溶性免疫刺激剤の取り込みと比較して、より一層増大した特異的応答をもたらす。
【0102】
いくつかの実施形態では、多数の抗原分子を支持体に連結させることが可能である。
【0103】
いくつかの実施形態では、異なる型の抗原を支持体に連結させることが可能である。例えば2、3、4種またはそれより多くの異なる抗原を支持体に連結させることが可能である。典型的にはそれぞれの抗原は、BCR発現細胞を活性化するのに十分な密度/アビディティーで存在する。すなわち、それぞれの抗原は抗原特異的免疫応答を誘導し得る。多数の抗原を有する支持体は、したがってそれぞれの抗原に対する免疫応答を刺激し、したがって、病原体の抗原組成に合わせた免疫応答の生成を可能にするであろう。この戦略は侵入する病原体からの最適防御を確実にし、1つの「エスケープ」変異の選択を妨げ得る。(しばしばウイルスは、いくつかのそれらのタンパク質(およびそれ故抗原)を変異させて、それらがもはや免疫細胞によって結合することができず、または特異的受容体によって認識されないように、免疫系による検出を回避し得る)。したがって、支持体と異なる抗原の結合、および同時のいくつかの抗原に対する抗体の産生によって、1つのエスケープ変異が免疫系により依然として撃退される機会が増大する。
【0104】
いくつかの実施形態では、多数の免疫刺激剤分子を支持体に連結させることが可能である。
【0105】
いくつかの実施形態では、異なる型の免疫刺激剤を支持体に連結させることが可能である。例えば2、3、4種またはそれより多くの異なる型の免疫刺激剤を支持体に連結させることが可能である。異なる型の免疫刺激剤は、免疫応答を増大する異なるメカニズムを使用する可能性があるので、異なる免疫刺激剤の組合せは連携につながり、より一層強く増大した免疫応答をもたらす可能性がある。
【0106】
いくつかの実施形態では、異なる型の抗原と異なる型の免疫刺激剤の組合せが、支持体表面に存在してよい。
【0107】
さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の抗原および1つまたは複数の免疫刺激剤を連結させた支持体を、1つまたは複数の可溶性免疫刺激剤と組み合わせて、特異的免疫応答をさらに促進することができる。(1つまたは複数の)可溶性免疫刺激剤は支持体上で使用するのと同じ免疫刺激剤であってよく、または異なる(1つまたは複数の)可溶性免疫刺激剤であってよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の型の抗原、および任意によりそこに連結した1つまたは複数の型の免疫刺激剤を連結させた支持体を、1つまたは複数の可溶性免疫刺激剤と同時に投与することができる。
【0109】
免疫刺激剤
用語「免疫刺激剤」は、抗原に対する免疫応答を誘発、増大および/または延長する物質を記載するために本明細書で使用する。本出願では、「抗原」と「免疫刺激剤」を区別するが、これは単に明確さおよび記載し易さのためであることは留意すべきである。免疫刺激剤はそれ自体が抗原能力を有し得る、および多くの場合、それを有することが好ましいことは理解されるはずである。したがって、実施例中では、例えば「免疫刺激脂質」は、したがって「抗原脂質」とも呼ぶ。本明細書中での「抗原」と「免疫刺激剤」の区別は、「抗原」はBCRとの特異的結合を決定するので、誘導される特異的なBCR媒介免疫応答は抗原を被験体とすることをどちらかと言えば指す。
【0110】
免疫刺激活性を有する化合物は当技術分野で知られている。例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、グリカンなどの多糖、多糖コンジュゲート、多糖のペプチドおよび非ペプチド模倣体、および他の分子、小分子、脂質、糖脂質、および炭水化物などの、任意の適切な免疫刺激剤を本発明に従い使用することができる。
【0111】
以下でより詳細に記載するように、いくつかの実施形態では、免疫刺激剤はiNKTアゴニストまたはTLRアゴニストである。
【0112】
iNKTアゴニスト
長年、ペプチドは、T細胞応答を開始させる唯一の抗原決定基であると考えられていた。しかし、T細胞は、CD1分子によって提示される抗原脂質および糖脂質を認識し、それらに応答することもできることは現在明らかである(8)。T細胞は、その非常に多型なT細胞受容体(TCR)によって様々な範囲の潜在的抗原を認識する。iNKT(インバリアントナチュラルキラーT)細胞として知られるT細胞のサブセットは、それぞれマウスおよびヒトにおいて標準Vα14-Jα18またはVα24-Jα18α鎖からなる拘束型TCRレパートリーの、それらの発現によって定義される。iNKT細胞は、自己またはAPCの表面上で発現される非多型CD1d分子によって提示される外来抗原脂質を認識し、それらに応答して活性状態になる(8,11)。iNKT細胞は、様々な感染に応答して、または炎症および自己免疫疾患中に活性化される(12,13)。iNKT細胞は、それらの刺激はDC、NK細胞、BおよびT細胞の下流活性化を誘導することができるので、先天性免疫応答と適応性免疫応答を関連付け統合する手段をもたらす(11)。iNKT細胞がB細胞増殖および抗体産生を刺激することが、in vitroにおいて実証されているが(16)、これは外因性iNKT細胞-リガンドの提示およびBCR特異性とは無関係であるようである。免疫系の有効な操作はin vivoでのB細胞活性化の厳重な制御を必要とするので、iNKT媒介活性化は厳重な規制を受けるに違いないと予想され得るが、しかし、これが起こるメカニズムは依然として特徴付けられていない。本出願において、本発明者らは、特異的BCR内在化は、in vivoでiNKT細胞に対する粒子状脂質抗原のB細胞提示を増大することを実証する。後に活性化したiNKT細胞は、特異的B細胞増殖、濾胞外PCへの分化、および高力価の特異的IgMおよび初期クラス変更型抗体の分泌を手助けする。
【0113】
α-ガラクトシル-セラミド(α-GalCer)またはその合成アナログKRN7000によってNKT細胞を活性化することができることは、以前に示されている(US2003/0,157,135)。α-GalCerはNK活性およびNKT細胞によるサイトカイン産生を刺激することができ、in vivoで強力な抗腫瘍活性を示すことが、さらに示されている。α-GalCerの免疫調節機能はCD1d-/-欠損マウスとNKT欠損マウスの両方において存在しないので、これは、MHCクラスI様分子CD1dによってα-GalCerが提示され得ることを示す(US2003/0,157,135)。
【0114】
US2003/0,157,135は、α-GalCerおよび関連グリコシルセラミドは抗原として機能するだけでなく、他の抗原によって誘導される防御免疫応答の期間を増大および/または延長することができる可溶性アジュバントとしても、使用できることをさらに言及する。
【0115】
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、免疫刺激剤はiNKT細胞アゴニストであってよい。アゴニストは外因性または内因性アゴニストであってよい。それはグリコシドアゴニスト(α-ガラクトシルセラミドなど)または非グリコシドアゴニスト(スレイトールセラミドなど)であってよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は脂質または糖脂質であってよい。CD1によって提示される糖脂質は、例えば、ジアシルグリセロ脂質、スフィンゴ脂質、マイコレートおよびホスホマイコケチドを含めた、異なるクラスに分類することができる(Zajonc an Kronenberg、Current Opinion in Structural Biology、2007、17:521〜529)。グルコースモノマイコレート(GMM)、マンノシルホスホマイコケチドおよびホスファチジルイノシトールマンノシドなどの病原性マイコバクテリア由来の微生物抗原は、グループIのCD1分子により提示されるときヒトT細胞の強力なリガンドであることが知られている(Zajonc and Krenenberg、上記)。本発明の免疫刺激剤は、(Silkら、Cutting Edge J.Immunol、2008中に記載されたように)グリコシルセラミド、例えばα-ガラクトシルセラミド(KRN7000、US2003/0,157,135)またはそのアナログ、例えばスレイトールセラミド(IMM47)または他の非グリコシドiNKT細胞アゴニストなどであってよい。本発明に従い使用することができるさらなるアナログ、およびこのようなアナログの生成法は、参照として本明細書に組み込まれるWO2007/050668中に開示される。例えば、本発明に従い有用なアナログは、式Iを有する化合物:
【化1】

【0117】
[上式中、
R1は、ヒトCD1dのC'チャンネルを占有するように適合した疎水性部分を表し、R2は、ヒトCD1dのA'チャンネルを占有するように適合した疎水性部分を表し、したがって、R1は、ヒトCD1dと結合したときα-ガラクトシルセラミドのスフィンゴシン鎖の末端nC14H29によって占有される体積と比較して、C'チャンネルの占有体積の少なくとも30%を占め、R2は、ヒトCD1dと結合したときα-ガラクトシルセラミドのアシル鎖の末端nC25H51によって占有される体積と比較して、A'チャンネルの占有体積の少なくとも30%を占め、
R3は水素またはOHを表し、
RaおよびRbはそれぞれ水素を表し、さらに、R3が水素を表すとき、RaおよびRbが一緒に単結合を形成することができ、
Xはまたは-CHA(CHOH)nYまたは-P(=O)(O-)OCH2(CHOH)mYを表し、ここでYはCHB1B2を表し、
nは1〜4の整数を表し、mは0または1を表し、
Aは水素を表し、
B1およびB2の1つはH、OHまたはフェニルを表し、かつ他方は水素を表し、あるいはB1およびB2の1つはヒドロキシルを表し、かつ他方はフェニルを表し、
さらに、nが4を表すとき、AはB1およびB2の1つと共に一緒に単結合を形成し、B1およびB2の他方がH、OH、またはOSO3Hを表す]
および製薬上許容されるその塩を含む。
【0118】
免疫刺激剤は、アラビニトール-セラミド、グリセロール-セラミド、6-デオキシおよび6-スルホノ-myo-インシトールセラミド(insitolceramide)であってよい。
【0119】
本発明者らは、BCR媒介の取り込みは、iNKT細胞に対する粒子状免疫刺激脂質の有効な提示を可能にすることを示す。このメカニズムは、規定したアビディティー閾値を超えない限り、一層低アフィニティーの抗原のBCR認識後の脂質のCD1媒介提示を可能にする。結果として、活性化したiNKT細胞は、特異的B細胞増殖、濾胞外血漿B細胞分化、および高力価の特異的IgMおよび初期クラス変更型抗体の産生に補助を与える。
【0120】
本発明者らは、送達の選択性を得る手段と、特異的B細胞による粒子状抗原脂質の有効な内在化の手段の両方として、BCRを使用している。
【0121】
B細胞増殖を誘導するiNKT細胞の能力は、主にin vitroで特徴付けられている(16)。本発明者らは、特異的CD4T細胞の不在下でさえ、iNKT細胞は、in vivoでのB細胞増殖および抗体産生を手助けすることができることを示す。これらの観察は、抗原およびαGalCerを用いたMHCII欠損マウスの免疫化が検出可能なレベルのIgGを誘導した以前の調査と一致し、iNKT細胞はCD4Tヘルパー機能に取って代わることができることを示す(27)。したがって、これは、関連T細胞エピトープを欠く抗菌性ワクチンにおいて使用されることが多い抗原などの、微弱な抗原の免疫応答刺激の意味合いがある。iNKT細胞は抗原を経た表現型を有し、それらはクローン性増殖を必要とせずに、CD1d提示抗原に非常に迅速に応答することができる。本発明者らは、BCR関与後の直接的なiNKT細胞の補助は、濾胞外PC分化および初期の抗体産生をもたらすことを実証している。濾胞外PCは、T依存性応答において最初の抗体の生成を担う(5)。これらの抗体は、ウイルスおよび細菌に対する防御に関する中和効果を有し得る。これは、異なる病原体に対する初期の免疫応答の誘導における、B細胞に対する直接的なiNKT細胞の補助に関する主の役割を示唆する。これと一致して、iNKT欠損マウスは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、スフィンゴモナス種(Sphingomonas ssp.)、およびプラスモジウムベルゲイ(Plasmodium berghei)を含めた数種の微生物の除去において重度の欠陥を示す(28)。iNKT細胞は、脳マラリアのモデルにおけるプラスモジウムベルゲイによる感染後の、初期の抗体応答を発現するものとして提案されている(29)。この場合、CD1-/-マウス中での特異的抗体産生は、寄生虫による攻撃後の初期の時点で特に低減する。
【0122】
したがって、iNKTはin vivoで初期の抗体応答を形成する際に重要な役割を果たすことができ、したがって、侵入する病原体からの高い防御を与えることができる。
【0123】
したがって、免疫応答の文脈で本明細書に記載する観察結果の機能的意義は何なのか。iNKT細胞は、スフィンゴモナス、エルリシアおよびボレリアのようなLPS陰性菌由来の糖脂質によって活性化される(25)(26)(30)。あるいは、iNKT細胞はCD1d提示により依然同定されていない内因性脂質リガンドを認識することができ、TLRシグナル伝達に応答してDCによってアップレギュレーションされ得る(25)(31)(32)(33)。全てのB細胞がCD1dを発現することは知られているが、この発現は、それらがCD21highCD23lowCD1dhigh表現型を示すように、辺縁帯B細胞中で増大する。この表現型は、辺縁帯B細胞は、感染後のCD1d依存性iNKT活性化において重要な役割を果たす可能性があることを示唆する。実際、これらの細胞は脾臓の周縁洞に局在し、そこでそれらは、血液感染性の粒子状抗原に対する初期免疫応答を与えることができる(34)(35)。本発明者らは、細菌糖脂質に特異的なBCRを発現する辺縁帯B細胞は、iNKT細胞補助のより有効な動員および関連する特異的抗体応答の発生を可能にすると仮定する。あるいは、粒子状微生物を内在化することができるB細胞は、CD1d拘束型内因性リガンドのアップレギュレーション後に、TLRシグナルおよびその後のiNKT細胞補助を得ることができる。
【0124】
本明細書に示す結果によって、in vivoでのiNKT媒介B細胞応答の調節手段として、粒子状抗原および免疫刺激脂質のBCR内在化を同定する。B細胞とiNKT細胞の間の協力関係は、初期の特異的抗体応答の発生をもたらし、先天性免疫応答と適応性免疫応答を統合する際のiNKT細胞の重要性を強調する。
【0125】
TLRアゴニスト
TLR3、7、8および9などの細胞内TLRは核酸を認識する。TLR9アゴニストCpGなどのこのような合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、以前から免疫刺激剤として使用されている(Klinman、2004、Nature Reviews、4:249)。これらのTLR免疫刺激剤は、αGalCerなどの脂質によって使用されるメカニズムと異なるメカニズムによって働く。これらの免疫刺激剤は、例えば、免疫応答のさらなる刺激をもたらすサイトカインおよびケモカインの分泌を終了させることによって、それらが取り込まれる細胞を直接活性化する。
【0126】
TLRの発現パターンはそれぞれの細胞型に特異的である(Chironら、2009)。ヒトB細胞中でのTLRの発現は、TLR1、6、7、9および10の高発現およびB細胞分化中に変わる発現パターンによって特徴付けられる。
【0127】
可溶性CpG ODNは免疫細胞によって迅速に内在化され、エンドサイトーシス小胞中に存在するTLR9と相互作用する。(TLR9を含めた)TLRファミリーの大部分のメンバーによる細胞活性化は、骨髄細胞分化初期応答遺伝子88(MYD88)、インターロイキン-1(IL-1)、受容体活性化キナーゼ(IRAK)および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)関連因子6(TRAF6)を介して進行するシグナル伝達カスケードを含み、核因子-κb(NF-κB)、活性化タンパク質1(AP1)、CCAAT-エンハンサー結合タンパク質(CEBP)およびcAMP-応答エレメント結合タンパク質(CREB)を含めた、いくつかの転写因子の活性化に至る。これらの転写因子は、サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現を直接アップレギュレーションする。B細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC)は、TLR9を発現しCpG刺激に直接応答する主なヒト細胞型である。CpGのDNAによるこれらの細胞の活性化は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞および単球/マクロファージの間接的成熟、分化および増殖に至る免疫刺激カスケードを開始させる。まとめると、これらの細胞は、前炎症性(IL-1、IL-6、IL-18およびTNF)およびTH1系(インターフェロン-γ、IFN-γ、およびIL-12)免疫環境(Klinman、2004、Nature Reviews、4:249)を生み出すサイトカインおよびケモカインを分泌する。
【0128】
したがって、いくつかの実施形態では、免疫刺激剤はTRLアゴニストである。例えば、それはエンドソームTLRアゴニスト、特に核酸、例えばDNA、RNA(二本鎖または一本鎖のいずれか)などである。免疫刺激剤は、例えばCpGオリゴデオキシヌクレオチドまたはポリ-U核酸を含むことができる。
【0129】
不死化細胞の作製
本明細書に記載する免疫刺激剤の抗原特異的送達のための方法は、抗原特異的モノクローナル抗体の産生用の不死化B細胞およびB細胞株の作製において使用することができる。
【0130】
したがって、一態様では、不死化細胞の作製方法であって、以下のステップ:
(i)B細胞を本明細書に記載する作製物または組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0131】
前述のステップ(ii)はステップ(i)の後で実施することができ、または両方のステップは同時に実施することができる。
【0132】
ステップ(i)はex vivo、すなわちB細胞が由来する生物の体外で実施することができる。
【0133】
B細胞の不死化は、例えば、適切なウイルスでの形質転換、および/または別の不死化細胞との融合および/またはCD40との結合などの、任意の適切な方法により実施することができる(ただし、これらだけには限られない)。
【0134】
形質転換ウイルスおよび適切なウイルスを用いてB細胞を不死化するための方法は、当技術分野で知られている。(Lanzavecchiaら、Curr Opin Biotechnol、2007 Dec;18(6):523〜8、Epub2007 Dec11、その内容は参照として本明細書に組み込まれる)。任意の適切な形質転換ウイルスを使用することができる。ウイルスは例えばエプスタインバーウイルス(EBV)であってよい。EBVは大部分の霊長類のB細胞を形質転換するのに適しているが、他の生物に関しては、適切なウイルスを必要な場合選択することができる。例えば、抗原および例えばTLRアゴニストでコーティングした支持体の送達後、エプスタインバーウイルス形質転換による感染は、TLR刺激を与えた抗原特異的B細胞中でのみ大幅に増大する可能性がある(Traggiai Eら、(Traggiai E、Becker S、Subbarao K、Kolesnikova L、Uematsu Y、Gismondo MR、Murphy BR、Rappuoli R、Lanzavecchia A.Nature Medicine2004 vol.10pp.871〜5中に記載された方法を使用する)。形質転換の有効性は、非活性化B細胞と比較してTLR活性化細胞中で劇的に増大する。したがって、不死化細胞株に形質転換される細胞中の抗原特異的細胞の全体比率は有意に増大する、すなわち、形質転換集団は抗原特異的B細胞が特異的に富化する。したがって、本発明は、EBV形質転換後に面倒なスクリーニング手順なしで、必要とされる個々の抗原に特異的な不死化B細胞株の迅速な生成法を提供する。
【0135】
不死化は、例えば別の不死化細胞との融合によって実施することができる。適切な方法および材料は当業者に知られている。例えば、参照として本明細書に組み込まれる、Shirahataら、Methods Cell Biol、1998;57:111〜45は、このような方法を記載する。(Shirahataらの中では、NAT-30およびHO-323、高い融合効率を有するヒト親細胞株を樹立して、癌特異的ヒトモノクローナル抗体を産生する多くのハイブリドーマ細胞株を調製した。NAT-30およびHO-323細胞株はIgM生産者であるので、IgG産生ハイブリドーマを得ることは困難である。ハイブリドーマによって産生される免疫グロブリンの型は、親細胞の特性によって強く影響を受けるからである。したがって、IgG産生ヒトハイブリドーマを効率よく得ることができる、非免疫グロブリン産生のヒト親細胞株、ヒトTリンパ腫由来のA4H12を樹立した。ヒトハイブリドーマの調製に関する別の問題は、任意選択の抗原で免疫化してBリンパ球を得ることが、倫理的理由で困難であることである。この問題を克服するため、この著者らは、培養癌細胞または可溶性抗原への多数のBリンパ球の露出を可能にするために開発した、in vitro免疫化法を記載する。この著者らは、ヒト融合パートナー、in vitro免疫化法、および電気的融合法を使用するヒト-ヒトハイブリドーマの調製を論じている。)
