説明

内容物放出用ポンプ機構およびポンプ式製品

【課題】ポンプ式製品において、環境温度の変化によって膨張した容器内部の空気が内容物を加圧し、加圧された内容物が上方弁・下方弁を開放しながら本来の放出通路を経て放出口から液垂れしてしまうのを防止する。
【解決手段】ピストン3と当該ピストンの上動位置設定部材10とが当接する静止モードにおいて、容器内部の膨張した空気が当該当接部分および空気流入出用通路11を経て外部空間に逃げることができるように、当該当接部分に開口部10bを形成した。当該開口部及びその入口側通路域は内容物も通過可能な大きさにしてあるので、膨張した容器内部の空気が内容物を加圧する程度を低くおさえることができ、下方弁(上流弁)に弾性部材を設けて強制的に閉塞状態を維持しなくとも、上方弁・下方弁が開放状態になることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物放出用ポンプ機構において容器内部の減圧を防止するための空気用通路に関し、特に操作部が操作されていない静止モードの容器が倒れたときにも容器内容物が外部空間にこぼれないようにするための(当該空気用通路の)いわば弁作用部分に、容器内容物が通過可能な大きさからなる空気流出用通路域を形成したものである。
【0002】
この空気流出用通路域の形成により、ポンプ容器が置かれている環境の温度が高い状況で静止モードの容器内部の空気が膨張してもそれは空気用通路から外部空間へ積極的に流出することになる。
【0003】
なお、操作部の操作に基づく作動モードでは空気用通路の弁作用部分が開状態になって当該空気用通路から外気が流入することにより、容器内部の減圧を防止している。
【0004】
一般に、弁作用部分が弾性や自重により閉塞するポンプ式製品は、それが置かれている環境の温度が高くなると(例えば使用後の風呂場や夏季の洗面室などに置かれている場合)、容器内部の空気が膨張して内容物を加圧する。そして、このときの圧力により内容物放出通路の途中に配置されている下方弁,上方弁が開状態となる。
【0005】
そうすると、本来は閉状態の下方弁,上方弁の作用により容器内部に閉じ込められているはずの内容物がその本来の放出通路を経て放出口まで移動し、当該放出口から液垂れして「つらら」状の形で固まってしまうことが多く、使い勝手も悪くなってしまう。
【0006】
本発明は、内容物放出用ポンプ機構の放出口におけるこのような「つらら」現象を確実に解消したいという要請に対し、静止モードにおける空気用通路の作用についてのいわば発想の転換に基づく工夫により応えるものである。
【背景技術】
【0007】
静止モードの容器内で膨張した空気を容器内減圧防止用の空気用通路から外部空間に排出することにより、上記液垂れを防止しようとする内容物放出用ポンプ機構は、すでに提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
この内容物放出用ポンプ機構の場合、押下げヘッド(=操作部)と一体になって連動するステム(=ピストン)が案内されるシリンダに設けた外気吸入孔(=減圧防止用孔部)から続く周知の空気用通路の弁作用部分に、容器内部の膨張空気を外部空間に逃がすための空気流出用通路域を確保している。
【0009】
そしてこの空気流出用通路域は「通水不能でかつ通気性を有する微小通路」である。すなわち静止モードにおいて、容器内部の膨張空気は外部空間に逃げるものの、容器が倒れた場合などでも容器内容物は外部空間に漏洩しない程度の大きさからなる「微小通路」である。
【特許文献1】特開平10−181761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本件出願人は、ポンプ式製品の静止モードにおける放出口の「つらら」発生と、容器内部減圧防止用の空気用通路の弁作用部分における空気流出用通路域での空気通過面の大きさとの関係を考察して検証したところ、内容液の特性しだいでは、上述の「微小通路」の大きさでは容器内部の膨張空気を外部空間に十分に流出させることはできず、内容物通路域の放出口における「つらら」発生を防止するのが難しいことを確認した。
【0011】
そして、この「つらら」状態が発生しやすい内容物を入れたポンプ式製品は通常、浴室や洗面台などのように静止モードの容器が倒れて内容物がいくらか漏洩しても簡単に清掃できるような環境で使われることが多い。
【0012】
本発明では、ポンプ式製品におけるこれらの膨張空気流出作用や使用環境に着目して、容器内減圧防止用の空気用通路の弁作用部分での空気流出用通路域の大きさを「容器内容物も通過可能な大きさ」にするといったきわめて有意な発想の転換を行うことにより、静止モードにおける容器内部の膨張空気を空気用通路から外部空間へと積極的に流出させて、内容物放出口での「つらら」生成を極力なくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上の課題を次の内容物放出用ポンプ機構を用いて解決する。
