説明

内臓の機能的運動障害におけるアシルアミノアルケニレン−アミド誘導体の使用

【課題】内臓の機能性運動障害の処置用医薬を提供すること。
【解決手段】本発明は、内臓の機能性運動障害の処置用医薬の製造のための遊離の形態または医薬上許容される塩の形態の式(I)


で示される化合物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、特に医薬としてのそれらの使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、1つの態様において、内臓の機能性運動障害の処置用医薬の製造のための遊離の形態または医薬上許容される塩の形態の式I
【化1】

〔式中、
は、非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニルであり、
は、水素またはC−C−アルキルであり、
は、水素、C−C−アルキル、あるいは非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニルであり、
は、非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニル;あるいはナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−C−C−アルキル−インドール−3−イルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはC−C−アルキルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
は、C−C−シクロアルキル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである。〕
で示される化合物の使用を提供する。
【0003】
本発明は、別の態様において、内臓(viscera)の機能性運動障害(functional motility disorder)を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象、特にヒト対象において、当該対象に有効量の先に定義した式Iの化合物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0004】
本発明にしたがう内臓の機能性運動障害の処置は、対症的または防疫的(予防的)であり得る。
【0005】
本発明にしたがって処置されるべき内臓の機能性運動障害としては、内臓過敏性(visceral hypersensitivity)および/または運動応答性の変化(電解質/水分泌を含む)に関連するもの、たとえば機能性腸障害および機能性胃腸障害、たとえば過敏性腸症候群(IBS)、便秘、下痢、機能性消化不良、逆流性食道炎(gastro-oesophageal reflux disease)、機能性腹部膨満、および機能性腹痛、術後の内臓痛、内臓平滑筋スパスム、ならびに被刺激性膀胱障害および他の機能性腸障害のような内臓の過敏症に関連する他の状態(必ずしも内臓の過敏症または運動応答の異常に関連するわけではない)が挙げられる。本発明は、過敏性腸症候群(IBS)、とりわけ下痢主訴IBS、および機能性消化不良(FD)の処置に特に重要である。
【0006】
本明細書において使用される一般的用語は、好ましくは下記の意味を有する:
【0007】
−C−アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチル、好ましくはC−Cアルキル、とりわけメチルまたはエチル、およびさらにとりわけメチルである。
【0008】
ハロゲンは、たとえば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0009】
ハロフェニルは、たとえば、(フルオロ−、クロロ−、ブロモ−またはヨード−)フェニル、好ましくはフルオロフェニルまたはクロロフェニル、とりわけ4−フルオロフェニルまたは4−クロロフェニル、およびさらにとりわけ4−クロロフェニルである。
【0010】
ジハロフェニルは、たとえば、ジクロロフェニル、ジフルオロフェニルまたはクロロフルオロフェニル、好ましくはジクロロフェニルまたはジフルオロフェニル、とりわけ3,4−ジクロロフェニルまたは3,4−ジフルオロフェニル、およびさらにとりわけ3,4−ジクロロフェニルである。
【0011】
トリハロフェニルは、たとえば、トリフルオロフェニルまたはトリクロロフェニルである。
【0012】
1−C−C−アルキル−インドール−3−イルは、たとえば、1−メチル−インドール−3−イルである。
【0013】
−C−シクロアルキル−および同様にC−C−シクロアルキル−は、それぞれの場合において、示された数の環炭素原子を有するシクロアルキル基である。C−C−シクロアルキルは、したがって、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル、好ましくはシクロヘキシルである。
【0014】
D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルは、下記の基
【化2】

に相当し、これは、3位が(アミノ−)置換されたD(+)−イプシロン−カプロラクタム[≒D−3−アミノ−イプシロン−カプロラクタム=(R)−3−アミノ−ヘキサヒドロ−2−アゼピノン]に由来する。同様に、L−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルは、
【化3】

に相当し、これは、3位が(アミノ−)置換されたL(−)−イプシロン−カプロラクタム[≒L−3−アミノ−イプシロン−カプロラクタム=(S)−3−アミノ−ヘキサヒドロ−2−アゼピノン]に由来する。
【0015】
式Iの化合物は、式IA
【化4】

