説明

入力装置

【課題】 任意のヘッドホンを用いてヘッドホンによる入力を行うことができる入力装置を簡易に実現する。
【解決手段】 入力装置10は、スピーカユニット21を備えるヘッドホン20に接続される。入力装置10は、スピーカユニット21から出力される電気信号を検出して、予め設定される振動検出パラメータに基づいて当該検出した電気信号から、ユーザの打鍵によるヘッドホン20の振動を検出する打鍵検出部11と、打鍵検出部11によって検出された打鍵に応じて、入力される情報を決定する入力情報決定部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに接続される入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドホンは、音を出力するだけの出力装置である。なお、ここで言うヘッドホンは、イヤホン、ステレオホン、ヘッドセット等を含む耳にスピーカを装着させて音を出力する装置全般を指す。そのため、ユーザが音楽プレーヤを操作するためには、リモコン等の入力装置を用いるか、音楽プレーヤ本体に実装された入力装置を用いる必要があった。リモコンや音楽プレーヤ本体に比べ、ヘッドホンはユーザが素早くアクセスできる位置にあるため、もしヘッドホンで入力操作を行うことができれば、より早い操作が可能になる。
【0003】
ヘッドホンで入力操作を行うために様々な方法が考えられてきた。ヘッドホンにスイッチを加え、そのスイッチを用いて入力する方法は、単純でローコストであるため、よく用いられている。操作する力を小さくするために、タッチセンサを用いたものもある(例えば、非特許文献1参照)。また、一般にヘッドセットやイヤホンマイク等と呼ばれるマイクが付加されたヘッドホンを用いれば、音声による入力が可能である。多くの場合、マイクは口の近くに配置されるが、ヘッドホン内部に実装したマイクで外耳道から漏れてくる音声を検出する方式(例えば、特許文献1及び2参照)や、ヘッドホンと皮膚とが接触する部位にマイクを設置し、骨伝道音を検出する方式等もある。
【0004】
また、モーションセンサをヘッドホンに組み込み、頭部のジェスチャで入力操作を行うことや、ヘッドホンの耳への着脱をトリガにして音楽プレーヤを操作するものもある。更には、外耳道の動きヘッドホン内部に実装した距離センサで検出して、それを入力操作とする方式(例えば、非特許文献2参照)や、ヘッドホンに実装した電極でEOG(Electro-Oculogram:眼電位図)を検出し、眼球の動きで入力を行う方式(例えば、非特許文献3参照)等が知られている。
【0005】
また、ヘッドホンを叩くことで入力操作を行うものが存在する。これは、ヘッドホンに加速度センサを設けておき、当該加速度センサによってヘッドホンが叩かれたことを検出して、入力操作とするものである。
【0006】
また、ヘッドホンのスピーカのみを用いて、音声の出力と入力とを行う全二重通信を行う方法も考えられている(例えば、特許文献3及び4参照)。この技術を用いれば、ユーザは音声によるコマンド入力が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−201887号公報
【特許文献2】特開2006−173930号公報
【特許文献3】特開2011−23848号公報
【特許文献4】特開2005−109845号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Buil, V., Hollemans, G.,Wijdeven, S., Headphones with touch control. Proc. MobileHCI ’05, 2005, pp. 377-378.
【非特許文献2】谷口ほか, みみスイッチ:外耳の動きを入力情報とする常時装用型入力装置. インタラクション2010 予稿集,2010.
【非特許文献3】Manabe, H., Fukumoto, M.,Full-time wearable headphone-type gaze detector. Extended abstracts of CHI ’06,2006,pp. 1073-1078.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ヘッドホンの選定にはユーザの嗜好が強く反映されるため、ユーザが気に入ったヘッドホンを使い続けることが望ましい。従って、任意のヘッドホンで利用できる入力機能を実現することが重要となる。
【0010】
しかしながら、上述した方法ではヘッドホンでの入力操作が可能になるが、その目的のために特別なセンサ等を付け加えている。そのため、入力操作を行うためには入力操作を行うためにはセンサ付きの特別なヘッドホンを利用する必要があり、ユーザが既に保持しているヘッドホンを使うことができなくなってしまう。
【0011】
また、スピーカのみを用いて全二重通信を行う場合も、全二重通信を行うことができる特別のヘッドホンを用いる必要があり、ユーザは特別のヘッドホンを利用せざるを得なくなってしまう。任意のヘッドホンで全二重通信を行うためには、高度なエコーキャンセル及びノイズキャンセル機能が必要となり、回路が複雑化し、消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、任意のヘッドホンを用いてヘッドホンによる入力を行うことができ、簡易に実現することができる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係る入力装置は、スピーカユニットを備えるヘッドホンに接続される入力装置であって、スピーカユニットから出力される電気信号を検出して、予め設定される振動検出パラメータに基づいて当該検出した電気信号からヘッドホンの振動を検出する振動検出手段と、振動検出手段によって検出された振動に応じて、入力される情報を決定する入力情報決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
