説明

内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ、およびそのガイドチューブを用いた内視鏡検査方法

【課題】内視鏡の挿入部に備えられた観察窓、照明窓にオイル、ゴミ、ヘドロ、粉塵等が付着することなく劣悪環境下を通過させて、関心部位の内視鏡観察を良好に行える内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ、およびそのガイドチューブを用いた内視鏡検査方法を提供すること。
【解決手段】内視鏡挿入部案内用ガイドチューブは、チューブ体と侵入防止部材とを具備する。チューブ体は、内視鏡の挿入部が挿通可能な軸方向貫通孔を有し、先端面より基端側の任意の部分に曲がり癖部を設けることが可能な弾発性を有している。侵入防止部材は、軸方向貫通孔に挿入した状態において、当該軸方向貫通孔内へ液体、堆積物、或いは浮遊物が侵入することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察窓、照明窓に付着することによって内視鏡の観察性能を低下させる液体、堆積物等が存在する領域の先に位置する関心部位の観察を行う際に使用される内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ、およびそのガイドチューブを用いた内視鏡検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細長な挿入部を備える内視鏡は、医療分野、工業分野等で使用されている。医療分野で使用される内視鏡は、体内の各種臓器の観察、検査、処置等で使用される。
【0003】
一方、工業分野で使用される内視鏡はボイラ、タービン、エンジン、化学プラント等の損傷、腐食等の観察、検査等で使用される。また、工業分野で使用される内視鏡では、近年、地震、土砂崩れ等の災害、事故等による建物の崩壊、車両の潰れ等の際、人命救助等のため、閉ざされた空間内部を観察するためにも使用されている。
【0004】
内視鏡は、観察窓、照明窓を備え、照明窓から出射された照明光で照らされた観察部位の観察像を観察窓を通して例えば撮像素子の撮像面に結像させ、撮像素子で光電変換された観察像の画像信号を画像信号処理部に伝送して映像信号を生成している。そして、生成された映像信号は、モニターに出力され、モニターの画面上に内視鏡画像を表示させて内視鏡観察を行えるようになっている。
【0005】
内視鏡観察中において、内視鏡の観察窓、或いは照明窓に、血液或いは汚物が付着する、又はオイル等粘性を有する不透明な液体、汚泥、ヘドロ等の堆積物、或いは浮遊物が付着すると、観察部位に出射される照明光量が減少する、或いは撮像面が遮られる等の不具合により、良好な内視鏡画像を得ることが困難になる。
【0006】
医療分野で使用される内視鏡においては、観察窓、或いは照明窓に血液、或いは汚物等が付着することによって良好な内視鏡画像が得られなくなることを防止するため、送気送水ノズル(洗浄ノズルともいう)が設けられている。送気送水ノズルは、例えば水、空気を観察窓、照明窓に向けて噴出して、該窓に付着した血液等を洗い流す、或いは吹き飛ばして良好な内視鏡画像を確保する。
【0007】
工業用分野で使用される内視鏡において、例えば内視鏡の挿入部の径寸法が例えばφ4mmの細径な内視鏡の場合、送気送水ノズルを設けることが困難であった。このため、内視鏡によって、オイルパン内の検査、配水管の検査、或いは砂埃が舞う被災地で捜査等を行う際、挿入部がオイル溜まり、堆積物中、瓦礫の隙間を通過させる際に、観察窓或いは照明窓にオイル、ゴミ、ヘドロ、粉塵等が付着して、関心部位に到達する以前に内視鏡観察を行うための内視鏡画像を得られなくなることがあった。
【0008】
特許文献1には内部に粘性物質が存在しても、所望の位置まで挿入して観察することが可能な内視鏡装置、及び、粘性物質内の被検物観察方法が示されている。この内視鏡装置によれば、供給手段と流体案内チューブと蓋体とを備えることで、内部に粘性物質が存在していたとしても、観察手段に粘性物質が付着して観察が困難になってしまうこと無く、所望の位置まで挿入して被検体を好適に観察することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−262089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の図1に記載されている内視鏡装置は、内視鏡挿入部を有する内視鏡と、挿入体として内視鏡挿入部の先端側に外装される略管状で湾曲操作が可能な湾曲部付きのガイドチューブとを備えて主に構成され、ガイドチューブには内視鏡挿入部と、略管状の第一の流体案内チューブ及び第二の流体案内チューブと、操作部材であるキャップ操作ワイヤとが挿通される等、構成が複雑である。