説明

内臓脂肪型肥満抑制剤及びその製造方法

【課題】従来よりも強力で、安全性が高く、植物成分由来であって、より薬理作用の優れた新たな内臓脂肪型肥満抑制剤及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理して得られる物又はその抽出物を使用することで、体重増加、内臓脂肪増加を抑制し、遊離脂肪酸値、コレステロール値、血糖値、レプチン値、アディポネクチン値などの血液成分値について顕著な抗肥満効果を示し、さらにUCP1の発現を促進する内臓脂肪型肥満抑制剤及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満を抑制する内臓脂肪型肥満抑制剤に関する。さらに、本発明は、内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病などの生活習慣病は、内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満が原因で引き起こされることが多く、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態を、メタボリックシンドロームとされている。メタボリックシンドロームの多くは、放置しておくと動脈硬化を進行させ、ひいては心臓病や脳卒中につながる。それゆえ、メタボリックシンドロームを予防する事は重要である。
メタボリックシンドロームは、体重減量、とくに内臓脂肪減量によりその予防が期待できるといわれており、内臓脂肪型肥満抑制剤や抗肥満効果を有するものが求められている。
【0003】
ニガウリによる脂質代謝改善や抗肥満については、例えば、D−キシロースとタラの木の根皮やニガウリの果実又は種子の抽出物等の特定の天然物から得た乾燥粉末、水抽出物やアルコール抽出物から選ばれる一種又は二種以上の生薬を配合してなる抗肥満剤(例えば、特許文献1参照)や、ニガウリの粉砕物又は抽出物を有効成分とする脂質代謝改善剤(例えば、特許文献2参照)や、焙煎機等を使用してニガウリを40〜120℃で加熱した加熱処理物又はその抽出物を有効成分とする血中中性脂肪低減剤(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0004】
エネルギー消費の自立的調節に関与する物質として、UCP(Uncoupling Protein:ミトコンドリア脱共役タンパク質、以下UCPとする)が着目されており、UCPはミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸する機能を持っている。具体的には、多食しても肥満しない動物はUCP1(褐色脂肪組織中のUCP)が多い、人為的にUCP1の発現を低下させたマウスは肥満し、高発現させたマウスはやせる、などの事実が知られている(例えば、非特許文献1参照)。それゆえ、UCP1の高発現は抗肥満効果を来たすことが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−287575号公報
【特許文献2】特開2001−278804号公報
【特許文献3】特開2006−117658号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】斎藤、第124回日本医学会シンポジウム記録集「肥満の科学」、p.62−70、2003年8月29〜31日開催
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理することにより、従来よりも強力で、安全性が高く、植物成分由来であって、より薬理作用の優れた内臓脂肪型肥満抑制剤を提供するものである。さらに、本発明の目的は、従来よりも強力で、安全性が高く、植物成分由来であって、内臓脂肪型肥満抑制能を有する食品組成物又は医薬組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理することによる内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ニガウリに着目して種々検討し、ニガウリを過熱水蒸気で加熱して得られる物又はその抽出物を用いて肥満モデルにおける抗肥満効果を検討したところ、本発明による内臓脂肪型肥満抑制剤は、強力な抗肥満効果を有することを見出し、本発明を完成した。また、本発明による内臓脂肪型肥満抑制剤を投与すれば、UCP1の発現を促進することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明には、下記の態様が含まれる。
(1)ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理して得られる物又はその抽出物を含有することを特徴とする内臓脂肪型肥満抑制剤。
(2)加熱処理する方法が、低酸素状態で処理することを特徴とする(1)に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
(3)加熱処理する方法が、100〜400℃の過熱水蒸気で加熱処理することを特徴とする(1)又は(2)に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
(4)加熱処理する方法が、0.1〜60分間、過熱水蒸気で加熱処理することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