〔式中、*はR配置を示す。〕
で示される化合物、または式IB
【化5】

〔式中、*はS配置を示す。〕
で示される化合物であり得、ここで、R、R、R、R、R、RおよびRは、上で定義したとおりである。
【0016】
式IAの化合物は、通常、本発明にしたがう使用に好適である。
【0017】
塩基性基を有する式Iの化合物は、たとえば、適当な鉱物酸、たとえばハロゲン化水素酸、硫酸またはリン酸との酸付加塩、たとえば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、またはリン酸塩を形成し得る。式Iの化合物が酸性基を有する場合、塩基との対応する塩、たとえば対応するアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、たとえばナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩、あるいはアンモニアまたは有機アミンとの塩、たとえばアンモニウム塩もまたあり得る。
【0018】
本発明は、好ましくは
は、フェニル、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルまたは3,4,5−トリメトキシフェニルであり、
は、水素またはC−C−アルキルであり、
は、水素またはフェニルであり、
は、フェニル、ハロ−フェニル、ジハロ−フェニル、トリハロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−C−C−アルキル−インドール−3−イルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはC−C−アルキルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
は、C−Cシクロアルキル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
式Iの化合物の使用に関する。
【0019】
本発明は、とりわけ、
は、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルであり、
は、水素、メチルまたはエチルであり、
は、水素またはフェニルであり、
は、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジクロロ−フェニル、3,4−ジフルオロ−フェニル、3−フルオロ−4−クロロ−フェニル、3,4,5−トリフルオロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−メチル−インドール−3−イルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
は、シクロヘキシル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
式Iの化合物の使用に関する。
【0020】
本発明は、さらにとりわけ、
は、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルであり、
は、水素またはメチルであり、
は、水素またはフェニルであり、
は、フェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−メチル−インドール−3−イルであり、
およびRは水素であり、そして
は、シクロヘキシル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
式Iの化合物の使用に関する。
【0021】
式Iの化合物群の下記のサブグループのそれぞれを、特に言及すべきである:
(1)RがD−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである式Iの化合物;(2)RおよびRが水素である式Iの化合物;(3)Rがフェニル、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルまたは3,4,5−トリメトキシフェニルである式Iの化合物;(4)遊離の形態、すなわち塩の形態でない式Iの化合物。
【0022】
式Iの化合物の特定の例としては、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
【0023】
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−(N’−メチル−N’−ベンゾイル−アミノ)−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(ナフタ−2−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−(N’−メチル−N’−ベンゾイル)−アミノ−5−(ナフタ−2−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(ナフタ−2−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
【0024】
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,4,5−トリメトキシ−ベンゾイル)−アミノ]−5−(ナフタ−2−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(ナフタ−2−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(ナフタ−2−イル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(1−メチル−インドール−3−イル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
【0025】
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4−ジフルオロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−シクロヘキシルアミド、
【0026】
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−2−メチル−ブタ−2−エン酸 [(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−エチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(4−クロロフェニル)−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−5−(4−クロロフェニル)−3−メチル−ペンタ−2−エン酸 N−シクロヘキシル−アミド、
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−3−メチル−ブタ−2−エン酸 [(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
【0027】
(4R)−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−クロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−および(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3−フルオロ−4−クロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−および(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4−ジフルオロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−および(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4−ジブロモベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
【0028】
(4R)−および(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(3,4,5−トリフルオロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−および(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−アミノ]−4−(4−フルオロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−および(4S)−[N’−(3,5−ビストリフルオロメチル−ベンゾイル)−N’−メチル−アミノ]−5,5−ジフェニル−ペンタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチルベンゾイル)アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、
(4R)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチルベンゾイル)アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、および
(4S)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチルベンゾイル)アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(S)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド
が挙げられる。
【0029】
本発明は、最も重要なことには、(4R)−4−[N’−メチル−N’−(3,5−ビストリフルオロメチルベンゾイル)アミノ]−4−(3,4−ジクロロベンジル)−ブタ−2−エン酸 N−[(R)−イプシロン−カプロラクタム−3−イル]−アミド、すなわち式
【化6】

