説明

内装材の製造方法

【課題】変性PPE系樹脂を基材とする発泡シートを用いた、軽量剛性に優れ、吸音特性および断熱性を兼ね備えた内装材を製造し得る内装材の製造方法を提供する。
【解決手段】PPE系樹脂25〜50質量%およびPS系樹脂75〜50質量%からなる変性PPE系樹脂で構成された発泡層の少なくとも一方の面に、PPE系樹脂5〜30質量%及びPS系樹脂95〜70質量%からなる変性PPE系樹脂で構成される非発泡層が積層された発泡積層シートに、非発泡層の室外側面にポリウレタン系発泡体を積層して内装用基材となし、該基材の目付け量を400g/m以下にするとともに、該基材の室内側面に表皮材を貼り合わせて一体化した状態で、熱源温度が140〜300℃であり、かつ熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉に供給し、表皮一体で加熱軟化した後、所定形状に成形する内装材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、電車、航空機、建築物等の室内に用いる、軽量化された内装材の製造方法に関する。さらに詳しくは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下「変性PPE系樹脂」と記す。)を基材とする発泡積層シートを用いた、軽量剛性に優れ、吸音特性および断熱性を兼ね備えた内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の内装材として、ポリウレタン系発泡体にガラス繊維を積層したシートや、ポリプロピレン樹脂にガラス繊維を混合または積層した積層シートが広く用いられ、成形加工性、耐熱特性及び吸音特性に優れているという特徴があった。
一方で、これらの自動車用の内装材は、ガラス繊維を構成材料とするため、リサイクル性、特にマテリアルリサイクル性に劣り、軽量化が図れず、ひいては燃費が上昇することによりCO量が増加するという面から環境適合性に劣るものである。
【0003】
近年、自動車の更なる燃費向上要求に対し、より一段の自動車内装材の軽量化による環境適合性改善が求められている。しかし、現在使用されているガラス繊維複合化された基材では軽量化の限界が見えている。
【0004】
これに対し、ガラス繊維代替として、カーボン繊維や天然繊維として、サイザル繊維/ジュート繊維を混合または積層した積層シートが登場しているが、価格面、品質安定性を確保するために、その使用量を増加せざるを得ず、結果として、軽量化が図れず、燃費が上昇することによりCO量が増加するという面から環境適合性を十分満足するものではない。
【0005】
そこで、軽量で耐熱性のある変性PPE系樹脂を用いた自動車内装用発泡積層シートが提案されている(特許文献1参照)ものの、品質を維持した軽量基材(表皮材を除く目付け:500g/m以下)は未だ存在していない。
【0006】
また、従来の自動車用の内装材は、生産性向上を図るため遠赤外加熱ヒーターで加熱成形されていた。遠赤外加熱ヒーターは、結晶性のPP樹脂をベースとした基材の高速加熱に適していたが、軽量化された基材にはそぐわないものであった。特に、軽量化された非晶性樹脂基材に対しては、加熱成形で良好な製品を作製することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−46927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、変性PPE系樹脂を基材とする発泡シートを用いた、軽量剛性に優れ、吸音特性および断熱性を兼ね備えた内装材を製造し得る内装材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、熱可塑性樹脂として、耐熱性樹脂、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」と記す)およびポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す)との混合樹脂である変性PPE系樹脂をベースとした発泡積層シートに対して、発泡コア層より耐熱性が低い非発泡層を発泡層の少なくとも一方の面に積層することで、低温加熱でも良好な成形加工性が得られることを見出した。この結果、表皮材と一体で加熱しても表皮材への熱打撃を抑制し表皮材の意匠性を損なうことを回避できるようになった。
【0010】
また、軽量基材は一旦加熱されても、自然放冷で温度が急速に下がり、成形加工の適正温度範囲から逸脱してしまうことがある。そこで、室内側には表皮材且つ室外側にはポリウレタン系発泡体を積層した基材を加熱成形することで、基材温度の低下を抑制する。
更に、非晶性樹脂(変性PPE系樹脂)で構成された軽量基材は、軟化に必要とされる熱容量が小さく、オーブンでも十分な均一加熱が可能となり、十分な生産性が得られることを見出している。
すなわち、上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜50質量%およびポリスチレン系樹脂75〜50質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成された発泡層の少なくとも一方の面に、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜30質量%およびポリスチレン系樹脂95〜70質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成される非発泡層が積層された発泡積層シートに、前記非発泡層の室外側面にポリウレタン系発泡体を積層して内装用基材となし、該基材の目付け量を400g/m以下にするとともに、該基材の室内側面に表皮材を貼り合わせて一体化した状態で、熱源温度が140〜300℃であり、かつ熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉に供給し、表皮一体で加熱軟化した後、所定形状に成形することを特徴とする内装材の製造方法。
(2)加熱炉は、オーブン加熱炉を使用することを特徴とする前記(1)に記載の内装材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、変性PPE系樹脂を基材とする発泡シートを用いた、軽量剛性に優れ、吸音特性および断熱性を兼ね備えた内装材を製造し得る内装材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法により得られる内装材の要部拡大断面図である。