不死化は、例えば、その内容が参照として本明細書に組み込まれる、Wiesnerら、PLoS ONE、Jan2008、issue1:1〜13によって報告されたのと同様に、例えばCD40の刺激、(CD40連結)によって実施することができる。(この著者らは、ヒトBリンパ球は、インターロイキン-4、Tヘルパー細胞によるB細胞活性化に似たシグナルの組合せの存在下でそれらの表面受容体CD40を誘発することによって、in vitroで活性化され誘導されて増殖する可能性があることを示す。無EBVCD40刺激B細胞培養物を樹立するために、EBV陽性ドナー由来の非分離末梢血単核球細胞(PBMC)を、インターロイキン-4およびシクロスポリンAの存在下において、マイクロ培養物当たり異なる数でCD40L発現刺激細胞に平板培養した。細胞は5〜7日毎に新たな刺激細胞で再度刺激して、増殖が顕著になるまで増殖させた。この著者らは、培養物当たり少ない初期細胞数(2×104〜5×105個のPBMC)を使用した場合、B細胞の迅速な増殖は好ましいことを観察した。27日後、105個のPBMCで設定した5ドナー由来の培養物はB細胞に関して平均282倍増殖しており、B細胞によって支配されていた(87±5%のCD19+細胞))。
【0136】
したがって、当技術分野で知られている方法を使用して、不死化細胞を培養物に取り込ませて、不死化細胞株を樹立することが可能である。
【0137】
前に記載した方法は任意の種において使用するのに適しているが、それらはモノクローナルヒト抗体の産生に特に有用である。ヒトまたはヒト様モノクローナル抗体を産生するための一般的な方法には、例えば、ネズミ抗体のヒト化、異なる複雑性のライブラリーからの抗体の単離、およびヒトIg遺伝子座がトランスジェニックであるマウス(「異種マウス」)において古典的な方法を使用するハイブリドーマの産生がある。しかし、ネズミモノクローナル抗体のヒト化は、面倒で不完全な手順である。ランダムな抗体ライブラリーは不偏のレパートリーを表し、したがって、それらを使用して高度に保存された抗原に対する抗体特異性を選択することができるが、低アフィニティーの抗体をもたらす。抗原感作B細胞から選択したライブラリーは特定の特異性が富化しているが、原型VH-VL対を保っておらず、原型抗体レパートリー中に存在する抗体より、抗原に対する低いアビディティーを有する抗体を一般にもたらす。異種マウスは選択した抗原に対して免疫化することができるが、このシステムは、古典的なネズミハイブリドーマ技術、ヒト以外の種において抗体を選択する制限を共有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、ステップ(i)中のB細胞はナイーブB細胞である、すなわちB細胞は、事前に被験体とする抗原と接触していない。したがって本発明は、抗原特異的抗体のde novo産生のための改善された方法を提供する。
【0139】
B細胞は、ヒトB細胞であることが好ましい。
【0140】
一態様では、不死化Bリンパ球の作製方法であって、(i)Bリンパ球をex vivoで本明細書に記載する作製物または組成物、すなわち、支持体および支持体に連結されたBCR結合性抗原を含むBCR媒介内在化が可能な作製物、または作製物および適切な担体を含む組成物の存在下で、不死化するステップを含む方法を提供する。
【0141】
上記で論じたように、不死化は任意の適切な方法によって実施することができる。
【0142】
一態様では、望ましい抗原特異性を有するモノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)Bリンパ球をex vivoで本明細書に記載する作製物または組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0143】
不死化は任意の適切な方法、例えば前に論じた方法によって実施することができる。
【0144】
該方法は、形質転換されたリンパ球を抗原特異性についてスクリーニングするステップをさらに含むことができる。この方法は、不死化Bリンパ球を単離するステップをさらに含むことができる。
【0145】
ステップ(i)および(ii)は順々に、または同時に実施することができる。
【0146】
一態様では、望ましい抗原特異性を有するヒトモノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)本明細書に記載する作製物または組成物の存在下において、Bリンパ球を含むかまたはBリンパ球からなる細胞集団を不死化するステップ
を含む方法を提供する。
【0147】
該方法は、
(ii)形質転換されたリンパ球を抗原特異性についてスクリーニングするステップをさらに含むことができる。
【0148】
該方法は、(iii)不死化Bリンパ球を単離するステップをさらに含むことができる。
【0149】
上記の方法中で、Bリンパ球は、未分化もしくはナイーブBリンパ球もしくは記憶Bリンパ球または両者の混合物であってよい。B細胞は哺乳動物(または非ヒト哺乳動物)などの任意の起源であってよいが、ヒトB細胞であることが好ましい。
【0150】
いくつかの実施形態では、不死化するB細胞は、被験体とする抗原に事前に接触させた生物から得た記憶Bリンパ球である。したがって、本明細書に記載する作製物または組成物を使用して記憶Bリンパ球を再活性化することができ、本発明は、記憶Bリンパ球を再活性化するための改良された方法を提供する。記憶Bリンパ球は、ヒトであることが好ましい。その全容が参照として本明細書に組み込まれるWO2004/076677は、ポリクローナルB細胞活性剤の存在下で形質転換ウイルスを使用してヒトB記憶リンパ球を形質転換するステップを含む、不死化ヒトB記憶リンパ球を生成する方法を記載している。ポリクローナルB細胞活性剤(CpG配列など)は、EBV不死化およびEBV不死化細胞のクローニングの有効性を高めることが分かった。
【0151】
Liら(Liら、PNAS March 7、2006、vol 103:3557〜3562)は、特異的抗体を産生する細胞株を作製するために、初代B細胞を使用する方法を記載している。この方法は、特異的抗体を分泌する不死化B細胞を作製するために、初代B細胞とT細胞の混合物を前記抗原にex vivoで曝すことを必要とする。前に記載した方法は、T細胞の不在下で実施することができる。
【0152】
上記の方法は、T細胞の不在下でのBリンパ球の使用をさらに含むことができる。
【0153】
形質転換されるB細胞は、任意の適切な種由来、および様々な供給源由来(例えば、全血由来、末梢血単核球細胞(PBMC)由来、血液培養物由来、骨髄由来、器官由来など)であってよい。B細胞は、ヒトB細胞であることが好ましい。ヒトB細胞を得るのに適した方法は、当技術分野でよく知られている。サンプルは、記憶B細胞ではない細胞、例えば他の血液細胞を含むことができる。
【0154】
当技術分野で知られている方法を使用することによって、望ましい抗原特異性を示す特異的Bリンパ球亜集団を、不死化ステップの前に選択することができる。
【0155】
B細胞のスクリーニングおよび単離
形質転換B細胞を望ましい抗原特異性を有するものに関してスクリーニングし、次いで個々のB細胞クローンを陽性細胞から生成することができる。スクリーニングステップは、組織または細胞(トランスフェクト細胞を含む)の染色によるELISA、中和アッセイ、または望ましい抗原特異性を確認するための当技術分野で知られているいくつかの他の方法の1つによって実施することができる。アッセイは単純な抗原認識に基づいて選択することができ、または他の望ましい機能に基づいて選択して、例えば、単なる抗原結合抗体ではなく中和抗体を選択することができ、例えば、それらのシグナル伝達カスケード、それらの形状、それらの増殖率、他の細胞に影響を与えるそれらの能力、他の細胞もしくは他の試薬によるまたは状態の変化による影響に対するそれらの応答性、それらの分化状態などの、標的細胞の特性を変えることができる抗体を選択することができる。
【0156】
陽性細胞の混合物から個々のクローンを分離するためのクローニングステップは、限界希釈法、マイクロマニピュレーション、細胞選別による単細胞沈着、または当技術分野で知られている別の方法を使用して実施することができる。クローニングは、限界希釈法を使用して実施することが好ましい。
【0157】
本発明の方法は、望ましい抗原特異性を有する抗体を産生する不死化B細胞を生成する。したがって、本発明は、取得可能な不死化B細胞クローン、または本発明の方法によって得られる不死化B細胞クローンを提供する。これらのB細胞は、様々な方法で、例えば、モノクローナル抗体の供給源として、被験体とするモノクローナル抗体をコードする核酸(DNAまたはmRNA)の供給源として、細胞療法のための患者への送達用、研究用などで使用することができる。
【0158】
本発明は、取得可能なモノクローナル抗体、または本発明のB細胞クローンから得られるモノクローナル抗体を提供する。本発明は、これらのモノクローナル抗体の断片、特に抗体の抗原結合活性を保持する断片も提供する。
【0159】
抗原
任意の適切な抗原を本発明に従い使用することができる。
【0160】
予防もしくは治療的ワクチン接種、または例えば、悪性腫瘍、感染性疾患またはアレルギーなどの疾患の治療を目的とする医薬組成物中で使用する場合、抗原は、真核細胞(例えば、腫瘍、寄生虫、真菌)、細菌細胞、ウイルス粒子またはその任意の一部分に由来してよい。
【0161】
本発明に従い有用な抗原の例には、(i)照射プラスモジウム種虫などのマラリア特異的抗原またはマラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含む合成ペプチド抗原(以下参照);(ii)ウイルスタンパク質またはペプチド抗原、インフルエンザウイルス(例えば、表面糖タンパク質ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)[七面鳥インフルエンザHAまたは鳥インフルエンザウイルスA/Jalisco/95H5HAなど);免疫不全ウイルス(例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗原、サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原、またはヒト免疫不全ウイルス抗原(HIV)、gp120、gp160、p18抗原など[実施例2中に記載、以下参照])、Gagp17/24、Tat、Pol、Nef、およびEnv;ヘルペスウイルス(例えば、糖タンパク質、例えば、ネコヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV、例えば、HSVtk、gB、gD)、マレック病ウイルス、ヘルペスウイルスまたは七面鳥(HVT)、またはサイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタインバールウイルス)由来;肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原(HBsAg))由来;パピローマウイルス;ウシ白血病ウイルス(例えば、gp51、30エンベロープ抗原);ネコ白血病ウイルス(FeLV)(例えば、FeLVエンベロープタンパク質、ニューキャッスル病ウイルス(NDV)抗原、例えばHNまたはF);ラウス関連ウイルス(RAV-1envなど);伝染性気管支炎ウイルス(例えば、マトリクスおよび/またはプレプロマー);フラビウイルス(例えば、日本脳炎ウイルス(JEV)抗原、黄熱病抗原、またはデングウイルス抗原);モルビリウイルス(例えば、イヌジステンパー抗原、麻疹抗原、または牛疫抗原、HAまたはFなど);狂犬病(例えば、狂犬病糖タンパク質G):パルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス抗原);ポックスウイルス(例えば、欠肢症抗原、カナリアポックスウイルス抗原、または家禽類ポックスウイルス抗原);ニワトリポックスウイルス(水痘帯状抗原);伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス(例えば、VP2、VP3、またはVP4);ハンターンウイルス;ムンプスウイルス由来のものなど、(iii)細菌抗原、グラム陰性菌の細胞壁から単離したリポ多糖、およびブドウ球菌特異的、連鎖球菌特異的、肺炎球菌特異的(例えば、PspA[PCT公開No.WO92/14488参照])、淋菌(Neisseria gonorrheaa)特異的、ボレリア特異的(例えば、ボレリアブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi)、ボレリアアフゼリ(Borrelia afzelli)、およびボレリアガリニ(Borrelia garinii)などのライム病と関係があるボレリアのOspA、OspB、OspC抗原[例えば、米国特許第5,523,089号;PCT公開No.WO90/04411、WO91/09870、WO93/04175、WO96/06165、WO93/08306;PCT/US92/08697; Bergstromら、Mol.Microbiol.、3:479〜486、1989;Johnsonら、Infect.and Immun.60:1845〜1853、1992;Johnsonら、Vaccine13: 1086〜1094、1995;The Sixth International Conference on Lyme Borreliosis:Progress on the Development of Lyme Disease Vaccine、Vaccine13:133〜135、1995]を参照)、およびシュードモナス特異的タンパク質またはペプチド、(iv)真菌抗原、カンジダ、白癬菌属、またはピティロスポリウムから単離された真菌抗原、および(v)腫瘍特異的タンパク質、例えばErbB受容体、MelanA[MART1]、gp100、チロシナーゼ、TRP-1/gp75、およびTRP-2(メラノーマ中);MAGE-1およびMAGE-3(膀胱、頭頸部、および非小細胞癌中);HPVEGおよびE7タンパク質(子宮頸癌中);Mucin[MUC-1](乳、膵臓、結腸、および前立腺癌中);前立腺特異的抗原[PSA](前立腺癌中);癌胎児性抗原[CEA](結腸、乳癌および消化管癌中)、ならびにMAGE-2、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-10、MAGE-12、BAGE-1、CAGE-1、2、8、CAGE-3〜7、LAGE-1、NY-ESO-1/LAGE-2、NA-88、GnTV、およびTRP2-INT2などの共通腫瘍特異的抗原などがあるが、これらだけには限られない。
【0162】
本発明に従い使用する抗原、およびそれらの作製方法の例は、参照として本明細書に組み込まれるUS2007/0,231,344中に記載されている。
【0163】
組成物用の抗原を選択および調製するための方法、および本明細書に記載する治療法は、当業者に知られている。このような抗原の代表例には、病原性細菌、マイコバクテリウムまたはウイルスの被覆膜または外側膜、細胞、例えば癌細胞由来の脂質、グリカンまたはペプチド、または合成分子由来の抗原があるが、これらだけには限られない。特異的抗原決定基が知られている例では、これをカップリング反応中で使用することができ、かつ本発明の目的のために、これらの例において「抗原」として考える。
【0164】
抗原には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、グリカンなどの多糖、多糖コンジュゲート、多糖のペプチドおよび非ペプチド模倣体、および他の分子、小分子、脂質、糖脂質、および炭水化物があるが、これらだけには限られない。
【0165】
本明細書に記載する作製物および方法を使用して、例えば小分子ペプチド、例えばホスホペプチドなどの修飾ペプチド、または炭水化物などの、典型的には微弱な免疫原である抗原に対する免疫応答を生成することができる。したがって、本発明に従い使用する抗原は、例えば、ペプチド、例えばホスホペプチドなどの修飾ペプチド、または炭水化物を含むことができる。抗原は、例えばペプチド、ホスホペプチド、または炭水化物であってよい。
【0166】
抗原ペプチドは、MHC分子上の抗原提示細胞によって提示される。Tヘルパー細胞(TH細胞)はMHCクラスII分子と相互作用する。活性化に応答して、TH細胞はB細胞の活性化に貢献するサイトカインを分泌する。MHCクラスII分子は、一般に約15〜24アミノ酸長であるペプチドと結合する。より短鎖またはより長鎖のペプチドはMHCクラスIIによって提示される可能性はなく、したがってTH細胞応答を誘導することはできない。
【0167】
しかし、適切な長さを有するペプチドでさえ、TH細胞受容体が、その特異的配列のために、MHC分子と結合したペプチドを認識することができない(すなわち、ペプチドがT細胞エピトープを欠く可能性がある)場合、強力なTH細胞応答を誘導することができない可能性がある。
【0168】
したがって、本発明の作製物および方法は、TH細胞応答を誘導しない(可溶性形態で投与したとき、すなわち、本明細書に記載する支持体と連結しない)抗原に対する、免疫応答を誘導することができる。
【0169】
したがって、一態様において、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導または増強するための方法であって、支持体および支持体に連結した前記抗原を含む作製物を被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が支持体に連結されているか、または前記作製物と共に投与されるかのいずれかであり、可溶性形態、すなわち、支持体と連結していない抗原が、被験体に投与したときTH細胞応答を誘導することができない方法を提供する。本文脈中の「誘導」は、可溶性形態の抗原が抗原特異的免疫応答を誘導することはできない一方で、抗原が本明細書に記載する支持体と連結すると、免疫応答が誘導され得る状況を指す。本文脈中の「増強」は、可溶性形態の抗原が微弱な抗原特異的免疫応答のみを誘導する一方で、抗原が本明細書に記載する支持体と連結すると、より強い免疫応答が誘導され得る状況を指す。抗原は、例えば、ペプチド、ホスホペプチド、または炭水化物を含むことができる。抗原は、例えばペプチド、ホスホペプチド、または炭水化物であってよい。
【0170】
被験体に抗原を投与するための方法は当技術分野でよく知られている。一般に、本明細書に記載する抗原、すなわち粒子状抗原は、例えば、例えば静脈内、筋肉内、または皮下投与、経皮、粘膜、鼻腔内、皮内または気管内投与などの非経口投与、または経口投与などの、任意の手段によって被験体に直接投与することができる。抗原は全身または局所に投与することができる。
【0171】
抗原は、細菌、マイコバクテリア、ウイルス、真菌および寄生虫に由来してよい。特定の微生物由来の抗原を使用して、その微生物の感染を予防および/または治療することができることは理解されよう。抗原が由来し得る微生物の一覧を以下に与える。
【0172】
細菌には、グラム陰性菌およびグラム陽性菌があるが、これらだけには限られない。グラム陽性菌には、パスツレラ種、ブドウ球菌種、および連鎖球菌種があるが、これらだけには限られない。グラム陰性菌には、大腸菌、シュードモナス種、およびサルモネラ種があるが、これらだけには限られない。伝染性細菌の具体例には、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア種(例えば、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)、トリ型結核菌(M.avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラレ(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサイ(M.kansaii)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(連鎖球菌A群)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)(連鎖球菌B群)、連鎖球菌(ビリダンス連鎖球菌群)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイド種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシリス・モニリフォルミス(Streptobacilliis moniliformis)、トレポネーマ・パリジウム(Treponema pallidium)、トレポネーマ・パーテニュー(Treponema pertenue)、レプトスピラ、リケッチア、およびイスラエル放線菌(Actinomyces israelli)があるが、これらだけには限られない。
