説明

共重合性(メタ)アクリル酸エステル

本発明は、オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合における、一般式(I)および(II):


〔式中、Aは炭素数3〜40のアルキル基であり、XおよびYは、互いに独立して水素またはメチル基であり、Bは水素、硫酸基またはリン酸基であり、nは0〜40の範囲の数である〕で示される化合物から選択される(メタ)アクリル酸エステルの共重合性乳化剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー部門に属し、特定構造のオレフィン系不飽和化合物のエマルション重合における乳化剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルション重合は、低水溶性のオレフィン系不飽和モノマーを水中で乳化剤を用いて乳化し、例えば過硫酸カリウムまたは酸化還元開始剤などのような水溶性開始剤を用いて重合させる特定の重合方法である。ここで、アニオン性および/または非イオン性界面活性剤は、水溶液中でのミセル構造を経てエマルション重合工程を確保する重要な成分である。
【0003】
共重合性乳化剤は、増大するポリマー鎖に完全にまたは部分的に組み込まれ、その結果、例えば最終製品において遊離乳化剤分子の移動を減少させることから、産業上の大きな需要がある。共重合性乳化剤は、モノマーと従来の乳化剤の中間に位置する。それらの反応性は、使用するモノマーに適合させるべきであり、形成されるポリマーの特性に悪影響を及ぼしてはならない。同時に、反応性基が存在する結果としてそれらの乳化特性を失ってはならない。特定の特性のこの組み合わせに基づいて、新規の共重合性乳化剤には産業において大きな需要がある。
【0004】
独国特許公開公報DE−A−10340081は、式:HOOC−CH=CH−COO−(BO)(PO)(EO)〔式中、Rは、8〜24個の炭素原子を有するアルキル基またはアルキルフェノール基であり、BOはブチレンオキシド単位であり、POはプロピレンオキシド単位であり、EOはエチレンオキシド単位であり、数x、yおよびzは、互いに独立して0または1〜50の数である;ただし、数x、yおよびzの少なくとも1つが0以外であり、完全にまたは部分的に中和したかたちで存在するカルボキシル基、および、C=C二重結合はシスまたはトランス配置であってもよい〕で示される共重合界面活性剤を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10340081号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単独または他の化合物との混合で、エマルション重合用の共重合性乳化剤として利用し得る化合物を提供することである。
【0007】
エマルション重合のための乳化剤としてのそれらの使用において、これらの化合物は、凝塊を最小限にする特定の効果を有しているべきである。さらに、これらの共重合乳化剤は、水性調製物において注入可能(pourable)でありポンプ輸送可能(pumpable)であるべきである。
【0008】
最後に、エマルション重合における乳化剤としてのそれらの使用は、類似する非共重合性乳化剤により調製されたラテックスと比較して、電解質安定性、アルカリ耐性および/または粘度に関する改善された特性を有するラテックスを供給すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合における、一般式(I)および(II):
【化1】

〔式中、Aは炭素数3〜40のアルキル基であり、XおよびYは、互いに独立して水素またはメチル基であり、Bは水素、硫酸基またはリン酸基であり、nは0〜40の範囲の数である〕
で示される化合物から選択される(メタ)アクリル酸エステルの共重合性乳化剤としての使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈EOおよび/またはPO単位〉
化合物(I)および(II)は、構造要素:
【化2】

を含む。上述したとおり、式中の定義は以下のとおりであり、
Yは水素またはメチル基、nは0〜40の範囲の数である。
【0011】
使用される式注釈が、前記の構造要素がそれぞれエチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)に由来するという事実を表すことを意図することを強調し得る。すなわち、インデックスnが0以外である場合には、この単位は、EOまたはPOの付加、あるいはエチレングリコールまたはプロピレングリコール(n=1の場合)、若しくは、EOおよび/またはPOの重付加反応、あるいはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、あるいは対応する混合EO−POコポリマー(nが2以上の場合)から合成される。さらに、この構造要素が、EO単位のみおよびPO単位のみのいずれでも構成され得ること、あるいはEO単位とPO単位をランダムにまたはブロックで分布する混合形態で含み得ることを明確に強調し得る。したがって、例示した構造要素に対して使用される定式の表現は、上述した可能性に対する省略表記を表し、それらは当業者にとって自明である。
【0012】
