説明

内燃機関用点火コイル

【課題】屈曲部の存在するプラグホールに対しても、高圧ジョイントは、電線部を曲げながら容易に挿入することが出来る内燃機関点火コイルを提供する。
【解決手段】内燃機関用点火コイル10において、点火コイル本体10a及び点火プラグ18に接続される高圧ジョイント10bは、上部ソケット11a、中央筒部11b、下部ソケット11cを一体化した絶縁外装材11と、中央筒部11bの孔に挿通される電線12及びその端子15、17と、これら端子15、17に接続される第1,第2コイルスプリング13、14とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車エンジンの点火プラグにおいて火花放電を発生させるために高電圧を供給するモールド型の内燃機関用点火コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一次コイルと、二次コイルと、この二次コイルと前記一次コイルとを磁気的に結合する鉄心とを有し、前記二次コイルに発生した高電圧をエンジンに取り付けられた点火プラグに供給する高圧供給手段を絶縁ケースと点火コイル間に配置し、前記一次コイルと前記二次コイルと前記鉄心とを、前記絶縁ケースに収容し、熱硬化性樹脂で注型硬化されたモールド型の内燃機関用点火コイルが知られている。
【0003】
例えば、特開2000−257542号公報には、底に点火プラグを取り付けた内燃機関のプラグホールの上端部内周に弾力的に突入すると共に、点火コイルの高圧端子を有する高圧筒部を内周に弾力的に保持する中空筒部と、該中空筒部の回りから張出し、前記プラグホールの上端開口の回りに弾力的に接触して上記プラグホールの上端開口を密閉するシール鍔とを一体に有する上部ソケット、及び前記プラグホールの底に取付けられた点火プラグの頂部端子を有する上部に弾力的に被さる下部ソケットを備えた絶縁外装材と、該絶縁外装材中に上下方向に支持され、点火コイルの高圧端子と点火プラグの頂部端子とを電気的に接続する導電部材とからなり、前記上部ソケットのシール鍔にはプラグホールの内部を外気に連通する通気孔が開設された内燃機関の点火コイルを点火プラグに接続する高圧ジョイントにおいて、上記通気孔に、常時は閉じ、プラグホール内の内圧が高まると、内圧の高まりによって開き、プラグホール内の空気を外に放出する逆止弁を設けたことを特徴とする内燃機関の点火コイルを点火プラグに接続する高圧ジョイントが記載されている。(特許文献1参照)
【0004】
また、特開2008−251895号公報には、一次ボビンおよび二次ボビンに巻回されている一次コイルおよび二次コイルと、前記各コイルと磁気的に結合させる鉄心とからなる鉄心−コイル組立体と、前記鉄心−コイル組立体と、内部に充填され、固化された絶縁充填樹脂部材とを収納する絶縁ケースと、を少なくとも備え、前記二次コイルに発生した高電圧が点火プラグで発生するように接続されている内燃機関用点火コイルにおいて、前記絶縁ケースの下部突出部に上部が圧入し、点火プラグに下部が圧入するプロテクタと、前記プロテクタの内外全周面に形成されている弾性材と、から少なくとも構成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイルが記載されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−257542号公報
【特許文献2】特開2008−251895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、エンジンの性能向上による点火コイル周辺の部品点数の増加、小型化等により、点火コイルを取付けるシリンダーヘッド上面から点火プラグに至るまでのプラグホールの形状にも、屈曲した形状のものが現れてきており、上記特許文献1の高圧ジョイントを上部ソケット、中継ジョイント、下部ソケットにより構成しているものでは当然に挿入不可となり、また、特許文献2のようにプロテクタの内外全周面を熱可塑性エラストマーのような弾性材で一体形成したものでも電気的接続にスプリングを用いているものでは、屈曲部で無理にスプリングが曲げられてしまう為、スプリングの性能が十分発揮できず点火プラグでの火花放電が不安定になる恐れがあり改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記した問題を解決するために提案されたもので、屈曲部の存在するプラグホールに対しても、高圧ジョイントは、電線部を曲げながら容易に挿入することが出来る内燃機関用点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