説明

共役芳香族化合物の製造方法

【課題】置換基の立体的影響を受けない共役芳香族化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)


(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、等を表す。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表し、nは0又は1を表す。)で表される芳香族化合物(1)と、芳香族化合物(1)と同一の芳香族化合物とを反応させる;或は、芳香族化合物(1)とは異なる、1又は2個の塩素、臭素又はヨウ素原子が芳香環に結合している芳香族化合物と芳香族化合物(1)とを下記条件で反応させる。[条件]触媒量のニッケル化合物、式(2)


(式中、Bはフェロセン−1,1’−ジイル基を表わし、Arはフッ素、トリフルオロメチル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれる1又は複数個の基でアリール基を表す。)で示される二座リン配位子及び亜鉛の共存下にカップリング反応させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒量のニッケル化合物を用いてカップリング反応を行うことは公知である。
非特許文献1には触媒量の塩化ニッケル、トリフェニルホスフィンの存在下、亜鉛を還元剤に用いた芳香族ジハロゲン化合物のカップリング反応が報告されている。しかしながら、脱離基のオルト位にある置換基の立体的影響により適用可能な基質に制約があることが記載されている。
かかる状況において、依然として置換基の立体的な影響を受けない共役芳香族化合物の良好な製造方法の開発が望まれている。
【非特許文献1】Tetrahedron Letters 1977,47,4089−4092
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、共役芳香族化合物の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式(1)

(式中、Rは置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基又は炭素数6〜20のアシル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基又はシアノ基を表す。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表し、nは0又は1を表す。)
で表される芳香族化合物(1)と、芳香族化合物(1)と同一の芳香族化合物とを反応させる;或は、芳香族化合物(1)とは異なる、1又は2個の塩素、臭素又はヨウ素原子が芳香環に結合している芳香族化合物と芳香族化合物(1)とを下記条件で反応させることを特徴とする共役芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
[条件]
触媒量のニッケル化合物、
式(2)

(式中、Bはフェロセン−1,1’−ジイル基を表わし、Arはフッ素、トリフルオロメチル基及び炭素数1〜20のアルコキシ基からなる群から選ばれる1又は複数個の基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示される二座リン配位子、及び亜鉛の共存下にカップリング反応させること。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、脱離基を有する芳香族化合物を触媒量のニッケル化合物及び式(2)で示される二座リン配位子を用いて、亜鉛の共存下にカップリング反応させることで、収率や重合度の面でより優れた対応する共役芳香族化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で芳香族化合物とは、単一の芳香族化合物の他に、2種類以上の芳香族化合物が混ざったものも含むものである。
【0007】
芳香族化合物としては、例えば、前記式(1)及び下記式(3)で示される芳香族化合物等が挙げられる。
式(3)

(式中、a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わし、hは5以上の整数を表わす。
Ar、Ar、Ar及びArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。
及びYは、同一又は相異なって、単結合、−CO−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、同一又は相異なって、−O−又は−S−を表わす。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。)
で表される芳香族化合物。
【0008】
本発明において、芳香族化合物の芳香環とは、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン及びフェナントレン等が挙げられ、芳香族複素環の例としては、チオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びキノキサリン等が挙げられ、中でもベンゼン、ナフタレン及びフルオレンがより好ましい。
【0009】
まず、式(1)で表される芳香族化合物(以下、芳香族化合物(1)と略記する)について説明する。
Rは、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアシル基及び下記式(a)で表されるスルホン酸のエステル又はアミド基:

