説明

内皮細胞の誘引物質を含む植込み型医療装具の被膜

本発明では、内皮細胞の化学誘引物質を含む被膜ならびにその製造方法および使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その教示が参照により本明細書に組み込まれている、2005年2月17日に出願された米国特許仮出願第60/654212号明細書に対する優先権を主張する。
[背景]
【0002】
[発明の分野]
本発明は、一般に、薬物送達血管ステントなどの植込み型医療装具のための被膜に関する。
[関連技術の説明]
【0003】
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、心疾患を治療する処置である。バルーン部分を有するカテーテルアセンブリーは、上腕動脈または大腿動脈を経由して患者の心血管系内に経皮的に導入される。カテーテルアセンブリーは、冠状血管系を通して、バルーン部分が閉塞性病巣を横切って配置されるまで進められる。病巣を横切って配置されると、バルーンを、所定の大きさまで膨張させて病巣のアテローム動脈硬化性プラークを半径方向に押しつけ、管腔壁を再造形する。次いでこのバルーンをより小さな外形にしぼませ、患者の血管系からカテーテルが引き抜けるようにする。
【0004】
上記処置に関連した問題として、バルーンをしぼませた後に崩壊し、血液導管を閉塞する可能性のある、内膜フラップまたは損傷動脈内層の形成が挙げられる。その上、この処置後、数ヶ月にわたって動脈の血栓症および再狭窄を発症する恐れがあり、これは、別の血管形成処置または外科的バイパス手術を必要とする場合がある。動脈内層の崩壊による動脈の部分閉塞または全閉塞を低減し、血栓症または再狭窄の可能性を低減するために、動脈内にステントを植え込み、動脈を開いた状態に維持する。
【0005】
薬物送達ステントにより、10年余の間、心血管インターベンションにとって難問であった、PCI後のステント内再狭窄(ISR)の発生率が減少した(例えば、Serruys, P.W., et al., J. Am. Coll. Cardiol. 39:393-399 (2002)を参照)。しかし、大容量の冠動脈インターベンションおよびその拡大する使用を考えると、ISRは、依然として大きな問題を提起する。ISRの病態生理機構には、血管壁および血液の細胞成分と無細胞成分の間の相互作用が関与する。PCI中の内皮への損傷は、ISR発症の主な要因を構成する(例えば、Kipshidze, N., et al., J. Am. Coll. Cardiol. 44:733-739 (2004)を参照)。
【0006】
本発明の実施形態は、こうした問題ならびに当業者にとって明白な他の問題に対処する。
[概要]
【0007】
本発明では、内皮細胞の化学誘引物質を含む被膜が提供される。この被膜は、化学誘引物質の制御放出を提供することができる。いくつかの実施形態では、被膜には、化学誘引物質の放出を制御できる1種または複数種のポリマーを含むことができる。化学誘引物質は、内皮細胞または内皮前駆細胞を表面まで補充するのに十分な量で、ポリマー被膜を通じ、吸収タンパク質および細胞の層(植込み後の急性期)を通じ、新生内膜(長期間期)を通じて管腔表面まで拡散することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、放出プロファイルには、化学誘引物質の初期のバースト放出とその後の徐放が含まれる。他のいくつかの実施形態では、放出プロファイルは、ゼロ次徐放であってもよい。
【0009】
化学誘引物質および任意選択で他の生理活性剤は、被膜中に基質の形で混合することができる。化学誘引物質は、いくつかの実施形態では、両親媒性ブロックコポリマーとなることのできる、1種または複数種の生体適合性ポリマーとともに被膜中に処方することができる。いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、物理的または化学的結合を介して被膜に結合することができる。物理的結合は、例えば、水素結合または相互貫入網目であってもよい。化学結合は、連結剤を介して生じ得る。
【0010】
本明細書に記載の化学誘引物質とともに被膜内に、任意の生理活性剤を含めることができる。生理活性剤のいくつかの例として、siRNAおよび/または内皮細胞の遊走を阻止する他のオリゴヌクレオチドが挙げられる。生理活性剤は、リゾホスファチジン酸(LPA)、またはスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)であってもよい。LPAは、幅広い種類の正常および悪性細胞型内で、増殖因子様活性を生じることのできる「生理活性」リン脂質である。LPAは、創傷治癒などの正常な生理的プロセスにおいて、および血管緊張、血管統合性、または生殖において重要な役割を果たす。他のいくつかの代表的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ABT−578)、γ−ヒリドゥン(hiridun)、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシレート、ミドスタウリン、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、ならびにそれらの組合せである。
【0011】
