説明

免疫賦活作用を有し、且つ胃液耐性を有する新規乳酸菌

【課題】免疫賦活作用及び胃液耐性を有する新規な乳酸菌株や、該新規乳酸菌株を含有する免疫賦活組成物、該免疫賦活組成物を含有する飲食品、医薬品を提供する。
【解決手段】免疫賦活作用および胃液耐性を有する新規な乳酸菌ペディオコッカスsp.KB1(NITE P−755)および、乳酸菌ペディオコッカスsp.KB1(NITE P−755)を有効成分として用いた、免疫賦活活性を有する飲食品、医薬品等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活作用を有し、且つ胃液耐性を有する乳酸菌ペディオコッカス(Pediococcus)sp.KB1(NITE P−755)、該乳酸菌を含有する免疫賦活組成物、該免疫賦活組成物を含有する飲食品、及び医薬品等に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、古来より、チーズ、ヨーグルト、発酵バター等の乳製品や発酵ソーセージ、発酵サラミ等の畜肉製品を製造する際にスターターとして使用されている微生物であり、近年では、整腸作用や免疫賦活作用といった健康維持・増進に非常に有益な生理活性を有することから注目されている。最近の研究により、腸管には全末梢リンパ球の50〜60%が集中していることが明らかにされており、腸内の免疫賦活化が全身の免疫応答の制御にきわめて重要であると考えられている。腸内において、乳酸菌が、その生理活性を発揮するためには、胃酸や胆汁酸という消化液に対して耐性であることが必要であるといわれている(非特許文献1)。また、腸管への付着性の高い乳酸菌は、腸管に定着して効果を十分に発揮できること、さらに、腸管への有害微生物の付着を防ぐことが知られている。したがって、経口で乳酸菌を摂取する場合、乳酸菌の機能性の高さもさることながら、生きた状態で腸管に到達し、かつ滞留しうることが望ましいとされている。
【0003】
このような有益な生理活性を有する乳酸菌の多くは、発酵乳製品や腸管から分離された動物素材由来のものであるが、植物素材を分離元とする植物性乳酸菌においても免疫賦活作用を有する株が見出されている(特許文献1、非特許文献2及び3)。また、生きたまま腸内に到達できる乳酸菌としては、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌)やラクトバチルス属に属する乳酸菌が知られており、これら有用な乳酸菌を複数組み合わせることで、更なる効果が得られることが期待される(特許文献2〜4)。また、現在までに、免疫賦活作用と胃液耐性の両性質を備えた乳酸菌として、ラクトバチルス・ブレビス(特許文献5)や、ペディオコッカス・ペントサセウスや(特許文献6)や、ロイコノストック・ガルリカム(特許文献6)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−501013号公報
【特許文献2】特開2006−298778号公報
【特許文献3】特開2005−97280号公報
【特許文献4】特開2007−259729号公報
【特許文献5】特開2009−112232号公報
【特許文献6】特開2008−54556号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】学会出版センター、腸内フローラシンポジウム3、腸内フローラとプロバイオティクス、p41−55、光岡知足 編、1998年
【非特許文献2】岸惇子、小久保あおい、赤谷薫、扇谷えり子、藤田晢也、岸田綱太郎、Pasken Journal 15. 21-26, (2002)
【非特許文献3】赤谷薫、岸惇子、扇谷えり子、小久保あおい、藤田晢也、岸田綱太郎、第6回腸内細菌学会予稿集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、免疫賦活作用及び胃液耐性を有する新規な乳酸菌株、該新規乳酸菌株を含有する免疫賦活組成物、該免疫賦活組成物を含有する飲食品、医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、土壌、発酵食品、腸内より数千以上の菌株をスクリーニングし、その性質について鋭意検討した。その結果、優れた免疫賦活作用及び胃液耐性を有し、更に腸管への付着性の高い乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を単離することに成功し、さらに、上記乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1の16S rRNAの塩基配列の解析結果から、この菌が既知の乳酸菌のいずれにも該当しない新種であることを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)免疫賦活作用を有し、且つ胃液耐性を有する乳酸菌ペディオコッカス(Pediococcus)sp.KB1(NITE P−755)、
(2)乳酸菌ペディオコッカス(Pediococcus)sp.KB1(NITE P−755)を有効成分として含有する免疫賦活組成物、
(3)上記(2)に記載の免疫賦活組成物を含有する飲食品、及び
(4)上記(2)に記載の免疫賦活組成物を含有する医薬品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)は、強酸性でプロテアーゼを含む条件下においても高い生存率が認められたことから、経口摂取により生きたまま腸内に到達することが可能と考えられる。本発明の乳酸菌は死菌体であっても高い免疫賦活活性を示すものであり、生菌として腸内に到達することにより、さらに持続的な免疫賦活効果を示すことが期待できる。以上のことから、本発明の乳酸菌を免疫賦活組成物として用いることにより、高い免疫賦活活性を有する飲食品や医薬品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)株の形態を示す写真である。
