説明

内視鏡の配管接続部

【課題】振動や衝撃等が加わっても配管パイプに対する配管チューブの固定状態に緩みが発生し難くて、漏れのない良好な接続状態を長期間にわたって維持することができる内視鏡の配管接続部を提供すること。
【解決手段】内筒3の外周部と外筒4の内周部とには、外筒4が配管チューブ2の後方から先端方向に向かってスライドされる動作により内筒3を弾性変形させて、そのスライド動作が解除されると内筒3の反発力で押し戻された外筒4により内筒3を配管チューブ2の膨らみ部21に押圧させるように作用する当接部(38と42、39と43)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡内に設けられた配管を接続するための内視鏡の配管接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡内には、送気、送水、吸引を行ったり処置具を挿通したりするための各種配管が内蔵されている。そのような配管は、内視鏡の挿入部内等では可撓性の配管チューブによって形成されていて、操作部内において金属製の配管パイプに接続されている。
【0003】
ただし、そのような接続部には、配管チューブが引っ張られる力や流体圧等による力が作用するので、そのような力の作用で配管チューブが抜けることのないように、配管チューブと配管パイプとをしっかりと固定する必要がある。
【0004】
そこで旧来は、配管パイプの開放端近傍の外周面に周状に突起を形成して、配管パイプの外径より細い内径を有する配管チューブを配管パイプの端部側から突起を越える位置まで被せ、その突起部分を跨ぐ範囲において配管チューブを金属コイル等で緊縛していた。
【0005】
しかし、配管チューブを締め付ける状態に金属コイルを取り付けるためには、操作部内の狭いスペースで金属コイルを回転させながら押し込まなければならないので、作業性が非常に悪く、組み立てに時間がかかるだけでなく、誤って周辺の部材を破損させてしまう可能性もある。
【0006】
そこで、チューブ固定部材として、配管チューブに軸線方向にスライド自在に被せられた内筒と、その内筒に軸線方向にスライド自在に被せられた外筒とを設け、内筒は、外面を先端(即ち、配管チューブの先端)方向へ次第に径が大きくなるテーパ状に形成してその部分に先端側からスリ割りを形成し、その内筒に後方から外筒を被嵌させることで、内筒のテーパ状部分を縮径させて配管チューブの膨らみ部に強く押圧固定していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−65596
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1等に記載された従来の内視鏡の配管接続部においては、内視鏡を長期にわたって使用している間の振動や衝撃等により、外筒に抜け方向の力が加わって、外筒が微量でも抜け方向(即ち、後方)に移動すると、外筒によって押さえ付けられている内筒も、外筒から受けている押圧力が緩んで抜け方向に移動する。そして、その内筒がさらに外筒を緩み方向に押し出すという相乗作用により、配管パイプに対する配管チューブの固定状態が緩んで、接続部から漏れが発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、振動や衝撃等が加わっても配管パイプに対する配管チューブの固定状態に緩みが発生し難くて、漏れのない良好な接続状態を長期間にわたって維持することができる内視鏡の配管接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の配管接続部は、内視鏡内に配置された硬質の配管パイプの開放端近傍の外周面に周状に突起が形成されて、配管パイプの外径より細い内径を有する可撓性の配管チューブの先端部分が配管パイプの開放端側から突起を越える位置まで被せられ、配管チューブを配管パイプの突起部分に押圧固定するためのチューブ固定部材が配管チューブに被さって設けられた内視鏡の配管接続部において、チューブ固定部材が、配管チューブに軸線方向にスライド自在に被せられた内筒と、その内筒に軸線方向にスライド自在に被せられた外筒とを備え、内筒には、配管チューブの先端方向と反対の方向に開放された複数のスリットが形成されると共に、内筒の内周部は、突起部分に被さって膨らんだ状態の配管チューブの膨らみ部の外径より小さな内径に形成されて、その内周部の途中に配管チューブの膨らみ部が係合する円周溝が形成され、内筒の外周部と外筒の内周部とには、外筒が配管チューブの後方から先端方向に向かってスライドされる動作により内筒を弾性変形させて、そのスライド動作が解除されると内筒の反発力で押し戻された外筒により内筒を配管チューブの膨らみ部に押圧させるように作用する当接部が形成されているものである。
