説明

免疫応答を増強するための、mTOR阻害剤を含有する方法及び組成物

抗原に対する免疫応答を増強する組成物及び方法が提供される。組成物は、CD8+T細胞の個体群と、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤とを含む。個体において、抗原に対する増強された免疫応答を得る方法は、個体に対して前記抗原と哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤とを投与することを必要とする。CD8+T細胞は養子細胞移入(ACT)療法にも使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その開示内容の全体が本明細書中で援用される、2009年1月14日出願の米国出願番号61/144,537及び2010年1月7日出願の米国出願番号61/293,096に対して優先権を主張する。本発明は、国立衛生研究所より授与された助成金番号5R01CA104645の助成の元になされた。米国政府は本発明について、所定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般的には免疫応答の調整に関し、さらに詳しくは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤を用いて、個体における細胞性免疫応答を増強することに関する。
【背景技術】
【0003】
がんワクチンは、臨床的及び前臨床的な研究において活発な治験が行われている。基本的に、免疫システムを標的がんに動員することは魅力的である。免疫システムには、腫瘍特異的な抗原を認識し、正常組織中にある罹患細胞を根絶させる能力がある。しかしながら、患者を扱うための、がんワクチンの有効な応用は限定的なものにとどまっている。そして、がんワクチンの有効性を高めることには、現在進行中で未だ満たされていない必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ワクチンの効果を増強するための組成物及び方法を提供する。一つの態様として、本発明は、個体における抗原に対する免疫応答を増強するための方法を提供する。この方法は、個体に対して抗原とmTOR阻害剤とを投与することを含む。mTOR阻害剤と抗原とは、同じ組成物に含まれる成分として投与されてもよく、されなくてもよい。また、同時投与、又は、段階的に投与されてもよい。好ましくは、抗原の投与の後にmTOR阻害剤が投与される。
【0005】
他の態様としては、本発明はCD8+T細胞の個体群及びmTOR阻害剤を含む組成物を提供する。かかる組成物はさらに、CD8+T細胞に特異的な抗原を含んでもよく、さらに、IL−12のようなアジュバントを含んでもよい。
【0006】
増強された免疫応答には、個体において、抗原を有する細胞に対する、増強された細胞性の免疫応答をも含みうる。増強された応答には、抗原を有する細胞に対して細胞傷害性を示すCD8+T細胞の増加も包含しうる。増強された免疫応答にはまた、或いは代替的に、増強された栄養及び/又は抗原に対する抗原リコール応答を示すCD8+T細胞、又は、抗原に特異的なエフェクターCD8+T細胞の量及び/又は活性の増加をも含みうる。このような免疫応答のコンビネーションが、本発明の組成物及び方法によって導かれうる。増強された免疫応答は、抗原を発現している細胞の生長阻害、個体における抗原を発現した細胞の死、及び/又は個体の生存の延長によって、もしくは当業者に知られた別の態様によって、具現化され得る。
【0007】
様々な態様において、本発明の方法及び組成物を使用して処置される個体は、抗原に対する増強された免疫応答を必要とする個体である。その個体は以前にmTOR阻害剤を受け取っていない個体でありうる。このような個体の無制限の例は、例えば組織移植のために免疫抑制療法を受けている個人も含まれる。一つの態様では、個人は、がんの処置を必要としている個人である。
【0008】
本発明は、あらゆるmTOR阻害剤を用いること、及び、CD8+T細胞に提示されうるあらゆる抗原に対する細胞性の免疫応答(体液性及び/又は先天性の免疫応答もまた、含まれうる)を増強することに適していることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、タイプIエフェクター成熟のためのプログラムナイーブCD8+T細胞がmTOR活性を増強し、維持することを示している。(A及びB)BOK(Ag+B7.1)(±)IL−12で刺激されたOT−I細胞について、(A)ICSによるIFN−γ、(B)細胞溶解活性が測定された。(一次;刺激付与後72時間、二次;2回目の刺激付与後24時間);***p<0.0002。(C〜E)抗原(Ag)(この抗原は、Lys及びLue(OVAp)に後続されているAsnPheGluに後続されているSerIleIleからなるペプチドである。10nMで使用)に刺激されたOT−I細胞が、所記の時間においてICSによって測定された。(C)はリン酸化mTOR、(D)はリン酸化S6K、(E)はリン酸化リボソームS6である。mTOR阻害のために、ラパマイシン(20ng/mL)が抗原、サイトカインの添加30分前に加えられた。データは、類似の結果であった少なくとも3回の独立した実験の代表値である(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0010】
【図2】IL−12はPI3K及びSTAT4を通じて抗原誘導性のmTOR活性を強化する(A及びB)Ag+B7.1(±)IL−12及びLY294002(10μM)で刺激されたOT−I細胞は、ICSによって、(A)48時間におけるリン酸化Akt、(B)所記の時間におけるリン酸化S6Kが測定された。(C)Ag+B7.1(IL−12有/無)で刺激された野生型(WT)又はStat4−1−OT−I細胞の、所記の時点におけるリン酸化S6Kが分析された;***p<0.0001。示された実験は、類似の結果であった少なくとも3回の独立した実験の代表値である(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0011】
【図3】持続的なmTOR活性は、CD8+T細胞の遺伝的なタイプIエフェクター分化に本質的である(A−C)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、一次及び二次フェーズにおいて、(A)ICSによるIFN−γ(***p<0.0002;n.s.有意でない)、(B)細胞溶解活性、(C)ICSによる72時間におけるグランザイムBの発現、が測定された。(D及びE)(D)48時間におけるS6Kリン酸化、(E)一次、二次フェーズにおけるIFN−γの産生を測定するために、OT−I細胞はAg+B7.1(±)IL−12で刺激され、刺激後12時間においてラパマイシンが添加された。示された実験は、類似の結果であった少なくとも3回(A、B)及び2回(C−E)の独立した実験の代表値である(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0012】
【図4】IL−12増強性のmTORリン酸化はCD8+T細胞のT−bet決定性のタイプIエフェクター成熟に本質的である(A−C)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、(A)RT−PCRによる、所記の時点におけるT−Bet mRNA、(B)ICSによる、所記の時点におけるT−betタンパク質の発現、(C)抗原リコールの前後の、ICSによる、T−betタンパク質の発現、が測定された。**p<0.0035;***p<0.0005。(D)野生型(WT)及びTbx−/−OT−I細胞はAg+B7.1(±)IL−12で刺激され、一次及び二次フェーズにおいてIFN−γ産生が測定された。***p<0.0001;(E及びF)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、T−bet−ERレトロウィルスベクター(±)4HT(10nM)で形質導入され、ICSによって(E)ICSによるT−betタンパク質の発現、(F)二次フェーズ(168時間)でのIFN−γ、が測定された。(G及びH)Ag+B7.1(±)インシュリン(1U/mL)及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、ICSによって、(G)48時間におけるS6Kリン酸化、(H)72時間におけるT−bet発現が測定された。示された実験は、類似の結果であった少なくとも3回(A、B、D、E、F)及び2回(C、G、H)の独立した実験の代表値である(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0013】
【図5】mTOR阻害は、持続的なエオメス(Eomes)の発現とCD8+T細胞におけるメモリーの表現型マーカーをプロモートする(A及びB)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、(A)RT−PCRによって、所記の時点におけるエオメスmRNA、(B)ICSによって、72時間におけるエオメスタンパク質の発現が測定された。p<0.03。(C)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、T−bet−ERレトロウィルスベクター(±)4HT(10nM)で形質導入され、96時間におけるエオメスタンパク質の発現が測定された。(D)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって刺激されたOT−I細胞は、72時間におけるCD62L、CD69、KLRG1、CD127、及びCD122の発現が測定された。(E)所記の時点におけるBcl−2及びBcl−3mRNAの発現。(F及びG)Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって72時間刺激されたOT−I細胞は、2度洗浄され、さらに72時間、(F)IL−7(10ng/mL)、p<0.02、(G)IL−15(10ng/mL)、p<0.02の存在下で静置され、144時間における細胞の回復パーセント(%)が測定された。示された実験は、類似の結果であった3回の独立した実験の代表値である(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0014】
