説明

内視鏡用カメラモジュール

【課題】内視鏡用カメラモジュールを小型化する。
【解決手段】カメラモジュール30は、対物光学系32、レンズ移動機構36を備えている。対物光学系32は、第2レンズ40、プリズム44を備えている。第2レンズ40は、変倍用の可動レンズであり、モータ50を有するレンズ移動機構36により移動される。プリズム44は、第2レンズ40の光軸に対して45°傾けられた反射面44bを有している。モータ50は、駆動軸56を挿入部13の長手方向と平行にした状態で、プリズム44の背後に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部の先端部に搭載される内視鏡用カメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、検査孔内に挿入される挿入部の先端部にカメラモジュールが内蔵されている。カメラモジュールは、可動レンズや可動レンズを移動させるレンズ移動機構、及び、撮像素子や撮像素子を駆動する駆動回路を有する回路基板などがユニット化されたものであり、検査孔内を撮影する。カメラモジュールは検査孔外のモニタに接続され、カメラモジュールにより撮影された画像はこのモニタに表示される。
【0003】
カメラモジュールは、患者の負担を和らげるために小型化が要求される。しかし、回路基板を撮影レンズの光軸に対して垂直に配置すると、カメラモジュールの幅が広くなってしまうといった問題がある。このため、下記特許文献1では、回路基板を撮影レンズの光軸とは略平行に配置し、撮影レンズの背後に配置したプリズムによって被写体光を屈曲させ回路基板上の撮像素子に入射させている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、下記特許文献1では、撮影倍率を変更するために移動される可動レンズと、可動レンズを移動させるためのモータとを備え、モータの駆動軸と直結された回転軸を回転させることによって可動レンズを移動させている。さらに、下記特許文献1では、挿入部の先端側でアングルリングの先端部側第1リングの円筒面に切り込みを入れ、この切り込み部を変形させ、モータを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−121957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の装置では、撮像素子の影響で挿入部の幅が広くなってしまう問題は防止できるものの、モータの駆動軸を回転軸と直結する構造としているので、プリズムの背後に部材の配置されないデットスペースが生じてしまい、細径化の妨げとなっていた。しかも、モータの駆動軸を回転軸と直結することで、撮影レンズの光軸方向(挿入部の長手方向)の長さが長くなってしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、内視鏡用カメラモジュールの小型化を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡用カメラモジュールは、光軸方向に移動自在の可動レンズを有する撮影レンズと、前記撮影レンズから入射した被写体光を前記光軸方向とは略直行する方向に反射させるプリズムと、前記撮影レンズ及びプリズムを介して結像される光学画像を光電変換する撮像素子を有する回路基板と、前記光軸方向に長く形成されて前記撮影レンズの側方に配置される回転軸を有し、前記回転軸の回転により前記可動レンズを前記光軸方向に移動させるレンズ移動機構と、回転自在の駆動軸を有し、外部から電力の供給を受けて前記駆動軸を回転させるモータと、前記駆動軸の回転力を前記回転軸に伝達する回転力伝達機構と、を備えるとともに、前記モータを、前記駆動軸を前記光軸方向と平行にした状態で、前記プリズムの背後に配置したことを特徴としている。
【0009】
前記回転軸は、複数の回転体からなり、各回転体は、前記駆動軸の設けられた背面側から前記可動レンズの設けられた前面側へ向けて前記光軸方向に配列されて共通の軸周りに回転するとともに、所定量の回転遊びを有するように隣り合う軸体同士が連結されており、前記駆動軸の回転力が、背面側の回転体から前面側の回転体に順次伝達されるものでもよい。
【0010】
前記回転体は少なくとも3つ設けられ、隣り合う回転体間に設定された回転遊びの角度が、それぞれ異なっているものでもよい。