通常、スピーカは電気信号を振動に変換するトランスデューサとして用いられるが、その逆の振動を電気信号に変換することも可能である。そこで、本発明に係る入力装置では、ヘッドホンに備えられるスピーカユニットから出力される電気信号が検出されることでヘッドホンの振動が検出される。そして、検出された振動に応じて入力される情報が決定される。即ち、ユーザがヘッドホンを振動(打鍵)することで、ヘッドホンが接続される音響機器等への入力コマンド等の情報の入力を行うことが可能になる。
【0015】
また、本発明によれば、ヘッドホンに備えられるスピーカユニットを用いてヘッドホンによる入力を実現しているので、任意のヘッドホンを用いたヘッドホンによる入力を行うことが可能になる。また、振動によって出力される電気信号を検出すればよいので簡易に実現することが可能である。
【0016】
振動検出手段は、ヘッドホンに音信号を出力するヘッドホンアンプと当該ヘッドホンとの間に設けられる抵抗を備え、当該抵抗の電位変化を検出することでヘッドホンの振動を検出することが望ましい。この構成によれば、振動による抵抗の電位変化を検出すればよいので、確実かつより簡易に本発明の実施を行うことが可能になる。
【0017】
振動検出手段は、抵抗のヘッドホンアンプ側の電位を分圧した電位と当該抵抗のヘッドホン側の電位とを差動増幅した電位に基づいて、当該抵抗の電位変化を検出することが望ましい。この構成によれば、振動による抵抗の電位変化を検出すればよいので、適切かつ確実に本発明の実施を行うことが可能になる。
【0018】
振動検出手段は、抵抗のヘッドホンアンプ側の電位を分圧した電位と当該抵抗のヘッドホン側の電位との何れかの位相をシフトさせることが望ましい。この構成によれば、差動増幅した電位におけるヘッドホンアンプからヘッドホンに入力される音信号の影響を減らすことができ、適切に振動による抵抗の電位変化を検出することができる。
【0019】
入力装置は、接続されるヘッドホンに応じて、ヘッドホンアンプ側の電位の分圧に係る分圧比を調整する分圧比調整手段を更に備えることが望ましい。この構成によれば、ヘッドホンに応じて、振動による抵抗の電位変化を検出しやすいようにできる。これにより、より頑強にヘッドホンによる入力が可能になる。
【0020】
入力装置は、抵抗のヘッドホンアンプ側から当該抵抗を経由してヘッドホンに入力されるインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を発生させる信号発生手段を更に備え、分圧比調整手段は、信号発生手段によって発生されたインパルス信号又は正弦波信号のヘッドホンからの応答を検出して、当該応答に応じて分圧比を調整する、ことが望ましい。この構成によれば、ヘッドホンに応じて、振動による抵抗の電位変化を更に検出しやすいようにできる。これにより、更に適切にヘッドホンによる入力が可能になる。
【0021】
入力装置は、抵抗のヘッドホンアンプ側から当該抵抗を経由してヘッドホンに入力されるインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を発生させる信号発生手段を更に備え、振動検出手段は、信号発生手段によって発生されたインパルス信号又は正弦波信号のヘッドホンからの応答を検出して、当該応答に応じて振動検出パラメータを設定する、ことが望ましい。この構成によれば、ヘッドホンに応じて、検出した電位変化から振動を更に検出しやすいようにできる。これにより、更に適切にヘッドホンによる入力が可能になる。
【0022】
振動検出手段は、キャリブレーションとしてスピーカユニットから出力される電気信号を検出して振動検出パラメータを設定することが望ましい。この構成によれば、ユーザがヘッドホンを振動(打鍵)させてキャリブレーションを行えば、ユーザの振動のさせ方毎に振動による抵抗の電位変化を検出しやすいようにできる。これにより、ユーザの振動のさせ方に応じた適切なヘッドホンによる入力が可能になる。
【0023】
入力装置は、振動検出手段によって設定された振動検出パラメータに基づいて、ヘッドホンに入力される音信号の最大音量を設定する音量設定手段を更に備えることが望ましい。この構成によれば、ヘッドホンに入力される音信号によるヘッドホンの振動の誤検出を防止することができる。これにより、ヘッドホンに入力される音信号に起因する誤動作等を防止することができる。
【0024】
入力情報決定手段は、振動検出手段によって検出された振動のリズムに応じて、入力される情報を決定することが望ましい。この構成によれば、様々な情報の入力を行うことが可能になり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0025】
ヘッドホンは、2つのスピーカユニットを備えており、入力装置は、当該2つのスピーカユニットの一方を音信号を出力し、他方をヘッドホンを装着するユーザの外耳道から漏れてくる音声を検出するモードに設定するモード設定手段を更に備えることが望ましい。これにより例えば、上記の一方のスピーカユニットからは音楽等の音声を出力させ、他方のスピーカユニットをマイクとして用いることによって、ヘッドホンを用いてユーザに通話を行わせることができる。即ち、この構成によれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ヘッドホンに備えられるスピーカユニットを用いてヘッドホンによる入力を実現しているので、任意のヘッドホンを用いたヘッドホンによる入力を行うことが可能になる。また、振動によって出力される電気信号を検出すればよいので簡易に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る入力装置の機能構成を示す図である。
【図2】実施形態において、打鍵検出に用いられる回路を示す図である。
【図3】実施形態において、(i)回路上に入力される信号と(ii)差動増幅器から出力される打鍵信号とを示すグラフである。
【図4】実施形態において、入力される情報を決定するために予め記憶している情報である。