【図6】mTOR阻害は、メモリーCD8+T細胞の産出を増強する。Ag+B7.1(±)IL−12及びラパマイシンによって72時間刺激されたOT−I細胞(Thy1.1)は、72時間目に回収され、BL/6レシピエントに養子移入された(細胞数2×10)。(A)移入後24時間の、リンパ節(**p<0.0052)、脾臓(**p<0037)、及び肝臓(**p<0.0012、**p<0.0011)における養子移入されたOT−I細胞の全体数(B−E)レシピエントマウスは、移入後40日にIFA−OVAで免疫され、二次的なCD8+T細胞の応答が3日後に測定された。(B)脾臓での免疫前(40日)及び後(43日)の養子移入された細胞の全体数。丸カッコ中の数字は、40日から43日でのCD8αThy1.1の増加倍率を示している。(C)43日、脾臓でのIFN−γ分泌CD8αThy1.1細胞の全体数、p<0.01、**p<0.008。丸カッコ中の数字は、MFI及びIFN−γの発現を示している。(D)43日、脾臓でのCD8αThy1.1細胞のグランザイムBの発現、(E)43日のインビボでの抗原特異的な細胞分解。2回の独立した実験の代表値が示されている(データは平均±標準偏差で示されている)。
【0015】
【図7】mTOR阻害はCD8+T細胞性の抗腫瘍免疫を促進する(A及びB)ナイーブもしくは72時間調整されたOT−I細胞がBL/6レシピエントに養子移入された。マウスは、OT−I細胞の養子移入24時間後にE.G7腫瘍細胞2×10(細胞数)が接種された。(A)腫瘍接種後の腫瘍サイズ(mm)、(B)腫瘍接種後の腫瘍フリー生存のパーセント、が示されている。2回の独立した実験の代表値が示されている。
【0016】
【図8】腎細胞がんモデル。テムシロリムスと併用のmTOR阻害は腫瘍抗原CA9を発現しているRENCA腫瘍を移植されて10日後のBalb/Cマウスにおいて、がんワクチン(hsp110とCA9の複合体)の抗腫瘍効果を増強した。各ラインは個々のマウスにおける腫瘍の生長を表している。ワクチンを作成するために、CA9(抗原標的)とHSP110(熱ショックタンパク質アジュバント)が1:1(モル割合)で混合され43℃で30分インキュベートされた。0日目に、2×10のRENCA−CA9細胞がマウスに移植された。ワクチンは10、17、24日目に皮内投与された。テムシロリムスは11〜16、18〜23、25〜30日目に腹腔内投与された。
【0017】
【図9】テムシロリムスと併用のmTOR阻害は、gp100を発現しているB16腫瘍を移植されて10日後のC57/BL6マウスにおいて、がんワクチン(gp100とCA9の複合体)の抗腫瘍効果を増強した。各ラインは個々のマウスにおける腫瘍の生長を表している。ワクチンを作成するために、gp100(抗原標的)とCA9(アジュバント)が1:1(モル割合)で混合され室温で30分インキュベートされた。0日目に、2×10のB16−gp100細胞がマウスに移植された。ワクチンは10、17、24日目に皮内投与された。テムシロリムスは11〜16、18〜23、25〜30日目に腹腔内投与された。
【0018】
【図10】CA9+gp100による免疫は、ELISPOTアッセイで測定されるgp100特異的なIFN−γ応答を誘発した。
【0019】
【図11】図11は、mTOR阻害剤が、樹立された卵巣がんに対して免疫仲介性の防御を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【0020】
【図12】図12は、mTOR阻害剤が、免疫仲介性の抗胸腺腫効果を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【0021】
【図13】図13は、mTOR阻害剤が、恒常的増殖(HP)誘導性の抗腫瘍効果を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【0022】
【図14】図14は、mTOR阻害剤が、免疫仲介性の腫瘍防御を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【0023】
【図15】図15は、mTOR阻害剤処置が、恒常的増殖(HP)誘導性の抗腫瘍CD8+T細胞応答を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【0024】
【図16】図16は、mTOR阻害剤が、卵巣腫瘍のCD8+T細胞仲介性の養子細胞移入(ACT)療法を増強することを示すデータの、図式的な描写である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、免疫応答を調整するための組成物及び方法を提供する。一つの態様において、本発明はCD8+T細胞の個体群と哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤とを含む組成物を提供する。当該組成物は、さらにCD8+T細胞に特異的な抗原を含んでいてもよい。
【0026】
ここで用いられる「CD8+」T細胞とは、CD8(分化抗原群8)を発現するT細胞を意味する。CD8はその性質がよく特徴づけられている膜貫通糖タンパク質であって、T細胞レセプター(TCR)のコレセプターとして機能する。CD8は、ヒトの抗原提示細胞の表面において、クラスI主要組織適合遺伝子複合体(MHC−I)に結合する。
【0027】
他の態様においては、本発明は、個体に対して抗原とmTOR阻害剤とを投与することを含む、個体において抗原に対する免疫応答を増強するための方法を提供する。抗原とmTOR阻害剤とは、個体において、抗原に対する免疫応答を増強するために効果的である量が投与される。mTOR阻害剤と抗原とは、同時に投与されることもされないこともありうる。
【0028】
増強された免疫応答は、個体において抗原を有する細胞に対する、増強された細胞性の免疫応答も含みうる。「増強」は、抗原(及び、付加的に何らかのアジュバント)が投与されたが、mTOR阻害剤は投与されていないコントロールと比較しうる。増強された細胞性の免疫応答は、抗原を有する細胞に対する細胞傷害性を示すCD8+T細胞の増加、或いは、増強された養分、及び/又は抗原に対する抗原リコール応答を示すCD8+T細胞の増加、もしくは、抗原に特異的なエフェクターCD8+T細胞の量及び/又は活性の増加、或いは、前述の細胞性の免疫応答の種類の組み合わせ、を含みうるが、これらに制限されるものではない。本発明の方法によって誘発される増強された細胞仲介性の免疫応答は、体液性及び/又は先天性の免疫応答の有益な変化を伴いうる。一つの態様においては、増強された免疫応答は、抗原を発現する細胞の成長の阻害、個体における抗原発現細胞の死、及び/又は個体の生存が延長されることによって証明されうる。
【0029】
本発明において我々は、インターロイキン−12(IL−12)が、ナイーブCD8+(OT−I)T細胞において、ホスホイノシチド3−キナーゼ及びSTAT4転写因子経路を通じて、抗原及び共刺激分子(B7.1)誘導性のmTORキナーゼ活性を増強及び維持したことを示す。しかしながら、代表的なmTOR阻害剤(ラパマイシン)によるmTOR活性のブロックは、T−bet転写因子の持続的な発現が失われるがゆえに、IL−12誘導性のエフェクター機能を逆転した。我々は、IL−12で調整されたOT−I細胞のラパマイシン処理は、持続的なエオメソデルミン(Eomesodermin)の発現を促進すること、及び、増強された栄養分と養子免疫移入における抗原リコール反応とを示す、メモリー細胞前駆体を産生することを示す。このメモリー細胞前駆体は、IL−12調節性エフェクターOT−I細胞よりも大きな腫瘍への効果を示す。このように、また、いかなる理論にも制限されることを意図しないが、本発明は、mTORは、CD8+T細胞においてエフェクター及び/又はメモリー細胞の運命を決定づける転写プログラムの中心的調節因子であることを、初めて開示するものである。
【0030】
CD8+T細胞の発生的運命の決定における、mTORの役割を発見することに加えて、我々は、ワクチン療法にmTOR阻害剤を付加することは、個体に対して治療的および予防的な利益を提供しうることを開示する。特に我々は、発明の様々な態様において、がんの動物モデルにおいてがんワクチンの免疫学的な効果を増強するために、テムシロリムス及びラパマイシンのそれぞれを用いることを開示する。これと関連して、テムシロリムスは、直接的な抗増殖剤(細胞増殖抑制剤)特性を有することを知られ、また、進んだ腎細胞がん(RCC)への処置として応用されている。がんへの処置のためにmTOR阻害剤を他の細胞増殖抑制剤と一緒に用いることは、示唆されてきている(T. Abraham and J. Gibbons; Clin Cancer Res (2007) 13:3109-3114)。しかしながら、mTOR阻害剤をワクチンと併用する技術については教示も示唆もされていない。反対に、テムシロリムスやラパマイシンは免疫抑制剤として汎用的に使用されており、免疫抑制効果があると知られている薬剤とワクチンとを組み合わせることは望ましくないと教示されている。例えば、スパナーは、その免疫抑制効果ゆえにラパマイシンをがんワクチンのアジュバントとして用いることに反対を示しており、同じことが、T細胞の細胞周期の進行を調節していると考えられているPI−3K経路に関連している、他のmTOR阻害剤にも適用されうる(Spaner, D.E., Journal of Leukocyte Biology Volume 76, 2004年8月, pp338-351)。さらに、抹消寛容と免疫抑制について重要であるT細胞タイプの中では、制御性T細胞(Tregs)が決定的であると考えられてきた。自然発生的な制御性T細胞は、CD4+T細胞の全体のうち5〜10%を占め、CD25及びFOXP3の発現に基づいて同定される(Sakaguchi S: Nat Immunol 6:345-52, 2005)。しかしながら、mTORの機能の阻害は、インビトロ、インビボの両方においてマウスTregsの増加を生じさせることが示されている(Battaglia M, et al. Blood 105:4743-8, 2005、Battaglia et al: Diabetes 55:1571-80, 2006)。さらに、ヒトでは、mTORの阻害はインビトロでTregsの増加を導くこと、インビボでTregsの抑制能力を増強することが示されてきた(Monti P, et al. Diabetes 57:2341-7, 2008)。このように、先行技術の記載からの予測としては、mTOR阻害剤をワクチンと組み合わせることは、ワクチンの抗原性の成分への免疫反応を生成するのに有害であると思われ、そのために、ワクチンの抗原性の成分に対する免疫反応を増強し、さらに、増大させることは予測されていなかった。しかしながら我々は予想外なことに、mTOR阻害剤をがんワクチン療法に付加することが、ワクチンの抗原性の成分に対する免疫応答を増強し、免疫仲介性の応答を通じてがん細胞の生長を阻害して、コントロールに対して生存を延長できることを見出した。このように、mTOR阻害剤には免疫抑制物質として確立された役割がある中で、ワクチン療法と組み合わされた場合に、mTOR阻害はがん抗原に対して免疫応答を増強するという本願の発見は驚くべきものであった。この点において、我々は特に、RCCとメラノーマの樹立されたマウスモデルにおいて、mTOR阻害剤(ラパマイシン、テムシロリムス)ががんワクチンの効果を増強しうることを開示する。我々はさらに、樹立されたマウスモデルを用いて、ラパマイシンが卵巣腫瘍および胸腺腫に対して免疫仲介性の防御を増強することを開示する。我々はさらにまた、ラパマイシン処置は、恒常的増殖(HP)誘導性の抗腫瘍免疫を増強しうること、また、腫瘍の攻撃に対して、持続的な免疫記憶の誘導に基づいて予防的利益を提供しうることを開示する。このように、本願発明はワクチン、特にがんワクチンの効果を増強するために、従来になく、驚くべき効果的な方法を提供するものである。このように、本願発明は、少なくとも一部分でも細胞仲介性の免疫応答を通じて実施されるあらゆるワクチン療法を増強することが期待される。