で示される化合物の使用に関する。
【0030】
遊離のまたは医薬上許容される塩の形態の式Iの化合物は、WO 98/07694またはWO 01/85696において記載されたように製造され得る。これらに記載されているように、式Iの化合物は、それらの水和物の形態であり得、そして/または他の溶媒、たとえば結晶の形態の化合物の結晶化に使用された溶媒を含み得る。
【0031】
可変要素の性質および不斉中心の対応する数および選択された出発物質および手順に依存して、式Iの化合物は、立体異性体の混合物、たとえばジアステレオマーの混合物またはエナンチオマーの混合物、たとえばラセミ体の形態で、または場合によっては純粋な立体異性体の形態で得られ得る。当該方法にしたがってまたはいくつかの他の方法により得られ得るジアステレオマーの混合物は、常套の方法で、エナンチオマーの混合物、たとえばラセミ体へと、または個々のジアステレオ異性体、たとえば分別晶出、蒸留および/またはクロマトグラフィーによる既知の方法での構成要素間の物理化学的相違に基づいて、分離され得る。有利には、より活性な異性体が単離される。
【0032】
当該方法にしたがってまたはいくつかの他の方法により得られ得るエナンチオマーの混合物、とりわけラセミ体は、既知の方法により、たとえば光学活性溶媒からの再結晶により、微生物の使用により、クロマトグラフィーによりおよび/または光学活性補助化合物、たとえば塩基、酸またはアルコールとの反応により分離され、ジアステレオ異性体塩または機能性誘導体、たとえばエステルの混合物を形成させ、それらを分離し、そして所望のエナンチオマーを遊離させる。有利には、より活性なエナンチオマーが単離される。
【0033】
本発明にしたがう障害の処置において、遊離の形態または医薬上許容される塩の形態の式Iの化合物は、任意の適当な経路で、たとえば経口的に、たとえば錠剤、カプセル剤または液剤の形態で、非経口的に、たとえば注射可能な溶液または懸濁液の形態で、あるいは鼻腔内に、たとえばエアロゾルまたは適当な鼻腔内送達デバイス、鼻腔用スプレー(たとえば当分野で既知のもの)を用いる他の噴霧可能な製剤で投与され得る。
【0034】
遊離または塩の形態の式Iの化合物は、医薬上許容される希釈剤または担体とともに医薬組成物で投与され得る。かかる組成物は、WO 98/07694において記載されているとおりであり、たとえばWO 98/07694の実施例A〜Eにおいて記載されている錠剤、カプセル剤、液剤、注射溶液、点滴溶液または吸入用懸濁剤であり得るか、または当分野において既知の他の製剤成分および技術を用いて製造され得る。
【0035】
遊離または塩の形態の式Iの化合物の用量は、さまざまな要因、たとえば活性成分の活性および作用時間、処置されるべき状態の重度、投与様式、対象の種、性別、種族的起源、年齢および体重ならびに/または個々の状態に依存し得る。通常の場合において、温血動物、特に体重約75kgのヒトへの投与、たとえば経口投与のための1日用量は、約1mg〜約1000mg、とりわけ約5mg〜約200mgと推定される。その量は、たとえば、5〜100mgを単回用量で、または数回に分割した用量で投与され得る。
【0036】
本明細書において前記した障害の処置における式Iの化合物の有用性は、内臓の過敏症のインビボモデル、たとえば以下の実施例1において記載されたものにおいて、蠕動反射モデル、たとえば以下の実施例2において記載されたものにおいて、または上皮分泌モデル、たとえば以下の実施例3において記載されたものにおいて実証され得る。
【0037】
本発明は、下記の実施例により実証される。
【実施例1】
【0038】
実施例1
非麻酔のモルモットにおいて、2つの実験的パラダイム、i)拘束ストレス(チューブにおける動物の固定)およびii)結腸組織の刺激(酢酸、生理食塩水0.6%、1.5ml、肛門から2cmのところへの滴下)を適用して、内臓の過敏症を誘導する。直腸結腸の膨張は、(結腸壁にて)20mmHg(26.7mbar)の正味圧力までバルーンを10分間ふくらませ、その後、内臓の過敏症が誘発される。膨張期間中、内臓の働きの応答(visceromotor response)、すなわち腹部の収縮(体をアーチ形にし、そして骨盤構造を持ち上げること)の数および質を、盲検様式で記録し、そして定量する(Al-Chaer et al., Gastroenterology 2000; 119: 1276-1285)。ベースライン結腸直腸膨張プロトコールの実施の後に、ビヒクルまたは式IIの化合物(3および10mg/kg)を、第2の結腸直腸膨張の1時間前に経口的に投与する。これは、内臓の過敏症の誘導の後に行われる。ビヒクルおよび式IIの化合物の効果を6〜8匹の動物で評価する。拘束ストレスおよび酢酸の直腸内滴下による局所的組織刺激は、結腸直腸膨張に対する内臓の働きの応答を著しく悪化させる(ベースラインよりそれぞれ54.5%および29.1%)。式IIの化合物は、拘束ストレス誘導性および組織刺激誘導性直腸過敏症における結腸直腸バルーン膨張に対する悪化した行動性疼痛応答を反転させる。疼痛応答におけるこの反転は、試験された両方の用量、3および10mg/kg(経口)で統計的に有意である(p<0.05;ANOVA post−hoc Dunnett検定)。
【実施例2】
【0039】
実施例2
サブスタンスP介在性悪化蠕動を、メイフラワー器官槽(Mayflower organ bath)中で、モルモットの回腸の単離断片を用いて試験する(Holzer et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 1995; 274: 322-328)。回腸断片の内腔を、クレブス−ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)溶液で灌流し、そして内腔内圧を連続的に記録する。灌流中、個々の回腸断片を徐々に満たすと、内腔内圧は、それらが蠕動誘発の閾値、すなわち蠕動収縮の反口端への移動波(aborally moving wave)に到達するまで上昇する。いかなる蠕動収縮波も、内腔内圧のスパイク用増加をもたらし、そして断片からの体液(fluid)の部分的枯渇を引き起こす。蠕動収縮を誘発する圧力閾値は、式IIの化合物の効果を定量するために使用される。サブスタンスPの反復投与(1nM〜30μM)は、蠕動収縮を誘発するのに必要な閾値を低下させることにより、蠕動イベントの悪化を引き起こす。サブスタンスPの効果は濃度依存性であって、7.20のpD値を有する。式IIの化合物(30nMおよび100nM)は、サブスタンスP誘発性の蠕動の悪化を競合的に阻害し、それぞれ、7.35および7.23のpA値を有する。
【実施例3】
【0040】
実施例3
上皮分泌を、モルモット結腸の粘膜下/粘膜調製物において試験する。ユッシング(Ussing)チャンバー技術(Frieling et al., Naunyn Schmiedebergs Arch. Pharmacol. 1999; 359: 71-79)を用いて、短絡電流を記録し、そして上皮分泌(起電性クロライド分泌)を、サブスタンスP(0.1nM〜10μM)での反復処理にて刺激する;それは、濃度依存様式(pD=7.50)で分泌(短絡電流の増加)を誘発する。式IIの化合物(30nM、100nM、および300nM)は、サブスタンスP誘導起電性クロライド分泌を競合的に阻害する;シルド(Schild)プロット解析により、7.94のpA値が明らかとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内臓の機能性運動障害の処置用医薬の製造のための遊離の形態または医薬上許容される塩の形態の式I
【化1】