、外側に突出した高圧筒部を有し、一次コイル及び二次コイルをそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン及び二次コイルボビンを磁気的に結合する鉄心と、前記二次コイルからの高電圧を外部に出力する高圧端子と、これらを収納する絶縁ケースにより構成された点火コイル本体と、上部ソケット、中央筒部、下部ソケットを絶縁性の塑性材で一体化した絶縁外装材を有し、前記絶縁外装材の中央筒部の孔内に挿通されて両端部が前記各ソケット内に突出する電線と、一端に突起を有し各端部が前記電線に接続された第1、第2端子と、一端が点火プラグに接続され他端が前記第1端子に接続される第1コイルスプリングと、前記高圧筒部内に挿入されて一端が前記高圧端子に接続され他端が前記第2端子に接続される第2コイルスプリングと、により構成された高圧ジョイントと、を備えたことを特徴とする内燃機関用点火コイルである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記電線の一端が前記第1端子に固定され、前記電線の他端が前記第2端子に対して移動可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイルである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内燃機関用点火コイルによれば、屈曲部の存在するプラグホールに対しても、高圧ジョイントは、中央筒部を曲げながら容易に挿入することが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本発明の実施例に係る内燃機関用点火コイルの断面図、(b)は、(a)に示した上部ソケットの拡大断面図、(c)は、(a)に示した下部ソケットの拡大断面図である。
【図2】図1の使用状態を示す概略断面図である。
【図3】(a)(b)(c)は、図1(a)に示した高圧ジョイントの組み立て手順を示す概略説明図で、図3(d)(e)(f)は、それぞれ図3(a)(b)(c)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0013】
図1(a)は、本発明の実施例に係る内燃機関用点火コイルの断面図、図1(b)は、図1(a)に示した上部ソケットの一部を切り欠いた拡大断面図、図1(c)は、図1(a)に示した下部ソケットの拡大断面図、図2は、図1の使用状態を示す概略断面図、図3(a)(b)(c)は、図1(a)に示した高圧ジョイント10bの組み立て手順を示す概略説明図で、図3(d)(e)(f)は、それぞれ図3(a)(b)(c)の要部拡大図である。
【0014】
図1(a)〜(c)において、内燃機関用点火コイル10は、点火コイル本体10aと、高圧ジョイント10bとから構成されている。
【0015】
点火コイル本体10aは、絶縁ケース1から外側に突出した高圧筒部1aを有し、一次コイル2及び二次コイル3をそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン2a及び二次コイルボビン3aを磁気的に結合する鉄心4とを絶縁ケース1内に収容して、絶縁ケース1の内部に絶縁樹脂5を充填固化して形成され、外部に二次コイル3からの高電圧を出力する高圧端子6が設けられている。
【0016】
高圧ジョイント10bは、可撓性の絶縁外装材11、電線(以下は銅線で説明)12、第1、第2コイルスプリング13、14、及び第1端子15、端子接続部材16、第2端子17とから構成されている。
【0017】
次に、高圧ジョイント10bの組み立てについて、図3(a)(b)(c)(d)(e)(f)を参照して説明する。
【0018】
図3(a)(d)を参照して、先ず、第1端子15に銅線12の一端を取り付ける場合について説明する。絶縁外装材11は、絶縁性の塑性材をインサートモールド成形し、上部ソケット11a、中央筒部11b、下部ソケット11cを一体化し、中央筒部11bの下部開口に第1端子15を固定したものである。第1端子15は、金属製で厚み方向の一端に受口15a、他端に突起15bを有している。そして、銅線12を、上部ソケット11aの上部から中央筒部11bの孔11d内に一端12aから挿入し、第1端子15の受口15aを挿通して下部ソケット11c内に一定長突出させる。この状態において、銅線12は、他端12bが上部ソケット11a内に一定長突出している。第1端子15において、孔15cは、上部開口が径方向の中心位置であるが、下部方向の途中から端に向かって湾曲しており、下部開口が、端にずれた位置である。そのため、銅線12は、孔15cを通過すると第1端子15から突出し端に向かって湾曲する。