【0173】
ウイルスには、エンテロウイルス(ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどのピコルナウイルス科であるウイルスを含むが、これらだけには限られない)、ロタウイルス、アデノウイルス、ヘパティタス(hepatitus)があるが、これらだけには限られない。ヒト中で発見されているウイルスの具体例には、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV-1など(HTLV-III、LAVまたはHTLV-III/LAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる;および他の分離株、HIV-LPなど;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、リノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水泡性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水泡性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(大部分のアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(バリオラウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);および非定型ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の薬剤(B型肝炎ウイルスの欠陥付随体であると考えられる)、非A型、非B型肝炎の薬剤(クラス1=内部感染;クラス2=非経口感染(すなわちC型肝炎);ノーウォークおよび関連ウイルス、およびアストロウイルス)があるが、これらだけには限られない。
【0174】
ヒトと非ヒト脊椎動物の両方に感染するウイルスには、レトロウイルス、RNAウイルスおよびDNAウイルスがある。このレトロウイルス群には、単純レトロウイルスと複合レトロウイルスの両方がある。単純レトロウイルスには、B型レトロウイルス、C型レトロウイルスおよびD型レトロウイルスの亜群がある。B型レトロウイルスの一例は、マウス乳癌ウイルス(MMTV)である。C型レトロウイルスには、亜群C型群A(ラウス肉腫ウイルス(RSV)、トリ白血病ウイルス(ALV)、およびニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)含む)およびC型群B(マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス肉腫ウイルス(MSV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、脾臓壊死ウイルス(SNV)、細網内皮症ウイルス(RV)およびサル肉腫ウイルス(SSV)を含む)がある。D型レトロウイルスには、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)およびサルレトロウイルス1型(SRV-1)がある。複合レトロウイルスには、レンチウイルス、T細胞白血病ウイルスおよび泡沫状ウイルスの亜群がある。レンチウイルスはHIV-1を含むが、HIV-2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)も含む。T細胞白血病ウイルスには、HTLV-I、HTLV-II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)、およびウシ白血病ウイルス(BLV)がある。泡沫状ウイルスには、ヒト泡沫状ウイルス(HFV)、サル泡沫状ウイルス(SFV)およびウシ泡沫状ウイルス(BFV)がある。
【0175】
脊椎動物中で抗原である他のRNAウイルスの例には、オルトレオウイルス属(哺乳動物とトリレトロウイルスの両方の様々な血清型)、オルビウイルス属(ブルータングウイルス、ユーゲナンジーウイルス(Eugenangee virus)、ケメロボウイルス、アフリカウマ病ウイルス、およびコロラドマダニ熱ウイルス)、ロタウイルス属(ヒトロタウイルス、ネブラスカ子ウシ下痢ウイルス、マウスロタウイルス、サルロタウイルス、ウシまたはヒツジロタウイルス、トリロタウイルス)を含めた、レオウイルス科のメンバー、エンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスAおよびB、腸内細胞変性ヒトオーファン(ECHO)ウイルス、A型肝炎ウイルス、サルエンテロウイルス、マウス脳脊髄炎(ME)ウイルス、ポリオウイルスムリス(Poliovirus muris)、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルス、カルジオウイルス属(脳心筋炎ウイルス(EMC)、メンゴウイルス)、リノウイルス属(少なくとも113の亜型を含むヒトリノウイルス;他のリノウイルス)、アプトウイルス属(口蹄疫ウイルス(FMDV)を含めた、ピコルナウイルス科、ブタ水疱性発疹ウイルス、サンミゲルアシカウイルス、ネコピコルナウイルスおよびノーウォークウイルスを含めた、カルシウイルス科、アルファウイルス属(東部ウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクグンヤウイルス、オニョンニョンウイルス(O'Nyong-Nyong virus)、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱病ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介性ウイルス、極東ダニ媒介性ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病IIIウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(ルベラウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、豚コレラウイルス、ボーダー病ウイルス)を含めた、トガウイルス科、ブニヤウイルス属(ブニヤンベラおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(スナバエ熱シチリアウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス)、およびウクウイルス属(ウクニエミおよび関連ウイルス)を含めた、ブンヤウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒト亜型);ブタインフルエンザウイルス、ならびにトリおよびウマインフルエンザウイルス、インフルエンザB型(多くのヒト亜型)、およびインフルエンザC型(考えられる別の属)を含めた、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、赤血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2〜5型、ニューキャッスル病ウイルス、ムンプスウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、ニューモウイルス属(呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルスおよびマウス肺炎ウイルス)を含めた、パラミクソウイルス科、森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクグンヤウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱病ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介性ウイルス、極東ダニ媒介性ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、跳躍病IIIウイルス、ポワッサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(ルベラウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、豚コレラウイルス、ボーダー病ウイルス)、ブニヤウイルス属(ブニヤンベラおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎群ウイルス)、フレボウイルス属(スナバエ熱シチリアウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス)、およびウクウイルス属(ウクニエミおよび関連ウイルス)を含めた、ブンヤウイルス科、インフルエンザウイルス属(インフルエンザウイルスA型、多くのヒト亜型);ブタインフルエンザウイルス、ならびにトリおよびウマインフルエンザウイルス、インフルエンザB型(多くのヒト亜型)、およびインフルエンザC型(考えられる別の属)を含めた、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、赤血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2〜5型、ニューキャッスル病ウイルス、ムンプスウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性全脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、ニューモウイルス属(呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルスおよびマウス肺炎ウイルス)を含めた、パラミクソウイルス科、ベシクロウイルス(VSV)、カンジプラウイルス(Chandipura virus)、Flanders-Hart Parkウイルス)属、リッサウイルス属(狂犬病ウイルス)、魚類ラブドウイルス、および2つの考えられるラブドウイルス(マーブルグウイルスおよびエボラウイルス)を含めた、ラブドウイルス科、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCM)、タカリベウイルス複合体、およびラッサウイルスを含めた、アレナウイルス科、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、マウス肝炎ウイルス、ヒト腸内コロナウイルス、およびネコ伝染性腹膜炎(ネココロナウイルス)を含めた、コロナウイルス科があるが、これらだけには限られない。
【0176】
脊椎動物に感染する例示的なDNAウイルスには、オルトポックスウイルス属(大痘瘡、小痘瘡、サル痘ワクシニア、牛痘、バッファロー痘、ウサギ痘、欠肢症)、レポリポックスウイルス属(粘液腫、線維腫)、アビポックスウイルス属(鶏痘、他のトリポックスウイルス)、カプリポックスウイルス属(ヒツジ痘、ヤギ痘)、スイポックスウイルス属(豚痘)、パラポックスウイルス属(伝染性膿疱性皮膚炎ウイルス、偽牛痘、ウシ丘疹性口内炎ウイルス)を含めた、ポックスウイルス科、イリドウイルス科(アフリカ豚コレラウイルス、カエルウイルス2および3、魚類のリンパ膿腫ウイルス)、α-ヘルペスウイルス(単純ヘルペス1および2型、水痘帯状、ウマウイルス性流産、ウマヘルペスウイルス2および3、偽狂犬病ウイルス、伝染性ウシ角結膜炎ウイルス、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス)、β-ヘルペスウイルス(ヒトサイトメガロウイルスならびにブタ、サルおよびげっ歯類のサイトメガロウイルス);γ-ヘルペスウイルス(エプスタインバールウイルス(EBV)、マレック病ウイルス、リスザル属ヘルペスウイルス、クモザル属ヘルペスウイルス、ワタオウサギ属ヘルペスウイルス、モルモットヘルペスウイルス、リュッケ腫瘍ウイルス)を含めた、ヘルペスウイルス科、マストアデノウイルス属(ヒト亜群A、B、C、D、Eおよび非分類;サルアデノウイルス(少なくとも23の血清型)、伝染性イヌ肝炎、およびウシ、ブタ、ヒツジ、カエルおよび多くの他の種のアデノウイルス、アビアデノウイルス属(トリアデノウイルス);および非培養アデノウイルスを含めた、アデノウイルス科、パピローマウイルス属(ヒトパピローマウイルス、ウシパピローマウイルス、ショープラビットパピローマウイルス、および多種の様々な病原性パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス属(ポリオーマウイルス、サル空砲化因子(SV-40)、ウサギ空砲化因子(RKV)、Kウイルス、BKウイルス、JCウイルス、および他の霊長類ポリオーマウイルス、リンパ球向性パピローマウイルスなど)を含めた、パポウイルス科、アデノ随伴ウイルス属、パルボウイルス属(ネコ汎白血球減少症ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、アリューシャンミンク病ウイルスなど)を含めた、パルボウイルス科があるが、これらだけには限られない。最後に、DNAウイルスは、クールー病およびクロイツフェルトヤコブ病ウイルスおよび慢性感染性神経障害性因子(CHINAウイルス)などの前述の科に適合しないウイルスを含むことができる。
【0177】
真菌は、そのわずか数種が脊椎哺乳動物中で感染を引き起こす真核生物である。真菌は真核生物であるので、それらは大きさ、構造的構成、ライフサイクルおよび増殖機構が原核細菌と著しく異なる。真菌は一般に形態学的特徴、生殖形態および培養特性に基づいて分類される。真菌は、真菌抗原の吸入後に被験体中で呼吸アレルギーなどの異なる型の疾患、毒キノコによって生成されるアマタトキシンおよびファロトキシン、およびアスペルギルス種によって生成されるアフロトキシンなどの、毒性物質の摂取による真菌中毒を引き起こす可能性があるが、全ての真菌が感染性疾患を引き起こすわけではない。
【0178】
感染性真菌は、全身または表在感染を引き起こす可能性がある。原発性全身感染は正常で健康な被験体中で起こる可能性があり、日和見感染は、免疫不全被験体において最も頻繁に見られる。原発性全身感染を引き起こす最も一般的な真菌因子には、ブラストミセス、コクシジオイデス、およびヒストプラズマがある。免疫不全または免疫抑制被験体中で日和見感染を引き起こす一般的な真菌には、カンジダアルビカンス(通常気道のフローラの一部である生物)、クリプトコッカスネオフォルマンス(時折気道の正常フローラ中に存在)、および様々なアスペルギルス種があるが、これらだけには限られない。全身真菌感染は、内部器官の侵襲的感染である。生物は通常、肺、消化管、または静脈ラインを介して身体に入る。これらのタイプの感染は、原発性病原性真菌または日和見真菌によって引き起こされる可能性がある。
【0179】
真菌には、小胞子菌または白癬菌種、すなわち、犬小胞子菌(microsporum canis)、石膏状小胞子菌(microsporum gypsum)、トリコフィチン・ラブラム(tricofitin rubrum)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blaslomyces dermatitidis)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)があるが、これらだけには限られない。
【0180】
寄生虫には、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、三日熱マラリア原虫(Plasmdodium vivax)、プラスモジウム・ノウレシ(Plasmodium knowlesi)、バベシアミクロチ(Babesia microti)、バベシア・ダイバージェンス(Babesia divergens)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、メジャーリーシュマニア(Leishmania major)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)および熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、トリパノソーマガンビエンス(Trypanosoma gambiense)、トリパノソーマ・ローデシエンス(Trypanosmoma rhodesiense)およびマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)があるが、これらだけには限られない。
【0181】
他の医学関連の微生物は、文献中に大々的に記載されている。例えば、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain 1983を参照。前述の一覧のそれぞれは例示的であり、制限的であることは意味しない。
【0182】
他の病原体には、淋菌、H.ピロリ、ブドウ球菌種、肺炎連鎖球菌などの連鎖球菌種、梅毒、SARSウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVウイルス、西ナイルウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、リノウイルスなどのウイルス、ジアルジア、および四日熱マラリア原虫(マラリア)などの寄生虫、およびヒト型結核菌などのマイコバクテリアがある。
【0183】
抗原は、微生物から生成される毒素または他の分子を含むことができる。このような分子の例は以下に与える。
【0184】
毒素の例には、アブリン、リシンおよびストリキニーネがある。毒素のさらなる例には、ジフテリア菌(ジフテリア)、百日咳菌(Bordetella pertussis)(百日咳)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(コレラ)、炭疽菌(炭疽病)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(ボツリヌス中毒症)、破傷風菌(破傷風)、および腸管出血性大腸菌(出血性下痢および溶血性尿毒症症候群)によって生成される毒素、黄色ブドウ球菌α毒素、シガ毒素(ST)、細胞毒性壊死因子1型(CNF1)、大腸菌熱安定性毒素(ST)、ボツリヌス毒素、破傷風神経毒素、黄色ブドウ球菌毒素性ショック症候群毒素(TSST)、アエロモナス細菌(Aeromonas hydrophila)のエアロリシン、クロストリジウムパーフリンジェンスのパーフリンゴリシンO、大腸菌のヘモリシン、リステリアモノサイトゲネスのリステリオリシンO、肺炎連鎖球菌のニューモリシン、化膿連鎖球菌のストレプトリシンO、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外毒素A、大腸菌DNF、大腸菌LT、大腸菌CLDT、大腸菌EAST、炭疽菌の浮腫因子、百日咳菌の皮膚壊死毒素、ボツリヌス菌のC2毒素、ボツリヌス菌のC3毒素、クロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素A、およびクロストリジウムディフィシレの毒素Bがある。
【0185】
細菌のさらなる例には、連鎖球菌種、ブドウ球菌種、シュードモナス種、クロストリジウムディフィシレ、レジオネラ種、肺炎球菌種、ヘモフィルス種(例えば、インフルエンザ菌)、クレブシエラ種、エンテロバクター種、シトロバクター種、ナイセリア種(例えば、髄膜炎菌、淋菌)、シゲラ種、サルモネラ種、リステリア種(例えば、リステリアモノサイトゲネス)、パスツレラ種(例えば、パスツレラムルトシダ)、ストレプトバシラス種、スピリルム種、トレポネーマ種(例えば、トレポネーマパリジウム)、アクチノミセス種(例えば、イスラエル放線菌)、ボレリア種、コリネバクテリウム種、ノカルジア種、ガルドネレラ種(例えば、ガルドネレラバギナリス)、カンピロバクター種、スピロヘータ種、プロテウス種、バクテリオデス種およびピロリ菌があるが、これらだけには限られない。
【0186】
ウイルスのさらなる例には、HIV、単純ヘルペスウイルス1および2(脳炎、新生児および生殖器型含む)、ヒトパピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、A、BおよびC型肝炎ウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、インフルエンザAウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水泡性口内炎ウイルス、天然痘、サル痘およびSARSウイルスがあるが、これらだけには限られない。
【0187】
