説明

入浴装置

【課題】
浴槽内の薬液濃度を予め設定された濃度に確実に維持することで、より適切な薬液濃度にて入浴が行えるようにする入浴装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
浴槽2内の湯を循環させる循環配管33を有する循環装置40と、循環装置40に接続され浴槽2内、または浴槽2内ないし循環配管40内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置35と、浴槽2内の湯水位を検知する水位検知手段28と、浴槽2へ湯を給湯する給湯配管20に設けられ給湯配管20内を流れる湯流量を計測する流量計測手段22と、を備え、薬液殺菌装置35が、流量計測手段22から算出された給湯量情報に基づき、浴槽2内の湯が予め設定された薬液濃度になるように薬液注入し、流量計測手段22は、水位検知手段28により湯水位がオーバーフロー水位に達したことが検知された以降は湯流量を計測しないよう制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる構造の入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入浴者を載せた担架を浴槽内の支持台上に移乗させた後、浴槽を昇降機構により上昇させて入浴者を入浴させる入浴装置において、浴槽側面に設けられた循環路により湯を循環させるとともに、この循環路に設けられた殺菌装置により湯を殺菌できるようにした入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
この入浴装置は、循環路の殺菌装置の作動が昇降機構と連動しており、浴槽が上昇されると殺菌装置の作動が開始され、入浴時に浴槽内の湯が殺菌装置によって殺菌され、浴槽内の湯が有効な殺菌濃度に維持されるようになっている。
【0003】
また、浴槽内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって、殺菌装置が作動されるので、浴槽内に貯留する湯が自動的に殺菌処理され、殺菌作業にかかる労力が大幅に低減されるものである。
さらに、入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3002181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の入浴装置では、浴槽内の湯水位がオーバーフロー水位に達した以降に差し湯が行われた場合に湯の殺菌濃度を所定濃度に維持するための工夫がなされておらず、オーバーフローする湯量を考慮せずに殺菌処理を行うと、浴槽内の殺菌濃度が高濃度になり過ぎてしまうという問題点を有していた。
また、うっかり排水栓を開栓したまま初期差し湯を開始し、その後そのことに気付き慌てて排水栓を閉栓し差し湯を続行した場合や、排水栓を開栓し浴槽内の低温に下がった湯の一部を槽外へ排水した後に高温の差し湯を行う場合などは、貯湯量が所定量を超えて算出される可能性があり、この差し湯量に対応して殺菌装置を作動すると、浴槽内の湯の殺菌濃度が高濃度になってしまい適切な殺菌濃度を維持できないという問題点も有していた。
【0006】
本発明は上記の諸問題点に鑑みてなされたもので、浴槽内の薬液濃度を予め設定された濃度に確実に維持することで、より適切な薬液濃度にて入浴が行えるようにする入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる入浴装置であって、
前記浴槽内の湯を循環させる循環配管を有する循環装置と、
該循環装置に接続され前記浴槽内、または前記浴槽内ないし前記循環配管内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置と、
前記浴槽内の湯水位を検知する水位検知手段と、
前記浴槽へ湯を給湯する給湯配管に設けられ該給湯配管内を流れる湯流量を計測する流量計測手段と、を備え、
前記薬液殺菌装置が、前記流量計測手段の計測結果から算出された給湯量情報に基づき、前記浴槽内の湯が予め設定された薬液濃度になるように薬液注入し、
前記流量計測手段は、前記水位検知手段により湯水位がオーバーフロー水位に達したことが検知された以降は湯流量を計測しないよう制御されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる入浴装置であって、
前記浴槽内の湯を循環させる循環配管を有する循環装置と、
該循環装置に接続され前記浴槽内、または前記浴槽内ないし前記循環配管内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置と、
前記浴槽内の湯水位を検知する水位検知手段と、
前記浴槽へ湯を給湯する給湯配管に設けられ該給湯配管内を流れる湯流量を計測する流量計測手段と、を備え、