被膜は、血管病状を治療、防止、緩和、または低減するか、あるいは治癒促進効果を提供するために患者中に植え込むことのできるステントなどの植込み型装具上に形成することができる。こうした状態の例として、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または血管穿孔、血管動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、(静脈および人工移植片に対しての)吻合性(anastomotic)増殖、胆管閉塞症、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、あるいはそれらの組合せが挙げられる。
[詳細な説明]
【0012】
本発明では、内皮細胞の化学誘因物質を含む被膜が提供される。この被膜は、化学誘引物質の制御放出を提供することができる。いくつかの実施形態では、被膜には、化学誘引物質の放出を制御できる1種または複数種のポリマーを含むことができる。化学誘引物質は、内皮細胞または内皮前駆細胞を表面まで補充するのに十分な量で、ポリマー被膜を通じ、吸収タンパク質および細胞の層(植込み後の急性期)を通じ、新生内膜(長期間期)を通じて管腔表面まで拡散することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、放出プロファイルには、化学誘引物質の初期のバースト放出とその後の徐放が含まれる。他のいくつかの実施形態では、放出プロファイルは、ゼロ次徐放であってもよい。
【0014】
化学誘引物質および任意選択で他の生理活性剤は、被膜中に混合することができる。いくつかの実施形態では、化学誘引物質および被膜材料のブレンドまたは混合物は、基質を形成することができる。化学誘引物質は、いくつかの実施形態では、両親媒性ブロックコポリマーとなることのできる、1種または複数種の生体適合性ポリマーとともに被膜中に処方することができる。いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、物理的または化学的結合を介して被膜に結合することができる。物理的結合は、例えば、水素結合または相互貫入網目であってもよい。化学結合は、連結剤を介して生じ得る。
【0015】
これらの、または他の実施形態では、化学誘引物質は、医療装具の表面に結合することができる。これらの実施形態のいくつかでは、医療装具が、ポリマーで形成されているか、またはポリマーで被覆した金属で形成されている場合、この表面は、(例えば、シロキサンで修飾されている)修飾金属表面またはポリマー表面であってもよい。化学誘引物質は、物理的または化学的結合を用いて被膜に結合することができる。
【0016】
物理的結合は、例えば、水素結合、相互貫入分子、または相互貫入網目であってもよい。化学結合には、連結剤または表面と被膜材料との間の直接結合を用いることができる。
【0017】
本明細書に記載の化学誘引物質とともに被膜内に、任意の生理活性剤を含めることができる。生理活性剤のいくつかの例として、siRNAおよび/または内皮細胞遊走を阻止する他のオリゴヌクレオチドが挙げられる。生理活性剤は、リゾホスファチジン酸(LPA)、またはスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)であってもよい。LPAは、幅広い種類の正常および悪性細胞型内で、増殖因子様活性を生じることのできる「生理活性」リン脂質である。LPAは、創傷治癒などの正常な生理的プロセスにおいて、および血管緊張、血管完全性、または生殖において重要な役割を果たす。他のいくつかの代表的な生理活性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−l−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン,40−エピ−(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ABT−578)、γ−ヒリドゥン、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシレート、ミドスタウリン、そのプロドラッグ、そのコドラッグならびにそれらの組合せである。
【0018】
被膜は、血管病状を治療、防止、緩和、または低減するか、あるいは治癒促進効果を提供するために患者中に植え込むことのできるステントなどの植込み型装具上に形成することができる。こうした病状の例として、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離または血管穿孔、血管動脈瘤、脆弱性プラーク、慢性完全閉塞、跛行、吻合性増殖(静脈および人工移植片に対して)、胆管閉塞症、尿管閉塞、腫瘍性閉塞、あるいはそれらの組合せが挙げられる。
【0019】
化学誘引物質
