説明

内燃機関用の点火コイル

【課題】ブーツ部の絶縁性を維持しつつ、導電部材のスパークプラグ側への脱落及び接触不良を防止できる内燃機関用の点火コイルを提供すること。
【解決手段】コイル本体部2と高圧タワー部3と導電部材41を内側に備えるブーツ部4とシール部材5とを備えた内燃機関用の点火コイル1。導電部材41は、基端側接触部411と先端側接触部412とを備え、先端側接触部412が、スパークプラグの高圧端子部を覆うよう構成されている。導電部材41は、基端側接触部411と先端側接触部412との間において、被係止径大部413を備える。シール部材5は、基端側嵌合部51と先端側嵌合部52と、導電部材41に設けた被係止径大部413を先端側から係止すると共に弾性的に拡開できるよう構成された係止部53を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に配設されたスパークプラグに高電圧を印加して点火させるための内燃機関用の点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に用いる点火コイルは、一次コイル、二次コイル、鉄芯及びイグナイタを備えており、一次コイルへの通電を遮断したときの磁束の変化によって、二次コイルに高電圧の起電力を誘起させる。これにより、点火コイルに接続したスパークプラグに火花を発生させている。
上記点火コイルの高電圧を上記スパークプラグに供給するため、上記点火コイルと上記スパークプラグとを電気的に接続するブーツ部として、導電部材(スプリング等)を内部に配した樹脂パイプが取付けられる。該樹脂パイプの基端側には点火コイルと連結可能なシール部材が配され、先端側には上記スパークプラグの碍子部と連結可能なプラグキャップが取り付けられている。そして、上記ブーツ部は、内燃機関のシリンダヘッドのプラグホール内に配置される。
【0003】
ここで、上記ブーツ部の配置状態において、上記導電部材の上記スパークプラグ側への脱落防止を図った種々の周知技術が存在する。すなわち、例えば、上記樹脂パイプの基端側の内周面に、上記導電部材の外径よりも径方向幅が小さい段差部を設けて、該段差部に導電部材を上記樹脂パイプの軸方向に係止できるよう構成した点火コイルが開示されている(特許文献1)。また、上記スパークプラグ側の端部において上記導電部材の外径を拡大した径大部を設けると共に、上記プラグキャップの内周の一部において、上記径大部の外径よりも径方向幅が小さくなるように径方向内側に突出した段部を設けた点火コイルも開示されている(特許文献2)。これにより、上記径大部において導電部材を、上記段部によって上記樹脂パイプの軸方向に係止できるよう構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−288028号公報
【特許文献2】特開2005−315148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2の点火コイルには、以下の問題がある。すなわち、上記特許文献1に示す点火コイルでは、上記スパークプラグの頭部(高圧端子部)と接触させる上記導電部材の先端部の外径を小さくせざるを得ない。つまり、上記樹脂パイプの内周面に上記段差部を設けるとその間の空間の内径は小さくなるため、ここに挿通させる上記導電部材の先端部の外径を小さくする必要がある。これは、上記点火コイルを製造する際、通常、上記導電部材は、上記樹脂パイプの基端側から挿通されて組付けられるためである。
【0006】
その一方で、上記導電部材と上記スパークプラグとの接触を安定させるため、上記樹脂パイプの軸方向と上記導電部材の軸芯とを平行に維持(以下、これを調芯という)するには、上記導電部材の先端部の外径を大きくする必要がある。そこで、特許文献1に示す点火コイルの構成において、上記導電部材の先端部を径大化しようとすると、上記段差部の間の内径を大きくして、上記樹脂パイプをも径大化させることとなる。この場合、上記特許文献1に示す点火コイルでは、径大化された上記導電部材の外周面と上記樹脂パイプの内周面との間の距離、或いは径大化された上記樹脂パイプの外周面と上記プラグホールの内壁との間の距離が近づきやすい。そのため、プラグホール内における電界強度が増加しやすくなってしまう。その結果、上記ブーツ部の絶縁性が劣ってしまい、コロナ放電及び高電圧のリークが生じてしまうおそれがある。
【0007】