前記浴槽の湯が排水される際に給湯が重ねてなされることにより、適正水位またはオーバーフロー水位までの給湯量を超える湯量が、前記流量計測手段の計測結果に基づいて算出された場合は、前記薬液殺菌装置は、それぞれ適正水位またはオーバーフロー水位までの給湯量を上限として予め設定された薬液濃度に対応する量の薬液を注入することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の入浴装置において、
前記浴槽が非入浴位置にあり、且つ前記循環装置により浴槽の湯を循環させた状態で前記薬液殺菌装置から薬液注入がなされることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の入浴装置において、
前記循環装置は、前記浴槽から取り込んだ湯に空気を混入し噴流として噴出する噴流発生装置であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項3または4に記載の入浴装置において、
前記薬液殺菌装置からの薬液注入後も所定時間だけ前記循環装置を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、薬液殺菌装置が、流量計測手段の計測結果から算出された給湯量情報に基づき、浴槽内の湯が予め設定された薬液濃度になるように薬液注入し、流量計測手段は、水位検知手段により湯水位がオーバーフロー水位に達したことが検知された以降は湯流量を計測しないよう制御されるので、流量計測手段がオーバーフローする湯を考慮せずに給湯量を算出し薬液殺菌装置がその給湯量に応じた薬液を浴槽の湯に注入し続けることにより、浴槽内の湯の薬液濃度が設定濃度を超えて高濃度になることはなく、よって、入浴者は適切な薬液濃度の湯に浸かり入浴を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、湯の一部を排水しながら、給湯(初期給湯や増し湯)を行う場合は、流量計測手段が湯流量を初期給湯から継続して計測するため、浴槽の適正水位またはオーバーフロー水位を超える湯量が算出されることになるが、この際、薬液殺菌装置はそれぞれ適正水位またはオーバーフロー水位までの給湯量を上限として予め設定された薬液濃度に対応する量の薬液を注入するので、浴槽内の湯の薬液濃度が極端に高濃度になる虞れはなく、よって、入浴者は適切な薬液濃度の湯に浸かり入浴を行うことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、浴槽が非入浴位置にある状態において、浴槽内の湯を循環しながら薬液殺菌が行われるので、入浴者は薬液濃度が充分に均一化された湯に浸かり入浴ができる。
従来の入浴装置においては、薬液殺菌装置の作動が浴槽の上昇(入浴の開始)に併せて、または入浴者の入浴中に行われるため、湯の殺菌濃度が充分に均一化されていなかったり、局所的に殺菌濃度の濃い湯に入浴者が浸からなければならず、アトピー体質の入浴者や皮膚の弱い入浴者は皮膚の症状が悪化するといった問題点を有しており好ましいものではなかったが、本発明によればこの問題点も払拭できることになる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記循環装置が、前記浴槽から取り込んだ湯に空気を混入し噴流として噴出する噴流発生装置とされるので、入浴装置に設けられる既存装置の循環装置を利用でき、循環装置を別途設ける必要はなく装置全体のコストを抑えることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、薬液殺菌装置からの薬液注入後も所定時間だけ循環装置を動作させるので、循環配管内に高濃度の薬液が残留することがなく、循環配管の腐食等を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る入浴装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る入浴装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1、2を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明の入浴装置1は、入浴者が仰臥姿勢で横たわる担架4を載せた平面視略長方形状のストレッチャー41の一方長辺方向を、平面視略長方形状の浴槽2の一方長辺方向に対して横付けし両者を連結し、担架4を浴槽2の入浴部3内に設けられる受け部5方向にスライド移動させた後、入浴部3内に湯を給湯した浴槽2を上昇させることにより入浴者を湯に浸漬して入浴を行わせるものである。
【0019】
