説明

入退室管理システム

【課題】入退室管理システムにおいて、複数の非接触カードリーダが近接して設置された場合であっても、誤ったカード照合が行われることを確実に防止する。
【解決手段】複数の非接触カードリーダ4、5にそれぞれ設けられたアンテナのON状態が重なることを回避するように、アンテナの動作状態を予め制御するコントローラ6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、敷地内やビル内の通行を管理する入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の入退室管理システムにおいては、非接触ICカードリーダのアンテナが常にON状態となっている。このため、複数の非接触ICカードが近接して設置された場合、任意の非接触ICカードリーダのアンテナから発信された電波を、他の非接触ICカードリーダが受信することがある。この場合、ICカードでのカード操作が行われていないにも関わらず、誤ってカード照合を行ってしまう。
【0003】
そこで、非接触ICカードから受信したデータを不適と判定したときに、非接触ICカードに対する送受信データの通信周期を変更するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−124633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のものは、非接触ICカードから受信したデータを不適と判定したときに初めて通信周期を変更するものである。このため、受信したデータを不適と判定したときには、照合エラーとなった履歴が残ってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数の非接触カードリーダが近接して設置された場合であっても、誤ったカード照合が行われることをより確実に防止することができる入退室管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る入退室管理システムは、複数の非接触カードリーダにそれぞれ設けられたアンテナのON状態が重なることを回避するように、前記アンテナの動作状態を予め制御するコントローラ、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の非接触カードリーダが近接して設置された場合であっても、誤ったカード照合が行われることをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における入退室管理システムの基本構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における入退室管理システムの基本動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における入退室管理システムの非接触ICカードリーダの制御方法を説明するための構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における入退室管理システムに特有の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2における入退室管理システムの非接触ICカードリーダの制御方法を説明するための構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2における入退室管理システムに特有の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムの基本構成図である。
図1において、1は部屋Aである。2は部屋Bである。この部屋B2は、部屋A1に隣接している。3は壁である。この壁3は、部屋A1と部屋B2とを区切っている。
【0012】
4は非接触ICカードリーダAである。この非接触ICカードリーダA4は、壁3の部屋A1側近傍に設けられる。5は非接触ICカードリーダBである。この非接触ICカードリーダB5は、壁3の部屋B2側近傍に設けられる。6はコントローラである。このコントローラ6は、制御信号A7により非接触ICカードリーダA4のアンテナの動作状態を制御する機能を備える。また、コントローラ6は、制御信号B8により非接触ICカードリーダA4の動作状態を制御する機能を備える。
【0013】
ここで、9は電波である。この電波9は、非接触ICカードリーダA4のアンテナから送信されたものである。この電波9は、壁3を通り抜けることができる。このため、非接触ICカードリーダA4及びB5が近接して設置された場合、非接触ICカードリーダB5のアンテナが電波9を受信することがある。
【0014】
次に、入退室管理システムの基本動作を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムの基本動作を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1で、コントローラ6から非接触ICカードリーダA4及びB5へアンテナをONするように制御信号A7及びB8が送信され、ステップS2に進む。ステップS2では、非接触ICカードリーダA4及びB5のアンテナがON状態となり、電波9の発信と受信が行われ、ステップS3に進む。
【0015】