【0011】
背面側から前面側へ向かうほど、前記回転遊びの角度が大きく設定されているものでもよい。
【0012】
前記回転体として、棒状回転体と筒状回転体との2種類の回転体を用い、これらを交互に配置するとともに、前記棒状回転体は、前記筒状回転体側の端部外周に沿って等間隔で配置された外周突起を備え、前記筒状回転体は、前記外周突起を含む前記棒状回転体の外周よりも内径が大きく形成され、前記外周突起ごと前記棒状回転体を取り囲むように配置されるとともに、前記外周突起の移動経路に挿入される内周突起が内壁に立設され、前記内周突起が前記外周突起により押圧されることで前記棒状回転体と一体になって回転するものでもよい。
【0013】
前記レンズ移動機構は、前記レンズの移動後に、前記レンズを移動させない範囲で前記モータを反転または前記モータの反転と正転とを繰り返し、前記駆動軸をいずれの方向に回転させても前記駆動軸の回転開始から全ての回転体が一体となって回転するまでの回転量がほぼ同量となる中立位置まで各回転体を移動させた後、前記モータを停止するものでもよい。
【0014】
前記撮影レンズと前記レンズ移動機構と前記回転軸とを保持する本体ケースと、前記モータと前記回転力伝達機構とを保持するとともに、前記本体ケースの背面側に固定されて前記本体ケースと一体化されるモータケースとを設けてもよい。
【0015】
前記レンズ移動機構と前記回転軸と前記回転力伝達機構と前記駆動軸とは、前記本体ケースと前記モータケースとの少なくとも一方によって覆われており、外部から遮蔽されているものでもよい。
【0016】
前記モータは、熱伝導性を有する接着剤によって前記モータケースに接着されているものでもよい。
【0017】
前記回転軸を取り巻くように配置され、前記回転軸周りの回転が規制された筒体を有し、前記レンズ移動機構は、前記筒体を前記回転軸の長手方向に沿って移動させることで前記可動レンズを移動するとともに、前記筒体は、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のカム溝と係合する突起、または、前記回転軸の外周に形成された突起と係合する螺旋状のカム溝が内壁に設けられており、前記回転軸の回転に伴って、前記回転軸の長手方向にスライドするものでもよい。
【0018】
前記回転軸を取り巻くように配置され、前記回転軸周りの回転が規制された筒体を有し、前記レンズ移動機構は、前記筒体を前記回転軸の長手方向に沿って移動させることで前記可動レンズを移動するとともに、前記筒体は、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のネジ溝と係合する螺旋状のネジ山、または、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のネジ山と係合する螺旋状のネジ溝が内壁に設けられており、前記回転軸の回転に伴って、前記回転軸の長手方向にスライドするものでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可動レンズを移動させるためのモータをプリズムの背後に配置したので、プリズムの背後の空間を有効利用してカメラモジュールの小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子内視鏡システムの構成を示す外観図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の端面を示す平面図である。
【図3】カメラモジュールの平面図であり、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図4】カメラモジュールを側方から観察した断面図である。
【図5】回転軸の分解図である。
【図6】第1棒状回転体の回転力が第1筒状回転体に伝達される様子を示す説明図である。
【図7】第2棒状回転体の回転力が第2筒状回転体に伝達される様子を示す説明図である。
【図8】電子内視鏡の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】カメラモジュールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、電子内視鏡システム2は、電子内視鏡10と、プロセッサ装置11と、モニタ12とからなる。電子内視鏡10は、検査孔内に挿入される可撓性の挿入部13と、挿入部13の基端部分に連設された操作部14と、プロセッサ装置11に接続されるユニバーサルコード16とを有する。
