説明

共押出多層フィルム及び該フィルムからなる包装材

【課題】フィルムの厚さが100μm以上の厚膜であっても縦方向及び横方向ともに高い直線カット性及び易引き裂き性を有して易開封性に優れ、二次成形可能で、かつ屈曲による耐ピンホール性及び重量物の包装にも耐えられるヒートシール強度を有する共押出多層フィルム及び該フィルムからなる包装材を提供する。
【解決手段】低密度ポリエチレン(a1)を主成分とする樹脂層(A)と、低密度ポリエチレン(b1)70〜90質量%及び環状オレフィン系樹脂(b2)10〜30質量%を含有する樹脂層(B)とを、(A)/(B)/(A)の順に積層したことを特徴とする共押出多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等を包装する包装材に関するものであって、詳しくは手による引き裂き性がフィルムの縦方向のみならず横方向でも良好であり、ヒートシール強度、耐ピンホール性、二次成形性も良好な共押出多層フィルム及び該フィルムからなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材には内容物の保護の観点から、高ヒートシール強度、耐ピンホール性が要求される。一方、近年のユニバーサルデザイン化傾向の中で、社会的弱者(高齢者、幼児、障害者等)に対しての配慮のため、易開封性、易引き裂き性が重要視されつつある。しかしながら、易開封性、易引き裂き性を付与しようとすると、包装材本来の機能であるヒートシール強度、耐ピンホール性が低下する問題があった。
【0003】
上記の問題を解決するものとして、環状オレフィン系樹脂を主成分とした環状オレフィン系樹脂組成物から形成された第1の層と、オレフィン系(共)重合体またはそれを含む組成物から形成された第2の層との少なくとも2層が積層されてなるポリオレフィン系多層積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このポリオレフィン系多層積層体は、環状オレフィン系樹脂組成物から形成された第1の層の厚さが多層積層体の厚さの70%(70μm)と厚い上、第2の層には剛性の高いポリプロピレン系樹脂を使用しているため、柔軟性に乏しく、屈曲に対する耐ピンホール性に問題があった。さらに、このように剛性が高い樹脂を使用しているのにもかかわらず、多層積層体の厚さが100μm以上もあるため、手で引き裂くことは子供や高年齢者層の人にとって困難で、引き裂き性に問題があった。
【0004】
また、脂環式構造含有重合体からなる層の両面にその他の熱可塑性樹脂からなる層を積層した包装フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この包装フィルムは、20〜40μmと薄いため引き裂き性は良好であるが、上記のポリオレフィン系多層積層体と同様に剛性の高いポリプロピレンや高密度ポリエチレンを外層に使用しているため、柔軟性に乏しく、耐ピンホール性に問題があった。
【0005】
単純に引き裂き性に優れたフィルムを得る場合、機械強度の弱い酢酸ビニル共重合体(EVA)等を用いる方法が考えられる。しかし、このフィルムでは、ヒートシール強度、耐ピンホール性等の特性が低下し、内容物が重量物である場合、破袋する問題があった。また、このフィルムを成形して容器形状で使用する場合、成形時にフィルムが裂けたり、容器底部のコーナー部分にピンホールが発生しやすかったりする問題があった。さらに、このフィルムあるいは上記のポリオレフィン系多層積層体や包装フィルムは引き裂き性が良好であっても、まっすぐに引き裂くことができる直線カット性はなく、思わぬ方向に引き裂かれるため、内容物が飛び出して破損したり、内容物が手や衣服等にかかり汚れたりする等の問題があった。このため、重量物の包装にも耐えられるヒートシール強度を有し、二次成形可能で、耐ピンホール性、縦方向及び横方向ともに直線カット性を備えた引き裂き性に優れるフィルムが求められていた。
【特許文献1】特開平8−72210号公報
【特許文献2】特開2000−334890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フィルムの厚さが100μm以上の厚膜であっても縦方向及び横方向ともに高い直線カット性及び易引き裂き性を有して易開封性に優れ、二次成形可能で、かつ屈曲による耐ピンホール性及び重量物の包装にも耐えられるヒートシール強度を有する共押出多層フィルム及び該フィルムからなる包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、低密度ポリエチレン(a1)を主成分とする樹脂層(A)と、低密度ポリエチレン(b1)及び環状オレフィン系樹脂(b2)を含有する樹脂層(B)とを、(A)/(B)/(A)の順に積層した共押出多層フィルムは、重量物の包装にもある程度耐えられるヒートシール強度を有し、二次成形可能で、耐ピンホール性、縦方向及び横方向ともに直線カット性を備えた易引き裂き性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、低密度ポリエチレン(a1)を主成分とする樹脂層(A)と、低密度ポリエチレン(b1)70〜90質量%及び環状オレフィン系樹脂(b2)10〜30質量%を含有する樹脂層(B)とを、(A)/(B)/(A)の順に積層したことを特徴とする共押出多層フィルム及び該フィルムからなる包装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共押出多層フィルムは、フィルムの厚さが100μm以上の厚膜であっても縦方向及び横方向ともに高い直線カット性及び易引き裂き性を有するため、余分な力を掛けることなく、社会的弱者にも簡単に裂ける易開封性も有するという効果を奏する。また、優れた二次成形性、屈曲による耐ピンホール性、重量物の包装にも耐えられるヒートシール強度も有する。したがって、本発明の共押出多層フィルムは、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等を包装する包装材に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(A)で用いる低密度ポリエチレン(a1)は、高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。このような低密度ポリエチレンは機械強度が弱いため、他のオレフィン樹脂と比べて比較的もろく引き裂き性が良好になる上、環状オレフィン系樹脂(b2)との相溶性も良いため、ブレンドした際の透明性も維持することができる。さらに、他の樹脂を使用することなく、樹脂層(A)と樹脂層(B)との層間、接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。
