説明

内装具

【課題】空調装置から供給された空気を噴出する孔を、人が接する部位に複数有する内装具において、人が心地よい感触を得ることができる内装具を提供する。
【解決手段】空調装置から供給される空気を噴出する空気孔13を備えた本体部9と、本体部9を覆っていると共に、表面に凹部15を備えている皮革11と、凹部15に設けられ空気孔13に連通している複数の貫通孔17とを有し、人が皮革11に接することによって、人の体の一部が凹部15を覆ったときであっても、貫通孔17から噴出した空気が凹部15から流れ出るような形状、大きさ、位置に凹部15が形成されている内装具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装具に係り、特に、空調装置から供給された空気を噴出する噴出孔を有するシート(座席)等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人(乗員)が着座したときに人が接する部位に複数の貫通孔を備え、空調装置から供給された空気を前記貫通孔から噴出し、人に快適な着座感を与えることができる自動車のシートが知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−27736号公報
【特許文献2】特開2006−69376号公報
【特許文献3】特表平9−505499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来のシート100では、図8に示すように、人Pが着座したときに貫通孔102の一部が人体によって塞がれることがあり、塞がれた貫通孔102からは空気が噴出しなくなる。一方、人が着座しても塞がれない他の貫通孔102からは、前記塞がれた貫通孔102の数に応じて空気が勢いよく噴出する。したがって、着座した人Pの部位で温度等のむらが発生し、心地よい着座感を得ることができない場合があるという問題がある。
【0004】
なお、前記問題は、自動車のシートだけでなく、自動車のシートやドアの肘掛け、椅子など家具等の内装具においても同様に発生する問題である。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、空調装置から供給された空気を噴出する孔を、人が接する部位に複数有する内装具において、人が心地よい感触を得ることができる内装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、空調装置から供給される空気を噴出する空気孔を備えた本体部と、前記本体部を覆っていると共に、表面に凹部を備えている皮革と、前記皮革の凹部に設けられ、前記本体部の空気孔に連通している複数の貫通孔とを有し、人が前記皮革に接することによって、前記人の体の一部が前記凹部を覆ったときであっても、前記貫通孔から噴出した空気が前記凹部から流れ出るような形状、大きさ、位置に前記凹部が形成されている内装具である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、人が接する内装具において、空調装置から供給される空気を噴出する空気孔を備えた本体部と、前記本体部を覆っていると共に、表面に凹部を備えている皮革と、前記凹部に設けられ、前記本体部の空気孔に連通している複数の貫通孔とを有し、前記凹部は、常態において前記人が接する可能性のある前記内装具の部位の端縁まで通じている内装具である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の内装具において、前記各貫通孔は、前記凹部の縁の近傍に設けられている内装具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調装置から供給された空気を噴出する孔を、人が接触する部位に複数有する内装具において、人が心地よい感触を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車のシート1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1におけるII矢視図であり、図3、図4は、図2におけるIII−III断面を示す図である。
【0011】
自動車のシート1は、座部(主に人の臀部や太腿部が接触する面を有する部位)3と背もたれ部(主に人の背中が接触する面を有する部位)5とヘッドレスト7とを備えている。以下、背もたれ部5について説明するが、座部3も背もたれ部5とほぼ同様に凹部15を備えて構成されている。また、ヘッドレスト7が、背もたれ部5とほぼ同様に凹部15を備えて構成されていてもよい。
【0012】
