内張り材の硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法
【課題】本発明は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、この方法を用いた下水道管の更生方法を提供することを目的とする。
【解決手段】内張り材1に接触させることなく、超音波を発信可能な超音波発信用探触子10を配置する。また、内張り材1に接触させることなく、超音波発信用探触子10から離れた位置に、超音波を受信可能な超音波受信用探触子20を配置する。超音波発信用探触子10から内張り材1に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出する。そして、超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形に基づいて内張り材1の硬化状態を推定する。
【解決手段】内張り材1に接触させることなく、超音波を発信可能な超音波発信用探触子10を配置する。また、内張り材1に接触させることなく、超音波発信用探触子10から離れた位置に、超音波を受信可能な超音波受信用探触子20を配置する。超音波発信用探触子10から内張り材1に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出する。そして、超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形に基づいて内張り材1の硬化状態を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、この方法を用いた下水道管の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道管、ガス導管などの主として地中に埋設された配管は、長期間に亘って利用されることで、例えば腐食ガスや地盤沈下等、様々な要因により劣化する。このような劣化した配管を修復する方法として、いわゆる更生工法という工法がある。この工法は例えば劣化した配管内部に硬化性樹脂等を含む内張り材(例えばFRP(Fiber Reinforced Plastic))を挿入し、熱や光等でこの樹脂を硬化させ、配管内面を所定の厚さを有する内張り材で被覆したり、新たなパイプを形成したりすることで配管を更生するものである。
このような更生工法により更生された配管(更生管)においては、施工後の品質管理として、例えば、更生管の内張り材の厚さを検査する検査装置、検査方法が検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3925470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化性樹脂を含む内張り材を用いた更生工法においては、施工後に内張り材に含まれる硬化性樹脂が十分に硬化していない場合は、未硬化部分において劣化しやすくなったり、外圧によって更生管内面に膨れが発生したりする等、更生管の品質が悪化する虞がある。そのため、硬化性樹脂の硬化状態を把握することが重要になる。特に、下水道管においては、硬化性樹脂を硬化させる際に、部分的に水溜り等がある場合は、適切な温度まで加熱できずに未硬化の部分が生じ易く問題となる。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、更生管の内張り材の厚さを検査する方法については従来から検討されているものの、内張り材に含まれる硬化性樹脂の硬化状態を把握するための検査方法についての検討はほとんどなされておらず、確立した検査方法がないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、この方法を用いた下水道管の更生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法に関する。
そして、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の内張り材の硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第1の特徴は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法であって、超音波を発信可能な超音波発信用探触子を、前記内張り材に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信可能な超音波受信用探触子を、前記超音波発信用探触子から離れた位置に、前記内張り材に接触させることなく配置し、前記超音波発信用探触子から前記内張り材に向かって超音波を発信し、当該超音波の前記内張り材内部を透過したエコーを前記超音波受信用探触子で受信し、前記超音波受信用探触子で受信したエコーの波形に基づいて前記内張り材の硬化状態を推定することである。
【0008】
この構成によると、内張り材における、超音波発信用探触子から発信した超音波のエコーが透過して超音波受信用探触子に伝達される経路に未硬化部分が存在する場合は、超音波受信用探触子により、未硬化部分が存在しない場合とは異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確認することができる。
また、内張り材に超音波発信用探触子及び超音波受信用探触子を接触させることなく未硬化部分の有無を確認することができるとともに、超音波が透過する所定の範囲を一度に検査できるので検査の作業効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第2の特徴は、前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、筒状に形成される前記内張り材の周方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の筒軸方向において同位置に配置されていることである。
【0010】
この構成によると、超音波発信用探触子から発信された超音波が内張り材に入射する位置と、筒軸方向において同位置にある内張り材の部分に未硬化部分が存在する場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0011】
また、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第3の特徴は、前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、長手状に形成される前記内張り材の長手方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されていることである。
【0012】
この構成によると、超音波発信用探触子から発信された超音波が内張り材に入射する位置から内張り材の長手方向と平行に超音波受信用探触子の位置まで延びる部分に未硬化部分が存在する場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0013】
また、本発明に係る下水道管の更生方法の特徴は、下水道管の内部に、加熱することにより硬化する未硬化の硬化性樹脂を含む内張り材を挿入し、当該内張り材を硬化させることにより、下水道管を更生する方法において、前記第1の特徴乃至第3の特徴のいずれかの特徴を有する硬化状態検査方法を用いて、当該内張り材の硬化状態を検査しながら、加熱流体を前記内張り材の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱するとともに、前記硬化状態の検査結果に基づいて前記内張り材の加熱条件を制御することを特徴とする下水道管の更生方法。
【0014】
この構成によると、内張り材の硬化状態を把握しながら、内張り材を加熱して硬化することができるため、内張り材が完全に硬化された後、すぐに加熱工程を終了させることができる。また、従来では加熱工程を一度終了し、内張り材の端部を開放しないと未硬化部分の検出が困難であったが、この構成では予め定められた所定時間の加熱工程後に、未硬化部分が検出された場合は、そのまま追加加熱を行って、未硬化部分が残留しないようにすることができる。また、加熱時間の経過により変化する内張り材の硬化状態に適した加熱条件で内張り材の加熱を行うことも可能である。これにより、未硬化の内張り材を加熱硬化する工程を効率よく行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(検査対象について)
図1は、内張り材1が内部に配置された下水道管2を模式的に示す図である。内張り材1は、本発明の硬化状態検査方法による検査対象である。この内張り材1は、例えば、反転工法、形成工法等の下水道管の更生工法を用いて、下水道管2の内面に配されている。尚、内張り材が下水道管内面に接着されて配置される場合もあれば、内張り材が下水道管内面に接着されていない状態で配置される場合もある。
【0017】
