説明

内反フィットルームシューズ

【課題】履くものがない内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者が、心地よく履くことができる、しかも着用しやすいルームシューズの提供。
【解決手段】履きやすく、履かせやすい広い開口部1と、全体が深くて脱げにくい甲部4と、甲部で足全体をしっかりと固定する折り返しベルト3と、足裏の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチ10を付した底部とを備えたことを特徴とする内反フィットルームシューズ。さらに、内甲側より5mm深くした外甲皮部2を備えたこと、上記の底部が、内転に合わせた底のライン9を有していること、トウボックス5が高めでつま先の納まる部分にゆとりがある構造を備えていること、足の外側の擦れと滑りを防止するシューズ底部材と同一の素材の補強布6を外甲側に付していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内反フィットルームシューズに関する。特に、折り返しベルトで足全体をしっかりと固定すること、内反形状に合わせた靴底に斜めの2本のラインを特徴とする内反フィットルームシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
内反足とは足部が内反している状態を指す。内反とは、内がえし(足の裏が内側を向き、通常は足関節が底屈する)の動きを示す。足関節〜足が足底側に曲がり、なおかつ内側に捻れたような状態が内反尖足である。足関節、すなわち足首がピンと伸び(尖足)、足の底が内側を向く(内反)、片マヒ者の患側(マヒのある側)の足に特有の拘縮(関節の動きが制限された状態)をいう。片マヒで共同運動(個々の関節だけを動かそうとしても、付随するほかの関節まで一緒にうごいてしまう、しかもその動き方に一定のパターンがあること)で手足を動かせるという人の場合、下肢では伸ばす動きが強く出現する。そのため、足首はピンと伸び、さらに内反が加わって、特有の拘縮が加わる。歩くときに小指側しか着地できなくなり、さらに足関節の可動域が制限されることでバランスをとる能力も低下するため、歩行に大きな障害となる。内反足のやっかいな点として、履ける靴がなくなるということである。
【0003】
脳卒中片麻痺や腓骨神経麻痺による内反尖足や下垂足、あるいは足の筋力低下による歩行困難が生じた者は、歩行中に転倒しやすい傾向にある。このような障害を有する者の矯正用装具として、例えば特許文献1には短下肢装具に関する発明が記載されている。このような矯正用装具は安全性の高い室内や医療施設内では有効かもしれないが、屋内外の歩行においてこれらの症状を有する者は、転倒事故を起こしやすい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−75178号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な靴は、外履きとして利用することを前提としているため、長時間の着用には必ずしも適していない。内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者は、現状のルームシューズを履く場合、サイズを甲の変形に合わせるために、自分の足のサイズよりかなり大きめのサイズを選ぶしかなかった。足に合っていないルームシューズは、フィット感がなく、足に心地よいものではないという問題があった。また、見た目もかっこ悪く、気がつけば脱げ落ちていたというホールド感が低下するという問題があった。
そこで本発明は、履くものがない内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者が心地よく履くことができる、しかも着用しやすいルームシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)ないし(7)の内反フィットルームシューズを要旨とする。
(1)履きやすく、履かせやすい広い開口部と、全体が深くて脱げにくい甲部と、甲部で足全体をしっかりと固定する折り返しベルトと、足裏の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチを付した底部とを備えたことを特徴とする内反フィットルームシューズ。
(2)さらに、内甲側より5mm深くした外甲皮部を備えたことを特徴とする上記(1)に記載の内反フィットルームシューズ。
(3)上記の底部が、内転に合わせた底のラインを有していることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の内反フィットルームシューズ。
(4)トウボックスが高めでつま先の納まる部分にゆとりがある構造を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
(5)足の外側の擦れと滑りを防止するシューズ底部材と同一の素材の補強布を外甲側に付している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
(6)クッション付き踵を備えていることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
(7)踵に踵つまみを付けている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者が心地よく履くことができる、しかも着用しやすいルームシューズを提供することができる。
また、内反足や内反尖足などに対応すべく、内甲側より5mm深く設計した外甲皮部2を有し、トウボックス5が高めになっているので足指に負担がかかりにくいルームシューズを提供することができる。
また、本発明により、開口部が広く、着脱が容易であり、トウボックス5が高めになっているので足趾への圧迫が軽減され、折り返しベルトにより高いホールド感を実現することができ、布と人工皮革でできているのでルームシューズを簡単に洗濯ができるルームシューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の内反フィットルームシューズのルームシューズ左片足部分の斜視図である。