【図5】本発明の実施形態に係る入力装置でキャリブレーション時に実行される処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る入力装置でユーザの打鍵による情報の入力時に実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面と共に本発明に係る入力装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1に本実施形態に係る入力装置10を示す。入力装置10は、ヘッドホン20に接続されて、ヘッドホン20を用いた、ユーザからの情報の入力を行う装置である。この情報の入力は、ユーザが入力したい情報に応じてヘッドホン20を振動させて行われる。ヘッドホン20の振動は、ユーザがヘッドホン20を打鍵する(叩く)ことによって行われる。入力される情報は、任意の情報でよいが、例えば、ヘッドホン20に音信号を入力する音響機器に対する入力コマンド(具体的には、再生、停止や曲の選択等のコマンド)である。
【0030】
入力装置10は、ケーブル等の有線でヘッドホン20と接続されており、信号の入出力を行うことができる。また、入力装置10には、有線等のケーブルでヘッドホン20に音信号を入力する音響機器(の一機能)であるヘッドホンアンプ30と接続されている。ヘッドホンアンプ30は、入力装置10を介してヘッドホン20に音信号を出力する。即ち、入力装置10は、例えば、ヘッドホン20とヘッドホンアンプ30との間にアダプタとして設けられ、ヘッドホン20に音信号を出力する出力装置でもある。なお、入力装置10とヘッドホン20との間の接続、及び入力装置10とヘッドホンアンプ30との間の接続は、必ずしも有線による接続でなくてもよく、無線による接続であってもよい。
【0031】
図1に示すように、ヘッドホン20は、スピーカユニット21を備えている。スピーカユニット21は、電気信号として入力される音信号を信号に変換して音声を出力するトランスデューサである。ヘッドホン20は、ユーザがスピーカユニット21から出力される音声が聞けるようにユーザの耳に装着される。ヘッドホン20には、左耳用、右耳用の2つのスピーカユニット21が備えられていてもよい。
【0032】
その一方で、スピーカユニット21は、振動を電気信号として変換するトランスデューサでもある。即ち、ヘッドホン20に振動が与えられると、スピーカユニット21から当該振動に応じた電気信号が出力される。出力された電気信号は、ヘッドホン20から入力装置10に入力される。スピーカユニット21としては、例えば、ダイナミック型、バランスドアーマチュア型、圧電型、静電型、マグネチック型等のスピーカユニット(トランスデューサ)を用いることができる。
【0033】
引き続いて、本実施形態に係る入力装置10の機能構成について説明する。入力装置10は、図1に示すように打鍵検出部11と、入力情報決定部12と、分圧比調整部13と、信号発生部14と、音量設定部15と、モード設定部16とを備えて構成される。
【0034】
打鍵検出部11は、情報の入力を行うためにユーザがヘッドホン20を打鍵した(叩いた)ことによるヘッドホン20の振動を検出する振動検出手段である。打鍵検出部11は、ヘッドホン20のスピーカユニット21から出力される電気信号を検出して、後述するような予め設定される振動検出パラメータに基づいて当該検出した電気信号からヘッドホン20の振動を検出する。
【0035】
打鍵検出部11は、図2に示す基本回路11aを用いてスピーカユニット21から出力される電気信号を検出する。図2示すように、基本回路11aは、4つの抵抗R1〜R4と、差動増幅器111とを備えている。抵抗R1は、ヘッドホンアンプ30とヘッドホン20(のスピーカユニット21)との間に設けられる。ヘッドホンアンプ30からヘッドホン20への音信号の入力は、抵抗R1を介して行われる。なお、抵抗R1は、過電流の防止、ヘッドホンアンプ30の発振防止を目的として、従来のヘッドホンアンプとヘッドホンとの通常の接続形態であっても挿入されることが多い。打鍵検出部11は、当該抵抗R1の電位変化を、振動によってスピーカユニット21から出力される電気信号として検出することでヘッドホン20の振動を検出する。
【0036】
ヘッドホン20が打鍵されると、ヘッドホン20内部のスピーカユニット21に振動が与えられ電流が発生する。これに伴い、抵抗R1のヘッドホン20側の位置P1の電位が変化する。打鍵検出部11は、この位置P1の電位を差動増幅器111のマイナス入力端子に入力し、ヘッドホンアンプ30の出力電位(抵抗R1のヘッドホンアンプ30側の位置P2の電位)を抵抗R2で適切に分圧した電位を差動増幅器111のプラス入力端子に入力して、差動増幅した電位に基づいて抵抗の電位変化を検出する。このようにして得られる電位は、ヘッドホンアンプ30からヘッドホン20に入力される(再生している)音信号がキャンセルされ、打鍵に伴う電位変化のみが増幅されたものとすることができる。本実施形態においては、差動増幅器111から出力される電圧値を打鍵信号と呼ぶ。なお、打鍵信号は、ユーザによる打鍵が行われていない場合の信号を含んでいる。
【0037】
ここで抵抗R2は、IC制御により抵抗値を変更することが可能な可変抵抗であり、例えば、後述するように抵抗値が設定される。また、打鍵信号の検出は、打鍵検出部11が備える従来の電圧検出器(図示せず)を用いて行うことができる。
【0038】
具体例を図3に示す。(i)は位置P1での電位であり、(ii)は打鍵信号であり、横方向は時間の経過を示し、縦方向は電位の大きさを示している。この例では、ヘッドホン20には500Hz、100mVp−pの正弦波を与えている。この時、ヘッドホン20が打鍵されると、図3(i)に示すように位置P1での電位に打鍵に伴って波形に乱れが生じる。一方、打鍵信号は図3(ii)に示すような信号となる。打鍵信号では、ヘッドホン20に与えられた正弦波が減衰し、打鍵に伴うピークが明瞭に観測される。打鍵検出部11は、この打鍵に伴うピークを検出することでヘッドホン20への打鍵を検出することができる。
【0039】