ここで、反転工法とは、例えば熱硬化性樹脂を含むホース材料を下水道管内に反転加圧させながら挿入し、下水道管内で加圧状態のまま樹脂を加熱することで、下水道管の内面に当該ホース材料を張り付ける、又は、新たなパイプを形成する工法である。また、形成工法とは、例えば熱硬化性樹脂を含むホース材料を下水道管内に引き込み、空気と蒸気とで当該ホース材料を拡張・加熱し、下水道管の内面に当該ホース材料を張り付ける、又は、新たなパイプを形成する工法である。尚、これらの更生工法において、例えば、紫外線硬化樹脂等の光硬化樹脂を含むホース材料を用いた場合は、紫外線等の光を照射することにより当該樹脂を硬化させてホース材料を下水道管の内面に張り付けたり、パイプを形成したりすることも可能である。
【0018】
この内張り材1は、例えば、増粘させた硬化性樹脂液と繊維材とからなるシート(SMC)や、長繊維材に熱硬化性樹脂液を含浸させた材料により構成される。熱硬化性樹脂として、例えば、約80℃で所定時間加熱することにより硬化する不飽和ポリエステル樹脂が用いられている。また、内張り材1に含まれる繊維材として、例えば、グラスファイバが用いられている。
【0019】
尚、本発明の硬化状態検査方法を用いれば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂が用いられている場合に限らず、エポキシ樹脂等、他の熱硬化性樹脂が用いられている場合であっても、内張り材の硬化状態を検査することができる。また、内張り材1の繊維材として、グラスファイバが用いられている場合に限らず炭素繊維や、アラミド繊維などが用いられている場合であっても、内張り材の硬化状態を検査することができる。更に、内張り材1が光硬化樹脂を含み、光照射により硬化されている場合であっても、その硬化状態を検査することができる。
【0020】
(検査方法)
以下、本発明の実施形態に係る内張り材の硬化状態検査方法について具体的に説明する。
図2は、本発明を実施するために用いる検査装置を設置した状態を示す模式図である。
図2に示すように、検査装置は、超音波発信用探触子10と、超音波受信用探触子20と、これらがケーブルを介して接続される検査装置本体(図示せず)と、を有する。検査対象となる内張り材1は、外径が約300mm、厚さが約5mmとなるように形成したものである。
【0021】
超音波発信用探触子10は、内張り材1に対向する端面から内張り材1の内面におけるA1位置(図2〜図4参照。以下、超音波放射位置A1と称する)に向かって超音波を発信するように設置される。尚、超音波発信用探触子10は、当該超音波が発信される端面が内張り材1の内面から約20mm離れるように設置されている。
【0022】
超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端面を内張り材1の内面に向けて設置されている。これにより、内張り材1側から当該端面に入射する超音波を受信することができる。尚、超音波受信用探触子20は、超音波放射位置A1から内張り材1の内部に入ってそのまま通過し、内張り材1の内面におけるB1位置(図2〜図4参照。以下、超音波受信位置B1と称する)から超音波受信用探触子20の当該端面に向かって進む超音波を少なくとも受信可能に設置されている。
【0023】
そして、検査装置は、超音波受信用探触子20で受信した超音波のエコーの振幅、及び、超音波発信用探触子10により超音波を発信してから超音波受信用探触子20で当該超音波のエコーを受信するまでの時間(以下、伝播時間と称する)を測定することができる。尚、測定したエコーの波形等は、図示しない表示装置等に表示され、作業者が当該エコー波形等を確認可能となっている。
【0024】
本実施形態においては、円筒軸方向(円筒中心軸Cと平行な方向)における超音波放射位置A1から超音波受信位置B1までの間の内張り材1における、円筒中心軸C及び超音波放射位置A1を含む平面による内張り材1の断面であって、超音波放射位置A1を含む断面(後述する図4においてS1で示す断面部分。以下、測定断面S1と称する)に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。尚、以下に示すように、当該測定断面S1に未硬化部分を有さない場合(完全に硬化した状態)の測定結果と比較することで、未硬化部分の有無を確認する。
【0025】
図3は、測定状況を内張り材の円筒軸方向における超音波発信用探触子10側から見た模式図であり、図4は、図3におけるY−Y’断面矢視図(円筒中心軸C及び超音波放射位置A1を含む平面による断面模式図)である。
【0026】
図3に示すように、超音波発信用探触子10は、円筒軸方向から見たときに円筒中心軸Cから半径方向外側に向かう方向に超音波を発信できるように設置される。また、図4に示すように、超音波発信用探触子10は、超音波の発信方向(図中矢印で示す)が超音波受信用探触子20側を向くように、且つ、超音波の発信方向と円筒軸方向との傾きθ1が約45°になるように配置される。また、超音波放射位置A1と超音波受信位置B1との間隔Lが、例えば、約80mmとなるように超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが配置される。
【0027】
また、超音波受信用探触子20は、円筒軸方向から見たときに超音波発信用探触子10と略重なる位置に設置される。また、図4に示すように、超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端部を超音波発信用探触子10側に向け、且つ、超音波受信位置B1から超音波受信用探触子20に向かう方向(図中矢印で示す方向)と円筒軸方向との傾きθ2が、θ1と略同じ(約45°)になるように配置される。
【0028】
図5は、図4におけるX1で示す部分が未硬化である場合に、超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。また、図6は、内張り材1が全ての位置において完全に硬化している場合に超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。
【0029】
図5及び図6において、横軸は超音波の伝播時間(μs)、縦軸は超音波受信用探触子20により受信されたエコーの振幅電圧値(V)である。当該測定結果は、周波数200kHzの超音波を超音波発信用探触子10から発信して測定を行ったものである。
【0030】
図5及び図6に示すように、未硬化部分の有無にかかわらず、伝播時間が50μs以下の領域においては、略同程度の振幅を有する波形W1(第1波形W1)が測定されている。その後、振幅が小さくなり、伝播時間が200μsを経過すると振幅が増加している。特に、200〜300μsの領域に比較的振幅が大きい波形W2(第2波形W2)が測定される。尚、当該第2波形W2は、第1回目の透過波の波形を含んでいる。
当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅は、図5と図6とで異なっている。即ち、未硬化部分を含む場合(図5)は、未硬化部分を含まない場合(図6)に比べ、当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅が小さくなっている。
【0031】
前記測定断面S1に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S1に未硬化部分を含まない場合に比べて、当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅が小さくなる。これにより、当該測定断面S1における未硬化部分の有無を確認することができる。
【0032】
尚、本実施形態においては、200kHzで測定した場合を示したがこの場合に限らず、超音波発信用探触子10の種類を変更することで、発信される超音波の周波数を適宜変更して測定することが可能である。尚、200kHzで測定したこの例では、第2波形W2の波形がより見易く、未硬化部分の有無の確認が容易である。
【0033】
次に、図7〜図10に、硬化条件の異なる4つの内張り材について、上述した実施形態と同様に、超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20を配置して、超音波受信用探触子20により超音波発信用探触子10から発信された超音波のエコーを測定した結果を示す。
【0034】
図7は、70℃で4時間加熱した内張り材の測定結果である。
図8は、図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で1時間加熱したときの測定結果である。
図9は、図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で4時間加熱したときの測定結果である。
図10は、完全に硬化させた内張り材の測定結果である。
尚、図7〜図9に測定結果を示す内張り材は、いずれも未硬化部分を含んでおり、完全硬化には至っていないものである。
【0035】