このため、安価でかつ簡単な構成で、内視鏡の挿入部を、不透明な液体中、汚泥中、或いは堆積物中などの劣悪環境下を通過させて、関心部位に導き、関心部位の観察を良好に行える内視鏡システムが望まれている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、内視鏡の挿入部に備えられた観察窓、照明窓にオイル、ゴミ、ヘドロ、粉塵等が付着することなく劣悪環境下を通過させて、関心部位の内視鏡観察を良好に行える内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ、およびそのガイドチューブを用いた内視鏡検査方法を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の内視鏡挿入部案内用ガイドチューブは、内視鏡の挿入部が挿通可能な軸方向貫通孔を有し、先端面より基端側の任意の部分に曲がり癖部を設けることが可能な弾発性を有するチューブ体と、前記軸方向貫通孔に挿入した状態において、当該軸方向貫通孔内へ液体、堆積物、或いは浮遊物が侵入することを防止する侵入防止部材と、を具備している。
【0013】
本発明の内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを用いた内視鏡検査方法は、内視鏡の挿入部が挿通可能な軸方向貫通孔を有し、先端面より基端側の任意の部分に曲がり癖部を設けることが可能な弾発性を有するチューブ体と、前記軸方向貫通孔に挿入した状態において、当該軸方向貫通孔内へ液体、堆積物、或いは浮遊物が侵入することを防止する侵入防止部材と、を具備する内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを用いる内視鏡検査方法であって、
前記侵入防止部材を前記チューブ体の軸方向貫通孔の基端側開口から該貫通孔内に挿入し、前記侵入防止部材を当該チューブ体に所定状態で一体にし、前記侵入防止部材が一体な前記チューブ体を、液体、堆積物、或いは浮遊物のある劣悪環境域を通過させて関心部位近傍に導入し、前記侵入防止部材を前記チューブ体の軸方向貫通孔内から抜去して該侵入防止部材が抜去された前記チューブ体の軸方向貫通孔内に前記内視鏡の挿入部を挿入して該軸方向貫通孔の先端側開口から該挿入部の先端部を導出させて関心部位を観察する。
【0014】
この構成、及び検査方法によれば、チューブ体の軸方向貫通孔内に侵入防止部材を挿入して、この侵入防止部材とチューブ体とを所定の一体状態にする。そして、侵入防止部材が一体なチューブ体を劣悪環境域を通過させて関心部位近傍まで導入し、導入後、チューブ体の軸方向貫通孔から侵入防止部材を抜去して、侵入防止部材が抜去された軸方向貫通孔内に内視鏡の挿入部を挿入する。そして、挿入部を関心部位に導くことにより、関心部位の内視鏡観察を良好に行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内視鏡の挿入部に備えられた観察窓、照明窓にオイル、ゴミ、ヘドロ、粉塵等が付着することなく劣悪環境下を通過させて、関心部位の内視鏡観察を良好に行える内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ、およびそのガイドチューブを用いた内視鏡検査方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1−図10は本発明の一実施形態に係り、図1は内視鏡システムを説明する図
【図2】内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを構成するチューブ体及び侵入防止部材である芯金を説明する図
【図3】チューブ体の貫通孔に芯金が挿通配置された内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを説明する図
【図4】内視鏡挿入部案内用ガイドチューブの作用を説明する図であり、作業対象であるオイルパンの概略図と、内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを構成するチューブ体及び芯金を示す図
