説明

入力装置

【課題】静電気対策部材を用いることなく、静電気対策を行うことができる入力装置を提供する。
【解決手段】
タッチパネルの表面の静電気から入力装置内部の基板を保護するために、入力装置に、基板に設けられる開口を通じて筐体の延出部から基板の背後に延びるリブを設ける。これにより、タッチパネルの表面から基板に至るまでの沿面経路を十分に長くして、静電気放電がタッチパネルの表面から基板に到達できないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを備える入力装置での静電気対策に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタや複写機、携帯電話等では、ユーザが表面を直接に触れることにより入力操作を行うことができるタッチパネルが多く採用されている。図4は、従来の入力装置の斜視図である。また、図5は、従来の入力装置のY−Y断面を示す断面図である。
【0003】
タッチパネル110の表面では静電気が発生し易く、発生した静電気はタッチパネル110の表面から側面、筐体130の表面を経て入力装置100の内部にまで放電される。入力装置100の内部には、タッチパネル110の光源となるLED122やタッチセンサ、入力装置100を制御するための回路などが配置された基板120がある。そのため、静電気が基板120に到達すると、入力装置100の誤作動や故障が発生する。
【0004】
そのため、従来の入力装置100では、タッチパネル110の表面から基板120に至る放電経路の途中にアルミテープ150などの静電気対策部材を配置して、タッチパネル110の表面から放電される静電気を吸収し、入力装置100の内部にある基板120に到達しないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−186277号公報
【特許文献2】実開平05−067020号公報
【特許文献3】特開平11−149843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミテープ150などの静電気対策部材を設けて静電気対策をする場合、静電気対策部材を設ける場所や、静電気対策部材が吸収する静電気を逃がすためのアースを設ける場所を確保する必要がある。そのため、従来の入力装置100では、その形状や大きさ、デザインなどが制約されるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献1〜3では、静電気対策部材を設けることなく、静電気対策を行っている。たとえば、引用文献1では、沿面距離を長く取るために連結部を設けている。また、引用文献2では、発光素子の表面もしくは発光素子を覆うカバーの表面に凹部を設け、この凹部に嵌合させる突片を筐体に設けている。また、引用文献3では、キーラバーにリブを2つ以上設け、それらのリブの間の空間に嵌合するリブをケースに設けている。しかしながら、引用文献1〜3はいずれもタッチパネルに対して静電気対策を行うものではない。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑み、静電気対策部材を用いることなく、タッチパネルの静電気対策を行うことができる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の入力装置は、タッチパネルと、前記タッチパネルの背後に配される基板と、筐体と、を備え、前記タッチパネルは板状の絶縁部材を有し、前記筐体は、前記タッチパネルと前記基板との間に設けられる延出部と、前記延出部から延びるリブと、を有し、前記基板に設けられる開口を通じて、前記リブが前記筐体から前記基板の背後に延びる。
【0010】
上記構成によれば、基板に設けられる開口を通じて筐体の延出部から基板の背後にリブが延びているので、タッチパネルの表面から基板に至るまでの放電経路を十分に長くして、静電気放電がタッチパネルの表面から基板に到達できないようにすることができる。従って、タッチパネルの表面の静電気から入力装置内部にある基板を保護することができる。よって、静電気対策部材を用いることなく、タッチパネルの静電気対策を行うことができる。
【0011】
上記構成において、前記基板を保持する基板保持部材をさらに備え、前記板状の絶縁部材が透光性であり、前記基板には、前記タッチパネルに向かう側の面とは反対側の面に発光素子が設けられ、前記発光素子から出射される光が、前記基板支持部材の内面にて反射されるとともに、前記基板に設けられた前記開口を通じて、前記タッチパネルに入射するものとしてもよい。
【0012】
また、上記構成において、前記リブが円筒形状であるものとしてもよいし、前記リブの高さは、前記タッチパネルの表面から前記基板に至るまでの沿面距離が長い側よりも短い側の方が高いものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板に設けられる開口を通じて筐体の延出部から基板の背後にリブが延びているので、タッチパネルの表面から基板に至るまでの放電経路を十分に長くして、静電気放電がタッチパネルの表面から基板に到達できないようにすることができる。従って、タッチパネルの表面の静電気から入力装置内部にある基板を保護することができる。よって、静電気対策部材を用いることなく、タッチパネルの静電気対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る入力装置の斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る入力装置のX−X断面を示す断面図である。
【図3】第2実施形態に係る入力装置の断面図である。
【図4】従来の入力装置の斜視図である。
【図5】従来の入力装置のY−Y断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
<第1実施形態>
【0016】
