説明

内臓脂肪蓄積抑制剤

【課題】安全で、優れた内臓脂肪の蓄積を抑制する効果を有する内臓脂肪蓄積抑制剤を提供する。この内臓脂肪蓄積抑制剤は、メタボリックシンドロームの改善や、脳梗塞や心筋梗塞などに至る危険性のある動脈硬化症の予防にも効果があることが期待される。
【解決手段】オリーブ葉またはその抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出物を有効成分とする内臓脂肪蓄積抑制剤に関し、より詳しくは、本発明は、成人病や様々な肥満合併症の要因と考えられる内臓脂肪の蓄積を抑える内臓脂肪蓄積抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オリーブ(Olea europea L.)はモクセイ科の常緑小高木で、地中海地方の原産で暖地に生育している。果実は楕円形の核果で、青いうちに採取し塩漬けにして食用としている。熟果はオリーブ油をとる原料とされ、その主要な油成分はオレイン酸のトリグリセライドのかたちで、医薬品用の賦型剤として使用されている。わが国では、瀬戸内海の小豆島で栽培されている。オリーブの葉は食品素材や健康食品として、一部の地域では使用されている。最近、オリーブ葉エキスに血糖降下作用、抗高血圧作用、抗動脈硬化作用、抗酸化作用、血管弛緩作用などを有していることが報告されている。その作用成分も脂肪酸やoleuropeosideなどが報告されている(非特許文献1〜3、特許文献1参照)。
【0003】
一方、日本を含めた先進諸国では、脂質と糖質の摂取過剰によって肥満症、動脈硬化症、高脂血症、インスリン抵抗性の糖尿病および高血圧症などの生活習慣病に起因される疾患が増加し、社会問題化している。
【0004】
通常、肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回った時に余剰のエネルギーが脂肪として蓄積されて生じるが、これを避けるために食事量を制限することは過度のストレスがかかることから、日常生活で実行することは非常に困難である。
【0005】
そして、脂肪が過剰に蓄積した状態で発生する肥満は、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの成人病と密接な関わりを持つ。
【0006】
体脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪に大別されるが、このうち内臓脂肪の蓄積が成人病や様々な肥満合併症の要因と考えられてきている(非特許文献4参照)。内臓脂肪型の肥満はインスリン抵抗性を生じる結果となり、一連の代謝異常の結果として抗脂血症、糖尿病、高血圧といった危険因子の重積が生じて動脈硬化の発症が加速される。これはメタボリックシンドローム (別名として;シンドロームX、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群)と呼ばれ、この見地から診断基準を設定する、あるいは適切な予防法・治療法を選択することが進められている。
【0007】
近年、生活様式の急速な変化にともない、メタボリックシンドローム (以下、「MS」と略す)が引き起こされ、結果として動脈硬化症の発症事例が増えている。厚生労働省の2001年の調査によれば、65歳以上日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(29%)であるが、第2位は心疾患(16%)、第3位は脳血管疾患(15%)であり、2位3位を動脈硬化性疾患と見れば、悪性新生物に匹敵する。また同時期の調査によれば、介護が必要となった主な原因の第1位は脳血管疾患(30%)、特に男性では40%を越える数字である。このことは動脈硬化症の発生が大きな社会問題となっていることを示し、その主要な原因であるMSの予防と治療は極めて重要である。
【0008】
【特許文献1】特開2002−10753号公報
【非特許文献1】Gonzalez M,Zarzuelo A,Gamez MJ et al:Hypoglycemic activity of olive leaf. Planta Med 58:513-515,1992.
【非特許文献2】Zarzuelo A,Duarte J,Jimenez J et al:Vasodilator effect of olive leaf. Planta Med 57:417-419,1991.
【非特許文献3】Somova LI,Shode FO,Ramnanan P et al:Antihypertensive,antiatherosclerotic and antioxidant activity of triterpenoids isolated from Olea europaea,subspecies Africana leaves.J Ethonopharmacol 84:299-305,2003.
【非特許文献4】肥満症;診断・治療・指導のてびき、p.15, 1993(医歯薬出版)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上述べたような従来の事情に鑑みてなされたもので、効果的に内臓脂肪の蓄積を抑制する内臓脂肪蓄積抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、オリーブ葉またはその抽出物を含むことを特徴とする内臓脂肪蓄積抑制剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全で、優れた内臓脂肪の蓄積を抑制する効果を有する内臓脂肪蓄積抑制剤を提供することができる。この内臓脂肪蓄積抑制剤は、メタボリックシンドロームの改善や、脳梗塞や心筋梗塞などに至る危険性のある動脈硬化症の予防にも効果があることが期待される。
本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤は、化粧品等の皮膚外用剤の技術分野のみならず医薬並びに食品の技術分野でも広く利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
オリーブ葉またはその抽出物は、血糖降下作用(α−アミラーゼ阻害)、血中中性脂肪低下作用、抗高血圧作用、抗動脈硬化作用、抗酸化作用などが報告されているものの、内臓脂肪蓄積抑制作用に関する報告はない。
【0013】
本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤は、オリーブ葉の抽出物を含むものである。
本発明において、オリーブ葉とは、オリーブ属に属する植物の葉をいう。
オリーブ葉は、そのまま用いることができるが、切断、粉砕等により細片状、粉末状等の摂取しやすい形態に加工して用いることができる。好ましくは、粉末状、顆粒状、ブロック状等である。加工したオリーブ葉は、必要に応じて、錠剤、水溶液、懸濁液、ゼリー状、飴状等にすることもでき、さらに一般食品へ混入等することもできる。
【0014】
オリーブ葉の抽出物は、オリーブ葉またはその切断片等を各種溶媒で抽出することにより調製される。溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、トルエン、エーテル等の有機溶媒、CO2等の超臨界流体、熱水や水を使用することができる。好ましい抽出物は、熱水、水、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン抽出物であり、さらに好ましくは、水、メタノール、エタノール抽出物である。