【0019】
次に、図3(b)(e)を参照して、第1端子15に端子接続部材16を取り付ける場合について説明する。端子接続部材16は、一端に環状の壁部16aを有して受口16cが設けられるとともに他端に突起16bを有して構成され、導電性の素材からなる。第1コイルスプリング13の一端に端子接続部材16の突起16bを係合して、第1コイルスプリング13の一端に端子接続部材16を保持させる。そして、第1コイルスプリング13を保持しながら端子接続部材16の受口16cを第1端子15の突起15bに係合する。このとき、第1端子15の突起15bから突出している銅線12の一端12aは、突起15bの端面に沿って折り曲げられ、第1端子15の突起15bの端面と端子接続部材16の受口16cの底面16d間に固定され、第1端子15と端子接続部材16が一体化される。
【0020】
次に、図3(c)(f)を参照して、第2端子17を銅線12の他端12bに取り付ける場合について説明する。第2端子17は、一端に受口17a、他端に突起17bを有し、受口17aから突起17bの先端に向かって上向きに先細りする三角錘状の貫通孔17cが設けられ、導電性の素材からなる。第2コイルスプリング14の一端に第2端子17の突起17bを係合して第2コイルスプリング14に第2端子17を保持させる。そして、第2コイルスプリング14を保持しながら第2端子17の受口17aに銅線12の他端12bを差し込ませ、第2端子17の突起17bから銅線12の他端12bを突出させる。この状態において、第2端子17は、銅線12の他端12bが突起17bの先端部に接触するとともに移動可能に接続され、高圧ジョイント10bの組み立てが完了する。
【0021】
高圧ジョイント10bは、上部ソケット11aが高圧筒部1aに装着され、コイルスプリング14の自由端が高圧筒部1aの筒内に挿入されて、高圧端子6と電気的に接続され、点火コイル本体10aに取り付けられて内燃機関用点火コイル10を構成する。
【0022】
このように構成された内燃機関用点火コイル10は、屈曲部の存在するプラグホールに対しても、高圧ジョイント10bの中央筒部11bを曲げながら挿入することができるので、下部ソケット11cを点火プラグ18に装着してコイルスプリング13を点火プラグ18の頂部端子18aに電気的に接続して、容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 絶縁ケース
1a 高圧筒部
2 一次コイル
2a 一次コイルボビン
3 二次コイル
3a 二次コイルボビン
4 鉄心
5 絶縁樹脂
6 高圧端子
10 内燃機関用点火コイル
10a 点火コイル本体
10b 高圧ジョイント
11 絶縁外装材
11a 上部ソケット
11b 中央筒部
11c 下部ソケット
12 銅線(電線)
12a 一端部
12b 他端部
13 第1コイルスプリング
14 第2コイルスプリング
15 第1端子
15a,16c,17a 受口
15b,16b,17b 突起
11d,15c,17c 孔
16 端子接続部材
16a 壁部
17 第2端子
18 点火プラグ
18a 頂部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に突出した高圧筒部を有し、一次コイル及び二次コイルをそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン及び二次コイルボビンを磁気的に結合する鉄心と、前記二次コイルからの高電圧を外部に出力する高圧端子と、これらを収納する絶縁ケースにより構成された点火コイル本体と、
上部ソケット、中央筒部、下部ソケットを絶縁性の塑性材で一体化した絶縁外装材を有し、前記絶縁外装材の中央筒部の孔内に挿通されて両端部が前記各ソケット内に突出する電線と、一端に突起を有し各端部が前記電線に接続された第1、第2端子と、一端が点火プラグに接続され他端が前記第1端子に接続される第1コイルスプリングと、前記高圧筒部内に挿入されて一端が前記高圧端子に接続され他端が前記第2端子に接続される第2コイルスプリングと、により構成された高圧ジョイントと、を備えたことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記電線の一端が前記第1端子に固定され、前記電線の他端が前記第2端子に対して移動可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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