図1に示すように、浴槽2は浴室床面6に複数の接地脚11を介して載置される基台7上に配置されており、浴槽2は基台7上に配備される浴槽昇降手段8によって、同図中、二点鎖線で示す所定下限位置(非入浴位置)と実線で示す所定上限位置(入浴位置)の区間を昇降可能に構成されている。
【0020】
浴槽昇降手段8は、基台7と浴槽本体2の底壁2a下面との間に設けられるX字状のパンタグラフ9と、ロッド10a先端部がパンタグラフ9の所定位置に連結されると共にピストン部10bが基台7に軸着される油圧シリンダ10とから構成される。
【0021】
従って、ピストン部10bに対してロッド部10aを伸長すると、パンタグラフ9が閉脚方向に駆動し浴槽2が上昇し、逆に、ロッド10aを収縮させるとパンタグラフ9が開脚方向に駆動し浴槽2は下降する。
【0022】
また、基台7上には一端部が基台7に固定されると共に浴槽2の底壁2aの略中心部を貫通して鉛直状に延設される支柱部5aと、この支柱部5aの他端部に担架4を支持する受け枠部5bとからなる受け部5が設けられている。尚、支柱部5aが貫通される底壁2a箇所には入浴部3内に溜められる湯を入浴部3外へ漏出させないよう不図示のシール部材等でシールされている。
【0023】
受け枠部5bの長手方向の上面左右端の各位置には、入浴者が仰臥姿勢で載置される担架4を、受け枠部5b上の所定位置に案内する案内レール13・13が所定の間隔を有して平行態様に配設されている。受け枠部5bの中央部には担架4と受け部5とがロックされていることを検知するセンターロック用の近接センサ14が固着される。
【0024】
基台7上に設けられる直立部15の上下各位置には浴槽2の上昇を所定上限位置にて自動停止させる上限リミットスイッチ16と、浴槽2の下降を所定下限位置にて自動停止させる下限リミットスイッチ17とがそれぞれ配設され、浴槽2の側壁2bの外面下部には上限・下限リミットスイッチ16・17をON/OFF操作する突片18が取着されている。
尚、図1は浴槽2が所定上限位置にまで上昇した状態を示しており、また、同図中、38は入浴部3内の湯温を検知する温度センサ、44は給湯配管20内の湯温を検知する温度センサ、45は給水源から供給される湯と給湯源から供給される湯とを混合することにより予め設定された温度の湯に調整して供給する電動ミキシングバルブである。
【0025】
また、入浴装置1には湯水供給源19から供給される湯を浴槽2へ給湯する給湯配管20が設けられている。この給湯配管20には、給湯用電磁弁21と、この給湯用電磁弁21の下流で給湯配管20の給湯口42近傍に給湯配管20内を流れる湯流量を計測する流量計測手段22としての流量センサ23とが介装されている。流量センサ23は給湯配管20内を流れた湯流量を計測することにより入浴部3内に給湯された給湯量を算出する。
【0026】
浴槽2の入浴部3内には、水位検知手段28として、下位・中位・上位の3つの水位センサ24・25・26が配設されている。下位水位センサ24は、入浴装置1に設けられ後述する浴槽2から取り込んだ湯に空気を混入し噴流として噴出する噴流発生装置27の作動を許容する水位を検知するものである。
中位水位センサ25は給湯された湯の湯水位が適正水位になったことを検知するもので、上位水位センサ26は、入浴部3内に給湯された湯の上限水位、即ちオーバーフロー水位を検知するものである。オーバーフロー水位を超越して給湯された湯はオーバーフロー口43から入浴装置1外へ排出される。
【0027】
入浴装置1に設けられる噴流発生装置27は、下位水位センサ24より低位置の側壁2bに形成される湯吸込口30に接続され湯を吸い込む循環配管33と、この循環配管33から四本管に分岐し、各分岐管と側壁2bとにわたって配設される噴流ノズル31・31・31・31と、各噴流ノズル31に対し空気を送り込む空気送込口32と、循環配管33の中途位置に介装され吸い込んだ湯を4基の各噴流ノズル31より浴槽2内に向かって噴出させる噴流ポンプ29とから構成される。この噴流発生装置27が入浴部3の湯を循環させる循環装置40として用いられる。
【0028】
下位水位センサ24がON状態で入浴装置1に装備される不図示の噴流スイッチが押下されると、噴流ポンプ29が作動を開始し、入浴部3内の湯が湯吸込口30から吸い込まれ循環配管33内を循環して各噴流ノズル31から噴流として噴出される。噴流ポンプ29の吐出口側の循環配管33中途位置にはカートリッジ方式の濾過フィルタ34が設けられる。
尚、水位検知手段28は、下位水位センサ24と中位水位センサ25の機能を兼ねた一つの水位センサと、上位水位センサ26と、からなる2つの水位センサから構成してもよい。
【0029】