〔式中、
は、非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニルであり、
は、水素またはC−C−アルキルであり、
は、水素、C−C−アルキル、あるいは非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニルであり、
は、非置換、またはハロゲン、C−C−アルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニル;あるいはナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−C−C−アルキル−インドール−3−イルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはC−C−アルキルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
は、C−C−シクロアルキル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである。〕
で示される化合物の使用。
【請求項2】
式Iの化合物が式IA
【化2】

〔式中、*はR配置を示し、そしてR、R、R、R、R、RおよびRは請求項1において定義したとおりである。〕
で示される化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
が、フェニル、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルまたは3,4,5−トリメトキシフェニルであり、
が、水素またはC−C−アルキルであり、
が、水素またはフェニルであり、
が、フェニル、ハロ−フェニル、ジハロ−フェニル、トリハロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−C−C−アルキル−インドール−3−イルであり、
およびRが、それぞれ互いに独立して、水素またはC−C−アルキルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
が、C−Cシクロアルキル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
が、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルであり、
が、水素、メチルまたはエチルであり、
が、水素またはフェニルであり、
が、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジクロロ−フェニル、3,4−ジフルオロ−フェニル、3−フルオロ−4−クロロ−フェニル、3,4,5−トリフルオロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−メチル−インドール−3−イルであり、
およびRが、それぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、RおよびRの少なくとも一方は、水素であり、そして
が、シクロヘキシル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
が、3,5−ビストリフルオロメチル−フェニルであり、
が、水素またはメチルであり、
が、水素またはフェニルであり、
が、フェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロ−フェニル、2−ナフチル、1H−インドール−3−イルまたは1−メチル−インドール−3−イルであり、
およびRが、水素であり、そして
が、シクロヘキシル、D−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルまたはL−アザシクロヘプタン−2−オン−3−イルである、
請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
式Iの化合物が、式
【化3】

で示される化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
障害が内臓過敏性および/または運動応答性の変化に関連する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
障害が機能性腸障害または機能性胃腸障害である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
障害が過敏性腸症候群または機能性消化不良である、請求項8に記載の使用。

【公開番号】特開2010−241835(P2010−241835A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164587(P2010−164587)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願2003−565486(P2003−565486)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】