説明

内視鏡の湿度検出方法及び装置並びに内視鏡装置

【課題】内視鏡挿入部を大径化することなく、しかも内視鏡内部空間の先端部における湿度状態を確実に把握することができる。
【解決手段】内視鏡10の内部空間55の湿度を検出する湿度検出装置において、内視鏡内部空間55の先端部に配置される撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を検出し、検出された漏れ電流に基づいて内視鏡内部空間55の湿度状態を判定部58Aで判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡の湿度検出方法及び装置並びに内視鏡装置に係り、特に内視鏡の径を太くすることなく、内視鏡内部空間の湿度を検出可能な内視鏡の湿度検出方法及び装置並びに内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断に使用された内視鏡は、洗浄及び消毒又は滅菌処理を必ず行う必要がある。消毒は洗浄消毒装置等で消毒薬液に内視鏡を浸漬して行われる。近年、滅菌レベルの処理が望まれており、滅菌処理は洗浄装置の洗浄液によって内視鏡の外表面や管路内が洗浄された後、滅菌パッケージに入れられてオートクレーブ滅菌(高温高圧蒸気滅菌)装置によって行われる。
【0003】
内視鏡は気密構造であるが、内視鏡の外表面にピンホール等の小孔が生じている状態で内視鏡を洗浄装置の洗浄液に浸漬すると、内視鏡内部空間に洗浄液が浸入する虞がある。
【0004】
また、オートクレーブ滅菌装置による高圧蒸気殺菌では、水蒸気をチャンバに供給する前にチャンバ内の空気を取り除いて減圧する。これにより、内視鏡内部空間とチャンバとの気圧差が生じ、内視鏡が破損する恐れがあるため、内視鏡内部空間と外部とを連通する必要が生じるが、水蒸気が内視鏡内部空間に浸入し易い。この結果、内視鏡内部空間に設けられたCCD等の撮像素子や撮像素子の周辺回路等の電気部品が湿気によって動作不良を起こし、撮像素子が正常に動作しなくなる虞がある。
【0005】
この対策として、内視鏡を洗浄装置及びオートクレーブ滅菌装置で洗浄・滅菌した後、内視鏡内部空間を除湿して乾燥している(例えば特許文献1)。
【0006】
したがって、洗浄装置及びオートクレーブ滅菌装置で洗浄・滅菌した後の内視鏡内部空間の湿度状態や、除湿により内視鏡内部空間が充分に乾燥されたかを確認するために、内視鏡内部空間の湿度状態を把握する必要がある。特に、水分を嫌う撮像素子やその他の電気基板が配置された内視鏡内部空間の先端部における湿度状態を把握することが重要になる。
【0007】
例えば特許文献2では、内視鏡内部空間の先端部に絶対湿度センサを設けると共に、絶対湿度センサで測定された測定値を記憶する測定値記憶手段を設け、新規に測定された湿度振動と記憶された測定値との変化を知ることで内視鏡内部空間の湿度状態を判断する手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−136732号公報
【特許文献2】特開2005−230258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、内視鏡内部空間の先端部は、CCD等の撮像素子、電気基板、更には観察光学系が密集しており、湿度センサを配置するスペースがない。したがって、内視鏡先端硬質部の径を太くしたり長くしたりして対応せざるをえないが、内視鏡挿入部の大型化を招き患者の負担になる。
【0010】
このため、内視鏡挿入部の大型化を避けたい場合には湿度センサを内視鏡の先端部以外の例えば手元操作部やコネクタに配置しているが、これでは本来検出したい内視鏡先端部の湿度状態を確実に把握することができない。
【0011】
