説明

共役ポリマーに共有結合された金属錯体およびそのような組成物を含む電子デバイス

本発明は、共役ポリマーに共有結合された金属錯体を含むポリマー金属錯体およびそのようなポリマー金属錯体を含有するルミネセンス材料に関する。本発明は、さらに、活性層がそのようなポリマー金属錯体を含む電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ポリマーに共有結合された金属錯体を含むポリマー金属錯体組成物に関する。本発明は、さらに、活性層がそのようなポリマー金属錯体組成物を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイを構成する発光ダイオードなどの、発光する有機電子デバイスは、多くの異なった種類の電子装置に使用することができる。そのようなデバイスすべてにおいて、有機活性層が2つの電気接触層間に挟まれている。少なくとも1つの電気接触層が光透過性であり、そのため、光がその電気接触層を通過することができる。有機活性層は、電気接触層間に電圧を印加すると、光透過性電気接触層を通して発光する。
【0003】
発光ダイオード中の活性成分として有機エレクトロルミネセンス化合物を使用することは周知である。アントラセン、チアジアゾール誘導体、およびクマリン誘導体などの単純有機分子が、エレクトロルミネセンスを示すことが知られている。たとえば、フレンド(Friend)らの米国特許公報(特許文献1)、へーガー(Heeger)らの米国特許公報(特許文献2)、およびナカノ(Nakano)らの(特許文献3)に開示されたように、半導性共役ポリマーも、エレクトロルミネセンス成分として使用されている。スチルベニルまたはオキサジアゾール側鎖を有するポリマー材料が、ホームズ(Holmes)らの米国特許公報(特許文献4)によって報告されている。たとえば、タン(Tang)らの米国特許公報(特許文献5)に開示されているように、8−ヒドロキシキノレートと、三価金属イオン、特にアルミニウムとの錯体が、エレクトロルミネセンス成分として広く使用されている。イリジウムと、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子との錯体が、ペトロフ(Petrov)らの(特許文献6)においてエレクトロルミネセンス化合物として開示されている。
【0004】
ポリビニルカルバゾール(PVK)の活性層がイリジウムの金属錯体でドープされたエレクトロルミネセンスデバイスが、(特許文献7)および(特許文献8)のバロウズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)によって説明されている。ホスト材料および燐光性白金錯体を運ぶ電荷を含むエレクトロルミネセンス発光層が、米国特許公報(特許文献9)のトンプソン(Thompson)ら、(非特許文献1)、および(非特許文献2)によって説明されている。
【0005】
小分子発光材料は、通常、蒸発技術によって堆積される。そのようなプロセスに必要な装置は、非常に高価であり、連続処理に適合できないことがある。小分子発光材料は、溶液からコーティングすることができる。しかし、それらは、コーティング溶媒の蒸発とともに結晶化する傾向があり、これは、それらのエレクトロルミネセンス効果を低減する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,247,190号明細書
【特許文献2】米国特許第5,408,109号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第443 861号明細書
【特許文献4】米国特許第5,653,914号明細書
【特許文献5】米国特許第5,552,678号明細書
【特許文献6】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献8】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献9】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献10】米国特許第5919984号明細書
【特許文献11】米国特許第5,962,631号明細書
【特許文献12】国際公開第00/53565号パンフレット
【非特許文献1】シンセティック・メタルズ(Synth.Met.)(2001)、116(1−3)、379−383のブラッドリー(Bradley)ら
【非特許文献2】フィジカル・レビュー(Phys.Rev.)B、Vol.65 085210のキャンベル(Campbell)ら
【非特許文献3】ジェイ・エラーマン(Ellermann,J.);ディー・スカーマシャー(Schirmacher,D.)、ケム・バー(Chem.Ber.)、1967年、100、2220
【非特許文献4】ダブリュー・オー・シーグル(Siegl,W.O.);エス・ジェイ・ラポート(Lapporte,S.J.);ジェイ・ピー・コルマン(Collman,J.P.)、インオルガニック・ケミストリー(Inorg.Chem.)、1971年、10、2158
【非特許文献5】イー・リンドナー(Lindner,E.);エイチ・ビーア(Beer,H.)、ケム・バー(Chem.Ber.)、1972年、105、3261
【非特許文献6】ヴィー・ヴィー・グルシン(Grushin,V.V.)ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1999年、121、5831
【非特許文献7】フルエマサオキ(Furue,Masaoki);マルヤマカズノリ(Maruyama,Kazunori);オグニタダヨシ(Oguni,Tadayoshi);ナイキマサヒロ(Naiki,Masahiro);カマチミキハル(Kamachi,Mikiharu).インオルガニック・ケミストリー(Inorg.Chem.)、1992年、31(18)、3792−5
【非特許文献8】ニールス・エイチ・ダムラウアー(Damrauer,Niels H.);トマス・アール・ボウシー(Boussie,Thomas R.);マーティン・デベニー(Devenney,Martin);ジェームズ・ケイ・マクカスカー(McCusker,James K.)、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1997年、119(35)、8253−8268
【非特許文献9】オー・ロース(O.Lohse)、ピー・セブニン(P.Thevenin)、イー・ウォルドボーゲル(E.Waldvogel)シンレット(Synlett)、1999年、45−48
【非特許文献10】ヤマモト(Yamamoto)、プログレス・イン・ポリマー・サイエンス(Progress in Polymer Science)、Vol.17、p1153(1992)
【非特許文献11】コロン(Colon)ら、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)、パート(Part)A、ポリマー・ケミストリー(Polymer chemistry)版、Vol.28、p.367(1990)
【非特許文献12】ワイ・ワン(Y.Wang)著、カーク−オスマー化学技術事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、Vol.18、p.837−860、1996年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気効率の向上したエレクトロルミネセンス材料が引続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)共役ポリマー主鎖と、(b)複数の第1タイプの官能基と、(c)複数の第1タイプの不活性スペーサ基とを含むポリマー金属錯体組成物であって、
複数の第1タイプの官能基の各々が、複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第1タイプの不活性スペーサ基が、ポリマー主鎖に共有結合され、複数の第1タイプの官能基の各々の少なくとも一部が、少なくとも1つの金属に配位結合されることを特徴とするポリマー金属錯体組成物に関する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのポリマー金属錯体を含有するエレクトロルミネセンス材料に関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1つのポリマー金属錯体を含む有機電子デバイスに関する。
【0011】
本明細書で使用されるように、「共役」という用語は、pi電子を有する隣接した原子を有する不飽和有機系であって、系にわたって拡張したpiの重なりがある不飽和有機系を意味することが意図される。原子は、p軌道に混成させることができる非共有電子対を有するspまたはsp混成の炭素原子または他の原子であることができる。「不活性スペーサ基」という用語は、一方の端点から他方の端点へ直接共役を与えない結合有機基を意味することが意図される。「化合物」という用語は、さらに原子からなる分子から構成される帯電していない物質であって、原子を物理的手段によって分離することができない帯電していない物質を意味することが意図される。「配位子」という用語は、金属イオンの配位圏に結合した分子、イオン、または原子を意味することが意図される。「親配位子化合物」という用語は、イオン配位子が得られる中性化合物を意味することが意図される。「錯体」という用語は、名詞として使用された場合、少なくとも1つの金属イオンと、少なくとも1つの配位子とを有する化合物を意味することが意図される。「官能基」という用語は、金属イオンまたは原子に配位結合することができる基を意味することが意図される。「官能基化ポリマー」という用語は、金属との錯体形成前に、少なくとも1つの官能基を有するポリマーを意味することが意図される。「前駆体金属化合物」という用語は、官能基化ポリマーに結合する前の金属化合物を意味することが意図される。「ポリマー金属錯体」という用語は、第1タイプの官能基を含有するポリマー材料であって、第1タイプの官能基の少なくとも一部が、少なくとも1つの金属含有錯体に配位結合されるポリマー材料を意味することが意図される。「β−ジカルボニル」という用語は、2つのケトン基がCHR基によって分離されて存在する中性化合物を意味することが意図される。「β−エノラート」という用語は、2つのカルボニル基間のCHR基のプロトンが引き抜かれている、β−ジカルボニルのアニオン形態を意味することが意図される。「基」という用語は、有機化合物中の置換基または錯体中の配位子などの、化合物の一部を意味することが意図される。「配位結合される」という用語は、官能基の1つの原子が金属原子と結合を形成することを意味することが意図され、官能基原子はルイス塩基ドナー原子であり、金属原子はルイス酸アクセプタ原子である。「ヘテロ」という接頭辞は、1つ以上の炭素原子が異なった原子と置換されていることを示す。「アリーレン」という用語は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素から得られる基を意味することが意図され、この基は、置換しなくても置換してもよい。「ヘテロアリーレン」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子を有し、かつ2つの結合点を有する芳香族基から得られる基を意味することが意図され、この基は、置換しなくても置換してもよい。