(式中、Aは、1つもしくは2つの炭素数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。ここで、前記炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。)からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表す。Xは脱離基を表わし、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくは塩素又は臭素である。)
【0010】
かかる芳香族化合物(1)としては、例えば、
2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,4−ジブロモトルエン、2,5−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,4−ジクロロ−1−(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−エチルベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(2,2−ジメチルプロピル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(n−オクチル)ベンゼン、
1,3−ジクロロ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−2−メトキシベンゼン、1,3−ジブロモ−2−メトキシベンゼン、1,3−ジヨード−4−メトキシベンゼン、1,4−ジヨード−2−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−2−エトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−2−(2,2−ジメチルプロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ジクロロ−2−(n−オクチルオキシ)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−デシルオキシベンゼン
2,5−ジクロロ−1−フェニルベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(1−ナフチル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(2−ナフチル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(4−トリル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(4−メトキシフェニル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(4−フェノキシフェニル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1−(2−フェノキシフェニル)ベンゼン、
2’,4’−ジクロロアセトフェノン、2’,5’−ジクロロアセトフェノン、2’,4’−ジブロモ-アセトフェノン、2’,5’−ジブロモアセトフェノン、2,5−ジクロロベンゾフェノン及び2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン等が挙げられる。
かかる芳香族化合物(1)としては、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
【0011】
ついで、前記式(3)で表される芳香族化合物(以下、芳香族化合物(3)と略記する。)について説明する。
Ar、Ar、Ar又はArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。2価の芳香族基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニル−1,1’−ジイル基等の2価の単環性芳香族基;ナフタレン−1,3−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−1,7−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、9H−フルオレン−2,7−ジイル基等の2価の縮環系芳香族基;ピリジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル基、ピロール−2,5−ジイル基、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、キノリン−5,8−ジイル基、キノリン−2,6−ジイル基、イソキノリン−1,4−ジイル基、イソキノリン−5,8−ジイル基、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾイミダゾール−4,7−ジイル基、キノキサリン−5,8−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基等の2価のヘテロ芳香族基;などが挙げられる。なかでも、2価の単環性芳香族基及び2価の縮環系芳香族基が好ましく、1,4−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基及びナフタレン−2,7−ジイル基がより好ましい。
【0012】
前記2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基;からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。
かかる炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基としては、前記したものと同様のものが挙げられる。
【0013】
及びYは、同一又は相異なって、単結合、−CO−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、同一又は相異なって、−O−又は−S−を表わす。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表す。
a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わし、hは5以上、より好ましくは10以上の整数を表わす。
芳香族化合物(3)としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。

【0014】

【0015】

【0016】

【0017】



【0018】

【0019】

【0020】


【0021】
かかる芳香族化合物(3)としては、例えば、日本国特許第2745727号公報等の公知の方法に準じて製造したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。市販されているものとしては、例えば、住友化学株式会社製スミカエクセルPES等が挙げられる。
【0022】
芳香族化合物(3)としては、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上のものを用いることが好ましく、3,000以上であるものがより好ましい。
【0023】
芳香族化合物(1)をカップリングさせることにより、対応する共役芳香族化合物を製造することができる。芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)をカップリングさせることにより、対応する共役芳香族化合物を製造することもできる。さらに、芳香族化合物(1)と、芳香族化合物(1)及び芳香族化合物(3)以外の芳香族化合物をカップリングさせることにより、対応する共役芳香族化合物を製造することもできる。以下、かかる共役芳香族化合物及びその製造方法について説明する。
【0024】
かかる共役芳香族化合物の具体例としては、式(4)

(式中、Rは前記式(1)と同一の意味を表わす。)
で示される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(4)と略記する。)のみからなる共役芳香族化合物、前記繰り返し単位(4)と式(5)

(式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Y、Y、Z、Z、a、b、c及びhは前記式(3)と同じ意味を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、前記したものと同じものが挙げられる。)
で示されるセグメント(以下、セグメント(5)と略記する。)からなる共役芳香族化合物、前記繰り返し単位(4)と前記繰り返し単位(4)及びセグメント(5)以外の繰り返し単位又はセグメントからなる共役芳香族化合物等が挙げられる。
【0025】
これら共役芳香族化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1,000〜2,000,000である。
【0026】
繰り返し単位(4)からなる共役芳香族化合物は、芳香族化合物(1)を、ニッケル化合物の存在下に重合させることにより製造することができる。
繰り返し単位(4)とセグメント(5)からなる共役芳香族化合物は、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)を、ニッケル化合物の存在下に重合させることにより製造することができる。その際、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)とを予め加えておいて、ニッケル化合物の存在下に重合反応を行ってもよいし、芳香族化合物(1)をニッケル化合物の存在下に重合反応を行い、さらに芳香族化合物(3)を加えて重合反応を行ってもよい。
繰り返し単位(4)と繰り返し単位(4)及びセグメント(5)以外からなる繰り返し単位又はセグメントからなる共役芳香族化合物は、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(1)及び芳香族化合物(3)以外の芳香族化合物を、ニッケル化合物の存在下に重合させることにより製造することができる。
【0027】
芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)を重合させる場合、芳香族化合物(1)の使用量を適宜調整することにより、得られる共役芳香族化合物中の繰り返し単位(4)の含量を調整することができる。
【0028】
芳香族化合物(1)と、芳香族化合物(1)及び芳香族化合物(3)以外の芳香族化合物を重合させる場合、芳香族化合物(1)の使用量を適宜調整することにより、得られる共役芳香族化合物中の繰り返し単位(4)の含量を調整することができる。
【0029】
ニッケル化合物としては、例えば、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)等のゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル(例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等)、ニッケルカルボン酸塩(例えば、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等)、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル等の2価ニッケル化合物が挙げられ、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)及びハロゲン化ニッケルが好ましい。
【0030】
ニッケル化合物の使用量が少ないと、分子量の小さい共役芳香族化合物が得られやすく、また、使用量が多いと、後処理が煩雑になる傾向があるために、ニッケル化合物の使用量は、通常、モノマー1モルに対して、0.001〜0.8モル、好ましくは0.01〜0.3モル倍程度である。本発明において、モノマーとは、芳香族化合物(1)のみを重合させる場合は、芳香族化合物(1)を、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)とを重合させる場合には、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(3)を、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(1)及び芳香族化合物(3)以外の芳香族化合物とを重合させる場合には、芳香族化合物(1)と芳香族化合物(1)及び芳香族化合物(3)以外の芳香族化合物をそれぞれ意味する。
【0031】
配位子としては、下記式(2)