例えば、Y=Hおよびn=5は、当該構造要素が、−(O−CH−CH−)−部分に相当する5個の連結したEO単位を含むことを意味し、;逆に、Y=CHおよびn=5は、該構造要素が、−(O−CH−CH(CH))−部分に相当する連結したPO単位を含むことを意味する(当業者が認識するように、構造要素内のメチル基の配置は、各PO単位に二通りあり得る、すなわち−(O−CH−CH(CH))−または−(OCH(CH)−CH)−であり得る)。
【0013】
〈化合物(I)および(II)〉
アルキル基Aは、3〜40個、好ましくは10〜20個、より好ましくは12〜18個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基を含んでなる。特に好ましくは以下のアルキル基Aが挙げられる:ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、セチル(C16)、ステアリル(C18)、オレイル(オレフィン系不飽和C18)、およびイソトリデシル。
【0014】
本発明の式(I)および(II)の化合物は、形式上アクリル酸および/またはメチルアクリル酸のエステル化生成物である。
【0015】
本発明におけるアルコキシル化度nは、0〜40の範囲、好ましくは1〜20の範囲、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0016】
B基は水素または硫酸基あるいはリン酸基である。
1つの実施態様において、Bは硫酸基またはリン酸基である。この場合、硫酸基またはリン酸基Bは中和された状態で存在することが好ましい。硫酸基またはリン酸基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムのようなアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、あるいはアンモニアまたはエタノールアミンのようなアミンにより中和されていてよい。化合物(I)および(II)の塩形態は良好な水溶性で注目に値する。
【0017】
1つの実施態様において、Bは水素である。したがって、化合物(I)および(II)は非イオン性であり、特に、イオンの影響に対するラテックスの安定性を改善するのに役立つだけではない。
【0018】
式(I)および(II)の化合物は、例えば、ギ酸および過酸化水素を用いて市販のα−オレフィンをエポキシ化し、その後、得られた中間体1のエポキシ環をアクリル酸またはメタクリル酸により開環し、場合により得られた中間体2のOH基をエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させることによりアルコキシル化し、その後必要により末端OH基を硫化またはリン酸化することにより得ることができる。論理的に最終段階は、B基の意味により任意または強制的である。すなわち、Bが水素である場合、この段階は省略され、Bが硫酸基またはリン酸基である場合、この段階は実行される。
前述した合成における中間体1を、オキシラン環の開環によりアクリル酸またはメタクリル酸と反応させるため、この反応は、一般的に化合物(I)と(II)の混合物が得られるという結果を生じる。
【0019】
〈化合物(I)および(II)の使用〉
本発明に使用する化合物(I)および(II)は、それらとは異なる他のオレフィン系不飽和モノマーとともに容易にかつ完全に重合化し、気泡のない均質なエマルションの調製を促進する。
【0020】
Bが硫酸基またはリン酸基である場合、これらの化合物(I)および(II)は、エマルション重合において、好ましくは部分的にまたは完全に中和された形態(それぞれ、硫酸基またはリン酸基の「塩形態」)で使用される。この部分的または完全な中和形態は、従来の方法、例えばアルカリ金属またはアルカリ金属水和物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムなど)、またはアミン(アンモニアまたはエタノールアミン)により、化合物(I)を部分的または完全に中和することにより容易に得られ得る。化合物(I)および(II)の塩形態は、良好な水溶性で注目に値する。
【0021】
〈ポリマーの製造方法〉
さらに、本発明は、上述した化合物(I)および(II)を共重合性乳化剤として用いたオレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合によるポリマーの製造方法を提供する。
【0022】
化合物(I)および(II)を(Bが硫酸基またはリン酸基の場合、特に塩形態で)使用する本発明の方法の工程は、特別の剪断安定性および電解質安定性ならびに低凝固分を有するポリマーを提供する。
本発明の1つの実施態様は、同様に、特別の耐水性および温度変動に対する安定性により区別され、フィルム中で認識し得る乳化剤の移動を生じることのないラテックスを提供する。
さらに、本発明の方法のさらなる利点は、実質的に気泡がなく、確実に揮発性有機化合物の形成を防止することである。ポリマーへの乳化剤(I)および(II)の組み込みが実質的に定量的であるため、それらの使用は、生物分解性に関するいかなる問題をも引き起こさない。さらにオレフィン系不飽和エステル(I)および(II)は、実質的に単独重合の傾向を欠いている。
【0023】