【図2】本発明の内装材の製造方法における工程の一例を示す概念図である。
【図3】実施例1及び比較例1において作製した各内装材に対する吸音率の評価結果をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の内装材の製造方法は、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜50質量%およびポリスチレン系樹脂75〜50質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成された発泡層の少なくとも一方の面に、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜30質量%およびポリスチレン系樹脂95〜70質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成される非発泡層が積層された発泡積層シートに、前記非発泡層の室外側面にポリウレタン系発泡体を積層して内装用基材となし、該基材の目付け量を400g/m以下にするとともに、該基材の室内側面に表皮材を貼り合わせて一体化した状態で、熱源温度が140〜300℃であり、かつ熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉に供給し、表皮一体で加熱軟化した後、所定形状に成形することを特徴としている。
以下に先ず、本発明の内装材の製造方法により製造される内装材について、図面に基づいて説明するが、これに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の内装材の製造方法により製造される自動車用の内装材の断面を示している。図1に示す自動車内装材40は、自動車内装材用基材50に表皮材30を積層した構成である。自動車内装材用基材50として、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする押出発泡シートである発泡層10の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層11および13(室内側非発泡層11および室外側非発泡層13)が形成され、室外側非発泡層13の表面に、接着剤層16を介してポリウレタン系発泡体20(以下発泡体という)が積層され、室内側非発泡層11の表面に接着剤層18を介して、表皮材30が積層されている。
【0015】
発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;ポリスチレンあるいは耐熱性ポリスチレンとポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変性PPE系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独または、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で、変性PPE系樹脂が好ましく、本発明においては当該変性PPE系樹脂を採用している。
【0016】
本発明における変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂である。変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。これらのなかでも、汎用性およびコストの点で、スチレンが好ましい。
【0018】
変性PPE系樹脂中において、PPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂があげられる。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体のみからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0019】
本発明において、発泡シートである発泡層10に使用される基材樹脂たる変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂25〜50質量%およびPS系樹脂75〜50質量%からなる変性PPE系樹脂である。変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂が25質量%より少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂が50質量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる傾向がある。
【0020】
本発明における発泡シートである発泡層10は、発泡剤として炭化水素系発泡剤を用いて押出発泡成形して得られるものが好ましい。
【0021】
発泡シートである発泡層10を得る際に使用される炭化水素系発泡剤としては、揮発性発泡剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20〜50である炭化水素系発泡剤が好ましい。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。
【0022】
本発明においては、前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンおよびノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いものが好ましい。発泡剤がイソブタンおよびノルマルブタンの混合体である場合は、混合体中のイソブタン含有量は、30質量%以上が好ましい。イソブタン含有量が30質量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0023】
