説明

入力装置

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される入力装置に関し、誤差がなく、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】操作体1を回転可能に収納した上ケース3と下ケース4を保持する枠体15に、磁気検出素子9を下ケース4下面に弾接させる、略舌片状で複数の押圧部15Bや15Cを設けることによって、複数の押圧部15Bや15Cが磁気検出素子9下面の複数の箇所を押圧して、磁気検出素子9を傾きなく平行な状態で下ケース4下面に弾接させることができるため、検出する磁気に誤差が生じず、操作体1の高精度な回転角度の検出が行え、確実な操作が可能な入力装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の各種電子機器の高機能化や小型化が進むに伴い、これらの操作に用いられる入力装置にも、良好な操作感触で確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の入力装置について、図4〜図6を用いて説明する。
【0004】
図4は従来の入力装置の断面図、図5は同分解斜視図であり、同図において、1は球状で絶縁樹脂製の操作体、2は鉄やパーマロイ等の磁性体で、略球状の中核部から略円柱状の複数の突起部2Aや2B等が、外方に向けて放射状に突出して磁性体2が形成されると共に、この磁性体2が操作体1内に埋設されている。
【0005】
また、3は金属薄板製の上ケース、4は同じく下ケースで、上ケース3と下ケース4内に操作体1が回転可能に収納されると共に、操作体1上部が上ケース3上面の開口孔から突出している。
【0006】
そして、5は略板状でゴム等のカバー、6は絶縁樹脂製の保持体で、操作体1を収納した上ケース3と下ケース4が、カバー5を介して保持体6上面に載置されている。
【0007】
さらに、7は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されたフィルム状の配線基板で、操作体1下方の配線基板7上面には、略円筒状でフェライト等の磁石8が、例えばN極を上方向、S極を下方向にして載置されている。
【0008】
そして、9は複数のホール素子等が配列された磁気検出素子で、この磁気検出素子9が配線基板7上面に実装され、操作体1と所定の間隙を空けて対向配置されると共に、磁気検出素子9周囲の配線基板7には、略U字状の切欠部7Aが形成されている。
【0009】
また、10は金属薄板製の枠体で、この枠体10上部が保持体6と固着され、上ケース3と下ケース4、及びこれに収納された操作体1、磁石8や磁気検出素子9等が所定位置に保持されている。
【0010】
さらに、枠体10底面には、図6の部分斜視図に示すように、一端が折曲され他端が上方へ突出する略矩形状の板ばね部10Aが設けられると共に、この板ばね部10Aがやや撓んだ状態で、端部が配線基板7を介して磁気検出素子9下面を押圧し、磁気検出素子9上面が下ケース4下面に弾接して、入力装置が構成されている。
【0011】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、操作体1上部を突出させて装着されると共に、磁気検出素子9が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0012】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)等が表示された状態で、操作体1上部を指で前後左右、あるいは斜め方向へ回転操作すると、操作体1内に埋設された磁性体2も回転し、例えば、操作体1を右方向へ回転した場合には、先ず磁性体2の突起部2Aが磁気検出素子9に近づく。
【0013】
また、磁気検出素子9がこの突起部2Aを介して、操作体1下方に配置された略円筒状の磁石8の磁気を検出し、このまま操作体1を右方向へ回転操作し続けた場合には、突起部2Aは磁気検出素子9から離れて、次に、突起部2Bが磁気検出素子9に近づき、今度はこの突起部2Bを介して、磁石8の磁気を磁気検出素子9が検出する。
【0014】
そして、この順次近づいては離れる磁性体2の複数の突起部2Aや2Bから検出した磁気を、磁気検出素子9が位相差のある電圧信号として機器の電子回路に出力し、これによって操作体1の回転方向と回転角度を電子回路が検出して、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば右方向へ回転角度分だけ移動させる。
【0015】
なお、操作体1を左方向や前後方向、あるいはこれらとは中間の斜め方向へ回転操作した場合も、同様に、磁気検出素子9から電圧信号が出力され、電子回路が操作体1の回転方向と回転角度を検出して、カーソル等が左方向や上下方向、あるいは斜め方向へ移動する。
【0016】