本明細書で使用する場合、化学誘引物質は、内皮細胞を誘引することのできる任意の合成または天然分子を含む。いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、有効な数の内皮細胞を誘引することのできる任意の合成または天然分子を含む。誘引物質は、こうした細胞に対してある程度の選択性を一般に有する。化学誘引物質は、内皮細胞上に示差的に発現する接着受容体に結合できる任意の合成または天然分子も含む。このような接着受容体の1つとして、インテグリンがなることができる。いくつかの代表的な化学誘引物質として、以下に限らないが、インテグリン結合小分子、RGDペプチドまたは環状RGDペプチド(cRGD)、合成環状RGD(cRGD)模倣物、および内皮細胞上に示差的に発現する他の接着受容体に結合する小分子が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、特定のRGDペプチドまたは環状RGDペプチド(cRGD)を限定して除外することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、化学誘引物質には、内皮細胞中に存在するICAM(細胞間接着分子)分子またはVCAM(血管細胞接着分子)分子に結合できる分子がなることができる。このような化学誘引物質には、例えば、内皮細胞中のICAMまたはVCAMに結合している受容体がなることができ、この受容体として、以下に限らないが、デコイ受容体3(DcR3)、ICAMおよびVCAMに優先的に結合する腫瘍壊死因子(TNF)、細胞外領域で高次構造上の変化を有し、リガンドICAM−1に対する結合親和性を高める(リンパ球に発現した)β_2インテグリンLFA−1(LFA−1Af)、またはそれらの組合せを挙げることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、カプセル形状、例えばリポソームまたは生分解性ポリマーなどの他の材料でのカプセル化物として使用することができる。カプセル化された化学誘引物質は、カテーテルとともに使用することができ、いくつかの実施形態では、引き続いてカテーテルから放出することができる。
【0023】
cRGD模倣物またはRGD模倣物
本明細書に記載のcRGD模倣物またはRGD模倣物には、環状Arg−Gly−Aspペプチドの修飾から生じる任意のペプチドまたはペプチド模倣物を含む。この修飾は、ペプチドのペンダント基および/または骨格に対して行うことができる。ペプチド模倣物の合成を含めたペプチド合成は、十分に文書化されており、例えば、組合せ化学を用いて容易に実現することができる。
【0024】
cRGD模倣物またはRGD模倣物のいくつかの例として、IIb/IIIbアンタゴニストなどのαβアンタゴニスト(Coller, B.S., Thromb. Haemost. 86(1):427-43 (2001)(概説))(その一例は、Abciximaxである(Blindt, R., J. Mol. Cell. Cardiol. 32:2195-2206 (2000)))、XJ 735(Srivatsa, S.S., et al., Cardiovasc. Res. 36:408-428 (1997))、抗βインテグリン抗体Fl1、cRGD(Sajid, M., et al., Am. J. Physiol. Cell Physiol., 285:C1330-1338 (2003))、ならびにラミニン由来SIKVAV(Fittkau, M.H., et al, Biomaterials, 26:167-174 (2005))、ラミニン由来YIGSR(Kouvroukoglou, S., et al, Biomaterials, 21:1725-1733 (2000))、KQAGDV、およびVAPG(Mann, B.K., J. Biomed. Mater. Res. 60(1):86-93 (2002))などの他の配列が挙げられる。
【0025】
ペプチド模倣物を含めたペプチド合成の基本的な手順を以下に記述する。
【0026】
ペプチド合成を開始する前に、FMOC(9−フルオロメチルカルバメート)または他の保護基でアミノ酸(出発材料)のアミン末端を保護し、メリフィールド樹脂(遊離アミン)などの固体担体を開始剤として用いる。次いで、ステップ(1)からステップ(3)の反応を実施し、所望のペプチドが得られるまで繰り返す。(1)カルボジイミド化学反応を用いて遊離アミンをカルボキシル末端と反応させる、(2)アミノ酸配列を精製する、(3)保護基、例えばFMOC保護基を弱酸性条件下で除去し、遊離アミンを得る。次いでペプチドを樹脂から切断することにより、遊離したそのままのペプチドまたはペプチド模倣物を得ることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、被膜は、上述した任意の化学誘引物質を限定して除外することができる。例えば、被膜は、RGDペプチドまたは環状RGDペプチド(cRGD)を限定して除外することができる。
【0028】
リンカー
いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、不安定リンカーによって、または相互貫入網目などの物理的相互作用によってポリマー基質に結合できる。不安定リンカーは、刺激に対して敏感なリンカーとすることができる。例えば、リンカーは、加水分解性リンカーまたは酵素分解性リンカーであってもよい。
【0029】
加水分解性リンカーは、生理的条件下で、水の存在中で分解することができる。言い換えれば、加水分解性リンカーに対する刺激は、水の存在である。加水分解性リンカーは、リンカーの反応基によって化学誘引物質とポリマーを結合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ基、チオール基、および/またはカルボン酸基を含むアミノ酸基とすることができる。加水分解性リンカーを形成するためのいくつかの代表的な方策には:
