説明

内燃機関のためのピストン

本発明は、内燃機関のためのピストン(10,110,210,310,410)であって、少なくとも1つの燃焼噴流にさらされるピストン頂部(12)を含むピストンヘッド(11)及びピストンスカート部(17)から成っており、ピストンヘッド(11)とピストンスカート部(17)とは、互いに結合された構成ユニットとして形成されていて、環状の外側の冷却通路(27)を画成している形式のものに関する。本発明に基づき、冷却通路(27)内には、ピストン頂部(12)に対して平行に配置された環状の仕切り壁(35,135,235,335,435)を設けてあり、仕切り壁はノズル状の1つ若しくは複数の開口部(37,45,137,237,337,437)を備えており、開口部は、開口部から流出する噴出流をピストン頂部(12)の下面(12a)に向けるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のためのピストンであって、少なくとも1つの燃焼噴流にさらされるピストン頂部を含むピストンヘッド及び、ピストンピンの受容のためのピストンボスを含むピストンスカート部から成っており、この場合に前記ピストンヘッドと前記ピストンスカート部とは、互いに結合された構成ユニットとして形成されていて、環状の外側の冷却通路を画成している形式のものに関する。
【0002】
燃焼室の構成部分として、ピストン頂部は高温の燃焼ガスの燃焼噴流によって直接に負荷を受けており、燃焼噴流は局所的な温度ピークを生ぜしめている。ピストン頂部の不均一な温度分布に起因する負荷を減少させるために、ピストン頂部は、ピストン頂部の下面に向けられた冷却油によって冷却されるようになっている。この場合に、冷却作用をいわゆるシェーカー効果によって高めようとしている。このために、ドイツ連邦共和国特許出願公告第4018252C1号明細書に記載の手段では、外側の冷却通路内に環状の案内部材を配置し、案内部材は、冷却通路内に流入する冷却油をピストン頂部の下面に向けるようになっている。欧州特許出願公告第1185774B1号明細書に記載のピストンは、ピストンスカート部に向かって開いた冷却通路を備えており、冷却通路は複雑な構造の環状の壁部分によって閉じられており、壁部分は軸線方向で冷却通路内へ延びる横壁を有しており、横壁は冷却油をシェーカー効果の活用のために冷却通路内へ案内するようになっている。ドイツ連邦共和国特許出願公開第10214830A1号明細書に開示のピストンは、同じくピストンスカート部に向かって開いた冷却通路を備えており、冷却通路はカバーによって閉じられており、カバーは油入口を有している。
【0003】
本発明の課題は、内燃機関のためのピストンを改善して、冷却通路内に供給された冷却油の冷却効果をさらに高めることである。
【0004】
本発明の課題を解決するために、本発明の構成では冷却通路内に、環状の仕切り壁(分離壁)を設けてあり、該仕切り壁はピストン頂部に対して平行に配置されていて、ノズル状の1つ若しくは複数の開口部を備えており、該開口部は、該開口部から流出する噴出流をピストン頂部の下面に向けるように配置されている。
【0005】
本発明に基づく前記構成により、冷却油を意図的にピストン頂部の下面に向けることができるようになっている。これによって、ピストン頂部の下面を冷却油で濡らすために、シェーカー効果(シェーカー作用)だけに頼らなくなっている。シェーカー効果は、本発明の構成では冷却油をノズル状の開口部からある程度の高い速度で流出させるために補助的に用いられている。冷却油噴出流の方向は、ノズル状の開口部の形状及び/又は配置によって規定されるようになっている。流出する冷却油は、外側の冷却通路から流出する前に、若しくは中央の冷却室への貫通開口部を経て流れる前に慣用のシェーカー効果を受けるようになっている。
【0006】
特に有利な実施態様では、ノズル状の開口部から流出する噴出流は、ピストン頂部の下面の、燃焼噴流にさらされるピストン頂部の領域と相対する領域に向けられている。これによって、ピストン頂部に生じる温度ピークを意図的に減少させて、早期の材料疲労のおそれを避けることができるようになっている。
【0007】
本発明の実施態様では仕切り壁は冷却通路の、ピストンスカート部によって画成された部分内に配置されている。これによって、仕切り壁の下側に存在する空間(室)は容積が比較的に小さくなっており、その結果、良好な冷却作用を達成するために比較的にわずかな冷却油しか必要としなくなっている。この場合に特に有利には、仕切り壁の下側に存在する空間は冷却油で完全に満たされており、その結果、ノズル状の開口部には高い冷却油圧力が作用して、冷却油噴出流はノズル状の開口部からの流出に際して最適に加速されるようになっている。
【0008】