使用することができる真菌のさらなる例には、カンジダ症、白癬、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、パラコクシジオイデス症、クリプトコッカス症、アスペルギルス症、クロモミコーシス症、菌腫、シュードアレシェリア症、およびでん風があるが、これらだけには限られない。
【0188】
使用することができる寄生虫のさらなる例には、アメーバ症、クルーズトリパノソーマ、肝臓ジストマ症(例えば、肝蛭(Facioloa hepatica))、リーシュマニア症、プラスモジウム(例えば、熱帯熱マラリア原虫、プラスモジウムノウレシ、四日熱マラリア原虫)オンコセルカ症、肺吸血症、トリパノソーマブルーセイ(Trypanosoma brucei)、ニューモシスティス(例えば、ニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii))、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、テニア、膜様条虫(例えば、小形条虫(Hymenolepsis nana)、エキノコックス、住血吸虫症(例えば、マンソン住血吸虫)、神経嚢虫症、アメリカこう虫(Necator americanus)、およびヒト鞭虫(Trichuris trichuria)などの、原虫および線虫があるが、これらだけには限られない。
【0189】
使用することができる病原体のさらなる例には、クラミジア、ヒト型結核菌、ハンセン菌(M.leprosy)、およびリケッチアがあるが、これらだけには限られない。
【0190】
癌を有するかまたは癌を発症するリスクを有する被験体中で使用することができる抗原には、癌抗原があるが、これだけには限られない。癌抗原には、HER2(p185)、CD20、CD33、GD3ガングリオシド、GD2ガングリオシド、癌胎児性抗原(CEA)、CD22、乳ムチンコアタンパク質、TAG-72、ルイスA抗原、OV-TL3およびMOv18などの卵巣関連抗原、抗体9.2.27.HMFG-2.SM-3、B72.3.PR5C5、PR4D2などによって認識される高Mrメラノーマ抗原があるが、これらだけには限られない。他の癌抗原は米国特許第5,776,427号中に記載されている。
【0191】
癌抗原は様々な方法によって分類することができる。癌抗原は、染色体変化を経た遺伝子によってコードされる抗原を含む。これらの抗原の多くは、リンパ腫および白血病において見られる。この分類内でさえ、不活性遺伝子の活性化に関与する抗原として抗原を特徴付けすることができる。これらは、BCL-1およびIgH(マントル細胞リンパ腫)、BCL-2およびIgH(濾胞性リンパ腫)、BCL-6(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、TAL-1およびTCR-またはSIL(T細胞急性リンパ性白血病)、c-MYCおよびIgHまたはIgL(バーキットリンパ腫)、MUN/IRF4およびIgH(メラノーマ)、PAX-5(BSAP)(免疫細胞腫)を含む。
【0192】
染色体変化に関与し、それによって新規な融合遺伝子および/またはタンパク質をもたらす他の癌抗原には、RAR-、PML、PLZF、NPMまたはNuMA(急性前骨髄球性白血病)、BCRおよびABL(慢性骨髄性/急性リンパ性白血病)、MLL(HRX)(急性白血病)、E2AおよびPBXまたはHLF(B細胞急性リンパ性白血病)、NPM、ALK(未分化大細胞型白血病)、およびNPM、MLF-1(骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病)がある。
【0193】
他の癌抗原は、組織または細胞系統に特異的である。これらは、細胞表面タンパク質、CD20、CD22(非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL))、CD52(B細胞CLL)、CD33(急性骨髄性白血病(AML))、CD10(gp100)(共通(前B)急性リンパ性白血病および悪性メラノーマ)、CD3/T細胞受容体(TCR)(T細胞リンパ腫および白血病)、CD79/B細胞受容体(BCR)(B細胞リンパ腫および白血病)、CD26(上皮およびリンパ性悪性疾患)、ヒト白血球抗原(HLA)-DR、HLA-DP、およびHLA-DQ(リンパ性悪性疾患)、RCAS1(婦人科癌、胆管腺癌および膵管腺癌)、および前立腺特異的膜抗原(前立腺癌)などを含む。
【0194】
組織または系統特異的癌抗原は、表皮増殖因子受容体(高発現)、EGFR(HER1またはerbB1)およびEGFRvIII(脳、肺、乳、前立腺および胃癌)、erbB2(HER2またはHER2/neu)(乳房腫瘍および胃癌)、erbB3(HER3)(腺癌)、およびerbB4(HER4)(乳癌)なども含む。
【0195】
組織または系統特異的癌抗原は、細胞関連タンパク質、チロシナーゼ、メラン-A/MART-1、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-1/gp75(悪性メラノーマ)、多型上皮ムチン(PEM)(乳房腫瘍)、およびヒト上皮ムチン(MUC1)(乳、卵巣、結腸および肺癌)なども含む。
【0196】
組織または系統特異的癌抗原は、分泌タンパク質、モノクローナル免疫グロブリン(多発性骨髄腫および形質細胞腫)、免疫グロブリン軽鎖(多発性骨髄腫)、--フェトプロテイン(肝臓癌)、カリクレイン6および10(卵巣癌)、ガストリン放出ペプチド/ボムベシン(肺癌)、および前立腺特異的抗原(前立腺癌)なども含む。
【0197】
さらに他の癌抗原は、精巣、およびいくつかの場合は胎盤などの、いくつかの正常な組織中で発現される癌精巣(CT)抗原である。それらの発現は様々な系統の腫瘍中で一般的であり、一群として抗原は免疫療法の標的を形成する。CT抗原の腫瘍発現の例には、MAGE-A1、-A3、-A6、-A12、BAGE、GAGE、HAGE、LAGE-1、NY-ESO-1、RAGE、SSX-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85およびPRAMEがある。CT抗原およびそれらが発現される癌のさらに他の例には、SSX-2、および-4(神経芽細胞腫)、SSX-2(HOM-MEL-40)、MAGE、GAGE、BAGEおよびPRAME(悪性メラノーマ)、HOM-TES-14/SCP-1(髄膜腫)、SSX-4(乏突起神経膠腫)、HOM-TES-14/SCP-1、MAGE-3およびSSX-4(星状細胞腫)、SSXメンバー(頭部および頸部癌、卵巣癌、リンパ腫瘍、結腸直腸癌および乳癌)、RAGE-1、-2、-4、GAGE-I、-2、-3、-4、-5、-6、-7および-8(頭部および頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC))、HOM-TES14/SCP-1、PRAME、SSX-1およびCT-7(非ホジキンリンパ腫)、およびPRAME(急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性リンパ球性白血病(CLL))がある。
【0198】
他の癌抗原は、特定の組織または細胞系統に特異的でない。これらは、癌胎児性抗原(CEA)ファミリーのメンバー、CD66a、CD66b、CD66c、CD66dおよびCD66eを含む。これらの抗原は多くの異なる悪性腫瘍中で発現される可能性があり、免疫療法によって標的化することができる。
【0199】
さらに他の癌抗原はウイルスタンパク質であり、これらはヒトパピローマウイルスタンパク質(子宮頸癌)、およびEBVコード核抗原(EBNA)-1(頸部および口腔癌のリンパ腫)を含む。
【0200】
さらに他の癌抗原は、CDK4およびβ-カテニン(メラノーマ)などだけには限られないが、これらの突然変異または異常に発現された分子である。
【0201】
さらに他の癌抗原は、MART-1/Melan-A、gp100、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、FAP、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)--C017-1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)、CAP-1、CAP-2、etv6、AML1、前立腺特異的抗原(PSA)、PSA-1、PSA-2、PSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3ゼータ鎖、およびCD20からなる群から選択することができる。癌抗原は、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5)からなる群から選択することもできる。さらに別の実施形態では、癌抗原は、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9からなる群から選択される。および別のさらなる実施形態では、癌抗原は、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、[α]-フェトプロテイン、E-カドヘリン、[α]-カテニン、P-カテニン、[γ]-カテニン、p120ctn、gp100<Pmel117>、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2ガングリオシド、GD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳内グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、およびc-erbB-2からなる群から選択される。
【0202】
抗原はタンパク質性抗原であってよい。抗原は、非ヒト哺乳動物酵素などの酵素抗原であってよい。抗原は、例えば、ニワトリ卵リゾチーム(HEL)またはニワトリガンマグロブリン(CGG)であってよい。抗原は、in vitroモデル系に有用な抗原であってよい。
【0203】
さらなる態様では、本発明は、1つまたは複数の製薬上許容される担体または希釈剤と結合した本発明の作製物を含む医薬組成物、およびヒトまたは動物被験体の治療または予防のための免疫療法の方法における前記組成物の使用をさらに提供する。医薬組成物は、可溶性免疫刺激剤をさらに含むことができる。
【0204】
製薬上許容される担体または希釈剤は、経口、直腸、鼻腔、局所(頬側および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下および硬膜外を含む)投与に適した製剤中で使用されるものを含む。製剤は単位剤形で好都合に存在することができ、薬剤分野でよく知られている任意の方法によって調製することができる。
【0205】
本明細書に記載する作製物および組成物を使用して、in vitroまたはin vivoにおいて増大した免疫応答を誘導することができる。それらを使用して、抗原の免疫原性を増大することができる。本発明は、本明細書に記載する作製物および組成物と、標的細胞、典型的にはB細胞を接触させて、抗原特異的BCR媒介免疫応答を誘導するステップを含む方法を提供する。支持体と結合した抗原の密度(およびそれ故、アビディティー)を本明細書に記載する方法で調節して、望ましい効果を得る。
【0206】
本発明の作製物および組成物を被験体に投与して、疾患を治療、予防または緩和することができる。前記疾患は、本発明の組成物および作製物を用いた治療の影響を受けやすい任意の疾患、例えば癌などの悪性疾患、および感染疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患であってよい。本発明の作製物および組成物を用いた被験体の治療は、他の治療と組合せることができる。
【0207】
一態様では、本発明は、被験体における抗原特異的BCR媒介免疫応答を誘導する方法であって、本明細書に記載する有効量の作製物または組成物を被験体に投与して、特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップを含む方法を提供する。
【0208】
一態様では、本発明は、抗原に対するBCR媒介免疫応答を誘導する方法であって、有効量の、(i)支持体、(ii)支持体に連結された少なくとも1つのBCR結合性抗原、および任意により、(iii)支持体に連結された少なくとも1つの免疫刺激剤を含む作製物、または前記作製物を含む組成物を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。抗原は、抗原特異的免疫応答のBCR媒介活性化を可能にするのに十分な密度(およびそれ故、アビディティー)で、支持体上に存在する。方法は予防的または治療的ワクチン接種に使用することができる。
【0209】
一態様では、本発明は、抗原に対するBCR媒介免疫応答を誘導する方法であって、有効量の、(i)支持体、および(ii)支持体に連結された少なくとも1つのBCR結合性抗原を含む作製物(またはこの作製物を含む組成物)を被験体に投与するステップを含み、可溶性免疫刺激剤を被験体に同時に投与するステップをさらに含む方法を提供する。抗原は、抗原特異的免疫応答のBCR媒介活性化を可能にするのに十分な密度(およびそれ故、アビディティー)で、支持体上に存在する。方法は予防的または治療的ワクチン接種に使用することができる。
【0210】
本発明の作製物および組成物を投与するのに適した方法は、当技術分野で知られている。任意の適切な投与法を使用することができる。
【0211】
被験体は非ヒト哺乳動物、例えばウサギ、ヒツジ、モルモットなどであってよい。被験体はヒトであってよい。被験体は健康な被験体であってよく、あるいは本明細書に記載する作製物、組成物または方法を用いた治療の影響を受けやすい疾患に罹患していてよく、またはその疾患に罹患している疑いがあってよい。疾患は、例えば、かつ非制限的に、癌などの悪性疾患、寄生虫による感染などの感染疾患、またはアレルギー、または一般的に自己免疫疾患であってよい。
【0212】
一態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原の免疫原性を増強するための方法であって、支持体および支持体に連結された前記抗原を含む作製物を被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が支持体に連結されているか、または前記作製物と共に投与されるかのいずれかである方法を提供する。
【0213】
一態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原の免疫原性を増強するための方法であって、本明細書に記載する作製物または組成物を被験体に投与するステップを含み、抗原が抗原特異的免疫応答の活性化を可能にするのに十分な密度(およびそれ故、アビディティー)で支持体上に存在する方法を提供する。
【0214】
「増強」は、免疫応答の期間の増大または延長を意味すると理解される。したがって、免疫応答を誘導しない、または微弱な免疫応答を誘導する可能性がある抗原でさえ、可溶形において単独で投与すると、本明細書に記載する作製物で投与すると、強い免疫応答を誘導することができる。したがって、抗原に対する免疫応答は、可溶または粒子形態での抗原単独の投与と比較して増大する。免疫応答はさらに、抗原および可溶性免疫刺激剤の投与と比較して増大する。
【0215】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物の製造方法であって、以下のステップ:
(a)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、および任意により
(b)支持体に免疫刺激剤を連結させるステップを含む方法を提供する。ステップ(b)は任意によりステップ(a)の前に実施することができる。
【0216】
さらなる態様では、本発明は、被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を増強する方法であって、以下のステップ:
(a)抗原を支持体に連結させるステップ、および
(b)支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
任意によりステップ(a)および(b)を逆順で実施する
ならびに
(c)支持体を被験体に投与するステップを含み、
抗原が特異的BCR活性化を可能にするのに十分な密度(およびそれ故、アビディティー)で支持体上に存在する方法を提供する。
【0217】
あるいは、免疫刺激剤は支持体に連結させず、ただし一緒に被験体に投与する。
【0218】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物の調製での使用のための支持体であって、免疫刺激剤が連結されている支持体を提供する。
【0219】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物または組成物を被験体に投与するステップを含む、被験体におけるBCR媒介の、抗原特異的免疫応答を強化する方法を提供する。
【0220】
さらなる態様では、本発明は、細胞による免疫刺激剤の特異的取り込みを誘導する方法であって、以下のステップ:
(i)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)前記支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
および(iii)特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするように調製した支持体と細胞を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0221】
細胞はBCRを発現し、典型的にはB細胞である。このように調製した支持体は、したがってB細胞による内在化に適している。細胞は組織または被験体中に存在してよい。
【0222】
さらなる態様では、本発明は、B細胞による免疫刺激剤の非特異的取り込みを阻害するための方法であって、前記B細胞との接触前に支持体に前記免疫刺激剤を連結させるステップを含む方法を提供する。BCR結合性抗原などの抗原を支持体に連結させることが可能である。
【0223】
阻害は部分的阻害、すなわち非特異的取り込みの限定または制限を含む。支持体における免疫刺激剤の提示はB細胞による非特異的取り込みを妨げる。BCR結合性抗原が支持体と連結する場合、非特異的取り込みの予防または限定は、BCRの関与を介した支持体の増大した特異的取り込みをもたらす。
【0224】
さらなる態様では、本発明は、抗原特異的免疫応答を誘導するために細胞にBCR結合性抗原および免疫刺激剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)第1の密度で、BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)前記支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ、
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
(iii)このようにして得た支持体を細胞に接触させるステップ、
(iv)抗原媒介活性化について細胞を試験するステップ、
任意により支持体において様々な抗原密度でステップ(ii)〜(iv)を繰り返すステップを含む方法を提供する。
【0225】
ワクチン-抗体の作製-医学的用途
さらなる態様では、本発明は、BCR媒介免疫応答のための予防的または治療的ワクチン接種用の、本明細書に記載する作製物および方法の使用を提供する。
【0226】
本発明は、ヒトおよび/または他の被験体中の免疫応答を刺激するために使用することができる、疾患の予防および/または治療に(これらだけには限られないが)有益であり得る、作製物、組成物および方法を提供する。本明細書で使用するように、被験体の治療は、被験体にいくらかの治療的または予防的利点を与えることを意味する。これは、特定の状態と関係がある症状を部分的または完全に低減することによって生じ得る。しかし、被験体の治療は、特定状態の被験体の治癒に限られない。
【0227】
本明細書に記載する作製物、組成物および方法はワクチンとして使用することができる。それらは予防的または治療的ワクチン接種に使用することができる。
【0228】
本明細書に記載する作製物または組成物は免疫応答を刺激し、抗原と結合する抗体を含めた、免疫分子の産生をもたらす。本発明は、症状の数、重度および/または期間を低減するのに十分なワクチンを含む。ワクチンは遊離型の抗原を含有することもでき、このような抗原は支持体上の抗原と同じであるか、またはそれらと異なってよい。
【0229】