本発明における押出発泡成形時の炭化水素系発泡剤の添加量は、耐熱性樹脂(変性PPE系樹脂)100質量部に対し、3.0〜6.0質量部であることが好ましく、3.5〜5.5質量部であることがより好ましい。炭化水素系発泡剤の添加量が3.0質量部より少ないと、成形加熱時の二次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得、良好な成形性を得るのに悪影響を与える傾向があり、6.0質量部を超えると、押出発泡が不安定になったり、発泡シートの表面荒れが発生したりする傾向がある。
【0024】
本発明においては、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1.0〜5.0mmが好ましく、1.5〜3.5mmがより好ましい。発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さが1.0mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5.0mmを超えると、成形時に熱がかかる際、発泡層10(1次発泡層)はさらに発泡(2次発泡)するが、発泡層10の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0025】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率は10〜30倍が好ましく、15〜25倍がより好ましい。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が10倍より低いと、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また、軽量化の効果が少なくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が30倍を超えると、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより、成形性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)のセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。セル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmを超えると、断熱性に劣る傾向がある。
【0027】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の独立気泡率は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。独立気泡率が70%より低いと、断熱性および剛性に劣るとともに、成形加熱によって目的とする2次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0028】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の目付は50〜150g/mが好ましく、80〜120g/mがより好ましい。目付が50g/mより低いと、内装用基材としての剛性が不足する傾向があり、目付が150g/mを超えると、目的とする軽量性の効果が発揮できなくなる。
【0029】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)中の残存揮発成分の量は、発泡層10の全重量に対して1.0〜5.0質量%が好ましく、2.0〜4.0質量%がより好ましい。残存揮発成分が1.0質量%より少ないと、2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、残存揮発成分が5.0質量%を超えると、接着剤層との間に空気溜まりが発生したり、経時による寸法安定性が低下する傾向がある。なお、発泡層10中の残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化をはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
一般に、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)においては、押出発泡成形時に延伸され扁平となっていたセルが、成形加熱時に扁平率を解消する方向にその形状を変化させることにより、加熱収縮が発現させる。その加熱収縮が、結果的に自動車内装材の耐熱変形を起こす。
ここで、耐熱変形とは、自動車内装材を加熱試験した場合、加熱前後での発泡セルの加熱収縮による形状変形等により自動車内装材の寸法変化が発生することを意味し、例えば、自動車天井材の場合、加熱試験後の天井成形体の屈曲部において、加熱試験で変形が発生し、フロント端末部位の変形になることである。
そこで、耐熱変形等の形状変化を抑制するためには、発泡層10(1次発泡層)のセル形状としては、発泡層の表裏面表層部のセル密度アップを、押出発泡成形シート化時に表裏面とも均一に冷却することでハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮の量を抑制することができる。
【0030】
さらに、発泡層10のセル内圧の変化をなるべく小さくすることにより、加熱収縮量を小さくできる。例えば、発泡層10の押出発泡成形後、非発泡層11,13を積層加工するまでの養生時間を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることができる。
【0031】
さらに、加熱収縮による耐熱変形量は、二次加熱成形時の加熱温度を135〜155℃の範囲に制御し、発泡層10のセルに加熱成形時の歪みを与えない条件にて成形加工することによっても、非発泡層11または13を積層しない場合でも小さくすることができる。
【0032】
本発明において使用される発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0033】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、PS系樹脂、耐熱PS系樹脂、変性PPE系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。ただし、非発泡層11及び13のうち少なくとも一方は変性PPE系樹脂を用いる。つまり、発泡層の両面に積層される非発泡層のうちの少なくとも一方を、変性PPE系樹脂を用いて形成された非発泡層とする。発泡層の一方の面側のみを、変性PPE系樹脂を用いて形成される非発泡層とする場合、当該非発泡層として、異音防止層の積層において接着剤を使用しない安価な接着方法(アンカー接着)に効果を発揮する耐熱PS系樹脂を用いて形成される層を、発泡層の室外側に形成することが好ましい。