特に明記しない限り、基はすべて、置換しないか置換することができる。「ルミネセンス」という用語は、高温または白熱を伴わない発光を意味することが意図される。「ルミネセンスの」という形容詞は、ルミネセンスを示す材料を指す。「に隣接した」という句は、デバイス中の層を指すように使用された場合、1つの層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味しない。一方、「隣接したR基」という句は、化学式中、互いに隣り合っているR基(すなわち、結合によって結合している原子上にあるR基)を指すように使用される。「(H+F)」という用語は、完全に水素化された、部分的にフッ素化された、またはペルフルオロ化された置換基を含む、水素とフッ素との組合せすべてを意味することが意図される。「発光最大」とは、エレクトロルミネセンスの最大強度が得られる、ナノメートル単位の波長を意味する。エレクトロルミネセンスは、一般に、ダイオード構造で測定され、テストすべき材料を2つの電気接触層間に挟み、電圧を印加する。光強度および波長は、たとえば、それぞれ、フォトダイオードおよびスペクトログラフによって測定することができる。さらに、全体を通してIUPAC番号付け方式が用いられ、周期表の族は、左から右に1から18と番号付けされる(CRC化学物理学便覧(CRC Handbook of Chemistry and Physics)、第81版、2000年)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ポリマー金属錯体は、金属錯体と共役ポリマーとの間に共有結合がある組成を有する。ポリマー金属錯体は、前駆体金属錯体を官能基化ポリマーに配位結合することによって形成され、官能基化ポリマーは、共役ポリマー主鎖と、複数の第1タイプの官能基と、第1タイプの官能基を共役ポリマー主鎖に結合する不活性スペーサ基とを含む。
【0013】
共役ポリマー主鎖は、電荷輸送を促進する。適切なポリマー主鎖は、良好な輸送特性を得るために、十分な共役を有さなければならない。ポリマー主鎖は、金属錯体がない状態で、それ自体ルミネセンスであることができるか、非ルミネセンスであることができる。
【0014】
共役ポリマーは、周知であり、広範に研究されている。ポリマー主鎖は、ホモポリマーまたはコポリマーであることができ、置換または非置換であることができる。適切な共役ポリマー主鎖の例としては、ポリフェニレン、ポリピリジン、ポリアリールアミン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリオキサジアゾール、ポリチオフェン、およびそれらのコポリマーが挙げられる。ポリマー主鎖が非共役部分を有する場合、その部分も、ビニルカルバゾールジイルまたはトリアリールメタンジイルモノマー単位などで、電荷輸送特性をもたらしてもよい。他の非共役セグメントは、たとえば、アクリル、メタクリル、ビニル、または他の既知のモノマー単位であることができる。共役ポリマーは、好ましくは、図1に示された式Iを有する少なくとも1つの繰返し単位を有するポリフェニレンビニレン、または図1に示された式IIを有する少なくとも1つの繰返し単位を有するポリフルオレンであり、ここで、
は、出現するごとに同じであるか異なることができる炭素原子上の置換基であり、水素、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、F、−CN、−OR、−CO、C(H+F)2n+1
−OC(H+F)2n+1、−SR、−N(R、−P(R、−SOR、−SO、−NOから選択されるか、隣接したR基は、ともに、五員もしくは六員シクロアルキル環、アリール環、またはヘテロアリール環を形成することができ、
は、出現するごとに同じであるか異なることができるヘテロ原子上の置換基であり、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、およびヘテロアリールから選択され、
nは、1から12の整数である。
【0015】
好ましいR基は、1から12の炭素原子を有するアルキル基、1から12の炭素原子と、S、N、またはOの1つ以上のヘテロ原子とを有するヘテロアルキル基、6から20の炭素原子を有するアリール基、および2から20の炭素原子と、S、N、またはOの1つ以上のヘテロ原子とを有するヘテロアリール基である。適切なR基の例としては、オレフィン不飽和のあるおよびない、n−およびイソ−ブチル、ペンチル、直鎖状および分枝状、ヘキシル、2−エチルヘキシルを含むオクチルからヘキサデシル以上;フェニル基、チオフェン基、カルバゾール基、アルコキシ基、フェノキシ基、およびシアノ基が挙げられる。フェニレンビニレンポリマーのフェニル環上のより好ましいR基は、H、C〜C12アルコキシ、C〜C12アルキル、C〜C12アリール、およびC〜C25アルコキシ置換アリールである。フルオレン繰返し単位の9位の炭素原子上のより好ましいR基は、直鎖状および分枝状C〜C12アルキルである。フルオレン繰返し単位のフェニル環上のより好ましいR基は、H、C〜C12アルコキシ、フェノキシ、C〜C12アルキル、フェニル、またはシアノである。
【0016】
適切なフルオレンコポリマーは、図2および図3に示された式IIIからXIIから選択される付加的な繰返し単位を含むことができ、ここで、RおよびRは、上で定義された通りであり、
各式III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、およびX中、
Eは、出現するごとに同じであるか異なることができ、単結合、またはアリーレンおよびヘテロアリーレンから選択される結合基であり、
式V中、
Aは、出現するごとに独立してCまたはNであり、γは、0、または1もしくは2から選択される整数であり、Aが両方ともNである場合、γは0であり、または、Aの一方がNであり、Aの一方がCである場合、γは1であり、または、Aが両方ともCである場合、γは2であり、
Qは、O、S、SO、またはNRであり、
式VI中、
は、カルボニル基、O、S、SO、またはNRであり、
Wは、H、アルキル、またはヘテロアルキルであるか、Wの両方が、ともに、1つの単結合を表すことができ、
式VII中、
2つのEは、1,4−、1,5−、1,8−、2,3−、または2,6−位にあり、
式VIII中、
2つのEは、1,4−、1,5−、1,8−、2,3−、2,6−、または9,10−位にあり、
式IX中、
第1のEは、1、2、または3位にあり、第2のEは、6、7、または8位にあり、
式X中、
第1のEは、2、3、または4位にあり、第2のEは、7、8、または9位にある。
【0017】
第1タイプの官能基は、金属に配位結合することができる基である。有用な第1タイプの官能基は、一般に、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子を含有する。適切な第1タイプの官能基の例としては、カルボン酸基、または酸性塩;スルホン酸基、または酸性塩;アルコキシルおよびフェノキシルなどの−OH部分を有する基;第一級、第二級、および第三級アミン;ピリジン、ビピリジン、およびフェナントロリンなどのイミンならびにジイミン、ならびにそれらのオキシド類を含む誘導体;ホスフィン;ホスフィンオキシド類;β−ジカルボニル基、ニトリルおよびイソニトリル、シアネート、イソシアネート、ならびにいかなる他の配位結合基も挙げられる。好ましい第1タイプの官能基は、カルボン酸、スルホン酸、アルコキシル、ビピリジン、フェナントロリン、およびβ−ジカルボニルである。官能基化ポリマー中の第1タイプの官能基の組成が、同じ官能基化ポリマー中の別の第1タイプの官能基の組成と同一でも異なってもよいことが理解されるべきである。
【0018】
第1タイプの官能基は、少なくとも1つの第1タイプの不活性スペーサ基で、共役主鎖に結合している。
【0019】
ポリマー金属錯体中、少なくとも1つの金属イオンまたは金属原子が、複数の配位子に配位結合され、その少なくとも1つは、共役ポリマー主鎖上の第1タイプの官能基である。他の配位子の性質は、いくつかの場合、エレクトロルミネセンス材料のルミネセンス強度、波長、効率、および他の特性に影響を及ぼすことがある。他の配位子を以下でより詳細に説明する。
【0020】
好ましい金属は、ランタニド金属、7、8、9、10、および11族遷移金属、ならびに12および13族金属である。特に好ましい金属は、ユウロピウム、テルビウム、ツリウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、白金、パラジウム、金、アルミニウム、および亜鉛である。最も好ましいのは、イリジウムおよび白金である。
【0021】
本発明のポリマー金属錯体は、少なくとも1つの官能基化ポリマーを少なくとも1つの前駆体金属化合物と組合せることから得ることができる。
【0022】
(I.官能基化ポリマー)
本発明に有用な官能基化ポリマー化合物は、一般に、(a)共役ポリマー主鎖と、(b)複数の第1タイプの官能基と、(c)複数の第1タイプの不活性スペーサ基とを有し、複数の第1タイプの官能基の各々は、複数の第1タイプのスペーサ基の少なくとも1つに結合し、この第1タイプの不活性スペーサ基は、ポリマー主鎖に結合し、任意に、(d)複数の第2タイプの官能基を有すると説明することができる。
【0023】
「官能基の密度」と説明することもできる、官能基化ポリマー中の第1タイプの官能基の数が、「金属錯体の最大ローディング」(官能基化ポリマーに配位結合されることができる金属の量)を定める。
【0024】
官能基化ポリマーは、また、第2タイプの官能基を有することができる。第2タイプの官能基は、最終ポリマー金属錯体の物理的処理特性または光物理的特性を修正するために存在することができる。処理特性を修正する基の例としては、アルキレンオキシド基などの可塑化基、ならびに、末端ビニル基およびエポキシ基などの反応性および/または架橋可能な基が挙げられる。光物理的特性を修正する基の例としては、カルバゾール基またはオキサジアゾール基などの電荷輸送基が挙げられる。第2タイプの官能基は、ポリマー主鎖に直接、共有結合されることができるか、第2タイプの不活性スペーサ基に結合することができ、第2タイプの不活性スペーサ基は、ポリマー主鎖に共有結合される。
【0025】
第1タイプの不活性スペーサ基および第2タイプの不活性スペーサ基の両方が、共役ポリマー主鎖と共役しないスペーサ基である。好ましくは、不活性スペーサ基は、pi電子を有するいかなる原子も含有しない。有用な不活性スペーサ基の例としては炭素原子数1から12、好ましくは炭素原子数4から12のアルキル鎖が挙げられる。不活性スペーサ基は、また、ポリマー主鎖の、金属錯体の発光中心への共役を拡張しないという条件で、エーテル、エステル、チオエーテル、アミド、イミン、アミン、または芳香族成分を含有することができる。
【0026】
官能基化ポリマーは、互いに組成が同じまたは異なった不活性スペーサ基を含有してもよい。たとえば、官能基化ポリマーは、互いに異なった組成を有する第1タイプのスペーサ基を有してもよい。第2タイプの不活性スペーサ基も存在する場合、第2タイプの不活性スペーサ基は、互いに組成が同じでも異なってもよく、第1タイプの不活性スペーサ基と組成が同じでも異なってもよい。各不活性スペーサ基は、1つ以上の第1タイプの官能基に結合している。同様に、各第2タイプの不活性スペーサ基は、1つ以上の第2タイプの官能基に結合している。スペーサ基が分岐している場合、1つを超える官能基に共有結合されることができる。同じスペーサ基が第1タイプの官能基および第2タイプの官能基の両方に共有結合されてもよいことが可能である。別の実施形態において、第1タイプの官能基化基の数と第1タイプのスペーサ基の数との比が1:1となるように、第1タイプの官能基化基の各々は、1つの第1タイプの不活性スペーサ基に共有結合される。