また、上記特許文献2に示す点火コイルでは、上記スパークプラグの碍子部と嵌合する上記プラグキャップに上記段部が形成されている。ここで、上記プラグキャップからの上記スパークプラグの脱落を防止すべく、上記プラグキャップの内周における上記碍子部との嵌合部分の内径は、上記碍子部の外径よりも小径に形成されている。そのため、上記碍子部を上記プラグキャップ内に組付けた状態において、上記プラグキャップにおける上記段部の内径は、上記碍子部によってある程度外側に広げられた状態となっている。
そして、上記スパークプラグがその寿命を迎えた際にスパークプラグを交換するにあたっては、上記ブーツ部から上記スパークプラグを取り外す。このとき、上記プラグキャップが、上記スパークプラグの取り外しに伴い、その内径を拡大するような弾性変形を生じることとなり、このとき、上記導電部材の径大部が上記段部の内側を通り抜けてしまうおそれがある。その結果、上記導電部材が上記スパークプラグ側に脱落してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであって、ブーツ部の絶縁性を維持しつつ、導電部材のスパークプラグ側への脱落及び接触不良を防止できる内燃機関用の点火コイルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、一次コイル及び二次コイルをコイルケース内に収容してなるコイル本体部と、該コイル本体部において発生させた高電圧を出力する高圧出力端子を内部に保持した高圧タワー部と、上記高圧出力端子とスパークプラグとを導通させる導電部材を内側に備える筒状のブーツ部と、該ブーツ部と上記高圧タワー部とを連結すると共に両者の間をシールするシール部材とを備えた内燃機関用の点火コイルであって、
上記導電部材は、上記高圧出力端子に接触する基端側接触部と、上記スパークプラグに接触する先端側接触部とを備え、該先端側接触部が、上記スパークプラグの基端部に設けられた高圧端子部を覆うよう構成されており、また、上記基端側接触部と上記先端側接触部との間において、部分的に外径を大きくした被係止径大部を備え、
上記シール部材は、上記高圧タワー部と嵌合する基端側嵌合部と、上記ブーツ部と嵌合する先端側嵌合部と、上記導電部材に設けた上記被係止径大部を先端側から係止すると共に弾性的に拡開できるよう構成された係止部を備えていることを特徴とする内燃機関用の点火コイルにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記点火コイルは、上記導電部材の上記先端側接触部が、上記スパークプラグの基端部に設けられた高圧端子部を覆うよう構成されている。これによって、上記導電部材の調芯を上記スパークプラグの上記高圧端子部側において行うことができ、上記導電部材の傾きを防ぐことができる。
【0011】
また、上記導電部材は、上記基端側接触部と上記先端側接触部との間において、部分的に外径を大きくした被係止径大部を備えている。これによって、上記導電部材の全体の径方向幅を拡大させることなく、上記被係止径大部によって上記シール部材の上記係止部に係止させることができる。そのため、上記導電部材と上記ブーツ部の内周面との間の距離、或いは上記ブーツ部の外周面とプラグホールの内壁との間の距離が近づくことに起因するプラグホール内の電界強度の増加を防ぐことができる。その結果、上記ブーツ部の絶縁性が維持できる。
【0012】
また、上記シール部材は、上記係止部を備えている。これによって、上記導電部材の組付けに際し、上記導電部材を上記係止部に対してその先端側から挿通して上記係止部を弾性的に拡開させて、上記被係止径大部を係止させることができる。その結果、上記シール部材に上記導電部材を係止でき、かつ上記導電部材の上記スパークプラグ側へ脱落を防止することができる。また、上記導電部材の調芯を上記シール部材、つまり上記点火コイル側においても行うことができ、上記導電部材の傾きを効果的に防ぐことができる。その結果、上記導電部材と上記スパークプラグとの接触をより安定させて磨耗による接触不良を効果的に防ぐことができる。
【0013】
以上のごとく、上記態様によれば、ブーツ部の絶縁性を維持しつつ、導電部材のスパークプラグ側への脱落及び接触不良を防止できる内燃機関用の点火コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、内燃機関用の点火コイルの部分断面正面図。
【図2】実施例1における、シール部材を介した高圧タワー部とブーツ部との連結部付近の部分断面による説明図。
【図3】実施例1における、シール部材の軸方向の断面図。
【図4】図3における係止部のA矢視図。