【図5】ネジ孔を介してオイルパン内に挿入される、芯金をチューブ体の軸方向貫通孔に挿入して構成された内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを示す図
【図6】ガイドチューブをネジ孔を介して、オイルパン内に挿入している状況を説明する図
【図7】ガイドチューブの先端が対向内面に到達した状態を説明する図
【図8】チューブ体から芯金を抜去した後の曲がり癖部の状態、及び芯金が抜去された軸方向貫通孔に内視鏡の挿入部を挿入する状況を説明する図
【図9】チューブ体の先端側開口から挿入部が導出されている状況を説明する図
【図10】チューブ体の先端側開口から異なる関心部位に挿入部を導出させた状況を説明する図
【図11】案内管の他の構成を説明する図
【図12】侵入防止部材の他の構成を説明する図
【図13】侵入防止部材の別の構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1−図10を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1に示すように内視鏡システム1は、内視鏡2と、内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ(以下、ガイドチューブと略記する)3とを備えて構成されている。
内視鏡2は、該内視鏡2に接続される装置本体4と、内視鏡用アダプタ(以下、単にアダプタと記載)5とを備えている。
【0019】
内視鏡2は、細長で可撓性を有する細径の挿入部6と、該挿入部6の基端側に設けられた、把持部7aを有する操作部7と、該操作部7の把持部7aから延出されたユニバーサルコード8とにより主要部が構成されている。
【0020】
挿入部6は、先端側から順に、先端部6aと、例えば上下方向及び左右方向に湾曲する湾曲部6bと、可撓性を有する可撓管部6cとを連設して構成され、可撓管部6cの基端部が操作部7に連結されている。挿入部6の先端部にはCCD、C−MOS等の撮像素子が内蔵されている。
【0021】
湾曲部6bを湾曲動作させる湾曲操作レバー7bは、少なくとも4方向に傾倒自在となるよう操作部7の所定位置に立設されている。湾曲操作レバー7bは、操作者により傾倒方向が変化されることにより、挿入部6内に挿通された図示しない湾曲ワイヤを牽引、或いは弛緩操作させる。つまり、湾曲部6bは、操作部7に設けられた湾曲操作レバー7bの操作によって湾曲ワイヤが操作されることによって、上方向、下方向、左方向、右方向の4方向のうち少なくとも1方向に湾曲動作する。
【0022】
なお、操作部7には、湾曲操作レバー7bの他、例えば、図示しない表示画像の明るさを調整するブライトネススイッチ、画像録画スイッチ、画像静止スイッチ等が配設されている。
【0023】
操作部7から延出されるユニバーサルコード8の端部は、箱状の装置本体4に接続されている。装置本体4は、外装筐体4aにより覆われ、その内部には画像処理用のCPU等の電気部品(不図示)、装置本体4に取り付けられたモニター9、操作部7に内蔵されたモーター(不図示)、及びアダプタ5に備えられたLED(不図示)に電源を供給するバッテリユニット(不図示)等が配設される。
【0024】
モニター9の画面には、内視鏡2の撮像素子により撮像された内視鏡画像が表示される。本実施形態において、モニター9は、外装筐体4aに対し開閉自在に取り付けられており、図1は閉状態を示し、図示しない画面が外装筐体4aの一面に対向した状態である。なお、モニター9は、外装筐体4aに対して着脱自在な構成であってもよい。
【0025】
符号10はベルトであり、装置本体4の携帯性を向上させるため、装置本体4に対して例えば二箇所、着脱自在に取り付けられるようになっている。符号11は、ゴム製の脚部であり、装置本体4を載置するため外装筐体4aの例えば4箇所に設けられている。
【0026】
アダプタ5は、先端部6aに着脱自在に取り付けられて挿入部6を構成する。アダプタ5の外装は、鉄、チタン、ステンレス等の金属製で、内部には発光素子であるLED、撮像素子の撮像面に観察像を結像させるための対物レンズユニット等が配設されている。
【0027】
図1、図2に示すように本実施形態のガイドチューブ3は、チューブ体30と芯金20とで構成される。
