免疫治療のためのナノ粒子
生体分子の非存在下で補体を活性化するナノ粒子について記載する。該ナノ粒子は、標的化のための生体分子を使用することなく、特にリンパ節の抗原提示細胞を特異的に標的化する。これらの粒子は、免疫治療薬を送達するための有用な媒体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、引用により本明細書に組み込まれている2006年2月21日出願の米国特許出願第60/775,132号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
技術分野は、いくつかの態様において、免疫系を活性化するための表面化学作用を有するナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
抗原に対する耐性を発達させること、又はそれを拒絶することを習得すること等による所望の方法で抗原に応答するように免疫系を訓練することができれば、多くの医学的メリットを実現することが可能である。この課題に対処するために、全身薬物治療、抗原の注入及び抗体治療を含む様々な手法が試みられてきた。
【発明の開示】
【0004】
(発明の要旨)
本明細書に開示されている手法のなかで、1つの新しい手法は、治療物質を体内の特定箇所の抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)に特異的に標的化する。APCは、典型的には樹状細胞及びマクロファージであり、場合によってはB細胞である。本明細書において、APCは、樹状細胞及びマクロファージのみを表すのに用いられる用語であり、B細胞は除外される。APCは、体全体に散在するが、この手法は、作用物質を特定箇所、すなわちリンパ節のAPCに標的化する。APCは、リンパ節における作用物質の吸収が有利になるように、リンパ節では他の箇所とは異なる挙動を示す。さらに、媒体は、その効果を果たすことができるように数時間又は数日間にわたって残留するとともに、生分解可能である。APCは、リンパ節において特異的に標的化されるだけでなく、治療薬の送達媒体が特定の方法で、すなわち補体系を活性化することによってAPCを活性化する。補体系を活性化することは、適切な免疫治療薬を選択できるように既知の応答経路を含む。さらに、補体系は、生物剤を含まない送達系における合成物質によって活性化される。これらの特異的に標的化される特徴のすべての結果は、所望の免疫治療を達成するようにAPCを活性化する時間と場所において治療薬をAPCに遍く送達する媒体である。媒体そのものは、コンフリクト、交叉反応又は免疫系の望ましくないアンタゴニズムを生じることなく任意の作用物質を容易に受け入れるような生体分子又はポリペプチドを含まない。
【0005】
この手法は、いくつかの実施態様において、好適な物理特性を有し、間質空間を流れて、リンパ系を浸透する大きさに作られた粒子を含む。大きすぎる粒子は、リンパ系に効率的に移動しないであろう。当該粒子を生分解性合成ポリマー及び補体を活性化するポリマーで製造することができる。様々なポリマーを架橋させ、補体活性化に利用可能な粒子上の位置に特定の補体活性官能基を配置させることによって当該粒子を製造することができる。これらの特徴のすべてを以下に詳細に説明する。
【0006】
いくつかの実施態様において、組成物は、免疫治療薬と会合する合成生分解性粒子の孤立集合体と、補体を活性化する第1のポリマー及び第2の共有結合架橋ポリマーとを含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化する天然の生体分子を含まず、該第1のポリマーは、該第2のポリマーに強く結合する。
【0007】
いくつかの実施態様は、第1のポリマーと、重合時に使用される乳化剤である第2のポリマーとをエマルジョン重合して、平均直径が約20nmから約100nmの生分解性粒子の集合体を製造すること、補体を活性化するヒドロキシル官能基を含むように第2のポリマーを選択すること、及び免疫治療薬を粒子と会合させることを含むナノ粒子の免疫治療組成物の製造方法に関する。
【0008】
いくつかの実施態様は、免疫治療薬を送達する方法であって、リンパ節の抗原提示細胞に特異的に標的化される合成生分解性粒子の集合体を患者に導入することを含み、該粒子は、補体を活性化する第1のポリマーを含み、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化する天然の生物分子を含まず、該粒子は、第1のポリマーに強く結合する第2の共有結合架橋ポリマーを含む前記方法に関する。
【0009】
いくつかの実施態様は、補体を活性化する合成ポリマーを含む合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、例えば約10nmから約100nmの平均粒径を有する前記ナノ粒子組成物に関する。該粒子を抗原とさらに会合させることができる。いくつかの実施態様における合成ポリマーは、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、或いはアミノ酸及び/又は核酸及び/又は糖類を全く含まない。合成ポリマーは、例えば、ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーの疎水部分に吸着する疎水性部分を含み、それによって合成ポリマーがコアに結合することができる。
【0010】
いくつかの実施態様は、合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、例えば約10nmから約100nmの平均直径を有し、該粒子は、免疫抑制薬を含み、該粒子は、抗原とさらに会合される、前記ナノ粒子組成物に関する。いくつかのバージョンにおいて、該粒子は、少なくとも1つの疎水性ブロック及び少なくとも1つの親水性ブロックの両親媒性共重合体を含み、該ブロック共重合体は、水溶液中で自己集合して、粒子を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
(発明の概要)
好適な特性を有するナノ粒子を使用して、治療物質をリンパ節の樹状細胞(dendritic cell)(DC)を含む抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)に特異的に標的化することができる。ナノ粒子粒径のリンパ吸収、リンパ節滞留及びリンパ節APC及びDCによる内在化に対する影響を、ここでは、マウス(ヒトと同様の大きさのリンパ毛細血管(10〜80μm)を有するが、これらは両種において大きく変動する[20、42])における皮内注入に対応して実証する。様々なナノ粒子粒径を用いることができるが、約20nmの直径のナノ粒子が最も容易に吸収され、さらに、他の粒子について既に報告されたものより長い時間(120時間まで)にわたってリンパ節に滞留する[31〜34、36]。驚いたことには、特定のナノ粒子表面化学作用は、補体を活性化することが実証される。リンパ節内部で、補体活性ナノ粒子は、標的化リガンドがなくても、常在APC(DC及びいくつかのマクロファージを含むMHCII+細胞)及び他の非抗原提示マクロファージ(MHCII-)によって効率的に内在化されることが示された。リンパ節常在DCの大部分(50%まで)が20nmの補体活性ナノ粒子を内在化させ、その数が時間とともに増加した。補体活性ナノ粒子内在化の後にDC成熟が生じることが見いだされた。
【0012】
粒径及び表面化学作用も同時に重要である。所定の効率でリンパに入る大きさに作られていない補体活性ナノ粒子(例えば、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子)は、より高い進入効率を有する同じ化学作用の比較的小さいナノ粒子(例えば25nm)ほど強力な補助剤でない。容易にリンパに入り大きさに作られた非補体活性ナノ粒子(例えば、メトキシ末端PLURONICで安定化された25nmのPPSナノ粒子)は、補体を活性化する表面化学作用の同サイズのナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化25nmPPSナノ粒子)ほど強力な補助剤でない。補体活性化がそのメカニズムにおいて主要な役割を果たすことは、抗原が結合された25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子が注入されたC3-/-動物における低い応答によって証明される。したがって、小さい(例えば20〜45nm)ヒドロキシル化ナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化PPSナノ粒子)は、免疫治療薬をリンパ節におけるDC及び他のAPCに送達するための手段を提供する。
【0013】
特定の表面化学作用を利用して、DCを含むAPCを活性化し、次いでT細胞依存性順応免疫応答を誘発することができる。ヒドロキシル化表面[117]又はPLURONICによる安定化によって得られたヒドロキシル化表面[118]を含むいくつかの物質表面は、補体カスケードを活性化することができる。物質表面を特定のヒドロキシル化分子及び生体分子に連結させて、補体を活性化することができる。例えば、当業者は、本明細書に記載の技術を適用して、その結合を達成することができる。さらに、移植体、医療用具、又はナノ粒子以外の担体に本明細書に記載の補体活性ポリマーの層を与えることができ、或いはポリマー又はヒドロキシルを当該物質に直接導入することができる。補助剤の開発において、科学者に利用されていた従来の手法は、リポ多糖(lipopolysaccharide)(LPS)のようなToll様受容体の活性化体を通じてDCのような細胞を活性化することであった[119〜121]。特定のナノ粒子表面化学作用は、先天免疫の異なる態様、すなわち補体カスケードを活性化し得ることが発見された。本明細書の詳細な実施例では、PLURONICによる安定化によって得られたもののようなヒドロキシル化ナノ粒子が補体を活性化することができ、次にこれがDCを含むAPCを活性化し、T細胞依存性体液及び細胞免疫を誘発することができることを証明する。補体メカニズムを採用しない補助剤としてのナノ粒子に関する他の研究において、ポリマーナノ粒子サイズは、DCに標的化され、これを活性化する程度を決定づけた。カルボキシル化ポリスチレンナノ粒子を用いると、中程度の粒径(45nm)のナノ粒子はDCに吸収され、それらを活性化するが、より小さいナノ粒子(20nm)は、そうではない[116]。しかし、本明細書に記載のナノ粒子を用いると、補体を活性化することができ、これは、DCの活性化及び順応免疫応答のT細胞依存性体液及び細胞態様の誘発に対する強力なシグナルを提供する。
【0014】
補体活性化は、順応免疫応答、特にB細胞免疫を向上させることが知られる。B細胞依存性体液免疫を向上させるために、補体タンパク質C3b及びC3dを分子補助剤として利用できることが以前の研究によって証明された。後天免疫B細胞応答が遊離抗原単体と比較して有意に増加することが、モデル抗原に対するC3b又はC3dの融合によるマウスの免疫化によって証明されている[134、135]。C3b及びC3d補助剤が機能するメカニズムは、B細胞活性化の公知の増幅体であるCD19と会合するC3d受容体(CD21/35)の直接的な結合によるものであり得る。しかし、CD21/35は、このB細胞受容体にとって必要であるとは限らないことが判明した[136]。C3b-及びC3d-抗原融合に対して1つの確実なことは、体液免疫に対するそれらの補助剤としての能力がB細胞との直接的な相互作用によることである[137]。これは、抗原が本明細書に教示されるようにDCに吸収され、DCが成熟し、DCが抗原を処理し、MHC IIを通じてCD4 T細胞にそれを提示し、CD4 T細胞が抗原をB細胞に提示し、最後にB細胞が抗体を生成するときに生じるT細胞依存性体液免疫と異なる。補体は、T細胞依存性免疫に関与することが発見されたが、これが生じるメカニズムは、示されていない[138]。さらに、補体活性化をT細胞依存性免疫のための分子補助剤として利用できることがこれまで示唆されていなかった。
【0015】
しかし、本明細書における系は、補体活性化をT細胞依存性免疫のための分子補助剤としてどのように利用できるかを示す。さらに、いくつかの実施態様は、ナノ粒子表面化学作用を通じて補体を活性化するナノ粒子を含む。具体的には、例えば、25nmのPLURONIC安定化補体活性PPS化ナノ粒子は、DC成熟を誘発することがそれらの結果によって示され、ヒドロキシル化表面を介する補体活性化を、DC成熟を誘発する危険信号として利用できることが初めて証明される。また、本明細書に記載されるように、DC媒介T細胞依存性体液及び細胞免疫を誘発するための補助剤として、PLURONIC安定化ナノ粒子を介する補体活性化が初めて利用される。
【0016】
(免疫系標的化)
抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)は、MHCクラスI、II及び他の共刺激性分子(すなわちCD86及びCD80)を利用して原性T細胞を刺激し、細胞媒介免疫を誘発する極めて効率的な食細胞である。いくつかのマクロファージ及びより強力な樹状細胞(dendritic cell)(DC)を含むAPCは、末梢組織に存在し、外来抗原の内在化及び処理に続いて、T細胞に対する抗原提示を目的として、成熟し、リンパ節に移動するセンチネルとして作用する[1〜3]。APC及びDCが順応免疫において果たす重要な役割について、これらの細胞にDNA、タンパク質及びポリペプチドのような免疫調節剤を標的化するための様々な実験が行われている[4〜14]。ポリペプチドは、互いに結合した2つ以上のアミノ酸を指す用語であり、タンパク質を含む。
【0017】
ポリマー及びリポソームベースの送達系は、それらが最初に薬物媒体を内在化させ、次いで約1〜2日以内にリンパ節に移動して、T細胞を活性化する、タンパク質及びDNAの末梢DCへの送達に主として焦点をおいていた[9、12、13]。抗原を吸収することが可能な未成熟DCがリンパ節に存在するかどうかは、最近まで明らかでなかった。しかし、リンパ節における実質的な割合の常在DCが、表現型として未成熟であり、そこの抗原及び粒子を内在化することが可能であることが最近の研究によって実証された[15、16]。したがって、本明細書に説明されているように、常在リンパ節APCも免疫治療薬又は他の治療薬の標的として利用できる。末梢部位におけるものの代わりにリンパ節APC又はDCに標的化する潜在的な利点は、早発性抗原提示(すなわち、リンパ節に到達する前にその表面に抗原を発現する移動性DC)がしばしば細胞耐性をもたらし得ることである[13、17、18]。したがって、リンパ節APCへの送達は、この問題を防ぎ得る可能性がある。また、他のDC標的化研究では、DC特異性を高めるために抗Dec-205及び抗CD11cなどの連結される標的化リガンドが使用されている[4、5、8、9、12、19]。
【0018】
しかし、従来認識されていなかったことは、DCが本質的に高度に食作用性であり、リンパ節に高濃度で存在することを効果的に利用できることである。よって、標的化リガンドを使用しない標的化を含めて、本明細書に説明されているように、リンパ節におけるこれらの細胞に特異的に標的化するための材料及び方法が開発された。標的化リガンドは、細胞上の特定の化学基、例えば、細胞表面受容体又は細胞表面タンパク質に特異的に結合する化学基を指す。したがって、いくつかの実施態様は、サイズ及び他の物理特性に基づいて標的化することができ、受容体、細胞表面分子、細胞外マトリックス分子、細胞表面抗原、細胞マーカ分子又は多糖類のいずれに対しても外来性ポリペプチドを用いることなく、外来性リガンドを用いることなく、外来性核酸を用いることなく、抗体又はその断片を用いることなく、或いは受容体、細胞表面分子、細胞外マトリックス分子、細胞表面抗原、細胞マーカ分子又は多糖類のいずれに対しても外来性リガンドを用いることなく標的化される。
【0019】
リンパ節におけるDCを含むAPCに標的化するためには、本明細書において証明されるように、リンパ管に容易に吸収され、流入領域リンパ節に保持され得る送達媒体を設計することが有益である。送達媒体は、例えば、治療薬、例えば、抗原又は免疫抑制薬を送達する粒子のような物質を指す。リンパ系の主たる役割は、微小循環の小さいが、重要な成分としての間質空間からの粒体及び微粒子の吸収である[20〜23]。
【0020】
リンパ系を調査するためにリポソーム及びポリマー粒子を使用する他のインビボリンパ標的化実験により、粒径は、間質空間からのリンパ吸収のための要因であり得ることが示された[21、24〜29]。170nmより大きいリポソームは、低いリンパ吸収を示し、注入部位に残留したのに対して、40〜70nmの範囲の粒子は、リンパ管への吸収が大きかった[25]。
【0021】
カルボキシル化ポリスチレン粒子を使用する1つの当該研究により、40〜50nmの狭い範囲の粒径は、DCによって認識される危険信号であるため、この狭い範囲内の粒子のみが有益であり、その結果として、DCは、リンパ節でなく、皮膚の部位で活性化されることが教示されている[116]。このポリスチレンビーズの研究により、ビーズは、より小さい粒径(20nm)及びより大きい粒径(>100nm)より多く中間の粒径(40nm)でリンパ節に蓄積することが示され、40〜50nmがビーズについて使用されるべき粒径であることが教示された。より具体的には、この研究では、DC抗原DEC205によって示されるように、DCマーカに対して陽性である細胞には、非常に小さい粒子(20nm)及びより大きい粒子(100nm)が、40nmの粒子より有意に少なく蓄積することが見いだされた[116]。40nmのポリスチレンビーズは、皮膚の部位におけるDCの活性化及びリンパ節への移動を引き起こすため、40nmのビーズは、リンパ節常在DCに標的化することができないことが著者らによって教示されている。
【0022】
さらに、ポリスチレンビーズの研究により、DCがウィルスサイズの範囲を認識するように変化したため、ビーズサイズは、DCに対する危険信号であることが教示されている。したがって、ビーズサイズは、順調なDC標的化を調節し、正確にサイズ設定されたビーズが周辺のDCによって認識され、DCの活性化を引き起こす。この教示は、本明細書に記載されているDC活性化に対するより小さいナノ粒子(約40又は約35又は約25nm)の順調な使用と大きく異なる。この教示は、表面化学作用が、例えば、ヒドロキシル表面化学作用を利用して、危険信号としての補体を活性化するPLURONIC安定化PPSナノ粒子のように、危険信号であることを示す本明細書における結果とも異なる。さらに、本明細書における結果は、粒径を、DCサイズ認識ではなく、リンパ節標的化能力に関連づけるものである。例えば、25nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子は、インビボ注入後のDC及び順応T細胞免疫を活性化するのに、100nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子より優れていた。
【0023】
カルボキシル化ポリスチレンビーズは、少なくとも一部に、それらの便利な合成及びエマルジョン重合特性が狭く、調節可能なサイズ分布を与えるため、実験モデル系として使用された[116]。治療又は予防系としての使用に対する潜在的な短所が、ポリスチレンビーズに伴う。例えば、当該粒子を分解させ、体内から除去することができる生体経路が存在しない。対照的に、本明細書に記載されている生分解性の系は、例えば、飲食作用及び処理後に遭遇する酸化条件下で分解するPPSナノ粒子のように、インビボ環境に応答して、容易且つ効果的に可溶性ポリマーに分解する。ナノ粒子の分解は、有益であり得るが、補助剤としての使用に必ずしも必要なものではない。
【0024】
粒子表面と間質との相互作用は、リンパ吸収において役割を果たす別の要因であり得る[30]。リポソーム及び粒子をポリ(エチレングリコール)(PEG)及びPLURONICS等のその共重合体(ポリ(エチレングリコール)-bl-ポリ(プロピレングリコール)-bl-ポリ(エチレングリコール)を含む)のような親水性の層で被覆することによる立体安定化は、皮下注入の後のリンパ吸収の向上によって実証されるように、間質のタンパク質との非特異的な相互作用を低減することができる[21、27、31〜35]。これらの事実のすべてが、リンパ吸収の観点からの粒子の物理特性の重要性を指摘している。
【0025】
しかし、小さい粒子ほど容易に吸収されるが、リンパ節から容易に流出される。したがって、効率的なリンパ吸収及びリンパ節滞留の両方を達成することが重要である。よって、本明細書に記載されている実施例及び実施態様から明らかなように、一定のナノ粒子実施態様は、吸収及び滞留の両方を扱う。例えば、ナノ粒子の粒径に関して、注入された70nmのリポソームのわずか1〜2%が、注入後12時間を過ぎてもリンパ節に滞留すること[30]及び大きいリポソーム(>70nm)のリンパ節滞留は、より小さいリポソームの滞留より効率的である[24、29]ことがリンパ系の調査によって示された。これは、リンパ節マクロファージが、より大きい粒子をより効果的に貪食することに一部起因するように思われる。リポソームをPEGのような立体保護剤でコーティングすると、マクロファージによる貪食が低減されることが従来から想定されているが、当該コーティングは、リンパ節滞留に有意に影響しないことが示された[36]。リンパ節で貪食された粒子は、主としてマクロファージによって貪食されることも従来から想定されている[21、27、29、30、32、36、37]。カルボキシル化ポリスチレンナノ粒子については、インビボでDCに吸収される20nmのナノ粒子は、40nmのナノ粒子よりはるかに少ないことが判明した[116]。したがって、薬物をマクロファージに吸収させるために送達するのに加えて、DCを含む他のAPCに吸収させるために薬物をリンパ節に送達することが有利である。以下に示すように、本発明の粒子の一定の実施態様は、実際、少なくとも20nm程度の小さい粒径でもAPC及び/又はDCに吸収される。
【0026】
抗原吸収に続いて、DCを成熟させ、次に細胞媒介免疫を誘発するのに炎症サイトカインのような強力な生物的「危険信号」(すなわちCD40リガンド)が必要である[5、12、38]。しかし、当該信号に先行することが有利であり得る。実際、いくつかの実施態様において、従来の生物的「危険信号」、例えば、いくつかのポリペプチド、抗体、核酸配列の使用を回避する成熟刺激としてナノ粒子そのものが使用される。これらの結果は、インビボのナノ粒子内在化に続いて観察されたDCの成熟応答において明らかである。
【0027】
(ナノ粒子製剤)
本明細書に記載されているように、粒径は、リンパ節におけるナノ粒子吸収及び滞留に関連する。ナノ粒子のリンパ吸収、リンパ節滞留並びにリンパ節内及び細胞集団間における局在化は、本明細書に記載されている。粒径及び表面特性のようなナノ粒子の特性は、矛盾する効果を有し得るため、従来の手法を用いる1つの課題は、効率的なリンパ吸収及びリンパ節滞留の双方を得ることである。概して、小さい粒子は、大きい粒子よりリンパ吸収が良好であるが、リンパ節滞留が劣る。直径約5nmから約100nmのナノ粒子が好ましい。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80nmが考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。約5から約100nmの平均直径を有する粒子の集合体でナノ粒子を製造することができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、約10から約70nmが考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。粒子集合体の平均直径付近の変動係数(標準偏差を平均粒径で割った値)を約50、約35、約20、約10又は約5nm未満にできるように、当該粒子の集合体の粒径分布を調節することが可能である[39]。すべての範囲及び明記された範囲内の値が考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。
【0028】
物理特性は、リンパ節における吸収及び滞留後のナノ粒子の有用性にも関連する。これらは、剛性及びゴム弾性のような機械特性を含む。いくつかの実施態様は、全身(標的又は免疫ではない)送達のために最近開発され、特徴づけられたPPS-PEG系のようなPEGのように、被覆層、例えば親水性被覆性を有するゴム状コア、例えばポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)コアに基づく[39、40]。ゴム状コアは、ポリスチレン又は金属ナノ粒子系のような実質的に硬質のコアと異なる。ゴム状という用語は、天然又は合成ゴムの他に一定の弾力性材料を指し、ゴム状は、ポリマー技術分野の当業者に良く知られている用語である。例えば、架橋PPSを使用して、疎水性のゴム状コアを形成することができる。PPSは、酸化条件下で分解して、ポリスルホキシド、そして最後はポリスルホンになって[41]、疎水性ゴムから親水性の水溶性ポリマーに変化する[39]ポリマーである。他の硫化物ポリマーも使用のために適用することができ、硫化物ポリマーという用語は、単量体単位の骨格に硫黄を有するポリマーを指す。使用できる他のゴム状ポリマーは、水和条件下でのガラス転移温度が約37℃未満であるポリエステルである。疎水性コアは、コアと被覆層が混合しない傾向にあるため、被覆層がコアから離れて広がるため、親水性被覆層に有利に使用できる。コアは、その上に層を有する粒子を指す。層は、コアの少なくとも一部を被覆する物質を指す。層を吸着又は共有結合することができる。粒子又はコアは、固体又は中空であってもよい。ゴム状疎水性コアを有する粒子によってより充填量の大きい疎水性薬物を担持できるという点で、ゴム状疎水性コアは、結晶性又は(ポリスチレンの場合のような)ガラス質のコアのような硬質の疎水性コアより有利である。
【0029】
別の物理特性は、表面の親水性である。親水性物質は、架橋されていないときに少なくとも1グラム毎リットルの水溶解度を有する。粒子を親水性ポリマーで立体的に安定化すると、非特異的な相互作用を抑えることによって間質からの吸収を向上させることができる。しかし、粒子のステルス性も強くなるため、リンパ節における食作用性細胞により内在化が抑制され得る。しかし、これらの矛盾する特徴をバランスさせるという課題は、解決されており、本出願には、リンパ節におけるDC及び他のAPCへの効果的なリンパ送達のためのナノ粒子の作製が記載されている。したがって、いくつかの実施態様は、親水性成分、例えば親水性物質の層を含む。好適な親水性物質の例は、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、多糖類、ポリアクリル酸及びポリエーテルの1種又は複数種である。層内のポリマーの分子量を調整して、インビボの有用な立体阻害度、例えば約1000から約100000、さらにそれ以上の立体阻害度を得ることができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば10000から50000が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。例としては、エマルジョンとしての合成中に安定剤として使用されたPLURONICからPEG誘導される親水性表面を有する粒子が挙げられる。
【0030】
ナノ粒子は、さらなる反応のための官能基を含むことができる。さらなる反応のための官能基としては、求電子体又は求核体が挙げられる。これらは、他の分子との反応に便利である。求核体の例は、一級アミン、チオール及びヒドロキシルである。求電子体の例は、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、イソシアネート及びマレイミドである。例えば、PPS-PLURONICナノ粒子を例として、次いで、PLURONICをOVA/OVA257〜264/OVA323〜339誘導PLURONICで置換することを除いては、実施例1に記載されているように粒子を合成する。1.5%PLURONICの全量を使用する。タンパク質又はペプチドの接触をナノ粒子合成時の基本条件まで抑えるために、反応時間を2時間に短縮し、塩基を1:1の等モル比で開始剤-チオールに添加する。このスキームは、PEG官能化のための1つの例示的な方法にすぎない。連結されているタンパク質又はペプチドに応じていくつかの他の手法を利用することができる[111]。
【0031】
ナノ粒子は、補体活性化のための官能基又はモチーフを取り入れることもできる。好ましい官能基は、本明細書に記載されているように補体を活性化するのに特に効果的なヒドロキシルである。求核性の他の官能基は、C3においてチオエステルと反応することができる。本明細書において、ヒドロキシル化ナノ粒子表面は、リンパ節におけるDCを含むAPCに標的化するのに特に有用である。本明細書の実施例のPPSナノ粒子の場合は、ヒドロキシル基を末端とするPLURONICによる安定化によってヒドロキシル化を得た。これらのヒドロキシル基をメトキシ基に変換してヒドロキシ基をブロックすると、ナノ粒子が補助剤として十分に機能しなくなった。ヒドロキシル化ナノ粒子をC3-/-マウスで試験したところ、それらの補助剤効果は、著しく低下していた。これらの結果は、C3活性化の本明細書における実施例に記載の測定結果と合わせると、補体活性ナノ粒子によりDCを含むAPCに標的化することが特に有用であることを証明するものである。よって、いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、補体を活性化し、pH7.0〜7.4のカチオン、アミン、一級アミン、二級アミン、pH7.0〜7.4のアニオン、チオール、pH7.0〜7.4の双性イオンの1種以上を排除するためにOHのみに依存する。或いは、当該基は、ナノ粒子上に存在するが、1種以上の当該基を排除するのはナノ粒子上のポリマーの層である。或いは、ナノ粒子及び/又は層は、OHを除いてpH7.0から7.4のイオンを効果的に形成することが可能な基を有さない。
【0032】
官能基を効能の必要に応じて粒子上に配置することができる。1つの位置は、コアポリマー上、又はコア上の層であるポリマー上、そうでなければ粒子に結合されたポリマー上の側基若しくは末端基であり得る。例えば、特異的細胞標的化又はタンパク質及びペプチド薬物送達のために容易に官能化できる、ナノ粒子を安定化するPEGについて記載した例が本明細書に含まれている。
【0033】
生分解性ポリマーを使用して、ポリマー及び/又は粒子及び/又は層のすべて又は一部を製造することができる。生分解性は、自然発生的な加水分解、特定のアミノ酸配列を開裂させる酵素による化学的攻撃、或いは酸化の影響を受けやすい官能基を導入することによって分解するポリマーを指す。自然発生的に加水分解するポリマーは、官能基が溶液中の水と反応する結果として、7.0から7.4のpHに維持された水溶液においてインビトロで分解するであろう。本明細書に用いられている「分解」という用語は、(ポリエステルの場合のように)分子量の低下によって、又は(PPSの場合のように)疎水性基の親水基への変換によって、可溶性になることを指す。エステル基を有するポリマー、例えば、ポリラクチド及びポリグリコリドは、一般に、自然発生的に加水分解する。特定の酵素攻撃を受ける、例えば、コラゲナーゼ又はメタロプロテイナーゼによって分解する多くのペプチド配列が知られている。単に生体遊離ラジカル機構によって分解する配列は、特異的に分解されない。酸化の影響を受けやすい官能基を有するポリマーは、弱い酸化剤によって化学的に変化され、その試験は、10%過酸化水素で20時間にわたってインビトロで接触させることによって可溶化が増強している。例えば、PPSは、酸化の影響を受けやすいポリマーである[39]。
【0034】
代表的な系としてPPS粒子を使用して、ナノ粒子の製造及び使用方法を実証したが、代替的な物質を使用してもよい。概して、機能性粒子を製造する必要性に従って、粒子系の各成分の特徴を自由にうまく組み合わせることができる。例えば、小さい(例えば、約100nm未満又は約70nm未満である)ため、リンパ循環に入る他の粒子を効率的に使用してもよい。当該粒子にPEGの被覆層を任意で接合するか、或いは親水性ポリマーを導入してもよく、抗原、危険信号又はその両方を任意で接合してもよい。例えば、PEG含有ブロック共重合体を適切なサイズの分解性ポリマーナノ粒子に吸着させ、抗原を当該処理ポリマーの表面にさらに結合させることができる。別の例として、PEG含有ブロック共重合体を適切なサイズの無機ナノ粒子に吸着させ、抗原を当該処理ポリマーの表面にさらに結合させることができる。ナノ粒子コアの分解は、望ましいかも知れないが、必ずしも必要ではない。
【0035】
ポリ(エチレングリコール)及びPPSのAB及びABAブロック共重合体から形成されたミセルを含むミセル系も上記の特性と同様の有用な特性を示すことができる[100〜104]。当該共重合体を比較的高量、例えば約40%を超えるポリ(エチレングリコール)の分子片で形成すると、一定の条件下で球状ミセルが形成することが期待できる。これらのミセルは、小さく、例えば、リンパ進入のための上記のサイズを満たすことができ、PEGの被覆層を任意で接合するか、或いはPEG又は他のポリマーを導入して、同様の特性を達成することができる。さらに、ミセル表面において、それらを本明細書に教示されている抗原、危険信号又はその両方と連結させることができる。ブロック共重合体は、補体活性化のためにヒドロキシル基で終端することができ、このヒドロキシル基が補体結合のためにミセルナノ粒子表面でより容易に利用できるように、ヒドロキシル基に親水性のブロック末端を有するのが特に有利である。当該ヒドロキシル化表面を、補体を効果的に活性化するように構成することができる。特に有用な親水性ブロックは、ヒドロキシル基で終端するPEGである。ミセル形性ポリマー構造に加えて、ブロックサイズ及びブロックサイズ比を、多孔質構造を形成するように選択することができる。使用できるミセル製剤のいくつかの他の可能な化学組成も存在する[105〜108]。
【0036】
いくつかのポリマー系は、それ自体がナノ粒子であり、ナノ粒子という用語に含められる。例えば、デンドリマーは、10nmの範囲のナノ粒子であり得るポリマー類である[141]。これらのポリマーは、それらの表面に、例えば生体分子及び他の基に連結させるのに使用された多数の官能基を含む[142、143]。同様に、抗原をデンドリマー表面に連結させることが可能である。さらに、デンドリマー表面の官能基を例えばヒドロキシル化によって補体活性化のために最適化することが可能である。いくつかのデンドリマー・DNA複合体は、補体を活性化することが証明されている[144、145]。したがって、デンドリマーは、例えば、明確に開示されていることに矛盾しない範囲で引用により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2004/0086479号、同第2006/0204443号、米国特許第6,455,071号及び同第6,998,115号のような抗原結合及び補体活性化のために、本明細書に記載の技術を用いたリンパ標的化に応じて構成することが可能な興味深いナノ粒子化学作用を示す。
【0037】
一方、デンドリマーは、所定の環境におけるその成分ポリマーの可溶性に大きく依存し、その周囲の溶媒又は溶質、例えば、温度、pH、イオン含有量の変化に応じて、又はDCによる吸収後に著しく変化し得る。対照的に、デンドリマー又は他の単に分枝状のポリマー系より比較的安定した物理的寸法を有するナノ粒子は、保存目的に、又はそれに関連した活性若しくは生物活性として有用であり得る。例えば、親水性コロナを有する固体のコアは、その環境にコロナを一貫して提供する。よって、ナノ粒子のいくつかの実施態様は、デンドリマーでない粒子、又は固体のコアを有する粒子及び/又は架橋ヒドロゲルであるコアを有する粒子に依存する。PPS系ナノ粒子は、デンドリマーでなく、固体のコアを有する。
【0038】
(ナノ粒子による免疫治療)
使用に際して、当該ナノ粒子は、例えば、リンパ節のAPC、特にDCに標的化するための抗原及び薬物媒体として有用である。抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号をリンパ節のDCに送達する能力は、免疫治療の有用な手法である。リンパ節DC及び他のAPCにナノ粒子を効果的に標的化する能力は、抗原タンパク質及びポリペプチド並びに抗原コード核酸を送達するための方法を提供する。DCは、T細胞に対する抗原提示による細胞媒介免疫の開始に関与するため、この送達手法をいくつかのワクチン及び免疫治療用途に利用することができる。さらに、ナノ粒子は、診断ツール(例えば画像診断)、研究ツール(例えば、ALDRICHカタログで販売、又は顕微鏡を使用する視覚化に対応)又はインビトロ薬物送達又は視覚化(薬物又は画像化剤のインビトロのAPC及び/又はDC及び/又はマクロファージ吸収)として有用である。
【0039】
抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号を粒子に共有結合させること、粒子に吸着させること、粒子に充填すること、又は患者への同時導入のために粒子の集合体と混合することができる。共有結合のためのモチーフは、本明細書の他の箇所で論述されており、この場合にも適用され得る。作用物質と粒子とを所定の時間にわたって混合し、次いで、例えば遠心分離又は濾過によって粒子を混合物から物理的に分離することによって吸着を遂行することができる。例えば、混合物を注入し、分散力や対流力で成分を分離させることによって、投与前後にインビトロ又は体内で分離を行うことができる。充填を粒子合成中又は合成後に行うことができる。例えば、ミセルベースの重合のように吸着又は相分離によって取り込まれる作用物質の存在下で粒子を重合することができる。例えば、粒子を膨張させる、又は作用物質の迅速な拡散を可能にする第1の溶媒中で粒子を作用物質に接触させ、次いで粒子を収縮させる、又は作用物質の拡散を停止又は緩慢化する水溶液に粒子を戻す第2の溶媒に粒子を接触させること、例えば、有機溶媒に親水性薬物を充填し、粒子を水溶液に蓄積することによって、合成後の充填を必要に応じて遂行することができる。例えば、抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号の溶液を含むシリンジに粒子を導入し、それらを患者に共注入することによって、同時導入のための混合を遂行することができる。
【0040】
(ナノ粒子及び免疫抑制薬による免疫治療)
免疫抑制は、臨床移植(例えば同種移植)の状況及び自己免疫疾患(例えば多発性硬化症)において大いに必要とされる免疫治療の重要な形態である。コルチコステロイド(例えばシクロスポリンA)及びラパマイシンのような免疫抑制薬の使用は、これらの免疫障害の治療に大きな進歩をもたらした[122]。T細胞は、一般に、炎症性サイトカイン、主としてIL-2及びTNF-γに対する遺伝子を阻害することによって作用するため、T細胞集団を減少させる免疫抑制薬の重要な標的であると考えられている。免疫抑制を生じさせるための別の手法は、T細胞受容体CD28及びCD40をブロックするための抗体の使用である[123]。これらの受容体をブロックすると、DC上に位置する共刺激性分子による活性が不十分になるため、T細胞増殖を効果的に防ぐ耐性効果が生じる。しかし、コルチコステロイド又はブロッキング抗体による治療は、非常に非特異的であり、他の感染を退治する免疫系の能力を低下させるなどの副作用をもたらし得る。したがって、より特異的な免疫抑制のための方法、すなわち抗原特異的な耐性を誘発する方法は、免疫治療における格別の進歩である。
【0041】
最近になって、DCは、免疫抑制のための標的になり得ることが見いだされた。DCは、T細胞免疫を刺激する能力に加えて、T細胞耐性を調節することも可能である[124]。デキサメタソン(Dex)は、同種移植片の拒絶を防止するといった用途において免疫抑制に利用される合成グルココルチコイドである。従来、グルココルチコイドは、専らT細胞に対して作用すると考えられていた。しかし、Dexは、DCに対して作用して共刺激性分子の発現及び炎症性サイトカインの分泌を下方制御できることが最近の研究によって証明された[125、126]。これは、耐性の誘発にDCを利用する可能性を実質的に暗示している。共刺激性分子の非存在下で抗原をT細胞に提示するDCは、提示抗原に対するT細胞アネルギー又は耐性を誘発する。
【0042】