エマルション重合における乳化剤としての化合物(I)および(II)の使用は、類似の非共重合性乳化剤により得られたラテックスと比べて、それらの電解質安定性、アルカリ耐性または粘性に関して改善された特性を示すラテックスを得ることができることが見出された(実施例1および2ならびに表1参照)。実施例中の実施例は、本発明にしたがって使用される化合物の有利な特性を示す。(I)および(II)と非イオン性またはアニオン性の典型的な界面活性剤との組み合わせを用いてもよく、これらの組み合わせは同様に有益なプロファイルの特性を示す。
【0024】
本発明のラテックスは、例えば塗装業において使用し得る。本発明のラテックスにより得られるコーティングが、従来のコーティングに比べて高い腐食防止性を有していることが見出された。このことを、実施例5および6(比較例)に示す。
【0025】
〈モノマー〉
本発明に使用される一般式(I)および(II)のオレフィン系不飽和エステルは、全ての工業的に重要な、実質的に不溶性のモノマーの、特に(メタ)アクリル酸化合物、スチレン化合物およびビニル化合物のエマルション重合において乳化剤として適当である。
【0026】
これらのモノマーの典型的な例は、ビニル芳香族、例えばスチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルトルエン、重合性オレフィンおよびジオレフィン、例えばプロペン、ブタジエンまたはイソプレン、アクリル酸またはメタクリル酸と、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルコール、とりわけ1〜8個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、特に好ましくは、それらのメチルエステル、エチルエステルおよびブチルエステル、2〜12個の炭素原子を有する酸のビニルエステル、とりわけ、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびラウリン酸ビニル、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどである。
【0027】
アクリル酸またはメタクリル酸の付加の有無にかかわらず、アクリル酸アルキル、アクリル酸スチレン、ベオバ(VeoVa)化合物またはそれらの混合物から選択されるモノマーが本発明において特に好ましい。
【0028】
該モノマーは、本発明に使用する共重合性乳化剤(I)の存在下、上記に記載された他の化合物と、単独重合または共重合し得る。また、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1〜8個の炭素原子を有するマレイン酸および/またはフマル酸のモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸および/またはイタコン酸のような、本発明の化合物(I)および(II)とは異なり、本質的に部分的または完全に水溶性である50重量%までの他のモノマーを含む共重合を行うことも可能である。
【0029】
1つの実施態様において、本発明の方法に使用されるモノマーは、アクリル酸スチレン/ブチル、酢酸ビニル/アクリル酸ブチルまたはスチレン/ブタジエンの組み合わせである。
【0030】
〈共乳化剤〉
さらに、本発明に使用する化合物(I)および(II)を、既知の非イオン性および/またはアニオン性共乳化剤と組み合わせて使用することもできる。この使用は、例えば、剪断力、温度効果、および電解質に関して増強した安定性を有する分散体を導き得る。共乳化剤は、使用する全モノマーに基づき、0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の量で添加する。共乳化剤を共重合の開始時に乳化剤とともに投入することが可能であり、または、重合中に共乳化剤を添加することも可能である。別のバージョンは、(単独または組み合わせで)共乳化剤を使用してプレエマルションを調製し、重合中にプレエマルションを添加する。また、本発明のアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルを使用して得られた分散体に、後安定化のために共乳化剤を加えることもできる。
【0031】
本発明に使用する化合物(I)および(II)を、保護コロイドとともに使用することもできる。この種類の保護コロイドの典型例は、完全にまたは部分的に加水分解された酢酸ビニルのホモポリマーおよび/またはコポリマー、例えば、部分的加水分解酢酸ポリビニル、または完全に加水分解された酢酸ビニルおよびビニルエーテルのコポリマーである。好ましいコポリマーは、ポリビニルエーテルのエーテル部分に1〜4個の炭素原子を有する。他の保護コロイドは、多糖に由来していてもよい。特に、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースまたはセルロース混合エーテルのようなセルロースエーテルが好適である。ポリアクリルアミドおよび、アクリル酸、アクリロニトリルまたはアクリル酸エステルとのその共重合体も適当である。ナフタレンスルホン酸およびホルムアルデヒド、または他の水溶性ホルムアルデヒド樹脂、とりわけ、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の縮合生成物を同様に使用し得る。最後に、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、および天然デンプンおよびヒドロキシエチルデンプンのような置換デンプン誘導体も好適な保護コロイドである。