背もたれ部5は、本体部9と、この本体部9を覆っている皮革11とを備えて構成されている。本体部9は、空調装置(図示せず)から供給される空気を噴出する空気孔13を複数備えている。なお、前記空調装置は、たとえば、特開2005−27736号公報に記載されているように、シロッコファン等の送風機と、この送風機によって吸引された空気を除湿する除湿手段の例であるペルチェ素子と、前記送風機によって吸引された空気の温度を調節する熱交換機等によって構成されており、人体にとって心地よい適宜の温度や湿度の空気を供給することができるようになっている。
【0013】
皮革11の表面(本体部9に接している面とは反対側に位置している面;着座した人が接する面)には、複数の凹部15が、たとえばほぼ均等に分散されて設けられている。また、皮革11の凹部15には、本体部9の空気孔13に連通している複数の貫通孔17が、たとえばほぼ均等に分散されて設けられている。
【0014】
そして、人Pがシート1に着座し人Pの体や衣服が皮革11に接することによって、人Pの体や衣服の一部が凹部15を覆ったときであっても、凹部15(1つの凹部15)がこの総てにわたって覆われることはなく、前記空調装置から供給され貫通孔17から噴出した空気が、図4に矢印で示すように、凹部15(1つの凹部15)のたとえば縁から流れ出るような形状、大きさ、位置に凹部15が形成されている。なお、前記1つの凹部15以外の他の凹部15においても、同様に空気が流れ出るようになっている。
【0015】
各凹部15は、図1や図2から理解されるように、背もたれ部5のほぼ全面に、前述したように、ほぼ均等に分散して設けられている。なお、1つの凹部15に着目すると、人Pが着座したときに、複数の貫通孔17のうちのいくつかの貫通孔17が塞がってしまってもよい。塞がっていない貫通孔17から噴出した空気が凹部15内に噴き出して、この噴き出した空気が、凹部15の縁から流れ出るようになっていればよい。
【0016】
ここで、人Pが皮革11に接することによって人Pの体の一部が凹部15を覆ったときに貫通孔17から噴出した空気が凹部15から流れ出るような形状、大きさ、位置に凹部15が形成されているものを、例を掲げて説明する。
【0017】
まず、図2に示す凹部15の幅(より精確には、背もたれ部5の幅方向で2列に並んでいる各凹部15の一方の端部から他方の端部までの距離)B1が、人Pの体の幅よりも大きくなっているものを掲げることができる。また、他の例として、図5に示すように、溝19を設けたことによって、凹部15が背もたれ部5(背もたれ面)の端部まで通じているものを掲げることができる。
【0018】
さらに、別の例としては、1つの凹部15が着座した人Pの体で塞がれて、貫通孔17から噴出した空気が凹部15と人体とで囲まれた空間に溜まった場合であっても、凹部15の面積が広いために人Pの体を押す空気の力が大きくなり、凹部15と人Pの体とで囲まれた空間から空気が流れ出るような大きさに凹部15が形成されているものを掲げることができる。
【0019】
ところで、凹部15は、皮革11をたとえばプレスすることによって形成されている。凹部15の深さt1(図3参照)は、たとえば、皮革11の厚さとほぼ等しくなっているが、凹部の深さt1が皮革11の厚さより浅くてもよい。
【0020】
また、各貫通孔17が、凹部15の縁の近傍にのみ設けられている構成であってもよい。たとえば、貫通孔17と凹部15の縁とが接していてもよいし、貫通孔17を円形な形状とした場合、貫通孔17と凹部15の縁との間の距離が貫通孔17の直径とほぼ等しいか、前記直径よりも小さくなっていればよい。
【0021】
シート1によれば、人Pが着座した場合であっても、貫通孔17が塞がれることがなく、貫通孔17から出てきた空気が、図4に矢印で示すように凹部15の外に流れる。したがって凹部15の中で空気の流れが生成され、着座した人Pの体がほぼ均等に適宜暖められもしくは適宜冷やされ、また、着座した人Pの体がほぼ均等に適宜除湿されもしくは加湿され、着座した人Pが心地よい感触(着座感)を得ることができる。
【0022】
なお、凹部15に設けられている複数の貫通孔17の一部が、着座した人Pの体によって塞がれた場合であっても、凹部15内の他の貫通孔17から空気が出て、凹部15の中に空気の流れが生成されるので、従来のシートよりも、心地よい着座感を得ることができる。
【0023】
また、シート1において、貫通孔17を凹部15の縁の近傍に設ければ、凹部15の段差の近傍に貫通孔17が設けられていることになり、人Pが着座した際に貫通孔17が塞がれることを一層確実に回避することができる。
【0024】
ここで、凹部15等の変形例について説明する。図5〜図7は、自動車のシートの背もたれ部5a等に設けた凹部の変形例を示す図であり、図2に対応する図である。
【0025】
図5に示す背もたれ部5aには、溝状の凹部19を設けてある点が、図2に示す背もたれ部5とは異なり、その他の点は、図2に示す背もたれ部5とほぼ同様に構成されている。なお、座部等についても背もたれ部5aと同様に考えることができる。