このような背景から、内視鏡先端硬質部を大型化することなく、しかも内視鏡内先端部の湿度状態を確実に把握することのできる湿度検出方法や装置が要望されている。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、内視鏡先端硬質部を大型化することなく、しかも内視鏡内部空間の先端部における湿度状態を確実に把握することができるので、CCD等の撮像素子やその他の電気部品が湿気によって動作不良を起こしたり、破損したりすることを防止できる内視鏡の湿度検出方法及び装置並びに内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡の湿度検出方法は、内視鏡の内部空間の湿度を検出する湿度検出方法において、前記内視鏡内部空間に配置される撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出する漏れ電流検出工程と、前記検出された漏れ電流に基づいて前記内視鏡内部空間の湿度状態を判定する判定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡の湿度検出装置は、内視鏡の内部空間の湿度を検出する湿度検出装置において、前記内視鏡内部空間の先端部に配置される撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された漏れ電流に基づいて前記内視鏡内部空間の湿度状態を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、内視鏡とは、挿入部、手元操作部、手元操作部にユニバーサルケーブルを介して接続されるLGコネクタと、から構成され、洗浄装置で洗浄されたり、オートクレーブ滅菌装置で滅菌されたりする部分を言う。また、内視鏡内部空間とは、内視鏡内に撮像素子等の内蔵物を収納するためのスペースを言う。
【0016】
本発明の内視鏡の湿度検出方法及び装置によれば、内視鏡内部空間に配置される撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出し、検出された漏れ電流に基づいて内視鏡内部空間の湿度状態を判定するようにしたので、内視鏡内部空間に特別な湿度センサを設ける必要がない。また、撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出することで撮像素子周囲の湿度環境を適格に把握することができるので、内視鏡内部空間に内蔵される内蔵物の中でも特に水分を嫌う撮像素子の破損を防止できる。
【0017】
また、撮像素子は、通常、内視鏡内部空間の先端部に設けられているので、湿度センサを別途配置することが難しい内視鏡内部空間の先端部における湿度状態を把握することができる。
【0018】
これにより、内視鏡挿入部を大径化することなく、しかも内視鏡内先端部の湿度状態を確実に把握することができるので、CCD等の撮像素子やその他の電気部品が湿気によって動作不良を起こしたり、破損したりすることを防止できる。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡装置は、内視鏡と、該内視鏡内部空間を除湿する除湿装置とを備えた内視鏡装置であって、前記除湿装置は、請求項2に記載の湿度検出装置と、前記内視鏡内部空間を除湿する除湿手段と、前記湿度検出装置で検出された前記内視鏡内部空間の湿度結果に基づいて前記除湿手段を制御する制御手段と、を備え、前記除湿装置を前記内視鏡に着脱自在に設けたことを特徴とする。
【0020】
本発明の内視鏡装置によれば、撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流に基づいて内視鏡内部の湿度を検出する湿度検出装置と、内視鏡内部空間を除湿する除湿手段と、これらを制御する制御手段と、で構成した除湿制御機構を、内視鏡に着脱自在に設けたので、内視鏡自体の構造や形状を大幅に変えることなく、内視鏡に装着するだけで内視鏡内部空間の湿度の検出や除湿を行うことができる。
【0021】
本発明の内視鏡装置において、前記除湿手段は、前記内視鏡内部空間に対してエアを送気する送気手段と、前記送気したエアを吸引する吸引手段と、を備えた換気型の除湿手段であることが好ましい。
【0022】
これは、内視鏡内部空間を除湿するに好適な除湿手段の具体的な構成を示したものである。この場合、前記吸引手段で吸引されたエアの湿度を測定する湿度センサを設けることが好ましい。これにより、漏れ電流による内視鏡内部空間の湿度検出と、湿度センサによる内視鏡内部の湿度検出とのダブルチェックを行うことができる。
【0023】
本発明の内視鏡装置において、前記除湿手段は、前記内視鏡内部空間に設けられた軟性管路の外周に被覆された金属製の座屈防止ワイヤと、前記座屈防止ワイヤに電流を流して発熱させる電流供給手段と、を備えた加熱型の除湿手段であることが好ましい。
【0024】