【0011】
前記低密度ポリエチレン(a1)は、密度が0.900〜0.935g/cmであるものが好ましく、より好ましくは0.915〜0.930g/cmである。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、フィルム成膜性、押出適性が向上するので好ましい。
【0012】
また、前記低密度ポリエチレン(a1)は、メルトフローレイト(JIS K7210に準拠して、190℃、21.18Nで測定した値;以下、「MFR」という。)が0.1〜10g/10分であるものが好ましく、より好ましくは0.3〜8.0g/10分であり、特に好ましくは0.8〜6.0g/10分である。MFRがこの範囲であれば、押出成形性が向上するので好ましい。
【0013】
さらに、前記低密度ポリエチレン(a1)は、メルトテンション(溶融張力;以下、「MT」という。)が2.0〜15.0であるものが好ましく、より好ましくは4.0〜13.0である。低密度ポリエチレンのMTがこの範囲であれば、二次成形性、耐ピンホール性が向上するので好ましい。なお、このMTは、メルトテンションテスタ(例えば、株式会社東洋精機製作所製のもの)を用いて測定した値で、同装置内に低密度ポリエチレンを190℃に加熱後、この樹脂を2mmφのノズルから0.75ml/分で23℃の雰囲気下で押出ストランドとし、このストランドを90cmのエアーギャップをつけて25〜60m/分の速度で引き取る際の張力を測定することによって得られる。
【0014】
また、本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(A)は、上記の低密度ポリエチレン(a1)を主成分とする。したがって、低密度ポリエチレン(a1)のみで構成されても良いが、直線カット性や引き裂き性等の物性を損なわない範囲で、低密度ポリエチレン(a1)以外のその他の樹脂(a2)を併用しても構わない。その他の樹脂(a2)としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0015】
樹脂層(A)に用いるその他の樹脂(a2)として直鎖状低密度ポリエチレンを用いる場合、コモノマーにブテンを用いたエチレン−1−ブテン共重合体が好ましい。このような直鎖状低密度ポリエチレンを用いると、十分な引き裂き性を得ることができる。また、前記エチレン−ブテン−1共重合体は、メタロセン触媒を用いて製造されたものが好ましい。前記エチレン−1−ブテン共重合体は、密度が0.916〜0.950g/cmのものが好ましく、0.919〜0.940g/cmのものがより好ましい。密度がこの範囲であれば、十分な機械強度(耐衝撃性)が得られ、フィルム剛性が十分なものとなる。また、MFR(190℃、21.18N)が2〜10g/10分のものが好ましく、3〜7g/10分のものがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。さらに、前記エチレン−1−ブテン共重合体中のブテン単量体の含有量は、0.5〜10モル%が好ましく、1〜5モル%がより好ましい。
【0016】
樹脂層(A)に、前記低密度ポリエチレン(a1)とその他の樹脂(a2)とを併用する場合、その含有比率(質量%)は、(a1):(a2)=55〜95:45〜5が好ましく、(a1):(a2)=60〜80:40〜20がより好ましい。各樹脂の含有比率がこの範囲であれば、耐ピンホ−ル性が向上するので好ましい。
【0017】
一方、本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(A)の主成分である前記低密度ポリエチレン(a1)の代わりに、コモノマーにヘキセンやオクテンを用いた直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として用いた場合、低密度ポリエチレンを主成分とした場合と比較して機械強度が高いため、引き裂き性が不十分となるので好ましくない。
【0018】
本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(B)で用いる低密度ポリエチレン(b1)は、上記の樹脂層(A)で用いる低密度ポリエチレン(a1)と同様のものを用いることができる。
【0019】
本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(B)で用いる環状オレフィン系樹脂(b2)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂(b2)の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0020】
また、前記環状オレフィン系樹脂(b2)に前記COPを用いた場合、引き裂き性能が向上する。一方、前記COCを用いた場合、耐ピンホール性、二次成形性能が向上する。したがって、引き裂き性と耐ピンホール性を共に向上したい場合、前記COPとCOCを併用することが好ましい。COPとCOCとを併用する場合、その含有比率(質量%)は、COP:COC=90〜10:10〜90が好ましく、COP:COC=75〜25:25〜75がより好ましく、COP:COC=60〜40:40〜60がさらに好ましい。
【0021】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、
ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0022】
前記ノルボルネン系共重合体(COC)は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0023】