【図5】実施例1の点火コイルの組付工程における(A)シール部材とブーツ部との組付工程の説明図、(B)導電部材とブーツ部との組付工程の説明図、(C)ブーツ部とプラグキャップとの組付工程の説明図、(D)ブーツアッセンブリの組付状態の説明図。
【図6】実施例1の点火コイルの組付工程における、係止部の弾性変形状態を示す部分断面による説明図。
【図7】実施例1における、点火コイルの内燃機関への取付状態を示す部分断面正面図。
【図8】実施例2における、係止部の図4に相当する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記ブーツ部は、一体の成形体によって構成することもできるし、複数の成形体を組み合わせて構成することもできる。
また、上記導電部材における上記被係止径大部及び上記調芯用径大部は、上記導電部材における他の部位と一体的に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。
【0016】
また、上記被係止径大部及び上記調芯用径大部の外径は、それぞれ、最大直径を意味する。すなわち、上記被係止径大部や上記調芯用径大部が、その軸方向に直交する断面形状において円形である場合には、その円の直径が上記「外径」を意味するものとし、それ以外の形状である場合には、上記断面形状の外接円の直径をいうものとする。
【0017】
上記シール部材及び上記プラグキャップは、例えば、シリコーンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等によって構成することができる。
また、上記タワー部、上記ブーツ部は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、不飽和ポリエステル等によって構成することができる。
【0018】
また、上記シール部材の上記係止部の外周には隙間部が形成されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記導電部材の組付けに際し、上記導電部材を上記係止部に対してその先端側から挿通させるときに上記係止部を弾性的に拡開させてやすくすることができる。その結果、組付け性を向上させることができる。
【0019】
また、上記係止部の先端には、径方向内側へ行くほど基端側へ向かうように傾斜した面取部が形成されていることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記導電部材の組付けに際し、上記導電部材を上記面取部に当接させながら基端側に向って挿通させやすくすることができる。その結果、組付け性を向上させることができる。
【0020】
また、上記導電部材は、上記被係止径大部と上記先端側接触部との間において部分的に外径を大きくした調芯用径大部を備え、上記調芯用径大部は、上記ブーツ部の内周面に当接することにより該ブーツ部に対する上記導電部材の軸芯の平行度を保つよう構成してあることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記調芯用径大部によって上記導電部材の調芯を上記ブーツ部の内周面において行うことができ、上記導電部材の傾きをより効果的に防ぐことができる。その結果、上記導電部材と上記スパークプラグとの接触をより安定させて磨耗による接触不良を確実に防ぐことができる。
【0021】
(実施例1)
実施例にかかる内燃機関用の点火コイルにつき、図1〜図7を用いて説明する。
本例の内燃機関用の点火コイル1は、図1に示すごとく、コイル本体部2と、高圧タワー部3と、筒状のブーツ部4と、シール部材5とを備えている。
【0022】
コイル本体部2は、一次コイル及び二次コイルをコイルケース内に収容してなる。
高圧タワー部3は、コイル本体部2において発生させた高電圧を出力する高圧出力端子31を内部に保持してなる。
ブーツ部4は、高圧出力端子31とスパークプラグ7(図7参照)とを導通させる導電部材41を内側に有している。
シール部材5は、ブーツ部4と高圧タワー部3とを連結すると共に両者の間をシールする。
【0023】
導電部材41は、図1に示すごとく、高圧出力端子31に接触する基端側接触部411と、スパークプラグ7に接触する先端側接触部412とを有している。この先端側接触部412が、スパークプラグ7の基端部に設けられた高圧端子部71を覆うよう構成されている(図7参照)。
また、導電部材41は、基端側接触部411と先端側接触部412との間において、部分的に外径を大きくした被係止径大部413を有している。
【0024】