(5)UCPの発現を促進するものである(1)乃至(4)のいずれかに記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
(6)ニガウリを、100〜400℃の過熱水蒸気で0.1〜60分間加熱処理して得られる物又はその抽出物を含有することを特徴とする内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法。
(7)加熱処理する方法が、低酸素状態で処理することを特徴とする(6)に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られる内臓脂肪型肥満抑制剤は抗肥満効果が強力であり、特に、肥満が内臓脂肪型肥満に有効である。本発明により得られる内臓脂肪型肥満抑制剤は、体重増加、内臓脂肪増加を抑制し、遊離脂肪酸値、コレステロール値、血糖値、レプチン値、アディポネクチン値などの血液成分値を改善させ顕著な抗肥満効果を示し、さらに、UCP1の発現を促進し、抗肥満効果を示すものである。本発明により得られる内臓脂肪型肥満抑制剤は、安全性が高く、植物成分由来であり、長期間飲用又は服用が可能であることから、本発明により得られる内臓脂肪型肥満抑制剤を食品組成物又は医薬品組成物に使用することにより、特に肥満への移行の防止又は治療に有用である。
【0011】
本発明により得られる内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法は、強力な抗肥満効果を有する内臓脂肪型肥満抑制剤を提供することができ、特に、肥満が内臓脂肪型肥満に有効な内臓脂肪型肥満抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】各群の飼育期間中における体重変化を示す図である。
【図2】各群の飼育期間中における摂餌量の推移を示す図である。
【図3】各群の飼育期間中における飲水量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いるニガウリ(学名: Momordica charantia)は、ツルレイシ、ゴーヤーとも呼ばれ、食用とされている。本発明に用いるニガウリは、全草、葉、茎、根、花、種子、果実等の部位のいずれを用いてもよく、各部位のみを使用してもよいし、混合して使用してもよいが、好ましくは、種子、果実を使用するとよい。熟度については、未熟、中熟、完熟のいずれを用いてもよいが、好ましくは未熟なものがよい。産地は特に限定しない。
【0014】
本発明に用いるニガウリは、生、乾燥品等のいずれでもよく、そのままの形態、細切品、粉砕品、乾燥粉末品のいずれであってもよい。
【0015】
本発明における加熱処理の態様としては、乾式加熱処理、湿式加熱処理が挙げられ、加熱方法としては、電熱加熱、熱風加熱、蒸気加熱、赤外線加熱、電磁波加熱、高周波加熱等が挙げられるが、蒸気を用いて加熱処理することが好ましく、過熱水蒸気による加熱処理が特に好ましい。
【0016】
本発明における過熱水蒸気とは飽和水蒸気をさらに過熱した水蒸気であり、常圧過熱水蒸気、加圧過熱水蒸気、減圧過熱水蒸気のいずれであってもよく、好ましくは、常圧過熱水蒸気を用いるとよい。常圧過熱水蒸気とは、常圧においてその飽和温度(100℃)以上に熱せられた水蒸気をいうものである。過熱水蒸気処理を行う機械装置等は特に限定せず、目的とする加熱処理である温度、時間等の処理条件が得られるものであればよい。
【0017】
本発明における内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法は、ニガウリを加熱処理して得られる物又はその抽出物を製造することにより提供するものであり、好ましくは、加熱処理する方法が過熱水蒸気で処理するものである。
【0018】
本発明における内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法において、ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理する処理条件として、過熱水蒸気を噴射処理するにあたり又は過熱水蒸気の雰囲気下で処理するにあたり、処理温度において100℃以上、好ましくは100〜350℃、より好ましくは150〜250℃で、処理時間においては、0.1〜60分間、好ましくは、0.1〜10分間で、処理する。処理条件として、過熱水蒸気を噴射処理するにあたり又は過熱水蒸気の雰囲気下で処理するにあたり、処理温度と処理時間においては、100〜400℃に加熱した過熱水蒸気を0.1〜60分間、好ましくは100〜350℃で0.1〜10分間、より好ましくは150〜250℃で0.1〜10分間、処理するものであり、被加熱物の形状、処理量、水分量、過熱水蒸気の装置の能力等に応じて、適宜調節して行えばよい。
加熱処理する処理条件として、好ましくは低酸素若しくは無酸素の雰囲気下において、過熱水蒸気を噴射処理する又は過熱水蒸気の雰囲気下で処理することがよく、より好ましくは酸素濃度8%以下がよく、特に好ましくは酸素濃度3%以下がよい。
過熱水蒸気による加熱処理において、好ましくは、被加熱物がすべて炭化しないように、温度と処理時間を調節する。過熱水蒸気による加熱処理において、被加熱物の水分含量について、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、となるようにする。