【0026】
背もたれ部5aでは、溝状の凹部19を設けてあることによって、常態において人が接触する可能性のある部位(面)の端縁に、凹部15が通じている。そして、凹部15の空気が凹部19を通って、凹部15の外部に流れるようになっている。
【0027】
また、図6に示す背もたれ部5bでは、横方向に延びた溝状の凹部21を縦方向に複数本並べて設けてあり、各凹部21に貫通孔17を複数設けてある。このように構成することによって、常態において人が接触する可能性のある部位(面)の端縁に、凹部が通じていることになる。
【0028】
また、図7に示す背もたれ部5cでは、横方向に延びた溝状の凹部23を縦方向に複数本並べて設け、縦方向に延びた溝状の凹部25を横方向に複数本並べて設け、網目状の凹部を形成してあり、この凹部に貫通孔17を複数設けてある。このように構成することによって、常態において人が接触する可能性のある部位(面)の端縁に、凹部が通じていることになる。
【0029】
なお、図7に示す背もたれ部5cは、皮革に凸部を設け、この凸部以外の箇所に複数の貫通孔を設けた構成のものであると言える。さらに、図7に示す背もたれ部5cにおいて、凸部を矩形状以外の形状(円形、楕円、長円、正六角形等)に形成してもよい。
【0030】
背もたれ部5a〜5c等を備えたシートでは、凹部が座部(座面)や背もたれ部(背もたれ面)の端部まで通じているので、人が着座した場合であっても、貫通孔17から出てきた空気を凹部から外部に確実に出すことができ、人の体格にかかわらず、着座した人が心地よい感触(着座感)を一層確実に得ることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、自動車のシート1を例に掲げて説明したが、シート1と同様の構成を、自動車のドアの肘掛けやシートの肘掛け、家具としての椅子等の内装具にも適用することができる。また、皮革として、天然の皮革の他、合成皮革を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車のシートの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII矢視図である。
【図3】図2におけるIII−III断面を示す図である。
【図4】図2におけるIII−III断面を示す図である。
【図5】自動車のシートの背もたれ部に設けた凹部の変形例を示す図であり、図2に対応する図である。
【図6】自動車のシートの背もたれ部に設けた凹部の変形例を示す図であり、図2に対応する図である。
【図7】自動車のシートの背もたれ部に設けた凹部の変形例を示す図であり、図2に対応する図である。
【図8】従来のシートの断面を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シート
3 座部
5 背もたれ部
9 本体部
11 皮革
13 空気孔
15、19、21、23、25 凹部
17 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置から供給される空気を噴出する空気孔を備えた本体部と;
前記本体部を覆っていると共に、表面に凹部を備えている皮革と;
前記皮革の凹部に設けられ、前記本体部の空気孔に連通している複数の貫通孔と;
を有し、人が前記皮革に接することによって、前記人の体の一部が前記凹部を覆ったときであっても、前記貫通孔から噴出した空気が前記凹部から流れ出るような形状、大きさ、位置に前記凹部が形成されていることを特徴とする内装具。
【請求項2】
人が接する内装具において、
空調装置から供給される空気を噴出する空気孔を備えた本体部と;
前記本体部を覆っていると共に、表面に凹部を備えている皮革と;
前記凹部に設けられ、前記本体部の空気孔に連通している複数の貫通孔と;
を有し、前記凹部は、常態において前記人が接する可能性のある前記内装具の部位の端縁まで通じていることを特徴とする内装具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内装具において、
前記各貫通孔は、前記凹部の縁の近傍に設けられていることを特徴とする内装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−126881(P2008−126881A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315440(P2006−315440)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(591189535)ミドリホクヨー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】