【0031】
一つの態様において、本発明の方法は抗原に対する免疫応答の増強の必要がある個体に対して行われる。
【0032】
一つの態様において、個体はmTOR阻害剤で免疫抑制療法をされていない個体である。このような個体についての無制限の例には、mTOR阻害剤を使って自己免疫疾患や組織移植による処置を受けていない個体を含む。個体はがんがあると疑われている者であってもよいし、がんだと診断された者であってもよいし、もしくは例えば、遺伝子的な傾向や、習慣的又は職業的なリスクファクター等のがんが発展するリスクがある個体であってもよい。
【0033】
mTORはヒトにおいてFRAP1遺伝子にコードされたよく特徴づけられたタンパク質である。そのヌクレオチド符号及びアミノ酸配列は本技術分野で知られており、GenBankアクセッション番号BC117166(2006年6月26日エントリー)にてアクセス可能であり、ここに参照として援用される。
【0034】
ここに示される開示に基づいて、あらゆるmTOR阻害剤が本発明の組成物及び方法の使用のために好適であること、及び、あらゆる個体によって発現されるあらゆるmTORタンパク質が、阻害剤の標的として好適であることが予測される。キナーゼ阻害剤の幅広いスペクトラムとは対照的に、mTORの阻害のために選択性及び/又は特異性を有する阻害剤を使用することが好ましい。このように、多様で制限のない態様において、mTORはラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムストリン(everolimus torin)、及びデフォロリムス、これらのアナログ、及び、mTOR阻害剤及び/又はこれらのアナログの組み合わせでありうる。
【0035】
また、抗原が、MHCクラスI分子と関連した抗原提示細胞による提示のために好適なアミノ酸配列を含んでいる抗原である限り、あらゆる抗原が本発明において好ましく使用できる。このように、抗原はタンパク質もしくはペプチドであり、又は、タンパク質もしくはペプチドを含みうる。抗原は、組換え型抗原であってもよく、化学的に合成されてもよく、細胞培養から単離されたものでもよく、また、個体から得た生物学的サンプルから単離されたものでもよい。抗原は、感染性微生物の細胞上に提示されるものでもよく、また、抗原は罹患又は感染した細胞、組織、器官において発現されてもよい。所望の抗原は、よく特徴づけられたものでも、逆に知られていないものでも、また、例えば特定の細胞もしくは組織タイプからの溶解物中で知られ、その存在が予測されているものでもよい。
【0036】
一つの態様において、抗原は腫瘍抗原である。腫瘍抗原は商業的に提供されている抗原であり、もしくは、組換え法や腫瘍細胞溶解物からの調製のような簡便な手法で入手することができる。腫瘍溶解物からの抗原は単離されたものでもよく、溶解物そのものを抗原として用いるのでもよい。抗原は精製された形態、もしくは部分精製又は未精製の形態で使用され得る。ここで、「精製された」は、他の成分や要素から分離されていることを意味する。抗原は、未精製、部分精製、実質的な精製、もしくは純粋な抗原として、本発明の組成物に追加され得、及び/又は、本発明の方法に使用され得る。抗原は、実質的に全ての他の成分が除去された時に精製されたと考えられる。つまり、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は、99%より高い純度である。部分的、もしくは実質的に精製された抗原は、自然にみられる材料、つまり、例えば他の細胞タンパク質、膜、及び/又は核酸等の細胞材料が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%もしくはそれより多く、除去されたものでありうる。
【0037】
様々な態様において、がん細胞抗原はがん細胞によって発現されうる。がん細胞の特定の例は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、腹膜偽性粘液腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎生期がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸部がん、睾丸腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起細胞腫(oliodendroglioma)、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、胸腺腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、及び、H鎖病を含むが、これに制限されるものではない。
【0038】
抗原は、感染性病原体又は感染性微生物によって発現される抗原でありうる。感染性病原体又は感染性微生物の特定の例は、ウィルス、バクテリア、菌、原生生物、又は他の寄生生物や感染性の物質を含むが、これに制限されるものではない。
【0039】
他の態様において、本発明は、個体に対して抗原に特異的であるCD8+T細胞と、効果的な量のmTOR阻害剤とを含む組成物を投与することを含む、個体において所望の抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供する。
【0040】
単離されたCD8+T細胞は、抗原に対して特異的かつナイーブであってもよく、もしくは、本発明の方法において使用される前に、免疫応答の増強が所望される抗原と接触させられていてもよい。代替的に、単離されたCD8+T細胞は、個体に投与される前に、例えばCD8+T細胞に対する抗原を提示している抗原提示細胞とともにCD8+T細胞をインキュベートすることによって、所望の抗原に暴露されていてもよい。CD8+T細胞は、所望の抗原に対する増強された免疫応答が意図されている個体から、多様な周知の技術及び薬剤のいずれかを使用して、単離されてもよい。さらに、CD8+T細胞は、本発明の方法を実行するために、個体に再び導入されるのでもよい。
【0041】
他の態様において、本発明は、CD8+T細胞の個体群とmTOR阻害剤とを含む組成物を提供する。CD8+T細胞は、それに対する免疫応答増強が所望される抗原に特異的である。CD8+T細胞とmTOR阻害剤との暴露は、CD8+T細胞に、CD8+T細胞が個体に戻されて抗原と接触する時に、抗原に対する増強された細胞性免疫応答に関与する能力を与えるため、前記組成物は、本発明の方法における使用に好適である。単離されたCD8+T細胞は、組成物中で多様な細胞の割合を占め得る。例えば、CD8+T細胞は、組成物のT細胞又は全細胞の中で、少なくとも、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%、或いはその間の整数値を占め得る。
【0042】
CD8+T細胞とmTOR阻害剤とを含む組成物はさらに抗原を含んでいてもよい。単離されたCD8+T細胞を含む組成物中に抗原があるとき、抗原は独立した要素として存在してもよく、抗原とCD8+T細胞の表面に提示されたT細胞受容体(TCR)とが相互作用できるいずれかの状態で存在してもよい。抗原がCD8+T細胞のTCRと相互作用可能である時、CD8+T細胞は活性化されうる。CD8+TCRによって認識され得るように、組成物中に抗原が提供される多様な態様の例は、例えば樹枝状細胞のような抗原提示細胞の表面でMHC−1と共に提示(もしくは、動物モデルにおいて同等である提示)される抗原をも含むが、これに制限されるわけではない。代替的に、抗原は、CD8+T細胞のTCRによる抗原の認識を容易にするいずれかの他の天然又は合成された分子や、組成物、複合物、物質、基質等と物理的に接触させられることもできる。例えば、抗原はMHC−Iや他のCD8+TCRに抗原を提示させるのに好適な分子と複合化されてもよく、MHC−Iや他の好適な分子(例えば、組成物がC57BL/6マウスCD8+T細胞を含む場合には、K)は、抗原がCD8+T細胞によって認識されるように、例えばラテックス微粒子、いずれかのプレートのプラスチックの表面、もしくは他のいずれかの好適な基質等の基質と、CD8+T細胞TCRに対する抗原の適切なアクセスを容易にするように物理的に接触させられてもよい。組成物はさらに、共刺激体分子として良く知られた多様なもののいずれかを含んでいてもよい。当業者によって、ここに述べられている組成物は、個体に投与されるためのCD8+T細胞を準備するために好適であり、及び/又は、個体に直接的に投与され得、さらに精製されてもよく、また、細胞仲介性の免疫反応を生じることが所望されるいずれかの抗原に対する、ワクチン療法の治療的もしくは予防的な増強を提供する目的で個人に投与されることに好適な組成物を与える、いずれかの他の多様な物質やプロセスと組み合わされ、処置され、混合され得ることが認識されるであろう。一つの態様において、組成物は、IL−12のようなサイトカインをも含む。
【0043】