芯金20は、侵入防止部材であって例えば、ステンレス製で中実な棒状部材であり、所定の剛性を備えている。芯金20は、一端側に栓部21を備えている。栓部21は、例えば中央部分の径寸法が最大で、先端側及び基端側に行くにしたがって径寸法が徐々に小径に変化する樽形状である。栓部21の外周面は、後述する軸方向貫通孔(図2の符号31d参照)の内周面に密着する構成になっている。
栓部21は、芯金20に対して一体に形成される、又は、別体な栓部形成部材21aを螺合、接着、溶接等によって芯金20に一体に固定して設けられる。
【0028】
符号22は円柱形状の芯金把持部材であり、芯金20の他端部に固定されて芯金把持部を構成する。芯金把持部材22は、樹脂製、或いは金属製で、軸方向貫通孔22aを有し、その軸方向貫通孔22a内に芯金20の他端部を配置し、接着等によって一体的に固定して構成される。
【0029】
チューブ体30は、チューブ本体31に例えば、チューブ把持部材32及び曲がり方向確認部材33を設けて構成される。
チューブ本体31は、例えばウレタンゴム製であり、所望の弾発性を有し、一端側には所定のR形状の曲がり癖部31aが設けられている。チューブ本体31は、一端面及び他端面にそれぞれ開口31b、31cを有する軸方向貫通孔31dを備えている。軸方向貫通孔31d内には、図の矢印Y2に示すように基端側開口31cから栓部21を有する芯金20の挿通及びアダプタ5を先端部5aに固設した挿入部6の挿通が可能である。
【0030】
なお、軸方向貫通孔31dの開口を、一端面及び他端面に備えるとしている。しかし、軸方向貫通孔31dの開口を、一端側の側部、或いは他端側の側部にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0031】
チューブ本体31の曲がり癖部31aは、図3に示すように軸方向貫通孔31dに芯金20が挿通されることによって、直線状に弾性変形される。芯金20の栓部21は、先端側開口31b近傍に配置されことによって、栓部21の外周面が軸方向貫通孔31dの内周面に密着して、該開口31bを閉塞する。
【0032】
チューブ本体31の曲がり癖部31aは、軸方向貫通孔31dから芯金20が抜去されることによって、再び、図2に示すようにチューブ本体31の一端側に曲がり癖部31aが出現する。
【0033】
チューブ把持部材32は、チューブ本体31の他端部に配置されて把持部を構成する。チューブ把持部材32は、円柱形状で軸方向貫通孔32aを備え、チューブ本体31の他端部が軸方向貫通孔32a内に配置され、接着によって一体的に固設される。チューブ把持部材32は、樹脂製、或いは金属製である。
【0034】
曲がり方向確認部材(以下、確認部材と略記する)33は、樹脂製、或いは金属製の例えば直方体形状である。確認部材33は、中央部にチューブ把持部材32の端部が配置される凹部33aを有する。符号33bは連通孔であり、凹部33aと外部とを連通する。連通孔33bにはチューブ本体31が配置される。チューブ本体31は、連通孔33bに配置された状態で、曲がり癖部31aが例えば長手方向を向くように調整された後、接着等によって確認部材33と一体に固定される。
【0035】
なお、本実施形態においては、図3に示すように芯金把持部材22の先端面22bが、チューブ把持部材32の基端面32aに当接することによって、先端側開口31bが栓部21によって、所望の状態で閉塞される構成になっている。
【0036】
また、本実施形態において、芯金20は、栓部21の先端面より先端側に突出する構成になっている。しかし、栓部21の先端面と、芯金20の先端面とが面一致状態、或いは、芯金20の先端面が栓部21の先端面より窪んだ状態であってもよい。
【0037】
また、栓部21の稜線及び栓部21の先端面より先端側に突出する芯金20の先端部稜線には、芯金20をチューブ本体31に挿抜した際、軸方向貫通孔31dの内面に傷を付けることを防止する目的で、例えば曲面の面取りが施してある。
【0038】
図4−図10を参照してガイドチューブ3を使用して内視鏡2の挿入部6を例えば、オイルパン40内に挿入して検査を行う場合について説明する。
図4に示すオイルパン40内の内部にある関心部位である凸部41、42付近を検査するに当たって、作業者は、図示しない内視鏡2と、ガイドチューブ3を構成する芯金20及びチューブ体30を用意する。そして、作業者は、オイルパン40からボルト43を取り外し、オイルパン40内のオイルの抜き取りを開始する。
【0039】
