説明

内視鏡用アダプタ

【課題】内視鏡の先端面に付着した体液、水、薬液等の液体を確実に外部に排出させることができる内視鏡用アダプタを提供する。
【解決手段】
内視鏡用アダプタ1は、内視鏡Eの先端部Eaの外周面に着脱可能に装着される装着部2と、該装着部2の先端2aから内視鏡Eの前方に向けて突出する突出部とを備える筒体からなる。装着部2は、突出部3の内周面3aと内視鏡Eの先端面Eaとで形成される内部空間Sに開口し、基端2bへ向けて内周面2cに凹設された少なくとも一つの排液溝4と、各該排液溝4に連結され、装着部2を厚さ方向に貫通して外周面2dに連通する少なくとも一つの排液孔5とを備え、排液溝4及び排液孔5は、内視鏡Eの先端面Eaに付着した体液、水、薬液等の液体が毛管現象により外部に排出されるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の先端部に着脱可能に装着される内視鏡用アダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消化器官等の手術や検査等に内視鏡が使用されている。図3示のように、内視鏡Eは、先端部Eaの外周面に、硬質樹脂製の内視鏡用アダプタ11を介して、軟質樹脂製のフード12を着脱可能に装着し、先端面Ebに設けられた対物レンズ等が被処置部に直接接触することが防止されるようになっている。
【0003】
ところで、被処置部から流れ出た体液(血液、リンパ液、組織液)、該体液を洗い流すために被処置部に供給した水、薬液等の液体が内視鏡Eの先端面Ebの対物レンズに付着し、内視鏡Eの視界が悪くなり処置の妨げとなることがある。そこで、外壁面を厚さ方向に貫通する排液孔13又は先端部12aに切り欠き部14を備え、この液体を該排液孔13又は該切り欠き部14から外部に排出させるフード12が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような排液孔13又は切り欠き部14を備えたフード12が装着された内視鏡Eであっても、排液孔13の基端13aと内視鏡Eの先端面Ebとで形成される内部空間Saや、切り欠き部14の基端14aと先端面Ebとで形成される内部空間Sbに液体が残ってしまい、対物レンズに付着した液体を完全に外部に排出させることはできなかった。
【特許文献1】特開昭59−93413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、内視鏡の先端面に付着した体液、水、薬液等の液体を確実に外部に排出させることができる内視鏡用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、内視鏡の先端部の外周面に着脱可能に装着される装着部と、該装着部の先端から前記内視鏡の前方に向けて突出する突出部とを備える筒状の内視鏡用アダプタであって、前記装着部は、前記突出部の内周面と前記内視鏡の先端面とで形成される内部空間に開口し、基端へ向けて内周面に凹設された少なくとも一つの排液溝と、各該排液溝に連結され、前記装着部を厚さ方向に貫通して外周面に連通する少なくとも一つの排液孔とを備え、前記排液溝及び前記排液孔は、前記内視鏡の先端面に付着した体液、水、薬液等の液体が毛管現象により外部に排出されるように形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記排液溝が、前記突出部の内周面と前記内視鏡の先端面とで形成される内部空間に開口し、前記装着部の基端へ向けて前記装着部の内周面に凹設されているとともに、前記装着部の外周面に連通する前記排液孔に連結されているので、前記内視鏡の先端面に付着した体液、水、薬液等の液体を毛管現象により確実に外部に排出することができる。従って、内視鏡の視界が良好となり、処置を円滑に行うことができる。
【0008】
本発明においては、前記排液溝は、0.3〜1.3mmの範囲の幅と、0.5〜1.5mmの範囲の深さとを備え、前記排液孔は、0.3〜1.3mmの範囲の直径を備えることが望ましい。前記排液溝及び前記排液孔をこのような範囲の寸法とすることにより、体液、水、薬液等の量、種類等によって前記液体の粘度が変わっても、該液体の粘度に関係なく該液体を毛管現象により確実に外部に排出させることができる。