【図2】本発明の内反フィットルームシューズの左片足部分の底面図である。
【図3】本発明の内反フィットルームシューズのルームシューズ左片足部分の足裏の湾曲にフィットする形状の変形を説明する図面である。
【図4】(a)足裏の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチの機能を説明するイメージ図である。(b)内反のイメージ図である。
【図5】本発明の内反フィットルームシューズの広い履き口(開口部)1と折り返しベルト3と甲全体が深い甲の部分4とから構成される特徴点を説明するための異なる型番の商品写真である。
【符号の説明】
【0009】
1 内反フィットルームシューズの履き口(開口部)
2 5mm深く設計した外甲側の甲皮部
3 折り返しベルト
4 甲の部分(甲皮)
5 足の爪先部を包容可能な甲皮部(トウボックス)
6 外甲側に付けた外側の捩れを防止する補強布
7 クッション付き踵
8 踵つまみ
9 内転に合わせた底のライン
10 足底の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチ
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の内反フィットルームシューズは、内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者のためのルームシューズであり、広い履き口(開口部)1と折り返しベルト3と甲全体が深い甲の部分4とから構成される事を特徴としている。
【0011】
[甲全体が深い甲の部分]
このルームシューズは、内反足や内反尖足などに対応すべく、内甲側より5mm深く設計した外甲皮部2を有しているので、外甲側が脱げ難くなっており、また、トウボックス5が高め(甲部が甲高)になっているので足指に負担がかかりにくい。
甲皮は、布製の甲材を使用している。足をぶつけた場合の衝撃を緩和すべく、クッション性をもたせるのが望ましい。また、フィット感ないしホールド感を維持しながら開口部を更に拡大できるように、伸縮性のある布材で構成するのが好ましいが、布材は特に限定されない。例えば、表生地は綿60%、レーヨン40%のニット生地であり、裏生地はポリエステルの布地からなっている。
甲全体が深い甲の部分はトウボックス5が高めになっている。トウボックスはつま先の甲の厚みのことである。つま先部分の形状は、第1趾〜第5趾があたらない高さがあること、つま先のゆとり(捨て寸)があり足趾が圧迫されない長さがあること、MTP関節が圧迫されない幅があることが大切である。また、足部の変形にも対応できるようトウボックスは充分な高さがとられることが好ましい。甲部が甲高でつま先の納まる部分にゆとりがあることで、つま先がおさまる部分はゆったりとしていて足の先端部に力をかけることができる構造であると言うことが出来、脱ぎ履きが容易である。そればかりか、歩いているときもつま先回りを快適に保つ。履きやすさには、足の先端部に力をかけることができる構造がある必要がある。
甲皮部材には甲ベルトを係止するための係止部として、例えば面ファスナー(ループ群部材)が設けられている。
【0012】
[履き口(開口部]
このルームシューズは、脱ぎ履きが容易な履き口(開口部)のデザインである。歩行時、脱げにくい甲部の深さと形状である。開口部は、甲皮が立ち上がっており、また、シューズの内底の長手方向の大部分を露出させる大きさに構成する。足の腫れやむくみ、内反足や内反尖足の足趾の変形に対応するためには、シューズの内底の長手方向の大部分、例えばシューズの内底の長手方向の約2/3を露出させる大きさの開口部とすることが望ましい。
【0013】
[シューズ底]
底部材は、合成樹脂製の底部材としての人工皮革であり、滑り止め効果を有する。またその内側は、甲被部材の内側の素材と同じである。人工皮革とポリエステルの布地の間には芯材を挟んで補強し、全体で屈曲性を有する底部材を構成している。靴底は、内転(指をたがいに近づけるような動作)に合わせた底のライン9をもつ形状を有し、かつ、内反足や内反尖足の足底の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチ10が施された人工皮革である。
【0014】
[折り返しベルト]
通常、補装具では、その着脱を容易にするため、バックル等の留め金に代えて面ファスナーを用い、皮革調製品製ベルトの裏面に雄雌二種の面ファスナーを縫い合わせ、その一端側を補装具に縫い付けて固定端とし、他端側の自由端を補装具に設けたリングに通して折り返し、その他端側をベルトの固定端側に重ね合わせて雄型面ファスナーと雌型面ファスナーを係合させるようにした、いわゆる折り返しベルト構造が採用されている。
本発明のルームシューズの開閉自在の甲ベルトは、折り返しベルト3で構成されている。折り返しベルト3は、甲部を覆う幅広の部材であり、例えば、甲皮部材と接続される側が広く先端側に向けて先太りとなる形状に構成されており、リングから抜けない構造になっている。甲ベルトの裏面には、甲皮に係止するための係止部として、例えば面ファスナー(フック群部材)が設けられている。甲ベルトは、閉じた状態では、甲皮部材とともに甲部を構成する。甲ベルトを幅広形状とし、高いホールド感を実現することが可能となる。
甲ベルトと甲皮部材を面ファスナー等で係合する構成によれば、手先を使うことが苦手となった高齢者等でも容易に甲ベルトを開閉することが可能である。
【0015】
[補強布]
足の外側の擦れと滑りを防止する補強布付き外甲側6を有する。
このルームシューズは、内反足や内反尖足などに対応すべく、外甲側にシューズ底部材と同一の素材の補強布6で、外甲側を補強し滑り止め効果をもたせている。内反足や内反尖足でその部分(外甲側)が足底となった際の対応である。
【0016】
[クッション付き踵と踵つまみ]