生物学的なサンプルを得る方法、サンプルからCD8+T細胞を単離する方法は当技術分野で周知である。例えば、T細胞表面マーカーに基づいてT細胞を選別・分離する恒常的な細胞ソーティング法が、本発明の組成物や方法に含むためのCD8+T細胞の個体群を得るために使用されうる。例えば、血液及び/又は末梢血リンパ球を含む生物学的サンプルが個体から得られ、そのサンプルから市版の装置や試薬を用いてCD8+T細胞が単離され、その結果CD8+T細胞の個体群が得られる。CD8+T細胞はさらに、例えば、CD44、L−セレクチン(CD62L)、CD122、CD154、CD27、CD69、KLRG1、CXCR3、CCR7、IL−7Ra等の付加的な細胞表面マーカーの使用を通じて、表現型に基づいてさらに特徴づけられ、及び/又は単離され得る。細胞はまた、CD4+/NK1.1+、B220、CD11b+、CD19+細胞のネガティブセレクトによって最初に単離されることもできる。細胞は、ナイーブ(CD62Llhi、CD44low、IL−7Rahi、CD122low)でありえ、もしくは、抗原経験であり得る;CD62L(low−moderate)、CD44hi、IL−7Ra(high or low)、CD122適度にhi。CD8+T細胞の個体群はmTOR阻害剤及び/又は抗原といずれかの好適な容器、装置、細胞培養培地、システム等で混合され、インビトロで培養され、T細胞が有するように拡大し、及び/又は成熟し、及び/又は分化して、当業者には知られた多様な所望の特性をT細胞が有するように、1又は複数の抗原、及びいずれかの他の薬剤、もしくは細胞培養培地と暴露される。例えば、単離されたCD8+T細胞は、免疫応答増強が望まれる抗原を有する細胞に対する細胞傷害性活性を高めるように取り扱われうるし、CD8+T細胞は、増強された栄養、及び/又は抗原の提示に対する抗原リコール応答を取得しうるし、もしくは、CD8+T細胞は、エフェクターT細胞の機能的な/表現型の特性を有しうる。
【0044】
本発明の組成物は、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤、及び/又は安定剤を含みうる。薬剤と混合するのに適した組成物のいくつかの例は次から見出すことができる:Remington:The Science and Practice of Pharmacy (2005) 21版、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州、Lippincott Williams & Wilkins。組成物はさらに、いずれかの好適なアジュバントを含んでもよい。アジュバントには、トールライク(TLR)、NLR及び全てのDAMPS、及び、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、サルモネラフラジェリンペプチド/タンパク質、CpG含有DNA、尿酸結晶、乳化油、ウィルスベクター、RNA、及び/又はssDNAを含むPAMPSを活性化し、抗原を付加混合するために使用され、もしくは、抗原を提供されたホストに注入される腫瘍学的アジュバントを含み、またこれらに制限されるものではない。
【0045】
例えば、抗原の分子構成、処方される個体のサイズや年齢、その個体において罹患が疑われ或いは診断されている疾病のタイプ及びステージ等の要素を考慮に入れて、本発明の方法を実行するためにどのような投与処方を作成するかは、当業者には認識され得る。
【0046】
抗原とmTOR阻害剤とは、同じ組成物中の成分として同時に投与されうる。個体に抗原を投与した後に、mTOR阻害剤を投与することが好ましい。例えば、最初のmTOR阻害剤の投与は、抗原の投与の数時間後から60日後までに行うことができ、これらの間のいずれの日、時間とすることもできる。さらに、mTOR阻害剤を繰り返し投与することが好ましい。例えば、本発明の方法の一つの態様において、mTOR阻害剤は少なくとも1日1回、少なくとも1週間の期間、投与される。mTOR阻害剤は1週間より長く、例えば8−60日及びその間の全ての整数の日数に渡って日々投与されうる。一つの態様において、mTOR阻害剤は20日を超えない期間投与されるが、我々は20日を超える投与は増強効果を弱めることを見出しているからである。
【0047】
本発明の組成物に含まれ、及び/又は本発明の方法において使用されるmTOR阻害剤の量は、現在の開示の利益が得られるように当業者によって決定され得る。ある態様では、15μgのラパマイシンを含有する組成物を5−8日間、1日1回投与することが、がんモデルマウスでの免疫システム仲介性の効果を増強するのに有効であった。mTOR阻害剤の量及び投与処方は、所与のヒト患者や所与のmTOR阻害剤に対して、例えば体重基準のmg/kgに基づいて見積もられ得ることが期待される。
【0048】
本発明の方法は、抗原と関わる疾病や不調を処置するための従来の療法と併用して実行されうる。例えば、本方法が個体において腫瘍抗原の免疫応答を増強するために使用される場合、化学療法、外科的介入、放射線療法を含み、これらに制限されない処置様式が、本発明の方法に先立ち、同時に、もしくは続いて、実行されうる。
【0049】
続く例示は本発明の説明するものだが、本発明はこれらに制限されない。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
この実施例は実施例2〜9のデータを得るために使用された材料及び方法を説明するものである。
【0051】
(マウスと試薬) 遺伝子操作されたC57BL/6マウス;CD4TCRトランスジェニックRag2-/-(OT−II)、CD8TCR トランスジェニックRag2-/- (OT−I、WT)、Stat4-/- OT−I Rag2-/-、及びTbx21-/- OT−I Rag2-/-が、RPCIのIACUCガイドラインに従って給餌及び飼育された。rmIL−12(2ng/mL)はWyeth,Inc.(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)から贈与された。IFN−αはT.Tomasi(RPCI)より贈与された。rmIL−7はペプロテック(ロッキーヒル、ニュージャージー州)から購入された。2−DG、4−HT、ラパマイシンはシグマアルドリッチ(セントルイス、ミズーリ州)から購入された。LY290042はカルビオケムから購入された。インシュリンはノヴォノルディスク(プリンストン、ニュージャージー州)から購入された。
【0052】
(OT−1細胞の刺激) ナイーブOT−1細胞は、公知の方法によってH−2K/オボアルブミン抗原とB7.1を発現しているラテックスマイクロスフェアで刺激された。ナイーブOT−II細胞は、抗-CD3-/抗-CD28-でコーティングされたラテックス微粒子で刺激された。いくつかの実験で、胚性繊維芽細胞由来の細胞株、特に、BOK(H-2Kb,OVAp及びB7,1を発現したMEC.B7.SigOVA)が、公知の方法によってナイーブOT−I細胞を刺激するための抗原提示細胞として使用された。
【0053】
(インビトロでの二次的抗原リコール応答の測定) インビトロでの二次的抗原リコール応答を検討するために、72時間培養されたOT−I細胞(一次)を、培地で3回洗浄し、さらに72時間、24ウェルプレートで、IL−7(10ng/mL)のみと再度培養した(1×10/mL)。144時間に細胞を回収し、培地で3回洗浄し、数を揃え(5×10)、さらに24時間、Ag/B7.1のみと再度刺激した(二次刺激)。168時間目に細胞を回収してフローサイトメトリー及びインビトロ機能アッセイにて測定した。
【0054】
(レトロウィルス形質転換及びT−Bet誘導) 製造者のマニュアルに従って、LipoD293DNAインビトロトランスフェクション試薬(SigmaGen Laboratories)を用いて、T−bet−ER RV(エストロゲン応答性レトロウィルスベクター)をレトロウィルスパッケージングベクターpCL−Ecoと共に、Platinum−E細胞にトランスフェクションした。翌日、培地を除去し、レトロウィルス上清がトランスフェクション3日後に回収された。形質転換のために、24時間刺激されたOT−I細胞はポリブレン(8μg/mL、シグマアルドリッチ)を含有するレトロウィルス上清に懸濁され、30℃で90分、2200回転でスピン−トランスダクションされた。スピン−トランスダクションの後、4−HT(10nM)と共に、以前と同じ極性環境を含む新鮮な培地で細胞を培養した。最初の刺激から72時間後、細胞は3回洗浄され、4−HTとIL−7(10ng/mL)の他はいかなる刺激も無く、維持された。
【0055】
(統計分析) 統計分析のため、対応のないスチューデントt検定が適用された。様々な群の間で腫瘍生存がカプランマイヤー生存曲線とログ順位統計を用いて比較された。有意はp<0.05とした。
【0056】
[実施例2]
この例は、ナイーブCD8+T細胞のタイプIエフェクター分化を調整する指令が、mTOR活性を増強することを示すものである。タイプIエフェクター機能のためのナイーブCD8+T細胞の調製の基礎となる指令(各々、シグナル1、2、3−抗原[Ag]、B7.1[共刺激]、IL−12[サイトカイン])の機構を特徴づけるために、我々は、接着細胞株(H−2K、OVAp及びB7.1を発現しているBOK)で刺激されたOT−I細胞におけるタイプIエフェクターの成熟にIL−12が果たす決定的な役割を確定することから検討を開始した。IL−12の付加は、強度のIFN−γの産生、72時間のOT−I細胞における細胞傷害性T細胞(CTL)活性をもたらした(図1A,1B、一次)。
さらに、一次エフェクターOT−I細胞(72時間)をさらに72時間IL−7と静置し(144時間目に12%IFN−γが検出された)、Ag及びB7.1に刺激された場合、IL−12処理されたOT−I細胞のみがIFN−γ及びCTL活性が再度誘発されていた(図1A、1B、二次)。このように、IL−12はCD8+T細胞エフェクター成熟に決定的な役割を有している。
【0057】
mTORキナーゼは多様な細胞外シグナルのインテグレータ、また、細胞の運命を決定づける内部エネルギーレベルのセンサーであると見られてきたが、ナイーブCD8+T細胞がタイプIエフェクターへ分化する調節の指令の集積におけるmTORの役割は不明確である。第一に、我々はIL−12の存在下又は不存在下で、刺激後の様々な時間においてAg及びB7.1(Ag+B7.1)がOT−I細胞のmTORを活性化する能力について試験した。Ag+B7.1でのナイーブOT−I細胞の刺激は、mTORリン酸化(活性化)を2時間までに誘導したが、12時間が最大であり、48時間ではほぼ観察されなかった(図1C)。注目すべきことに、IL−12の付加は、Ag+B7.1誘導性のmTORリン酸化を2時間において強化し、これは48時間まで維持された(図1C)。このように、Ag+B7.1がmTORリン酸化を誘導にも関わらず、IL−12の付加はOT−I細胞におけるmTORリン酸化を増強・維持する。mTORリン酸化の誘導はキナーゼ活性をも導くことを確認するために、我々はmTORキナーゼ活性の直接的なターゲットである、p70S6Kリン酸化(Ser371)の反応速度を観察した。12時間(最大)では、Ag+B7.1とIL−12を加えたAg+B7.1との両方が同量のS6Kリン酸化を誘導したが、IL−12の存在下では48時間まで、mTORリン酸化と相関して(図1C)S6Kリン酸化を維持することができた(図10)。同様に、S6Kの下流基質であるS6(Ser235及び−236)のリン酸化が、IL−12処理されたOT−I細胞では増強・維持された(図1E)。OT−I細胞における、Ag+B7.1±IL−12刺激誘導性のS6K及びS6のリン酸化はラパマイシン(mTOR複合体−1の特異的阻害剤)によりブロックされる(図1D,1E)。このように、OT−I細胞におけるmTOR活性化への指令とそのキナーゼ活性の能力が確認された。Ag+B7.1に刺激されたOT−I細胞における芽球化現象とCD98の発現の誘導は、ラパマイシン感受性の態様でIL−12によってさらに増大した。これらの観察は、mTORを、CD8+T細胞エフェクターの応答を調整する指令のターゲットとして同定するものであり、CD8+T細胞のIL−12決定性のタイプI分化の調節におけるmTORキナーゼの潜在的な役割を示唆するものである。