【0015】
抽出方法は特に制限されないが、溶媒にオリーブ葉またはその切断片等を接触させ、静置、振盪、超音波照射、高圧等やそれらを組み合わせた方法等が使用される。好ましくは、浸漬し、振盪または撹拌する方法である。
【0016】
抽出時間および温度は、オリーブ葉の量・形態、使用する溶媒等に応じ適宜選択される。抽出時間は特に制限されないが、好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは8時間から48時間である。抽出温度は特に制限されないが、溶媒が液体、気体または流体である温度が使用される。好ましくは0℃〜溶媒の気化温度であり、さらに好ましくは10℃〜溶媒の気化温度である。
【0017】
上記のようにして得られた抽出物は、公知の方法により、各種形態に加工できる。例えば、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の手段により、粉末状にすることができる。抽出物の好ましい形態は、粉末状、顆粒状、ブロック状等である。抽出物は、必要に応じて、錠剤、水溶液、懸濁液、ゼリー状、飴状等にすることもでき、さらに一般食品へ混入等することもできる。
【0018】
なお、本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤は、実質的に上記植物またはその抽出物の一種または二種以上からなる配合原料であるが、他の成分を含んでいてもよい。この内臓脂肪蓄積抑制剤は、化粧品等に配合して皮膚外用剤とすることも、あるいは食品に配合することもできる。また、医薬として利用することも可能である。
【0019】
皮膚外用剤としたときの本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤の配合量は、0.1〜10.0質量%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量%である。
【0020】
皮膚外用剤は、本発明による内臓脂肪蓄積抑制剤を皮膚外用剤の基剤に配合して製造される。本発明の皮膚外用剤は、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤、各種薬剤、キレート剤、pH調製剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0021】
上記皮膚外用剤とは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用される組成物を意味する。その剤型は本発明の効果が発揮される限り限定されない。軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤など、従来、皮膚外用剤に用いられる製品であれば、いずれでもよい。
【0022】
本発明において適用される食品とは、食用に供されるものであって、内臓脂肪蓄積抑制作用を目的としてオリーブ葉、オリーブ葉抽出物を含有するものをいい、特に制限されない。したがって、病院食も本発明の食品に含まれる。好ましくは、メタボリックシンドローム用食品、ダイエット食品などである。
【0023】
食品として摂取するときの本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤の1日の摂取量は、0.01〜50gが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5.0gである。
【0024】
上記食品は、固体、液体、半固形、流動食などの形態は問わない。もちろん、高血糖者用食品、血糖値上昇抑制作用を有する食品、ダイエット食品等用に特別な形態に加工したものでもよい。
【実施例】
【0025】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
まず、本発明のオリーブ葉抽出物の内臓脂肪蓄積抑制効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0026】
(1)オリーブ葉抽出物の調製
スペイン産のオリーブ葉10kgを、室温で1週間90%メタノールに浸漬し、抽出液をろ過、溶媒を留去し、メタノール抽出物1.5kgを得た。
【0027】
(2)内臓脂肪蓄積抑制作用の測定方法
5週齢の雄のICRマウスを10匹ずつの2群に分ける。
1週間予備飼育をした後、試料として上記で調製したオリーブ葉抽出物を乾燥物換算で1質量%含む食品を与える群と、オリーブ葉抽出物を含まない対照食品を与える群とに分けて5週間給餌をした。その後、精巣上体周囲脂肪組織および腸管膜脂肪組織を採取して脂肪組織量を両群で比較した。
【0028】
(3)内臓脂肪蓄積抑制作用測定結果
精巣上体周囲脂肪組織量の測定結果を図1に、体重1g当りの精巣上体周囲脂肪組織量の測定結果を図2に示す。また腸管膜脂肪組織量の測定結果を図3に、体重1g当りの腸管膜脂肪組織量の測定結果を図4にそれぞれ示す。
図1〜図4によれば、本発明のオリーブ葉抽出物は内臓脂肪蓄積に対する抑制効果を有することが認められた。
【0029】
次に、前記性能試験に続いて、本発明の内臓脂肪蓄積抑制剤を配合した各種組成物の処方例を示すが、本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、この処方例の配合量における数値は、いずれも質量%を示すものである。
【0030】
実施例1 パン
小麦粉 90.0 質量%
食塩 1.2
砂糖 2.0
水 6.0
オリーブ葉90%メタノール抽出物 0.8
【0031】
実施例2 ハム
ひき肉 95.0 質量%
鶏卵 4.0
食塩 0.5
香辛料 0.4
オリーブ葉70%エタノール抽出物 0.1
【0032】
実施例3 果汁飲料
ブドウ糖液糖 13.0 質量%
オレンジ果汁 85.0
香料 1.0
オリーブ葉熱水抽出物 1.0
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】オリーブ葉メタノール抽出物を与えた時の精巣上体周囲脂肪組織量の測定結果を示す図である。
【図2】オリーブ葉メタノール抽出物を与えた時の体重1g当りの精巣上体周囲脂肪組織量の測定結果を示す図である。
【図3】オリーブ葉メタノール抽出物を与えた時の腸管膜脂肪組織量の測定結果を示す図である。
【図4】オリーブ葉メタノール抽出物を与えた時の体重1g当りの腸管膜脂肪組織量の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ葉またはその抽出物を含むことを特徴とする内臓脂肪蓄積抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81425(P2008−81425A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261783(P2006−261783)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】