【0019】
本発明のニガウリを過熱水蒸気で加熱処理して得られる物は、そのままの形態でも利用可能であるが、さらに粉砕後、粉末、ペーストの形で利用できる。また、ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理して得られる物を溶媒で抽出することにより、該抽出物を利用してもよい。さらに、当該ニガウリ抽出物を、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、エアードライヤー等を用いて乾燥し、粉末化を行うことで、ニガウリ抽出物末とすることができる。このとき、デキストリン等の賦形剤等を用いてもよい。また、必要に応じて造粒機等を用いて顆粒品とすることができる。
【0020】
本発明の抽出の際に用いる溶媒としては、水又は炭素数1〜6のアルコール類若しくはグリコール類を単独で若しくはこれら溶媒の2つ以上の組合せが使用でき、例えば、水、エタノール、含水エタノール、1,3−ブチレングリコール、含水1,3−ブチレングリコール等が挙げられ、好ましくは水又は含水エタノールを使用することができる。抽出は、常温抽出、加熱抽出、攪拌抽出等の常法により抽出することができ、特に限定しない。
本発明の抽出物は、不活性な不純物を除去するために、例えば液々分液、固液分液、濾過膜、活性炭、吸着樹脂、イオン交換樹脂等の公知の分離・精製方法によって、適宜精製してもよい。また、抽出物末を上記抽出溶媒を用いて再度抽出してもよい。
【0021】
本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤は、後記実施例に示すように、肥満モデル実験動物に対して優れた抗肥満効果を有する。具体的には、肥満の指標である体重推移、内臓脂肪量、血液中の遊離脂肪酸値、コレステロール値、血糖値、レプチン値、アディポネクチン値などの血液成分値を顕著に改善させた。さらに、本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤は、UCPの発現を促進することを示し、特にUCP1の発現を促進することを示した。したがって、本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤は、肥満の予防治療剤として有用である。
レプチンは肥満遺伝子に由来するホルモンであり、脂肪細胞から分泌され、視床下部に存在するレセプターを介して摂食抑制やエネルギー消費亢進をもたらす一方、肥満の状態が続くとレプチン抵抗性を示すようになり、血中レプチン濃度は体脂肪量に比例して上昇する。また、アディポネクチンは脂肪細胞で作られる分泌タンパク質であり、AMPキナーゼを活性化することで脂肪酸の燃焼と糖の取り込みを促進しインスリン抵抗性を改善するとされている。
【0022】
本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤は、医薬として、また特定保健用食品、機能性食品等として使用することができる。これらの医薬の投与形態としては、経口、注射、外用等が挙げられるが、経口投与形態が好ましい。経口用医薬及び食品の形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液剤、ゲル、気泡等とすることができる他、各種食品中に配合することもできる。これらの組成物の調製にあたっては、賦形剤、結合剤、滑沢剤等を適宜配合することができる。これらの医薬及び食品への本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤の配合量は、固形分(乾燥重量)換算で0.0001〜20重量%、0.01〜10重量%が好ましく、特に0.01〜5重量%が好ましい。
【0023】
本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤の投与量は、特に制限されないが、成人1日あたり本発明によるニガウリ又はその抽出物の固形分(乾燥重量)として、10〜5,000mgが好ましく、さらに50〜1,000mgが好ましく、これらの量は1回又は数回に分けて投与してもよい。
【0024】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
生鮮の未熟なニガウリを、洗浄後5mm幅で輪切りし、65℃で10時間、熱風乾燥してニガウリの乾燥スライス品を調製した。この乾燥スライス品150gをステンレス製トレイに重ならないように広げ、200℃で3分間、過熱水蒸気で加熱処理した後、粉砕することにより、加熱処理したニガウリの粉砕末を得た。なお、この粉砕末の水分含量は7%であった。また、過熱水蒸気での加熱処理時の雰囲気酸素濃度は3%であった。
【実施例2】
【0026】
実施例1と同様にして得られたニガウリ粉砕末のうち100gに対して2,000mLの水を添加し、50℃で1時間、撹拌抽出を行った。濾過により固液分離を行い、得られた濾液を固形分30%まで濃縮し、80℃で30分間加熱処理を行い冷却して、ニガウリ水抽出物を得た。得られたニガウリ水抽出物をフリーズドライヤーにて乾燥することで、ニガウリ水抽出物末を得た。
【実施例3】
【0027】
下記の実験により本発明の内臓脂肪型肥満抑制剤の実験動物による抗肥満効果を評価した。