【0022】
操作部14には、挿入部13の先端部17が上下左右を向くように挿入部13を湾曲させるためのアングルノブや、送気・送水ノズル20(図2参照)からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタンの他、観察画像を静止画記録するためのレリーズボタンや観察画像の撮影倍率を変倍するための変倍ボタン21などの操作部材が設けられている。また、操作部14の先端側には、電気メス等の処置具が挿通される鉗子口が設けられている。鉗子口は、挿入部13内の鉗子チャンネルを通して、先端部17に設けられた鉗子出口22(図2参照)に連通している。
【0023】
プロセッサ装置11は、ユニバーサルコード16や挿入部13内に挿通された伝送ケーブル68(図4参照)を介し、先端部17に搭載されたカメラモジュール30(図2〜図4参照)への給電や駆動制御を行う。また、プロセッサ装置11は、伝送ケーブル68を介してカメラモジュール30から出力された撮像信号を受信し、受信した撮像信号に各種処理を施して画像データを生成する。そして、生成した画像データを、プロセッサ装置11にケーブル接続されたモニタ12に観察画像として表示する。
【0024】
図2に示すように、先端部17の端面17aには、送気・送水ノズル20、鉗子出口22の他、照明光が出射される照明窓24や、観察窓26が設けられている。観察窓26は、端面17aに形成された開口からなり、観察窓26の背後にはカメラモジュール30が配置されている。そして、観察窓26には、カメラモジュール30の対物光学系32(図4参照)を構成する第1レンズ38が嵌合されている。
【0025】
図3(A)、同図(B)、並びに、図4に示すように、カメラモジュール30は、対物光学系32、回路基板34、レンズ移動機構36を備えている。対物光学系32は、撮影レンズと、プリズム44とから構成される。撮影レンズは、第1、第2、第3レンズ38、40、42からなり、これらが、挿入部13の長手方向と平行な光軸に沿って並べて配置されている。
【0026】
第1、第3レンズ38、42は、固定レンズである。そして、第1レンズ38は、前端部が観察窓26に嵌合され、後端部が円筒状の鏡筒46の前端部に嵌合されて固定されている。また、第3レンズ42は、鏡筒46の後端部に固定されている。他方、第2レンズ40は、撮影倍率変倍用の変倍レンズ(可動レンズ)である。そして、第2レンズ40は、鏡筒46にスライド自在に支持されており、レンズ移動機構36により移動される。
【0027】
プリズム44は、入射面44a、反射面44b、出射面44cを備えており、入射面44aの外縁部が鏡筒46の後端に接着されて固定される。入射面44aには、第1〜第3レンズ38〜42を介して被写体光が入射される。反射面44bは、入射面44aに対して45°傾けられ、入射面44aから入射した被写体光の光路を90°屈折させる。出射面44cは、入射面44aに対して90°傾けられ、反射面44bで反射された被写体光を出射する。
【0028】
回路基板34は、伝送ケーブル68を介してプロセッサ装置11と電気的に接続されている。回路基板34には、CCD35、及び、CCD35を駆動するための駆動回路などが設けられている。CCD35は、複数の光電変換素子が配列された撮像面35aを備え、回路基板34は、この撮像面35aをプリズム44の出射面44cに対面させた状態で、出射面44cに接着されて固定される。CCD35は、出射面44cから出射して撮像面35aに入射した被写体光を光電変換し、撮像信号を生成する。このように、撮像面35aが挿入部13の長手方向とは平行となるように回路基板34を配置することで、先端部17を細径化できる。
【0029】
レンズ移動機構36は、モータ50、回転力伝達機構52、回転軸54を備えている。モータ50としては、例えば、直流モータが用いられる。モータ50は、駆動軸56を有する本体58と、本体58の背面に設けられた駆動ケーブル60、62とからなり、駆動ケーブル60、62に流された電流の向きに応じた方向に駆動軸56を回転させる。駆動ケーブル60、62は、回路基板34の上面に固定されたサブ回路基板66を介して伝送ケーブル68に接続されている。
【0030】