(式中、Bはフェロセン−1,1’−ジイル基を表わし、
Arは、フッ素原子、トリフルオロメチル基及び炭素数1〜20のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表わす。)
で示される二座リン配位子が好ましく用いられる。
【0032】
ここで、炭素数1〜20のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基又はn−イコシルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
【0033】
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基、2−アントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0034】
Arとしては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
Bとしては、フェロセン−1,1’−ジイル基が好ましい。
【0035】
前記式(2)で表される二座リン配位子としては、例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセンが挙げられる。
【0036】
二座リン配位子は、あらかじめニッケル化合物に配位した錯体として用いてもよい。
【0037】
二座リン配位子の使用量は、ニッケル化合物1モルに対して、通常0.2〜20モル、好ましくは1〜4モルである。
【0038】
さらに、重合速度を上げるために、ハロゲン化合物を添加してもよい。かかるハロゲン化合物としては、例えば、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、沃化ナトリウムなどのナトリウム塩、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウムなどのカリウム塩、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム塩などが例示され、好ましくは沃化ナトリウムが挙げられる。その使用量は用いるモノマーに対して通常0.001〜1モル、好ましくは0.05〜0.2モルの範囲である。
【0039】
亜鉛は通常粉末状又は削り状のものが用いられる。亜鉛の使用量は、モノマー1モルに対して、通常1モル以上であり、その上限は特に制限されないが、多すぎると、重合反応後の後処理が面倒になり、また経済的にも不利になるため、実用的には10モル以下、好ましくは5モル以下である。
【0040】
重合反応は、通常、溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、モノマー及び生成する共役芳香族化合物が溶解し得る溶媒であればよい。かかる溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。かかる溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エーテル溶媒及び非プロトン性極性溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。溶媒の使用量は、多すぎると、分子量の小さな共役芳香族化合物が得られやすく、少なすぎると、反応混合物の性状が悪くなりやすいため、モノマー組成物中のモノマーに対して、通常1〜200重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
【0041】
重合反応は、通常、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施される。
【0042】
重合温度は、通常、0〜250℃であり、好ましくは30〜100℃である。重合時間は、通常、0.5〜48時間である。
【0043】
重合反応終了後、生成した共役芳香族化合物を溶解しにくい溶媒と反応混合物を混合して共役芳香族化合物を析出させ、析出した共役芳香族化合物を濾過により、反応混合物から分離することにより、共役芳香族化合物を取り出すことができる。生成した共役芳香族化合物を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒と反応混合物を混合した後、塩酸等の酸の水溶液を加え、析出した共役芳香族化合物を濾過により、反応混合物から分離してもよい。得られた共役芳香族化合物の分子量や構造は、ゲル浸透クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により分析することができる。生成した共役芳香族化合物を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等が挙げられ、水及びメタノールが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

