説明

全熱交換素子

【課題】仕切板の表面における熱交換を促進できる全熱交換素子を提供すること。
【解決手段】仕切板2を境にして給気流路4と排気流路5とが隣接し、給気流路4に流れる空気と排気流路5に流れる空気との間で熱交換をする全熱交換素子1において、仕切板2の表面に凹凸21を形成したので、仕切板2の表面を空気が流れると、仕切板2の表面に乱流が生成され、仕切板2の表面に薄い空気層が生成されるのを妨げる。これにより、仕切板2の表面における熱交換が促進され、全熱交換素子1の熱交換効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全熱交換器に内蔵され、温度および湿度の異なる給気と排気との間で温度と湿度とを交換する全熱交換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
全熱交換器に内蔵され、温度および湿度の異なる空気の間で温度と湿度とを交換する全熱交換素子が広く知られている。図8に示すように、全熱交換素子201は、仕切板202と間隔板203とを交互に積層したもので、仕切板202と仕切板202との間隔は間隔板203によって確保される。そして、仕切板202を境にして給気流路と排気流路とが隣接し、給気流路を流れる空気と排気流路を流れる空気との間で温度と湿度とが交換される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、冷媒が流通する流路の表面に微少突起を設け、伝熱面積を増大させ、流路の表面に流れる冷媒の流れを乱流にする熱交換器が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250585号公報
【特許文献2】特開平6−123578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された仕切板202の表面は平滑であり、図9に示すように、仕切板202を境にして隣接した給気流路と排気流路とに流れる空気の流れはいずれも層流Sとなり、仕切板202の表面に薄い空気層が生成され、熱交換を妨げていた。
【0006】
また、上述した特許文献2に開示された流路の表面は微少突起により凹凸を有するが、仕切板を境にして給気流路と排気流路とが隣接するように構成したものではない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、仕切板の表面における熱交換を促進できる全熱交換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、仕切板を境にして給気流路と排気流路とが隣接し、前記給気流路に流れる空気と前記排気流路に流れる空気との間で熱交換をする全熱交換素子において、前記仕切板の表面に凹凸を形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記全熱交換素子において、前記凹凸は、表面を盛り上げるとともに裏面を落とし入れた凹凸であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記全熱交換素子において、前記凹凸は、表面と裏面とを交互に盛り上げた凹凸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる全熱交換素子は、仕切板の表面に凹凸を形成したので、仕切板の表面を空気が流れると、仕切板の表面に乱流が生成され、仕切板の表面に薄い空気層が生成されるのを妨げる。これにより、仕切板の表面における熱交換が促進され、全熱交換素子の熱交換効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を内蔵した全熱交換器を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を示す概念図である。
【図3】図3は、図2に示した全熱交換素子の構造を説明するための概念図である。
【図4】図4は、エンボス加工により仕切板の表面に形成した凹凸を示す図である。
【図5】図5は、コルゲート加工により仕切板の表面に形成した凹凸を示す図である。
【図6】図6は、仕切板と仕切板との間に画成された流路を示す断面図である。
【図7】図7は、給気流路および排気流路を流れる空気流を示す概念図である。
【図8】図8は、公知の直交流型の全熱交換素子を示す概念図である。
【図9】図9は、給気流路および排気流路を流れる空気流を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる全熱交換素子の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である全熱交換素子を内蔵した全熱交換器を示す概念図である。本発明の実施の形態である全熱交換素子1を内蔵した全熱交換器100は、静止形の全熱交換器であって、温度および湿度の異なる空気と空気との間で温度と湿度とを交換する。
【0015】
図1に示すように、全熱交換器100は、屋外から室内に連通する給気流路101と、室内から屋外に連通する排気流路102とを有している。本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、給気流路101と排気流路102とに跨いで設けられ、給気流路101を流れる空気と排気流路102を流れる空気との間で温度と湿度とが交換される。
【0016】
