入力装置
【課題】嗜好に合うデータを直感的にユーザに選択させる。
【解決手段】 仮想的な座標系が設定された入力インターフェース3に入力用ピン7が差し込まれると、制御部4は、入力用ピン7が差しこまれた座標に関連付けられた音楽コンテンツの識別情報をマッチングファイル12から読み出す。マッチングファイル12では、関連のある音楽コンテンツに近い座標を割り当てている。入力用ピン7の差し込み時に「ズレ」が発生するが、この「ズレ」により、入力装置1への入力はユーザの意思と偶然とを反映したものとなる。
【解決手段】 仮想的な座標系が設定された入力インターフェース3に入力用ピン7が差し込まれると、制御部4は、入力用ピン7が差しこまれた座標に関連付けられた音楽コンテンツの識別情報をマッチングファイル12から読み出す。マッチングファイル12では、関連のある音楽コンテンツに近い座標を割り当てている。入力用ピン7の差し込み時に「ズレ」が発生するが、この「ズレ」により、入力装置1への入力はユーザの意思と偶然とを反映したものとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザからの入力を受け付ける入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANやブルートゥース(Bluetooth;登録商標)などの近距離無線通信を用いた狭域ネットワークが一般化している。このようなネットワークでは、各機器にデータを格納するのではなく、サーバでデータを一括管理し、必要に応じてサーバからデータをダウンロードすることができる。
【0003】
このような環境におけるクライアントは、データを格納する補助記録手段や記録媒体の再生機構が不要となるため、形状の自由度が増す。また、サーバでデータを一括管理する場合、サーバには膨大なデータが格納されると考えられる。膨大なデータの検索を効率化するために、クライアントには使用される環境に応じた形状や機能が要求される。
【0004】
図12は、従来の電子機器におけるデータの検索画面を示す。図12は、音楽データの検索画面であり、階層構造を持ち、“アーティスト名”、“楽曲名”、“ジャンル”などの属性を指定することで音楽データが絞られる。この場合、GUI(Graphical User Interface)の画面をマウスで操作して目的の音楽データ選択する。この場合、マウスの代わりに十字キーを用いることもできる(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−264102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の検索方法は、ユーザが“アーティスト名”や“楽曲名”などの情報を予め知っていることを前提とした検索方法である。ユーザは、検索対象の音楽を意識し、特定の楽曲を検索するために検索条件を絞りこむ。この検索方法は、“アーティスト”、“アルバム”、“楽曲名”という音楽データの分類に合致しておりユーザの検索対象が明確な場合には優れた検索方法といえる。しかしながら、ユーザが検索条件を知らない場合、検索対象を絞りこむことができず、目的の音楽コンテンツを発見できない場合がある。特に、サーバには、何千曲、何万曲といった膨大な音楽データが格納される。膨大な曲の“アーティスト名”や“楽曲名”を記憶して検索条件を絞り込む作業はユーザの負担になる。また、この検索方法では、サーバに格納された音楽全体の俯瞰も難しい。
【0007】
また、近年のオーディオプレーヤなどには、ランダム再生やシャッフル再生と呼ばれる機能を備えたものがある。これらの機能は、機器側が再生する音楽コンテンツを選択するというものである。ランダム再生やシャッフル再生で音楽コンテンツを選択した場合、機器が選択した音楽コンテンツがユーザの嗜好に一致するとは限らない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、嗜好に合うデータを直感的にユーザに選択させる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明を適用した入力装置は、選択子によって指定される選択面を有する入力手段と、コンテンツの属性に基づきコンテンツの識別情報を選択面の点に関連付ける関連付け手段と、関連付け手段を参照して、選択子によって指定された選択面上の点をコンテンツの識別情報に変換する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明を適用した入力装置は、入力手段の選択面を選択子によって指定する。制御部は、選択子によって指定された選択面上の点をコンテンツの識別情報に変換する。コンテンツの識別情報は、コンテンツの属性に基づき選択面の座標に割り当てられている。選択面の近隣の点は、関係の深いコンテンツが関連付けられる。選択面を選択子で指定する際、ユーザが選択しようとした選択面上の点と実際に選択した点には「ズレ」が生じる。この「ズレ」がユーザの予測しなかった新たな発見を引き起こす。これにより、ランダムとは異なるユーザの意思と偶然との両方を反映したデータ選択が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を適用した入力装置1について説明する。図1は入力装置1の外観図であり、図2は入力装置1の分解斜視図である。