オイルを抜き取っている間、作業者は、栓部21を有する芯金20をチューブ体30の基端側開口31cから軸方向貫通孔31d内に挿入し、図5に示すように芯金20とチューブ体30とが一体なガイドチューブ3を構成しておく。
【0040】
ガイドチューブ3は、芯金20をチューブ体30に一体に設けたことによって、チューブ本体31の曲がり癖部31aが芯金20の剛性によって直線状態に変形される一方、軸方向貫通孔31dの先端側開口31bが芯金20の栓部21によって閉塞される。
【0041】
次に、作業者は、図6に示すようにガイドチューブ3を、オイルパン40のネジ孔44を介して該オイルパン40内に挿入する。そして、ガイドチューブ3の先端側をネジ孔44に対向する対向内面45に向けて押し進めていく。このとき、軸方向貫通孔31dの先端側開口31bは、栓部21によって閉塞されているので、オイル等がチューブ体30内に侵入することが防止されている。
【0042】
オイルは、粘性が高いため、オイルパン40内からオイルが完全に抜き取られるまでには相当の時間を要する。作業者は、ネジ孔44からのオイルの流出がとぎれていることを確認した後、ガイドチューブ3のオイルパン40内への導入を行っている。しかし、オイルパン40のネジ孔44側の底部46の一部には、オイル溜まり47が存在し、ガイドチューブ3は、劣悪環境域であるオイル溜まり47を通過して対向内面45に向かっていく。
そして、確認部材33が図7に示すようにネジ孔44に近接したとき、ガイドチューブ3の先端が凸部41、42に近接した対向内面45に当接する。
【0043】
なお、作業者は、ガイドチューブ3の先端が対向内面45に当接するまでの間に、確認部材33の向きを破線で示す図の矢印Y6a、Y6bに示すように回転させて、芯金20を抜去したとき、先端側開口31bが所望の凸部41側、又は凸部42側に向くように調整しておく。
【0044】
当接後、作業者は、図8に示すように芯金20をチューブ体30の軸方向貫通孔31d内から抜去する。すると、チューブ本体31の有する弾発力によってオイルパン40内で二点鎖線に示すように曲がり癖部31aが再び形成され、先端側開口31bが例えば凸部41上に配置される。
【0045】
次に、作業者は、芯金20が抜去されたチューブ体30の基端側開口31cを介して軸方向貫通孔31d内に内視鏡2の挿入部6を挿入していく。このとき、作業者は、内視鏡2を観察状態にして軸方向貫通孔31d内を確認しながら挿入部6を先端側開口31bに向けて挿入していく。
そして、図9に示すように先端側開口31bからアダプタ5、先端部6a、湾曲部6b、可撓管部の順に突出されることによって、挿入部6の関心部位への導出を完了する。挿入部6は、チューブ体30内を挿通されることにより、オイル溜まり47中を通過することなく、関心部位に導出される。
【0046】
この後、作業者は、凸部41周囲の観察、検査を行う。そして、検査終了後、再び、芯金20をチューブ体30の軸方向貫通孔31d内に挿入する。すると、オイルパン40内で曲がり癖部31aが再び直線状態に変化する。
【0047】
ここで、作業者は、確認部材33を回転させて、芯金20を再び抜去したとき、先端側開口31bが凸部42に向かうように調整する。その調整後、芯金20を再びチューブ体30の軸方向貫通孔31d内から抜去する。
【0048】
すると、チューブ本体31の有する弾発力によって曲がり癖部31aがオイルパン40内で再び形成されて、先端側開口31bが凸部42上に配置される。作業者は、再び、芯金20を抜去し、その後、チューブ体30の軸方向貫通孔31d内に内視鏡2の挿入部6を挿入する。そして、挿入部6が先端側開口31bから突出されたなら凸部42の周辺の検査を行う。
【0049】
検査終了後、作業者は、内視鏡2の挿入部6を軸方向貫通孔31dから抜去し、その後、芯金20をチューブ体30内に挿入し、この状態でチューブ体30をオイルパン40から抜去する。そして、ボルト43をネジ孔44に取り付けてオイルパン40内の検査を完了する。
【0050】
このように、ガイドチューブ3を、曲がり癖部31a及び軸方向貫通孔31dを有するチューブ体30と、栓部21を有し、曲がり癖部31aを直線状態に変形させる剛性を有する芯金20とで構成する。そして、内視鏡検査を行う際、芯金20とチューブ体30とが一体なガイドチューブ3を構成して、オイル溜まり47等の劣悪環境域を通過させて、ガイドチューブ3の先端部を関心部位近傍に配置させる。このことによって、芯金20を軸方向貫通孔31dから抜去することによって、曲がり癖部31aが再び曲がった形状に戻って、チューブ体30の先端部を関心部位に容易に配置することができる。