免疫抑制薬をナノ粒子で送達することができる。いくつかの実施態様において、それらのサイズ及び間質流との相互作用及びリンパへの進入により、抗原をリンパ節DCに効果的に標的化することができる。抗原の送達及び同時にDC活性化を防止するための免疫抑制薬としての送達は、耐性をもたらすことになるであろう。そのような場合、補体を活性化させないナノ粒子が有益であり得る。主要な免疫抑制薬のいくつかは、疎水性であり、ナノ粒子の疎水性PPSコアに充填できるグルココルチコイドである。デキサメタソン、タクロリムス及びシクロスポリンAのような特定のグルココルチコイドは、共刺激性分子(すなわちCD80及びCD86)の発現並びに炎症性サイトカイン(すなわちIL-6及びTNF-α)の分泌を下方制御することによってDCの成熟及び同種刺激能力を阻害することが実証されている[125〜131]。
【0043】
免疫抑制薬を本明細書に記載のナノ粒子に充填し、患者に導入することができる。ナノ粒子を特異的にリンパ系及びリンパ節に標的化し、APC及び/又はDCによる吸収のために特異的に標的化することができる。疎水性成分又はコアを有するナノ粒子を使用して、疎水性薬物又は他の薬物を有利に送達することができる。さらに、抗原を薬物と組み合わせて送達することができる。また、抗原を例えば共注入、吸着又は共有結合によってナノ粒子と結合させることができる。
【0044】
例えば、1つの方法は、疎水性免疫抑制薬(例えばDex)を、メトキシ末端PLURONIC(ヒドロキシル化されておらず、補体を活性化しない)PPSナノ粒子で安定化された粒子のコアに充填し、抗原を表面に接合することである。したがって、Dex又は他の免疫抑制薬を抗原とともにリンパ節のDCに送達することによって、共刺激性分子を下方制御しながらも、抗原を送達し、次に抗原特異的耐性を生じさせることが可能である。したがって、ナノ粒子、例えばメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSを、抗原結合と免疫抑制薬充填と組み合わせて利用して、自己免疫疾患及び移植拒絶の治療のような用途のための耐性を誘発することができる。
【0045】
(ナノ粒子及び抗原による免疫治療)
タンパク質抗原を内在化させるAPCは、抗原ペプチドエピトープを処理し、MHC-I及びII経路を通じて提示することが可能である。1つの免疫治療手法は、1つ以上の抗原をナノ粒子に共有結合させるか、或いはそれらを会合させることを含む。抗原は、免疫系によって認識され得るグリコシル化を伴わない、又は伴うポリペプチドであり、一般には、少なくとも約3つのアミノ酸の長さを有する。抗原をDNA又はRNAなどの核酸配列を介してコードすることもできる。例えば、DNAは、病原に存在するポリペプチド抗原をコードする場合は抗原をコードすることが可能である。DNAのAPCの核への送達に続いて、抗原ポリペプチド抗原の発現が生じMHCI上にそれが提示される。全タンパク質を使用できるが、抗原断片も使用することができるため、約3から約20の残基を有するポリペプチドを使用することができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、約10未満の残基が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。ポリペプチドを必要とせずに補体系を直接活性化するナノ粒子を使用できるため、補体系を活性化しない抗原を使用することができる。
【0046】
抗原を多くの異なる疾患に対する免疫治療に使用することができる。1つの具体的な用途は、腫瘍免疫治療の用途である。有用な抗原が腫瘍細胞上に表示されるが、健康な細胞上に表示されない。カスパーゼ-8、MAGE-1、チロシナーゼ、HER-2/neu及びMUC-1などのいくつかの抗原が特定の種類の腫瘍に特異的なものとして識別されている[112]。このことを念頭に置くと、T細胞を活性化して、腫瘍を攻撃する手段として当該抗原をリンパ節のDCに送達するためにナノ粒子を使用することができる。別の用途は、感染性疾患に対する予防である。抗原との接触は、当該疾患に対する抵抗を生み、様々な状態に対する予防接種として作用することができる。
【0047】
(ナノ粒子及び核酸による免疫治療)
いくつかのナノ粒子集合体は、ナノ粒子及び核酸、例えば、抗原をコードするDNA又はRNAを含むことができる。さらに、これらは、発現カセットを含み、プロモータ又はエンハンサを含み、ベクターの一部となり、或いはこれらの技術分野で知られている遺伝子送達モチーフを取り入れることもできる(例えば、明確に開示されていることに矛盾しない範囲で引用により本明細書に組み込まれている米国特許第7,16,0695号、同第7,157,089号、同第7,122,354号、同第7,052,694号、同第7,026,162号、同第6,869,935号参照)。さらに、該配列は、他の治療用生体分子をコードすることができる。DNAなどの核酸抗原を抗原及び他の作用物質について本明細書に記載されているナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化PPSナノ粒子の表面)に結合させることができる。そして、例えば、静電吸着、ポリマー-ビオチン化を通じて、DNAポリマー結合を行うことができる[139]。本明細書における使用に合わせて構成できる、ポリマーをDNAに結合するためのいくつかの他の化学結合方法が存在する[140]。本明細書に記載されているナノ粒子を使用することによって、リンパ節DCを含むAPCは、抗原遺伝子発現のために標的化されるとともに、活性化されて、適切なT細胞刺激を確保することができる。
【0048】
(抗原結合)
抗原を求核又は求電子官能基に結合させるための様々なスキームが利用可能である。概して、当該スキームを薬物又は危険信号の結合に適宜適応することができる。
例示を目的として、実施例のPPSナノ粒子におけるPLURONICに対する抗原の結合を示す。PLURONIC(PEG及びPPGのブロック共重合体)表面をタンパク質又はペプチドで官能化することによって、PPSナノ粒子に対する抗原結合を達成することができる。PLURONIC F127(Sigma)、ジビニルスルホン(Fluka)、水素化ナトリウム(Aldrich)、トルエン(VWR)、酢酸(Fluka)、ジエチルエーテル(Fisher)、ジクロロメタン(Fisher)及びセライト(Macherey Nagel)を受け取った状態で使用した。反応をアルゴン(Messer)下で実施した。1H NMRを重水素化クロロホルム(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を0.0ppmにおける内部標準テトラメチルシラン(Armar)信号に対して相対的にppmで示す。15g(1.18mmol)のPLURONIC F-127を400mlトルエンに溶解させた溶液を、Dean-Starkトラップを使用して4時間にわたって共沸蒸留によって乾燥した。溶液を氷浴で冷却し、0.283g(11.8mmol)水素化ナトリウムを添加した。反応混合物を15分間にわたって撹拌し、3.55ml(35.4mmol)ジビニルスルホン(Sigma-Aldroch)を迅速に添加した。室温にて暗所で5日間撹拌した後に、1.35ml(23.6mmol)の酢酸を添加することによって反応をクエンチした。セライトで濾過し、濾液を減圧下で小容量まで濃縮した後に、生成物を1リットルの氷冷ジエチルエーテル中に析出させた。固体を濾別し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、氷冷ジエチルエーテルに全部で4回析出させた。ポリマーを真空下で乾燥させて、6.0gとし、OVA連結前に-20℃にてアルゴン下で保存した。NMRは、ビニルスルホンが存在し、官能化度が88%であることを示した。δ = 1.1 (m、CH3、PPG)、3.4 (m、CH、PPG)、3.5 (m、CH2、PPG)、3.6 (PEG)、6.1 (d、CHcis=CH-SO2)及び6.4 (d、CHtrans=CH-SO2)、6.85(dd、CH2=CHSO2-)。
【0049】
次いで、ペプチド又はタンパク質抗原をPLURONICビニルスルホン(VS)に連結させることができる。DC抗原提示を調査するためのモデルタンパク質は、オバルブミン(OVA)である。OVAは、それぞれMHCI及びII経路を通じてDCによって処理される抗原ペプチドOVA257〜264及びOVA323〜339を有する。ペプチド合成機を使用することによりOVA257〜264及びOVA323〜339をシステイン残基に連結させる。次いで、そのシステインチオールとの反応によってペプチドをPLURONIC-VSに連結させる。18mgのペプチドをpH8.5で6.43mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液に溶解させて、2mM溶液を得る。60mg(1.68mM)のPLURONIC-VSを添加する。混合物を3時間撹拌し、Ellmanによるチオール検出のためのアリコットを15〜30分毎に採取する。pH8.5で4mgのEllman試薬(5,5'ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸))を1mlの0.1Mリン酸ナトリウム及び1mMのEDTAにPH8.5にて溶解させる(スルフヒドリルを酸化できる二価金属イオンをキレート化する)。15μlを1.5mlの0.1Mリン酸ナトリウムと混合し、反応混合物の30μlをpH7にて120μlのリン酸ナトリウムでクエンチする。混合し、室温で15分間インキュベートした後に、412nmにおける吸収を測定する。チオールの量をc=Abs/E*D(E(消光率)=14150M-1、Dは希釈係数である)で計算する。PLURONICを、6〜8kDa MWCOの膜を通じて水に対して透析し、溶液を凍結乾燥する。1H-NMRで確認されるように、ビニルスルホン基が完全に変換し、収率は約88%である。PLURONIC-VSに対するOVAの結合を、遊離システインチオール及びリシンアミンを利用することにより同様の方法によって実施する[109〜111]。次いで、PL-VS-OVAペプチド/タンパク質をナノ粒子合成に使用するまで-20℃で保存する。
天然ポリペプチド抗原に対して外来性のアミノ酸との共有結合、天然抗原に対して内性のアミノ酸との共有結合、及び生理化学的吸着等を含む他の手段によって、抗原をナノ粒子に連結させることができる。
【0050】
(ナノ粒子及び危険信号による免疫治療)
他の免疫治療手法は、危険信号の適用を含む。本明細書における結果は、PLURONIC安定化補体活性(つまりヒドロキシル化)PPSナノ粒子が、共刺激性分子CD86及びCD80の発現の増強によってわかるように、DCを成熟させる危険信号又は刺激の機能を与えることを示している。ナノ粒子は、非補体危険信号又は成熟信号を必要としないが、場合によっては、当該信号を追加することが、免疫応答の発達にさらに役立つこともある。抗原吸収後、炎症性サイトカイン(すなわち、CD40リガンド)及び/又はToll様受容体(例えば、LPS及びCpG DNA)の活性体などの危険信号は、DCを成熟させ、続いて細胞媒介免疫を誘発する必要があることを他のDC標的化についての研究によって示唆された[113〜115]。危険信号は、遺伝子NF-κBの上方制御をもたらし、それが次にAPCの成熟及び炎症性サイトカインの放出をもたらす生体分子として識別される。そのような場合、例えば、タンパク質又はペプチド結合について既に記載されたプロトコルに従って、CD40リガンド、GM-CSF又はToll様受容体活性体などの危険信号サイトカインを(例えば、コア若しくは表面層又は親水性ポリマー層において)ナノ粒子に結合させることが可能である[109〜111]。さらに、ナノ粒子を、その表面に結合された抗原及び/又は非補体危険信号を用いて合成することができる。
【0051】
(抗体生成のための免疫治療)
いくつかの実施態様は、抗原を患者に導入して、患者の中で抗原に対する抗体を産生することに向けられる。例えば、このようにして、予防接種又は抗腫瘍治療を遂行することができる。或いは、当該手法を用いて、例えば動物において科学的試薬として使用される抗体を産生することができる。
【0052】
したがって、ナノ粒子と抗原の組合せを患者に導入することができる。所定時間(例えば1〜30日)後、患者からサンプルを採取し、抗原に対する抗体を測定する。さらなるサンプル及び測定値を定期的に採取できる。抗体力価が低すぎる場合は、ナノ粒子及び抗原を再導入し、さらなる測定を行い、必要に応じて処理を繰り返して、抗体力価を所望のレベルにすることができる。その組合せを数回投与することができる。
【0053】
(実験結果の説明)
免疫治療のための用途を含めて、抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)への生分解性ナノ粒子の送達について説明する。本明細書の詳細な実施例では、リンパ節濃度におけるDCへの直径20、25、45及び100nmのポリ(エチレングリコール)安定化ポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)ナノ粒子の送達について説明する。詳細な実施例におけるナノ粒子は、ポリ(エチレングリコール)の親水性コロナに囲まれたPPSの架橋ゴム状コアを含む。PPS領域は、疎水性薬物を担持することが可能であり、酸化環境内で可溶性ポリマーに分解する。グリコペプチド(本明細書ではグリコシル化ポリペプチドと定義される)抗原を含むペプチド又はタンパク質抗原及び核酸コード化抗原をナノ粒子表面に結合させることができる。20nmの粒子は、間質注入後に最も容易にリンパに吸収されたが、20及び45nmの粒子は、リンパ節における有意な残留性を示し、注入後24、72、96及び120時間目に一貫した強い存在を示した。ナノ粒子は、外来性標的化リガンドを使用することなく、40〜50%までのリンパ節DC(及びAPC)によって内在化され、内在化の部位は、注入部位でなく、リンパ節に存在していた。24時間目に対して96時間目にナノ粒子含有DC(及び他のAPC)に増加が見られ、これらの細胞のリンパ節への浸透が証明された。ナノ粒子粒径及び表面化学作用の双方が、インビボ注入後のDC成熟に影響を与えることが判明した。
【0054】
合成された基本的なPPSナノ粒子、すなわちPLURONIC(ポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコールのブロック共重合体)で安定化されたPPSナノ粒子コアは、ナノ粒子が非常に小さい場合に、成熟マーカCD86、CD80及びCD40の発現の増加によって示されるように、ナノ粒子のインビボ注入後にDCを活性化することが判明した。25nmのナノ粒子は、インビボ注入後にDCを広範囲に活性化したのに対して、100nmのナノ粒子は、活性化しなかった。第2のナノ粒子表面化学作用、すなわちメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子コアを利用した場合は、非常に小さいナノ粒子でさえもインビボ注入後にDCを活性化しなかった。PLURONIC安定化ナノ粒子は、補体を効果的に活性化することが証明されたのに対して、メトキシ末端PLURONICで安定化されたナノ粒子は、補体を活性化するのに効果的でなかった。したがって、ナノ粒子補体活性化は、これらのナノ粒子との接触後にDC活性化を誘発した。
【0055】
ナノ粒子サイズ及び表面化学作用の双方が、インビボ注入後の順応免疫に影響を与えることが判明した。抗原をPLURONIC安定化ナノ粒子の表面に連結させると、ナノ粒子が非常に小さい場合にのみ抗体形成を強く誘発することが判明した;25nmのナノ粒子は、100nmのナノ粒子より抗体形成をはるかに強く誘発した。第2のナノ粒子表面化学作用、すなわちメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子コアを利用した場合は、非常に小さいナノ粒子でさえもインビボ注入後に強い抗体形成を誘発しなかった。さらに、補体タンパク質3がノックアウトされたマウス(c3-/-マウス)に25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子を注入すると、これらのナノ粒子は、抗体形成を強く誘発しなかった。したがって、詳細な実施例では、好適なサイズ、例えば20〜45nmのナノ粒子は、免疫治療用途に対する可能性を有する;例えば、リンパ節におけるDCに特異的に標的化し、これを活性化するのに該ナノ粒子を使用することができる。さらに、これらのナノ粒子が、PLURONICによる安定化によって得られるような、補体を活性化する表面化学作用を有する場合は、抗原担体及び順応免疫誘発補助剤としての機能に対する強い可能性を有する。小さい粒径(例えば20〜45nm)と補体活性化の特殊な組合せは、補助剤としてワクチン製剤において貴重である。
【0056】
したがって、それらの実施例は、ナノ粒子がリンパ節におけるAPC、特にDCへの標的化抗原及び薬物送達に使用できることを示している。この手法の簡潔さは、サイズを調節することによって、ナノ粒子をリンパに効果的に吸収するとともに、リンパ節に(示されるように少なくとも5日間)滞留させることができ、特異的な外来性標的化リガンドを使用しないことである;それらは、節常在DC及び他のAPC(例えばマクロファージ)によって効果的に内在化される。約45nm又は約100nm程度の大きなナノ粒子をこの手段によってリンパ及びリンパ節に効果的に標的化することはできない。また、約40から約50%までの常在リンパ節DCがナノ粒子を内在化させることが証明され、この送達媒体の効果がさらに証明される。また、リンパに効果的に標的化されるようなサイズ範囲のナノ粒子に接触させた後に、それらのナノ粒子が補体を活性化すると、DCは、より成熟し、T細胞依存性順応免疫を誘発することによって応答することが証明された。これは、補体カスケードを抗原提示補助製剤における危険信号として使用することの有効性を明確に証明するものである。(投与後に効果的にリンパに入るような)小さいサイズと(DCを含むAPCの成熟を刺激するような)補体活性化との組合せによって、T細胞依存性体液(Ab力価による)及び細胞(T細胞増殖によるT細胞記憶の測定及びELISPOT測定による)の双方において、強い順応免疫応答を誘発することが可能である。小さいサイズと補体活性化のこの特殊な組合せは、免疫治療において非常に貴重である。
【0057】
実施例1では、ナノ粒子を製造するためのエマルジョン重合技術について説明する。これらの技術を様々なモノマー/ポリマーに適用して、好適な粒子を製造することができる。実施例2は、PLURONICの改質に関し、本明細書における他のポリマーの改質に広く適用可能であり、具体的な化学構造に対応して変更が加えられる。
【実施例】
【0058】
(実施例1:ナノ粒子)
他の箇所に記載されているように、直径が20、45及び100nmのPPSナノ粒子を逆エマルジョン重合によって合成した。本明細書に用いられている「エマルジョン重合」という用語には、逆エマルジョン重合が含まれ、「エマルジョン」という用語には、逆エマルジョンが含まれる[39]。手短に述べると、PEGブロック共重合体乳化剤、PLURONIC F-127(Sigma-Aldrich(スイスBuchs))及びプロピレンスルフィドモノマーを一定撹拌しながら超純粋ミリQ水に添加することによって、エマルジョンを作製した。他の箇所に記載されているように保護された開始剤ペンタエリスリトールテトラチオエステルを合成し[39]、個別のフラスコ内で、0.20mLの0.5Mナトリウムメチレート溶液と撹拌下で10分間混合することによって脱保護した。脱保護に続いて、開始剤をモノマーエマルジョンに添加し、5分後に、60μlの塩基ジアゾ[5.4.0]ビシクロウンデカ-7-エン(DBU)を反応物に添加し、不活性雰囲気下で24時間連続的に撹拌させた。次いで、ジスルフィド架橋を行うために、ナノ粒子を空気に接触させた。
【0059】
超純粋ミリQ水に対する12〜14kDa MWCO膜(Spectrum Laboratories(カリフォルニア州Rancho Dominguez))による2日間の反復透析によって、残留するモノマー、塩基又は遊離PLURONICからナノ粒子を精製した。動的光散乱計測器(Malvern(英国Worcestershire))を使用することによってナノ粒子粒径分布を測定した。1mg/mlのナノ粒子溶液における6-ヨードアセトアミド-フルオレセイン又はAlexa Fluor 488マレイミド(Molecular Probe(オレゴン州Eugene))を、ナノ粒子上に残留する反応性チオールに添加することによって蛍光標識を達成し、次いで6時間にわたって暗所で撹拌した。次いで、ナノ粒子をさらなるジスルフィド架橋のために空気に接触させた。5mM PBSに対して、25kDa MWのカットオフ膜を使用して1日間反復透析を行うことによって遊離ヨードアセトアミドーフルオレセイン又はAlexa Fluorマレイミドを除去した。
【0060】
(実施例2:メトキシ末端PLURONICの合成)
【化1】
PLURONIC F127(Sigma)、ヨウ化メチル(Fluka)、水酸化カリウム(Fluka)、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Riedel de Haen)、無水硫酸ナトリウム(Applichem)、塩化ナトリウム(Sigma)、ジエチルエーテル(Fisher)及びジクロロメタン(Fisher)を受け取った状態で使用した。0.025%のBHT(Acros)で安定化されたテトラヒドロフランを使用前に分子篩で乾燥させた。アルゴン(Messer)雰囲気下で反応を実施した。透析には、分子量カットオフ3400の再生セルロース管(Spectrapor)を使用した。1H NMRを重水素化ジメチルスルホキシド(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を2.5ppmにおける残留溶媒信号に対して相対的にppmで示す。
【0061】
10.0g(0.79mmol)のPLURONIC F127を100mlのTHFに溶解させた溶液に対して、2.99g(53.3mmol)の微粉砕水酸化カリウム及び988μl(15.9mmol)のヨウ化メチルを添加し、暗所で19時間にわたって混合物を撹拌した。透明溶液をデカントし、3.94gのチオ硫酸ナトリウム五水和物、100mlの塩化ナトリウム飽和水溶液及び100mlのジクロロメタンを添加する。混合物を激しく撹拌し、分離漏斗に移した。層を分離させ、水相をジクロロメタン(2×100ml)で抽出した。有機分を混合し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。固体を最小量の再蒸留水に溶解させ、4500mlの水に対して1日間透析した。透明な水溶液を塩化ナトリウムで飽和させ、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物をソックスレー抽出器にてジエチルエーテルで6時間抽出して、減圧下で乾燥させた後に、9.25gの白色固体を得る。4.6ppmにおいてOH基が存在せず、3.2ppmにおいてOCH3基が存在することがNMRによって示された。δ = 1.1 (d、CH3、PPG)、3.2 (s、OCH3、PPG)、3.3 (m、CH、PPG)、3.4 (m、CH2、PEG)、3.5(m、PEG) 。
【0062】
(実施例3:動物)
他に指定がなければ、生後6〜9週間で体重20〜30gのBALB/cマウスをこの研究に使用した。すべてのプロトコルは、スイスの法律に従うVeterinary Authorities of the Canton Vaudによって承認されたものである。10mg/kgの塩酸ケタミン及び1mg/kgのキシラジンの皮下注入によって麻酔を送達した。CO2窒息によってマウスを安楽死させた。
【0063】
(実施例4:顕微リンパ管造影)
皮膚への間質注入の後にナノ粒子の相対的な吸収特性を測定するために、既に記載したように、尾の先端への一定圧力注入によって蛍光顕微リンパ管造影を実施した[43〜45]。マウスの尾を除毛し、37℃の体温を維持するための加熱パッドを備えた顕微鏡ステージ(Axiovert 200M、Zeiss)にマウスを配置した。蛍光PPSナノ粒子(直径20、45又は100nm)を無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた20mg/ml溶液をカテーテルに導入した;カテーテルに取りつけられた30ゲージニードルを尾の先端から約1mmの箇所に挿入し、活栓を開いて、40mmHgの一定圧力で流動を開始させた。ナノ粒子溶液の流量(管における遠上流の泡によって監視した)は、およそ20mm3の組織に対して平均0.1μl/分(注入箇所から見える容量から概算した)或いは約5μl/g/分とした。目に見える膨張は、観察されなかった。尾に沿う連続的な画像を一定の接触時間に収集した。ナノ粒子の粒径毎に実験を3回繰り返した。
【0064】
マウスの尾の蛍光顕微リンパ管造影を用いて、直径20、45及び100nmのPPSナノ粒子のリンパ吸収の評価を行った。20nmの粒子の注入に続いて、90分後に六角形のリンパ毛管網が明確に見えるようになり、注入部位から均一に充填された(図1a)。対照的に、45nmの粒子の流入後は、非常にかすかなリンパ網しか観察されず(図1b)、100nmの粒子ではリンパ網をほとんど見ることができず(図1c)、低い吸収を示していた。巨大分子/タンパク質/粒子の毛細血管への漏れの粒径の上限は、約3.5nmであることが良く知られている[42]ため、我々の最も小さい20nmの粒子の血管への漏れは事実上ゼロである。この方法により、20nmの粒子は、45nm及び100nmの粒子と比較して、間質空間からリンパ毛管により容易に吸収されることが定量的に確認される。
【0065】
(実施例5:リンパ節におけるナノ粒子分布の評価:小さいナノ粒子(例えば20〜45nm)
のリンパ節滞留)
リンパ節滞留の評価を行うために、20μlの20mg/ml蛍光PPSナノ粒子(直径20、45及び100nm)を、30ゲージニードルを通じてマウスの尾の先端又は前足蹠にボーラスとして注入した。20μlのPBSを注入することによって対照を実施した。注入部位で炎症は観察されなかった。24、72、96又は120時間目に、マウスをCO2窒息によって安楽死させた。尾及び脚リンパの排液を行う仙骨及び腰部リンパ節、前足蹠部リンパの排液を行う鰓及び腋窩リンパ節を除去し、フラッシュ凍結し、10μmの切片に凍結裁断し、マウスに対する抗体CD3e(Pharmingen(カリフォルニア州San Diego))、CD45R(Caltag(カリフォルニア州Burlinhgame))、CD68(Serotec(ドイツDusseldorf))、Dec-205(Serotec)及びCD31(Pharmingen)で免疫染色し、T細胞、B細胞、マクロファージ/DC、DC及び内皮細胞をそれぞれ標識した。Alexa Flour 594nm(Molecular Probes)抗体を用いて二次的な検出を実施した。リンパ節切片を蛍光(Axiovert 200M、Zeiss)及び共焦点レーザ走査顕微鏡(LSM 510 Meta、Zeiss)で画像化した。
【0066】
ナノ粒子及びリポソームのリンパ節滞留時間が、リンパ系の研究を目的として何人かの他の研究者によって調査され、それらは、典型的には、注入後6〜52時間の範囲の時点に焦点をおいていた[31〜34、36]。本明細書に報告された実施例では、120時間までのナノ粒子のリンパ節滞留時間が記載され、20nmの粒子が、20μlの皮内のボーラス注入から24、72、96、120時間後にリンパ節において定量的に一貫したレベルで存在することが示された(図2)。45nmのナノ粒子もすべての時点においてより低量であるがリンパ節に存在していたのに対して、100nmのナノ粒子は、いずれの時点においてもリンパ節に存在するのが見られなかった(図2)。したがって、図1の結果と相俟って、これらのデータは、20〜45nmがリンパ吸収及びリンパ節滞留の双方に対して良好なPPSナノ粒子粒径範囲であり、20nmが最適であるのに対して、100nmの粒子は、一定圧力注入による間質からの効率的なリンパ吸収にとって大きすぎることを示している。これは、70nmを超えるリポソームがたいてい注入部位に残留することを示した先の試験と一致する[24、30]。
【0067】
PPSナノ粒子がリンパ節内に蓄積した様々な免疫細胞に関する具体的な位置の評価を行った。染色結果は、T及びBリンパ球のための特定の領域を容易に見ることができる既知のリンパ節構造と一致していた[2]。T細胞は、節の中央領域に集中しているのに対して、B細胞は、外部の膜に向かって位置する胚中心にしばしば見られる。リンパ節に存在する他の主要な細胞型は、APC又はMHCII+細胞、すなわちDC及びいくつかのマクロファージであり、それらの位置は、しばしばより分散されている。図3は、20nm粒子の皮内注入の後の同一リンパ節の連続した部分を示す。ナノ粒子は、T細胞又はB細胞領域に存在していなかった(図3a、b)。しかし、ナノ粒子とマクロファージ及びDC、すなわちCD68+細胞の有意な共存が認められた(図3c)。
【0068】
リンパ節に送達されたリポソーム及びナノ粒子はそこのマクロファージによって一次的に貪食されることが一般的に想定されていた[21、27、29、30、32、36、37]。しかし、これらの技術分野において、抗原を吸収することが可能な未成熟DCもリンパ節に存在することが理解されていなかった[15、16]。PPSナノ粒子送達では、(膜間タンパク質であるが、細胞内でも発現される[47〜50])CD68に対する免疫染色により、マクロファージ及びDCがPPSナノ粒子を内在化させたことが確認された(図4a)。CD68+細胞がマクロファージであるか、DCであるか、又はその両方であるかをさらに判断するために、リンパを極めて特異的なDC受容体Dec-205に対して染色した[4、38、51〜56]。Dec-205+細胞及びそれらのナノ粒子との共存(図4b)は、ナノ粒子を貪食するリンパ節における有意な割合の細胞が実際にDCであったことを証明している。これは、最も強力なAPC型-DCを含むAPCを刺激するために抗原をリンパ節に送達するのに有利である。
【0069】
(実施例6:リンパ節細胞の単離及び染色)
既に記載したプロトコルに従ってリンパ節細胞を単離した[46]。手短に述べると、先に記載した蛍光ナノ粒子又はPBSの注入に続いて、リンパ節を除去し、26ゲージニードルで裂き、37℃で25分間にわたってコラゲナーゼD(Roche(スイス、Basel))で消化させた。次いで、組織を70μm細胞染色器(BD(スイス、Basel))に通して、細胞懸濁物を回収した。リンパ節細胞懸濁物について、APCを抗MHCクラスII-(I-A)-R-PE(Chemicon(カリフォルニア州Temecula))で染色し、DCを抗CD11c-アロフィコシアニン(Pharmingen)で染色した。抗CD86-R-PE及び抗CD80-R-PE(Pharmingen)で染色することによってDC成熟を測定した。
【0070】
(実施例7:インビトロナノ粒子内在化)
リンパ節細胞の単離に続いて、細胞を約500000個/mlでRPMI(5%FBS)に接種した。次いで、細胞に20μlの20mg/mlの蛍光ナノ粒子を適用し、24時間インキュベートした。次いで、細胞をHBSSで2回洗浄し、先に述べたようにAPC及びDCに対して染色した。
【0071】
(実施例8:流動細胞計測及び分析、並びにインビトロナノ粒子内在化:DCを含むAPCによる吸収)
染色に続いて、リンパ節細胞懸濁物を流動細胞計測(CyAn ADP、Dako(デンマーク、Glostrup))によって分析した。FloeJoソフトウェア(TreeStar(オレゴン州Ashland))を使用してさらなる分析を行った。蛍光ナノ粒子を内在化させたAPC及びDCは、FITCがナノ粒子の標識を表すMHCII+FITC+及びCD11c+FITC+であると判断された。CD86及びCD80を発現した細胞の割合を計算することによって、ナノ粒子内在化に続くDC成熟の評価を行った。
【0072】
流動細胞分析を行って、ナノ粒子を内在化させているリンパ節のAPC及びDCの割合を定量した。図5aは、リンパ節における〜40%のAPC(MHCII+)及び特に〜50%のDC(CD11c+)が、注入から24時間後に20nmのナノ粒子を吸収したことを示す。よって、概して、APC及び/又はDCによって少なくとも10%から約95%のナノ粒子が吸収されることが考えられる;すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば少なくとも約25%、少なくとも約40%又は約25%から約75%/50%が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。また、有意な割合のAPC及びDCが45nmのナノ粒子を貪食するのに対して、インビボ注入後に観察された100nmのナノ粒子の吸入は非常に少なかった。DCを含むAPCは、粒子がリンパ節に到着した後にそれらを取り込む、或いはリンパ節に移動する前にそれらを注入部位に内在化させた。後者の場合は、より大きい粒子(1〜10μm)がちょうどより小さい粒子と同じくらい効率的にAPCに取り込まれ得る[13、57]ため、リンパ節に100nmの粒子が見られることになる。ナノ粒子粒径は、APC又はDC内在化に影響しないことがインビトロ実験で確認された。ほぼすべてのAPC及びDCが、粒径にかかわらずナノ粒子を内在化させた(図5b)。したがって、PPSナノ粒子は、恐らく抹消リンパ管に受動的に吸収され、リンパ節に到達し、そこで常在DC又はAPCによって貪食される。これらの結果は、抗原を内在化させることが可能な実質的な数の未成熟DCがリンパ節に存在するという最近の知見[15、16]を裏づける。実際、リンパ節におけるDC及び他のAPCは、薬物送達媒体を介して細胞媒介免疫を開始させるための貴重な標的を提供する。
【0073】
異なる時点におけるナノ粒子内在化の比較について調査した。ナノ粒子のマクロファージ及びDCとの共存は、24時間目より96時間目の方が多く認識されることが判明した(図6a)。流動細胞分析を用いて、24時間目に対して96時間目に、ナノ粒子を内在化させるマクロファージ及びDCのタイプに変化が生じるかどうかを判断した。24時間目にナノ粒子を内在化させたすべての細胞のうち、〜15%がAPC(MHCII+)で、〜13%がDC(CD11c+)であったが、それは、APCのほとんどがDCであり、ナノ粒子含有細胞の残りの〜85%がマクロファージ(MHCII-)を表す非抗原であったことを示唆している。96時間目に、APC又はDCであるナノ粒子を含む細胞の割合は、それぞれ61±5%及び33±3%であった(これは、図5aに示されるレベルで一定している、ナノ粒子を含むリンパ節APC及びDCの割合の増加を反映するものではないことに留意されたい)。ナノ粒子含有MHCII+及びCD11c+細胞の増加は、次に節組織に残留する遊離ナノ粒子を捕らえるリンパ節へのAPC及びDCの浸透に起因し得る。ナノ粒子を有するMHCII+細胞の増加は、24〜96時間の間のマクロファージの活性化に起因することも可能である(すなわち、ナノ粒子内在化により、活性化されるため、MHCII+になるMHCII-マクロファージ)。
【0074】
リンパ節における有意な割合のDCが既に成熟しているが、未成熟のDCが存在するため、それらの細胞は、抗原吸収の後に成熟する可能性が高い。したがって、20nmのPLURONIC安定化補体活性(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子は、従来の生物学的外来性「危険信号」が、PLURONIC安定化補体活性PPSナノ粒子と併用される場合に必要でなかったように、DC成熟を誘発するのに役立つかどうかを判断した。20nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子の注入の後に、PBSの注入を受けた対照と比較して、DC成熟マーカCD86の発現が増加した(図7)。CD80のDC発現も測定し、ナノ粒子内在化後は有意に増加していると判断された(図7b)。最後に、ナノ粒子を有するDCのCD86及びCD80の発現レベルは、注入後24時間目に対して96時間目に変化がないことが判明した。このことは、20nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子が、T細胞活性化及び細胞媒介免疫を長期間にわたって維持するのに有用であり得る長期的な熟成刺激を提供することを示唆する。したがって、これらの結果は、PLURONIC安定化補体活性PPSナノ粒子が、DC特異抗原送達のための媒体として作用するとともに、リンパ節のDCを成熟及び活性化する補助剤として作用する二重の役割を果たすことができることを示している。
【0075】
(実施例9:ヒト血清におけるC3a検出)
96ウェルプレート(Becton Dickinson)に、1:4000の希釈率、100μl/ウェルでPBSに含めたC3a/C3a(desArg)マウス抗ヒトモノクローナル抗原(AntibodyShop、Grusbakken、Denmark)を塗布した。プレートを室温(RT)で一晩放置した。未結合抗体を払い落とし(すなわち、突発的な機械的運動によって除去し)、プレートを200μl/ウェルのDI水で3回洗浄した。次いで、プレートを200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS+0.05%Tween 20+0.5%ウシ血清アルブミン)で室温にて1.5時間ブロックした。
【0076】
ヒト血清を1:1の容量比でPBSとともにインキュベートし、ナノ粒子の懸濁物をPLURONICで安定化し(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子)、37℃で45分間にわたってEppendorf管においてナノ粒子の懸濁物をメトキシ末端ナノ粒子で安定化した(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)。プレートのブロッキングが完了すると、それらを250μl/ウェル洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween 20)で3回洗浄した。次いで、血清ナノ粒子サンプルを室温で2時間にわたって50μl/ウェルで3通りウェルに添加した。次いで、サンプルを払い落とし、次いでプレートを250μl/ウェルの洗浄緩衝液で5回洗浄した。次いで、C3a/C3a(desArg)ビオチン化検出抗体(AntibodyShop)を1:4000の希釈率でブロッキング緩衝液に含めて50μl/ウェルで室温にて2時間添加した。次いで、C3a検出抗体を払い落とし、プレートを250μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、ストレプトアビジン-HRP抗体(R&D systems)を製造元が推奨する濃度でブロッキング緩衝液に希釈し、室温で2時間にわたって50μl/ウェルでプレートに加えた。次いで、HRP抗体を払い落とし、プレートを250μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、HRP基質試薬(R&D systems)を室温で45分間にわたって暗所において100μl/ウェルで添加した。50μl/ウェルの2NのH2SO4を添加することによって反応を停止させた。次いで、プレートを450nm及び540nmの波長にてTecanプレートリーダで読み取った。540nmのバックグラウンド値を450nmから引いて、最終値を得た。
【0077】
PBSとともにインキュベートされた血清に存在するC3aを、PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子)及びメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)とともにインキュベートした後に存在するC3aと比較した。図8に示すように、メトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子とのインキュベーションは、PBSとともに血清に存在するC3aを〜7倍に増加させ、PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子とのインキュベーションは、〜32倍に増加させた。したがって、ヒドロキシル化ナノ粒子は、ヒト血清C3の可溶性C3a及び結合C3bへの開裂によって測定された場合に、ヒドロキシル化されていないナノ粒子より補体系をはるかに強く活性化させた。これにより、ナノ粒子のOH表面は、メトキシ表面よりはるかに効率的に補体系の代替的経路を活性化していることが確認される。
【0078】
(実施例10:DC成熟に対する表面化学作用の影響)