【0032】
〈エマルション重合〉
1つの実施態様では、モノマーの合計に基づいて0.1〜25重量%の量で乳化剤(I)および(II)をエマルション重合に使用する。
【0033】
化合物(I)および(II)を使用するこの方法の第1段階で一般的に調製される水性分散体は、実際には、水、あるいは、水と水溶性有機溶媒の混合物中に15〜75重量%(乾燥残分)の重合モノマーを含有する。20〜60重量%の範囲の乾燥残分が好ましい;しかしながら、特殊用途に対しては15重量%未満の乾燥残分の水性分散体も調製し得る。エマルション重合の前記方法においては、他の一般的な重合化助剤、とりわけ、例えば、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムあるいは過酸化水素などの無機過酸化合物のような開始剤、さらに、エマルション重合にも使用し得る有機過酸化合物または有機アゾ化合物を使用することができる。開始剤は、一般的な量、すなわち、0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の量で使用する。他の適当な助剤は、緩衝物質、例えば、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムであり、それらを2重量%までの量で使用し得る。ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩のような反応促進剤も使用し得る。さらに、エマルション重合で使用される一般的な分子量調整剤、例えばブテノール、または他の有機チオ化合物、例えばメルカプトエタノール、チオグリコール酸、オクチルメルカプタンまたはtert−ドデシルメルカプタンなどを使用することもできる。重合工程を実施するために、例えば、全体の初期充填における全反応性物質の完全な組み込み、モノマー供給、エマルション供給のような、エマルション重合において一般的に使用される種々の方法が用いられる。このために一般的に、重合媒体の温度は40〜100℃の範囲、とりわけ50〜90℃の範囲に維持される。低pHレベルでのエマルション重合も本発明の化合物により可能であるが、有利にはpHは3〜9の範囲に維持される。エマルション重合のための前記の可能な変法は、攪拌機および温度測定装置の備わった冷却および加温可能な容器(例えば攪拌圧力容器)で有利に実施される。同様に、コイル管リアクターまたはいわゆるループ型リアクターを使用することもできる。反応生成物が固体生成物として分離される場合、このポリマー分散体を有利に沈殿または噴霧乾燥させる。しかしながら、好ましくは、重合において得られた分散体をそのまま、塗料、接着剤、紙加工スリップ剤、および他のコーティング材のバインダーとして使用する。本発明にしたがって使用する化合物(I)および(II)を用いたエマルション重合方法の他の条件は、当業者による従来法における特定の要求に対して自由に選択または適合され得る。
【実施例】
【0034】
〈使用した乳化剤〉
C12−エポキシアクリロイル−10EOホスフェート:
これは、本発明の化合物である。以下のように調製した:
1,2−ドデセンを従来方法によりエポキシ化して、中間体1を形成した。その後、1304.16g(6.7モル)のこの中間体1を60℃まで加熱し、3.57gの4−メトキシフェノールと混合した。続いて、反応混合物の温度を60℃から90℃まで上昇させながら、482.08g(6.7モル)のアクリル酸と17.86gのトリフェニルホスフィンの混合物を量り入れた。量り入れの終了後、反応混合物の酸価が3mgKOH/g(中間体2)になるまで、反応を90℃で続けた。400g(1.5モル)の中間体2を、264.30g(6モル)のエチレンオキシド、2gの水酸化カリウム水溶液(50%)と0.13gのフェノチアジンと混合し、窒素でパージした。これを150℃〜155℃、4.5barの圧力でエトキシル化し、中間体3を形成した。41.44g(0.29モル)の五酸化リンを、258.56g(0.58モル)の中間体3に強攪拌下、1時間かけて少しずつ量り入れた。その間ずっと、反応温度が60℃以上に上昇しないように注意した。量り入れ終了後、反応を90℃でさらに2時間続け、最終生成物を形成した。
【0035】
Disponil FEP 5600:
これは、Cognisから入手可能な市販の脂肪アルコールエーテルリン酸である。
C12−エポキシアクリロイル−10EO
この本発明の乳化剤は、エトキシル化後の合成を行わなかった以外は、前記C12−エポキシアクリロイル−10EOホスフェートのように合成された。
Disponil FEP 5600:
これは、Cognisから入手可能な市販の脂肪アルコールエーテルリン酸である。
【0036】
〈使用した試験方法〉
調製したエマルションを、以下のパラメーターにより特徴付けた:
【0037】
乾燥残分は、以下のように測定した:
5gのエマルションをSatorius 709301乾燥残分測定器に投入し、一定重量になるまで乾燥させた。結果を、乾燥残分(重量%)で記載する。これは下記の表におけるデータの意味である。
【0038】