軟性管路の外周に被覆された金属製の座屈防止ワイヤは、内視鏡の使用による軟性管路の座屈防止のために、内視鏡に元々設けることが多い。したがって、座屈防止ワイヤを加熱して内視鏡内部空間の除湿を行えば、漏れ電流による内視鏡内部の湿度検出と相俟って、内視鏡に元々設けられている部材を最大限に利用して、内視鏡内部空間の除湿システムを構築することができる。
【0025】
これにより、除湿システムを構築するための新たな部材を削減できるので、内視鏡装置をコンパクト化できると共に、部品点数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の内視鏡の湿度検出方法及び装置によれば、内視鏡に備わっている撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を利用して内視鏡内部空間の湿度状態を把握することができ、内視鏡内部空間に別途湿度センサを設ける必要がない。これにより、内視鏡先端硬質部を大型化することなく、しかも内視鏡内先端部の湿度状態を確実に検出することができる。
【0027】
また、本発明の内視鏡装置によれば、内視鏡に本来備わっている部品を最大限利用して内視鏡内部空間の湿度状態を把握でき、しかも内視鏡に湿度制御装置を着脱自在に装着するだけで、内視鏡内部空間の湿度を検出したり、除湿したりできる。
【0028】
したがって、本発明によれば、洗浄装置やオートクレーブ滅菌装置での処理によって内視鏡内部空間の湿度状態が高くなっても、CCD等の撮像素子やその他の電気部品が湿気によって動作不良を起こしたり、破損したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用する内視鏡の斜視図
【図2】図1に示した内視鏡挿入部における先端硬質部の端面を示した斜視図
【図3】先端硬質部の内部に収納される撮像素子等の内蔵物を説明する断面図
【図4】内視鏡と除湿装置とで構成される内視鏡装置の概念図
【図5】除湿装置と、LGコネクタ及び電気コネクタとの接続関係を示す斜視図
【図6】内視鏡内部空間の湿度と漏れ電流との関係を示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態による湿度検出方法のステップを説明する説明図
【図8】湿度検出方法における漏れ電流を説明するグラフ
【図9】除湿装置による除湿ステップを説明する説明図
【図10】内視鏡装置の別態様を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明に係る内視鏡の湿度検出方法及び装置並びに内視鏡装置の好ましい実施の形態について詳述する。
【0031】
図1は、本発明が適用された内視鏡10の斜視図である。
【0032】
同図に示す内視鏡10は、施術者が把持する手元操作部12と、この手元操作部12に連設されて体腔内に挿入される挿入部14とを備える。手元操作部12には、ユニバーサルケーブル16が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端にLGコネクタ18が設けられる。LGコネクタ18は光源装置(図示せず)に接続され、これによって図2の照明窓46、46に前記光源部から照明光が送られる。
【0033】
また、図1のLGコネクタ18には、電気ケーブル20を介して電気コネクタ22が接続され、電気コネクタ22が不図示のプロセッサに着脱自在に接続される。なお、図1の符号23は、電気コネクタ22のキャップであり、洗浄装置での洗浄時に電気コネクタ22に装着される。
【0034】
手元操作部12には、送気・送水ボタン24、吸引ボタン26、及びシャッターボタン28が並設されると共に、一対の湾曲操作ノブ30、30が設けられる。また、手元操作部12には鉗子挿入部32が設けられ、鉗子挿入部32の開口端に鉗子栓34が装着される。
【0035】
挿入部14は、手元操作部12側から順に可撓管部36、湾曲部38、及び先端硬質部40によって構成される。湾曲部38は、手元操作部12の湾曲操作ノブ30、30を回動することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端硬質部40を所望の方向に向けることができる。
【0036】
図2の如く先端硬質部40の先端面42には、観察窓44、照明窓46、46、送気・送水ノズル48、及び鉗子口50が設けられる。
【0037】