25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子;本明細書に記載されているように製造された)、メトキシ末端PLURONICで安定化された25nmのナノ粒子(すなわち、ヒドロキシル化されていないナノ粒子)、20nmのカルボキシル化ポリスチレンナノ球体(COOH-NS)(Invitrogen)、PBS及びLPS(30μg)を既に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、既に記載したようにCD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を行って、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0079】
図9に示されるように、メトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)及びカルボキシル化ポリスチレンナノ粒子と比較されたPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、有意に異なる。PLURONIC安定化ナノ粒子で処理された動物のDCは、これらのDC成熟マーカのより高い発現を示し、また、それらは、正の対照LPSと同レベルの成熟を誘発する。メトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子及びカルボキシル化ポリスチレンナノ粒子で処理された動物のDCは、負の対照PBS注入とほぼ同一のDC成熟応答を与えた。これらの結果は、インビボのDC成熟応答が、20〜25nmのナノ粒子の表面化学作用によって特異的に支配されることを示している。ヒドロキシル化された表面は、DC成熟を誘発するのに対して、メトキシ及びカルボキシ表面は、誘発しない。本明細書に提示された結果によれば、これらの表面の機能的な相違は、ヒドロキシル化された表面による補体活性化にある。
【0080】
(実施例11:DC成熟に対するサイズの影響)
25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子及び100nmのPLURONIC安定化(すなわち、ヒドロキシル化)ナノ粒子、及びPBSを既に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、本明細書に記載されているようにCD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を行って、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0081】
図10に見られるように、同じ表面化学作用の100nmと比較した25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、有意に異なる。25nmPLURONIC安定化ナノ粒子は、これらのDC成熟マーカのより高い発現を示す。100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子注入は、負の対照PBS注入とほぼ同一のDC成熟応答を与えた。これらの結果は、インビボのDC成熟応答がナノ粒子粒径に特異的に関連していることを示している。25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子は、効率的にリンパ毛管に入り、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子よりはるかに多くリンパ節に移動することを本明細書に記載した。また、25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子の滞留及びリンパ節のDCによる内在化は、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子よりはるかに高度である。ここで、25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子によるDC成熟は、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子と比較してはるかに高度であることが示される。DC成熟を誘発する微小の25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子の能力は、リンパ節標的化及び表面化学作用がDCを活性化するのに有用であることを証明している。本明細書に提示されたナノ粒子のリンパ毛管への進入の結果に基づいて、45nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子は、リンパ節内のDCを活性化できることが期待される。
【0082】
(実施例12:ナノ粒子に対するOVA連結)
タンパク質、又はグリコペプチドを含むペプチドでPLURONIC(PEGとPPGのブロック共重合体)表面を官能化することによって、PPSナノ粒子に対する抗原結合を遂行することができる。化学結合のための遊離システイン残基を含むタンパク質抗原についての結合スキームを本実施例で提示する。N末端又はリシン残基におけるアミンのような他の官能基を関連スキームで使用することができる。抗原をナノ粒子表面に吸着させることもできる。
【0083】
ここで、オバルブミン(OVA)についての結合スキームを示す。OVAは、それぞれMHCI及びII経路を通じてDCによって処理される抗原ポリペプチドOVA257〜264及びOVA323〜339を有するDC抗原提示を調査するためのモデルタンパク質である。その結合スキームは、ミカエル付加反応において、OVA上の遊離チオール基を介してOVAが結合されるPLURONICジビニルスルホンの合成から開始する。両工程の合成の詳細を以下に示す。
【0084】
PLURONIC F127(Sigma)、ジビニルスルホン(Fluka)、水素化ナトリウム(Aldrich)、トルエン(VWR)、酢酸(Fluka)、ジエチルエーテル(Fisher)、ジクロロメタン(Fisher)及びセライト(Macherey Nagel)を受け取った状態で使用した。アルゴン(Messer)雰囲気下で反応を実施した。1H NMRを重水素化クロロホルム(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を0.0ppmにおける内部標準テトラメチルシラン(Armar)信号に対して相対的にppmで示す。
【0085】
15g(1.18mmol)のPLURONIC F-127を400mlのトルエンに溶解させた溶液を、Dean-Starkトラップを使用して、共沸蒸留によって4時間乾燥させた。溶液を氷浴で冷却し、0.283g(11.8mmol)の水素化ナトリウムを添加した。反応混合物を15分間撹拌し、3.55ml(35.4mmol)のジビニルスルホン(Sigma-Aldrich)を迅速に添加した。室温にて暗所で5日間撹拌した後、1.35ml(23.6mmol)の酢酸を添加することによって反応をクエンチした。セライトで濾過し、濾液を減圧下で小容量まで濃縮した後、生成物を1リットルの氷冷ジエチルエーテルに析出させた。固体を濾別し、最小量のジクロロエタンに溶解させ、氷冷ジエチルエーテルに合計4回析出させた。ポリマーを真空下で乾燥させて6.0gとし、OVA連結の前に20℃にてアルゴン下に保存した。NMRは、ビニルスルホンが存在すること、及び官能化度が88%であることを示していた。δ = 1.1 (m、CH3、PPG)、3.4 (m、CH、PPG)、3.5(m、CH2、PPG)、3.6(PEG)、6.1(d、CHcis=CH-SO2)及び6.4(d、CHtrans=CH-SO2)、6.85(dd、CH2=CHSO2-)。
【0086】
連結の前に、kDa日に対して分子量カットオフが6〜8の再生セルロース透析チューブを使用して、PLURONICビニルスルホンを水に対して透析した。その材料を凍結乾燥によって回収し、NMRを測定して、この工程がビニルスルホン基の数に影響しないことを確認する。300mg(0.023mmol)のPLURONICビニルスルホンを、50mg(0.0011mmol)のOVAの溶液を0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=8.1)に溶解させた溶液に添加することによってOVAの連結を実施する。4℃で6時間反応させた後、反応混合物を凍結乾燥した。ジクロロメタンを添加し、混濁混合物を12000rpmで室温にて5分間遠心分離させた。未反応PLURONICビニルスルホンを含むジクロロメタンを除去し、沈殿を減圧下で乾燥させて、残留ジクロロメタンを除去した。次いで、PL-VS-OVAをナノ粒子合成に使用するまで-20℃で保管した。
【0087】
2重量%のPLURONICをPL-VS-OVAに代えた点を除いては、本明細書に記載したように粒子を合成した。PPSに対して全量1.5%のPLURONIC(重量/容量)を使用した。ナノ粒子合成中におけるタンパク質又はペプチドの塩基条件への曝露を低減するために、反応時間を6時間に短縮し、塩基を1:1のモル比で開始剤-チオールに添加した。
【0088】
加えて、OVA上の残留遊離チオールを反応させることによって、PL-VS-OVAをローダミンヨードアセトアミドで蛍光標識することができる。ナノ粒子を合成し、フルオレセインヨードアセトアミドで標識して、OVAがロダミンで標識され、ナノ粒子がフルオレセインで標識された二重標識OVA連結ナノ粒子を製造することができる。
本明細書に記載したように、二重標識OVA連結ナノ粒子をマウスに皮下注入した。次いで、リンパ節を注入から24及び48時間後に除去し、次いでそれらを凍結し、凍結裁断した。次いで、リンパ節切片を蛍光顕微鏡で観察した。
【0089】
OVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子に対して動的光散乱を実施し、サイズが〜25nmに維持されていることを実証した。図11において実証されているように、リンパ節を注入から24及び48時間後に二重標識OVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子がリンパ節に存在していた。OVAは、ナノ粒子と同じ位置に存在していた。これらの結果は、〜43kDaのMWのタンパク質抗原OVAによるナノ粒子の機能化がナノ粒子粒径に大きく影響しないことを証明している。25nmのOVA連結ナノ粒子を製造する能力は、リンパを介してリンパ節のDCにタンパク質抗原を送達することを可能にする。常在リンパ節DCへの抗原のこの送達は、続く順応免疫応答を向上させる可能性を提供する。OVAは、ここでは、例示的なモデル抗原として提示されているにすぎない。ペプチド、グリコペプチドを含むタンパク質、及びタンパク質抗原をコードする核酸を含む任意の数の分子抗原を同様に利用することができる。
【0090】
(実施例13:PLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAによって誘発されるDC成熟)
25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子及びリポ多糖(LPS)と混合されたOVAを、本明細書に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、本明細書に記載したように、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、CD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を実施して、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0091】
図12に示すように、LPSによる正の対照OVAと比較した25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、ほぼ同じである。いずれもこれらのDC成熟マーカの高い発現を示す。これらの結果は、インビボのDC成熟応答が、PLURONIC安定化25nmナノ粒子によって送達されたOVA及び分子危険信号LPSと共注入されたOVAについてほぼ同じであることを示している。これは、抗原送達媒体及び成熟刺激補助剤の両方として、ヒドロキシル化され、補体を活性化し、例えば、PPSナノ粒子のPLURONIC安定化によって形成された例えば20〜45nmの小さいナノ粒子に連結したOVAを使用することが可能であることを示唆している。
【0092】
(実施例14:T細胞増殖)
T細胞養子移入として知られる方法を用いて、T細胞増殖の測定を行った。OT-II Tg(Jackson Immunoresearch)マウスは、CD4 T細胞に上方制御レベルのOVA T受容体を有するという点において形質転換性である。OT-II Tgマウスの脾臓及びリンパ節を単離して、細胞懸濁物を作製した。脾臓細胞懸濁物については、赤血球を1.667%のNH4Clで溶解させた。脾臓及びリンパ節の細胞を蓄積し、計数した。合計400×106個の細胞を回収した。
【0093】
細胞をカルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、RPMI w/o FBSに20×106/mlで懸濁させた。CFSE原液は、DMSO中5mMであった。PBSで第1の希釈物1/10を作製し、必要な容量を細胞に添加して、最終濃度を5μMとした。CGSEを添加し、穏やかに混合し、細胞とともに37℃で10分間インキュベートし、蓋を開けたまま放置し、約2分間毎に静かに混合した(細胞を2つの管に分けて、凝塊形成及び細胞死を防止した)。インキュベーション後に、5%のFBSを含むRPMIを添加して、細胞を洗浄し、RPMI w/o FBSで1回洗浄し、PBSで1回洗浄した。合計300×106個の細胞に対してCFSE標識した後に細胞計数を行った。
【0094】
細胞を50×106/mlでPBSに再懸濁させ、10×106個の細胞をCD45.1類似遺伝子受容マウスの尾の静脈に注入した(200μl/マウス)。細胞の一部を流動細胞計測CFSE標識による検査のために保持し、その部分のCFSE+T細胞を注入した。細胞をAPC抗CD4で染色した。
2日目に、20μlの抗原(10ugのOVA+5ugのLPS又は10ugの25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子)を受容マウスの前足蹠に注入した。5日目に、マウスを殺し、各マウスから鰓及び腋窩リンパ節を除去し、蓄積して、細胞懸濁物を作製した。細胞をCD45.2 PE、ヨウ化プロピジウム(死細胞)及びCD4アロフィコシアニンに対して染色した。流動細胞計測を実施して、T細胞増殖の測定を行った。
【0095】
図13(左)は、PBSの注入後に、すべてのCFSE標識OT-II T細胞が最大蛍光レベルに維持されていたことを示す。しかし、LPSによる正の対照OVA(中央)の注入及び25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子に連結したOVAの注入後に、CD T細胞の蛍光が大きく低下している。この蛍光の低下は、親集団より小さい蛍光を示す娘細胞集団を示唆している。LPSによるOVAの注入又はPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入後に約7サイクルの増殖があった。
OTIIマウスは、OVAに対するT細胞受容体を上方制御するCD4 T細胞を有するという点において形質転換性である。したがって、これらのT細胞は、OVA抗原に遭遇すると極めて敏感になる。したがって、CFSE標識OT-II T細胞へのWTマウスへの養子移入は、インビボのT細胞増殖を測定するための優れたモデルである。
【0096】
本明細書において、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子に連結したOVAの送達後にリンパ節DCが成熟することが証明される。ここで、これらの結果は、ナノ粒子のこの内在化の後に、OVA抗原が少なくとも部分的にMHC-II経路を通じて処理され、その抗原ペプチドが成熟DCによってCD4 T細胞に提示されることを示している。次に、CD4 T細胞が活性化され、増殖する。活性化されたCD4 T細胞は、順応免疫応答を支援する(例えば、抗体生成の誘発のためにB細胞に抗原を提示する)ことが可能である。我々の結果は、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)に連結したOVAは、LPSによる正の対照OVAと非常に類似したレベルのT細胞増殖を誘発することが可能である。これは、さらなるT細胞媒介免疫応答が開始されるため、有意義である。
【0097】
(実施例15:CD8T細胞記憶-細胞免疫の測定)
本明細書に記載したように、25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子、PBSにおけるOVA及びLPSによるOVAをC57/BL6マウスに注入した。次いで、7日目にマウスにブースタ注入を行った。次いで、21日目に、本明細書に記載したように、マウスを殺し、リンパ節を除去し、細胞を単離した。血球計算器を使用して細胞懸濁物を計数した。
【0098】
IFN-γ用ELISPOT(eBioscience)を製造元のプロトコルに従って調製した。10%のマウス血清を含むRPMIを各ウェルに20μl/ウェルで添加した。次に、2単位のIL-2及び0.4μgのCD28を各ウェルに添加した。次に、20μl/ウェルのOVA323〜339MHC-Iペプチドを2mMの濃度で添加した。次いで、細胞を100μl/ウェルでウェルに添加した。いくつかのウェルには、非刺激対照として、OVAペプチドを加えなかったが、他のウェルには、正の対照としてPMAを加えた。プレートを2日間にわたって37℃のインキュベータに維持した。2日後、ELISPOTプレートを製造元のプロトコルに従って展開した。ウェルの画像をLeica MZ16FA立体顕微鏡でウェルの画像を撮影した。次いで、ウェル内のスポットをMatlab画像解析プログラムで計数した。
【0099】
図14に示されるように、マウスの免疫化に続いて、抗原に再接触した後に、ELISPOTアッセイを用いて、IFN-γ産性CD8 T細胞の量を測定した(プレート上のスポットで測定)。PBSでOVAが注入されたマウスは、非常に少数のIFN-γ T細胞を示したのに対して、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)ナノ粒子に連結したOVA及びLPSによる正の対照OVAが注入されたマウスでは有意な増加が認められた。本明細書に提示されている他の結果と一致して、補体を活性化する非常に小さい(例えば20〜45nmの)ナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子)に連結したOVAは、DC成熟及びCD T細胞増殖を誘発することが可能である。ここで、我々は、PLURONIC安定化25nmナノ粒子に連結したOVAは、CD8 T細胞記憶を十分に生成できることを示した。CD8 T細胞は、MHC-I経路によって処理及び提示された抗原に応答する。MHC-I経路は、一般に、DCの細胞質において処理される抗原に対応づけられる。これは、ナノ粒子が、MHC-I及びMHC-II双方の処理及び提示について抗原を送達できることを示唆している。CD8 T細胞は、病原体及び病原体感染細胞を直接攻撃するため、細胞毒キラーT細胞としても知られる。したがって、CD8 T細胞記憶を生成する小さい(例えば20〜45nmの)補体活性(例えばPLURONIC安定化)ナノ粒子の能力は、これをワクチンに使用する強い可能性を示す。
【0100】
(実施例16:抗体(Ab)力価-体液免疫の測定)
25nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、100nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、25nmのOVA連結メトキシ末端PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化されていない)ナノ粒子、PBS中のOVA、及びLPS含有OVAを本明細書に記載したようにC57/BL6マウスに注入した。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、及びLPS含有OVAをC3-/-マウスに注入した。注入前及び注入後21日目にマウスから採取した血液から血清を単離し、使用するまで-20℃で保管した。ブースタ注入は行わなかった。
【0101】
96ウェルプレート(Becton Dickinson)にPBS中OVA(2μg/ml)を100μl/ウェルで塗布した。プレートを室温(room temperature)(RT)で一晩放置した。未結合抗原を払い落とし、プレートを200μl/ウェルのDI水で3回洗浄した。次いで、プレートを200μl/ウェルのブロッキング緩衝液により室温で1.5時間ブロックした。
【0102】
マウス血清サンプルをブロッキング緩衝液で1:103から1:108まで順次希釈した。
プレートのブロッキングが完了すると、プレートを150μl/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、血清サンプルを室温にて2時間にわたって50μl/ウェルでウェルに添加した。注入前血清サンプルを3通り添加した。次いで、サンプルを払い落とし、次いでプレートを150μl/ウェルにて洗浄緩衝液で5回洗浄した。マウス抗IgG-HRPをブロッキング緩衝液で1:3000に希釈し、室温にて2時間にわたって50μl/ウェルで添加した。次いで、HRP抗体を払い落とし、プレートを150μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、HRP基質試薬(R&D systems)を室温にて45分間にわたって暗所において100μl/ウェルで添加した。50μl/ウェルの2NのH2SO4を添加することによって反応を停止させた。次いで、450nm及び540nm波長におけるプレート吸収をTecanプレートリーダで測定した。540nmのバックグラウンド値を450nmから引いて、最終値を得た。注入後血清値がカットオフ値より大きい場合に陽性のサンプルを測定した。注入前の3つの値の平均値+標準偏差×3からカットオフ値を計算した。正の値を有する最大希釈率を抗体(Ab)力価値と見なす。
【0103】
図15に示されるように、様々な治療薬が注入されたマウスにおいてlog10 IgG OVA Ab力価を測定した。PBS中のOVAの負の対照が注入されたマウスは、正の力価を示さなかった。LPS含有OVAの正の対照が注入されたマウスは、野生型及びC3-/-マウスの両方において3〜6の正の力価を示した。25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入は、4の力価を与えたのに対して、100nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVA及び25nmのメトキシ末端PLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入は、より小さい力価値を与えた。最後に、25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAで治療された動物のAb力価は、C3-/-マウスにおいて有意に小さかった。
【0104】
OVA IgG Ab力価の存在は、体液免疫の証拠である。このプロセスが生じる1つのルートは、抗原がDCによって処理され、CD4 T細胞に提示され、次いでそれらがB細胞を刺激して、抗原に対するAbcを生成させる。危険信号の不在下での遊離タンパク質の送達は、体液免疫を有意に誘発できないことが知られており、これは、PBS中のOVAとして、正の力価を与えないことが我々の結果によって証明されている。しかし、LPS含有OVAの正の対照は、野生型マウス及びC3-/-マウスの双方において有意なレベルの力価を示す。我々は、本明細書において、25nmPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)PPSナノ粒子に連結したOVAがDC成熟、T細胞増殖及びCD8 T細胞記憶を誘発できることを示した。ここで、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)ナノ粒子に連結したOVAは、抗OVA IgG力価を与えることによって、体液免疫を誘発することもできることを示す。100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAは、正の力価を与えず、リンパ節標的化がナノ粒子誘発体液免疫にとって重要であることを証明している。また、補体を活性化する程度がはるかに低い25nmのメトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAは、低いAb力価値を示し、補体活性化を通じて媒介されるそのように強い免疫応答を生成するために表面化学作用の制御も必要であることが示される。最後に、25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAは、野生型マウスよりC3-/-マウスにおいてはるかに小さい力価値を与えるため、補体活性化は、体液免疫の誘発において重要な役割を果たしていることが示される。
【0105】
これらの結果は、リンパ節標的化を通じて機能するための特殊なサイズ及び特殊な表面化学作用、すなわち補体活性化が可能な化学作用の両方を有する、本明細書に記載したようにして製造される様々な実施態様のナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化及び他の手段によって得ることができるヒドロキシル化されたナノ粒子)を使用して、共注入抗原による強いT細胞依存性体液免疫を与えることができることを証明している。ここで実証されることは、抗原がナノ粒子表面に連結する場合である。抗原をナノ粒子表面に結合させるための吸着法も効果的である。抗原と当該ナノ粒子の共注入も効果的であるが、恐らくその効果は小さい。
【0106】
(実施例17:疎水性薬物充填)
疎水性薬物、例えばデキサメタソンの充填を適応溶媒蒸発法[132、133]によって達成した。手短に述べると、例示を目的として、薬物を溶媒ジクロロメタン(1mg/ml)に添加した。次いで、1mlの薬物-溶媒懸濁物を1mlのPPSナノ粒子溶液に20mg/mlで添加した。溶媒を蒸発させるために、エマルジョンを室温の暗所で連続的に撹拌した。薬物充填効率をGPCで測定した。
【0107】
(統計)
両側スチューデントt検定を行うことによって実施例における統計的有効性を測定した。結果は、平均値±SDを示し、条件毎に3〜8の実験を行った。
【0108】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらが本出願に記載された明確な開示内容に矛盾しない範囲で、引用により本明細書に組み込まれている。
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【0109】
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【0110】
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【0119】
[35] L. Illum、A.E. Church、M.D. Butterworth、A. Arien、J. Whetstone、S.S. Davisらの論文「画像診断のために局所リンパ節に標的化するためのシステムの開発:間質投与後のラットにおけるコロイドPEG被覆磁鉄鉱ナノ球体のインビボ挙動(Development of systems for targeting the regional lymph nodes for diagnostic imaging: In vivo behaviour of colloidal PEG-coated magnetite nanospheres in the rat following interstitial administration)」、(Pharmaceutical Research 18(5) (2001) 640-645)。
[36] C. Oussoren、M. Velinova、G. Scherphof、J.J. van der Want、N. van Rooijen、G. Stormらの論文「皮下注入後のリポソームのリンパ吸収及び生体分布。IV.局所リンパ節におけるリポソームの運命(Lymphatic uptake and biodistribution of liposomes after subcutaneous injection - IV. Fate of liposomes in regional lymph nodes)」、(Biochimica Et Biophysica Acta-Biomembranes 1370(2) (1998) 259-272)。
[37] C. Oussoren、G. Stormらの論文「皮下投与後のリンパ節におけるリポソームの局在化におけるマクロファージの役割(Role of macrophages in the localisation of liposomes in lymph nodes after subcutaneous administration)」、(International Journal of Pharmaceutics 183(1) (1999) 37-41)。
【0120】
[38] D. Hawiger、K. Inaba、Y. Dorsett、M. Guo、K. Mahnke、M. Rivera、J.V. Ravetch、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞は、インビボ定常条件下で末梢T細胞無応答性を誘発する(Dendritic cells induce peripheral T cell unresponsiveness under steady state conditions in vivo)」、(Journal of Experimental Medicine 194(6) (2001) 769-779)。
[39] A. Rehor、J.A. Hubbell、N. Tirelliらの論文「酸化に敏感なポリマーナノ粒子(Oxidation-sensitive polymeric nanoparticles)」、(Langmuir 21(1) (2005) 411-417)。
[40] A. Rehor、N. Tirelli、J.A. Hubbellらの論文「新たなリビングエマルジョン重合メカニズム:エピスルフィドアニオン重合(A new living emulsion polymerization mechanism: Episulfide anionic polymerization)」、(Macromolecules 35(23) (2002) 8688-8693)。
[41] A. Napoli、M. Valentini、N. Tirelli、M. Muller、J.A. Hubbellらの論文「酸化応答性ポリマーベシクル(Oxidation-responsive polymeric vesicles)」、(Nature Materials 3(3) (2004) 183-189)。
【0121】
[42] W.L. Olszewskiの論文「リンパ鬱血の病態生理、診断及び治療(Lymph stasis pathophysiology, diagnosis and treatment)」、(CRC Press, Boca Raton etc., 1991)。
[43] D.A. Berk、M.A. Swartz、A.J. Leu、R.K. Jainらの論文「リンパ毛管による輸送。2.蛍光退色による顕微鏡速度測定(Transport in lymphatic capillaries .2. Microscopic velocity measurement with fluorescence photobleaching)」、(American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology 39(1) (1996) H330-H337)。
[44] M.A. Swartz、D.A. Berk、R.K. Jainらの論文「リンパ毛管による輸送。1.滞留時間分布理論を用いた巨視的測定(Transport in lymphatic capillaries .1. Macroscopic measurements using residence time distribution theory)」、(American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology 39(1) (1996) H324-H329)。
[45] M.A. Swartz、A. Kaipainen、P.A. Netti、C. Brekken、Y. Boucher、A.J. Grodzinsky、R.K. Jainらの論文「間質-リンパ液輸送の力学:理論的基礎及び実験的検証(Mechanics of interstitial-lymphatic fluid transport: theoretical foundation and experimental validation)」、(Journal of Biomechanics 32(12) (1999) 1297-1307)。
[46] V. Angeli、J. Llodra、J.X. Rong、K. Satoh、S. Ishii、T. Shimizu、E.A. Fisher、G.J. Randolphらの論文「アテローム動脈硬化疾患に伴う異脂肪血症は、樹状細胞移動を全身的に変化させる(Dyslipidemia associated with atherosclerotic disease systemically alters dendritic cell mobilization)」、(Immunity 21(4) (2004) 561-574)。
【0122】
[47] R.P. da Silva、S. Gordonらの論文「食作用は、マクロファージに特異的なエンドソームタンパク質であるマクロシアリン(マウスCD68)の代替的グリコシル化を刺激する(Phagocytosis stimulates alternative glycosylation of macrosialin (mouse CD68), a macrophage-specific endosomal protein)」、(Biochem J 338 (Pt 3) (1999) 687-694)。
[48] C.L. Holness、R.P. da Silva、J. Fawcett、S. Gordon、D.L. Simmonsらの論文「マウスマクロファージ制限糖タンパク質であるマクロシアリンは、lamp/lgpファミリーの一員である(Macrosialin, a mouse macrophage-restricted glycoprotein, is a member of the lamp/lgp family)」、(J Biol Chem 268(13) (1993) 9661-9666)。
[49] S. Rabinowitz、H. Horstmann、S. Gordon、G. Griffithsらの論文「腹膜マクロファージにおける飲食作用及びファゴリソソーム区画の免疫細胞化学的特性決定(Immunocytochemical characterization of the endocytic and phagolysosomal compartments in peritoneal macrophages)」、(J Cell Biol 116(1) (1992) 95-112)。
【0123】
[50] S. S. Rabinowitz、S. Gordonらの論文「炎症刺激に応答して差別的にグリコシル化されたマクロファージ制限膜シアロタンパク質であるマクロシアリン(Macrosialin, a macrophage-restricted membrane sialoprotein differentially glycosylated in response to inflammatory stimuli)」、(J Exp Med 174(4) (1991) 827-836)。
[51] M. Breel、R.E. Mebius、G. Kraalらの論文「2モノクローナル抗体によって認識されたマウスの樹状細胞(Dendritic Cells of the Mouse Recognized by 2 Monoclonal-Antibodies)」、(European Journal of Immunology 17(11) (1987) 1555-1559)。
[52] K. Inaba、W.J. Swiggard、M. Inaba、J. Meltzer、A. Mirza、T. Sasagawa、M.C. Nussenzweig、R.M. Steinmanらの論文「モノクローナル抗体Nldc-145によって検出されるDec-205タンパク質の組織分布。1.樹状細胞及び他のマウス白血球部分集合体における発現(Tissue Distribution of the Dec-205 Protein That Is Detected by the Monoclonal-Antibody Nldc-145 .1. Expression on Dendritic Cells and Other Subsets of Mouse Leukocytes)」、(Cellular Immunology 163(1) (1995) 148-156)。
[53] W.P. Jiang、W.J. Swiggard、C. Heufler、M. Peng、A. Mirza、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞及び胸腺上皮細胞によって発現された受容体Dec-205は、抗原処理に関与する(The Receptor Dec-205 Expressed by Dendritic Cells and Thymic Epithelial-Cells Is Involved in Antigen-Processing)」、(Nature 375(6527) (1995) 151-155)。
【0124】
[54] W.P. Jiang、W.J. Swiggard、A. Mirza、M. Peng、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹枝細胞に豊富であり、Nldc-145モノクローナル抗体で識別される205-Kdタンパク質の分子的特性決定(Molecular Characterization of a 205-Kd Protein That Is Abundant on Dendritic Cells and Identified with the Nldc-145 Monoclonal-Antibody)」、(Journal of Cellular Biochemistry (1995) 20-20)。
[55] G. Kraal、M. Breel、M. Janse、G. Bruinらの論文「モノクローナル抗体によって認識されたマウスのランゲルハンス細胞、ベール状細胞及び嵌合細胞(Langerhans Cells, Veiled Cells, and Interdigitating Cells in the Mouse Recognized by a Monoclonal-Antibody)」、(Journal of Experimental Medicine 163(4) (1986) 981-997)。
[56] K. Mahnke、M. Guo、S. Lee、H. Sepulveda、S.L. Swain、M. Nussenzweig、R.M. Steinmanらの論文「飲食作用のための樹状細胞受容体DEC-205は、主要組織適合性複合体クラスII陽性リソソーム区画を介して抗原提示を再循環及び強化することができる(The dendritic cell receptor for endocytosis, DEC-205, can recycle and enhance antigen presentation via major histocompatibility complex class II-positive lysosomal compartments)」、(Journal of Cell Biology 151(3) (2000) 673-683)。
【0125】
[57] Y. Tabata、Y. Ikadaらの論文「マクロファージによるポリマー微小球体の食作用(Phagocytosis of Polymer Microspheres by Macrophages)」、(Advances in Polymer Science 94 (1990) 107-141)。