調製したエマルションの粘度は、ブルックフィールド法(20rpm、スピンドル1、エマルションはそのままの状態で使用)により測定した。下記表中の粘度に対する数値は、単位mPasで示される。
【0039】
調製したエマルションのpHは、pH電極を用いて、DIN19268により電気化学的に測定した。
【0040】
調製したエマルションの平均粒子径は、Coulter Nano−Sizerを用いて測定した。下記表中の粒子径に対する数値は、単位nm(ナノメメートル)により示される。
【0041】
調製したエマルションの凝固分は、80μmのフィルターを通して濾過した後、重量測定法により測定した(湿潤凝固)。
これにより測定した凝固分を、エマルションの固形分に対する凝固分%として示す。ここで、エマルションの固形分は、使用したモノマーの量を意味する。
凝固分は、エマルション重合により調製されたエマルションの品質を評価するために、当業者にとって重要な変数である。
【0042】
調製したエマルションの電解質安定性は、このエマルション(10g)のサンプルを、それぞれ10mlの6個の異なる電解質溶液で処理し、凝固形成を調べることにより測定した。電解質溶液は、1%および10%のNaCl、CaClおよびAlClの各溶液である。示したデータは、凝固形成していない最も強力な電解質溶液である。
【0043】
得られたエマルションの凍結/解凍安定性は、エマルションサンプルを16時間かけて23℃から−5℃まで冷却し、−5℃に達した後8時間かけて再び23℃まで加温することにより測定した。その後、このエマルションの均質性を視覚的に調べた。このサイクルを全5回行い、各サイクルにおける最低温度をさらに5℃下げた。すなわち、第2サイクルでは−10℃まで冷却を行い、第3サイクルでは−15℃まで冷却を行うなどした。
【0044】
〈ラテックスの調製〉
実施例1(本発明)
反応容器に、260.37gの蒸留水、1.75gのC12−エポキシアクリロイル−10EOホスフェート、0.47gの過硫酸カリウムおよび40gのプレエマルション(213.0gのVeoVa10、151.5gのメチルメタクリレート、94.7gのアクリル酸ブチル、14.2gのアクリル酸、1.75gのC12−エポキシアクリロイル−10EOホスフェート、1.89gの過硫酸カリウムおよび260.37gの蒸留水)を投入した。反応容器を80℃まで加熱した。重合を開始した後、残りのプレエマルションを3時間かけて一定の速度で量り入れた。添加終了後、バッチを1時間、後重合した。
【0045】
実施例2(比較例)
C12−エポキシアクリロイル−10EOホスフェートを同量のDisponil FEP 5600に置き換えた以外は実施例1を反復した。
【0046】
〈試験結果〉
得られたラテックスをより詳細に特徴付けた。結果を表1に示す。
【表1】

【0047】
実施例3(本発明)
実施例1のエマルションを23℃から−5℃に16時間かけて冷却し、−5℃の温度に達した後、再び8時間かけて23℃に加温した。その後、このエマルションの均質性を視覚的に調べた。このサイクルを全5回行い、各サイクルにおける最低温度をさらに5℃下げた。すなわち、第2サイクルでは−10℃まで冷却を行い、第3サイクルでは−15℃まで冷却を行うなどした。
実施例1による本発明のエマルションは、第5サイクル終了後も均質であった。すなわち、無傷のエマルションであった。
【0048】
実施例4(比較例)
実施例3の方法を、実施例2のエマルションで繰り返した。このエマルションは第1サイクルの直後に相分離を示すことがわかった。形成された凝塊は再分散性ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合における、一般式(I)および(II):
【化1】

〔式中、Aは炭素数3〜40のアルキル基であり、XおよびYは、互いに独立して水素またはメチル基であり、Bは水素、硫酸基またはリン酸基であり、nは0〜40の範囲の数である〕
で示される化合物から選択される(メタ)アクリル酸エステルの共重合性乳化剤としての使用。
【請求項2】
Bが水素である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Bが硫酸基またはリン酸基である請求項1に記載の使用。
【請求項4】
硫酸基またはリン酸基Bが中和された状態で存在する請求項3に記載の使用。
【請求項5】
nが1〜20の範囲の数である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
共乳化剤としての請求項1〜5のいずれかに記載の化合物(I)および/または(II)の使用を含む、オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合によるポリマーの製造方法。

【公表番号】特表2012−511061(P2012−511061A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538873(P2011−538873)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008416
【国際公開番号】WO2010/063401
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】