前に記載した作製物または組成物以外に、ワクチンは、その有効性を改善するのに望ましい可能性がある、塩、バッファー、アジュバントおよび他の物質、または賦形剤を含むことができる。適切なワクチン成分および有効な組成物の調製法に関する一般的な指針の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Osol、A、ed.、Mack Publishing Co.、(1990))などの標準テキスト中に見ることができる。いずれの場合も、本明細書に記載する作製物または組成物は、有効量、すなわち望ましい影響をもたらす量で存在しなければならない。ワクチンの他の成分は生理的に許容可能でなければならない。本発明のワクチンは、単回または多数回用量のいずれかの有効量の作製物または組成物によって投与することができる。
【0230】
ワクチンは一般に、有効量、すなわち望ましい免疫応答を誘導するのに十分な量投与する。
【0231】
非経口経路(例えば注射)、吸入、局所または経口投与を含めた当技術分野で知られている任意の経路によって、被験体にワクチンを投与することができる。適切な方法には、例えば、筋肉内、静脈内、または皮下注射、または皮内もしくは鼻腔投与がある。注射用調製物中に使用することができる適切な担体には、滅菌水溶液(例えば、生理食塩水)または非水溶液および懸濁液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルなどがある。治療および投与戦略は、標準的な参照文献によって与えられる指針を使用して開発することができる(例えば、子供の治療に関しては、N.Engl.J.Med.345(16):1177〜83(2001)を参照、および、成人の治療に関しては、Arch.Intern.Med154(22):2545〜57(1994)、臨床試験の総説に関しては、Arch.Intern.Med28、154(4):373〜7(1994)を参照)。
【0232】
症状が出現した後に、ワクチンを被験体に投与して疾患を治療することができる。これらの場合、症状の発現後可能な限り早く治療を開始すること、および状況に応じて、他の治療、例えば、抗生物質の投与、または化学療法または放射線療法などの抗癌治療とワクチン投与を組合せることは有利であり得る。
【0233】
さらなる態様では、本発明は、抗原に対する抗体などの免疫分子の製造方法であって、前記方法が、本発明の作製物または組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および前記哺乳動物から免疫血清を回収するステップを含む方法を提供する。この方法により取得可能な免疫血清も本発明の一部である。
【0234】
抗体断片を含めた、モノクローナル抗体、および異なる型の抗体を含めた、血清および抗体を産生する方法は、当技術分野で知られている(Roitt's Essential Immunology、eleventh edition、Blackwell Publishing)。
【0235】
抗体産生法は、本明細書に記載する作製物または組成物で哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジまたはサル)を免疫化することを含む。抗体は当技術分野で知られている様々な技法のいずれかを使用して免疫化した動物から得ることができ、好ましくは被験体とする抗原と抗体の結合を使用して、スクリーニングすることができる。
【0236】
例えば、ウエスタンブロッティング技法または免疫沈降を使用することができる(Armitageら、1992、Nature357:80〜82)。抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであってよい。
【0237】
抗体はいくつかの方法で修飾することができる。実際、用語「抗体」は、必要とされる特異性で結合ドメインを有する任意の特異的な結合物質を含むとして解釈されるはずである。したがって、この用語は、天然または合成であれ、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含めた、抗体の抗体断片、誘導体、機能的同等物およびホモログを含む。哺乳動物の免疫化の代替または捕捉として、適切な結合特異性を有する抗体を、例えば、それらの表面上に機能的免疫グロブリン結合ドメインを示すラムダバクテリオファージまたは繊維状バクテリオファージ使用して、発現した免疫グロブリン可変ドメインの組換えにより生成したライブラリーから得ることができる。例えばWO92/01047を参照。
【0238】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する作製物または組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および前記哺乳動物から抗体を回収するステップを含む、特異的抗体の製造を促進する方法を提供する。
【0239】
抗原特異的血清または特異的抗体の生成における、本明細書に記載する方法、作製物および/または組成物の使用は、(可溶性免疫刺激剤ありまたはなしの)抗原を用いた免疫化と比較して、免疫化と特異的抗体が免疫化被験体中で生成する間の時間間隔を短縮する。言い換えると、本明細書に記載する方法を使用するとき、従来の免疫化法と比較して、特異的抗体をより早く検出および回収することができる。
【0240】
これは臨床業務において利点がある。例えば、短縮されたワクチン接種間隔は、例えば旅行者などの、限られた時間枠内に確かな免疫化を必要とする人々にとって有益である。
【0241】
前に論じたように、本明細書に記載する作製物および方法は、所与の抗原に対する免疫応答の増強をさらにもたらす。これはさらなる臨床的および実用的利点を与える。例えば、増大した免疫応答によってワクチンの投与数を減らすことができる。例えば、HBV予防ワクチンは、典型的には第0、1および6ヵ月に3回の投与で与える。人々は第0および1ヵ月にワクチンを受けるが、最後の6ヵ月投与で復帰しないことが多い。確かな免疫化を実施するのに必要な投与数を減らすことができることは、したがって有益である。増大した免疫応答を誘導することができることは、弱化または低下した応答性の免疫系を有する個体、例えば老人などのワクチン接種にさらに有益である。典型的には、ワクチンを用いた正常な投与サイクルがこれらの個体において確かな免疫化を確定することができない場合、個体はさらなる投与を受けなければならない。本発明の作製物および方法を使用して、強力な応答をこれらの個体において獲得し、過剰な投与ステップを不要にすることもできる。
【0242】
したがって、本明細書に開示する方法および作製物は、短縮された時間内および/または少ない投与での免疫化の実施を可能にする。
【0243】
短縮された応答時間および増大した応答は、投与される薬剤に対する迅速および強力な応答が治療のために重要である、治療および療法においても有益であり、または患者の迅速な回復および/または症状の早い緩和を可能にする。
【0244】
したがって、本明細書に記載するのは、抗原特異的BCR媒介免疫応答を促進するための、方法、作製物および組成物である。
【0245】
ワクチンを用いた免疫化によって生成する免疫分子、例えば抗体は別の個体に移植することができ、したがって受動的に免疫を移行することができる。
【0246】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載する方法によって取得可能な抗体を含有する免疫血清を被験体に投与するステップを含む、疾患に対する受動免疫化方法を提供する。
【0247】
本発明の作製物および組成物には医薬品としての有用性がある。
【0248】
B細胞と比べて樹状細胞への薬剤の優先的な送達
本発明者らは、可溶性免疫刺激剤はB細胞によって非特異的に取り込まれる一方で、支持体に連結した免疫刺激剤はB細胞によって取り込まれず(図1B、C)、依然として樹状細胞によって内在化されること(図19)を示している。したがって、薬剤を支持体に連結させることによって、B細胞による取り込みを妨げ、代わりに樹状細胞への優先的な送達を実施することが可能である。したがって、例えば、ヒトの血液中のB細胞の数は樹状細胞の数より多いので、薬剤を可溶形で投与する場合、大部分の薬剤分子はB細胞によって一般に取り込まれる。したがって、樹状細胞への十分な送達を実施するにはより多くの薬剤を投与する必要がある。本発明の方法を使用して、樹状細胞への指向性(特異的)送達(B細胞と比べて樹状細胞への優先的な送達)を実施することができる。これにはいくつかの利点がある。薬剤は樹状細胞により有効に送達され、B細胞によって取り込まれないので、より少ない薬剤を投与することができる。さらに、B細胞の低減した非特異的活性化があるので、少数のまたは重症度の低い副作用が予想され得る。
【0249】
さらなる態様では、本発明は、B細胞に対して樹状細胞に優先的に薬剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)薬剤を支持体に連結させるステップ、
(ii)B細胞および樹状細胞を含む細胞集団と支持体に連結させた薬剤を接触させるステップ
を含む方法を提供する。
【0250】
支持体はBCR抗原を含まず、したがってB細胞によるBCR媒介の取り込みは誘導することができない(または、BCR媒介の取り込みを誘導し得る量のBCR抗原を含まない)。
【0251】
方法はin vivoまたはin vitroで実施することができる。
【0252】
さらなる態様では、本発明は、被験体においてB細胞に対して樹状細胞に優先的に薬剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)薬剤を支持体に連結させるステップ、
(ii)支持体上の薬剤を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0253】
いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0254】
いくつかの実施形態では、薬剤は上記の免疫刺激剤である。いくつかの実施形態では、支持体は上記の支持体と同様である。
【実施例】
【0255】
実施例1
免疫刺激脂質
材料および方法
抗原、脂質調製物およびミクロスフェアコーティング
HELおよびOVAはSigmaから購入し、CGGはJackson Immuno Researchから購入した。必要な場合、スルホ-NHS-LC-LC-ビオチン(Pierce)を使用することによって抗原をビオチン化した。1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)およびN-Capビオチニル-ホスファチジルエタノールアミン(PE-ビオチン)は、Avanti Polar Lipidsから購入した。αGalCerはAlexis Biochemicalから購入した。IMM47はDr Vincenzo Cerundoloから提供された(WO2007/050668)。αGalCer-Alexa488の合成は、Alexa Fluor 488(Invitrogen)を使用してビオチン化αGalCer(36)の合成に使用した方法に基づいた。DOPC/PE-ビオチン(98/2、m/m)またはDOPC/PE-ビオチン/αGalCer (88/2/10、m/m/m)を含有するリポソームの調製用に、脂質をアルゴン下で乾燥させ、激しく混合しながらトリス25mM/NaCl 150mM、pH7.0中に再縣濁した。
【0256】
シリカミクロスフェア(100nm)はKisker GbRから購入した。コーティング用に、ミクロスフェアをリポソームとインキュベートし、次にストレプトアビジンおよび飽和量のビオチン化タンパク質を加えた。異なるHEL密度/アフィニティーでコーティングしたビーズ用に、抗原はビオチン化(Fab'2)-F10抗HEL抗体を使用することによって粒子と結合させた。異なる抗原密度を必要とした場合、ビオチン化抗体を異なる量のビオチン化CGGと競合させた。ビーズ上のHELの密度は、抗HELモノクローナル抗体を使用してFACSによって検出した。抗原とリポソームコーティングビーズの結合は、ウエスタンブロットによって検出した。粒子と結合したαGalCerの量の定量化用に、それらはαGalCer-Alexa488を含有するリポソームでコーティングした。リポソームコーティングビーズからの蛍光強度はEnVision Multilabel Readerを使用することによって測定し、異なる量のαGalCer-Alexa488含有リポソームの蛍光強度と関連付けた。
【0257】
マウスおよび細胞株
MD4、D1.3、D1.3-H2、およびJα18-/-マウスを交配し、Cancer Research UKおよびJohn Radcliffe Hospital、Oxfordの動物施設で飼育した。C57BL/6マウスはCharles Riverから購入した。全ての実験は、Cancer Research UK Animal Ethics CommitteeおよびUnited Kingdom Home Officeによって承認された。iNKTハイブリドーマDN32.D3は、A.Bendelac(University of Chicago、Chicago、IL)によって提供された。
【0258】
B細胞精製および提示アッセイ
脾臓B細胞を、B細胞精製キット(Miltenyi Biotec)を使用して99%を超える純度で陰性選択によって富化した。αGalCer提示の分析用に、B細胞はαGalCerおよび/またはHELを含有する粒子と一晩インキュベートし、よく洗浄し、同数のDN32.D3細胞と共にウェル当たり5×104個の細胞で培養した。NKTの活性化は、培養物上清中のIL-2産生を測定することによってアッセイした。遮断実験用に、iNKT細胞とのインキュベーション前に、MD4 B細胞を抗CD1d遮断抗体(25μg/ml;クローン1B1)と2時間インキュベートした。
【0259】
養子移植およびFACS分析
5百万〜1千万個のMD4 B細胞を2μMのCFSE(Molecular Probes)で標識し、αGalCerおよび/またはHELを含有する粒子と共に野生型C57BL/6またはJα18-/-マウスへの尾静脈注射によって養子移植した。5日後、レシピエントマウス由来の脾臓を採取し、脾臓細胞は前に記載されているように(37)表面分子および細胞内HEL結合に関して染色した。
【0260】
免疫化
異なる抗原および/またはαGalCerを含有する1〜10μlのビーズをマウスに腹腔内免疫化した。抗原特異的なIgのレベルはELISAによってマウス血清において測定した。
【0261】
ELISAおよびELISPOT
培養物の上清中のIL-2の濃度は、JES6-1A12捕捉抗体(BD Pharmingen)を使用してELISAにより決定した。ビオチン化JSE6-5H4(BD Pharmingen)は検出用に使用した。マウス血清中の特異的抗体は、抗原(HEL、OVAまたはCGG)でコーティングしたプレートおよび血清の連続希釈を使用して測定した。結合抗体はビオチン標識ヤギ抗マウスIgM、IgG、IgG1、IgG2b、IgG2cまたはIgG3(BD Pharmingen)を用いて検出した。
【0262】
抗HEL抗体分泌細胞の出現率をELISPOTによって検出した。脾臓細胞の単細胞縣濁液はHELコーティングマルチスクリーン濾過プレート(Millipore)中で15〜18時間インキュベートした。スポットはヤギ抗マウスビオチン化IgMa、次にストレプトアビジン-ペルオキシダーゼおよび3-アミノ-9-エチル-カルバゾール(Sigma)で明らかにした。
【0263】
免疫組織化学
脾臓のクリオスタット切片(10μm厚)を固定し、ラット抗マウスCD45R/B220(BD Biosciences)で染色した。HEL+細胞は、HEL(200ng/ml)次に抗HEL F10抗体alexa-488の添加によって検出した。胚中心はPNA-ビオチン(Vector Labs)およびストレプトアビジン-alexa633で染色した。
【0264】
結果
本発明者らは、免疫応答の発生中に抗原特異的B細胞にiNKT細胞の補助を向けることの影響を熱心に調べた。この目的のために、本発明者らは、αGalCerの存在下においてDOPCおよびPE-ビオチンを含有するリポソームでシリカビーズ(100nm)をコーティングした(図1A)。Alexa-488標識αGalCerを使用して、ビーズに搭載したαGalCerの量を定量化し、本発明者らは、これがビーズ1μl当たり150ng(108ビーズ/μl)であることを見出した。in vitroでαGalCerを提示するB細胞の能力を評価するために、マウスハイブリドーマ(DN32.D3)由来のiNKT細胞とのそのインキュベーションの前に、B細胞を粒子状または可溶性αGalCerで20時間刺激した。培養培地へのIL-2の分泌を使用してiNKT細胞の活性化を測定した。以前の報告と一致して(17)、可溶性αGalCerはB細胞によって効率よく提示され、IL-2産生を誘導した(図1B)。対照的に、粒子状αGalCerでの刺激において、本発明者らは、iNKT細胞からのIL-2産生の重大な弱化を観察した。したがってB細胞は、可溶性αGalCerに関して観察したものよりはるかに少ない粒子状脂質抗原を、非選択的な形式によって取り込んだ。
【0265】
iNKT細胞に対する粒子状抗原脂質のCD1d依存性提示はBCR媒介性の取り込みによって増大する
本発明者らは、ビオチン化ニワトリ卵リゾチーム(HEL)を、αGalCerを搭載した粒子またはαGalCerを搭載していない粒子と、ストレプトアビジンリンカーによって結合させた。結合タンパク質の合計量はウエスタンブロッティングを使用して推定した(図1A)。これらの粒子のBCR特異的な取り込みおよび提示を媒介するB細胞の能力を評価するために、本発明者らは、HEL特異的トランスジェニック初代B細胞(MD4)およびDN32.D3細胞を使用している。粒子状HEL-αGalCerで刺激したMD4 B細胞は、強いiNKT活性化を誘導した(図1C)。対照的に、粒子状HELまたはαGalCer単独とのインキュベーション後、IL-2産生を検出しなかった。さらに、αGalCerと結合した粒子状HELでの野生型B細胞の刺激後、iNKT活性化は観察されなかった。興味深いことに、(CD21highCD23lowB細胞集団のFACS選別によって精製した)辺縁帯のMD4 B細胞は、iNKT細胞に対して粒子状HEL-αGalCerを提示することに関して濾胞B細胞より有効であった(図6)。重要なことに、iNKT細胞の活性化はCD1dに対するモノクローナル抗体とB細胞のプレインキュベーションによって完全に遮断され、このプロセスはCD1d媒介提示に完全に依存することを示す(図1D)。これらの知見は、BCRによる特異的抗原認識は、iNKT細胞に対する粒子状脂質抗原の提示を劇的に増大させることができることを実証する。
【0266】
抗原アフィニティーの変化の影響を調べるために、本発明者らは、MD4 BCRに対して広範囲のアフィニティーを示す様々なHELタンパク質を使用している(HELWTKa=2.1×1010M-1;HELRDGNKa=5.2×107M-1;HELRKDKa=8.0×105M-1)(18)。図1Eおよび1F中に示すように、抗原の最高密度で、本発明者らは、粒子状αGalCerと結合した抗原のアフィニティーとは無関係に、類似したレベルのiNKT細胞活性化を観察した。興味深いことに、低アフィニティーのHELRKD抗原でさえiNKTに対する粒子状αGalCerの提示を増大する。しかし、粒子表面上のこの抗原の密度を20倍低下させることによって、粒子状αGalCerの提示は消失した(図1F)。したがって、これらの発見は、非常に低アフィニティーの抗原でさえ、それらがBCRの刺激に関する厳重に規制されたアビディティー閾値を超えるという条件で、有効な粒子状αGalCerの提示を誘導することができることを示す。
【0267】
BCR抗原の認識は必要であるが、それは最適なB細胞提示を誘導するのに十分ではない。本発明者らは、HELに対して高いアフィニティーでシグナル伝達欠損BCR(IgM-H2)を発現するトランスジェニックB細胞は、iNKT活性化を誘導する低い能力を示したことを観察した(図1G)。これらの知見と一致して、αGalCerまたはGal(α1→2)αGalCerのいずれかと結合した粒子状HELは、同様に強力なiNKT細胞の活性化をもたらした(図1H)。Gal(α1→2)αGalCerは、それがiNKT細胞によって効率よく認識され得る前に、細胞内プロセシングを必要とするので(19)、脂質含有ビーズは、iNKT細胞に対する提示前にB細胞に内在化すると結論付けることができる。
【0268】
さらに、本発明者らは、IMM47として知られる別のiNKT細胞アゴニストを使用することによって、記載した知見の広範囲の用途を実証している。αGalCerと同様に、本発明者らは、粒子状IMM47は抗原と結合したとき、IL-2の産生を介してin vitroでiNKT細胞の刺激をもたらしたことを観察した(図1I)。
【0269】
したがって、BCR媒介性の抗原認識および内在化が、iNKT細胞に対する粒子状αGalCerのB細胞媒介の提示に必要とされる。
【0270】
粒子状αGalCerのBCR媒介性の取り込みはiNKT細胞補助の動員をもたらし、in vivoでの広範囲のB細胞増殖および抗体産生につながる