【0010】
なお、当接部として、外筒に押されて弾性変形した状態から元の形状に戻ろうとする内筒が外筒を弾力的に押す第1の当接部と、その第1の当接部で内筒に押された外筒が内筒を配管チューブの膨らみ部に向かって押す第2の当接部とが形成されていてもよい。
【0011】
また、外筒の内周部には外方に向かって径が次第に大きくなるテーパ部が両端に形成されて、内筒の外周部には、外筒が緩く被嵌される中間細径部の両端に、外筒の内周部の内径より大きな外径の太径部が形成され、内筒における中間細径部の両端と太径部との間の段差部と、外筒における両端のテーパ部とが当接部になっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外筒を押し込むスライド動作が解除されると、元の形状に戻ろうとする内筒の反発力で押し戻された外筒により内筒が配管チューブの膨らみ部に押圧され、外筒に抜け方向の力が作用した時も同様の状態になるので、振動や衝撃等が加わっても配管パイプに対する配管チューブの固定状態が緩み難くて、漏れのない良好な接続状態を長期間にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
内視鏡内に配置された硬質の配管パイプの開放端近傍の外周面に周状に突起が形成されて、配管パイプの外径より細い内径を有する可撓性の配管チューブの先端部分が配管パイプの開放端側から突起を越える位置まで被せられ、配管チューブを配管パイプの突起部分に押圧固定するためのチューブ固定部材が配管チューブに被さって設けられた内視鏡の配管接続部において、チューブ固定部材が、配管チューブに軸線方向にスライド自在に被せられた内筒と、その内筒に軸線方向にスライド自在に被せられた外筒とを備え、内筒には、配管チューブの先端方向と反対の方向に開放された複数のスリットが形成されると共に、内筒の内周部は、突起部分に被さって膨らんだ状態の配管チューブの膨らみ部の外径より小さな内径に形成されて、その内周部の途中に配管チューブの膨らみ部が係合する円周溝が形成され、内筒の外周部と外筒の内周部とには、外筒が配管チューブの後方から先端方向に向かってスライドされる動作により内筒を弾性変形させて、そのスライド動作が解除されると内筒の反発力で押し戻された外筒により内筒を配管チューブの膨らみ部に押圧させるための当接部が形成されている。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は内視鏡の配管接続部を示しており、1は、例えば内視鏡の操作部内に配置された処置具挿通管路(兼吸引管路)の途中に設けられたステンレス鋼パイプ等からなる硬質の円筒状の配管パイプであり、その外径寸法は2〜4mm程度である。
【0015】
配管パイプ1の外周面には、開口端である突端側(図1において下端側)から僅かに間隔をあけた位置に周状に突起11が突設されている。この突起11は360°全周に帯状に設けられていてもよく、或いは、ある程度不連続に設けられていてもよい。また、配管パイプ1と一体に形成されていてもよく、或いは配管パイプ1に別部材を溶接等で取り付けてもよい。
【0016】
2は、内視鏡の挿入部内に全長にわたって挿通配置された例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ又はポリエチレン樹脂チューブ等からなる可撓性の配管チューブあり、一般に処置具挿通チャンネル又は鉗子チャンネルと呼ばれている。
【0017】
配管チューブ2の基端側は図1に示されるように配管パイプ1に接続されていて、図示されていない他端側は挿入部の先端において外部に開口している。なお、配管パイプ1と配管チューブ2が、送気送水等の流体を通過させるための配管であってもよい。
【0018】
配管チューブ2は、内径寸法が配管パイプ1の外径寸法より細く形成されていて、配管パイプ1の突端側から突起11を越えて配管パイプ1の外表面の大半の部分に被せられている。なお、配管パイプ1と配管チューブ2との接触面に、シール剤等を予め塗布しておいてもよい。
【0019】
配管チューブ2を突起11部分において配管パイプ1に押圧固定するためのチューブ固定部材として、内筒3と外筒4とが設けられ、内筒3は配管チューブ2に軸線方向にスライド自在に被せられ、外筒4は内筒3に軸線方向にスライド自在に被せられている。
【0020】
内筒3と外筒4は、ステンレス鋼又は黄銅等のような金属製のパイプ材により、図2の分解斜視図にも示されるように、各々が内外面に凹凸のある略円筒状に形成されている。なお、内筒3にはばね性に富む素材を用いるとよい。