打鍵の伴うピークの検出は、従来からの波形のピーク検出の技術を利用することができる。ここで、ピークの検出は、打鍵信号の電圧値が単純にある予め設定された閾値を超えた場合にピークであるとして検出してもよいし、閾値を超えてなおかつ直前の変化量が別な閾値を超えた場合をピークであると検出してもよい。更に、差動増幅器111が出力する打鍵信号に対して、ローパスフィルタやバンドパスフィルタをかけ、フィルタを通った後の信号に対して、ピーク検出を行ってもよい。打鍵(による振動)の検出に用いられる振動検出パラメータは、例えば、上記の打鍵信号の電圧値(ピーク)の閾値や、電圧値の変化量あるいはピークの間隔の閾値である。また、振動検出パラメータは、ピーク検出の手法に応じて上記以外のものが用いられてもよい。なお、信号検出パラメータは、後述するように適宜設定される。
【0040】
打鍵検出部11は、ヘッドホン20の振動(打鍵)を検出するとその旨を検出毎に入力情報決定部12に通知する。また、スピーカユニット21が2つある場合には、何れのスピーカユニット21の振動であるかを示す情報も合わせて出力する。
【0041】
入力情報決定部12は、打鍵検出部11によって検出された振動に応じて、入力される情報を決定する入力情報決定手段である。例えば、入力情報決定部12は、打鍵検出部11によって検出された振動のリズムに応じて、入力される情報を決定する。具体的には、図4の表に示すように、振動のリズムと入力される情報(例えば、ヘッドホンアンプ30を操作するためのコマンド)との対応関係を示す情報を記憶しておき、その情報に基づいて入力される情報の決定を行う。図4において、振動のリズムは、「両手モード」あるいは「片手モード」の欄の情報である。「両手モード」及び「片手モード」とは、ヘッドホン20の振動による情報の入力方法のモードであり、ユーザ等によって入力の前に設定されるものである。「両手モード」とは、両手を使い、左右のスピーカユニット21を打鍵することでコマンドを発行するモードである。「片手モード」とは、片手を使い、右又は左のスピーカユニット21のみを打鍵することでコマンドを発行するモードである。
【0042】
入力情報決定部12は、スピーカユニット21の振動が発生した旨が打鍵検出部11から入力されると、一定の時間幅における当該振動のリズムが予め入力コマンドに対応付けられて記憶されている振動のリズムと一致しているか否かを判断する。ここで、振動のリズムには、2つのスピーカユニット21の振動の順番も含む。例えば、図4の「両手モード」における、左右の順番等である。また、振動のリズムを構成する個々の振動の長さ(図4の「片手モード」における、四分音符と八分音符との違い)や振動の間隔が考慮されてもよい。
【0043】
入力情報決定部12は、打鍵検出部11からの通知に係る振動のリズムが予め記憶している振動のリズムの何れかと一致していると判断した場合には、当該記憶している振動のリズムに対応付けて記憶しているコマンドを入力される情報として決定する。入力情報決定部12は、決定したコマンドを示す情報を当該情報が用いられる装置、例えば、ヘッドホンアンプ30に出力される。打鍵検出部11からの通知に係る振動のリズムが予め記憶している振動のリズムの何れかとも一致していないと判断した場合には、情報の入力は行われない。
【0044】
分圧比調整部13は、接続されるヘッドホン20に応じて、抵抗R1のヘッドホンアンプ30側の電位の分圧に係る分圧比を調整する分圧比調整手段である。信号発生部14は、抵抗R1のヘッドホンアンプ30側から当該抵抗R1を経由してヘッドホン20に入力されるキャリブレーション用の信号を発生させる信号発生手段である。キャリブレーション用の信号は、任意の信号を用いることができるが、後述するようにインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を用いることが望ましい。正弦波信号において周波数を変化させる範囲は、ヘッドホンアンプ30から出力される音楽等の音信号の周波数の範囲であることが望ましい。分圧比調整部13及び信号発生部14は、打鍵検出部11によって適切に振動を検出できるようにキャリブレーションを行うための構成である。
【0045】
キャリブレーションは、ユーザの打鍵による情報の入力が行われる前に行われる。例えば、入力装置10に対してユーザからキャリブレーションを行う旨の操作が行われた場合、あるいは、新たにヘッドホン20が入力装置10に接続されたことが検出された場合に行われる。
【0046】
具体的には、基本回路11aの抵抗R2の抵抗値を、接続されるヘッドホン20に応じて上記の構成によって決定する。ヘッドホン20には、インピーダンス、共振周波数等のいくつかのパラメータがあり、それらのパラメータはヘッドホン20によって異なる。それらのパラメータに合わせて抵抗R2の抵抗値を調整することによって、打鍵信号に重畳する音信号をより小さくすることが可能である。
【0047】
信号発生部14は、具体的には、従来の信号発生器によって実現することができ、基本回路11aの位置P2に発生(生成)させた信号を入力するように構成されている。このように発生させた信号は、ヘッドホン20に入力され、ヘッドホン20からは入力した信号とヘッドホン20の上記のパラメータに応じた信号が出力される。ヘッドホン20から出力される信号は、基本回路11aの位置P1の電位に相当して、差動増幅器111のマイナス入力端子に入力される。その一方で、基本回路11aの位置P2に発生(生成)させた信号は、基本回路11aの位置P2の電位に相当して、差動増幅器111のプラス入力端子に入力される。このとき、ヘッドホン20が振動していなければ、振動していないときの打鍵信号が得られる。ヘッドホン20が振動していないときの打鍵信号は、振動が適切に検出できるように、その振幅(電圧値)の大きさがなるべく小さくなることが望ましい。
【0048】
分圧比調整部13は、このときの打鍵信号を検出して、検出した打鍵信号(の振幅)が最も小さくなるように抵抗R2の抵抗値を探索する。この探索は、例えば、抵抗R2の抵抗値を少しずつ変化させなから、打鍵信号の振幅を測定することで行われる。なお、上記の探索は、例えば、ヘッドホンアンプ30から出力される音信号に基づいて行われてもよく、必ずしも信号発生部14から発生される信号に基づかずに行われてもよい。