シール部材5は、図2、図3に示すごとく、高圧タワー部3と嵌合する基端側嵌合部51と、ブーツ部4と嵌合する先端側嵌合部52と、導電部材41に設けた被係止径大部413を先端側から係止すると共に弾性的に拡開できるよう構成された係止部53とを備えている。
また、シール部材5の係止部53の外周には隙間部54が形成されている。この隙間部54は、先端側嵌合部52の内壁部522とブーツ部4の内周面40との間において形成されている。
【0025】
また、係止部53の内径Bは、被係止径大部413の外径Cよりも小さくなるように形成されている(図2、図3参照)。
【0026】
また、導電部材41は、図1に示すごとく、被係止径大部413と先端側接触部412との間において部分的に外径を大きくした調芯用径大部414を有している。この調芯用径大部414が、ブーツ部4の内周面40に当接することによりブーツ部4に対する導電部材41の軸芯の平行度を保つよう構成してある。
また、被係止径大部413と調芯用径大部414は、先端側接触部412の外径以下になるように形成されている。
【0027】
また、図2、図3に示すごとく、シール部材5は、全体が略筒状に形成されており、基端側嵌合部51は、高圧タワー部3が嵌合できる内周面510を形成している。また、先端側嵌合部52は、筒状の外周壁521と該外周壁521の内側に形成される内周壁522とから構成されている。そして、外周壁521の内側には、ブーツ部4の基端側端部43が嵌合できるよう構成されている。なお、ブーツ部4の基端側端部43と、シール部材5の内周壁522との間には、隙間部54が周状に形成されている。
【0028】
また、基端側嵌合部51の内周面510と、先端側嵌合部52の内周壁522の内周面とは連続して形成されている。
また、筒状の内周壁522の先端側において係止部53が形成されており、係止部53の先端には、径方向内側へ行くほど基端側へ向かうように傾斜した面取部530が形成されている。なお、図3に示すごとく、面取部530の基端側の端部には、内周壁522の軸方向に平行な面をなすストレート面部525が形成されている。
【0029】
また、先端側嵌合部52の外壁部521の先端部には、径方向内側へ行くほど、基端側へ向かうように傾斜した面取部520が形成されている。
また、係止部53は、図3、図4に示すごとく、先端側嵌合部52の内壁部522の先端部において、全周にわたって径方向内側に突出したリング状のリブ531によって構成されている。
【0030】
また、図1に示すごとく、ブーツ部4の先端側端部44には、プラグキャップ6を配置している。
プラグキャップ6は、ブーツ部4の先端側端部44と嵌合する基端部61と、スパークプラグ7の碍子部72(図7参照)と嵌合する先端部62とを備えている。
また、基端部61は、筒状の外周壁611と該外周壁611の内側に形成される内周壁612とから構成されている。そして、外周壁611と内周壁612との間には、ブーツ部4の先端側端部44が嵌合できる嵌合部613が周状に形成されている。
【0031】
また、先端部62の内周面620と、基端部61の内周壁612の内周面とは連続して形成されている。
また、先端部62の先端部には、径方向内側へ行くほど、基端側へ向かうように傾斜した面取部621が形成されている。
【0032】
次に、本例の点火コイル1の組付工程につき、図1、図5〜図7を用いて説明する。
まず、図5(A)に示すごとく、ブーツ部4とシール部材5とを互いに組付ける。すなわち、シール部材5の先端側嵌合部52に対して、ブーツ部4の基端側端部43を挿嵌させる。
【0033】
次いで、図5(B)に示すごとく、導電部材41の基端側接触部411を基端側に向けた状態で、導電部材41を、ブーツ部4の先端側端部44の先端側からその内部に先端側から挿入する。このとき、図6に示すごとく、導電部材41を係止部53の内側に、その先端側から挿通させることで、係止部53は弾性的に拡開された状態となる。そして、被係止径大部413の形成領域の全部が係止部53を通過したとき、係止部53は復元する(図1参照)。これにより、被係止径大部413は係止部53に係止された状態となる。また、ブーツ部4は、係止部53によって、ブーツ部4及びシール部材5に対して径方向に位置決めされる。
【0034】
次いで、図5(C)に示すごとく、ブーツ部4にプラグキャップ6を組付ける。すなわち、ブーツ部4の先端側端部44の外周に対してその先端側から、プラグキャップ6の基端部61を嵌合させる。これにより、図5(D)に示すごとく、ブーツアッセンブリ45を得ることができる。
【0035】