また、前記ノルボルネン系共重合体(COC)中のノルボルネン系単量体の含有比率は、40〜90モル%が好ましく、より好ましくは50〜80モル%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引き裂き性、加工安定性が向上する。
【0024】
前記環状オレフィン系樹脂(b2)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、チコナ(TICONA)社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0025】
前記樹脂層(B)中の前記低密度ポリエチレン(b1)と前記環状ポリオレフィン系樹脂(b2)との含有比率(質量%)は、(b1):(b2)=90〜70:10〜30であるが、より好ましくは(b1):(b2)=90〜80:10〜20である。各樹脂の含有比率がこの範囲であれば、透明性、縦方向及び横方向の引き裂き性、樹脂層(A)との間の接着強度が向上するので好ましい。
【0026】
本発明の共押出多層フィルムの層構造は、前記樹脂層(A)及び(B)を、(A)/(B)/(A)の順で積層したものであるが、前記樹脂層(B)の厚さが、共押出多層フィルムの全厚の20〜60%が好ましく、より好ましくは20〜50%である。共押出多層フィルムの全厚に対する樹脂層(B)の厚さの比率がこの範囲であれば、透明性、引き裂き性、耐ピンホール性、ヒートシール性が向上する。
【0027】
また、共押出多層フィルムの層構成(A)/(B)/(A)において、2つの樹脂層(A)の厚さが同じであることが好ましい。2つの樹脂層(A)の厚さが同じである例としては、(A)/(B)/(A)の各樹脂層の厚さの比が、(A):(B):(A)=1:1:1、1:2:1、2:1:2等のものが挙げられる。2つの樹脂層(A)の厚さが同じであれば、フィルムのカール、そり等が抑制でき、直線カット性も向上するので好ましい。
【0028】
さらに、本発明の共押出多層フィルムは、フィルムの厚さが100〜300μmのものが好ましい。フィルムの厚さがこの範囲であれば、優れた二次成形性が得られる。また、本発明の共押出多層フィルムは、フィルムの厚さが100〜300μmの厚膜であっても、直線カット性及び易引き裂き性に優れる。
【0029】
前記樹脂層(A)又は(B)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、樹脂層(A)の摩擦係数は1.5以下、中でも1.2以下であることが好ましいので、樹脂層(A)には、滑剤やアンチブロッキング剤を適宜添加することが好ましい。
【0030】
本発明の共押出多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(a1)を含有する樹脂層(A)と、低密度ポリエチレン(b1)と環状オレフィン系樹脂(b2)とを含有する樹脂層(B)とを、それぞれ別の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(A)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。さらに、本発明で用いる低密度ポリエチレン樹脂と環状オレフィン樹脂との軟化点(融点)の差が大きいため、相分離やゲルを生じることがある。このような相分離やゲルの発生を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0031】
本発明の共押出多層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形が可能となる。
【0032】
さらに、印刷インキとの接着性、ラミネート適性を向上させるため、前記樹脂層(A)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0033】
本発明の共押出多層フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
【0034】
前記包装袋は、本発明の共押出多層フィルムの樹脂層(A)をヒートシール層として、樹脂層(A)同士を重ねてヒートシールすることにより形成した包装袋である。当該共押出多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。また、樹脂層(A)とヒートシール可能な別のフィルムを重ねてヒートシールすることにより包装袋を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA等のフィルムを用いることができる。また、LDPE、EVA等のフィルムと、比較的引き裂き性の良い延伸フィルム、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等とを貼り合わせたラミネートフィルムも用いることができる。
【0035】
また、前記包装容器としては、本発明の共押出多層フィルムを二次成形することにより得られる深絞り成形品(上部に開口部がある底材)が挙げられ、代表的なものとしてブリスターパックの底材が挙げられる。この底材を密封する蓋材は、底材とヒートシールできるものであれば特に材質は問わないが、蓋材と底材を同時に引き裂いて開封できることから、本発明の共押出多層フィルムを蓋材として用いることが好ましい。
【0036】
上記の二次成形方法としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等が挙げられる。これらの中でも、フィルムあるいはシートを包装機上にてインラインで成形し、内容物を充填できるため真空成形が好ましい。
【0037】
本発明の共押出多層フィルムを用いた包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するため、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成すると好ましい。
【実施例】
【0038】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0039】
(実施例1)