【0049】
また、信号発生部14から発生される信号が、インパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号であれば、分圧比調整部13は、検出した打鍵信号に基づいて、インピーダンスや共振周波数等のヘッドホン20のパラメータを推定することができる。分圧比調整部13は、推定したパラメータに基づいて打鍵信号が最も小さくなるように抵抗R2の抵抗値を設定してもよい。ヘッドホン20のパラメータの推定は、従来の方法を用いることができる。また、ヘッドホン20のパラメータから打鍵信号が最も小さくなるように抵抗R2の抵抗値を設定することも従来の方法により可能である。
【0050】
特定の信号を入力して抵抗R2の抵抗値を少しずつ変化させなから抵抗R2の抵抗値を探索する方法では、ある特定の信号に対する調整でしかなかった。これに対して、インピーダンス、共振周波数等のヘッドホン20のパラメータに基づいて抵抗R2の抵抗値を設定する方法や周波数を変化させて抵抗値を探索する方法では総合的な視点で抵抗値を調整できる点で異なる。通常、ヘッドホン20の特性は、周波数依存性があるため抵抗R2の抵抗値は周波数によって異なる。例えば500Hzの正弦波を用いて抵抗R2の抵抗値を少しずつ変化させなから抵抗R2の抵抗値を探索する方法では、500Hzの正弦波に対する最適な抵抗値を求めることができるが、500Hzにおける最適値を他の周波数に対して適用しても問題ないかどうかは考慮されない。ヘッドホン20において再生される音楽は、500Hzに限らず様々な周波数で再生されえる。
【0051】
もし、500Hz付近に特異な周波数依存性があれば、500Hzに対する最適値を他の周波数に適用するのは問題となる。一方、周波数を可変にさせた場合には、例えばどの周波数での最適値を用いるのがよいのかを判定できるようになる。
【0052】
また、ヘッドホン20を打鍵した時に現れる信号は、ユーザの打鍵動作の影響を強く受けるが、それだけでなくヘッドホン20のパラメータの影響も受ける。例えば、ヘッドホン20の共振周波数は、打鍵時の打鍵信号の周波数に影響を与える。
【0053】
そこで、打鍵検出部11は、キャリブレーションとして、信号発生部14から発生された信号、具体的には、インパルス信号又は正弦波信号のヘッドホン20からの応答を検出して、当該応答に応じて振動検出パラメータを設定することとしてもよい。具体的には、打鍵検出部11は、キャリブレーションの際に信号発生部14から信号を発生させたときの打鍵信号を上記の応答として検出する。打鍵検出部11は、検出した打鍵信号に基づいて、インピーダンスや共振周波数等のヘッドホン20のパラメータを推定する。当該パラメータを用いて、振動検出パラメータを設定する。ヘッドホン20のインピーダンスは、信号の周波数に応じて変化し、共振周波数のときに最小となる。従って、例えば共振周波数のときのインピーダンスを基準に、振動検出パラメータである打鍵信号の電圧値の閾値や電圧値の変化量の閾値の設定を行う。これにより、より頑強に打鍵信号から打鍵検出を行うことができるようになる。
【0054】
また、打鍵検出部11は、信号発生部14から発生された信号を用いるのではなく、予めユーザにヘッドホン20を打鍵させ、そこで得られる打鍵信号を基に、振動検出パラメータを設定することとしてもよい。打鍵検出部11は、キャリブレーションとしてスピーカユニット21から出力される電気信号を検出して振動検出パラメータを設定する。このキャリブレーションの際に、ユーザがヘッドホン20を打鍵したものとして、打鍵検出部11は振動検出パラメータを設定する。具体的には、キャリブレーションの際に検出された打鍵信号から、打鍵に相当するピークが検出できるように打鍵信号の電圧値の閾値を設定する。この際、確実に振動検出パラメータを設定するため、ユーザは複数回、ヘッドホン20を打鍵することが望ましい。
【0055】
例えば、打鍵の強さはユーザによって異なるため、打鍵に伴う打鍵信号のピークの大きさもユーザによって異なる。この時、振動検出パラメータを変化させないと、弱いピークを発生させるユーザでは、打鍵を検出できないという問題が生じる。これに対して、予めユーザに打鍵させておけば、そのユーザに合わせて振動検出パラメータを設定することができ、弱いピークを発生させるユーザに対しても打鍵検出が行えるようになる。
【0056】
音量設定部15は、打鍵検出部11によって設定された振動検出パラメータに基づいて、ヘッドホン20に入力される音信号の最大音量を設定する音量設定手段である。当該音量設定は、キャリブレーションの一環として行われる。分圧比調整部13によって、抵抗R2の抵抗値が調整された場合であっても、図2の打鍵信号に重畳する音信号はゼロにはならない。それはヘッドホン20がリアクタンス成分を持っているため、位相差が生じるためである。ここで、ユーザの打鍵に伴う打鍵信号のピークが小さい場合に、大きな音量の音信号が入力(再生)されると、打鍵していないにも関わらず、打鍵検出部11が打鍵を検出してしまう誤認識が発生する。
【0057】
音量設定部15は、ヘッドホン20に入力される(再生する)音信号の最大音量を、ピークの誤検出が発生しない範囲に設定することで、この問題を解決する。具体的には、例えば、音量設定部15は、抵抗R2の抵抗値が調整された後に、一定の音量で特定の周波数の正弦波をヘッドホン20に与えている時の打鍵信号を観測する。この正弦波は、例えば、信号発生部14によって発生される。音量設定部15は、このときの打鍵信号が何倍になると打鍵検出部11において打鍵と判断されるのかを判定する。この際、音量設定部15は、打鍵検出部11によって設定された振動検出パラメータを参照して上記の判定を行う。音量設定部15は、この倍率を判定すると、上記の一定の音量に倍率をかけたレベルの音量を最大音量に設定する。音量設定部15は、設定した最大音量をヘッドホンアンプ30に通知して当該最大音量を超える音量の音信号を出力しないようにさせる。あるいは、入力装置10において、当該最大音量を超える音信号がヘッドホンアンプ30から入力された場合には、音量が最大音量以下となるように信号を処理してからヘッドホン20に出力させるようにしてもよい。