【0027】
同様に、別の実施形態において、第2タイプの官能基化基の数と第2タイプの不活性スペーサ基の数との比が1:1となるように、第2タイプの官能基化基の各々は、1つの第2タイプの不活性スペーサ基に共有結合される。
【0028】
「複数の」成分という用語が、同じまたは異なった組成の成分を網羅することが意図されることがさらに理解される。したがって、たとえば、一実施形態において、官能基化ポリマーは、互いに同じ組成を有する第1タイプの官能基を有してもよく、別の実施形態において、官能基化ポリマーは、さまざまな組成を有する第1タイプの官能基を有し、さまざまな組成を有する第1タイプの官能基を有するポリマー金属錯体をもたらしてもよい。本発明は、さらに、同一の組成およびさまざまな組成を有する第2タイプの官能基を網羅する。
【0029】
官能基化ポリマーは、従来の重合技術を用いて、スペーサ基と結合した所望の官能基を有するモノマーを重合することによって製造することができる。あるいは、第1の反応性基に共有結合されたスペーサ基を有するポリマーを形成することができる。官能基と第2の反応性基とを有する化合物を、第1の反応性基を有するポリマーと反応させることによって、官能基をポリマー主鎖に加えることができる。たとえば、官能基と酸塩化物基とを有する化合物を、ヒドロキシル官能基に結合したスペーサ基を有するポリマーと反応させて、スペーサ基と官能基との間にエステル結合を形成することができる。あるいは、酸塩化物基は、ポリマー上のスペーサ基に結合した官能基であることができ、ヒドロキシル基を有する化合物と反応させることができる。さまざまな合成方法が、有機化学文献において利用可能である。
【0030】
本発明のポリマー金属錯体材料の場合、第1タイプの官能基の密度は、ポリマー中の第1タイプの官能基を有するモノマー(「第1タイプの官能性モノマー)と官能基を有さないモノマー(「非官能性モノマー」)との相対比率によって定められる。一般に、第1タイプの官能性モノマーと非官能性モノマーとの比は、約100:0(非官能性モノマーがない)から0.1:99.9の範囲内であることができる。一般に、ポリマー金属錯体中の金属の量は、ポリマー金属錯体の総重量を基準にして、約0.1から10重量%である。
【0031】
(II.前駆体金属化合物)
前駆体金属化合物は、官能基化ポリマー上の第1タイプの官能基に配位結合し、最終ポリマー金属錯体において所望の特性、ルミネセンス、および/または電荷輸送をもたらすものである。前駆体金属化合物は、任意に付加的な配位子の存在下で単純金属塩であることができるか、または、金属錯体であることができる。いくつかの場合において、前駆体金属錯体は、1つを超える異性体の形態で存在してもよいし、異なった錯体の混合物が存在してもよい。「前駆体金属化合物」という用語が、化合物および/または異性体の混合物を網羅することが意図されることが理解されるであろう。2つ以上の異なった金属を使用して、官能基化ポリマーに配位結合することも可能である。
【0032】
適切な金属錯体は、好ましくは10%を超える、高いフォトルミネセンス量子収率をもたらす金属/配位子の組合せを含む。いくつかの典型的な例としては、キノリナトまたは多座シッフ塩基配位子のAl錯体またはZn錯体が挙げられる。より好ましいのは、また、短寿命、すなわち10マイクロ秒未満の三重項励起状態を生じさせる金属/配位子の組合せである。いくつかの例は、フェニルピリジンなどのシクロメタル化配位子、ビピリジンなどのイミン配位子、またはトリフェニルホスフィンなどのホスフィン配位子を有する、Ir、Pt、Ru、Re、Os、またはAuなどの貴金属錯体、ならびにアセチルアセトネートから得られた配位子と組合されたEuおよびTbなどの希土類金属である。
【0033】
本発明のポリマー金属錯体を、4つの代表的なタイプの金属、すなわち、ランタニド、イリジウム、白金、およびアルミニウムで説明する。
【0034】
(1.ランタニド金属)
ポリマー金属錯体中、ランタニド金属が、図4に示された式XIIIを有するモノホスフィンオキシド類、図4に示された式XIVを有するビスホスフィンジオキシド類(式XIV中、xは2であり、yは1であり、rは1であるか、または、xは1であり、yは2であり、rは0である)、図4に示された式XIVを有するトリスホスフィントリオキシド(式XIV中、xは1であり、yは2であり、rは0である)、図4に示された式XVを有するビス−ホスフィンオキシド−スルフィド、図5に示された式XVI、式XVII、または式XVIIIを有するピリジンN−オキシド類、図5に示された式XIXを有するホスフィンオキシド−ピリジンN−オキシド類、図6に示された式XXを有するモノ−イミン、図6に示された式XXIを有するジイミンから選択される少なくとも1つの配位子に配位結合されることが好ましく、
各式XIII、XIV、およびXV中、
は、出現するごとに同じであるか異なり、C5−sおよびC(H+F)2n+1から選択され、
nは、1から12の整数であり、
sは、0、または1から5の整数であり、
式XIII中、
Zは、Qおよびピリジルから選択され、
各式XIVおよびXV中、
LGは、出現するごとに同じであるか異なり、C(H+F)2n、アリーレン、環状ヘテロアルキレン、ヘテロアリーレン、アルキレンヘテロアリーレン、フェロセンジイル、およびo−カルボランジイルから選択される結合基であり、
式XIV中、
rは、出現するごとに同じであるか異なり、0または1であり、
x+y=3という条件で、xは、1または2であり、
yは、1または2であり、
各式XVIからXXI中、
は、上で定義された通りであり、
式XIX中、
mは、0、または1から12の整数である。
【0035】
本明細書で使用されるように、「ホスフィンオキシド配位子」という用語は、1つ以上のホスフィンオキシド基を有する配位子を意味することが意図され、以下、「P(O)」と示す。「ビス−ホスフィンオキシド−スルフィド配位子」という用語は、1つのホスフィンオキシド基と、1つのホスフィンスルフィド基とを有する配位子を意味することが意図され、以下、ホスフィンスルフィド基を「P(S)」と示す。「ピリジンN−オキシド配位子」という用語は、置換または非置換ピリジンN−オキシドフラグメントを有する配位子を意味することが意図される。「ホスフィンオキシド−ピリジンN−オキシド」という用語は、1つのホスフィンオキシド基と、1つのピリジンN−オキシドフラグメントとを有する配位子を意味することが意図される。
【0036】
適切なモノホスフィンオキシド配位子の例としては、下記のものが挙げられる。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィンオキシド[tpfpO];
(ジフェニホスフィノメチル)ジフェニルホスフィンオキシド[dppmO];
(ジフェニホスフィノエチル)ジフェニルホスフィンオキシド類[dppeO];
(ジフェニホスフィノプロピル)ジフェニルホスフィンオキシド類[dpppO];
(ジフェニホスフィノブチル)ジフェニルホスフィンオキシド類[dppbO];
ビス(ジフェニルホスフィノメチル)フェニルホスフィンオキシド[bisdppmO];および
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンオキシド[bisdppeO]。
【0037】
適切なジホスフィンジオキシド配位子の例としては、下記のものが挙げられる。
ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンジオキシド[dppmO2];
1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンジオキシド[dppeO2];
1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンジオキシド[dpppO2];
1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンジオキシド[dppbO2];
1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジオキシド[dppFeO2];
1,2−ビス(ジ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィノ)エタンジオキシド[F5dppeO2];および
ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィンジオキシド類[bisdppeO2]。
ここで、「オキシド類」という複数の用語は、複数の異性体が可能であり、存在してもよいことを示すように使用される。
【0038】
単座ホスフィンのオキシド類、二座ホスフィンのジオキシド類(dppfcOおよびdppcbO以外)、および三座ホスフィンのトリオキシド類は、一般に、(非特許文献3)、(非特許文献4)、(非特許文献5)に記載されているように、エタノール中の水性過酸化水素による、対応するホスフィンの酸化によって調製される。過酸化水素酸化は、dppcbOを調製するためにも用いられるが、室温においてTHF中で用いられる。
【0039】
ビス−ホスフィンモノオキシドは、(非特許文献6)、米国特許公報(特許文献10)、1999年に記載されているように、アルカリの存在下で、1,2−ジブロモエタンによる、対応する二座ホスフィンの選択的なPd触媒による二相性嫌気的酸化によって合成することができる。このPd触媒酸化は、dppfcOの調製にも適用される。
【0040】
ホスフィンオキシド基は、有機化学文献において利用可能なさまざまな合成方法によって、ポリマー主鎖に結合することができる。
【0041】
適切なN−オキシド配位子の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
ピリジンN−オキシド[pyO];
3−シアノピリジンN−オキシド[CNpyO];および
ビピリジンビス(N−オキシド)[bipyO2]。
【0042】
いくつかのN−オキシド化合物が市販されている。他のN−オキシド化合物は、たとえば過酸化水素などの酸化剤で、窒素含有配位子を酸化することによって製造することができる。
【0043】
N−オキシド類は、既知の合成技術を用いて、ポリマー主鎖に結合することができる。いくつかの場合、窒素含有配位子を結合し、次に、酸化することが可能である。
【0044】
適切なモノ−イミンの例としては、下記のものが挙げられる。
3−シアノピリジン[3−CNpy];
2−ジメチルアミノピリジン[2−dmapy];
イソキノリン[isoq];
4−tertブチル−ピリジン[4−tbpy];
4−フェニルピリジン[4−phpy];および
2−(2−チエニル)ピリジン[2−tpy]。
【0045】
適切なジイミンの例としては、下記のものが挙げられる。
5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジン[FMbipy];
4,4’−ビス(2−トリフルオロメチルフェニル)−2,2’−ビピリジン[2−FMPbipy];