【0012】
入力装置1は、選択子としての入力用ピン7を支持する入力用ピン支持部2、ユーザの入力を受け付ける入力手段としての入力インターフェース3、入力装置1全体を制御する制御部4、音楽コンテンツが格納されている外部機器との通信を行う通信部5、音声データを増幅する増幅器6、増幅された音声データを発音するスピーカ8を備える。
【0013】
入力装置1の最上部には、入力用ピン7を支持する入力用ピン支持部2が設けられる。入力用ピン支持部2は、入力装置1の筐体9の開口部を通して外部に露出している。入力入力用ピン支持部2は、入力用ピン7が差し込まれる。
【0014】
入力用ピン支持部2の下側には入力インターフェース3が設けられる。入力インターフェース3は、タッチパネルのように、入力と表示との両方の機能を備える。入力インターフェース3は、入力用ピン支持部2と略同じ面積をもち、入力用ピン支持部2に重ね合わせるように取り付けられる。入力用ピン支持部2は透過性を有する素材でできており、入力インターフェース3の表示内容は、入力用ピン支持部2を透過して外部から見ることができる。
【0015】
入力装置1の下部には、通信部5、制御部4、増幅器6、スピーカ8が収納される。これらは同じ基板10に取り付けられる。通信部5、制御部4、増幅器6などの機能を持つチップが中央に配置され、このチップの両側にスピーカ8が取り付けられる。
【0016】
図3は、入力装置1の電気的な構成を示すブロック図である。制御部4は、入力インターフェース3、通信部5からデータを入力し、入力インターフェース3、増幅器6、通信部5にデータを出力する。制御部4には、音楽コンテンツの属性を格納した音楽ファイル10、及び入力インターフェース3上の座標と音楽コンテンツの識別情報とを関連付けるマッチングファイル12とが格納されている。音楽コンテンツの識別情報とは、例えば、ISRC(International Standard Release Code)のように音楽コンテンツを一意に識別する情報である。
【0017】
図4は、入力インターフェース3上の座標と音楽コンテンツの属性との関連を視覚化しているが、実際には、見せない若しくは見せるが選択点と各コンテンツの対応までは直感的に分からないようにしている。図4(a)の例では、入力インターフェース3の座標を音楽のジャンルに関連付けている。ここでは、右上から時計回りに“JAZZ”、“BOSANOVA”、“HOUSE”、“TECHNO”、“J−POP”、“ROCK”の領域が形成されている。“JAZZ”の領域が一番広く、“ROCK”、“J−POP”、“HOUSE”、“BOSANOVA”、“TECHNO”の順に狭くなっている。
【0018】
図4(b)の例では、音楽コンテンツの名称やアーティストの名称に基づいて、音楽コンテンツの入力インターフェース3上の位置とを関連付けている。具体的には、横軸にアルファベットを設定し、このアルファベットを頭文字とするアーティスト名を縦にリスト状に並べている。このマッチングファイル12は、曲名やアルバム名から生成することもできる。
【0019】
マッチングファイル12は、曲名、アルバム名、アーティスト名、ジャンルなどの音楽コンテンツの属性情報に基づいて音楽コンテンツの識別情報と入力インターフェース上の座標とある一定のルールのもとで関連付けている。ユーザは、ルールに従い目的の音楽コンテンツが関連付けられた位置に入力用ピン7を挿入するが、実際の入力位置と目的の音楽コンテンツとの間には「ズレ」が生じる。「ズレ」は、新たな発見を引き起こす。これを「能動的偶然」と呼ぶ。本発明を適用した入力装置1は、「能動的偶然」による結果、ランダムとは異なるユーザの意思と偶然との両方を反映したデータ選択を可能にした。
【0020】
次いで、図5を参照して上述した入力装置11における音楽再生動作について説明する。入力装置1は、図6に示す外部機器としてのサーバ20から音楽コンテンツをダウンロードする。サーバ20は、入力装置1と通信するための通信部21と、音楽コンテンツを格納する音楽データベース22とを備える。サーバ20と入力装置1とは、無線LANやブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信で接続されている。
【0021】