【0021】
内筒3には、配管チューブ2の先端方向(図1において上方)と反対の方向に開放された複数のスリット31が形成されて、配管チューブ2の先端方向の端部付近を除く部分が、図2に示されるように複数に分断されている。
【0022】
その結果、内筒3は各スリット31の間の部分において比較的容易に弾性変形することができる。なお、この実施例においてはスリット31が各々軸線と平行方向に真っ直ぐに等間隔に4本形成されているが、3本又は5本以上等であっても差し支えない。
【0023】
内筒3の内周部32は、配管パイプ1に被さって膨らんだ状態の配管チューブ2の外径と略同寸法であって、突起11部分に被さってさらに膨らんだ状態の配管チューブ2の膨らみ部21の外径より小さな内径に形成され、内周部32の途中には、配管チューブ2の膨らみ部21がすっぽり納まった状態に係合する断面形状が略矩形状の円周溝33が形成されている。
【0024】
スリット31が形成されていない側の内筒3の端部においては、内周部32が外方に向かって緩やかに径が大きくなるテーパ状に形成されて、内筒3を配管チューブ2の外面に沿ってスムーズに被せることができるようになっている。34が、そのテーパ状の部分である。
【0025】
外筒4には、図2に示されるようにスリットの類は形成されておらず、その内周部41には、外方に向かって径が次第に大きくなるテーパ部42,43が両端に形成されている。外筒4の外周面には指掛け用の段部44が形成されている。
【0026】
一方、内筒3の外周部には、外筒4が緩く被嵌される中間細径部35の前後両端(図において、上下両端)に外筒4の内周部41の内径(即ち、テーパ部42,43でない部分の内径)より大きな外径の太径部36,37が形成されている。
【0027】
その太径部36,37の外径は、外筒4の各テーパ部42,43の斜面の途中の位置の径と同寸法になっていて、図1に示されるように、内筒3の中間細径部35の両端と各太径部36,37との間の段差部38,39が、外筒4のテーパ部42,43の斜面と同時に当接するようになっている。
【0028】
このように構成された実施例のチューブ固定部材3,4で、配管パイプ1と配管チューブ2との接続部を固定する際には、まず、図3に示されるように、内筒3に外筒4が被嵌された状態にする。なお、内筒3側を弾性変形させることにより、簡単にその状態にすることができる。
【0029】
次いで、外筒4を配管チューブ2の後方から先端方向(各図において下方から上方)に指先で押して、内筒3と外筒4とを一体的に配管パイプ1と配管チューブ2との接続部に被さる方向にスライドさせると、スリット31で分断された内筒3の部分が大きく弾性変形しながら、突起11に被さることにより膨らんでいる配管チューブ2の膨らみ部21を乗り越えていく。
【0030】
図4は、そのようにして内筒3の円周溝33部分が配管チューブ2の膨らみ部21の位置まで進んだ状態を示している。内筒3は、外筒4をスライドさせる動作によって段差部38において外筒4側から強く押されていることにより、スリット31で分断された部分が大きく弾性変形して、内筒3の円周溝33部分は膨らみ部21からやや浮かび上がった状態になっている。なお、図4はそのような状態を誇張して図示してある。
【0031】
そこで、指先で外筒4を押し込むスライド操作を止めると、図1に示されるように、内筒3の先端寄り(図において上端寄り)の段差部38と外筒4のテーパ部42との当接部(第1の当接部)においては、弾性変形した状態から元の形状に戻ろうとする内筒3が、矢印Aで示されるように、外筒4を弾力的に押し戻すように作用する。
【0032】
そして、内筒3の後方の段差部39と外筒4のテーパ部43との当接部(第2の当接部)においては、第1の当接部(38,42)で内筒3に押し戻された外筒4が、矢印Bで示されるように、内筒3を配管チューブ2の膨らみ部21に押圧させるように配管チューブ2の先端側から後方に向かって押す。
【0033】
このようにして、弾性変形した状態から元の形状に戻ろうとする内筒3の反発力により、配管チューブ2の膨らみ部21を配管パイプ1の突起11に押し付ける状態が維持され、配管パイプ1と配管チューブ2とが強固に接続、固定された状態になる。
【0034】
そして、外筒4に抜き方向(図1において下方に向かう方向)の力が作用しても、矢印Bで示される突起11への押し付け力が増大して膨らみ部21が突起11により強く係合するので、配管チューブ2に対する配管パイプ1の固定状態に緩みが発生せず、振動や衝撃等が加わっても漏れのない良好な接続状態を長期間にわたって維持することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば図5及び図6に示されるように、内筒3に形成された円周溝33の断面形状が台形状又は円弧状等であっても差し支えない。