【0051】
そして、チューブ体30の先端部を関心部位に配置した後、芯金20が抜去された軸方向貫通孔31dに内視鏡2の挿入部6を挿入して、先端側開口31bから突出させる。このことによって、観察窓及び照明窓にオイルが付着することなく、内視鏡2の挿入部6が関心部位に導出させて、オイルパン40内の観察を良好に行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、内視鏡システム1によってオイルパン40内を観察するとしている。しかし、本実施形態の内視鏡システム1は、オイルパン内の観察に限定されるものではなく、ゴミや汚物によって不透明な液体中、堆積物中、或いは粉塵中などの劣悪環境下を通過させる必要な場合の観察に適用される。
【0053】
また、本実施形態においては、侵入防止部材を、栓部21を有し、曲がり癖部31aを直線状態に変形させる剛性を有する芯金20としている。しかし、芯金20の構成はこれに限定されるものではなく、図11に示す芯金20Aであってもよい。
【0054】
図11の芯金20Aは、軸方向貫通孔31d内に付着したオイル等を拭き取る拭き取り部23を備えている。拭き取り部23は、例えばスポンジであり、栓部21の基端側近傍に配置されている。
【0055】
この構成によれば、芯金20Aをチューブ体30の軸方向貫通孔31dに再挿入する際、軸方向貫通孔31dにオイルが付着している場合、そのオイルが拭き取り部23によって拭き取られる。したがって、挿入部6を軸方向貫通孔31dに再挿入した際、観察窓等にオイルが付着することをより確実に防止することができる。
【0056】
図12は侵入防止部材の他の構成例を説明する図である。
本実施形態の侵入防止部材は、チューブ部材20Bである。チューブ部材20Bは、可撓性を有するフッ素樹脂チューブで形成されている。チューブ部材20Bの先端部には、密着部21Bが設けられている。密着部21Bは、先端側が大径で基端方向に向かうにしたがって径寸法が徐々に細径に変化するように形成された傾斜面部21c及び径寸法が一定な外周面部21dとで構成されている。
【0057】
この構成によれば、チューブ部材20Bをチューブ体30の軸方向貫通孔31dに先端側開口31b側から挿入して、チューブ部材20Bとチューブ体30とが一体なガイドチューブ3Bを構成する。このガイドチューブ3Bにおいては、傾斜面部21cがチューブ体30の軸方向貫通孔31dの先端側傾斜面31eに密着し、外周面部21dは先端側内周面31fに密着することにより、オイル等の侵入を防止することができ、チューブ部材20Bをチューブ体30に一体にした状態において曲がり癖部31aの曲がり形状を維持することができる。このため、ガイドチューブ3Bは、曲がり癖部31aが曲がった状態で、オイル溜まり47等の劣悪環境域を通過されていく。
【0058】
そして、劣悪環境下を通過して関心部位を到達したとき、チューブ部材20Bは抜去される。その後、チューブ部材20Bが抜去されたチューブ体30の軸方向貫通孔31d内に、上述と同様に内視鏡2の挿入部6を挿入して関心部位の観察を行う。
【0059】
また、図13の芯金20、20A、或いはチューブ部材20Bには、それぞれ連通孔24が設けられている。連通孔24は、先端部に形成される開口24aと、基端部に形成される開口24bとを連通する。
【0060】
このため、ガイドチューブ3、3Bの先端部が劣悪環境下に位置しているとき、連通孔25を介して作業者が位置する外部にオイル等が漏れ出てくる。このことによって、ガイドチューブ3、3Bの先端が、劣悪環境域を通過中であることを判断することができる。
【0061】
一方、外部にオイル等の漏れが無くなくなることにより、作業者は、劣悪環境域を通過して関心部位に到達したことを判断することができる。
【0062】
なお、芯金20、20A、或いはチューブ部材20Bに連通孔24を備える構成であっても、チューブ体30の軸方向貫通孔31d内にオイル等が侵入することは防止されている。
【0063】
また、前記連通孔24の先端側に図示しない弁を設け、連通孔24の基端側に図示しない吸引装置(例えば、シリンジ)を取り付け可能な構成にすることによって、作業者は、適宜、吸引装置を操作して、ガイドチューブ3、3Bが挿入されている環境を確認しながら、ガイドチューブの導入作業を行うことができる。
