説明

内燃機関の吸気装置

【課題】レゾネータの配置に関わらずに、レゾネータ内の水分を排出しやすくでき、さらに、排出した水分を分散させて内燃機関へ送ることのできる内燃機関の吸気装置を提供する。
【解決手段】この内燃機関の吸気装置1は、吸気通路となるボア11aおよびスロットルバルブを備えたスロットル装置10と、このスロットル装置10を通過した空気を内燃機関へ導くインテークマニホールド20と、このインテークマニホールド20の吸気通路に通じる空気室を有し吸気動作に共鳴作用を及ぼすレゾネータ30とを備えている。レゾネータ30には空気室に開口する水抜き孔が設けられ、この水抜き孔がスロットル装置10のスロットルバルブより下流側の吸気通路に連通されている(33,40,14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レゾネータを備えた内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気装置には、一般に、吸気音を低減したり吸気に伴う脈動を低減あるいは増幅したりするレゾネータが設けられることがある。レゾネータには、その空気室に水やオイルなどの水分が溜まることがある。そのため、従来、この空気室から水分を排出するための様々な提案がなされている。たとえば、特許文献1には、レゾネータが吸気管と一体的に形成されている吸気装置において、レゾネータに水抜き孔を設けて吸気通路に連通させることで、内燃機関の吸気量に影響を与えずにレゾネータの空気室から水抜きを行えるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02−043426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の吸気装置のように、レゾネータが吸気管の上方に配置されるなど特別な場合には、レゾネータの下方に水抜き孔を設けて、水分を吸気管に戻すことが可能になる。しかしながら、レゾネータは所望の共鳴作用が得られるように大きさ、形状および配置がさまざまに設計変更される。したがって、一般的には、レゾネータが吸気管の上方に配置されないことが多い。また、レゾネータと吸気管(インテークマニホールド)とを別体構成とし、複数種類のレゾネータを選択的に取り付け可能にした吸気装置もある。
【0005】
したがって、レゾネータの配置によっては、レゾネータに水抜き孔を設けて吸気管に連通させるようにしても、レゾネータから水分がうまく排出されないといった課題が生じることがある。また、レゾネータと吸気管との配置によっては、レゾネータからの水分の排出が複数の吸気管のいずれかに偏って行われてしまい、内燃機関の複数の気筒に水分を分散して送ることができないという課題が生じることもある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、レゾネータの配置に関わらずに、レゾネータ内の水分が排出されやすく、かつ、排出した水分を分散させて内燃機関へ送ることのできる内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、吸気通路となるボアおよびスロットルバルブを備えたスロットル装置と、このスロットル装置を通過した空気を内燃機関へ導くインテークマニホールドと、このインテークマニホールドの吸気通路に通じる空気室を有し吸気動作に共鳴作用を及ぼすレゾネータと、を備えた内燃機関の吸気装置において、前記レゾネータには前記空気室に開口する水抜き孔が設けられ、この水抜き孔が前記スロットル装置の前記スロットルバルブより下流側の吸気通路に連通されていることを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明においては、空気の流速が大きく変化するスロットル装置にレゾネータの水抜き孔が連通されているので、この連通部分に生じる負圧によってレゾネータの水抜き孔から水分や空気を吸い込む作用が発生する。したがって、レゾネータの配置に関わらずにレゾネータに溜まった水分が排出されやすくなる。また、レゾネータに溜まった水分が水抜き孔からスロットル装置に排出されたのちには、スロットル装置を通過する高速の吸気によって、この水分が拡散されてインテークマニホールドへ送られる。したがって、この水分を内燃機関へ分散させて送ることができる。また、内燃機関の停止中には、レゾネータの水抜き孔がスロットル装置の吸気通路という大気に近い箇所に連通されているので、レゾネータ内の空気が流動しやすくなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記インテークマニホールドには、前記スロットルに接合されて吸気を受けるサージタンクと、このサージタンクから内燃機関の複数の気筒へ吸気を送る複数の管体とを備え、前記レゾネータの前記水抜き孔は、前記ボア内で、かつ、前記スロットルバルブから前記サージタンクの接合部までの範囲内に連通されていることを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明においては、レゾネータの水抜き孔の連通先が、スロットルボアの上記範囲内に設定されているので、上述した負圧による吸込み作用と、排出された水分の拡散作用とが確実に得られる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記インテークマニホールドと前記レゾネータとが別体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