【0058】
[実施例3]
本実施例は、CD8+T細胞におけるIL−12増強性のmTOR活性はPI3K及びSTAT4を要求することを示すものである。CD8+T細胞におけるmTOR活性を支配する分子的な経路を決定するために、我々はAg−、B7.1−、及びIL−12−誘導性のホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)−Aktキナーゼ経路がCD8+T細胞におけるmTORシグナルに要求されるかどうか分析した。Ag+B7.1±IL12で刺激されたOT−I細胞は、PI3K活性の機能的な測定としてAktリン酸化(Thr308)が測定された。IL−12の有無に関わらずAg+B7.1は30分までに同量のAktリン酸化を誘導したが、IL−12の存在下では48時間までAktリン酸化が増加した。このAktリン酸化はPI3K阻害剤(LY294002)によってブロックされた(図2A)。こうしてIL−12はOT−I細胞においてAg+B7.1誘導性PI3K活性を増加させることが確認された。さらに、IL−12で増強されたmTOR活性(2、12、24時間において観察されたS6Kリン酸化)は、PI3K阻害によってブロックされた(図2B)、このことは、抗原に刺激されたOT−I細胞における、Ag+B7.1及びIL−12に活性化されるPI3K活性は、mTORキナーゼ活性の誘導に要求されることを示している。
【0059】
IL−12がCD8+T細胞に強いエフェクター成熟を指令する能力は、STAT4転写因子を要求する。OT−I細胞におけるIL−12増強性のmTOR活性が、STAT4依存性であるかどうかを確認するために、我々は野生型(WT)もしくはStat−/−OT−I細胞が、Ag+B7.1±IL−12による刺激においてS6Kリン酸化を誘導する能力を試験した。PI3K阻害での我々の観測と対照的に、OT−I細胞におけるSTAT4の不在は、早い時点(2時間、12時間)ではIL−12誘導性のS6Kリン酸化には影響しない。しかしながら、誘導されたS6Kリン酸化の量を維持することはできなかった(48時間)(図2C)。このように、IL−12誘導性のPI3K及びSTAT4は、OT−I細胞におけるmTOR活性の調節において、異なる役割を有している。
【0060】
[実施例4]
本実施例は、維持されたmTOR活性は遺伝的なタイプIエフェクター機能に対して本質的であることを示すものである。抗原刺激中のIL−12の存在はmTOR活性を増加させ、また、タイプIエフェクターの成熟に決定的であるので、我々は、維持されたmTORキナーゼ活性はOT−I細胞におけるIL−12調節性のタイプIエフェクター機能に要求されるかどうかについて分析した。そうするために、我々はナイーブOT−I細胞をBOK±IL−12、及びラパマイシンで刺激し、エフェクター機能が一次及び二次活性化されたOT−Iプールにおいて分析された。IL−12で調整されたOT−I細胞へのラパマイシンの追加は、一次活性化されたOT−I細胞からのIFN−γ産生に影響しなかったが、グランザイムB(GranzymeB)発現の減少に伴ってCTL活性を減少させた(図3A、3B、3C;一次)。対照的に、我々は、二次活性化されたプールからIL−12で調整されたエフェクター機能の完全な回復を認めた。(IFN−γ産生、CTL活性)(図3A、3B;二次)。このIL−12で調整されたタイプIエフェクター機能のブロックは、ラパマイシン誘導性の細胞増殖及び/又はタンパク質合成の阻害によるものでない。なぜなら、IL−12存在下でのこれらの細胞の再活性化は、IFN−γの顕著な産生を招いたからである。これらの結果は、IL−12誘導性のナイーブCD8+T細胞のタイプIエフェクター機能への関与はmTOR活性を要求することを示唆している。加えて、我々は、一次刺激後144時間において、ラパマイシン処理のIL−12誘導性のIFN−γ産生及びCTL活性のブロックを観測した。これらの結果はさらにラパマイシン処理はタイプIエフェクター機能をブロックすることを確認しており、また、二次活性化プール(168時間)において観察されたエフェクター機能の欠失は単独のものであると考えられた。なぜなら、これらの細胞はIFN−γ産生を再誘導する能力はないからであり、ラパマイシン処理された細胞の不応性によるのではないからである。
【0061】
IL−12処理によって生じる持続的なmTOR活性はタイプIエフェクターの機能のために要求されるのかどうか確認するために、我々は、Ag+B7.1刺激後12時間においてラパマイシンを付加することによってIL−12誘導性mTOR活性の持続をブロックし(mTOR活性化は12時間がピーク;図1C及び1D)(図3D)、一次及び二次活性化されたOT−IプールからIFN−γ産生能力を観測した。処理0時間で観測されたように、12時間におけるラパマイシン付加はIL−12誘導性のエフェクター機能をブロックした(図3E、一次活性化と二次活性化応答の対比)。このように、最初の12時間に誘導されるmTOR活性はCD8+T細胞をタイプIエフェクターに調節するのに十分でないかもしれず、CD8+T細胞におけるタイプIエフェクター機能の調節のための、IL−12誘導性の持続的なmTOR活性(12時間、それ以降)の重要さを示唆しているのかもしれない。
【0062】
[実施例5]
本実施例は、IL−12増強性のmTOR活性は持続的なT−bet発現に重要であることを示すものである。持続的なT−betの発現はタイプIエフェクター細胞の運命づけに必要かつ十分であり(松田ら、2007)、また、mTOR阻害はOT−I細胞においてIL−12刷り込みのタイプIエフェクター成熟を逆転させるため(図3)、我々は次に、ラパマイシン処理がOT−I細胞においてT−bet発現に影響するかどうか、T−betRNA発現の速度論的解析を行うことで、決定するために検討をおこなった(図4A)。試験された全ての時点(24−96時間)において、IL−12は、Ag+B7.1誘導性のT−bet発現を増強し、維持した。しかしながら、mTOR阻害は、Ag+B7.1及びIL−12誘導性の早期のT−bet発現(24−48時間)には影響しなかったが、IL−12誘導性の持続的なT−betmRNA発現をブロックし(96時間にわずかに観察される)、そしてそれに応じて、OT−I細胞はT−betタンパク質発現を喪失した(図4B)。さらに、12時間におけるmTOR活性の阻害はまた、観察されたタイプIエフェクター成熟の欠失と同様に、T−bet発現の欠失を生じた(図3E)。このように、IL−12に増大された(増強され、維持された)mTOR活性は、CD8+T細胞における継続的なT−bet発現に要求される。
【0063】
抗原リコールの間のラパマイシン仲介性のIFN−γ産生のブロックは、T−bet発現の再誘導能力の欠損のためであることを示すために、我々は、72時間4(144時間)のIL−7処理によって休眠しているIL−12処理されたOT−I細胞を採用し、抗原リコールの前(144時間)及び後(168時間)のT−bet発現を測定した。穏やかなT−bet発現が144時間においてAg+B7.1及びIL−12で一次的に調整されたOT−I細胞で観察された(図4C)。注目すべきことに、抗原リコールにおいて、IL−12調整されたOT−I細胞はT−betタンパク質を顕著に多量に再誘導したが、これは、ラパマイシン処理感受性であった(図4C)。これらの観察は、ラパマイシン処理は持続的なT−bet発現をブロックしていることを示しているが、これが、IL−12仲介性のタイプIエフェクターのブロックを生じているのかもしれない。この結論は、IL−12で調整されたTbx21−/−OT−I細胞は、一次フェーズにおけるIFN−γのIFN−γ産生能力が影響されていないにも関わらず(図4D、一次)同様にタイプIエフェクター機能を生成することに失敗していることに支持される(図4D、二次)。これらの観察は、ラパマイシン処理されたIL−12で調整されたOT−I細胞(図3A)と同調するものであり、mTOR阻害における持続的なT−bet発現の欠失は、CD8+T細胞におけるIL−12調整性のタイプIエフェクターの分化をブロックしているという我々の他の議論を支持するものである。
【0064】
ラパマイシン処理でのT−bet発現の欠失が、タイプIエフェクター機能の欠失を導くのかどうか直接的に決定するために、我々は、ラパマイシン処理されたIL−12調整されたOT−I細胞でT−betの異所性の発現を誘導し、二次活性化されたOT−IプールからIFN−γ産生を再誘導できる能力を測定した。レトロウィルスベクター、T−bet−ER(T−bet−ER RV)が採用され、T−betの発現はタモキシフェン(4−HT)によって調整された(松田ら、2007)。実際、T−bet−形質導入OT−I細胞へのタモキシフェン(Tm、10nM)の添加は、T−bet発現の実質的な増加をもたらし(図4E)、ラパマイシン処理IL−12−調整されたOT−I細胞におけるIFN−γ産生を再生させた(図4F)。このように、IL−12誘導性の継続的なmTORリン酸化は持続的なT−bet発現およびCD8+T細胞でのT−bet依存性のタイプIエフェクターの関与に本質的であることを示している。
【0065】
代謝ホルモンインシュリンは、インシュリンレセプター基質(IRS)を通じてmTORキナーゼ活性化に働く。一方、解糖阻害剤である2−デオキシグルコース(2DG)はmTOR活性のブロックを導く。そこで我々は、mTOR活性を代謝的に調節するためにインシュリンと2DGを採用し、これらがOT−I細胞におけるT−betの発現に影響しうるかどうかを試験した。実際、Ag+B7.1で刺激されたOT−I細胞へのインシュリンの付加は、mTOR活性(S6Kp)及びT−bet発現のmTOR依存性の増加を増強した(図4G、4H)。一方、Ag+B7.1+IL−12で刺激されたOT−I細胞への2DGの付加は、mTOR活性及びT−bet発現の欠失を導いた。これらの結果は、CD8+T細胞におけるT−bet発現を調整するために指令の重要なインテグレータとしてのmTORを同定するものである。