【0064】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…内視鏡システム 2…内視鏡 3、3B…ガイドチューブ 4…装置本体
4a…外装筐体 5…アダプタ 5a…先端部 6…挿入部 6a…先端部
6b…湾曲部 6c…可撓管部 7…操作部 7a…把持部
7b…湾曲操作レバー 8…ユニバーサルコード 9…モニター 10…ベルト
11…脚部 20、20A…芯金 20B…チューブ部材 21…栓部
21B…密着部 21a…栓部形成部材 21c…傾斜面部 21d…外周面部
22…芯金把持部材 22a…軸方向貫通孔 22b…先端面 23…拭き取り部
24…連通孔 24a、24b…開口 25…連通孔 30…チューブ体
31…チューブ本体 31a…曲がり癖部 31b…先端側開口
31c…基端側開口 31d…軸方向貫通孔 31e…先端側傾斜面
31f…先端側内周面 32…チューブ把持部材 32a…軸方向貫通孔
32a…基端面 33…曲がり方向確認部材 33a…凹部 33b…連通孔
40…オイルパン 41、42…凸部 43…ボルト 44…ネジ孔
45…対向内面 46…底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部が挿通可能な軸方向貫通孔を有し、先端面より基端側の任意の部分に曲がり癖部を設けることが可能な弾発性を有するチューブ体と、
前記軸方向貫通孔に挿入した状態において、当該軸方向貫通孔内へ液体、堆積物、或いは浮遊物が侵入することを防止する侵入防止部材と、
を具備することを特徴とする内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ。
【請求項2】
前記侵入防止部材は、前記チューブ体の軸方向貫通孔への挿入、抜去が自在で、当該軸方向貫通孔に挿入されることによって、前記曲がり癖部を直線状態に変形させる剛性を備える芯金であり、
前記芯金は、前記軸方向貫通孔の先端側開口を閉塞する栓部を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ。
【請求項3】
前記侵入防止部材は、前記チューブ体の軸方向貫通孔に挿入された状態において、前記曲がり癖部とともに変形するチューブ部材であり、
前記チューブ部材は、前記軸方向貫通孔に挿入された状態で当該軸方向貫通孔の少なくとも先端側内周面に密着することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ。
【請求項4】
前記侵入防止部材に、先端部と外部とを連通する連通孔を設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内視鏡挿入部案内用ガイドチューブ。
【請求項5】
内視鏡の挿入部が挿通可能な軸方向貫通孔を有し、先端面より基端側の任意の部分に曲がり癖部を設けることが可能な弾発性を有するチューブ体と、
前記軸方向貫通孔に挿入した状態において、当該軸方向貫通孔内へ液体、堆積物、或いは浮遊物が侵入することを防止する侵入防止部材と、
を具備する内視鏡挿入部案内用ガイドチューブを用いる内視鏡検査方法において、
前記侵入防止部材を前記チューブ体の軸方向貫通孔の基端側開口から該貫通孔内に挿入し、
前記侵入防止部材を当該チューブ体に所定状態で一体にし、
前記侵入防止部材が一体な前記チューブ体を、液体、堆積物、或いは浮遊物のある劣悪環境域を通過させて関心部位近傍に導入し、
前記侵入防止部材を前記チューブ体の軸方向貫通孔内から抜去して該侵入防止部材が抜去された前記チューブ体の軸方向貫通孔内に前記内視鏡の挿入部を挿入して該軸方向貫通孔の先端側開口から該挿入部の先端部を導出させて関心部位を観察することを特徴とする内視鏡検査方法。
【請求項6】
前記侵入防止部材が、前記チューブ体の軸方向貫通孔への挿入、抜去が自在で、当該軸方向貫通孔に挿入されることによって、前記曲がり癖部を直線状態に変形させる剛性を備える芯金であるとき、
前記関心部位を観察した後、前記芯金を再挿入して前記チューブ体と所定状態で一体にして、前記関心部位から前記チューブ体を取り出す、又は前記関心部位とは異なる関心部位を観察することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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