【0058】
モード設定部16は、入力装置10の動作モードを設定するモード設定手段である。モードの設定は、例えば、上述したユーザの打鍵による入力操作を受け付けて当該入力操作に応じて行われる。動作モードとしては、例えば、上述した両手を使ってヘッドホン20を打鍵する「両手モード」と、片手のみを使う「片手モード」とがある。また、そのほか、2つのスピーカユニット21の一方を音信号を出力(再生)し、他方をマイクロフォンとして使用する「イヤホンマイクモード」がある。スピーカユニット21のマイクロフォンとしての利用は、具体的には例えば、ヘッドホン20を装着するユーザの外耳道から漏れてくる音声を検出するものである。
【0059】
「イヤホンマイクモード」では、ユーザはヘッドホン20の一方のスピーカユニット21からしか音が聞こえなくなってしまうが、例えば、電話機に接続されるヘッドホン20であれば、通常のヘッドホン20を装着するだけで通話を行うようにできるようになる。より具体的には、ユーザが音楽を聴いている際に電話がかかってきても、ヘッドホン20を打鍵するだけで通話を行うことができる。
【0060】
なお、入力装置10は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアからなるコンピュータを備えており(図示せず)、上述した機能手段における、ピーク検出や入力される情報の決定、分圧比の計算等の情報処理は、当該コンピュータによって行われる。以上が、入力装置10の構成の説明である。
【0061】
引き続いて、図5及び図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る入力装置10で実行される処理(入力装置10の動作)を説明する。まず、図5のフローチャートを用いてキャリブレーション時に実行される処理を説明し、その後、図6のフローチャートを用いてユーザの打鍵による情報の入力時に実行される処理を説明する。
【0062】
キャリブレーションは、入力装置10に対してユーザからキャリブレーションを行う旨の操作が行われた場合、あるいは、新たにヘッドホン20が入力装置10に接続されたことが検出された場合に行われる。入力装置10では、まず、信号発生部14によってキャリブレーション用の信号が発生する(S01)。この信号は、例えば、一定の音量の正弦波である。
【0063】
この信号は、図2に示す基本回路11aの位置P2に入力される。当該信号は、抵抗R2を介して差動増幅器111のプラス入力端子に入力される。その一方、当該信号は、抵抗R1を介して、入力装置10に接続されているヘッドホン20に入力される。ヘッドホン20からは、入力した信号とヘッドホン20のパラメータとに応じた信号が基本回路11aの位置P1に出力される。ヘッドホン20から出力された信号は、差動増幅器111のマイナス入力端子に入力される。差動増幅器111からは、入力された2つの信号が差動増幅された打鍵信号が出力されて、分圧比調整部13によって検出される(S02)。なお、このとき、ヘッドホン20は振動していない(打鍵されていない)ものとする。
【0064】
検出された打鍵信号に基づいて、分圧比調整部13によって抵抗R2の抵抗値が調整される(S03)。具体的には、抵抗値が変化させられ、打鍵信号の振幅が最も小さくなる抵抗値が探索される。また、抵抗R2の抵抗値の調整は、インパルス信号や周波数が変化する正弦波信号が用いられてもよい。また、ヘッドホン20のパラメータが検出されて、当該ヘッドホン20のパラメータに基づいて行われてもよい。抵抗R2の抵抗値が決定されると、抵抗R2の抵抗値が決定された抵抗値となるように制御される。
【0065】
続いて、打鍵検出部11によって振動検出パラメータが設定される(S04)。このときも引き続き、信号発生部14によってキャリブレーション用の信号が発生されている。この設定を行うためユーザは、数回ヘッドホン20を打鍵する。なお、入力装置10では、この処理を行う前にユーザに打鍵を促す、表示あるいは音声出力等の通知が行われてもよい。打鍵検出部11よって、その際の打鍵信号が検出されて、当該打鍵信号に基づいて、振動検出パラメータである打鍵信号の電圧値の閾値や電圧値の変化量の閾値の設定が行われる。
【0066】
続いて、音量設定部15によって、打鍵検出部11によって設定された振動検出パラメータが参照されて、ヘッドホン20に入力される音信号の最大音量が設定される(S05)。以上が、入力装置10のキャリブレーションの処理である。以降、ユーザはヘッドホン20を打鍵することで情報の入力を行うことができるようになる。
【0067】
引き続いて、図6のフローチャートを用いてユーザの打鍵による情報の入力時に実行される処理を説明する。この処理の際には、ヘッドホンアンプ30からヘッドホン20に対して、入力装置10を介して音信号が入力されていてもよい(入力されていなくてもよい)。
【0068】
本処理では、打鍵検出部11によって、打鍵信号が検出される(S11)。ユーザがヘッドホン20の打鍵を行っている場合には、打鍵信号は、当該打鍵に応じた信号となる。続いて、打鍵検出部11によって、S04において設定された振動検出パラメータが用いられて、検出された打鍵信号から打鍵(に相当するピーク)が検出される(S12)。打鍵が検出されると、その旨が打鍵検出部11から入力情報決定部12に通知される。
【0069】
続いて、打鍵検出部11によって検出された振動に応じて、入力情報決定部12によって入力される情報が決定される(S13)。具体的には、「両手モード」又は「片手モード」の何れかの設定に応じて、打鍵検出部11によって検出された振動のリズムが図4に示すように予め記憶されたものの何れかと一致しているか否かが判断される。何れかのリズムと一致していると判断された場合には、そのリズムに対応付けられて記憶されているコマンドが入力される情報として決定される。何れのリズムとも一致していないと判断された場合には、情報の入力は行われない。