【図2】本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)、及び既知の乳酸菌が、免疫細胞のインターフェロン(IFN)−γ産生に及ぼす影響を比較検討した結果を示す図である。図中、KB1はペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を、Aはラクトバチルス・キャセイ(L.casei)を、Bはペディオコッカス・ペントサセウス(P.pentosaceus)を、Cはラクトバチルス・パラキャセイ(L.paracasei)を、Dはラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)を、Eはビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)をそれぞれ示す。
【図3】本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)、及び既知の乳酸菌が、免疫細胞のインターロイキン(IL)−12産生に及ぼす影響を比較検討した結果を示す図である。図中、KB1はペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を、Aはラクトバチルス・キャセイ(L.casei)を、Bはペディオコッカス・ペントサセウス(P.pentosaceus)を、Cはラクトバチルス・パラキャセイ(L.paracasei)を、Dはラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)を、Eはビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、Fはラクトバチルス・ギャセリ(L.gasseri)を、Gはエンテロコッカス・フェカリス(E.faecalis)をそれぞれ示す。
【図4】本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)、及び標準株ペディオコッカス・ペントサセウス(JCM 5890)を人工胃液により処理し、それぞれの菌株の経時的な生存率(%)の変化を比較検討した結果を示す図である。図中、KB1は、ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を、Zはペディオコッカス・ペントサセウス(JCM 5890)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の乳酸菌は、配列番号1に示される16S rDNA塩基配列を有する新規の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1であり、受託番号NITE P−755として、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8に所在する独立行政法人製品評価基盤技術機構、特許微生物寄託センターに2009年5月14日に寄託されている。本発明の乳酸菌には、ペディオコッカス sp.KB1の生菌や死菌を含む培養物も便宜上含まれる。
【0012】
本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)は、乳酸菌の培養を行うための通常の条件により培養することができる。培養に用いる培地としては生育可能な培地であれば良く特に制限はないが、一般に乳酸菌を培養する液体培地として、例えば、MRS培地(メルク社製)、牛乳成分を利用したホエー培地、脱脂乳培地等の培地が挙げられる。培養は、静置培養でも良いし、該培養液が液体であれば攪拌による攪拌培養でも良い。また、培養する系を嫌気状態にしても、好気状態にしても良い。
図1に、本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の形態を示す。また、菌学的性質の詳細を以下に示す。
細胞形態 四連球菌
芽胞 形成せず
グラム染色性 陽性
運動性 非運動性
カタラーゼ反応 陰性
15℃での生育 生育良好
45℃での生育 生育せず
グルコースからのガス生成 陰性
初発pH pH6で増殖可能
【0013】
糖の資化性(陽性:+、陰性:−)(30℃、3日間培養)
mannitol (−) mannose (+)
lactose (+) fructose (+)
cellobiose (+) melibiose (+)
melezitose (−) raffinose (+)
maltose (+) starch (−)
sorbitol (−) D-ribose (+)
trehalose (+) D-xylose (−)
galactose (+) rhamnose (+)
salicin (+) L-arabinose (+)
sucrose (−)
【0014】
本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)は、胃液に対して耐性であり、且つ、腸管への付着性の高い乳酸菌である。さらに、以下の実施例に示されるように、本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)は、マウス脾臓細胞のインターフェロン(IFN)−γ及びインターロイキン(IL)−12産生を強く促進する効果を有する。IFN−γは、免疫系を活性化して抗ウイルス活性を奏するサイトカインであることから、INF−γの産生が促進されると免疫系が活性化されることになる。また、INF−γは細胞性免疫を活性化するTh1細胞への分化にも関与する。一方、IL−12は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性化と細胞性免疫の活性化を介して、非特異的な免疫と抗原特異的な細胞免疫の両方を賦活化するサイトカインであり、IL−12の産生が促進されると細胞性免疫が活性化され、非特異的な免疫と抗原特異的な細胞免疫の両方が賦活化されることから、Th1/Th2バランスをTh1優位にすることを可能にすると考えられる。以上のことから、本発明の乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)は優れた免疫賦活活性を有する菌株であり、免疫賦活組成物の有効成分として用いることができる。