4,4’−ビス(3−トリフルオロメチルフェニル)−2,2’−ビピリジン[3−FMPbipy];および
ビス(4−フルオロフェニル)−2,2’−ビピリジン[FPbipy]。
【0046】
いくつかの場合、ジイミンおよびモノ−イミン配位子は、たとえば、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から市販されている。「FMbipy」は、(非特許文献7)に従って調製することができる。「2−FMPbipy」、「3−FMPbipy」、および「FPbipy」は、(非特許文献8)に見出される類似文献手順に従って、スズキ(Suzuki)カップリングによって調製することができる。
【0047】
上記配位子は、別々に加えることができるか、ポリマー上の第1タイプの官能基として存在することができる。残りの配位部位は、好ましくはβ−エノラート配位子によって占められる。他の配位子の場合のように、β−エノラート配位子は、別々に、またはポリマー上の第1タイプの官能基として存在することができる。
【0048】
β−エノラート配位子は、一般に図7に示された式XXIIを有し、ここで、Rは、出現するごとに同じであるか異なる。R基は、水素、ハロゲン、置換または非置換アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、もしくは複素環基、またはOR基であることができ、Rは、上で定義された通りである。隣接したR基は、結合して五員環および六員環を形成することができ、これらは、置換することができる。好ましいR基は、H、F、C(H+F)2n+1、−OC(H+F)2n+1、−OC(H+F)2n−、−C、−CS、および−COから選択され、ここで、nは、1から12、好ましくは1から6の整数である。
【0049】
β−エノラート配位子は、β−ジカルボニル親配位子化合物から得られる。適切なβ−ジカルボニル親配位子化合物の例としては、下記に記載された化合物が挙げられる。β−エノラート形態の略記は、角括弧で下記に示されている。
2,4−ペンタンジオネート[acac];
1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート[DI];
2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[TMH];
4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオネート[TTFA];
7,7−ジメチル−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−4,6−オクタンジオネート[FOD];
1,1,1,3,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,4−ペンタンジオネート[F7acac];
1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオネート[F6acac];および
1−フェニル−3−メチル−4−i−ブチリル−5−ピラゾリノネート[FMBP]。
【0050】
β−ジカルボニル親化合物は、一般に市販されている。F7acacの親化合物、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタフルオロ−2,4−ペンタンジオン、CFC(O)CFHC(O)CFは、ペルフルオロペンテン−2とアンモニアとの反応、その後の加水分解工程に基づいた2工程合成を用いて調製することができる。この化合物は、加水分解しやすいので、無水(anyhydrous)条件下で保存し反応させなければならない。
【0051】
(2.イリジウム)
イリジウム金属を有するポリマー金属錯体は、好ましくは、図8に示された式XXIIIからXXVIIおよび図9に示された式XXVIIIからXXXXIIから選択される少なくとも1つの配位子Lを有する錯体である前駆体イリジウム化合物から製造され、ここで、
式XXIIIからXXXIIのいずれかにおいて出現するごとに、
は、出現するごとに同じであるか異なり、H、D、C2n+1、OR、SR、N(R、F、C(H+F)2n+1、OC(H+F)2n+1、およびOCFYから選択されるか、隣接した対のRは、結合して五員環または六員環を形成することができ、
は、出現するごとに同じであるか異なり、HまたはC2n+1であり、
nは、1から12の整数であり、
Yは、ClまたはBrであり、
式XXVIIIからXXXIIのいずれかにおいて出現するごとに、
Aは、SまたはNRであり、
式XXVIIおよび式XXXIIのいずれかにおいて出現するごとに、
からEは、同じであるか異なり、少なくとも1つのEがNであるという条件で、NまたはCRであり、
は、出現するごとに同じであるか異なり、H、D、SR、N(R、F、C(H+F)2n+1、OC(H+F)2n+1、およびOCFYから選択されるか、隣接した対のRは、結合して五員環または六員環を形成することができる。
【0052】
図8に示された式XXIIIを有する配位子Lは、フェニルピリジン化合物から得られる。図8に示された式XXIVを有する配位子Lは、フェニル−キノリン化合物から得られる。図8に示された式XXVまたは式XXVIを有する配位子Lは、フェニル−イソキノリン化合物から得られる。図8に示された式XXVIIを有する配位子Lは、フェニル−ジアジン化合物、または2つ以上の窒素を有する類似体である。式XXIIIからXXVII中、F、C(H+F)2n+1、およびOC(H+F)2n+1から選択される環の1つの上に少なくとも1つの置換基があることが好ましい。
【0053】
図9に示された式XXVIIIを有する配位子Lは、チエニル−ピリジン(AがSである場合)またはピロリル−ピリジン(AがNRである場合)化合物から得られる。図9に示された式XXIXを有する配位子Lは、チエニル−またはピロリル−キノリン化合物から得られる。図9に示された式XXXまたは式XXXIを有する配位子Lは、チエニル−またはピロリル−イソキノリン化合物から得られる。図9に示された式XXXIIを有する配位子Lは、チエニル−もしくはピロリル−ジアジン化合物、または2つ以上の窒素を有する類似体から得られる。式XXVIIIからXXXII中、AがNRである場合、RがCHであることが好ましい。チエニル環またはピロリル環上の置換基すべてが、HまたはDであることが好ましい。F、C(H+F)2n+1、およびOC(H+F)2n+1から選択される窒素含有環の1つの上に少なくとも1つの置換基があることも好ましい。
【0054】
親配位子化合物HLは、一般に、たとえば、(非特許文献9)に記載されているように、対応する複素環式塩化アリールと有機ボロン酸試薬または有機マグネシウム試薬との標準的なパラジウム触媒スズキ(Suzuki)またはクマダ(Kumada)クロスカップリングによって調製することができる。この反応は、図10の式(1)のフェニル−イソキノリンについて示されており、ここで、Rは、上で定義された通りである。
【0055】
より好ましい前駆体イリジウム錯体は、Lタイプの配位子を有するイリジウムダイマーである。このダイマーは、図11に示された式XXXIIIを有するジクロロ架橋ダイマー、または図11に示された式XXXIVを有するジヒドロキソ架橋ダイマーであることができ、ここで、
式XXXIIIおよびXXXIV中、
Lは、出現するごとに同じであるか異なり、上で定義されたように、図8に示された式XXIIIからXXVIIおよび図9に示された式XXVIIIからXXXIIから選択され、
式XXXIV中、
=H、CH、またはC
式XXXIIIを有するジクロロ架橋ダイマーは、一般に、2−エトキシエタノールなどの適切な溶媒中で、三塩化イリジウム水和物をHL配位子前駆体と反応させることによって調製することができる。これは、図11に示された式(2)のチエニル−ピリジン配位子について示されている。式XXXIVを有するヒドロキソ架橋ダイマーは、一般に、三塩化イリジウム水和物をHL配位子前駆体と反応させ、次に、NaOHを加えることによって調製することができる。これらのジシクロメタル化錯体は、さらなる反応の前に、単離し(任意に)精製することができる。
【0056】
(3.白金)
白金金属を有するポリマー金属錯体は、好ましくは、上述されたように、図8に示された式XXIIIからXXVIIおよび図9に示された式XXVIIIからXXXXIIから選択される少なくとも1つの配位子Lを有する錯体である前駆体白金化合物から製造される。好ましい前駆体白金錯体は、図12に示された式XXXVを有するLタイプの配位子を有するジクロロ白金架橋ダイマーであり、ここで、各Lは、同じであるか異なることができる。式XXXVを有するジクロロ架橋ダイマーは、一般に、塩化テトラブチルアンモニウムなどの塩化アンモニウム塩の存在下で、クロロベンゼンまたは2−エトキシエタノールなどの適切な溶媒中で、二塩化白金をHL配位子前駆体と反応させることによって調製することができる。これは、図12に示された式(3)のチエニル−ピリジン配位子で示されている。架橋ジクロロ錯体は、さらなる反応の前に、単離し(任意に)精製することができる。
【0057】
(4.アルミニウム)
好ましい前駆体アルミニウム化合物は、多座シッフ塩基配位子を含む錯体である。シッフ塩基は、アルデヒドまたはケトン誘導体と第一級アミンとの縮合反応によって調製される化合物である。さまざまな異なったポリ−アミンおよびアルデヒドまたはケトンを選択することによって、多様な多座アニオン配位子を生成することが可能である。シッフ塩基配位子の好ましいクラス図13に示された式XXXVI、ここで、Aは、ポリ−アミン反応物から得られた架橋基を表し、これは、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであることができ、RおよびRは、サリチルアルデヒド反応物のフェニル基上の置換基を表し、これは、アルキル基またはアリール基であることができる。適切なシッフ塩基配位子の例が、下記表1に示されている。
【0058】
【表1】

【0059】
1つの有用な前駆体アルミニウム錯体は、ヘキサンまたはトルエン溶媒中のシッフ塩基化合物にトリエチルアルミニウム1モル当量を加えることによって製造することができる。これは、エチルアルミニウムシッフ塩基錯体を形成する。
【0060】
(III.ポリマー金属錯体)
ポリマー金属錯体は、一般に、前駆体金属化合物を、それが配位結合する官能基化ポリマーに加えることによって調製される。官能基化ポリマーの具体的な選択は、加えるべき前駆体金属化合物の性質による。1つを超えるタイプの金属を1つの官能基化ポリマーに配位結合されることができる。
【0061】
金属−配位子前駆体錯体をポリマー主鎖に結合する一般的な手段は、2つの異なった方法を含む。両方とも、主ポリマー鎖(主鎖)にぶら下げられたルイス塩基官能基(X)を含有するポリマー誘導体の使用が必要である。この官能基は、(以下に示される方法A)金属に直接、配位結合し、したがって、金属の主配位圏中の配位子になる第1タイプの官能基であることができる(付加的な配位子Lを伴う)。あるいは、(以下に示される方法B)ポリマー官能基を、主配位圏の成分である配位子(L’)上の近接部位で共有結合されることができる(付加的な配位子Lを伴う)。
【0062】
【化1】

【0063】