【0070】
入力コマンドが決定された場合、入力情報決定部12から、例えばヘッドホンアンプ30等の所定の出力先に入力コマンドが出力される(S14)。
【0071】
上述したように、本実施形態に係る入力装置10では、ユーザによってヘッドホン20に対する打鍵が行われると電気信号が生じて、当該電気信号が検出されることでヘッドホン20の振動が検出される。そして、検出された振動に応じて入力される情報が決定される。即ち、ユーザがヘッドホン20を振動(打鍵)することで、ヘッドホンが接続される音響機器等への入力コマンド等の情報の入力を行うことが可能になる。
【0072】
上記のように本実施形態によれば、ヘッドホン20に備えられるスピーカユニット21を用いてヘッドホン20による入力を実現しているので、任意のヘッドホンを用いたヘッドホンによる入力を行うことが可能になる。また、振動によって出力される電気信号を検出すればよいので簡易に実現することが可能である。
即ち、本実施形態によれば、ヘッドホンに情報を入力するためのスイッチ、タッチセンサ、加速度センサ、あるいはそれら以外のセンサを用いた入力手段を備える必要が無い。但し、更に多くの入力を可能とするため、上記の入力手段を備えていてもよい。
【0073】
なお、全二重通信を行う従来技術を用いても、ヘッドホンの打鍵を検出することは可能である。しかし、この従来技術では、ヘッドホンの打鍵を検出することが目的ではなく、外耳道から漏れてくる音声を検出することを目的としている。外耳道から漏れてくる音声は、ヘッドホンの打鍵に比べ、信号のレベルがはるかに小さい。そのため、位相差を考慮した複雑な処理を行うことが必要である。一方、本発明では外耳道から漏れてくる音声に比べて、はるかに信号レベルの大きなヘッドホンの打鍵のみを対象としている。
【0074】
そのため、上述した本実施形態のように、ヘッドホン20とヘッドホンアンプ30との間に設けられた抵抗R1の電位変化を検出することで、更に具体的には図2に示した位相差を考慮しない差動増幅器111だけで打鍵を検出することが可能となる。この回路は、単純で小さく実装可能であり、更に消費電力も小さい。本発明と従来技術との大きな違いは、検出対象が異なることであり、本発明は打鍵のみを対象とすることで簡単で低消費電力を実現している。即ち、本実施形態に記載したような構成によれば、適切、確実及び簡易に本発明の実施を行うことが可能になる。
【0075】
また、上述したように本実施形態のように差動増幅した電位を検出する構成とすれば、ヘッドホンアンプ30からヘッドホン20に入力される音信号の影響を減らすことができ、適切に振動による抵抗の電位変化を検出することができる。
【0076】
また、本実施形態に示したようにインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を入力して、分圧比や振動検出パラメータを調整することが望ましい。この構成によれば、ヘッドホンに応じて、振動による抵抗の電位変化や、打鍵信号からの振動を更に検出しやすいようにできる。これにより、更に適切にヘッドホンによる入力が可能になる。
【0077】
また、上述した実施形態のようにキャリブレーションとして実際のユーザの打鍵に基づいて振動検出パラメータを設定することが望ましい。この構成によれば、ユーザの振動のさせ方毎に振動による抵抗の電位変化を検出しやすいようにできる。これにより、個々のユーザの振動のさせ方に応じた適切なヘッドホンによる入力が可能になる。なお、振動の検出については、必ずしも上述した方法をすべて利用する必要はなく、スピーカユニット21から出力される電気信号を検出するものであれば任意の構成を用いることができる。
【0078】
また、上述した実施形態のようにヘッドホン20に入力される最大音量を設定することが望ましい。この構成によれば、ヘッドホン20に入力される音信号によるヘッドホン20の振動の誤検出を防止することができる。これにより、ヘッドホンに入力される音信号に起因する誤動作等を防止することができる。
【0079】
また、上述したように振動(打鍵)のリズムに応じて入力される情報が決定されることが望ましい。この構成によれば、様々な情報の入力を行うことが可能になり、ユーザの利便性を向上させることができる。但し、入力される情報は、必ずしも振動のリズムに応じたものでなくてもよく、単一の振動のみで情報が入力される構成となっていてもよい。
【0080】
また、上述したモード設定手段で設定可能なように、一方のスピーカユニット21からは音信号を出力して、他方のスピーカユニット21からはユーザの外耳道から漏れてくる音声を検出するモードを有することが望ましい。これにより例えば、上記の一方のスピーカユニットからは音楽等の音声を出力させ、他方のスピーカユニットをマイクとして用いることによって、ヘッドホンを用いてユーザに通話を行わせることができる。即ち、この構成によれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0081】
上述した実施形態においては、入力装置10は、ヘッドホン20及び音響機器であるヘッドホンアンプ30と別体として構成されていたが、ヘッドホンアンプ30と一体として(ヘッドホンアンプ30の一機能として)構成されていてもよい。あるいは、ヘッドホン20と一体として構成されていてもよい。但し、ヘッドホン20に実装された場合は、そのヘッドホン20のみでした本発明の機能を利用できない。
【0082】
以下では、更に堅牢に打鍵を検出するための方法について説明する。図2に示した回路では、どんなに抵抗R2の抵抗値を調整しても、打鍵信号に重畳する音信号をゼロにすることはできない。それは、ヘッドホン20がリアクタンス成分を持っているため、位相がシフトしてしまうためである。差動増幅器111のプラス入力端子からの入力の位相をシフトさせれば(あるいはマイナス入力端子からの入力の位相を逆にシフトさせれば)、打鍵信号に重畳する音信号を減らすことができる。シフトさせるべき位相量は、ヘッドホン20や対象とする周波数によって異なる。本発明では、打鍵を検出できれば十分であるため、厳密に位相量を一致される必要はない。打鍵に伴うピークが持つ周波数は200Hz以下であることから、そのような低周波に対する典型的なシフト量を設定し、位相シフト回路を図2の回路に導入することで、打鍵信号に重畳する音信号をより小さくすることができる。これにより、打鍵に伴う信号がより明瞭に観測されることとなり、より頑強な打鍵検出が可能になる。