(1)リジンのε−アミノ基(ポリマーに組み込むことができる)およびタンパク質のα−アミノ基。アミンはポリマー骨格(スペーサー、例えばPEGまたはアルキル鎖有り、あるいは無し)上にあることができる。これにより、アミド結合、チオ尿素結合、アルキルアミン結合、またはウレタン結合が得られる。
(2)チオエーテル結合を形成するチオール基または遊離システイン。
(3)ビニルスルホン(R−SO−CH=CH)と結合できるシステイン上のチオール基。
(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸上のカルボン酸基。
が含まれる。
【0030】
加水分解性結合のいくつかの例として、アミン基が、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)などのコハク酸エステルと反応することにより生じることのできるアミド結合、ジスルフィド(R−L1−S−S−L2−R’)(ここで、リンカーL1およびL2の長さは、加水分解を制御する)などのチオール結合、またはペプチドのカルボキシ末端がポリマー骨格(スペーサー、例えばPEGまたはアルキル鎖を有する、または有していない)上のヒドロキシルとカップリングすることにより形成するエステル結合が挙げられる。エステル化は、当分野で確立した方法(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下でのカルボジイミド化学反応)を用いて行うことができる。
【0031】
酵素分解性リンカー/結合は、酵素によって分解することができ、体または臓器の特定領域を標的とすることが多い。言い換えれば、酵素分解性リンカーに対する刺激は、酵素の存在である。例えば、酵素によって切断することができるリンカー中に、特定のジペプチド配列を組み入れることができる。酵素分解性リンカーまたは結合のいくつかの例として、それだけに限らないが、ジペプチドとポリマーの間の自己犠牲的なp−アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)スペーサー、フェニルアニリン−リジン、バリン−システインなどのジペプチド、アラニル−バリン、アラニル−プロリン、グリシル−プロリンなどのPEG/ジペプチド結合が挙げられる。
【0032】
他のいくつかのリンカー/結合は、"Biodegradable Polymers for Protein and Peptide Drug Delivery" BioconjugateChem. 1995, 6:332-351;M.P. Lutolf and J.A. Hubbell, Biomacromolecules2003, 4.313-722;および米国特許出願第10/871658号明細書で見つけることができる。いくつかの追加の代表的な結合化学反応は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている、米国特許出願第10/871658号明細書に記載されている。
【0033】
生体適合性ポリマー
任意の生体適合性ポリマーは、本明細書に記載の化学誘引物質とともに被膜を形成することができる。生体適合性ポリマーは、生分解性(生体浸食性または生体吸収性の両方)あるいは非分解性であってもよく、親水性あるいは疎水性であってもよい。
【0034】
代表的な生体適合性ポリマーとして、以下に限らないが、ポリ(エステルアミド)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート),ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)などのポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシバレレート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノート)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(4−ヒドロキシオクタノエート)などのポリ(4−ヒドロキシアルカノエート)、および本明細書に記載の3−ヒドロキシアルカノエートモノマーまたは4−ヒドロキシアルカノエートモノマーのいずれかを含むコポリマーあるいはそのブレンド、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド,ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(アンヒドリド)、ポリ(チロシンカーボネート)およびその誘導体、ポリ(チロシンエステル)およびその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー、アクリルポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルモノマー同士のコポリマーおよびオレフィンとのコポリマー、ナイロン66、ポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(グリセリルセバケート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(sec−