また、図3に示すように、観察窓44となる対物レンズの後方には、レンズ群45A、プリズム45B及びCCDやMOS等の撮像素子45D等からなる撮像光学系45が配設される。撮像素子45Dは電気基板47が接続されると共に、電気基板47には、アンプやバッファ、撮像素子45Dの駆動電源等の周辺回路(図示せず)、撮像素子45Dの信号を処理する信号処理回路(図示せず)等が実装される。電気基板47には、上記した電気コネクタ22をプロセッサ(図示せず)に接続することによって、プロセッサの電源供給部から駆動に必要な電源が分圧されて供給される。また、信号処理回路に接続された信号ケーブル49は、図1の挿入部14、手元操作部12、ユニバーサルケーブル16等に挿通されて電気コネクタ22まで延設され、プロセッサに接続される。
【0038】
そして、観察窓44から取り込まれた観察像は、撮像素子45Dの受光面に結像されて電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブル49を介してプロセッサに出力され、映像信号に変換される。これにより、プロセッサに接続されたモニタ(不図示)に観察画像が表示される。
【0039】
図2の照明窓46、46の後方には、図3に示すライトガイド45Cの出射端が配設されている。このライトガイド45Cは、図1の挿入部14、手元操作部12、ユニバーサルケーブル16に挿通され、LGコネクタ18内に入射端が配設される。したがって、LGコネクタ18を光源装置に接続することによって、光源装置から照射された照明光がライトガイドを介して照明窓46、46に伝送され、照明窓46、46から前方に照射される。
【0040】
図3の送気・送水ノズル48は、送気・送水ボタン24によって操作される樹脂製の送気・送水チューブ51に連通され、この送気・送水チューブ51は図1のLGコネクタ18の送気・送水コネクタ(図示せず)に連通される。送気・送水コネクタには不図示の送気・送水手段が接続され、この送気・送水手段からエア及び水が供給される。したがって、送気・送水ボタン24を操作することによって、図2の送気・送水ノズル48からエア又は水を観察窓44に向けて噴射することができる。
【0041】
また、図3に示すように、撮像光学系45の後方には、内視鏡内部空間55を除湿するためのエアを吹き出す樹脂製の除湿用送気チューブ53の吹出口53Aが配置される。除湿用送気チューブ53は、図1の挿入部14、手元操作部12、ユニバーサルケーブル16等に挿通されてLGコネクタ18まで延設される。
【0042】
鉗子口50は、図1の鉗子挿入部32に連通されている。よって、鉗子挿入部32から鉗子等の処置具を挿入することによって、この処置具を図2の鉗子口50から導出することができる。また、鉗子口50は、図1の吸引ボタン26によって操作される吸引バルブ(図示せず)に連通され、更にこの吸引バルブがLGコネクタ18の吸引コネクタ(図示せず)に接続される。したがって、吸引コネクタに不図示の吸引ポンプを接続し、吸引ボタン26で吸引バルブを操作することによって、鉗子口50から汚物や残渣等を吸引することができる。
【0043】
上記の如く構成された内視鏡10は、医療診断に使用された後、洗浄装置の洗浄薬液や濯ぎ液等の液体によって、その外表面及び内部管路(例えば処置具導入管路等)が洗浄処理され、その後に滅菌パッケージに入れられてオートクレーブ滅菌装置によって滅菌処理される。この洗浄処理及び滅菌処理において、内視鏡内部空間55に水や水蒸気等が浸入すると、内視鏡内部空間55に収納される内蔵物である撮像素子45Dや電気系統が破損し易くなる。したがって、内視鏡10を使用する前に内視鏡内部空間55の湿度状態を把握すると共に、高い湿度状態の場合には、内視鏡内部空間55の除湿を行う必要がある。
【0044】
しかし、図3で示したように、内視鏡内部空間55の先端部は撮像素子45D等の撮像光学系が密集しており、内視鏡10の挿入部14を大径化することなく湿度センサを別途配置することが難しい。
【0045】
そこで、本発明の実施の形態では、内視鏡内部空間55の先端部に湿度センサを配置しなくても内視鏡内部空間55の湿度を検出したり除湿したりすることのできる除湿装置57を、内視鏡10に着脱自在に設けるようにした。
【0046】
図4及び図5は、内視鏡10と除湿装置57とから構成される内視鏡装置100の概念図である。
【0047】