シューズの踵は優しいクッション付き7として、衝撃緩和とクッション性をもたせ、また、フィット感ないしホールド感を維持しながら開口部を更に拡大できるようする機能を有する。また、その踵には介護者が履かせやすい踵つまみ8が付いている。
【0017】
以下では本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
[素材]
甲皮は、布製の甲材を使用している。足をぶつけた場合の衝撃を緩和すべく、クッション性をもたせるのが望ましい。また、フィット感ないしホールド感を維持しながら開口部を更に拡大できるように、伸縮性のある布材で構成するのが好ましい。例えば、表生地は綿60%、レーヨン40%のニット生地であり、裏生地はポリエステルの布地からなっている。底部材は、ナイロン60%、ポリエステル40%の底部材としての人工皮革であり、滑り止め効果を有する。またその内側は、甲被部材の内側の素材と同じである。人工皮革とポリエステルの布地の間には芯材を挟んで補強し、全体で屈曲性を有する底部材を構成している。靴底は、内転(内転が指をたがいに近づけるような動作)に合わせた底のライン9をもつ形状を有し、かつ、内反足や内反尖足の足底の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチ10が施された人工皮革である。
足の外側の擦れと滑りを防止するシューズ底部材と同一の素材の補強布6を外甲側に付している。
【0019】
図1〜5に基づき説明する。本発明の内反フィットルームシューズは、広い履き口(開口部)1と、内甲側より5mm深く設計している外甲側2と、折り返しベルト3と甲全体が深い甲の部分4とから構成される。
折り返しベルト3は、ベルトの裏面に雄雌二種の面ファスナーを縫い合わせ、その一端側を内甲皮部に縫い付けて固定端とし、ベルト生地を外甲皮部に縫い付けた固定端に設けたリングに通して折り返し、その他端側をベルトの固定端側に重ね合わせて雄型面ファスナーと雌型面ファスナーを係合させるようにした。端部を引っ張り締め付けベルトを緊張させ、端部の面ファスナーを甲被表面に噛合させることにより、靴の装着を確実に行なえる。折り返しベルト3の一端を引っ張るのみで甲被全体の締め付け操作ができ、ソフトな感触の布生地で広く大きく作成した甲部全体によって足の甲包み込むように包被され甲に柔らかくフィットする。甲部には締め付け折り返しベルト3に取り付けられた面ファスナーと噛合する面ファスナーが取り付けられている。
【0020】
本発明の内反フィットルームシューズの特徴は以下のとおりである。図面の符号の順番に説明する。
1.開口部1が広いので着脱が簡単である。履きやすく、履かせやすい設計となっている。
2.足が内反すると、外甲側が脱げ易くなるため、外甲側2を内甲側より5mm深く設計している。
3.折り返しベルト3で足全体をしっかりと固定する。
4.甲全体4が深く脱げにくい。深めの甲と折り返しベルトで足全体をしっかりと包み込む設計になっている。
5.トゥボックス5が高め(甲部が甲高)になっているので足指に負担がかかりにくい。
6.足の外側の擦れと滑りを防止する補強布6付き外甲側を有する。
7.踵に優しいクッション付き7となっている。
8.介護者が履かせやすい踵つまみ8が付いている。
9.内転(指をたがいに近づけるような動作)に合わせた底のライン9を有している。
10.足裏の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチ(ミシン目)10を付している。図4に示すように、内反のイメージ図(b)の足裏の湾曲にフィットさせる機能をもたせたダブルステッチ(a)を付している。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のルームシューズは、内反足や内反尖足による歩行困難が生じた者に適したものであり、年令や性別に関係なく全ての層のユーザーを対象としている。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
履きやすく、履かせやすい広い開口部と、全体が深くて脱げにくい甲部と、甲部で足全体をしっかりと固定する折り返しベルトと、足裏の湾曲にフィットさせるためのダブルステッチを付した底部とを備えたことを特徴とする内反フィットルームシューズ。
【請求項2】
さらに、内甲側より5mm深くした外甲皮部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の内反フィットルームシューズ。
【請求項3】
上記の底部が、内転に合わせた底のラインを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の内反フィットルームシューズ。
【請求項4】
トゥボックスが高めでつま先の納まる部分にゆとりがある構造を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
【請求項5】
足の外側の擦れと滑りを防止するシューズ底部材と同一の素材の補強布を外甲側に付している請求項1ないし4のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
【請求項6】
クッション付き踵を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。
【請求項7】
踵に踵つまみを付けている請求項1ないし6のいずれかに記載の内反フィットルームシューズ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78485(P2013−78485A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220416(P2011−220416)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(595019474)徳武産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】