いずれの方法を用いて、いかなる金属配位子間電荷移動(MLCT)エミッタ(Re−、Ru−、およびOs−ジイミン、ならびにRh−、Ir−、Pd−、およびPt−フェニルピリジル錯体を含む)、いかなる配位子内電荷移動エミッタ錯体(AlおよびZnシッフ塩基錯体を含む)、またはいかなるランタニド(原子)エミッタ錯体(Euアセチルアセトネート錯体を含む)をぶら下げてもよい。たとえば、ポリマーに結合したルイス塩基を、金属に直接結合するか、ビピリジル配位子またはフェニルピリジル配位子からぶら下げられたアクセプタ官能基によって結合することができる。
【0064】
これを、[Re(CO)(2,2’−ビピリジル)L]エミッタのクラスで、より具体的に説明することができる。方法Aを用いて、ポリマーに結合したアリールスルホネート官能基が、Reに直接、配位結合されることができる。あるいは、方法Bを用いて、ポリマーに結合したヒドロキシエチル官能基を、ピリジル炭素原子からぶら下げられたカルボン酸官能基を有する2,2’−ビピリジル誘導体で縮合することができる。厳密な反応条件は、使用される具体的な材料によって変わる。一般に、沸点が100℃以下の溶媒での還流など、適度の熱を加える。次に、反応生成物を、標準的な溶媒除去および精製手順によって回収することができる。
【0065】
ポリマーランタニド錯体は、一般に、他のホスフィンオキシド配位子、N−オキシド配位子、またはジイミン配位子の存在下で、ハロゲン化物または酢酸塩などの単純金属塩を、β−ジカルボニル官能基を有するポリマーに加えることによって調製することができる。塩化メチレンなどの溶媒を使用することができる。あるいは、ランタニドとβ−ジカルボニルとの錯体を、フェナントロリンもしくはビピリジンなどのジイミン官能基、ホスフィンオキシド官能基、またはN−オキシド官能基を有するポリマーに加えることができる。
【0066】
ポリマーイリジウム錯体およびポリマー白金錯体は、最も好都合に、前駆体金属ダイマー、式XII、XIV、またはXV、およびβ−ジカルボニル官能基を有するポリマーから調製される。これは、図14に示された式(4)のイリジウム錯体について示されている。反応速度は、溶媒の性質に非常に依存する。THF中では、数日必要であり、ジクロロメタン中では、数時間必要である。
【0067】
ポリマーアルミニウム錯体は、好都合に、エチルアルミニウムシッフ塩基前駆体錯体および酸性官能基化ポリマーから調製される。これは、図15に式(5)として示された反応方式に示されている。
【0068】
この反応方式において、QHは、カルボン酸基またはスルホン酸基で官能基化されたポリマーを表す。エチル錯体が酸官能基と反応すると、エタンが発生し、ポリマー酸の共役塩基(Q)がアルミニウムに結合するようになる。
【0069】
本発明のポリマー金属錯体は、一般に、従来の溶媒からコーティングすることができる。使用される溶媒は、ポリマー主鎖の性質による。ポリフルオレン主鎖に対しては、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、および塩化メチレンなどの溶媒を使用することができる。
【0070】
一実施形態において、好ましいポリマー主鎖は、ポリフルオレンである。フルオレンタイプのモノマーのコポリマーは、一般に、3つの既知の合成方法によって調製することができる。第1の合成方法において、(非特許文献10)に記載されているように、モノマー単位のジハロ誘導体、好ましくはジブロモ誘導体を、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)などのゼロ価(zerovalent)ニッケル化合物の化学量論量と反応させる。第2の方法において、(非特許文献11)に記載されているように、二価ニッケルイオンをゼロ価ニッケルに低減することができる材料の化学量論量の存在下で、モノマー単位のジハロ誘導体、好ましくはジブロモ誘導体を、Ni(II)化合物の触媒量と反応させる。適切な材料としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、およびリチウムが挙げられる。第3の合成方法において、米国特許公報(特許文献11)および(特許文献12)に記載されているように、テトラキス(トリフェニルホスフィン)Pdなどのゼロ価パラジウム触媒の存在下で、1つのモノマー単位のジハロ誘導体を、ボロン酸、ボロン酸エステル、およびボランから選択される2つの反応性基を有する別のモノマー単位の誘導体と反応させる。この第3の反応は、二相媒体中で行うことができる。
【0071】
好ましい金属は、式XXIIIからXXXIIから選択される1つ以上の配位子を有するIrおよびPtである。
【0072】
(V.ルミネセンス材料)
本発明のポリマー金属錯体は、共役ポリマーの電荷輸送特性および処理特性が、金属錯体エミッタのルミネセンス効率および色と組合されるので、ルミネセンス材料として有用である。
【0073】
本発明のルミネセンス材料は、上述された少なくとも1つのポリマー金属錯体組成物を含有する。ルミネセンス材料は、フォトルミネセンスを示してもよく、ルミネセンスは、可視光線、赤外線、または紫外線、通常紫外線を付与することから生じる。あるいは、ルミネセンス材料は、エレクトロルミネセンスを示してもよく、ルミネセンスは、電界の印加から生じる。さらに別の実施形態において、ルミネセンス材料は、エレクトロルミネセンスおよびフォトルミネセンスの両方を示してもよい。
【0074】
本発明のポリマー金属錯体において、金属錯体部分の電子特性は、第1タイプの不活性スペーサ基のため、共役ポリマー主鎖と合されない。したがって、ポリマー金属錯体のルミネセンス特性は、主として金属および配位結合された配位子の選択によって支配される。ポリマー金属錯体において、モノマー単位の約0.1%から約20%、より好ましくは約0.5−10%が、金属が結合していることが好ましい。1つを超えるタイプの金属前駆体錯体を官能基化ポリマーと組合せて、1つを超える色の発光をもたらすことが可能である。しかし、1つのタイプの金属前駆体錯体を官能基化ポリマーと組合せることが好ましい。
【0075】
(VI.電子デバイス)
本発明の電子デバイスは、フォトルミネセンス特性および/またはエレクトロルミネセンス特性を示すのに有用である。それらは、以下でさらに論じられる発光ダイオード、フォトダイオード、光検出器において、ゼログラフィー用途でのような光伝導体として、および照明デバイスにおいて使用することができる。
【0076】
発光ダイオードは、LEDと呼ばれるか、活物質が有機である場合は、OLEDと呼ばれる。上述されたように、OLEDは、一般に、有機活性層が2つの電気接触層の間に挟まれた構造を有する。OLEDは、しばしば、付加的な正孔輸送層および電子輸送層を有する。典型的な構造が、図16に示されている。デバイス100は、アノード層110と、カソード層150とを有する。アノードに隣接して、正孔輸送材料を含む任意の層120がある。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む任意の層140がある。アノードまたは正孔輸送層とカソードまたは電子輸送層との間に、発光層130がある。図16で最もよくわかるように電圧が印可された場合、電子および正孔は、矢印で示された方向に移動する。電子および正孔は、発光層で結合して、励起子と呼ばれることがある励起状態を形成する。光子160が発せられるのは、励起子からである。励起子は、また、非放射プロセスによって減衰することができる。これは消光として知られている。
【0077】
本発明のポリマー金属錯体は、OLEDの発光層中の活物質として特に有用である。
【0078】
発光層がポリマー金属錯体を含む場合、付加的な材料が、ポリマー金属錯体とともに発光層中に存在することができる。たとえば、ルミネセンス染料が、発光の色を変えるために存在してもよい。
【0079】
ポリマー金属錯体は、また、電荷輸送材料として有用であってもよい。電荷輸送材料は、正孔輸送材料または電子輸送材料であることができる。ここで、正孔輸送材料は、比較的高い効率および小さい損失で、正電荷を受取り、それを材料の厚さを通して移動させることができる材料と定義する。電子輸送材料は、比較的高い効率および小さい損失で、負電荷を受取り、それを材料の厚さを通して移動させることができる材料と定義する。いくつかの材料は、電子および正孔の両方を輸送することができ、使用するのにより柔軟である。
【0080】
LEDの高効率を達成するために、正孔輸送材料のHOMO(最大占有分子軌道関数)は、アノードの仕事関数と揃わなければならず、電子輸送材料のLUMO(最小非占有分子軌道関数)は、カソードの仕事関数と揃わなければならない。これらの材料の化学的適合性および処理性も、電子輸送材料および正孔輸送材料を選択する際に重要な考慮事項である。
【0081】
ポリマー金属錯体に加えて、他の適切な電荷輸送材料としては、任意の層120について、(非特許文献12)に記載された正孔輸送材料が挙げられるが、こららに限定されない。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子は、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、および銅フタロシアニンなどのポルフィリン化合物である。一般に使用される正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール(PVK)、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、およびポリアニリン(PANI)である。上記のような正孔輸送分子を、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。
【0082】
適切な電子輸送材料(任意の層140用)の他の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq)などの金属キレート化オキシノイド化合物;2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)または4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)などのフェナントロリンベースの化合物;ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(BCP)、および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのアゾール化合物が挙げられる。層140は、電子輸送を促進し、また、層界面における励起子の消光を防止するためにバッファ層または閉込め層として役立つように、機能することができる。好ましくは、この層は、電子移動度を促進し、励起子の消光を低減する。
【0083】
OLEDの他の層は、そのような層に有用であることが知られている、いかなる材料からも選択することができる。アノード110は、正電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。それは、たとえば、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料から製造することができるか、導電ポリマーであることができる。適切な金属としては、元素の周期表(現在のIUPAC形式)に示されているような、11族金属、4族、5族、および6族の金属、ならびに8〜10族遷移金属が挙げられる。アノードが発光性であるべき場合、インジウム−スズ−酸化物などの、2族、3族、4族、13族、および14族金属の混合金属酸化物、またはポリアニリンなどの導電ポリマーを使用することができる。アノードおよびカソードの少なくとも1つが、発生した光を観察することができるように少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0084】