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセテート、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリエーテル、コポリ(エーテルエステル)(例えば、ポリ(エチレンオキシド/ポリ(乳酸)(PEO/PLA))、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどのヒドロキシル含有モノマーのポリマーならびにコポリマー、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、およびn−ビニルピロリドン(VP)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレートなどのカルボン酸含有モノマー、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−コ−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−コ−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、キトサン、アルギン酸塩、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸のフラグメントおよび誘導体、ヘパリン,ヘパリンのフラグメントおよび誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、ポリサッカライド、キトサン、アルギン酸塩などの生体分子、またはそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコポリマーは、前述のポリマーのいずれか1つを除外することができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、およびポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)の各用語は、それぞれポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)の各用語と互換的に使用することができる。
【0036】
生体有益性材料
いくつかの実施形態では、化学誘引物質は、生体有益性材料とともに被膜に含めることができる。その配合物は、混合するか、ブレンドするか、あるいは別々の層にパターン形成または配置することができる。本明細書に記載の被膜において有用な生体有益性材料は、ポリマーであっても非ポリマーであってもよい。生体有益性材料は、それを患者に首尾よく導入することができるほど十分に無毒性、非抗原性および非免疫原性であることが好ましい。生体有益性材料は、非汚染性、血液適合性、有効な非血栓形成性、または抗炎症性を有しておりこれらすべてが、医薬活性剤の放出に依存することがないことで装具の生体適合性を高めるものである。
【0037】
代表的な生体有益性材料として、以下に限らないが、ポリ(エチレングリコール)、コポリ(エーテルエステル)などのポリエーテル、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどのヒドロキシル含有モノマーのポリマーならびにコポリマー、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)およびn−ビニルピロリドン(VP)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのカルボン酸含有モノマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−コ−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−コ−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸のフラグメントおよび誘導体,ヘパリン、ヘパリンのフラグメントおよび誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、ポリサッカライド、キトサン、アルギン酸塩、シリコーン、PolyActive(商標)、およびそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、被膜は、前述のポリマーのいずれも除外することができる。
【0038】
用語PolyActive(商標)は、可撓性のポリ(エチレングリコール)およびポリ(ブチレンテレフタレート)ブロック(PEGT/PBT)を有するブロックコポリマーを指す。PolyActive(商標)は、PEGおよびPBTのようなセグメントを有するAB、ABA、BABコポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロックポリ(エチレングリコール)(PEG−PBT−PEG)を含めることを意図している。
【0039】
好ましい実施形態では、生体有益性材料には、ポリ(エチレングリコール)(PEG)やポリアルキレンオキシドなどのポリエーテルがなることができる。
【0040】