【0009】
前記排液溝の幅と前記排液溝の深さと前記排水孔の直径とのいずれかが前記範囲を下回る場合には、前記液体が毛管現象により外部に排出されるものの、排出量が少ないために排出が不十分となることがある。また、前記排液溝の幅と前記排液溝の深さと前記排水孔の直径とのいずれかが前記範囲を上回る場合には、毛管現象が不十分となり、前記液体が外部に排出されないことがある。
【0010】
また、本発明においては、前記装着部は、等間隔に配置された複数の前記排液溝を備えることが望ましい。前記排液溝を複数備えるので、前記液体が多量に発生した場合でも円滑に排出を行うことができる上に、前記排液溝が等間隔に配置されているので、内視鏡における全視野を良好にさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の内視鏡用アダプタを示す説明図であり、図1(a)は側面図であり、図1(b)は正面図である。図2は、本実施形態の内視鏡用アダプタのバリエーションを示す説明図である。
【0012】
図1示の内視鏡用アダプタ1は、内視鏡Eの先端部Eaの外周面に着脱可能に装着される小内径の装着部2と、装着部2の先端2aから内視鏡Eの前方に向けて突出する大内径の突出部3とを備え、例えばシリコーンゴムのような軟質樹脂製の筒体からなる。内視鏡用アダプタ1は、使用目的に応じて内視鏡Eの先端部Eaから1〜4mm突出させて装着される。内視鏡用アダプタ1は、先端側1aにさらにフード(図示せず)を備えるものであってもよい。
【0013】
装着部2は、突出部3の内周面3aと内視鏡Eの先端面Eaとで形成される内部空間Sに開口し、基端2bへ向けて内周面2cに凹設された排液溝4を4つ備える。具体的には、排液溝4は、小内径の装着部2と大内径の突出部3との間の壁面である装着部2の先端2aに開口し、周方向に等間隔に配置されている。各排液溝4は、0.3〜1.3mmの範囲の幅Wと、0.5〜1.5mmの範囲の深さHとすることができ、本実施形態では、幅Wが0.8mm、深さHが0.8mmとなっている。本実施形態では、各排液溝4は同一の寸法を備えているが、上記範囲内であれば互いに異なる寸法であってもよい。
【0014】
また、装着部2は、各排液溝4の途中に連結され、該装着部2を厚さ方向に貫通して外周面2dに連通する少なくとも一つの排液孔5とを備える。各排液孔5は、0.3〜1.3mmの範囲の直径Dとすることができ、本実施形態では直径Dが0.8mmとなっている。
【0015】
排液溝4は、内視鏡Eの先端面Eaに付着した体液、水、薬液等の液体が、毛管現象により開口から基端2b側へ流れていき、排液孔5から排出されるように形成されている。
【0016】
次に、本実施形態の内視鏡用アダプタ1の使用状態について説明する。内視鏡用アダプタ1は、内視鏡的粘膜切除術においては、該切除術で使用されるナイフと被処置部の粘膜との空間を確保するために用いられる。内視鏡的検査及び観察においては、内視鏡Eの先端面Ebに設けられた対物レンズ(図示せず)と被処置部の粘膜とが近接又は密着して該対物レンズの焦点が定まらなくなることにより該対物レンズの出力画面が真っ赤になって視界不良となる現象を防止するために用いられる。狭帯域光観察においては、前記対物レンズと粘膜表層の毛細血管及び粘膜との距離を確保するために用いられる。
【0017】
上記の処置の際、被処置部から流れ出た血液を洗い流すために被処置部に供給した水や体液(血液、リンパ液、組織液)、薬液等の液体が、内視鏡Eの先端面Eaに付着する。本実施形態の内視鏡用アダプタ1は、排液溝4が、突出部3の内周面3aと内視鏡Eの先端面Eaとで形成される内部空間Sに開口し、装着部2の基端2bへ向けて装着部2の内周面2cに凹設されているとともに、装着部2の外周面2dに連通する排液孔5に連結されているので、内視鏡Eの先端面Eaに付着した体液、水、薬液等の液体を毛管現象により確実に外部に排出することができる。従って、内視鏡Eの視界が良好となり、処置を円滑に行うことができる。
【0018】