【0036】
また、図7に示されるように、外筒4を後方に(即ち、下方に)長く形成して、第2の当接部(39,43)を突起11より後方に位置させてもよく、図8に示されるように、さらに第2の当接部(39,43)を後方に位置させれば、組み付け作業の際に、まず配管パイプ1と配管チューブ2の接続部に内筒3だけを被嵌し、その後から外筒4を内筒3に被嵌させても、内筒3の後端付近3eが弾性変形して容易に組み付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の配管接続部の組み付け完了状態の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内筒と外筒の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の配管接続部の組み付け開始状態の側面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の配管接続部の組み付け途中の状態の側面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例の内筒の半断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例の内筒の半断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例の内視鏡の配管接続部の組み付け完了状態の側面断面図である。
【図8】本発明の第5の実施例の内視鏡の配管接続部の組み付け途中の状態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 配管パイプ
2 配管チューブ
3 内筒
4 外筒
11 突起
21 膨らみ部
31 スリット
32 内周部
33 円周溝
35 中間細径部
36 太径部
37 太径部
38 段差部(第1の当接部)
39 段差部(第2の当接部)
41 内周部
42 テーパ部(第1の当接部)
43 テーパ部(第2の当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡内に配置された硬質の配管パイプの開放端近傍の外周面に周状に突起が形成されて、上記配管パイプの外径より細い内径を有する可撓性の配管チューブの先端部分が上記配管パイプの開放端側から上記突起を越える位置まで被せられ、上記配管チューブを上記配管パイプの突起部分に押圧固定するためのチューブ固定部材が上記配管チューブに被さって設けられた内視鏡の配管接続部において、
上記チューブ固定部材が、上記配管チューブに軸線方向にスライド自在に被せられた内筒と、その内筒に軸線方向にスライド自在に被せられた外筒とを備え、
上記内筒には、上記配管チューブの先端方向と反対の方向に開放された複数のスリットが形成されると共に、上記内筒の内周部は、上記突起部分に被さって膨らんだ状態の上記配管チューブの膨らみ部の外径より小さな内径に形成されて、その内周部の途中に上記配管チューブの膨らみ部が係合する円周溝が形成され、
上記内筒の外周部と上記外筒の内周部とには、上記外筒が上記配管チューブの後方から先端方向に向かってスライドされる動作により上記内筒を弾性変形させて、そのスライド動作が解除されると上記内筒の反発力で押し戻された上記外筒により上記内筒を上記配管チューブの膨らみ部に押圧させるように作用する当接部が形成されていることを特徴とする内視鏡の配管接続部。
【請求項2】
上記当接部として、上記外筒に押されて弾性変形した状態から元の形状に戻ろうとする上記内筒が上記外筒を弾力的に押す第1の当接部と、その第1の当接部で上記内筒に押された上記外筒が上記内筒を上記配管チューブの膨らみ部に向かって押す第2の当接部とが形成されている請求項1記載の内視鏡の配管接続部。
【請求項3】
上記外筒の内周部には外方に向かって径が次第に大きくなるテーパ部が両端に形成されて、上記内筒の外周部には、上記外筒が緩く被嵌される中間細径部の両端に、上記外筒の内周部の内径より大きな外径の太径部が形成され、上記内筒における上記中間細径部の両端と上記太径部との間の段差部と、上記外筒における上記両端のテーパ部とが上記当接部になっている請求項1又は2記載の内視鏡の配管接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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