本発明の別の実施態様では、ピストンヘッドは外側の接触面及び内側の接触面を備えており、シリンダースカート部は、ピストンヘッドの外側の接触面及び内側の接触面と合致(相応)する外側の支持面及び内側の支持部を備えており、この場合に仕切り壁は、ピストンヘッドの外側若しくは内側の接触面とシリンダースカート部の外側若しくは内側の支持部との間に配置されており、その結果、仕切り壁を特に簡単に組み付けることができるようになっている。
【0009】
本発明の別の実施態様では、仕切り壁を内側の接触面と内側の支持部との間に配置してあり、これによって外側周面間に、つまり仕切り壁の外側の縁部領域と冷却通路の外壁との間に環状の間隙を形成してあり、該間隙を通って冷却油は仕切り壁の下側の領域(空間)内へ戻るようになっている。
【0010】
本発明の別の実施態様では、仕切り壁を外側の接触面と外側の支持部との間に配置してあり、この場合には、内側周面間に、つまり仕切り壁の内側の縁部領域と冷却通路の内壁との間に環状の間隙を形成してあり、該間隙を通って冷却油は仕切り壁の下側の領域(空間)内へ戻るようになっている。
【0011】
特に閉じられたピストンの場合には、仕切り壁は、ピストンヘッド若しくはピストンスカート部内に組み込まれた壁部分として形成されており、壁部分はピストンの製造時に一緒に鋳造成形される。
【0012】
少なくとも1つのノズル状の開口部は、簡単な構成では仕切り壁若しくは壁部分内に配置された孔又は穿孔として形成されている。特に効果的な冷却作用は、ノズル状の開口部をノズル部材によって形成してある場合に得られる。このようなノズル部材は、1つの実施態様では仕切り壁若しくは壁部分と一体に成形されていてよく、別の実施態様では仕切り壁若しくは壁部分とは別個の構成部分として形成されていて、仕切り壁若しくは壁部分に固定されるようになっている。特に有利な実施態様では、ノズル部材はベンチュリ管として形成されており、これによって冷却油噴出流の圧力及び速度は意図的に制御されるようになっている。
【0013】
本発明の別の実施態様では、仕切り壁若しくは壁部分には、ノズル状の開口部に加えて、少なくとも1つの流過開口部を設けてあり、該流過開口部を通って冷却油は仕切り壁若しくは壁部分の下側の領域内へ戻るようになっている。
【0014】
次に本発明を図示の実施例に基づく詳細に説明する。図面において、
図1は、本発明に基づくピストンの1つの実施例の断面図であり、
図2は、ノズル部材の1つの実施例の断面図であり、
図3は、ノズル状の開口部の1つの実施例の断面図であり、
図4は、本発明に基づくピストンの別の実施例の断面図であり、
図5は、本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図であり、
図6は、本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図であり、
図7は、本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図である。
【0015】
図1には、組み立てられたピストン10の第1の実施例を示してある。ピストン10のピストンヘッド11は、ピストン頂部12、火炎及び圧力のかかる環状のヘッド部13及び環状のリング部14を含んでおり、リング部はリング(図示省略)の受容のためのリング溝15を備えている。ピストン頂部12には燃焼室16を成形してある。ピストン10はさらにピストンスカート部17を有しており、ピストンスカート部は摺動面(滑り面)18を備えている。ピストンスカート部17のほかの構成部分、例えばピストンボスは図面の煩雑さを避けるために図示を省略してある。
【0016】
ピストンヘッド11は一般的に、特に耐熱性の金属材料から成っているのに対して、ピストンスカート部17は軽金属、軽合金、鋳鉄若しくは鋼から成っている。ピストンヘッド11とピストンスカート部17とは、組立式(分割式)のピストンにとって知られている手段によって互いに結合されている。図示の実施例では、ピストンヘッド11とピストンスカート部17とは、中央のねじ結合部19を用いて互いに緊定されている。
【0017】
ピストンヘッド11は、ピストンスカート部17に向いた側に外側の環状の接触面21及び内側の環状の接触面22を備えている。ピストンスカート部17は同様に、ピストンヘッド11に向いた側に、相応の環状の支持面を備え、つまりピストンヘッドの接触面に対応する外側の環状の支持面23及び内側の環状の支持面24を備えている。組み立てられた状態では、ピストンヘッドの接触面(支持面)とピストンスカート部の支持面(接触面)とは相互に当接している。
【0018】