また、本願発明者らは、排液溝4の幅W、深さH、及び排液孔5の直径Dについて様々な寸法で試した結果、上記範囲の寸法が前記液体の毛管現象による排出に適していることを知見した。排液溝4及び排液孔5を上記範囲の寸法とすることにより、体液、水、薬液等の量及び種類により前記液体の粘度が変わっても、該液体を毛管現象により確実に外部に排出させることができる。
【0019】
また、排液溝4の数は1つ以上であればいくつでもよいが、本実施形態では、排液溝4を4つ備えるので、前記液体が多量に発生した場合でも円滑に排出を行うことができる。また、各排液溝4が等間隔に配置されているので、内視鏡Eにおける全視野を良好にさせることができる。
【0020】
また、排液溝4は、例えば、装着部2の内周面2cを先端2aから基端2bへ向けて軸方向に切削することにより形成可能であるので、製造容易である。また、内視鏡用アダプタ1を金型により形成する場合も、型の構成を簡易なものとすることができる。排液溝4は、本実施形態では、装着部2の内周面2cを先端2aから基端2bまで軸方向全体に亘って凹設されたものとなっているが、先端2aから排液孔5まで凹設されたものであってもよい。
【0021】
また、本実施形態では、小内径の装着部2と大内径の突出部3とを備える筒体としたが、図2示のように、装着部2から突出部3に向けて拡径する拡径部6を備える筒体とし、突出部3の内周面3aと拡径部6の内周面6aと内視鏡Eの先端面Eaとで形成される内部空間Sに排液溝4を開口させるようにしてもよい。このような筒体であっても、内視鏡Eの先端面Eaに付着した前記液体を、拡径部6の内周面6aを介して排液溝4及び排液孔5により外部に排出させることができる。
【0022】
また、図示しないが、装着部と突出部とが同径の筒体であってもよい。また、このとき、排液溝は、突出部の内周面と内視鏡の先端面とで形成される内部空間に開口し、突出部の先端から装着部の基端まで、即ち筒体の全長に亘って連続して内周面に凹設されるように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の内視鏡用アダプタを示す説明図。
【図2】本実施形態の内視鏡用アダプタのバリエーションを示す説明図。
【図3】従来技術の内視鏡用アダプタ及びフードを示す説明図。
【符号の説明】
【0024】
1…内視鏡用アダプタ、 2…装着部、 2a…装着部の先端、 2b…装着部の基端、 2c…装着部の内周面、 2d…装着部の外周面、 3…突出部、 3a…突出部の内周面、 4…排液溝、 5…排液孔、 E…内視鏡、 Ea…内視鏡の内周面、 S…内部空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部の外周面に着脱可能に装着される装着部と、該装着部の先端から前記内視鏡の前方に向けて突出する突出部とを備える筒状の内視鏡用アダプタであって、
前記装着部は、前記突出部の内周面と前記内視鏡の先端面とで形成される内部空間に開口し、基端へ向けて内周面に凹設された少なくとも一つの排液溝と、各該排液溝に連結され、前記装着部を厚さ方向に貫通して外周面に連通する少なくとも一つの排液孔とを備え、
前記排液溝及び前記排液孔は、前記内視鏡の先端面に付着した体液、水、薬液等の液体が毛管現象により外部に排出されるように形成されていることを特徴とする内視鏡用アダプタ。
【請求項2】
前記排液溝は、0.3〜1.3mmの範囲の幅と、0.5〜1.5mmの範囲の深さとを備え、
前記排液孔は、0.3〜1.3mmの範囲の直径を備えることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用アダプタ。
【請求項3】
前記装着部は、等間隔に配置された複数の前記排液溝を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の内視鏡用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272168(P2008−272168A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118432(P2007−118432)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】