次いで、図1に示すごとく、高圧タワー部3に、ブーツアッセンブリ45を組付ける。すなわち、高圧タワー部3の外周に対して、ブーツアッセンブリ45におけるシール部材5の基端側嵌合部51を嵌合させる。なお、高圧タワー部3の内部には、予め、高圧出力端子31及び抵抗器32が保持されている(図7参照)。
以上の組付工程によって、本例の点火コイル1が得られる。
そして、図7に示すごとく、点火コイル1は、内燃機関におけるシリンダヘッド82に取付けられる。
【0036】
そして、点火コイル1は、図7に示すごとく、エンジンのシンダヘッド82に螺合されたスパークプラグ7に取付けられる。具体的には、プラグホール80に、プラグキャップ6及びシール部材5と共にブーツ部4が挿入配置される。そして、点火コイル1におけるプラグキャップ6の先端部62に対して、スパークプラグ7の碍子部72を圧入させる。このとき、導電部材41の先端側接触部412が、スパークプラグ7の基端部に設けられた高圧端子部71を覆うように配置される。先端側接触部412は、高圧端子部71をその外周から包み込むように高圧端子部71に接触して配置されている。これにより、先端側接触部412において、ブーツ部4が径方向に位置決めされている。そして、エンジンのプラグホール80の開口部付近に高電圧タワー部3が配置され、高圧出力端子31とスパークプラグ7の高圧端子部71とが電気的に接続させた状態となる。
【0037】
点火コイル1は、イグナイタを内蔵しており、イグナイタの一部の端子は、コネクタ部に設けられたコネクタ端子に接続され、他の一部の端子は一次コイルに接続されている(図示略)。そして、イグナイタは、ECU(エンジン制御ユニット)等の外部機器からの指令を受けて、一次コイルへの通電とその遮断とのスイッチングを行うスイッチング制御回路を備えている(図示略)。
【0038】
本例の点火コイル1において、ECUからの指令を受けてイグナイタのスイッチング回路の動作により一次コイルへの通電を行ったときには、中心コア及び外周コアを通過する磁界が形成される(図示略)。
次いで、一次コイルへの通電を遮断したときには、相互誘導作用により、二次コイルに高電圧の誘導起電力が発生し、点火コイル1に装着されたスパークプラグ7における一対の電極間に高電圧を発生させることができる。
【0039】
次に、本例の点火コイル1の作用効果につき、説明する。
上記点火コイル1は、導電部材41の先端側接触部412が、スパークプラグ7の基端部に設けられた高圧端子部71を覆うよう構成されている。これによって、導電部材41の調芯をスパークプラグの高圧端子部71側において行うことができ、導電部材41の傾きを防ぐことができる。
【0040】
また、導電部材41は、基端側接触部411と先端側接触部412との間において、部分的に外径を大きくした被係止径大部413を備えている。これによって、導電部材41の全体の径方向幅を拡大させることなく、被係止径大部413によってシール部材5の係止部53に係止させることができる。そのため、導電部材41とブーツ部4の内周面40との間の距離、或いはブーツ部4の外周42とプラグホール80の内壁81との間の距離が近づくことに起因するプラグホール80内の電界強度の増加を防ぐことができる。その結果、ブーツ部4の絶縁性が維持できる。
【0041】
また、シール部材5は、係止部53を備えている。これによって、導電部材41の組付けに際し、導電部材41を係止部53に対してその先端側から挿通して係止部53を弾性的に拡開させて、被係止径大部413を係止させることができる。その結果、シール部材5に導電部材41を係止でき、かつ導電部材41のスパークプラグ側へ脱落を防止することができる。また、導電部材41の調芯をシール部材5側、つまり点火コイル1側においても行うことができ、導電部材41の傾きを効果的に防ぐことができる。その結果、導電部材41とスパークプラグ1との接触をより安定させて磨耗による接触不良を効果的に防ぐことができる。さらには、被係止径大部413が係止部53で固定できるので、導電部材41のバネ力によって導電部材41を抵抗器32に押し当て、抵抗器32を高出力端子31に押し当てることができる。そのため、抵抗器32と導電部材41、及び抵抗器32と高出力端子31との良好な接触状態を保ち易くすることもできる。
【0042】
また、シール部材5の係止部53の外周には隙間部54が形成されている。これによって、導電部材41の組付けに際し、導電部材41を係止部53に対してその先端側から挿通させるときに係止部53を弾性的に拡開させてやすくすることができる。その結果、組付け性を向上させることができる。
【0043】