図1は、第1実施形態に係る入力装置の斜視図である。また、図2は、第1実施形態に係る入力装置のX−X断面を示す断面図である。入力装置1aは、タッチパネル10と、基板20と、筐体30と、基板ホルダ40(基板保持部材)と、を備える。入力装置1aにおいて、ユーザはタッチパネル10の表面に触れることにより操作入力を行なうことができる。
【0017】
タッチパネル10は、静電容量式のタッチパネルであり、アクリル板11(板状の絶縁部材)と、センサ層12と、光拡散シート13と、を有する。なお、これに限定されず、たとえば、抵抗膜方式などのタッチパネルなども利用可能である。
【0018】
アクリル板11は、透光性を有する板状の絶縁部材である。なお、透光性を有する板状の絶縁部材であれば、アクリル板11に代えて利用することもできる。たとえば板ガラスなどを利用してもよい。
【0019】
また、アクリル板11の裏面には様々な文字や図形が印刷されている。たとえば、印刷された文字や図形により、ユーザは、タッチパネル10の所定の表面領域に触れれば入力操作を行うことができることを認識することができる。なお、これらの文字や図形はアクリル板11の表面に印刷されていてもよい。さらに、文字や図形の印刷に代えて、文字や図形が予め印刷された印刷シートをアクリル板11の表面又は裏面に貼り付けていてもよい。
【0020】
センサ層12は、アクリル板11と光拡散シート13との間に形成されている。また、センサ層12は、タッチパネル10の所定の表面領域(たとえば、後述する開口21の直上に位置する表面領域)への入力操作の有無を検知するタッチセンサ回路部12aを有する。このタッチセンサ回路部12aとしては、たとえばセンサワイヤで構成される電極部を挙げることができる。タッチセンサ回路部12aはコントローラ(不図示)と接続されている。ユーザがタッチパネル10の所定の表面領域に触れると、静電容量変化が生じてセンサワイヤに入力されるパルス信号の周波数が変化する。コントローラはこの周波数変化に基づいてユーザが触れた座標位置を検出する。
【0021】
光拡散シート13は、タッチパネル10の裏面側に設けられ、タッチパネル10の背後から入射される光を拡散して、タッチパネル10の所定の表面領域(たとえば、タッチセンサ回路部12aの直上に位置する表面領域)を発光させる。光拡散シート13によって、タッチパネル10の表面領域での輝点、ドット、輝線、光ムラ等の発生が抑制される。
【0022】
基板20は、基板固定部材33によって、タッチパネル10の背後に近接して配置される。基板20には開口21が設けられている。また、以下では、タッチパネル10に向かう側の面を基板20の表面と呼び、基板20の表面に対して反対側の面を基板20の裏面と呼ぶ。基板20の裏面には、タッチパネル10の所定の表面領域を発光させるためのLED22(発光素子)が設けられている。
【0023】
筐体30は、延出部31と、リブ32と、を有している。また、筐体30は樹脂製であり、その材料としてたとえばポリカーボネートやABS樹脂などが利用される。
【0024】
延出部31は、筐体30の一部であり、タッチパネル10と基板20との間に設けられる。延出部31は、タッチパネル10の裏面と接しているとともに、基板20に近接して設けられている。また、延出部31は、基板20の表面を完全に覆っている。なお、これに限定されず、延出部31はタッチパネル10の裏面に近接して設けられていてもよいし、基板20の表面と接していてもよい。
【0025】
リブ32は延出部31から基板20の開口21へと延びる筐体30の一部であり、開口21を通じて、筐体30の延出部31から基板20の背後に延びている。また、リブ32は円筒形状をしている。さらに、リブ32はテーパがついた形状であってもよい。このリブ32は、後述するように、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離に基づいて予め設定された高さとなっている。
【0026】
また、このリブ32の内面にはアルミ蒸着膜などの光の反射率を向上させるための反射膜が形成されていてもよい。こうすれば、リブ32の内面に入射する反射光をさらに反射して、タッチパネル10の裏面により多くの光を入射させることができるので、LED22から出射する光の利用効率を向上させることができる。
【0027】
基板ホルダ40は基板20を保持する樹脂製の部材であり、少なくともその内面は白色である。そのため、基板ホルダ40の内面はLED22から出射される光を反射することができる。その反射光の一部はリブ32の内側を通じてタッチパネル10の裏面側に入射する。なお、基板ホルダ40の内面には、アルミ蒸着膜などの光の反射率を向上させるための反射膜を形成してもよい。
【0028】
このような入力装置1aにおいて、タッチパネル10の表面では、ユーザによる操作入力などにより静電気が発生することがある。タッチパネル10は絶縁性のアクリル板11を有しているので、タッチパネル10の表面から基板20へ直接に静電気放電が起こるわけではない。しかしながら、タッチパネル10の表面の静電気は、タッチパネル10や筐体30などの絶縁性の部材の表面に沿って形成される放電経路を通じて放電される。一般に、このような放電現象は沿面放電と呼ばれる。また、沿面放電により形成される放電経路のうち、タッチパネル10の表面から基板20に至る直線距離が最短となる放電経路の長さは沿面距離と呼ばれる。この沿面距離が十分に長ければ、タッチパネル10の表面の静電気が沿面放電したとしても基板20に到達することはない。従って、タッチパネル10の表面で発生する静電気から入力装置1aの内部の基板20を保護することができる。
【0029】
本実施形態では、リブ32を筐体30の延出部31から開口21を通じて基板20の背後に延ばすことにより、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離を長くし、タッチパネル10の表面と基板20とを電気的に絶縁するために必要な長さを確保できるようにしている。たとえば、図5のような従来の入力装置100では、タッチパネル110の表面で発生した静電気が沿面放電すると、タッチパネル110の表面から側面、タッチパネル110と筐体130との間を経由して、基板120に到達することとなる。
【0030】