【0083】
更に、より頑強な打鍵検出を行うことも可能である。ソフトウェアで構成されるフィルタを用いて、ヘッドホンアンプ30の出力値から図2の位置P1の電位を推定することができる。具体的には、音源がデジタル信号である場合、ヘッドホンアンプ30の出力値はDA(デジタル−アナログ)コンバータをモニタしておくことで把握することができる。他にも、ヘッドホンアンプ30の出力値を直接AD(アナログ−デジタル)変換することで、ヘッドホンアンプ30の出力値を把握することができる。一方で、ヘッドホン20の周波数特性は、例えばインパルス応答によって知ることができる。これらから、位置P1の電位を推定可能である。
【0084】
また、位置P1の電位を観測する。推定された電位はユーザの打鍵の影響が無い電位であり、観測された電位はユーザの打鍵の影響を受けた電位である。これらの電位を比較することで、打鍵に伴う信号をより明瞭にすることができ、頑強な打鍵検出が可能である。この方法の場合、信号の差動増幅が必要ないので、図2に示す基本回路11aは必ずしも必要ない。
【符号の説明】
【0085】
10…入力装置、11…打鍵検出部、11a…基本回路、R1〜R4…抵抗、111…差動増幅器、12…入力情報決定部、13…分圧比調整部、14…信号発生部、15…音量設定部、16…モード設定部、20…ヘッドホン、21…スピーカユニット、30…ヘッドホンアンプ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットを備えるヘッドホンに接続される入力装置であって、
前記スピーカユニットから出力される電気信号を検出して、予め設定される振動検出パラメータに基づいて当該検出した電気信号から前記ヘッドホンの振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段によって検出された振動に応じて、入力される情報を決定する入力情報決定手段と、
を備える入力装置。
【請求項2】
前記振動検出手段は、前記ヘッドホンに音信号を出力するヘッドホンアンプと当該ヘッドホンとの間に設けられる抵抗を備え、当該抵抗の電位変化を検出することで前記ヘッドホンの振動を検出することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記振動検出手段は、前記抵抗の前記ヘッドホンアンプ側の電位を分圧した電位と当該抵抗の前記ヘッドホン側の電位とを差動増幅した電位に基づいて、当該抵抗の電位変化を検出することを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記振動検出手段は、前記抵抗の前記ヘッドホンアンプ側の電位を分圧した電位と当該抵抗の前記ヘッドホン側の電位との何れかの位相をシフトさせることを特徴とする請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
接続されるヘッドホンに応じて、前記ヘッドホンアンプ側の電位の分圧に係る分圧比を調整する分圧比調整手段を更に備える請求項3又は4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記抵抗の前記ヘッドホンアンプ側から当該抵抗を経由して前記ヘッドホンに入力されるインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を発生させる信号発生手段を更に備え、
前記分圧比調整手段は、前記信号発生手段によって発生されたインパルス信号又は正弦波信号の前記ヘッドホンからの応答を検出して、当該応答に応じて前記分圧比を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記抵抗の前記ヘッドホンアンプ側から当該抵抗を経由して前記ヘッドホンに入力されるインパルス信号、又は周波数が変化する正弦波信号を発生させる信号発生手段を更に備え、
前記振動検出手段は、前記信号発生手段によって発生されたインパルス信号又は正弦波信号の前記ヘッドホンからの応答を検出して、当該応答に応じて前記振動検出パラメータを設定する、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記振動検出手段は、キャリブレーションとして前記スピーカユニットから出力される電気信号を検出して振動検出パラメータを設定することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記振動検出手段によって設定された前記振動検出パラメータに基づいて、前記ヘッドホンに入力される音信号の最大音量を設定する音量設定手段を更に備える請求項7又は8に記載の入力装置。
【請求項10】
前記入力情報決定手段は、前記振動検出手段によって検出された振動のリズムに応じて、入力される情報を決定することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の入力装置。
【請求項11】
前記ヘッドホンは、2つのスピーカユニットを備えており、
当該2つのスピーカユニットの一方を音信号を出力し、他方を前記ヘッドホンを装着するユーザの外耳道から漏れてくる音声を検出するモードに設定するモード設定手段を更に備える請求項1〜10の何れか一項に記載の入力装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21487(P2013−21487A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152935(P2011−152935)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】