【0028】
(1)実験方法
実験動物として、50週齢Wistar系雄性ラット(体重470〜612g/匹)を用いた。ラットはポリプロピレン不透明ケージ(W220mm×L320mm×H135mm)内で2〜3匹ずつ飼育した。飼育室は、湿度40〜50%、室温20〜25℃に維持し、12時間の明暗サイクル(点灯;AM8:00、消灯;PM8:00)に設定した。
【0029】
本実験は、ラットを各群6匹の4群に分け、表1の飼料、飲水を自由摂取させ、17週間飼育した。普通食投与群を(i)群とし、他の(ii)群、(iii)群、及び(iv)群には肥満を引き起こすために、普通食100重量部にラード30重量部を混合した高脂肪食を与えた。(ii)群を高脂肪食投与の対照とし、(iii)群と(iv)群とを高脂肪食投与における本発明品の混餌投与による評価群とした。飲水としては水道水を与えた。(iii)群には、本発明品(実施例1で得た物)を1日当たり該ラット体重1kg換算で500mg投与となるように含有させた飼料を与え、(iv)群には、本発明品(実施例1で得た物)を1日当たり該ラット体重1kg換算で1,000mg投与となるように含有させた飼料を与えた。
各群のラットの体重、摂餌量、及び飲水量を毎日測定した。投与期間終了後、犠牲死させ、該ラットの内臓脂肪の重量測定、血液の生化学的検査、及びUCP1の発現を調べた。
【0030】
上記普通食としては、オリエンタル酵母工業製の実験動物用飼料MFを用いた。その組成は、100g中、水分7.7g、粗蛋白質23.6g、粗脂質5.3g、粗灰分6.1g、粗繊維2.9g、可溶性無窒素物54.4gであった。
【0031】
【表1】

【0032】
全ての結果は、統計学的処理を行い、平均値±標準偏差で示した。得られたデータは一元配置分散分析(analysis of variance、ANOVA)後、Tukeyの多重比較検定法を用いて統計学的処理を行った。2群間の比較にはStudent’s t−testを用い、危険率5%以下を優位差有りと判定した。
【0033】
(2)実験結果
各群のラットの体重、摂餌量、及び飲水量を毎日測定し、毎週の平均とした結果を図1〜図3に示す。また、投与期間終了後、犠牲死させ、該ラットの内臓脂肪の重量測定、血液の生化学的検査、及びUCP1の発現を調べた結果を以下に示す。
【0034】
図1は各群のラットの飼育期間中における各週の体重変化を示す図であり、飼育期間中の体重について、本発明品500mg/kg(体重)/日投与の(iii)群と本発明品1,000mg/kg(体重)/日投与の(iv)群は、高脂肪食投与の対照である(ii)群より常時体重値が小さく推移した。したがって、本発明品は、優れた体重増加抑制作用を有しており、顕著な抗肥満効果を示すことが明らかになった。
【0035】
図2は各群のラットの飼育期間中における平均摂餌量の推移を示す図であり、図3は各群のラットの飼育期間中における平均飲水量の推移を示す図である。図2及び図3では、飼育期間中での各群の平均摂食量及び平均飲水量について、有意な差を示さなかった。各群それぞれの摂取エネルギー量及び本発明の摂取量は、設定通りであった。
【0036】
投与期間における各群のラットの体重変化について、4週おきの体重と最終週の体重を表2に示す。体重は、平均値±標準偏差で示す。表中の( )内の数字は0週の平均体重を100としたときの相対値を示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示す通り、体重変化について、高脂肪食投与の対照である(ii)群は、0週と比較して、4週に113%で0〜4週までの間の増加率が大きいものであった。一方、本発明品投与の(iii)群と(iv)群は、0週と比較して、4週に104%と103%であり、0〜4週までの体重増加が顕著に抑制された。(ii)群と比較し、(iii)群の8週目は危険率5%で有意差があること、(iv)群の4週、8週、12週及び17週は危険率5%で有意差があること、を示した。本発明品投与の(iii)群と(iv)群のいずれも、高脂肪食を投与したにも係らず、飼育期間中、体重増加が抑制されることが示された。
【0039】
各群のラットの17週後の体重及び内臓脂肪量の体重比率を表3に示す。体重は、平均値±標準偏差で示す。平均体重相対値は、(ii)群を100として各群の相対値で示す。内臓脂肪量の体重比率は、内臓周囲脂肪、腎臓周囲脂肪、及び精巣周囲脂肪の和を内臓脂肪量とし、体重に対する比率で示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示す通り、高脂肪食投与の対照である(ii)群に対して、本発明品500mg/kg(体重)/日投与の(iii)群と本発明品1,000mg/kg(体重)/日投与の(iv)群は、いずれも高脂肪食投与による体重増加抑制及び内臓脂肪増加抑制を示した。特に、内臓脂肪量の体重比率については、(ii)群と比較し、(iii)群は危険率5%で有意差があること、(iv)群は危険率1%で有意差があること、を示した。したがって、本発明品は、優れた体重増加抑制作用及び内臓脂肪増加抑制作用を有しており、顕著な抗肥満効果を示すことが明らかになった。
【0042】
各群のラットの17週後における血液の生化学的検査結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