カソード150は、電子または負電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。カソードは、アノードより仕事関数が低い、いかなる金属または非金属であることもできる。カソード用材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、ランタニド、およびアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、およびマグネシウム、ならびに組合せなどの材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、有機層とカソード層との間に、Li含有化合物も堆積させることができる。
【0085】
機能層110から150は、各々、図16に1つの層として示されているが、これらのいずれかまたはすべてについて、同じまたは異なった材料の複数の層を有することが可能である。
【0086】
OLEDは、適切な基材上に個別の層を順次堆積させることによって準備することができる。ガラスおよびポリマーフィルムなどの基材を使用することができる。任意の従来のコーティング技術を用いて、適切な溶媒での溶液または分散液から有機層をコーティングすることができる。一般に、異なった層は、次の範囲の厚さを有する。アノード110、500〜5000Å、好ましくは1000〜2000Å;任意の正孔輸送層120、50〜3000Å、好ましくは600〜2000Å;発光層130、10〜1000Å、好ましくは100〜800Å;任意の電子輸送層140、50〜1000Å、好ましくは200〜800Å;カソード150、200〜10000Å、好ましくは300〜5000Å。デバイス内の電子−正孔再結合ゾーンの位置、およびしたがって、デバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されることがある。したがって、電子−正孔再結合ゾーンが発光層中にあるように、電子輸送層の厚さを選択しなければならない。所望の層厚さ比は、使用される材料の厳密な性質による。
【0087】
本発明のポリマー金属錯体で製造されたデバイスの効率を、デバイス内の他の層を最適化することによって、さらに向上させることができることが理解される。たとえば、Ca、Ba、またはLiなどの、より効率的なカソードを使用することができる。動作電圧を低下させるか、量子効率を高める、成形された基材および新規の正孔輸送材料も、適用可能である。さまざまな層のエネルギーレベルを調整し、エレクトロルミネセンスを促進するために、付加的な層も加えることができる。
【実施例】
【0088】
次の実施例は、本発明のいくつかの特徴および利点を例示する。それらは、本発明を例示するが、限定しないことが意図される。パーセンテージはすべて、特に明記しない限り、重量による。
【0089】
(実施例1(予測実施例))
この実施例は、官能基化共役ポリマーの形成を例示する。
【0090】
ジブロモ−フルオレンと、保護されたアルコール基(−OX)を有するブロモアルカノールとの反応によってフルオレンモノマーを調製する。アルコール基は、当業者に知られている標準技術のいずれかによって保護される。保護基Xは、たとえば、ピラニルエーテル(−OTHP、ここで、THPはテトラヒドロピランである)またはシリルエーテル(−OSiR、ここで、Rは、t−ブチルまたはi−プロピルなどのかさばったアルキル基である)であることができる。
【0091】
下記式6に示されているように、第1の工程において、水酸化ナトリウム塩基を使用して、相間移動条件下で、3,6−ジブロモフルオレンを、THPで保護された6−ブロモヘキサノールと反応させて、ヘキシルアルコール誘導フルオレンモノマーを生じる。第2の工程において、また相移動条件下で、最初の生成物を過剰のヨウ化アルキルと反応させる。
【0092】
【化2】

【0093】
ここで、Rは、1から12の炭素原子を有するアルキル基である。
【0094】
次に、標準条件下で、1:9のモル比で、このモノマーをビス−9−(2−エチルヘキシル)−ジブロモフルオレンと重合する。
【0095】
不活性条件下で、撹拌棒を備え、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(5mmol)と、2,2’−ビピリジル(5mmol)と、1,5−シクロオクタジエン(5mmol)とを収容する50mlのシュレンク(Schlenck)管に、DMF(5ml)を加える。結果として生じる濃青色/紫色溶液を60℃で30分間撹拌し、次に、上で調製されたヘキシルアルコール誘導フルオレンモノマー(0.25mmol)と、ビス−9−(2−エチルヘキシル)−ジブロモフルオレン(2.25mmol)とのトルエン(20ml)溶液を、シリンジによって加える。次に、反応混合物を75℃で1日間撹拌する。混合物を室温に冷却し、メタノール(100ml)と、アセトン(100ml)と、濃塩酸(5ml)との溶液中に沈殿させる。アルコール保護基は、酸との反応によって除去される。2時間の撹拌後、混合物を濾過する。次に、固体残留物をクロロホルムに溶解し、再び、メタノール(100ml)と、アセトン(100ml)と、濃塩酸(5ml)との溶液中に沈殿させた。1時間の撹拌後、混合物を濾過する。最後に、残留物を、メタノール、水、およびメタノールで、引続いて洗浄し、真空中で乾燥させる。次に、結果として生じる、ヘキシルアルコール官能基を有する繰返し単位10%を含有するポリマーを単離し、酸性条件−エタノールの蒸留除去−下で、過剰のアセト酢酸エチルと反応させることによってエステル交換反応させる。この段階における最終の単離されたポリマーは、下記式XXXVIIに示されているような一般表現を有する。
【0096】
【化3】

【0097】
(実施例2)
この実施例は、前駆体イリジウム錯体としての、ヒドロキソダイマー、[IrOH{2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−イソキノリン}の調製を例示する。
【0098】
(1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−イソキノリン)
2,4−ジフルオロフェニルボロン酸(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.)、13.8g、87.4mmol)、1−クロロイソキノリン(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、13g、79.4mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(アルドリッチ、3.00g、2.59mmol)、炭酸カリウム(EMサイエンス(EM Science)、24.2g、175mmol)、水(300mL)、およびジメトキシエタン(アルドリッチ、300mL)を、N下で20時間還流において撹拌し、その後、混合物を室温に冷却し、有機層および水溶液層を分離した。水溶液層をジエチルエーテル3×150mLで抽出し、組合された有機フラクションを硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発乾固した。未精製の材料を、シリカゲルカラムで、最初に触媒副生成物を4:1のヘキサン/CHClで溶離することによって、クロマトグラフィで分離し、最後に生成物をCHCl/MeOH(9.5:0.5、生成物R=0.7)で溶離した。純粋な生成物フラクションを収集し、真空中で乾燥させて、淡黄色固体17.7g(92%の単離収率)をもたらし、純度>95%のNMR分光法であった。H NMR(CDCl,296K,300MHz):δ 8.61(1H,d,J=5.7Hz),7.89(1H,d,J=8.2Hz),7.67−7.85(3H,m),7.52−7.63(2H,m),6.95−7.12(2H,m)ppm。19F NMR(CDCl,296K,282MHz)δ−109.01(1F,brs),−109.87(1F,d,JF−F=8.5Hz)。
【0099】
([IrOH{1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−イソキノリン}
IrCl・nHO(54%Ir;500mg)と、上記からの1−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−イソキノリン(800mg)と、水(5mL)と、2−エトキシエタノール(20mL)との混合物を、4.5時間還流下で強力に撹拌する。NaOH(2.3g)水(5mL)溶液を加え、その後、水20mLを加えた後、混合物を2時間還流下で撹拌する。混合物を室温に冷却し、水50mLで希釈し、濾過する。固体を、6時間、1,2−ジクロロエタン30mLおよびNaOH(水8mL中2.2g)水溶液とともに、還流下で強力に撹拌する。有機溶媒を混合物から蒸発させて、水溶液相中の赤色固体の懸濁液を残す。赤色固体を濾過によって分離し、水で完全に洗浄し、真空下で乾燥させて、イリジウムヒドロキソダイマーを生成する。
【0100】
(実施例3(予測実施例))
下記式7に示されているように、実施例2からのイリジウムヒドロキソダイマー前駆体錯体1/2当量(共役ポリマーの1官能基あたり)を、実施例1からの共役官能基化ポリマーを含有するTHFに溶解する。過剰の炭酸ナトリウムを加え、混合物を24時間窒素下で撹拌し温める。溶液を冷却し、溶媒を蒸発させて、固体残留物を残し、これを塩化メチレンで大量に抽出する。次に、この溶液を蒸発させ乾燥させて、赤色エミッタとなる所望のIr官能基化ポリマー材料をもたらす。
【0101】
【化4】

【0102】
(実施例4)
この実施例は、下記式XXXVIIIに示された白金前駆体錯体の調製を例示する。
【0103】
【化5】

【0104】
(1−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−イソキノリン)
これは、4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸を使用して、実施例2で説明された手順に従って製造した。
【0105】
([PtCl{2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−イソキノリン}]
上記からの2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−イソキノリン(6.8mmol)、塩化白金(II)(ストレム・ケミカルズ(Strem Chemicals)、6.2mmol)、無水塩化テトラブチルアンモニウム(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、171mg、0.62mmol)、およびクロロベンゼン(アルドリッチ)を、窒素下で15時間還流させ、その後、結果として生じる沈澱した生成物を濾過によって単離し、メタノールで洗浄し、真空中で乾燥させて、オフホワイト色固体としての所望の生成物をもたらす。
【0106】
(実施例5(予測実施例))