粒子状抗原脂質のBCR媒介性の取り込みは、in vitroでiNKT細胞活性化をもたらすことを実証したので、本発明者らは、活性化に対する粒子状αGalCerのBCR媒介性の取り込みの影響、およびin vivoでのB細胞の運命を調べた。この目的のために、MD4マウス由来のCFSE標識HEL特異的B細胞を、他のアジュバントの不在下において結合αGalCer有りまたはなしで、粒子状HELを用いて静脈内チャレンジしたC57BL/6レシピエントに養子移植した。刺激後第5日に、レシピエントマウスの脾臓を採取し、HEL特異的B細胞集団中のCFSEの希釈を、B細胞増殖の指標として使用した。
【0271】
図2A中に示すように、αGalCerと結合した粒子状HELに応答したHEL特異的B細胞の広範囲の増殖を観察し、5日後、MD4 B細胞は全脾臓リンパ細胞の7%より多くを構成する。これらのHEL特異的B細胞は養子移植したMD4細胞に由来した。それらはC57BL/6の粒子状HEL-αGalCerによる刺激後に検出されなかったからである。重要なことに、粒子状αGalCerまたはHEL単独のいずれかによるチャレンジ後に増殖を検出しなかった。HEL自体は、C57BL/6バックグラウンドでT細胞依存性の応答を誘導することができないからである(20)。さらに、HEL特異的B細胞の増殖はiNKT細胞の存在に依存した。レシピエントとしてJα18-/-マウスを使用した同様の養子移植実験においてそれを観察しなかったからである(図2B)。
【0272】
脾臓切片の免疫組織化学的分析によって、HEL-αGalCer粒子に応答したHEL特異的B細胞の増殖を確認した(図2C)。興味深いことに、これらの増殖したHEL特異的B細胞は、脾臓のブリッジチャンネルおよび赤脾髄中に濾胞外フォーカスとして主に局在し、PCに特徴的な強い細胞質HEL染色を示した(図2C)。特異的PCの存在は、強い細胞内HEL染色およびCD138発現に基づいて、フローサイトメトリーによって確認した(図2D)。PC分化は高IgMa抗HEL抗体力価の産生を伴った(図2F)。これらの抗体は移植したMD4 B細胞のみに由来した。C57BL/6マウスによって産生される抗体はIgHbアロタイプであると考えられるからである。HEL特異的PCまたは抗HEL抗体は、粒子状HELまたはαGalCer単独でチャレンジしたマウス中では検出されなかった(図2DおよびF)。抗体分泌細胞も、HEL-αGalCer含有粒子でチャレンジしたレシピエント中でのみHEL特異的ELISPOTによって同定した(図2E)。さらに、脾臓HEL+CD138+細胞は、Jα18-/-マウスに養子移植したMD4 B細胞の粒子状HEL-αGalCerの刺激後に存在しなかった(図2DおよびF)。したがって、粒子状HEL-αGalCerに応答したHEL特異的B細胞のPC分化は、iNKT細胞の存在に依存した。
【0273】
特に、かつ本発明者らのin vitroでの知見と一致して、B細胞増殖および抗体産生は、粒子上に存在する抗原に対するBCRのアビディティーに依存した(図3A〜C)。粒子状αGalCerにおけるHELのアフィニティーまたは密度の低減は、低下したB細胞増殖および抗体産生をもたらした。したがって、粒子状αGalCerのBCR媒介内在化に関するアビディティー閾値はin vivoでも存在する。しかし、低アフィニティーの抗原でさえiNKTに対するαGalCerの提示を効率よく誘導することができ、B細胞応答の刺激を可能にすることは明らかである。
【0274】
粒子を介したタンパク質抗原と脂質抗原免疫刺激剤の連結は、可溶性αGalCerと共に投与した粒子状HEL単独に関して観察したものより、大幅に増大したB細胞増殖および抗体産生をもたらした(図3D〜F)。顕著なことに、これは、抗原脂質の特異的BCRによる取り込みは、可溶性αGalCerによって使用されたものより一層有効な内在化手段を表すことを示す。粒子状HEL-αGalCerによる刺激は、iNKT媒介特異的B細胞応答のより大きな刺激をもたらす。したがって本発明者らは、in vivoでの増大した特異的なB細胞増殖および機能的濾胞外PCの発生を可能にする、粒子状抗原脂質に関する戦略を確認している。
【0275】
αGalCerと結合した粒子状抗原による免疫化は特異的抗体応答を高める
B細胞の運命に対する抗原と結合した粒子状αGalCerの影響を考慮して、本発明者らは、in vivoで全身性免疫応答を誘導するそれらの能力を調べようと試みた。これを評価するために、本発明者らは、抗原としてニワトリガンマグロブリン(CGG)を使用する、一回用量の腹腔内免疫化戦略を使用している。CGGがマウスにおいて強力なT細胞依存性応答を誘導することは、以前から実証されている。C57BL/6およびJα18-/-マウスはαGalCerと結合した粒子状CGGでチャレンジし、7日および14日後に、ELISAを使用して特異的抗体応答を分析した。
【0276】
本発明者らは、αGalCerと結合した粒子状CGGによるC57BL/6マウスの免疫化7日後に早期に、高力価のIgMおよびクラス変更型IgGを含めた抗CGG抗体産生を検出した(図4A)。粒子状CGGまたはαGalCer単独で免疫化したマウスにおいて、この時点で特異的抗体は検出されなかった。粒子状CGGによるC57BL/6マウスとJα18-/-マウスの両方の免疫化によって、免疫化後の測定した時間行程全体で類似した特異的抗体応答をもたらした(図4B)。対照的に、αGalCerと結合した粒子状CGGによる免疫化は、Jα18-/-マウスと比較してC57BL/6マウス中で特異的CGG抗体産生の劇的な増大を誘導した。これは、抗原と結合した粒子状αGalCerに応答した特異的抗体産生に関するiNKTの条件を実証する。重要なことに、抗原としてCGGを使用して観察したのと同じパターンのクラス変更型抗原特異的抗体を、αGalCerと結合した粒子状HELによるC57BL/6マウスの免疫化にに対する応答で検出した(図4C)。したがって、免疫化後iNKT細胞は、特異的CD4+ヘルパーT細胞の動員なしで、特異的抗体産生およびクラス変更を効率よく活性化することができる。
【0277】
これまで本発明者らは、特異的BCR認識はiNKT細胞に対する粒子状抗原脂質の有効なB細胞提示に必要とされること、およびiNKT細胞補助の動員はB細胞活性化を調節することができることを実証している。しかし、本発明者らは、全身性免疫応答発生中の特異的抗体の産生における、抗原とαGalCerの同時取り込みの影響の評価に専念した。これに取り組むために、本発明者らは、粒子の2つの異なる組合せでC57BL/6マウスを免疫化した。第1群のマウスはαGalCerと結合した粒子状CGGおよび粒子状オボアルブミン(OVA)で免疫化し、第2群にはαGalCerと結合した粒子状OVAおよび粒子状CGGを投与した(図5A)。高レベルの特異的抗体が、αGalCerと結合した抗原に応答してそれぞれの群中で産生され、抗原-αGalCerの同時取り込みは、特異的B細胞活性化および抗体産生を高めることを示した(図5A)。特に本発明者らは、粒子状CGGおよび可溶性αGalCerと比較して、αGalCerと結合した粒子状CGGによる免疫化に応答した特異的抗体の産生の増大も観察した(図5B)。この結果は、本発明者らのin vivo増殖実験と一致して、粒子状αGalCerのBCR媒介性の取り込みは可溶性αGalCerの取り込みより一層有効であり、増大した特異的B細胞応答をもたらすことを実証する。
【0278】
実施例2
TLRアゴニスト
材料および方法(実施例1中に記載したものと異なる場合)
材料
ホスホロチオエート結合を有するビオチン化CpG OD1668は、Sigmaから購入した。ストレプトアビジンコーティングポリスチレンミクロスフェア(130nm)は、Bangs Laboratoriesから購入した。
【0279】
B細胞精製およびin vitro増殖
脾臓B細胞を、B細胞精製キット(Miltenyi Biotec)を使用して99%を超える純度で陰性選択によって富化した。MD4 B細胞は2μmのCFSEで標識し、1×106個の細胞で培養し、HELおよび/またはCpGを含有する粒子とインキュベートした。72時間後、細胞を採取し、フローサイトメトリー分析に施した。上清を回収し、IL-6およびHEL特異的IgMaの分泌はELISAによって決定した。
【0280】
粒子状抗原-CpGはin vitroでのB細胞増殖および分化を刺激する
本発明者らは、細胞内TLR応答を誘導するためのモデル系として、免疫刺激剤CpG、TLR9のアゴニストを使用している。最初に本発明者らは、抗原-BCR媒介性の取り込みが粒子状CpGが内在化されるのに必要とされたかどうか調べようと努めた。したがって、本発明者らは、ビオチン化CpGの有無の下においてビオチン化モデル抗原ニワトリ卵リゾチーム(HEL)で、ウイルスの大きさ(130nm)に匹敵するストレプトアビジンポリスチレンミクロスフェアをコーティングした。本発明者らは、典型的なウイルス病原体に直径が匹敵するストレプトアビジンポリスチレンビーズを使用して、それによって粒子状CpGがTLR9媒介B細胞応答を開始するメカニズムを調べた。HELによる粒子の首尾よいコーティングを、HEL特異的モノクローナル抗体F10を用いた染色によって(図11A)、フローサイトメトリーによって、およびウエスタンブロッティングによるポリクローナル抗体を用いたHELの検出によって実証した。CpGの存在はビーズ表面上でのHELの競合によって評価し、したがって、それは、HELおよびCpGコーティングビーズによるin vitro刺激3日後に採取したHEL CFSE標識MD4 HEL特異的トランスジェニックB細胞(Goodnowら、1988)とのF10の結合の低減として現れる。フローサイトメトリーを使用して、それぞれCFSEの希釈およびCD138発現のアップレギュレーションによって、B細胞増殖およびPC分化をモニターした。さらに、TLR9刺激と関係がある(Barrら、2007)IL-6分泌、および形質細胞分化によるIgM分泌は、培養物の上清において検出した。
【0281】
HELおよびCpGを含有するビーズによる刺激後、それらのCFSE希釈およびCD138アップレギュレーションによって実証されるように(図7A、左図)、MD4 B細胞が広範囲の増殖および形質細胞分化を経たことを観察した。上清において検出されるように、これはB細胞によるIL-6およびIgMaの分泌と相関関係があった(図7A、中央および右図)。重要なことに、HEL単独またはCpG単独のいずれかを含有するビーズによる刺激によって、増殖または形質細胞分化は観察されなかった(図7A)。
【0282】
したがって、粒子状CpGの取り込みは、その受容体に利用可能となるためにBCRによる抗原媒介内在化に依存することは明らかである。さらに、B細胞中のTLR9の同時関与は増殖およびPCへの分化をもたらす。
【0283】
抗原のアビディティーはin vitroでの粒子状抗原-CpGに対するB細胞の応答に影響を与える
実施例1で、粒子状抗原によるBCR刺激に対するB細胞の応答は全体的な抗原アビディティーに依存することを実証したので、本発明者らは、in vitroでのHELおよびCpGを含有するビーズによる刺激後の、B細胞増殖および分化に対する抗原アビディティーの影響を調べた。本発明者らは、以前に記載されたのと同様に(Batista and Neuberger、1998)一定範囲のBCRアフィニティーを含む3つのHEL突然変異体、高アフィニティー突然変異体HELRD(Ka8×108M-1);中アフィニティー突然変異体HELKD(Ka4×106M-1);および低アフィニティー突然変異体HELRKD(Ka8×105M-1)を使用している。ビーズに固定化された抗原の量が同等であることを確実にするため、ビオチン化F10を様々なHEL抗原とストレプトアビジンビーズのリンカーとして使用した。さらに、本発明者らは、初期コーティング期中に様々な濃度のビオチン化CGGを含めて、異なる密度を有するビーズも作製して、ストレプトアビジンビーズとの結合に関してビオチン化F10と競合させた(図11B)。
【0284】
本発明者らは、高または中アフィニティーHELおよびCpGを含有するビーズにより刺激したMD4 B細胞は、相当な増殖および分化を経たことを観察した(図8A)。しかし、低アフィニティーHELおよびCpGを含有するビーズによる刺激後、MD4 B細胞はIL-6またはIgMaのいずれも分泌しなかった。したがって、抗原アフィニティーの閾値が、BCR媒介内在化を誘導しTLR9依存性B細胞増殖およびPC分化を刺激するために必要とされるようである。この抗原アフィニティー閾値を観察したので、本発明者らは、ビーズ上にコーティングされた抗原の密度に対するB細胞応答の依存性を調べた。高および中アフィニティー抗原の場合、本発明者らは、B細胞増殖および分化(図7Cおよびデータ示さず)、およびIgMaおよびIL-6の産生(図7C)は、抗原密度に依存したことを観察した。最も低い抗原アフィニティーでは、B細胞増殖および分化(図7Cおよびデータ示さず)、またはIgMaおよびIL-6は、最高密度の抗原コーティングビーズにおいてさえ検出することができなかった。
【0285】
したがって、本発明者らは、in vitroにおいてTLR9媒介B細胞増殖および分化の程度を決定する際の、アフィニティーと密度の両方の観点で抗原アビディティーの重要性を実証している。したがって、本発明者らは、BCRと抗原の間の相互作用の全体的強度は、ビーズの効率のよい取り込みおよびその後のTLR9関与の発生に関して定義された閾値を超えなければならないことを示唆する。
【0286】
粒子状抗原-CpGはin vivoでB細胞増殖および分化を刺激する
本発明者らは、in vitroでの粒子状抗原-CpGを用いた刺激によるTLR9媒介B細胞増殖および形質細胞分化を観察しているので、本発明者らは、in vivoでの粒子状抗原-CpGの投与後に類似したB細胞挙動が誘導されるかどうか確認しようと努めた。これに取り組むために、CFSE標識MD4 B細胞とHELおよびCpGを含有するミクロスフェアを、野生型レシピエントマウスに同時投与した。養子移植4日後に、脾臓B細胞を前と同様にCFSE希釈に関して分析した。形質細胞は、前に記載したようにCD138アップレギュレーションおよびHELに対する高い細胞内結合によって明らかになった。さらに、血清中のHEL特異的IgMaレベルを測定した。
【0287】
本発明者らは、MD4 B細胞と、HELとCpGの両方を含有するビーズとの同時注射は、HEL特異的B細胞の広範囲の増殖をもたらしたことを観察した(図8A)。さらに、フローサイトメトリーにより測定して、これらの細胞の約65%がPCを形成した。それらの存在は、血清中で測定したIgMa分泌によって確認した(図2A、右図)。対照的に、MD4 B細胞とHELのみを含有するビーズとの同時注入は、特異的T細胞補助の不在下ではB細胞増殖またはPCへの分化を刺激するのに十分ではなかった(図8A)。さらに、粒子状CpGのみによる刺激は、B細胞増殖および分化を誘導することができなかった。したがって、本発明者らは、in vivoでのPC分化を促進するために、粒子状CpGのBCR媒介内在化が必要とされることを実証している。
【0288】
抗原アビディティーはin vivoで粒子状抗原-CpGに対するB細胞の応答に影響を与える
in vitroでの粒子状抗原およびCpGによる刺激後に抗原の全体アビディティーとB細胞応答の間の関係が観察されたので、本発明者らは、前に作製した様々なHELおよびCpGビーズを使用して、in vivoでCFSE標識MD4 B細胞を刺激した。
【0289】
本発明者らは、高または中間アフィニティーHEL突然変異体のいずれかと結合したCpGを含有するビーズによる刺激後に、広範囲のB細胞増殖を観察した(図9A、上図)。これは、CD138のアップレギュレーション、細胞内HEL染色およびIgMaの産生によって実証されたように、類似したレベルのPC分化をもたらした(図9Aおよび9B)。対照的に、低アフィニティーHEL突然変異体およびCpGを含有するビーズは、それほど顕著でないB細胞増殖の刺激およびCD138+HEL特異的PCの3分の1の低減をもたらした(図9A)。予想通り、B細胞と抗原のみまたはCpGのみを含有するビーズとの同時注入は、抗原のアフィニティーとは無関係に、いかなる観察可能なB細胞増殖ももたらさなかった(データ示さず)。CpGの存在下において高度から中程度に高アフィニティーHEL突然変異体の抗原密度が低減することによって、増殖およびPC分化の程度が劇的に変わることはなかった(図9C、上図)。しかし、密度のさらなる低減は形成されるPCの割合の低減をもたらす(図9BおよびD、上図)。抗原密度の影響は低アフィニティーHEL抗原を使用するとより明らかであり、それを超えると抗原およびCpGを含有するビーズが取り込まれ、したがって、増殖および分化が刺激される特定の閾値が存在することを示す。in vivoで観察されたこの抗原アビディティー閾値はin vitroで観察された閾値より低いようであり、おそらくこれは、in vivoでのB細胞増殖および分化により好ましい環境によるものである。
【0290】
総合すると、本発明者らは、抗原-BCR相互作用のアビディティーは、in vivoでの粒子状抗原-CpG TLR9媒介B細胞増殖および形質細胞分化応答の程度を決定することを観察した。
【0291】
CpGと結合した粒子状抗原による免疫化は特異的抗体応答を高める
B細胞の運命に対する抗原と結合した粒子状CpGの影響を考慮して、本発明者らは、in vivoで全身性免疫応答を誘導するそれらの能力を調べようと努めた。これを評価するために、本発明者らは、抗原としてニワトリガンマグロブリン(CGG)を使用する、単回投与腹腔内免疫化戦略を使用した。CGGがマウスにおいて強力なT細胞依存性応答を誘導することは以前から実証されている。C57BL/6マウスをCpGと結合した粒子状CGGでチャレンジし、7日および14日後に、ELISAを使用して特異的抗体応答を分析した。
【0292】
本発明者らは、CpGと結合した粒子状CGGによるC57BL/6マウスの免疫化7日後の早期に、クラス変更型IgGを含めた特異的抗CGG抗体産生を検出した(データ示さず)。粒子状CGGまたはCpG単独で免疫化したマウスにおいて、この時点で特異的抗体は検出されなかった。第14日に、CGGのみを用いた免疫化によってIgGを検出することはできたが、CGGとCpGの両方がミクロスフェア上に存在した場合、力価は10倍高かった。興味深いことに、亜型IgG1のIgGは抗原単独または抗原とCpGのいずれかを用いた免疫化によって検出することができたが、一方サブクラスIgG2bおよびIgG2cへのクラス変更は、粒子をCGGとCpGの両方でコーティングした場合のみ起こった(図10A)。
【0293】
これまで本発明者らは、特異的BCR認識は、B細胞中での有効な細胞内TLR刺激に必要とされることを実証している。しかし、本発明者らは、全身性免疫応答発生中の特異的抗体の産生における、抗原とCpGの同時取り込みの影響の評価に専念した。これに取り組むために、本発明者らは、粒子の2つの異なる組合せでC57BL/6マウスを免疫化した。第1群のマウスはCpGと結合した粒子状CGGおよび粒子状オボアルブミン(OVA)で免疫化し、第2群にはCpGと結合した粒子状OVAおよび粒子状CGGを投与した(図10B)。高レベルの特異的抗体が、CpGと結合した抗原に応答してそれぞれの群で産生され、抗原とCpGの同時取り込みは、特異的B細胞活性化および抗体産生を高めることを示した。
【0294】
実施例3
αGalCerと結合した粒子状ホスホペプチドによる免疫化は特異的抗体応答を高める
本発明者らは、in vivoで全身性免疫応答を誘導する粒子状ホスホペプチドαGalCerコンジュゲートの能力を調べようと努めた。これに取り組むために、本発明者らは、抗原としてホスホペプチドを使用する、単回投与の腹腔内免疫化戦略を使用した。C57BL/6マウス(3群)を、αGalCerと結合した粒子状ホスホペプチド(10μl/マウス)または粒子状ホスホペプチドのみでチャレンジし、特異的抗体応答は免疫化0日および7日後にELISAを使用して分析した。
【0295】
材料および方法
抗原、脂質調製物およびミクロスフェアコーティング
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)およびN-Capビオチニル-ホスファチジルエタノールアミン(PE-ビオチン)(いずれもAvanti Polar Lipids)、DOPC/PE-ビオチン(98/2、m/m)またはDOPC/PE-ビオチン/αGalCer(88/2/10、m/m/m)を含有するリポソームの調製用に、脂質をアルゴン下で乾燥させ、激しく混合しながらトリス25mM/NaCl 150mM、pH7.0中に再縣濁した。αGalCerはAlexis Biochemicalから購入した。コーティング用に、シリカミクロスフェア(100nm;Kisker GbR)をリポソーム、次にストレプトアビジンおよびビオチン化タンパク質と共にインキュベートした。
【0296】
ホスホペプチドは、配列:ビオチン-GDTTST(ホスホ)FCGTPNY-アミドを有していた。
【0297】
免疫化およびELISA
野生型C57BL/6マウスはCharles Riverから購入した。ホスホペプチドおよび/またはαGalCerを含有する10μlのビーズをマウスに腹腔内免疫化し、血清中の抗原特異的なIgのレベルはELISAによって決定した。
【0298】