さらに、入浴装置1には、循環装置40(噴流発生装置27)に接続され浴槽2内、または浴槽2内ないし循環配管33内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置35が設けられている。薬液殺菌装置35は、薬液を貯める薬液タンク39と、この薬液タンク39から延在し噴流ポンプ29と濾過フィルタ34の間の循環配管33に接続される薬液注入配管37と、この薬液注入配管37の中途位置に介装される薬液注入ポンプ36を有している。従って、薬液注入ポンプ36を作動させると薬液タンク39から薬液が循環配管33内を流れる湯へ注入される。図1中、12は薬液の逆流を防止する逆流弁である。
【0030】
入浴部3内の湯の薬液濃度は、入浴装置1に装備される不図示の薬液濃度切替スイッチにより、予め設定されている濃薄の二段階の濃度に切替え可能になっている。また、薬液殺菌装置35を作動させないように設定することも可能である。
【0031】
以下、浴槽2が下限リミットスイッチ17がONとなっている所定下限位置にあり、入浴部3内には湯が未だ給湯されていない状態で、上記薬液濃度切替スイッチにより薬液濃度は「濃い」が選択設定されているものとして、入浴装置1の使用方法について説明する。
【0032】
給湯用電磁弁21を開弁し、設備側の湯水給湯源19から浴槽2の入浴部3内への初期給湯を開始すると、給湯配管20内を流れる湯流量を流量センサ23が計測する。入浴部3内において、下位水位センサ24がONとなる位置まで湯が給湯されると、噴流ポンプ29の作動が許容される。
【0033】
その後、中位水位センサ25が、適正水位まで湯が給湯された旨の湯水位情報を入浴装置1が検知すると(中位水位センサ25がONになると)、給湯が自動停止するとともに、噴流発生装置27が作動する。その後、薬液殺菌装置35が、流量センサ23により計測され、入浴装置1の制御部(不図示)によって算出された入浴部3内に実際に給湯された湯量(以下、給湯量情報)に基づいて、入浴部3内の湯の薬液濃度が設定濃度となるように、薬液を循環配管33内へ注入する。
【0034】
具体的には、薬液殺菌装置35が作動する前に、はじめに噴流ポンプ29により入浴部3内の湯を所定時間(好ましくは数十秒間)循環させる。そして、この循環状態を維持した状態で薬液注入ポンプ36を作動させて、循環配管33内へ薬液を注入する。これにより薬液は循環湯とともに循環配管33内を流れ浴槽2の入浴部3内に流入し、循環配管33内及び入浴部3内の湯の殺菌が行われることになる。尚、薬液注入ポンプ36の作動中は薬液殺菌の実施中である旨が入浴待機している入浴者や入浴介助者に対して音声で報知される。
【0035】
また、うっかり排水栓46を開栓したまま初期給湯を行い、その後そのことに気付き慌てて排水栓46を閉栓し給湯を続行した場合は、流量センサ23が湯流量を初期給湯から継続して計測するため、制御部において浴槽2の適正水位を超える湯量が算出されることになるが、この場合は、適正水位までの給湯量を上限として予め設定された薬液濃度に対応する量の薬液が薬液殺菌装置35から注入をされる。従って、浴槽2内の湯の薬液濃度が極端に濃くなり過ぎることはなく、入浴者は適切な薬液濃度の湯に浸かり入浴を行うことができる。
【0036】
薬液注入ポンプ36が作動停止しても、噴流発生装置27は直ちには停止せず、所定時間(例えば、2秒間)は作動を継続する。これにより、循環配管33内に高濃度の薬液が残留することがなく、循環配管33の腐食等を低減することができる。
【0037】
続いて、入浴介助者は、ストレッチャー41上にある入浴者を載せた担架4を受け部5方向へスライド移動させる。担架4が移動し受け部5上の所定位置に至ると、担架4と受け部5とが機械的にロックされ、この旨を近接センサ14が検知する。
【0038】
入浴装置1に装備される不図示の浴槽上昇スイッチが押下されると、ロッド10aがピストン部10bに対して伸長することによりパンタグラフ9が閉脚方向に作動し浴槽2が上昇する。浴槽2は、突片18により上限リミットスイッチ16がONとされる所定上限位置にてその上昇が自動停止する。
【0039】
この浴槽2の上昇により入浴者は湯に浸漬され入浴に供される。従って、入浴者は、浴槽2が所定下限位置にある状態において、入浴部3内の湯を循環しながら薬液殺菌装置35により薬液殺菌が行われた後の湯に浸かることができるので、薬液濃度が充分に均一化された湯に浸かり入浴を行うことができる。
【0040】
浴槽2が所定上限位置にある入浴時に、更に入浴部3への湯の給湯(増し湯)が必要となった場合は、給湯口42から給湯を行えばよい。給湯配管20内を流れる湯流量は、上位水位センサ26が湯水位を検知する位置、即ち、湯水位がオーバーフロー水位に至るまで流量センサ23により計測されるが、上位水位センサ26によりオーバーフロー水位が検知された以降に給湯配管20内を流れた湯流量は計測されない。
【0041】
流量センサ23により計測された湯流量に基づいて、入浴部3に増し湯された給湯量が制御部にて算出され給湯量情報として記憶される。制御部は、この給湯量情報に基づいて入浴部3内の湯全体の薬液濃度を設定濃度に維持するために必要な薬液量を算出する。薬液殺菌装置35はこの薬液量に応じた量の薬液を注入する。