生理活性剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1種または複数種の化学誘引物質を有する被膜は、1種または複数種の生理活性剤を任意選択で含むことができる。こうした生理活性剤は、治療薬、予防薬、または診断薬である任意の薬剤とすることができる。これらの薬剤は、抗増殖性または抗炎症性を有することができるか、あるいは抗腫瘍性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗血栓性、抗有糸分裂性、抗菌性、抗アレルギー性、または抗酸化性などの他の性質を有することができる。
【0041】
これらの薬剤は、細胞分裂阻害剤、(NOの放出または生成によらないで)内皮の治癒を促進する薬剤、あるいは平滑筋細胞の増殖を抑制しながら、内皮細胞の付着、遊走および増殖を促進する薬剤とすることができる。適当な治療薬および予防薬の例として、合成無機化合物および合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、ポリサッカライドおよび他の糖、脂質、ならびに治療活性、予防活性または診断活性を有するDNA核酸配列およびRNA核酸配列があげられる。核酸配列として、遺伝子、相補DNAと結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。生理活性剤の他の例として、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーターなどの阻害剤または血栓溶解剤、免疫付与のための抗原、ホルモンおよび成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、およびリボザイム、ならびに遺伝子療法で使用するためのレトロウイルスベクターが挙げられる。抗増殖性薬剤の例として、ラパマイシンおよびその機能誘導体または構造誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、およびその機能的誘導体または構造的誘導体、パクリタキセルならびにその機能的誘導体および構造的誘導体が挙げられる。ラパマイシン誘導体の例として、ABT−578、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび40−O−テトラゾール−ラパマイシンが挙げられる。パクリタキセル誘導体の例として、ドセタキセルが挙げられる。抗腫瘍薬および/または抗有糸分裂薬の例として、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(例えば、Pharmacia&Upjohn,Peapack N.J.からのAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのMutamycin(登録商標))が挙げられる。このような抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン物質、および抗トロンビン物質の例として、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン物質)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、Angiomax(Biogen,Inc.,Cambridge,Mass.)などのトロンビン抑制物質、カルシウムチャンネルブロッカー(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGP)アンタゴニスト、魚油(ω 3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテアーゼ(thioprotease)阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、種々のビタミンなどの栄養補助食品、およびそれらの組合せが挙げられる。ステロイド系および非ステロイド系の抗炎症性薬剤を含めた抗炎症性薬剤の例として、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、コルチコステロイドまたはそれらの組合せが挙げられる。このような細胞分裂阻害物質の例として、アンジオペプチン(angiopeptin)と、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからのPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))などのアンジオテンシン変換酵素阻害剤が挙げられる。抗アレルギー剤の例は、ペルミロラストカリウムである。適切と思われる他の治療物質または治療薬として、αインターフェロン、ピメクロリムス、イマチニブメシレート、ミドスタウリンおよび遺伝子改変した上皮細胞が挙げられる。前述の物質は、そのプロドラッグまたはコドラッグの形態で使用することもできる。前述の物質は、その代謝産物および/または代謝産物のプロドラッグも含むことができる。前述の物質は、例として列挙しており、限定することを意図していない。現在入手できる他の活性薬剤、または将来開発されるかもしれない他の活性薬剤も同様に適用できる。
【0042】