ピストンヘッド11内には、ほぼヘッド部(上側円筒部)13及びリング部14の高さに環状の切欠き部25を設けてあるのに対して、ピストンスカート部17の、ピストンヘッド11に向いた上面に、相応の環状の切欠き部を形成し、つまりピストンヘッドの切欠き部に対応する環状の切欠き部26を設けてある。組み立てられた状態では、両方の切欠き部(空間部若しくは凹設部)25,26は、外側の環状の1つの冷却通路27を形成しており、この場合にピストン頂部12の下面(内面)12aによって冷却通路27の上側の閉鎖部を画成してある。ピストンヘッド11はさらに、ピストンスカート部17に向いた側(面)に中央の切欠き部28を備えており、かつピストンスカート部17は、ピストンヘッド11に向いた側(面)に相応の中央の切欠き部29を備えている。組み立てられた状態では両方の切欠き部28,29は1つの冷却室31を形成している。冷却通路27と冷却室31とは、ピストンスカート部17の内側の支持面24の領域に配置された少なくとも1つの貫通開口部32を介して互いに接続されている。冷却室31は別の貫通開口部(貫通孔)33を介してピストンピンに向かって開口している。
【0019】
ピストンスカート部17内に設けられていて外側の冷却通路27の下側の部分を形成する切欠き部26内に、金属材料、例えば鋼薄板若しくはばね鋼薄板から成る環状の仕切り壁35を、ピストン頂部12に対して平行に配置してある。仕切り壁35は、切欠き部26の側壁に設けられた溝36内に挿入されて締め付けた状態で保持されている。仕切り壁35には、ノズル部材37によって形成されたノズル状の開口部を全周にわたって配置してある。仕切り壁35は、剛性を高めるために条溝を付けられていてよい。
【0020】
運転時には、切欠き部26の、仕切り壁35の下側の部分は、連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られた冷却油で完全に満たされており、したがって冷却油は、ピストン運動によるシェーカー効果(shaker-effect)を受けないようになっている。切欠き部26内に生じる圧力に基づき、冷却油は理想的には連続的に360°のクランク角運動にわたって、特にピストンの下降運動に際して高い圧力下でノズル部材37から流出して、シャープな噴出流としてピストン頂部12の下面12aに向けてスプレーされる。冷却油の流出する噴出流は、ノズル部材37の形状若しくは配置及び方向を適切に規定することによって、下面12aの、燃焼室内に生ぜしめられる燃焼噴流によりピストン頂部12に発生する熱負荷の高い領域と相対する領域に向けられるようになっている。
【0021】
図2には、図1に示してあるようにピストンに用いられ得るノズル部材37によって形成されたノズル状の開口部の第1の実施例を示してある。ノズル部材37は別個の構成部分若しくは構成部品として形成され、金属若しくは適切なプラスチックから成っている。ノズル部材37は冷却油のための漏斗状の入口部分38を有しており、入口部分はピストン頂部12の下面12aに向かって先細になっている。ノズル部材37は、入口部分38に続いていてピストン頂部12の下面12aに向けられたノズルヘッド39を有している。入口部分38は該入口部分の自由な環状の縁部に弾性的な舌片41を有しており、舌片は、冷却油のために仕切り壁35に設けられた流出開口部42上で、仕切り壁35の挿入穴内にクリップ止めされている。
【0022】
図3には、仕切り壁35と一体成形されたノズル状の開口部45の実施例を示してあり、ノズル状の開口部45は断面でほぼ円錐台形の隆起部46によって形成されており、隆起部はピストン頂部12の下面12aに向かって先細の流出開口部47を画成している。
【0023】
図4には、本発明に基づくピストン10の別の実施例を示してあり、この場合に同じ構成部分には図1と同じ符号を付けてある。外側の冷却通路27内には、金属材料、例えば鋼薄板若しくはばね鋼薄板から成る環状の仕切り壁135を、ピストン頂部12に対して平行に配置してある。環状の仕切り壁135は該仕切り壁の内側の環状の縁部領域148でもって、ピストンヘッド11の内側の接触面22とピストンスカート部17の内側の支持面24との間に締め付けて保持されている。仕切り壁135の外側の環状の縁部領域149は冷却通路27内に自由に突入しており、これによって外側の環状の縁部領域149と冷却通路27の、ほぼリング部14の高さにある外壁151との間に環状の間隙152を形成してある。仕切り壁135には、孔137によって形成された複数のノズル状の開口部を全周に分配して設けてある。仕切り壁135は剛性を高めるために条溝を付けられていてよい。
【0024】