ユーザによって入力用ピン支持部2に入力用ピン7が差しこまれると(ステップS11)、入力インターフェース3は、入力用ピン7が差しこまれた座標を制御部4に出力する(ステップS12)。制御部4は、入力用ピン7の座標を入力すると、入力用ピン7が差しこまれたことに対する応答として入力インターフェース3の表示を変化させる。図7の例では、入力用ピン7が差しこまれた座標を中心とした同心円を複数表示させている。同心円の半径は、時間とともに徐々に長くなり、あたかも、入力用ピン7が差し込まれた位置を中心として水の波紋が広がるような画像が生成される(ステップS13)。
【0022】
制御部4は、マッチングファイル12を参照して入力用ピン7の座標に対応する音楽データを検索する。入力用ピン7の座標と完全に一致する音楽データがマッチングファイル12に存在しない場合には、入力用ピン7の座標に最も近い音楽データを検索する(ステップS14)。
【0023】
制御部4は、検索した音楽コンテンツの識別情報を音楽ファイル10から読み出し、音楽コンテンツの転送要求を通信部5に出力する。転送要求は、通信部5によってサーバに送信される(ステップS15)。
【0024】
サーバは、音楽データベースから要求された音楽コンテンツを読み出して入力装置1に返信する。制御部4は、音楽コンテンツを受信すると(ステップS16)、受信した音楽データを増幅器6に出力する。増幅器6は、音楽コンテンツを再生可能な音声信号に変換する。スピーカ8は、音声信号を再生する(ステップS17)。
【0025】
一方、音楽の再生中にユーザが入力用ピン7を引き抜くと(ステップS18)、入力インターフェース3は、入力用ピン7の引き抜きが発生したことを示す信号を制御部4に出力する。制御部4は、この信号を入力すると、音声信号の再生が停止する(ステップS19)。この入力装置1では、入力用ピン7の抜き差しという直接的行為と音楽再生のON,OFFとの関係と作り出すことにより、直感的な操作や体験が可能となる。
【0026】
入力インターフェース3には、どこに入力用ピン7を差しこめばどの楽曲が選択されるといった具体的な情報を表示しない。ユーザは、過去の経験や表示部3に表示された大まかな分類を基に目的の音楽コンテンツが再生されることを期待して入力インターフェース3に入力用ピン7を差しこむ。このとき、目的の音楽コンテンツの位置と実際のピンの差しこみ位置に「ズレ」が生じる。入力装置1への入力は、ユーザの意思(例えば、あるジャンルの特定の曲を選択するという能動的な動作)と偶然(例えば、ユーザの期待と微妙に異なる曲が選択されたという偶然性)との両方を反映したものとなる。
【0027】
図8は、入力インターフェース3と形状の異なる入力インターフェースの例を示している。図8(a)は、3次元の立方体を入力インターフェース31とした例である。入力インターフェース31が立方体である場合には、ある面は“JAZZ”、ある面は“CLASSIC”など面ごとに意味付けをすることができる。図8(b)は、3次元の球体を入力インターフェース32とした例である。図8(a),(b)ともに入力用ピンを用いてデータを入力する。図9は、帯状の入力インターフェース32の例である。この入力インターフェース32は、1次元の入力を受け付ける。この入力インターフェース32では、付属のクリップ33やユーザの指で入力インターフェース32を挟むことによってデータが入力される。図10は、入力インターフェース40上に多数の穴41を設けた例である。入力用ピン7は、この穴41に差し込まれる。
【0028】
なお、本発明は、1次元空間、2次元空間、3次元空間、非ユークリッド空間といった物理的な空間を有する入力インターフェースと、この空間の点を選択する選択子と、空間上の点とデータとを関連付けるマッチングファイルと、選択子によって選択された位置に対応するデータをマッチングファイルから検索する機能を備えることを特徴とし、本発明の要旨を含む変形、改良は本発明に含まれるものとする。
【0029】
例えば、実施の形態における入力装置は、スピーカや増幅器を内蔵しているが、これらは本発明の必須要件ではない。通信部を利用して音楽コンテンツを外部のスピーカに送信してもよい。また、外部のサーバから楽曲をダウンロードせずに大容量記録媒体やHDDなどの大容量記録装置を利用から音楽コンテンツを読み出す構成にしてもよい。
【0030】
また、入力装置の選択対象は音楽コンテンツだけでなく、映像や写真など音楽以外のデータも含む。
【0031】
さらに、選択した音楽コンテンツは、必ずしも再生する必要はない。マッチングファイルも一つとは限らず、複数のマッチングファイルを切り替えるような構成にしてもよい。使用中のマッチングファイルを示すために、表示部の背景色や表示部の背景画像を変えたり、使用中のマッチングファイルを示す文字データを表示部に表示させる機能を付加してもよい。
【0032】