また、モータ50は、プリズム44の背後に配置され、駆動軸56を挿入部13の長手方向と平行にした状態で、左右2分割式のモータケース70に取り付けられて支持されている。モータケース70の後端部には、本体58の外周を取り巻く筒状のホルダ72が設けられている。ホルダ72は、アルミなど放熱性の高い材料から形成されており、モータ50は、ホルダ72の内周に、熱伝導率の高い接着剤74により接着されている。
【0031】
このように、モータ50をプリズムの背後に配置することで、プリズムの背後のスペースを有効活用でき、カメラモジュール30を小型化できる。さらに、モータ50をプリズムの背後に配置することで、例えば、後述する回転軸に駆動軸を直結させるようにモータを配置する場合と比較して、カメラモジュールを大型化することなくより大径のモータ、すなわち、回転トルクの大きなモータを搭載できる。また、モータ50を、熱伝導性の高い接着剤74により放熱性の高いホルダ72に取り付けたので、モータ50から効率よく排熱でき、モータ50の発熱を抑えることができる。
【0032】
回転力伝達機構52は、第1、第2、第3歯車76、78、80から構成される。これら第1〜第3歯車76〜80は、モータケース70内に配置され、駆動軸56と平行な軸周りに回転自在に設けられている。第1歯車76は、駆動軸56の先端に固定されて駆動軸56と一体に回転する。第2歯車78は、第1歯車76と歯合されて第1歯車76の回転に伴って回転する。また、第2歯車78は、第3歯車80とも歯合されており、第3歯車80は、第2歯車78の回転に伴って回転する。これら第1〜第3歯車76〜80は、モータケース70によって覆われてモータケース70の外部と遮断されており、回転に伴って生じる塵や埃などが外部に飛散しないようになっている。
【0033】
第3歯車80の先端には、回転軸54が接続されている。回転軸54は、筒状の本体ケース82内に納められ、対物光学系32の側方に配置される。回転軸54は、本体ケース82によって回転自在に支持されるとともに、本体ケース82によって覆われて外部と遮断されており、回転に伴って生じる塵や埃などが外部に飛散しないようになっている。
【0034】
回転軸54は、第1棒状回転体84、第1筒状回転体86、第2棒状回転体88、第2筒状回転体90、第3棒状回転体92からなり、これらが第3歯車80から端面17aへ向けてこの順番で配置されている。また、これらは全て駆動軸と平行な共通の軸周りに回転自在に設けられている。
【0035】
図5に示すように、第1棒状回転体84は、後端が第3歯車80の先端に固定され、第3歯車80と一体に回転する。第1棒状回転体84には、係止リング84aと、突起84bとが形成されている。係止リング84aは、第1棒状回転体84の長手方向中央部に設けられている。第1棒状回転体84は、この係止リング84aが本体ケース82の後壁と第1筒状回転体86との間に挟まれて、前後への移動が規制されている(図4参照)。突起84bは、第1棒状回転体84の先端部外周に沿って90°の回転位置間隔で4つ設けられている(図6参照)。
【0036】
第1筒状回転体86は、第1棒状回転体84の先端部よりも一回り大きく形成されており、後端部で第1棒状回転体84の先端部を覆うように設けられている。第1筒状回転体86の内周には、突起86aが設けられている。突起86aは、第1筒状回転体86の内周に沿って90°の回転位置間隔で4つ設けられ、これら各突起86aが、第1棒状回転体84の突起84bの移動経路に挿入されている(図6参照)。
【0037】
第2棒状回転体88は、後端部が第1筒状回転体86の先端部の内側に配置される。第2棒状回転体88の後端部には、外周に沿って90°の回転位置間隔で4つの突起88aが設けられており、各突起88aが第1筒状回転体86の突起86aの移動経路に挿入されている(図6参照)。また、第2棒状回転体88の長手方向中央部には、第2棒状回転体88の前後への移動を規制するための係止リング88bが設けけられている。さらに、第2棒状回転体88の先端部には、外周に沿って180°の回転位置間隔で2つの突起88cが設けられている(図7参照)。
【0038】
第2筒状回転体90は、後端部で第2棒状回転体88の先端部を覆うように設けられている。第2筒状回転体90には、内周に沿って180°回転位置間隔で2つの突起90aが設けられており、これら各突起90aが、第2棒状回転体88の突起88cの移動経路に挿入されている(図7参照)。