【0066】
[実施例6]
本実施例は、CD4+及びCD8+細胞におけるmTORキナーゼの異なる要求を示すものである。CD4+T細胞のラパマイシン処理はFoxp3発現制御性T細胞に免疫不応答(anergy)及び/又は偏位(deviation)をもたらすので、我々は、Ag+B7.1及びIL−12誘導性のmTOR活性の阻害が、活性化や増殖をブロックし、及び/又は異なるサブタイプのエフェクターへの偏在を生じて、CD8+T細胞のタイプIエフェクター分化に干渉するかどうかを分析した。CD4+T細胞の公知の観察に従い、我々の結果も、ラパマイシン処理は活性化(CD44発現)、増殖(CFSE希釈)、及び、CD4+T細胞(OT−II)の細胞回復を顕著に低減することを示す。しかしながら、ラパマイシン処理はCD8+T細胞(OT−I)の早期(CD69、12時間)及び遅れた活性化(CD44)に影響せず、ただ増殖(CFSE)と細胞の回復にわずかに影響したのみであった。さらに、報告されているCD4+T細胞のFoxP3発現とは対照的に、ラパマイシン処理されたOT−I細胞は継続的にFoxP3を発現しなかったが、これはT細胞の調節的機能の一部である。さらに、mTOR阻害でのT−betの欠失は、タイプ2もしくはタイプ17サブセットへの偏位を導かなかった。これらの観察は、ラパマイシンの多様な投与量(20ng/mL〜2μg/mL)でも確認された。高投与量ではラパマイシンはOT−I細胞(S6Kp、S6p)のmTOR活性を効果的に阻害したが、CD4+T細胞とは異なって、活性化阻害、増殖及び調節性T細胞サブセットの偏在はなかった。これらの結果は、ラパマイシンはCD4+及びCD8+T細胞で違う効果を有することを示している。そして、IL−12誘導性のタイプI CDS+エフェクター分化のブロック能力は、他のエフェクターサブタイプに対する免疫不応答や偏位が理由ではないことをこれらの結果は示すものである。
【0067】
[実施例7]
本実施例は、mTOR阻害が持続的なエオメソデルミンの発現を誘導し、メモリー−前駆CD8+T細胞を産生することを示すものである。ラパマイシン処理は、タイプIエフェクター分化をブロックせず、また、免疫不応答や他の転写調節因子の発現を誘導しなかったので、我々は次に、ラパマイシン処理されたIL−12で調整されたOT−I細胞の運命を特徴づけることを探求した。近い転写調節因子である、T−betとエオメソデルミンとは、エフェクターやメモリーCD8+T細胞において逆に調節を受ける。T−betの発現を抑えるmTOR阻害が、エオメソデルミンの誘導を導くかどうか決定するために、我々は、OT−I細胞におけるエオメソデルミンmRNAの発現を体系的に分析した。我々は、ナイーブOT−I細胞においてエオメソデルミンのわずかな発現を観察したが、これはAg+B7.1で刺激されたときには増強され、IL−12付加時には低減された(図5A)。しかしながら、Ag+B7.1及びIL−12調整されたOT−I細胞へのラパマイシンの付加は、エオメソデルミンmRNAの発現を顕著に増強し、これは、試験されたすべての時間(24−96時間)において維持された(図5A)。エオメソデルミンmRNAの増加は、タンパク質レベルでも確認された。ラパマイシン処理されたIL−12調整OT−I細胞は、エオメソデルミンタンパク質の有意な増加を生じたからある(図5B)。我々が一貫して、Ag+B7.1及びIL−12調整されたOT−I細胞におけるmRNA誘導なしに、エオメソデルミンタンパク質の発現のわずかな増加(有意でない)を観測したことは特筆すべきである(図5A、5B)。OT−I細胞におけるラパマイシン仲介性のエオメソデルミンの上方調節は、mTOR阻害の直接的な帰結であるのか、或いは、持続的なT−bet発現を阻害する能力による帰結であるのか検討するために、我々は、ラパマイシンで調整されたOT−I細胞において、異所的にT−bet発現を誘導し、タモキシフェンの存在/非存在下でのエオメソデルミンの発現を分析した。実際に、ラパマイシン処理されたOT−I細胞におけるT−betの誘導は、エオメソデルミンの発現を減少させた(図5C)。さらに我々は、Ag+B7.1及びIL−12で処理されたTbx21−/−OT−I細胞におけるエオメソデルミン発現の増加を、継続的に観察した。これらを合わせると、これらの結果は、IL−12で調整されたOT―I細胞においてmTOR阻害は、転写プログラムを、持続的なT−betからエオメソデルミン発現へと選択的に切り替えることを示している。我々はまたOT−I細胞において、IFN−αもmTOR活性やT−bet発現を調整するかどうかを決定した。我々は、Ag+B7.1刺激OT−I細胞において、IFN−αは、mTOR活性やT−bet発現を増強することはできないことを確認した;しかしながら我々は、エオメソデルミンの発現とIFN−γの産生において、増加を観察した。これらの結果は、IL−12は、持続的なmTORとT−betの発現の促進によってタイプIエフェクター成熟を刷り込むことについて、独特の能力を有すること、また、IFN−αは、持続的なmTOR活性とmTOR依存的なT−bet発現を促進する能力を欠くので、この活性を欠いているかもしれないことを確認した。
【0068】
我々は次に、T−betにおけるラパマイシン誘導性のエオメソデルミン発現スイッチは、タイプI成熟でのブロックと同じように、それらのメモリー前駆細胞への形質転換を生じるのかどうか、決定するため検討した。我々は、メモリー前駆CD8+T細胞に伴うマーカー(例えば、CD62L(リンパ節ホーミング)、CD69(リンパ節保存)、CD127(IL−7α;メモリーT細胞の維持に本質的)、CD122(IL−15Rβ、メモリーCD8+T細胞の恒常的更新に本質的)、KLRG1(メモリーCD8+T細胞の産生と逆相関)、及び、Bcl−2(抗アポトーシス作用、メモリーT細胞で発現が増加)を用いてOT−I細胞の表現型の分析をおこなった。ラパマイシン処理されたIL−12で調整されたOT−I細胞は、顕著に高い量のCD62Lを発現し、ラパマイシン処理されていない細胞と比較して持続的なCD69発現を示した(図5D)。CD62L及びCD69発現の増加は、ラパマイシン処理されたOT−I細胞は、リンパ節ホーミングと保存により大きな能力を有しているかもしれないことを示している。さらに、ラパマイシン処理された細胞は、未処理のコントロールと比較して、観察された全ての時間点(図5D、5E)で、生存促進性の遺伝子(Bcl−2及びBcl−3)の発現の増加及び維持と同時に、より高いKLRGlo細胞の頻度を有している。すなわち、ラパマイシン処理はメモリー前駆CD8+T細胞を示唆する表現型を促進するのである。しかしながら、ラパマイシン処理はCD122発現を減少させ、OT−I細胞がインビトロでのIL−5刺激に応答する能力の欠損したことを示した(図5D、5F)。これは、ラパマイシン処理はT−bet発現の低下をもたらし、また、CD122はCD8+T細胞においてT−betの直接的な遺伝子ターゲットであるという事実と合致するものである。我々は、ラパマイシン処理でCD127の発現には何の変化も認めなかったが、これらの細胞はインビトロでのIL−7応答性についてより敏感になっていた(図5D及び5G)。いずれにしてもこれらのデータは、mTOR阻害は、メモリーの運命であるエオメソデルミン転写調節因子の持続的な発現と共に、IL−12調整エフェクターCD8+T細胞のメモリー様表現型を与えていることを示している。
【0069】
我々は次に、IL−7と72時間調整された調製されたOT−I細胞についてのさらに72時間の再培養、又は、抗原リコール(168時間)が、メモリー様表現型に影響するかどうかを検討した。我々はラパマイシン処理OT−I細胞はCD62LhiおよびKLRG1lo表現型を維持することを決定した。しかし、CD69hi表現型は失われた。注目すべきことに、72時間で観察されたCD122lo表現型は再生し、我々はCD127の発現にはいかなる変化も認めなかった。このように、ラパマイシン処理OT−I細胞をIL−7と静置することは、基本的に、CD69hi表現型を維持する能力を回避し、メモリー前駆表現型を維持するのである。
【0070】
[実施例8]
本実施例は、mTOR阻害はメモリーCD8+T細胞の産生を増強することを示すものである。IL−12仲介性タイプIエフェクター機能をブロックする、エオメソデルミン発現のための持続的なT−betを切り替える、そして、OT−I細胞においてメモリー様表現型を誘導するというラパマイシンの能力に基づいて、我々は、ラパマイシン処理されたIL−12で調整されたOT−I細胞が養子移入の後にメモリー応答を生じるかどうか分析した。これを試験するため、我々は初めに、ラパマイシン処理されたOT−I細胞が、CD62L及びCD69発現の増加によって示唆されるように、二次性リンパ器官に局在する能力が変化をしめすかどうかを検討した。養子移入されたAg+B7.1±IL−12及びラパマイシンで調整されたOT−I細胞(Thy1.1)は、24時間後にC57BL/6(Thy1.2)レシピエントにおいて検出された。ラパマイシン処理されたOT−I細胞は、二次性リンパ器官(リンパ管及び脾臓)における局在が増加していることを示した。また、これに対応して、例えば肝臓(図6A)や血液のような、三次的な場所ではより少ない数が観察された。ラパマイシン処理されないOT−I細胞ではこの局在パターンを示さなかった(図6A)。しかしながら、我々は、肺での細胞数についていかなる有意な違いも観察しなかった。すなわち、mTOR活性阻害は、抗原及びIL−12調整CD8+T細胞の局在を、二次性リンパ区画にシフトさせるのである。
【0071】
メモリー前駆OT−I細胞を産生するラパマイシン処理が、メモリー機能を与えるのかどうかを確認するために、我々は養子移入された細胞の持続性(40日)及び抗原リコール応答(43日)を試験した。Ag+B7.1及びIL−12で調整されたOT−I細胞は、Ag+B7.1で刺激されたOT−I細胞よりも強い持続性を示した(図6B)。しかしながら、40日に検出された増加数によって示されるように、ラパマイシン処理はOT−I細胞の持続能力を著しく増強した(図6B)。OT−I細胞の増加した持続性はおおまかには、ラパマイシン処理されたOT−I細胞がラパマイシン処理されていないコントロールと同様のCFSE希釈を示すように、より大きな恒常的増殖の結果であるというよりは、生存関連遺伝子の発現がより高度に出現する、生存のための分化能力によるものである(図5E)。さらに、ラパマイシン処理されたOT−I細胞は、抗原再免疫試験(図6B)及びエフェクター応答(IFN−γ、グランザイムB発現、CTL活性(図6C、6D、6E))におけるクローン性増殖によって評価されるように、活発な抗原リコールを産生する。さらに重要なことに、ラパマイシン処理群においては、細胞当たりでのIFN−γ及びグランザイムBの発現の増加があるが、このことは、この群で見られたインビボでの細胞分解性の致死の増加は、細胞数の増加によるだけでなく、抗原リコールでのエフェクター成熟の増加によることを示している。つまり、ラパマイシン処理はCD8+T細胞の持続性を増強するだけでなく、抗原再免疫においてより高度なエフェクター能力を与えるのである。養子移入されたOT−I細胞の短期(5日)及び長期(40日;メモリー)における表現型分析は、ラパマイシン処理された細胞は、5日ではメモリー前駆細胞表現型を保ちながらCD127、CD62L、CD69がより多く発現しているが、この表現型は40日には代替されていることを示している。加えて、40日では、T−bet及びCD122発現は変化を示さなかった。まとめると、これらの観察は、ラパマイシン処理は、二次性区画に局在可能かつ養子移入で持続可能なCD8+メモリー前駆細胞の産生を促進することを示している。しかしながら、CD8+メモリー前駆細胞は後には代替し、強い抗原リコールエフェクター応答を生成する。