最後に、入力用ピンの操作方法について説明する。入力用ピンは、抜き差しの操作だけではなく、図11(a)に示すように、入力インターフェースに差し込んだ状態で回転させる、図11(b)に示すように入力インターフェースの上下動といった操作を受け付けることができる機構になっていてもよい。入力インターフェースの回転は、音量の調整やコンテンツの早送り・巻戻し、画像の切り替えなどの操作に使用できる。また、入力インターフェースの上下動は、音量の調整に使用したり、コンテンツの再生経過時間・残存時間に合わせて下降させたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用した入力装置の外観を示す図である。
【図2】本発明を適用した入力装置の分解斜視図である。
【図3】本発明を適用した入力装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】マッチングファイルの例を示す図である。
【図5】本発明を適用した入力装置の動作を示す図である。
【図6】入力装置とサーバとの関係を示す図である。
【図7】入力用ピンを挿入したときにおける表示部の表示例を示す図である。
【図8】立体型の入力インターフェースの例を示す図である。
【図9】帯状の入力インターフェースの例を示す図である。
【図10】入力用ピンを挿入するための穴を設けた入力インターフェースの例を示す図である。
【図11】入力用ピンの操作方法を示す図である。
【図12】従来の電子機器における検索画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 入力装置、2 入力用ピン支持部、3 入力インターフェース、4 制御部、5 通信部、6 増幅器、7 入力用ピン、8 スピーカ、9 筐体、10 基板、11 音楽ファイル、12 マッチングファイル、20 サーバ、21 通信部、22 音楽データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザからの入力を受け付ける入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANやブルートゥース(Bluetooth;登録商標)などの近距離無線通信を用いた狭域ネットワークが一般化している。このようなネットワークでは、各機器にデータを格納するのではなく、サーバでデータを一括管理し、必要に応じてサーバからデータをダウンロードすることができる。
【0003】
このような環境におけるクライアントは、データを格納する補助記録手段や記録媒体の再生機構が不要となるため、形状の自由度が増す。また、サーバでデータを一括管理する場合、サーバには膨大なデータが格納されると考えられる。膨大なデータの検索を効率化するために、クライアントには使用される環境に応じた形状や機能が要求される。
【0004】
図12は、従来の電子機器におけるデータの検索画面を示す。図12は、音楽データの検索画面であり、階層構造を持ち、“アーティスト名”、“楽曲名”、“ジャンル”などの属性を指定することで音楽データが絞られる。この場合、GUI(Graphical User Interface)の画面をマウスで操作して目的の音楽データ選択する。この場合、マウスの代わりに十字キーを用いることもできる(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−264102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の検索方法は、ユーザが“アーティスト名”や“楽曲名”などの情報を予め知っていることを前提とした検索方法である。ユーザは、検索対象の音楽を意識し、特定の楽曲を検索するために検索条件を絞りこむ。この検索方法は、“アーティスト”、“アルバム”、“楽曲名”という音楽データの分類に合致しておりユーザの検索対象が明確な場合には優れた検索方法といえる。しかしながら、ユーザが検索条件を知らない場合、検索対象を絞りこむことができず、目的の音楽コンテンツを発見できない場合がある。特に、サーバには、何千曲、何万曲といった膨大な音楽データが格納される。膨大な曲の“アーティスト名”や“楽曲名”を記憶して検索条件を絞り込む作業はユーザの負担になる。また、この検索方法では、サーバに格納された音楽全体の俯瞰も難しい。
【0007】
また、近年のオーディオプレーヤなどには、ランダム再生やシャッフル再生と呼ばれる機能を備えたものがある。これらの機能は、機器側が再生する音楽コンテンツを選択するというものである。ランダム再生やシャッフル再生で音楽コンテンツを選択した場合、機器が選択した音楽コンテンツがユーザの嗜好に一致するとは限らない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、嗜好に合うデータを直感的にユーザに選択させる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明を適用した入力装置は、選択子によって指定される選択面を有する入力手段と、コンテンツの属性に基づきコンテンツの識別情報を選択面の点に関連付ける関連付け手段と、関連付け手段を参照して、選択子によって指定された選択面上の点をコンテンツの識別情報に変換する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明を適用した入力装置は、入力手段の選択面を選択子によって指定する。