実施例4からのジクロロ白金ダイマー前駆体錯体1/2当量(共役ポリマーの1官能基あたり)を、実施例1からの共役官能基化ポリマーを含有する2−エトキシエタノール:o−ジクロロベンゼンの1:5混合物に溶解する。過剰の炭酸ナトリウムを加え、混合物を、24時間窒素下で撹拌し加熱して還流させる。溶液を冷却し、溶媒を蒸発させて、固体残留物を残し、これを塩化メチレンで大量に抽出する。次に、この溶液を蒸発させ乾燥させて、赤色エミッタとなる所望のPt官能基化ポリマー材料をもたらす。
【0107】
(実施例6(予測実施例))
この実施例は、薄膜OLEDデバイスの形成を例示する。
【0108】
ITO厚さが約1000から1500Åの、ガラス上のインジウムスズ酸化物(ITO)の基材を使用する。HT層をITO基材上にスピンコーティングする。HT層は、厚さが2000ÅのPEDOT(ドイツ、バイエル(Bayer,Germany)のバイトロン(Baytron)(登録商標)P)である。ポリマー金属錯体(200mg)を10mLのトルエン(0.5〜2.0%w/v)に溶解し、0.45ミクロンのフィルタによって濾過し、500〜1000Åの厚さにスピンコーティングする。カソードの場合、1×10−6torrの真空下でBa層およびAl層をEL層の上に蒸着する。Ba層の最終厚さは30Åであり、Al層の厚さは3000Åである。デバイス性能を、校正されたSiフォトダイオードを使用して、ドライボックス内でテストする。
【0109】
(実施例7)
この実施例は、前駆体イリジウム錯体としてのヒドロキソダイマー[IrOH{1−(4−tert−ブチル−フェニル)−イソキノリン}の調製を例示する。
【0110】
(1−(4−tert−ブチルフェニル)−イソキノリン)
4−tert−ブチルフェニルボロン酸(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、5.00g、30.56mmmol)、1−クロロイソキノリン(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、5.44g、30.56mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(アルドリッチ、800mg、0.69mmol)、炭酸カリウム(EMサイエンス、12.5g、23.4mmol)、水(50mL)、およびジメトキシエタン(アルドリッチ、75mL)を、N下で20時間還流において撹拌し、その後、混合物を室温に冷却し、有機層および水溶液層を分離した。水溶液層をジエチルエーテル3×75mLで抽出し、組合された有機フラクションを硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発乾固した。未精製の材料を、シリカゲルカラムで、最初に触媒副生成物を4:1のヘキサン/ジクロロメタンで溶離することによって、クロマトグラフィで分離し、最後に生成物をジクロロメタン/MeOH(9.5:0.5、生成物R=0.7)で溶離した。純粋な生成物フラクションを収集し、真空中で乾燥させて、淡黄色固体4.5g(56%の単離収率)をもたらし、純度>95%のNMR分光法であった。H NMR(CDCl,296K,300MHz):δ=8.58(1H,d,J=5.70Hz),8.15(1H,d,J=8.5Hz),7.83(1H,d,J=8.5Hz),7.5−7.7(7H,m),1.38(9H,s)ppm。
【0111】
(IrCl{1−(4−t−Bu−フェニル)−イソキノリン}
上記からの1−(4−t−Bu−フェニル)−イソキノリン(1.00g、3.82mmol)、IrCl(HO)(ストレム・ケミカルズ、633mg、1.79mmol)、および2−エトキシエタノール(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー、40mL)を、15時間還流において撹拌し、その後、混合物を同じ体積の水中に注いだ。結果として生じる橙色沈殿物を濾過によって単離し、水で洗浄し、真空中で乾燥させた。次に、固体をジクロロメタンに再溶解し、シリカゲルパッドを通過させた。溶離された赤色ジクロロメタン溶液を蒸発乾固し、結果として生じる固体をヘキサンに懸濁させた。固体を濾過によって単離して、赤色−橙色固体650mg(49%)をもたらし、NMR分光法により純度>95%であった。H NMR(CDCl,296K,300MHz):δ=9.37(4H,d,J=6.5Hz),8.95(4H,d,J=8.2Hz),8.07(4H,d,J=8.5Hz),7.90(4H,dd,J=1.4および8.2Hz),7.7−7.9(8H,m),6.94(4H,dd,J=2.0および8.4Hz),6.86(4H,d,J=6.4Hz),5.92(4H,d,J=2.0Hz),0.81(36H,s)ppm。
【0112】
([IrOH{1−(4−tert−ブチル−フェニル)−イソキノリン}
丸底フラスコに、上記からの[IrCl{1−(4−tert−ブチル−フェニル)−イソキノリン}(2.18g、1.46mmol)、水(25mL)中のNaOH(2.18g)を入れ、その後、エトキシエタノール25mLを入れた。混合物を2時間還流下で撹拌した。結果として生じる褐色懸濁液を室温に冷却し、水100mLで希釈し、濾過した。固体を、6時間、1,2−ジクロロエタン46mLおよびNaOH(水20mL中2.03g)水溶液とともに、還流下で強力に撹拌した。有機溶媒を混合物から蒸発させて、水溶液相中の褐色固体の懸濁液を残した。固体を濾過によって分離し、水で完全に洗浄し、真空下で乾燥させて、濃赤色固体としての[IrOH{1−(4−tert−ブチル−フェニル)−イソキノリン}を生成した(2.108g、99%の収率)。
【0113】
(実施例8)
この実施例は、官能基化ポリマーに変えることができるポリマーの形成を例示する。
【0114】
(コモノマー)
【0115】
【化6】

【0116】
(ポリマーA)
不活性条件下で、撹拌棒を備え、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(1.667g、6.06mmol)と、2,2’−ビピリジル(0.947g、6.06mmol)と、1,5−シクロオクタジエン(0.656g、6.06mmol)とを収容するシュレンク管に、DMF(6ml)を加えた。結果として生じる濃青色/紫色溶液を60℃で30分間撹拌し、次に、第1のモノマー、2,7−ジブロモ−9,9−ビス−(2−エチル−ヘキシル)−9H−フルオレン(0.576g、1.05mmol)と、第2のモノマー、2,5−ビス−[7−ブロモ−9,9−ビス−(2−エチル−ヘキシル)−9H−フルオレン−2−イル]−[1,3,4]オキサジアゾール(1.206g、1.20mmol)と、第3のモノマー、2,7−ジクロロ−9−(3,7−ジメチル−オクチル)−9H−カルバゾール(0.217g、0.60mmol)と、第4の(forth)モノマー、3,5−ジブロモ−安息香酸メチルエステル(0.044g、0.15mmol)とのトルエン(25ml)溶液を、シリンジによって加えた。次に、反応混合物を75℃で24時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、メタノール(100ml)と、アセトン(100ml)と、濃塩酸(5ml)との溶液中に沈殿させた。2時間の撹拌後、混合物を濾過した。次に、固体残留物をクロロホルムに溶解し、再び、メタノール(100ml)と、アセトン(100ml)と、濃塩酸(5ml)との溶液中に沈殿させた。1時間の撹拌後、混合物を濾過した。固体を再びクロロホルムに溶解し、純メタノール中に沈澱させた。最後に、残留物を、メタノール、水、およびメタノールで、引続いて洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0117】
(実施例9)
この実施例は、本発明のポリマー金属錯体の形成を例示する。
【0118】
【化7】

【0119】
水素化ナトリウム(0.002g、0.08mmol)を無水THF(50mL)に懸濁させ、その後、実施例8からのポリマーA(0.250g、エステル官能基0.023mmolを含有する)および3−エチル−ヘプタン−2−オン(0.5mL)を加えた。次に、反応を96時間窒素下で還流させた。結果として生じる粘性橙色混合物を室温に冷却し、10mLのHOで急冷し、CHCl(2×20mL)中に抽出した。揮発性物質を蒸発させて、黄色固体を生じ、これをCHCl(50mL)およびHO(25mL)に溶解した。HO層を1%のHClで中和し、次に、層を分離した。有機層を10%のNaHCO(2×20mL)で洗浄し、蒸発乾固した。アセチルアセトネート含有ポリマーである、結果として生じる官能基化ポリマーを、MeOH/アセトン(50/50、100mL)からの沈殿によって精製して、淡黄色固体(0.238g)を生じた。分析計算値:C,86.33;H,9.65;N,2.56。実測値:C,83.15;H,9.29;N,2.46。
【0120】
上記アセチルアセトネート含有ポリマー(0.150g)および実施例7からの[IrOH{1−(4−tert−ブチル−フェニル)−イソキノリン}(0.010g、0.007mmol)を、窒素下で、100mLの丸底フラスコに入れた。乾燥THF(45mL)を加え、混合物を24時間還流させた。結果として生じる濃赤色溶液をTHF(100mL)で希釈し、シリカによって濾過した。溶媒の蒸発により、赤色固体(0.135g)をもたらした。分析計算値:C,84.98;H,9.36;N,2.64;Ir,1.65。実測値:C,82.81;H,8.99;N,2.59;Ir,1.88。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の共役ポリマー主鎖の繰返し単位の式IおよびIIを示す。
【図2】本発明の共役ポリマー主鎖の繰返し単位の式IIIからVIIIを示す。
【図3】本発明の共役ポリマー主鎖の繰返し単位の式IXからXIIを示す。
【図4】本発明に有用な配位子の式XIIIからXVを示す。
【図5】本発明に有用な配位子の式XVIからXIXを示す。
【図6】本発明に有用な配位子の式XXおよびXXIを示す。
【図7】本発明に有用な配位子の式XXIIを示す。
【図8】本発明に有用な配位子の式XXIIIからXXVIIを示す。
【図9】本発明に有用な配位子の式XXVIIIからXXXIIを示す。
【図10】配位子を調製するための式(1)を示す。
【図11】イリジウム前駆体錯体の式XXXIIIおよびXXXIV、ならびにイリジウム前駆体錯体を調製するための式(2)を示す。
【図12】白金前駆体錯体の式XXXVおよび白金前駆体錯体を調製するための式(3)を示す。
【図13】本発明に有用な配位子の式XXXVIを示す。
【図14】イリジウムを有するポリマー金属錯体を形成するための式(4)を示す。
【図15】アルミニウムを有するポリマー金属錯体を形成するための式(5)を示す。
【図16】発光ダイオード(LED)の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共役ポリマー主鎖と、(b)複数の第1タイプの官能基と、(c)複数の第1タイプの不活性スペーサ基とを含むポリマー金属錯体組成物であって、
前記複数の第1タイプの官能基の各々が、前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第1タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合され、
前記複数の第1タイプの官能基の各々の少なくとも一部が、少なくとも1つの金属に配位結合されることを特徴とするポリマー金属錯体組成物。