【0042】
入浴者が入浴状態にある際は、薬液殺菌装置35を作動させないので、増し湯により湯の薬液濃度が一時的に薄まるが、入浴が終了し浴槽2が所定上限位置から所定下限位置にまで下降するに至ったときに、薬液殺菌装置35が作動を自動的に開始し、上記算出薬液量を注入して湯の殺菌を行う。噴流発生装置27及び薬液殺菌装置35の作動については、上述した順序で行われる。
【0043】
この構成によれば、流量計測センサ23がオーバーフローする湯を考慮せずに給湯量を算出し薬液殺菌装置35がその給湯量に応じた薬液を入浴部3内の湯に注入し続けることにより、湯の薬液濃度が設定濃度を超えて必要以上に高濃度になることはなく、よって、入浴者を適切な薬液濃度の湯に浸漬させて入浴を行わせることができる。
【0044】
また、排水栓46を開栓し、浴槽2内の低温になった湯の一部を槽外へ排水しながら、高温の増し湯を行い湯温の調整を行う場合等には、流量センサ23が湯流量を初期給湯から継続して計測するため、制御部において浴槽2のオーバーフロー水位を超える湯量が算出されることになるが、この場合は、オーバーフロー水位までの給湯量を上限として予め設定された薬液濃度に対応する量の薬液が薬液殺菌装置35から注入をされる。従って、浴槽2内の湯の薬液濃度が極端に濃くなり過ぎることはなく、入浴者は適切な薬液濃度の湯に浸かり入浴を行うことができる。
【0045】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる構造の入浴装置への適用が期待できるもので、産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0047】
1 入浴装置
2 浴槽
8 浴槽昇降手段
20 給湯配管
22 流量計測手段
23 流量センサ
24 下位水位センサ
25 中位水位センサ
26 上位水位センサ
27 噴流発生装置
28 水位検知手段
33 循環配管
35 薬液殺菌装置
40 循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる入浴装置であって、
前記浴槽内の湯を循環させる循環配管を有する循環装置と、
該循環装置に接続され前記浴槽内、または前記浴槽内ないし前記循環配管内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置と、
前記浴槽内の湯水位を検知する水位検知手段と、
前記浴槽へ湯を給湯する給湯配管に設けられ該給湯配管内を流れる湯流量を計測する流量計測手段と、を備え、
前記薬液殺菌装置が、前記流量計測手段の計測結果から算出された給湯量情報に基づき、前記浴槽内の湯が予め設定された薬液濃度になるように薬液注入し、
前記流量計測手段は、前記水位検知手段により湯水位がオーバーフロー水位に達したことが検知された以降は湯流量を計測しないよう制御されることを特徴とする入浴装置。

【請求項2】
浴槽を昇降させて入浴者を入退浴させる入浴装置であって、
前記浴槽内の湯を循環させる循環配管を有する循環装置と、
該循環装置に接続され前記浴槽内、または前記浴槽内ないし前記循環配管内の湯の殺菌を行うための薬液殺菌装置と、
前記浴槽内の湯水位を検知する水位検知手段と、
前記浴槽へ湯を給湯する給湯配管に設けられ該給湯配管内を流れる湯流量を計測する流量計測手段と、を備え、
前記浴槽の湯が排水される際に給湯が重ねてなされることにより、適正水位またはオーバーフロー水位までの給湯量を超える湯量が、前記流量計測手段の計測結果に基づいて算出された場合は、前記薬液殺菌装置は、それぞれ適正水位またはオーバーフロー水位までの給湯量を上限として予め設定された薬液濃度に対応する量の薬液を注入することを特徴とする入浴装置。

【請求項3】
請求項1または2記載の入浴装置において、
前記浴槽が非入浴位置にあり、且つ前記循環装置により浴槽の湯を循環させた状態で前記薬液殺菌装置から薬液注入がなされることを特徴とする入浴装置。

【請求項4】
請求項3記載の入浴装置において、
前記循環装置は、前記浴槽から取り込んだ湯に空気を混入し噴流として噴出する噴流発生装置であることを特徴とする入浴装置。

【請求項5】
請求項3または4に記載の入浴装置において、
前記薬液殺菌装置からの薬液注入後も所定時間だけ前記循環装置を動作させることを特徴とする入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62481(P2011−62481A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218224(P2009−218224)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】