好都合な治療効果をもたらすために必要な生理活性剤の用量または濃度は、生理活性剤が有毒な効果をもたらすレベルより低く、治療結果が得られないレベルより高くあるべきである。生理活性剤の用量または濃度は、患者の特定の状況、傷害の性質、望まれる治療の性質、投与した成分が血管部位に存在する時間、および他の活性薬剤を使用する場合、その物質または物質の組合せの性質または種類などの要因に依存し得る。治療上有効な用量は、例えば、適当な動物モデル系からの血管に注入し、免疫組織化学法、蛍光法または電子顕微鏡観察法を使用して薬剤およびその効果を検出することにより、または適当なインビトロ研究を行うことにより、実験的に決定することができる。用量を決定するための標準的な薬理試験法は、当業者によって理解されている。
【0043】
植込み型装具の例
本明細書で使用する場合、植込み型装具は、ヒトまたは動物の患者に植え込むことのできる任意の適当な医療基材とすることができる。このような植込み型装具の例として、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステント−移植片、移植片(例えば、大動脈移植片)、心臓弁プロテーゼ(例えば、人工心臓弁)または血管移植片、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、カテーテル、心内膜リード(例えば、Guidant Corporation,Santa Clara,CAから入手できるFINELINEおよびENDOTAK)、ならびに吻合コネクターなどの吻合を促進する装具が挙げられる。装具の根本的な構造は、実質的に任意の設計とすることができる。装具は、それだけに限らないが、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR 108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTIN1TE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム、またはそれらの組合せなどの金属材料あるいは合金で製造することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.,Jenkintown,PAから入手できる、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム、および10%のモリブデンからなる。「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム、および10%のモリブデンからなる。生体吸収性ポリマーまたは生体安定性ポリマーから製造された装具も、本発明の実施形態で使用することができるであろう。その装具は、例えば、生体吸収性ステントとなることができる。
【0044】
使用方法
本発明の実施形態によれば、化学誘引物質は、植込み型装具またはプロテーゼ、例えばステント中に含めることができる。1種または複数種の活性薬剤を含む装具では、装具の送達および拡張の間、薬剤はステントなどの装具上にとどまり、所望の速度で、所定の継続時間、植込み部位で放出されるであろう。
【0045】
装具はステントであることが好ましい。本明細書に記載のステントは、例として、腫瘍によって胆管、食道、気管/気管支および他の生体内通路中に生じた閉塞症の治療を含めた様々な医療処置に有用である。上述した被膜を有するステントは、平滑筋細胞の異常または不適切な遊走および増殖、血栓症ならびに再狭窄によって生じた血管の閉塞領域を治療するのに特に有用である。ステントは、動脈および静脈両方の様々な血管中に配置することができる。部位の代表的な例として、腸骨動脈、腎動脈、および冠動脈が挙げられる。
【0046】
ステントの植込みのために、血管造影を最初に行い、ステント治療のための適切な位置を決定する。血管造影は、x線で撮影する際に、通常、動脈または静脈中に挿入したカテーテルを通してX線造影剤を注入することにより実現する。次いで、病巣または提案された治療部位を通してガイドワイヤーを進める。ステントをつぶれた形状で通路中に挿入できる、送達カテーテルがガイドワイヤー上を通過する。送達カテーテルは、経皮的に、あるいは手術によって大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈または上腕静脈内に挿入し、蛍光透視による誘導下、カテーテルを操作することによって脈管系を通して適切な血管中に進める。次いで、上述の被膜を有するステントを、所望の治療領域で膨らませる。挿入後の血管造影も利用して、適切な位置を確認することができる。
【0047】
本発明の特定の実施形態を示し、説明してきたが、本発明から逸脱することなく、より広い態様において変更および改変を行うことができることが、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、添付した特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に該当するすべてのこのような変更および改変をその範囲内に包含することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内皮細胞の化学誘引物質を備える医療装具。
【請求項2】
前記化学誘引物質が、RGDペプチドまたは環状RGDペプチドではない、請求項1に記載の医療装具。
【請求項3】
ポリマーおよび前記化学誘引物質を含む被膜を有する請求項1に記載の医療装具。
【請求項4】
前記化学誘引物質が、内皮細胞上に示差的に発現する接着受容体に結合する請求項1に記載の医療装具。