図4に示すように、内視鏡10の電気基板47から電気コネクタ22まで電気ケーブル59が延設される。一方、除湿装置57には、電気コネクタ22と着脱自在に接続されるコネクタ52が設けられ、コネクタ52と電源部54との間に電源回路61が形成される。これにより、図4及び図5に示すように、電気コネクタ22とコネクタ52とを接続すると、除湿装置57の電源供給部54と撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路とが電気的に接続される。また、電源部54には、電圧調整器54Aが内蔵され、マイコン58(制御手段)からの指示により、電圧を調整できるようになっている。
【0048】
除湿装置57の電源回路61には、電流計測部56が設けられると共に、電流計測部56で測定される電流値はマイコン58の判定部58Aに出力される。判定部58Aには、内視鏡内部空間55の湿度と撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流との関係を示す関係式が入力されている。
【0049】
図6は、内視鏡内部空間55の湿度と撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流との関係を示すグラフであり、内視鏡内部空間55の湿度が大きくなると撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路からの漏れ電流が大きくなる正相関関係にある。これにより、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を電流計測部56で検出し、電流計測部56の漏れ電流の大きさを判定部58Aで判定することにより、内視鏡内部空間55、特に内視鏡先端部における湿度状態を把握することができる。
【0050】
また、図4に示すように、除湿装置57には、送気ポンプ60及び吸引ポンプ62が設けられ、マイコン58によって駆動制御される。送気ポンプ60は送気コネクタ64を有すると共に、吸引ポンプ62は吸引コネクタ66を有する。そして、図5に示すように、送気コネクタ64とLGコネクタ18の接続口18Aとを着脱自在に接続することにより、送気コネクタ64の送気口64B(図5参照)を介して先端硬質部40からLGコネクタ18まで延設された除湿用送気チューブ53の基端口57A(図5参照)とが連通する。
【0051】
なお、送気コネクタ64に形成された挿入口70は、ライトガイド45Cの挿入口であり、送気コネクタ64とLGコネクタ18の接続口18Aとを接続する際にライトガイド45Cが邪魔にならないように収納する。
【0052】
また、吸引ポンプ62は吸引コネクタ66(図5参照)を介してLGコネクタ18に形成された吸引口68(図5参照)に着脱自在に連結される。この吸引口68は内視鏡内部空間55に連通する。
【0053】
これにより、送気ポンプ60から送気されたエアは送気コネクタ64及び除湿用送気チューブ53を介して図3の矢印63で示すように内視鏡内部空間55の先端部に向けて吹き出され、吹き出されたエアは図3の破線矢印65で示すように除湿用送気チューブ53の外側を通って内視鏡内部空間55をLGコネクタ側に流れ、吸引コネクタ66を介して吸引ポンプ62に吸引される。
【0054】
また、吸引ポンプ62は、内視鏡内部空間55から吸気した空気の湿度を測定する湿度センサ72を具備しており、湿度センサ72で測定された吸気エアの湿度データはマイコン58の判定部58Aに出力される。
【0055】
次に、内視鏡装置100の除湿装置57を用いて内視鏡内部空間55の湿度を検出する湿度検出方法を説明する。
【0056】
図7のステップはマイコン58に搭載されたプログラムにより行われる。なお、図7のステップは、除湿装置57の湿度検出に関する手段のみを駆動させた場合であり、除湿に関する手段も含めたステップについては図9で説明する。
【0057】
先ず、図5に示したように、除湿装置57の各コネクタ52、64、66を内視鏡10の電気コネクタ22及びLGコネクタ18に接続し、ステップ1〜ステップ3の漏れ電流検出工程74を行う。
【0058】
即ち、図7に示すように、除湿装置57の電源部54から内視鏡10の撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路に通電して、電源駆動回路に規定電圧を印加する(ステップ1)。通電している時間は、漏れ電流を検出するに足る時間だけでよく、なるべく短時間の通電時間とすることが好ましい。
【0059】