図7〜図10に示すように、加熱時間が長い内張り材ほど、伝播時間が130〜250μs程度の領域で測定されている第2波形W2の振幅が大きくなっている。即ち、より硬化度合いが高い内張り材ほど、第2波形W2の振幅が大きいといえる。そして、図10に示すように、完全に硬化させた内張り材の第2波形W2の振幅が最も大きくなっている。このように、第2波形W2の振幅の大きさにより、硬化度合いを推定することも可能である。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る内張り材の硬化状態検査方法においては、超音波を発信するための超音波発信用探触子10を、内張り材1の内面に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信するための超音波受信用探触子20を、超音波発信用探触子10から離れた位置に、内張り材1の内面に接触させることなく配置し、超音波発信用探触子10から内張り材1に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出し、超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形に基づいて内張り材1の硬化状態を推定する。
【0037】
この構成によると、内張り材1における、超音波発信用探触子10から発信した超音波のエコーが通過して超音波受信用探触子20に伝達される経路に未硬化部分が存在する場合は、超音波受信用探触子20により、未硬化部分が存在しない場合よりも、振幅の小さいエコーの波形が検出される。これにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確認することができる。
また、内張り材1に超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20を接触させることなく未硬化部分の有無を確認することができるので作業性がよい。
【0038】
また、本実施形態においては、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、長手状に形成される内張り材1の長手方向において離れて配置されるとともに、内張り材1の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されている。更に具体的には、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、円筒軸方向を長手方向とする内張り材1の当該円筒軸方向において離れて配置されるとともに、内張り材1の円周方向において同位置に配置されている。
【0039】
この構成によると、超音波発信用探触子10から発信された超音波が内張り材1に入射する位置である超音波放射位置A1から円筒軸方向と平行に超音波受信用探触子20の位置まで延びる測定断面S1に未硬化部分を含む場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0040】
尚、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20との間を、内張り材1の円筒軸方向において遮るように、遮断部材を設置することができる。これにより、測定ノイズを低減することができる。
【0041】
次に、上記実施形態とは異なる方法で、内張り材の硬化状態を検査した実験結果について説明する。この方法では、内張り材1の外側から超音波を放射し、当該内張り材1の外側で当該超音波を受信することにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確認可能である。
【0042】
図11は、内張り材1の円筒軸方向から見た超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20の配置位置を示す模式図である。尚、内張り材1の外側に下水道管2が配置されていない状態で検査を行った。
【0043】
図11に示すように、超音波発信用探触子10は、内張り材1に対向する端面から超音波を発信できるように設置されている。尚、超音波発信用探触子10は、内張り材1の外周面における所定位置A2(以下、超音波放射位置A2と称する)に向かって超音波が発信されるように設置されている。そして、超音波発信用探触子10は、超音波を発信する方向が、円筒軸方向に対して垂直な方向となるように設置される。また、超音波発信用探触子10は、円筒軸方向から見たときに、円筒中心軸Cに向かって超音波が発信されるように、即ち、超音波放射位置A2における内張り材1の円筒外周面の接線方向と超音波の発信方向が直交するように設置される。
【0044】
また、超音波受信用探触子20は、円筒軸方向において超音波発信用探触子10と略同位置に配置される。そして、当該超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端面を内張り材1の円筒中心軸Cに向けて設置されている。これにより、内張り材1側から当該端面に入射する超音波を受信することができる。尚、超音波受信用探触子20は、内張り材1の外周面におけるB2位置(以下、超音波受信位置B2と称する)から超音波受信用探触子20に向かって進む超音波を少なくとも受信可能に設置されている。尚、超音波受信位置B2が、円筒中心軸Cを中心として、超音波放射位置A2から円周方向に約90°離れた位置となるように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが設置されている。
【0045】
本実施形態においては、内張り材1における超音波放射位置A2を含む円筒中心軸Cに垂直な断面(以下、測定断面S2と称する)に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。尚、以下に示すように、当該測定断面S2に未硬化部分を有さない場合の測定結果と比較することで、未硬化部分の有無を確認する。
【0046】
図12は、図11におけるX2で示す部分が未硬化である場合に、超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。また、図13は、内張り材が全ての位置において完全に硬化している場合に超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。
【0047】
図12及び図13において、横軸は超音波の伝播時間(μs)、縦軸は超音波受信用探触子20により受信されたエコーの振幅電圧値(V)である。当該測定結果は、周波数200kHzの超音波を超音波発信用探触子10から発信して測定を行ったものである。
【0048】
図12及び図13に示すように、未硬化部分の有無にかかわらず、伝播時間が150μs以下の領域においては、略同程度の振幅を有する波形(第1波形W1)が測定されている。その後、振幅が小さくなり、伝播時間が約300μsを経過すると振幅が増加している。特に、300〜450μsの領域に比較的振幅が大きい波形(第2波形W2)が測定される。450μsを経過すると振幅が小さくなり、550μsを超えると、550〜750μsの領域に比較的振幅が大きい波形(第3波形W3)が測定される。
【0049】
当該第3波形W3の振幅は、図12と図13とで大きく異なっている。即ち、未硬化部分を含む場合(図12)は、未硬化部分を含まない場合(図13)に比べ、当該第3波形W3の振幅が小さくなっている。尚、当該第3波形W3以降は、図11に二点鎖線で示す経路I、経路II(内張り材1の内部)を透過してきた複数の波形が重なりあっており、図12、図13とも振幅は大きく、それらの差ははっきりしなくなっている。
【0050】
このように、前記測定断面S2に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S2に未硬化部分を含まない場合に比べて、当該第3波形W3の振幅が小さくなる。これにより、当該測定断面S2における未硬化部分の有無を確認することができる。
【0051】
尚、上記の方法に示したように、超音波受信位置B2が、円筒中心軸Cを中心として、超音波放射位置A2から円周方向に約90°離れた位置となるように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが設置されることにより、特にエコーのピークが見易くなる。
【0052】
この実験例においては、内張り材1の外側から超音波を放射した場合について説明したが、同様に、内張り材1の内側から超音波を放射した場合も、内張り材1の内部を透過する波は、図11の場合と差は無いことから、測定断面S2に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S2に未硬化部分を含まない場合に比べて、超音波受信用探触子20で受信されるエコーの振幅が小さくなると推察できる。
【0053】
即ち、図14に示すように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の内周側において内張り材1の円周方向において離れた位置であって、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して、超音波発信用探触子10からの超音波を超音波受信用探触子20で検出することにより、未硬化部分の有無を確認することが可能である。つまり、内張り材1における、超音波発信用探触子10からの超音波が放射される超音波放射位置を含む円筒中心軸Cに垂直な断面に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。この場合、内張り材1の断面S2を長手方向に連続して測定することが容易であり、特に内張り材1が長い場合には好適である。