また、係止部53の先端には、径方向内側へ行くほど基端側へ向かうように傾斜した面取部530が形成されている。これによって、導電部材41の組付けに際し、導電部材41を面取部530に当接させながら基端側に向って挿通させやすくすることができる。その結果、組付け性を向上させることができる。
【0044】
また、導電部材41は、被係止径大部413と先端側接触部412との間において部分的に外径を大きくした調芯用径大部414を備え、調芯用径大部414をブーツ部4の内周面40に当接することによりブーツ部4に対する導電部材41の軸芯の平行度を保つよう構成してある。これによって、調芯用径大部414によって導電部材41の調芯をブーツ部4においても行うことができ、導電部材41の傾きをより効果的に防ぐことができる。その結果、導電部材41とスパークプラグとの接触をより安定させて磨耗による接触不良を確実に防ぐことができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、ブーツ部の絶縁性を維持しつつ、導電部材のスパークプラグ側への脱落及び接触不良を防止できる内燃機関用の点火コイルを提供することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、係止部53を、図8に示すごとく、複数のリブ532によって形成した例である。
本例における係止部53は、図8に示すごとく、シール部材5の先端側嵌合部52の内壁部522の先端において、回転対称形状とした4つのリブ532を径方向内側に各々突出させて形成している。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0047】
なお、上記実施例1及び実施例2においては、係止部53を、全周にわたって径方向内側に突出したリング状のリブ531、或いは回転対称形状とした複数のリブ532によって構成した例を示したが、これらに何ら限定されるものではなく、上記以外の形状によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 点火コイル
2 コイル本体部
3 高圧タワー部
4 ブーツ部
41 導電部材
411 基端側接触部
412 先端側接触部
413 被係止径大部
5 シール部材
51 基端側嵌合部
52 先端側嵌合部
53 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル及び二次コイルをコイルケース内に収容してなるコイル本体部と、該コイル本体部において発生させた高電圧を出力する高圧出力端子を内部に保持した高圧タワー部と、上記高圧出力端子とスパークプラグとを導通させる導電部材を内側に備える筒状のブーツ部と、該ブーツ部と上記高圧タワー部とを連結すると共に両者の間をシールするシール部材とを備えた内燃機関用の点火コイルであって、
上記導電部材は、上記高圧出力端子に接触する基端側接触部と、上記スパークプラグに接触する先端側接触部とを備え、該先端側接触部が、上記スパークプラグの基端部に設けられた高圧端子部を覆うよう構成されており、また、上記基端側接触部と上記先端側接触部との間において、部分的に外径を大きくした被係止径大部を備え、
上記シール部材は、上記高圧タワー部と嵌合する基端側嵌合部と、上記ブーツ部と嵌合する先端側嵌合部と、上記導電部材に設けた上記被係止径大部を先端側から係止すると共に弾性的に拡開できるよう構成された係止部を備えていることを特徴とする内燃機関用の点火コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用の点火コイルにおいて、上記シール部材の上記係止部の外周には隙間部が形成されていることを特徴とする内燃機関用の点火コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関用の点火コイルにおいて、上記係止部の先端には径方向内側へ行くほど基端側へ向かうように傾斜した面取部が形成されていることを特徴とする内燃機関用の点火コイル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用の点火コイルにおいて、上記導電部材は、上記被係止径大部と上記先端側接触部との間において部分的に外径を大きくした調芯用径大部を備え、上記調芯用径大部は、上記ブーツ部の内周面に当接することにより該ブーツ部に対する上記導電部材の軸芯の平行度を保つよう構成してあることを特徴とする内燃機関用の点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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