制御部は、選択子によって指定された選択面上の点をコンテンツの識別情報に変換する。コンテンツの識別情報は、コンテンツの属性に基づき選択面の座標に割り当てられている。選択面の近隣の点は、関係の深いコンテンツが関連付けられる。選択面を選択子で指定する際、ユーザが選択しようとした選択面上の点と実際に選択した点には「ズレ」が生じる。この「ズレ」がユーザの予測しなかった新たな発見を引き起こす。これにより、ランダムとは異なるユーザの意思と偶然との両方を反映したデータ選択が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を適用した入力装置1について説明する。図1は入力装置1の外観図であり、図2は入力装置1の分解斜視図である。
【0012】
入力装置1は、選択子としての入力用ピン7を支持する入力用ピン支持部2、ユーザの入力を受け付ける入力手段としての入力インターフェース3、入力装置1全体を制御する制御部4、音楽コンテンツが格納されている外部機器との通信を行う通信部5、音声データを増幅する増幅器6、増幅された音声データを発音するスピーカ8を備える。
【0013】
入力装置1の最上部には、入力用ピン7を支持する入力用ピン支持部2が設けられる。入力用ピン支持部2は、入力装置1の筐体9の開口部を通して外部に露出している。入力入力用ピン支持部2は、入力用ピン7が差し込まれる。
【0014】
入力用ピン支持部2の下側には入力インターフェース3が設けられる。入力インターフェース3は、タッチパネルのように、入力と表示との両方の機能を備える。入力インターフェース3は、入力用ピン支持部2と略同じ面積をもち、入力用ピン支持部2に重ね合わせるように取り付けられる。入力用ピン支持部2は透過性を有する素材でできており、入力インターフェース3の表示内容は、入力用ピン支持部2を透過して外部から見ることができる。
【0015】
入力装置1の下部には、通信部5、制御部4、増幅器6、スピーカ8が収納される。これらは同じ基板10に取り付けられる。通信部5、制御部4、増幅器6などの機能を持つチップが中央に配置され、このチップの両側にスピーカ8が取り付けられる。
【0016】
図3は、入力装置1の電気的な構成を示すブロック図である。制御部4は、入力インターフェース3、通信部5からデータを入力し、入力インターフェース3、増幅器6、通信部5にデータを出力する。制御部4には、音楽コンテンツの属性を格納した音楽ファイル10、及び入力インターフェース3上の座標と音楽コンテンツの識別情報とを関連付けるマッチングファイル12とが格納されている。音楽コンテンツの識別情報とは、例えば、ISRC(International Standard Release Code)のように音楽コンテンツを一意に識別する情報である。
【0017】
図4は、入力インターフェース3上の座標と音楽コンテンツの属性との関連を視覚化しているが、実際には、見せない若しくは見せるが選択点と各コンテンツの対応までは直感的に分からないようにしている。図4(a)の例では、入力インターフェース3の座標を音楽のジャンルに関連付けている。ここでは、右上から時計回りに“JAZZ”、“BOSANOVA”、“HOUSE”、“TECHNO”、“J−POP”、“ROCK”の領域が形成されている。“JAZZ”の領域が一番広く、“ROCK”、“J−POP”、“HOUSE”、“BOSANOVA”、“TECHNO”の順に狭くなっている。
【0018】
図4(b)の例では、音楽コンテンツの名称やアーティストの名称に基づいて、音楽コンテンツの入力インターフェース3上の位置とを関連付けている。具体的には、横軸にアルファベットを設定し、このアルファベットを頭文字とするアーティスト名を縦にリスト状に並べている。このマッチングファイル12は、曲名やアルバム名から生成することもできる。
【0019】
マッチングファイル12は、曲名、アルバム名、アーティスト名、ジャンルなどの音楽コンテンツの属性情報に基づいて音楽コンテンツの識別情報と入力インターフェース上の座標とある一定のルールのもとで関連付けている。ユーザは、ルールに従い目的の音楽コンテンツが関連付けられた位置に入力用ピン7を挿入するが、実際の入力位置と目的の音楽コンテンツとの間には「ズレ」が生じる。「ズレ」は、新たな発見を引き起こす。これを「能動的偶然」と呼ぶ。本発明を適用した入力装置1は、「能動的偶然」による結果、ランダムとは異なるユーザの意思と偶然との両方を反映したデータ選択を可能にした。
【0020】