運転時に切欠き部26は仕切り壁135の下側を冷却油で満たされており、冷却油は連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られるようになっている。図4の環状の間隙152に基づき、切欠き部26内には、図1の実施例よりも小さい油圧が生じるようになっている。約270°からピストン頂部12に向けて加速された冷却油は低い圧力で孔137からシャープな噴出流として流出し、この場合には冷却作用はシェーカー効果によって助成して高められるようになっている。このことは、切欠き部26内の油の容積量、間隙152の幅、並びに連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られる冷却油の圧力に依存している。孔137の配置によって、該孔から流出する冷却油の噴出流は、下面12aの、燃焼室内に生ぜしめられる燃焼噴流によりピストン頂部12に発生する熱負荷の高い領域と相対する領域に向けられるようになっている。
【0025】
図5には、本発明に基づくピストン210のさらに別の実施例を示してあり、この場合に同じ構成部分には図1と同じ符号を付けてある。外側の冷却通路27内には、金属材料、例えば鋼薄板若しくはばね鋼薄板から成る環状の仕切り壁235を、ピストン頂部12に対して平行に配置してある。環状の仕切り壁235は該仕切り壁の外側の環状の縁部領域249でもって、ピストンヘッド11の外側の接触面21とピストンスカート部17の外側の支持面23との間に締め付けて保持されている。仕切り壁235の内側の環状の縁部領域248は冷却通路27内に自由に突入しており、これによって内側の環状の縁部領域と冷却通路27の、切欠き部25によって画定された内壁253との間に環状の間隙252を形成してある。仕切り壁235には、ノズル部材237によって形成された複数のノズル状の開口部を全周に分配して設けてある。ノズル部材237は断面でほぼ円錐形に形成されていて、ピストン頂部12の下面12aに向かって先細の流出開口部247を画成している。仕切り壁235にはノズル部材237の隣に、切欠き部26内へ逆流する冷却油のための流過開口部254を設けてある。
【0026】
運転時に切欠き部26は仕切り壁235の下側を冷却油で満たされており、冷却油は連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られるようになっている。図4の実施例と同じ原理に基づき、ピストン頂部12の制御された冷却はノズル部材237の流出開口部247を介して行われる。冷却油はクランク角度位置に応じて所定の圧力でノズル部材237の流出開口部247から流出して、シャープな噴出流としてピストン頂部12の下面12aに向けてスプレーされる。冷却油の流出する噴出流は、ノズル部材237の形状若しくは配置及び方向を適切に規定することによって、下面12aの、燃焼室内に生ぜしめられる燃焼噴流によりピストン頂部12に発生する熱負荷の高い領域と相対する領域に向けられるようになっている。冷却油は流過開口部254を経て切欠き部26内へ戻されるようになっている。
【0027】
図6には、本発明に基づくピストン310のさらに別の実施例を示してあり、この場合に同じ構成部分には図1と同じ符号を付けてある。外側の冷却通路27内には、金属材料、例えば鋼薄板若しくはばね鋼薄板から成る環状の仕切り壁335を、ピストン頂部12に対して平行に配置してある。環状の仕切り壁335は該仕切り壁の外側の環状の縁部領域349でもって、ピストンヘッド11の外側の接触面21とピストンスカート部17の外側の支持面23との間に締め付けて保持されている。仕切り壁335の内側の環状の縁部領域348は冷却通路27内に自由に突入しており、これによって内側の環状の縁部領域と冷却通路27の、切欠き部25によって画定された内壁353との間に環状の間隙352を形成してある。仕切り壁335には、ノズル部材337によって形成された複数のノズル状の開口部を全周に分配して設けてある。ノズル部材337はこの実施例では別個の構成部分として成形されていて、仕切り壁335内に組み込まれている。ノズル部材337はこの実施例ではベンチュリ管として形成されていて、冷却油のための流出開口部347を画成している。仕切り壁335にはノズル部材337の隣に、切欠き部26内へ逆流する冷却油のための流過開口部354を設けてある。
【0028】
運転時に、仕切り壁335の下側にある切欠き部26は冷却油で満たされており、冷却油は連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られるようになっている。図4の実施例と同じ原理に基づき、ピストン頂部12の制御された冷却はノズル部材337の流出開口部347を介して行われる。冷却油はクランク角度位置に応じて所定の圧力でノズル部材337の流出開口部347から流出して、シャープな噴出流としてピストン頂部12の下面12aに向けてスプレーされる。冷却油の流出する噴出流は、ノズル部材337の形状若しくは配置及び方向を適切に規定することによって、下面12aの、燃焼室内に生ぜしめられる燃焼噴流によりピストン頂部12に発生する熱負荷の高い領域と相対する領域に向けられるようになっている。冷却油は流過開口部354を経て切欠き部26内へ流れ、若しくは溢流通路を経て内側の冷却室に向かって流れるようになっている。