[100] S. Cerritelli、A. Fontana、D. Velluto、M. Adrian、J. Dubochet、P. De Maria、J.A. Hubbellらの論文「ポリ(エチレングリコール-b-プロピレンスルフィド-b-エチレングリコール)ABA三ブロック共重合体の凝集挙動における熱力学及び動力学的効果(Thermodynamic and kinetic effects in the aggregation behavior of a poly(ethylene glycol-b-propylene suflide-b-ethylene glycol) ABA triblock copolymer)」、(Macromolecules 38(18) (2005) 7845-7851)。
[102] A. Napoli、N. Tirelli、G. Kilcher、J.A. Hubbellらの論文「エチレングリコールとプロピレンスルフィドの両親媒性多ブロック共重合体の新しい合成手法(New synthetic methodologies for amphiphilic multiblock copolymers of ethylene glycol and propylene sulfide)」、(Macromolecules 34(26) (2001) 8913-8917)。
【0126】
[103] A. Napoli、N. Tirelli、E. Wehrli、J.A. Hubbellらの論文「ポリ(プロピレンスルフィド)及びポリ(エチレングリコール)に基づく両親媒性ABA三ブロック共重合体の水中での離液挙動(Lyotropic behavior in water of amphiphilic ABA triblock copolymers based on poly(propylene sulfide) and poly(ethylene glycol))」、(Langmuir 18(22) (2002) 8324-8329)。
[104] A. Napoli、M. Valentini、N. Tirelli、M. Muller、J.A. Hubbellらの論文「酸化応答性ポリマーベシクル(Oxidation-responsive polymeric vesicles)」、(Nature Materials 3(3) (2004) 183-189)。
[105] K. Kataoka、A. Harada、Y. Nagasakiらの論文「薬物送達のためのブロック共重合体ミセル:設計、特性決定及び生物学的重要性(Block copolymer micelles for drug delivery: design, characterization and biological significance)」、(Adv Drug Deliv Rev 47(1) (2001) 113-131)。
[106] A.N. Lukyanov、V.P. Torchilinらの論文「貧溶解性薬物の送達系としての水溶性ポリマーの脂質誘導体からのミセル(Micelles from lipid derivatives of water-soluble polymers as delivery systems for poorly soluble drugs)」、(Adv Drug Deliv Rev 56(9) (2004) 1273-1289)。
【0127】
[107] H. Otsuka、Y. Nagasaki、K. Kataokaらの論文「生物学的用途及び医薬用途に向けたPEG化ナノ粒子(PEGylated nanoparticles for biological and pharmaceutical applications)」、(Adv Drug Deliv Rev 55(3) (2003) 403-419)。
[108] D.E. Discher、A. Eisenbergらの論文「ポリマーベシクル(Polymer vesicles)」、(Science 297(5583) (2002) 967-973)。
[109] H. Lee、I.H. Jang、S.H. Ryu、T.G. Parkらの論文「上皮成長因子のN末端部位に特異的なモノPEG化(N-terminal site-specific mono-PEGylation of epidermal growth factor)」、(Pharm Res 20(5) (2003) 818-825)。
[110] H. Lee、T.G. Parkらの論文「モノPEG化上皮成長因子の調製及び特性決定:インビトロ生物活性の評価(Preparation and characterization of mono-PEGylated epidermal growth factor: evaluation of in vitro biologic activity)」、(Pharm Res 19(6) (2002) 845-851)。
【0128】
[111] M.J. Roberts、M.D. Bentley、J.M. Harrisらの論文「ペプチド及びタンパク質PEG化の化学作用(Chemistry for peptide and protein PEGylation)」、(Adv Drug Deliv Rev 54(4) (2002) 459-476)。
[112] C.A. Janewayの論文「免疫生物学5:健康及び疾患における免疫系(Immunobiology 5 the immune system in health and disease)」、(Churchill Livingstone, Edinburgh, 2001)。
[113] L.C. Bonifaz、D.P. Bonnyay、A. Charalambous、D.I. Darguste、S. Fujii、H. Soares、M.K. Brimnes、B. Moltedo、T.M. Moran、R.M. Steinmanらの論文「DEC-205受容体を介する成熟樹状細胞への抗原のインビボ誘導は、T細胞予防接種を向上させる(In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination)」、(J Exp Med 199(6) (2004) 815-824)。
[114] D. Hawiger、K. Inaba、Y. Dorsett、M. Guo、K. Mahnke、M. Rivera、J.V. Ravetch、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞は、インビボ定常条件下で末梢T細胞無応答性を誘発する(Dendritic cells induce peripheral T cell unresponsiveness under steady state conditions in vivo)」、(Journal of Experimental Medicine 194(6) (2001) 769-779)。
【0129】
[115] C.L. van Broekhoven、C.R. Parish、C. Demangel、W.J. Britton、J.G. Altinらの論文「抗原含有リポソームを樹状細胞にターゲティングする:抗腫瘍免疫の誘発及び腫瘍免疫治療のための極めて効果的な手順(Targeting dendritic cells with antigen-containing liposomes: a highly effective procedure for induction of antitumor immunity and for tumor immunotherapy)」、(Cancer Res 64(12) (2004) 4357-4365)。
[116] T. Fifis、A. Gamvrellis、B. Crimeen-Irwin、G.A. Pietersz、J. Li、P.L. Mottram、I.F. McKenzie、M. Plebanskiらの論文「サイズ依存免疫原性:腫瘍に対するナノワクチンの治療及び予防特性(Size dependant immunogenicity: therapeutic and protective properties of nano-vaccines against tumors)」、(J Immunol 173 (2004) 3148-3154)。
[117] M. Gadjeva、A.W. Dodds、A. Taniguchi-Sidle、A.C. Willis、D.E. Isenman、S.K.A. Lawらの論文「補体成分C3の共有結合反応(The covalent binding reaction of complement component C3)」、(J Immunol 161 (1998) 985-990)。
[118] A. Kidane及びK. Parkらの論文「PEO移植ガラス表面による補体活性化(Complement activation by PEO-grafted glass surfaces)」、(J Biomed Mat Res 48 (1999) 640-647)。
【0130】
[119] D.T. O'Hagan及びN.M. Valianteらの論文「ワクチン補助剤の発見及び送達における最近の進歩(Recent advances in the discover and delivery of vaccine adjuvants)」、(Nat Rev Drug Disc 2 (2003) 727-738)。
[120] R.J. Ulevitchの論文「先天免疫系にターゲティングする治療(Therapeutics targeting the innate immune system)」、(Nat Rev Immunol 4 (2004) 512-520)。
[121] A. Pashine、N.M. Valiante、J.B. Ulmerらの論文「ワクチン補助剤の改善により先天免疫応答にターゲティングする(Targeting the innate immune response with improved vaccine adjuvants)」、(Nat Med 11(4) (2005) 563-568)。
[122] Janeway, C.A.の論文「免疫生物学5:健康及び疾患における免疫系(Immunobiology 5 the immune system in health and disease)」、(Churchill Livingstone, Edinburgh, 2001)。
【0131】
[123] Larsen, C. P.らの論文「CD40及びCD28経路をブロックした後の皮膚及び心臓同種移植体の長期的許容(Long-term acceptance of skin and cardiac allografts after blocking CD40 and CD28 pathways)」、(Nature 381 (1996), 434-8)。
[124] Hackstein, H. & Thomson, A.W.らの論文「樹状細胞:免疫抑制薬の薬理的標的の出現(Dendritic cells: emerging pharmacological targets of immunosuppressive drugs)」、(Nat Rev Immunol 4(2004), 24-34)。
[125] Duperrier, K.らの論文「免疫抑制薬は、多岐の分子表現型の誘発にかかわらず、骨髄誘導樹状細胞の異種刺激特性の低下を媒介する(Immunosuppressive agents mediate reduced allostimulatory properties of myeloid-derived dendritic cells despite induction of divergent molecular phenotypes)」、(Mol Immunol 42 (2005), 1531-40)。
[126] Piemonti, L.らの論文「グルココルチコイドは、ヒト樹状細胞分化及び成熟に影響を与える(Glucocorticoids affect human dendritic cell differentiation and maturation)」、(J Immunol 162 (1999), 6473-81)。
[127] K. Duperrier、A. Farre、J. Bienvenu、N. Bleyzac、J. Bernaud、L. Gebuhrer、D. Rigal、A. Eljaafariらの論文「シクロスポリンAは、TNF-アルファ又はLPSによって促進されるが、二本鎖RNA又はCD40Lによって促進されない樹状細胞成熟を阻害する(Cyclosporin A inhibits dendritic cell maturation promoted by TNF-alpha or LPS but not by double-stranded RNA or CD40L)」、(J Leukoc Biol 72(5) (2002) 953-961)。
【0132】
[128] J.I. Lee、R.W. Ganster、D.A. Geller、G.J. Burckart、A.W. Thomson、L. Luらの論文「シクロスポリンAは、インビトロで生成される樹状細胞における共刺激性分子の発現を阻害する:核因子カッパBの核転位の減少との関連(Cyclosporine A inhibits the expression of costimulatory molecules on in vitro-generated dendritic cells: association with reduced nuclear translocation of nuclear factor kappa B)」、(Transplantation 68(9) (1999) 1255-1263)。
[129] A. Panhans-Gross、N. Novak、S. Kraft、T. Bieberらの論文「ヒト上皮ランゲルハンス細胞は、免疫抑制マクロライドタクロリムスの標的である(Human epidermal Langerhans' cells are targets for the immunosuppressive macrolide tacrolimus (FK506))」、(J Allergy Clin Immunol 107(2) (2001) 345-352)。
[130] G. Szabo、C. Gavala、P. Mandrekarらの論文「タクロリムス及びシクロスポリンAは、ヒト骨髄樹状細胞の異種刺激能力及びサイトカイン生成を阻害する(Tacrolimus and cyclosporine A inhibit allostimulatory capacity and cytokine production of human myeloid dendritic cells)」、(J Investig Med 49(5) (2001) 442-449)。
[131] A.M. Woltman、J.W. de Fijter、S.W. Kamerling、L.C. Paul、M.R. Daha、C. van Kootenらの論文「ヒト樹状細胞の分化に対するカルシニューリン阻害薬及びコルチコステロイドの影響(The effect of calcineurin inhibitors and corticosteroids on the differentiation of human dendritic cells)」、(Eur J Immunol 30(7) (2000) 1807-1812)。
【0133】
[132] G. Kwon、M. Naito、M. Yokoyama、T. Okano、Y. Sakurai、K. Kataokaらの論文「薬物送達のためのブロック共重合体ミセル:ドキソルビシンの充填及び放出(Block copolymer micelles for drug delivery: loading and release of doxorubicin)」、(Journal of Controlled Release 48 (1997) 195-201)。
[133] G.S. Kwon、M. Naito、M. Yokoyama、T. Okano、Y. Sakurai、K. Kataokaらの論文「ABブロック共重合体ミセルへのアドリアマイシンの物理的閉じ込め(Physical entrapment of adriamycin in AB block copolymer micelles)」、(Pharm Res 12(2) (1995) 192-195)。
[134] M.B. Villiers、C.L. Villiers、A.M. Laharie、P.N. Marcheらの論文「抗体応答に対する補体C3b及び完全フロイド補助剤の異なる刺激的影響(Different stimulating effects of complement C3b and complete Freund's adjuvant on antibody response)」、(Immunopharmac 42 (1999) 151-157)。
【0134】
[135] P.W. Dempsey、M.E. Allison、S. Akkaraju、C.C. Goodnow、D.T. Fearonらの論文「分子補助剤としての補体のC3d:先天免疫と後天免疫の橋渡し(C3d of complement as a molecular adjuvant: bridging innate and acquired immunity)」、(Science 271(5247) (1996) 348-350)。
[136] K.M. Haas、F.R. Toapanta、J.A. Olivier、J.C. Poe、J.H. Weis、D.R. Karp、J.F. Bower、T.M. Ross、T.F. Tedderらの論文「C3dは、CD21/35発現の不在下で分子補助剤として機能する(C3d functions as a molecular-adjuvant in the absence of CD21/35 expression)」、(J Immunol 172(10) (2004) 5833-5837)。
[137] C.H. Nielsen、E.M. Fischer、R.G.Q. Leslieらの論文「後天免疫応答における補体の役割(The role of complement in the acquired immune response)」、(Immunology 100 (2000) 4-12)。
【0135】
[138] M. Kopf、B. Abel、A. Gallimore、M. Carroll、M.F. Bachmannらの論文「補体成分C3は、T細胞のプライミング及び肺移動を促進させて、急性インフルエンザ感染を抑制する(Complement component C3 promotes T-cell priming and lung migration to control acute influenza virus infection)」、(Nat Med 8(4) (2002) 373-378)。
[139] T. Segura、L.D. Sheaらの論文「遺伝子送達の向上のための、表面に繋ぎ止められたDNA複合体(Surface tethered DNA complexes for enhanced gene delivery)」、(Bioconj Chem, 13(3) (2002) 621-629)。
[140] D. Putnamの論文「長さスケールの遺伝子送達のためのポリマー(Polymers for gene delivery across length scales)」、(Nat Mat, 5 (2006) 439-451)。
[141] H. Kobayashi、M.W. Brechbielらの論文「デンドリマーコアを有するナノサイズのMRI造影剤(Nano-sized MRI contrast agents with dendrimer cores)」、(Adv Drug Delivery Rev. 57 (2005) 2271-2286)。
[142] T. Dutta、N.K. Jainらの論文「ランブジン充填マノキシル化ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーのターゲティング潜在性及び抗HIV活性(Targeting potential and anti-HIV activity of lamivudine loaded mannoxylated poly(propyleneimine) dendrimer)」、(Biochim Biophys Acta xx (2007) xxx-xxx)。
【0136】
[143] A.K. Patri、A. Myc、J. Beals、T.P.Thomas、N.H. Bander、J.R. Bakerらの論文「誘導前立腺癌治療のためのJ591抗体-デンドリマー連結体の合成及びインビトロ試験(Synthesis and in vitro testing of J591 antibody-dendrimer conjugates for targeted prostate cancer therapy)」、(Bioconjugate Chem 15 (2004) 1174-1181)。
[144] C. Plank、K. Mechtler、F.C. Szoka、E. Wagnerらの論文「合成DNA複合体による補体系の活性化:静脈内遺伝子送達のための潜在的障壁(Activation of the complement system by synthetic DNA complexes: a potential barrier for intravenous gene delivery)」、(Hum. Gene Ther. 7 (1996) 1437-1446)。
[145] R. Duncan、L. Issoらの論文「デンドリマーの生体適合性及び毒性(Dendrimer biocompatibility and toxicity)」、(Adv. Drug Delivery Rev. 57 (2005) 2215-2237)。
【図面の簡単な説明】
【0137】
(図の簡単な説明)
【図1】最初のリンパへのナノ粒子吸収の比較を示す顕微鏡合成写真である。それは、直径が(A)20nm、(B)45nm及び(C)100nmの蛍光装填PPSナノ粒子の90分間の注入後のマウスの尾の皮膚におけるリンパ毛細血管網の蛍光顕微リンパ管造影写真を示す。一定の露光で撮像した。六角形のリンパ網が、20nmの粒子ではっきりと見えた。棒=100μm。
【図2】ナノ粒子のリンパ節滞留を示す顕微鏡合成写真である。20、45及び100nmのPPSナノ粒子のマウスの尾への注入後の流入領域リンパ節の断面を示す。注入の24、72、96及び120時間後にリンパ節を除去した。20及び45nmのナノ粒子ではすべての時点でナノ粒子が強固に存在したが、100nmナノ粒子は、リンパ節に見られなかった。棒=200μm。
【図3】リンパ節内のナノ粒子の局在化を示す顕微鏡合成写真である。20nmのPPSナノ粒子の注入から96時間後の直列リンパ切断面を示す。(A)CD3e(T細胞)、(B)CD45R(B細胞)及び(C)CD68(マクロファージ(macrophage)(Macs)及び樹状細胞(dendritic cell)(DC))に対する抗体として示される免疫細胞を識別した。ナノ粒子は、T細胞及びB細胞帯には明らかに存在していないが、マクロファージ及びDCと強く共存している。棒=100μm。(D)内皮マーカCD31は、リンパ節洞構造と相対的なナノ粒子(緑色)分布を証明している。棒=100μm。
【0138】
【図4】マクロファージ及び樹状細胞(dendritic cell(DC))によるナノ粒子の内在化を示す顕微鏡合成写真である。20nmのPPSナノ粒子の注入から96時間後におけるリンパ節断面の共焦点画像を示す。(A)マクロファージ及びDCによって表されるCD68に対する染色は、これらの細胞によるナノ粒子の内在化を示している。(B)専らDCに見られるDec-205に対する染色は、DCもナノ粒子を内在化させることを証明している。棒=20μm。
【図5】ナノ粒子(NP)の細胞吸収の定量を示す棒グラフである。流動細胞分析を用いて、NP(FITC+)を内在化させるリンパ節APC(MHCII+)及びDC(CD11c+)の割合を測定した。(A)注入から24時間後に、リンパ節における38%を超えるAPC及び50%のDCが20nmのナノ粒子を内在化させた。45nmのナノ粒子の両細胞集団への吸収が低下し、100nmのナノ粒子を吸収したのは全APCの〜10%にすぎなかった。(B)24時間にわたるナノ粒子によるAPC及びDCのインビトロパルシング後は、ほぼすべてのAPC及びDCが、3種類のすべての粒径のナノ粒子を内在化させた。したがって、すべての3種類のナノ粒子粒径がインビトロで等しく吸収されるため、インビボ注入後に見られる差は、注入後にリンパに吸収されるナノ粒子の差に起因する可能性が最も大きい。これらの結果も、ナノ粒子吸収は、後にリンパ節に移動する抹消部位の細胞によってではなく、リンパ節で生じることを示す。
【図6】ともに、マクロファージ及び樹状細胞(DC)の存在が経時的に増大することを示す(A)顕微鏡合成写真及び(B)棒グラフである。20nmPPSナノ粒子(NP)の注入から24及び96時間後におけるマクロファージ(Mac)及びDC(CD68+細胞)及び核に対して染色されたリンパ節断面を示す。Mac及びDC共存が経時的に増大した。棒=100μm。(B)細胞流動分析を用いて、20nmのナノ粒子の注入から24及び96時間におけるAPC(MHCII+)及びDC(CD11c+)であるナノ粒子(NPs+)を含むリンパ節(LN)の割合を測定した。24時間後に対して96時間後におけるAPC及びDCであるナノ粒子を含む細胞の割合が有意に増加している。また、24時間後におけるナノ粒子を含むほぼすべてのAPCがDCであるように思われる。
【0139】
【図7】ナノ粒子(NP)内在化の後のDC成熟マーカ、CD86及びCD80の発現の増加を示すグラフを示す。(A)PBS又は20nm粒子による注入から24時間後におけるDC(CD11c+)のCD86発現の典型的なヒストグラム。ナノ粒子を含むDC(CD11c+FITC+)について、CD86発現の明確な変化が観察される。(B)CD86及びCD80を明確に発現する細胞の割合は、ナノ粒子内在化の後の方が有意に大きくなっていると判断される。また、CD86及びCD80発現は、注入から96時間後もより高いレベルを維持していることが示される。
【図8】PLURONIC F-127が、末端OH基がOCH3基に変換されるように改質されること(A)を示すデータを示す。(B)PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)を血清とともにインキュベートすると、血清+PBSにおけるC3aの倍増を通じて測定されたメトキシ末端PLURONIC(CH3-NP)で安定化されたナノ粒子より強い補体活性化が引き起こされる。
【図9】ナノ粒子表面化学作用が、DC成熟応答を支配することを示すグラフを示す。25nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)は、メトキシ末端PLURONIC(CH3-NP)で安定化された25nmのナノ粒子及び20nmのカルボキシル化ポリスチレンナノ球体(COOH-NS)よりDCをはるかに高度に成熟させる。
【0140】
【図10】ナノ粒子粒径が、DC成熟応答を支配することを示すグラフを示す。25nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)は、DC成熟を誘発するのに対して、100nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子は、そうではない。
【図11】(A)PLURONICがビニルスルホン(PL-VS)で官能化される、ナノ粒子を改質するための化学的スキーム及びリンパ節におけるその顕微鏡写真を示す。次いで、ビニルスルホンをオバルブミン(OVA)上の遊離システインに結合させることができる。次いで、PL-VS-OVAをPLURONICと混合し、25nmのナノ粒子を通常の方法で合成する。(B)25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子は、OVAをリンパ節に送達する。
【図12】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性PPSナノ粒子(OH-OVA-NP)が、24時間後におけるマウスへの注入後のLPSによるOVAと同様のレベルのDC成熟を誘発することを示すグラフを示す。
【0141】
【図13】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性PPSナノ粒子(OH-OVA-NP)は、OT-IIマウスからのT細胞の養子移入後のLPSによるOVAと同じレベルのCD4 T細胞増殖を引き起こすことを示すグラフを示す。
【図14】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-OVA-NP)は、IFN-γスポット/リンパ節細胞を通じて測定されたCD8 T細胞記憶を引き起こすことを示すグラフを示す(P<0.05)。
【図15】21日目のOVA Ab力価を示すグラフを示す。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)ナノ粒子(OH-OVA-NP)は、LPSによるOVAと同様のレベルのOVA Ab力価を引き起こす。25nmのOVA連結メトキシ末端PLURONIC安定化PPSナノ粒子及び100nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)ナノ粒子(OH-OVA-100)は、より低いAb力価を引き起こす。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)(OH-OVA-25)は、C3-/-マウスにおいてより低いAb力価を引き起こす。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、引用により本明細書に組み込まれている2006年2月21日出願の米国特許出願第60/775,132号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
技術分野は、いくつかの態様において、免疫系を活性化するための表面化学作用を有するナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
抗原に対する耐性を発達させること、又はそれを拒絶することを習得すること等による所望の方法で抗原に応答するように免疫系を訓練することができれば、多くの医学的メリットを実現することが可能である。この課題に対処するために、全身薬物治療、抗原の注入及び抗体治療を含む様々な手法が試みられてきた。
【発明の開示】
【0004】
(発明の要旨)
本明細書に開示されている手法のなかで、1つの新しい手法は、治療物質を体内の特定箇所の抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)に特異的に標的化する。APCは、典型的には樹状細胞及びマクロファージであり、場合によってはB細胞である。本明細書において、APCは、樹状細胞及びマクロファージのみを表すのに用いられる用語であり、B細胞は除外される。APCは、体全体に散在するが、この手法は、作用物質を特定箇所、すなわちリンパ節のAPCに標的化する。APCは、リンパ節における作用物質の吸収が有利になるように、リンパ節では他の箇所とは異なる挙動を示す。さらに、媒体は、その効果を果たすことができるように数時間又は数日間にわたって残留するとともに、生分解可能である。APCは、リンパ節において特異的に標的化されるだけでなく、治療薬の送達媒体が特定の方法で、すなわち補体系を活性化することによってAPCを活性化する。補体系を活性化することは、適切な免疫治療薬を選択できるように既知の応答経路を含む。さらに、補体系は、生物剤を含まない送達系における合成物質によって活性化される。これらの特異的に標的化される特徴のすべての結果は、所望の免疫治療を達成するようにAPCを活性化する時間と場所において治療薬をAPCに遍く送達する媒体である。媒体そのものは、コンフリクト、交叉反応又は免疫系の望ましくないアンタゴニズムを生じることなく任意の作用物質を容易に受け入れるような生体分子又はポリペプチドを含まない。
【0005】
この手法は、いくつかの実施態様において、好適な物理特性を有し、間質空間を流れて、リンパ系を浸透する大きさに作られた粒子を含む。大きすぎる粒子は、リンパ系に効率的に移動しないであろう。当該粒子を生分解性合成ポリマー及び補体を活性化するポリマーで製造することができる。様々なポリマーを架橋させ、補体活性化に利用可能な粒子上の位置に特定の補体活性官能基を配置させることによって当該粒子を製造することができる。これらの特徴のすべてを以下に詳細に説明する。
【0006】
いくつかの実施態様において、組成物は、免疫治療薬と会合する合成生分解性粒子の孤立集合体と、補体を活性化する第1のポリマー及び第2の共有結合架橋ポリマーとを含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化する天然の生体分子を含まず、該第1のポリマーは、該第2のポリマーに強く結合する。
【0007】
いくつかの実施態様は、第1のポリマーと、重合時に使用される乳化剤である第2のポリマーとをエマルジョン重合して、平均直径が約20nmから約100nmの生分解性粒子の集合体を製造すること、補体を活性化するヒドロキシル官能基を含むように第2のポリマーを選択すること、及び免疫治療薬を粒子と会合させることを含むナノ粒子の免疫治療組成物の製造方法に関する。
【0008】
いくつかの実施態様は、免疫治療薬を送達する方法であって、リンパ節の抗原提示細胞に特異的に標的化される合成生分解性粒子の集合体を患者に導入することを含み、該粒子は、補体を活性化する第1のポリマーを含み、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化する天然の生物分子を含まず、該粒子は、第1のポリマーに強く結合する第2の共有結合架橋ポリマーを含む前記方法に関する。
【0009】
いくつかの実施態様は、補体を活性化する合成ポリマーを含む合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、例えば約10nmから約100nmの平均粒径を有する前記ナノ粒子組成物に関する。該粒子を抗原とさらに会合させることができる。いくつかの実施態様における合成ポリマーは、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、或いはアミノ酸及び/又は核酸及び/又は糖類を全く含まない。合成ポリマーは、例えば、ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーの疎水部分に吸着する疎水性部分を含み、それによって合成ポリマーがコアに結合することができる。
【0010】
いくつかの実施態様は、合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、例えば約10nmから約100nmの平均直径を有し、該粒子は、免疫抑制薬を含み、該粒子は、抗原とさらに会合される、前記ナノ粒子組成物に関する。いくつかのバージョンにおいて、該粒子は、少なくとも1つの疎水性ブロック及び少なくとも1つの親水性ブロックの両親媒性共重合体を含み、該ブロック共重合体は、水溶液中で自己集合して、粒子を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
(発明の概要)
好適な特性を有するナノ粒子を使用して、治療物質をリンパ節の樹状細胞(dendritic cell)(DC)を含む抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)に特異的に標的化することができる。ナノ粒子粒径のリンパ吸収、リンパ節滞留及びリンパ節APC及びDCによる内在化に対する影響を、ここでは、マウス(ヒトと同様の大きさのリンパ毛細血管(10〜80μm)を有するが、これらは両種において大きく変動する[20、42])における皮内注入に対応して実証する。様々なナノ粒子粒径を用いることができるが、約20nmの直径のナノ粒子が最も容易に吸収され、さらに、他の粒子について既に報告されたものより長い時間(120時間まで)にわたってリンパ節に滞留する[31〜34、36]。驚いたことには、特定のナノ粒子表面化学作用は、補体を活性化することが実証される。リンパ節内部で、補体活性ナノ粒子は、標的化リガンドがなくても、常在APC(DC及びいくつかのマクロファージを含むMHCII+細胞)及び他の非抗原提示マクロファージ(MHCII-)によって効率的に内在化されることが示された。リンパ節常在DCの大部分(50%まで)が20nmの補体活性ナノ粒子を内在化させ、その数が時間とともに増加した。補体活性ナノ粒子内在化の後にDC成熟が生じることが見いだされた。
【0012】
粒径及び表面化学作用も同時に重要である。所定の効率でリンパに入る大きさに作られていない補体活性ナノ粒子(例えば、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子)は、より高い進入効率を有する同じ化学作用の比較的小さいナノ粒子(例えば25nm)ほど強力な補助剤でない。容易にリンパに入り大きさに作られた非補体活性ナノ粒子(例えば、メトキシ末端PLURONICで安定化された25nmのPPSナノ粒子)は、補体を活性化する表面化学作用の同サイズのナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化25nmPPSナノ粒子)ほど強力な補助剤でない。補体活性化がそのメカニズムにおいて主要な役割を果たすことは、抗原が結合された25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子が注入されたC3-/-動物における低い応答によって証明される。したがって、小さい(例えば20〜45nm)ヒドロキシル化ナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化PPSナノ粒子)は、免疫治療薬をリンパ節におけるDC及び他のAPCに送達するための手段を提供する。
【0013】
特定の表面化学作用を利用して、DCを含むAPCを活性化し、次いでT細胞依存性順応免疫応答を誘発することができる。ヒドロキシル化表面[117]又はPLURONICによる安定化によって得られたヒドロキシル化表面[118]を含むいくつかの物質表面は、補体カスケードを活性化することができる。物質表面を特定のヒドロキシル化分子及び生体分子に連結させて、補体を活性化することができる。例えば、当業者は、本明細書に記載の技術を適用して、その結合を達成することができる。さらに、移植体、医療用具、又はナノ粒子以外の担体に本明細書に記載の補体活性ポリマーの層を与えることができ、或いはポリマー又はヒドロキシルを当該物質に直接導入することができる。補助剤の開発において、科学者に利用されていた従来の手法は、リポ多糖(lipopolysaccharide)(LPS)のようなToll様受容体の活性化体を通じてDCのような細胞を活性化することであった[119〜121]。特定のナノ粒子表面化学作用は、先天免疫の異なる態様、すなわち補体カスケードを活性化し得ることが発見された。本明細書の詳細な実施例では、PLURONICによる安定化によって得られたもののようなヒドロキシル化ナノ粒子が補体を活性化することができ、次にこれがDCを含むAPCを活性化し、T細胞依存性体液及び細胞免疫を誘発することができることを証明する。補体メカニズムを採用しない補助剤としてのナノ粒子に関する他の研究において、ポリマーナノ粒子サイズは、DCに標的化され、これを活性化する程度を決定づけた。カルボキシル化ポリスチレンナノ粒子を用いると、中程度の粒径(45nm)のナノ粒子はDCに吸収され、それらを活性化するが、より小さいナノ粒子(20nm)は、そうではない[116]。しかし、本明細書に記載のナノ粒子を用いると、補体を活性化することができ、これは、DCの活性化及び順応免疫応答のT細胞依存性体液及び細胞態様の誘発に対する強力なシグナルを提供する。
【0014】