【0039】
第3棒状回転体92は、後端部が第2筒状回転体90の先端部の内側に配置される。第3棒状回転体92の後端部には、外周に沿って180°の回転位置間隔で2つの突起92aが設けられており、各突起92aが第2筒状回転体90の突起90aの移動経路に挿入されている(図7参照)。また、第3棒状回転体92には、突起92aの前方に第3棒状回転体92の前後への移動を記載するための係止リング92bが設けられている。さらに、第3棒状回転体92には、係止リング92bよりも前端側に、外周に沿って螺旋状のカム溝92cが形成されている。
【0040】
第3棒状回転体92の前端側は、筒体94に挿入されている。筒体94は、内周に第3棒状回転体92のカム溝92cと係合する突起94aが形成されている。また、筒体94は、アーム96を介して第2レンズ40と一体化されており、第3棒状回転体92周りの回転が規制されている。
【0041】
以下、モータ50の回転力が第2レンズに伝達されて第2レンズが移動するまでの回転力伝達機構52及び回転軸54の動作について説明する。モータ50が回転すると、この回転力が第1〜第3歯車76〜80を介して第1棒状回転体84に伝達され、第1棒状回転体84が回転する。
【0042】
図6(A)に示すように、第1棒状回転体84は、モータ50が回転する前の初期状態では、突起84bが、第1筒状回転体86の突起86aの中間に位置する中立位置にセットされている。そして、第1棒状回転体84が中立位置から約20°回転すると、同図(B)に示すように突起84bが第1筒状回転体86の突起86aに当接する。この後、さらに第1棒状回転体84が同じ方向に回転すると、第1棒状回転体84と一体に第1筒状回転体86が回転を開始する。
【0043】
第1筒状回転体86は、初期状態では、突起86aが第2棒状回転体88の突起88aの中間に位置する中立位置にセットされている。そして、第1筒状回転体86が約20°回転すると、突起86aが第2棒状回転体88の突起88aに当接し、この後、さらに第1筒状回転体86が同じ方向に回転すると、第1筒状回転体86と一体となり第2棒状回転体88が回転を開始する。
【0044】
図7(A)に示すように、第2棒状回転体88は、初期状態では、突起88cが第2筒状回転体90の突起90aの中間に位置する中間位置にセットされている。そして、第2棒状回転体88が約80°回転すると、同図(B)に示すように、突起88cが第2筒状回転体90の突起90aに当接し、この後、さらに第2棒状回転体88が同じ方向に回転すると、第2棒状回転体88と一体となり第2筒状回転体90が回転を開始する。
【0045】
第2筒状回転体90は、初期状態では、突起90aが第3棒状回転体92の突起92aの中間に位置する中間位置にセットされている。そして、第2筒状回転体90が約80°回転すると、突起90aが第3棒状回転体92の突起92aに当接し、この後、さらに第2筒状回転体90が同じ方向に回転すると、第2筒状回転体90と一体となり第3棒状回転体92が回転を開始する。第3棒状回転体92が回転すると、カム溝92cにより筒体94の突起94aが押圧され、第3棒状回転体92の長手方向に沿って筒体94が移動する。そして、この筒体94と一体に第2レンズ40が移動する。
【0046】
このように、回転軸54を複数の部材に分割し、各部材を所定の回転遊びを有する連結機構によって連結したので、初めに回転する第1棒状回転体84から、最後に回転する第3棒状回転体92まで、一体に回転させる部材の数が段階的に増える(すなわち、徐々に回転慣性力が高まる)。これにより、回転軸を1つの部材から構成する場合と比較して、モータへの負担を軽減でき、モータの駆動力が小さい場合であっても確実に回転軸を回転できる。また、モータの回転開始からレンズの移動開始までに所定のタイムラグができるので、レンズがモータの動きに過敏に反応してしまうといったこともない。さらに、回転軸を1つの部材から構成する場合、レンズの移動開始時に回転させる部材の重量が重く、モータを大きなトルクで回転させる必要がある。このため、レンズが大きく動いてしまい、レンズの位置を細かく調整し難いといった問題があるが、本実施形態ではこのような問題もない。
【0047】