表4に示す通り、遊離脂肪酸値と血糖値について、本発明品投与の(iii)群と(iv)群は、高脂肪食投与の対照である(ii)群と比較し、すべて有意差を示した。遊離脂肪酸値については、(ii)群と比較し、(iii)群と(iv)群ともに、危険率1%で有意差があること、を示した。
したがって、本発明品は、血液の生化学的検査結果において顕著な抗肥満効果を示すことが明らかになった。さらに、本発明品投与により血糖値が改善され、本発明品は高血糖に対して有効であることが明らかになった。
レプチンについては、本発明品投与の(iii)群と(iv)群とも、(ii)群より小さな値を示した。アディポネクチンについては、(ii)群と比較し、(iii)群と(iv)群とも大きな値を示し、(iv)群は危険率5%で有意差があること、を示した。
したがって、本発明品は、血液の生化学的検査結果において顕著な抗肥満効果を示すことが明らかになった。
【0045】
UCPについて、褐色脂肪組織中のUCPであるUCP1の発現を調べた。まず各群個々の褐色脂肪組織を摘出し、次いでそれら摘出組織より調製したタンパク質について、ウエスタン解析を行った。なお、UCP1量は、定常的に発現しているタンパク質であるβ−アクチンの発現量に対する相対値として示した。この数値が大きいほどUCP1量が多いことを示す。
【0046】
各群のラットの17週後における褐色脂肪組織中のUCP1量を表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
表5に示す通り、UCP1の発現について、本発明品投与の(iii)群と(iv)群のUCP1量は、高脂肪食投与の対照である(ii)群及び普通食投与の(i)群より大きな値を示した。したがって、本発明品は、UCP1発現促進作用を有しており、顕著な抗肥満効果を示すことが明らかになった。
【0049】
各群のラットの飼育期間中における、糞便を乾燥した後の糞便中の脂質含量を表6に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
表6に示す通り、糞便を乾燥した後の糞便中の脂質含量について、高脂肪食投与の(ii)群、(iii)群、及び(iv)群は、普通食投与の(i)群に対し同程度に大きな値を示した。本発明品投与の(iii)群と(iv)群は、少なくとも腸管における脂質の吸収阻害がないことを示した。
【0052】
[製剤例1]
次の処方により、顆粒を製造した。
ニガウリ粉砕末(実施例1) 250(質量部)
乳糖 570
結晶セルロース 150
ヒドロキシプロピルセルロース 30
【0053】
[製剤例2]
次の処方により、湿式造粒し、打錠して錠剤を得た。
ニガウリ水抽出物末(実施例2) 250(質量部)
乳糖 570
結晶セルロース 140
ヒドロキシプロピルセルロース 30
ステアリン酸マグネシウム 1
タルク 9
【0054】
[処方例1]
次の処方により、常法に従い、クッキーを製造した。
薄力粉 90(質量部)
無塩バター 50
グラニュー糖 47
全卵 13
ニガウリ粉砕末(実施例1) 5.7
ベーキングパウダー 0.16
【0055】
[処方例2]
次の処方により、飲料を製造した。
ニガウリ水抽出物末(実施例2) 0.5(質量部)
ミックスフルーツピューレ(Bx.10) 16
液状オリゴ糖(Bx.75) 12
香料 0.1
ビタミンE製剤 0.1
水 71.3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニガウリを過熱水蒸気で加熱処理して得られる物又はその抽出物を含有することを特徴とする内臓脂肪型肥満抑制剤。
【請求項2】
加熱処理する方法が、低酸素状態で処理することを特徴とする請求項1に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
【請求項3】
加熱処理する方法が、100〜400℃の過熱水蒸気で加熱処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
【請求項4】
加熱処理する方法が、0.1〜60分間、過熱水蒸気で加熱処理することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
【請求項5】
UCPの発現を促進するものである請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の内臓脂肪型肥満抑制剤。
【請求項6】
ニガウリを、100〜400℃の過熱水蒸気で0.1〜60分間加熱処理して得られる物又はその抽出物を含有することを特徴とする内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法。
【請求項7】
加熱処理する方法が、低酸素状態で処理することを特徴とする請求項6に記載の内臓脂肪型肥満抑制剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−20925(P2011−20925A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164568(P2009−164568)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000210067)池田食研株式会社 (35)
【Fターム(参考)】