【0034】
本発明において、非発泡層11または13として使用する変性PPE系樹脂は、上述の発泡層10の場合と同様に(ただし、PPE系樹脂及びPS系樹脂の比率は異なる)、PPE系樹脂に対しスチレン系化合物を主体とする単量体による重合またはその重合体との混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体を重合させたPPE−スチレン共重合体、この共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、その共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
これらPPE系樹脂、PS系樹脂またはスチレン系単量体の具体例や好ましいものの例示や、PS系樹脂やスチレン単量体と重合可能な単量体の具体例、それを使用する理由などは、発泡層10において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層11,13の耐衝撃性改善効果が大きいという点から好ましい。
【0035】
また、本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂として、変性PPE系樹脂を用いる場合には、変性PPE系樹脂である混合樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂の割合としては、PPE樹脂5〜30質量%およびPS系樹脂95〜70質量%であることが好ましい。PPE樹脂の混合割合が5質量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、30質量%を超えると、成形時の伸び不良が発生し成形加工が困難になる場合がある。
【0036】
本発明において、非発泡層11,13として耐熱PS系樹脂を使う場合は、使用される耐熱PS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体と他の単量体との共重合体であることが好ましい。耐熱性の改善効果を有し、スチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものと、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が、その耐熱性改善効果、汎用性およびコストの面から好ましい。
【0038】
耐熱PS系樹脂は単独で用いてもよく、または2種類以上組み合わせてもよい。
本発明においては、耐熱PS系樹脂は、他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、ブレンドする熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネートやそれらの共重合体などがあげられる。これらのうちでは、汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15質量%である。
【0039】
本発明における非発泡層11および13の目付は50〜150g/mが好ましい。非発泡層の目付が50g/mより低い場合には、強度、剛性、耐熱性などが低下する傾向があり、150g/mより高い場合には、目的の軽量性が確保できなくなる。
【0040】
本発明においては、非発泡層を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電気防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0041】
耐衝撃性改良剤は、非発泡層11および13を発泡層10に積層し、加熱成形時に2次発泡させた積層シートを自動車内装材として成形する際のパンチング加工や、積層シートや成形体を輸送する際に、非発泡層11および13の割れなどを防止するのに有効である。本発明における耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば、特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えば、HIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを混合して非発泡層に使用する場合も、非発泡層11または13に耐衝撃性を付与することができる。
【0042】
本発明において、自動車内装材用基材の室外側非発泡層13には発泡体20が積層される。発泡体20としては、特に、連通構造をとりやすく、発泡体のセル膜の強度が低く、結果的に引張り弾性率が低い軟質ポリウレタン系発泡体、特にポリエーテル系ポリウレタンフォームが好ましい。
【0043】
本発明における発泡体20の厚みとしては、1〜10mmが好ましく、2〜8mmであることがより好ましく、3〜6mmであることがさらに好ましい。発泡体の厚みが1mm未満である場合、十分な保温性が確保できない傾向があり、10mmを超える場合、内装材と自動車のフレームその他の他部材とのスペース確保が難しく、材料配置が困難となる場合がある。
【0044】
本発明においては、発泡層10の両面に非発泡層11および13を積層した非通気材料である自動車内装材用基材の室外側非発泡層13に発泡体20を配置することにより、発泡体20に異音防止層としての機能も付与できる。異音防止層とは、自動車内装材の室外側最外層に積層される部材で、自動車内装材を自動車に装着した場合、自動車のボディーと内装材が接する部分で擦れ音として発生する異音を防止する役割を担う。
【0045】
本発明において、発泡体20を室外側非発泡層13に積層するに用いる接着剤層16としては、分子間力、水素結合、共有結合等化学的な結合で非発泡層13と発泡体20とを接着させる働きを有するものが用いられる。
【0046】