この請求項3に記載の発明においては、レゾネータの種類を交換することで吸気に及ぼされる共鳴作用を適宜変更することができる。また、このようにレゾネータを交換可能とした場合には、レゾネータの水抜き孔の配置も変わることから、吸込み力なしで自然に吸気通路へ水分を排出させるように構成するには限界が生じる。したがって、上述した吸込み作用による水分の排出機能が、特に有効なものとなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、船外機の内燃機関に取り付けられることを特徴とする。
【0014】
この請求項4に記載の発明においては、船外機の特徴から、吸気装置の向きが鉛直方向(プロペラを水中に沈めた状態)と水平方向(プロペラを水から引き揚げた状態)とに変更される場合が生じる。また、陸上で使用される場合と比較してレゾネータに水分が溜まりやすくなる。その結果、このような環境下では、エンジン始動時にレゾネータから比較的に多くの水分が排出される場合が生じえる。したがって、このような場合に、上述した排出された水分を分散させて内燃機関へ送ることができるという機能が、特に有効なものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レゾネータの配置に関わらずに、レゾネータの空気室に溜まった水分が吸気通路に排出されやすくなり、さらに、排出された水分を分散させて内燃機関へ送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の吸気装置であって、斜め下方から見た斜視図である。
【図2】同、内燃機関の吸気装置をスロットル装置の側から見た側面図である。
【図3】スロットル装置におけるレゾネータの水抜き孔の連通部分を詳細に示す一部破断面図である。
【図4】本実施形態の吸気装置が搭載された船外機を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1と図2は、本発明の実施形態に係る内燃機関の吸気装置1を示している。図1は吸気装置1を斜め下方から眺めた斜視図、図2はスロットル装置側から眺めた側面図である。この吸気装置1は、吸気または混合気(以下、両者を含めて吸気と記す)を内燃機関へ送るもので、吸気の流入量を制御するスロットル装置10と、吸気を内燃機関まで導くインテークマニホールド20と、吸気動作に共鳴作用を及ぼして吸気音の低減や吸気に伴う脈動の制御を行うレゾネータ30とを備えている。
【0018】
スロットル装置10は、吸気通路となる断面円形で直線状のボア11aが形成されたスロットルボデー11と、このスロットルボデー11のボア11a内で回動して吸気通路の面積を変化させるスロットルバルブ12と、外部からワイヤー等によりスロットルバルブ12を回動させるためのコントロールレバー13とを備えている。また、スロットルボデー11にはレゾネータ30の水抜き孔用のホース40が接続される接続部14が設けられている。
【0019】
インテークマニホールド20は、内燃機関の複数の気筒へ吸気を導く複数の管体22と、複数の管体22へ供給する吸気量を均等化するための大型の空気室を有するサージタンク21とを備えている。そして、サージタンク21がスロットル装置10に接続されて、スロットル装置10のボア11aの一端がサージタンク21の空気室に連通されている。複数の管体22は、これらの端部22aが内燃機関の各気筒にそれぞれ接続される。
【0020】
レゾネータ30は、インテークマニホールド20と別体に設けられ、インテークマニホールド20に接続される接続部31と、共鳴作用を及ぼすための空気室を有する本体部32と、水抜き用のホース40が接続される接続管33とを備えている。そして、接続部31がインテークマニホールド20にねじ等により固定されて、レゾネータ30の空気室がインテークマニホールド20の吸気通路の一部(具体的にはサージタンク21の空気室の一部)に開口されている。また、本体部32の空気室の下方部位には水抜き孔が設けられ、接続管33の管孔がこの水抜き孔に通じている。この水抜き孔は、本体部32の空気室に溜まった水分を排出する作用に加えて、この空気室に対して少量の空気の出し入れを行って空気室の澱みを解消する作用も及ぼすものである。
【0021】
図3は、スロットル装置10におけるホース40の接続部14の流路を詳細に示す一部破断側面図である。この図に示すように、スロットルボデー11には、ホース40が接続される接続部14とボア11aとを連通させる流路15が設けられている。流路15の開口部15aは、スロットルバルブ12からサージタンク21との接合部までの範囲内に設けられている。
【0022】
図4は、本実施形態の吸気装置1を搭載した船外機100の一部破断側面図である。本実施形態の吸気装置1は、図3に示すように、例えば船外機100に搭載されるものである。この船外機100の上部エンジンケース101内には、複数気筒の内燃機関110と本実施形態の吸気装置1とが配設されている。スロットル装置10の吸気口はエアクリーナ等を介して外界へ通じるように搭載されている。また、この船外機100には、胴部102を挟んで下側にプロペラ103が設けられている。胴部102には、内燃機関110により回転駆動される駆動軸が通され、この駆動軸の回転運動が、カサ歯車等を介してプロペラ103に伝達されるようになっている。