【0072】
[実施例9]
本実施例は、ラパマイシン処理されたIL−12調整OT−I細胞は、増強された腫瘍効力を有することを示す。養子細胞移入(ACT)において体外で創出された腫瘍抗原特異的なエフェクターCD8+細胞の使用は、臨床的な設定において腫瘍の退縮をもたらす(モーガンら、2006)。ラパマイシン処理されたIL−12調整OT−I細胞の腫瘍効力を試験するために、我々は、ラパマイシン処理された、又はされていないIL−12調整OT−I細胞(72時間)を、E.G7腫瘍細胞、腫瘍サイズ(s.c.)を有する完全なC57BL/6レシピエントに養子移入し、その後の生存が追跡された。ナイーブOT−I細胞のレシピエントと比較して、Ag+B7.1刺激OT−I細胞を移植されたマウスは明らかな効果を示し(30日までに、100%に対し80%死亡率)、IL−12調整OT−I細胞ではさらに効果があった(30日までに50%死亡率)。ラパマイシン処理IL−12調整OT−I細胞は、120日まで78%のレシピエントが腫瘍なく生存し、著しく増強された腫瘍効力を示した(図7B)。さらに、ラパマイシン処理IL−12調整OT−I細胞は、ラパマイシン処理されていない対照と比較した場合、腫瘍サイズの制御が著しく増強されている(図7A)。これらの結果は、抗原、及び、IL−12調整エフェクターCD8+T細胞よりも大きな腫瘍効力を示すメモリー応答のためのIL−12調整CD8+T細胞を、mTOR阻害が調節することを示している。
【0073】
[実施例10]
本実施例は、テムシロリムス及びラパマイシンは、RCC及びメラノーマのマウスモデルにおいて、がんワクチンの抗腫瘍効力を増強することを示す。RCCモデルにおいて、ヒートショックタンパク質(HSP)が免疫アジュバントして提供され、標的抗原であり、明細胞RCCでは90%の発現率である炭酸脱水素酵素(CA9)と複合化された。Balb/cマウスは、CA9を発現するように改変された同系のRENCA腫瘍が移植された。腫瘍移植された目的の処理モデルでは、マウスは、移植から10日後に、テムシロリムス有り/無しのがんワクチンで処置された(図8)。図8にみられるように、ワクチン単体では腫瘍の生長に対して緩い効果しかない。テムシロリムス単独では、腫瘍生長の減少はあるが、ワクチンとテムシロリムスの組み合わせは腫瘍の生長に対してより大きな効果がある(図9)。同様にメラノーマモデルでも、ワクチンとテムシロリムスとの組み合わせは腫瘍の生長に対してより大きな効果を有した。このモデルでは、CA9はメラノーマ抗原gp100と複合化された。C57/BL6マウスはgp100を発現するように改変された同系のB16腫瘍が移植された;マウスは10日後に腫瘍ワクチンで処置された。ワクチンがラパマイシンで増強されたマウス卵巣がんモデルでも、同様の結果が観察された。
【0074】
[実施例11]
本実施例は、テムシロリムスの増強効果は免疫仲介性であることを示す。特に、テムシロリムスはインビトロにおいてRENCA(腎臓がん細胞)の生長に直接的な影響を有したが、インビトロにおいてB16メラノーマの生長には影響を有さなかった(図10)。このことは、メラノーマモデルでは、テムシロリムスの一次的な効果は免疫仲介性であることを示した。この可能性に合致して、CA9+gp100による免疫は、ELISPOTアッセイを用いて、脾臓細胞からgp100特異的なIFN−γ−応答を誘発した。この応答は、テムシロリムスと同時に処理することで有意に増大した(p<0.05)。さらに、特異的な致死はインビボのCTLアッセイにおいて、テムシロリムス処理によって増加した。Pmel−1細胞がC57/BL6マウスに養子移入され、テムシロリムス有り/無しのgp100+CA9で免疫された。Pmel−1細胞は、gp100.13の25−33番目のアミノ酸に対応するH−2Db制限エピトープを認識する遺伝子改変細胞である。H−2Db制限エピトープを負荷された標的細胞は、注入され、14時間後にフローサイトメトリーで検出された。テムシロリムス非受容群での特異的な致死は66%であった。ワクチンとともにテムシロリムスが投与された場合、特異的致死は78%に増加した。
【0075】
[実施例12]
本実施例は、本発明の多様な態様を示すものであり、各例は、mTOR阻害剤の使用が、抗がん免疫応答を増強することを示している。各例において、ブラック6(Black6)マウスが使用された。
【0076】
図11に示されたデータは、ラパマイシンは、樹立された卵巣腫瘍に対して免疫仲介性の防御を増強することを示している。簡潔には、20日に卵巣腫瘍保有マウスが、マウス卵巣漿液上皮細胞(「MOSEC」)の注入によって創出された。免疫付与は、MHC−Iの関連において鶏アルブミン抗原を発現している鶏痘由来ウィルスベクター(「Trico」(サノフィパスツール社)、「Tricom」とも言われる)を用いて行われた。ウィルスはT細胞の活性化に関与する3つの共刺激分子(B7.1、LFA3及びLFA−1)を発現している(例えば、ガーネットら、Curr Pharm Des. 2006;12(3):351-61を参照のこと。この文献は参照により援用される)。腫瘍保有マウスの生存が追跡された。各実験群は20匹であり、実験は2度繰り返された。図11のデータに見られるように、ラパマイシンの添加は、コントロール群との比較において、腫瘍保有マウスの免疫仲介性の生存について核心的な増強効果を有する。
【0077】
図12に示されたデータは、mTOR阻害剤の投与は、胸腺腫保有マウスのウィルス免疫仲介性の生存を増加させることを示している。図12にまとめられたデータは、図11で説明されたのと同様の実験環境を使用して、マウスT細胞胸腺腫鶏アルブミン発現細胞(EG.7)を接種されたマウスの分析に関する。これらのデータからは、mTOR阻害剤(ラパマイシン)とワクチン付与の組み合わせは、腫瘍保有マウスの生存を優位に増強することがわかる。
【0078】
図13に示されたデータは、mTOR阻害剤の添加は、恒常的増殖(HP)誘導性の抗腫瘍免疫を増強することを示している。特に、放射線誘導性のリンパ球減少は、ナイーブCD8+T細胞において、機能的な成熟およびメモリーをもたらすHPを誘導する。腫瘍(胸腺腫−EG.7)保有マウスでは、ナイーブ腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の養子移入に続く放射線は、腫瘍の生長に対する防御を生成する。図13に示されるように、ナイーブCD8+T細胞がラパマイシン存在下におけるリンパ球減少によって成熟するようにラパマイシンが投与された時に、このHP−誘導性の腫瘍免疫は増強される。すなわち本発明は、様々な種類の、がん抗原保有マウスに対する免疫学的応答の誘導の効果を増強することにも効果的である。
【0079】
図14は本発明の増強された予防的効果を示すデータの、図示的なまとめを提供している。これらのデータは一部OT−I細胞を用いて作られた。簡潔には、OT−I細胞は、全てのCD8+T細胞がkに提示されたオボアルブミンのペプチドに特異的なTCRを発現している、汎用の遺伝子改変OT−Iマウスから得られる。ペプチドのアミノ酸配列は当業者に知られている。
【0080】
図14に示されるとおり、ナイーブOT−I細胞は、ナイーブ同系マウスに注入され、その後、ナイーブレシピエントマウスは上述のとおり構築されたTricomウィルスを用いてオボアルブミン抗原に対して免疫付与される。免疫付与に続いて、mTOR阻害剤(ラパマイシン)が日毎に7日間付与される。図14で示されるグラフは胸腺腫試行第一日目(40日)を「0」とされている。注目すべきことに、データは、40日後に同系の腫瘍によって試行された時に、ラパマイシン処理は、ウィルス免疫付与マウスの生存を有意に増強したことを示している。これは、持続的な腫瘍免疫及び抑止のための、メモリーCD8T細胞を産生する能力を表している。すなわち、本発明は、予防的免疫のための強力な方法を提供するものであり、例えば、個体におけるがん成長のリスクや、また、再発リスクに対しても採用されうる。
【0081】
図15は、mTOR処理がHP−誘導性の抗腫瘍CD8+T細胞応答を増強することを示している。特に、図15に示されるように、C57BL/6マウスは放射線照射され、CD8+T細胞の数はOT−ICD8+T細胞で回復された。マウスはEG.7細胞(アルブミン抗原を発現した胸腺腫細胞)で試行された後、ラパマイシンが日毎に8日間投与された。再度のmTOR阻害剤の使用は、予防的免疫応答の+ラパマイシンの列で表されたように、HP−誘導性腫瘍免疫を増強する。
【0082】
図16は、卵巣腫瘍の治療において本発明が、CD8+T細胞仲介性のACT(養子細胞療法)療法の増強を誘発したことを示している。特に、ナイーブOT−I細胞が、ラテックス微粒子及びC57BL/6マウス同等MHCクラスI(H−2K)と併せて、抗原と共に、72時間、IL−12及びmTOR阻害剤(ラパマイシン)の存在/不存在下で、培養される。エクスビボで産生されたCD8+細胞に特異的な抗原は、回収され、腫瘍を有する同系レシピエントに注入された(40日)。養子移入のアプローチは、皮下又は腹腔内を通じて、MOSEC−Ova腫瘍を有するように作出されたマウスに対して用いられた。皮下注入は、サイズの測定に適当な腫瘍をもたらし、腹腔内ルートは、生存時間を決定するために有用なデータを生じた。これらは、添付のグラフに記載されている。データは卵巣腫瘍試行(40日)を制御し、生存を促進する強い能力を示している。このように、ラパマイシン処理抗原、及び共刺激され、完全に活性化されたCD8+T細胞は、胸腺腫の防御と類似の態様で、養子細胞移入によって卵巣腫瘍免疫を促進する。マウスは300日まで腫瘍フリーであり、再試行にも抵抗を示した。すなわち、メモリーT細胞が示唆される。
【図1ABC】