本発明における接着剤16の具体例としては、例えば、酢酸ビニル系、セルロース系、ポリアミド系、ポリビニルアセテート系等の熱可塑性接着剤、ウレタン系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤、クロロプレンゴム系、二トリルゴム系、シリコーンゴム系等のゴム系接着剤、でんぷん、たんぱく質、天然ゴム系等の天然物系接着剤、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体系等のホットメルト接着剤、PS系樹脂ラテックス、SB系樹脂ラテックス、カルボキシ変性SB系樹脂ラテックス等の水溶性エマルジョンがあげられる。
【0047】
本発明において、表皮材30を室内側非発泡層11に積層するに用いる接着剤層18としては、ホットメルトフィルム接着剤を用いる。ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系エチレンー酢酸ビニル共重合体系、スチレンーブタジエン共重合体系などの樹脂を成分としたものが挙げられるが、ポリオレフィン系がコスト・品質面で好ましい。
【0048】
本発明における自動車用内装材は、図1に示すように、一方の室内側非発泡層11の表面に熱可塑性樹脂接着剤層18を介して表皮材30が積層されている。
【0049】
本発明における表皮材30とは、自動車用内装材の室内側最外層に積層される部材であり、自動車等の室内から視認でき、触れられる部分に配置されるため、特に意匠性、耐傷つき性、触感等が要求される。
【0050】
本発明における表皮材30に使用される不織布としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でも使用することができる。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも使用することができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿、セルロース等の天然繊維を使用することができるが、中でもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0051】
不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられるが、ニードルパンチ布が成形における毛倒れが少なく好ましい。
【0052】
次に、本発明の内装材用基材の製造方法について説明する。
本発明において使用される発泡層10(1次発泡層)は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、基材樹脂である耐熱性樹脂に対し、必要に応じ各種の添加剤をブレンドしたものを、押出機を用いて樹脂温度200〜300℃にて溶融・混練する。次いで、高温高圧(樹脂温度200〜300℃および樹脂圧5〜25MPa)下にある押出機内へ、耐熱性樹脂100質量部に対して炭化水素系発泡剤3.0〜6.0質量部を圧入し、さらに、樹脂温度を発泡最適温度域(150〜250℃)に調節した後、サーキュラーダイなどを用い、低圧帯(通常は大気中)に押出し発泡させる。その後、マンドレル(円筒状冷却筒)などに接触させながら、例えば5〜20m/分の速度で引き取ることによりシート状に成形し、カットした後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0053】
発泡層10に対し、非発泡層11および13、発泡体20、接着剤層16および18を積層する方法としては、特に限定されるものではないが、予め発泡成形して巻き取られた発泡層10を繰り出しながら、押出機から供給される溶融状態の非発泡層11および13の基材樹脂を、発泡層10と接着剤層16を介して発泡体20、及び接着剤層18で挟み込む形で層状に積層した後、冷却ローラーなどによって圧着する方法が好ましい。なかでも、発泡層10の押出発泡シート成形と非発泡層11および13の押出とをインラインで行って積層する方法が、製造工程の簡略化という点で好ましい。
表皮材30の発泡積層シートとの接着方法としては、予め接着剤層18を接着した表皮材30を発泡積層シートに熱ロール等を用いて接着する方法、予め接着剤層18を接着した発泡積層シートに表皮材30を仮止めし加熱成形時に成形と同時に接着を行う方法、発泡積層シートの製造時に非発泡層11の基材樹脂を溶融させ、溶融した非発泡層11の基材樹脂を発泡層10と接着剤層18及び表皮材30とで挟み込み圧着する方法が挙げられる。
【0054】
次いで、図2を参照して、本発明の製造方法における各工程について説明する。図2は、加熱炉とプレス成形機とを含み、基材の加熱からプレス成形までの工程を連続的で実行することができるシステムを模式的に示す図である。図2に示すシステムは、加熱炉60と、プレス成形機70とを具備し、加熱炉60とプレス成形機70との間には搬送路80が設けられている。
搬送路80は、加熱成形すべき基材を加熱炉60及びプレス成形機70の内部にまで搬送する役割が果たし、搬送路80の両端は加熱炉60及びプレス成形機70の内部に位置している。また、搬送路80には、加熱炉60とプレス搬送機70との間の位置に、クランプ82が設けられており、加熱成形すべき基材はクランプ82にセットされる。搬送路80は、ベルトコンベアや稼働レール等を使用することができる。
加熱炉60の外部には、炉内に搬入された基材を加熱するためのヒーター62が設けらており、また加熱炉60の内部には載置台(不図示)を有し、この載置台に搬送路を介して搬送される基材を載置する。なお、ヒーター60の詳細については後述する。
プレス成形機70は、所定の形状にするための金型72を備え、加熱炉60で加熱され軟化し、金型72にセットされた基材を所定の圧力でプレスし所定形状に成形する役割を果たす。
【0055】
本発明において、得られた自動車内装用基材50(1次発泡積層シート)から賦形により自動車内装材40(2次発泡積層成形体)を得る成形方法としては、加熱炉内部の中央に1次発泡積層シートをクランプして導き、成形に適した温度(例えば、発泡積層シートの表面温度を135〜155℃)になるように加熱して2次発泡させた後、温度調節した金型にてプレス冷却し、賦形する方法が挙げられる。具体的には、図2に示すシステムを用い、内装材は、以下の工程を経て製造される。(1)基材をクランプ82にセットする。(2)搬送路70を介してクランプ82にセットした基材を加熱炉60へ搬送する。(3)ヒーター62により加熱炉60の内部を加熱し所定温度とする。(4)加熱軟化した基材をプレス成形機70へ搬送する。(5)プレス成形機70を稼働し、基材を所定形状に成形する。(6)成形後の基材をクランプ82まで搬送する。(7)最後に成形後の基材すなわち製品としての内装材を取り出す。