そして、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路に規定電圧を印加したときの電流値を除湿装置57の電流計測部56で測定して漏れ電流を検出(ステップ2)し、検出後は撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路への通電を終了(ステップ3)する。なお、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路に規定電圧を印加している時間は、マイコン58に設けたタイマー機能により行う。
【0060】
図8は、電源部54をONして撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の電圧を徐々に上げていき規定電圧に達したときの電流値が正規電流値A(漏れ電流のない電流値)か、又は漏れ電流により正規電流値よりも高い異常電流値Bかを示したものである。これにより、異常電流値Bから正規電流値Aを引いた電流値差が漏れ電流の大きさCになる。
【0061】
したがって、電流計測部56で測定された電流値が規定電流値Aであれば、内視鏡内部空間55の湿度は低いと判断され、内視鏡10を使用しても撮像素子45Dや電気系統が破損することはない。
【0062】
しかし、電流値が異常電流値Bであれば、内視鏡内部空間55の湿度は高いと判断され、内視鏡10を使用したときに撮像素子45Dや電気系統が破損する虞がある。したがって、漏れ電流検出工程74においても、内視鏡内部空間55の湿度が高い状態で電圧を一気に規定電圧まで上げると、撮像素子45Dに大きな電流が流れて破損する恐れがある。このため、マイコン58は、電圧調整器54Aを制御して、図8に示すように規定電圧まで徐々に電圧を上げていくことが好ましい。
【0063】
図7に示すように、漏れ電流検出工程74が終了したら次に、内視鏡内部空間55の湿度状態をマイコン58の判定部58Aで判定する判定工程76に進む。
【0064】
即ち、マイコン58の判定部58Aは、図6の漏れ電流と湿度の関係から漏れ電流値に基づいて湿度を算出し(ステップ4)、湿度が規定値以下か否かを判定する(ステップ5)。
【0065】
ここで規定値とは、内視鏡を使用するためにプロセッサの電源部から通電しても撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路が正常に作動する湿度を意味する。そして、湿度が規定値以下の場合(YES)には除湿装置57に設けたランプ67がOKを表すように点灯する(ステップ6)。また、湿度が規定値を超える場合(NO)にはランプがNGを表すように点灯する(ステップ7)。例えば、赤と青の2つのランプを用いて、YESの場合には青のランプが点灯して、NOの場合には赤のランプが点灯するようにしてもよい。また1つのランプを用いて、YESの場合にはランプが点灯し、NOの場合にはランプが点滅するようにしてもよい。
【0066】
このように、本発明の実施の形態の内視鏡装置100によれば、内視鏡10に本来備わっている撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を利用して内視鏡内部空間55の湿度を検出するようにしたので、内視鏡内部空間55に湿度センサを別途設ける必要がない。これにより、内視鏡10の挿入部14を大径化することなく、しかも内視鏡内部空間55、特に先端部の湿度状態を確実に把握することができる。
【0067】
図9は、除湿装置57を用いて内視鏡内部空間55の除湿を行うステップを説明するものであり、例えば洗浄装置での洗浄処理及びオートクレーブ滅菌装置での滅菌処理を行った後に行われる。図9のステップはマイコン58に搭載されたプログラムにより行われる。
【0068】
図9に示すように、除湿装置57の送気ポンプ60及び吸引ポンプ62をONにする(ステップ1)。
【0069】
次に、マイコン58のタイマー(図示せず)が作動(ステップ2)すると共に、ステップ3〜ステップ5までの漏れ電流検出工程74を行う。漏れ電流検出工程74については図7のステップ1〜3と同様であり、説明は省略する。なお、タイマーは漏れ電流検出工程74において、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路に規定電圧をかけている時間を設定する。
【0070】