ステップS3では、近い位置に複数台の非接触ICカードリーダが設置されているか否かにより、その後の動作が変わる。即ち、本実施の形態では、近い位置に非接触ICカードリーダA4及びB5が設置されていない場合は、ステップS4に進み、カード照合があるまで非接触ICカードリーダA4及びB5が待機状態となる。
【0016】
しかし、ステップS3で近い位置に非接触ICカードリーダA4及びB5が設置されている場合は、ステップS5に進み、非接触ICカードリーダA4及びB5の一方のアンテナが発した電波9が非接触ICカードリーダA4及びB5の他方のアンテナに受信されてしまう。従って、その後のステップS6では、照合エラーとなるものの、無人の場合でもカード照合が行われた履歴が残ってしまう。
【0017】
即ち、上記基本動作では、非接触ICカードリーダA4及びB5の他方では、ICカードでのカード操作が行われていないにも関わらず、誤ったカード照合が行われて照合エラーとなった履歴が残ってしまう。そこで、本実施の形態の入退室管理システムは、誤ったカード照合が行われることを確実に防止する構成とした。以下、本実施の形態の入退室管理システムを詳細に説明する。
【0018】
図3はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムの非接触ICカードリーダの制御方法を説明するための構成図である。
図3において、コントローラ6は、パルス状の制御信号A7及びB8が「H」のときに、非接触ICカードリーダA4及びB5のアンテナがON状態となるように制御する。
【0019】
具体的には、コントローラ6は、非接触ICカードリーダA4のアンテナのON状態をタイミングA10で制御する。これに対し、コントローラ6は、非接触ICカードリーダB5のアンテナのON状態をタイミングB11で制御する。これらのタイミングA10及びB11の「H」は、互いに背反となるように予め設定されたものである。これにより、タイミングA10及びB11の「H」は、互いに重なることを回避する。
【0020】
即ち、コントローラ6は、非接触ICカードリーダA4のアンテナがON状態のときに、非接触ICカードB5のアンテナがOFF状態となるように、両アンテナの動作状態を制御する。また、コントローラ6は、非接触ICカードリーダA4のアンテナがOFF状態のときに、非接触ICカードB5のアンテナがON状態となるように、両アンテナの動作状態を制御する。
【0021】
次に、図4を用いて、本実施の形態の入退室管理システムに特有の動作を説明する。
図4はこの発明の実施の形態1における入退室管理システムに特有の動作を説明するためのフローチャートである。
【0022】
まず、ステップS11で、コントローラ6に設けられたスイッチ等に切り替えられる設置モード等に基づいて、非接触ICカードリーダが複数台有るか否かが判断される。複数台の非接触ICカードが設置されていない場合は、ステップS12に進む。ステップS12では、上記基本動作と同様の動作が行われる。即ち、コントローラ6から非接触ICカードリーダA4及びB5へアンテナをONするように制御信号A7及びB8が送信され、ステップS13に進む。ステップS13では、カード照合があるまで非接触ICカードリーダA4及びB5が待機状態となる。
【0023】
これに対し、ステップS11で複数台の非接触ICカードリーダが設置されている場合は、ステップS14に進む。ステップS14では、コントローラ6から非接触ICカードリーダA4及びB5へアンテナをONするパルス状の制御信号A7及びB8が送信され、ステップS15に進む。ステップS15では、非接触ICカードリーダA4は、制御信号A7が「H」のときのみアンテナがON状態となるように制御される。また、非接触ICカードリーダB5は、制御信号B8が「H」のときのみアンテナがON状態となるように制御される。
【0024】
その後、ステップS16に進み、カード照合があるまで非接触ICカードリーダA4及びB5が待機状態となる。このとき、パルス状の制御信号A7及びB8の「H」は、互いに背反である。このため、複数のアンテナが同時にON状態とはならない。従って、非接触ICカードA4及びB5は、互いのアンテナからの電波9で、誤ってカード照合することはない。
【0025】
以上で説明した実施の形態1によれば、コントローラ6は、非接触ICカードリーダA4及びB5等、複数の非接触ICカードリーダにそれぞれ設けられたアンテナのON状態が重なることを回避するように、アンテナの動作状態を制御する。
【0026】
具体的には、非接触ICカードリーダA4及びB5の一方のアンテナがON状態のときに、非接触ICカードリーダA4及びB5の他方のアンテナがOFF状態となるように、アンテナの動作状態が制御される。また、非接触ICカードリーダA4及びB5の一方がOFF状態のときに、非接触ICカードリーダA4及びB5の他方のアンテナがON状態となるように、アンテナの動作状態が制御される。
【0027】
このため、非接触ICカードリーダA4及びB5等、複数の非接触ICカードリーダが近接して設置された場合であっても、誤ったカード照合が行われることをより確実に防止することができる。
【0028】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2における入退室管理システムの非接触ICカードリーダの制御方法を説明するための構成図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