【0056】
本発明において、加熱成形する方法として、具体的には、例えば、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0057】
本発明において、基材を加熱するため、熱源温度が140〜300℃であり、かつ熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉を用いる。熱源温度と炉内の最低温度とをそのように設定すると、加熱源に温度分布が発生しても、炉内にある高温の空気層が、輻射伝熱の抑制と効率的な対流伝熱を促進し、局部的な加熱を抑制することとなり均一加熱の効果を発揮する。
なお、「炉内の最低温度」とは、文字通り、加熱炉内の温度分布における最も低い温度である。
【0058】
一方、熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃より大きくなると対流の効果が小さくなり、逆に輻射の寄与が拡大するため、結果として熱の伝達状態が場所により大きく乱され、均一加熱の阻害因子となる。
【0059】
本発明において、熱源温度と炉内の最低温度との温度差を抑制する方法として囲われた炉内で加熱することが好ましい。加熱炉を囲うことで炉内温度が上昇し、加熱源の温度に近づき温度差が小さくなる。また、囲うことで炉内を高温に保持できると、加熱媒体が局部的に高温状態になっても、介在する高温の空気層が輻射伝熱を抑制する効果を発揮する。この結果、加熱炉内の温度分布を小さく抑え、軽量基材であっても、均一加熱することができるのである。
【0060】
逆に、市場で多用されている加熱炉は、生産性を向上させるため基材加熱と同時に成形が実施されている。このような装置において基材出入口は、一般に開放状態に近く外気に曝された環境変動(例えば空気の流れ等)により大きな影響を受ける。
特に、遠赤外線加熱炉においては、ヒーターから離れた炉壁は、十分な熱を受けることができず、且つ外部から侵入した冷気の影響で炉内でも温度が低い状態になっている。この結果、熱源温度と炉内の最低温度の差は非常に大きくなり100℃を超えて200℃以上に至る。
【0061】
このような温度差の大きい炉内においては、高温の遠赤外線ヒーターから伝達される熱と低温の炉壁から伝わる熱との影響で基材に伝わる熱が不均一になる。非晶性樹脂で構成される軽量基材は、この伝達する熱の差異が均一加熱を阻害する因子となり、大きな基材温度ムラとして表れる。
【0062】
本発明において、熱源温度と炉内の最低温度との温度差を抑制する方法として、加熱源は直接加熱より間接加熱を用いる方が好ましい。間接加熱(例えばオーブン加熱炉)においては、熱源の温度変化が媒体となる空気で緩和され、温度変化が抑制されるため、熱源温度と炉内の最低温度との差は限りなく小さくできる。この結果、熱容量の小さい非晶性樹脂で構成される軽量基材であっても均一加熱を容易に実施できるのである。
【0063】
逆に、直接加熱においては熱源温度と炉内の最低温度を近づけることは非常に困難である。この直接加熱においても遠赤外線加熱においては、更に電源のオンオフ動作により基材に与える熱量に変動が発生する。この熱量の変化が基材温度に影響を及ぼし、安定した均一加熱状態を作ることが非常に困難となっている。
【0064】
本発明において、基材を加熱する方法に十分な注意を払う必要性があるのは、軽量化で熱容量が小さくなっただけでなく、積層発泡シート構造(発泡シートをコア層とし発泡層の両表面に非発泡層が積層されている積層構造)も大きく関係している。
即ち、発泡積層シート構造においては、基材表面から伝達された熱量は、内部の発泡層に移動する。しかし、発泡層は断熱性を持っており熱の移動速度は遅い。そのため、基材に伝達された熱は表面に止まる。その結果、非発泡層と発泡層の界面温度が上昇し、発泡セルの破壊から界面破壊へと進行する。特に、遠赤外線加熱のような、局部的に輻射伝熱する状態においては、基材温度が低い時に熱源と基材間の温度差が大きくなり、輻射熱も大きくなる。
そこで、基材温度があまり上がっていない状態にもかかわらず界面破壊は容易に発生する。このため、軽量化された積層発泡シートを加熱成形するためには、特に選択された加熱方法を用い均一に加熱する必要がある。
【0065】
本発明において、基材を加熱成形する方法として、表皮材と一体化した状態で加熱し、成形することが好ましい。良好な成形品を取得するためには、適正に基材を加熱するだけでは十分でなく、適正な温度に基材を維持させる必要ある。しかし、熱容量の小さい基材は、加熱から成形までの数秒間で自然放冷を受け、成形延伸できない温度まで低下してしまう。そこで、表皮材と一体で加熱することで、基材トータルの熱容量を大きくするとともに、表皮材の断熱効果で基材温度の低下を抑制できる。この結果、熱容量の小さい軽量基材でも基材温度を下げることなく、良好な成形体を得ることができる。
【0066】
本発明において、基材の保温性を確保する方法として裏面側にウレタンを積層することが好ましい。裏面には異音防止層として不織布を積層することはよく知られている。しかし、基材に対する保温性としては十分な機能を発揮できない。特に、成形時の金型接触による基材温度の急速な低下を抑制することはできない。一方、熱硬化性のウレタンは常温では大きな剛性を持たないものの、高温で軟化した熱可塑性基材に対しては十分な剛性を発揮し、基材が圧縮成形されてもウレタンは潰れず適度な隙間を確保することとなる。その結果、金型と基材とが直接接触することによる基材温度低下を防ぐ効果を発揮する。その結果、成形性が大幅に改善するだけでなく、延伸歪の抑制にも大きな寄与を発揮する。
【0067】