【0015】
本発明の免疫賦活組成物としては、乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の菌体を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、上記菌体は、生菌体であっても、死菌体であってもよく、また、細胞膜や細胞質などの菌体の一部であってもよい。腸内での持続的な効果を期待する場合には生菌体であることが好ましい。また、上記免疫賦活組成物には、1又は複数の異なる種類の乳酸菌がさらに含まれていてもよい。さらに、本発明の実施の態様として、乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の、免疫賦活組成物の調製のための使用や、乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を経口投与する免疫賦活方法が含まれる。
【0016】
本発明の免疫賦活組成物は飲食品に配合して用いることにより、飲食品に免疫賦活活性を付与することができる。本発明の免疫賦活組成物を飲食品に配合して用いるためには、その有効成分の有効量を飲食品の製造原料段階、あるいは製造した製品の段階等で添加、配合する。ここで「有効成分の有効量」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、有効成分が摂取されるような含有量を意味するものであり、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定することができる。本発明における有効成分の飲食品への有効投与量または有効摂取量を、乳酸菌の菌数で表示すると、1日当たりの摂取量が1×10個以上が好ましく、より好ましくは1日あたり1×1010個以上、更に好ましくは5×1010個以上である。
【0017】
本発明の飲食品は、本発明の免疫賦活組成物を含有するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、本発明の免疫賦活組成物をそのまま飲食品やサプリメントとして調製したものや、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等をさらに配合したものや、液状、半液体状若しくは固体状にしたものや、一般の飲食品へ添加、配合したものを例として挙げることができる。また、本発明の飲食品としては、乳製品類、肉類、パン類、飲料、野菜類などの、一般的な乳酸菌を利用して生産される飲食品であってもよく、これらの飲食品の製造における乳酸菌又はその一部として、あるいは、製造した該飲食品の添加物として、本発明の免疫賦活組成物を用いることができる。また、本発明の免疫賦活組成物の有効成分である乳酸菌を飲食品に添加する場合に、乳酸菌自体の発酵を必要とせず、かつ、飲食品自体の香味の保持を図る場合には、乳酸菌を例えば加熱殺菌のような処理により殺菌して用いることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の飲食品は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、あるいは病者用食品であってもよく、その製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等を例として挙げることができる。
【0019】
また、本発明の免疫賦活組成物は、薬学的に許容されうる担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合することにより、免疫賦活活性を有する医薬品として用いることができる。上記医薬品としては、本発明の免疫賦活組成物を含有するものであれば特に制限されるものではなく、経口的或いは非経口的に投与することができ、経口剤としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等を挙げることができ、非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)等を挙げることができる。薬学的に許容される賦形剤や添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等を挙げることができ、上記担体としては、具体的には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を例として挙げることができる。
【0020】
以下に示す実施例において、本発明を具体的且つ更に詳細に説明する。下記実施例は本発明の説明のためのみのものであり、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
[ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の免疫賦活効果]
本発明の新規乳酸菌ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の免疫賦活効果を確認する目的で、本発明の新規乳酸菌と、公知の免疫賦活効果の高いとされる数種の乳酸菌との、免疫細胞のIFN−γ及びIL−12産生に及ぼす影響をin vitroにおいて比較した。なお、試験には培養した各種の乳酸菌の死菌体を用いた。細胞培養用96穴プレートにDBA/2マウス脾臓細胞を5×10個/穴、及び各乳酸菌の死菌体を濃度0.01μg/mL、0.1μg/mL及び1μg/mLになるように添加した。細胞培養液の総量は250μL/穴とした。細胞培養を開始してから2日後に培養上清を回収し、ELISA法により上清中のIFN−γ及びIL−12の濃度を測定した。