つまり、機器の表示手段を見ながら、操作体1を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させて、メニューの選択等を容易に行えるように構成されているものであった。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−259024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、枠体10底面の略矩形状の板ばね部10Aの、端部で磁気検出素子9下面を押圧して、磁気検出素子9上面を下ケース4下面に弾接させているため、磁気検出素子9がやや傾いた状態で下ケース4下面に弾接してしまい、これによって僅かではあるが検出する磁気に誤差が生じ、操作体1の高精度な回転角度の検出を行うことが困難なものとなってしまうという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、誤差がなく、確実な回転角度の検出が可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、操作体を回転可能に収納したケースを保持する枠体に、磁気検出素子をケース下面に弾接させる、略舌片状で複数の押圧部を設けて入力装置を構成したものであり、複数の押圧部が磁気検出素子下面の複数の箇所を押圧して、磁気検出素子を傾きなく平行な状態でケース下面に弾接させることができるため、検出する磁気に誤差が生じず、操作体の高精度な回転角度の検出が行え、確実な操作が可能な入力装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、誤差がなく、確実な操作が可能な入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】従来の入力装置の断面図
【図5】同分解斜視図
【図6】同部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0025】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0026】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1はABSやポリカーボネート、ウレタン等の絶縁樹脂製の操作体、2はパーマロイや鉄、Ni−Fe合金等の磁性体で、略球状の中核部から略円柱状の複数の、例えば24個の突起部2Aや2Bが外周に向けて放射状に突出して、磁性体2が形成されると共に、この磁性体2が操作体1内に埋設されている。
【0027】
また、3は鋼等の金属薄板製の上ケース、4は同じく下ケースで、上ケース3と下ケース4内に操作体1が回転可能に収納されると共に、操作体1上部が上ケース3上面の開口孔から突出している。
【0028】
そして、5は略板状でゴムやエラストマー等のカバー、6はポリブチレンテレフタレートやポリスチレン等の絶縁樹脂製の保持体で、操作体1を収納した上ケース3と下ケース4が、カバー5を介して保持体6上面に載置されている。
【0029】
さらに、7はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状の配線基板で、上下面にはカーボンや銀、銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、操作体1下方の配線基板7上面には、略円筒状でフェライトやNd−Fe−B合金等の磁石8が、例えばN極を上方向、S極を下方向にして載置されている。
【0030】
そして、磁石8内周の配線基板7上面には、垂直方向の磁気を検出するホール素子や、水平方向の磁気を検出するGMR素子等の複数の、例えば9個以上の磁気素子9Aや9Bが前後左右に等間隔に配列された、磁気検出素子9が実装され、この磁気検出素子9が操作体1と所定の間隙を空けて対向配置されると共に、磁気検出素子9周囲の配線基板7には、略U字状の切欠部7Aが形成されている。
【0031】
また、15は鋼や銅合金等の金属薄板製の枠体で、この枠体15上部が保持体6と固着され、上ケース3と下ケース4、及びこれに収納された操作体1、磁石8や磁気検出素子9等が所定位置に保持されている。
【0032】
さらに、枠体15底面には、図3の部分斜視図に示すように、一端が折曲され他端が上方へ突出する折曲部15Aと、これに連結された平坦な略舌片状の押圧部15B、及びこの押圧部15B両端から左方へ延出する、平坦な略舌片状の押圧部15Cが設けられている。
【0033】
そして、折曲部15Aがやや撓んだ状態で、複数の押圧部15Bや15Cが配線基板7を介して、押圧部15Bが磁気検出素子9の右方下面を、押圧部15Cが磁気検出素子9の左方下面を各々押圧し、磁気検出素子9上面が下ケース4下面に弾接して、入力装置が構成されている。
【0034】
つまり、枠体15底面の略舌片状で複数の押圧部15Bや15Cによって、磁気検出素子9下面の複数の箇所が押圧され、磁気検出素子9が傾きなく平行な状態で、上面を下ケース4下面に弾接させた状態となっている。
【0035】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、操作体1上部を突出させて装着されると共に、磁気検出素子9が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0036】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)等が表示された状態で、操作体1上部を指で前後左右、あるいは斜め方向へ回転操作すると、操作体1内に埋設された磁性体2も回転し、例えば、操作体1を右方向へ回転した場合には、先ず磁性体2の突起部2Aが磁気検出素子9の磁気素子9Aに近づく。
【0037】
そして、突起部2Aが磁気素子9Aに最接近した状態になると、操作体1下方に配置された略円筒状の磁石8の磁気を、突起部2Aを介して磁気素子9Aが検出する。
【0038】
また、このまま操作体1を右方向へ回転操作し続けると、突起部2Aは磁気素子9Aから離れて、磁気素子9Bに近づくと共に、磁気素子9Aには突起部2Bが近づき、この突起部2Bを介して磁石8の磁気を磁気素子9Aが検出する。
【0039】
つまり、磁気検出素子9の磁気素子9Aは、磁石8の磁気を突起部2Aが最接近した時に1回検出し、この後、一旦磁気が弱まり、次に突起部2Bが最接近すると磁気をもう1回検出して、この都度、磁気素子9Aからパルス状の電圧信号が機器の電子回路に出力される。
【0040】
さらに、この時、磁気素子9Aと並列に配置された磁気素子9Bも、同様に突起部2Aや2Bの磁気を検出するが、磁気素子9Bは磁気素子9Aに対し、所定間隔でややずれた位置に配置されているため、磁気素子9Bから出力される電圧信号は、磁気素子9Aの電圧信号に対し所定時間ずれた、いわゆる位相差のあるものとなる。
【0041】
そして、機器の電子回路がこの位相差のある二つのパルス状の電圧信号から、磁気素子9Aと9Bの電圧信号のどちらが先に立ち上ったかによって、操作体1の回転方向を、そのパルス数によって操作体1の回転角度を各々検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば右方向へ回転角度分だけ移動させる。
【0042】
なお、操作体1を左方向や前後方向、あるいはこれらとは中間の斜め方向へ回転操作した場合も、同様に、複数の磁気素子9Aや9B等からパルス状の電圧信号が出力され、電子回路が操作体1の回転方向と回転角度を検出して、カーソル等が左方向や上下方向、あるいは斜め方向へ移動する。
【0043】
つまり、機器の表示手段を見ながら、操作体1を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させて、メニューの選択等を容易に行えるように構成されている。
【0044】
そして、この時、突起部2Aや2Bを介して磁石8の磁気を検出する磁気検出素子9が、枠体15底面の略舌片状で複数の押圧部15Bや15Cによって、下面の複数の箇所が押圧され、傾きなく平行な状態で上面を下ケース4下面に弾接させているため、前後左右に配列された複数の磁気素子9Aや9B等が検出する磁気には、誤差が生じないようになっている。
【0045】
すなわち、枠体15の複数の押圧部15Bや15Cによって、磁気検出素子9が下面のほぼ全面を押圧され、傾きなく平行な状態で下ケース4下面に弾接し、前後左右に配列された複数の磁気素子9Aや9B等と操作体1の間には、所定の間隙が各々保たれているため、これらが検出する磁気に誤差が生じず、操作体1の高精度な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0046】
なお、以上の説明では、折曲部15Aに連結された平坦な押圧部15Bと、この両端から延出する平坦な押圧部15Cによって、磁気検出素子9下面のほぼ全面を押圧して、磁気検出素子9を下ケース4下面に弾接させた構成について説明したが、押圧部を凸状に形成し、この複数の押圧部によって磁気検出素子9下面の左右端部や、あるいはこれに加え中央部を押圧して、下ケース4下面に弾接させる構成としても、本発明の実施は可能である。
【0047】
また、以上の説明では、中核部から複数の突起部2Aや2Bが放射状に突出した磁性体2を操作体1内に埋設し、これを回転操作する構成について説明したが、中空球状の磁性体に複数の開口孔を設けたもの等、様々な形状に形成された磁性体を用いても、本発明の実施は可能である。
【0048】
このように本実施の形態によれば、操作体1を回転可能に収納した上ケース3と下ケース4を保持する枠体15に、磁気検出素子9を下ケース4下面に弾接させる、略舌片状で複数の押圧部15Bや15Cを設けることによって、複数の押圧部15Bや15Cが磁気検出素子9下面の複数の箇所を押圧して、磁気検出素子9を傾きなく平行な状態で下ケース4下面に弾接させることができるため、検出する磁気に誤差が生じず、操作体1の高精度な回転角度の検出が行え、確実な操作が可能な入力装置を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による入力装置は、誤差がなく、確実な操作が可能なものを実現できるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 操作体
2 磁性体
2A、2B 突起部
3 上ケース
4 下ケース
5 カバー
6 保持体
7 配線基板
7A 切欠部
8 磁石
9 磁気検出素子
9A、9B 磁気素子
15 枠体
15A 折曲部
15B、15C 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに回転可能に収納された操作体と、この操作体下方に配置された略円筒状の磁石と、上記操作体と所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子と、上記ケースを保持する枠体からなり、上記枠体に上記磁気検出素子を上記ケース下面に弾接させる、略舌片状で複数の押圧部を設けた入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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