補体活性化は、順応免疫応答、特にB細胞免疫を向上させることが知られる。B細胞依存性体液免疫を向上させるために、補体タンパク質C3b及びC3dを分子補助剤として利用できることが以前の研究によって証明された。後天免疫B細胞応答が遊離抗原単体と比較して有意に増加することが、モデル抗原に対するC3b又はC3dの融合によるマウスの免疫化によって証明されている[134、135]。C3b及びC3d補助剤が機能するメカニズムは、B細胞活性化の公知の増幅体であるCD19と会合するC3d受容体(CD21/35)の直接的な結合によるものであり得る。しかし、CD21/35は、このB細胞受容体にとって必要であるとは限らないことが判明した[136]。C3b-及びC3d-抗原融合に対して1つの確実なことは、体液免疫に対するそれらの補助剤としての能力がB細胞との直接的な相互作用によることである[137]。これは、抗原が本明細書に教示されるようにDCに吸収され、DCが成熟し、DCが抗原を処理し、MHC IIを通じてCD4 T細胞にそれを提示し、CD4 T細胞が抗原をB細胞に提示し、最後にB細胞が抗体を生成するときに生じるT細胞依存性体液免疫と異なる。補体は、T細胞依存性免疫に関与することが発見されたが、これが生じるメカニズムは、示されていない[138]。さらに、補体活性化をT細胞依存性免疫のための分子補助剤として利用できることがこれまで示唆されていなかった。
【0015】
しかし、本明細書における系は、補体活性化をT細胞依存性免疫のための分子補助剤としてどのように利用できるかを示す。さらに、いくつかの実施態様は、ナノ粒子表面化学作用を通じて補体を活性化するナノ粒子を含む。具体的には、例えば、25nmのPLURONIC安定化補体活性PPS化ナノ粒子は、DC成熟を誘発することがそれらの結果によって示され、ヒドロキシル化表面を介する補体活性化を、DC成熟を誘発する危険信号として利用できることが初めて証明される。また、本明細書に記載されるように、DC媒介T細胞依存性体液及び細胞免疫を誘発するための補助剤として、PLURONIC安定化ナノ粒子を介する補体活性化が初めて利用される。
【0016】
(免疫系標的化)
抗原提示細胞(antigen-presenting cell)(APC)は、MHCクラスI、II及び他の共刺激性分子(すなわちCD86及びCD80)を利用して原性T細胞を刺激し、細胞媒介免疫を誘発する極めて効率的な食細胞である。いくつかのマクロファージ及びより強力な樹状細胞(dendritic cell)(DC)を含むAPCは、末梢組織に存在し、外来抗原の内在化及び処理に続いて、T細胞に対する抗原提示を目的として、成熟し、リンパ節に移動するセンチネルとして作用する[1〜3]。APC及びDCが順応免疫において果たす重要な役割について、これらの細胞にDNA、タンパク質及びポリペプチドのような免疫調節剤を標的化するための様々な実験が行われている[4〜14]。ポリペプチドは、互いに結合した2つ以上のアミノ酸を指す用語であり、タンパク質を含む。
【0017】
ポリマー及びリポソームベースの送達系は、それらが最初に薬物媒体を内在化させ、次いで約1〜2日以内にリンパ節に移動して、T細胞を活性化する、タンパク質及びDNAの末梢DCへの送達に主として焦点をおいていた[9、12、13]。抗原を吸収することが可能な未成熟DCがリンパ節に存在するかどうかは、最近まで明らかでなかった。しかし、リンパ節における実質的な割合の常在DCが、表現型として未成熟であり、そこの抗原及び粒子を内在化することが可能であることが最近の研究によって実証された[15、16]。したがって、本明細書に説明されているように、常在リンパ節APCも免疫治療薬又は他の治療薬の標的として利用できる。末梢部位におけるものの代わりにリンパ節APC又はDCに標的化する潜在的な利点は、早発性抗原提示(すなわち、リンパ節に到達する前にその表面に抗原を発現する移動性DC)がしばしば細胞耐性をもたらし得ることである[13、17、18]。したがって、リンパ節APCへの送達は、この問題を防ぎ得る可能性がある。また、他のDC標的化研究では、DC特異性を高めるために抗Dec-205及び抗CD11cなどの連結される標的化リガンドが使用されている[4、5、8、9、12、19]。
【0018】
しかし、従来認識されていなかったことは、DCが本質的に高度に食作用性であり、リンパ節に高濃度で存在することを効果的に利用できることである。よって、標的化リガンドを使用しない標的化を含めて、本明細書に説明されているように、リンパ節におけるこれらの細胞に特異的に標的化するための材料及び方法が開発された。標的化リガンドは、細胞上の特定の化学基、例えば、細胞表面受容体又は細胞表面タンパク質に特異的に結合する化学基を指す。したがって、いくつかの実施態様は、サイズ及び他の物理特性に基づいて標的化することができ、受容体、細胞表面分子、細胞外マトリックス分子、細胞表面抗原、細胞マーカ分子又は多糖類のいずれに対しても外来性ポリペプチドを用いることなく、外来性リガンドを用いることなく、外来性核酸を用いることなく、抗体又はその断片を用いることなく、或いは受容体、細胞表面分子、細胞外マトリックス分子、細胞表面抗原、細胞マーカ分子又は多糖類のいずれに対しても外来性リガンドを用いることなく標的化される。
【0019】
リンパ節におけるDCを含むAPCに標的化するためには、本明細書において証明されるように、リンパ管に容易に吸収され、流入領域リンパ節に保持され得る送達媒体を設計することが有益である。送達媒体は、例えば、治療薬、例えば、抗原又は免疫抑制薬を送達する粒子のような物質を指す。リンパ系の主たる役割は、微小循環の小さいが、重要な成分としての間質空間からの粒体及び微粒子の吸収である[20〜23]。
【0020】
リンパ系を調査するためにリポソーム及びポリマー粒子を使用する他のインビボリンパ標的化実験により、粒径は、間質空間からのリンパ吸収のための要因であり得ることが示された[21、24〜29]。170nmより大きいリポソームは、低いリンパ吸収を示し、注入部位に残留したのに対して、40〜70nmの範囲の粒子は、リンパ管への吸収が大きかった[25]。
【0021】
カルボキシル化ポリスチレン粒子を使用する1つの当該研究により、40〜50nmの狭い範囲の粒径は、DCによって認識される危険信号であるため、この狭い範囲内の粒子のみが有益であり、その結果として、DCは、リンパ節でなく、皮膚の部位で活性化されることが教示されている[116]。このポリスチレンビーズの研究により、ビーズは、より小さい粒径(20nm)及びより大きい粒径(>100nm)より多く中間の粒径(40nm)でリンパ節に蓄積することが示され、40〜50nmがビーズについて使用されるべき粒径であることが教示された。より具体的には、この研究では、DC抗原DEC205によって示されるように、DCマーカに対して陽性である細胞には、非常に小さい粒子(20nm)及びより大きい粒子(100nm)が、40nmの粒子より有意に少なく蓄積することが見いだされた[116]。40nmのポリスチレンビーズは、皮膚の部位におけるDCの活性化及びリンパ節への移動を引き起こすため、40nmのビーズは、リンパ節常在DCに標的化することができないことが著者らによって教示されている。
【0022】
さらに、ポリスチレンビーズの研究により、DCがウィルスサイズの範囲を認識するように変化したため、ビーズサイズは、DCに対する危険信号であることが教示されている。したがって、ビーズサイズは、順調なDC標的化を調節し、正確にサイズ設定されたビーズが周辺のDCによって認識され、DCの活性化を引き起こす。この教示は、本明細書に記載されているDC活性化に対するより小さいナノ粒子(約40又は約35又は約25nm)の順調な使用と大きく異なる。この教示は、表面化学作用が、例えば、ヒドロキシル表面化学作用を利用して、危険信号としての補体を活性化するPLURONIC安定化PPSナノ粒子のように、危険信号であることを示す本明細書における結果とも異なる。さらに、本明細書における結果は、粒径を、DCサイズ認識ではなく、リンパ節標的化能力に関連づけるものである。例えば、25nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子は、インビボ注入後のDC及び順応T細胞免疫を活性化するのに、100nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子より優れていた。
【0023】
カルボキシル化ポリスチレンビーズは、少なくとも一部に、それらの便利な合成及びエマルジョン重合特性が狭く、調節可能なサイズ分布を与えるため、実験モデル系として使用された[116]。治療又は予防系としての使用に対する潜在的な短所が、ポリスチレンビーズに伴う。例えば、当該粒子を分解させ、体内から除去することができる生体経路が存在しない。対照的に、本明細書に記載されている生分解性の系は、例えば、飲食作用及び処理後に遭遇する酸化条件下で分解するPPSナノ粒子のように、インビボ環境に応答して、容易且つ効果的に可溶性ポリマーに分解する。ナノ粒子の分解は、有益であり得るが、補助剤としての使用に必ずしも必要なものではない。
【0024】
粒子表面と間質との相互作用は、リンパ吸収において役割を果たす別の要因であり得る[30]。リポソーム及び粒子をポリ(エチレングリコール)(PEG)及びPLURONICS等のその共重合体(ポリ(エチレングリコール)-bl-ポリ(プロピレングリコール)-bl-ポリ(エチレングリコール)を含む)のような親水性の層で被覆することによる立体安定化は、皮下注入の後のリンパ吸収の向上によって実証されるように、間質のタンパク質との非特異的な相互作用を低減することができる[21、27、31〜35]。これらの事実のすべてが、リンパ吸収の観点からの粒子の物理特性の重要性を指摘している。
【0025】
しかし、小さい粒子ほど容易に吸収されるが、リンパ節から容易に流出される。したがって、効率的なリンパ吸収及びリンパ節滞留の両方を達成することが重要である。よって、本明細書に記載されている実施例及び実施態様から明らかなように、一定のナノ粒子実施態様は、吸収及び滞留の両方を扱う。例えば、ナノ粒子の粒径に関して、注入された70nmのリポソームのわずか1〜2%が、注入後12時間を過ぎてもリンパ節に滞留すること[30]及び大きいリポソーム(>70nm)のリンパ節滞留は、より小さいリポソームの滞留より効率的である[24、29]ことがリンパ系の調査によって示された。これは、リンパ節マクロファージが、より大きい粒子をより効果的に貪食することに一部起因するように思われる。リポソームをPEGのような立体保護剤でコーティングすると、マクロファージによる貪食が低減されることが従来から想定されているが、当該コーティングは、リンパ節滞留に有意に影響しないことが示された[36]。リンパ節で貪食された粒子は、主としてマクロファージによって貪食されることも従来から想定されている[21、27、29、30、32、36、37]。カルボキシル化ポリスチレンナノ粒子については、インビボでDCに吸収される20nmのナノ粒子は、40nmのナノ粒子よりはるかに少ないことが判明した[116]。したがって、薬物をマクロファージに吸収させるために送達するのに加えて、DCを含む他のAPCに吸収させるために薬物をリンパ節に送達することが有利である。以下に示すように、本発明の粒子の一定の実施態様は、実際、少なくとも20nm程度の小さい粒径でもAPC及び/又はDCに吸収される。
【0026】
抗原吸収に続いて、DCを成熟させ、次に細胞媒介免疫を誘発するのに炎症サイトカインのような強力な生物的「危険信号」(すなわちCD40リガンド)が必要である[5、12、38]。しかし、当該信号に先行することが有利であり得る。実際、いくつかの実施態様において、従来の生物的「危険信号」、例えば、いくつかのポリペプチド、抗体、核酸配列の使用を回避する成熟刺激としてナノ粒子そのものが使用される。これらの結果は、インビボのナノ粒子内在化に続いて観察されたDCの成熟応答において明らかである。
【0027】
(ナノ粒子製剤)
本明細書に記載されているように、粒径は、リンパ節におけるナノ粒子吸収及び滞留に関連する。ナノ粒子のリンパ吸収、リンパ節滞留並びにリンパ節内及び細胞集団間における局在化は、本明細書に記載されている。粒径及び表面特性のようなナノ粒子の特性は、矛盾する効果を有し得るため、従来の手法を用いる1つの課題は、効率的なリンパ吸収及びリンパ節滞留の双方を得ることである。概して、小さい粒子は、大きい粒子よりリンパ吸収が良好であるが、リンパ節滞留が劣る。直径約5nmから約100nmのナノ粒子が好ましい。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80nmが考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。約5から約100nmの平均直径を有する粒子の集合体でナノ粒子を製造することができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、約10から約70nmが考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。粒子集合体の平均直径付近の変動係数(標準偏差を平均粒径で割った値)を約50、約35、約20、約10又は約5nm未満にできるように、当該粒子の集合体の粒径分布を調節することが可能である[39]。すべての範囲及び明記された範囲内の値が考えられることを当業者は直ぐに理解するであろう。
【0028】
物理特性は、リンパ節における吸収及び滞留後のナノ粒子の有用性にも関連する。これらは、剛性及びゴム弾性のような機械特性を含む。いくつかの実施態様は、全身(標的又は免疫ではない)送達のために最近開発され、特徴づけられたPPS-PEG系のようなPEGのように、被覆層、例えば親水性被覆性を有するゴム状コア、例えばポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)コアに基づく[39、40]。ゴム状コアは、ポリスチレン又は金属ナノ粒子系のような実質的に硬質のコアと異なる。ゴム状という用語は、天然又は合成ゴムの他に一定の弾力性材料を指し、ゴム状は、ポリマー技術分野の当業者に良く知られている用語である。例えば、架橋PPSを使用して、疎水性のゴム状コアを形成することができる。PPSは、酸化条件下で分解して、ポリスルホキシド、そして最後はポリスルホンになって[41]、疎水性ゴムから親水性の水溶性ポリマーに変化する[39]ポリマーである。他の硫化物ポリマーも使用のために適用することができ、硫化物ポリマーという用語は、単量体単位の骨格に硫黄を有するポリマーを指す。使用できる他のゴム状ポリマーは、水和条件下でのガラス転移温度が約37℃未満であるポリエステルである。疎水性コアは、コアと被覆層が混合しない傾向にあるため、被覆層がコアから離れて広がるため、親水性被覆層に有利に使用できる。コアは、その上に層を有する粒子を指す。層は、コアの少なくとも一部を被覆する物質を指す。層を吸着又は共有結合することができる。粒子又はコアは、固体又は中空であってもよい。ゴム状疎水性コアを有する粒子によってより充填量の大きい疎水性薬物を担持できるという点で、ゴム状疎水性コアは、結晶性又は(ポリスチレンの場合のような)ガラス質のコアのような硬質の疎水性コアより有利である。
【0029】
別の物理特性は、表面の親水性である。親水性物質は、架橋されていないときに少なくとも1グラム毎リットルの水溶解度を有する。粒子を親水性ポリマーで立体的に安定化すると、非特異的な相互作用を抑えることによって間質からの吸収を向上させることができる。しかし、粒子のステルス性も強くなるため、リンパ節における食作用性細胞により内在化が抑制され得る。しかし、これらの矛盾する特徴をバランスさせるという課題は、解決されており、本出願には、リンパ節におけるDC及び他のAPCへの効果的なリンパ送達のためのナノ粒子の作製が記載されている。したがって、いくつかの実施態様は、親水性成分、例えば親水性物質の層を含む。好適な親水性物質の例は、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド、多糖類、ポリアクリル酸及びポリエーテルの1種又は複数種である。層内のポリマーの分子量を調整して、インビボの有用な立体阻害度、例えば約1000から約100000、さらにそれ以上の立体阻害度を得ることができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば10000から50000が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。例としては、エマルジョンとしての合成中に安定剤として使用されたPLURONICからPEG誘導される親水性表面を有する粒子が挙げられる。
【0030】
ナノ粒子は、さらなる反応のための官能基を含むことができる。さらなる反応のための官能基としては、求電子体又は求核体が挙げられる。これらは、他の分子との反応に便利である。求核体の例は、一級アミン、チオール及びヒドロキシルである。求電子体の例は、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、イソシアネート及びマレイミドである。例えば、PPS-PLURONICナノ粒子を例として、次いで、PLURONICをOVA/OVA257〜264/OVA323〜339誘導PLURONICで置換することを除いては、実施例1に記載されているように粒子を合成する。1.5%PLURONICの全量を使用する。タンパク質又はペプチドの接触をナノ粒子合成時の基本条件まで抑えるために、反応時間を2時間に短縮し、塩基を1:1の等モル比で開始剤-チオールに添加する。このスキームは、PEG官能化のための1つの例示的な方法にすぎない。連結されているタンパク質又はペプチドに応じていくつかの他の手法を利用することができる[111]。
【0031】
ナノ粒子は、補体活性化のための官能基又はモチーフを取り入れることもできる。好ましい官能基は、本明細書に記載されているように補体を活性化するのに特に効果的なヒドロキシルである。求核性の他の官能基は、C3においてチオエステルと反応することができる。本明細書において、ヒドロキシル化ナノ粒子表面は、リンパ節におけるDCを含むAPCに標的化するのに特に有用である。本明細書の実施例のPPSナノ粒子の場合は、ヒドロキシル基を末端とするPLURONICによる安定化によってヒドロキシル化を得た。これらのヒドロキシル基をメトキシ基に変換してヒドロキシ基をブロックすると、ナノ粒子が補助剤として十分に機能しなくなった。ヒドロキシル化ナノ粒子をC3-/-マウスで試験したところ、それらの補助剤効果は、著しく低下していた。これらの結果は、C3活性化の本明細書における実施例に記載の測定結果と合わせると、補体活性ナノ粒子によりDCを含むAPCに標的化することが特に有用であることを証明するものである。よって、いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、補体を活性化し、pH7.0〜7.4のカチオン、アミン、一級アミン、二級アミン、pH7.0〜7.4のアニオン、チオール、pH7.0〜7.4の双性イオンの1種以上を排除するためにOHのみに依存する。或いは、当該基は、ナノ粒子上に存在するが、1種以上の当該基を排除するのはナノ粒子上のポリマーの層である。或いは、ナノ粒子及び/又は層は、OHを除いてpH7.0から7.4のイオンを効果的に形成することが可能な基を有さない。
【0032】
官能基を効能の必要に応じて粒子上に配置することができる。1つの位置は、コアポリマー上、又はコア上の層であるポリマー上、そうでなければ粒子に結合されたポリマー上の側基若しくは末端基であり得る。例えば、特異的細胞標的化又はタンパク質及びペプチド薬物送達のために容易に官能化できる、ナノ粒子を安定化するPEGについて記載した例が本明細書に含まれている。
【0033】
生分解性ポリマーを使用して、ポリマー及び/又は粒子及び/又は層のすべて又は一部を製造することができる。生分解性は、自然発生的な加水分解、特定のアミノ酸配列を開裂させる酵素による化学的攻撃、或いは酸化の影響を受けやすい官能基を導入することによって分解するポリマーを指す。自然発生的に加水分解するポリマーは、官能基が溶液中の水と反応する結果として、7.0から7.4のpHに維持された水溶液においてインビトロで分解するであろう。本明細書に用いられている「分解」という用語は、(ポリエステルの場合のように)分子量の低下によって、又は(PPSの場合のように)疎水性基の親水基への変換によって、可溶性になることを指す。エステル基を有するポリマー、例えば、ポリラクチド及びポリグリコリドは、一般に、自然発生的に加水分解する。特定の酵素攻撃を受ける、例えば、コラゲナーゼ又はメタロプロテイナーゼによって分解する多くのペプチド配列が知られている。単に生体遊離ラジカル機構によって分解する配列は、特異的に分解されない。酸化の影響を受けやすい官能基を有するポリマーは、弱い酸化剤によって化学的に変化され、その試験は、10%過酸化水素で20時間にわたってインビトロで接触させることによって可溶化が増強している。例えば、PPSは、酸化の影響を受けやすいポリマーである[39]。
【0034】
代表的な系としてPPS粒子を使用して、ナノ粒子の製造及び使用方法を実証したが、代替的な物質を使用してもよい。概して、機能性粒子を製造する必要性に従って、粒子系の各成分の特徴を自由にうまく組み合わせることができる。例えば、小さい(例えば、約100nm未満又は約70nm未満である)ため、リンパ循環に入る他の粒子を効率的に使用してもよい。当該粒子にPEGの被覆層を任意で接合するか、或いは親水性ポリマーを導入してもよく、抗原、危険信号又はその両方を任意で接合してもよい。例えば、PEG含有ブロック共重合体を適切なサイズの分解性ポリマーナノ粒子に吸着させ、抗原を当該処理ポリマーの表面にさらに結合させることができる。別の例として、PEG含有ブロック共重合体を適切なサイズの無機ナノ粒子に吸着させ、抗原を当該処理ポリマーの表面にさらに結合させることができる。ナノ粒子コアの分解は、望ましいかも知れないが、必ずしも必要ではない。
【0035】
ポリ(エチレングリコール)及びPPSのAB及びABAブロック共重合体から形成されたミセルを含むミセル系も上記の特性と同様の有用な特性を示すことができる[100〜104]。当該共重合体を比較的高量、例えば約40%を超えるポリ(エチレングリコール)の分子片で形成すると、一定の条件下で球状ミセルが形成することが期待できる。これらのミセルは、小さく、例えば、リンパ進入のための上記のサイズを満たすことができ、PEGの被覆層を任意で接合するか、或いはPEG又は他のポリマーを導入して、同様の特性を達成することができる。さらに、ミセル表面において、それらを本明細書に教示されている抗原、危険信号又はその両方と連結させることができる。ブロック共重合体は、補体活性化のためにヒドロキシル基で終端することができ、このヒドロキシル基が補体結合のためにミセルナノ粒子表面でより容易に利用できるように、ヒドロキシル基に親水性のブロック末端を有するのが特に有利である。当該ヒドロキシル化表面を、補体を効果的に活性化するように構成することができる。特に有用な親水性ブロックは、ヒドロキシル基で終端するPEGである。ミセル形性ポリマー構造に加えて、ブロックサイズ及びブロックサイズ比を、多孔質構造を形成するように選択することができる。使用できるミセル製剤のいくつかの他の可能な化学組成も存在する[105〜108]。
【0036】
いくつかのポリマー系は、それ自体がナノ粒子であり、ナノ粒子という用語に含められる。例えば、デンドリマーは、10nmの範囲のナノ粒子であり得るポリマー類である[141]。これらのポリマーは、それらの表面に、例えば生体分子及び他の基に連結させるのに使用された多数の官能基を含む[142、143]。同様に、抗原をデンドリマー表面に連結させることが可能である。さらに、デンドリマー表面の官能基を例えばヒドロキシル化によって補体活性化のために最適化することが可能である。いくつかのデンドリマー・DNA複合体は、補体を活性化することが証明されている[144、145]。したがって、デンドリマーは、例えば、明確に開示されていることに矛盾しない範囲で引用により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2004/0086479号、同第2006/0204443号、米国特許第6,455,071号及び同第6,998,115号のような抗原結合及び補体活性化のために、本明細書に記載の技術を用いたリンパ標的化に応じて構成することが可能な興味深いナノ粒子化学作用を示す。
【0037】
一方、デンドリマーは、所定の環境におけるその成分ポリマーの可溶性に大きく依存し、その周囲の溶媒又は溶質、例えば、温度、pH、イオン含有量の変化に応じて、又はDCによる吸収後に著しく変化し得る。対照的に、デンドリマー又は他の単に分枝状のポリマー系より比較的安定した物理的寸法を有するナノ粒子は、保存目的に、又はそれに関連した活性若しくは生物活性として有用であり得る。例えば、親水性コロナを有する固体のコアは、その環境にコロナを一貫して提供する。よって、ナノ粒子のいくつかの実施態様は、デンドリマーでない粒子、又は固体のコアを有する粒子及び/又は架橋ヒドロゲルであるコアを有する粒子に依存する。PPS系ナノ粒子は、デンドリマーでなく、固体のコアを有する。
【0038】
(ナノ粒子による免疫治療)
使用に際して、当該ナノ粒子は、例えば、リンパ節のAPC、特にDCに標的化するための抗原及び薬物媒体として有用である。抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号をリンパ節のDCに送達する能力は、免疫治療の有用な手法である。リンパ節DC及び他のAPCにナノ粒子を効果的に標的化する能力は、抗原タンパク質及びポリペプチド並びに抗原コード核酸を送達するための方法を提供する。DCは、T細胞に対する抗原提示による細胞媒介免疫の開始に関与するため、この送達手法をいくつかのワクチン及び免疫治療用途に利用することができる。さらに、ナノ粒子は、診断ツール(例えば画像診断)、研究ツール(例えば、ALDRICHカタログで販売、又は顕微鏡を使用する視覚化に対応)又はインビトロ薬物送達又は視覚化(薬物又は画像化剤のインビトロのAPC及び/又はDC及び/又はマクロファージ吸収)として有用である。
【0039】
抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号を粒子に共有結合させること、粒子に吸着させること、粒子に充填すること、又は患者への同時導入のために粒子の集合体と混合することができる。共有結合のためのモチーフは、本明細書の他の箇所で論述されており、この場合にも適用され得る。作用物質と粒子とを所定の時間にわたって混合し、次いで、例えば遠心分離又は濾過によって粒子を混合物から物理的に分離することによって吸着を遂行することができる。例えば、混合物を注入し、分散力や対流力で成分を分離させることによって、投与前後にインビトロ又は体内で分離を行うことができる。充填を粒子合成中又は合成後に行うことができる。例えば、ミセルベースの重合のように吸着又は相分離によって取り込まれる作用物質の存在下で粒子を重合することができる。例えば、粒子を膨張させる、又は作用物質の迅速な拡散を可能にする第1の溶媒中で粒子を作用物質に接触させ、次いで粒子を収縮させる、又は作用物質の拡散を停止又は緩慢化する水溶液に粒子を戻す第2の溶媒に粒子を接触させること、例えば、有機溶媒に親水性薬物を充填し、粒子を水溶液に蓄積することによって、合成後の充填を必要に応じて遂行することができる。例えば、抗原及び/又は薬物及び/又は危険信号の溶液を含むシリンジに粒子を導入し、それらを患者に共注入することによって、同時導入のための混合を遂行することができる。
【0040】
(ナノ粒子及び免疫抑制薬による免疫治療)
免疫抑制は、臨床移植(例えば同種移植)の状況及び自己免疫疾患(例えば多発性硬化症)において大いに必要とされる免疫治療の重要な形態である。コルチコステロイド(例えばシクロスポリンA)及びラパマイシンのような免疫抑制薬の使用は、これらの免疫障害の治療に大きな進歩をもたらした[122]。T細胞は、一般に、炎症性サイトカイン、主としてIL-2及びTNF-γに対する遺伝子を阻害することによって作用するため、T細胞集団を減少させる免疫抑制薬の重要な標的であると考えられている。免疫抑制を生じさせるための別の手法は、T細胞受容体CD28及びCD40をブロックするための抗体の使用である[123]。これらの受容体をブロックすると、DC上に位置する共刺激性分子による活性が不十分になるため、T細胞増殖を効果的に防ぐ耐性効果が生じる。しかし、コルチコステロイド又はブロッキング抗体による治療は、非常に非特異的であり、他の感染を退治する免疫系の能力を低下させるなどの副作用をもたらし得る。したがって、より特異的な免疫抑制のための方法、すなわち抗原特異的な耐性を誘発する方法は、免疫治療における格別の進歩である。
【0041】
最近になって、DCは、免疫抑制のための標的になり得ることが見いだされた。DCは、T細胞免疫を刺激する能力に加えて、T細胞耐性を調節することも可能である[124]。デキサメタソン(Dex)は、同種移植片の拒絶を防止するといった用途において免疫抑制に利用される合成グルココルチコイドである。従来、グルココルチコイドは、専らT細胞に対して作用すると考えられていた。しかし、Dexは、DCに対して作用して共刺激性分子の発現及び炎症性サイトカインの分泌を下方制御できることが最近の研究によって証明された[125、126]。これは、耐性の誘発にDCを利用する可能性を実質的に暗示している。共刺激性分子の非存在下で抗原をT細胞に提示するDCは、提示抗原に対するT細胞アネルギー又は耐性を誘発する。
【0042】
免疫抑制薬をナノ粒子で送達することができる。いくつかの実施態様において、それらのサイズ及び間質流との相互作用及びリンパへの進入により、抗原をリンパ節DCに効果的に標的化することができる。抗原の送達及び同時にDC活性化を防止するための免疫抑制薬としての送達は、耐性をもたらすことになるであろう。そのような場合、補体を活性化させないナノ粒子が有益であり得る。主要な免疫抑制薬のいくつかは、疎水性であり、ナノ粒子の疎水性PPSコアに充填できるグルココルチコイドである。デキサメタソン、タクロリムス及びシクロスポリンAのような特定のグルココルチコイドは、共刺激性分子(すなわちCD80及びCD86)の発現並びに炎症性サイトカイン(すなわちIL-6及びTNF-α)の分泌を下方制御することによってDCの成熟及び同種刺激能力を阻害することが実証されている[125〜131]。
【0043】
免疫抑制薬を本明細書に記載のナノ粒子に充填し、患者に導入することができる。ナノ粒子を特異的にリンパ系及びリンパ節に標的化し、APC及び/又はDCによる吸収のために特異的に標的化することができる。疎水性成分又はコアを有するナノ粒子を使用して、疎水性薬物又は他の薬物を有利に送達することができる。さらに、抗原を薬物と組み合わせて送達することができる。また、抗原を例えば共注入、吸着又は共有結合によってナノ粒子と結合させることができる。
【0044】
例えば、1つの方法は、疎水性免疫抑制薬(例えばDex)を、メトキシ末端PLURONIC(ヒドロキシル化されておらず、補体を活性化しない)PPSナノ粒子で安定化された粒子のコアに充填し、抗原を表面に接合することである。したがって、Dex又は他の免疫抑制薬を抗原とともにリンパ節のDCに送達することによって、共刺激性分子を下方制御しながらも、抗原を送達し、次に抗原特異的耐性を生じさせることが可能である。したがって、ナノ粒子、例えばメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSを、抗原結合と免疫抑制薬充填と組み合わせて利用して、自己免疫疾患及び移植拒絶の治療のような用途のための耐性を誘発することができる。
【0045】
(ナノ粒子及び抗原による免疫治療)
タンパク質抗原を内在化させるAPCは、抗原ペプチドエピトープを処理し、MHC-I及びII経路を通じて提示することが可能である。1つの免疫治療手法は、1つ以上の抗原をナノ粒子に共有結合させるか、或いはそれらを会合させることを含む。抗原は、免疫系によって認識され得るグリコシル化を伴わない、又は伴うポリペプチドであり、一般には、少なくとも約3つのアミノ酸の長さを有する。抗原をDNA又はRNAなどの核酸配列を介してコードすることもできる。例えば、DNAは、病原に存在するポリペプチド抗原をコードする場合は抗原をコードすることが可能である。DNAのAPCの核への送達に続いて、抗原ポリペプチド抗原の発現が生じMHCI上にそれが提示される。全タンパク質を使用できるが、抗原断片も使用することができるため、約3から約20の残基を有するポリペプチドを使用することができる。すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば、約10未満の残基が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。ポリペプチドを必要とせずに補体系を直接活性化するナノ粒子を使用できるため、補体系を活性化しない抗原を使用することができる。
【0046】
抗原を多くの異なる疾患に対する免疫治療に使用することができる。1つの具体的な用途は、腫瘍免疫治療の用途である。有用な抗原が腫瘍細胞上に表示されるが、健康な細胞上に表示されない。カスパーゼ-8、MAGE-1、チロシナーゼ、HER-2/neu及びMUC-1などのいくつかの抗原が特定の種類の腫瘍に特異的なものとして識別されている[112]。このことを念頭に置くと、T細胞を活性化して、腫瘍を攻撃する手段として当該抗原をリンパ節のDCに送達するためにナノ粒子を使用することができる。別の用途は、感染性疾患に対する予防である。抗原との接触は、当該疾患に対する抵抗を生み、様々な状態に対する予防接種として作用することができる。
【0047】
(ナノ粒子及び核酸による免疫治療)
いくつかのナノ粒子集合体は、ナノ粒子及び核酸、例えば、抗原をコードするDNA又はRNAを含むことができる。さらに、これらは、発現カセットを含み、プロモータ又はエンハンサを含み、ベクターの一部となり、或いはこれらの技術分野で知られている遺伝子送達モチーフを取り入れることもできる(例えば、明確に開示されていることに矛盾しない範囲で引用により本明細書に組み込まれている米国特許第7,16,0695号、同第7,157,089号、同第7,122,354号、同第7,052,694号、同第7,026,162号、同第6,869,935号参照)。さらに、該配列は、他の治療用生体分子をコードすることができる。DNAなどの核酸抗原を抗原及び他の作用物質について本明細書に記載されているナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化PPSナノ粒子の表面)に結合させることができる。そして、例えば、静電吸着、ポリマー-ビオチン化を通じて、DNAポリマー結合を行うことができる[139]。本明細書における使用に合わせて構成できる、ポリマーをDNAに結合するためのいくつかの他の化学結合方法が存在する[140]。本明細書に記載されているナノ粒子を使用することによって、リンパ節DCを含むAPCは、抗原遺伝子発現のために標的化されるとともに、活性化されて、適切なT細胞刺激を確保することができる。
【0048】
(抗原結合)
抗原を求核又は求電子官能基に結合させるための様々なスキームが利用可能である。概して、当該スキームを薬物又は危険信号の結合に適宜適応することができる。
例示を目的として、実施例のPPSナノ粒子におけるPLURONICに対する抗原の結合を示す。PLURONIC(PEG及びPPGのブロック共重合体)表面をタンパク質又はペプチドで官能化することによって、PPSナノ粒子に対する抗原結合を達成することができる。PLURONIC F127(Sigma)、ジビニルスルホン(Fluka)、水素化ナトリウム(Aldrich)、トルエン(VWR)、酢酸(Fluka)、ジエチルエーテル(Fisher)、ジクロロメタン(Fisher)及びセライト(Macherey Nagel)を受け取った状態で使用した。反応をアルゴン(Messer)下で実施した。1H NMRを重水素化クロロホルム(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を0.0ppmにおける内部標準テトラメチルシラン(Armar)信号に対して相対的にppmで示す。15g(1.18mmol)のPLURONIC F-127を400mlトルエンに溶解させた溶液を、Dean-Starkトラップを使用して4時間にわたって共沸蒸留によって乾燥した。溶液を氷浴で冷却し、0.283g(11.8mmol)水素化ナトリウムを添加した。反応混合物を15分間にわたって撹拌し、3.55ml(35.4mmol)ジビニルスルホン(Sigma-Aldroch)を迅速に添加した。室温にて暗所で5日間撹拌した後に、1.35ml(23.6mmol)の酢酸を添加することによって反応をクエンチした。セライトで濾過し、濾液を減圧下で小容量まで濃縮した後に、生成物を1リットルの氷冷ジエチルエーテル中に析出させた。固体を濾別し、最小量のジクロロメタンに溶解させ、氷冷ジエチルエーテルに全部で4回析出させた。ポリマーを真空下で乾燥させて、6.0gとし、OVA連結前に-20℃にてアルゴン下で保存した。NMRは、ビニルスルホンが存在し、官能化度が88%であることを示した。δ = 1.1 (m、CH3、PPG)、3.4 (m、CH、PPG)、3.5 (m、CH2、PPG)、3.6 (PEG)、6.1 (d、CHcis=CH-SO2)及び6.4 (d、CHtrans=CH-SO2)、6.85(dd、CH2=CHSO2-)。
【0049】
次いで、ペプチド又はタンパク質抗原をPLURONICビニルスルホン(VS)に連結させることができる。DC抗原提示を調査するためのモデルタンパク質は、オバルブミン(OVA)である。OVAは、それぞれMHCI及びII経路を通じてDCによって処理される抗原ペプチドOVA257〜264及びOVA323〜339を有する。ペプチド合成機を使用することによりOVA257〜264及びOVA323〜339をシステイン残基に連結させる。次いで、そのシステインチオールとの反応によってペプチドをPLURONIC-VSに連結させる。18mgのペプチドをpH8.5で6.43mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液に溶解させて、2mM溶液を得る。60mg(1.68mM)のPLURONIC-VSを添加する。混合物を3時間撹拌し、Ellmanによるチオール検出のためのアリコットを15〜30分毎に採取する。pH8.5で4mgのEllman試薬(5,5'ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸))を1mlの0.1Mリン酸ナトリウム及び1mMのEDTAにPH8.5にて溶解させる(スルフヒドリルを酸化できる二価金属イオンをキレート化する)。15μlを1.5mlの0.1Mリン酸ナトリウムと混合し、反応混合物の30μlをpH7にて120μlのリン酸ナトリウムでクエンチする。混合し、室温で15分間インキュベートした後に、412nmにおける吸収を測定する。チオールの量をc=Abs/E*D(E(消光率)=14150M-1、Dは希釈係数である)で計算する。PLURONICを、6〜8kDa MWCOの膜を通じて水に対して透析し、溶液を凍結乾燥する。1H-NMRで確認されるように、ビニルスルホン基が完全に変換し、収率は約88%である。PLURONIC-VSに対するOVAの結合を、遊離システインチオール及びリシンアミンを利用することにより同様の方法によって実施する[109〜111]。次いで、PL-VS-OVAペプチド/タンパク質をナノ粒子合成に使用するまで-20℃で保存する。
天然ポリペプチド抗原に対して外来性のアミノ酸との共有結合、天然抗原に対して内性のアミノ酸との共有結合、及び生理化学的吸着等を含む他の手段によって、抗原をナノ粒子に連結させることができる。
【0050】
(ナノ粒子及び危険信号による免疫治療)
他の免疫治療手法は、危険信号の適用を含む。本明細書における結果は、PLURONIC安定化補体活性(つまりヒドロキシル化)PPSナノ粒子が、共刺激性分子CD86及びCD80の発現の増強によってわかるように、DCを成熟させる危険信号又は刺激の機能を与えることを示している。ナノ粒子は、非補体危険信号又は成熟信号を必要としないが、場合によっては、当該信号を追加することが、免疫応答の発達にさらに役立つこともある。抗原吸収後、炎症性サイトカイン(すなわち、CD40リガンド)及び/又はToll様受容体(例えば、LPS及びCpG DNA)の活性体などの危険信号は、DCを成熟させ、続いて細胞媒介免疫を誘発する必要があることを他のDC標的化についての研究によって示唆された[113〜115]。危険信号は、遺伝子NF-κBの上方制御をもたらし、それが次にAPCの成熟及び炎症性サイトカインの放出をもたらす生体分子として識別される。そのような場合、例えば、タンパク質又はペプチド結合について既に記載されたプロトコルに従って、CD40リガンド、GM-CSF又はToll様受容体活性体などの危険信号サイトカインを(例えば、コア若しくは表面層又は親水性ポリマー層において)ナノ粒子に結合させることが可能である[109〜111]。さらに、ナノ粒子を、その表面に結合された抗原及び/又は非補体危険信号を用いて合成することができる。