血清中の抗体はBSA-ペプチドコーティングプレートを使用することによってELISAにより測定した。異なる希釈のマウス血清をプレートに加え、洗浄し、マウス血清中のペプチド特異的IgMおよびIgG抗体を、検出用のビオチン標識ヤギ抗マウスIgMまたはIgG(BD Pharmingen)を使用することによって検出した。
【0299】
結果
本発明者らは、αGalCerと結合した粒子状ホスホペプチドによるC57BL/6マウスの免疫化7日後の早期に、高力価のIgMおよびIgGを含めた特異的抗ペプチド抗体産生を検出した(図14)。粒子状ホスホペプチド単独で免疫化したマウスにおいて、この時点で特異的抗体は検出されなかった。
【0300】
実施例4
材料および方法
HELおよびOVA(Sigma-Aldrich);CγG(Jackson Immuno Research);CFSE(Invitrogen);5'ビオチン化CpG1668 (Sigma-Genosys);および組換えIL-6(BD Biosciences)。HELRD、HELK、HELKDおよびHELRKDは前に記載されている(35)。0.13μmのストレプトアビジンコーティングミクロスフェア(Bangs Inc)および0.2μmのFluoSpheres Neutravidinミクロスフェア(Invitrogen)。
【0301】
抗体
マウスAgに対するモノクローナル抗体:抗CD138-PE(クローン281-2)および-ビオチン;抗CD45.2-PerCP-Cy5.5(10G);抗IL-6(MP5-20F3);抗IL-6-ビオチン(MP5-32C11);抗CD16/32(2.4G2);抗IgMa-ビオチン(DS-1);抗IgG1-ビオチン(A85-1);抗IgG2b-ビオチン(R12-3);抗IgG3-ビオチン(R40-82);および抗CD45R/B220(RA3-6B2)(いずれもBD Biosciences)。モノクローナル抗HEL F10は記載されている(36)。ポリクローナル抗マウス-IgG-HRP(Pierce);モノクローナル抗β-アクチン(AC-15)およびモノクローナル抗ニワトリ卵アルブミン(OVA-14)(いずれもSigma Aldrich);抗ホスホp38MAPキナーゼ(Thr180/Tyr182)および抗p38MAPキナーゼ抗体(いずれもCell Signalling)。マウスAgに対するポリクローナル抗体:抗IgM-ビオチン;抗IgG-ビオチン;抗IgG2c-ビオチン;抗IgM;抗IgG;抗IgG1;抗IgG2b;抗IgG2cおよび抗IgG3(全てSouthern Biotech Inc)。抗ニワトリリゾチーム(United States Biological)、AlexaFluor-488ヤギ抗マウスIgG(H+L)およびAlexaFluor-546ヤギ抗ラットIgG(H+L)(いずれもInvitrogen)。
【0302】
ミクロスフェアコーティング
ストレプトアビジンコーティングミクロスフェアを洗浄した後、ビオチン化CpGおよび/またはビオチン化Ag(OVA、HELまたはCγG)を加え、PBS中に再縣濁した。様々な密度においてHEL突然変異体でコーティングしたミクロスフェアを作製するために、ビオチン化抗HEL F10および/またはビオチン化CpGを、前に記載されているように初期コーティングに使用した(36)。
【0303】
B細胞の精製、標識および培養
脾臓B細胞を、B細胞精製キット(Miltenyi Biotec)を使用して99%を超える純度で陰性選択によって富化し、2μMのCFSEで標識した。B細胞は、10%のFCS(PAA Labs)、50μMのβ-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)、25mMのHepes(Invitrogen)および10単位/mlペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したRPMI-1640培地(Invitrogen)中で培養した。1μlの粒子で刺激した1×106個のCFSE標識B細胞を72時間のインキュベーション後に採取して、増殖および分化を評価した。
【0304】
DCの精製および培養
骨髄由来DCは、組換えGMCSF(R&D Systems)を添加した上記培地中で、マウス大腿骨由来の前駆細胞を培養することによって生成した。5日後、CD11c+マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して99%を超える純度でDCを富化した。
【0305】
養子移植および免疫化
1〜5×106個のCFSE標識MD4またはHyHel10 B細胞を、HELおよび/またはCpGを含有する1〜10μlの粒子と共に、野生型C57BL/6マウスへの尾静脈注射によって養子移植した。OVAまたはCγG(Agとして)および/またはCpGでコーティングした1〜10μlの粒子をマウスに腹腔内免疫化した。
【0306】
フローサイトメトリー
脾臓における増殖およびPC分化の検出は前に記載されている方法に基づいた(40)。簡単に言うと、脾臓の単一細胞縣濁液を調製し、サンプルは精製抗CD16/32でブロッキングした。HEL特異的B細胞はHEL、次に抗HEL F10-AlexaFluor-647を用いて検出した。PCは抗CD138-PEとのそれらの結合によって同定した。
【0307】
細胞内HEL結合を検出するために、B細胞をPFAに固定し、0.1%のサポニンを使用して浸透処理した。1μl/106個の細胞蛍光粒子で刺激した細胞への粒子の取り込みの程度は、3時間後フローサイトメトリーによって評価した。
【0308】
免疫学的アッセイおよび免疫組織化学法
前に記載されているのと類似した形式で(36)、ELISAを使用して血清抗原特異的IgMaおよびIgGおよびIL-6の産生を定量化した。PBS中の100μg/mlのHELまたはCγGでコーティングしたELISPOTプレートをブロッキングし、抗IgG-HRPまたは抗IgMa-ビオチンのいずれかによる発色前に、記載されているように脾臓細胞とインキュベートした(36)。脾臓切片の免疫組織化学法は前に記載されているように実施した(36)。
【0309】
結果
in vivo免疫化後CpGとAgの直接結合は特異的抗体応答を高める
本発明者らは最初に、AgとCpGの直接結合がin vivoでの体液性免疫応答に対して有する影響を調べようと努めた。これを実施するために、本発明者らは、典型的なウイルス病原体に直径が匹敵するストレプトアビジンポリスチレンビーズ上での、AgとCpG両方の直接結合を含む手法を設計した。ビオチン化Agおよび/またはCpGでのコーティング後の粒子コンジュゲートの首尾よい作製は、フローサイトメトリーによって確認した(図19A)。C57BL/6マウスは、2つの粒子状Ag、ニワトリ-γ-グロブリン(CγG)およびオボアルブミン(OVA)で同時に免疫化した。免疫化したそれぞれの群のマウスでは、粒子状Agの1つをCpGとコンジュゲートさせた。Ag特異的IgG抗体の産生は、粒子の投与14日後にELISAによって測定した。免疫化後のAg特異的抗体力価の選択的増大を、結合したCpGを有する粒子状Ag(Ag-CpG)に関して観察した。粒子状Ag-CpGに対するこの増大した応答は、主にIgG2bおよびIgG2cアイソタイプのクラス変更型Ag特異的抗体の産生を伴った。興味深いことに、IgG2アイソタイプの抗体は、ウイルス中和反応と関係がある免疫応答の特に有効なメディエーターであり(41)、かつそれらの産生はTLR9刺激と関係している。さらに、本発明者らは、粒子状CγG-CpGによる一回用量の免疫化後最大3ヵ月間、骨髄内でAg特異的抗体分泌細胞(ASC)を観察した(図13)。したがって、本発明者らは、AgとCpGの両方と直接結合した粒子による免疫化はAg特異的抗体力価を高め、in vivoにおいて主にIgG2亜型へのクラス変更を誘導することを実証している。
【0310】
Ag-CpGコンジュゲートのBCR媒介の取り込みは、in vitroでPCのへのTLR依存性分化を刺激するために必要とされる
特異的抗体力価の増大の根底にあるメカニズムを解明するために、本発明者らは、ニワトリ卵リゾチーム(HEL)に特異的なBCRを発現するトランスジェニックMD4 B細胞を使用した。CFSE標識MD4 B細胞は、in vitroにおいてHEL(Agとして)および/またはCpGを含有する粒子で刺激した(図19B)。刺激3日後に、フローサイトメトリーを使用して、それぞれCFSEの希釈およびCD138発現のアップレギュレーションによって、B細胞増殖およびPC分化をモニターした。MD4 B細胞の広範囲の増殖を、PCを形成するための分化と一緒に、粒子状HEL-CpGによる刺激後に観察した。以前の報告と一致して、これらのB細胞応答はIL-6とHEL特異的IgMaの両方の分泌と関連があった。それらの直径が0.5μmを超えなかったという条件で、様々な大きさの粒子を用いて類似した結果を得た(データ示さず)。興味深いことに、HELまたはCpGいずれかのみを含有する粒子による刺激によって増殖または分化は観察されなかった。
【0311】
B細胞応答を刺激することができる粒子の重要な特徴を確認するために、本発明者らはフローサイトメトリーを使用して、細胞の蛍光標識粒子の取り込みを検出した。B細胞は粒子状HEL-CpGを取り込むことができた一方で、本発明者らは、それらが粒子状CpG単独を捕捉できなかったことを観察した(図19C)。したがって、CpG単独を含有する粒子は、可溶性CpGに関して観察したのと同じ形式で、非特異的B細胞応答を刺激することができない。粒子状CpGのB細胞への進入の失敗は、細胞からのこれらの粒子の全面的除外によるものではない。樹状細胞によるCpGの取り込みが粒子との結合によって妨害されることはないからである(図19C)。しかし、本発明者らは粒子上のAgはB細胞に進入可能であることを観察し(図19C)、BCRが、用いられるメカニズムに関与してB細胞へのこれらのコンジュゲートの進入を可能にすることを示唆した。
【0312】
厳密なAg-BCRアビディティー閾値はin vitroでAg-CpG刺激型B細胞活性化を制御する
以前の観察は、Ag-BCR相互作用の結合強度はB細胞分化の結果に影響を与えることを示唆している(5)。BCRによる抗原認識は、粒子状Ag-CpGがB細胞応答を刺激するのに必要とされるので、本発明者らは、アフィニティーと密度の両方の観点で、in vitroでのTLR9依存性増殖および分化に対するAgアビディティーの影響を調べた。これに取り組むために、本発明者らは、低いアフィニティーでBCRと結合するいくつかの以前に記載された組換えHEL突然変異体、野生型HEL(Ka2×1010M-1);HELRD(Ka7.9×108M-1);HELK(Ka8.7×106M-1);HELKD(Ka4.0×106M-1);およびHELRKD(Ka0.8×106M-1)を使用した。様々なHELタンパク質を、架橋としてビオチン化モノクローナル抗HEL F10を介して粒子に固定化して、同等なコーティング密度を確実にした。約5000倍(Ka、2×1010〜4.0×106M-1)のHELのアフィニティーの低下は、高密度で粒子状CpGにAgが存在したとき、B細胞増殖またはIL-6産生のいずれかに対してほとんど影響がなかった(図21AおよびB)。しかし、HELのアフィニティーのさらなる5倍の低減(Ka、0.8×106M-1)によって、B細胞活性化を刺激するCpG粒子の能力は劇的に低減した。したがって、BCR媒介Ag内在化、それに伴うB細胞増殖およびIL-6分泌を誘導するためには、Agアフィニティーの最小閾値を上回らなければならないことは明らかである。Agアフィニティーにおけるこのような閾値の観察は、粒子状Ag-CpGによって誘導される応答が、B細胞によって取り込まれる粒子の量に依存することを示唆する。この仮説を裏付けるために、本発明者らは蛍光粒子を使用して、異なるHELコンジュゲートを得るB細胞の能力を比較した。図14中に示すように、アフィニティー閾値を超えると、取り込まれる粒子の量は広範囲のアフィニティー全体で同等であった(Ka、2×1010〜4.0×106M-1)。対照的に、この閾値未満では、本発明者らは、B細胞によって得られる粒子の量の顕著な低減を観察した。したがって、厳密な閾値を超えると、BCRに対するAgのアフィニティーが内在化するAg-CpG粒子の量に影響を与えることは明らかである。Ag-BCR相互作用の結合強度は、BCRによって見られるAgのアビディティーに依存するので、本発明者らは、粒子上のHELの密度を低減することによって刺激能力のさらなる識別が観察され得ると仮定した。低密度のHELを含有する粒子を作製するために、本発明者らは、初期コーティング期中に無関係なビオチン化タンパク質を含めて、ストレプトアビジンミクロスフェアとの結合に関してビオチン化F10と競合させた。予想通り、低密度の様々なHELタンパク質を含有するCpG粒子による刺激は、少量のB細胞増殖およびIL-6分泌をもたらした。CpG含有粒子におけるHELRKDの密度の2倍の低減によって、それらはB細胞増殖およびIL-6分泌を刺激することができなくなった。同様に、高アフィニティーHELRDタンパク質の密度の4倍の低減によっても、CpG含有粒子はB細胞応答を刺激することができなくなった。興味深いことに、IgMa分泌を誘導するためのBCRAg相互作用のアビディティー閾値は、増殖およびIL-6産生の刺激に必要とされる閾値より低いようである。したがってAgは、粒子状Ag-CpGの内在化に必要とされる最小程度のBCRクラスタリングを誘導するのに十分なアビディティーで存在しなければならない可能性がある。したがって、十分に高い密度で存在する低アフィニティーAgでさえ、BCR媒介内在化およびそれに伴うB細胞応答の刺激を可能にするのに必要とされる閾値を上回る可能性がある。したがって本発明者らは、in vitroでのTLR9媒介B細胞増殖および分化の程度を決定する際の、Agアビディティーの重要性を実証している。したがって本発明者らは、BCRとAgの間の相互作用の全体的強度は、粒子の有効な取り込みおよび粒子状CpGによるその後のTLR9刺激を可能にするための、規定された閾値を超えなければならないことを示唆する。
【0313】
粒子状Ag-CpGによるB細胞分化の程度はin vitroではTLR9刺激の強度によって決定される
B細胞によって取り込まれる粒子状Ag-CpGの合計量はAg-BCR相互作用の全体的アビディティーに依存するので、粒子のCpG成分は誘導されるB細胞活性化の程度に影響を与えると考えられる。したがって本発明者らは、誘導されるB細胞応答に対する、粒子状HELと結合したCpGの量の変化の影響を調べようと努めた。これを実施するために、粒子を異なる量のCpG、ただし一定のAgアビディティーしたがって細胞へのBCR媒介の進入をもたらす同じ合計量のHELでコーティングした。図15中に示すように、粒子上に存在するCpGの量の低減は、B細胞増殖、ならびにIL-6およびIgMaの分泌の低下と直接関係があった。このように、最大量の結合CpGを含有する粒子状HELは、最高程度でPCを形成するための分化を刺激した。しかし、10倍低減した量の結合CpGを含有する粒子による刺激後に、B細胞分化はほとんど検出されなかった。
【0314】
したがって、B細胞によって得られるCpGの量は、粒子状Ag-CpGに応答したEF PCの生成に重要であることは明らかであり、TLR9を介したシグナル伝達の程度はB細胞分化の結果を決定する際に重要であることが示される。
【0315】
粒子状HEL-CpGはin vivoでEF PCを形成するための分化を刺激する
本発明者らは、そのin vitroでの観察がin vivoでのAg-CpG粒子に対するB細胞応答に代表的であったかどうか確認しようと努めた。これを評価するために、CFSE標識MD4 B細胞とHELおよび/またはCpGを含有する粒子を、野生型レシピエントマウスに同時投与した。MD4脾臓B細胞の増殖は、養子移植後の示した時点でCFSE希釈によって評価した。さらに、CD138+細胞内HEL+MD4脾臓PCの存在を、多色フローサイトメトリーを使用して定量化した。
【0316】
HEL特異的B細胞の広範囲の増殖を、MD4 B細胞と粒子状HELRD-CpGの同時注射によって観察した(図16A、左図)。この増殖は刺激3日後に最大に達し(図16B)、PCの形成および血清中でのHEL特異的IgMaの出現と一致した(図16A中央および右図、図16C)。このCD138+PC集団は、刺激約3〜4日後にその数がピークに達したので短寿命性であったようである。これと一致して、脾臓のEF領域中で形成されたHEL特異的PCの集団に関して、類似した動態を観察した(図16D)。さらにこれらの応答は、粒子状CpGまたはHELのいずれかのみによる野生型MD4 B細胞の刺激において検出されなかった(図16A)。このように、かつ本発明者らのin vitroでの観察と一致して、BCRおよびTLR9の一連の関与がin vivoで確かなB細胞応答を刺激するのに必要とされる。したがって本発明者らは、粒子状HEL-CpGが、in vivoでTLR9媒介の増殖および短寿命EF PCへのB細胞の分化を刺激することを実証している。in vitroでの知見と同様に、本発明者らは、in vivoでB細胞活性化を誘導するために、BCR-Ag相互作用の強度の閾値を上回ることが必要であることを観察した。このように、HELアフィニティーの2000分の1未満への低減(Ka2×1010〜8.7×106M-1)によって、刺激されるB細胞応答は低減しない。しかし、Agアフィニティーをさらに2分の1に低下させると、HEL-CpG粒子による刺激後に重度に妨害されたB細胞の増殖および分化をもたらす。さらに、低密度のHELでコーティングした粒子は、わずかに低いレベルではあるが、B細胞の増殖および分化を可能にし続ける。対照的に、低密度のHELKを含有する粒子は、著明なB細胞応答をもたらすことができない。したがって、低アフィニティーのAgが十分な密度で存在するという条件で、in vivoで粒子を使用してB細胞増殖および分化を刺激することができる。これらの観察は、in vivoでの粒子状Ag-CpGに対するB細胞応答のTLR9媒介刺激の前に、BCR結合強度の閾値を上回らなければならないという条件を実証する。最終的に本発明者らは、in vivoでのB細胞分化の結果に対する、TLR9刺激の量の変化の影響を確定しようと努めた。図17D中に示したように、B細胞増殖およびHEL特異的PCの形成の程度は、粒子状HELと結合したCpGの密度に直接依存した。したがって、in vitroと同様に、in vivoにおいてTLR9刺激の量はB細胞応答を決定する際に重要であり、Ag-CpG粒子による刺激の結果を微調整するためのメカニズムとしておそらく有用であり得る。総合すると、BCR媒介内在化の後、粒子状Ag-CpGコンジュゲートはin vivoでのB細胞増殖およびEF PCを形成するための分化を刺激することは明らかであり、したがって本発明者らのin vitroでの観察の生理学的有意性が確定する。
【0317】
粒子状HEL-CpGはAg特異的クラス変更型抗体の産生を刺激する
本発明者らの観察は、粒子状Ag-CpGによるマウスの免疫化は、抗原特異的クラス変更型抗体の産生をもたらしたことを示した。しかし、本発明者らの調査において使用したトランスジェニックMD4 B細胞は、これまでクラス変更を経ることができなかったので、本発明者らは別のトランスジェニックモデル系を使用して、この現象をさらに調べた。このトランスジェニックマウス系は高アフィニティーHyHEL10 BCRを発現するB細胞を生成し、クラス変更組換えを経ることができる。野生型レシピエントに養子移植したHyHEL10 B細胞は、MD4 B細胞に関して観察したのと類似した形式で、粒子状HEL-CpGに応答した広範囲の増殖およびPCを形成するための分化を経た(データ示さず)。分泌された抗体のアイソタイプの分析によって、粒子状HEL-CpGによる刺激後に起こったクラス変更組換えが明らかになり、主にIgG2亜型のIgGの産生をもたらした(図18E)。重要なことに、類似した型の抗体のアイソタイプが、培養中HyHEL10 B細胞単独の刺激後に検出されたので、本発明者らがin vivoで観察したクラス変更は、CD4+T細胞補助とはおそらく無関係である(図17F)。これらの知見は、実施したもともとの免疫化からの本発明者らの観察と一致する。したがって、BCR媒介内在化の後、粒子状Ag-CpGはB細胞増殖および短寿命PCを形成するための分化だけでなく、さらにIgG2アイソタイプへのクラス変更組換えも刺激することは明らかである。
【0318】
考察