【0054】
次に、上記内張り材の硬化状態検査方法を用いた下水道管の更生方法について、図15を用いて説明する。
まず、熱硬化性樹脂を含むホース材料3(未硬化の内張り材)を下水道管2内に引き込む。尚、地上には、当該空気圧縮機4と、ボイラ5と、当該空気圧縮機4及びボイラ5とが接続され、蒸気及び空気を混合できる混合装置6と、が設けられる。そして、当該混合装置6からホース6aを介してホース材料3内に空気と蒸気とが供給される。これにより、ホース材料3を拡張・加熱し、下水道管2の内面に当該ホース材料3を張り付ける。または、新たなパイプを形成する。ホース材料3が拡張した状態を、図15に示している。尚、ホース材料3における、蒸気等供給するホース6a側の端部とは逆側の端部からホース材料3内に挿入されるホース7aは、地上の消音消煙装置7に接続される。
【0055】
図15に示すように、ホース材料3の内側には、検査装置100が挿入される。当該検査装置100は、図2で説明した構成の検査装置における超音波発信用探触子10と、超音波受信用探触子20と、ホース材料3の内部を傷付けず、スムーズに移動可能なゴム製の車輪等の走行手段(図示せず)を備えた検査装置本体とが、一体的に形成されたものである。即ち、検査装置100においては、超音波発信用探触子10がホース材料3の内面に接触することなく配置され、超音波発信用探触子10から円筒軸方向において離れた位置に、超音波受信用探触子20がホース材料3の内面に接触することなく配置され、超音波発信用探触子10からホース材料3に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出可能となっている。尚、検査装置本体は、地上に設けられた表示装置8と無線又は有線により接続されている。これにより、ホース材料3の硬化状態の検査結果(超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形等)を表示装置8に表示させることができる。
【0056】
検査装置100には、ホース材料3の両端に向かってそれぞれ延びる一対のワイヤーロープ101・101の一端が接続されている。そして、当該ワイヤーロープ101・101の他端は、ホース材料3内で当該ホース材料3の円筒軸方向と略平行に延びるとともに、当該ホース材料3の端部から外側に延出し、地上に設けられたウインチ等の牽引装置9・9に接続されている。従って、牽引装置9でワイヤーロープ101の引き込み及び引き出しを行うことで、検査装置100をホース材料3の円筒軸方向へ移動させることが可能である。
【0057】
これにより、空気及び蒸気等からなる高温の流体をホース材料3の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱している最中に、検査装置100をホース材料3の円筒軸方向へ移動させて、ホース材料3の円筒軸方向全域にわたって当該ホース材料3の硬化状態を検査することが可能である。検査結果は、ホース材料3の外側に設けられた表示装置8で確認することができる。作業者は、表示装置8に表示されたホース材料3の硬化状態の検査結果に基づいて、例えば、ホース材料3が全域にわたって完全に硬化した場合は、空気圧縮機4、ボイラ5、混合装置6等を制御して、加熱を停止する。尚、表示装置8に表示された検査結果に基づいて、空気圧縮機4、ボイラ5、混合装置6等を制御して、ホース材料3内に供給する空気及び蒸気の温度、当該空気及び蒸気の供給量等の加熱条件を調整してもよい。
【0058】
このように、本実施形態に係る下水道管の更生方法は、下水道管2の内部に、加熱することにより硬化する未硬化のホース材料3を挿入し、ホース材料3を硬化させることにより、下水道管2を更生する方法(下水道管2の内面を被覆する方法)であって、検査装置100を用いて、ホース材料3の硬化状態を検査しながら、加熱流体としての空気及び蒸気をホース材料3の内面側に供給して未硬化のホース材料3を加熱する。そして、ホース材料3の硬化状態の検査結果に基づいて、ホース材料3の加熱条件を制御するものである。
【0059】
この構成によると、ホース材料3の硬化状態を把握しながら、ホース材料3を加熱して硬化することができるため、ホース材料3が完全に硬化された後、すぐに加熱工程を終了させることができる。また、予め定められた所定時間の加熱工程後に、未硬化部分が検出された場合は、追加加熱を行って、未硬化部分が残留しないようにすることができる。また、時間の経過により変化するホース材料3の硬化状態に適した加熱条件でホース材料3の加熱を行うことも可能である。これにより、未硬化の内張り材を加熱硬化する工程を効率よく行うことが可能となる。
【0060】
尚、検査装置100を、図14で説明した構成の検査装置に変更して実施してもよい。即ち、検査装置100を、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の内周側において内張り材1の円周方向において離れた位置であって、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して、超音波発信用探触子10からの超音波を超音波受信用探触子20で検出することにより、未硬化部分の有無を確認できる検査装置に変更して実施してもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0062】
例えば、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置して長手方向に測定する場合や、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して円周方向に測定する場合に限定されない。例えば、測定方向が長手方向、円周方向以外に、斜め方向となるように構成してもよい。具体的には、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、筒状に形成される内張り材1の筒軸方向において離れて配置されるとともに、周方向において異なる位置(即ち、筒軸方向から見て異なる位置)に配置されるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】内張り材が内部に配置された下水道管を模式的に示す図である。
【図2】本発明を実施するために用いる検査装置を設置した状態を示す模式図である。
【図3】測定状況を内張り材の円筒軸方向から見た模式図である。
【図4】図3におけるY−Y’断面矢視図である。
【図5】未硬化部を有する場合のエコーの波形を示す図である。
【図6】完全に硬化している場合のエコーの波形を示す図である。
【図7】70℃で4時間加熱した内張り材の測定結果である。
【図8】図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で1時間加熱したときの測定結果である。
【図9】図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で4時間加熱したときの測定結果である。
【図10】完全に硬化させた内張り材の測定結果である。
【図11】内張り材の円筒軸方向から見た超音波発信用探触子及び超音波受信用探触子の配置位置を示す模式図である。
【図12】未硬化部分を有する場合のエコーの波形を示す図である。
【図13】完全に硬化している場合のエコーの波形を示す図である。
【図14】他の実施形態を示す模式図である。
【図15】本発明の実施形態に係る下水道管の更生方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 内張り材
2 下水道管
3 ホース材料(内張り材)
10 超音波発信用探触子
20 超音波受信用探触子
100 検査装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、この方法を用いた下水道管の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道管、ガス導管などの主として地中に埋設された配管は、長期間に亘って利用されることで、例えば腐食ガスや地盤沈下等、様々な要因により劣化する。このような劣化した配管を修復する方法として、いわゆる更生工法という工法がある。この工法は例えば劣化した配管内部に硬化性樹脂等を含む内張り材(例えばFRP(Fiber Reinforced Plastic))を挿入し、熱や光等でこの樹脂を硬化させ、配管内面を所定の厚さを有する内張り材で被覆したり、新たなパイプを形成したりすることで配管を更生するものである。