【請求項2】
(d)複数の第2タイプの官能基をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複数の第2タイプの官能基の少なくとも1つが、複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第2タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つと同じ組成であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記複数の第1タイプの官能基の少なくとも1つが、前記第2タイプの官能基の少なくとも1つにも共有結合される不活性スペーサ基に共有結合されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
第1タイプの不活性スペーサ基の数と第1タイプの官能基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
第2タイプの不活性スペーサ基の数と第2タイプの官能基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記共役ポリマー主鎖が、フルオレンジイル、フェニレン、フェニレンビニレン、オキサジアゾールジイル、チオフェンジイル、およびアリールアミンジイルから選択される少なくとも1つの繰返しモノマー単位を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記共役ポリマー主鎖が、ビニルカルバゾールジイルおよびトリアリールメタンジイルから選択される繰返しモノマー単位を含む非共役セグメントを有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
前記複数の第1タイプの官能基の少なくとも1つが、β−ジカルボニル、ホスフィノアルカノール、アミノカルボン酸、イミノカルボン酸、サリチル酸、およびヒドロキシキノリンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記金属の少なくとも1つが、イリジウム、白金、レニウム、およびルテニウムから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記金属の少なくとも1つが、2−アリールピリジン、2−アリールピリミジン、および2−アリールキノリン、2−チエニルピリジン、2−チエニルキノリン、2−チエニルジアジン、2−ピロリルピリジン、2−ピロリルキノリン、および2−ピロリルジアジンから選択される少なくとも1つの配位子にさらに配位結合されることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(a)共役ポリマー主鎖と、(b)複数の第1タイプの官能基と、(c)複数の第1タイプの不活性スペーサ基とを含む少なくとも1つのポリマー金属錯体組成物を含むルミネセンス材料であって、
前記複数の第1タイプの官能基の各々が、前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第1タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合され、
前記複数の第1タイプの官能基の各々の少なくとも一部が、少なくとも1つの金属に配位結合されることを特徴とするルミネセンス材料。
【請求項16】
前記少なくとも1つのポリマー金属錯体組成物が、(d)複数の第2タイプの官能基をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項17】
前記複数の第2タイプの官能基の少なくとも1つが、複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第2タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合されることを特徴とする請求項16に記載のルミネセンス材料。
【請求項18】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つと同じ組成であることを特徴とする請求項17に記載のルミネセンス材料。
【請求項19】
前記第1タイプの官能基の少なくとも1つが、前記第2タイプの官能基の少なくとも1つにも共有結合される不活性スペーサ基に共有結合されることを特徴とする請求項17に記載のルミネセンス材料。
【請求項20】
複数の第1タイプの不活性スペーサ基の数と前記複数の第1タイプの官能基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項21】
複数の第2タイプの不活性スペーサ基の数と複数の第2タイプの官能基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項17に記載のルミネセンス材料。
【請求項22】
前記共役ポリマー主鎖が、フルオレンジイル、フェニレン、フェニレンビニレン、オキサジアゾールジイル、およびチオフェンジイルから選択される少なくとも1つの繰返しモノマー単位を有することを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項23】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項24】
前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項17に記載のルミネセンス材料。
【請求項25】
前記第1タイプの官能基の少なくとも1つが、β−ジカルボニル、ホスフィノアルカノール、アミノカルボン酸、イミノカルボン酸、サリチル酸、およびヒドロキシキノリンから選択されることを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項26】
前記金属の少なくとも1つが、イリジウム、白金、レニウム、およびルテニウムから選択されることを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項27】
前記金属の少なくとも1つが、2−アリールピリジン、2−アリールピリミジン、および2−アリールキノリン、2−チエニルピリジン、2−チエニルキノリン、2−チエニルジアジン、2−ピロリルピリジン、2−ピロリルキノリン、および2−ピロリルジアジンから選択される少なくとも1つの配位子にさらに配位結合されることを特徴とする請求項26に記載のルミネセンス材料。
【請求項28】
前記共役ポリマー主鎖が、少なくとも1つのフルオレンジイル繰返しモノマー単位を有し、前記第1タイプの官能基がβ−ジカルボニルであり、前記金属がイリジウムであることを特徴とする請求項15に記載のルミネセンス材料。
【請求項29】
(a)共役ポリマー主鎖と、(b)複数の第1タイプの官能基と、(c)複数の第1タイプの不活性スペーサ基とを含む少なくとも1つのポリマー金属錯体組成物を含む有機電子デバイスであって、
前記複数の第1タイプの官能基の各々が、前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第1タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合され、
前記複数の第1タイプの官能基の各々の少なくとも一部が、少なくとも1つの金属に配位結合されることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項30】
前記少なくとも1つのポリマー金属錯体組成物が、(d)複数の第2タイプの官能基をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記複数の第2タイプの官能基の少なくとも1つが、複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つに共有結合され、この第2タイプの不活性スペーサ基が、前記ポリマー主鎖に共有結合されることを特徴とする請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つと同じ組成であることを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記第1タイプの官能基の少なくとも1つが、前記第2タイプの官能基の少なくとも1つにも共有結合される不活性スペーサ基に共有結合されることを特徴とする請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
複数の第1タイプの不活性スペーサ基の数と複数の第1タイプの官能基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項35】
複数の第2タイプの官能基の数と複数の第2タイプの不活性スペーサ基の数との比が、1:1であることを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項36】
前記共役ポリマー主鎖が、フルオレンジイル、フェニレン、フェニレンビニレン、オキサジアゾールジイル、およびチオフェンジイルから選択される少なくとも1つの繰返しモノマー単位を有することを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項37】
前記複数の第1タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項30に記載のデバイス。
【請求項38】
前記複数の第2タイプの不活性スペーサ基の少なくとも1つが、炭素原子数1から12個のアルキル鎖であることを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項39】
前記第1タイプの官能基の少なくとも1つが、β−ジカルボニル、ホスフィノアルカノール、アミノカルボン酸、イミノカルボン酸、サリチル酸、およびヒドロキシキノリンから選択されることを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項40】
前記金属の少なくとも1つが、イリジウム、白金、レニウム、およびルテニウムから選択されることを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項41】
前記金属の少なくとも1つが、2−アリールピリジン、2−アリールピリミジン、および2−アリールキノリン、2−チエニルピリジン、2−チエニルキノリン、2−チエニルジアジン、2−ピロリルピリジン、2−ピロリルキノリン、および2−ピロリルジアジンから選択される少なくとも1つの配位子にさらに配位結合されることを特徴とする請求項40に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−503126(P2006−503126A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−527669(P2004−527669)
【出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/023690
【国際公開番号】WO2004/015025
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】