次に、ステップ6及び7の判定工程76を行い、漏れ電流検出工程74で検出された漏れ電流の大きさから湿度を算出し、湿度が規定値以下か否かを判定する。判定工程76については図7のステップ4及び5と同様であり、説明は省略する。
【0071】
次に、判定工程76において、湿度が規定値を超える場合(NO)には、ランプ67がNGを表すように点灯すると共に、ステップ2に戻り、再び漏れ電流検出工程74が行われる。ステップ2に戻る操作は、判定工程76での湿度が規定値以下になるまで繰り返される。
【0072】
そして、判定工程76での湿度が規定値以下になったら、ランプ67がOKを表す点灯を行い(ステップ8)、送気ポンプ60及び吸引ポンプ62をOFFにする(ステップ9)。
【0073】
また、図9のステップには示さなかったが、吸引ポンプ62で内視鏡内部空間55から吸引された吸引エアの湿度が、湿度センサ72によって定期的に測定されるようにすると一層好ましい。即ち、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を利用した湿度測定は、撮像素子45D等の撮像光学系が収納される内視鏡内部空間55の先端部の湿度状態を把握でき、湿度センサ72による吸引エアの湿度測定は内視鏡内部空間55の平均的な湿度状態を把握することができる。これにより、漏れ電流による内視鏡内部空間55の湿度検出と、湿度センサ72による内視鏡内部空間の湿度検出とのダブルチェックを行うことができる。
【0074】
したがって、漏れ電流による湿度測定と湿度センサ72による湿度測定の両方を満足する場合に、ランプがOK点灯することがより好ましい。ただし、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路等を湿度から守ることが最重要であり、湿度センサ72による湿度測定は補助的に用いることが可能である。
【0075】
図10は、内視鏡装置100の別態様であり、内視鏡内部空間55に設けられた軟性管路の外周に被覆された金属製の座屈防止ワイヤを発熱させることにより、内視鏡内部空間55を除湿するように構成したものである。
【0076】
軟性管路としては、例えば内視鏡内部空間55の挿入部14側に設けられた処置具導入管路、送気・送水管路、吸引管路、ユニバーサル側に設けられた送気・送水管路、吸引管路のうちの少なくとも挿入部側に設けられた管路を好適に使用することができる。
【0077】
ここでは、軟性管路として送気・送水チューブ51(図3参照)を用いた場合で説明する。なお、図4の内視鏡装置100で説明したと同じ部材については重複するので説明を省略する。
【0078】
図10に示すように、内視鏡10の内視鏡内部空間55に配設された送気・送水チューブ51の外周には、金属製の座屈防止ワイヤ78が巻回される。座屈防止ワイヤ78の両端部は、LGコネクタ18に設けられた加熱用コネクタ80に接続される。
【0079】
一方、除湿装置57には、内視鏡10の加熱用コネクタ80と着脱自在に接続される加熱電源用コネクタ82が設けられ、加熱電源用コネクタ82が加熱温度調整器84を介して加熱用電源86に電気配線される。また、加熱温度調整器84及び加熱用電源86はマイコン58によって駆動制御される。
【0080】
これにより、除湿装置57と内視鏡10との各コネクタを接続して加熱用電源86をONにすると、送気・送水チューブ51の外周に巻回された金属製の座屈防止ワイヤ78が発熱し、これにより内視鏡内部空間の除湿を行うことができる。発熱の程度は、加熱温度調整器84によって調整する。
【0081】
そして、図10の除湿装置57により内視鏡内部空間55を除湿するには、図9で示したステップ1の「送気、吸引ポンプON」を『加熱用電源ON』に代えることによって同様に行うことができる。
【0082】
図10に示した内視鏡装置によれば、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を利用して内視鏡内部空間55の湿度を測定し、且つ座屈防止ワイヤ78を利用して内視鏡内部空間55の除湿を行うことができる。
【0083】