次いで、図5を参照して上述した入力装置11における音楽再生動作について説明する。入力装置1は、図6に示す外部機器としてのサーバ20から音楽コンテンツをダウンロードする。サーバ20は、入力装置1と通信するための通信部21と、音楽コンテンツを格納する音楽データベース22とを備える。サーバ20と入力装置1とは、無線LANやブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信で接続されている。
【0021】
ユーザによって入力用ピン支持部2に入力用ピン7が差しこまれると(ステップS11)、入力インターフェース3は、入力用ピン7が差しこまれた座標を制御部4に出力する(ステップS12)。制御部4は、入力用ピン7の座標を入力すると、入力用ピン7が差しこまれたことに対する応答として入力インターフェース3の表示を変化させる。図7の例では、入力用ピン7が差しこまれた座標を中心とした同心円を複数表示させている。同心円の半径は、時間とともに徐々に長くなり、あたかも、入力用ピン7が差し込まれた位置を中心として水の波紋が広がるような画像が生成される(ステップS13)。
【0022】
制御部4は、マッチングファイル12を参照して入力用ピン7の座標に対応する音楽データを検索する。入力用ピン7の座標と完全に一致する音楽データがマッチングファイル12に存在しない場合には、入力用ピン7の座標に最も近い音楽データを検索する(ステップS14)。
【0023】
制御部4は、検索した音楽コンテンツの識別情報を音楽ファイル10から読み出し、音楽コンテンツの転送要求を通信部5に出力する。転送要求は、通信部5によってサーバに送信される(ステップS15)。
【0024】
サーバは、音楽データベースから要求された音楽コンテンツを読み出して入力装置1に返信する。制御部4は、音楽コンテンツを受信すると(ステップS16)、受信した音楽データを増幅器6に出力する。増幅器6は、音楽コンテンツを再生可能な音声信号に変換する。スピーカ8は、音声信号を再生する(ステップS17)。
【0025】
一方、音楽の再生中にユーザが入力用ピン7を引き抜くと(ステップS18)、入力インターフェース3は、入力用ピン7の引き抜きが発生したことを示す信号を制御部4に出力する。制御部4は、この信号を入力すると、音声信号の再生が停止する(ステップS19)。この入力装置1では、入力用ピン7の抜き差しという直接的行為と音楽再生のON,OFFとの関係と作り出すことにより、直感的な操作や体験が可能となる。
【0026】
入力インターフェース3には、どこに入力用ピン7を差しこめばどの楽曲が選択されるといった具体的な情報を表示しない。ユーザは、過去の経験や表示部3に表示された大まかな分類を基に目的の音楽コンテンツが再生されることを期待して入力インターフェース3に入力用ピン7を差しこむ。このとき、目的の音楽コンテンツの位置と実際のピンの差しこみ位置に「ズレ」が生じる。入力装置1への入力は、ユーザの意思(例えば、あるジャンルの特定の曲を選択するという能動的な動作)と偶然(例えば、ユーザの期待と微妙に異なる曲が選択されたという偶然性)との両方を反映したものとなる。
【0027】
図8は、入力インターフェース3と形状の異なる入力インターフェースの例を示している。図8(a)は、3次元の立方体を入力インターフェース31とした例である。入力インターフェース31が立方体である場合には、ある面は“JAZZ”、ある面は“CLASSIC”など面ごとに意味付けをすることができる。図8(b)は、3次元の球体を入力インターフェース32とした例である。図8(a),(b)ともに入力用ピンを用いてデータを入力する。図9は、帯状の入力インターフェース32の例である。この入力インターフェース32は、1次元の入力を受け付ける。この入力インターフェース32では、付属のクリップ33やユーザの指で入力インターフェース32を挟むことによってデータが入力される。図10は、入力インターフェース40上に多数の穴41を設けた例である。入力用ピン7は、この穴41に差し込まれる。
【0028】
なお、本発明は、1次元空間、2次元空間、3次元空間、非ユークリッド空間といった物理的な空間を有する入力インターフェースと、この空間の点を選択する選択子と、空間上の点とデータとを関連付けるマッチングファイルと、選択子によって選択された位置に対応するデータをマッチングファイルから検索する機能を備えることを特徴とし、本発明の要旨を含む変形、改良は本発明に含まれるものとする。
【0029】
例えば、実施の形態における入力装置は、スピーカや増幅器を内蔵しているが、これらは本発明の必須要件ではない。通信部を利用して音楽コンテンツを外部のスピーカに送信してもよい。また、外部のサーバから楽曲をダウンロードせずに大容量記録媒体やHDDなどの大容量記録装置を利用から音楽コンテンツを読み出す構成にしてもよい。
【0030】
また、入力装置の選択対象は音楽コンテンツだけでなく、映像や写真など音楽以外のデータも含む。
【0031】