また、一体に回転させる部材の数が増えるに従ってモータの負担が大きくなるが、本実施形態では、一体に回転させる部材の数が増えるに従い回転遊びの量も大きくした(本実施形態では、第1棒状回転体84、第1筒状回転体86、第2棒状回転体88の間の回転遊びが最大で約40°であるのに対して、第2棒状回転体88、第2筒状回転体90、第3棒状回転体92の間の回転遊びは最大で約160°とした)。このため、一体に回転させる部材の数が増えるほど、より勢いがついた状態(回転慣性力が増した状態)で、次の部材を回転させることができるので、各部材間の回転遊びの量を等しくした場合と比較して、よりモータの負担を軽減できる。
【0048】
以下、プロセッサ装置11がモータ50を制御して、撮影画像の変倍を行う流れについて説明する。図8に示すように、プロセッサ装置11の電源がオンされると、プロセッサ装置11は、カメラモジュール30への給電を開始するとともに、CCD34を制御して検査孔内の画像の撮影を開始する。そして、撮影された画像をモニタ12に表示する。
【0049】
また、プロセッサ装置11は、変倍ボタン21が押下される毎に、モータ50を制御して、第1レンズ38側の縮小位置(ワイド位置)と第3レンズ42側の拡大位置(テレ位置)との間で第2レンズ40を切り替え移動させる。さらに、プロセッサ装置11は、第2レンズ40の位置が切り替えられる毎(変倍毎)に、モータ50を制御して回転軸54の各部材を中立位置に戻す。
【0050】
具体的には、変倍が完了して第2レンズ40が停止されると、第2レンズ40の停止直前のモータ50の回転方向(以下、正転方向)とは反対の方向(以下、逆転方向)にモータ50を回転させ、第2筒状回転体90を約80°回転させて中立位置に移動させる。続いて、モータ50を正転方向に回転させ、第2棒状回転体88を約80°回転させて中立位置に移動させる。さらに、この後、モータ50を逆転方向に回転させ、第1筒状回転体86を約20°回転させて中立位置に移動させる。そして、最後に、モータ50を正転方向に回転させ、第1棒状回転体84を約20°回転させて中立位置に移動させる。
【0051】
なお、本発明は、モータをプリズムの背後に配置してカメラモジュールを小型化できればよいので、細部の構成は上記実施形態に限定されず適宜変更できる。例えば、上記実施形態では、回転体を複数の部材から構成する例で説明をしたが、回転体を1つの部材から構成してもよい。また、回転体を複数の部材から構成する場合も、部材数は上記実施形態のように5つの部材に限定されず、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、モータとして直流モータを用いる例で説明をしたが、モータとして、供給された駆動パルスの個数に応じた量だけ回転するステッピングモータを用いてもよい。ステッピングモータを用いた場合、回転体(回転体を構成する各部材)の回転量やレンズの移動量をより細かく制御できる。
【0053】
また、上記実施形態では、可動レンズの停止後に、回転体を構成する複数の部材を中立位置へ戻す例で説明をしたが、これを廃止して可動レンズの停止後にモータを停止してもよい。また、回転体を構成する全ての部材を中立位置に戻さずに、回転体を構成する一部の部材のみを中立位置に戻すようにしてもよい。
【0054】
さらに、可動レンズの移動方向を反転させる際にモータが空転する量の半分だけモータを逆転方向に回転してもよい。具体的には、上記実施形態のように、レンズの移動方向を反転させる際に、第1棒状回転体84を約400°逆転させる必要がある場合(第1棒状回転体84を約40°逆転させて第1筒状回転体86の逆転を開始させ、次に、第1筒状回転体86を約40°逆転させて第2棒状回転体88の逆転を開始させ、続いて、第2棒状回転体88を約160°逆転させて第2筒状回転体90の逆転を開始させ、最後に、第2筒状回転体を約160°逆転させることによって第3棒状回転体92の回転が開始する場合)、可動レンズの停止後に第1棒状回転体84を約200°だけ逆転させるようにモータ50を逆転方向に回転させればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、回転軸を構成する各部材間の回転遊びの量を2段階で切り替え、より後に回転する部材間の回転遊びの量を大きく設定する例で説明をしたが、全ての部材間の回転遊びの量を等しく設定してもよい。