したがって、内視鏡10に本来備わっている部材を最大限に利用することができるので、内視鏡10を改造する必要が殆どない。これにより、除湿システムを構築するための新たな部材を削減できるので、内視鏡装置100をコンパクト化できると共に、部品点数を減らすことができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、撮像素子45Dや電気基板47の周辺回路の漏れ電流を測定するようにしたが、撮像素子45D又は該撮像素子の周辺回路の何れか一方の漏れ電流を測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…内視鏡、12…手元操作部、14…挿入部、16…ユニバーサルケーブル、18…LGコネクタ、20…電気ケーブル、22…電気コネクタ、24…送気・送水ボタン、26…吸引ボタン、28…シャッターボタン、30、アングルノブ、32…鉗子挿入部、34…鉗子栓、36…可撓管部、38…湾曲部、40…先端硬質部、42…先端硬質部の先端面、44…観察窓、45…撮像光学系、45A…レンズ群、45B…プリズム、45C…ライトガイド、45D…撮像素子、46…照明窓、47…電気基板、49…信号ケーブル、50…鉗子口、51…送気・送水チューブ、52…コネクタ、53…除湿用送気チューブ、54…電源部、55…内視鏡内部空間、56…電流計測部、57…除湿装置、58…マイコン、58A…判定部、59…電気ケーブル、60…送気ポンプ、61…電源回路、62…吸引ポンプ、64…送気コネクタ、66…吸引コネクタ、68…吸引口、70…挿入口、72…湿度センサ、74…漏れ電流検出工程、76…判定工程、100…内視鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の内部空間の湿度を検出する湿度検出方法において、
前記内視鏡内部空間に配置される撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出する漏れ電流検出工程と、
前記検出された漏れ電流に基づいて前記内視鏡内部空間の湿度状態を判定する判定工程と、を備えたことを特徴とする内視鏡の湿度検出方法。
【請求項2】
内視鏡の内部空間の湿度を検出する湿度検出装置において、
前記内視鏡内部空間に配置される撮像素子及び/又は該撮像素子の周辺回路の漏れ電流を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された漏れ電流に基づいて前記内視鏡内部空間の湿度状態を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする内視鏡の湿度検出装置。
【請求項3】
内視鏡と、該内視鏡内部空間を除湿する除湿装置とを備えた内視鏡装置であって、
前記除湿装置は、
請求項2に記載の湿度検出装置と、
前記内視鏡内部空間を除湿する除湿手段と、
前記湿度検出装置で検出された前記内視鏡内部空間の湿度結果に基づいて前記除湿手段を制御する制御手段と、を備え、前記除湿装置を前記内視鏡に着脱自在に設けたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項4】
前記除湿手段は、
前記内視鏡内部空間に対してエアを送気する送気手段と、
前記送気したエアを吸引する吸引手段と、を備えた換気型の除湿手段であることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記吸引手段で吸引されたエアの湿度を測定する湿度センサを設けたことを特徴とする請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記除湿手段は、
前記内視鏡内部空間に設けられた軟性管路の外周に被覆された金属製の座屈防止ワイヤと、
前記座屈防止ワイヤに電流を流して発熱させる電流供給手段と、を備えた加熱型の除湿手段であることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記軟性管路は、前記内視鏡内部空間の挿入部側に設けられた処置具導入管路、送気・送水管路、吸引管路、ユニバーサル側に設けられた送気・送水管路、吸引管路のうちの少なくとも挿入部側に設けられた管路であることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−85715(P2013−85715A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229165(P2011−229165)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】