【0023】
また、船外機100には、船体の取付板に固定される取付金具104が設けられている。この取付金具104にはヒンジ部104aが設けられ、ヒンジ部104aを回動させることで、船外機100の本体部分(エンジンケース101からプロペラ103までの部分)の向きを鉛直方向(プロペラ103を水中に沈めた状態)から水平方向(プロペラ103を水から引き揚げた状態)へ切り替えることが可能になっている。
【0024】
上記のように構成された本実施形態の内燃機関の吸気装置1にあっては、レゾネータ30の水抜き孔がホース40を介してスロットル装置10の吸気通路に連通されている。すなわち、吸気の流速が大きく変化する部位にレゾネータ30の水抜き孔が連通されており、流速の変化により上記の連通部分にしばしば負圧が生じることになる。そして、この負圧によってレゾネータ30の空気室から水分や空気を吸い込む作用が得られる。したがって、レゾネータ30の配置に関わらずにレゾネータ30に溜まった水分が排出されやすくなる。
【0025】
また、レゾネータ30から排出された水分は、スロットル装置10の高速の吸気によって拡散されてインテークマニホールド20へ送られる。したがって、この排出された水分を内燃機関の複数の気筒へ分散して送ることができる。
【0026】
さらに、レゾネータ30の水抜き孔がスロットル装置10の吸気通路という大気に近い箇所に連通されている。したがって、内燃機関の停止中にも、レゾネータ30内の空気が流動しやすくなるという作用が得られる。
【0027】
さらに、本実施形態の内燃機関の吸気装置1にあっては、レゾネータ30の水抜き孔の連通先が、スロットル装置10のボア11a内で、かつ、スロットルバルブ12からサージタンク21の接合部までの範囲内に設定されている。したがって、上述した負圧によるレゾネータ30からの水分の吸込み作用と、排出した水分の拡散作用とが確実に得られる。
【0028】
さらに、本実施形態の内燃機関の吸気装置1にあっては、レゾネータ30がインテークマニホールド20と別体に構成されている。そのため、形状等の異なる複数種類のレゾネータを選択的に取り付けることが可能になるという利点が得られる一方、レゾネータ30の水抜き孔やその接続管33の位置が変化する場合も生じえる。したがって、上述したレゾネータ30の配置に関わらずにレゾネータ30内の水分を容易に排出できるという機能が特に有効なものとなる。さらに、この吸気装置1は船外機100の内燃機関110に取り付けられるため、陸上で使用される場合と比較してレゾネータ30に水分が溜まりやすく、また、吸気装置1の向きも変更されることがある。そのため、例えば、エンジン始動時に比較的に多くの水分がレゾネータ30の水抜き孔から排出される場合が生じえる。したがって、このような場合に、上述の排出した水分が拡散・分散されて複数の気筒へ送られるという機能が、特に有効なものとなる。
【0029】
なお、上述の実施形態では、レゾネータとインテークマニホールドとを別体構成としたが、両者は一体的な構成としてもよい。また、上述の実施形態では、吸気装置を船外機用のものとして説明したが、自動車など陸上で駆動される内燃機関の吸気装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 吸気装置
10 スロットル装置
11 スロットルボデー
11a ボア
12 スロットルバルブ
14 接続部
15 流路
15a 開口部
20 インテークマニホールド
21 サージタンク
22 管体
30 レゾネータ
31 接続部
32 本体部
33 接続管
40 ホース
100 船外機
110 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路となるボアおよびスロットルバルブを備えたスロットル装置と、このスロットル装置を通過した空気を内燃機関へ導くインテークマニホールドと、このインテークマニホールドの吸気通路に通じる空気室を有し吸気動作に共鳴作用を及ぼすレゾネータと、を備えた内燃機関の吸気装置において、
前記レゾネータには前記空気室に開口する水抜き孔が設けられ、この水抜き孔が前記スロットル装置の前記スロットルバルブより下流側の吸気通路に連通されていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記インテークマニホールドには、前記スロットルに接合されて吸気を受けるサージタンクと、このサージタンクから内燃機関の複数の気筒へ吸気を送る複数の管体とを備え、
前記レゾネータの前記水抜き孔は、前記ボア内で、かつ、前記スロットルバルブから前記サージタンクの接合部までの範囲内に連通されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記インテークマニホールドと前記レゾネータとが別体に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
船外機の内燃機関に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229645(P2012−229645A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98080(P2011−98080)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)