対して、本実施形態では、静電気が沿面放電するときの放電経路は図2の矢印Aのようになる。すなわち、タッチパネル10の表面で発生した静電気が沿面放電すると、タッチパネル10の表面から側面、タッチパネル10と筐体30との間(たとえば、光拡散シート13の延出部31に向かう側の表面や、筐体30や延出部31の光拡散シート13に向かう側の表面)、リブ32の内表面から先端面及び外表面を経由して、基板20に到達する。
【0031】
このように、本実施形態では、従来の入力装置100での放電経路と比べて、リブ32の内表面から先端面及び外表面を経由する分だけ沿面距離を長くすることができる。また、リブ32の高さは、タッチパネル10の表面と基板20との間の沿面距離が両者を電気的に絶縁するために必要な長さを確保できるように設定されている。そのため、タッチパネル10の表面の静電気が沿面放電したとしても入力装置1aの内部の基板20に到達することができなくなっている。従って、タッチパネル10の表面の静電気から入力装置1aの内部にある基板20を保護することができる。よって、従来のようにアルミテープなどの静電気対策部材を用いることなく、タッチパネル10の静電気対策を行うことができる。
【0032】
なお、リブ32が必要以上に高いと、たとえば、基板ホルダ40の内面で反射されたLED22の光がリブ32によって遮られ易くなるので、タッチパネル10の裏面に照射される光が減少し、LED22から出射する光の利用効率が低下するなどの問題が生じる。しかしながら、本実施形態のように、静電気の沿面放電から基板20を保護するために必要な沿面距離に基づいて、リブ32の高さを適切に定めることができれば、リブ32によって遮られる反射光を少なくすることができるので、LED22から出射する光の利用効率を向上させることもできる。
【0033】
なお、本実施形態では延出部31が基板20の表面を完全に覆っているが、その変形例として、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離が静電気の沿面放電から基板20を十分に保護できる長さを確保できるかぎりにおいて、延出部31が基板20の表面の一部を覆うものとしてもよい。
<第2実施形態>
【0034】
また、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離が静電気の沿面放電から基板20を十分に保護できる長さを確保できるかぎりにおいて、リブ32の高さは均一でなくてもよい。図3は、第2実施形態に係る入力装置の断面図である。なお、第1実施形態と共通する部材については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
入力装置1bでは、リブ32の高さが、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離が長い側のリブ32aよりも短い側のリブ32b方が高くなっている。また、リブ32a、32bの高さは、タッチパネル10の表面から基板20に至るまでの沿面距離が静電気の沿面放電から基板20を十分に保護できる長さを確保できるように設定されている。また、基板20の裏面において、沿面距離が長い側のリブ32aに近接してLED22が配置されている。それ以外は、第1実施形態の構成と同様である。
【0036】
このようにすると、リブ32によって遮られる反射光を少なくすることができる。従って、タッチパネル10の表面の静電気から基板20を保護すると同時に、より多くの反射光をタッチパネル10に入射させることができる。従って、LED22から出射する光の利用効率をより向上させることができる。
【0037】
以上、本発明を実施形態のもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせに色々な変形例が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0038】
1a、1b、100 入力装置
10、110 タッチパネル
11 アクリル板(板状の絶縁部材)
12 センサ層
12a タッチセンサ部
13 光拡散シート
20、120 基板
21、121 開口
22、122 LED(発光素子)
30、130 筐体
31 延出部
32 リブ
33 基板固定部材
40、140 基板ホルダ(基板保持部材)
150 アルミテープ(静電気対策部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと、前記タッチパネルの背後に配される基板と、筐体と、を備え、
前記タッチパネルは板状の絶縁部材を有し、
前記筐体は、前記タッチパネルと前記基板との間に設けられる延出部と、前記延出部から延びるリブと、を有し、
前記基板に設けられる開口を通じて、前記リブが前記筐体から前記基板の背後に延びることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記基板を保持する基板保持部材をさらに備え、
前記板状の絶縁部材が透光性であり、
前記基板には、前記タッチパネルに向かう側の面とは反対側の面に発光素子が設けられ、
前記発光素子から出射される光が、前記基板支持部材の内面にて反射されるとともに、前記基板に設けられた前記開口を通じて、前記タッチパネルに入射することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記リブが円筒形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の入力装置。
【請求項4】
前記リブの高さは、前記タッチパネルの表面から前記基板に至るまでの沿面距離が長い側よりも短い側の方が高いことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−243272(P2012−243272A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116153(P2011−116153)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】