【0051】
(抗体生成のための免疫治療)
いくつかの実施態様は、抗原を患者に導入して、患者の中で抗原に対する抗体を産生することに向けられる。例えば、このようにして、予防接種又は抗腫瘍治療を遂行することができる。或いは、当該手法を用いて、例えば動物において科学的試薬として使用される抗体を産生することができる。
【0052】
したがって、ナノ粒子と抗原の組合せを患者に導入することができる。所定時間(例えば1〜30日)後、患者からサンプルを採取し、抗原に対する抗体を測定する。さらなるサンプル及び測定値を定期的に採取できる。抗体力価が低すぎる場合は、ナノ粒子及び抗原を再導入し、さらなる測定を行い、必要に応じて処理を繰り返して、抗体力価を所望のレベルにすることができる。その組合せを数回投与することができる。
【0053】
(実験結果の説明)
免疫治療のための用途を含めて、抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)への生分解性ナノ粒子の送達について説明する。本明細書の詳細な実施例では、リンパ節濃度におけるDCへの直径20、25、45及び100nmのポリ(エチレングリコール)安定化ポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)ナノ粒子の送達について説明する。詳細な実施例におけるナノ粒子は、ポリ(エチレングリコール)の親水性コロナに囲まれたPPSの架橋ゴム状コアを含む。PPS領域は、疎水性薬物を担持することが可能であり、酸化環境内で可溶性ポリマーに分解する。グリコペプチド(本明細書ではグリコシル化ポリペプチドと定義される)抗原を含むペプチド又はタンパク質抗原及び核酸コード化抗原をナノ粒子表面に結合させることができる。20nmの粒子は、間質注入後に最も容易にリンパに吸収されたが、20及び45nmの粒子は、リンパ節における有意な残留性を示し、注入後24、72、96及び120時間目に一貫した強い存在を示した。ナノ粒子は、外来性標的化リガンドを使用することなく、40〜50%までのリンパ節DC(及びAPC)によって内在化され、内在化の部位は、注入部位でなく、リンパ節に存在していた。24時間目に対して96時間目にナノ粒子含有DC(及び他のAPC)に増加が見られ、これらの細胞のリンパ節への浸透が証明された。ナノ粒子粒径及び表面化学作用の双方が、インビボ注入後のDC成熟に影響を与えることが判明した。
【0054】
合成された基本的なPPSナノ粒子、すなわちPLURONIC(ポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコールのブロック共重合体)で安定化されたPPSナノ粒子コアは、ナノ粒子が非常に小さい場合に、成熟マーカCD86、CD80及びCD40の発現の増加によって示されるように、ナノ粒子のインビボ注入後にDCを活性化することが判明した。25nmのナノ粒子は、インビボ注入後にDCを広範囲に活性化したのに対して、100nmのナノ粒子は、活性化しなかった。第2のナノ粒子表面化学作用、すなわちメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子コアを利用した場合は、非常に小さいナノ粒子でさえもインビボ注入後にDCを活性化しなかった。PLURONIC安定化ナノ粒子は、補体を効果的に活性化することが証明されたのに対して、メトキシ末端PLURONICで安定化されたナノ粒子は、補体を活性化するのに効果的でなかった。したがって、ナノ粒子補体活性化は、これらのナノ粒子との接触後にDC活性化を誘発した。
【0055】
ナノ粒子サイズ及び表面化学作用の双方が、インビボ注入後の順応免疫に影響を与えることが判明した。抗原をPLURONIC安定化ナノ粒子の表面に連結させると、ナノ粒子が非常に小さい場合にのみ抗体形成を強く誘発することが判明した;25nmのナノ粒子は、100nmのナノ粒子より抗体形成をはるかに強く誘発した。第2のナノ粒子表面化学作用、すなわちメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子コアを利用した場合は、非常に小さいナノ粒子でさえもインビボ注入後に強い抗体形成を誘発しなかった。さらに、補体タンパク質3がノックアウトされたマウス(c3-/-マウス)に25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子を注入すると、これらのナノ粒子は、抗体形成を強く誘発しなかった。したがって、詳細な実施例では、好適なサイズ、例えば20〜45nmのナノ粒子は、免疫治療用途に対する可能性を有する;例えば、リンパ節におけるDCに特異的に標的化し、これを活性化するのに該ナノ粒子を使用することができる。さらに、これらのナノ粒子が、PLURONICによる安定化によって得られるような、補体を活性化する表面化学作用を有する場合は、抗原担体及び順応免疫誘発補助剤としての機能に対する強い可能性を有する。小さい粒径(例えば20〜45nm)と補体活性化の特殊な組合せは、補助剤としてワクチン製剤において貴重である。
【0056】
したがって、それらの実施例は、ナノ粒子がリンパ節におけるAPC、特にDCへの標的化抗原及び薬物送達に使用できることを示している。この手法の簡潔さは、サイズを調節することによって、ナノ粒子をリンパに効果的に吸収するとともに、リンパ節に(示されるように少なくとも5日間)滞留させることができ、特異的な外来性標的化リガンドを使用しないことである;それらは、節常在DC及び他のAPC(例えばマクロファージ)によって効果的に内在化される。約45nm又は約100nm程度の大きなナノ粒子をこの手段によってリンパ及びリンパ節に効果的に標的化することはできない。また、約40から約50%までの常在リンパ節DCがナノ粒子を内在化させることが証明され、この送達媒体の効果がさらに証明される。また、リンパに効果的に標的化されるようなサイズ範囲のナノ粒子に接触させた後に、それらのナノ粒子が補体を活性化すると、DCは、より成熟し、T細胞依存性順応免疫を誘発することによって応答することが証明された。これは、補体カスケードを抗原提示補助製剤における危険信号として使用することの有効性を明確に証明するものである。(投与後に効果的にリンパに入るような)小さいサイズと(DCを含むAPCの成熟を刺激するような)補体活性化との組合せによって、T細胞依存性体液(Ab力価による)及び細胞(T細胞増殖によるT細胞記憶の測定及びELISPOT測定による)の双方において、強い順応免疫応答を誘発することが可能である。小さいサイズと補体活性化のこの特殊な組合せは、免疫治療において非常に貴重である。
【0057】
実施例1では、ナノ粒子を製造するためのエマルジョン重合技術について説明する。これらの技術を様々なモノマー/ポリマーに適用して、好適な粒子を製造することができる。実施例2は、PLURONICの改質に関し、本明細書における他のポリマーの改質に広く適用可能であり、具体的な化学構造に対応して変更が加えられる。
【実施例】
【0058】
(実施例1:ナノ粒子)
他の箇所に記載されているように、直径が20、45及び100nmのPPSナノ粒子を逆エマルジョン重合によって合成した。本明細書に用いられている「エマルジョン重合」という用語には、逆エマルジョン重合が含まれ、「エマルジョン」という用語には、逆エマルジョンが含まれる[39]。手短に述べると、PEGブロック共重合体乳化剤、PLURONIC F-127(Sigma-Aldrich(スイスBuchs))及びプロピレンスルフィドモノマーを一定撹拌しながら超純粋ミリQ水に添加することによって、エマルジョンを作製した。他の箇所に記載されているように保護された開始剤ペンタエリスリトールテトラチオエステルを合成し[39]、個別のフラスコ内で、0.20mLの0.5Mナトリウムメチレート溶液と撹拌下で10分間混合することによって脱保護した。脱保護に続いて、開始剤をモノマーエマルジョンに添加し、5分後に、60μlの塩基ジアゾ[5.4.0]ビシクロウンデカ-7-エン(DBU)を反応物に添加し、不活性雰囲気下で24時間連続的に撹拌させた。次いで、ジスルフィド架橋を行うために、ナノ粒子を空気に接触させた。
【0059】
超純粋ミリQ水に対する12〜14kDa MWCO膜(Spectrum Laboratories(カリフォルニア州Rancho Dominguez))による2日間の反復透析によって、残留するモノマー、塩基又は遊離PLURONICからナノ粒子を精製した。動的光散乱計測器(Malvern(英国Worcestershire))を使用することによってナノ粒子粒径分布を測定した。1mg/mlのナノ粒子溶液における6-ヨードアセトアミド-フルオレセイン又はAlexa Fluor 488マレイミド(Molecular Probe(オレゴン州Eugene))を、ナノ粒子上に残留する反応性チオールに添加することによって蛍光標識を達成し、次いで6時間にわたって暗所で撹拌した。次いで、ナノ粒子をさらなるジスルフィド架橋のために空気に接触させた。5mM PBSに対して、25kDa MWのカットオフ膜を使用して1日間反復透析を行うことによって遊離ヨードアセトアミドーフルオレセイン又はAlexa Fluorマレイミドを除去した。
【0060】
(実施例2:メトキシ末端PLURONICの合成)
【化1】
PLURONIC F127(Sigma)、ヨウ化メチル(Fluka)、水酸化カリウム(Fluka)、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Riedel de Haen)、無水硫酸ナトリウム(Applichem)、塩化ナトリウム(Sigma)、ジエチルエーテル(Fisher)及びジクロロメタン(Fisher)を受け取った状態で使用した。0.025%のBHT(Acros)で安定化されたテトラヒドロフランを使用前に分子篩で乾燥させた。アルゴン(Messer)雰囲気下で反応を実施した。透析には、分子量カットオフ3400の再生セルロース管(Spectrapor)を使用した。1H NMRを重水素化ジメチルスルホキシド(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を2.5ppmにおける残留溶媒信号に対して相対的にppmで示す。
【0061】
10.0g(0.79mmol)のPLURONIC F127を100mlのTHFに溶解させた溶液に対して、2.99g(53.3mmol)の微粉砕水酸化カリウム及び988μl(15.9mmol)のヨウ化メチルを添加し、暗所で19時間にわたって混合物を撹拌した。透明溶液をデカントし、3.94gのチオ硫酸ナトリウム五水和物、100mlの塩化ナトリウム飽和水溶液及び100mlのジクロロメタンを添加する。混合物を激しく撹拌し、分離漏斗に移した。層を分離させ、水相をジクロロメタン(2×100ml)で抽出した。有機分を混合し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。固体を最小量の再蒸留水に溶解させ、4500mlの水に対して1日間透析した。透明な水溶液を塩化ナトリウムで飽和させ、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物をソックスレー抽出器にてジエチルエーテルで6時間抽出して、減圧下で乾燥させた後に、9.25gの白色固体を得る。4.6ppmにおいてOH基が存在せず、3.2ppmにおいてOCH3基が存在することがNMRによって示された。δ = 1.1 (d、CH3、PPG)、3.2 (s、OCH3、PPG)、3.3 (m、CH、PPG)、3.4 (m、CH2、PEG)、3.5(m、PEG) 。
【0062】
(実施例3:動物)
他に指定がなければ、生後6〜9週間で体重20〜30gのBALB/cマウスをこの研究に使用した。すべてのプロトコルは、スイスの法律に従うVeterinary Authorities of the Canton Vaudによって承認されたものである。10mg/kgの塩酸ケタミン及び1mg/kgのキシラジンの皮下注入によって麻酔を送達した。CO2窒息によってマウスを安楽死させた。
【0063】
(実施例4:顕微リンパ管造影)
皮膚への間質注入の後にナノ粒子の相対的な吸収特性を測定するために、既に記載したように、尾の先端への一定圧力注入によって蛍光顕微リンパ管造影を実施した[43〜45]。マウスの尾を除毛し、37℃の体温を維持するための加熱パッドを備えた顕微鏡ステージ(Axiovert 200M、Zeiss)にマウスを配置した。蛍光PPSナノ粒子(直径20、45又は100nm)を無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた20mg/ml溶液をカテーテルに導入した;カテーテルに取りつけられた30ゲージニードルを尾の先端から約1mmの箇所に挿入し、活栓を開いて、40mmHgの一定圧力で流動を開始させた。ナノ粒子溶液の流量(管における遠上流の泡によって監視した)は、およそ20mm3の組織に対して平均0.1μl/分(注入箇所から見える容量から概算した)或いは約5μl/g/分とした。目に見える膨張は、観察されなかった。尾に沿う連続的な画像を一定の接触時間に収集した。ナノ粒子の粒径毎に実験を3回繰り返した。
【0064】
マウスの尾の蛍光顕微リンパ管造影を用いて、直径20、45及び100nmのPPSナノ粒子のリンパ吸収の評価を行った。20nmの粒子の注入に続いて、90分後に六角形のリンパ毛管網が明確に見えるようになり、注入部位から均一に充填された(図1a)。対照的に、45nmの粒子の流入後は、非常にかすかなリンパ網しか観察されず(図1b)、100nmの粒子ではリンパ網をほとんど見ることができず(図1c)、低い吸収を示していた。巨大分子/タンパク質/粒子の毛細血管への漏れの粒径の上限は、約3.5nmであることが良く知られている[42]ため、我々の最も小さい20nmの粒子の血管への漏れは事実上ゼロである。この方法により、20nmの粒子は、45nm及び100nmの粒子と比較して、間質空間からリンパ毛管により容易に吸収されることが定量的に確認される。
【0065】
(実施例5:リンパ節におけるナノ粒子分布の評価:小さいナノ粒子(例えば20〜45nm)
のリンパ節滞留)
リンパ節滞留の評価を行うために、20μlの20mg/ml蛍光PPSナノ粒子(直径20、45及び100nm)を、30ゲージニードルを通じてマウスの尾の先端又は前足蹠にボーラスとして注入した。20μlのPBSを注入することによって対照を実施した。注入部位で炎症は観察されなかった。24、72、96又は120時間目に、マウスをCO2窒息によって安楽死させた。尾及び脚リンパの排液を行う仙骨及び腰部リンパ節、前足蹠部リンパの排液を行う鰓及び腋窩リンパ節を除去し、フラッシュ凍結し、10μmの切片に凍結裁断し、マウスに対する抗体CD3e(Pharmingen(カリフォルニア州San Diego))、CD45R(Caltag(カリフォルニア州Burlinhgame))、CD68(Serotec(ドイツDusseldorf))、Dec-205(Serotec)及びCD31(Pharmingen)で免疫染色し、T細胞、B細胞、マクロファージ/DC、DC及び内皮細胞をそれぞれ標識した。Alexa Flour 594nm(Molecular Probes)抗体を用いて二次的な検出を実施した。リンパ節切片を蛍光(Axiovert 200M、Zeiss)及び共焦点レーザ走査顕微鏡(LSM 510 Meta、Zeiss)で画像化した。
【0066】
ナノ粒子及びリポソームのリンパ節滞留時間が、リンパ系の研究を目的として何人かの他の研究者によって調査され、それらは、典型的には、注入後6〜52時間の範囲の時点に焦点をおいていた[31〜34、36]。本明細書に報告された実施例では、120時間までのナノ粒子のリンパ節滞留時間が記載され、20nmの粒子が、20μlの皮内のボーラス注入から24、72、96、120時間後にリンパ節において定量的に一貫したレベルで存在することが示された(図2)。45nmのナノ粒子もすべての時点においてより低量であるがリンパ節に存在していたのに対して、100nmのナノ粒子は、いずれの時点においてもリンパ節に存在するのが見られなかった(図2)。したがって、図1の結果と相俟って、これらのデータは、20〜45nmがリンパ吸収及びリンパ節滞留の双方に対して良好なPPSナノ粒子粒径範囲であり、20nmが最適であるのに対して、100nmの粒子は、一定圧力注入による間質からの効率的なリンパ吸収にとって大きすぎることを示している。これは、70nmを超えるリポソームがたいてい注入部位に残留することを示した先の試験と一致する[24、30]。
【0067】
PPSナノ粒子がリンパ節内に蓄積した様々な免疫細胞に関する具体的な位置の評価を行った。染色結果は、T及びBリンパ球のための特定の領域を容易に見ることができる既知のリンパ節構造と一致していた[2]。T細胞は、節の中央領域に集中しているのに対して、B細胞は、外部の膜に向かって位置する胚中心にしばしば見られる。リンパ節に存在する他の主要な細胞型は、APC又はMHCII+細胞、すなわちDC及びいくつかのマクロファージであり、それらの位置は、しばしばより分散されている。図3は、20nm粒子の皮内注入の後の同一リンパ節の連続した部分を示す。ナノ粒子は、T細胞又はB細胞領域に存在していなかった(図3a、b)。しかし、ナノ粒子とマクロファージ及びDC、すなわちCD68+細胞の有意な共存が認められた(図3c)。
【0068】
リンパ節に送達されたリポソーム及びナノ粒子はそこのマクロファージによって一次的に貪食されることが一般的に想定されていた[21、27、29、30、32、36、37]。しかし、これらの技術分野において、抗原を吸収することが可能な未成熟DCもリンパ節に存在することが理解されていなかった[15、16]。PPSナノ粒子送達では、(膜間タンパク質であるが、細胞内でも発現される[47〜50])CD68に対する免疫染色により、マクロファージ及びDCがPPSナノ粒子を内在化させたことが確認された(図4a)。CD68+細胞がマクロファージであるか、DCであるか、又はその両方であるかをさらに判断するために、リンパを極めて特異的なDC受容体Dec-205に対して染色した[4、38、51〜56]。Dec-205+細胞及びそれらのナノ粒子との共存(図4b)は、ナノ粒子を貪食するリンパ節における有意な割合の細胞が実際にDCであったことを証明している。これは、最も強力なAPC型-DCを含むAPCを刺激するために抗原をリンパ節に送達するのに有利である。
【0069】
(実施例6:リンパ節細胞の単離及び染色)
既に記載したプロトコルに従ってリンパ節細胞を単離した[46]。手短に述べると、先に記載した蛍光ナノ粒子又はPBSの注入に続いて、リンパ節を除去し、26ゲージニードルで裂き、37℃で25分間にわたってコラゲナーゼD(Roche(スイス、Basel))で消化させた。次いで、組織を70μm細胞染色器(BD(スイス、Basel))に通して、細胞懸濁物を回収した。リンパ節細胞懸濁物について、APCを抗MHCクラスII-(I-A)-R-PE(Chemicon(カリフォルニア州Temecula))で染色し、DCを抗CD11c-アロフィコシアニン(Pharmingen)で染色した。抗CD86-R-PE及び抗CD80-R-PE(Pharmingen)で染色することによってDC成熟を測定した。
【0070】
(実施例7:インビトロナノ粒子内在化)
リンパ節細胞の単離に続いて、細胞を約500000個/mlでRPMI(5%FBS)に接種した。次いで、細胞に20μlの20mg/mlの蛍光ナノ粒子を適用し、24時間インキュベートした。次いで、細胞をHBSSで2回洗浄し、先に述べたようにAPC及びDCに対して染色した。
【0071】
(実施例8:流動細胞計測及び分析、並びにインビトロナノ粒子内在化:DCを含むAPCによる吸収)
染色に続いて、リンパ節細胞懸濁物を流動細胞計測(CyAn ADP、Dako(デンマーク、Glostrup))によって分析した。FloeJoソフトウェア(TreeStar(オレゴン州Ashland))を使用してさらなる分析を行った。蛍光ナノ粒子を内在化させたAPC及びDCは、FITCがナノ粒子の標識を表すMHCII+FITC+及びCD11c+FITC+であると判断された。CD86及びCD80を発現した細胞の割合を計算することによって、ナノ粒子内在化に続くDC成熟の評価を行った。
【0072】
流動細胞分析を行って、ナノ粒子を内在化させているリンパ節のAPC及びDCの割合を定量した。図5aは、リンパ節における〜40%のAPC(MHCII+)及び特に〜50%のDC(CD11c+)が、注入から24時間後に20nmのナノ粒子を吸収したことを示す。よって、概して、APC及び/又はDCによって少なくとも10%から約95%のナノ粒子が吸収されることが考えられる;すべての範囲及び明記された範囲内の値、例えば少なくとも約25%、少なくとも約40%又は約25%から約75%/50%が考えられることを当業者は直ちに理解するであろう。また、有意な割合のAPC及びDCが45nmのナノ粒子を貪食するのに対して、インビボ注入後に観察された100nmのナノ粒子の吸入は非常に少なかった。DCを含むAPCは、粒子がリンパ節に到着した後にそれらを取り込む、或いはリンパ節に移動する前にそれらを注入部位に内在化させた。後者の場合は、より大きい粒子(1〜10μm)がちょうどより小さい粒子と同じくらい効率的にAPCに取り込まれ得る[13、57]ため、リンパ節に100nmの粒子が見られることになる。ナノ粒子粒径は、APC又はDC内在化に影響しないことがインビトロ実験で確認された。ほぼすべてのAPC及びDCが、粒径にかかわらずナノ粒子を内在化させた(図5b)。したがって、PPSナノ粒子は、恐らく抹消リンパ管に受動的に吸収され、リンパ節に到達し、そこで常在DC又はAPCによって貪食される。これらの結果は、抗原を内在化させることが可能な実質的な数の未成熟DCがリンパ節に存在するという最近の知見[15、16]を裏づける。実際、リンパ節におけるDC及び他のAPCは、薬物送達媒体を介して細胞媒介免疫を開始させるための貴重な標的を提供する。
【0073】
異なる時点におけるナノ粒子内在化の比較について調査した。ナノ粒子のマクロファージ及びDCとの共存は、24時間目より96時間目の方が多く認識されることが判明した(図6a)。流動細胞分析を用いて、24時間目に対して96時間目に、ナノ粒子を内在化させるマクロファージ及びDCのタイプに変化が生じるかどうかを判断した。24時間目にナノ粒子を内在化させたすべての細胞のうち、〜15%がAPC(MHCII+)で、〜13%がDC(CD11c+)であったが、それは、APCのほとんどがDCであり、ナノ粒子含有細胞の残りの〜85%がマクロファージ(MHCII-)を表す非抗原であったことを示唆している。96時間目に、APC又はDCであるナノ粒子を含む細胞の割合は、それぞれ61±5%及び33±3%であった(これは、図5aに示されるレベルで一定している、ナノ粒子を含むリンパ節APC及びDCの割合の増加を反映するものではないことに留意されたい)。ナノ粒子含有MHCII+及びCD11c+細胞の増加は、次に節組織に残留する遊離ナノ粒子を捕らえるリンパ節へのAPC及びDCの浸透に起因し得る。ナノ粒子を有するMHCII+細胞の増加は、24〜96時間の間のマクロファージの活性化に起因することも可能である(すなわち、ナノ粒子内在化により、活性化されるため、MHCII+になるMHCII-マクロファージ)。
【0074】
リンパ節における有意な割合のDCが既に成熟しているが、未成熟のDCが存在するため、それらの細胞は、抗原吸収の後に成熟する可能性が高い。したがって、20nmのPLURONIC安定化補体活性(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子は、従来の生物学的外来性「危険信号」が、PLURONIC安定化補体活性PPSナノ粒子と併用される場合に必要でなかったように、DC成熟を誘発するのに役立つかどうかを判断した。20nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子の注入の後に、PBSの注入を受けた対照と比較して、DC成熟マーカCD86の発現が増加した(図7)。CD80のDC発現も測定し、ナノ粒子内在化後は有意に増加していると判断された(図7b)。最後に、ナノ粒子を有するDCのCD86及びCD80の発現レベルは、注入後24時間目に対して96時間目に変化がないことが判明した。このことは、20nmのPLURONIC安定化補体活性ナノ粒子が、T細胞活性化及び細胞媒介免疫を長期間にわたって維持するのに有用であり得る長期的な熟成刺激を提供することを示唆する。したがって、これらの結果は、PLURONIC安定化補体活性PPSナノ粒子が、DC特異抗原送達のための媒体として作用するとともに、リンパ節のDCを成熟及び活性化する補助剤として作用する二重の役割を果たすことができることを示している。
【0075】
(実施例9:ヒト血清におけるC3a検出)
96ウェルプレート(Becton Dickinson)に、1:4000の希釈率、100μl/ウェルでPBSに含めたC3a/C3a(desArg)マウス抗ヒトモノクローナル抗原(AntibodyShop、Grusbakken、Denmark)を塗布した。プレートを室温(RT)で一晩放置した。未結合抗体を払い落とし(すなわち、突発的な機械的運動によって除去し)、プレートを200μl/ウェルのDI水で3回洗浄した。次いで、プレートを200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS+0.05%Tween 20+0.5%ウシ血清アルブミン)で室温にて1.5時間ブロックした。
【0076】
ヒト血清を1:1の容量比でPBSとともにインキュベートし、ナノ粒子の懸濁物をPLURONICで安定化し(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子)、37℃で45分間にわたってEppendorf管においてナノ粒子の懸濁物をメトキシ末端ナノ粒子で安定化した(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)。プレートのブロッキングが完了すると、それらを250μl/ウェル洗浄緩衝液(PBS+0.05%のTween 20)で3回洗浄した。次いで、血清ナノ粒子サンプルを室温で2時間にわたって50μl/ウェルで3通りウェルに添加した。次いで、サンプルを払い落とし、次いでプレートを250μl/ウェルの洗浄緩衝液で5回洗浄した。次いで、C3a/C3a(desArg)ビオチン化検出抗体(AntibodyShop)を1:4000の希釈率でブロッキング緩衝液に含めて50μl/ウェルで室温にて2時間添加した。次いで、C3a検出抗体を払い落とし、プレートを250μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、ストレプトアビジン-HRP抗体(R&D systems)を製造元が推奨する濃度でブロッキング緩衝液に希釈し、室温で2時間にわたって50μl/ウェルでプレートに加えた。次いで、HRP抗体を払い落とし、プレートを250μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、HRP基質試薬(R&D systems)を室温で45分間にわたって暗所において100μl/ウェルで添加した。50μl/ウェルの2NのH2SO4を添加することによって反応を停止させた。次いで、プレートを450nm及び540nmの波長にてTecanプレートリーダで読み取った。540nmのバックグラウンド値を450nmから引いて、最終値を得た。
【0077】
PBSとともにインキュベートされた血清に存在するC3aを、PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子)及びメトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)とともにインキュベートした後に存在するC3aと比較した。図8に示すように、メトキシ末端PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子とのインキュベーションは、PBSとともに血清に存在するC3aを〜7倍に増加させ、PLURONICで安定化されたPPSナノ粒子とのインキュベーションは、〜32倍に増加させた。したがって、ヒドロキシル化ナノ粒子は、ヒト血清C3の可溶性C3a及び結合C3bへの開裂によって測定された場合に、ヒドロキシル化されていないナノ粒子より補体系をはるかに強く活性化させた。これにより、ナノ粒子のOH表面は、メトキシ表面よりはるかに効率的に補体系の代替的経路を活性化していることが確認される。
【0078】
(実施例10:DC成熟に対する表面化学作用の影響)
25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子(すなわちヒドロキシル化ナノ粒子;本明細書に記載されているように製造された)、メトキシ末端PLURONICで安定化された25nmのナノ粒子(すなわち、ヒドロキシル化されていないナノ粒子)、20nmのカルボキシル化ポリスチレンナノ球体(COOH-NS)(Invitrogen)、PBS及びLPS(30μg)を既に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、既に記載したようにCD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を行って、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0079】
図9に示されるように、メトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子(すなわちヒドロキシル化されていないナノ粒子)及びカルボキシル化ポリスチレンナノ粒子と比較されたPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、有意に異なる。PLURONIC安定化ナノ粒子で処理された動物のDCは、これらのDC成熟マーカのより高い発現を示し、また、それらは、正の対照LPSと同レベルの成熟を誘発する。メトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子及びカルボキシル化ポリスチレンナノ粒子で処理された動物のDCは、負の対照PBS注入とほぼ同一のDC成熟応答を与えた。これらの結果は、インビボのDC成熟応答が、20〜25nmのナノ粒子の表面化学作用によって特異的に支配されることを示している。ヒドロキシル化された表面は、DC成熟を誘発するのに対して、メトキシ及びカルボキシ表面は、誘発しない。本明細書に提示された結果によれば、これらの表面の機能的な相違は、ヒドロキシル化された表面による補体活性化にある。
【0080】
(実施例11:DC成熟に対するサイズの影響)
25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子及び100nmのPLURONIC安定化(すなわち、ヒドロキシル化)ナノ粒子、及びPBSを既に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、本明細書に記載されているようにCD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を行って、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0081】
図10に見られるように、同じ表面化学作用の100nmと比較した25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、有意に異なる。25nmPLURONIC安定化ナノ粒子は、これらのDC成熟マーカのより高い発現を示す。100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子注入は、負の対照PBS注入とほぼ同一のDC成熟応答を与えた。これらの結果は、インビボのDC成熟応答がナノ粒子粒径に特異的に関連していることを示している。25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子は、効率的にリンパ毛管に入り、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子よりはるかに多くリンパ節に移動することを本明細書に記載した。また、25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子の滞留及びリンパ節のDCによる内在化は、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子よりはるかに高度である。ここで、25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子によるDC成熟は、100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子と比較してはるかに高度であることが示される。DC成熟を誘発する微小の25nmのPLURONIC安定化ナノ粒子の能力は、リンパ節標的化及び表面化学作用がDCを活性化するのに有用であることを証明している。本明細書に提示されたナノ粒子のリンパ毛管への進入の結果に基づいて、45nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子は、リンパ節内のDCを活性化できることが期待される。
【0082】
(実施例12:ナノ粒子に対するOVA連結)
タンパク質、又はグリコペプチドを含むペプチドでPLURONIC(PEGとPPGのブロック共重合体)表面を官能化することによって、PPSナノ粒子に対する抗原結合を遂行することができる。化学結合のための遊離システイン残基を含むタンパク質抗原についての結合スキームを本実施例で提示する。N末端又はリシン残基におけるアミンのような他の官能基を関連スキームで使用することができる。抗原をナノ粒子表面に吸着させることもできる。
【0083】
ここで、オバルブミン(OVA)についての結合スキームを示す。OVAは、それぞれMHCI及びII経路を通じてDCによって処理される抗原ポリペプチドOVA257〜264及びOVA323〜339を有するDC抗原提示を調査するためのモデルタンパク質である。その結合スキームは、ミカエル付加反応において、OVA上の遊離チオール基を介してOVAが結合されるPLURONICジビニルスルホンの合成から開始する。両工程の合成の詳細を以下に示す。
【0084】
PLURONIC F127(Sigma)、ジビニルスルホン(Fluka)、水素化ナトリウム(Aldrich)、トルエン(VWR)、酢酸(Fluka)、ジエチルエーテル(Fisher)、ジクロロメタン(Fisher)及びセライト(Macherey Nagel)を受け取った状態で使用した。アルゴン(Messer)雰囲気下で反応を実施した。1H NMRを重水素化クロロホルム(Armar)中で測定し、化学シフト(δ)を0.0ppmにおける内部標準テトラメチルシラン(Armar)信号に対して相対的にppmで示す。
【0085】
15g(1.18mmol)のPLURONIC F-127を400mlのトルエンに溶解させた溶液を、Dean-Starkトラップを使用して、共沸蒸留によって4時間乾燥させた。溶液を氷浴で冷却し、0.283g(11.8mmol)の水素化ナトリウムを添加した。反応混合物を15分間撹拌し、3.55ml(35.4mmol)のジビニルスルホン(Sigma-Aldrich)を迅速に添加した。室温にて暗所で5日間撹拌した後、1.35ml(23.6mmol)の酢酸を添加することによって反応をクエンチした。セライトで濾過し、濾液を減圧下で小容量まで濃縮した後、生成物を1リットルの氷冷ジエチルエーテルに析出させた。固体を濾別し、最小量のジクロロエタンに溶解させ、氷冷ジエチルエーテルに合計4回析出させた。ポリマーを真空下で乾燥させて6.0gとし、OVA連結の前に20℃にてアルゴン下に保存した。NMRは、ビニルスルホンが存在すること、及び官能化度が88%であることを示していた。δ = 1.1 (m、CH3、PPG)、3.4 (m、CH、PPG)、3.5(m、CH2、PPG)、3.6(PEG)、6.1(d、CHcis=CH-SO2)及び6.4(d、CHtrans=CH-SO2)、6.85(dd、CH2=CHSO2-)。
【0086】
連結の前に、kDa日に対して分子量カットオフが6〜8の再生セルロース透析チューブを使用して、PLURONICビニルスルホンを水に対して透析した。その材料を凍結乾燥によって回収し、NMRを測定して、この工程がビニルスルホン基の数に影響しないことを確認する。300mg(0.023mmol)のPLURONICビニルスルホンを、50mg(0.0011mmol)のOVAの溶液を0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=8.1)に溶解させた溶液に添加することによってOVAの連結を実施する。4℃で6時間反応させた後、反応混合物を凍結乾燥した。ジクロロメタンを添加し、混濁混合物を12000rpmで室温にて5分間遠心分離させた。未反応PLURONICビニルスルホンを含むジクロロメタンを除去し、沈殿を減圧下で乾燥させて、残留ジクロロメタンを除去した。次いで、PL-VS-OVAをナノ粒子合成に使用するまで-20℃で保管した。
【0087】
2重量%のPLURONICをPL-VS-OVAに代えた点を除いては、本明細書に記載したように粒子を合成した。PPSに対して全量1.5%のPLURONIC(重量/容量)を使用した。ナノ粒子合成中におけるタンパク質又はペプチドの塩基条件への曝露を低減するために、反応時間を6時間に短縮し、塩基を1:1のモル比で開始剤-チオールに添加した。
【0088】
加えて、OVA上の残留遊離チオールを反応させることによって、PL-VS-OVAをローダミンヨードアセトアミドで蛍光標識することができる。ナノ粒子を合成し、フルオレセインヨードアセトアミドで標識して、OVAがロダミンで標識され、ナノ粒子がフルオレセインで標識された二重標識OVA連結ナノ粒子を製造することができる。
本明細書に記載したように、二重標識OVA連結ナノ粒子をマウスに皮下注入した。次いで、リンパ節を注入から24及び48時間後に除去し、次いでそれらを凍結し、凍結裁断した。次いで、リンパ節切片を蛍光顕微鏡で観察した。
【0089】
OVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子に対して動的光散乱を実施し、サイズが〜25nmに維持されていることを実証した。図11において実証されているように、リンパ節を注入から24及び48時間後に二重標識OVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子がリンパ節に存在していた。OVAは、ナノ粒子と同じ位置に存在していた。これらの結果は、〜43kDaのMWのタンパク質抗原OVAによるナノ粒子の機能化がナノ粒子粒径に大きく影響しないことを証明している。25nmのOVA連結ナノ粒子を製造する能力は、リンパを介してリンパ節のDCにタンパク質抗原を送達することを可能にする。常在リンパ節DCへの抗原のこの送達は、続く順応免疫応答を向上させる可能性を提供する。OVAは、ここでは、例示的なモデル抗原として提示されているにすぎない。ペプチド、グリコペプチドを含むタンパク質、及びタンパク質抗原をコードする核酸を含む任意の数の分子抗原を同様に利用することができる。
【0090】
(実施例13:PLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAによって誘発されるDC成熟)
25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子及びリポ多糖(LPS)と混合されたOVAを、本明細書に記載したようにマウスに皮内注入した。次いで、本明細書に記載したように、リンパ節を収穫し、細胞を単離し、CD11c、CD86、CD80及びCD40に対して染色した。流動細胞計測を実施して、リンパ節DCの成熟プロファイルを測定した。
【0091】
図12に示すように、LPSによる正の対照OVAと比較した25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子に対するCD86、CD80及びCD40プロファイルは、ほぼ同じである。いずれもこれらのDC成熟マーカの高い発現を示す。これらの結果は、インビボのDC成熟応答が、PLURONIC安定化25nmナノ粒子によって送達されたOVA及び分子危険信号LPSと共注入されたOVAについてほぼ同じであることを示している。これは、抗原送達媒体及び成熟刺激補助剤の両方として、ヒドロキシル化され、補体を活性化し、例えば、PPSナノ粒子のPLURONIC安定化によって形成された例えば20〜45nmの小さいナノ粒子に連結したOVAを使用することが可能であることを示唆している。