本発明において、自動車内装材中の発泡層(1次発泡シート)を加熱により2次発泡させる際には、1次発泡シートに対して、通常1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましく、さらには1.8〜2.5倍に2次発泡させるのが好ましい。従って、2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の発泡倍率は、10〜50倍が好ましく、20〜40倍がより好ましい。2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の厚さは、2.0〜10mmが好ましく、3.0〜7.0mmがさらに好ましい。2次発泡倍率が1.5倍未満では、柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。2次発泡倍率が3倍を超えると、強度が低下する傾向がある。また、2次発泡後の発泡層の厚さが2.0mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用基材として適当でない場合がある。厚さが10mmを超えると、成形賦形時の形状発現性に劣り、必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
このようにして得られる自動車内装材の全体の目付けは、200〜400g/mが好ましく、250〜350g/mがさらに好ましい。自動車内装材の全体の目付けが200g/m未満では、強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。400g/mを超えると、本発明の軽量性目標を達成することができない。
【0068】
以上、本発明の製造方法について、自動車用の内装材を例に説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。例えば、自動車内装材用基材は用途として電車、航空機、建築物の室内などの内装材用基材にも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は詳細説明により何ら制限を受けるものではない。
【0070】
実施例または比較例に用いた樹脂を表1に、ポリウレタン系発泡体及びその代替品の材料を表2に、接着剤層および表皮層の材料を表3に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
なお、表1〜表3に示した各符号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
SMAA :スチレン−メタクリル酸共重合体(耐熱ポリスチレン樹脂)
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
実施例または比較例にて実施した評価方法を、以下に示す。
【0075】
(発泡層および成形体の厚さ)
得られた1次発泡シートおよび成形体に対し、幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0076】
(発泡倍率)
得られた1次発泡シートに対し、発泡倍率を以下の式で算出した。
発泡倍率=(試料の幅×試料の長さ×試料の厚み×樹脂の比重)/試料の質量
【0077】
(独立気泡率)
得られた1次発泡シートに対し、マルチピクノメーター(ベックマン社製)を用いて、ASTM D−2859に準じて測定し、独立気泡率を求めた。
【0078】
(セル径)
得られた1次発泡シート発泡層の断面を光学顕微鏡で観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0079】
(目付)
用いた材料の任意の5ヵ所より、100mm×100mmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定した後、平均値を算出し、m当たりに換算した。
【0080】
(吸音性)
得られた自動車内装材(1次発泡積層シート)を加熱2次発泡させ、温度調節した金型にてプレス冷却し、賦形により得られた自動車内装部品(2次発泡積層成形体)から、700mm×700mmの大きさの試験片を切り出し、以下に示す方法にて残響室法吸音率測定を行った。
【0081】
(残響室法吸音率)
JIS A1409「残響室法吸音率の測定方法」に準じ、日東紡音響エンジニアリング(株)製の不整形9m残響室にて、集音マイク位置5点かつ各点n=3の計15点で測定した値の平均値を採用し、以下の式より吸音率を求めた。
【0082】
【数1】

ここで、α:残響室K法吸音率、V:残響室容積(m)=9、T1:試料を入れた時の残響時間(秒)、T2:試料を入れた時の残響時間(秒)、c:音速(m/s)=331.5+0.6×t、t:残響室内温度(℃)、S:測定試料面積(m)=0.49である。
【0083】
(実施例1)
PPE樹脂成分30質量%およびPS樹脂成分70質量%となるようにPPE樹脂(A)42.9質量部およびPS樹脂(B)57.1質量部とを混合した混合樹脂100質量部に対して、iso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15質量%)4.9質量部およびタルク0.32質量部を押出機により樹脂温度270℃にて混練し、樹脂温度を190℃まで冷却し、圧力16MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻取り、一次発泡層の厚さ2.1mm、一次発泡倍率22.1倍、独立気泡率83%、セル径0.14mmおよび目付100g/mの1次発泡シートの巻物を得た。
次いで、前記1次発泡シートをロールより繰り出しながら、PPE樹脂成分10.0質量%、PS樹脂成分79.3質量%およびゴム成分10.7質量%となるようにPPE樹脂(A)14.3質量部およびHIPS樹脂(D)85.7質量部を混合した混合樹脂を、押出機を用い樹脂温度235℃にて溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、溶融状態でフィルム状の室外側非発泡層を前記1次発泡シートに積層し、目付80g/mの変性PPE系樹脂非発泡層を形成した。その後、変性PPE系樹脂非発泡層の表面に、目付45g/mのウレタン系発泡体(E)を、目付10g/mのSBR系ラテックス(L)を介して積層したシートを得た。
さらに、得られた変性PPE系樹脂非発泡層を形成したシートをロールから繰り出しながら、PPE樹脂成分15.0質量%、PS樹脂成分84.4質量%およびゴム成分0.6質量%となるようにPPE樹脂(A)21.5質量部、PS樹脂(B)73.5質量部およびHIPS樹脂(D)5.0質量部を混合した混合樹脂を、樹脂温度が235℃となるようフィルム状に押し出し、変性PPE系樹脂室外側非発泡層の反対面に目付80g/mの変性PPE系樹脂室内側非発泡層を形成した。