樹脂層(A)用樹脂として、低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「UBEポリエチレン C410」、密度:0.918g/cm、MFR:2g/10分(190℃、21.18N)、MT:10g;以下、「LDPE」という。)を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(日本ゼオン株式会社製「ゼオノア 1060R」、MFR:60g/10分(280℃、21.18N)、ガラス転移温度:100℃;以下、「COP」という。)13質量部及び樹脂層(A)用樹脂として用いたLDPE87質量部の樹脂混合物を用いた。これらの樹脂をそれぞれ、樹脂層(A)用押出機(口径50mm)及び樹脂層(B)用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)/(A)の3層構成で、各層の厚さが50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(X1)を得た。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=60μm/30μm/60μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X2)を得た。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/37.5μm/75μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X3)を得た。
【0042】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/75μm/37.5μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X4)を得た。
【0043】
(実施例5)
実施例1で用いた樹脂層(A)用樹脂を、LDPE70質量部及び直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「ZM039」、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン密度:0.93g/cm、MFR:4g/10分(190℃、21.18N)、以下、「LLDPE1」という。)30質量部の混合樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X5)を得た。
【0044】
(実施例6)
実施例1で用いた樹脂層(B)用樹脂を、COP7質量部、ノルボルネン系共重合体(チコナ社製「トパス」、ノルボルネン−エチレン共重合体、MFR:50g/10分(280℃、21.18N)、ガラス転移温度:80℃;以下、「COC」という。)6質量部及び樹脂層(A)用樹脂として用いたLDPE87質量部の樹脂混合物を用いた以外は実施例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X6)を得た。
【0045】
(実施例7)
実施例1で用いた樹脂層(B)用樹脂を、COP17質量部及びLDPE83質量部の混合樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(X7)を得た。
【0046】
(実施例8)
実施例7と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=60μm/30μm/60μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X8)を得た。
【0047】
(実施例9)
実施例7と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/37.5μm/75μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X9)を得た。
【0048】
(実施例10)
実施例7と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/75μm/37.5μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(X10)を得た。
【0049】
(実施例11)
実施例1で用いた樹脂層(B)用樹脂を、COP30質量部及びLDPE70質量部の混合樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(X11)を得た。
【0050】
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂層(B)用樹脂を、COP9質量部及びLDPE91質量部の混合樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(Y1)を得た。
【0051】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=60μm/30μm/60μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y2)を得た。
【0052】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/37.5μm/75μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y3)を得た。
【0053】
(比較例4)
比較例1と同様の方法で、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=37.5μm/75μm/37.5μm(合計150μm)となるように共押出多層フィルムを作製し、共押出多層フィルム(Y4)を得た。
【0054】
(比較例5)
実施例1で用いた樹脂層(B)用樹脂を、COP70質量部及びLDPE30質量部の混合樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(Y5)を得た。
【0055】
(比較例6)