図2に、INF−γの測定結果を示す。ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を添加した系は、コントロール(無添加系)と比較して顕著にIFN−γ産生が促進された。この促進作用は、比較した公知乳酸菌と同等以上であることが確認された。なかでも、ラクトバチルス・キャセイ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ラクトバチルス・パラキャセイ、ラクトバチルス・ブレビスと比較した場合、有意なIFN−γ産生量の増加が確認された。
図3に、IL−12の測定結果を示す。ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)を添加した系においては、コントロール(無添加系)と比較して顕著にIL−12産生が促進された。この促進作用は、比較した公知乳酸菌と同等以上であることが確認された。なかでも、ラクトバチルス・ギャセリと比較した場合、有意なIL−12産生量の増加が確認された。
【実施例2】
【0022】
[ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の人工胃液耐性]
ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の胃液耐性を以下の方法で人工胃液を用いて評価した。
5.2%のMRS培地に0.04%のペプシンを添加し、6M HClにてpH2.5とし、人工胃液を調製した。この人工胃液にKB1株を約2 x 10/mlとなるように添加し、37℃条件下にて1〜3時間培養した。培養1時間、2時間及び3時間目に培養液の一部を適当に希釈し、MRS培地に塗布し、37℃で48時間嫌気培養した。生育してきたKB1株のコロニー数をコロニーカウント法にて計測し、生存率(%)の変化を測定した。同様の実験をKB1株のかわりに標準株ペディオコッカス・ペントサセウス(JCM 5890)を用いて行った。
結果を図4に示す。人工胃液処理前の生存率を100%としたとき、ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の生存率は90%で、標準株ペディオコッカス・ペントサセウス(JCM 5890)よりも顕著に高いことが明らかとなった。この結果から、ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)が優れた人工胃液耐性を有することが示唆された。
【実施例3】
【0023】
[ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)の腸管への付着性]
ペディオコッカス sp.KB1の腸粘膜への付着能力を、Caco−2細胞を用いた下記試験方法により評価した。
25mMグルコースを含むDMEM培地(GIBCO DMEM 11971)に、10%非働化済みFBS、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)を添加し、Caco−2細胞培養用培地を調製した。この培地を6穴プレートに2ml分注し、Caco−2細胞を10細胞/mlとなるように添加した。
5%CO2、37℃で、2日間おきに培地を交換し、2週間培養した(2x106細胞/穴)。培養後、培養液を取り除き、これに抗生物質を添加していないCaco−2細胞培養用培地に懸濁した乳酸菌溶液を2ml添加した。乳酸菌として本発明のペディオコッカス sp.KB1及び腸粘膜への付着能力を有するとされるL.acidophilus JCM1132を用いた。乳酸菌溶液を添加後、5%CO2、37℃で1時間インキュベーションした。培養液を取り除き、PBS(+)バッファー(シグマ社製)で3回洗浄後、トリプシン処理によりCaco−2細胞を剥がし、PBS(−)(シグマ社製)に懸濁し回収した。その回収溶液の1/10希釈系列を調製し、この希釈液1mlをシャーレに添加し、このシャーレにMRS寒天培地20ml添加して混合した。37℃で2日間嫌気培養し、出現した乳酸菌のコロニー数を測定し、付着乳酸菌数を算出した。
下記の式により乳酸菌のCaco−2細胞への付着率を算出した。結果を表1に示した。
乳酸菌付着率(%)=(付着乳酸菌数/添加乳酸菌数) × 100
【0024】
【表1】

【0025】
ペディオコッカス sp.KB1はL.acidophilus JCM1132と同等以上のCaco−2細胞付着率を示し、ヒトの腸管内に付着可能であることが分かった。
【実施例4】
【0026】
[16S rDNAの塩基配列による菌の同定]
ペディオコッカス sp.KB1(NITE P−755)株の16S rDNA−Full分子系統解析を株式会社テクノスルガ・ラボに依頼し解析を行った。解析の結果得られた塩基配列を配列番号1に示す。16S rRNAの塩基配列の解析結果から、この菌が既知の乳酸菌のいずれにも該当しない新種であることが明らかとなった。
【受託番号】
【0027】
NITE P−755

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫賦活作用を有し、且つ胃液耐性を有する乳酸菌ペディオコッカス(Pediococcus)sp.KB1(NITE P−755)。
【請求項2】
乳酸菌ペディオコッカス(Pediococcus)sp.KB1(NITE P−755)を有効成分として含有する免疫賦活組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の免疫賦活組成物を含有する飲食品。
【請求項4】
請求項2に記載の免疫賦活組成物を含有する医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−41499(P2011−41499A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191067(P2009−191067)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(598043054)日生バイオ株式会社 (21)
【Fターム(参考)】