また、例えば、第1棒状回転体と第1筒状回転体との間の回転遊びの量を最大20°とし、第1筒状回転体と第2棒状回転体との間の回転遊びの量を最大40°とし、第2棒状回転体と第2筒状回転体との間の回転遊びの量を最大80°とし、第2筒状回転体と第3棒状回転体との間の回転遊びの量を最大160°とするといったように、回転遊びの量を3段階以上に切り替えてもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態では、レンズと連結され回転軸周りの回転が規制された筒体と、筒体に挿入される回転軸とを有し、筒体の内周に形成された突起を、回転軸の外周に形成されたカム溝に係合させることによって、回転軸の回転に伴って筒体とともにレンズが移動する構成で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、筒体の内周にカム溝を設け、回転軸の外周に突起を設けてもよい。また、カム溝と突起とによらず、筒体の内周に形成されたネジ溝と回転軸の外周に形成されたネジ山とを係合させる構成によってレンズを移動させてもよい。もちろん、筒体の内周にネジ山を設け、回転軸の外周にネジ溝を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、変倍用の可動レンズをワイド位置とテレ位置との2つの位置へ移動させる例、すなわち、2段階で変倍が行われる例で説明をしたが、3段階以上で変倍を行ってもよい。もちろん、無段階で変倍を行ってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、プリズムの背後に配置したモータによって変倍用の可動レンズを移動させる例で説明をしたが、同様の機構によって、ピント調節用の可動レンズを移動させてもよい。もちろん、プリズムの背後に2つのモータを配置して、変倍用の可動レンズとピント調節用の可動レンズとの両方を移動させてもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、レンズ移動機構を、対物光学系を挟んでCCDの反対側に配置した例(図3参照)で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、回路基板34と対物光学系とを結ぶ線に対して傾いた位置にレンズ移動機構36を配置してもよい。
【0060】
なお、上記実施形態では、撮像素子としてCCDを用いる例で説明をしたが、撮像素子として、CMOSイメージセンサを用いてもよい。さらに、上記実施形態では、レンズ鏡筒と本体ケースとを別体に設けた例で説明をしたが、これらを一体に設けてもよい。さらに、上記実施形態では、本発明を医療用の内視鏡に適用する例で説明をしたが、本発明を工業用の内視鏡に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
2 電子内視鏡システム
10 電子内視鏡
11 プロセッサ装置
12 モニタ
13 挿入部
17 先端部
26 観察窓
30 カメラモジュール
32 対物光学系
34 回路基板
35 CCD(撮像素子)
36 レンズ移動機構
38 第1レンズ
40 第2レンズ
42 第3レンズ
44 プリズム
50 モータ
52 回転力伝達機構
54 回転軸
56 駆動軸
84 第1棒状回転体
86 第1筒状回転体
88 第2棒状回転体
90 第2筒状回転体
92 第3棒状回転体
84b、86a、88a、88c、90a、92a 突起
92c カム溝
94 筒体
94a 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に移動自在の可動レンズを有する撮影レンズと、
前記撮影レンズから入射した被写体光を前記光軸方向とは略直行する方向に反射させるプリズムと、
前記撮影レンズ及びプリズムを介して結像される光学画像を光電変換する撮像素子を有する回路基板と、
前記光軸方向に長く形成されて前記撮影レンズの側方に配置される回転軸を有し、前記回転軸の回転により前記可動レンズを前記光軸方向に移動させるレンズ移動機構と、
回転自在の駆動軸を有し、外部から電力の供給を受けて前記駆動軸を回転させるモータと、
前記駆動軸の回転力を前記回転軸に伝達する回転力伝達機構と、を備えるとともに、
前記モータを、前記駆動軸を前記光軸方向と平行にした状態で、前記プリズムの背後に配置したことを特徴とする内視鏡用カメラモジュール。
【請求項2】
前記回転軸は、複数の回転体からなり、