実施例1及び比較例1に記載の共役芳香族化合物の収量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、内部標準法(内部標準物質:ビフェニル)により求めた。測定条件を下記に示す。
GC測定装置 SHIMADZU社製 GC−2010
カラム J&W社製 DB−1
(膜厚0.25μm、長さ30m、内径0.2mm)を接続
注入モード スプリット(スプリット比63)
気化室温度 250℃
検出器(FID)温度 250℃
測定カラム温度 100℃で10分保持後、10℃/分で260度まで昇温

実施例2〜4及び比較例2に記載の共役芳香族化合物の分子量(重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算の分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件で測定した。
GPC測定装置 SHIMADZU社製 CTO−10A
カラム TOSOH社製 TSK−GELを接続
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMAc(LiBrを10mmol/dmになるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
【0045】
[実施例1]
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、室温で、臭化ニッケル8mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン19mg及び亜鉛粉末92mgを加えた。その後、室温で2−クロロトルエン89mg及びN,N−ジメチルアセトアミド2mLを加えて、70℃に昇温後、2時間攪拌した。GC分析から、2,2’−ジメチルビフェニルが47mg得られた。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン19mgの代わりにトリフェニルホスフィン18mgを用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、GC分析から、2,2’−ジメチルビフェニルが15mg得られた。
【0047】
[実施例2]
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、室温で、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル ジブロミド14mg、及び2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン120mg、亜鉛粉末46mg及びN,N−ジメチルアセトアミド1mL加え、70℃に加熱し、3時間重合反応を行い、対応する共役芳香族化合物を含む反応混合物を得た。共役芳香族化合物のMwは109,000であった。
【0048】
[比較例2]
実施例2において、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケル ジブロミド14mgの代わりにビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル ジブロミド13mgを用いた以外は実施例2と同様に反応を行い、対応する共役芳香族化合物を含む反応混合物を得た。共役芳香族化合物のMwは6,000であった。
【0049】
[実施例3]
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、室温で、臭化ニッケル15mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン39mg、亜鉛粉末92mg、2,5−ジクロロ−1−デシルオキシベンゼン212mg及びN,N−ジメチルアセトアミド2mLを加えた。その後、70℃で4時間重合反応を行い、対応する共役芳香族化合物を含む反応混合物を得た。
共役芳香族化合物のMwは46,000であった。
【0050】
[実施例4]
冷却装置を備えたガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、室温で、臭化ニッケル6mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン29mg、亜鉛粉末46mg、2,5−ジクロロベンゾフェノン97mg及び下記式

で示されるスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw 51,000:上記分析条件で測定)11mgをN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液を加えた。その後、70℃で4時間重合反応を行い、対応する共役芳香族化合物を含む反応混合物を得た。反応混合物をメタノール20mL中に加え、析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の共役芳香族化合物を含む固体59mgを得た。
共役芳香族化合物のMwは71,000であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rは置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基又は炭素数6〜20のアシル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基又はシアノ基を表す。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表し、nは0又は1を表す。)
で表される芳香族化合物(1)と、芳香族化合物(1)と同一の芳香族化合物とを反応させる;或は、芳香族化合物(1)とは異なる、1又は2個の塩素、臭素又はヨウ素原子が芳香環に結合している芳香族化合物と芳香族化合物(1)とを下記条件で反応させることを特徴とする共役芳香族化合物の製造方法。
[条件]
触媒量のニッケル化合物、
式(2)

(式中、Bはフェロセン−1,1’−ジイル基を表わし、Arはフッ素、トリフルオロメチル基及び炭素数1〜20のアルコキシ基からなる群から選ばれる1又は複数個の基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示される二座リン配位子、及び亜鉛の共存下にカップリング反応させること。
【請求項2】
芳香族化合物の芳香環が、ベンゼン、ナフタレン及びフルオレンからなる群から選ばれるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)で表される芳香族化合物と式(3)

(式中、a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わし、hは5以上の整数を表わす。
Ar、Ar、Ar及びArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。
及びYは、同一又は相異なって、単結合、−CO−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。
及びZは、同一又は相異なって、−O−又は−S−を表わす。Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表わす。)
で表される芳香族化合物をカップリング反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載の共役芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の式(2)において、Arがフェニル基、4−メトキシフェニル基又は4−トリフルオルメチルフェニル基である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ニッケル化合物がハロゲン化ニッケルである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ニッケル化合物がニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−285467(P2008−285467A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313362(P2007−313362)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】