【0092】
(実施例14:T細胞増殖)
T細胞養子移入として知られる方法を用いて、T細胞増殖の測定を行った。OT-II Tg(Jackson Immunoresearch)マウスは、CD4 T細胞に上方制御レベルのOVA T受容体を有するという点において形質転換性である。OT-II Tgマウスの脾臓及びリンパ節を単離して、細胞懸濁物を作製した。脾臓細胞懸濁物については、赤血球を1.667%のNH4Clで溶解させた。脾臓及びリンパ節の細胞を蓄積し、計数した。合計400×106個の細胞を回収した。
【0093】
細胞をカルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、RPMI w/o FBSに20×106/mlで懸濁させた。CFSE原液は、DMSO中5mMであった。PBSで第1の希釈物1/10を作製し、必要な容量を細胞に添加して、最終濃度を5μMとした。CGSEを添加し、穏やかに混合し、細胞とともに37℃で10分間インキュベートし、蓋を開けたまま放置し、約2分間毎に静かに混合した(細胞を2つの管に分けて、凝塊形成及び細胞死を防止した)。インキュベーション後に、5%のFBSを含むRPMIを添加して、細胞を洗浄し、RPMI w/o FBSで1回洗浄し、PBSで1回洗浄した。合計300×106個の細胞に対してCFSE標識した後に細胞計数を行った。
【0094】
細胞を50×106/mlでPBSに再懸濁させ、10×106個の細胞をCD45.1類似遺伝子受容マウスの尾の静脈に注入した(200μl/マウス)。細胞の一部を流動細胞計測CFSE標識による検査のために保持し、その部分のCFSE+T細胞を注入した。細胞をAPC抗CD4で染色した。
2日目に、20μlの抗原(10ugのOVA+5ugのLPS又は10ugの25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子)を受容マウスの前足蹠に注入した。5日目に、マウスを殺し、各マウスから鰓及び腋窩リンパ節を除去し、蓄積して、細胞懸濁物を作製した。細胞をCD45.2 PE、ヨウ化プロピジウム(死細胞)及びCD4アロフィコシアニンに対して染色した。流動細胞計測を実施して、T細胞増殖の測定を行った。
【0095】
図13(左)は、PBSの注入後に、すべてのCFSE標識OT-II T細胞が最大蛍光レベルに維持されていたことを示す。しかし、LPSによる正の対照OVA(中央)の注入及び25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子に連結したOVAの注入後に、CD T細胞の蛍光が大きく低下している。この蛍光の低下は、親集団より小さい蛍光を示す娘細胞集団を示唆している。LPSによるOVAの注入又はPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入後に約7サイクルの増殖があった。
OTIIマウスは、OVAに対するT細胞受容体を上方制御するCD4 T細胞を有するという点において形質転換性である。したがって、これらのT細胞は、OVA抗原に遭遇すると極めて敏感になる。したがって、CFSE標識OT-II T細胞へのWTマウスへの養子移入は、インビボのT細胞増殖を測定するための優れたモデルである。
【0096】
本明細書において、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子に連結したOVAの送達後にリンパ節DCが成熟することが証明される。ここで、これらの結果は、ナノ粒子のこの内在化の後に、OVA抗原が少なくとも部分的にMHC-II経路を通じて処理され、その抗原ペプチドが成熟DCによってCD4 T細胞に提示されることを示している。次に、CD4 T細胞が活性化され、増殖する。活性化されたCD4 T細胞は、順応免疫応答を支援する(例えば、抗体生成の誘発のためにB細胞に抗原を提示する)ことが可能である。我々の結果は、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)に連結したOVAは、LPSによる正の対照OVAと非常に類似したレベルのT細胞増殖を誘発することが可能である。これは、さらなるT細胞媒介免疫応答が開始されるため、有意義である。
【0097】
(実施例15:CD8T細胞記憶-細胞免疫の測定)
本明細書に記載したように、25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子、PBSにおけるOVA及びLPSによるOVAをC57/BL6マウスに注入した。次いで、7日目にマウスにブースタ注入を行った。次いで、21日目に、本明細書に記載したように、マウスを殺し、リンパ節を除去し、細胞を単離した。血球計算器を使用して細胞懸濁物を計数した。
【0098】
IFN-γ用ELISPOT(eBioscience)を製造元のプロトコルに従って調製した。10%のマウス血清を含むRPMIを各ウェルに20μl/ウェルで添加した。次に、2単位のIL-2及び0.4μgのCD28を各ウェルに添加した。次に、20μl/ウェルのOVA323〜339MHC-Iペプチドを2mMの濃度で添加した。次いで、細胞を100μl/ウェルでウェルに添加した。いくつかのウェルには、非刺激対照として、OVAペプチドを加えなかったが、他のウェルには、正の対照としてPMAを加えた。プレートを2日間にわたって37℃のインキュベータに維持した。2日後、ELISPOTプレートを製造元のプロトコルに従って展開した。ウェルの画像をLeica MZ16FA立体顕微鏡でウェルの画像を撮影した。次いで、ウェル内のスポットをMatlab画像解析プログラムで計数した。
【0099】
図14に示されるように、マウスの免疫化に続いて、抗原に再接触した後に、ELISPOTアッセイを用いて、IFN-γ産性CD8 T細胞の量を測定した(プレート上のスポットで測定)。PBSでOVAが注入されたマウスは、非常に少数のIFN-γ T細胞を示したのに対して、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)ナノ粒子に連結したOVA及びLPSによる正の対照OVAが注入されたマウスでは有意な増加が認められた。本明細書に提示されている他の結果と一致して、補体を活性化する非常に小さい(例えば20〜45nmの)ナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)PPSナノ粒子)に連結したOVAは、DC成熟及びCD T細胞増殖を誘発することが可能である。ここで、我々は、PLURONIC安定化25nmナノ粒子に連結したOVAは、CD8 T細胞記憶を十分に生成できることを示した。CD8 T細胞は、MHC-I経路によって処理及び提示された抗原に応答する。MHC-I経路は、一般に、DCの細胞質において処理される抗原に対応づけられる。これは、ナノ粒子が、MHC-I及びMHC-II双方の処理及び提示について抗原を送達できることを示唆している。CD8 T細胞は、病原体及び病原体感染細胞を直接攻撃するため、細胞毒キラーT細胞としても知られる。したがって、CD8 T細胞記憶を生成する小さい(例えば20〜45nmの)補体活性(例えばPLURONIC安定化)ナノ粒子の能力は、これをワクチンに使用する強い可能性を示す。
【0100】
(実施例16:抗体(Ab)力価-体液免疫の測定)
25nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、100nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、25nmのOVA連結メトキシ末端PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化されていない)ナノ粒子、PBS中のOVA、及びLPS含有OVAを本明細書に記載したようにC57/BL6マウスに注入した。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化)ナノ粒子、及びLPS含有OVAをC3-/-マウスに注入した。注入前及び注入後21日目にマウスから採取した血液から血清を単離し、使用するまで-20℃で保管した。ブースタ注入は行わなかった。
【0101】
96ウェルプレート(Becton Dickinson)にPBS中OVA(2μg/ml)を100μl/ウェルで塗布した。プレートを室温(room temperature)(RT)で一晩放置した。未結合抗原を払い落とし、プレートを200μl/ウェルのDI水で3回洗浄した。次いで、プレートを200μl/ウェルのブロッキング緩衝液により室温で1.5時間ブロックした。
【0102】
マウス血清サンプルをブロッキング緩衝液で1:103から1:108まで順次希釈した。
プレートのブロッキングが完了すると、プレートを150μl/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、血清サンプルを室温にて2時間にわたって50μl/ウェルでウェルに添加した。注入前血清サンプルを3通り添加した。次いで、サンプルを払い落とし、次いでプレートを150μl/ウェルにて洗浄緩衝液で5回洗浄した。マウス抗IgG-HRPをブロッキング緩衝液で1:3000に希釈し、室温にて2時間にわたって50μl/ウェルで添加した。次いで、HRP抗体を払い落とし、プレートを150μl/ウェルで洗浄緩衝液により5回洗浄した。次に、HRP基質試薬(R&D systems)を室温にて45分間にわたって暗所において100μl/ウェルで添加した。50μl/ウェルの2NのH2SO4を添加することによって反応を停止させた。次いで、450nm及び540nm波長におけるプレート吸収をTecanプレートリーダで測定した。540nmのバックグラウンド値を450nmから引いて、最終値を得た。注入後血清値がカットオフ値より大きい場合に陽性のサンプルを測定した。注入前の3つの値の平均値+標準偏差×3からカットオフ値を計算した。正の値を有する最大希釈率を抗体(Ab)力価値と見なす。
【0103】
図15に示されるように、様々な治療薬が注入されたマウスにおいてlog10 IgG OVA Ab力価を測定した。PBS中のOVAの負の対照が注入されたマウスは、正の力価を示さなかった。LPS含有OVAの正の対照が注入されたマウスは、野生型及びC3-/-マウスの両方において3〜6の正の力価を示した。25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入は、4の力価を与えたのに対して、100nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVA及び25nmのメトキシ末端PLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAの注入は、より小さい力価値を与えた。最後に、25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAで治療された動物のAb力価は、C3-/-マウスにおいて有意に小さかった。
【0104】
OVA IgG Ab力価の存在は、体液免疫の証拠である。このプロセスが生じる1つのルートは、抗原がDCによって処理され、CD4 T細胞に提示され、次いでそれらがB細胞を刺激して、抗原に対するAbcを生成させる。危険信号の不在下での遊離タンパク質の送達は、体液免疫を有意に誘発できないことが知られており、これは、PBS中のOVAとして、正の力価を与えないことが我々の結果によって証明されている。しかし、LPS含有OVAの正の対照は、野生型マウス及びC3-/-マウスの双方において有意なレベルの力価を示す。我々は、本明細書において、25nmPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)PPSナノ粒子に連結したOVAがDC成熟、T細胞増殖及びCD8 T細胞記憶を誘発できることを示した。ここで、25nmのPLURONIC安定化(すなわちヒドロキシル化され、補体を活性化する)ナノ粒子に連結したOVAは、抗OVA IgG力価を与えることによって、体液免疫を誘発することもできることを示す。100nmのPLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAは、正の力価を与えず、リンパ節標的化がナノ粒子誘発体液免疫にとって重要であることを証明している。また、補体を活性化する程度がはるかに低い25nmのメトキシ末端PLURONIC安定化ナノ粒子に連結したOVAは、低いAb力価値を示し、補体活性化を通じて媒介されるそのように強い免疫応答を生成するために表面化学作用の制御も必要であることが示される。最後に、25nmのPLURONIC安定化PPSナノ粒子に連結したOVAは、野生型マウスよりC3-/-マウスにおいてはるかに小さい力価値を与えるため、補体活性化は、体液免疫の誘発において重要な役割を果たしていることが示される。
【0105】
これらの結果は、リンパ節標的化を通じて機能するための特殊なサイズ及び特殊な表面化学作用、すなわち補体活性化が可能な化学作用の両方を有する、本明細書に記載したようにして製造される様々な実施態様のナノ粒子(例えば、PLURONIC安定化及び他の手段によって得ることができるヒドロキシル化されたナノ粒子)を使用して、共注入抗原による強いT細胞依存性体液免疫を与えることができることを証明している。ここで実証されることは、抗原がナノ粒子表面に連結する場合である。抗原をナノ粒子表面に結合させるための吸着法も効果的である。抗原と当該ナノ粒子の共注入も効果的であるが、恐らくその効果は小さい。
【0106】
(実施例17:疎水性薬物充填)
疎水性薬物、例えばデキサメタソンの充填を適応溶媒蒸発法[132、133]によって達成した。手短に述べると、例示を目的として、薬物を溶媒ジクロロメタン(1mg/ml)に添加した。次いで、1mlの薬物-溶媒懸濁物を1mlのPPSナノ粒子溶液に20mg/mlで添加した。溶媒を蒸発させるために、エマルジョンを室温の暗所で連続的に撹拌した。薬物充填効率をGPCで測定した。
【0107】
(統計)
両側スチューデントt検定を行うことによって実施例における統計的有効性を測定した。結果は、平均値±SDを示し、条件毎に3〜8の実験を行った。
【0108】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらが本出願に記載された明確な開示内容に矛盾しない範囲で、引用により本明細書に組み込まれている。
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【0109】
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[18] H.C. Probst、J. Lagnel、G. Kollias、M. van den Broekらの論文「誘発性遺伝子導入マウスは、CD8+T細胞耐性の強力な誘発因子としての休止樹状細胞を示す(Inducible transgenic mice reveal resting dendritic cells as potent inducers of CD8+ T cell tolerance)」、(Immunity 18(5) (2003) 713-720)。
[19] M.J. Copland、M.A. Baird、T. Rades、J.L. McKenzie、B. Becker、F. Reck、P.C. Tyler、N.M. Daviesらの論文「抗原のヒト樹状細胞へのリポソーム送達(Liposomal delivery of antigen to human dendritic cells)」、(Vaccine 21(9-10) (2003) 883-890)。
【0115】
[20] M.A. Swartzの論文「リンパ系の生理(The physiology of the lymphatic system)」、(Advanced Drug Delivery Reviews 50(1-2) (2001) 3-20)。
[21] C.J.H. Porterの論文「リンパ系への薬物送達(Drug delivery to the lymphatic system)」、(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 14(4) (1997) 333-393)。
[22] C.J.H. Porter、S.A. Charmanらの論文「皮下投与後のタンパク質のリンパ輸送(Lymphatic transport of proteins after subcutaneous administration)」、(Journal of Pharmaceutical Sciences 89(3) (2000) 297-310)。
[23] M. Papisov、R. Weisslederらの論文「リンパ組織への薬物送達(Drug delivery to lymphatic tissue)」、(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 13(1-2) (1996) 57-84)。
[24] C. Oussoren、J. Zuidema、D.J.A. Crommelin、G. Stormらの論文「皮下注入後のリポソームのリンパ吸収及び生体分布。2.リポソームサイズ、脂質組成及び脂質投与量の影響(Lymphatic uptake and biodistribution of liposomes after subcutaneous injection .2. Influence of liposomal size, lipid composition and lipid dose)」、(Biochimica Et Biophysica Acta-Biomembranes 1328(2) (1997) 261-272)。
【0116】
[25] A.E. Hawley、S.S. Davis、L. Illumらの論文「コロイドのリンパ節への誘導-リンパの生理及びコロイド特性の影響(Targeting of Colloids to Lymph-Nodes - Influence of Lymphatic Physiology and Colloidal Characteristics)」、(Advanced Drug Delivery Reviews 17(1) (1995) 129-148)。
[26] T.M. Allen、C.B. Hansen、L.S.S. Guoらの論文「リポソームの皮下投与-静脈内及び腹腔内注入経路との比較(Subcutaneous Administration of Liposomes - a Comparison with the Intravenous and Intraperitoneal Routes of Injection)」、(Biochimica Et Biophysica Acta 1150(1) (1993) 9-16)。
[27] S.M. Moghimiの論文「皮下注入されたポロキサマー407被覆ナノ粒子のリンパ分布の調節:エチレンオキシド鎖構成の影響(Modulation of lymphatic distribution of subcutaneously injected poloxamer 407-coated nanospheres: the effect of the ethylene oxide chain configuration)」、(Febs Letters 545(2-3) (2003) 241-244)。
【0117】
[28] S.M. Moghimi、B. Bonnemainらの論文「診断薬のリンパ系への皮下及び静脈内送達:リンパシンチグラフィー及び間接的リンパ造影法における適用(Subcutaneous and intravenous delivery of diagnostic agents to the lymphatic system: applications in lymphoscintigraphy and indirect lymphography)」、(Advanced Drug Delivery Reviews 37(1-3) (1999) 295-312)。
[29] Y. Nishioka、H. Yoshinoらの論文「ナノ粒子系によるリンパターゲティング(Lymphatic targeting with nanoparticulate system)」、(Advanced Drug Delivery Reviews 47(1) (2001) 55-64)。
[30] C. Oussoren、G. Stormらの論文「皮下投与によりリンパに標的化するためのリポソーム(Liposomes to target the lymphatics by subcutaneous administration)」、(Advanced Drug Delivery Reviews 50 (2001) 143-156)。
[31] C. Oussoren、G. Stormらの論文「皮下注入後のリポソームのリンパ吸収及び生体分布。3.ポリ(エチレングリコール)による表面改質の影響(Lymphatic uptake and biodistribution of liposomes after subcutaneous injection .3. Influence of surface modification with poly(ethyleneglycol))」、(Pharmaceutical Research 14(10) (1997) 1479-1484)。
【0118】
[32] S.M. Moghimi、A.E. Hawley、N.M. Christy、T. Gray、L. Illum、S.S. Davisらの論文「リンパへの排出及び局所リンパ節のマクロファージによる吸収が向上した表面改変ナノ球体(Surface Engineered Nanospheres with Enhanced Drainage into Lymphatics and Uptake by Macrophages of the Regional Lymph-Nodes)」、(Febs Letters 344(1) (1994) 25-30)。
[33] A.E. Hawley、L. Illum、S.S. Davisらの論文「リンパ排出及びリンパ節吸収が向上した生分解性表面改変PLGAナノ球体の調製(Preparation of biodegradable, surface engineered PLGA nanospheres with enhanced lymphatic drainage and lymph node uptake)」、(Pharmaceutical Research 14(5) (1997) 657-661)。
[34] A.E. Hawley、L. Illum、S.S. Davisらの論文「ポロキサマー及びポロキサミンブロック共重合体で表面改質された生分解性ナノ球体のリンパ節局在化(Lymph node localisation of biodegradable nanospheres surface modified with poloxamer and poloxamine block co-polymers)」、(Febs Letters 400(3) (1997) 319-323)。
【0119】
[35] L. Illum、A.E. Church、M.D. Butterworth、A. Arien、J. Whetstone、S.S. Davisらの論文「画像診断のために局所リンパ節に標的化するためのシステムの開発:間質投与後のラットにおけるコロイドPEG被覆磁鉄鉱ナノ球体のインビボ挙動(Development of systems for targeting the regional lymph nodes for diagnostic imaging: In vivo behaviour of colloidal PEG-coated magnetite nanospheres in the rat following interstitial administration)」、(Pharmaceutical Research 18(5) (2001) 640-645)。
[36] C. Oussoren、M. Velinova、G. Scherphof、J.J. van der Want、N. van Rooijen、G. Stormらの論文「皮下注入後のリポソームのリンパ吸収及び生体分布。IV.局所リンパ節におけるリポソームの運命(Lymphatic uptake and biodistribution of liposomes after subcutaneous injection - IV. Fate of liposomes in regional lymph nodes)」、(Biochimica Et Biophysica Acta-Biomembranes 1370(2) (1998) 259-272)。
[37] C. Oussoren、G. Stormらの論文「皮下投与後のリンパ節におけるリポソームの局在化におけるマクロファージの役割(Role of macrophages in the localisation of liposomes in lymph nodes after subcutaneous administration)」、(International Journal of Pharmaceutics 183(1) (1999) 37-41)。
【0120】
[38] D. Hawiger、K. Inaba、Y. Dorsett、M. Guo、K. Mahnke、M. Rivera、J.V. Ravetch、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞は、インビボ定常条件下で末梢T細胞無応答性を誘発する(Dendritic cells induce peripheral T cell unresponsiveness under steady state conditions in vivo)」、(Journal of Experimental Medicine 194(6) (2001) 769-779)。
[39] A. Rehor、J.A. Hubbell、N. Tirelliらの論文「酸化に敏感なポリマーナノ粒子(Oxidation-sensitive polymeric nanoparticles)」、(Langmuir 21(1) (2005) 411-417)。
[40] A. Rehor、N. Tirelli、J.A. Hubbellらの論文「新たなリビングエマルジョン重合メカニズム:エピスルフィドアニオン重合(A new living emulsion polymerization mechanism: Episulfide anionic polymerization)」、(Macromolecules 35(23) (2002) 8688-8693)。
[41] A. Napoli、M. Valentini、N. Tirelli、M. Muller、J.A. Hubbellらの論文「酸化応答性ポリマーベシクル(Oxidation-responsive polymeric vesicles)」、(Nature Materials 3(3) (2004) 183-189)。
【0121】
[42] W.L. Olszewskiの論文「リンパ鬱血の病態生理、診断及び治療(Lymph stasis pathophysiology, diagnosis and treatment)」、(CRC Press, Boca Raton etc., 1991)。
[43] D.A. Berk、M.A. Swartz、A.J. Leu、R.K. Jainらの論文「リンパ毛管による輸送。2.蛍光退色による顕微鏡速度測定(Transport in lymphatic capillaries .2. Microscopic velocity measurement with fluorescence photobleaching)」、(American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology 39(1) (1996) H330-H337)。
[44] M.A. Swartz、D.A. Berk、R.K. Jainらの論文「リンパ毛管による輸送。1.滞留時間分布理論を用いた巨視的測定(Transport in lymphatic capillaries .1. Macroscopic measurements using residence time distribution theory)」、(American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology 39(1) (1996) H324-H329)。
[45] M.A. Swartz、A. Kaipainen、P.A. Netti、C. Brekken、Y. Boucher、A.J. Grodzinsky、R.K. Jainらの論文「間質-リンパ液輸送の力学:理論的基礎及び実験的検証(Mechanics of interstitial-lymphatic fluid transport: theoretical foundation and experimental validation)」、(Journal of Biomechanics 32(12) (1999) 1297-1307)。
[46] V. Angeli、J. Llodra、J.X. Rong、K. Satoh、S. Ishii、T. Shimizu、E.A. Fisher、G.J. Randolphらの論文「アテローム動脈硬化疾患に伴う異脂肪血症は、樹状細胞移動を全身的に変化させる(Dyslipidemia associated with atherosclerotic disease systemically alters dendritic cell mobilization)」、(Immunity 21(4) (2004) 561-574)。
【0122】
[47] R.P. da Silva、S. Gordonらの論文「食作用は、マクロファージに特異的なエンドソームタンパク質であるマクロシアリン(マウスCD68)の代替的グリコシル化を刺激する(Phagocytosis stimulates alternative glycosylation of macrosialin (mouse CD68), a macrophage-specific endosomal protein)」、(Biochem J 338 (Pt 3) (1999) 687-694)。
[48] C.L. Holness、R.P. da Silva、J. Fawcett、S. Gordon、D.L. Simmonsらの論文「マウスマクロファージ制限糖タンパク質であるマクロシアリンは、lamp/lgpファミリーの一員である(Macrosialin, a mouse macrophage-restricted glycoprotein, is a member of the lamp/lgp family)」、(J Biol Chem 268(13) (1993) 9661-9666)。
[49] S. Rabinowitz、H. Horstmann、S. Gordon、G. Griffithsらの論文「腹膜マクロファージにおける飲食作用及びファゴリソソーム区画の免疫細胞化学的特性決定(Immunocytochemical characterization of the endocytic and phagolysosomal compartments in peritoneal macrophages)」、(J Cell Biol 116(1) (1992) 95-112)。
【0123】
[50] S. S. Rabinowitz、S. Gordonらの論文「炎症刺激に応答して差別的にグリコシル化されたマクロファージ制限膜シアロタンパク質であるマクロシアリン(Macrosialin, a macrophage-restricted membrane sialoprotein differentially glycosylated in response to inflammatory stimuli)」、(J Exp Med 174(4) (1991) 827-836)。
[51] M. Breel、R.E. Mebius、G. Kraalらの論文「2モノクローナル抗体によって認識されたマウスの樹状細胞(Dendritic Cells of the Mouse Recognized by 2 Monoclonal-Antibodies)」、(European Journal of Immunology 17(11) (1987) 1555-1559)。
[52] K. Inaba、W.J. Swiggard、M. Inaba、J. Meltzer、A. Mirza、T. Sasagawa、M.C. Nussenzweig、R.M. Steinmanらの論文「モノクローナル抗体Nldc-145によって検出されるDec-205タンパク質の組織分布。1.樹状細胞及び他のマウス白血球部分集合体における発現(Tissue Distribution of the Dec-205 Protein That Is Detected by the Monoclonal-Antibody Nldc-145 .1. Expression on Dendritic Cells and Other Subsets of Mouse Leukocytes)」、(Cellular Immunology 163(1) (1995) 148-156)。
[53] W.P. Jiang、W.J. Swiggard、C. Heufler、M. Peng、A. Mirza、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞及び胸腺上皮細胞によって発現された受容体Dec-205は、抗原処理に関与する(The Receptor Dec-205 Expressed by Dendritic Cells and Thymic Epithelial-Cells Is Involved in Antigen-Processing)」、(Nature 375(6527) (1995) 151-155)。
【0124】
[54] W.P. Jiang、W.J. Swiggard、A. Mirza、M. Peng、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹枝細胞に豊富であり、Nldc-145モノクローナル抗体で識別される205-Kdタンパク質の分子的特性決定(Molecular Characterization of a 205-Kd Protein That Is Abundant on Dendritic Cells and Identified with the Nldc-145 Monoclonal-Antibody)」、(Journal of Cellular Biochemistry (1995) 20-20)。
[55] G. Kraal、M. Breel、M. Janse、G. Bruinらの論文「モノクローナル抗体によって認識されたマウスのランゲルハンス細胞、ベール状細胞及び嵌合細胞(Langerhans Cells, Veiled Cells, and Interdigitating Cells in the Mouse Recognized by a Monoclonal-Antibody)」、(Journal of Experimental Medicine 163(4) (1986) 981-997)。
[56] K. Mahnke、M. Guo、S. Lee、H. Sepulveda、S.L. Swain、M. Nussenzweig、R.M. Steinmanらの論文「飲食作用のための樹状細胞受容体DEC-205は、主要組織適合性複合体クラスII陽性リソソーム区画を介して抗原提示を再循環及び強化することができる(The dendritic cell receptor for endocytosis, DEC-205, can recycle and enhance antigen presentation via major histocompatibility complex class II-positive lysosomal compartments)」、(Journal of Cell Biology 151(3) (2000) 673-683)。
【0125】
[57] Y. Tabata、Y. Ikadaらの論文「マクロファージによるポリマー微小球体の食作用(Phagocytosis of Polymer Microspheres by Macrophages)」、(Advances in Polymer Science 94 (1990) 107-141)。
[100] S. Cerritelli、A. Fontana、D. Velluto、M. Adrian、J. Dubochet、P. De Maria、J.A. Hubbellらの論文「ポリ(エチレングリコール-b-プロピレンスルフィド-b-エチレングリコール)ABA三ブロック共重合体の凝集挙動における熱力学及び動力学的効果(Thermodynamic and kinetic effects in the aggregation behavior of a poly(ethylene glycol-b-propylene suflide-b-ethylene glycol) ABA triblock copolymer)」、(Macromolecules 38(18) (2005) 7845-7851)。
[102] A. Napoli、N. Tirelli、G. Kilcher、J.A. Hubbellらの論文「エチレングリコールとプロピレンスルフィドの両親媒性多ブロック共重合体の新しい合成手法(New synthetic methodologies for amphiphilic multiblock copolymers of ethylene glycol and propylene sulfide)」、(Macromolecules 34(26) (2001) 8913-8917)。
【0126】
[103] A. Napoli、N. Tirelli、E. Wehrli、J.A. Hubbellらの論文「ポリ(プロピレンスルフィド)及びポリ(エチレングリコール)に基づく両親媒性ABA三ブロック共重合体の水中での離液挙動(Lyotropic behavior in water of amphiphilic ABA triblock copolymers based on poly(propylene sulfide) and poly(ethylene glycol))」、(Langmuir 18(22) (2002) 8324-8329)。
[104] A. Napoli、M. Valentini、N. Tirelli、M. Muller、J.A. Hubbellらの論文「酸化応答性ポリマーベシクル(Oxidation-responsive polymeric vesicles)」、(Nature Materials 3(3) (2004) 183-189)。
[105] K. Kataoka、A. Harada、Y. Nagasakiらの論文「薬物送達のためのブロック共重合体ミセル:設計、特性決定及び生物学的重要性(Block copolymer micelles for drug delivery: design, characterization and biological significance)」、(Adv Drug Deliv Rev 47(1) (2001) 113-131)。
[106] A.N. Lukyanov、V.P. Torchilinらの論文「貧溶解性薬物の送達系としての水溶性ポリマーの脂質誘導体からのミセル(Micelles from lipid derivatives of water-soluble polymers as delivery systems for poorly soluble drugs)」、(Adv Drug Deliv Rev 56(9) (2004) 1273-1289)。
【0127】
[107] H. Otsuka、Y. Nagasaki、K. Kataokaらの論文「生物学的用途及び医薬用途に向けたPEG化ナノ粒子(PEGylated nanoparticles for biological and pharmaceutical applications)」、(Adv Drug Deliv Rev 55(3) (2003) 403-419)。