【請求項5】
前記化学誘引物質が、細胞間接着分子(ICAM)または血管細胞接着分子(VCAM)に結合する受容体である請求項1に記載の医療装具。
【請求項6】
前記化学誘引物質が、デコイ受容体3(DcR3)、β_2インテグリンLFA−1(LFA−1Af)、またはそれらの組合せである請求項1に記載の医療装具。
【請求項7】
前記接着受容体が、インテグリンである請求項4に記載の医療装具。
【請求項8】
前記化学誘引物質が、内皮細胞上に示差的に発現する接着受容体に結合する請求項3に記載の医療装具。
【請求項9】
前記接着受容体が、インテグリンである請求項8に記載の医療装具。
【請求項10】
前記化学誘引物質が、cRGD模倣物またはRGD模倣物である請求項1に記載の医療装具。
【請求項11】
前記化学誘引物質が、cRGD模倣物またはRGD模倣物である請求項8に記載の医療装具。
【請求項12】
リンカーが、前記化学誘引物質を前記ポリマーに付着させる請求項3に記載の医療装具。
【請求項13】
前記リンカーが、加水分解性リンカーまたはタンパク質分解性リンカーである請求項12に記載の医療装具。
【請求項14】
前記リンカーが、酵素分解性リンカーである請求項12に記載の医療装具。
【請求項15】
前記リンカーがポリ(エチレングリコール)(PEG)またはアルキル鎖を含む請求項12に記載の医療装具。
【請求項16】
前記加水分解性リンカーが、アミド結合、チオール結合、エステル結合、チオ尿素結合、アルキルアミン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項13に記載の医療装具。
【請求項17】
前記加水分解性リンカーが、システイン単位、アスパラギン酸単位、グルタミン酸単位またはそれらの組合せを含む請求項13に記載の医療装具。
【請求項18】
前記リンカーが、生分解性ポリマーである請求項12に記載の医療装具。
【請求項19】
前記酵素分解性リンカーが、ジペプチド配列を含む請求項14に記載の医療装具。
【請求項20】
前記酵素分解性リンカーが、スペーサーを含む請求項14に記載の医療装具。
【請求項21】
前記スペーサーが、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、ジペプチド、PEGおよびそれらの組合せからなる群から選択され、前記ジペプチドが、フェニルアニリン−リジン、バリン−システイン、アラニル−バリン、アラニル−プロリン、グリシル−プロリンおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項20に記載の医療装具。
【請求項22】
前記リンカーが物理的リンカーである請求項12に記載の医療装具。
【請求項23】
前記化学誘引物質が、リポソームまたは生分解性ポリマーでカプセル化されている請求項1に記載の医療装具。
【請求項24】
前記化学誘引物質が、カテーテルから放出できる請求項23に記載の医療装具。
【請求項25】
前記化学誘引物質が、初期のバースト放出とその後の徐放を含む放出プロファイルを有する請求項1に記載の医療装具。
【請求項26】
前記化学誘引物質が、ゼロ次徐放である放出プロファイルを有する請求項1に記載の医療装具。
【請求項27】
生理活性剤をさらに備える請求項3に記載の医療装具。
【請求項28】
パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、17−β−エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス),40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、γ−ヒリドゥン(hiridun)、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシレート、ミドスタウリン、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される生理活性剤をさらに備える、請求項3に記載の医療装具。
【請求項29】
siRNA、内皮細胞の遊走を阻止するオリゴヌクレオチド、リゾホスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、およびそれらの組合せからなる群から選択される生理活性剤をさらに備える、請求項3に記載の医療装具。
【請求項30】
ステントである請求項1に記載の医療装具。
【請求項31】
ステントである請求項3に記載の医療装具。
【請求項32】
ステントである請求項28に記載の医療装具。
【請求項33】
生体吸収性ステントである請求項1に記載の医療装具。
【請求項34】
生体吸収性ステントである請求項28に記載の医療装具。
【請求項35】
請求項1に記載の医療装具を植え込むことを含む方法。


【公表番号】特表2008−529742(P2008−529742A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556330(P2007−556330)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005690
【国際公開番号】WO2006/112932
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】