給気流路101の途中には、ファンFが設けてあり、屋外から外気OAを導入し、全熱交換素子1に供給し、全熱交換素子1から室内に給気SAを供給する。同様に、排気流路102の途中には、ファンFが設けてあり、室内から還気RAを導入し、全熱交換素子1に供給し、全熱交換素子1から屋外に排気EAを排出する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態である全熱交換素子の外観を示す概念図であり、図3は図2に示した全熱交換素子の構造を示す概念図である。図2および図3に示すように、本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、対向流型の全熱交換素子であって、平面視六角形(ヘキサゴン)に形成してある。全熱交換素子1は、仕切板2と間隔板3とを交互に積層したもので、仕切板2と仕切板2との間隔は間隔板3によって確保されている。そして、仕切板2の積層方向に仕切板2を境にして給気流路4と排気流路5とが隣接するように、交互に画成され、給気流路4を流れる空気と排気流路5を流れる空気との間で温度と湿度とが交換される。
【0018】
本発明の実施の形態である全熱交換素子1のように、対向流型の全熱交換素子1は、六角形の一辺に給気流路4の吸込口41を有しており、吸込口41と対向する他辺に給気流路4の吐出口42を有している。また、給気流路4の吐出口42を有する一辺と隣り合う辺に排気流路5の吸込口を有しており、吸込口と対向する他辺に排気流路5の吐出口52を有している。また、対向流型の全熱交換素子1は、給気流路4と排気流路5とが平行となる部分を有しており、給気流路4を流れる空気と排気流路5を流れる空気とがすれ違うことにより、効率的な熱交換を可能にしている。
【0019】
本発明の実施の形態である全熱交換素子1において、上述した仕切板2は、温度および湿度の交換に好適な熱交換紙により構成され、上述した間隔板3は、樹脂性のセパレータにより構成されている。
【0020】
また、本発明の実施の形態である全熱交換素子1の仕切板2は、その表面に微細な凹凸21が形成してある。この凹凸21は、仕切板2の表面を流れる空気の接触面積を増大させること、仕切板2の表面に乱流を生成させることを目的としている。
【0021】
凹凸21は、浮き出し模様のように、表面を盛り上げるとともに裏面を落とし入れた凹凸(図4参照)、または、折り目のように、表面と裏面とを交互に盛り上げた凹凸(図5参照)のほか、任意の形状が想定される。
【0022】
たとえば、図4に示すように、不規則的に表面を盛り上げるとともに裏面を落とし入れた凹凸は、仕切板2にエンボス加工を施すことにより、容易に作成できる。また、エンボス加工は、任意の位置に凹凸21を形成できるので、間隔板3の配設位置を平滑なままにすることにより、仕切板2と間隔板3とを密着させれば、加工を施さない仕切板2と同程度の気密を得ることができる。
【0023】
たとえば、図5に示すように、規則的に表面と裏面とを交互に盛り上げた凹凸21は、仕切板2にコルゲート加工を施すことにより、容易に作成できる。なお、仕切板2にコルゲート加工を施すことにより、表面と裏面とを交互に盛り上げた凹凸21を形成した仕切板2は、間隔板3との密着をどのように確保するかが課題となるが、図6に示すように、間隔板3の上端と下端とに仕切板2の凹凸21と整合する凹凸31を形成することにより、課題は解消され、仕切板2と間隔板3との間における気密が確保できる。
【0024】
上述した本発明の実施の形態である全熱交換素子1を内蔵した全熱交換器100は、屋外から外気OAを導入し、全熱交換素子1に供給するとともに、室内から還気RAを導入し、全熱交換素子1に供給する。
【0025】
全熱交換素子1に導入された外気OAは、給気流路4に流入する。図7に示すように、給気流路4に流入した空気は、仕切板2の表面に形成した凹凸21により、仕切板2の表面に乱流を生成し、仕切板2の表面に薄い空気層が生成されるのを妨げる。
【0026】
同様に、全熱交換素子1に導入された還気RAは、排気流路5に流入する。給気流路に流入した空気は、仕切板2の表面に形成した凹凸21により、仕切板2の表面に乱流Rを生成し、仕切板2の表面に薄い空気層が生成されるのを妨げる。
【0027】
そして、給気流路4に流れる空気と排気流路5に流れる空気との間で温度と湿度が交換され、外気OAは給気SAとなり室内に供給され、還気RAは排気となり屋外に排出される。
【0028】
上述した本発明の実施の形態である全熱交換素子1は、仕切板2の表面に微細な凹凸21を形成したので、仕切板2の表面を空気が流れると、仕切板2の表面に乱流が生成され、仕切板2の表面に空気層が生成されるのを妨げる。これにより、仕切板2の表面における熱交換が促進され、全熱交換素子1の熱交換効率が向上する。
【0029】
なお、上述した本発明の実施の形態では、対向流型の全熱交換素子を例に説明したが、対向流型の全熱交換素子に限られるものではなく、直交流型の全熱交換素子としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 全熱交換素子
2 仕切板
21 凹凸
3 間隔板
31 凹凸
4 給気流路
41 吸込口
42 吐出口
5 排気流路
52 吐出口
100 全熱交換器
101 給気流路
102 排気流路
F ファン
OA 外気
SA 給気
EA 排気
RA 還気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切板を境にして給気流路と排気流路とが隣接し、前記給気流路に流れる空気と前記排気流路に流れる空気との間で熱交換をする全熱交換素子において、
前記仕切板の表面に凹凸を形成したことを特徴とする全熱交換素子。
【請求項2】
前記凹凸は、表面を盛り上げるとともに裏面を落とし入れた凹凸であることを特徴とする請求項1に記載の全熱交換素子。
【請求項3】
前記凹凸は、表面と裏面とを交互に盛り上げた凹凸であることを特徴とする請求項1に記載の全熱交換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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