(1)容器内容物を外部空間に放出させるための操作部(例えば後述の操作ボタン1)と連動するとともに、弾性力(例えば後述のコイルスプリング4の弾性力)により静止モード位置の方に付勢されて、内側空間には内容物通路域および下流弁(例えば後述の上方弁2)を有し、外周面には静止モード位置に保持されるための被保持部分(例えば後述の段部3b)を形成した筒状のピストン(例えば後述のピストン3)と、
前記操作部の作動モード設定操作にともなう前記ピストンの往復動作を案内するとともに、前記内容物通路域に通じる内容物収納空間および容器内部に対する減圧防止用孔部(例えば後述の減圧防止用孔部5a)を設けたシリンダ(例えば後述のシリンダ5)と、
前記減圧防止用孔部を外部空間に連通させるための空気用通路(例えば後述の空気流入出用通路11)を前記ピストンの外周面との間に形成するとともに、前記作動モード設定操作に対応した当該ピストンの前記往復動作の途中では前記被保持部分から離間して、また静止モード位置では前記被保持部分に当接する態様の保持部分(例えば後述の間歇状段部10a,受け部分9e)を設けた、筒状のピストン上動位置設定部材(例えば後述のシール用・通路設定用部材10,内筒状部9d)とを備え、
前記ピストンの静止モード位置において当接する前記被保持部分および前記保持部分の少なくとも一方に、この当接状態で容器内部の膨張空気を当該減圧防止用孔部から前記空気用通路を経て外部空間に逃がすための空気流出用通路域(例えば後述の開口部10b,9f)を、容器内容物も通過可能な大きさの態様で形成する
(2)上記(1)において、
前記空気流出用通路域は、
その中の空気流れ方向に対する通過面が少なくとも、前記ピストンの外周面と前記ピストン上動位置設定部材の内周面とのスペース間隔(例えば後述の距離s)で特定される正方形よりも大きく設定されたものとする。
【0014】
本発明は、このような構成からなる内容物放出用ポンプ機構および、これを備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、このように、内容物放出口の「つらら」が生成されやすいポンプ式製品の使用環境(浴室,洗面所など)での漏洩内容物による汚れといった問題がそれほど深刻でないことに鑑み、もともとは容器内減圧防止用である空気(流入用)通路の弁作用部分に形成される空気流出用通路域を「容器内容物も通過可能な大きさ」に設定し、この空気流入用通路を大きな「空気流出用通路」としても積極的に用いるものである。
【0016】
さらには、この空気流出用通路域の空気通過面を「空気流入出用通路」のいわば大きさともいえる「ピストンの外周面とピストン上動位置設定部材の内周面とのスペース間隔」で特定される正方形よりも大きくなる、ように設定している。
【0017】
そのため、静止モードにおける容器内部の膨張空気はこの大きな空気流入出用通路(空気流出用通路域)から外部空間へと積極的に流出していくので、当該膨張空気が内容物を押圧して下流側の方に移動させようとする放出作用がきわめて小さくなり、内容物放出口での「つらら」の発生を抑えることができる。
【0018】
また、このように膨張空気の内容物に対する放出方向への押圧作用が小さいので、ポンプ機構の下方弁(上流弁:図示省略)として上記特許文献で開示されている弾性バネ片付きの弁を用いなくても、当該下方弁が膨張空気の作用で開くこともない。
【0019】
すなわち、下方弁として例えばボール弁を用いるだけでも上記「つらら」の発生を防止可能であり、ポンプ機構の組立作業の簡単化および当該機構のコスト低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1乃至図4を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
ここで、
図1は、出荷・販売段階での減圧防止用孔部に対するシール用部材を設けた内容物放出用ポンプ機構を示し、
図2は、図1の内容物放出用ポンプ機構における静止モード対応の空気通路域(方形状開口部)の大きさを示し、
図3は、出荷・販売段階での減圧防止用孔部に対するシール用部材を省略した内容物放出用ポンプ機構を示し、
図4は、図3の内容物放出用ポンプ機構における静止モード対応の空気通路域(方形状開口部)の大きさを示している。
【0022】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば放出用通路1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0023】
図1および図2において、
1は上下動する操作ボタン,
1aは周知の放出口(図示省略)にいたる内容物の放出用通路,
2はボール状の上方弁(=下流弁),
3は上部が操作ボタン1に嵌合してこれと連動するピストン,
3aは上方弁2に対する環状受面,
3bは外周面の中ほどに形成された環状の段部,
3cは外周面の下端側に形成された上下のシール作用部分(被案内部分)からなる環状のスカート部,
4はピストン3を上方向に付勢するコイルスプリング,
5は容器本体側に固定されてピストン3を案内し、周知の下方弁(下流弁:図示省略)を備えて内容物の収納空間としても作用するシリンダ,
5aは容器内部の負圧化を阻止するための減圧防止用孔部,
5bは上側内周面に形成された環状の段部,
5cは上側外周面に複数形成された環状の凸部,
5dは凸部5cの下側外周面に形成された環状の鍔部,
6はシリンダ5などを収納する容器首部,
7は容器首部6と螺子結合してシリンダ5に対する開口部分を持つキャップ,
7aは上側の開口部分を持つ環状の天板部,
8は鍔部5dの下面部分に当接してその直下のシリンダ外周面と嵌合する環状の平板シール部,
9はシリンダ5の螺子部分5gと螺合してその鍔部5dとの間にキャップ7の天板部7aを保持し、またポンプ式製品の出荷・販売段階においては操作ボタン1を略その最下動位置で螺子係合させて容器が倒れた場合にも内容物が漏洩しないようにするための筒状のカラー部材,
9aは上側外周面に形成された操作ボタン螺合用の外側螺子部分
9bは下側内周面に複数形成されたシリンダ係合用の環状の凹部
9cはシリンダ5との結合状態でその段部5bと当接するリブ状の段部,
10は上下動可能であってピストン3に対する外筒の形で設けられ、上記出荷・販売段階のときはシリンダ5の減圧防止用孔部5a対しての弁作用を呈するとともに、(利用者サイドでの)静止モードや作動モードのときは当該減圧防止用孔部から外部空間にいたる連通用スペース(=後述の空気流入出用通路11)を当該ピストン3の外周面との間に形成する筒状のシール用・通路設定用部材,
10aは内周面の下側に形成されて図示の静止モードのときにピストン3の段部3bと当接する間歇状段部,
10bは間歇状段部10aを構成すべく周方向に等間隔で形成された例えば2〜12個の方形状の開口部(静止モード対応の空気通路域),
10cはその環状上端部がシリンダ5の上側の大径内周面に密接する上側スカート部,
10dはその環状下端部がシリンダ5の下側の小径内周面に密接する下側スカート部,
11は静止モードおよび作動モードのときにシリンダ5の減圧防止用孔部5aと外部空間とを連通させるためのスペースとして作用する空気流入出用通路,
sは空気流入出用通路11の図示横方向の距離(=ピストン3の外周面とこれに対向するシリンダ5の内周面との間隔),
hはシール用・通路設定用部材10の開口部10bの高さ,
wはシール用・通路設定用部材10の開口部10bの直線幅,
をそれぞれ示している。なお、「直線幅」とは開口部10bにおける図面横方向の直線距離の意である。
【0024】
上述の操作ボタン1,ピストン3,シリンダ5,容器首部6,キャップ7,平板シール部8,カラー部材9およびシール用・通路設定用部材10はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。また、上方弁2およびコイルスプリング4は金属製や合成樹脂製のものである。
【0025】
図1および図2のポンプ機構の特徴は、
(11)図示の静止モードにおいてピストン3の段部3bと当接するシール用・通路設定用部材10の部分を間歇状段部10aの態様で形成し、
(12)この間歇状段部10aの構成要素である方形状の開口部10bの高さhおよび直線幅wをそれぞれ、空気流入出用通路11の上記距離sよりも大きな値に設定した、
ことである。
【0026】
これにより、静止モードにおける容器内部の膨張した空気の外部空間への流出動作が確実に行われることになる。
【0027】
これらの距離s,高さhおよび直線幅wはそれぞれ例えば、
・s=0.2mm
・h=0.3〜1.5mm
・w=0.3〜1.5mm
である。このように開口部10bの高さhおよび直線幅はともに距離sよりも大きな値に設定されている。
【0028】
なお、sの値は容器内容物も通過しえる程度の大きさであり、上記値に限定されるものではなく内容物に応じてそれが通りえる範囲で適宜設定される。
【0029】
ここで操作ボタン1およびこれと一体になっているピストン3などの動作自体はこれまでの周知のポンプ機構と同じである。
【0030】
すなわち図示の静止モードにおける操作ボタン1およびピストン3は、コイルスプリング4の弾性力により上方向に付勢され、当該ピストンの段部3bがシール用・通路設定用部材10の間歇状段部10aに当接した状態で停止している。
【0031】
そしてシール用・通路設定用部材10はその上側スカート部10cの上端部分がカラー部材9の下端部分に当接した上動位置に保持されている。
【0032】
このとき減圧防止用孔部5aは、ポンプ式製品の出荷・販売段階よりも上方の位置に移動したシール用・通路設定用部材10の上側スカート部10cおよび下側スカート部10dによってシールされることはない。
【0033】
そのため、容器内部で膨張した空気は減圧防止用孔部5aおよび空気流入出用通路11(シール用・通路設定用部材10の開口部10b)を通って外部空間に流出する。
【0034】
また、上方弁2および下方弁(図示省略)はともに閉じ、これらの弁間のピストン3およびシリンダ5の内部空間域には内容物が入っている。
【0035】
それは、前回の放出操作にともなうピストン3(操作ボタン1)の静止モード位置への復帰動作時に上記内部空間域の容積が増加してそこでの圧力が容器内部よりも減少し、その結果下方弁(図示省略)が開いて容器内部の内容物が当該内部空間域に流入するためである。
【0036】
この内容物流入により容器内部の(内容物が存在していない空間域の)空気圧が減じることになるが、その減少分に見合った量の外気が空気流入出用通路11および減圧防止用孔部5aを通って容器内部に流入する。
【0037】
操作ボタン1がコイルスプリング4の弾性力に抗して押し下げられた状態の作動モードでは、上記弁間のピストン3およびシリンダ5の内部空間域の容積が小さくなるため、そこの内容物圧力が大きくなって上方弁2が開いて当該内部空間域の内容物が放出用通路を経て外部空間に放出される。
【0038】
このとき下方弁(上流弁)は周知のごとく勿論閉じている。また、シール用・通路設定用部材10の上側スカート部10cおよび下側スカート部10dは、それぞれの端部が自身の外方向への弾性付勢力によってシリンダ5の内周面に密接しているので、図示の静止モード位置に保持されたままとなる。
【0039】
そして利用者が操作ボタン1の押圧操作を止めると、当該操作ボタンおよびピストン3はコイルスプリング4の弾性作用により上動して図示の静止モード位置となる。この際に下方弁(上流弁)が開いて上記内部空間域に容器内容物が流入するのは上述のとおりである。
【0040】
なお周知のことであるが、ポンプ式製品の出荷・販売段階における操作ボタン1は、作動モード位置よりも押下げられる形でその内周面とカラー部材9の外側螺子部分とが螺合した状態に設定される。
【0041】
そしてこの螺合状態におけるシール用・通路設定用部材10は、その上端部分が操作ボタン1の天井面に押圧されて図示の位置よりも下方に移動しており、上側スカート部10cおよび下側スカート部10dでシリンダ5の減圧防止用孔部5aをシールした状態になっている。このシール作用により、減圧防止用孔部5aと空気流入出用通路11との間が遮断される。
【0042】
図3の内容物放出用ポンプ機構が図1のそれと相違する点は、概略、
(21)図1のシール用・通路設定用部材10を省略して、
(22)これに代わる通路設定部をカラー部材に形成した、
ことである。
【0043】
図3および図4において新たに用いる参照番号は次の通りであり、
9’は空気流入出用通路11を設定する機能を備えたカラー部材,
9dは当該カラー部材の一部であって静止モードおよび作動モードのときの空気流入出用通路11をピストン3の外周面との間に形成する内筒状部,
9eは当該内筒状部の下端側に形成されて図示の静止モードのときにピストン3の段部3bに当接する受け部分,
9fは当該受け部分の周方向に等間隔で形成された例えば2〜12個の方形状の開口部(静止モード対応の空気通路域),
9gはカラー部材9’を操作ボタン1に完全に螺合させた状態でその天井近くの中側の内周面に当接してシール作用を呈する環状の上端側起立部,
h’は開口部9fの高さ,
w’は開口部9fの上記直線幅,
をそれぞれ示している。
【0044】
ここで開口部9fの大きさはそれぞれ例えば、
・h’=0.3〜1.5mm
・w’=0.3〜1.5mm
である。これらはともに上記sの値より大きく設定されている。
【0045】
図3のポンプ機構の動作自体は図1のそれと同様である。
【0046】
なお、ポンプ式製品の出荷・販売段階、すなわち操作ボタン1をカラー部材9’に螺合させた状態では、(図1のシール用・通路設定用部材10を用いていないが)上端側起立部9gと操作ボタン1の上記内周面との当接作用および外側螺子部分9aと操作ボタン1の内周面螺子部分との結合作用により、空気流入出用通路11と外部空間との間が遮断される。
【0047】
本発明が、図1〜図4で示した形の内容物放出用ポンプ機構に限定されないことは勿論である。
【0048】
例えば静止モード対応の空気通路域としての開口部10b,9fのサイズは、
・当該開口部を容器内容物が通過できる、
・当該開口部の空気流れ方向に対する通過面が、空気流入出用通路11の上記距離sの辺からなる正方形よりも大きなエリアである、
という選択的条件の下で、任意に設定してよい。開口部10b,9fの設定個数も任意である。
【0049】
また、この開口部を、
・(シール用・通路設定用部材10や内筒状部9dではなく)これらと当接するピストン3の部分に形成する、
・シール用・通路設定用部材10,内筒状部9dおよびピストン3の双方に形成する、
ようにしてもよい。
【0050】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、シャンプー,リンス,液体ソープ,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォームなどの各種用途のものがある。
【0051】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0052】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0053】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0054】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0055】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0056】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0057】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0058】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】出荷・販売段階での減圧防止用孔部に対するシール用部材を設けた内容物放出用ポンプ機構を示す説明図である。
【図2】図1の内容物放出用ポンプ機構における静止モード対応の空気通路域(方形状開口部)の大きさを示す説明図である。
【図3】出荷・販売段階での減圧防止用孔部に対するシール用部材を省略した内容物放出用ポンプ機構を示す説明図である。
【図4】図4は、図3の内容物放出用ポンプ機構における静止モード対応の空気通路域(方形状開口部)の大きさを示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1:操作ボタン
1a:放出用通路
2:ボール状の上方弁(=下流弁)
3:ピストン
3a:環状受面
3b:環状の段部
3c:環状のスカート部,
4:コイルスプリング
5:シリンダ
5a:減圧防止用孔部
5b:環状の段部
5c:環状の凸部
5d:環状の鍔部
6:容器首部
7:キャップ
7a:環状の天板部
8:環状の平板シール部
9:筒状のカラー部材
9a:外側螺子部分
9b:環状の凹部
9c:リブ状の段部
10:筒状のシール用・通路設定用部材
10a:間歇状段部
10b:方形状の開口部(静止モード対応の空気通路域)
10c:上側スカート部
10d:下側スカート部
11:空気流入出用通路
s:空気流入出用通路11の図示横方向の距離
h:開口部10bの高さ
w:開口部10bの直線幅
〔以下は図3,図4のみで使用〕
9’:空気流入出用通路11を設定する機能を備えたカラー部材
9d:内筒状部
9e:受け部分
9f:方形状の開口部(静止モード対応の空気通路域)
9g:環状の上端側起立部
h’:開口部9fの高さ
w’:開口部9fの直線幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内容物を外部空間に放出させるための操作部と連動するとともに、弾性力により静止モード位置の方に付勢されて、内側空間には内容物通路域および下流弁を有し、外周面には静止モード位置に保持されるための被保持部分を形成した筒状のピストンと、
前記操作部の作動モード設定操作にともなう前記ピストンの往復動作を案内するとともに、前記内容物通路域に通じる内容物収納空間および容器内部に対する減圧防止用孔部を設けたシリンダと、
前記減圧防止用孔部を外部空間に連通させるための空気用通路を前記ピストンの外周面との間に形成するとともに、前記作動モード設定操作に対応した当該ピストンの前記往復動作の途中では前記被保持部分から離間して、また静止モード位置では前記被保持部分に当接する態様の保持部分を設けた、筒状のピストン上動位置設定部材とを備え、
前記ピストンの静止モード位置において当接する前記被保持部分および前記保持部分の少なくとも一方に、この当接状態で容器内部の膨張空気を当該減圧防止用孔部から前記空気用通路を経て外部空間に逃がすための空気流出用通路域を、容器内容物も通過可能な大きさの態様で形成した、
ことを特徴とする内容物放出用ポンプ機構。
【請求項2】
前記空気流出用通路域は、
その中の空気流れ方向に対する通過面が少なくとも、前記ピストンの外周面と前記ピストン上動位置設定部材の内周面とのスペース間隔で特定される正方形よりも大きく設定されたものである、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出用ポンプ機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内容物放出用ポンプ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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