その後、変性PPE系樹脂室内側非発泡層に、目付30g/mのホットメルトフィルム(N)を介して、目付140g/mの不織布表皮(M)を当該面に積層し、1次発泡積層シート(自動車内装材)を得た(自動車内装材目付:345g/m、表皮140g/m)。
【0084】
表皮材が積層された1次発泡積層シートを4方クランプして、オーブン加熱炉(設定温度160℃:間接加熱であり熱源温度と炉内の最低温度との温度差はなし)に入れ60秒加熱した。その後、金型クリアランス5.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、自動車用成形天井材を得た。取得した自動車用成形天井材は、外観も良好で軽量・剛性に優れたものであった。
一方で、得られた自動車用成形天井材から吸音性試験用試験片を切り出し、当該試験片の吸音性試験を実施したところ、図3に示す通り良好な吸音性を示した。
【0085】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた1次発泡積層シートを4方クランプして、箱型の遠赤外ヒーター加熱炉(熱源温度230℃:炉内の最低温度は150℃、温度差は80℃)で50秒加熱した。得られた発泡積層シートは少し厚み分布が発生し、特に周囲の厚みが少し薄い状態であった。その後、金型クリアランス5.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、自動車用成形天井材を得た。取得した自動車用成形天井材は、外観も良好で軽量・剛性に優れたものであった。
【0086】
(実施例3)
実施例1と同様にして得られた1次発泡積層シートを4方クランプして、箱型加熱炉のダンパー閉のタイミングを遅らせ(1秒→3秒)、加熱時間を少し長く(50秒→60秒)調整して、遠赤外ヒーター加熱炉(設定温度230℃:炉内の最低温度は140℃、温度差は90℃)で加熱した。得られた発泡積層シートは、少し厚み分布が発生し、特に周囲の厚みが少し薄い状態であった。その後、金型クリアランス5.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、自動車用成形天井材を得た。取得した自動車用成形天井材は、外観も良好で軽量・剛性に優れたものであった。
【0087】
(比較例1)
室外側非発泡層に積層するウレタンの代わりに、スパンレース不織布(30g/m)を積層した以外は実施例と同様の成形を実施した。成形において絞りの大きいピラー部にクラックが発生し良好な成形体を得ることはできなかった。
一方で、得られた自動車用成形天井材から吸音性試験用試験片を切り出し、当該試験片の吸音性試験を実施したところ、図3に示すように、ほとんど吸音性が発現されなかった。
【0088】
(比較例2)
実施例と同様にして得られた1次発泡積層シートを4方クランプして、クイック式の遠赤外ヒーター加熱炉(熱源温度300℃:予熱なしで炉内の最低温度は20℃、温度差は280℃)で120秒加熱した。発泡積層シートに均一加熱することが非常に困難で部分的な膨れが発生した。その後、金型クリアランス5.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、自動車用成形天井材を得た。取得した自動車用成形天井材は、凹凸があり外観が不良で、且つ局部的に剛性の低いものであった。
【0089】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた1次発泡積層シートを4方クランプして、連続成形機の遠赤外ヒーター加熱炉(設定温度250℃:炉内の最低温度は140℃、温度差は110℃)で60秒加熱した。得られた発泡積層シートは、表面層が柔らかくなっておりセルが破泡気味の傾向が認められた。その後、金型クリアランス5.5mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、自動車用成形天井材を得た。取得した自動車用成形天井材の外観は良好であったものの、剛性が低くハンドリング性に劣るものであった。
【0090】
以上の実施例1〜3及び比較例1〜3の比較から、本発明の製造方法により、熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉により基材を成形することで、諸性能を維持しつつ、外観及び剛性に優れた内装材が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0091】
10 発泡層
11 13 非発泡層
16 18 接着剤層
20 ポリウレタン系発泡体
30 表皮材
40 自動車内装材
50 自動車内装材用基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜50質量%およびポリスチレン系樹脂75〜50質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成された発泡層の少なくとも一方の面に、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜30質量%およびポリスチレン系樹脂95〜70質量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂で構成される非発泡層が積層された発泡積層シートに、前記非発泡層の室外側面にポリウレタン系発泡体を積層して内装用基材となし、該基材の目付け量を400g/m以下にするとともに、該基材の室内側面に表皮材を貼り合わせて一体化した状態で、熱源温度が140〜300℃であり、かつ熱源温度と炉内の最低温度との温度差が100℃以下に設定された加熱炉に供給し、表皮一体で加熱軟化した後、所定形状に成形することを特徴とする内装材の製造方法。
【請求項2】
加熱炉は、オーブン加熱炉を使用することを特徴とする請求項1に記載の内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−135893(P2012−135893A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288238(P2010−288238)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】