[108] D.E. Discher、A. Eisenbergらの論文「ポリマーベシクル(Polymer vesicles)」、(Science 297(5583) (2002) 967-973)。
[109] H. Lee、I.H. Jang、S.H. Ryu、T.G. Parkらの論文「上皮成長因子のN末端部位に特異的なモノPEG化(N-terminal site-specific mono-PEGylation of epidermal growth factor)」、(Pharm Res 20(5) (2003) 818-825)。
[110] H. Lee、T.G. Parkらの論文「モノPEG化上皮成長因子の調製及び特性決定:インビトロ生物活性の評価(Preparation and characterization of mono-PEGylated epidermal growth factor: evaluation of in vitro biologic activity)」、(Pharm Res 19(6) (2002) 845-851)。
【0128】
[111] M.J. Roberts、M.D. Bentley、J.M. Harrisらの論文「ペプチド及びタンパク質PEG化の化学作用(Chemistry for peptide and protein PEGylation)」、(Adv Drug Deliv Rev 54(4) (2002) 459-476)。
[112] C.A. Janewayの論文「免疫生物学5:健康及び疾患における免疫系(Immunobiology 5 the immune system in health and disease)」、(Churchill Livingstone, Edinburgh, 2001)。
[113] L.C. Bonifaz、D.P. Bonnyay、A. Charalambous、D.I. Darguste、S. Fujii、H. Soares、M.K. Brimnes、B. Moltedo、T.M. Moran、R.M. Steinmanらの論文「DEC-205受容体を介する成熟樹状細胞への抗原のインビボ誘導は、T細胞予防接種を向上させる(In vivo targeting of antigens to maturing dendritic cells via the DEC-205 receptor improves T cell vaccination)」、(J Exp Med 199(6) (2004) 815-824)。
[114] D. Hawiger、K. Inaba、Y. Dorsett、M. Guo、K. Mahnke、M. Rivera、J.V. Ravetch、R.M. Steinman、M.C. Nussenzweigらの論文「樹状細胞は、インビボ定常条件下で末梢T細胞無応答性を誘発する(Dendritic cells induce peripheral T cell unresponsiveness under steady state conditions in vivo)」、(Journal of Experimental Medicine 194(6) (2001) 769-779)。
【0129】
[115] C.L. van Broekhoven、C.R. Parish、C. Demangel、W.J. Britton、J.G. Altinらの論文「抗原含有リポソームを樹状細胞にターゲティングする:抗腫瘍免疫の誘発及び腫瘍免疫治療のための極めて効果的な手順(Targeting dendritic cells with antigen-containing liposomes: a highly effective procedure for induction of antitumor immunity and for tumor immunotherapy)」、(Cancer Res 64(12) (2004) 4357-4365)。
[116] T. Fifis、A. Gamvrellis、B. Crimeen-Irwin、G.A. Pietersz、J. Li、P.L. Mottram、I.F. McKenzie、M. Plebanskiらの論文「サイズ依存免疫原性:腫瘍に対するナノワクチンの治療及び予防特性(Size dependant immunogenicity: therapeutic and protective properties of nano-vaccines against tumors)」、(J Immunol 173 (2004) 3148-3154)。
[117] M. Gadjeva、A.W. Dodds、A. Taniguchi-Sidle、A.C. Willis、D.E. Isenman、S.K.A. Lawらの論文「補体成分C3の共有結合反応(The covalent binding reaction of complement component C3)」、(J Immunol 161 (1998) 985-990)。
[118] A. Kidane及びK. Parkらの論文「PEO移植ガラス表面による補体活性化(Complement activation by PEO-grafted glass surfaces)」、(J Biomed Mat Res 48 (1999) 640-647)。
【0130】
[119] D.T. O'Hagan及びN.M. Valianteらの論文「ワクチン補助剤の発見及び送達における最近の進歩(Recent advances in the discover and delivery of vaccine adjuvants)」、(Nat Rev Drug Disc 2 (2003) 727-738)。
[120] R.J. Ulevitchの論文「先天免疫系にターゲティングする治療(Therapeutics targeting the innate immune system)」、(Nat Rev Immunol 4 (2004) 512-520)。
[121] A. Pashine、N.M. Valiante、J.B. Ulmerらの論文「ワクチン補助剤の改善により先天免疫応答にターゲティングする(Targeting the innate immune response with improved vaccine adjuvants)」、(Nat Med 11(4) (2005) 563-568)。
[122] Janeway, C.A.の論文「免疫生物学5:健康及び疾患における免疫系(Immunobiology 5 the immune system in health and disease)」、(Churchill Livingstone, Edinburgh, 2001)。
【0131】
[123] Larsen, C. P.らの論文「CD40及びCD28経路をブロックした後の皮膚及び心臓同種移植体の長期的許容(Long-term acceptance of skin and cardiac allografts after blocking CD40 and CD28 pathways)」、(Nature 381 (1996), 434-8)。
[124] Hackstein, H. & Thomson, A.W.らの論文「樹状細胞:免疫抑制薬の薬理的標的の出現(Dendritic cells: emerging pharmacological targets of immunosuppressive drugs)」、(Nat Rev Immunol 4(2004), 24-34)。
[125] Duperrier, K.らの論文「免疫抑制薬は、多岐の分子表現型の誘発にかかわらず、骨髄誘導樹状細胞の異種刺激特性の低下を媒介する(Immunosuppressive agents mediate reduced allostimulatory properties of myeloid-derived dendritic cells despite induction of divergent molecular phenotypes)」、(Mol Immunol 42 (2005), 1531-40)。
[126] Piemonti, L.らの論文「グルココルチコイドは、ヒト樹状細胞分化及び成熟に影響を与える(Glucocorticoids affect human dendritic cell differentiation and maturation)」、(J Immunol 162 (1999), 6473-81)。
[127] K. Duperrier、A. Farre、J. Bienvenu、N. Bleyzac、J. Bernaud、L. Gebuhrer、D. Rigal、A. Eljaafariらの論文「シクロスポリンAは、TNF-アルファ又はLPSによって促進されるが、二本鎖RNA又はCD40Lによって促進されない樹状細胞成熟を阻害する(Cyclosporin A inhibits dendritic cell maturation promoted by TNF-alpha or LPS but not by double-stranded RNA or CD40L)」、(J Leukoc Biol 72(5) (2002) 953-961)。
【0132】
[128] J.I. Lee、R.W. Ganster、D.A. Geller、G.J. Burckart、A.W. Thomson、L. Luらの論文「シクロスポリンAは、インビトロで生成される樹状細胞における共刺激性分子の発現を阻害する:核因子カッパBの核転位の減少との関連(Cyclosporine A inhibits the expression of costimulatory molecules on in vitro-generated dendritic cells: association with reduced nuclear translocation of nuclear factor kappa B)」、(Transplantation 68(9) (1999) 1255-1263)。
[129] A. Panhans-Gross、N. Novak、S. Kraft、T. Bieberらの論文「ヒト上皮ランゲルハンス細胞は、免疫抑制マクロライドタクロリムスの標的である(Human epidermal Langerhans' cells are targets for the immunosuppressive macrolide tacrolimus (FK506))」、(J Allergy Clin Immunol 107(2) (2001) 345-352)。
[130] G. Szabo、C. Gavala、P. Mandrekarらの論文「タクロリムス及びシクロスポリンAは、ヒト骨髄樹状細胞の異種刺激能力及びサイトカイン生成を阻害する(Tacrolimus and cyclosporine A inhibit allostimulatory capacity and cytokine production of human myeloid dendritic cells)」、(J Investig Med 49(5) (2001) 442-449)。
[131] A.M. Woltman、J.W. de Fijter、S.W. Kamerling、L.C. Paul、M.R. Daha、C. van Kootenらの論文「ヒト樹状細胞の分化に対するカルシニューリン阻害薬及びコルチコステロイドの影響(The effect of calcineurin inhibitors and corticosteroids on the differentiation of human dendritic cells)」、(Eur J Immunol 30(7) (2000) 1807-1812)。
【0133】
[132] G. Kwon、M. Naito、M. Yokoyama、T. Okano、Y. Sakurai、K. Kataokaらの論文「薬物送達のためのブロック共重合体ミセル:ドキソルビシンの充填及び放出(Block copolymer micelles for drug delivery: loading and release of doxorubicin)」、(Journal of Controlled Release 48 (1997) 195-201)。
[133] G.S. Kwon、M. Naito、M. Yokoyama、T. Okano、Y. Sakurai、K. Kataokaらの論文「ABブロック共重合体ミセルへのアドリアマイシンの物理的閉じ込め(Physical entrapment of adriamycin in AB block copolymer micelles)」、(Pharm Res 12(2) (1995) 192-195)。
[134] M.B. Villiers、C.L. Villiers、A.M. Laharie、P.N. Marcheらの論文「抗体応答に対する補体C3b及び完全フロイド補助剤の異なる刺激的影響(Different stimulating effects of complement C3b and complete Freund's adjuvant on antibody response)」、(Immunopharmac 42 (1999) 151-157)。
【0134】
[135] P.W. Dempsey、M.E. Allison、S. Akkaraju、C.C. Goodnow、D.T. Fearonらの論文「分子補助剤としての補体のC3d:先天免疫と後天免疫の橋渡し(C3d of complement as a molecular adjuvant: bridging innate and acquired immunity)」、(Science 271(5247) (1996) 348-350)。
[136] K.M. Haas、F.R. Toapanta、J.A. Olivier、J.C. Poe、J.H. Weis、D.R. Karp、J.F. Bower、T.M. Ross、T.F. Tedderらの論文「C3dは、CD21/35発現の不在下で分子補助剤として機能する(C3d functions as a molecular-adjuvant in the absence of CD21/35 expression)」、(J Immunol 172(10) (2004) 5833-5837)。
[137] C.H. Nielsen、E.M. Fischer、R.G.Q. Leslieらの論文「後天免疫応答における補体の役割(The role of complement in the acquired immune response)」、(Immunology 100 (2000) 4-12)。
【0135】
[138] M. Kopf、B. Abel、A. Gallimore、M. Carroll、M.F. Bachmannらの論文「補体成分C3は、T細胞のプライミング及び肺移動を促進させて、急性インフルエンザ感染を抑制する(Complement component C3 promotes T-cell priming and lung migration to control acute influenza virus infection)」、(Nat Med 8(4) (2002) 373-378)。
[139] T. Segura、L.D. Sheaらの論文「遺伝子送達の向上のための、表面に繋ぎ止められたDNA複合体(Surface tethered DNA complexes for enhanced gene delivery)」、(Bioconj Chem, 13(3) (2002) 621-629)。
[140] D. Putnamの論文「長さスケールの遺伝子送達のためのポリマー(Polymers for gene delivery across length scales)」、(Nat Mat, 5 (2006) 439-451)。
[141] H. Kobayashi、M.W. Brechbielらの論文「デンドリマーコアを有するナノサイズのMRI造影剤(Nano-sized MRI contrast agents with dendrimer cores)」、(Adv Drug Delivery Rev. 57 (2005) 2271-2286)。
[142] T. Dutta、N.K. Jainらの論文「ランブジン充填マノキシル化ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーのターゲティング潜在性及び抗HIV活性(Targeting potential and anti-HIV activity of lamivudine loaded mannoxylated poly(propyleneimine) dendrimer)」、(Biochim Biophys Acta xx (2007) xxx-xxx)。
【0136】
[143] A.K. Patri、A. Myc、J. Beals、T.P.Thomas、N.H. Bander、J.R. Bakerらの論文「誘導前立腺癌治療のためのJ591抗体-デンドリマー連結体の合成及びインビトロ試験(Synthesis and in vitro testing of J591 antibody-dendrimer conjugates for targeted prostate cancer therapy)」、(Bioconjugate Chem 15 (2004) 1174-1181)。
[144] C. Plank、K. Mechtler、F.C. Szoka、E. Wagnerらの論文「合成DNA複合体による補体系の活性化:静脈内遺伝子送達のための潜在的障壁(Activation of the complement system by synthetic DNA complexes: a potential barrier for intravenous gene delivery)」、(Hum. Gene Ther. 7 (1996) 1437-1446)。
[145] R. Duncan、L. Issoらの論文「デンドリマーの生体適合性及び毒性(Dendrimer biocompatibility and toxicity)」、(Adv. Drug Delivery Rev. 57 (2005) 2215-2237)。
【図面の簡単な説明】
【0137】
(図の簡単な説明)
【図1】最初のリンパへのナノ粒子吸収の比較を示す顕微鏡合成写真である。それは、直径が(A)20nm、(B)45nm及び(C)100nmの蛍光装填PPSナノ粒子の90分間の注入後のマウスの尾の皮膚におけるリンパ毛細血管網の蛍光顕微リンパ管造影写真を示す。一定の露光で撮像した。六角形のリンパ網が、20nmの粒子ではっきりと見えた。棒=100μm。
【図2】ナノ粒子のリンパ節滞留を示す顕微鏡合成写真である。20、45及び100nmのPPSナノ粒子のマウスの尾への注入後の流入領域リンパ節の断面を示す。注入の24、72、96及び120時間後にリンパ節を除去した。20及び45nmのナノ粒子ではすべての時点でナノ粒子が強固に存在したが、100nmナノ粒子は、リンパ節に見られなかった。棒=200μm。
【図3】リンパ節内のナノ粒子の局在化を示す顕微鏡合成写真である。20nmのPPSナノ粒子の注入から96時間後の直列リンパ切断面を示す。(A)CD3e(T細胞)、(B)CD45R(B細胞)及び(C)CD68(マクロファージ(macrophage)(Macs)及び樹状細胞(dendritic cell)(DC))に対する抗体として示される免疫細胞を識別した。ナノ粒子は、T細胞及びB細胞帯には明らかに存在していないが、マクロファージ及びDCと強く共存している。棒=100μm。(D)内皮マーカCD31は、リンパ節洞構造と相対的なナノ粒子(緑色)分布を証明している。棒=100μm。
【0138】
【図4】マクロファージ及び樹状細胞(dendritic cell(DC))によるナノ粒子の内在化を示す顕微鏡合成写真である。20nmのPPSナノ粒子の注入から96時間後におけるリンパ節断面の共焦点画像を示す。(A)マクロファージ及びDCによって表されるCD68に対する染色は、これらの細胞によるナノ粒子の内在化を示している。(B)専らDCに見られるDec-205に対する染色は、DCもナノ粒子を内在化させることを証明している。棒=20μm。
【図5】ナノ粒子(NP)の細胞吸収の定量を示す棒グラフである。流動細胞分析を用いて、NP(FITC+)を内在化させるリンパ節APC(MHCII+)及びDC(CD11c+)の割合を測定した。(A)注入から24時間後に、リンパ節における38%を超えるAPC及び50%のDCが20nmのナノ粒子を内在化させた。45nmのナノ粒子の両細胞集団への吸収が低下し、100nmのナノ粒子を吸収したのは全APCの〜10%にすぎなかった。(B)24時間にわたるナノ粒子によるAPC及びDCのインビトロパルシング後は、ほぼすべてのAPC及びDCが、3種類のすべての粒径のナノ粒子を内在化させた。したがって、すべての3種類のナノ粒子粒径がインビトロで等しく吸収されるため、インビボ注入後に見られる差は、注入後にリンパに吸収されるナノ粒子の差に起因する可能性が最も大きい。これらの結果も、ナノ粒子吸収は、後にリンパ節に移動する抹消部位の細胞によってではなく、リンパ節で生じることを示す。
【図6】ともに、マクロファージ及び樹状細胞(DC)の存在が経時的に増大することを示す(A)顕微鏡合成写真及び(B)棒グラフである。20nmPPSナノ粒子(NP)の注入から24及び96時間後におけるマクロファージ(Mac)及びDC(CD68+細胞)及び核に対して染色されたリンパ節断面を示す。Mac及びDC共存が経時的に増大した。棒=100μm。(B)細胞流動分析を用いて、20nmのナノ粒子の注入から24及び96時間におけるAPC(MHCII+)及びDC(CD11c+)であるナノ粒子(NPs+)を含むリンパ節(LN)の割合を測定した。24時間後に対して96時間後におけるAPC及びDCであるナノ粒子を含む細胞の割合が有意に増加している。また、24時間後におけるナノ粒子を含むほぼすべてのAPCがDCであるように思われる。
【0139】
【図7】ナノ粒子(NP)内在化の後のDC成熟マーカ、CD86及びCD80の発現の増加を示すグラフを示す。(A)PBS又は20nm粒子による注入から24時間後におけるDC(CD11c+)のCD86発現の典型的なヒストグラム。ナノ粒子を含むDC(CD11c+FITC+)について、CD86発現の明確な変化が観察される。(B)CD86及びCD80を明確に発現する細胞の割合は、ナノ粒子内在化の後の方が有意に大きくなっていると判断される。また、CD86及びCD80発現は、注入から96時間後もより高いレベルを維持していることが示される。
【図8】PLURONIC F-127が、末端OH基がOCH3基に変換されるように改質されること(A)を示すデータを示す。(B)PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)を血清とともにインキュベートすると、血清+PBSにおけるC3aの倍増を通じて測定されたメトキシ末端PLURONIC(CH3-NP)で安定化されたナノ粒子より強い補体活性化が引き起こされる。
【図9】ナノ粒子表面化学作用が、DC成熟応答を支配することを示すグラフを示す。25nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)は、メトキシ末端PLURONIC(CH3-NP)で安定化された25nmのナノ粒子及び20nmのカルボキシル化ポリスチレンナノ球体(COOH-NS)よりDCをはるかに高度に成熟させる。
【0140】
【図10】ナノ粒子粒径が、DC成熟応答を支配することを示すグラフを示す。25nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-NP)は、DC成熟を誘発するのに対して、100nmのPLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子は、そうではない。
【図11】(A)PLURONICがビニルスルホン(PL-VS)で官能化される、ナノ粒子を改質するための化学的スキーム及びリンパ節におけるその顕微鏡写真を示す。次いで、ビニルスルホンをオバルブミン(OVA)上の遊離システインに結合させることができる。次いで、PL-VS-OVAをPLURONICと混合し、25nmのナノ粒子を通常の方法で合成する。(B)25nmのOVA連結PLURONIC安定化ナノ粒子は、OVAをリンパ節に送達する。
【図12】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性PPSナノ粒子(OH-OVA-NP)が、24時間後におけるマウスへの注入後のLPSによるOVAと同様のレベルのDC成熟を誘発することを示すグラフを示す。
【0141】
【図13】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性PPSナノ粒子(OH-OVA-NP)は、OT-IIマウスからのT細胞の養子移入後のLPSによるOVAと同じレベルのCD4 T細胞増殖を引き起こすことを示すグラフを示す。
【図14】25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)補体活性ナノ粒子(OH-OVA-NP)は、IFN-γスポット/リンパ節細胞を通じて測定されたCD8 T細胞記憶を引き起こすことを示すグラフを示す(P<0.05)。
【図15】21日目のOVA Ab力価を示すグラフを示す。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)ナノ粒子(OH-OVA-NP)は、LPSによるOVAと同様のレベルのOVA Ab力価を引き起こす。25nmのOVA連結メトキシ末端PLURONIC安定化PPSナノ粒子及び100nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)ナノ粒子(OH-OVA-100)は、より低いAb力価を引き起こす。25nmのOVA連結PLURONIC安定化(つまりヒドロキシル化)(OH-OVA-25)は、C3-/-マウスにおいてより低いAb力価を引き起こす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体を活性化する合成ポリマーを含む合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均粒径を有し、該粒子は、抗原とさらに結合されている、前記ナノ粒子組成物。
【請求項2】
前記抗原が、前記粒子と共有結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記合成ポリマーがヒドロキシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記合成ポリマーが、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記合成ポリマーが、前記ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーの疎水性部分に吸着する疎水性部分を含み、それによって前記合成ポリマーが該コアに結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記合成ポリマーがポリアルキレンオキシドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記合成ポリマーがポリエチレングリコールを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記合成ポリマーがPLURONICである、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記合成ポリマーがPLURONIC-F127である、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のポリマーがポリプロピレンスルフィドである、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、細胞に特異的に結合する標的化リガンドを含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、腫瘍免疫治療のための抗原又は感染性疾患の抗原である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子が、炎症性サイトカイン及びToll様受容体に対するリガンドからなる群から選択される危険信号をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記会合が混合又は吸着を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が、ポリペプチド又はグリコペプチド抗原である、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記集合体が、約10nmから約50nmの平均粒径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記抗原が前記粒子と共有結合し、前記合成ポリマーがヒドロキシル化され、前記合成ポリマーが、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、前記合成ポリマーが、前記ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーと共有結合し、前記第2のポリマーが、ポリプロピレンスルフィドであり、前記合成ポリマーが、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、PLURONIC及びPLURONIC-F127からなる群の要素を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記粒子が、細胞に特異的に結合する標的化リガンドを含まず、前記抗原が、腫瘍免疫治療又は感染性疾患に対する抗原であり、前記組成物が、炎症性サイトカイン及びToll様受容体に対するリガンドからなる群から選択される危険信号をさらに含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記合成ポリマーが、少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとの両親媒性ブロック共重合体を含み、該ブロック共重合体が水溶液中で自己集合して前記粒子を形成し、該親水性ブロック上の官能基が補体を活性化する、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
前記官能基がヒドロキシルである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記親水性ブロックがヒドロキシル末端ポリエチレングリコールである、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
第1のポリマーと、重合時に使用されるエマルジョンである第2のポリマーとをエマルジョン重合して、20から50nmの平均直径を有する粒子の集合体を製造すること、補体を活性化するヒドロキシル官能基を含むように該第2のポリマーを選択すること、及び免疫治療薬を該粒子と会合させることを含む、ナノ粒子の免疫治療組成物の製造方法。
【請求項23】
前記第1のポリマーが生分解性である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
患者の免疫系を刺激する免疫治療薬を送達する方法であって、該方法は、合成粒子の集合体を該患者に導入することを含み、該粒子は、補体を活性化する第1のポリマーを含み、該集合体は、約10nmから約50nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、該粒子は、第1のポリマーに結合する第2のポリマーを含む、前記方法。
【請求項25】
前記第2のポリマーが生分解性である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記粒子がリンパ節の抗原提示細胞に特異的に標的化される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該粒子は、免疫抑制薬を含み、該粒子は、抗原とさらに会合されている、前記ナノ粒子組成物。
【請求項28】
前記粒子が、少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとの両親媒性ブロック共重合体を含み、該ブロック共重合体が、水溶液中で自己集合して、前記粒子を形成する、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記集合体が、約10nmから約50nmの平均粒径を有する、請求項27記載の組成物。
【請求項1】
補体を活性化する合成ポリマーを含む合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均粒径を有し、該粒子は、抗原とさらに結合されている、前記ナノ粒子組成物。
【請求項2】
前記抗原が、前記粒子と共有結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記合成ポリマーがヒドロキシル化されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記合成ポリマーが、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記合成ポリマーが、前記ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーの疎水性部分に吸着する疎水性部分を含み、それによって前記合成ポリマーが該コアに結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記合成ポリマーがポリアルキレンオキシドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記合成ポリマーがポリエチレングリコールを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記合成ポリマーがPLURONICである、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記合成ポリマーがPLURONIC-F127である、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のポリマーがポリプロピレンスルフィドである、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、細胞に特異的に結合する標的化リガンドを含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、腫瘍免疫治療のための抗原又は感染性疾患の抗原である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子が、炎症性サイトカイン及びToll様受容体に対するリガンドからなる群から選択される危険信号をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記会合が混合又は吸着を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が、ポリペプチド又はグリコペプチド抗原である、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記集合体が、約10nmから約50nmの平均粒径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記抗原が前記粒子と共有結合し、前記合成ポリマーがヒドロキシル化され、前記合成ポリマーが、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、前記合成ポリマーが、前記ナノ粒子のコアを形成する第2の生分解性ポリマーと共有結合し、前記第2のポリマーが、ポリプロピレンスルフィドであり、前記合成ポリマーが、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、PLURONIC及びPLURONIC-F127からなる群の要素を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記粒子が、細胞に特異的に結合する標的化リガンドを含まず、前記抗原が、腫瘍免疫治療又は感染性疾患に対する抗原であり、前記組成物が、炎症性サイトカイン及びToll様受容体に対するリガンドからなる群から選択される危険信号をさらに含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記合成ポリマーが、少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとの両親媒性ブロック共重合体を含み、該ブロック共重合体が水溶液中で自己集合して前記粒子を形成し、該親水性ブロック上の官能基が補体を活性化する、請求項16記載の組成物。
【請求項20】
前記官能基がヒドロキシルである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記親水性ブロックがヒドロキシル末端ポリエチレングリコールである、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
第1のポリマーと、重合時に使用されるエマルジョンである第2のポリマーとをエマルジョン重合して、20から50nmの平均直径を有する粒子の集合体を製造すること、補体を活性化するヒドロキシル官能基を含むように該第2のポリマーを選択すること、及び免疫治療薬を該粒子と会合させることを含む、ナノ粒子の免疫治療組成物の製造方法。
【請求項23】
前記第1のポリマーが生分解性である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
患者の免疫系を刺激する免疫治療薬を送達する方法であって、該方法は、合成粒子の集合体を該患者に導入することを含み、該粒子は、補体を活性化する第1のポリマーを含み、該集合体は、約10nmから約50nmの平均直径を有し、該第1のポリマーは、補体を活性化するアミノ酸の配列又は糖類の配列を含まず、該粒子は、第1のポリマーに結合する第2のポリマーを含む、前記方法。
【請求項25】
前記第2のポリマーが生分解性である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記粒子がリンパ節の抗原提示細胞に特異的に標的化される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
合成粒子の孤立集合体を含むナノ粒子組成物であって、該集合体は、約10nmから約100nmの平均直径を有し、該粒子は、免疫抑制薬を含み、該粒子は、抗原とさらに会合されている、前記ナノ粒子組成物。
【請求項28】
前記粒子が、少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとの両親媒性ブロック共重合体を含み、該ブロック共重合体が、水溶液中で自己集合して、前記粒子を形成する、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記集合体が、約10nmから約50nmの平均粒径を有する、請求項27記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−527566(P2009−527566A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556431(P2008−556431)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/004671
【国際公開番号】WO2007/098254
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508252158)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/004671
【国際公開番号】WO2007/098254
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508252158)
【Fターム(参考)】
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