このような更生工法により更生された配管(更生管)においては、施工後の品質管理として、例えば、更生管の内張り材の厚さを検査する検査装置、検査方法が検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3925470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化性樹脂を含む内張り材を用いた更生工法においては、施工後に内張り材に含まれる硬化性樹脂が十分に硬化していない場合は、未硬化部分において劣化しやすくなったり、外圧によって更生管内面に膨れが発生したりする等、更生管の品質が悪化する虞がある。そのため、硬化性樹脂の硬化状態を把握することが重要になる。特に、下水道管においては、硬化性樹脂を硬化させる際に、部分的に水溜り等がある場合は、適切な温度まで加熱できずに未硬化の部分が生じ易く問題となる。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、更生管の内張り材の厚さを検査する方法については従来から検討されているものの、内張り材に含まれる硬化性樹脂の硬化状態を把握するための検査方法についての検討はほとんどなされておらず、確立した検査方法がないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、この方法を用いた下水道管の更生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法に関する。
そして、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の内張り材の硬化状態検査方法、及び、下水道管の更生方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第1の特徴は、下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法であって、超音波を発信可能な超音波発信用探触子を、前記内張り材に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信可能な超音波受信用探触子を、前記超音波発信用探触子から離れた位置に、前記内張り材に接触させることなく配置し、前記超音波発信用探触子から前記内張り材に向かって超音波を発信し、当該超音波の前記内張り材内部を透過したエコーを前記超音波受信用探触子で受信し、前記超音波受信用探触子で受信したエコーの波形に基づいて前記内張り材の硬化状態を推定することである。
【0008】
この構成によると、内張り材における、超音波発信用探触子から発信した超音波のエコーが透過して超音波受信用探触子に伝達される経路に未硬化部分が存在する場合は、超音波受信用探触子により、未硬化部分が存在しない場合とは異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確認することができる。
また、内張り材に超音波発信用探触子及び超音波受信用探触子を接触させることなく未硬化部分の有無を確認することができるとともに、超音波が透過する所定の範囲を一度に検査できるので検査の作業効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第2の特徴は、前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、筒状に形成される前記内張り材の周方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の筒軸方向において同位置に配置されていることである。
【0010】
この構成によると、超音波発信用探触子から発信された超音波が内張り材に入射する位置と、筒軸方向において同位置にある内張り材の部分に未硬化部分が存在する場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0011】
また、本発明に係る内張り材の硬化状態検査方法における第3の特徴は、前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、長手状に形成される前記内張り材の長手方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されていることである。
【0012】
この構成によると、超音波発信用探触子から発信された超音波が内張り材に入射する位置から内張り材の長手方向と平行に超音波受信用探触子の位置まで延びる部分に未硬化部分が存在する場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0013】
また、本発明に係る下水道管の更生方法の特徴は、下水道管の内部に、加熱することにより硬化する未硬化の硬化性樹脂を含む内張り材を挿入し、当該内張り材を硬化させることにより、下水道管を更生する方法において、前記第1の特徴乃至第3の特徴のいずれかの特徴を有する硬化状態検査方法を用いて、当該内張り材の硬化状態を検査しながら、加熱流体を前記内張り材の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱するとともに、前記硬化状態の検査結果に基づいて前記内張り材の加熱条件を制御することを特徴とする下水道管の更生方法。
【0014】
この構成によると、内張り材の硬化状態を把握しながら、内張り材を加熱して硬化することができるため、内張り材が完全に硬化された後、すぐに加熱工程を終了させることができる。また、従来では加熱工程を一度終了し、内張り材の端部を開放しないと未硬化部分の検出が困難であったが、この構成では予め定められた所定時間の加熱工程後に、未硬化部分が検出された場合は、そのまま追加加熱を行って、未硬化部分が残留しないようにすることができる。また、加熱時間の経過により変化する内張り材の硬化状態に適した加熱条件で内張り材の加熱を行うことも可能である。これにより、未硬化の内張り材を加熱硬化する工程を効率よく行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(検査対象について)
図1は、内張り材1が内部に配置された下水道管2を模式的に示す図である。内張り材1は、本発明の硬化状態検査方法による検査対象である。この内張り材1は、例えば、反転工法、形成工法等の下水道管の更生工法を用いて、下水道管2の内面に配されている。尚、内張り材が下水道管内面に接着されて配置される場合もあれば、内張り材が下水道管内面に接着されていない状態で配置される場合もある。
【0017】
ここで、反転工法とは、例えば熱硬化性樹脂を含むホース材料を下水道管内に反転加圧させながら挿入し、下水道管内で加圧状態のまま樹脂を加熱することで、下水道管の内面に当該ホース材料を張り付ける、又は、新たなパイプを形成する工法である。また、形成工法とは、例えば熱硬化性樹脂を含むホース材料を下水道管内に引き込み、空気と蒸気とで当該ホース材料を拡張・加熱し、下水道管の内面に当該ホース材料を張り付ける、又は、新たなパイプを形成する工法である。尚、これらの更生工法において、例えば、紫外線硬化樹脂等の光硬化樹脂を含むホース材料を用いた場合は、紫外線等の光を照射することにより当該樹脂を硬化させてホース材料を下水道管の内面に張り付けたり、パイプを形成したりすることも可能である。
【0018】
この内張り材1は、例えば、増粘させた硬化性樹脂液と繊維材とからなるシート(SMC)や、長繊維材に熱硬化性樹脂液を含浸させた材料により構成される。熱硬化性樹脂として、例えば、約80℃で所定時間加熱することにより硬化する不飽和ポリエステル樹脂が用いられている。また、内張り材1に含まれる繊維材として、例えば、グラスファイバが用いられている。
【0019】
尚、本発明の硬化状態検査方法を用いれば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂が用いられている場合に限らず、エポキシ樹脂等、他の熱硬化性樹脂が用いられている場合であっても、内張り材の硬化状態を検査することができる。また、内張り材1の繊維材として、グラスファイバが用いられている場合に限らず炭素繊維や、アラミド繊維などが用いられている場合であっても、内張り材の硬化状態を検査することができる。更に、内張り材1が光硬化樹脂を含み、光照射により硬化されている場合であっても、その硬化状態を検査することができる。
【0020】
(検査方法)
以下、本発明の実施形態に係る内張り材の硬化状態検査方法について具体的に説明する。
図2は、本発明を実施するために用いる検査装置を設置した状態を示す模式図である。
図2に示すように、検査装置は、超音波発信用探触子10と、超音波受信用探触子20と、これらがケーブルを介して接続される検査装置本体(図示せず)と、を有する。検査対象となる内張り材1は、外径が約300mm、厚さが約5mmとなるように形成したものである。
【0021】
超音波発信用探触子10は、内張り材1に対向する端面から内張り材1の内面におけるA1位置(図2〜図4参照。以下、超音波放射位置A1と称する)に向かって超音波を発信するように設置される。尚、超音波発信用探触子10は、当該超音波が発信される端面が内張り材1の内面から約20mm離れるように設置されている。
【0022】
超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端面を内張り材1の内面に向けて設置されている。これにより、内張り材1側から当該端面に入射する超音波を受信することができる。尚、超音波受信用探触子20は、超音波放射位置A1から内張り材1の内部に入ってそのまま通過し、内張り材1の内面におけるB1位置(図2〜図4参照。以下、超音波受信位置B1と称する)から超音波受信用探触子20の当該端面に向かって進む超音波を少なくとも受信可能に設置されている。
【0023】
そして、検査装置は、超音波受信用探触子20で受信した超音波のエコーの振幅、及び、超音波発信用探触子10により超音波を発信してから超音波受信用探触子20で当該超音波のエコーを受信するまでの時間(以下、伝播時間と称する)を測定することができる。尚、測定したエコーの波形等は、図示しない表示装置等に表示され、作業者が当該エコー波形等を確認可能となっている。
【0024】
本実施形態においては、円筒軸方向(円筒中心軸Cと平行な方向)における超音波放射位置A1から超音波受信位置B1までの間の内張り材1における、円筒中心軸C及び超音波放射位置A1を含む平面による内張り材1の断面であって、超音波放射位置A1を含む断面(後述する図4においてS1で示す断面部分。以下、測定断面S1と称する)に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。尚、以下に示すように、当該測定断面S1に未硬化部分を有さない場合(完全に硬化した状態)の測定結果と比較することで、未硬化部分の有無を確認する。
【0025】
図3は、測定状況を内張り材の円筒軸方向における超音波発信用探触子10側から見た模式図であり、図4は、図3におけるY−Y’断面矢視図(円筒中心軸C及び超音波放射位置A1を含む平面による断面模式図)である。
【0026】
図3に示すように、超音波発信用探触子10は、円筒軸方向から見たときに円筒中心軸Cから半径方向外側に向かう方向に超音波を発信できるように設置される。また、図4に示すように、超音波発信用探触子10は、超音波の発信方向(図中矢印で示す)が超音波受信用探触子20側を向くように、且つ、超音波の発信方向と円筒軸方向との傾きθ1が約45°になるように配置される。また、超音波放射位置A1と超音波受信位置B1との間隔Lが、例えば、約80mmとなるように超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが配置される。
【0027】
また、超音波受信用探触子20は、円筒軸方向から見たときに超音波発信用探触子10と略重なる位置に設置される。また、図4に示すように、超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端部を超音波発信用探触子10側に向け、且つ、超音波受信位置B1から超音波受信用探触子20に向かう方向(図中矢印で示す方向)と円筒軸方向との傾きθ2が、θ1と略同じ(約45°)になるように配置される。
【0028】
図5は、図4におけるX1で示す部分が未硬化である場合に、超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。また、図6は、内張り材1が全ての位置において完全に硬化している場合に超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。
【0029】
図5及び図6において、横軸は超音波の伝播時間(μs)、縦軸は超音波受信用探触子20により受信されたエコーの振幅電圧値(V)である。当該測定結果は、周波数200kHzの超音波を超音波発信用探触子10から発信して測定を行ったものである。
【0030】
図5及び図6に示すように、未硬化部分の有無にかかわらず、伝播時間が50μs以下の領域においては、略同程度の振幅を有する波形W1(第1波形W1)が測定されている。その後、振幅が小さくなり、伝播時間が200μsを経過すると振幅が増加している。特に、200〜300μsの領域に比較的振幅が大きい波形W2(第2波形W2)が測定される。尚、当該第2波形W2は、第1回目の透過波の波形を含んでいる。
当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅は、図5と図6とで異なっている。即ち、未硬化部分を含む場合(図5)は、未硬化部分を含まない場合(図6)に比べ、当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅が小さくなっている。
【0031】
前記測定断面S1に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S1に未硬化部分を含まない場合に比べて、当該第2波形W2の振幅、及び、第2波形W2が観測された後に観測される波形の振幅が小さくなる。これにより、当該測定断面S1における未硬化部分の有無を確認することができる。
【0032】
尚、本実施形態においては、200kHzで測定した場合を示したがこの場合に限らず、超音波発信用探触子10の種類を変更することで、発信される超音波の周波数を適宜変更して測定することが可能である。尚、200kHzで測定したこの例では、第2波形W2の波形がより見易く、未硬化部分の有無の確認が容易である。
【0033】
次に、図7〜図10に、硬化条件の異なる4つの内張り材について、上述した実施形態と同様に、超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20を配置して、超音波受信用探触子20により超音波発信用探触子10から発信された超音波のエコーを測定した結果を示す。
【0034】
図7は、70℃で4時間加熱した内張り材の測定結果である。
図8は、図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で1時間加熱したときの測定結果である。
図9は、図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で4時間加熱したときの測定結果である。
図10は、完全に硬化させた内張り材の測定結果である。
尚、図7〜図9に測定結果を示す内張り材は、いずれも未硬化部分を含んでおり、完全硬化には至っていないものである。
【0035】
図7〜図10に示すように、加熱時間が長い内張り材ほど、伝播時間が130〜250μs程度の領域で測定されている第2波形W2の振幅が大きくなっている。即ち、より硬化度合いが高い内張り材ほど、第2波形W2の振幅が大きいといえる。そして、図10に示すように、完全に硬化させた内張り材の第2波形W2の振幅が最も大きくなっている。このように、第2波形W2の振幅の大きさにより、硬化度合いを推定することも可能である。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る内張り材の硬化状態検査方法においては、超音波を発信するための超音波発信用探触子10を、内張り材1の内面に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信するための超音波受信用探触子20を、超音波発信用探触子10から離れた位置に、内張り材1の内面に接触させることなく配置し、超音波発信用探触子10から内張り材1に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出し、超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形に基づいて内張り材1の硬化状態を推定する。
【0037】
この構成によると、内張り材1における、超音波発信用探触子10から発信した超音波のエコーが通過して超音波受信用探触子20に伝達される経路に未硬化部分が存在する場合は、超音波受信用探触子20により、未硬化部分が存在しない場合よりも、振幅の小さいエコーの波形が検出される。これにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確認することができる。
また、内張り材1に超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20を接触させることなく未硬化部分の有無を確認することができるので作業性がよい。
【0038】
また、本実施形態においては、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、長手状に形成される内張り材1の長手方向において離れて配置されるとともに、内張り材1の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されている。更に具体的には、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、円筒軸方向を長手方向とする内張り材1の当該円筒軸方向において離れて配置されるとともに、内張り材1の円周方向において同位置に配置されている。
【0039】
この構成によると、超音波発信用探触子10から発信された超音波が内張り材1に入射する位置である超音波放射位置A1から円筒軸方向と平行に超音波受信用探触子20の位置まで延びる測定断面S1に未硬化部分を含む場合は、未硬化部分が存在しない場合とは顕著に異なるエコーの波形が検出される。これにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確実に確認することができる。
【0040】
尚、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20との間を、内張り材1の円筒軸方向において遮るように、遮断部材を設置することができる。これにより、測定ノイズを低減することができる。
【0041】
次に、上記実施形態とは異なる方法で、内張り材の硬化状態を検査した実験結果について説明する。この方法では、内張り材1の外側から超音波を放射し、当該内張り材1の外側で当該超音波を受信することにより、内張り材1における未硬化部分の有無を確認可能である。
【0042】
図11は、内張り材1の円筒軸方向から見た超音波発信用探触子10及び超音波受信用探触子20の配置位置を示す模式図である。尚、内張り材1の外側に下水道管2が配置されていない状態で検査を行った。
【0043】
図11に示すように、超音波発信用探触子10は、内張り材1に対向する端面から超音波を発信できるように設置されている。尚、超音波発信用探触子10は、内張り材1の外周面における所定位置A2(以下、超音波放射位置A2と称する)に向かって超音波が発信されるように設置されている。そして、超音波発信用探触子10は、超音波を発信する方向が、円筒軸方向に対して垂直な方向となるように設置される。また、超音波発信用探触子10は、円筒軸方向から見たときに、円筒中心軸Cに向かって超音波が発信されるように、即ち、超音波放射位置A2における内張り材1の円筒外周面の接線方向と超音波の発信方向が直交するように設置される。
【0044】
また、超音波受信用探触子20は、円筒軸方向において超音波発信用探触子10と略同位置に配置される。そして、当該超音波受信用探触子20は、超音波を受信可能な端面を内張り材1の円筒中心軸Cに向けて設置されている。これにより、内張り材1側から当該端面に入射する超音波を受信することができる。尚、超音波受信用探触子20は、内張り材1の外周面におけるB2位置(以下、超音波受信位置B2と称する)から超音波受信用探触子20に向かって進む超音波を少なくとも受信可能に設置されている。尚、超音波受信位置B2が、円筒中心軸Cを中心として、超音波放射位置A2から円周方向に約90°離れた位置となるように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが設置されている。
【0045】
本実施形態においては、内張り材1における超音波放射位置A2を含む円筒中心軸Cに垂直な断面(以下、測定断面S2と称する)に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。尚、以下に示すように、当該測定断面S2に未硬化部分を有さない場合の測定結果と比較することで、未硬化部分の有無を確認する。
【0046】
図12は、図11におけるX2で示す部分が未硬化である場合に、超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。また、図13は、内張り材が全ての位置において完全に硬化している場合に超音波受信用探触子20が超音波発信用探触子10から受信する超音波のエコーの波形を示す図である。
【0047】
図12及び図13において、横軸は超音波の伝播時間(μs)、縦軸は超音波受信用探触子20により受信されたエコーの振幅電圧値(V)である。当該測定結果は、周波数200kHzの超音波を超音波発信用探触子10から発信して測定を行ったものである。
【0048】
図12及び図13に示すように、未硬化部分の有無にかかわらず、伝播時間が150μs以下の領域においては、略同程度の振幅を有する波形(第1波形W1)が測定されている。その後、振幅が小さくなり、伝播時間が約300μsを経過すると振幅が増加している。特に、300〜450μsの領域に比較的振幅が大きい波形(第2波形W2)が測定される。450μsを経過すると振幅が小さくなり、550μsを超えると、550〜750μsの領域に比較的振幅が大きい波形(第3波形W3)が測定される。
【0049】
当該第3波形W3の振幅は、図12と図13とで大きく異なっている。即ち、未硬化部分を含む場合(図12)は、未硬化部分を含まない場合(図13)に比べ、当該第3波形W3の振幅が小さくなっている。尚、当該第3波形W3以降は、図11に二点鎖線で示す経路I、経路II(内張り材1の内部)を透過してきた複数の波形が重なりあっており、図12、図13とも振幅は大きく、それらの差ははっきりしなくなっている。
【0050】
このように、前記測定断面S2に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S2に未硬化部分を含まない場合に比べて、当該第3波形W3の振幅が小さくなる。これにより、当該測定断面S2における未硬化部分の有無を確認することができる。
【0051】
尚、上記の方法に示したように、超音波受信位置B2が、円筒中心軸Cを中心として、超音波放射位置A2から円周方向に約90°離れた位置となるように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが設置されることにより、特にエコーのピークが見易くなる。
【0052】
この実験例においては、内張り材1の外側から超音波を放射した場合について説明したが、同様に、内張り材1の内側から超音波を放射した場合も、内張り材1の内部を透過する波は、図11の場合と差は無いことから、測定断面S2に未硬化部分を含む場合は、当該測定断面S2に未硬化部分を含まない場合に比べて、超音波受信用探触子20で受信されるエコーの振幅が小さくなると推察できる。
【0053】
即ち、図14に示すように、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の内周側において内張り材1の円周方向において離れた位置であって、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して、超音波発信用探触子10からの超音波を超音波受信用探触子20で検出することにより、未硬化部分の有無を確認することが可能である。つまり、内張り材1における、超音波発信用探触子10からの超音波が放射される超音波放射位置を含む円筒中心軸Cに垂直な断面に未硬化部分が含まれるか否かを確認することができる。この場合、内張り材1の断面S2を長手方向に連続して測定することが容易であり、特に内張り材1が長い場合には好適である。
【0054】
次に、上記内張り材の硬化状態検査方法を用いた下水道管の更生方法について、図15を用いて説明する。
まず、熱硬化性樹脂を含むホース材料3(未硬化の内張り材)を下水道管2内に引き込む。尚、地上には、当該空気圧縮機4と、ボイラ5と、当該空気圧縮機4及びボイラ5とが接続され、蒸気及び空気を混合できる混合装置6と、が設けられる。そして、当該混合装置6からホース6aを介してホース材料3内に空気と蒸気とが供給される。これにより、ホース材料3を拡張・加熱し、下水道管2の内面に当該ホース材料3を張り付ける。または、新たなパイプを形成する。ホース材料3が拡張した状態を、図15に示している。尚、ホース材料3における、蒸気等供給するホース6a側の端部とは逆側の端部からホース材料3内に挿入されるホース7aは、地上の消音消煙装置7に接続される。
【0055】
図15に示すように、ホース材料3の内側には、検査装置100が挿入される。当該検査装置100は、図2で説明した構成の検査装置における超音波発信用探触子10と、超音波受信用探触子20と、ホース材料3の内部を傷付けず、スムーズに移動可能なゴム製の車輪等の走行手段(図示せず)を備えた検査装置本体とが、一体的に形成されたものである。即ち、検査装置100においては、超音波発信用探触子10がホース材料3の内面に接触することなく配置され、超音波発信用探触子10から円筒軸方向において離れた位置に、超音波受信用探触子20がホース材料3の内面に接触することなく配置され、超音波発信用探触子10からホース材料3に向かって発信した超音波のエコーを超音波受信用探触子20で検出可能となっている。尚、検査装置本体は、地上に設けられた表示装置8と無線又は有線により接続されている。これにより、ホース材料3の硬化状態の検査結果(超音波受信用探触子20で検出したエコーの波形等)を表示装置8に表示させることができる。
【0056】
検査装置100には、ホース材料3の両端に向かってそれぞれ延びる一対のワイヤーロープ101・101の一端が接続されている。そして、当該ワイヤーロープ101・101の他端は、ホース材料3内で当該ホース材料3の円筒軸方向と略平行に延びるとともに、当該ホース材料3の端部から外側に延出し、地上に設けられたウインチ等の牽引装置9・9に接続されている。従って、牽引装置9でワイヤーロープ101の引き込み及び引き出しを行うことで、検査装置100をホース材料3の円筒軸方向へ移動させることが可能である。
【0057】
これにより、空気及び蒸気等からなる高温の流体をホース材料3の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱している最中に、検査装置100をホース材料3の円筒軸方向へ移動させて、ホース材料3の円筒軸方向全域にわたって当該ホース材料3の硬化状態を検査することが可能である。検査結果は、ホース材料3の外側に設けられた表示装置8で確認することができる。作業者は、表示装置8に表示されたホース材料3の硬化状態の検査結果に基づいて、例えば、ホース材料3が全域にわたって完全に硬化した場合は、空気圧縮機4、ボイラ5、混合装置6等を制御して、加熱を停止する。尚、表示装置8に表示された検査結果に基づいて、空気圧縮機4、ボイラ5、混合装置6等を制御して、ホース材料3内に供給する空気及び蒸気の温度、当該空気及び蒸気の供給量等の加熱条件を調整してもよい。