各回転体は、前記駆動軸の設けられた背面側から前記可動レンズの設けられた前面側へ向けて前記挿入部の前記光軸方向に配列されて共通の軸周りに回転するとともに、所定量の回転遊びを有するように隣り合う軸体同士が連結されており、前記駆動軸の回転力が、背面側の回転体から前面側の回転体に順次伝達されることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項3】
前記回転体は少なくとも3つ設けられ、
隣り合う回転体間に設定された回転遊びの角度が、それぞれ異なっていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項4】
背面側から前面側へ向かうほど、前記回転遊びの角度が大きく設定されていることを特徴とする請求項3記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項5】
前記回転体として、棒状回転体と筒状回転体との2種類の回転体を用い、これらを交互に配置するとともに、
前記棒状回転体は、前記筒状回転体側の端部外周に沿って等間隔で配置された外周突起を備え、
前記筒状回転体は、前記外周突起を含む前記棒状回転体の外周よりも内径が大きく形成され、前記外周突起ごと前記棒状回転体を取り囲むように配置されるとともに、前記外周突起の移動経路に挿入される内周突起が内壁に立設され、前記内周突起が前記外周突起により押圧されることで前記棒状回転体と一体になって回転することを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項6】
前記レンズ移動機構は、前記レンズの移動後に、前記レンズを移動させない範囲で前記モータを反転または前記モータの反転と正転とを繰り返し、前記駆動軸をいずれの方向に回転させても前記駆動軸の回転開始から全ての回転体が一体となって回転するまでの回転量がほぼ同量となる中立位置まで各回転体を移動させた後、前記モータを停止することを特徴とする請求項2〜5いずれか記載の内視鏡。
【請求項7】
前記撮影レンズと前記レンズ移動機構と前記回転軸とを保持する本体ケースと、
前記モータと前記回転力伝達機構とを保持するとともに、前記本体ケースの背面側に固定されて前記本体ケースと一体化されるモータケースとを備えたことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の内視鏡用カメラモジュール。
【請求項8】
前記レンズ移動機構と前記回転軸と前記回転力伝達機構と前記駆動軸とは、前記本体ケースと前記モータケースとの少なくとも一方によって覆われており、外部から遮蔽されていることを特徴とする請求項7記載のカメラモジュール。
【請求項9】
前記モータは、熱伝導性を有する接着剤によって前記モータケースに接着されていることを特徴とする請求項6または7記載のカメラモジュール。
【請求項10】
前記回転軸を取り巻くように配置され、前記回転軸周りの回転が規制された筒体を有し、
前記レンズ移動機構は、前記筒体を前記回転軸の長手方向に沿って移動させることで前記可動レンズを移動するとともに、
前記筒体は、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のカム溝と係合する突起、または、前記回転軸の外周に形成された突起と係合する螺旋状のカム溝が内壁に設けられており、前記回転軸の回転に伴って、前記回転軸の長手方向にスライドすることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の内視鏡。
【請求項11】
前記回転軸を取り巻くように配置され、前記回転軸周りの回転が規制された筒体を有し、
前記レンズ移動機構は、前記筒体を前記回転軸の長手方向に沿って移動させることで前記可動レンズを移動するとともに、
前記筒体は、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のネジ溝と係合する螺旋状のネジ山、または、前記回転軸の外周に形成された螺旋状のネジ山と係合する螺旋状のネジ溝が内壁に設けられており、前記回転軸の回転に伴って、前記回転軸の長手方向にスライドすることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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