【図1DE】

【図2ABC】

【図3AB】

【図3CDE】

【図4ABCDE】

【図4FGH】

【図5ABCD】

【図5EFG】

【図6A】

【図6BCD】

【図6E】

【図7AB】

【図8ABCD】

【図9ABCD】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD8+T細胞の個体群及び哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤を含む組成物。
【請求項2】
前記CD8+T細胞が前記組成物の細胞中に少なくとも10%含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記CD8+T細胞が特異的で、かつ、個体において免疫応答の増強が所望される抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらにインターロイキン12(IL−12)を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗原が腫瘍抗原である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
増強された免疫応答を必要とする個体において、抗原に対する増強された免疫応答を得るための方法であって、前記個体において前記抗原及び哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項7】
前記個体が、がんを有すると診断されもしくは疑われており、前記がんが前記抗原を発現しているがん細胞を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
個体において、前記抗原の投与に続いて前記mTOR阻害剤が投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも7日間、少なくとも1日1回、mTOR阻害剤が個体に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
継続して20日間を超えない期間、mTOR阻害剤が個体に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
mTOR阻害剤が、ラパマイシン又はテムシロリムスである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
さらに、個体において、前記抗原に特異的なCD8+T細胞を含む組成物を投与することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
個体にCD8+T細胞を投与する以前に、前記抗原がCD8+T細胞に提示されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
個体にCD8+T細胞を投与する以前に、CD8+T細胞がmTOR阻害剤と接触させられている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
個体にCD8+T細胞を含む前記組成物を投与する以前に、個体からCD8+T細胞が単離されている、請求項12に記載の方法。

【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−515213(P2012−515213A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546329(P2011−546329)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/021029
【国際公開番号】WO2010/083298
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504206056)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】HEALTH RESEARCH, INC.
【Fターム(参考)】