TLR9アゴニストCpGは、免疫系の先天性と適合部分の両方の活性化と関係がある過多の応答を刺激する能力を有する。ここで、本発明者らは、AgとCpGの直接結合は増大した特異的なB細胞応答をもたらすことを確認している。この試験は、AgとCpGの両方が表面上に固定された粒子を作製して、BCRを介したB細胞によるそれらの取り込みを可能にするための戦略の開発を含んでいた。本発明者らは、受容体媒介の取り込みは厳重に規制されたアビディティー閾値によって特徴付けられ、Ag特異的な形式でのB細胞に固有なTLR9へのCpGの送達をもたらすことを観察した。重要なことに、粒子状CpG単独はB細胞進入の非特異的手段の使用から妨げられ、粒子状Ag-CpGはTLR9媒介の応答を刺激するその能力が非常に選択的になる。さらに本発明者らは、BCR媒介の取り込み後、TLR9の関与がB細胞増殖および短寿命EF PCの形成の劇的な増大を誘導することを示している。B細胞挙動に対するTLR9刺激の影響の、いくつかの以前の調査は可溶性CpGを使用している。このような試験は、TLR9の刺激が、増大したB細胞の増殖およびアイソタイプ変更型抗体を産生することができるPCを形成するための分化をもたらすことを報告する。ここで、本発明者らは、粒子状CpGは、可溶性CpGと異なり、非特異的液相ピノサイトーシスによってB細胞に進入することはできないことを観察した。対照的に、粒子とCpGの結合は、樹状細胞などの専用食細胞によるその取り込みを妨げなかった。これらの食細胞は、おそらく先天性免疫細胞機能と関係があるパターン認識受容体によって、粒子を得る能力を保持している。対照的に、B細胞は、粒子状Ag-CpGの効率よい取り込みを可能にするために、Ag特異的かつシグナル伝達能力があるBCRの存在を必要とする。TLR9刺激リガンドを含有する免疫複合体の内在化におけるBCRの必要性は、自己免疫疾患の発症中に実証されている。
【0319】
本発明者らは、Ag-BCR相互作用のアビディティーは、粒子状Ag-CpGによる刺激後のB細胞活性化の結果に影響を与えることを実証している。T細胞依存性B細胞応答の初期の調査は、PCまたはGCのいずれかへの活性化B細胞の分化の決定は確率論的な過程であるという概念をもたらした。しかし、2つのより最近の試験は、様々なAgおよびBCRアフィニティーを使用して、B細胞分化の結果に対する全体的BCR-Agアビディティーの影響を調べている。BCRを介して十分なシグナル伝達を誘導したAgはB細胞がEF PCになるのを優先的に誘導するので、Brinkのグループは、BCR-Ag相互作用のシグナル伝達強度がB細胞分化の結果を調節する的確なモデルを提言している(5)。ここで、定義した閾値を超えると、本発明者らは、Ag-BCR相互作用のアビディティー、粒子の内在化と、EF PCを形成するための分化の量の間の相関関係を観察した。したがって、内在化後、TLR刺激はBCR依存性シグナル伝達に優先して、B細胞分化の結果を決定する可能性があるようである。さらに、アジュバントの存在下でのNPによる刺激後に、Agと類似したメカニズムが以前の観察の根底にある可能性がある。したがって本発明者らは、B細胞の分化がいくつかの要因の組合せによって制御される点で、Brinkの試験によって予測されたように(5)、ここに示す結果は、以前のAg-BCRアビディティー試験と相容れないものではなく、どちらかと言うとそれを補完するものであることを示唆する。B細胞活性化の結果を形成する組合せシグナル伝達機能の概念は以前に示唆されている(31)。実際、本発明者らは、ナイーブヒトB細胞の持続的生存および分化は、BCRおよびAgの関与、T細胞補助の適用およびTLR系を介したシグナル伝達を必要としたことを実証した。ここで本発明者らは、BCR媒介内在化に必要とされるアビディティー閾値が適合するという条件で、粒子状Ag-CpGによる細胞内TLR9の刺激がB細胞分化の結果に影響を与えることを示している。さらに、養子移植戦略を使用して、本発明者らは、B細胞増殖および短寿命PCを形成するための分化は、in vivoでは内因性TLR9の刺激に依存することを最終的に示している。このように、粒子状Agと結合したCpGの量の増大によるTLR9媒介刺激の程度の増大は、定量的にEF PCの生成を高める。
【0320】
これらの観察は、活性化B細胞の分化における内因性TLR媒介シグナル伝達に関する重要な役割を確認した以前の調査と一致する。さらに、CD4+T細胞の補助ではなくTLR媒介シグナル伝達が、自己反応性B細胞の活性化およびEF発生に絶対必要とされることが、非常に最近実証されている(48)。興味深いことに、かつ本発明者らの観察を支持して、TLR9媒介シグナル伝達はBCR31の初期刺激から一時的に離れる可能性があることが分かっている。BCR依存性シグナルに優先しEF PCの産生を刺激するTLR媒介シグナル伝達の能力は、第1波の防御抗体の迅速な産生によって免疫応答の初期段階中に、おそらく重要な役割を果たす。BCR媒介の取り込み後、本発明者らは、粒子状Ag-CpGがアクセスしてB細胞内でTLR9を刺激することを観察した。以前の試験は、BCR刺激は、多くのエンドソーム様小胞の融合によって形成される細胞内複合体の形成をもたらすことを実証している(49)。この複合体は内在化受容体が局在状態になる部位であり、BCR刺激後に観察されるTLR9において豊富なオートファゴソーム様区画と同様に出現する(20)。関連AgとのエンドサイトーシスBCRの指定局在の機能的有意性は、新たに合成されたMHC-II分子がこれらのエンドソーム区画内にも局在したという実証によって最初に認められた(50)。したがって、BCR媒介内在化は、完全B細胞活性化に必要な特異的CD4+ヘルパーT細胞に対する後の提示のための、プロセシングおよびMHC-IIへのAgの有効なロードを容易にする。さらに、MHC様分子CD1dは、iNKT細胞に対するその表面提示の前に、エンドソーム区画内でαGalCerなどの脂質Agを得ることが実証されている。BCR媒介内在化の類似したメカニズムが、粒子状Ag-αGalCerに応答した特異的iNKT媒介B細胞増殖およびEF PCへの分化の刺激に必要とされた(36)。総合するとこれらの観察は、分化などの細胞プロセスの結果を最終的に支配する細胞内の関係の調整に重要な部位として、エンドソームまたはエンドソーム様区画を示す。ここで本発明者らは、粒子状Ag-CpGコンジュゲートの使用によって、Ag特異的体液性免疫応答の選択的かつ制御型刺激を実証する。これらの粒子は特異的細胞集団に対するCpGの免疫刺激能力を指示する手段となるので、それらは首尾よい免疫化戦略の将来的設計において有効なアジュバントとして非常に価値がある。このように、この粒子形態でのCpGの使用は、非特異的TLR9刺激と関係がある自己免疫疾患の発症および、可溶性CpGの反復投与と関係があるリンパ濾胞の破壊に対して防御すると想定される(53)。さらに、それらの正確な組成の変化、粒子状Ag-CpGを使用して、免疫化によって刺激される免疫応答の複雑な制御をもたらすことができる。実際、粒子状CpGコンジュゲート内の多数のAgの封入は、防御免疫応答のさらに効率よい誘導をおそらく可能にし得る。本発明者らは、粒子の表面上でのAgと免疫刺激剤CpGの直接結合ための手法を開発している。これらの粒子はBCR媒介エンドサイトーシスを介してAg特異的B細胞に選択的に進入し、細胞内TLR9の関与を可能にする。これらの粒子による刺激は、増大したB細胞増殖、およびin vivoでAg特異的クラス変更型抗体を分泌することができるEF PCを形成するための分化をもたらす。これらの粒子を使用する調査は、一次免疫応答の発生中のTLR9の関与に関する原理の解明においてだけでなく、免疫化において必要とされるAg特異的免疫刺激剤の進展においても有用である。
【0321】
参考文献






【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)支持体、および
(ii)該支持体に連結されたBCR結合性抗原
を含む、BCR媒介内在化が可能な作製物。
【請求項2】
(ii)前記支持体に連結された免疫刺激剤
をさらに含む、請求項1に記載の作製物。
【請求項3】
前記支持体が粒子である、請求項1または2に記載の作製物。
【請求項4】
前記粒子がリポソームである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項5】
前記粒子が、任意によりリポソームでコーティングされたビーズである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項6】
前記支持体がポリマーまたはシリカ支持体である、請求項1〜3および5のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項7】
前記支持体または粒子が1nm〜10μmのサイズを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項8】
前記抗原および免疫刺激剤が、アビジン-ビオチンリンカーなどのリンカーを介して前記支持体または粒子に連結している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項9】
前記免疫刺激剤が少なくとも2種の異なる免疫刺激剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項10】
前記抗原が少なくとも2種の異なる抗原を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項11】
前記免疫刺激剤がiNKT細胞アゴニストである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項12】
前記免疫刺激剤が脂質または糖脂質である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項13】
前記脂質がトレイトールセラミド(IMM47)である、請求項12に記載の作製物。
【請求項14】
前記免疫刺激剤がグリコシルセラミドである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項15】
前記グリコシルセラミドがα-ガラクトシルセラミド(αGal-Cer)である、請求項14に記載の作製物。
【請求項16】
前記免疫刺激剤がTLRアゴニストである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項17】
前記TLRアゴニストがCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)またはポリUオリゴヌクレオチドである、請求項16に記載の作製物。
【請求項18】
前記抗原がペプチド、ホスホペプチドまたは炭水化物を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の作製物。
【請求項19】
前記抗原がペプチドまたはホスホペプチドである、請求項18に記載の作製物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物および好適な担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
可溶性免疫刺激剤をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ワクチンとしての使用のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物。
【請求項23】
有効量の請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物を被験体に投与することにより特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップを含む、被験体において抗原特異的免疫応答を誘導する方法。
【請求項24】
予防的または治療的ワクチン接種のための、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体においてBCR結合性抗原の免疫原性を増強する方法であって、支持体および該支持体に連結された該抗原を含む作製物を該被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が該支持体に連結されているかまたは該作製物と共に投与される、上記方法。
【請求項26】
請求項2〜19のいずれか1項に記載の作製物の製造方法であって、以下のステップ:
(a)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、および任意により
(b)該支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ
を含み、任意によりステップ(a)および(b)を逆順で実施する、上記方法。
【請求項27】
被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を増強する方法であって、以下のステップ:
(a)該抗原を支持体に連結させるステップ、および
(b)該支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ
任意によりステップ(a)および(b)を逆順で実施する、
ならびに
(c)該支持体を被験体に投与することにより、特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップ
を含む、上記方法。
【請求項28】
請求項2〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物の調製での使用のための支持体であって、免疫刺激剤が連結されている、上記支持体。
【請求項29】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物を被験体に投与するステップを含む、被験体におけるBCR媒介免疫応答を強化する方法。
【請求項30】
細胞による免疫刺激剤の特異的取り込みを誘導する方法であって、以下のステップ:
(i)BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)該支持体に免疫刺激剤を連結させるステップ
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
および
(iii)細胞を該支持体と接触させることにより特異的BCR媒介内在化およびB細胞活性化を可能にするステップ
を含む、上記方法。
【請求項31】
抗原特異的免疫応答を惹起するために細胞にBCR結合性抗原および免疫刺激剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)第1の密度で、BCR結合性抗原を支持体に連結させるステップ、
(ii)免疫刺激剤を該支持体に連結させるステップ
任意によりステップ(i)および(ii)を逆順で実施する、
(iii)該支持体を細胞に接触させるステップ、
(iv)抗原媒介活性化について細胞を試験するステップ
任意により異なる抗原濃度でステップ(ii)〜(iv)を繰り返すステップ
を含む、上記方法。
【請求項32】
抗原に対する抗血清の製造方法であって、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および該哺乳動物から免疫血清を回収するステップを含む、上記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法により取得可能な免疫血清。
【請求項34】
請求項33に記載の血清から取得可能な抗体。
【請求項35】
請求項34に記載の抗体を含有する免疫血清を被験体に投与するステップを含む、疾患に対する受動免疫化方法。
【請求項36】
疾患が、癌、感染性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
医薬としての使用のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物。
【請求項38】
癌、感染性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患の治療での使用のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物。
【請求項39】
癌、および感染性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物の使用。
【請求項40】
不死化細胞の作製方法であって、以下のステップ:
(i)B細胞を、請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む、上記方法。
【請求項41】
(i)請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物の存在下でex vivoでBリンパ球を不死化するステップを含む、不死化Bリンパ球の作製方法。
【請求項42】
モノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)Bリンパ球をex vivoで請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物と接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)のB細胞を不死化するステップ
を含む、上記方法。
【請求項43】
モノクローナル抗体を産生可能な不死化Bリンパ球クローンの作製方法であって、以下のステップ:
(i)請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物の存在下で、Bリンパ球を含むかまたはBリンパ球からなる細胞集団を不死化するステップ
を含む、上記方法。
【請求項44】
形質転換されたリンパ球を抗原特異性についてスクリーニングするステップ
をさらに含む、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
不死化B細胞を単離するステップ
をさらに含む、請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
不死化ステップが、以下:
形質転換ウイルスでの形質転換、別の不死化細胞との融合、またはB細胞におけるCD40の刺激
を含む、請求項40〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
B細胞がヒト由来である、請求項40〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記不死化B細胞からモノクローナル抗体を単離するステップをさらに含む、請求項40〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法により取得可能なモノクローナル抗体。
【請求項50】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の作製物または請求項20もしくは21に記載の組成物を非ヒト哺乳動物に導入するステップ、および該哺乳動物から抗体を回収するステップを含む、特異的抗体の製造を促進する方法。
【請求項51】
B細胞による免疫刺激剤の非特異的取り込みを阻害する方法であって、該B細胞との接触前に該免疫刺激剤を支持体に連結させるステップを含む、上記方法。
【請求項52】
被験体においてBCR結合性抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導または増強する方法であって、支持体および該支持体に連結した該抗原を含む作製物を被験体に投与するステップを含み、免疫刺激剤が該支持体に連結されているかまたは該作製物と共に投与され、被験体に投与した場合に可溶性形態の該抗原がTH細胞応答を誘導することができない、上記方法。
【請求項53】
前記抗原がペプチド、ホスホペプチドまたは炭水化物を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗原がペプチドまたはホスホペプチドを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
B細胞に対して樹状細胞に優先的に薬剤を送達する方法であって、以下のステップ:
(i)該薬剤を支持体に連結させるステップ、
(ii)B細胞および樹状細胞を含む細胞集団を該支持体と連結された該薬剤と接触させるステップ
を含む、上記方法。
【請求項56】
前記薬剤が免疫刺激剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫刺激剤が請求項11〜17のいずれか1項に記載されたものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記支持体が請求項3〜8のいずれか1項に記載されたものである、請求項55〜57のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−519847(P2011−519847A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506772(P2011−506772)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001111
【国際公開番号】WO2009/133378
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【出願人】(510290027)ザ チャンセラー,マスターズ アンド スカラーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ オックスフォード (2)
【Fターム(参考)】