実施例1で用いた樹脂層(A)用樹脂のLDPEを、直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「UBEスーパーポリエチレン ユメリット 2040F」、エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度:0.918g/cm、MFR:2g/10分(190℃、21.18N)、MT:10g;以下、「LLDPE2」という。)に代えた以外は実施例1と同様にして、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)/(A)=50μm/50μm/50μm(合計150μm)である共押出多層フィルム(Y6)を得た。
【0056】
上記の実施例1〜11及び比較例1〜6で得られた共押出多層フィルムを用いて、下記の試験及び評価を行った。
【0057】
(引き裂き性試験)
上記で得られた共押出多層フィルムを、JIS K7128に準拠して、それぞれ63mm×76mmの大きさの試験片に切り出し、エルメンドルフ引裂試験機(テスター産業株式会社製)を用いて、引裂強さを測定した。得られた引裂強さから、下記の基準によって引き裂き性を評価した。
○:引裂強さが450未満。
△:引裂強さが450以上、550未満。
×:引裂強さが550以上。
【0058】
(直線カット性試験)
上記で得られた共押出多層フィルムを、それぞれ10cm×10cmの大きさの試験片に切り出し、そのフィルムの縦及び横の辺の中心位置に引き裂き用のノッチを入れ、一定の力と一定の速度で手で引き裂いた。試験片の引き裂き部分のずれから、下記の基準によって直線カット性を評価した。
○:引き裂き部分のずれが中心から1cm未満。
△:引き裂き部分のずれが中心から1cm以上2cm未満。
×:引き裂き部分のずれが中心から2cm以上。
【0059】
(二次成形性試験)
上記で得られた共押出多層フィルムを、それぞれ直径5cm、深さ3cmの円柱状に真空成形による二次成形を行い、深絞りした成形品を得た。得られた成形品の成形状態及び底のコーナー部のピンホール状態を目視で観察し、下記の基準によって成形性を評価した。
○:均一に延ばされ外観に問題なく、ピンホールがないもの。
×:不均一に延ばされ外観が悪いか、あるいはピンホールの発生があるもの。
【0060】
(耐ピンホール性試験)
上記で得られた共押出多層フィルムを、それぞれゲルボフレックステスター(テスター産業株式会社製)を用いて、常温で200回屈曲させた後、屈曲部に発生したピンホールの数から、下記の基準によって耐ピンホール性を評価した。
○:ピンホールなし。
×:ピンホールあり。
【0061】
(ヒートシール性試験)
樹脂層(A)面同士をヒートシール温度160℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールを行い。ヒートシールをしたフィルムを23℃で自然冷却後、15mm幅の短冊状に試験片を切り出した。この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度の値から、下記の基準によってヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が700g/15mm幅以上。
×:ヒートシール強度が700g/15mm幅未満。
【0062】
上記で得られた結果を表1〜3に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表1及び2の実施例1〜11の結果より、本発明の共押出多層フィルムは、フィルムの厚さが150μmの厚膜であっても、縦方向のみならず横方向においても、少ない力で引き裂くことができ、易開封性に優れていることが分かった。また、直線カット性に優れることから、安定した開封性も有する。さらに、深絞りの成形品の作製が可能な二次成形性を有し、耐ピンホール性及びヒートシール性にも優れていることが分かった。
【0067】
表3の比較例1〜6の結果より、下記のことが分かった。
【0068】
比較例1〜4の共押出多層フィルムは、樹脂層(B)中のCOP含有率を9質量%とした例であるが、縦方向の引き裂き性はある程度良好であったが、横方向の引き裂き性及び直線カット性は不十分であった。また、比較例2及び3の共押出多層フィルムは、縦方向の直線カット性も不十分であった。
【0069】
比較例5の共押出多層フィルムは、樹脂層(B)中のCOP含有率を70質量%とした例であるが、引き裂き性は良好であったが、樹脂層(A)と樹脂層(B)との間で層間剥離を生じヒートシール強度が不十分であった。また、剛性が高くなるため耐ピンホール性に劣ることが分かった。
【0070】
比較例6の共押出多層フィルムは、樹脂層(A)で用いたLDPEをLLDPEに代えたものであるが、引き裂き性は縦方向、横方向ともに不十分で、直線カット性も不十分であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
低密度ポリエチレン(a1)を主成分とする樹脂層(A)と、低密度ポリエチレン(b1)70〜90質量%及び環状オレフィン系樹脂(b2)10〜30質量%を含有する樹脂層(B)とを、(A)/(B)/(A)の順に積層したことを特徴とする共押出多層フィルム。
【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂(b2)が、ノルボルネン系重合体である請求項1記載の共押出多層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(B)の厚さが、前記共押出多層フィルムの全厚の20〜60%である請求項1又は2記載の共押出多層フィルム。
【請求項4】
前記2つの樹脂層(A)の厚さが同じである請求項1〜3のいずれか1項に記載の共押出多層フィルム。
【請求項5】
前記共押出多層フィルムの厚さが、100〜300μmである請求項1〜4のいずれか1項記載の共押出多層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の共押出多層フィルムからなることを特徴とする包装材。

【公開番号】特開2007−55234(P2007−55234A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162204(P2006−162204)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】