【0029】
図7には、本発明に基づくピストン410のさらに別の実施例を示してあり、この場合に同じ構成部分には図1と同じ符号を付けてある。ピストンスカート部17はこの実施例ではノジュラー鋳鉄から成形されている。外側の冷却通路27内には、環状の壁部分435として形成された仕切り壁を、ピストン頂部12に対して平行に配置してあり、仕切り壁は、ピストンスカート部17の切欠き部26とピストンヘッド11の切欠き部25とを仕切っている。壁部分435はピストンスカート部17と一体に鋳造成形されている。もちろんピストンヘッド11も鋳造製品であって、該ピストンヘッド11と一体に鋳造成形された壁部分(壁領域)を有していてよい。壁部分435には、ノズル部材437によって形成された複数のノズル状の開口部を全周に分配して設けてある。ノズル部材437は、この実施例では別個の構成部分として成形されていて、壁部分435内に組み込まれている。ノズル部材437は壁部分にねじ結合され、接着固定され、若しくは圧入によって若しくは別の手段によって固定されていてよい。ノズル部材はこの実施例では外周をほぼ円筒形に形成されていて、ピストン頂部12の下面12aに向かって先細の流出開口部447を画成しており、流出開口部は両方の切欠き部25,26を互いに接続している。壁部分435にはノズル部材437の隣に、切欠き部26内へ逆流する冷却油のための流過開口部454を設けてある。
【0030】
運転時に、壁部分435の下側にある切欠き部26は、連接棒及びピストンピンを介して強制的に送られる冷却油で満たされている。図4の実施例と同じ原理に基づき、ピストン頂部12の制御された冷却はノズル部材437の流出開口部447を介して行われる。冷却油はクランク角度位置に応じて所定の圧力でノズル部材437の流出開口部447から流出して、シャープな噴出流としてピストン頂部12の下面12aに向けてスプレーされる。冷却油の流出する噴出流は、ノズル部材437の形状若しくは配置及び方向を適切に規定することによって、下面12aの、燃焼室内に生ぜしめられる燃焼噴流によりピストン頂部12に発生する熱負荷の高い領域と相対する領域に向けられるようになっている。冷却油は流過開口部454を経て切欠き部26内へ流れ、若しくは溢流通路を経て内側の冷却室に向かって流れるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に基づくピストンの1つの実施例の断面図
【図2】ノズル部材の1つの実施例の断面図
【図3】ノズル状の開口部の1つの実施例の断面図
【図4】本発明に基づくピストンの別の実施例の断面図
【図5】本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図
【図6】本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図
【図7】本発明に基づくピストンのさらに別の実施例の断面図
【符号の説明】
【0032】
10 ピストン、 11 ピストンヘッド、 12 ピストン頂部、 12a 下面、 13 ヘッド部、 14 リング部、 15 リング溝、 16 燃焼室、 17 ピストンスカート部、 18 摺動面、 19 ねじ結合部、 21,22 接触面、 23,24 支持面、 25,26 切欠き部、 27 冷却通路、 28,29 切欠き部、 31 冷却室、 32,33 貫通開口部、 35 仕切り壁、 37 ノズル部材、 38 入口部分、 39 ノズルヘッド、 41 舌片、 42 流出開口部、 45 開口部、 46 隆起部、 47 流出開口部、 137 孔、 148,149 縁部領域、 151 外壁、 152 間隙、 210 ピストン、 235 仕切り壁、 237 ノズル部材、 247 流出開口部、 248,249 縁部領域、 252 間隙、 253 内壁、 254 流過開口部、 310 ピストン、 335 仕切り壁、 337 ノズル部材、 347 流出開口部、 348,349 縁部領域、 353 内壁、 354 流過開口部、 410 ピストン、 435 壁部分、 437 ノズル部材、 447 流出開口部、 454 