【0058】
このように、本実施形態に係る下水道管の更生方法は、下水道管2の内部に、加熱することにより硬化する未硬化のホース材料3を挿入し、ホース材料3を硬化させることにより、下水道管2を更生する方法(下水道管2の内面を被覆する方法)であって、検査装置100を用いて、ホース材料3の硬化状態を検査しながら、加熱流体としての空気及び蒸気をホース材料3の内面側に供給して未硬化のホース材料3を加熱する。そして、ホース材料3の硬化状態の検査結果に基づいて、ホース材料3の加熱条件を制御するものである。
【0059】
この構成によると、ホース材料3の硬化状態を把握しながら、ホース材料3を加熱して硬化することができるため、ホース材料3が完全に硬化された後、すぐに加熱工程を終了させることができる。また、予め定められた所定時間の加熱工程後に、未硬化部分が検出された場合は、追加加熱を行って、未硬化部分が残留しないようにすることができる。また、時間の経過により変化するホース材料3の硬化状態に適した加熱条件でホース材料3の加熱を行うことも可能である。これにより、未硬化の内張り材を加熱硬化する工程を効率よく行うことが可能となる。
【0060】
尚、検査装置100を、図14で説明した構成の検査装置に変更して実施してもよい。即ち、検査装置100を、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の内周側において内張り材1の円周方向において離れた位置であって、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して、超音波発信用探触子10からの超音波を超音波受信用探触子20で検出することにより、未硬化部分の有無を確認できる検査装置に変更して実施してもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0062】
例えば、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とを、内張り材1の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置して長手方向に測定する場合や、内張り材1の円筒軸方向において同位置となるように配置して円周方向に測定する場合に限定されない。例えば、測定方向が長手方向、円周方向以外に、斜め方向となるように構成してもよい。具体的には、超音波発信用探触子10と超音波受信用探触子20とが、筒状に形成される内張り材1の筒軸方向において離れて配置されるとともに、周方向において異なる位置(即ち、筒軸方向から見て異なる位置)に配置されるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】内張り材が内部に配置された下水道管を模式的に示す図である。
【図2】本発明を実施するために用いる検査装置を設置した状態を示す模式図である。
【図3】測定状況を内張り材の円筒軸方向から見た模式図である。
【図4】図3におけるY−Y’断面矢視図である。
【図5】未硬化部を有する場合のエコーの波形を示す図である。
【図6】完全に硬化している場合のエコーの波形を示す図である。
【図7】70℃で4時間加熱した内張り材の測定結果である。
【図8】図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で1時間加熱したときの測定結果である。
【図9】図7に示す内張り材と同じ条件で加熱した内張り材を更に、80℃で4時間加熱したときの測定結果である。
【図10】完全に硬化させた内張り材の測定結果である。
【図11】内張り材の円筒軸方向から見た超音波発信用探触子及び超音波受信用探触子の配置位置を示す模式図である。
【図12】未硬化部分を有する場合のエコーの波形を示す図である。
【図13】完全に硬化している場合のエコーの波形を示す図である。
【図14】他の実施形態を示す模式図である。
【図15】本発明の実施形態に係る下水道管の更生方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 内張り材
2 下水道管
3 ホース材料(内張り材)
10 超音波発信用探触子
20 超音波受信用探触子
100 検査装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法であって、
超音波を発信可能な超音波発信用探触子を、前記内張り材に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信可能な超音波受信用探触子を、前記超音波発信用探触子から離れた位置に、前記内張り材に接触させることなく配置し、
前記超音波発信用探触子から前記内張り材に向かって超音波を発信し、当該超音波の前記内張り材内部を透過したエコーを前記超音波受信用探触子で受信し、
前記超音波受信用探触子で受信したエコーの波形に基づいて前記内張り材の硬化状態を推定することを特徴とする内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項2】
前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、筒状に形成される前記内張り材の周方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の筒軸方向において同位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項3】
前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、長手状に形成される前記内張り材の長手方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項4】
下水道管の内部に、加熱することにより硬化する未硬化の硬化性樹脂を含む内張り材を挿入し、当該内張り材を硬化させることにより、下水道管を更生する方法において、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の硬化状態検査方法を用いて、当該内張り材の硬化状態を検査しながら、加熱流体を前記内張り材の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱するとともに、前記硬化状態の検査結果に基づいて前記内張り材の加熱条件を制御することを特徴とする下水道管の更生方法。
【請求項1】
下水道管の内部に配置された硬化性樹脂を含む内張り材の硬化状態を検査するための硬化状態検査方法であって、
超音波を発信可能な超音波発信用探触子を、前記内張り材に接触させることなく配置するとともに、超音波を受信可能な超音波受信用探触子を、前記超音波発信用探触子から離れた位置に、前記内張り材に接触させることなく配置し、
前記超音波発信用探触子から前記内張り材に向かって超音波を発信し、当該超音波の前記内張り材内部を透過したエコーを前記超音波受信用探触子で受信し、
前記超音波受信用探触子で受信したエコーの波形に基づいて前記内張り材の硬化状態を推定することを特徴とする内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項2】
前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、筒状に形成される前記内張り材の周方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の筒軸方向において同位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項3】
前記超音波発信用探触子と前記超音波受信用探触子とが、長手状に形成される前記内張り材の長手方向において離れて配置されるとともに、前記内張り材の長手方向と平行に延びる同一軸線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内張り材の硬化状態検査方法。
【請求項4】
下水道管の内部に、加熱することにより硬化する未硬化の硬化性樹脂を含む内張り材を挿入し、当該内張り材を硬化させることにより、下水道管を更生する方法において、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の硬化状態検査方法を用いて、当該内張り材の硬化状態を検査しながら、加熱流体を前記内張り材の内面側に供給して未硬化の前記内張り材を加熱するとともに、前記硬化状態の検査結果に基づいて前記内張り材の加熱条件を制御することを特徴とする下水道管の更生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−250755(P2009−250755A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98274(P2008−98274)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】
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