実施の形態1においては、非接触ICカードリーダA4及びB5のアンテナがON状態となっている時間の長さは略同様であった。一方、実施の形態2においては、非接触ICカードリーダA4及びB5のアンテナがON状態となっている時間の長さは、部屋A1及びB2の在室者A12及びB13の人数に基づいて調整されるようになっている。具体的には、コントローラ6が、カード照合の回数をカウントすることによって、部屋A1及びB2の在室人数をカウントする機能を備えている。
【0030】
図5においては、部屋A1の在室者A12の人数の方が部屋B2の在室者B13の人数よりも多い。この場合、コントローラ6は、パルス状の制御信号A7の「H」の期間を初期設定時よりも長く設定する。これにより、非接触ICカードリーダA4のアンテナのON状態の継続時間が初期設定時よりも長くなる。これに対し、コントローラ6は、制御信号B8の「H」の期間を初期設定時よりも短く設定する。これにより、非接触ICカードリーダB5のアンテナのON状態が初期設定時よりも短くなる。
【0031】
次に、図6を用いて、本実施の形態の入退室管理システムに特有の動作を説明する。
図6はこの発明の実施の形態2における入退室管理システムに特有の動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず、ステップS21〜S23では、実施の形態2のステップS11〜S13と同様に、基本動作と同様の動作が行われる。これに対し、ステップS21で複数台の非接触ICカードリーダが設置されている場合は、ステップS24に進む。
【0033】
ステップS24では、部屋A1の方が部屋B2よりも人数が多いか否かが判断される。部屋A1の方が部屋B2よりも人数が多い場合は、ステップS25に進む。ステップS25では、コントローラ6から非接触ICカードリーダA4へ送信されるパルス状の制御信号A7の「H」の継続時間が長くなる。これに対し、コントローラ6から非接触ICカードリーダA4へ送信されるパルス状の制御信号B8の「H」の期間が短くなる。その後、ステップS26に進み、非接触ICカードリーダA4のアンテナのON状態の継続時間が長くなり、在室人数が多い部屋A1でも円滑にカード照合が行われる。
【0034】
一方、ステップS24で部屋B2の方が部屋A1よりも人数が多い場合は、ステップS27に進む。ステップS27では、コントローラ6から非接触ICカードリーダB5へ送信されるパルス状の制御信号B8の「H」の期間が長くなる。これに対し、非接触ICカードリーダA4へ送信されるパルス状の制御信号A7の「H」の継続時間が短くなる。その後、ステップS28に進み、非接触ICカードリーダB5のアンテナがON状態の継続時間が長くなり、在室人数が多い部屋B2でも円滑にカード照合が行われる。
【0035】
以上で説明した実施の形態2によれば、コントローラ6は、非接触ICカードリーダA4及びB5の照合結果によって得られた部屋A1及びB2の在室者A12及びB13の人数に基づいて、非接触ICカードリーダA4及びB5のアンテナがON状態となっている時間の長さを調整する。このため、部屋A1及びB2の在室人数の多少に応じて、利用者がより円滑にカード照合を行うことができる。
【0036】
なお、実施の形態1及び2においては、2つの非接触ICカードリーダA4及びB5を用いた入退室管理システムであった。しかし、非接触ICカードリーダの数は任意であってもよい。この場合であっても、アンテナの動作状態を上記同様に制御すれば、誤ったカード照合が行われることを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 部屋A、 2 部屋B、 3 壁、 4 非接触ICカードリーダA、
5 非接触ICカードリーダB、 6 コントローラ、 7 制御信号A、
8 制御信号B、 9 電波、 10 タイミングA、 11 タイミングB、
12 在室者A、 13 在室者B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非接触カードリーダにそれぞれ設けられたアンテナのON状態が重なることを回避するように、前記アンテナの動作状態を予め制御するコントローラ、
を備えた入退室管理システム。
【請求項2】
前記コントローラは、2つの非接触カードリーダの一方のアンテナがON状態のときに、前記2つの非接触カードリーダの他方のアンテナがOFF状態となるように、前記アンテナの動作状態を制御するとともに、前記2つの非接触カードリーダの一方のアンテナがOFF状態のときに、前記2つの非接触カードリーダの他方のアンテナがON状態となるように、前記アンテナの動作状態を制御することを特徴とする請求項1記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記複数の非接触カードリーダの照合結果によって得られた部屋の在室者の人数に基づいて、前記アンテナのON状態の継続時間の長さを調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−134210(P2011−134210A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294581(P2009−294581)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】