さらに、選択した音楽コンテンツは、必ずしも再生する必要はない。マッチングファイルも一つとは限らず、複数のマッチングファイルを切り替えるような構成にしてもよい。使用中のマッチングファイルを示すために、表示部の背景色や表示部の背景画像を変えたり、使用中のマッチングファイルを示す文字データを表示部に表示させる機能を付加してもよい。
【0032】
最後に、入力用ピンの操作方法について説明する。入力用ピンは、抜き差しの操作だけではなく、図11(a)に示すように、入力インターフェースに差し込んだ状態で回転させる、図11(b)に示すように入力インターフェースの上下動といった操作を受け付けることができる機構になっていてもよい。入力インターフェースの回転は、音量の調整やコンテンツの早送り・巻戻し、画像の切り替えなどの操作に使用できる。また、入力インターフェースの上下動は、音量の調整に使用したり、コンテンツの再生経過時間・残存時間に合わせて下降させたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用した入力装置の外観を示す図である。
【図2】本発明を適用した入力装置の分解斜視図である。
【図3】本発明を適用した入力装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】マッチングファイルの例を示す図である。
【図5】本発明を適用した入力装置の動作を示す図である。
【図6】入力装置とサーバとの関係を示す図である。
【図7】入力用ピンを挿入したときにおける表示部の表示例を示す図である。
【図8】立体型の入力インターフェースの例を示す図である。
【図9】帯状の入力インターフェースの例を示す図である。
【図10】入力用ピンを挿入するための穴を設けた入力インターフェースの例を示す図である。
【図11】入力用ピンの操作方法を示す図である。
【図12】従来の電子機器における検索画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 入力装置、2 入力用ピン支持部、3 入力インターフェース、4 制御部、5 通信部、6 増幅器、7 入力用ピン、8 スピーカ、9 筐体、10 基板、11 音楽ファイル、12 マッチングファイル、20 サーバ、21 通信部、22 音楽データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択子によって指定される選択面を有する入力手段と、
コンテンツの属性に基づき上記コンテンツの識別情報を上記選択面の点に関連付け、上記選択子によって選択面上の任意の点が指定されたとき、該選択面上の点に関連付けられたコンテンツの識別情報を選択する制御手段と
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
上記選択子によって指定された選択面上の点に関連するコンテンツを外部機器から受信するコンテンツ受信手段を備えることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
上記選択子によって指定された選択面上の点に関連するコンテンツを再生する再生手段を備えることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
上記選択面上の近隣の点には、関係の深いコンテンツが配置されていることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項1】
選択子によって指定される選択面を有する入力手段と、
コンテンツの属性に基づき上記コンテンツの識別情報を上記選択面の点に関連付け、上記選択子によって選択面上の任意の点が指定されたとき、該選択面上の点に関連付けられたコンテンツの識別情報を選択する制御手段と
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
上記選択子によって指定された選択面上の点に関連するコンテンツを外部機器から受信するコンテンツ受信手段を備えることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
上記選択子によって指定された選択面上の点に関連するコンテンツを再生する再生手段を備えることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
上記選択面上の近隣の点には、関係の深いコンテンツが配置されていることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−106644(P2006−106644A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296992(P2004−296992)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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