流過開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのピストン(10,110,210,310,410)であって、少なくとも1つの燃焼噴流にさらされるピストン頂部(12)を含むピストンヘッド(11)及びピストンスカート部(17)から成っており、この場合に前記ピストンヘッド(11)と前記ピストンスカート部(17)とは、互いに結合された構成ユニットとして形成されていて、環状の外側の冷却通路(27)を画成している形式のものにおいて、前記冷却通路(27)内には、前記ピストン頂部(12)に対して平行に配置された環状の仕切り壁(35,135,235,335,435)を設けてあり、該仕切り壁はノズル状の1つ若しくは複数の開口部(37,45,137,237,337,437)を備えており、該開口部は、該開口部から流出する噴出流を前記ピストン頂部(12)の下面(12a)に向けるように配置されていることを特徴とするピストン。
【請求項2】
噴出流は、ピストン頂部(12)の下面(12a)の、燃焼噴流にさらされるピストン頂部(12)の領域と相対する領域に向けられている請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
仕切り壁(35)は冷却通路(27)の、ピストンスカート部(17)によって画成された部分内に配置されている請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項4】
ピストンヘッド(11)は外側の接触面(21)及び内側の接触面(22)を備えており、シリンダースカート部(17)は、前記ピストンヘッドの前記外側の接触面及び内側の接触面と合致する外側の支持面(23)及び内側の支持部(24)を備えており、仕切り壁(135,235,335)は、前記外側若しくは内側の接触面(21;22)と前記外側若しくは内側の支持部(23;24)との間に配置されている請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項5】
仕切り壁(135)を内側の接触面(22)と内側の支持部(24)との間に配置してある場合に、前記仕切り壁(135)の外側の縁部領域(149)と冷却通路(27)の外壁(151)との間に環状の間隙(152)を設けてある請求項4に記載のピストン。
【請求項6】
仕切り壁(248,348)を外側の接触面(21)と外側の支持部(23)との間に配置してある場合に、前記仕切り壁(235,335)の内側の縁部領域(249,349)と冷却通路(27)の内壁(253,353)との間に環状の間隙(252,353)を設けてある請求項4に記載のピストン。
【請求項7】
仕切り壁は、ピストンヘッド(11)若しくはピストンスカート部(17)内に組み込まれた壁部分(435)として形成されている請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項8】
少なくとも1つのノズル状の開口部は、孔(137)として形成されている請求項1から7のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項9】
少なくとも1つのノズル状の開口部は、ノズル部材(37,45,237,337,437)によって形成されている請求項1から7のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項10】
ノズル部材(45,237)は仕切り壁(35,235)と一体に成形されている請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
ノズル部材(37,137,337,437)は別個の構成部分として形成されていて、仕切り壁(35,235)に固定されている請求項9に記載のピストン。
【請求項12】
ノズル部材(337)はベンチュリ管として形成されている請求項9から11のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項13】
仕切り壁(235,335,435)は、少なくとも1つのノズル状の開口部(237,337,437)に加えて少なくとも1つの流過開口部(254,354,454)を備えている請求項1から12のいずれか1項に記載のピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−531584(P2009−531584A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501844(P2009−501844)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000532
【国際公開番号】WO2007/110056
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany